Quantcast
Channel: イーアイデムの地元メディア「ジモコロ」
Viewing all 1396 articles
Browse latest View live

NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」が面白すぎるってアピールしてたら取材できた話

$
0
0

f:id:kakijiro:20160722164155j:plain

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

 

最近、テレビ番組にどハマりした経験ってありますか? スマホが現代人の時間の使い方を大きく変えたのは間違いないんですが、なんだかんだで面白いテレビ番組はいっぱいあるんですよね。

 

30歳を過ぎたあたりから興味を持ち始めたのがNHKのドキュメンタリー番組。中でも『ドキュメント72時間』『NHKスペシャル』は何が起こるかわからない展開がたまりません。密着取材ならではのハラハラ感…! NHKにだけ見せる一般人のリアルな顔…!

 

インターネットで何でも知った気になれる時代だからこそ、ノンフィクション取材で切り取った「人間の面白み」や「未知の文化」を覗き見る価値はあるなーと。取材対象の深い部分に入れば入るほどに好奇心を刺激されます。

 

その密着取材の究極系が…

 

『NHKスペシャル 大アマゾン 最後の秘境シリーズ』です!

 

http://nuwton.com/assets/uploads/2016/07/df02eb0b70668b40e9b630767a9706cc.png

・第1集「伝説の怪魚と謎の大遡上」

http://www.nhk.or.jp/special/amazon/series1/about/

・第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」

http://www.nhk.or.jp/special/amazon/series2/about/

・第3集「緑の魔境に幻の巨大ザルを追う」

http://www.nhk.or.jp/special/amazon/series3/about/

・第4集「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々

http://www.nhk.or.jp/special/amazon/series4/about/

 

business.hatenastaff.com

 

昨年から「NHKみたいな取材力を持った媒体にしたい!」とあちこちで話してたこともあって、今回はNHKスペシャル『大アマゾン 最後の秘境シリーズ』の魅力をただただ語りたいと思います。このNHKの取材力は異常…!!

 

 同僚のギャラクシーに魅力を伝えてみた

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「ギャラクシーさん、大アマゾン最後の秘境シリーズ観てますか?」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「え、観てないです。何ですかソレ」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「えー!ライター編集者を名乗っていて観てないんですか!? 好奇心をエネルギーに変える僕たちの生業で、こんなにも深い取材をしているドキュメンタリー番組を観てないだなんてありえない。ジャンプでHUNTER×HUNTER読まないようなもんですよ。ファミ通でクロスレビューを読み飛ばすようなもんですよ! あと、なんで同じような帽子かぶってるんですか!!」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「そんなに責め立てられるほどの罪を犯してるんですか」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「僕が裁判官なら懲役18年ですね」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「重っ!!」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「過去3回は放送済みなんですが、NHKオンデマンドでも観れるのでざっくり紹介します」

 

第1集「伝説の怪魚と謎の大遡上」

f:id:kakijiro:20160722114242p:plain

僕は小学生の頃に熱帯魚を飼い始めて、阪神大震災で水槽がぶっ飛んだ経験を持つんですが…。それ以来、熱帯魚に対する憧れがくすぶったままなんです。「いつかアマゾン川で本場の熱帯魚を見てみたい。特にコリドラス(小さなナマズみたいな魚)!」という夢を抱いていて、その欲求が少し満たされた自分得な内容でした。

 

 

f:id:kakijiro:20160722114251p:plain

川を逆流(遡上)する魚の生命力。乾季の川に取り残されて、口をパクパクと開けて息絶えていく魚の群れ。巨大魚ピラルクーを追い求める原始的な人間の姿。アマゾン川を舞台にありとあらゆる生き物が本能的に暴れまわる姿を見て、「これぞ生命力!」と膝を打ちました。あと4Kカメラのおかげでとにかく映像が綺麗です。家電量販店の最新テレビでボーッと眺めたくなるやつ。ドキュメンタリーと高画質の相性が良すぎます。

 

 

第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」

f:id:kakijiro:20160722114118p:plain

続いてネット上でも話題になった黄金を求める荒くれ者「ガリンペイロ」の回! いやー、アマゾンの奥地では一攫千金を狙った男たちがいまだに存在しているんです。NHK取材班が危険すぎる集団に50日間(!)も密着。精神と時の部屋で過ごすよりツラそう。

 

 

f:id:kakijiro:20160722114137p:plain

観ていて一番危険を感じたのは、腹に大きな傷を持つ男「ブッシュ」。「お前ら日本人か? 人を殺したことはあるか? 俺はあるぜ」と大きなナタを持ちながら近づいてくるシーンがヤバすぎます。

「俺の生きる目的は、親父を殺した男を見つけて復讐することだ…」って漫画みたいなことをキマった顔つきで言ってくるわけです。なんなんだよ、もう。野蛮すぎるだろ。左腕曲がりすぎじゃない? 肘から武器が飛び出るタイプ? どうしたのよもう!!

 

しかも、彼らが必死に働いて採れる黄金の量はごくわずか。日銭感覚で採った黄金で毎日ビールを飲んで暮らすガリンペイロの生き方は、環境や目的が違えど昭和ドヤ街のオジさんと大差がないのかもしれません。感情移入するとまたおもしろいです。

 

 

■第3集「緑の魔境に幻の巨大ザルを追う」

f:id:kakijiro:20160722114414p:plain

アマゾンの猿は特異な進化を遂げている。森林の中を身軽に動きまわる必要があるため、子猫ぐらいのサイズがほとんどで。1m以上の猿を南米で発見した事例は歴史上ゼロにも関わらず、「人間ぐらいの巨大猿を見たことがある」という噂話が後を絶たないそうです。

 

そこに目をつけたNHK取材班は巨大猿を求めて未開の地へ。100年前に捕獲された推定157cmの猿「通称=モノス」の真偽を引き合いに出しながら、構想3年、取材期間2年、撮影データ11テラバイトに及んだ取材の軌跡を追うことができます。これだけ「待ち」に特化したドキュメンタリーってだけで僕はゾクゾクするんですが、待ち続けた故の貴重なシーンが見事です。人間が持つ忍耐力の限界を超えてるというか。

 

 

f:id:kakijiro:20160722114434p:plain

「進化の過程でそんな顔になる必要があるの?」っていう珍しい猿の姿や塩分(=ミネラル)補給するために泥を食べる動物たちの姿など、幼少期に生き物図鑑を食い入るように見ていた過去の瞬間と重なる興奮がありました。世の中にはまだまだ未発見の生き物がいると考えるとワクワクせざるを得ません。

 

もっと珍奇な生き物を見せてくれー!!

 

 

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「柿次郎さんの興奮はよく伝わりました。もっと改行しろよ!って思うくらいに」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「改行なんて不要でしょ。文字の壁をあえてぶつけたい。で、第4集の『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』が7月31日(日)に放送されるんですよ!」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「はいはい。面白そうなタイトルですね」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「僕がこうやってNHKのドキュメンタリーはすごい!とあちこちで喋ってたらですね。ガリンペイロとイゾラドを担当したNHKの国分ディレクターに取材できることになったんですよ。言い続けることって大事だなぁと」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「えー! 言霊の力!」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「こんな嬉しいことはないじゃないですか。国分ディレクターといえばNHKスペシャルの衝撃作『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』を作ったNHKの伝説的な人です。なんたってアマゾンの奥地に住む部族と計150日間、同じ原初の生活を共にした映像ですからね。『え、えー!?』っていうシーンばかり」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「噂では聞いたことのある番組ですね」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「生まれた赤子を人間として育てるか、精霊に返すか…その判断を母親一人が決めるんですけど。精霊に返す場合は生まれたばかりの赤子を殺して、白蟻の巣に置いて火を放つ。この字面だけを見ると無惨な情景を思い浮かべるかもしれませんが、シャーマニズムの宗教観の中で、原初の生態系を維持するために必要な儀式とも言われています。現代の物差しでは決してはかれない。もしかしたら、閉ざされた世界で生きてきた人類にとって珍しいことではないのかもしれません。生と死の価値観が大きく揺さぶられる傑作ドキュメンタリーだと僕は思います。詳しくはNHKオンデマンド、もしくは国分ディレクターの著書『ヤノマミ』を読んでみてください。書籍の方が主観性があって生々しい描写に引きこまれますよ!」

 

ヤノマミ (新潮文庫)

ヤノマミ (新潮文庫)

 

 

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「今日はやけに長々と語るなぁ〜!」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「というわけで、国分ディレクターへの取材、そして執筆は任せました」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「え? 僕がやるんですか?」

f:id:eaidem:20160721180126p:plain「はい。僕は編集の立場でしっかりサポートしますので。僕が前衛に立つとバランス崩れると思うんですよね。熱量がありすぎて前のめりになっちゃうというか。あと、ジモコロの編集長業務が忙しくて。書いてない記事が5本ぐらい溜まってるんですよね。いやー、大変大変。いっちょ、お願いします!」

f:id:eaidem:20160721180135p:plain「……」

 

 

 

 

f:id:kakijiro:20160722115017p:plain

というわけで、今回は『NHKスペシャル 大アマゾン 最後の秘境シリーズ』の魅力を語ってみましたが、7月28日(木)公開のジモコロでNHKの国分ディレクター(写真右)&菅井カメラマン(写真左)への取材記事を公開予定です。

 

f:id:kakijiro:20160722115421p:plain

7月31日(日)21時放送の『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』に繋がる貴重なインタビューをお届けします!

 

第4集は、文明社会と接触したことがない“原初の人々”を追う。

アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯にいるという彼らは、部族名も言語も人数もわからない。「隔絶された人々」という意味の『イゾラド』と呼ばれる謎の先住民族である。

いま、そのイゾラドの目撃情報が相次いでいる。森に猟に入った若者が弓矢で腹を射抜かれた。川辺で遊んでいた少女の足元に数本の矢が飛んできた。イゾラドの集団にとり囲まれた村からSOSが発信された…。

なぜ彼らは、文明社会の領域に、突如姿を現すようになったのか。取材班は、ペルー政府との交渉の末、イゾラドを監視する複数の最前線基地に、テレビ局として初めて滞在。森の彼方から聞こえてくる、「知られざる、しかし私たちと同じ人間の声」に耳を澄ました。

 

 

 

f:id:kakijiro:20160722115117p:plain

2時間を超えるロングインタビュー。

話がおもしろすぎて、二人とも魂が抜けたような顔になってしまいました。

 

 

お楽しみに!

 

 

●NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」

f:id:kakijiro:20160722115511p:plain

http://www.nhk.or.jp/special/amazon/

 

 

書いた人:徳谷 柿次郎

f:id:kakijiro:20160511170425j:plain

ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916


哲学はすでに溺死していた?『現代の全体をとらえる一番大きくて簡単な枠組』を読む

$
0
0

f:id:eaidem:20160727195244p:plain

 

 須原一秀「現代の全体をとらえる一番大きくて簡単な枠組」

“現代の全体”をとらえる一番大きくて簡単な枠組―体は自覚なき肯定主義の時代に突入した

これは「西洋哲学史」を扱った本である。

しかし、「哲学の入門書」ではない。

なぜ入門書ではないのか? 

この本は、哲学はすでに「溺死」したと主張しているからだ。

歴史上、「哲学」と呼ばれた運動はすでに終わっており、それは一部の人間にとっては常識なんだが、大半の人はまだ「哲学」が存在していると思いこんでいる。だからその誤解をときたい、というふうにこの本は始まるのだ。

変な本である。

私はこの本を、「哲学って要するに何なんだよ?」「自分と関係あんのか?」と疑問に感じたことのある人にすすめたい。

ということで、内容の紹介である。

 

「思想」を5×2に分類する

「哲学はすでに溺死している」という話に入る前に、「そもそも哲学とは何なのか?」という話である。

著者の須原一秀は、「思想」と「哲学」を分けることを提案する。

「思想」とは何か?

それは、人々の色々な「ものの考え方」のことである。「思想」は日々の雑談にも、ネットの書き込みにもあふれている。誰だって思想を持っている。それは単なる「ものの考え方」だから、とくに珍しいものではない。

須原は、代表的な「思想」を5×2に分類している。

 

個人主義ー全体主義

結果主義ー心情主義

科学主義ー神秘主義

真実主義ーソフトウェア主義

肯定主義ー否定主義

 

これは現代に生きている人ならば誰でも「実感」できる思想だという。

 

「主義」という言葉が大げさに響くなら、「個人主義ー全体主義」を「個人を優先する考えー全体を優先する考え」としてみればいい。「全体」というのも、「国家」ではなく、「家族」や「会社」とすればいい。するとピンとくるはずだ。これは、「自分を優先するか、みんなを優先するか」という昔からある対立に名前をつけたものなのである。

 

「結果主義ー心情主義」も分かりやすい。「結果が出ないと意味がないよ」と考えるか、「それでも頑張ったことを評価してあげたいよ」と考えるかの対立である。

 

「科学主義ー神秘主義」の場合は、「科学がすべてを説明してくれるはずだ」と、「科学で説明しきれない神秘的なものがあるはずだ」の対立だろう。

 

「真実主義ーソフトウェア主義」の「ソフトウェア主義」は、「人それぞれだよね、色々と条件も違うんだし」という考え方のことである。SMAPの『セロリ』に歌われた「育ってきた環境が違うから、好き嫌いはいなめない」というやつだ。相手と意見が一致しない時、こう考える人は多いのではないか。

 

「肯定主義ー否定主義」は少し分かりにくい。

須原は、「人間の不合理なところ」を丸ごと肯定することを肯定主義、否定するならば否定主義としている。例えば、人間には暴力的な面もあれば、嫉妬深い面もある。怠惰な面があれば、勤勉な面もある。馬鹿かと思えば、賢明だったりする。そのようなゴチャゴチャしたものを「そのまま肯定する」ことを、須原は「肯定主義」と呼んでいる。

逆に、そういった人間の多様な側面のうち、ある部分を強く否定しようとするならば、「否定主義」ということになる。よって、「暴力は絶対にいけない」とか「不倫は何があっても許されない」という発想は、ここでは否定主義と呼ばれることになる。

 

以上の「5×2の思想」は、誰でも無自覚に採用しているものである。

同時に、人はその場に応じて、矛盾する「思想」を平気で使っている。例えば、「結果がすべて」と豪語するオッサンが、小さな娘の描いてくれた稚拙な似顔絵を見て「その気持ちが嬉しい」と涙するように。

 

「哲学」と「思想」はどう違うのか?

さて、ようやく「哲学」である。

「思想」と「哲学」はどう違うのか?

「哲学」は、上記の「思想」を厳密に学問化したものなのだ。「厳密に学問化」すると何が変わるのか? 「思想」の時のように、平気で矛盾していることはできない。考えの根拠をたずねられて、「なんとなく」と言うことも許されない。それぞれの言葉には、明確な「定義」も必要になるだろう。

途端にハードルが上がるわけである。

 

「哲学」においては、「結論を急がなくてもいいじゃないか」「考えるプロセス自体が哲学なんだよ」という主張も却下されるべきだと須原は主張している。

それは「人生論」とか「科学論」とか「学問論」などと呼ぶべき評論活動の話であり、学問としての「西洋哲学」の話ではないことになります。事が「西洋哲学」に及ぶかぎり、そんな控え目でかわいらしい知的活動ではないことは、多少本気で「西洋哲学」に接したことのある人なら知っているはずです。

「哲学」という運動の根幹には、この徹底性があった。それは、対立する様々な「思想」に最終解答を与えることで完全に終わらせてしまおうとする「傲慢なプロジェクト」だったのだ。

 

しかし冒頭で言ったように、そのような「傲慢なプロジェクト」としての哲学はすでに死んだのだと須原は言う。

 

哲学の一度目の溺死、そして復活

歴史上、哲学は二度死んだ。

一度目はどこで死んだのか? 

古代ギリシャで生まれ、古代ギリシャで死んだ。

何が哲学を殺したのか?

「キリスト教」である。

打ち寄せるキリスト教の大波にのまれて、老衰気味の古代ギリシア哲学は溺死します。これがギリシア哲学ほぼ1000年の顛末であり、最初の「哲学溺死事件」です。

その後、中世の暗黒時代を経て、ルネサンス期に「哲学」は生き返った。

 

復活した「哲学」は、「経験を重視する立場」と「理性を重視する立場」の二つの流れとして進み、カントによって「統合」された。しかし須原の分類では、カントは「ソフトウェア主義」と「ストア主義(≒神秘主義)」の合成理論にすぎないという。

その合成の手さばきはなかなか巧妙なものですが、内容上、コンピュータ学者にも、認知科学者にも、あるいはストア主義的現代人にも、当面すぐに参考になるものはない、と言わざるをえません。(中略)一般の人があの膨大で難解な内容を制覇して、その苦労に見合うものが見つかる当ては非常に低いと私は考えます。

 

ニーチェについて

そして十九世紀に突入する。

ここではニーチェについて、「今でも人気がある思想だから」ということで、例外的にページを割いて批判検討されている。

一言で言えば、ニーチェはギリシア的・貴族的・肯定主義者なのですが、十九世紀のドイツという時代背景と彼自身の個人的事情のせいで気持ちが屈折し、必要以上に肯定主義とソフトウェア主義を強調しすぎます。

その結果、ニーチェは普通の人間の普通の生き方を「必要以上に否定する」傾向があるんだが、

肯定主義を称揚するあまり、天下無敵のスーパーマンのように、あるいは無邪気に遊び戯れる子供のように、純粋に永続的に肯定主義を生き切れるかのような幻想を抱くあたりで、ニーチェは嘘っぽくなるのです。

須原は、いまだにニーチェが人気なのは、その文章が「誤解や曲解を煽るように」書かれており、読み手に「窮屈な市民的日常から脱却させてくれそうな幻想を抱かせる」ところにあると指摘する。

 

しかし、実際のニーチェの生活はニーチェの思想とは程遠いものだった。中年期において、ニーチェは十六歳年下の女に恋をしたのだが、「一度はキスくらいしたかもしれない」関係になっただけで、最後は完全にフラれてしまうのである。

しかし、著作では露骨な女性蔑視と、思いっきり背徳的な言葉を吐き散らかしているのがニーチェです。しかも、本能が道徳に勝つべきこと、そのためには「同情」などまったく無用とまで言うのがニーチェの根本思想です。

徹底的に考え抜いた結果、そこまでの哲学に到達していた四十歳に近い男が、生涯最大の恋愛の最中に、二人きりのチャンスはいくらでもあったはずなのに、強姦とまでは行かないまでも、多少強引な、あるいは詐欺的な行為に及ぶこともなかったらしいとすれば、私たちはどのように考えればよいのでしょうか。

さらに、

この背徳の哲学者は、それ以外にもとくに傍若無人な振舞いに及ぶこともなく、結局、「善良な一市民」として、母と妹以外にあまり周囲に迷惑をかけることもなく、怒りっぽい――ということは、かなり欲求不満の――独身生涯を閉じたらしいと知る時、「なんだ、口ばっかりか」と思ってしまうのは私だけではないはずです。

 

〇哲学の二度目の溺死

そして二十世紀を迎える。

二十世紀は新しい哲学を生まなかった。二十世紀前半では、フッサール、ハイデガー、論理実証主義者たちが、これまでの哲学の半端さを改善するために立ち上がり、「基礎からの哲学の再構築作業」に取りかかったのだが、「三者ともに見事に失敗」してしまったという。

この失敗によって確認されたことは、十九世紀までのすべての哲学が学問的に弱くて半端であること、それにもかかわらず、それを「改善する道筋」も、「抹消してしまう手続き」も誰にも確立できないということでした。

 

その後、哲学者たちは試行錯誤を繰り返すが、とくに結果の出ないままに時は過ぎてゆき、それぞれがそれぞれの専門領域に、つまり「狭苦しいタコツボの中に」入りこんでしまった。須原は、自分の所属する「分析哲学」が特にそうだったと率直に認めている。

このような挫折で気力・体力が弱っている時に、第二次世界大戦後に大きくうねり出した「大衆肯定主義」の大波が襲ってきます。その大波に対する否定主義的・教養主義的抵抗運動とともに、数度の浮き沈みを経由した後、結局、哲学は溺死してしまいます。

これが二度目の「哲学溺死事件」です。

ルネサンス期に息を吹き返したはずの「哲学」は、つまり「真理を求める運動」は死に、現在も生き返っていない。人々は今でも昔と変わらない様々な「思想」を持っているが、それに「最終解答を与えようとする挑戦」は終わったのだ。

 

「現代哲学」というものは、どこにも存在しないと言うべきです。存在するのは、「古代からの何の変哲もない十種類の思想」と「それらの相互批判と自己弁護」だけだったのです。

「哲学の二度の溺死」を駆け足で記述し、「哲学の不成立」を確認した須原は、「現代が出口のない時代に見えるのは、単に出口から出てしまったからだ」と主張する。そして、「様々な考えが乱立する猥雑で不潔な民主主義」を肯定する。こうして、書名である「現代の全体をとらえる一番大きくて簡単な枠組」が提示されるのだが、さすがにこの紹介は長すぎる。あとは実際に本で読んでみてください。

 

〇須原一秀の自死について

最後に、著者の須原一秀について少しだけ。

この本は2005年に出版されたが、翌2006年、須原は「一つの哲学的プロジェクト」として自死を敢行した。その経緯は、死後に出版された「自死という生き方」に書かれている。興味のある人は読んでみてください。自分の死を扱っているのに妙な明るさがあって、こちらも面白いですよ。

 

“現代の全体”をとらえる一番大きくて簡単な枠組―体は自覚なき肯定主義の時代に突入した

“現代の全体”をとらえる一番大きくて簡単な枠組―体は自覚なき肯定主義の時代に突入した

 

 

 

自死という生き方 (双葉新書)

自死という生き方 (双葉新書)

 

 

<過去のコラムはこちらから!>
f:id:eaidem:20160701185807j:plain

 

 

ライター:上田啓太

f:id:premier_amour:20160212111940j:plain

京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (04) - 警視庁24時/忘却先輩

$
0
0

f:id:eaidem:20160628120135p:plain

 

<ポテン生活|一覧>

 

f:id:eaidem:20160727195245j:plain

f:id:eaidem:20160727195246j:plain

f:id:eaidem:20160727195247j:plain

f:id:eaidem:20160727195248j:plain

<ポテン生活|一覧>
前回

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

★木下晋也先生の人気作「おやおやこども。」のLINEスタンプが発売されましたよー!

子育て中の方にも、そうじゃない方にも、使いドコロが多すぎるゥゥ~!

f:id:eaidem:20160727195251j:plain

 

書いた人・木下晋也

f:id:eaidem:20160322122138j:plain

1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『もここー』全2巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。Twitterアカウント→@kinositasinya

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

自腹で情報発信! 熊本震災支援イベントに「100人のライター」が集まった結果

$
0
0

f:id:eaidem:20160726144221j:plain

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

最高のお風呂から失礼します。源泉掛け流しの贅沢な温泉。湯の花も浮かんでいるフレッシュな泉質。全国あちこちの温泉に浸かっていますが、黒川温泉の旅館「深山山荘」は別格ですなぁ。いやぁ、熊本に来て良かったなー!

 

さて、なぜ僕が熊本県南小国町にある黒川温泉を訪れているのか?

 

理由は、ただひとつ!!

 


熊本震災支援イベントとして熊本県南小国町の名所「黒川温泉」に100人のライターを集めて、自腹でお金を落として、情報発信をするためです。

すべてのきっかけは、モヤモヤした感情を抱えていたカメントツとの熊本震災取材。現地の人のリアルな声を聞いて、居ても立ってもいられなくなりました。

 

f:id:eaidem:20160725162716j:plain

f:id:eaidem:20160725162719j:plain

 

 

いや、最初は思いつきのアイデアだったんですよ。自腹で熊本まで来てもらって…。まぁ、100人も集まるわけないよなぁ。頑張って50人かな?って。そしたら提案した数日後、南小国町の高橋町長が「やりましょう!」って。あれ、熊本にも孫正義レベルの爆速決断を下す人がいたの…?

 

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/e/eaidem/20160519/20160519175358.jpg

2015年。16年ぶりの町長選挙で、圧倒的大差で当選した高橋周二町長!

f:id:eaidem:20160726195140j:plain

 

 

とりあえず日程、イベント概要、ルールを決めてFacebookページを作成。「50人がいいところじゃない?」なんて弱気になった瞬間もあったんですが、黒川温泉側の本気度も次第に増していって最終的には100人以上の参加希望者が…! 

 

f:id:kakijiro:20160715013309p:plain

しかも、東京在住の人だけではなく、京都や静岡、岡山、福岡、沖縄在住の人も参加してくれました。すごいぜ、インターネット!!

 

黒川温泉の本気のおもてなしプラン

f:id:kakijiro:20160721002515j:plain

・阿蘇くまもと空港⇔黒川温泉の往復送迎バス稼働

・到着後、地元のおばちゃんが本気出したドカ盛り山菜弁当

・南小国町の伝統芸「吉原神楽」お披露目

・熊本グルメ食べ放題、飲み放題の大宴会

・黒川温泉の人気旅館 宿泊(1泊2日)+朝食

・黒川温泉の湯めぐりパス(3カ所自由に入れる)

・特別に用意された6種類の体験アクティビティ(昼食付き)

・お土産チケット 3,000円分


これだけ贅沢な内容にも関わらず…1名=30,000円ポッキリです。

黒川温泉側が赤字になっては本末転倒。受け入れ側の工夫とおもてなし精神で、「せっかく東京から100人も来てくれるんだから、頑張らんといけん!」と夜を徹して準備してくれていたようです。覚悟には覚悟で応える。

 

…で、当日を迎えたところ。

 

 

f:id:kakijiro:20160721002852j:plain

f:id:kakijiro:20160721002856j:plain

f:id:kakijiro:20160721002859j:plain

f:id:kakijiro:20160721002915j:plain

本当にみんな来ました。

阿蘇くまもと空港に100人が集結する感じ、主催者としてゾクゾクしましたね。

 

早速、阿蘇山のカルデラがお出迎え

熊本県が誇る阿蘇山。カルデラの広大な景色に参加者一同、「ウオオォォォォ」とローマ兵みたいな唸り声で感動を表現していました。

 

その後、南小国町役場に着いたら昼休憩。地元のおばあちゃんが奮発して作ってくれたというお弁当は…

 

f:id:kakijiro:20160721004123j:plain

山菜尽くしの豪華弁当!

 

 

オープニングセレモニーと吉原神楽の熱演

f:id:eaidem:20160721011337j:plain

南小国町のことを参加者に知ってもらうべく、全力歓迎のオープニングセレモニーへ。

 

f:id:eaidem:20160721011339j:plain

主催者でありながら僕自身、こんな立派なホールがあるのも知りませんでした。高橋町長による立派なスピーチで場の空気が変わっていきます。熊本地震による被害の現実。南小国町が抱える大きな観光資源「黒川温泉」も、震災発生から約一ヶ月で41736人のキャンセル。その推定被害額は10億円を超えるとも言われています。

 

f:id:eaidem:20160721011340j:plain

100人の参加者も、ジモコロの記事を含めた各報道で目にしていたでしょう。しかし、その土地でその当事者の声を聞くのとは大きな違いがあるものです。現に高橋町長の力強い言葉に耳を傾ける参加者の顔は真剣そのもの。この体験1つで震災に対する意識が変わるはずです。

 

f:id:eaidem:20160721011345j:plain

f:id:eaidem:20160721011352j:plain

f:id:eaidem:20160721011349j:plain

 

 

 

 

f:id:eaidem:20160721011351j:plain

変な仮面をかぶって感情が読めないけど、真剣な表情をしてると思います。

 

もうこれだけでオープニングのトークは充分。誰もがそう思っていたはずです。僕自身もそう思い込んでいたのですが…

 

司会「ここで最後に、今回の企画を考えてくれたジモコロ編集長の柿次郎さんからご挨拶があります」

柿次郎「…!!(聞いてない)

 

f:id:eaidem:20160721011353j:plain

突然の無茶ぶり…この写真がすべてを物語っています。そう、私の頭は完全に真っ白でした。「町長から柿次郎」。なにかしら格が落ちる類の諺だと思うんですが、賢明に言葉をひねり出した記憶があります。

このイベントに至った経緯、そして熊本県には母方の親戚が住んでいて他人事ではないこと。決して一人の力では、この日を迎えることができなかったこと。白い光に包まれながら、気の利いたことも言えずに数分の時間が流れました。

 

f:id:eaidem:20160721013321j:plain

同僚の山口むつおは、途中居眠りをした後にスマホをいじってました。

 

 

f:id:eaidem:20160721011357j:plain

気を取り直して次は、南小国町に伝わる神々の舞「吉原神楽(よしわらかぐら)」が披露されました。南小国町役場職員である橋本哲典さんが徹夜で作った紙芝居映像を見るとストーリーが理解できると思います。

 

切り絵、文、編集の作業を一人でこなしたという超力作!

さらに橋本さんは、吉原神楽の演舞にも参加。今回のイベント全体の仕切りからセレモニーの司会、映像制作、演舞まで…とんでもないクリエイティブな職員でした。

 

f:id:eaidem:20160721011400j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011404j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011406j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011407j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011358j:plain

平たく言えば、神様の前で踊りふざけて、何とか降臨してもらおうという話。どこかコントっぽい動きがあるな…と思ったら間違いでもなかったようです。

 

 

各自の宿で黒川温泉の湯めぐりを楽しむ

f:id:eaidem:20160721011418j:plain

オープニングセレモニー終了後は、各自が泊まる黒川温泉の宿へ。黒川温泉は元々、昭和のネオン全開の温泉街だったそうですが、約30年前に景観やコンセプトを統一すべく一新。「黒川一旅館」というテーマを設けて、運命共同体としての温泉街に舵を切ったそうです。その成果が現在の黒川温泉ブランドに繋がってるんですね。

 

f:id:eaidem:20160725165047j:plain

一説には「露天風呂の元祖」とも言われていて、オープンシェアの発想で全国に露天風呂の普及に貢献しているのだとか。また、「温泉手形」(1,300円)を買えば旅館の垣根を越えて3軒まで露天風呂に入浴可能です。7種類もの泉質がある豊富な温泉資源。さらに各施設で割引サービスもあるっていう…お得すぎるサービス!

 

 

 

 

f:id:eaidem:20160721011427j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011428j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011430j:plain

その後、総勢150人規模の大宴会がスタート!

 

f:id:eaidem:20160721011447j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011453j:plain

黒川温泉の皆さんによる和太鼓の演奏!

 

 

 

f:id:eaidem:20160721011512j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011507j:plain

  

f:id:eaidem:20160721011508j:plain

みんないい感じにベロベロに酔っ払ってるんですが…

ここで場の空気をガラっと変えるLIVEがスタート。

 

f:id:eaidem:20160721011517j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011515j:plain

Tシャツ、短パン、裸足スタイルで登場したのは、黒川温泉を舞台にした映像作品「KUROKAWA WONDERLAND」で音楽全般を担当したアーティストの[.que]くん。

 

f:id:eaidem:20160721011518j:plain

 

彼が熊本震災を受けて制作したチャリティーソング「Hope」。黒川温泉の人たちにとって、いわゆる「泣き」のスイッチが入ってしまう想い入れの強い曲なんです。決して諦めず、前向きに希望を追い続ける熊本県民の強さと重なり合う数分間。生演奏の臨場感もあいまって、騒がしい宴の空間が落ち着いた雰囲気に切り替わっていきます。

 

ジ〜ン

 

大きな拍手の後、黒川温泉旅館組合・組合長である北里有紀さんの締めの挨拶が。震災直後から大きな重圧を背中に背負って、この日を迎えていました。

 

f:id:eaidem:20160725202725j:plain

 

 

 

f:id:eaidem:20160721011523j:plain

 

 

 

f:id:eaidem:20160725202728j:plain

 

 

 

f:id:eaidem:20160721011545j:plain

 

f:id:eaidem:20160721011547j:plain

その場にいなければ、伝わらない感動かもしれません。

ただ、未曾有の震災に巻き込まれた北里有紀さんも一人の女性です。組合長として弱音を吐かず、周囲に元気を分け与えながら、この日を迎えていたのは想像に難しくありません

前日から始まった「九州ふっこう割」と「ジモコロ震災支援ツアー」。それまで張り詰めていた緊張の糸が切れたんでしょう。くううう。こんな姿が待っているだなんて。[.que]くんの生演奏も前フリとして相当効いていたと思います。恥ずかしくて写真は載せませんが、僕も目が真っ赤っかになってました。

 

こんなの誰でも泣くから!

 

心揺さぶられるから!

 

 

f:id:eaidem:20160721011617j:plain

2日目の南小国町ツアー(全6種)も最高だったんですが、詳しくは参加者の各メディアやブログ、Toggterまとめをぜひ読んでみてください。この同時情報発信が今回のプロジェクトの肝なので! みんなの熱量がすごい!

 

●熊本の温泉郷がクリエイターと手を組んだ理由|黒川温泉旅館組合・組合長が語る、地域に光を照らすつながり(製作:CAREER HACK 田中嘉人さん)

 

●クリエイターのあなたが被災地のために出来ること。熊本地震から3ヶ月たった今(制作:はたらくビビビット 後藤あゆみさん)

 

●けんちく目線で見てみよう!「南小国町役場」(制作:haconiwa 箱庭 タナカユウキさん)

 

●【熊本震災支援イベント】黒川温泉に100人集めて「お金を落として」「情報発信しよう」に参加してきました!(一日目)(制作:しゃかいか! 加藤洋さん)


●【観光での熊本支援】ジモコロ熊本復興ツアーに参加して、自然と温泉と料理を満喫してきた【大人の夏休み】(制作:ネタりか ヨシキさん)


●イベント参加者のtogetterまとめ(制作:椿原真さん)

 

 

f:id:eaidem:20160801101124j:plain

なんにせよ思いつきで「熊本に100人集めて、自腹で泊まって、情報発信します!」と言ったことも、たったの一ヶ月で実現できました。細かい計算を抜きにして、物事をシンプルに考えてみる。その強い想いだけで意外と人は動くのかもしれません。

 

f:id:eaidem:20160801101144j:plain

f:id:eaidem:20160801101147j:plain

まだまだ熊本復興の道のりは長いと思いますが、人間ひとりがやれることをこなしていくしかないでしょう。今回の企画を目にして「黒川温泉に行ってみたいな」と思った人は、軽い気持ちで訪れてみてください。現地に行かないと気づかないこと、出会えないこと、考えつかないことが山ほどあるはずです。

7月〜9月に九州旅行する人向けの「ふっこう割」(売切続出!)、ETC利用で高速道路が大幅割引となる「九州観光周遊ドライブパス」(事前申し込み必要)などを駆使して、熊本県に旅行してみてはいかがでしょうか。

 

f:id:eaidem:20160725210239j:plain

現地で多大なおもてなしをしてくれた南小国町の皆さん。そして、全国から集まってくれたツアー参加者の皆さん。読者の皆さん。改めてありがとうございました。

この記事を含め、各メディアの記事をシェアすることが南小国町・黒川温泉の応援に繋がります。気に入った記事があれば是非ご協力ください。

 

最後に共同主催者である田村祥宏のダイジェストムービーをどうぞ

 

Photo by : Kenichi Aikawa

Movie by : EXIT FILM

Music by : [.que]

Special thanks : 南小国町観光協会黒川温泉観光旅館協同組合

 

※追記:2016年8月1日 17:00

山口むつお視点のジモコロ記事を公開しました!

 

 

 

書いた人:徳谷 柿次郎

f:id:kakijiro:20160511170425j:plain

ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916

漫画:カメントツ

f:id:eaidem:20150528145211j:plain

仮面を被った漫画家ライターゆえにカメントツ。オモコロでもマンガを描いているという噂がある。仮面凸ポータルから呼ばれればどんなときも予定があいてれば駆け付けるぞ。Twitterアカウント→@computerozi

 

ぼくはこの黒川温泉の体験記で、熊本復興のチカラになれるだろうか

$
0
0

f:id:eaidem:20160729181020j:plain

こんにちは、山口むつおです。夫婦で失礼いたします。

 

2016年7月2日、熊本県の黒川温泉に行ってきた。
ジモコロ編集長である柿次郎が「100人で熊本に行こう」と突然言い出したためだ。

 

www.e-aidem.com

 

前々から「熊本の黒川温泉はめちゃくちゃいいよ」と、行ったことのある妻から聞いていた。今回いい機会だということで、夫婦一緒に参加することにした。

 

それにぼくは兵庫県出身。21年前に、あの阪神淡路大震災で被災したことがあるというのも理由のひとつだ。

 

 

f:id:eaidem:20160801123836j:plain

神戸市東灘区、国道43号線岩屋交差点。写真は阪神・淡路大震災「1.17の記録」より。色んなものが壊れたり、燃えたりして、たくさんの方が亡くなられた。

 

ぼくが住んでいたのは兵庫県の中でも西宮市という、甲子園球場がある地域だ。神戸市の東灘区や長田区ほどの被害ではなかったのだが、それでもぼくの自宅は半壊してしまい、建て直しを余儀なくされた。

 

当時12歳の子供だったぼくに、兵庫県の復興に対して力になれるような事はなかった。ぜんぶ大人がなんとかしてくれたのだ。

 

だから33歳の大人になった今、何か力になれる事があればいいなという気持ちもあった。「100人が一斉に熊本へ行ってお金を使い、情報発信する」というやり方は、腕力にモノを言わせた、なんとも頭の悪い方法だけど、こんなにわかりやすく効果が出そうなやり方もないなと思う。 

実際、Twitterのトレンドワード入りしていた。

 

  

というわけで、今回のぼくの役目はとにかくポジティブ発信。これを読んでいるみなさんに「熊本へ行きたくなってもらうこと」だ。

熊本は景色良し、グルメ良し、温泉良し、人良しのいいところだった。

 

 

さあ、まいりましょう。 

 

 

 

インスタグラムが捗りまくる、カルデラが生んだ絶景

 まずぼくが目を奪われたのが、目的地である南小国町(黒川温泉があるところ)に向かう途中で出会った風景の美しさだった。

 

 

誤解を恐れずに言うと「嘘みたい」な景色だ。ツイートにも書いたけど、ほんとにRPGで魔王倒した後みたいな光景だった。

 

 そして熊本と言えば阿蘇。阿蘇といえばカルデラだ。カルデラっていうのは火山活動でできた凹地のこと。ベコーっとへこんでるところを縁の部分から見下ろしてみると……。

 

 

f:id:eaidem:20160721183744j:plain

 すごくないですか?ちなみに写真の女性は、同じく熊本復興ツアーに参加した石根さんという方。

広大な大地を山脈ぐるっと取り囲むこの光景は、日本ではここくらいしか見れないはず。誇張ではなく、こんなスケールの自然を見せられると、自分がどれほどちっぽけな存在なのかということを痛感させられる。

この石根さんも、すごいちっぽけに見えてくるから不思議だ。

 

 

f:id:eaidem:20160729175502j:plain

 こちらは進撃の巨人の映画ロケが行われた押戸石の丘。360度こういう景色が広がっている。「ファイナルファンタジー7で初めてミッドガルから脱出した時に見たフィールドみたい!」と思ったんだけど、誰か同意してもらえるだろうか。

 

 

f:id:eaidem:20160729180001j:plain

 

 

f:id:eaidem:20160801005849j:plain

 

 

f:id:eaidem:20160729181646j:plain

 どこを切り取っても絵になる、美しい町。とにかくインスタグラムが捗ると思う。「熊本最高」「黒川温泉最高」というメッセージとともに、どんどんシェアすればいいと思う。

 

 

 

熊本県のグルメ、全部うまい伝説

 

旅の醍醐味といえば、その土地の美味しいグルメ。熊本は美味しいものだらけだ。 

 

 

f:id:eaidem:20160719183544j:plain

熊本の伝統和牛である「あか牛」だ。今回はでっかい肉塊をジャベリンみたいな器具に刺し、これをモンハンよろしく、くるくる回して焼いていただいた。

 

 

f:id:eaidem:20160801001042g:plain

これがもう、とんでもなく美味い。

松阪牛のように、脂身の味を楽しむタイプの肉ではない。赤身と脂肪分のバランスが抜群で、いくらでも食べれてしまうタイプの肉だ。実際めちゃくちゃ食べた。

熊本では陸の生き物がやたら美味い。

 

 

f:id:eaidem:20160719190851j:plain

……と思ったら、魚もめちゃくちゃ美味かった。ジモコロ編集長の柿次郎が食べているのは、鮎の塩焼き。

 

 

f:id:eaidem:20160719191519j:plain

妻も美味しい、美味しいと言って喜んで食べていた。ぼくもまるまる1匹食べたかったのだが、あまりの人気でなくなっていた。妻に一口食べさせてもらったのだが、たまらない。嗚呼、もう一度食べたい。

 

 

f:id:eaidem:20160801001211j:plain

 

ああ……

 

 

f:id:eaidem:20160801001518j:plain

 

本当に熊本は、何を食べても……

 

 

 

f:id:eaidem:20160801120933j:plain

 

 

美味いんだなぁ……。

 

 

 

 

 

 

f:id:eaidem:20160729184033j:plain

さて、その中でも特に印象に残ったのがこちら。いったい何の魚かわかるでしょうか。

 

 

 

 

f:id:eaidem:20160731192340j:plain

正解は「鯉」。あの池とかで泳いでいる鯉だ。

今回特別に、鯉料理を体験させていただいたのだ。「結構ショッキングだと思うけど、大丈夫?」と、担当してくれたおばあちゃんたちは心配していたが……。

 

 

うん、確かに、結構ショッキングだった。

 

段取りはこうだ。
まずは鯉を陸に引き上げて、脳天を包丁で思いっきり峰打ちして気絶させる。

 

 

f:id:eaidem:20160729183130j:plain

気絶している隙にウロコを取る。とにかく、いかに臭みを出さないように調理するかが重要だそうで、死んでしまうと臭くなってしまうそうだ。だから気絶している間にさばく必要がある。

 

 

f:id:eaidem:20160729183312j:plain

ウロコをきれいにとったら、今度ははらわたを取り出す。特に胆嚢(苦玉とも呼ぶ)はつぶさないよう、慎重に。こいつを潰しちゃうと全身に苦味が回ってしまい、まるごと1匹アウトになってしまうらしい。

 

 

f:id:eaidem:20160801001912j:plain

とにかくたくさんの血を見ることになる。軍手が真っ赤っ赤になるのだ。これだけ大きい生き物とじかに対面すると、「命をいただく」という事について考えてしまう(大小の問題ではないのだけれど)。

おばあちゃん曰く、鯉をさばく事は小さい頃からやってきたけど、調理する時には毎回鯉に感謝をしてさばくようにしているそうだ。

 

 

f:id:eaidem:20160729183910j:plain

そして、先ほどの肝をのぞいた鯉は2度揚げし、刻んだ野菜がたくさん入ったあんをかければ……。

 

 

f:id:eaidem:20160729182648j:plain

完成。泥臭さはまったくなく、トロトロとした肉質ですんごいジューシー。白ごはんが進むタイプのやつだ。このほかに鯉こく(鯉の味噌汁)もいただいたが、こちらもまた美味しかった。

 

 

f:id:eaidem:20160731193144j:plain

ちなみにこの料理体験に参加していたWEB漫画家・カメントツは、その調理風景にショックを受け、ずっと米炊き当番をしていた(鯉料理はめっちゃ食ってた)。

 

改めて言うが、ここで口にするものは何でも美味しい。 山の幸海の幸問わず、ぜひ色々と食べてみてもらいたい。

 

 

 

手形で町の露天風呂をハシゴできる、すごい温泉地

f:id:eaidem:20160801130847j:plain

日本でも有数の温泉地である黒川温泉。ここは少し変わっていて、「入湯手形」というものを購入することができる。この手形を使うと、好きな宿の露天風呂をハシゴして楽しむことができるのだ。 この町全体が巨大な浴場だと思っていただければいい。

 

「旅館が単独で栄えても黒川温泉全体の発展にはつながらない」と考えられた結果、旅館同士が協力し合う形で生まれたのがこのシステムだそうだ。

 

 

 

町全体にあふれる情緒的な雰囲気もいい。この雰囲気を出すために、町全体で協力して木を植え替え、景観のために町中に立っていた看板を200本くらい撤去したらしい。もともとこの地域が持つ自然の美しさに加え、実は綿密に計算されたブランディングが施され、今の景観がある。

 

 

f:id:eaidem:20160801013139j:plainちなみに、こちらがぼくたち夫婦が泊めていただいた宿。

 

 

f:id:eaidem:20160801013232j:plain 

 

f:id:eaidem:20160731224853j:plain

めちゃくちゃ立派で、まわりの自然と一体になったような作りは趣があった。 今回は夫婦でやって来たということで、かなり良い宿をあてがってもらったのだ。おはからいに謝謝……!

 

 

f:id:eaidem:20160731224653j:plain

また、たいがいの旅館は露天風呂を備えている。ぼくの泊まった宿では、部屋ごとに露天風呂がついていた。いい気持ちだ。

実は今回、タイムスケジュールの関係でぼくは町中の温泉を回ることができなかった。次回行った際には、妻とゆっくりと温泉巡りを楽しみたいと思う。

 

 

 

いい人たちに出会えた、熊本県の黒川温泉

そして今回、こんな無茶な企画を本気にしていただき、受け入れていただいた黒川温泉の方々である。本当に、めちゃくちゃ楽しかった。今回の企画は自腹とは言いつつも、黒川のみなさんが本当にいろいろとサービスをしていただき実現したものだ。

 

 

f:id:eaidem:20160801003533j:plain

黒川温泉がある、南小国町の町長である高橋さん。話していると誰でもすぐに打ち解けてしまう、懐の深さがある方だった。

 

 

f:id:eaidem:20160801003436j:plain

黒川温泉観光旅館組合長の北里さん。なんと37歳の若さで、この責任のある役職についたらしい。帰りはぼくたちを空港まで送り届けるため、バスも運転してくれた。めちゃくちゃパワフルな方だ。

 

 

f:id:eaidem:20160801003554j:plain

あか牛を育てたり、ほうれん草やお米を作っている佐藤さん。吉原神楽を踊っていた中の人でもあり、途中ウトウトしていたぼくにプレッシャーをかけてきた(すみません)。

 

 

f:id:eaidem:20160801011616j:plain

宿に併設されていたバーのマスター。とにかく美味しいお酒を出すことを信条としていて、モヒートに入れるミントを庭で育て、摘みたてを使うこだわりぶり。でもその日は宿の人が雑草と一緒に刈っちゃったらしく、摘みに行ったもののテヘペロして帰ってきた。

 

  

f:id:eaidem:20160801003349j:plain

ぼくと同じ兵庫県からこの町に移住してきた山崎さん。なんせ柔らかい。

 

冒頭で話したように、 ぼくは過去に阪神大震災で被災した経験がある。大人になったぼくが何かできればと思いここ熊本にやってきたのだが、ここで暮らす人たちの熱い気持ちや暖かいおもてなしに、逆に元気をもらう格好となってしまった。

 

 

f:id:eaidem:20160801134001j:plain

地震による影響で、本当にお客さんが減ってしまった。震災からゴールデンウィークまでの間で、なんと4万2千人ものキャンセルが出たそうだ。
今は「九州ふっこう割」などの取り組みがなされ人気となっているけど、空いた期間の穴埋めやこれからの復興のことを考えると、まだまだ第一歩なんじゃないかと思う。

 

 

f:id:eaidem:20160801134741j:plain

現地で旅を楽しみ、お金を落とし、友達に「熊本良かったよ」と伝えることだと思う。そしてその経験は必ずあなたの財産になるはずだ。

 

 

JIMOCORO's Kumamoto Revival Tour from Yasuhiro Tamura on Vimeo.

 

この町は本当に自然も、グルメも、温泉宿も、人も良い町。みなさんも是非一度、黒川温泉を楽しんでみてください。ぼく以外にも、参加した100人が色々なメディアで、この黒川温泉について発信しています。

これがきっかけで「黒川温泉、今度行ってみたいな」と思っていただければ幸いです。

 

kurokawawonderland.jp

↑他の人の記事はここから見れます
 

 

f:id:eaidem:20160801003349j:plain

最後にもう一度、山崎さんの写真を貼っておく。おもしろいから。

 

 

関連リンク(公式ホームページとか九州ふっこう割とか)


 

書いた人:山口むつお

f:id:eaidem:20151104173910j:plain

株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。物忘れが激しいが、昔プレイしたゲームのパスワードはすらすら言える。

個人ブログ: むつおちゃんブログ
Twitter: @e_yamaguchi

 

ポケモンGO視点を無理やり交えて「奥浅草」の歴史を紐解いてみた

$
0
0

f:id:eaidem:20160803122331j:plain

 

はじめに

f:id:eaidem:20160803082627j:plain

こんにちは、ジモコロ編集長の徳谷柿次郎です。

聞くまでもないと思いますが、みんな「ポケモンGO」をやっていますでしょうか。まぁ、夢中ですよね。平成以降の歴史でこんなにも「乗っからないと損だ。恥をかく…!」と思わせるほどのムーブメントも珍しいでしょう。それも男女差、世代差を超えた社会現象。僕が務めるバーグハンバーグバーグも例外ではありません。

 

 

新宿御苑や代々木公園、世田谷公園など、都心部のスポットに大勢のユーザーが集まっている様子ですが、僕が住んでいる台東区の「三ノ輪駅」周辺はなかなか寒々しい状態になっていてですね。ほら、東京23区内で唯一の「民泊禁止!」を掲げる台東区じゃないですか。NOポケモンの看板でも掲げてんじゃないの?って疑いたくなります。

 

f:id:eaidem:20160803082628j:plain

まぁ、理由は分かるんです。なにせ、友人知人や取引先に「三ノ輪に住んでます」と言ったところで「ん?どこですか?」と、ピンと来る人の確率の低さときたら…。そんなときは「上野の右上あたりです」「浅草の左上あたりです」と説明するんですが、知名度の低い土地であることは間違いありません。

 

日比谷線で言えば「上野駅」→「入谷駅」→「三ノ輪駅」だよ!

 

三ノ輪の知名度が低いばっかりに自宅周辺でポケモンGOを満足に楽しめない。一方で、奥浅草とも言われた歴史ある三ノ輪周辺の土地がめちゃめちゃ面白いという自負がある。この二つの要素を掛けあわせて、ひとつ強い欲求が生まれました。

 

f:id:eaidem:20160803082646j:plain

 

ポケモンGOの視点を無理やり交えながら、三ノ輪の魅力を紹介したい!

 

三ノ輪に引っ越して丸二年。フィールドワークとして、図書館でこの土地の歴史を調べたり、民俗学の書籍を読みこんだり、老舗蕎麦屋の老夫婦に話を聞いたり、BARでお客さんに話かけたりなどなど、とにかく足を使って取材してきた情報を下地にしています。タモリ倶楽部的な感覚で読み進めてみてください。間違ってたらすみません。

 

歴史が深すぎておもしろい「吉原遊郭」

f:id:kakijiro:20151031222811j:plain

by Gryffindor

まずは三ノ輪を語る上で欠かせないのが、吉原遊郭の存在です。映画『吉原炎上』『さくらん』の舞台となった吉原遊郭は当初、日本橋人形町周辺にあって「元吉原」と言われています。この手の歴史に興味がなければ、知る機会もないでしょう。1657年に起きた「明暦の大火」で全焼。現在の奥浅草エリア・日本堤という土地に移されました。

僕が現在住んでいるのが、まさにこの周辺なんです。周辺というかモロですね。住む前は「治安が悪いんじゃないのか」「エッチな雰囲気がものすごく漂っているんじゃないのか」「給料を全部注ぎ込んでしまったらどうしよう」などと、覚悟を決めていたんですが実際に住んでみたら全然でした。いわゆる都市部の歓楽街と違って、街に溶け込んでるんですよね。

 

f:id:eaidem:20160801172311j:plain

ポケモンGOで見てみるとこのあたり。ポケスポットにもなっている「吉原公園」は当時、大見世の中でも最高クラスだった「大文字楼」がありました。いやー、歴史がありますね。

 

f:id:eaidem:20160803082649j:plain

ちなみにこの空間でポケモンGOをやっている人は皆無。異常におじさんが多いぐらいです。

 

f:id:eaidem:20160803082647j:plain

吉原公園の目の前にあるのが、こちらも大見世だった「角海老」。外観は豪華ですが、少し裏側を覗くと古い建物であることが分かります。というのも、吉原エリアは現代の建築法でアウトな部分が多く、一度壊すと再建築が難しいのだとか。当時の歴史についてはこのページが詳しいので興味のある人はどうぞ。

 

f:id:eaidem:20160803082644j:plain

この土地に住んでいて「ん?」ってなる違和感は、スモークフィルムの張られた送迎用自動車がやけに多いなとか、ビルの屋上に貯水タンクが異常に目立つとか。ならではの事情を察することはあります。

 

そんな吉原遊郭の歴史で印象的なのがこちら。

 

f:id:kakijiro:20151031233608p:plain

赤い線で囲んでいるのが吉原遊郭のエリアです。一見して土地の形がおかしいことに気づきませんか? 

実はこの土地に移転する際、「北枕は縁起が悪いから、真北を避けて全部屋を斜めに作ろう」となったそうです。そんな理由で土地の形状を変えるっておかしくない? 現代では考えられなくないですか? 

地図を俯瞰したときに、この土地だけ斜めを向いているのはそのためで、このあたりをウロウロしているとどの方角を向いているのか分からなくなります。不思議のダンジョンかよっていう。

 

明日から使える吉原マメ知識集

f:id:eaidem:20160803082642j:plain

こちらが吉原唯一の入り口だった「吉原大門」。風情もなにも残っちゃいませんが、歴史に想いを馳せるとタモリ倶楽部的な楽しみがあります。

 

f:id:eaidem:20160803082641j:plain

連れて行かれる遊女が「もう二度と戻れない…」、そんな複雑な気持ちを抱えて眺めていたのが「見返り柳」だと言われています。無理やり残した感があって、隅に追いやられています。

 

f:id:eaidem:20160803082645j:plain

吉原大門に入ると「ラーメンランド」という単語二つを掛け合わせた名店があります。で、右が斜めに入っているじゃないですか。実はこれ、鷹狩中の江戸将軍に遊郭の中を見せないために用意した道。「五十間道」と言われています。あ、ピジョンGET。

 

さらに、諸説ある話を一つ。

f:id:kakijiro:20151101042817j:plain

名所江戸百景 よし原日本堤

なぜ、吉原遊郭の移転先としてこの土地が選ばれたのか。日本堤という地名から分かるように、このあたりはズラーっと堤防になっており、古くは湿地帯だったそうです。つまり、地面がぬかるんで地盤が弱い。住むのに適していない。

当時の江戸幕府が考えたのか定かではありませんが、「日本堤周辺の土地開発を進めないとッスね」「じゃあ、吉原遊郭目当ての人を集めたらいいんじゃね? 人がたくさん通れば地面固まるんじゃね?」という目的で選ばれた説。VHSがベータに勝ったのと同じように、PS2がDVDの普及を底上げしたのと同じように、男性の性的欲求というのは世の中を動かすパワーがあるんですね…。

この話は鶯谷で320年以上続いている豆腐料理屋「笹乃雪」の10代目に聞いたので、信憑性が高いんじゃないかと思います。そんな理由で移転させて、実際に土地が発展してるのおもしろすぎ!

 

「あしたのジョー」の舞台、山谷の歴史が面白い

f:id:eaidem:20160803082637j:plain

ボクシング漫画の金字塔『あしたのジョー』。矢吹丈や丹下段平、力石徹など、魅力的なキャラクターを生んだ作品で、若い人でも名前ぐらい聞いたことあるでしょう。昭和の高度経済成長期を支えたドヤ街「山谷」こそ、『あしたのジョー』の舞台(泪橋の下に丹下拳闘クラブがある)であり、三ノ輪、南千住の色濃い文化を築いた場所なんです。

 

f:id:eaidem:20160801172310j:plain

矢吹ジョー像は、近場のポケスポットであり、ヤドラン擁するジムリーダーも君臨しています。

 

f:id:eaidem:20160803082640j:plain

レベル5の僕は太刀打ちできません。奥に見える「満す美寿司」は見た目アレですが、渥美清も通った名店。最近食べに行ったらめちゃめちゃ美味かったです。食べログには絶対載らないタイプの寿司屋。

 

f:id:eaidem:20160803082635j:plain

山谷の中心地「いろは商店街」では、所縁ある『あしたのジョー』を町おこしのアイコンとして活用。商店街のあちこちにポスターが張られていて、一部のお店ではTシャツやグローブパンなんかも売られています。昭和の雰囲気が強く残っていて僕は大好きです。

 

f:id:eaidem:20160801172306j:plain

「いろは商店街」で唯一かっこいいのが、ポケスポットにもなっているウォールアート。なぜ、ここに描かれているのか?

 

f:id:eaidem:20160803082638j:plain

ぜんぜん分からないので誰か解明してくれよな! あ、コラッタGETだぜ!!

 

泪橋の由来と小塚原刑場

f:id:eaidem:20160803082633j:plain

さて矢吹ジョーと丹下団平の出会いの場になった「泪橋(なみだばし)」の由来はなんなのか?

地元の人に話を聞けばすぐに分かった事実なんですが、このあたりに江戸時代から明治初期にかけて「小塚原刑場」という処刑場があり、磔火焙り獄門の刑に処された人の首が運ばれていたとか。残された家族が、その近くの橋で涙を流していたから「泪橋」と呼ばれ始めたそうです。こんなに悲しい地名の由来ってありますか。

 

f:id:eaidem:20160801172309j:plain

現在、小塚原刑場の存在はありません。跡地に「延命寺」というお寺が建てられていますが、もちろんここはポケスポットです。中に入ると「小塚原の首切地蔵」がお出迎え。こちらもポケスポットなのでモンスターボールを補給しましょう。

 

実は、この土地の因果を感じさせる話もあってですね…。

 

f:id:eaidem:20160803082632j:plain

平成10年、常磐新線(つくばエクスプレス)「南千住駅」建設にあたっての調査で地面を掘り起こしたら、大量の人骨が出てきたそうです。資料によるとその数は頭蓋骨だけで260点以上、四肢骨は1700点以上。前述の湿地帯という地盤の影響で保存状態がよかったとされています。もうディープすぎてごめんなさい!って感じですね。

 

さらに!

 

f:id:eaidem:20160803082630j:plain

こちらは三ノ輪の代表的なお寺「浄閑寺(じょうかんじ)」。何が有名かって言うと、身寄りのない遊女や息倒れた遺体が放り込まれたことから「投げ込み寺」という俗称で呼ばれていました。ほかにも都内には豊島区「西方寺」、新宿区「太宗寺」「成覚寺」、品川区「海蔵寺」など、遊郭や刑場と縁ある土地に存在するようです。

 

f:id:eaidem:20160803082629j:plain

江戸城を中心に作られた東京の歴史。江戸城から鬼門の方角に「小塚原刑場」を作ったという諸説もあり、奥浅草のディープさはそういった背景が根っこにあるのかもしれません。

 

 

f:id:eaidem:20160803110209j:plain

お口直しに大自然に向かって手を振る後輩(ARuFa)の姿をお楽しみください。

 

三ノ輪周辺は食通をうならせる名店が多い!

f:id:eaidem:20160803082639j:plain

さて、気を取り直してグルメ情報! これは僕の持論なんですが、遊郭の周辺は食文化が発展する説があります。例えば、吉原周辺は馬肉文化が盛ん。創業120年の馬肉の桜鍋屋「中江」は地元の名店です。

なぜ、馬肉がこの土地に根付いたのか?

馬に乗って吉原遊郭に遊びに来た人が、「遊びすぎて金がない。よっしゃ、馬売ろう!」とその場で馬を売るノリがあったそうです。売った馬を捌いて馬肉として提供する。実に理に叶った商売です。この話も鶯谷で320年以上続いている豆腐料理屋「笹乃雪」の10代目に聞いた話なので信憑性高いんじゃないでしょうか。なんにせよ、おもしろすぎ!

 

そんなこんなで昔ながらの食文化が脈々と受け継がれており、みんな大好き食べログのレビュー高評価のお店が多いのも特徴です。ここでは個人的にオススメのお店をザザッと並べたいと思います。語ると長くなるので詳細は割愛しますね。

 

●ごま油で揚げる天丼が絶品「土手の伊勢屋」

●創業110年! 吉原発祥の桜なべ「中江」

●うなぎの名店「尾花」

●お餅×日本茶のあわせ技「月光」

●コスパ最強と名高いしゃぶしゃぶ屋「かがやき」

●2015ミシュランビブグルマン受賞のラーメン屋「トイボックス」

●何を食っても安くて美味い! 予約必須な居酒屋「丸千葉」

●クリントン元大統領も絶賛したコーヒーの名店「バッハ」

などなど、枚挙に暇がないほど個性的なお店が多い。遠方からわざわざ車で訪れる人も多い『バッハ』は、コーヒー好きには絶対行って欲しいです。コーヒーだけでなく、自家製のデザートとパンが絶品!

飲み屋好きには『丸千葉』、ラーメン通には『トイボックス』でしょうか。どちらも土日は混雑が予想されるので気をつけてください。歴史のあるお店でいえば『土手の伊勢屋』、馬肉の桜鍋『中江』、鰻の名店『尾花』あたりは鉄板です。どこも人気店なので、スッと入りたいなら予約&平日に行った方がいいかもしれません。

 

まとめ  

f:id:eaidem:20160803082648j:plain

圧倒的な情報量でお届けした奥浅草の歴史、いかがだったでしょうか。諸説ある話ですし、専門で研究している人からしたら「間違ってる!」「甘い!」なんて意見もあるかと思います。そうだったらすみません。

途中からポケモンGOとの関係性が薄くなってきましたが、ベースとなっているingressのスポット情報は「あれ、こんなところが?」という歴史的な情報を示唆していることが多々あります。歴史好きのユーザーが頑張ってくれているんでしょうね。

 

f:id:eaidem:20160801172304j:plain

彼らに敬意を示すためにも、タモリ倶楽部的な「散歩」×「歴史」の観点でポケモンGOを楽しんでみてください。意外と都内の町中は、歴史の足跡を立て看板で残しているものです。分からないなりに読んでみてメモをする。そのメモが溜まったら町の図書館で調べてみる。

そんな流れで知的好奇心を満たしていくと、いつもと同じ町の景色が変わって見えるからおすすめ! 

 

気が向いたら「奥浅草」に遊びに来てください。

ではまた!

 

(写真:吉原ゴウ)

 

 

 

 

 

※地元のおばちゃんに教えてもらった反転すると読める極秘マメ知識

美空ひばりとEXILEのHIROは三ノ輪・南千住出身なのに、プロフィールは横浜出身になっている。信じるも信じないもあなた次第です。

書いた人:徳谷 柿次郎

f:id:kakijiro:20160511170425j:plain

ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916

赤ん坊を白蟻の巣に入れて燃やす!? アマゾンの先住民を撮り続けた男が語った「あの日」

$
0
0

f:id:eaidem:20160722183632j:plain

深いアマゾンの森―

 

 

f:id:eaidem:20160722181445j:plain

今まさに、先住民族「ヤノマミ」の少女が、ジャングルで子を生み落とした

 

 

f:id:eaidem:20160722183631j:plain

赤ん坊はバナナの葉に包まれ、そして……

 

 

f:id:eaidem:20160722181447j:plain

シロアリの巣に納められ、燃やされた

 

 

f:id:eaidem:20160722183634j:plain

!??

 

こんにちは、ジモコロライターのギャラクシーです。開いた口が塞がらないまま失礼します。

見てもらったのは2009年に放映されたNHKスペシャル『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』という番組の一部。

ジャングルに住み、文明から離れた生活を送る先住民族「ヤノマミ」を、150日間も追った濃密なドキュメンタリーでした。

 

作ったのは、多くの優れたドキュメンタリー番組を世に送り出してきたディレクター・国分拓さん。

 

f:id:eaidem:20160722183635j:plain

国分拓(こくぶん・ひろむ)

日本のノンフィクション作家、NHKディレクター。宮城県出身。1988年早稲田大学法学部卒業。
1988年にNHK入局。2009年ヤノマミ族を150日間同居取材したドキュメンタリー番組を制作。著書に『ヤノマミ』がある。

 

そんな国分さんが手掛ける新作が、来る8月7日(日)21時から放送されるというんだから、僕だって黙ってられませんよ!

その名も、

『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』

「ヤノマミ」と同じく、文明と接触を持たない先住民「イゾラド」が突如姿をあらわし、現地で暮らす村人を襲ったという。その報を受けた取材班は、ブラジルとペルーの国境付近、イゾラド最前線と呼ばれる危険地域に分け入っていく……。

 

こちらは4月より放送されていたNHKスペシャル『大アマゾン 最後の秘境』シリーズのラストを飾る作品。ワクワクが止まらないぜ~!

 

f:id:eaidem:20160722183636j:plain

◆NHKスペシャル『大アマゾン 最後の秘境』

 

第1集 伝説の怪魚と謎の大遡上(2016/4/10)
第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち(2016/5/8)
第3集 緑の魔境に幻の巨大ザルを追う(2016/6/12)
第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々(2016/8/7)

 

しかし一体この国分さんというのはどういう人なんだ?

150日間も「ヤノマミ」と共同生活したり、無法者の集まり「ガリンペイロ」に密着したり、どこから毒矢が飛んで来るかわからない場所に「イゾラド」を探しに行ったり―

なんでこんな取材ができるの? 怖くないの??

 

疑問が次々と浮かんできたので、ジモコロ編集長の柿次郎に頼んで、NHKにコンタクトを取ってもらいました。

 

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「というわけでNHKさんにインタビューを申し込んだんですが……」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「どうでした?」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「まさかの快諾でした! 国分さんに直接話を聞けますよ! しかも、国分さんと長年コンビを組んでアマゾンを撮り続けてきたカメラマン・菅井禎亮さんも同席してくれるって!」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「おおぉ! その二人なら僕の疑問にすべて答えてくれるに違いない! 密林の危険性、先住民族が文明に触れることの是非、あと先住民族は裸で暮らしてるけどチ○コはでかいのか、とか」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「最後いらんだろ」

 

 

f:id:eaidem:20160801130528p:plain

 

 

NHKのドキュメンタリー番組、その作り方とは

 

f:id:eaidem:20160723201205j:plain

(左)カメラマン・菅井禎亮さん (右)ディレクター・国分拓さん

NHK局員の方が口をそろえて「あの二人はNHKの中でも伝説だから」と言う名コンビ。 

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「はじめまして! 今日はよろしくお願いします」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「よろしくお願いします」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「はい、よろしくね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「今回のスペシャル、試写で全部見せてもらいました。めちゃめちゃおもしろかったです! あんな危険な取材をどうやって敢行したんですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「いやいや、全然危険じゃないんですよ。だって危険な目に遭うのは僕じゃなくてカメラマンだから」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「ひどい(笑)」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「ひどいでしょ(笑)。でもまあカメラを構えてるやつのところに真っ先に来るよね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「『ヤノマミ』の時は150日間ものアマゾンロケを行ったと聞きました。一体どんな準備をして、そんな長期ロケに望んだんでしょう」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「機材と着替え、食料……現地にはちょっと離れたところに保健所もあるから、充電とかはそこでできたし。それに150日間連続でロケをしたわけじゃなくて、4回に分けて行ったから」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「機材も年々小型・省電力化してるから、楽にはなってきてるよね。ロケの準備といえば、事前にワクチンとかを打たないといけなくて。これが面倒なんですよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「へぇ~、それは想像してませんでした。熱帯のウイルスって強力そうですもんね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「打つのはA型肝炎、B型肝炎、黄熱病、腸チフス、狂犬病、とか。狂犬病は致死率100%だから、絶対打ちます。それらを、2ヶ月位かけてちょっとずつ打つんです。結構高いんですよ」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「黄熱病だと1万円くらいだったかな。狂犬病は4回打つからもっと高かったと思います。もちろん経費ではあるんだけど」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「そういった準備をした上で、150日もかけて番組を一本作るって、僕らには想像もつかない作業です。事前にこういう流れにしようとか考えて現地に行くんですか?」

 

f:id:eaidem:20160723201206j:plain

 

 

f:id:eaidem:20160723201207j:plain

「何も考えてません」

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「えー! そんなわけないでしょ! だって費用もめちゃめちゃかかってる一大プロジェクトなのに!」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ほんとに何も考えてないですよ。事前に勉強はしますけど、行ってもいないうちから、机上の知識だけで方向を決めてしまうなんて、そんな番組、絶対につまらない」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「で、でも『結果的に何も良い絵が撮れませんでした』なんてことになったら……」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「まあ、そうなったらクビになるだけでしょ」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「ヒェェェ~!」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「でもね、不思議と何とかなっちゃうんですよ。本当に毎回不思議なんですけど」

 

 

国分さんは「不思議と」とおっしゃっていましたが、現場を歩く熱意と、膨大な根気があればこその話。今の時代、適当にネットの情報をつなぎ合わせただけの記事が多いわけですが、国分さんみたいなことができる人って、ほとんどいませんよね。

 

アマゾンてどんなとこ? = マジで危険だった

 

f:id:eaidem:20160726193237j:plain

アマゾン―

南アメリカのアマゾン川流域に広がる、世界最大面積の熱帯雨林。その森は深く、地球に残された最後の秘境である。

多種多様な生態系が広がっており、特に昆虫は500万種とも1000万種とも言われる。

 

f:id:eaidem:20160725173739j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「国分さんの本(新潮文庫『ヤノマミ』)で、『長さ50cmのムカデが戸口の前を横断し……』っていう描写があって、アマゾンには一生行かないと心に決めました。虫が平気じゃないとああいったロケは無理なんでしょうね」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「ふふふ(笑)、僕は虫が平気なんだけど、彼は……」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain実は虫とか全然ダメなんです。気持ち悪い」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「え、意外!」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「虫が苦手な人間にとって、アマゾンは地獄ですよ。夜なんかそこら中を虫が這いまわってる。毎晩帰りたくてしょうがなかった」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「とはいえ、ロケ地がアマゾンなんだから虫は絶対に寄ってきますよね。被害には逢いましたか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「そりゃ被害だらけですよ。まず思い浮かぶのがブヨですね。噛まれたら一週間くらいカユい。アマゾンの森はブヨだらけでね。虫よけしてるのに、お構いなしにくるんだから」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「僕はジャングルで背中一面をマダニにやられて、もうカユいのなんの。ジャングルをちょっと歩けば、普通に100箇所以上は虫に刺されますよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「虫刺されとはいえ、伝染病を媒介したりしますから、ほんと危険と隣り合わせの撮影だったんですね」

 

f:id:eaidem:20160724162920j:plain

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「危険っていうことで言うと、ヘビが一番ですよ。ジャングルにはジャガーなんかもいるんだけど、ヘビの方がよっぽど怖い」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「えー! ジャガーの方が強そうなんですけど!」

f:id:eaidem:20160725113047p:plainジャガーは何とかなるんです。銃で撃つなりなんなり、対処法がある」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「ヘビは唐突だから。枝からぶら下がってたり、踏んづけちゃったり。突然噛まれて死ぬ。僕らはヘビにやられた原住民を見たことがあるけど、この目で見るとやっぱり『あ、噛まれたら死ぬんだ』って実感して、怖いですよ」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ヤノマミもガリンペイロも、ヘビが一番怖いって言ってましたね。『俺は今まで3匹もジャガーを撃ち殺したんだ!』って自慢するガリンペイロがいたんだけど、そいつも『ヘビは怖い』って言ってましたよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plainジャングルで一番怖いのはヘビ、覚えときます」

 

 

とても役立つ知識が手に入りました。ジャングルで注意すべきは、ヘビです。みなさんも気をつけましょう。もっと役立つことを言いますと、そもそも行かないほうがいいです。

 

150日間「ヤノマミ」と暮らしてどうだった?

 

f:id:eaidem:20160724162919j:plain

ここからは国分さんたちが作った『ヤノマミ』『ガリンペイロ』『イゾラド』のことを聞いていきます。まずは『ヤノマミ』から。

 

ヤノマミ

アマゾンの熱帯雨林からオリノコ川にかけてひろく居住している南米の先住民族の一部族。狩猟と採集を主な生活手段にしている。

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』では、バクや猿を食べるシーンがありましたが、あれ、どんな味付けなんですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「味付けはないですよ。塩すらない」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「え、人体に塩って絶対必要ですよね? 彼らはどうしてるんですか?」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「塩があまり必要ないんです。ヤノマミ族は、人類の中で最も血中塩分濃度が低いらしくて」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「へーーー!!!」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「だからね、ヤノマミはあんまり汗をかかないの。汗をかかないから虫にも刺されにくいんだよね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「あぁ! そういう理由があったんですか! あんなに虫が多い場所なのに、映像で見るときれいな肌をしてるなーと思って不思議だったんですよ」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「木の実や草など、虫よけの薬を塗ってるっていうのもありますけどね。ほら、女たちが赤い実を肌にすり込んで化粧してたでしょ? あれは虫よけのためでもあるんです。ジャングルに生きる知恵ですね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「『ヤノマミ』では虫の映像が多く使われてましたよね。特にアリの大群が地を這うシーンは象徴的でした」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「ヤノマミ族は死んだ後、男はアリやハエに、女はダニやノミに生まれ変わると言い伝えられてる、というのがあったからですね。映像に使ったのは軍隊アリの行進なんですが、150日間ロケをして、見かけたのは2回だけだったんですよ」

 

f:id:eaidem:20160723201208j:plain

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「1回めは真夜中だったから撮影できなかったし、実質1回のチャンスでしたね」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「国分さんはいつも、ほとんど僕に指示をしないで、好き勝手に撮らせてくれるんですよ。ず~っと腕を組んで何かを考え込みながら待っててくれる。でもあの時は急に口を開いて、『アリの絵が欲しい。大量のアリを撮ってくれ』と」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「さすが敏腕ディレクターですね~。あと印象に残ってるのはラスト、過酷なアマゾンで生まれ死んでいく未開部族の横を、美しい蝶が横切って飛んでいくシーン。あれ、狙って撮ったんですか?」

 

f:id:eaidem:20160724162921j:plain

画像だとわかりにくいですが、画面左の青い点が蝶です。地を這うアリの群れと、空を舞う美しい蝶。虫の映像が効果的に使われていました。

 

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「偶然ですね。あの奇跡的なカットのせいで、菅井さんは蝶々に関する運を一生分使い果たしたはずです」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「そんな名前の運、ないでしょ!」

 

 

f:id:eaidem:20160724162922j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「国分さんたちはシャボノ(ヤノマミ族特有のリング状の共同住居)で、生活したんですよね? 国分さんの書いた本には、『壁も床もなくて、性生活すら筒抜け』という描写があって驚きました」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「子孫を繁栄させるためには絶対必要だから、行為自体はおかしいことじゃないんだけどね。文明人の感覚だと驚くよね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「それは、実際に目に入ったりするんですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「いや僕らもわざわざ見ようとはしないし、そもそも真っ暗だからね。ただ、僕らが目にしなかったというのは……」

 

f:id:eaidem:20160724162910j:plain

……早いからじゃないかな」

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「へー! 狩猟民族は性行為が早いと言われてますが(性行為中は無防備なので、外敵の多い狩猟民族は早いという説がある)、そのせいなんですかね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「そうだと思いますよ。そういった習慣に詳しい方に聞いたんですが、体位も立ちバックとからしいです。危険に反応しやすいとか、そういった色んなメカニズムが命を繋いできたんでしょうね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「床が土だし、ヒザをつくと痛いというのもあるかもしれません」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ちなみに、祭りの日だけは正常位だそうです。理由はわかりませんが、ほら、正常位って“人間の体位”って感じがするでしょ? やっぱり特別なものなんでしょうね」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「ノリノリで何の話をしてるんですか、もう」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「いやこれ、人類学的にはすごく大事な話ですよ」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「あと、先住民族って、基本的にチ○コはそんなに大きくないですね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「な、なんだってー! 実はここに来る途中、先住民族のチ○コは大きいのか小さいのか聞きたいなって冗談で話してたんですよ。まさか解答が得られるとは!」

 

f:id:eaidem:20160722181447j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「森のなかで母親が赤ん坊を天に帰すシーンは、とてもショックを受けました。お二人はあの光景を見てどう感じたんでしょうか」

※ヤノマミ族は子供を生むと、ヒトとして育てるか、もしくは精霊として天に帰すのかを母親が選択する。天に帰す場合は母が赤ん坊を殺し、シロアリの巣に納める。

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「最初にその習慣を聞いた時には、そんなことが許されていいのか、とも思いました。でも、あの熱帯の……あの空気の中で実際に見ると、不思議と納得してしまうんです」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「そう、まるでそれしかないような気がしてくる。山があって星があって、森は深くて、耐えられないほど暑くて、雨が降って、雷が鳴って、あの熱帯の中でだけ共有できる真実って、あるんですよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「クーラーのきいた部屋でだけ共有できる倫理観があるように、ですか」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ただ、当時はやっぱりショックだったんでしょうね。日本に帰ってから、食べてもすぐ吐いちゃうし。10kgも痩せて子供みたいな体型になってました」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「僕は毎晩のように、自分の子供を殺してしまう夢を見ました」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「カラダ張ってますね~」

 

 

菅井さんはこんなこともおっしゃっていました。「シロアリの巣に赤ん坊を納める時、まるで女性器のように巣に裂け目を入れる。地球に帰しているようだった」。

自分がそんな光景を見たら、心のなかでどう処理するのか、いくら考えても答えは出ませんでした。

 

危険と隣り合わせ! 無法者集団ガリンペイロ

 

f:id:eaidem:20160724162912j:plain

続いてはアマゾンに眠る金を掘り続ける男たち『ガリンペイロ』について。国分さんたちは無法者の集団である彼らと、50日間も寝食を共にしたという。

 

ガリンペイロ

金鉱採掘人、発掘人のこと。主に、ブラジル・アマゾン奥地で1970年代に起きたゴールドラッシュ以降に流入し、過酷な生活・労働環境下で一攫千金を夢見る人々を指す。

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「僕、この回がものすごく好きだったんですけど、撮るのは大変だったでしょうね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「彼らは先住民と違って銃を持ってるし、犯罪者も多いからほんと何されるかわからない」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「冒頭でボスに撮影許可をもらいに行く時から、すでに銃をチラつかされてましたもんね」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「見てて怖かったのは、人を殺したことがあるっていうガリンペイロが、ナタを担いで国分さんたちに接近してきた時です。どんな心境だったんですか?」

 

f:id:eaidem:20160724162915j:plain

 

f:id:eaidem:20160725113047p:plain『カメラマン(菅井さん)のほうに行ってくれて助かった』と」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「いや笑い事じゃないから! ほんとに怖かったよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「他にも、ガリンペイロ同士が些細なことでケンカになって、銃に弾を込めはじめたことがあったじゃないですか」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「あれはやばかった! 走って逃げたもん」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「菅井さんの声が入ってましたよね。『銃だ! やばいやばい!』って逃げていくのが、いや気の毒ではあるんですけど、メチャクチャ爆笑しました」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「その場にいたら誰でもああなるって! 映像だとカメラのおかげで明るく見えるけど、肉眼で見ると夜だからすごく暗いんですよ。最初は何をしてるのかわからなくて、銃だと気づいた時にはもう弾丸を込めてるんだから」

 

f:id:eaidem:20160724162917j:plain

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ガリンペイロって脛に傷持つ人が多いから、仲間内でもちょっとしたことで尻尾を踏んづけちゃうことが多いんですよ。そうなるとお互い散弾銃を持ちだしてきて、そして……みたいなことはしょっちゅうあるんです」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「マッドマックスかよ。そんな人たちによく話を聞けましたね」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「仕事じゃなかったら絶対いやだけどね。だってジャングルの真ん中だから、もし僕らが殺されて埋められちゃっても、誰にもわからないんですよ」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「そうそう、ジャングルだと死体なんて3日で跡形もなくなっちゃうからね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「ん? ちょっと待ってください。『殺されても誰にもわからない』って、国分さんたちは一体何人編成のチームで取材に行ったんですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「3人です」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「少なーーっ! 引越し屋のバイトより少ないじゃないですか! もっと大規模な人数で行った方が安全なんじゃ?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「それだとお金もかかるし、相手も警戒しますからね。少人数のほうがむしろ安全なんですよ」

 

f:id:eaidem:20160724162914j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「今回のスペシャルでは、森を追われたイゾラドという未開部族と、森を切り拓くガリンペイロ、いわば正反対の人々を、どちらが悪というでもなく、淡々と両方の視点で撮っていたのが印象的でした」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「どちらか一方が正しくてどちらかが悪だ、というのは横暴ですよ。それはドキュメンタリーじゃないと思う。それぞれに立場と理由があるわけだから」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「ディレクターは傍観者でなければならない、ということでしょうか。菅井さんはいかがですか?」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「僕はそこまで冷静ではいられなかったな。ガリンペイロというのは勝手に森を拓いて、そのせいで住処を追われた先住民と争いになって、殺したりしてきたんですよ。僕には割り切れない部分もありましたね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「国分さんみたいに傍観者に徹しきれる人って、そういないですよね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「でもどちらかに偏った視点だと番組としてつまんないですからね。実際、見てどうでしたか?」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「……正直、めちゃめちゃおもしろかったです」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「ヒトの住む世界からはみ出した人間たちの、なんとも言えない悲哀みたいなものがありましたね」

 

f:id:eaidem:20160724162918j:plain

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「それはよかった。でもあれ、実は撮ってる時は『おもしろいものが撮れてないような気がする』と思ってすごく焦ってたんですよ」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「そうね。だから帰るギリギリまで撮ろうってことになって。合計50日の密着取材になりました。結果的に良い絵が撮れて良かったですよ」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「あんな人たちに囲まれて50日過ごしたのを、『良かった』と言えるのって、もうどこかおかしくなってますよそれ

 

 

「怖いだけの無法者じゃなくて、彼らにはどこか悲しさがあるんですよ」と言う国分さんに、菅井さんが「自分と似てるから気持ちがわかるんじゃない?」とおっしゃる一コマも。ドキュメンタリーという鉱脈を掘り続けるガリンペイロ……?

 

 

未開の先住民族「イゾラド」、文明と出会う是非は?

 

f:id:eaidem:20160725113101j:plain

 

話はいよいよ、数日後に放送される『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』へ。先住民族は文明と触れずに生活した方がいいのか? それとも……?

 

イゾラド

アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯にいるという謎の先住民族。部族名も言語も人数もわからない。「隔絶された人々」という意味で『イゾラド』と呼ばれる。 

 

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「では最新作『イゾラド』についてお聞きしたいんですが、まず試写を見た感想を言わせてください。めちゃくちゃドキドキしました」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「緊迫感ハンパなかった」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ありがとうございます。苦労しました」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「イゾラドは実際に現地で暮らす村人(文明人)を襲ったことがある先住民なんですよね? そんな彼らを探し行くということで、防弾チョッキのようなものは用意されたんですか?」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「もしイゾラドが襲ってきたら本当に危険だからって言われて、防弾チョッキみたいなやつは渡されました。ロケに行ったのは、イゾラドがよく目撃される『イゾラド最前線』と呼ばれる村だったから」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「僕は着ませんでしたけどね。矢が飛んできたら、その時はその時だろうと思って。人の縄張りに来て矢で射られるなら、仕方ないですよね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「な、なんでそんなに落ち着いてられるんですか。彼らは矢や槍に強力な毒を塗ってるらしいじゃないですか。かすっただけで死んじゃうんですよ!? 怖くないんですか」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「僕は怖かったですよ。どれほど危ない場所かという説明をずっと受けてたから。もしイゾラドが現れて、こう矢が飛んできたら、ここに隠れよう、みたいなことばっかり考えてました」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「まさに死と隣り合わせ……! イゾラドはどれくらいのロケ期間だったんですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「イゾラドに関しては3日くらいなんです。なぜかというと、乗ってる船が転覆したり、色々なトラブルが……」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「へ? 船が転覆した!? そんなことを当たり前のようにスルッと言わないでください」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「現地に向かってる最中、船にトラブルが起きて転覆しちゃったんですよ。今回はそういった諸々の事情があって、結局現地には3日くらいしか居なかった」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「とにかく村に着くまでが大変だったよね。僻地すぎるよ。何回も、向かってはトラブルで引き返し、っていう繰り返し」

 

f:id:eaidem:20160725113057j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「イゾラドのような先住民が文明と接触することについて、どのようにお考えですか?」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「個人的な意見を言うと、先住民にはそのままの姿でいてほしいですね」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「でも今のままでいると、病気で絶滅してしまったり、文明人と鉢合わせして争いになったりということもあり得ますよね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「そうなんです。どっちが正しいのかわからないから、客観的に撮るしかないというのもあります。そもそも僕がどう思おうと、このままいくと“文明と出会わない”なんてことはあり得ませんから」

f:id:eaidem:20160725113046p:plain「いくら保護区といっても、入り込む森林伐採業者などは居るわけだし、そもそもイゾラドの方から人里にやってきたらどうしようもないですね」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「先住民のことに非常に詳しい方がいて、話を聞いたところ、あと1~2年でイゾラドはいなくなる(未開の部族ではなくなる)と言ってましたね」

 

f:id:eaidem:20160725113059j:plain

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「1~2年って、もう目と鼻の先じゃないですか!

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「一度文明に出会ってしまったら、『今のは忘れて未開部族に戻れ』なんて、とても言えない。実際今でも、文明人が森に捨てていったステンレスの鍋を持ってたり、拾ったTシャツを着ているイゾラドだっているんです」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「一回でもTシャツを着て『あぁ、服を着るとあったかいんだ』と知った人に、『未開のままでいてほしいからもう着るな』というのも、それはそれで押し付けのような気がしますね。う~ん」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ね? 誰にも答えを出せないんです。だからできるだけありのままを撮って、そして、みんなで考えるしかないと思う」

f:id:eaidem:20160725113045p:plain「『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』は、そんな問題をみんなが考える良い機会になりそうです。今日はありがとうございました。」

f:id:eaidem:20160725113047p:plain「ありがとうございました」

f:id:eaidem:20160725113048p:plain「はい、ありがとうございました」

 

 

というわけで、先住民が文明と出会う是非や、自分と違う倫理観の話、熱帯にだけ存在する真実など、興味深い話をたくさん聞けたインタビューになりました。

みなさんの解答はどのようなものになったでしょうか。

 

f:id:eaidem:20160724162916j:plain

 

 

最後に、もうすぐ放送される『大アマゾン 最後の秘境|第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』の、冒頭部分を少しだけ見て頂きましょう!

 

f:id:eaidem:20160725113102j:plain

深い深い森の奥、文明と一切の接触を持たず、
原初の生活を続ける先住民がいるという。
その名を『イゾラド』。

 

f:id:eaidem:20160725113054j:plain

監視所の男性の説明。彼らの武器には強力な毒が塗りこまれている。

 

 

f:id:eaidem:20160725113055j:plain

イゾラドの矢に腹部を貫かれ、瀕死の重傷を負ったことがあるという青年。

 

 

f:id:eaidem:20160725113050j:plain

そんな彼らが、ブラジルとペルーの国境付近の村に姿を現したのだ……!
(村人がホームビデオで撮影)

 

f:id:eaidem:20160725113051j:plain

「近づいてきた!」「弓を構えてるぞ!」震えるカメラの映像。
(村人がホームビデオで撮影)

 

報を受けたNHK撮影班は一路アマゾンに向かった。

 

f:id:eaidem:20160725113052j:plain

ドン!!

 

 

f:id:eaidem:20160725113053j:plain

ドドドン!!!!

 

 

果たして国分さんと菅井さんのチームは、イゾラドを発見することができるのか?

 

 

f:id:eaidem:20160725113056j:plain

8月7日(日) NHK総合 21:00~21:49をお楽しみに!

NHKスペシャル|大アマゾン 最後の秘境|第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々

 

 

 

ドキュメンタリー番組の楽しみ方を、漫画家・宮川サトシが描いたこちらの記事もどうぞ!

www.e-aidem.com

 

<広告主>

日本放送協会(NHK) 

 

ライター:ギャラクシー

f:id:eaidem:20150708183337j:plain

株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy

【漫画】「大アマゾン-最後の秘境-」 俺の楽しみ方

$
0
0

f:id:eaidem:20160804115547p:plain

 

f:id:eaidem:20160725154836j:plain

f:id:eaidem:20160725154852j:plain

f:id:eaidem:20160725154903j:plain

f:id:eaidem:20160725154914j:plain

f:id:eaidem:20160725154924j:plain

f:id:eaidem:20160725154935j:plain

f:id:eaidem:20160725221801j:plain

 

f:id:eaidem:20160804120133j:plain

 

ドキュメンタリーっていいですよね…神秘の力で人が生き返ったりしないし、作者の都合で新キャラや新アイテムが出てこないところなんかもう最高!

30代半ばを過ぎてから、自然とドキュメンタリー番組ばかり見るようになりました。番組を見終えてテレビを消して、真っ暗になったモニターにうつる自分の顔を見ると、僕はいつも生きていることを実感します。

「あぁ良かった、ここにいられて」とか、「あぁ…自分もあんな生き方してみたいな」とか。見たこともないリアルに胸をドキドキさせられながらも、実はそんな嘘のない世界に癒されているのかもしれません。

 

…ただ、8月7日放送の「大アマゾン 最後のイゾラド」は、そんな悠長なことは言ってられないぐらいの、とんでもない映像が見られる予感がしています。皆さんはどうしますか? 僕はHD録画で保存しつつリアルタイムででも目撃する所存です!

 

 

f:id:kakijiro:20160722115511p:plain

◆NHKスペシャル『大アマゾン 最後の秘境』

 

第1集 伝説の怪魚と謎の大遡上(2016/4/10)
第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち(2016/5/8)
第3集 緑の魔境に幻の巨大ザルを追う(2016/6/12)
第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々(2016/7/31)

 

もっと詳しく知りたい人はこちら!

今回紹介した『ガリンペイロ』や、もうすぐ放送の『イゾラド』を作った、NHKの伝説のディレクターに、ジモコロがインタビューを行いました! アマゾンを撮り続けた男が語る、ジャングルの本当の姿! 壮絶です!

www.e-aidem.com

 

<広告主>

日本放送協会(NHK) 

 

漫画:宮川サトシ

f:id:eaidem:20160725161509j:plain

1978年生まれ。岐阜県出身。大学卒業後、地元で学習塾を経営していたが、漫画家を志し上京。漫画教室『古泉智浩 池袋マンガ教室』へ通い、2012年に漫画家デビュー。代表作は『情熱大陸への執拗な情熱』『宇宙戦艦ティラミス』『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『東京百鬼夜行』など。Twitter→ @bitchhime


【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 6話「柳田さんと おばあちゃん」

$
0
0

f:id:eaidem:20160404141459j:plain

<柳田さんと民話・一覧>
第6

 

f:id:eaidem:20160727195249j:plain

f:id:eaidem:20160727195250j:plain

<柳田さんと民話・一覧>

 

●「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

 

★木下晋也先生の人気作「おやおやこども。」のLINEスタンプが発売されましたよー!

子育て中の方にも、そうじゃない方にも、使いドコロが多すぎるゥゥ~!

f:id:eaidem:20160727195251j:plain

 

書いた人・木下晋也

f:id:eaidem:20160322122138j:plain

1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『もここー』全2巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。Twitterアカウント→@kinositasinya

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

人生かけすぎ!「ねぷた祭り」に見たビビるくらいの愛

$
0
0

 

f:id:eaidem:20160805180425j:plain

 

青森県には「ねぶた」「ねぷた」と呼ばれるお祭りが存在します(呼び名によってどういう違いがあるのかは、この漫画で説明します)。今回取材したのは青森県弘前市。 そこにはこの祭りに人生をかけた人たちの、とんでもない愛を注ぎ込んだドラマがありました。

 

f:id:eaidem:20160805173417j:plain

 

f:id:eaidem:20160805184310j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173419j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173420j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173421j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173422j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173423j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173424j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173425j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173426j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173427j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173428j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173429j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173430j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173431j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173432j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173433j:plain

 

f:id:eaidem:20160805174705j:plain

 

f:id:eaidem:20160805174733j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173436j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173437j:plain

 

f:id:eaidem:20160805173438j:plain

 

f:id:eaidem:20160805174804j:plain

 

 

関連リンク:

▶青森県弘前市

▶弘前ねぷたまつり|公益社団法人 弘前観光コンベンション協会

 

<広告主>

青森県弘前市 

 

 

漫画描いた人:カメントツ

f:id:eaidem:20150528145211j:plain

仮面を被った漫画家ライターゆえにカメントツ。オモコロでもマンガを描いているという噂がある。仮面凸ポータルから呼ばれればどんなときも予定があいてれば駆け付けるぞ。Twitterアカウント→@computerozi

 

【青春18きっぷ】夜行列車・温泉・ご当地グルメ! 乗り鉄が日帰りで使い倒した

$
0
0

f:id:eaidem:20160805201743p:plain

 

 

 

f:id:akasofa:20160730192637j:plain

いつもお世話になっております。赤祖父と申します。2時間推理ドラマみたいな記事タイトルで恐縮ですが、早朝4:40の長野県・松本駅に来ております。

なぜこの時間に松本にいるのかというと、【青春18きっぷ】を使って新宿から夜行列車に乗ってきたからです。

 

 

f:id:akasofa:20160730193945j:plain

こちらが臨時夜行快速【ムーンライト信州】です。この列車は青春18きっぷに520円の指定席券の組み合わせだけで長野県の松本駅や白馬駅まで寝てる間に移動できるのです。

 

今回は格安旅行で大活躍の青春18きっぷ活用例として、都内から日帰りで長野県、山梨県の……

 

f:id:akasofa:20160730012651j:plain

ツウだけが知っている鄙びた共同浴場の温泉あり!

 

f:id:akasofa:20160730005705j:plain

ちょっと珍しいご当地グルメあり!!

 

 

f:id:akasofa:20160730220802g:plain

無限に眺めていられるような良い車窓あり!!!

 

そんな旅をご紹介します。さあ、この夏は18きっぷで出かけよう! 

完!

 

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「……これでこの記事終わりですか?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「いやいや冗談ですよ……具体的に順を追って説明します。まずは18きっぷの基礎から!」

f:id:eaidem:20160803102201p:plain

まずは改めて青春18きっぷの概要をまとめます。そんなに難しいことはないです!

 

JRの普通列車が1日あたり2370円相当で乗り放題! 

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「何と言ってもコレですね。でも鈍行ばかりだと新幹線に乗りたくなりませんか?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「当然別料金がかかりますが、時間の都合や接続の悪い区間で乗ることもありますよ。18きっぷ旅でちょっとだけ新幹線を使うと信じられないほどのスピードで移動できる感覚になるので皆“ワープ”と表現します」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「あー、なんかわかるなワープ」

 

1枚で5回分セット。1人で5日分でも、5人で1日でも使い方は自由!

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「5回分セットで11850円てことですね。5回って絶妙に難しいですね…」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「18きっぷの期限が間近だと金券ショップも買ってくれなくなるので、よくシーズン終了間近には消化試合みたいな乗り鉄をしている人を見かけたりしますね」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「消化試合って何だよ」

 

オッサンでも小学生でも、何歳でも利用可能!

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「学生が使うイメージがあるので最近まで18歳までしか使えないとか勘違いしてました…!」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「私のようなオッサンもガンガン使えます! 例えて言うなら永遠に17歳の声優さんも実際には」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「おいやめろ」

 

 

鈍行のみってしんどい? そうでもない!

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「鈍行でめちゃめちゃ遠くに行く人とかが、静岡の横の長さの悪口を書いてるのをよく見かけます」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「いえいえ、近場でも十分活用できます! 目安としては片道1185円かかる距離なら得になりますし、途中で何度か乗り降りするなら都度きっぷを買うより安くなるはずです。まあ一日乗り通しも楽しいですけど」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「楽しいの?」

 

 

夜行列車と組合せて格安で遠くに行ける! 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「えっ、北斗星とかはこの間廃止になりましたよね?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「 夜行快速【ムーンライトながら(東京⇔大垣間)】【ムーンライト信州(新宿⇒白馬間)】というのが今も臨時列車として18きっぷシーズンに合わせて運行しています。520円の指定席券と18きっぷを組み合わせれば激安で夜中のうちに遠くに行けます!」

 注:北斗星は【寝台特急】だったのでどのみち18きっぷは使えませんでした

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「どうやって乗るかとか指定席券買うか全然わからないですね…」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「運行日はJRのプレスリリースや時刻表をチェックする必要があって、予約は1ヶ月と7日前からJRのえきねっとで可能です。後はサイバーステーションというサイトでほぼリアルタイムな指定席の空き状況はチェックできます」

 

www.eki-net.com

 

JR CYBER STATION

 

 

実録:青春18きっぷ 松本〜新宿 日帰りモデルコース

ここからは、18きっぷを実際に使った日帰り旅行の一例をご紹介します。

f:id:akasofa:20160730225404j:plain

今回は新宿から松本まで夜行で行き、新宿まで途中下車しつつ戻るというコースです。

 

■前日の23:54 新宿駅発

 

f:id:akasofa:20160729235137j:plain

18きっぷ、夜行快速ムーンライト信州の指定席券、そして新宿→立川までの片道きっぷ。この3点セットがあれば格安旅の準備は完了!

 

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「なんで立川までのきっぷを?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「18きっぷは0時から1日乗り放題になるんですよ。新宿から乗ったら次の立川で0時を越えた扱いになるので、そこまでは普通のきっぷを買うんです。検札の車掌さんにこの組合せで出すと無言で18きっぷに翌日日付のハンコを押してくれるくらい乗り鉄的には常識になってます」

 

f:id:akasofa:20160802225819j:plain

出発が0時前なので「0時を過ぎてから」18きっぷを発動させる! というワケです。

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「要は2370円+520円+470円で松本まで行けちゃうわけか。更に丸一日分の交通費も18きっぷで済むとしたらめちゃめちゃオトクですね」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「でもムーンライトは指定席が取りにくいので、これにこだわらず片道は新幹線や夜行バスとかも柔軟に使っていいと思いますよ。それを差し引いても18きっぷは相当オトクなので」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「確かに。でもこういうきっぷのルールの難しさが鉄道よりバス、ってなるところじゃないかな…」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「それはまったく仰る通りですね…なんかごめんなさい」

 

f:id:akasofa:20160801210659j:plain

ムーンライト信州の車内はこんな感じ。特急型の車両なのでゆったり。照明は消えないので明るいと寝られない人はアイマスクを持っていきましょう。

 

 

 

■4:35 松本駅着

 

f:id:akasofa:20160730192637j:plain

あまりにも早く着きました。真夏だけど車内と早朝は寒いので上着を持ってきて正解。

 

 

早朝すぎてどこも閉まってるので、松本駅から出ているローカル線、松本電鉄上高地線の乗り鉄をします。

(興味の無い方は駅前のマックなどで時間を潰すのも良いかと思います) 

f:id:akasofa:20160801013228j:plain

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「これに乗って、どこに行って、何するんですか?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「新島々駅というところまで往復します。本当は登山や温泉地への玄関口なのですが、今回は特にソッチには用事が無いので…」

 

 

f:id:akasofa:20160801013217j:plain

f:id:eaidem:20160805141545p:plainポケモンGOでジムリーダーになってきました

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「わざわざここまで来て何してんの」

 

 

f:id:akasofa:20160801013238j:plain

ジムリーダーになった後は松本駅まで戻り、今度は市街地からバスで30分ほどの浅間温泉という温泉街まで行きました。

 

 

 

f:id:akasofa:20160801013442j:plain

この「仙気の湯」という共同浴場が朝6時からやっていてオススメです。勿論お湯はザブザブのかけ流し!

 

 

 

 

f:id:akasofa:20160801013430j:plain

帰りは買ってあった牛乳パンを食べながら。これ、なにげに信州名物です。

 

 

f:id:akasofa:20160801013250j:plain

個人商店のパン屋などによって牛乳パンのクリームの量などは様々。色々探して食べ歩くのも楽しいかも。

 

f:id:akasofa:20160801230542j:plain

その他、今回は買えませんでしたが「ポンちゃんラーメン」といった信州名物を買って帰るのも良いかもしれません! 

 

 

■8:38 松本駅発 ⇒ 8:55 塩尻駅着

塩尻駅では一部のマニアに有名な「信州そば」でそばを食べます!

 

f:id:akasofa:20160730012834j:plain

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain入り口せまっ!!

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「狭さで有名なんですよ。もちろん味も美味しいですけど。敢えて持ち帰りにしてホームで食べるのが風情があって最高なんです」

 

 

 

f:id:akasofa:20160730012819j:plain

 

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「都会の喧噪とは無縁なホームに座り、ときどき停まる列車を眺めながらそばを食べる……とても贅沢な時間です」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「これは風情があって良いな…!」 

 

 

f:id:akasofa:20160731001713j:plain

腹ごなしに塩尻駅周辺を小一時間ほど散歩。味のある街並みが続く。

 

 

f:id:akasofa:20160731001314j:plain

これ、なんと現役の映画館!シネコンに慣れた今となってはかえって新鮮!

 

 

■11:05 塩尻駅発 ⇒ 11:26 上諏訪駅着

塩尻から上諏訪に移動。諏訪湖の周辺は温泉があちこちで湧いており温泉旅館や共同浴場が多く存在します。特にオススメなのは上諏訪駅から徒歩10分ほどのところにある共同浴場【大和温泉】です。上諏訪の共同浴場は地元の方専用が多いのですが、こちらは一般客も歓迎してくれます。

 

 

f:id:akasofa:20160730012621j:plain

めちゃめちゃ入り口がわかりにくいのですが……大和温泉の入り口はどこでしょう?

 

 

 

 

 

f:id:akasofa:20160730012553j:plain

正解はここ! 完全に「ひとん家」って感じですが遠慮無く入っていきましょう。 

 

 

f:id:akasofa:20160730012603j:plain

暗いトンネルを抜けるとそこは……!! 

 

 

f:id:akasofa:20160730012637j:plain

涼み場所?な中庭でした。大和温泉、この「知ってる人しかたどり着けない秘湯」感は凄いですね。

 

 

 

 

f:id:akasofa:20160730012534j:plain

大和温泉のご主人にお話を伺いました。元々は自宅用のお風呂のつもりだったのでこのような構造なのだそうですが、紆余曲折あってこの場を共同浴場として提供しはじめたのだとか。「この辺でも珍しいお湯なんですよ」と、その源泉の場所やお湯の配管ルートなども説明してもらってすっかり上諏訪の温泉ツウ気取りです!(ありがとうございました)

 

 

f:id:akasofa:20160730012651j:plain

そしてこれが大和温泉です。ちょっと硫黄の香りがしつつヌルヌルしてマロッとしたエメラルドグリーンのお湯が特徴的。急にステンレスを使った浴槽は「最初タイルだったけど、内装屋さんにデカいタイルを勝手に貼られて、すぐ剥がれちゃったんだ……」ということでした。これはこれで良い!

 

f:id:akasofa:20160731004240j:plain

ああああああああああああ最高最高最高!!! 永久に入っていられる!!!!

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「オッサンの入浴シーンは別に要らん」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「(セルフで撮るの結構大変なのに…)」

 

 

 

f:id:akasofa:20160730012715j:plain

大和温泉の近くにある地元の方専用の共同浴場「平湯」はなんと大正時代の建物! 映画『テルマエ・ロマエII』のロケで使用されたとのこと。

 

 

■11:26 上諏訪駅発 ⇒ 14:00 小淵沢駅着 

 

上諏訪の温泉を堪能した後は、引き続き新宿を目指して東に進みます。

 

f:id:akasofa:20160730012429j:plain

小淵沢止まりの列車だったのでなんとなく1本見送ってみました。そういう気まぐれも許容されるのが18きっぷの良さ。なお左側の列車は小淵沢駅から別れて走る小海線という高地を走るローカル線です。

 

 

f:id:akasofa:20160730220802g:plain

この辺の車窓は本当に最高!!!! 「ザ・旅」って感がたまりません。

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「あ、これは旅に出たくなる」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「ですよね」

 

 

■14:30 小淵沢駅発 ⇒ 15:21 甲府駅着

 

山梨県の県庁所在地、甲府ではこの土地ならではのご当地グルメを堪能したいと思います。

 

f:id:akasofa:20160730005655j:plain

甲府駅から徒歩15分ほどにある【魚そう本店】さんです。こちらで頂くのが……

 

 

f:id:akasofa:20160730005705j:plain

こちらのお寿司!

なぜかマグロやエビにもデフォルトで甘だれが塗られているのが甲府の寿司の特徴。1カンがやたら大きいので親切?に真ん中で半分に切られています。

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「海無し県の山梨なのに寿司……これ失礼ですけど美味しいんですか?」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「私も正直食べるまで侮ってたのですが、実際かなり美味しいです! あとこれで1000円ってかなり安いと思います」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「普通の寿司の倍くらいの大きさですね…甘ダレのマグロ食べてみたい」

 

 

f:id:akasofa:20160801012911j:plain

こちらは甲府名物の甘いタレに絡んだ「鳥もつ煮」とそばを一緒に食べられるお得なセット。甲府駅前「奥藤本店」にてムリヤリ食べました。

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「これまた珍しい…しかし連続で食事するんですか」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「乗り鉄旅って食事するタイミングを逸して1日何も食わないとか普通にあるので、代わりに連続で飯を食べるとかも普通にあったりするんです」

f:id:eaidem:20160805141541p:plain冬眠するの?

 

 

f:id:akasofa:20160802231114j:plain

甲府の繁華街も散歩していて飽きない街並みでした。

 

 

■18:08甲府駅発 ⇒ 20:30 新宿駅着 

最後に甲府から高尾、高尾から東京行きへと乗り継ぎ、新宿に戻ってきました。

 

f:id:akasofa:20160730012042j:plain

これで日帰り達成! 翌日仕事でも余裕の時間です。

 

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「目が死んでるように見えますが…」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「生まれつきです」

 

 

f:id:akasofa:20160802233236j:plain

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「まとめると結構盛り沢山で良い旅ですね」 

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「かかった費用は以下のとおりです。一日めいっぱい使い倒してこれで済むならなかなかお得な気がしませんか」

 

f:id:akasofa:20160801013155j:plain

f:id:eaidem:20160805141541p:plain「うーん、1日こんなに動いてここまで交通費抑えられるとは、18きっぷ恐るべし…目が死んでるけど…」

f:id:eaidem:20160805141545p:plain「だから生まれつきですってば」

 

 

……それでは良い鉄道の旅を!! 

 

 

※記事の内容は2016年7月時点の情報です。

 

 

ライター:赤祖父

f:id:eaidem:20150818100714j:plain

三流情報サイト「ハイエナズクラブ」の執筆や編集をしたり「全国ノスタルジー探訪」というブログを書いたりもしているインターネット大好きおじさんです。鉄道や写真も好きです。スマホの電波が入らない場所に行くと急に弱気になります。

Twitterアカウント→@akasofa

【夏休み旅行】おもしろい旅は「地元の人」と「不確定要素」を巻き込むと生まれる

$
0
0

f:id:kakijiro:20160814171304j:plain

 

f:id:kakijiro:20160814171308j:plain

 

f:id:kakijiro:20160814171314j:plain

 

 

f:id:kakijiro:20160814171713j:plain

お〜い! みんな夏休み満喫してる〜〜?

 

 

f:id:kakijiro:20160814171751p:plain

私が務める株式会社バーグハンバーグバーグは、「社長が長期タイ旅行に出かける」という理由でご覧の通り11連休です。すでに9日が経過していて「俺はまだまだ休める」とダメな自信が強固になりつつあるんですが、前半はしっかりジモコロ編集長として取材リサーチを兼ねた旅に出ていました。

 

今回は今後のジモコロ予告版的な意味合いも含め、ダイジェストで振り返ってみようと思います! 

 

山梨県の発酵デザイナー宅にお邪魔してみた

f:id:eaidem:20160814172736j:plain

まず夏休み取材旅行のオープニングアクトを飾ってくれたのは発酵デザイナーとして活躍中の小倉ヒラクくん。山梨県に移住し、スーパーDIY精神で素晴らしい自宅を構えているということで「取材がてら泊まりに行っていい?」と甘えてみました。

 

今年の3月に彼と長野を巡る旅をして、その軌跡はこの記事に一部集約されています。

 

f:id:kakijiro:20160814172200j:plain

前々から発酵文化に興味があったので、今回満を持して話を聞きに行ったわけです。するとパンや納豆など、発酵の過程を実体験できる素晴らしい場が用意されていました。ヒラクくんの自宅は空気中に酵母がヤバいほどいるそう。さすが発酵デザイナー。

 

f:id:eaidem:20160814173407j:plain

同行したジモコロライターの根岸達朗も、ここ数ヶ月間は発酵に夢中。自宅で毎朝、ぬか床をひっくり返すのが至高の時間だと語っていました。

 

f:id:eaidem:20160814172939j:plain

見てください。パンをこねくりまわす、この多幸感に満ちた顔。本当に好きなんでしょうね。割と長い付き合いですが、発酵おじさんとしての生き甲斐を見つけると人はこんな良い顔になるようです。

 

 

説明が完全に抜けていますが、「そもそも発酵ってなんだろう?」の疑問に答えられるような記事を近日ジモコロで公開予定です。人類にとって欠かせない発酵文化。日本酒やビール、ワインといったお酒はもちろん、味噌や納豆、パン、ヨーグルトなどなど…もやしもんな世界は日本全国47都道府県を取材する上で避けられません。

 

日本酒の発酵文化はこちらの記事で触れています。興味があればぜひ!

 

f:id:eaidem:20160814174050j:plain

山梨県は行けば行くほどに好きになる。夏の果物が最高!!

 

f:id:eaidem:20160814174510j:plain

こちらは、山梨の超かっこいいフリーマガジン「BEEK」を作っている土屋さんに撮ってもらった写真。「おじさんたちの夏休み」と題してコンクールに応募したい。

 

www.beekmagazine.com

 

 

八ヶ岳の最高スポット「清泉寮」に寄ってみた

f:id:eaidem:20160814174733j:plain

続いてやって来たのは、八ヶ岳の麓にある最強のホテル「清泉寮」。銅像のポール・ラッシュ博士がこの土地に素晴らしい施設を建ててくれたみたいなんですが、アメリカンフットボールを日本に普及するために尽力してくれたり、親日家として様々な活動で貢献してくれたり、エピソードに事欠かないようなとにかく立派な人物です。

 

f:id:eaidem:20160814175408j:plain

ここも小倉ヒラクくんに教えてもらったんですが、宿×温泉×自然環境のかけ算で満足度が異常に高いんです。そしてご飯の美味さ。八ヶ岳の恵みを生かした料理の数々は、都心部でもなかなか味わえないんじゃないかなと。

 

f:id:eaidem:20160814175507j:plain

f:id:eaidem:20160814175543j:plain

f:id:eaidem:20160814175617j:plain

今回はランチをするためだけに寄ったんですが、一人1500円〜2000円の価格帯で幸せな気持ちに浸れるほど最高でした。ハンバーグもパスタもカレーも、そして締めのデザートも全部美味い! 

 

老後は清泉寮に週3ぐらいで通いたいです。

 

長野県「松本」がめちゃめちゃアツいことになってる

f:id:eaidem:20160814180030j:plain

鏡越しに失礼します。さて、山梨県から長野県へ北上し、我々がやって来たのは松本市! 松本城を中心に綺麗な町並みと文化水準の高さを誇り、人気観光スポットとして定着している土地です。しかし、カメラマンの鶴と亀・小林くんいわく…

 

「松本は現在、めちゃめちゃアツいことになってるんですよ!」

 

と息巻いていたため、その実態を調査しに来ました。

 

f:id:eaidem:20160814180605j:plain

僕自身も3年ぐらい前からご無沙汰だったんですが、気づけば市内周辺にゲストハウスが6軒増えたとか、オシャレなお店が増え続けているとか、松本ニューウェーブが起きている様子です。

 

f:id:eaidem:20160814181551j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181711j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181624j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181659j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181732j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181821j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181857j:plain

 

f:id:eaidem:20160814181952j:plain

 

結論:松本市は店舗も人も個性的でおもしろすぎる

 

あえて詳細は語りません。9月末に松本市で開催される音楽フェス『りんご音楽祭2016』と合わせて、改めて取材しようと思います。その上で松本市の魅力を徹底的に伝える記事を制作予定。それまでお楽しみに!

 

f:id:eaidem:20160814182625p:plain

ひとつだけ言えるのは、今回宿泊したゲストハウス「tabi-shiro タビシロ」が超オススメということ。元旅館の物件だけあって空間の使い方、内装デザイン、居心地、オーナー・キヨさんの人柄…どれもパーフェクトでした。

 

レンタル自転車(100円)を借りて松本市を散策すると、レンタカー移動や電車移動では見えてこない地元の顔が見えてきます。ジモコロの記事公開までに「松本に行きたい!おすすめのお店が気になる!」という人がいたら、個人的にTwitterやFacebook経由でメッセージください。

 

2日目はAirbnbで手配した宿に泊まったんですが…

 

f:id:eaidem:20160814192341j:plain

 

f:id:eaidem:20160814192417j:plain

 

f:id:eaidem:20160814192449j:plain

元ラブホテルを再活用した宿泊施設で面白すぎました。部屋は豪華で広いし、しっかりしたお風呂もついてるし、ガレージで遊べるし。これで一人4000円ってヤバすぎる。

 

f:id:eaidem:20160814192622j:plain

田んぼのど真ん中にドーンとあって、良い意味で海外っぽい佇まい。シェアリングエコノミーの文化は、地方でこそ輝きを放つのかもしれません。

 

f:id:eaidem:20160814193342j:plain

いやー、ここはもう一度泊まりたいな。ゲストハウスと併用すれば楽しい旅になること間違いナシ!

 

安曇野&白馬の余韻

f:id:eaidem:20160814183504j:plain

松本市を充分に堪能した後、本当は乗鞍岳に登る予定だったんですが…。初の祝日「山の日」ということもあって超混雑の情報が入ってきました。さらに駅前に物々しい雰囲気と大勢の警官の姿。何事かと思って調べてみたら、登山好きの皇太子が上高地を訪れるというじゃないですか。

 

f:id:eaidem:20160814183236j:plain

混雑に巻き込まれたくない!

 

その一心で急遽予定を変えて、安曇野市方面へドライブすることにしました。いやー、これが大正解。北アルプスが目の前に迫り来る景色。目の保養になるレベルの田園風景を眺めながら、好きな音楽を聴いてるだけで「最高ーー!!」と興奮しきりでした。

 

f:id:eaidem:20160814184127j:plain

途中、休憩がてら止まったコンビニの近く。これから黄金色に成長していく稲穂を眺めながら、地元のおばちゃんが握ってくれたおにぎりを食べる。

 

f:id:eaidem:20160814184526j:plain

日常に農作業が入ってくる人たちにとっては当たり前の時間も、都会育ちの自分たちにとっては非日常かつ、牧歌的な体験になるんですよね。めっちゃいい。

 

f:id:eaidem:20160814184716j:plain

途中、立ち寄った「木崎湖」。山と湖の抜け感がダイナミックて「こんな良い湖あるのかよ!もっと早く教えてくれよ!」と長野県民に嫉妬しました。

 

ちなみに木崎湖はこのあたり。白馬の手前あたりにある。

 

f:id:eaidem:20160814184749j:plain

恰幅の良いオジさんがウェイクボードのショップをやっているので、水遊びはしっかりできるようです。流行りのSAPを楽しんでる人の姿もチラホラ。世の中には遊びの達人がやまほど居るんだよなぁ。

 

 

f:id:eaidem:20160814185313j:plain

木崎湖を後にして、温泉目当てで白馬村へ移動。「ヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男III世」とかいうクソ長いマスコットキャラが出迎えてくれました。

 

f:id:eaidem:20160814185444j:plain

顔ハメパネルは必ずやるタイプなんですが、この穴のデカさ…。

ハメさせる気あるのか?

 

立ち寄った温泉は「白馬ハイランドホテル・白馬姫川温泉『天神の湯』」。泉質はもちろん、北アルプスの眺望もOKな露天が良かったです。日帰り温泉600円のコスパも◎!

 

f:id:eaidem:20160814185828j:plain

スネに角をゴリゴリ押しつけてくるヤギとも遊べるよ!

 

f:id:eaidem:20160814185850j:plain

「白馬村と言えば…」と思い出して、急に連絡して会ってもらったのが白馬ギャロップ株式会社を立ち上げたばかりの新井洋樹さん。実は不思議な縁があってですね。 

 


今年の5月に今回同様、長野ツアーをやってその様子を個人ブログにUPしたんです。道中の様子も旅用動画アプリにまとめて発信したら、ジモコロもバーグハンバーグバーグも知らなかった新井さんから連絡が!

 

f:id:eaidem:20160814190622p:plain

確か6月頃、「長野出身者として、あの旅動画を見て感動しました。一度お話を聞かせてもらえませんか?」とメールが届いて、都内で一度ランチをしました。

ジモコロの活動を伝えて、新井さんの想いを聞いて。ブログひとつで新たな出会いが生まれるもんだなと、情報発信の重要性を再認識したというか。「今度、白馬に移ってまちづくり会社をやるので、立ち寄ったら連絡ください!」と別れた矢先だったんです。

 

f:id:eaidem:20160814191146j:plain

白馬村の絶景スポットを紹介してもらったり、

 

f:id:eaidem:20160814191318j:plain

たまたま出会った白馬村副村長に挨拶させてもらったり、短時間ながら有意義な時間を過ごすことができました。新井さん、ありがとうございました〜! 秋の白馬が最高らしいので、また近いうちに訪れます。

 

最後に旅動画をお楽しみください

f:id:eaidem:20160814191625j:plain

というわけで、3泊4日の山梨・長野旅行のレポートでした。出会った人の数、巡った店舗の数、ふと立ち寄った土地の数…正直MPがゼロになるほどの情報量で。紹介しきれないほどの体験をストックすることができました。最高だったな〜!

決め打ちの取材も悪くないんですが、ジモコロの醍醐味である「地元の人を捕まえて」「不確定要素を盛り込む」ように旅程を考えると絶対おもしろくなります。そして、その出会いと体験は必ず次に繋がります。

この記事で、その空気感を少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです!

 

締めは旅の様子をまとめたダイジェストムービーをご覧ください。

 

 

それではまた!

 

書いた人:徳谷 柿次郎

f:id:kakijiro:20160511170425j:plain

ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916

写真:小林 直博

f:id:kakijiro:20151217200120p:plain

長野県奥信濃発のフリーペーパー『鶴と亀』で編集者兼フォトグラファーをやっている。1991年生まれ。ばあちゃん子。生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中。

塩の国へようこそ- まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド(5)

$
0
0

f:id:eaidem:20160817111952p:plain

漫画家・まんしゅうきつこが「お洒落な部屋に改造したい」「出来ればお金もかけたくない」という願望を叶えるべく立ち上がった。眠ってた家を蘇らせるために何をすればいいのだろうか。次々に立ちはだかるトラブルと人間の闇…。まんしゅうきつこ版ビフォーアフターみたいな連載がドアラジオからジモコロへお引越し!


<まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド・一覧>
第5話 

 

f:id:eaidem:20160801134657j:plainf:id:eaidem:20160801135052j:plainf:id:eaidem:20160801135101j:plainf:id:eaidem:20160801135130j:plainf:id:eaidem:20160801135139j:plain

 

<まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド・一覧>

 

書いた人:まんしゅうきつこ

f:id:kakijiro:20160413181453j:plain

埼玉県出身。日大芸術学部卒。漫画家、イラストレーター。2012年5月にHP「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」を開設。「アル中ワンダーランド」(扶桑社)、「まんしゅう家の憂鬱」(集英社)が絶賛発売中 Twitter ID→@kitsukomz 

男風呂の覗き見に大興奮! 黒川温泉の「初体験」に感動が止まらなかった

$
0
0

f:id:eaidem:20160817142105j:plain

こんにちは、ライターの和久井香菜子です。


以前ジモコロで、視覚障がい者の友人とやっている事業「ブラインドライター」をご紹介いただきました。

それがご縁で、その後も何本かテープ起こしのご依頼をいただきました。

それで5月に行ったテープ起こしの仕事が、黒川温泉へ取材に行ったときのものだったんですよね。納品後、柿次郎さんに「音声の中で思いつきで言ってた企画マジでやることにしました」と、ジモコロ熊本復興ツアーのことを教えてもらって。正直こんな感想でした。

 

「なにそれ、復興支援ツアー……?」

 

 

話を聞いた1時間後には航空チケット取ってました。我ながら決断が早い。

だけど迷う隙がないくらい、ステキな企画だなあと思ったんです。

和久井は別段、技術も資格もあるわけではない普通のライターです。東日本大震災のあとになんどか東北に行ったときは、瓦礫の山を目の前にして、ただ皆さんに歓待されて飲んで食って帰ってきてしまいました。「なんて役立たずなんだろう」と思ったものです。

 

しかしこのジモコロ熊本復興ツアーは、飲んで食って帰ってくるのが目的なんです。

……こんなに美味しいツアーに行かないでどうする、飲んで食って書くだけしかできないライターが!!

 

 

というわけで、ジェットスターのセールチケットを買ったら、ツアーの日程前後に1週間熊本にいることになりました。取材やらボランティアやら、いろいろセッティング。 貧乏性はいつでも長旅です。

 

現地の印象

f:id:eaidem:20160817141239j:plain

さて、実際に現地に行ってみると、自分がイメージしていた状況とはまるで違うことに驚きました。

メディアが報道するのは、被害の大きいところとか、非日常になった部分がメインなんですよね。もしくは、いつまで経っても衝撃的な画像が頭に残っているのか。実際には思った以上に被害の少ない地域がたくさんありました。

もちろん、いまだ辛い生活を強いられている土地もあります。ただ観光視点では、熊本を訪れるまでの私同様にネガティブなイメージで足を運べない人も多いのではないでしょうか。その引っかかりが解消しただけでも来た甲斐がありました。

 

f:id:eaidem:20160817141536p:plain

ツアーのあとに3日間ほど1人で阿蘇へ。大きな被害を受けた「阿蘇神社」は、完全復旧に10年の時間を要し、約20億円以上の費用がかかるといわれています。また、JRがまだ開通していない駅では、こんな話を聞きました。

 

「震災以来、この付近は誰からも忘れられてしまったようです。観光客は来ない、芸能人が炊き出しに行くのは南阿蘇」

 

普段は外国人観光客で賑わうという阿蘇駅前はガラガラ。「大変だ」という情報はたくさんありますが、「無事だ」という情報はあまり発信されていなかったように感じます。どの店がやっていて、何のサービスがやっていないのか、ネットで探しまくっても、よくわからないんです。

 

そんな中で、クリエイターが100人も集まって、黒川温泉の情報発信をすることが、どれだけ意味のあることかを改めて感じました。

 

f:id:eaidem:20160817141404j:plain

そんなツアーを準備からアテンドまで駆け回り、盛り上げてくださった女性がいます。黒川温泉観光旅館協同組合代表理事の北里有紀さんです。

ツアー後に改めて、北里さんにお話を聞いてみました。 

 

メディアが伝えたいイメージで情報が伝わってしまう

f:id:eaidem:20160817144347p:plain

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「実は荒々しく和太鼓を叩く北里さんの姿がちょっと萌えで……」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「ありがとうございます(笑)」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「とりあえず、その気持ちを伝えたかったんです! 本題ですが、国と連携した『九州ふっこう割』が人気だと話題になっていますね」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「7月後半から、おかげさまでほぼ満室になるくらいのご予約をいただいています」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「わー、よかったですね……!」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「ふっこう割は第1弾が9月30日まで、割引率を変えて12月まで続く予定です。いつもは8月〜11月までがもっとも繁忙期なので、この活性化がずっと続いてくれるとよいのですが」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「ジモコロ熊本復興ツアーで黒川温泉にお邪魔して、災害の爪痕がまったく見られなかったことに驚きました。一方で、ツアーの様子をSNSに書くと、何名かから『大丈夫なの?』という声が」

 f:id:kanako-wakui:20160731124043j:plain

 

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「今回は、メディアの報道の力をまざまざと感じました。震災直後、新聞やテレビからの取材があり、『被害はどうですか?』と聞かれました。ところがこうしたメディアの多くは、取材前から決まったストーリーを求めているようなんです」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「ちょっと想像がつきます。記者によっては取材前から『こう言わせよう』と決めてしまう場合があるんですよね」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「メディアが求めているのは『こういう被害が多くて、お客さんがいなくなった』という話のようでした。一度世の中にイメージが作られてしまうと、なかなか払拭できないんです。しばらくはキャンセル処理に追われる日々でした」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「メディアの情報が、ますます顧客の足を遠のかせてしまうんですね」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「震災から1カ月くらい経った頃、話し合いをさせていただいて『正確な情報は伝えなくちゃいけないが、がんばれるところから頑張る。前を向いて元気を発信していきたい』という内容に変更させてもらいました」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「そういう話し合いって必要ですよね、きっと。それに現地からは『ぜったい大丈夫だからおいでよ!』となかなか声が上げられないと聞きます」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「福岡や熊本からのルートは確保されているのですが、『大丈夫ですか?』『安全なんですか?』と聞かれると、終息宣言も出ていないですし、こちらからは安全と言えない状況でした」

 

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「だからこそ、ジモコロ熊本復興ツアーのような外部の団体が情報を発信することに意義があるんですよね」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「本当に有難かったです」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「しかし100人って、すごい数でした……。ツアーに誘った友人とは2日間、ほとんど顔を合わせなかったです。これだけの人数を動かす企画は、準備が大変だったのではないかと思います」

 

f:id:eaidem:20160817142530p:plain

 

f:id:eaidem:20160817142535p:plain

 

f:id:eaidem:20160817142652p:plain

 

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「今まで経験をしたことのない企画でしたが、私たちはお客様をアテンドするのが仕事です。苦労と言うより、楽しんでいただけるのかが最後まで不安でした」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「そんな……!」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「予約が真っ白になった状況で、声を上げてきてくださった皆様に、同情してもらうのではダメだなと思って。ただ、シンプルに南小国や阿蘇を好きになって帰ってもらいたいと思っていました。それだけがどうなのかなと気になるところです」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「心配無用です! 人も、宿も、場所も、たいへんステキで、すぐに戻ろうと思っているくらいです。とにかくご飯は美味しいし、イベントは盛りだくさんだったし、あれ、参加費でペイできているんですか?」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「夕食は、各旅館から1名は手伝いに来てもらい、あとは会場の料理長がかなり頑張ってくれました。予算のお話をして、その中でできる限りのことをしてくださったと思います」

 

f:id:kanako-wakui:20160731123525j:plain

 

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「あんな美味しいビュッフェは生まれて初めてでした……!」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「よかった! その他にも、関わってくださった方々には、惜しみない協力をいただいています。もしかしたら収支的にはマイナスの部分もあるかもしれませんが、それよりもみなさんのお気持ちが嬉しくて、それに応えたいと思っていたんです」 

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「あれはホントに格安ツアーだったと思います。なにより、南小国の方々の気持ちがこもっていて、すごく心地よかった。同室だった女性は『すぐにまた来る』決意の証として入湯手形を購入していましたよ。ツアーでいただいたものがすでにあるのに!」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「ありがとうございます、とても光栄です」

 

人生初の男湯を覗く体験

f:id:kanako-wakui:20160731131100j:plain

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「黒川温泉、古き良き風情があって、ものすごくステキな温泉街でした。純和風なんだけど、古びてなくて、どこも綺麗で」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「そう言っていただけると……」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「ところでちょっと、下品な話をしてもよいでしょうか」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「えっ?」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「入湯手形でいくつか温泉に入りましたが、そこで生まれて初めての体験を……」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「???」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「それは、男湯を覗いたことです!」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「あー、はいはい」

 

f:id:eaidem:20160817143005j:plain

黒川温泉名物の「洞窟温泉」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「女は普段覗かれるばっかりの立場ですが、それが逆転して覗く立場というのに、めちゃくちゃ興奮しました! といっても、大したものは見てなくて、洞窟風呂の窓から誰もいない男湯を見下ろしたのと、脱衣所の入り口付近を川越しに覗いたくらいなんですが」

 f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「温泉によっては川から丸見えのところもあるのですが、開放的な雰囲気を楽しんでもらえるようなギリギリのラインで設定してるんですよね」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「確かに、肝心なモノは全く見てません。見たいかと言われると別に興味もないですし」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「洞窟風呂も、女湯と男湯が鉄格子のついた窓でつながっていますが、段差があるうえ位置をずらしてあるので、女湯のほうは見えにくくなっているはずです」

 f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「それも感じました! 女湯のほうが少し高くなっているので、向こうからはきちんと見えないかもな、と思っていたんです。実は知らずにお風呂内を探検していたら、うっかり鉄格子越しに男湯を覗いてしまって……。一緒にいた女性は男湯の男性陣と目が合い『イヤな顔をされた』と言っていましたが、向こうからは見えてなかったのかもしれないですね」

 

 

f:id:eaidem:20160817143223j:plain

こちらも名物の満願寺温泉「川湯」。丸見えすぎる環境!

 

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「そうかもしれません。中心部の旅館は、とても狭いスペースの中に林立しているので、どこまで封鎖するかはせめぎ合いなんです」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「なるほど」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「開放感と目隠しのバランスには各旅館とも悩みがあって、木を植えたりしながら、なるべく自然のままの温泉を感じてもらうと努力しています」 

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「すごく実感します! 女湯や脱衣所がすごく開放感があって。『ここ、人が通ったら見えるんじゃない?』と思うところがいくつもあったんですが、その開放感が逆に安心感にもつながりました。『悪い人がいないからできるんだな』って」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「旅先って、予期せぬ出会いを楽しむ機会でもあると思うんです。プライベートが確立されているよりは、温泉街の出会いを楽しんでほしいんです。人に近いのが、黒川の特徴ですね」

 

f:id:kanako-wakui:20160731130627j:plain

ツアーで同室になったのは見知らぬ女子3人。20分後には温泉で裸の付き合いしたおかげで、めちゃくちゃ仲良くなりました。恐るべし温泉マジック

 

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「2日目は、アロマ好きなので林業ツアーに参加したんです」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「小国杉ですね」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「フリーランス、流しの木こりさんがいるって初めて知りました!」

 

f:id:kanako-wakui:20160801162505j:plain

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「ナマ伐採が大迫力で、大興奮」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「わかります」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「木造建築物が減っているため、木材の値段がどんどん下落しているというお話を聞きました」

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「木こりを専業にしている方は数少ないようです」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「小国杉のアロマオイルがあまりにいい香りだったので、特別に分けていただいて買っちゃいました」

 

f:id:kanako-wakui:20160801162457j:plain

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「喜んでもらえて何よりです」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「そのあとにお昼ご飯をいただいた『田舎料理四季の里比良』は、量は多いのにどれも美味しいし、店長のおじさんはかわいいし」

 

f:id:kanako-wakui:20160801162512j:plain

f:id:kanako-wakui:20160801162519j:plain

f:id:kanako-wakui:20160801162524j:plain

f:id:kanako-wakui:20160801145144p:plain「楽しんでいただけたみたいでよかったです!」

f:id:kanako-wakui:20160801145657p:plain「夢のように楽しかったです! また遊びに行きますね!!」

 

最後に 

最近、こんな話を聞きました。 「稼ぐ」という言葉は、昔は「お金を得ること」ではなく、「仕事に励むこと」を言ったそうです。仕事に励んで、得るものはお金だけじゃない。目先のお金に目がくらむといい仕事はできないし、そんな仕事は長続きしません。金額や未来にこだわらずに、目の前のものに誠意をつくしていると、自然とうまく回っていくんだなと感じています。

今回なんて「いいことしに行ってやろうウシシ」と思っていたのに、あまりに手を尽くしていただいて、逆に申し訳ないくらいの気持ちです。

 


仕事をやりくりして100人もの人がとりあえず集まり、その気持ちに感謝して南小国の人たちが歓待してくれる。その気持ちが嬉しくて「また来よう」「誰かを連れてこよう」と思う。止まっていた自転車を、ぐん!と漕ぎだした感じです。

きっとこれから、スイスイと進んでいくんじゃないでしょうか。

東京から、ジェットスターのセールを使うと黒川まで片道5000円くらいです。ふっこう割を使わずとも、またすぐ行きます!

 

ジモコロ熊本復興ツアーのその他のレポート記事はこちらで読めます!

 

 

書いた人:和久井 香菜子

f:id:eaidem:20160817143642j:plain

少女マンガ攻略・解析室室長、ライター。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)。サイゾーウーマンで『そうだ、ソルティー京都行こう』『マンガ・日本メイ作劇場』を連載するほか、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。 Twitter ID→@kanawaku124

4年連続1位! 謎の食べログレビュアー「博多のあん」に話を聞いてきた

$
0
0

f:id:eaidem:20160802183912j:plain

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。今日は福岡県の博多に来ています。

 

f:id:kakijiro:20160614182904p:plain

博多といえば屋台文化を筆頭とする「美味しい食べ物」のイメージが強いですよね。そして、そのお店を探す方法といえば…? 

 

みんな大好き「食べログ」!

 

「失敗しないお店選び」をコンセプトに、ユーザー参加型のWEBサービスとして多くの人に愛用されています。読者投稿のクチコミ、そしてレビュアーの評価点数による集合知。評判の良いお店からランキング形式で表示される仕組みは、日本の外食文化を大きく変えたと言っても過言ではありません。

僕も東京に移り住んでからというもの、食べログ基準のお店選びを長年続けています。人間が持つ外したくない欲求は、世の中の情報が増えれば増えるほど肥大化していくのでしょう…。食べログ評価3.5前後がちょうどいい…。

 

f:id:kakijiro:20160614185927j:plain

ここからが本題。

今年の1月頃、食べログのサイトを舐めまわすように見ていたら、食べログレビュアーのランキングページを発見しました。

「そういえば、食べログを支えるレビュアーの存在って謎だな…」と思ったんです。

例えば、以前から神と崇めている有名レビュアー「でかぷり夫」「うどんが主食」といった人たち。良質な長文を投稿してくれるからこそ、文化が支えられているわけじゃないですか。

 

f:id:kakijiro:20160614184413j:plain

…と思ったら、レビュアー 界の順位もめまぐるしく変化していて、アクセス数ランキング1位(2016年1月末時点)は「hakata-ann」さん! 何者なの!? 

 

f:id:eaidem:20160801045123j:plain

2016年7月末時点でも2位にランクイン。この安定感よ…!

 

プロフィールには「博多のあんのラーメンランチ&B級グルメ日記」と書かれていて、名前通り福岡の飲食店中心に活動しているそうです。これまで約2000件のレビューを投稿している猛者!

 

気になる!

 

レビューを続けるモチベーションを知りたい!

 

ついでに博多で美味いもん食べたい!

 

 

 

実際に会ってきた

f:id:eaidem:20160802184433j:plain

というわけで博多に飛んで、食べログトップレビュアーの博多のあんさんに会ってきました。

 

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「本日はよろしくお願いします。いきなりなんですけど、あんさんはいつも着物なんですか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「そうですね。茶道や日本舞踊をやっていたので。あと、食べログレビューの活動きっかけで地元情報誌やテレビ番組にも出演する機会もあるんです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「ほほー、ただのレビュアーではないんですね。早速本題ですが、食べログレビュアーを始めたのはいつ頃からですか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「約8年前から福岡のグルメブログをやっていて、そこから派生して食べログのレビュアーを始めたのが5年前でしょうか。毎日記録していたので、せっかくだからブログの延長で食べログに登録したのがきっかけですね」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「そこから約2000件のレビューを積み上げてきたんですね。すごい…。前々から気になっていたんですが、お金を貰えるわけでもないのに毎日淡々と続けられるモチベーションってなんなんでしょうか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「う〜ん…。一言で言うなら福岡愛ですね」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain愛!!

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「はい。福岡は博多港が近いこともあって、どこの飲食店も新鮮な食材を仕入れやすい土地なんです。東京ほどテナントの家賃も高くありませんし。だからこそ博多のゴハンは美味しいっていうブランドになってると思うんです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「なるほど。直前に調べてきたんですが、博多は立地的に大陸系との交易が古くから盛んですよね。ゆえに独自の食文化が浸透している。都市の歴史でいえば、奈良や京都よりも古いとか。その情報だけでポテンシャルすごいんだろうなーと想像していました」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「にも関わらず、私がブログを始めたときは博多グルメの情報がネット上にすごく少なかったんです。人間、食事は毎日するものじゃないですか? 始めた当初はインターネットの勉強も兼ねて、食べに行ったお店の記録をブログにUPしていって…。毎日続けて行くとやっぱり反響が出てくるんですよね。その反応が嬉しくて続けられているのもあると思います」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「その結果、食べログレビュアーランキングで4年連続1位に選ばれて。あんさんのページに一週間で約3万人が訪問してるわけですもんね。レビューをする上でのこだわりはありますか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「私の主観で美味しい/美味しくないを判断せず、客観的な情報にまとめるようにしています。どの場所にあるのか。駐車場はあるのか。ほかにも営業時間、メニュー、料金など、読者が求めている情報を丁寧におさえる意識は強いです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「なるほど。あんさんのレビューはとてもフラットな視点ですもんね。食べログレビュアーって『小生は〜』から入るような、癖のある自分語り文章と真逆で驚きました」 

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「写真も一定のルールに則って撮るから早いんですよ(笑)。車で来た人は駐車場の存在を気にするので最寄りの駐車場の写真を撮ったり、卓上の調味料スペースを撮ったりだとか。博多ラーメンでいえば、辛子高菜が入れ放題かどうかも大事な情報じゃないですか」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「その視点はおもしろいですね。書き手の主観性やエゴは時に邪魔だもんな〜! ちなみにレビュー1本どれぐらいの時間をかけていますか」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「写真の加工を含めて…2時間ぐらいはかかってるかな」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「2時間をほぼ毎日! ヘタなライターよりも書いてる可能性がありますね。少なくとも僕より書いてる時間が長いと思います」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「もう習慣になっちゃってるので、書かないと気が済まない感じですね(笑)」

 

f:id:kakijiro:20160614161153j:plain

取材の流れで訪れた西新駅前の博多ラーメン店「しばらく」

 

あんさんのレビューを読んでみると…

西新は、地図上で見ると遠そうですが、福岡空港から地下鉄1本で来られます。
所要時間は19分です。博多駅からだと15分弱位です。
地下鉄・西新駅より徒歩3分位のところにあります。
私も以前はよく行ってましたが、ここ3~4年は新規開拓が忙しくてご無沙汰になってました。

数年前に一度閉業し、再起復活したお店ですが、現在は再び老舗の雰囲気を醸し出しています。
営業時間と定休日も変わってますよ。
現在は早仕舞いになりましたね。

お店に入ると、フレンドリーなおばちゃんの応対がイイですね。
地元系のうどん屋と通ずるものがあります。
カウンター席もありますが、本日はグループ用の広めの席を利用させて頂きました。

ラーメンのメニューです。
後付けかもしれませんが、老舗の割にはメニューが多いです。
基本のラーメンは、520円と地元民に慣れ親しんだ価格帯に収まってます。
近年、全国的にラーメンがご馳走化・高級化して、値段も高価格帯になっている傾向の中、
なんと親しみやすい価格でしょうか♪

お店を訪れるときに知りたい客観的な情報が分かりやすく書かれています。このフラットな視点、肩に力の入っていない文体こそ、食べログユーザーに長く愛されている秘訣。これからレビューを始める人向けの参考になりそうです。

 

f:id:eaidem:20160801013047p:plain

写真一覧と各コメントも端的で分かりやすい!

 

f:id:eaidem:20160802181520j:plain

オーソドックスな博多ラーメン。澄んだスープはあっさりしていて、めちゃめちゃ美味かったです。これが本場の味? 煮玉子を乗せても640円という安さもスゲェぜ!

 

お店選びのポイントと点数のつけかた

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「そもそものお店選びはどういった基準で?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「現時点では、まだ誰も紹介していないお店を積極的に選ぶようにしています。前から気になっていたお店はもちろん、新規オープンのお店も。逆にあまり行かないのは人を選ぶお店でしょうか。一見さんお断りとか、頑固店主のお店とか。楽しみ方がまた違うとは思うんですが、誰でも入りやすいお店を選ぶようにしています」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「会話禁止やスマホ禁止など、条件の多いラーメン屋さんはチラホラありますもんね。博多にはスープより先に麺を食べると追い出される、最初に高菜を入れると追い出される…という超難易度の高いラーメン屋もあるって聞きました」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「そういったお店も美味しくて愛されてますからね(笑)」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「あるにはあるんだ。ハンター試験みたいだなぁ。でも、怖いもの見たさで行きたくなりますね」

 

f:id:eaidem:20160802181953j:plain

 

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「聞きにくいことなんですけど、食べログレビューの肝である点数をつける基準ってありますか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「基本的には3.5が基準ですね。高評価にしろ低評価にしろ、一回行っただけで判断するのは恐れ多いというか。そもそも粗探しをしたいわけではなくて、良いところを探すように心がけているので」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「ほ、ほぉぉぉ! 食べログレビュー界の女神だ…!」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「だってネガティブなことを書くとずっとインターネット上に残るじゃないですか。検索したら上位に表示されたりして…それはとても怖いことですよ。だからこそ客観的な情報を集めて、フラットな文章にする必要があるんです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「それは現代のインターネットに一番欠けている部分ですね。名無しの批評家が、主観的な情報を無責任に発信できる時代だもんなぁ」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「それに私は顔を出して活動していますし、分かりやすい着物も着てますからね(笑)。お店の人に迷惑をかけないよう淡々と続ける姿勢が大事なのかもしれません」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「しっかりとしたお考えをお持ちで…。たぶん気になってる人が多いと思うんですが、あんさんの本業ってなんなんですか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「実はグルメは全然関係ないんです。美容クリニックやエステサロンといったインターネット広告の会社をやっていて。ホームページの作成やSEO施策とか」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「意外な情報が!」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「8年前にブログを始めたのも、記事を書いたことによってどんな影響がインターネット上に生まれるのか試していた側面もあるんです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「納得感がすごい」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「最初は趣味の日本舞踊や茶道、和食のお店なんかを紹介していたんですが、全然アクセスが集まらなくて(笑)。ところが博多ラーメンの記事を書き始めたらいきなりアクセスが増えたんです。そこから着物×ラーメンをコンセプトにどんどん寄っていった流れですね」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「まさにインターネットの醍醐味ですね」

 

博多のあん推薦! 博多のグルメ10選

f:id:eaidem:20160802182138j:plain

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「最後に福岡のグルメ事情を教えてもらってもいいでしょうか。美味しいモノが多いのも分かります。博多ラーメンも分かります。屋台文化も素晴らしいです。ただ、これらの情報で止まってる他県の人が多いんじゃないかなと」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「まず地元の人で日常的に屋台へ行く人は少ないんです」

f:id:eaidem:20160801004405p:plainえー!!

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「実は福岡ってこじんまりとした小さい居酒屋の方が安く美味しく飲めたりするんですよ。それも少し食べて、一杯飲むスタイル。一晩で何軒かチョイ飲みしながらハシゴ酒をするのが福岡流ですね」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「たしかに屋台は観光客で混雑してる…。屋台ではなく小さい居酒屋を狙え!っていうのは地元目線の良い情報ですね。具体的なお店を教えていってもらってもいいでしょうか?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「まずは郷土料理の水炊きでしょうか。個人的にはもつ鍋よりもオススメ。最近では、『橙』『とり田』『華味鳥』といったオシャレでリーズナブルな入りやすいお店が増えてきています」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「博多の水炊き…美味そう…」

 

 

f:id:eaidem:20160801044640j:plain

「橙」の水炊き。濃厚な鶏スープを吸った野菜が美味しいそうです。あんさんのレビューはこちら

 

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「続いて小さめの居酒屋でオススメなのが、天神南駅近くの人気店『きはる』。サバの刺身を醤油、炒りゴマ、味醂を加えて和えた郷土料理『ゴマサバ』がとても美味しいんです。五島サバの刺身やあぶりも楽しめますよ」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain食べログ評価4.01!予約必須の名店ですね。次に福岡行くときは絶対行きたい」

 

f:id:eaidem:20160801044436p:plain

こちらが「きはる」のゴマサバ。博多に来たら一度は食べるべき。あんさんのレビューはこちら

 

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「あと焼き鳥も美味しいんです。ざく切りキャベツに酢醤油をかけた付き合わせの上に、串をどんどん置いていくのが博多流。中でも豚バラ串はぜひ食べていただきたいです。お店で言えば個性的なマスターがいる『信長本店』、6日間かけて仕込んだとり皮が名物の『かわ屋』もぜひ!」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「信秀本店は行ってきました! 活気のあるお店で、おまかせで出てきた串がどれも美味しかったなぁ。あとクッキングパパにも取り上げられたマスターのキャラが最高でした」

 

 

f:id:eaidem:20160802183540j:plain

f:id:eaidem:20160802183439j:plain

クッキングパパ〜〜!!

 


f:id:eaidem:20160802183347j:plain

「信秀本店」の豚バラ串(写真左)。何本でも食えちゃうやつ。レビューはこちら

 

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「そして外せない博多ラーメンですが、もし時間がなかったら博多駅の2階にある博多めん街道へ。『博多だるま』『shinshin』『博多一幸舎』といった人気店が並んでいて間違いないと思います」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「フラッと何軒は入ってみたんですが、東京で食べる博多ラーメンよりも安くて美味しい印象があります。そしてあっさりしている。平均点が基本高いんですね」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「そうですね。強いて挙げるなら、元祖博多ラーメンの味に近い『博多荘』、濃紺豚骨スープが特徴の『博多一双』、創作系豚骨の『海鳴』でしょうか』

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「選びきれないからこそ、この情報を信じてラーメン屋巡りするの間違いないですね。そういえば福岡出身の人が『店が臭ければ臭いほど美味い』って言ってたんですが、本当ですか?臭いのがいい…?」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「あー、はいはい。臭いが強いほど濃度の高いスープの証なんですね。うなぎのタレみたいにスープを継ぎ足し、継ぎ足し使う『呼び戻し』という技法があって、炊き込んだスープを一度寝かして冷ますと臭いが強くなる。この手の博多ラーメンが好きな人も多いですよ」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「二郎系のラーメン文化を彷彿とさせる価値観だなぁ…」

f:id:eaidem:20160801004349p:plain「足の裏みたいな臭いがするって言う人もいます」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「その情報で誰が行くんですか」

 


f:id:eaidem:20160801004349p:plain「屋台文化を堪能したいなら、若い女性女将がやっている『かじしか』で〆るのもいいと思います。屋台では異例のおしぼりが出てきたり、隣のホテルのトイレが使えたり、サービス精神満点のお店です」

f:id:eaidem:20160801004405p:plain「女性向けの屋台情報まで…! 福岡に行くときはこの記事が欠かせなくなりますね。皆の衆、はてなブックマークに追加だ〜!!

 


まとめ

f:id:eaidem:20160802184338j:plain

「旅の途中で何かあったら気軽にご連絡ください」と最後まで丁寧に気を遣ってくれた博多のあんさん。食べログのトップレビュアーの素顔は、福岡愛に満ちた、礼儀を重んじる人格者でした。

一人の食べログユーザーとしてこんなにも腑に落ちる取材はないというか。人を集める人気の飲食店はサービス精神旺盛で、気配りに長けた店長が必ずいます。

 

f:id:eaidem:20160817111824j:plain

その飲食店を評価する人もまた同じ。食べログという人気サービスも人(=レビュアー)の力によって支えられてるんですね。次回の博多旅行が今から待ち遠しくて仕方がありません。待ってろよ、美味いもん!

 

書いた人:徳谷 柿次郎

f:id:kakijiro:20160511170425j:plain

ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916


多読のために図書館を使い倒す! 脳内読書マップを作ろう

$
0
0

f:id:eaidem:20160818174117p:plain

今日は図書館の話をしたい。

読書の習慣ができるまで、私は図書館がこんなに便利なものとは知らなかった。とくに読書の初期段階、「多読」の時期に図書館はすばらしい施設になるのである。

 

うなるほど金がある人以外は図書館へ行こう

「多読」というのは本を大量に読むことである。少しでも興味を引かれた本は読んでみる。読書へのハードルを徹底的に下げて読みまくる。読んでみてつまらなければ途中でやめる。じゃないと地獄である。つまらない本を最後まで読むのは地獄。頭にも入ってこない。

読書の習慣ができはじめた段階では、面白い本を見抜く能力はない。こんなもんは読んでいくなかで培われるものである。「俺は女と付き合ったことがないが女を見る目はある」と言い張るのは無茶である。同じことが読書にも言える。こればかりは経験で身に付けるしかない。つまらない本も大量に読みながら、徐々に見る目を養っていくのである。

そしてその場合、確実に金がネックになる。多読するなら金の問題を締め出さねばならない。だから無料で本が借りられる図書館を使い倒すのである。

 

貸出冊数が意外と多い

図書館の存在を知らない人はいないと思うが、その便利さは意外と知られてない。例えば、私が以前使っていた国分寺市の図書館は一度に12冊まで貸出可能だった。しかも返却は駅前のポストでいいという素晴らしい仕様だった。

現在は京都市の図書館を使っているが、こちらは10冊まで貸出可能である。地域にもよるが、一度に借りられる冊数はかなり多いのだ。最初はこの事実に驚いていた。毎回、図書館で限界まで借りてカバンをパンパンにして帰宅していたのを覚えている。

貸出期間は二週間。予約がない場合はさらに二週間延長することができる。

 

ネット予約が超絶便利

図書館のサイトがあり、本の検索と予約ができる。これが超絶便利である。とくに日常的にネットを使ってる人は(ジモコロを見てる人はそうだと思いますが)、覚えておいて損はない。

ネットで面白そうな本を見つけたら、図書館サイトで蔵書検索をしてみる。本があるならワンクリックで予約する。受け取る図書館も指定できる。数日後には近所の図書館で受け取ることができる。この便利さはえげつない。多読している頃の私は、ネットで面白そうな本を見つけては予約して借りるということを繰り返していた。

余談だが、話題のベストセラーは図書館では借りにくい。予約件数がアホのような数字になっているからである。村上春樹の『1Q84』が発売された時など、予約件数が1000件を超えていた。ベストセラーは素直に買うか古本屋で安くなるのを待つのがいいだろう。

さらに余談だが、新刊の予約件数で自分と世間のズレを知ることもある。自分が話題作だと思っていたものが、図書館で検索すると予約2件だったりするのである。これは「ほーん」と思う。ものすごく狭いところで盛り上がっているだけだったと気づかされる。私は世間とのズレをできるだけ自覚しておきたいと思っているので、こういうのは嬉しい。

 

頭の中に「学問の地図」をつくる

f:id:eaidem:20160818170033j:plain

図書館の本棚で頭に「学問の地図」が生まれる。これは図書館を使っているうちに気がついたことである。

図書館の本棚は、全国どこでも次のように分かれている(カッコ内は私が勝手にいれた説明である)。

0 総記(本に関する本。ネットに関する本もここ)

1 哲学(自己啓発書もここに入っている)

2 歴史

3 社会科学(経済学や株の本もここ)

4 自然科学(数学、物理学、脳科学、生物学などなど)

5 技術

6 産業

7 芸術(音楽や映画やテレビやマンガも含んでいる)

8 言語

9 文学(小説やエッセイ、大抵ここの冊数が一番多い)

ひとつの図書館に何度も通っているうちに、地図が脳内にできる。目を閉じてイメージするだけで図書館の内部を歩き回ることができるようになる。これが重要である。多読で重要なのは個々の本そのものよりも、多読を通じて頭の中に構築される「地図」のほうだからだ。

まずは多読で地図を作る。自然と自分の関心が地図上のどこにあるのか見えてくる。それから少数の本の「精読」に移ればいい。

連載第三回で「自己啓発書ばかり1000冊も読んじゃダメ」と書いた。これは地図なしで多読することによる失敗なのである。地図がないから自分の偏りに気づけない。

現在、ベストセラーには自己啓発書が並ぶが、そういった本に惹かれる人が本当に求めているものは、たぶん自己啓発書ではない。

 

私の場合、どうだったか?

具体的な自分のエピソードを書こう。

私はコンビニにあった自己啓発書を読むことで読書生活に入ったが、そこに求めていたものはなかった。私の問いは「自分とは何か?」「世界とは何か?」の二つだった(と今はあっさり言える。当時はもっとアヤフヤな言葉で考えている)。

私は「分からん、分からん」と思いながら図書館を使い倒した。文庫や新書から5000円以上する専門書まで、どれも無料で読めることが役に立った。三年で1000冊ほど読んだ。これが結果的として「多読」になった。

「自分とは何か?」という問いは心理学や行動経済学や哲学にスライドしていき、「自我とは何か?」「自我が薄れた時も残っている『これ』は何か?」という問いに分裂した。

「自我とは何か?」という問いは認知療法の本で解決した(参考:連載第四回)。

「世界とは何か?」については物理学に期待していた。同時に明晰夢やオカルトめいたものにも可能性を感じていた。だが、自我の問題が解決したあたりで、この問いは「自我が薄れた時も残っている『これ』は何か?」という問いと融合した。

この問いは「禅」や「キリスト教神秘主義」が扱っていた。たとえば『臨済録』や『神の慰めの書』が値段的にはお手頃である(内容はお手頃ではない。いきなり読んでもワケ分からんと思う)。

これが私の場合である。

大量の本を読んだ現在では、事後的に「自分の問題はこうだった。図書館のここを探せばよかった」と言える。しかし最初は自分の問いも分からなかったし、世の中にどんな本があるのかも知らなかった。だから多読を通じて「学問の地図」をまずは肉体化することを私はすすめる。

 

結論:図書館を使い倒そう

人生のある時期に、人類の過去の資産を大量に浴びること。これは重要である。蓄積が創造性を生むのである。要するに勉強は大事なのである。こういう話は大抵、「天才を例外として」という腰の引けた文句がくっついてくるんだが、私はそんなことは言わない。蓄積と無関係に登場する天才などいない。蓄積に無自覚な存在が天才に見えるだけである。

 

ということで、図書館を利用した多読によって脳内に読書マップを作ることは、後々まで役立つ非常に良い経験になると思う。今すぐ最寄りの図書館を調べて、司書がふるあがるほどに使い倒すべし。

 

 

臨済録 (岩波文庫)

臨済録 (岩波文庫)

 

 

神の慰めの書 (講談社学術文庫)

神の慰めの書 (講談社学術文庫)

 
 

 

<過去のコラムはこちらから!>
f:id:eaidem:20160701185807j:plain

 

 

ライター:上田啓太

f:id:premier_amour:20160212111940j:plain

京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita

 

【防災】あなたの地元は大丈夫? 漢字に込められた「災害」の歴史を調べよう

$
0
0

2016年8月22日(月)

f:id:eaidem:20160822120617j:plain

台風9号が発生し、関東地方を直撃。関東地方の予想雨量(23日まで)は約250ミリと猛烈な雨が降る見込みで、Twitter上では「電車止まってくれー!」と阿鼻叫喚の様相を呈しています。

 

f:id:eaidem:20160822120637j:plain

普段はオシャレで落ち着いた様子の中目黒。

 

f:id:eaidem:20160822123940g:plain

その象徴ともいえる「目黒川」も、今回の台風でどんどん水位が上がっています。

 

※荒ぶる様子を動画でご覧ください

 

f:id:eaidem:20160822120854j:plain

テレビ局も出動。河川氾濫の恐れがある「目黒川」は、格好のネタになっているようです。

 

f:id:eaidem:20160822121801j:plain

一部の歩道は冠水で水浸しに

 

時は遡って…

 

2016年7月15日(金)

f:id:ONCEAGAIN:20160801100540j:plain

こんにちは、ライターの根岸達朗です。

 

今日は編集長に呼ばれて、東京のおしゃれタウン・中目黒に来ました。

どうやらこのあたりを流れる「目黒川」の橋で待ち合わせということなのですが……。

 

f:id:ONCEAGAIN:20160801101017j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「お、来ましたね」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「何なんですか? 急にこんなところに呼び出して」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「実はちょっと会わせたい人がいるんですよ。一般社団法人『防災ガール』の田中美咲さんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へ? 防災ガール?」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160801101239j:plain

話を聞いた人:田中美咲(たなか・みさき)

1988年奈良生まれ、横浜育ち。立命館大学産業社会学部卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。東日本大震災をきっかけに退職し、福島で復興支援活動に従事。2013年に一般社団法人「防災ガール」を立ち上げる。20〜30代の若者に「防災」をもっとおしゃれでわかりやすく伝えることを目的に活動中。

 

f:id:eaidem:20160822112024p:plain

http://bosai-girl.com/

カジュアルな視点で防災意識の底上げに取り組む「防災ガール」!

 

 

 

f:id:eaidem:20160822121935p:plain

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「根岸さん、はじめまして。突然なんですけど、中目黒の象徴でもある目黒川……実は氾濫の恐れがあるってご存知でしたか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「氾濫!? 急になんなのー!」

 

地名を見れば「歴史」がわかる

f:id:ONCEAGAIN:20160721104553j:plain

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「びっくりさせちゃって……すみません。でも、目黒川って実際に昔、大雨が降るとよく氾濫したんですよ。今でも雨が降ると水位が一気に上がるんですけど、それだけ水害が発生する可能性も高いということでもあって」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「まじですか? 全然知らなかったなあ。中目黒なんて住みたい街ランキングの上位に入るような街なのに……」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「はい。それを示す証拠に、目黒には『蛇崩(じゃくずれ)』という地名があったんです。目黒川の水があちこち蛇のように流れ出たことから、その名前が付いたとも言われていて」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へえ、蛇崩……珍しい地名ですね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「実はこの地名、昭和初期に区制度が始まって一気になくなってしまいました。今は蛇崩交差点や蛇崩川緑道にその名残があるだけで、今は目黒のどこを探しても、地名に蛇崩がついているところはありません」

 

「蛇崩交差点」付近。東京のどこにでもありそうな住宅街の景色だ

 

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「そうなんだ。珍しい地名だから残しても良さそうなのに」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そうですね。ただ、私は珍しさというよりも、防災の観点から昔の地名は残した方がいいと考えています。だって、地名を変えてしまったら、昔のことがわからなくなってしまうから……

 

f:id:ONCEAGAIN:20160725161803j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ああ……過去に災害があったこともわからなくなってしまう」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そうなんです。古来の日本において『蛇』というのは、神様でもあり、水害の象徴でした。昔の人は『ここは災害が起きやすい場所だよー』ということを、地名で教えてくれていたんです

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「地名を変えたことで起きた悲劇といえば、2014年に起きた広島の土砂災害でしょう。被害が大きかった八木地区が、実は昔、八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくじあしだに)というヤバすぎる地名だったというのは有名な話です」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「地名にはその土地に暮らしていた先人たちの教えがあるんですよ。たとえば、水っぽさを感じる地名がありますよね。『沼』とか『池』とか

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ああ、ありますね。東京だけでもいくつか思い当たる」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「実はそういう土地って、地盤がゆるくて、大きな地震の際に地割れや液状化を起こす可能性があると言われていて」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へえ……そう考えると、日本中にめちゃくちゃたくさんありそうな」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「関東圏でいえば、災害危険度の高い漢字が組み合わさっている千葉の『津田沼』。東京なら『池袋』なども、地盤の弱そうなところが多いので心配です。地名防災の第一人者である福和伸夫先生がつくった『良好地盤名と軟弱地盤名の分類図』がすごく参考になるので一度目を通してもらえたらと」

 

f:id:kakijiro:20160801133809j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「これは……住むところを決めるときのひとつの物差しになりますね。現に住んでいる人は、複雑な心境になるかもしれないなあ」

 f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「同僚に『津田沼』出身のやつがいるんですが、この図で言えば軟弱地盤トリプルですね…。どの漢字も水気を彷彿させるというか。しかも、マンションが『アトランティス津田沼』って冗談みたいな名前で笑ってしまいました」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ゼウスの怒りに触れて水中に沈んだ幻の島…」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「そもそも山手線の内側は比較的地盤が固くて、外側は弱いというのが定説ですよね。僕が住んでいる三ノ輪駅周辺は元々湿地帯なので他人事じゃないんですよ!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101623p:plain「ちなみに地盤の強い土地でパッと浮かぶのは、国の主要施設があるところです。江戸城跡の皇居はもちろん、丸の内にあるGHQ跡地や防衛省もかなりしっかりしていると聞いたことがあります」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「国の主要施設近くに住むのが得策…。僕は地名や歴史の観点で土地を想像するのが好きなんですけど、単純に家賃の高い土地は地盤が固い印象です。今住んでる家、60平米の3DKで75,000円だからな〜!地盤弱いのも仕方ないかな〜!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「それは安すぎる。ずるい!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「何言ってるんですか。住所を入力するだけで、その土地の揺れやすさ、地盤の弱さをチェックできるサイトがあるんですけど…」

 


f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へぇ。それは便利なサイトですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「MAX2.5で数字が大きければ大きいほど揺れやすいらしく、根岸さんの住んでる稲城が0.98。一方、僕の住んでる三ノ輪は2.38ですよ!ほぼ満点じゃねーか!!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「やっぱり『城』って入ってると防御力高いのかな」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「ちなみに社内10人中で最下位でした。まぁ、最近武蔵小杉にマンションを買った同僚は後背湿地で2.35だったから…賃貸の方が逃げ道あるかなと強引に心を納得させています」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「身の回りで調べたら盛り上がるけど、遺恨を残しそうだなぁ」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101623p:plain「柿次郎さんの人間性が急に強く出てきちゃいましたね」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「……(引っ越してぇ)」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「うーん……だんだん怖くなってきた。田中さんの活動についても、詳しくお話聞かせてもらえますか?」

 

 

防災をもっとおしゃれに、わかりやすく

f:id:ONCEAGAIN:20160726084825j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「いやー地名の話はドキドキしました……。つまり田中さんの活動というのは、そういった知識を広めながら、より多くの人に防災に関心を持ってもらおうという?」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そうですね。ただ、私たちはこれまでの防災のやり方ではなく、おしゃれでわかりやすい、誰もがやりたくなるような防災を目指しています。その取り組みのひとつが、津波防災の普及啓発プロジェクト『ハッシュビーオレンジ』です」

 

 

 

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「これは『オレンジの旗を見たら津波が来るから逃げろ』ということを社会に浸透させるための活動です。言葉を使うことなく、色で津波の危険を伝えることができれば、緊急時にも避難先をわかりやすく示すことができます」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「なるほど。確かにオレンジは海の色の補色だからすごく目立ちますね」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160726101623j:plain

ビルや学校の屋上など、視認性の高い場所にフラッグを掲げることで、津波の危険を伝える

 

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「防災グッズにも力を入れていて、たとえばこれなんですけど、ちょっと持ってみてもらえますか?」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160726085430j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ん、これは? リストバンドのような」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「はい、これは防災ガールのオリジナルミサンガです。引っ張るとほどけて1本のひもになります。長さが1.5メートルになるので、それを振り回すと視覚情報のSOSになるんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101243p:plain「おお〜すごい! これもオレンジの蛍光カラーで目立ちそうですね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「さらにプラスチックの接続部分が笛になっているので、音でSOSを発信することもできます。ひものなかには着火剤の芯が入っているので、燃やすこともできるんですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101243p:plain「ほー実用的! デザインもおしゃれだなあ」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160727154329p:plain

日常でもファッショナブルに使える、さまざまな防災グッズを制作している防災ガール。こちらはオリジナルのトートバック。渋谷の街のハザードマップをプリントしている

 

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「まずは身に付けたくなる、やりたくなるというのが大事だと思っています。実はこのほかにもいろんな活動をしていて、たとえばそのひとつに、位置情報ゲーム『Ingress』を活用しながら、避難経路を自分で考える次世代版避難訓練があります」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へえ。自分で考える?」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「はい。普通の避難訓練って、行く場所も経路も決まっていたりするじゃないですか。でもそれって、どこか一箇所でも崩れていたら、使えない訓練なんですよね」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「確かに。子どもの頃に経験した緊張感のなさすぎる避難訓練を思い出しました。目的地に向かってただダラダラと歩くだけという」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そんな避難訓練って、意味がないと思いませんか? だから私たちの避難訓練はスタート地点しか決めません。そこからの道は自分たちで決めて、制限時間内に安全な場所を見つけるんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101243p:plain「おお〜。ゲーム的な要素があって、普通におもしろそう!」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「このほかにも、防災ガールが調理する『非常食ケータリング』とか、危機管理能力を身につけながら男女が交流できる『防災コン』などなど、いろんな企画を実践しています。国が発表している被害想定がわかりにくいので、データを噛みくだいて、サイトで情報発信もしていますね」

 

自分の頭で考え、行動する。それが生きる力

f:id:ONCEAGAIN:20160726104331j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「どう? 防災ガール、良さしかないでしょ。実は僕も最近、震災関連の記事をつくるようになった流れで、『防災おじさん』を勝手に名乗り出したんですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「防災おじさん? なんですかそれ」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain嫌われてもいいから防災の大切さを友達に暑苦しく語るおっさんのことです。さっきの地盤問題もありますけど、僕が住んでる土地は木造密集地域で火災の危険性が高いんです。区画の防災資料を見てみたら、僕の住んでる建物以外真っ赤っか。周りが燃えたら瞬殺だろ!ってレベルでした」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ええー!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「あと隅田川が氾濫したら2mぐらい氾濫するって…。なんなんだよ、もう! 災害の全部乗せか! タイタン、イフリート、リヴァイアサンの三重奏ってか! そりゃ、防災おじさん名乗るわ!」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160802103004j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「お、落ち着いてー!!」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「フゥフゥ…。まぁ、そんなわけで常に他人事じゃないんですよ。押しつけがましくなりがちな防災意識も、僕みたいに自宅に友人を招いたら池上彰先生の災害SPをいきなり見せる感じでね。笑ってもらいながら脳裏に刷り込んでいけばいいんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「柿さんの知識は、ほとんど池上彰が発端なんだ。でも、友達レベルから広げていくのは無理がなくていいですね。そういう意味では、防災ガールも親しみやすさがあるというか、誰でも取り入れやすそうな防災を提案しているのはすごくいいですよね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「ありがとうございます。でも、防災ってまだまだ一般の若者には浸透していないんですよ。むしろ、防災業界は40〜70代の男性が主役。それも地域の消防団に入っているような人たちがリードしている状況で」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「消防団かー。街を守る大事な仕事ですね。地方ではひとつのコミュニティとしても機能していると聞くけど、都会に暮らしているとその存在すら知らないという人も多いんじゃないですか?」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160726112149j:plain

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そうなんですよ。でも、都会にも消防団はあります。まずは自分の住んでいる地域にどんな消防団があるのか調べてほしいし、できることなら入ってほしい。消防団に入ると、街を守る仕事の対価としての報酬もありますし、地元の商店街で割引サービスが受けられるなどの特典もあるんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「へえ、そうなんですね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「なによりもまず、消防団には積み上げてきた防災の知恵があります。入ってちゃんと活動すれば学びも多いはずですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「地域との関わりを求めている人にもよさそうですね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「はい、とてもいいと思います。ただ、消防団には課題もあります。それは年齢層の高さ。若い人がもっと積極的に関われる仕組みができたら、その街はすごく良くなっていくはずです」

 

消防団に関する数値データ | 消防団データ集 | 消防団

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「そういえば、長野・奥信濃で『鶴と亀』というフリーペーパーをつくってる小林くんも20代だけど、消防団に入ってるんですよ。これは防災おじさんとしても全力で応援したいです」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「かっこいい! 消防団に入ってるだけで女子的にはポイント高いです。防災ガールのみんなで女子会をするときも、パートナーに求めるのは生きる力だよね〜っていつも話してます(笑)」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160726111952j:plain

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「……聞きました?」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「これからの時代、生きる力があるとモテる!」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「会社がつぶれても、街が崩壊しても、臨機応変に考えられる人。どんな状況でも最適解を自分で決断して、行動できる人がかっこいいと私は思います」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160728131254j:plain

「防災ガール」の皆さん。活動を共にするメンバーのなかには男性も少なくない

 

 

災害大国の日本で生きること

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「生きる力かあ……やっぱり、災害の多い国に暮らしているならなおさら考えていかなくちゃいけないことでしょうね」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「そう思います。あ、災害の多さという点については、ちょっと見てもらいたい地図があって」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160726122629j:plain

図表参照:気象庁 | 地震発生のしくみ

 

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「ん、これは?」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「気象庁が出している世界の地震地図。赤くなっているところが地震がたくさん発生している地域で、私が指しているところが日本です。ほぼ全土が真っ赤なんですよ

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「本当だ……」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「こんなに地震が多い国なのに、防災のことを考えずに暮らすのってどうなんだろうって思いませんか? 絶対に安全な場所なんてないし、それは大きな震災があるたびにみんな痛感しているはずです」

f:id:ONCEAGAIN:20160802101235p:plain「東日本大震災も、先の熊本地震もそうでしたね。いつだって『想定外』の繰り返しなわけで」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160727153251j:plain

熊本地震で物資の支援活動を行った「防災ガール」。現在も継続的に現地入りし、活動している

 

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「災害の記憶を残すために石碑を建てるのも、津波に備えて防波堤を建てることも大切かもしれません。でも、絶対に『想定外』は起こるわけで、ハードに頼るのは限界があるんです。それよりも大切なのは、一人ひとりの防災意識を高めること

f:id:ONCEAGAIN:20160802101222p:plain「そうですね。僕も防災おじさんとして、暑苦しくても防災を訴えていきますよ。茶化してくるやつはビンタして、ミサンガつけさせますから」

f:id:kakijiro:20160801130350p:plain「ありがとうございます(笑)。人間の危機管理能力って、街が便利になることで退化してきたけど、それじゃいけないと思っています。富士山の噴火、南海トラフ地震、首都直下地震……これから起こりうる災害に備えて、より多くの人に防災の大切さを訴えていく活動をしていきたいですね」

 

今回のまとめ

f:id:ONCEAGAIN:20160728124814j:plain

普段の中目黒「目黒川」の様子

どこに住んでいても絶対に安全と言えるような場所はない。そして、災害はいつだって『想定外』。だからこそどんなときも最適解を自分で見つけ出し、行動する。それが生きる力であるという田中さんの話は、災害の多い国に暮らす上での心得をあらためて考えさせてくれるものでした。

  

f:id:eaidem:20160822121640j:plain

荒れた中目黒「目黒川」の様子

自分だけは大丈夫という幻想は捨てよう。その上でまずは小さくてもいいから、できることをやってみよう。田中さんの話を通じて、僕もじわじわと「防災おじさん化」してきていることを実感した今回の取材でした。

 

ちなみに、「防災ガール」の皆さんは登場しませんが、応援しているイベントとして9/4(日)に東京渋谷の代々木公園で「防災フェス」が開催されます。僕は子連れで遊びに行こうと思っているので、みなさんも興味があればぜひ足を運んでみてください。

 

 

f:id:ONCEAGAIN:20160728124637j:plain

防災しようぜ!

 

 

書いた人:根岸達朗

f:id:ONCEAGAIN:20160331110349j:plain

東京生まれ東京育ちのローカルライター。ニュータウンの端っこで子育てしながら、毎日ぬかみそをひっくり返してます。メール:negishi.tatsuro@gmail.com、Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗

京都旅行の夜はこれだ! 地元の飲ん兵衛が集う「路地酒場」のススメ

$
0
0

f:id:eaidem:20160817103741p:plain

連日、国内外の人々がたくさんやってくる京都の街。歴史あるお寺や神社など見どころはたくさんありますが、 現地のおもしろ話が聞けたり、生々しい思い出をつくることができるのはやはり……ナイトライフですよね。

 

こんばんは、おかんです。のっけからビール飲んでてすいません。

 

f:id:yh1123:20160715155625j:plain

 

ゴッ

 

f:id:yh1123:20160715155651j:plain

 

ゴッゴッゴッゴッ

 

f:id:yh1123:20160715155716j:plain

ブシャッピャハーーッ!!!うめーーーッ!!

あはは、蒸し蒸しした夏の夜にキメる駆けつけ一杯のビールは最高ですね!

 

 

……いえ、そんなわかりきったことが言いたいんじゃないんです。

京都在住もそろそろ7年目になるとですね、京都に遊びに来ている知人の投稿をFacebookなんかで見るたびにですね、思うわけですよ。

 

みんな!!大通りにある場所しか!!行かなさすぎ!!

路地酒場を堪能せずして!!

帰るなんて勿体ないにもほどがある!

 

って。

 

京都の魅力は路地にあると私は思っているのです。連日連夜、飲み過ぎて財布を空にしているワタクシめが、繁華街河原町・木屋町エリアの路地にある酒場を紹介いたします。

 

河原町駅から徒歩3分! スタンダード路地酒場「わたなべ横丁」

f:id:yh1123:20160715133301j:plain

オススメの路地酒場として提案したいお店、たとえばここ「わたなべ横丁」。

「わたなべ横丁」さんが入るこの細い道をご覧ください。両手を伸ばしたほどしかない道幅、ところ狭しと並ぶ飲み屋、そして住宅、地蔵尊。表通りにはない生々しさが伝わるでしょうか。

そしてこのお店の魅力は、大通りからは入れないというところ。

お店の入る路地は、大通りからさらに枝分かれした細道に面している通りにあるので、知らなければ絶対に入り込むことができないのです!

 

f:id:yh1123:20160729193523j:plain

そんな隠れ路地の一角にたたずむお店の扉を開けると……、

 

f:id:yh1123:20160715135206j:plain

賑やかな立ち飲み屋がどーーーーん!静かな路地からは想像もできないくらいに人ばーーーーん!

通称「なべ横」と呼ばれるこちら、飲食店関係者や現地在住のライターからも絶大な支持を誇るお店です。

ちなみにカウンター席は満員だったので、一番奥のソファ席に案内してもらいました。立ち飲み屋ながら座席があるので、観光で足が疲れた人にもグッド。

 

……という訳で冒頭のビールでございました。

 

f:id:yh1123:20160720124931j:plain

雑然とした店内、バラエティ番組が流れるテレビ、酔人の笑い声が飛び交う光景。

フラリと訪れた旅先で地元の人たちに混ざって酒を飲む……。ここではそんな理想が具現化している! ぜひこの空気感をナマで味わってほしい!

ローカルな酒場ならではの面白い出会いもそこらじゅうに転がっています。こないだ飲みに行った時は、隣で飲んでいたおじさんがヒマラヤ山脈の登頂記録に名前が載るレベルのガチ登山家でした。

 

f:id:yh1123:20160720203822j:plain

もちろんお酒も肴もおいしいのです。壁には短冊状のメニューがびっしりと貼りつけられ、自家製のサングリアやらちょっと変わったチューハイも多数。豊富なメニュー数でそれもお手頃価格! 開店してすぐに満席になることも多いんですが、納得。

 

f:id:yh1123:20160715162728j:plain

お造り盛り合わせ680円!

 

厨房のカウンターにはガラスケースがあり、刺身のサクがズラリ。その日のおすすめが黒板に書かれているので、迷った人はそこからチョイスしましょう。

 

f:id:yh1123:20160715162737j:plain

こちらは京都らしい一品、生麩田楽を注文。350円!

 

ここの生麩田楽は、生麩が素揚げされているので歯触りサクッ、のちのモッフモフ食感がたまりません。甘辛い田楽味噌との相性バツグン。

 

f:id:yh1123:20160729161415j:plain

おろし蕎麦450円!

 

辛みのある大根おろしが蕎麦つゆにたっぷり入った福井県嶺北地方の名物の名物です。ご飯としても、〆の麺類としてもスルスル〜っと食べられる一品。

 

フィー。お腹も満たされていい今夜のスタートを切れたところで、さらに知っておいてほしいオススメのポイントがあるのです。それは……、

 

f:id:yh1123:20160715162721j:plain

バイトの女の子がめちゃくちゃ可愛いってこと!

 

 

f:id:yh1123:20160721132213j:plain

かわいい!!

 

 

f:id:yh1123:20160715162731j:plain

かわいい!!!

 

 

f:id:yh1123:20160715162742j:plain

霊長類である部分しか、あの子とカブる部分がねぇわ……。

 

旅先で入ったお店にかわいい女の子がいたら酒が進みますよね。これぞ酒場の醍醐味!ちなみに渡邊さんという方がマスターなのですが、この日はご不在の模様でした。見た目はコワモテ、中身は朗らか坊主頭おじさんです。お店の方々はさりげなく一見さん、常連さん交えて話を振ってくれるので、すぐに居心地よくなることうけあい!

 

あ、あとなべ横さんには関西では珍しくホッピーがおいてありますよっ!

 

わたなべ横丁

TEL:075-708-5876
住所:京都府京都市中京区紙屋町357-1
営業時間:17:00~翌1:00(日・祝日は17:00~翌0:00)
毎週月曜日は「ちょっとBAR森」という別業態での営業

 

「路地酒場」は京都のリアルな夜が詰まってる

f:id:yh1123:20160720120629j:plain

あまりにビールが飲みたすぎて唐突にお店を紹介しはじめましたが、そもそも「路地酒場とは何ぞや」というところをお話したいと思います。

 

「路地酒場」の前段階として、京都の路地が生まれたきっかけをご存知でしょうか。それは平安京の建都にまでさかのぼります。都は中国・唐の時代の首都であった長安にならい「条坊制」を採用して都市づくりがおこなわれました。

条坊制とは東西南北、碁盤の目状に道を張り巡らせた都市計画(歴史の授業で出てきましたね)。主要な道は大路・小路と呼ばれ、お店や家などは碁盤の目の外周を埋めるような形で建つようになりました。

 

f:id:yh1123:20160728231527j:plain

で、想像してほしいんですが、道の外周に建物ができると、真ん中は空白地帯になりますよね。中世になって、人口が増え、商業が発達してくるようになると、区切られた道をだけを使うのでは不便になってきたのです。

 

そこで、大路・小路から碁盤の目のなかの空白地帯に細い道を通し、人々の暮らしをまかなったのが路地のはじまり。路地は都に住む人たちの息づかいが感じられる、リアルな京都の生活空間であったのです。

 

f:id:yh1123:20160728231543j:plain

で、時が経ち現代。かつて大路・小路と呼ばれた通りに並ぶのは、全国規模でメジャーなお店がたくさん立ち並んでいます。とくに繁華街の河原町・木屋町エリアの歓楽街はそれが顕著。

 

f:id:eaidem:20160823033242j:plain

深夜の河原町通、平均道幅約22mの大通りです。大きな商業ビルには誰もが知るお店がみっしり入ります。

いや別にこれが悪いとは思いません。鳥○族おいしい。ただ、せっかく遠方から京都に遊びに来たのなら、ローカルな酒場に行ってほしい訳でありまして。そういうお店は、かつて人々が町の知恵として生み出した、路地のなかにたくさんある訳でありまして。

 

ここがいいんだぜ路地酒場

1:京都のリアルな夜を堪能できる!
2:庶民的でリーズナブルなお店が多い!
3:小さい店が多いから、お客さん同士ですぐに仲良くなれる!

  

これは大通りの河原町通から、先ほどの「わたなべ横丁」へ向かうまでの光景。街の深部へ入り込むようでワクワクしませんか。しますよね。

 

f:id:yh1123:20160715184737j:plain

京都で最も有名な路地と言えばきっと先斗町通でしょう、しかし観光色が強いため今回はあえて行きません。地元の人が普段使いするお店を回遊いたします。

 

さあさあ、解説もこれくらいにして、次行くぞい、次!

 

L字路地の隠れ夜喫茶「ELEPHANT FACTORY COFFEE」

f:id:yh1123:20160721143224j:plain

続いてはこちら。大通りから枝のように伸びるこの路地に入っていきましょう。

次に紹介するのは喫茶店です。お酒は弱いけど、路地の雰囲気を味わいたい、夜出歩きたいけど、居酒屋の雰囲気は苦手……という人におすすめの1軒。

もちろん喫茶店なのでビールがある!喫茶店で飲むビール、これもまたオツですよね〜。

 

f:id:yh1123:20160721144713j:plain

大通りからの景観はシンプルに見えたこの路地、じつは突き当たりからさらに細い路地が伸びて、L字型になっているのです。

住居と飲食店が混在し、路地が京都の生活に深く根づいていることを実感させてくれる道のひとつ。

 

個人的にはデートで通るならこの路地です!大通りから入りやすいけど、L字になってるから奥まっててムード満点。こんな道もあるんだよってさりげなく彼女をエスコートできたら、モテ度も高まりますよね。

 

ただ、以前にカップルが思いっきり抱き合いながら道を塞いでいたのを見た時には、モーゼのごとくふたりの間を叩き割ってやろうかと思いました。

 

f:id:yh1123:20160721145857j:plain

ビルの階段を上がって2階のドアを開ければ……、

 

f:id:yh1123:20160721150020j:plain

ええ〜〜〜感じの喫茶店「ELEPHANT FACTORY COFFEE」が!

 

路地をまがった先の路地のビルのなかにある秘密基地感!無骨ながらもあたたかみのある店内のしつらえが、いい雰囲気でしょう。

 

すみません、ビールください!

 

f:id:yh1123:20160721150754j:plain

知人がたまたまテーブルにいたので同席させてもらいました。こちらのビールはハートランド。甘い風味と爽やかなかほりでグビグビいけます。

 

f:id:yh1123:20160721154827j:plain

1杯1杯、丁寧にコーヒーを淹れてくれるのは、イケメン店員の高田君。

 

深入りコーヒーをメインにしていて、酸味が少なくコク深い1杯が味わえます。数量限定の自家焙煎ブレンドは、とくに濃潤な苦みが特徴。コーヒーはどれもカップ650円

 

f:id:yh1123:20160817234622j:plain

繊細な仕事ぶりがカップに現れているコーヒー 。うまし!

 

夜中1時まで開いているから、その日最後の一服にも!

 

f:id:yh1123:20160721161355j:plain

ひとりでゆっくり過ごしたい人に向けて、カウンター席もございます。

 

高田くんから「おかんさん、酒臭いです」と真顔で言われたので次へGOします。

 

ELEPHANT FACTORY COFFEE

TEL:075-212-1808
住所:京都府京都市中京区蛸薬師通木屋町西入ル備前島町309-4 HKビル2F
営業時間:13:00~翌1:00

 

ビル路地の中にある爆安立ち飲み屋「きゃさ」 

f:id:yh1123:20160715162755j:plain

続いてはビル路地のなかにあるこれも立ち飲み屋の「きゃさ」!

 

ビル路地とは、ビルの1階部分に通っている路地のこと。まるでトンネルのように道と道を繋いでいて、単純に建物の通路として使われるだけではなく、人が行き交う立派な道になっているのです。

 

f:id:yh1123:20160729200611j:plain

「きゃさ」が入っているのは「木屋町会館」というビルなんですが、京都には「●●会館」と名前のつく建物も多し。各会館にはこれまたステキな酒場が多いので、いつか「会館酒場」も紹介したいなぁ……(飲んでばっかり)。

 

f:id:yh1123:20160729203954j:plain

「傘」の漢字をモチーフにしたロゴが目印です。

 

f:id:yh1123:20160721175055j:plain

店内はフロントに6、7人ほどのカウンター席と、2、3人ほどのミニカウンターが後ろにちょこんとひとつ。

適量のキャパは10人くらいなのに、多い時には25人くらい入ってる日もあります。立ち飲みって座らないぶん、お客さんのスペースを必要としないから、みんなで空間をシェアするのが普通になるんよね。「立って0.2畳、寝て1畳」ですよ。

「寝て1畳」はただの酔いつぶ……いや、なんでもありません。

 

f:id:yh1123:20160721192942j:plain

店長のサワラさん。お店がどれだけぎゅうぎゅうになろうと、ほがらかにお店を切り盛りしています。

サワラさんは「サワラデザート」っていう名前で歌も歌っていて、すごくステキな歌を歌うし、声がでかいことも特徴です。

 

f:id:yh1123:20160715162805j:plain

ちょうど入ってきたお客さんがなんと、先ほどのわたなべ横さんで飲んでいた人でした。「あらー、先ほどぶり〜」「いてはりましたね〜」としばし歓談。

そうそう、別の店で出会ったお客さんと再会するのも、路地酒場の醍醐味かもしれません。

 

路地酒場って、基本的に狭いお店が多いんです。お客さん同士の距離が近いから、仲良くなりやすい。また、そういう雰囲気が好きな人たちって同系統のお店を回遊しがちなので「あれ、さっき会いましたね!」なんてことも往々に起こるんです。

 

気づけばあっという間に友達に!

 f:id:yh1123:20160729133557j:plain

さてさて、「きゃさ」の魅力はなんといってもそのお安さ。お酒は焼酎を中心に梅酒や日本酒など取り揃えているんですが、最安値はなんと300円。

 

他なら600円くらい平気でかかる芋焼酎、霧島すらも300円。こんなに安くて大丈夫なのか、マジで心配になります。

 

f:id:yh1123:20160715162802j:plain

名物は100円小鉢。イカの塩辛がはいったポテトサラダや煮物など、その時々で内容は変わります。安すぎる。

 

f:id:yh1123:20160729135500j:plain

さらに酒飲みに嬉しいのは、会計がキャッシュオン方式ということ。

このどんぶり鉢にお金を入れておくと、注文しただけお金が引かれていくシステム。いくらお金を使ったか一目でわかるTHE 明朗会計。

 

f:id:yh1123:20160721173529j:plain

安いのに、大きなグラスにお酒がたっぷり入ってるので、オトク感がすごい。

 

300円の焼酎3杯に、100円小鉢がひとつでキッカリ1000円。せんべろ酒場の多さは関西だと完全に大阪に軍配が上がるんですが、しっかり京都にもありますよ!

 

f:id:yh1123:20160721131028j:plain

しばらく飲んでいたら、あっという間にお客さんが増えて混みあってきました。

 

柿次郎さんやギャラクシーさんをここのお店に案内したことがきっかけで「路地酒場」の話が持ち上がりました。「鶴と亀」の小林くんなど、なかばジモコロの人たちを最初に連れ込むスポットとなりつつあります。

 

f:id:yh1123:20160721192402j:plain

余談ですが、たまにここでバイトもしてます。お待ちしておりま〜す。

 

きゃさ

TEL:075-255-9883
住所:京都府京都市中京区西木屋町通三条下ル南車屋町287 木屋町会館 1F
営業時間:18:00~翌2:00

 

番号路地のピークは朝!?  飲ん兵衛の凝縮酒場「石丸商店」

f:id:yh1123:20160729140425j:plain

最後に向かったのは先斗町通と木屋町通をつなぐ路地のひとつ、13番路地です。

先斗町通と木屋町通の間を通る路地にはそれぞれ番号がふられ「番号路地」と呼ばれています。通り抜けできる路地もあれば、片側で行き止まりになっている路地もあったり、新しいお店がひっそりオープンしていたりするので、行くたびに新しい発見があるんですよ!

 

f:id:yh1123:20160729204549j:plain

番号路地のなかで13番路地がイチオシなのは、まるで深海にいるような美しい青い壁と、個性的なお店が集まっていること。

 

遠くで鳥の声が聞こえていますが、知ったこっちゃないわい!

まだまだ飲むぞい〜! 酒もってこ〜い!

 

f:id:yh1123:20160721193600j:plain

そう、ここが飲ん兵衛が最後に引き寄せられる最後の砦「石丸商店」!

取材時のタイミングですでに朝の4時すぎ。普通の居酒屋ならぼちぼちラストオーダーの時間なんですが……。

 

f:id:yh1123:20160721211435j:plain

バンバンに盛り上がってます!

なんとこちら、朝の6時……お客さんの入りによっては8時くらいまでやっている酒場。近隣のお店がすべて閉まっても、石丸商店だけは開いているため、仕事を終えた飲食店関係者や超夜更かしの酔っぱらいが、最後にワラワラやってくるという塩梅。

 

真の盛り上がりは夜明けから!まさに酒場の淘汰の果てにある酒場なのです!

 

切り盛りするのは店長のノゾムさん。写真はNGでしたが、めざましテレビが終わるような時間帯でも酒飲みを受け入れてくれる懐の広い聖者です。 

 

f:id:yh1123:20160721212212j:plain

店内にはさまざまなイベントのフライヤーやら名刺やらが天井までギッチギチに貼られててカオスの容相。

あと店内が洞窟レベルに暗すぎてカメラの感度が追いつかない。

 

f:id:yh1123:20160721212830j:plain

アテ系のメニューもしっかり揃い踏み。

前の店で〆飯まで食べたのに、酒といっしょにツマミもいろいろ頼んでしまう、石丸商店あるある。酔っぱらって胃袋のネジが外れてる感あります。

 

f:id:yh1123:20160721215438j:plain

今回もやっぱり欲望に負けて、ツナキムチ550円を注文しました。超早朝からビールいただきまーす!

 

f:id:yh1123:20160721222935j:plain

朝になるにつれてやってくる人々がぞくぞく。自分も酔ってるし相手も酔ってるし暗いしブレッブレに。

飲みの場も深まってきているので、誰かが乾杯すると流れるように「あー、どうもどうも」「どうもどうも」と乾杯の輪が広がっていきます。このグルーヴ感が酒でポワポワ回る身体にどうにも心地よい……。

 

f:id:yh1123:20160721222825j:plain

結局ビール2本飲んで、本日の路地酒場クルージング、無事終了!

 

f:id:yh1123:20160721220309j:plain

お店を出たのは朝の6時半。

雑踏が絶えた通りとはうらはらに、振り向けば路地の奥ではいまだ賑やかな笑い声が響いておりました。

 

 

石丸商店

TEL:075-213-0966
住所:京都府京都市中京区木屋町通四条上る13番地路地東入ル
営業時間:18:00~翌6:00

 

 

ひたすらとにかく飲みまくり……

あの道のすぐそばに、あのビルの隣に、路地はひっそりと伸びて誰かがやってくるのを待っています。ぜひとも京都に来た折には、注意深く細道をチェックして、勇気をだして入ってみてください。街と街のスキマ、きら星のように輝く路地酒場が旅人を迎えてくれることでしょう! きっと、知らなかった京都の夜を体験できますよ!

 

今回紹介した路地酒場はコチラ!

住居が多い路地ではくれぐれもお静かに!

 

それではみなさん、今宵、路地酒場でお会いしましょう。

 


書いた人・平山(通称:おかん)

f:id:eaidem:20160621180113j:plain

京都の編プロ、合同会社バンクトゥの編集/ライター。兵庫県出身。大学のあだ名「おかん」がそのまま通称に。しかし実態は色々とおっさんに近い。酒場と酒を愛し、将来の夢はスナックのママ。
個人ブログ:おかんの人生飲んだくれ日記/Twitter:@hirayama_okan/所属:合同会社バンクトゥ

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

知らぬが仏 - まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド(6)

$
0
0

 

f:id:eaidem:20160802161018p:plain

漫画家・まんしゅうきつこが「お洒落な部屋に改造したい」「出来ればお金もかけたくない」という願望を叶えるべく立ち上がった。眠ってた家を蘇らせるために何をすればいいのだろうか。次々に立ちはだかるトラブルと人間の闇…。まんしゅうきつこ版ビフォーアフターみたいな連載がドアラジオからジモコロへお引越し!


<まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド・一覧>
第6話 

 

f:id:eaidem:20160802135710j:plainf:id:eaidem:20160801140059j:plainf:id:eaidem:20160801140101j:plainf:id:eaidem:20160801140104j:plainf:id:eaidem:20160801140106j:plainf:id:eaidem:20160801140109j:plain

 

<まんしゅうきつこのリフォームワンダーランド・一覧>

 

書いた人:まんしゅうきつこ

f:id:kakijiro:20160413181453j:plain

埼玉県出身。日大芸術学部卒。漫画家、イラストレーター。2012年5月にHP「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」を開設。「アル中ワンダーランド」(扶桑社)、「まんしゅう家の憂鬱」(集英社)が絶賛発売中 Twitter ID→@kitsukomz 

カチンと来た時はどうしたらいいのですか? - 日本一「ふざけた」会社の社長がマジメに答えます(28)

$
0
0

f:id:eaidem:20160719181228p:plain

 

ハンドルネーム「ぬこまみれ」さん からのお悩み

f:id:kakijiro:20150508151051p:plain

先日、知人と話をしていた際にカチンと来る一言を言われました。

向こうがどういうつもりだったのかはわかりませんが、それは詭弁だろう、というようなことを言われました。

そのまま言い返すこともできたのですが、その人と喧嘩するつもりもなかったので「そうですか」とそのまま引き下がりましたが、そのことでずっとイライラしています。

シモダさんはカチンと来るようなことを言われたらどうしますか。

 

シモダテツヤの回答

f:id:kakijiro:20150508151115p:plain

我慢してても体に良くないと思っているので、カチンと来たら大体はキレるようにしています。また、カチンと来た瞬間は我慢できたくせに翌日になってから思い出して腹が立ち、そのタイミングでキレたりもします。

相手からしたらわけがわからないタイミングで怒るのですっごい面倒くさいと思いますが、モヤモヤした不純物を溜めてると、いつかその人のことを本気で嫌いになりそうな気がするので、僕の場合は「なんかやだな!」と思ったら相手にそれを伝えるようにしています。

みんなの心のお母さんことハンター×ハンターのミトさんも言ってましたが、「その人のことを知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるのか知れ」という名言はまさにそうだと思っていて、わりと普段から正直に怒るようにしてたら「ああ、こいつはこういうことされるのが嫌なんだな」と周りに理解してもらえて問題が発生しなくなり後々楽です。

ついこの間も、依頼があり無償で受けた講演で、そこの社員の皆さんが話を聞く態度じゃなかったのでマイク越しにキレたら、その後どえらい気の使われ方をして、ほどほどにしとかないといつか仕事なくなるな、と思いました。いや、もうなくなり始めてるのかもしれない。

あと、うちの社員に広く知れ渡ってる僕の特性として、「キレる代わりに拗ねる」というものがあります。これは、カチンと来たとしてもそれぞれの事情が想像できたり、論破しにくい状況の時に炸裂させるようにしています。

拗ねて拗ねて拗ねまくって、僕より精神年齢が上の周りの人間が「大丈夫?」と聞いてくれたら勝ちです。当方35歳になります。精神年齢は4歳です。

最後にオススメなのは、カチンと来た瞬間に「カバのように糞尿を撒き散らす」というものです。カバは自分の縄張りを主張するために糞尿を撒き散らしますが、あなたは怒りの感情が沸き起こる度に撒き散らすのです。

ハンター×ハンターのミトさんも「その人が怒ってるかどうかを知りたければ、その人が糞尿を撒き散らしてるかどうかを知れ」と言っていました。非常にわかりやすくて良いアピールですよね。レッツトライです。

 

f:id:gggggg99:20160829202401p:plain

 

 

あなたのお悩みもお待ちしております

書いた人:シモダテツヤ

f:id:eaidem:20150428154322j:plain

1981年京都生まれ。Webクリエイター。バーグハンバーグバーグ代表取締役社長。 代表作は「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」「インド人完全無視カレー」「分かりすぎて困る! 頭の悪い人向けの保険入門」など。著書に『日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術』がある。Twitterアカウント→@shimoda4md

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

Viewing all 1396 articles
Browse latest View live