築120年の古民家の前からこんにちは! ライターの藤原です。
私は今、長野市にある古民家を活用したお店兼イベントスペースのスタッフをやっています。
普段は物販をメインで行っていますが……
近所の人や学生が集まってイベントができたり……
まだお店が始まって半年程度ですが、古民家の使い方は無限大にありそうです。
ちなみに2033年には日本にある全住戸の3軒に1軒が空き家になってしまう予測があるほど、空き物件は社会問題化しつつあります。
そんな今だからこそ、自分でお店やスペースを持ちたい!と考える人にとって、空き物件はおすすめなんです。
ただし……物件を「借りる」のはいいことばかりではない、というのも最近わかったんです。
それは先日、同じくお店をやっている先輩から話を聞いたときのこと。
「今、お店をやるなら古民家とか空き物件を借りるのが一番ですよね。オーナーさんと仲良くなれば、安く借りれるし…!」
「今はオーナーさんとの関係もいいかもしれないけど、『賃貸』だと何があるかわからないよ」
「え、どういうことですか?」
「オーナーの気が変わって急に家賃を上げられちゃったり」
「店がうまくいっていたのに、オーナーから急に賃上げを迫られて移転せざるをえなくなったり」
「オーナーが亡くなったときに、親族の人から急に出ていくことを迫られたりする場合もあるんだよ……」
「こ、怖〜〜〜〜!!!」
空き物件を借りてお店をやることの意味を、僕はあまり理解していなかったみたいです。
このままでは不安で眠れないので、商店街の空き店舗を借りて3年近くお店を営業している大先輩、「仮面屋おもて」の大川原脩平(おおかわら・しゅうへい)さんに話を聞いてみたいと思います!
話を聞いた人:大川原脩平
(株)うその 代表取締役。世界各国から集めた仮面を扱う東京都墨田区の「仮面屋おもて」店主。たばこのふりをしてトランプを売る「うそのたばこ店」も営むほか、舞踏家でもある。
(株)うその HP http://www.usono.co.jp/
☆ジモコロで以前取材した「仮面屋おもて」の記事はこちら
空き店舗活用のポイントは、オーナーとの関係性
「大川原さん、こんにちは! 今日は仮面をかぶってないんですね」
「仮面屋をやってるからといって、いつも仮面なわけじゃないよ」
「失礼しました。最近、古民家を活用したお店を始めたのですが、オーナーとの関係性次第では、お店ができなくなる場合があるという噂を聞いて」
「なるほど、最近そういう悩みの相談を受けることが多いんだよね」
「具体的にはどんな……?」
「例えばオーナーが亡くなった場合、家族の誰が相続するかによって、物件を借り続けられるかどうか変わってくるよね」
「え、そうなんですか?」
「店を相続したオーナーの息子が、『お店を壊して駐車場にしよう』って 言い出して、数百万かけて改修した物件が、無駄になってしまう……なんてケースもあるからね」
「怖すぎる」
「普通は、不動産屋を介してオーナーと契約を交わす場合が多いよね。不動産屋は、借主よりもオーナーの方を大事にすることがほとんどなんだ。だから、オーナーの意向には逆らえないことが多い」
「ひいい。いくらオーナーと仲が良くても『駐車場にした方が儲かるんで』って言われたら、なにも言えないですもんね…」
空き店舗を活用する=不動産の価値を上げる
「仮面屋おもて」は、大川原さんが若い仮面作家のアーティストに出会い、その作品を売る場所を用意しようという思いから始まった
「店を借りてるのが怖くなってきたんですが、いっそお店を買ったほうがいいってことでしょうか? でもそこまでお金はないし……借金するしかない……?」
「まあまあ、落ち着いて。その前にまずは『不動産を使う』ということの価値を理解したほうがいいと思うんだ」
「不動産を使う価値?」
「不動産って、使えば使うほど価値があがるんだよ」
「え!? 築年数が経てば経つほど、物件って安くなりませんか」
「それは悪い使い方をした場合だね。例えば、誰もお客さんが来ないお店だったら、建物は古くなるし、価値は下がる。ただし、空き家のまま放置していても価値は下がっちゃうよね。じゃあ物件のいい使い方って何だろう?」
「えっと……あ、繁盛するお店にすること?」
「そう、お店が流行って人が集まると、不動産の価値は上がる」
「人が集まると、価値が上がる……」
「お店に人が集まると、お店の売上だけじゃなくて、物件や地域の価値も上げているということなんだ。例えば、駅前の土地の値段が高いのは、人通りが多いからでしょう?」
「なるほど! 人が集まる=土地の価値を上げるから、不動産の価値も上がるんですね」
「そのとおり! ただ、不動産の価値をいくら上げても、賃貸物件だとあまりうまみがない」
「それは、自分のものじゃないからですか?」
「そう、それどころか不動産の価値が上がったところで、オーナーから『やっぱり貸さない!出ていって』って言われる危険すらあるよね」
「ずるい!って思いましたけど、向こうも商売ですもんね…」
「だから、空き物件は『借りる』だけが選択肢じゃない。物件を買って『オーナーシップ』を持つという選択肢も覚えておいてほしいんだよ」
「オーナーシップ?」
「オーナーシップ=所有権のことだね。オーナーシップを持つことで、物件の価値を上げること自体も、自分の手柄にできるんだよ」
「なんだかハードルが高そう……」
「僕、オーナーシップを持ってるよ!!!」
「いきなり誰??? 仮面屋のスタッフさんですか?」
「友人の岡田さんだよ。名古屋駅近くの地下街で、空き店舗を買ってオーナーになって、地下街全体を盛り上げている人なんだ」
「オーナーシップの話なら、僕に任せといてよ」
「なんだかよく分からないですけど、詳しく聞かせてください」
話を聞いた人:岡田真太郎
美術商。愛知県にある伏見地下街の物件所有者からなる組合、伏見地下街協同組合の専務理事として2015年より地下街運営会議の司会進行を担当。伏見地下街アートマネージャー。