こんにちは、ライターのみくのしんと申し…
ビュュゥウウウゥ……ッ!!
「う、うワーッ! ちょっとちょっと大丈夫!? 足元フニャついてない!? 風とか吹いてない!? だ、誰か… た、た…」
雨漏りの修理工事を一日体験
改めましてこんにちは、ライターのみくのしんです。ジモコロでは色んな職業を実際に体験してレポートする、『一日職業体験シリーズ』を書いています。
第7回となる今回、体験するお仕事は……
雨漏りの修理工事を一日体験します!
と言う訳で朝焼けの中、やって来たのは奈良県にある森建築板金工業さん。
森建築板金工業
住所|〒635-0002 奈良県大和高田市土庫2-4-28
はて、板金…?
板金って、金属板を曲げたりするアレですよね。雨漏りと関係あるの……? ひょっとして、関係ない……?
「ありますよ」
「あ、今回お世話になる、社長の森さん。なんで雨漏りなのに板金なんですか? 雨漏りの修理って、穴に樹脂かなんかを流し込んで塞ぐのでは?」
「そういった修理も極稀にありますが… それだと雨漏りの根本的な原因解決にならないので、うちの会社では屋根の下地、板金から修理しています」
「??? わからないけど、わかりました! それじゃあ手伝わせてください!」
「ではまず『水切り』に使う板金を作っていきます!」
「???本当に何もかもわからないんですが、大丈夫ですか?」
就業開始~現場作業まで
作業着に着替えて、ここから一日職業体験スタート! ……と、いきたいのですがその前に雨漏りの原因とか『水切り』って何? 一回根本的なことを教えてもらっていいですか!?
教えて頂いた事をざっくりまとめますと…
ー雨漏りの原因
・雨漏りは基本的に木材の部分に雨が侵入してくることで発生する
・雨が侵入しやすいのは、主に屋根の頂上部分や接合部、角など
ー水切りとは
・板金によって水の通り道を作って外や下に水を流してやることを『水切り』という
・ 雨漏りを防ぐのは屋根そのものというより、『水切り』の役割
※赤い部分が「水切り」。雨が木材に到達しないよう、また、上に登ってこないように、水の通り道を作っている
「雨漏りに関しては、僕らが屋根と呼んでる“あいつ(表層部分)”より、『水切り』こそ雨水を逃す要(かなめ)ってことか! 知らなかった」
「ちなみにうちは板金での『水切り』だけでも完璧に仕上げますが、念押しで耐水シールなどで補強し、四重構造で雨から家を守ります!」
「屋根に空いた穴をパテで埋めるだけの仕事だと思ってたのに、これは……今日の体験レポート、苦労しそうな予感がする……」
雨漏りの仕組みなどをあらかた理解した所で、早速『水切り』を作っていきます。
「この、でかいバームロールは何ですか?」
「ブルボンのお菓子では無く、それが板金です。 屋根の形は一軒一軒違うんで、板状の金属を加工して、形にあったものを作るわけです」
ブルボン バームロール 8本×12本「なるほど……それじゃ完成まで、僕は横で見てますね」
「何しに来たんですか? ここから手伝ってもらいますよ!」
使用する分だけの板金をカットします。 当たり前だけど重てっ!
「だって鉄の塊ですからね」
「重てーし、誰ですか?」
こちらの方は今回、僕とバディーを組んでくださる西田さん。ちょっと福山雅治に似てないですか? 似てない? 似てませんでした。
「今日は僕と西田で教えていくから、わからない所があったら西田に聞いてね」
「よろしくお願いします! 僕はまずは何をしたらいいですか!?」
「はい! それでは板金をハサミで切っていきましょう!」
作業に使うおおまかな量を、このイカツいハサミでカットしていきます。工具カッコよっ。
シャッ、シャッ、シャッ……
「こんな感じで切っていきます」
「めちゃサクサク切っていきますね……僕でも出来るんですかね?」
「良いハサミなんで紙みたいに切れますよ! 断面がきれいになる様にお願いしますね」
ギギッ、ギッ、グギギギ……
「ぐぐ… 全っっ然切れないんですけど! 普通のハサミでヤンマガを一気に切ってるくらい硬い!」
「まぁ握力には個人差があるからね……」
「以前『解体作業』の職業体験をした時に、握力27kgですけど大丈夫ですか?って聞いたらOKと答えてくれましたが、板金屋さんだと厳しいですか?」
「「大丈夫」」
「ここでも断言してくれた!」
「僕も昔はびっくりするほど不器用だったし、素直に修行さえすれば本当に誰でもやれるよ! そう、みくのしん君でもね」
僕が切ったのは左の黒い板金。切断した部分が波立ってますね……。右の、薄い緑のは西田さんが切ったもの。切り口が真っ直ぐ!
切った板金をめちゃめちゃにでかいマシンに入れ、加工する西田さん。フットペダルを押すと「ゴウン…」と音を立てながら、板金が綺麗に曲がっていきます。
「ちなみにこれも手伝ってもらうからね!」
「え!? 僕はそのマシンを触る資格 持ってませんよ!?」
「板金加工する上で持っておかないといけない資格はありません。さぁ、やってみましょう」
「本当にやる気次第で誰でも出来るんだな……」
社長の森さん監修の元、板金をあてがいながら足でボタンを押します。曲がった状態で折ってしまったらやり直しが効かないのでかなり緊張する…
そして出来た物がこちら。綺麗に折られていて完成しているらしいですけど。これ、どこにどう使うの?
「すみません。僕は今、何を作ってるんでしょうか? 検討もつきません」
「水切りなんて一般の人は馴染みがないだろうからねぇ。ま、現場に行って説明したらわかるよ! とりあえず移動しようか」
「心配だ……」
一抹の不安を抱えながら現場へ移動します。 それじゃあレッツゴーなりぃ~!
現場作業~お昼時間まで
と、言うわけで現場に到着したのですが…
このお宅の屋根登るの?
誰が?
なんで?
本当に?
「落ち着いてください」
「ハッ! すみません… 予想はしていたんですが、実際に目の当たりにするとビビっちゃって。ちなみにこれってどうやって登るんですか?」
「登り方は……」
「これを」
「こうして」
「こんな感じでーす!!」
「…………」
「あれ? 距離があるから聞こえてないのかな」
「聞こえてるし、無理だなって思ってます」
「登ってみたら意外と怖くないから、大丈夫だって!」
「ほ、本当~?」
ギッ……ギシッ……ギッ……ギッ……
たっ…………
たっ…………
たっか~~~~!!!!
僕の靴の角度にご注目ください(もしくは背景に写っている別の家の屋根を見てもわかりやすいです)。
恐怖心を加速させているのが、屋根の……この急な角度!! 当たり前だけど、屋根は“人が歩くため”に設計されているわけではないんですね。
「別に高い所が苦手ってわけじゃないんですけど……断崖絶壁とかビルの30階みたいなファンタジーじゃなくて、すごく現実的な高所なのが怖い」
「まあ、落ちたら危ないのは確かなんで、安全帯(命綱)だけは絶対に外さないでくださいね」
これが安全帯。
腰のベルトと繋がっていて、フックをひっかけておけば、いざという時の命綱になってくれます。僕はもう一生これを離しません
「正直に言うと、始めはみんな高さが怖いと思います。ていうか、僕は今でも少し怖いです。『まったく怖さを感じない』っていう人は安全意識がマヒしてて危ない」
「そう、みんな怖い。でもほとんどの人はすぐに歩けるようになるし、そしたら景色も最高だし、楽しい仕事ですよ」
「景色なんて怖くて見れないです」
「そんなに? でも、みくのしんさんには適正があると感じました」
「え? こんなビビってるのに!?」
「本当に高いところが苦手な人は、ハシゴを登る時にガタガタガタガタッてすごく揺れたりするんです。みくのしんさんは、怖がってはいたけど、一歩一歩しっかり登ってましたね」
「意外なところで適正がわかるんですね。今まで、こちらの会社に応募してきた人の中にもハシゴを揺らした人がいたんですか? そんな人がなんで応募してきたんだろ」
「“自分は高所に弱い”ってことを自覚してない人は、結構いるんです。まあ普通は屋根に登ったりしませんから、一生気づかないほうが幸せかもしれませんけど」
「さて、じゃあそろそろ仕事しましょうか!」