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大好きな「奇譚クラブ」の最終面接に落ちた男がインタビューしてきた

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f:id:ookichi:20160207211040j:plainおおきちと申します。完全に死に顔(しにづら)でスイマセン。生まれつきこういう顔(ツラ)なんです。

最初に説明しておきたいんですが、今回の記事は僕が最終面接まで行ったものの、半年経っても合否の連絡を未だもらっておらず…「一体どうなってんの? 合否を確認するついでに大好きな会社だから取材しちゃおう!」という経緯ありきのやや入り組んだ内容になっています。

 

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その会社が人気ガチャガチャの商品『コップのフチ子』でお馴染みの「奇譚クラブ」です。コップのフチ子は累計1000万個以上も売れていて、日本の歴史に残るおもちゃと言っても過言じゃないですね。

去年の秋ごろまで僕は某おもちゃメーカーの企画・開発部に勤めていて、僕が目指しているような企画が奇譚クラブから商品化されることが多く、それがめちゃくちゃ悔しかったんです。僕のは前社でボツりまくってましたから…。尖った企画を商品化する奇譚クラブがずっと羨ましかったんですよ。 

 

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私物のガチャガチャコレクションの一部

会社を辞めて奇譚クラブで働きたい!

 

そんな思いが爆発した矢先、奇譚クラブが企画部の求人を始めたんです。実は奇譚クラブが求人を出すことってこれまで一切なくて。「これは運命だ!応募するしかない!」と衝動に駆られて、ボツになった企画書をまとめてポートフォリオにして速攻で応募しました。こんなグッドなタイミングで募集かけるなんて完全にアレだろ!これはアレするだろ!と。奇譚クラブへの愛には絶対の自信があったし、完全に頭が奇譚クラブナイズドされているつもりだったので。

 

コップのフチ子のつくり方

コップのフチ子のつくり方

 

書類審査通過の連絡が来た時は「やっと認めてくれる人がいた! 俺、間違ってなかったんだ…」と感慨深いものがありました。そして最終面接へ。緊張すると仕草がオカマっぽくなっちゃうクセもいい感じに作用して、面接もすごく盛り上がったんですよね。正直、完全に受かったと思ってました。

 

でも、結局そこから連絡がなくて……

で、なんか元同僚が受かったとかそんな話を聞きまして……

チクショウ、こんなに好きなのに!!!

 

空回りした僕の想いを察してくれたのか、ジモコロ編集長の柿次郎さんが

 

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「よし、そんなに好きなら直接確認しに行こう! ついでに奇譚クラブの仕事論を聞いてこよう!」

 

…と声をかけられたわけです。

 

奇譚クラブに行ってきた

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奇譚クラブは、広尾駅からちょっと離れた静かな住宅地にあります。ここに来るのは実は3回目。好きすぎてどういう所で働いているのか気になり覗きに行ったのが1回目、面接で行ったのが2回目、そして今回の計3回です。最初、完全にストーカーですね。

 

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案内された応接室には過去の商品がズラリ!! コップのフチ子さんシリーズもたくさん並んでます。全部持ってますよ、俺! 

 

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今回ご対応いただいたのは、奇譚クラブ広報のしきせいたさん

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「今日はお時間いただきありがとうございます。ほんと奇譚クラブには"愛"と"憎"、いわゆる愛憎しかないんですよ…」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「何何!? いきなりめんどくさいな!!」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「こいつ取材に来て取材先に文句を言っている…」

f:id:ryo_kato:20160302181235g:plain「ハァハァ…スイマセン、話を本題に戻します。今回の取材の目的はですね、こういった面白い企画を出し続けている奇譚クラブだったらボツネタも面白いはず!ボツネタから奇譚クラブの企画力が見えてこないかなと!コップのフチ子さんの話は一切しない覚悟で来ています。フチ子さんについてはもう色々な場所で話されているじゃないですか」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「えー! 最近あったフチ子の話あるのに…いいんですか?」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「…前言撤回します!今、完全に心のctrl+Zを押しました!聞きます!」

 

 

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まもなく発売するコップのフチ子5の表紙

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「この前コップのフチ子の最新作、コップのフチ子5の利益とか数字の確認をしたんですけど、全部売れたとしてもたった◯万円の利益にしかならなくて…。中国の工場の人件費が爆上がりしてるんですよね。まぁ、仕方ないんですけど。社員一同で『ン十万個売れても利益◯万かよー!ゲラゲラ』って爆笑しまして。でも、これまで通り200円で発売します、意地で!」

*伏せ字にしましたが笑えるくらい少なかったです

 

 

f:id:ookichi:20160206204520j:plain本当に爆笑しながらフチ子情報を教えてくれるしきさん

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plainいや、ありえます?利益率とか粗利とかって言葉知らないんですか? 普通のメーカーの判断なら発売しないですよ!」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「僕ちょっと僕分からないんですけど、フィギュアの高い安いってのはどこが基準になってくるんですか?」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「それはですね」 

http://f.st-hatena.com/images/fotolife/o/ookichi/20160309/20160309115536.jpg

クリックで拡大します

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「基本的にはこんな感じでコストが決まります。そういう観点から見ると、フチ子のこだわりは異常なんですよ。両肘両膝にうすいピンクをわざわざ吹いてたり、シークレットに至ってはノーマルの10倍くらい工程数があったり…」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「結局フチ子の話してるし、自分の顔でフィギュアの工程画像作るセンスなんなの…」

 

奇譚クラブの企画会議

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「会議で商品化の合否はどんな基準で判断しているんですか?」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「基準は企画会議で参加者みんなが笑ったらOKです。みんなの前で企画書を出して、5秒で可否が決まりますね。ガチャガチャってお客さんがDP(ガチャガチャの正面に入っている表紙のこと)をパッと見て買うか買わないか決めるじゃないですか?それと同じ目線に立つため企画書を見て『わー、いいね』とかリアクションがあったら雰囲気でGOがでるんです。コストなども後から考えるので、マーケティングとかはしたことないですね」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「マーケティングしない!? 前職ではよく『マーケティングをしろ』と言われましたけど、ぼくも面白いものってマーケティングで出来るとは思えなくて…。マーケティングをまったくしていない奇譚クラブがガチャガチャメーカーとして有名になっているって事実が、ぼくが嫌になったマーケティング主義に対してのアンチテーゼになっているんですよ…だから輝いて見えるんですかね…」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「せっかくいい話なのに、最後に自分の話に持ってくるところがキモいね…」

 

自信があってもスベるときはスベる

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「先ほど5秒で企画の判断をするとおっしゃってましたけど、それだけが基準だからフチ子さんも商品化できたんですかね。『コップのフチに座るフィギュアです』って説明だけでみんなが『おもしろそう!』ってなって、それがいまや累計1000万個以上売れてるって…12人に1人は買ってる計算ですよ?」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「大手メーカーだったら世の中に誕生すらしてないかもですね…」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「フゥーーッッ、いい話!あ、そうだ!最近、奇譚クラブの商品でめちゃくちゃ好きなのが中国可愛的猫なんですが、あれ最高じゃないですか?」

 

f:id:ookichi:20160207004028j:plainこれが中国可愛的猫のガチャガチャに入っているDP

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「見てくださいよ、このDPの日本語!」

 

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これは柔らかい猫です

とてもいい猫をたくさん集める素敵猫がパラダイスを作れ!

個性のいっぱい猫があなたと私と兄にハッピーをあげる幸せ!

 

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「ネットの翻訳サイトにブチ込んで直訳したような怪しい日本語!逆輸入商品っぽくするため、あえてやってると思うんですけど、買う前のお客さんに唯一アピールできるDPでここまでふざけてネタを仕込む勇気、普通あります?」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「これ、知らなかったら本気でやってるように見えちゃうね」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「いやー、これは全然売れませんでしたね(笑)。商品もめちゃくちゃいんですけどねー!出す時代を間違えましたね(笑)

 f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「これの良さに気づいてくれ…世間の民よ…」

 

f:id:ookichi:20160207004817j:plain眼の焦点があっていなかったり、塗装がちょっと雑だったりこれも中国の残念なクオリティをあえて再現したフィギュア。

 

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「あとこれ、メッチャクチャ伸びるんすよ」

 

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f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「なにコレ!」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「うわ! 今言われて伸びることに気づきました。『伸びてかわいいよ!』みたいな写真をDPに載せるとか、もっとやりようあったじゃないですか!」

 

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f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「こういうDPを普通作るのでは?」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「いやぁ、最初はDPに分かりやすく載せてたんですけど、『説明すると逆に中国感がなくなるからやめよう』ってことになりました。それが失敗だったんですかねー(笑)」

f:id:ryo_kato:20160302181316g:plain「わかりやすさよりも面白いをとる姿勢、やっぱ最高…。ロマン感じますね、こういう男気ある会社、すっごい抱かれたくないですか?」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「俺に聞くな」

f:id:ryo_kato:20160302181334g:plain抱かれたいッ!

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「達するな」

 

本題のボツネタを見せてもらう

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「余談が長くなって申し訳ないんですけど、本題のボツネタを見せていただきたいなーと思うのですが…」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain基本的にボツネタ公開って、弊社ではNGなんですよね。以前公開したら、某メーカーにパクられてしまって…。ま、でも代表の古屋に伝えたら『あの気持ち悪い奴が取材申し込んできたのならまあいいんじゃん』と言われたので、今回特別にお見せします!

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「気持ち悪くてよかった…」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「その発想気持ちわるっ!」

 

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f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「これは逆シリーズですね、ことわざとは逆でネギが鴨を背負うっていう」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「これいま別メーカーがことわざ動物みたいな商品名で発売してますよね? フツー先に表があっての逆じゃないですか? 先取りしすぎですよ!」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「というか、そのままだして売れそう…」

 

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f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「これは"他社がやりそう"って理由でボツですね」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「確かに、言われてみると他社が出しそうですね…」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「やっぱガチャメーカーにおける奇譚クラブっていう立ち位置を大事にしてるんですね。ボツネタから、奇譚クラブの強みはちょっとでも面白いと思ったのであれば発表できる環境なんじゃないかなと思いました。"これは伝わらないだろうからやめとこう"と企画会議に出さないという選択をしないことが、フチ子も産みだせたのでは?」

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「最初にしないって言ったのに、やけにフチ子を例に出すなぁ…」

 

再度、古屋代表と対面する

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ここで遅れていた代表の古屋大貴さんが到着

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「おおきちくん。せっかくなんだし、面接の合否を古屋さんに聞いてみたら?」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「ウワァ、ちゃんと聞くとなるとすっごい緊張します。聞きたいような聞きたくないような…」

f:id:ryo_kato:20160301222436p:plain落ちたよ

f:id:ryo_kato:20160302181412g:plainウッ…!

f:id:ryo_kato:20160301222513p:plain「理由ってなんかあります?」

f:id:ryo_kato:20160301222436p:plain「なんだろなー…なんかダメだったんだよね!

f:id:ryo_kato:20160302181428g:plainぎにゃぁぁぁぁ!!!

f:id:ryo_kato:20160301222436p:plain「ま、でも採用ってそんなもんじゃない? フィーリングが合わなかったら、ウチにいちゃいけないんじゃないかな? って思うんだよね」

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「そうですね。なんかテイストが違う感じがする」

f:id:ryo_kato:20160301222436p:plain「ってか、不採用の時は連絡しないって最初に言ったじゃん(笑)」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「ウッ!正論で返すのやめてくださいよ…」

 

 

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f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「ウッ…ぼ、僕の元同僚の五十嵐はどうですか? ちゃんとしてますか?」

f:id:ryo_kato:20160301222436p:plain「あー、おんなじ会社だったもんね。ちゃんとやってるよ。今も重要な商品担当してて…。気になるの?」

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「まあ、そりゃアイツが面接来てなかったら僕そっちにいたかもしれないわけですからね。でも、正直言うと前職の企画会議で五十嵐のアイデアがおもしろくて『奇譚クラブとかのが合ってる気がします!』と話してたんですよ。五十嵐のセンスを知ってるだけに受け入れてしまえるってことも逆に悔しくて!どこぞの知らない人が入社してたら完全な逆恨みができたのに!!」

 

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元・同僚の五十嵐を呼んでもらって写真を撮った。面接に受かった者と落ちた者の落差…が恨み面(うらみヅラ)に表れてます

 

奇譚クラブを倒してください

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しきさんが取材途中に言っていた発言に心を打たれました。

 

f:id:ryo_kato:20160301222435p:plain「ぼくらは、そこにキャッチャーがいないのに全速力で球を投げ続けようと思っています。誰もいないとこに全速力でボールを投げるのって無謀なんですけど、受け取ってくれる人は必ずいると信じてるんです。全速力で投げたコップのフチ子さんは、口コミで広まってどんどんファンの方がキャッチしてくれて、ガチャガチャではありえない数字、累計1,000万個以上売れました!」

f:id:ryo_kato:20160302181316g:plain「くぅ~! カッコいぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

どうですかこの奇譚クラブの精神!素晴らしくないですか?

 

なのでこれを見た企画職の方! いや、企画職の偉い方! 部下が全速力でボールを投げようとする企画を持ってきたら、どうかやらせてあげてください。

見えてこない企画って怖いんですけど、必ず拾ってくれる人はいるし、想定外のおもしろいことが起きるんですよ! そのドキドキって企画職の醍醐味じゃないですか!

「今の会社では全速力投げられないな…」そう思っているあなた。イーアイデムでは多数の企画職が集まっています。奇譚クラブもギャフンって言いたくなる企画をかましたってください。そう、ジモコロはイーアイデム様の協力で成り立っているメディアなんですよ!

 

イーアイデムの企画職求人はこちら

うまく協賛企業と結びつけることができました。

 

さて今回の取材で奇譚クラブに落ちたということを改めて認識したんですけど

僕は一体今後どうすればいいのでしょうか?

 

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死に顔(しにフェイス)で記事を終えたいと思います。

 

後日談

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後日、奇譚クラブの企画会議に参加させていただきました。オモコロライターの企画案を含めた合計40案くらい持ち込みプレゼンした結果…。

 

 

なんと!

 

 

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惨敗でした

 

f:id:ryo_kato:20160301222339p:plain「こういうのって普通ハッピーエンドで終わるんじゃないの?なんだよこの結果!リアルかよ!」

f:id:ryo_kato:20160302181316g:plainでも、好き…

 

 

ライター:おおきち

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1988年生まれ。ゴッサムシティ(荒川区)で深夜ラジオとインターネットに影響を受け続けている。尊敬する人はふかわりょう。ハイエナズクラブなどにも書いてます。 blog「おおきちナイトニッポン」 twitter:@ookichiinmyhead


関西人の認知度100%!? M-1グランプリのナレーターが語る「ええ声」の世界

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こんにちは〜!株式会社人間の木の精、もとい生粋の関西人・社領エミです!

突然ですが、そこの関西人の皆さん。
この声を聞いたことはありませんか?

 

うわ〜〜〜〜〜〜!!!! 聞いたことあるで! 聞いたことあるで!

って思った方、多いのでは!?

 

そう! この声、関西人ならほぼ100%知っているはず!

テレビ番組を中心に活躍されているナレーター、

畑中ふうさんのお声です!

 

漫才コンテストM-1グランプリではVTRのナレーションも担当されているので、関西以外でも声を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

実はこのお方、関西圏では定番ローカル番組を余さず並べて全部ナレーションをしたと言っても過言ではない程の、えげつない経歴の持ち主!

 

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まさにこの方のお声は、関西圏のテレビスピーカーに染み付いているのであります〜!!

 

実はかなりの声フェチの私。

かねてから、

この良い声はいったい誰なんだ…!?

「もしかしたら佐々木蔵之介のような、くせ毛を斜め分けにした髪型が似合う爽やかイケメンなのでは…!?」

と思っていたのですが…

 

ついに! 縁あって取材をすることが叶いました! やったー!

 

ということで、やって来ましたは大阪府内の某ビル!
とある控え室で、待望の…

 

畑中ふうさんとご対面です!!

 

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ギャ〜〜〜!!!! ええ声〜〜〜〜!!!!」

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「思ってたのと全然違う髪型につい注目してしまいまして…ともかく、今日はよろしくお願いいたします〜〜〜!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「失礼やなホンマ! よろしくお願いします。」

 

ということで今回は、関西人にとって『顔も名前も知らんけど知ってる中で一番ええ声No.1』に輝く畑中さんに突撃インタビュー!

20余年ものあいだ、関西ナレーター界のトップランナーであり続ける理由とは? そのヒントは畑中さんの『挑戦し続ける姿勢』にありました。

ナレーションの極意から、撮影の裏話まで! コテコテ関西弁で根掘り葉掘りお聞きしたいと思います!

 

関西のローカルTV番組の帝王・畑中ふう

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「畑中さん、関西人として今更聞くのもなんですが、簡単な自己紹介をお願いします!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「はい! 畑中ふうと申します。主に、関西のローカル番組を中心にフリーでナレーター業をしています」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ありがとうございます! あのですね……MUSIC EDGE!! めっちゃ好きでしたー!!

 

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MUSIC EDGE -osaka style-

大阪のローカル局毎日放送にて2001年から14年間放映した深夜の長寿音楽番組。関西にゆかりのあるアーティストの他にも、新人から大御所まで数々のゲストが登場した。

パーソナリティであるU.K.とジョンさんの大阪ならではの和やかな雰囲気に惹かれ、多くのアーティストが何度も出演していたのが特徴! 関西人の音楽観はこの番組に培われたと言っても過言ではないぞ!

 

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「あれはいい番組やったねー。素の槇原敬之なんてあの番組でしか見れんかったと思うよ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「U.K.さんとジョンさん今でも好きだし、あの番組でaiko大好きになりました! アーティストの人柄の良さがモロに伝わる番組でしたもんね。番組終了が決まった時の、U.K.さんのあの涙……あれ、大丈夫? 関西以外の人ついてこれてますか?

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「ついてこれてないんちゃうかなぁ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「とにかく! 畑中さんは、関西人のユーモアを育てたお茶の間番組のナレーションに数多携わるスゴい人なんです!!」

 

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職を転々とし、結果オーライでナレーターへ

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「そんな畑中さんですが、どうしてナレーターになろうと思ったんですか?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「うーん、結果オーライって感じやな」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「え!? 最初はなりたくなかったってことですか?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「おおもとのきっかけは、大学で入った放送部かなぁ。最初はテレビの制作側に興味があったんやけど、たまたまアナウンスをやり始めて興味を持って…。卒業後は競輪競艇の代理店での実況の仕事に就いたんやけど、このままではアカンと思い上京して、タモリさんの弟子になろうと思って…

f:id:emicha4649:20160307191931p:plainタモさんの弟子に……?

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「でも結局根性なくて…というか、ビビってしもて止めたんやけどね」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「めっちゃ気になるぅ〜〜!!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「そのあと、演劇とか色んな芸事をしながら29歳まで東京をブラブラしてたんやけど、年齢的にも『飯を食べれるようにならなあかん』と思って大阪に戻って。紹介してもらった事務所で2年だけ声のお仕事をして、そのあとフリーになった。そのまま26年仕事して、今に至る…って感じかなぁ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「経歴がかなりバリエーションに富んでらっしゃいますが、どうして“ナレーター”というお仕事を選んだんですか?」

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plainわからへんのかい!」 

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「事務所時代は結婚式の司会の仕事とかもやったりしたけどなぁ。したけど……結婚式の司会って、当時の俺には全然おもろなかったんや……」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「えー! 人のめでたい結婚でしょ?そんなにおもろないもんですか?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「うん。しかも、ホテル側には当然やったんやろうけど、司会って式場の表玄関から入ったらアカンとかいうルールがあったりして、いろいろと裏方扱いされるんよね。でも俺はそれがなんか嫌でずっと無視して表玄関から入ってて…そしたら…」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plainf:id:emicha4649:20160308191218j:plain

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain戦士やな…」 

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「そんなこともあって、『自分って何なんだ?』って悩んだ末に、『名前のない裏方でなく、自分の名前で食べていけるようになりたい』って強く思ってん。そこで俺にピタッとハマったのが“ナレーター”って仕事やったんやと思う」

 

最高のナレーションとは「忘れられるもの」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「畑中さんがフリーになった理由がめっちゃわかる気がします。今、フリーのナレーターをやっていて、どうですか?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain絶対オススメせぇへんよ!」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「えー! それはなんで!?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「まずナレーターでフリーなんてそうそうおらんし、業界的にも大変やで。今は声優になりたいとか云々の子が多くて、若い子が沢山この業界に進んで来るけど、みんながみんな食えへんもん!目立つのは一握りなんて言わん、ひとつまみくらい。『おいで』なんてよー言わんわ!」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「厳しい業界なんだ。別の仕事をしたいと思ったことはないんですか?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plainそれはずっと無いな。26年間ずっと。『語りの表現をどこまでできるか』っていうのが俺のテーマやし、何かを残していきたいとは思い続けてるよ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「畑中さんほどのベテランでもまだまだ表現を追求し続けてるんだ…!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「危機感も常にあるよ。終わるのが当たり前のテレビ業界やから、次の準備っていうのはいつも進めてるし、いつも自分の価値をみんなに解ってもらえるように行動してるつもり」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「価値…」

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「タイミング良くアンパン買ってきたりとか…?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「現場のパシリちゃうわ! そうやなぁ、ナレーション自体の価値って何やと思う?」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「うーん……映像に声を吹き込んで、映像の表現力を増やすこと?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「近いなぁ。俺は『命を吹き込むこと』やと思ってる。音の無い無機的な映像が、俺らの声や語りが入ることで有機的になるということ。あとは、ナレーターの良し悪しで価値の重みが変わるなぁ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ふむふむ」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain一番良いナレーションっていうのは、気持ちや意味が語りで伝わるのに、決して前面に出て来ないものやねん。観てる途中は語りに引き込まれて内容を理解するけど、観終わったあとは作品の内容だけを覚えてて、実は声や語りを忘れてる、それが一番腕のあるナレーターの仕事。だから、そこを極め続けることが俺の価値かなぁ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「め…………め、め、めっちゃ難しそ〜〜〜!!!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「めっちゃ難しいよ!(笑) だから、このインタビューで『俺の声は知ってたけど顔も名前もはじめて知った』って思った人、ある意味それは俺の本望やね。
腕の上げ方にもいろいろあるよ。ただ読むだけじゃなく、『人生の経験値』が豊富な方が伝わる度合いは増えるんちゃうかとも思ったりもするし…。ナレーターってほんまに、奥が深い仕事やと思うなぁ」

 

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ナレーションに話術を取り込む

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「さっきからお話してて思ったんですけど、畑中さんってなんでそんな声が良いんですか…?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「なんでって(笑) 声変わりした時からこの声や!」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「さぞおモテになったでしょう!」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「そんなん知らんわ!」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ええ声で口説いたりするんでしょ〜!?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「いやそれが、やっぱり俺って関西人やん。」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「はぁ」

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「俺が東京人で性格も落ち着いてたら、『次……何飲む?』とかそういう言い方でも良いけど…、大阪のバーでそんなん無理やろ〜!『次何するぅ〜!?』とかそういう言い方になるやん!」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「うわー!関西人の性!」 

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「ただ、関西人で良かったと思うこともあるよ。関西人って話芸が豊かやん。俺自身、ナレーションに話芸を入れようと思ってやってるところがあるから」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「話芸? でも、ナレーションって”決められた原稿を読む”お仕事ですよね?」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「例えばな…『記事出演のご依頼について』、これを読むとするやろ。」

 

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f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「こうやって、どっか一部にアテンションを与えて、一回聞いてる人に違和感を感じさせて引き込むことで、その直後の単語を目立たせる。一回視聴者を聞く体勢にさせるわけや。
『なぁ、聞いてくれる?』から話に入るのと、『うわ〜〜参ったわ〜〜〜!聞いて!』から話に入るのとでは全然違うやん。後者の方が『何が参ったんや?』って気になるし、そのあとの聞き手の興味の持ち方が全く変わるよな。そういう話芸もナレーションに生かすことができるねん」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「なるほど…! 確かに全然違うー!!」

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「そういえば、テレビでよくCM前に『このあと、とんでもないことが…!?』って入りますよね、あれも引き込まれるなぁ」

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「あぁ、あれな〜! 『CM終わったら全然とんでもなくないやん!』っていう、テレビの裏切りな!

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「裏切りwwww」

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「俺、現場では一時期『この後ホンマにとんでもないことが起こるんか!?』って確認してたわ!とんでもなくなさそうやったら絶対言いたくなかったもん!」 

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「さっきからこの人、意志の強さが激しすぎる!」

 

目指すのは「音楽のようなナレーション」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「大学の時に入った放送部がきっかけに、声のお仕事が今まで続いてるわけですよね。そう考えると長いなぁ。私もライターという道に踏み出したけど、畑中さんくらいの歳になった時はどうしてるんだろうと思います…」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「まぁ、続けていけるかどうかは結果論やね。俺の場合は完全な結果オーライやし。いまだに俺は俺の価値がどこにあるかはっきりと解ってないけど、いろんなご縁があって仕事の依頼が来るということは、どっかに何かがあるんだろうと思うから……。続けていきたいと思うからには、様々なスキルを身につけて腕を上げていくしかないと思って常にやってるよ」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ナレーターの帝王に君臨してもまだスキルを! ……仕事って……行き着くところはどこなんでしょうか……」

 

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f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「ションボリ…」

f:id:emicha4649:20160307191929p:plain「なんか君の人生相談みたいになってきたな…。そうやなぁ、最近思ったんやけど、俺は『音楽のようですね』と言われるナレーションがしたい!

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「音楽! えー! どんなのだろう? 心地いいっていうのはわかる!」

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「俺もあんまりイメージ湧いてない(笑)。落ち着いた部分、心地いい部分、ざわつく部分…そしてポンと言った言葉で人の心をワッと動かせるような、そんなナレーションがしたいなぁ。俺にとって、声は研究対象なのかも。構成も含め、声だけでどこまでできるんだろう?と思うし、どんどん挑戦したいね」

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「すごい熱意! ナレーターって単なる『声を吹き込む人』という認識だったんですが、畑中さんには『クリエイター』という言葉が一番しっくりくる気がします。ナレーターも作品の制作に加担する人のうちの一人なんだから、よく考えたら当たり前なんですけど…」

f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「うん、せっかくこの仕事をやってきて価値を高めていきたいと思っているからには、ナレーターという仕事が芸の域まで行ければいいとも思ってるね。まだまだ挑戦することあるし、そういうことを考えてるのは楽しいし。仕事の上でやっていても面白くない!もっとええものを!と思いながらやりたい!

f:id:emicha4649:20160307191931p:plain「うわ〜〜すげえ〜〜〜! 私もずっとそう思いながら仕事したい〜!!」

 

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f:id:emicha4649:20160307191926p:plain「で、ちゃんと届いて『すごいな〜』とか言われて、評価されたりしたいやん!? 俺はまだテレビの範囲から出られていないけど、いずれは新しい表現を確立して、『畑中ふうの語りを聞きたい!』と思った人が集まるようなナレーターになりたい。これからもずっと、ある意味わがままにやって行けたらと思ってる」

 

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帝王はすごかった

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ナレーター・畑中ふうさんのインタビュー、皆さんいかがでしたでしょうか。

 

関西の方以外はご存知ない方だったかもしれませんが、仕事に対する考え方については、全国のものづくりに携わる皆さんに共通してヒントになることが沢山潜んでいたインタビューかと思います。

実際お話をしてみて、やはり長年最前線でお仕事を続けていらっしゃる方はエネルギーと熱意が半端じゃない!とヒシヒシと感じました。今から30年後の自分なんて想像もつきませんが、畑中さんのように貪欲に挑戦し続ける大人になりたいと強く思います!

 

※社領エミのほかの記事を読む

  

ライター:社領エミ(株式会社 人間)

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"面白くて 変なことを 考えている"会社、株式会社人間の元気なデザイナー。ええ声が好き。
Twitterアカウント→@emicha4649

【最終回】地元伝説コロ沢(30)

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1話〜16話(第一部)まで一気に読みたい人はこちら 

前回の地元伝説コロ沢を読む

 

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●地元伝説コロ沢とは?

とある地元の商店街の惣菜屋「コロコロコロッケ」で生まれたキャラクター。持ち前のビジネス知識とマネジメント力で、活気が失われた商店街を再生していく朝ドラ風の4コマ漫画です。

 

書いた人:小山健

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マンガ家・イラストレーター。東京都在住。雑誌・書籍・WEBなどでお仕事をしています。 http://koyamaken.com

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

四カ国語を話せる謎! 三十路の娘が「父」の仕事に密着してきた

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こんにちは、非常勤ライターのひにしあいと申します。

私は山梨県の忍野村に来ています。

 

 

場所はざっくり言えば富士山の麓。世界文化遺産にも選ばれた「忍野八海」が観光スポットとして有名で、多くの外国人旅行客が訪れています。で、なぜ両親の住む忍野村を訪れたかというと…

 

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自分の父親について知らないことが多すぎる!

 

そうなんです。私自身、父がこれまでどんな人生を歩んできたのか、どんな仕事をしているのかなんとなくしかわからないまま三十路を超えてしまいました。世の娘さんも「お父さんは割と謎な存在のまま」ではないでしょうか? 全身のホクロの数まで知っているタイプの娘さんだったらすみません。

今回ジモコロで企画を考えるにあたり、私の父の謎さはかなり度を越えているのではないか?と思い至ったんです。その理由がこちら。

 

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・・・って挙げ始めたら、なんなのこの父親!

そもそも、なんで技術者でCTOだったのに忍野村の観光案内所にいるのか意味不明すぎます。「割と謎な存在」なんてレベルじゃありません。そこからものすごく気になってしょうがなかったので、謎を解き明かすべく実の父にインタビューを申し込みました。娘視点で父の謎と仕事を解き明かしてこようと思います!

 

父の仕事を取材したら観光業の課題が見えてきた

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こちらが実の父である日西修。忍野村観光案内所のガイドとして活動しています。元々、技術畑だった父が観光業でちゃんと仕事ができているのか? 娘のお節介かもしれませんが、心配なので忍野村観光案内所に押しかけたんですが…。

 

f:id:eaidem:20160301215137p:plain 「おう、よく来たな」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「まさかお父さんの職場に来る日がくるなんて、思ってもみなかったよ」

 

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といっても、実の父に直接聞いても客観性に欠けるので、忍野村観光案内所の上司である黒澤さんに話を聞いてみました! キレイな女性!

 

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「はじめまして。忍野村観光協会の黒澤です」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「いつも父がお世話になっています。いきなり本題に入りますけど、東京では観光業と全く関わりのない、コンピューター商社勤務であった父がこちらでお役に立てているのでしょうか?」

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「いやいや、お父さんは今やこの観光案内所になくてはならない存在なんですよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「ええ、そうなんですか?」

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「山梨県忍野村は忍野八海という観光地スポットに、多くの外国人が訪れています。東京から大阪へ向かう途中、富士山周辺の観光地を訪れるのが人気らしくて。その多くがアジア圏内なんですけど、日西さん(父)は4カ国語を話せることもあってコミュニケーションの要となっています」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「娘の私からしたら多言語話せるのが謎なんですよね…」

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「ただ話せるだけじゃなく、主体的に課題解決をしてくれるんです。たとえば、観光地にある外国人向けの看板。英語や中国語表記のモノが世の中増えているじゃないですか? 実はあれ、間違っていることも珍しくないんです。日西さん(父)は間違いを見つけては表記を正しく直すよう働きかけたり、観光パンフレットの見直しを考えてくれたり、もうすごいんですよ!」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「最近だと、富士山駅から忍野八海へ行くバスルートの停留所かな」

 

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f:id:eaidem:20160301215149p:plain「あれ、『忍野入口』『忍野八海入口』『忍野八海』ってややこしいね。日本人でも間違うレベル」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「そうそう。忍野八海に行くには青枠の『忍野八海』『忍野八海入口』で降りれば目の前なんだけど、赤枠の『忍野入口』で間違えて降りてしまう外国人が多いんだよ。しかも、間違えてたら忍野八海まで辿り着くのに歩いて40分もかかってしまう。先日もタイの観光客が40分歩いていてね。こりゃいかんなと」

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「そうなんです。最近は大型バスで来られる方だけでなく個人旅行で訪れる方も増えています。何とかしたい問題なんですが、なかなかバス停名って変更できないらしくて。それでも日西さん(父)は絶対諦めないんですよね」

 

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父発案で公園の部分の色を変えるなどして分かりやすくしたマップを制作

f:id:eaidem:20160301215137p:plain最初から『どうせ私が伝えても変わらないだろう』と諦めて何も言わないという事は絶対にしない。自分の言いたいことは言うし、レポートにもまとめて富士急行さん(ここら辺一帯の観光バスや電車を運行している地元企業)にも連絡してるよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「具体的にはどんな提案を富士急行さんにしてるの?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plainバス停に番号を付けてほしいという要望を出していて。東京の地下鉄駅もM-3など『路線を表すアルファベット+番号』が振られるでしょう。韓国は番号案内が進んでいて、同じようにすれば言語の壁を超えて伝わるんじゃないかなと」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「うん、たしかにあるね。数字なら間違いも少なさそう。って、お父さんそんなことまでやってんの!? 業務の範疇超えてない?」

f:id:eaidem:20160301215645p:plain「日西さんは、これまでのお仕事でもいろいろなものを見てきているから、いろんな問題に気づけるし、周りの人をうまく動かせるのかなーと。いつも尊敬の眼差しで見ています」

 

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観光案内所に置かれているシールやスタンプも父が考案

 

地域の問題を解決するヒント

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ここからは実際に父の仕事ぶりを観察するために、後をついていきたいと思います。

 

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忍野八海!富士山が近くてクッキリ!超風情あるー!

 

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移動中にガンガン中国語で観光客に話しかける父。中国人観光客も言葉が通じると思った途端に、表情が崩れて和やかに話しかけていました。

 

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父が実際に修正案を出した看板がこちら。忍野八海はトレビの泉と勘違いした外国人が硬貨を投入するノリがあるらしく、注意喚起を促しています。

 

f:id:sunwest1:20160125123539j:plain地元の新聞では「違法さい銭に困惑」という見出しで取り上げられているほど。

 

f:id:sunwest1:20160125151306j:plainそれにしても、池の透明度がスゴい! 

 

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「昔、テレビ局のカメラマンがこの池に潜って行方不明になって残念ながら3日後に発見されたことがあるんだ。かなり深いんだろうなあと思うよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「なんだよそれ!むちゃくちゃこわいわ!」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「ちょっと腹が減ったからメシでも食おうか」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「急だなもう!」

 

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山梨の名物といえば「ほうとう」

 

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「お父さんが今の仕事で必要とされてるのはわかったけど…なんで今でもそんなに頑張れるの? 地方の問題ってお父さん世代の人が適応できてないから歯車が噛み合ってないイメージがあるんだけど」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「口で言うのは誰でもできるからね。ひらめいたことは自らが率先して形にしてるだけだよ

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「それって地方の問題や観光事業だけでなく、すべての仕事につながることだね。たしかに昔っからお父さんフットワークだけは軽かったなぁ。ほかに仕事をする上で気をつけてることってある?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「自分自身が強く問題意識を持っていても、1度伝えたことを2度は言わないこと」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「どうして?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain距離のある人を動かすためには焦ってはだめなんだよ。向こうだって忙しいんだから。半年後でも1年後でいいから、進言したことの半分でもやってくれたらいいな…という気持ちが大事。しっかり伝えた上で、気長に構えることも必要だと思う」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「熱意があるからって押せ押せではうまくいかないのか…。そういうマネジメント論ってやっぱり過去の職歴で得たものなの? なんで4カ国語話せるの? 聞けば聞くほどわかんないんだけど?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「昔の話を聞かれると思って、ほら」

 

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f:id:eaidem:20160301215149p:plain「こ、これは…! まさかの父親の職務経歴書! これで長年の謎が解けるってこと?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「そうそう。まず経歴だけど… エンジニアから海外のPCメーカーに転職して技術部長、営業部長になった後、雇われだけど代表取締役になって、最後に居たグループ会社ではCTO(最高技術責任者)をやっていたんだ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「この経歴を見たらベテラン経営者っぽいマネジメント論も納得だわ」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「次になんで英語を話せるようになったかというと…30歳の時に会社を辞めて、退職金を使ってアメリカに語学留学したんだ。その後、日本で輸出入に関わる仕事に就いたから、40年近く英語はずっと使って仕事してきたんだよ」

 

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34年前のアメリカで撮った父の写真。時代を感じる

 

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「中国語はどういう経緯だったの?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「海外メーカーの日本支社立ち上げをすることになって、台湾が本社だったから、現地でのコミュニケーションもできるだけ中国語でやろうと、もう本当に必要に迫られて覚えたんだよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「そりゃ、大変そうだ。大人になってからの勉強って大変なのにすげえなあ。韓国語はどうして覚えたの?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plainお母さんが韓流ドラマが好きで見まくってただろ。あれで先にお母さんが韓国語喋れるようになって、一緒に韓国旅行とか行くうちにお父さんも覚えた」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「お母さんが韓流ドラマ見過ぎて、それに付き合わされたお父さんも韓国語理解したんだ…。普通その流れだけで喋れるようにはならないと思うけど、お父さんってめちゃめちゃ勉強熱心じゃない?」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「うーん、そんなことないよ。ただ『なんでだろう?』と思ったことは必ず調べるようにしてるだけ。好奇心が動いたら満たさないと気が済まないのかもな」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「そこは元々エンジニアだった影響なのかな。お父さんって理系の脳みそだけど、好奇心は文字の成り立ちから土地の歴史まで、すごく幅広いよね」

 

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気になったことは全部メモして覚えるようにしているらしい

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「仮におまえが外国で言葉が通じないシチュエーションで、現地の人に『こんにちは』って声をかけられたらうれしいだろ?」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「うん、素直に嬉しいとおもう」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain異国で一言でも言葉が通じると相手も嬉しいし、笑顔を引き出せる。そのために言葉を覚えるのって自然なことじゃないか。だから、挨拶だけでも多くの言葉を覚えたいと思っているよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「な、なんだよ…。お父さんすごいな…」

 

 

お父さんが実はすごかったダイジェスト

ビル・ゲイツと久米宏の関連性

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f:id:eaidem:20160301215149p:plain「なにこの写真」

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「DOS/VというPCが昔はあってね、それをうちの会社が台湾のメーカーでは初めて日本市場で売り出した時に取材を沢山受けたんだ。そのブースにビル・ゲイツが来た時に写真を撮ったこともある。その関連でニュースステーションに少し出演して久米宏と共演したこともあったな」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「DOS/V!ビル・ゲイツ! 久米宏! いちいち出てくるワードがすごいね。そういえば、私自身Win95の時点で自分のPCを買い与えてもらって、私のインターネット大好き人生が始まったんだった。テレホーダイの波の中、中2でサイト作ったり、中3でオフ会に参加していたわけだから、なんだかんだお父さんの影響を受けているんだなあ…」

 

●歴史的資料を発見する

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f:id:eaidem:20160301215137p:plain「これは江戸時代の忍野八海の案内図なんだ。これは木版画でね。近くのお寺に版木があるのに、当時刷られたものが無いのはおかしいと思って、調べに調べた結果、北口本宮浅間神社という大きな神社に所蔵されていることが発見されてね」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「へー!」

 

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木版画のレプリカも父が自作

 

f:id:eaidem:20160301215137p:plain専門家の方にも再発見だと言われてな、許可を取って引き延ばした物をここに飾らせてもらっているんだ。いいだろ?」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「もう歴史的偉業じゃん…」

 

f:id:sunwest1:20160125162459j:plain

f:id:eaidem:20160301215137p:plain「これに書かれている文字の解読もしたくて、古文書の講座にも通っているんだよ」

f:id:eaidem:20160301215149p:plain「古文書!お父さんは何でも昔からよく色々な事を調べていたもんなー。って、全然意味わからないけど、お父さんエピソードがいちいち謎にすごいわ!もうおなかいっぱいだわ!近所の山の歴史とか一緒に調べた記憶あるもん」

 

取材を終えて

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朝から父の仕事に同行して、気づけば日が暮れ始めていました。あっという間!

 

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なぜか、おもむろに拝み始める父。いろいろ話を聞いたけど、根っこの部分で何を考えているのは分からないままです。

 

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とはいえ、父が携わっている仕事は「誰かのためになること」ばかりで。観光案内所で父が対応した人から直筆のお礼の絵手紙が届くこともあるそうです。

 

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お互いに発掘された赤ちゃんの頃の写真をもってパチリ

親の仕事の内容や仕事観について、深く聞く機会なんてそうそうないと思います。私自分も就職をして10年以上経ったからこそ共感できる部分や素直に尊敬できる部分もあり、とてもいい機会になりました。

「職務経歴書」とまではいかなくても、親に会う機会にはこれまでやってきた仕事の詳細や仕事への向き合い方などを話題に出してみてはいかがでしょうか。なにか今の自分のヒントになる思いもよらない良い言葉が聞けるかもしれません。

 

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私は好奇心を積み重ね続けて常にチャレンジをしている父の働き方に少なからず刺激をうけました。

娘にあまり自慢せずとも、会社のため、家族のため、そして現在では地元のために
老いてなお、好奇心を大事にして勉強熱心な姿は娘として誇らしい気持ちです!

 

ライター:ひにしあい

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本業はSEOの非常勤ライター。好きな本は路線図、好きな音楽はビジュアル系。特技はカラオケ芸。嫌いなものは犬好きを装う女。スクールカーストは常に2軍。女ならではのあるあるを試し続ける人。トゥギャッチやコネタ –Exciteで活動中。個人サイト「hinishi.com」。Twitter ID→@sunwest1 

【ヨッピー×VICE JAPAN】目標は大統領!? ネットでウケるコンテンツを考えてみた

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こんにちは、ライターのカツセマサヒコです。

ある日、ジモコロ編集長の柿次郎さんに呼びだされて編集部に行ったところ、こんなことを言われました。

  

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「カツセくん。今度イベント登壇することになったから、レポート記事書いて!!!!」

 

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自分が登壇するイベントで自らイベントレポを頼んでくるって、この人よっぽど自分の発言に自信があるんだろうなあとちょっと引き気味だったのですが、ただならぬ気迫…。

しかもそのイベント、個人的に申し込んだけど抽選が外れた「大ベンチャー展」だったので、仕事で行けるなら尚更ありがたい。

 

●大ベンチャー展ってなに?

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2016年2月3日〜2月7日、株式会社バーグハンバーグバーグ×三幸エステート株式会社が手がけたセミナー&展示会です。コンセプトは「太古のベンチャー」。家入一真のゾンビやホリエモンの恐竜などを展示し、合わせて豪華ゲストによるセミナーを開催しました。 http://venture.sanko-e.co.jp/

 

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ということで、今回は2月5日に実施された「大ベンチャー展」のセミナーレポートをお届けしたいと思います!

会場は秋葉原にある「アーツ千代田3331」。すでに客席はいっぱい!

 

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地下には家入一真さんのミイラとか堀江貴文さんの顔がついた恐竜なども展示されていたのですが、ほかに予算の使い道あっただろとしか思えなかったのでこの話は割愛します。クオリティはガチでした。

 

 

初の組み合わせ! ヨッピー×VICE JAPAN佐藤ビンゴさん

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ほどなくしてトークイベントの開始時間になると、柿次郎さん(左)ライターのヨッピーさん(中央)、VICE JAPAN代表の佐藤ビンゴさん(右)が登壇しました。

この日のトークイベントは前編・後編に分かれており、前編は3人で「本当に面白いメディアってどういうもの?」というテーマについて話します。

メチャクチャためになるし、ブッ飛んだ話ばっかりで最高だったので、その熱量をできるだけ落とすことなく、お届けしたいと思います!

 

 

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まずは登壇者の自己紹介。

 

ライターのヨッピーさんは、“去年一番ウケてたライター”なのだそうですが、ご本人曰く「一昨年もウケてたから」とのこと。たしかにインターネットにずっと張り付いてると、ヨッピーさんの記事をたくさん見る気がします。あと、この日は極寒だったのに、なんでこのひと半袖なんだろうって思いました。

続いてVICE JAPAN 佐藤ビンゴさんの自己紹介。

 

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「佐藤さんのプロフィール写真が怖すぎる」とヨッピーさんと柿次郎さんにイジられながら、VICEがどんなメディアであるかを紹介していきます。

 

 

●VICEとは?

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VICEは世界36カ国以上に支部を持つ米国発のデジタルメディア。運営はVICE Media。世界中で制作・厳選されたプレミアムでエッジが立ったコンテンツを日々5千万人以上に提供しています。昨年11月にはウォルト・ディズニーが大型出資を決めたことが話題になりました。日本版を「VICE JAPAN」として、佐藤ビンゴさんが運営中。http://jp.vice.com/

 

 

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「VICEは取り上げるテーマがディープだし、一見、ちょっと怖いイメージがあるじゃないですか。あと、そもそも佐藤さんの経歴もめちゃくちゃおもしろくて、かなり売れてるバンド(54-71)からスタートしてるんですよね。だからプロフィール写真が怖いのも、雰囲気的にちょっと納得できちゃう」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「海外ツアーとか、レーベルをやっていたら映画監督のスパイク・ジョンズに会う機会があって、そこからVICEのファウンダーを紹介してくれて。それでVICE JAPANをやってみてはという話になったんです。身の回りの人と一緒にいろいろやってたら、今に至ったっていう感覚ですね」

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「ものすごいディープなカルチャーを伝えてるメディアですよね。『MADE IN KAWASAKI』のBADHOPの動画は、ヒップホップを通してキツい環境から這い上がるドラマ性のある内容で。かなり話題になっていましたね」

 


MADE IN KAWASAKI 工業地帯が生んだヒップホップクルー BAD HOP

 

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「あれはソーシャルでよく見られていましたね」

 

 

僕も知らなかったのですが、VICEって、どうやらものすごくブッとんだメディアらしいです。この後にもVICEの紹介がありますので、そちらまでぜひ読んでもらえたらと思います。

  

ディープすぎるメディア・VICE JAPAN

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自己紹介が終わると、話題は再びVICEについてに。ヨッピーさんがそのヤバさを話していきます。

 

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f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「ここで皆さんに問題なんですが、これは"とある職人”に迫ったVICEのインタビュー動画なんですが、これはいったい何の職人のインタビューでしょうか?」

 

 

 

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f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain正解はコカイン職人でした。本国のVICEって、コカイン職人にインタビューしてる動画とかあるんですよ。記者はコカインを作っている場所までは目隠しされていて、作ってるところだけ見たら、あとはまた目隠しされるの。こういう組織ってきっとバンバン人殺してるじゃないですか。そういうところまで取材に突っ込んでいくの、VICEだけでしょ」

 

 


THE NEW KING OF COKE:新たなるコカイン帝国ペルー(3)

 

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「ほんと攻めてますよね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「VICEって、過去に誰か死んだりしてないんですか?

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「うーん。過去に3人トルコ政府に捕まって、そのうちひとりは3カ月くらい拘束されてましたね。それで解放運動とか、VICEとしてやりましたよ」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「世界が違いすぎる。すごいディープなところ行きますよね」 

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「テレビ局でも、昔はそういうところに民放も行ってたんですけど、今はNHKぐらいなんでしょうね。でも、これが報道なのかなって」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「これ、編集部は『コカインの記事、ウケたなあ』とか『数字取ったなあ』って笑ってたりするんですか? 『よっしゃー、次もコカインいこ!』とか」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「いや、別にコカインが好きなわけじゃないから(笑)。あの記事、ネットフリックスから依頼を受けていて、海外ドラマ『Narcos(ナルコス)』の告知ができるメディアがないっていう流れでVICEに話が来て作ったんですよ。だからタイアップなんです、あれも。バナーにずっと広告が付いていますよ」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain『切り口がコカインのタイアップ記事』って頭おかしい

 

 

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f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「VICE自体は36カ国にあるんですよね。PVはどのぐらいなんですか?」 

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「UUでしか出せないんですけど、月間で1億1千万UU。もともとはニュースペーパーとして94年から始まって、フリーペーパーになって、そこからYouTubeが出てきたから『じゃあ動画もやろう』となり、今に至りますね。確か昨年11月ごろにアメリカでは、ウォルトディズニーからの高額出資も決まりました」

 

 

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「あのディズニーが出資してるってすごい」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「特に海外チームは、本当にヤバいところにもいろいろ行ってたんですけど、ファウンダーに子どもが産まれてからは『なんか世の中の役に立つことしようよ』ってなって、そこから危険な場所にはあまり行かなくなったかもしれませんね

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「大人になって落ち着いた田舎の不良みたいだ」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain 「と言いながら、昨年の広告代理店向けの発表会とか、全身刺青の人がファ●クファ●ク言ってるだけでしたからね

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain何の情報も得られないじゃないですか、それ

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「でも今は音楽やアート、カルチャーまで扱ってるから、その幅広さがVICEのウリになってますね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「ほかのメディアじゃマネできないですよね、そこまでいくと」

 

VICEの取材力と突破力に、会場は唖然とした空気が流れていました。

いま日本でここまでのメディアを作れって言われても、なかなかできるもんじゃないよなあと思わされる話ばかり。あと、記事に書いていない部分は大体汚い言葉が飛び交っていたので、本当にロックなメディアなんだと思いました。

 

二人が考える“ウケるコンテンツ”

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続いての話は「ウケるコンテンツ作り」について。

佐藤さんとヨッピーさんはコンテンツ作りへの考え方がまるで違いますが、発想や切り口の対比がまたおもしろいです。

  

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「コンテンツ作りは、PV数とか狙ってやってるんですか?」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「堅い言い方をすると、『人の役にたつ』とか、そういう気持ちを先行して作ってるつもりなんですよ。だから『ウケる、ウケない』とかはそこまで考えない。どっちかって言うと、いつ見ても『ああ、なるほど』って思えるコンテンツというか、そのほうがよりエディトリアルがあるって感じる」

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「なるほど」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「たとえば、VICEの中でオレオレ詐欺をずっと追いかけている作家さんのインタビューがあるんですけど、その記事をいつ読んでも『ああ、なるほど』って思うんですよ。オレオレ詐欺をやってる人ってめちゃくちゃ頭が良くて、『この人、会社経営やったらすごいんじゃないかな』って思わされることもある。そういう発見がある記事こそ、ウケるコンテンツじゃないかなって思うんです」

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「いつ見てもイイ記事があがってるっていうのは、メディアとしては強いですよね。VICEが20年続いてる理由も、それでしょうね。ヨッピーさんはPV数とか、狙って書いてるんですか?」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「そうですね。僕、記事がウケるかどうかわかる特殊能力を持ってるんですよ。大体の原稿は下書き状態で、その記事が伸びるかどうか当てられるようになってきた」

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「それすごい。どういう計算式かここで言えます?」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plainバズるかどうかは、『広さ』『深さ』『距離感』の3つで測れるんですよ。まずは『広さ』なんですけど、たとえば山梨に取材に行って記事を作ると、それ読んでうれしいのって、基本は山梨の人じゃないですか。でもそこに『東京から一時間で行ける!』って書くと、東京の人も巻き込めるんですよね。そうやって記事の対象を広くするんです」

 f:id:katsuse_m:20160301160627p:plainジモコロの記事でやりましたね

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「次に、さっきの『広さ』の人たちに対して、どこまで深く届く記事を作るか。この前、量子力についての記事を書いたんですけど、あれは理系をターゲットにしているんです。量子力学って説明しづらいんですけど、それをわかりやすく書いてあげれば、ぜったい好きな人達には刺さると思ったんですよね」

f:id:katsuse_m:20160301160627p:plain「あれもすごい話題になってましたね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「で、最後に『距離感』を見るんですよ。ユーチューバーのHIKAKINさんとかって、さっきのあてはめ方だと『広さ』も『深さ』もそんなにないでしょう? でも、彼らは距離感がめちゃくちゃ近いんです。カメラの前の僕に話してくれる。ニコ生主とかもそうですよね。だからウケるんだと思ってます」

 

ヨッピーさんはこのほかにもいくつかの記事を事例にあげながら、「広さ」「深さ」「距離感」についての説明をしていきました。詳しくはNewspicksのインタビュー記事でどうぞ。

 

 

あと「『怒り』をコンテンツ化すると応援してくれる人が出てきてバズる」という話もあり、これもネットに張り付いてるとよく見かけるなあと思いました。

 

読めば何か発見があるような普遍的なコンテンツを作るVICEと、方程式からバズを狙うヨッピーさん。対照的な印象ではありましたが、どちらも「おもしろいメディア」作りには必要な要素ではないでしょうか。

 

「元年」でも障壁は高いままの日本の動画シーン

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続いてのテーマは、テキストと動画について。

テキストを主戦場にするヨッピーさんと、動画コンテンツを手掛けるVICEの対比がこれまたおもしろい話でした。

 

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「毎年言ってる気がしますけど、今年こそ動画元年って言われてますよね。個人的にはまだまだ来ないんじゃないかなあと思うんですが、元年の実感あります?」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「たぶん『○○元年』とかって、広告代理店みたいなところから発信して始まってると思うんですよね。だから営業的な動きをしてるときはよくその言葉を聞くけど、でも若い人と話をしてもぜんぜんその雰囲気は感じない」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain代理店の思惑、ありそうですよね。企業から依頼される記事ってピンキリですけど300万円くらいが上限なんですよね。でもテレビCMって何千万とか何億って予算を持ってるじゃないですか? だからネット記事って、代理店的にもそんなに儲からないんですよきっと。でも偉い人からは『ネットもやれ』って言われるから、渋々やってるんだろうなあって感じることもありますね」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「動画やテレビは関わる人が多いから、お金も時間もかかるよね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「動画でやったら予算があがってドカンとお金がとれるから、だから動画やろう! って言ってるところが多いんじゃないかなって思うんですよね。でも『動画つくったけど、ビュー数が伸びないから、記事書いて動画紹介して?』って言われると、もう本末転倒すぎてダメだなあって思います」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「『腐った刺身を美味しくみせろ』って言われてるのと、同じ感じですよねえ」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plainそれでもお金積まれたら書くけどね?

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain書くんだ

 

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f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「でも僕、バイラルメディアっぽい動画とか好きじゃないんですよね。すごいお金かけて、ピっと1~2分で見られるやつばっかりで。外国の動画メディア見てると、『日本なにしてんやろ』って思っちゃうな」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「いやー、わかります」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plainバズを狙うとかじゃなくて、勉強できるとか、ためになるとか、そういうのがブランドになるし、エンゲージできると思うんですよ。そういう動画をVICEは作れるから、仕事が来るのかなと思ってて。アメリカやイギリスはみんなそっちにシフトしてますし、20分の長い動画も、きちんと見てくれますから。その状況を知ってしまうと、日本はつまんないことしてるよなあって思っちゃうんですよね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「そこらへんってノウハウの差が大きいですよね。動画の成功者って、個人だとHIKAKINさんとか、その周辺の方々しかいないと思うし。あの人たちも積み重ねで今の地位を築いてるじゃないですか。一撃で狙おうって、動画だと難しいですよ。やっぱり

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「VICEはYouTubeにコンテンツ出すことになったとき、すごいお金が動いたって耳にしたことがありますが」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain1年で10億円ぐらいかな?

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plainこれですよ。『ヨッピーさんは動画やらないの?』って言われるけど、もう今からは入れないんですよ。動画は個人が参入出来る規模をもう越えちゃってるんですよね。ノウハウがあるからその金額が動くのであって、僕は動画編集も出来なければ機材もないし、そもそもコカイン職人のところなんていきたくない

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「行かないんですか?」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「逆に聞きたいけど、行きたがる人、いる?」

 

動画元年と言われるようになっても、いちクリエイターが新規参入するには障壁がまだまだ高いようです。確かに動画の編集技術って、Webライティングとは全くスキルが違いますもんね……。「好きなことで、生きていく」というキャッチコピーがずいぶん前のことのように感じられます。

 

 「大統領クラスと仕事したい」ふたりの今後の戦略

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最後はヨッピーさんと佐藤さん、それぞれが考える今後の戦略についてのお話。スケールが大きすぎて会場のみなさん、爆笑してました。その様子をお届けします。

 

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「最後に、今後の戦略について考えていることがあったら教えてください」 

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「ライターとして生きていくうえで、二つのことを考えてます。ひとつは、書けるジャンルを広げていくこと。もうひとつは、企画の規模を大きくすること。一個一個の企画になるべく予算をかけたいし、大物を連れてこられるようにしたいです」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「広げて、大きく」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「この前インタビューを受けたときに、『最大限まで規模を大きくしたらどうなるんですか?』って聞かれたんですけど、それで人生の目標ができたんですよ。僕の夢は、『プーチン大統領と戦うこと』かなって」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「めちゃくちゃスケールでかい」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「プーチン大統領って、元KGBで、柔道の黒帯持ってるんですよ。で、たぶんみんな『あの人ほんとに強いのかな?』って思ってるだろうから、僕が戦ってみたいんですよね。僕がプーチン大統領にポーンッて投げられたら、4億PVとか取れるんじゃないですかね?」 

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「それ、動画の方がおもしろそうだからVICEでやりましょうよ」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「あ、じゃあテキストはヨッピーさんが書いて、翻訳してVICEで世界配信すればいいですね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「いいですね、それ。僕のツイッター、いまは日本人のフォロワーしかいないですけど、もしこれが世界中からフォローされて3千万フォロワーとかになったら、プーチン大統領もオファーを考えるんじゃないですかね?」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「ああ、そういえば僕も前に、『金正恩の情熱大陸やってくれない?』って言われたことある」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「わはははは!(笑)」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「その予算なんですけど、『1本あげる』って言い方されたんですよ。この『1本』って何だろうな? って思いながら、返事してない状況ですね」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「1億でしょ! でも、1億でも安いですよね、きっと」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「足りないですね、本当にやるとなったら(笑)」

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain結局二人とも、大統領的クラスとの仕事に行き着くわけですね

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「そうですね、いいじゃないですか。僕はプーチン大統領と戦うから、佐藤さんは金正恩の情熱大陸を撮る」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「そういう企画を5本くらい作ったら、しばらくはもう仕事しなくていいでしょうねえ」

f:id:katsuse_m:20160301160715p:plain「ぼくもプーチン大統領とやれたら、ライターとしてあがりかなって思います」

f:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「というか一回やったら、もうその印象が付き過ぎる気がしますけど(笑)」 

f:id:katsuse_m:20160301160737p:plain「そろそろ怒られる予感がするので、ここで終わりにしたいと思います!」

 f:id:katsuse_m:20160301160715p:plainf:id:katsuse_m:20160301160638p:plain「ありがとうございました」

 

 

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こうしてトークイベントは終了しました!

お二人の今後の戦略は突飛すぎるものの、なぜか「いつかやれる日もくるのでは……?」と思わせる自信を感じました。

というか、個人的に“プーチン大統領VSヨッピーさん”“金正恩の情熱大陸”、どちらも死ぬまでに絶対見たいです。

 

「動画元年」と言われる今年、コンテンツやメディアの在り方はさらに変わっていくのかもしれませんが、「読めば何か発見があるような普遍的なコンテンツを作ること」(by佐藤ビンゴさん)や、「狙いどおりのバズを起こせること」(byヨッピーさん)というのは、作り手としてはいずれも必要なスキルだと感じました。

 

ちなみに、この日の後半戦は「オモコロ」「KAI-YOU」「BuzzFeed Japan」といった最近話題のメディアの編集長を集めてのトークセッションでした! そちらの様子もまたご紹介できればと思います! 最後までお読みいただき、ありがとうございましたー!  

 

ライター:カツセマサヒコ

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下北沢の編集プロダクション・プレスラボのライター/編集者。1986年東京生まれ。明治大学を卒業後、2009年より大手印刷会社の総務部にて勤務。趣味でブログを書いていたところをプレスラボに拾われ、2014年7月より現職。
趣味はtwitterでのふぁぼ集めとスマホの充電。Twitter→@katsuse_m

「若いブランド」が通用しなくなったらどうすればいいですか? - 日本一「ふざけた」会社の社長がマジメに答えます(22)

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ハンドルネーム「はるなるな」さん からのお悩み

f:id:kakijiro:20150508151051p:plain

私は今年で21歳になります。

13歳くらいから二次創作をしていて、「若いのにすごい」を20歳になるまで言われまくったせいで、「若くてすごい」自分に陶酔してきてしまいました。

ですが、もう「(若者の中でも)若くない」という現実に気づいてしまい死にそうです。「若いブランド」を失い、今後正気を保てる気がしません。

現にモチベーションが死んでいます。どうしたら若いブランドがなくなる現実を受け入れられると思いますか?

 

シモダテツヤの回答

f:id:kakijiro:20150508151115p:plain

「幼稚園なのに逆上がりできてすごいね」を「小学生なのに大車輪できてすごいね」に変えればいいだけだと思います。

どの業界にも言えることなのかもしれませんが、年齢とのギャップというのはブランディングを考える上でとても武器になるものだと思います。実力以上に下駄を履かせてもらえる旨味があるからです。

ただ、そこにあぐらをかいていれば、平均的な年齢に達したときに武器がなくなるのは当然です。

なので「ちやほやされた思い出」にはもうすがらずに、13歳から続けてきた「キャリアの長さ」を活かしてさらに上の世界を目指すか、アメリカバイソンを飼うかしかあなたの喪失感をカバーすることはできません。

長年続けてきた経験を活かして先輩や同年代のライバルを圧倒するほどの技術や売れ方を突き詰めて「若さ」に頼らない評価を目指していきましょう。

もしくは、いきなり二次創作をやってた人が二次創作と一切関係のないアメリカバイソンを飼い始めて「なんだかわからない狂気」を演出しましょう。

たぶんコミケなどでアメリカバイソンを連れて行くだけでとんでもない目立ち方をするかと思います。(入場できるかどうかは知りません)

アメリカバイソンは季節の変化とエサである草を求めて移動を繰り返す動物なので、あなたもバイソンと一緒に移動を繰り返すのが良いでしょう。もう無理してモチベーションとか高めなくてもいいです。バイソンです。バイソン一択でいきましょう。

 

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あなたのお悩みもお待ちしております

書いた人:シモダテツヤ

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1981年京都生まれ。Webクリエイター。バーグハンバーグバーグ代表取締役社長。 代表作は「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」「インド人完全無視カレー」「分かりすぎて困る! 頭の悪い人向けの保険入門」など。著書に『日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術』がある。Twitterアカウント→@shimoda4md

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

ひきこもりあるある:自分に肉体があることが不思議になる

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こんにちは、上田啓太です。

「京都ひきこもり大演説」の第二回です。本日は、ひきこもり生活で起こることについて書きたいと思います。

「ひきこもっていると、自分に肉体があるという当り前のことが不思議になる」

これが本日の話の要約です。しかし、すこし分かりにくい話になりそうですし、なにより観念的な言葉遊びに聞こえてしまう可能性もありますので、まずは私の子供のころの話をきいてください。

 

呼吸を意識しすぎて病院に行った話

小学校低学年のころ、自分が呼吸をしているということが気になって仕方ありませんでした。きっかけは単純でした。

「人間は呼吸というものをしている」

親か、教師か、とにかく誰かにそんなことを言われたんです。それで意識してみると、たしかに自分は呼吸というものをしている。つまり、鼻から空気を出し入れしている。口でも空気を出し入れしている。なるほど、これが呼吸か、と思いました。

「ちなみに、呼吸しないと人は死ぬ」

誰かの話はそんなふうに続きました。それで驚いたわけです。これをしてないと、僕は死んでしまうのか! 

当然、心配になりました。

「ちゃんと呼吸しないとな。呼吸を忘れるのヤバいな。死ぬもんな」

ほとんど戸締りやガスの元栓でも気にするかのように、呼吸のことが気になりはじめたんです。もちろん呼吸というのは無意識になされるものですが、子供の自分にはそれが分からないから、「僕が見張っていなくちゃ」と思ったんです。

そして、ノイローゼのようになりました。

何をしていても、自分が呼吸できているか確認しないと気がすまない。しかし、そんなことを常に意識していると、当然、他のことに集中できない。何をしていても半分くらいは呼吸に意識が向いてしまう。ウンザリしました。

そして母親に言いました。

「最近、ずっと呼吸が気になる」

母親は「は?」と言いました。これはまあ今なら分かります。たしかに「は?」となるだろう。しかし私は必死でした。

「なんとかして!」

で、病院に行ったんですよ。

といっても、近所の内科です。風邪なんかひいたときに行っていたところ。母親といっしょに病院の先生に相談しました。今でも覚えてますが、先生も困惑していました。

「まあ、しばらく様子をみてください」

それだけ言われて、帰されました。

「サジ投げてんじゃねーよ!」と今なら思いますが、当時はそれでいよいよ「どうしよう…」と思いました。これから僕は、ずっと呼吸のことを気にする人生なのか……ぜんぜん楽しくない……でも呼吸を忘れたら死ぬし……。

それからも呼吸が気になって仕方ない状態は続きました。ちゃんと呼吸できているかを確認しながら、毎日を過ごしてました。鼻中心の生活です。勉強でも遊びでもなく、鼻が生活の中心にある。最悪の日々です。

ところが、この日々はいつのまにか終わってました。

正確な時期はわかりません。小学校高学年のころには、自然消滅していました。だから医者の言ったことは一応正しかったのかもしれない。いつのまにか気になって仕方ない状態じゃなくなっていました。

おそらく、徐々に学校が忙しくなり、ゲームやテレビやマンガも覚え、異性にも関心を持ちはじめたからだと思います。あとで詳しく説明しますが、自分の中の「社会」が強くなった結果です。

 

呼吸の話の余談

この話には余談があります。

二十年くらい過ぎて、私は京都でひきこもり生活をはじめました。そこで衝撃的なことを発見しました。ちょうど仏教への興味が出てきたころで、いろいろと本を読んで調べていたんですが、そしたら仏教における瞑想法のひとつに、

自分の呼吸を見守る

というものがあったんです。

このときはもう笑った笑った。いや、笑うというリアクションが正しいのかは分かりませんが、私は笑いました。二十年ごしの伏線が回収された感覚がありました。

だから、あのときの私に必要だったのは、医者じゃなくて釈迦だったんです。近所に釈迦がいればよかった。かかりつけの釈迦がいればよかったんです。そしたら「は?」とか「様子をみてください」とは言われなかった。

「あなたのそれは瞑想です、続けなさい」

そう言われたことでしょう(たぶん)。

 

脈拍や心拍をはかると吐き気がした話

もうひとつ、似た話があります。

子供の頃、「脈をはかる」という行為が気持ち悪くて仕方ありませんでした。学校で「自分で脈をはかってみよう」という授業があって、手首に指をあてて回数を数えるんですが、あれをやると吐き気がしてできませんでした。

同じく、「心拍数をはかりましょう」というものもありました。こちらは自分の胸に手をあてて、心臓が鼓動を打つ回数を数えるわけですが、やはりダメでした。

脈にしろ、心臓にしろ、手をあてて、ドク・ドク・ドク……という動きを観察しているうちに、ものすごく気持ち悪くなってくるんです。自分の体内に臓器があって、血液が流れていて、心臓が動いていることを強制的に意識させられる。すると落ち着かなくなって、吐き気がしてくる。

だから、脈拍も心拍も数えるふりだけして、実際はちょっと手を浮かせてました。数字はまわりの子の紙を見ながら適当に書いていました。学校というのはなんでこんなひどいことをやらせるんだろうと思ってました。

 

夏目漱石とブラマヨ吉田のエピソード

さて、ここから本題です。

呼吸、脈拍、心臓、これは要するに、肉体が勝手に動いているのが気持ち悪いということです。ひとことで言うならば「肉体があることへの違和感」です。もちろん当時はそんなこと考えてません。この六年のひきこもり生活で考察した結果です。

自分の肉体とされているものへの違和感。自分の肉体と言われてるものが、実際は自分とは何の関係もなく勝手に動いていることが気持ち悪い。

これは、誰でも共感できるほどメジャーな感覚ではないようですが、そこまで珍しいものでもないようです。

たとえば、夏目漱石の『それから』という小説の冒頭では、主人公が自分の心臓が動いていることを不思議がっている描写があります。ちなみに、この主人公は現代でいうところの「ニート」です。

もうひとつ、ブラマヨの吉田さんがテレビで言っていたんですが、まだ全然売れていないころ、「心臓がどうして動いているのか不思議でしゃあない」と言って、相方の小杉さんを困らせたことがあるそうです。

ポイントは、漱石の小説の主人公は「働いていない」こと、当時のブラマヨ吉田さんは「全然売れていない=時間があり余っている」ことです。

そして私の場合、小学校低学年のころ(当然、ヒマです)に呼吸や心拍が気になり、成長するにつれて自然と忘れ、ひきこもり生活をはじめたことで、ふたたび「思い出した」んです。

 

社会の退場と肉体の登場

「肉体への違和感」が出てくるには、一時的に「社会」が退場する必要があるんです。

社会というのは、人間関係のあれこれのことです。会社での仕事、恋人とのデートや友人との飲み会、それに家族や親戚などなど。

そういったものが後景に退いていき、ぽつんと「一人」になった時、自分の肉体が意識の対象にあがってくるんです。自分が呼吸している。自分の心臓が動いている。その当り前が気になりはじめるんです。

なぜ肉体を意識すると、「吐き気」や「落ち着かない感じ」が生まれるのか?

肉体が自分とは無関係なものに感じられるからです。

心臓や脈というのは血液の流れです。呼吸というのは空気の流れです。どちらも自分の肉体とされているものなのに、ありあまる時間のなかで観察していると、自分とは無関係に、勝手に流れているものに思えてくる。

川が流れ、風が吹くように、体内を血液が流れ、顔にあいた穴から空気が流れている。髪の毛だって草のように伸びている。胃袋のあたりでは食物の消化が勝手に進んでいる。肛門からプスーと空気が出ていった。

そこに自分の意志はない。

じゃあ「自分」って何なんだよ、という話になります。

ここに違和感の原因、吐き気の原因があるんです。

そろそろ長くなってますが、もうすこしだけ踏み込ませてください。

ひきこもり状態で観察を進めていくと、肉体だけじゃなく、「思考」というのも、川の水のように頭のなかを勝手に流れているように感じられます。「感情」というのも、勝手にパッと生まれては消えていく花火のように感じられます。このあたりは素直には飲み込めないかもしれません。別の回で詳しく書いたほうがいいかもしれません。

人は普通に過ごしていると、私の体、私の気持ち、私の考え、というふうに、さまざまなものに「私の」をつけています。しかし一人で静かに観察したとき、どれも勝手に生まれ、勝手に消えているなら、本当にそれに「私の」なんて付けてしまっていいのか?

ひきこもり生活においては、そんなふうに、肉体とも、感情とも、思考とも、距離が生まれはじめるんです。「自分」から切り離されていくんです。「自分」というものがどんどん貧しくなっていくんです。これは自分じゃない、これも自分じゃない、呼吸も、心臓の鼓動も、思考も、感情も、自分じゃない。

じゃあ「自分」って何なのか? 

この問題に集約されていくんですが、いいかげん字数の限界がきました。

本日はここまでです。

 

※前回のコラム

 

ライター:上田啓太

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京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita

【神仕事】伝説の鉄づくり!奥出雲「たたら製鉄」の奥深すぎる世界

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ジモコロライターの根岸達朗です。

唐突になにかと思われるかもしれませんが、皆さんこれ知ってます?

 

た た ら 製 鉄。

 

実はこれ、島根県を中心とした中国地方で営まれてきた伝統的な鉄づくりの技法。まあ、言うなれば、日本の鉄づくりのルーツみたいなものですね。

 

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今回はこのたたら製鉄を取材する目的で、柿次郎編集長と一緒に島根県の奥出雲地方に行ってきたのですが、いやあ、これがなんといいますか、もう……

 

めちゃくちゃ深かった。

 

何がそんなにすごかったのかは、これから始まるお話のなかでお伝えしたいと思っているのですが、まずその前に「たたら製鉄とはなんぞや」というところで、簡単にその概要だけ説明させてください。

 

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たたら製鉄は、江戸時代初期にその原型が完成した鉄づくりの技法。かつては日本の鉄の8割以上がこの技法によって生み出されていたそうです。

特に刀剣用、男が大好きな日本刀の鋼として優れた品質を誇っていた「玉鋼(たまはがね)」は、現代の優れた製鉄技術でも再現不可能とされる、たたら製鉄における唯一無二の生産物。

それを生み出す術は「村下(むらげ)」と呼ばれる最高技術者の秘伝だったことから、長らく「謎の製鉄技術」とも呼ばれてきました。例えるなら北斗神拳みたいなもんです。現実にあの製法に辿り着いたのは神がかり的と言っても過言ではありません

実はあのスタジオジブリの国民的アニメ映画『もののけ姫』の題材にもなっているこの技法。たたら場で女性が足場を踏み込んでいたシーンは、僕自身も記憶に残っています。

 

もののけ姫 [DVD]

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あまりにも歴史と文化が深すぎて、僕みたいな輩がこれを伝えていいんだろうか? おこがましいのでは?ってマジで思っていました。ただ、WEB上に分かりやすく「たたら製鉄」の歴史を残す価値は絶対ありますし、それはジモコロにしかできないはず。専門家が書籍にまとめるような情報量を1記事に落としこむ。さらに若い人でも理解できるように…これはジモコロにとっても大きなチャレンジです!

 

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少々長くはなりますが、どうぞお付き合いください。あと、専門用語が難しすぎるので、先に用語集をサラっと読んでおくと理解しやすいかもしれません。

 

 

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それではいざ、たたらの世界へ!

 

米とたたらの意外な関係

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「ようこそ、奥出雲へ! ここからは私がご案内します!」

 

土地勘のまったくない僕らをサポートしてくれたのは、奥出雲町役場職員の三成由美(みなり・ゆみ)さん。

奥出雲出身の三成さんは、名古屋でインテリアコーディネーターを務めた後にUターン。現在は地域の女性10人で「おくいずも女子旅つくる!委員会」を立ち上げ、奥出雲の魅力を伝える活動をしています!

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「ところで皆さんはどうしてたたらに興味を?」 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「身近な素材のルーツを知りたいという結構ぼんやりした好奇心でした。たたらの名前は聞いたことがあるけど、それがどういうものなのかはほとんど知らなかったので」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「僕もそうですね。鉄に興味を持ったのは、以前ジモコロで新潟燕三条の鍛冶技術を取材したのがきっかけで。圧倒的な職人技に感銘を受けただけに、地元の仕事の奥深さを掘り下げるなら、やっぱりルーツもたどるべきだと思ったんですよ!」

 

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「そうなんですねー。たたらの文化もそうですが、奥出雲って歴史が深いのに、まだ全然知られていないんですよ。この土地ならではの魅力を伝えていくのが私の役割ですね。……あ、そろそろ斐伊川(ひいかわ)が見えてきますよ」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「雄大な景色ですねえ。有名な川なんでしょうか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plainヤマタノオロチ伝説ってご存知ですか? その舞台になっている川ですね。須戔鳴尊(すさのおのみこと)が、奇稲田姫(くしいなだひめ)を救うためにヤマタノオロチを退治するという」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「詳しくはわからないけど、なんとなく聞いたことある名前ですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「そのすさのおのみことが高天原(たかまがはら)を追放されて、最初に出雲にやってきたのがこの斐伊川の上流域です。たたら製鉄の話にもつながるのですが、このあたりは鉄穴流し(かんなながし)が行われていた場所で」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「鉄穴流し?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「たたらの人たちがやっていた砂鉄を取る方法のことですね。ここで取れた砂鉄が製鉄の原料になっていたんですよ。実は川沿いに広がっている棚田も鉄穴流しでつくられたものなんです」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「山を切り開いて田んぼを?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「はい。世界的には鉱物を採集したあとの土地は荒廃することが多いのですが、たたらの人たちは切り崩した山のあとに棚田をつくったのでこのあたりの農業が発展しました。仁多米ってご存知ですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「仁多米! 僕こないだ東京で島根のイベントに参加したんですけど、島根で食べた仁多米が人生最高の味だったっていう人に出会ったんですよ。東の魚沼、西の仁多米って言われてるとかで」

 

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仁多米のおにぎり

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「それがこの棚田で」

 f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「はい。良質な砂鉄が取れる土地なので、土に含まれる栄養分にも特徴があり、それがお米の味に影響を与えているそうです。寒暖の差が大きいのも、奥出雲が米づくりに適している理由のひとつなんですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「なるほど。たたら製鉄とこの土地の暮らしって一体的に捉える必要がありそうな」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「はい、たたら無くしてこの土地の歴史は語れないと思います。あとやっぱりこの土地を掘り下げるのであれば、知っておいてもらいたいのは、鉄師(てっし)の存在でしょうね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「鉄師?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「たたら製鉄を営むためには、膨大な量の木炭と砂鉄が必要だったのですが、その材料を調達する場所として広大な森林を保有し、管理していたのが鉄師です。鉄師は、江戸時代に松江藩から指定業者としてお墨付きをもらっていたんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へええ、地元の名士みたいな存在というか」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「なかでも田部家(たなべけ)、櫻井家(さくらいけ)、絲原家(いとはらけ)は鉄師御三家と呼ばれた名家です。たたら製鉄の工場は高殿(たかどの)と言うのですが、有力な鉄師はその高殿を中心に小さな村のようなコミュニティをつくっていました。たたらを通じて、地域に雇用を生み出し、地元経済にも影響を与えていたんですね

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「鉄師、気になってきました。ちなみにその高殿っていうのは今どこかに残っていたりするんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「吉田町の菅谷たたらにありますよ。ご案内しましょうか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「はい! そもそもどうやって鉄を作っていたのか、基本的なことがほとんどわかってないのでありがたいです」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「詳しいことはきっと菅谷たたらの施設長さんが教えてくれると思います。あ……でもその前にですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101529p:plain「吉田町内にある鉄の歴史博物館で門外不出のビデオを見てきてください。すごーく貴重な映像なので一見の価値ありですよ!」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「門外不出のビデオ……すごそうだな」

 

ベールを脱いだたたら師の秘伝技術

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「というわけで、やってきました吉田町!」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「どうやらここは松江藩の有力鉄師だった田部家の力で栄えたところみたいですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「石畳の街並みとかすごい風情ある〜」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「あ、鉄の歴史博物館って書いてあるからここかな……ていうか、これ何?」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain鉧(ケラ)だそうです。たたら製鉄で作られた鉄の塊」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へ? これが?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「とりあえず、中に入ってビデオを見ましょうか。昔のたたら師たちを探し出して、当時の仕事を復元した貴重なドキュメンタリー映像とのことなので!」

 

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門外不出のビデオが始まりました。

これより、イラスト(マキゾウさん作)でお届けします。

 

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まず、たたら師たちの仕事は、炉の下に深さ4メートルの複雑な地下構造をつくるところから始まります。

この作業で何よりも大事なのは、地下構造の内部を極限まで乾燥させること。基礎ができた上でさらに薪をくべ、それを昼夜燃やし続けて湿気を取り除いていきます。

湿気が残っていると水蒸気爆発を起こす可能性があるので、この作業は絶対に必要なものでした。

そして、焼き尽くされて色が変わった地面の上に、送風装置を備えた炉をつくります。ここまで約2ヶ月。一度つくった地下構造は半永久的なものだったそうです。

 

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粘土でつくった炉に砂鉄と木炭をくべていきます。さらに炉内に送り込む風の量を調整しながら、火を絶やさずに灯し続けること三日三晩(これを「一代(ひとよ)」と呼びます)。

マニュアル的なものはなく、作業は村下(むらげ)と呼ばれる工場長の経験と勘だけを頼りに進められました。また、村下の仕事は秘伝で、ほかの人が手を出すのはご法度でした

 

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三日三晩の作業で、ケラは約2〜4トンの大きさに成長します。そして村下が頃合いを判断し、ついにケラを取り出す作業へ…。

この際、1000度以上もあるケラだけを取り出すことは物理的に不可能なので、炉ごと完全に破壊します。鼻も唇も焼けただれてしまうほどの灼熱が村下たちを襲うそうです。

 

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燃えたぎるケラを高殿の外に引きずり出し、鉄池(かないけ)と呼ばれる池に落とすと……

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴォォ………

ブシュウウゥゥゥゥゥ………!!!!

 

すさまじい音。

たたら師たちの目に涙があふれます。

そして、最後の決め台詞がこれ。

 

「水が……燃える

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「これ以上ない表現」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「そのくらい熱いってことね……」

 

そして、冷やしたケラを砕きに砕いて、取り出したのがこちら。

 

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玉鋼(品質不明)

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「なんかすごいもの見ちゃったな……」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「これはもう菅谷たたらで現物見させてもらうしかないですね! 菅谷たたらの集落には今もたたらに携わった人たちの子孫が住んでるみたいです」

 

最高技術者「村下」と地域の王「田部家」

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「すいません。ここにたたらの高殿があると聞いたんですが」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「目の前にある建物がそうですよ。これは1751年から1921年までの170年間、たたらの火を灯し続けた建物です。こけら葺きの屋根がすごく趣があるでしょう。全国で唯一現存する高殿です」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「おお、これが……」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain朝日光男(あさひ・みつお)と申します。この地区で生まれ育って、今は菅谷たたらの施設長をしております。ご案内しますので、ぜひなかも見ていってください」

 

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当時のたたら場を再現している 

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「高い天井ですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「炉から炎が1〜2メートルも立ち上りますので、その熱が風にのって天井の穴から抜けるように設計されています

 

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お風呂の浴槽みたいな形状の「炉」(鉄を取り出す際に本来は破壊する) 

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「これが炉……?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「奥行2.73m、横幅1.36m、高さ1.15mあります。ぱっと見、小さいと思われるかもしれませんが、炉の下には深さ4メートルの地下構造がありますので、全体で見るとかなり大掛かりな装置でしょう」

 

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難しすぎるのでイラストを再掲します 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「そうだった、地下構造があるんだ。さっきビデオで見ました」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「炉を大きくすればもっとたくさん鉄が取れたのでは?という声も聞かれるのですが、大きくするにはそれだけの資源が必要になります。三日三晩の作業ということを考えても、このくらいのサイズがちょうどよかったようですね」

 

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炉の中に風を吹き込む「木呂(きろ)」、穴の大きさで火力を調節する 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「炉の横に管みたいなのがたくさん刺さってます」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「炉に風を送り込むための木呂(きろ)です。この木呂を差し込むためには、まず炉の外側からういざしという細長い棒を差し込んで、左右に20箇所のホドと呼ばれる小さな穴を開けます。それからういざしよりも太いためしざし、さらに太いひさしの順で差し込み、木呂を通すことができるくらいにまで、だんだん穴を大きくしていくのです」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「これをぶすっと」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「はい。工場長である村下は、ホド穴から中の様子をのぞき、その日の気温や湿度なども気にかけながら、穴の位置を変えたり、角度を調整したりして、炉内の温度調節を行いました。炉のなかを見てください。穴がいくつも空いているでしょう」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「ほんとだ。結構細かく穴が空いてます」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain穴の開け方は熟練の技で、村下の秘伝とされていました」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「じゃあこっちの穴は? 炉の一番下に空いてますけど」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「ケラの生成の過程で生まれる不純物ノロを出す穴ですね。ノロは製品に加工することができないカスのようなものですが、炉内の温度を高める役割があり、その出方をコントロールするのも村下の仕事でした。さらに村下には、30分おきに炉内に砂鉄と木炭をくべる仕事もありました」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「めちゃくちゃ忙しいですね。風を送り込むのも村下の仕事?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「いえ、指示を出すのは村下ですが、風を起こすのは番子(ばんこ)という職人の仕事です。大昔は自然風を利用していたのですが、江戸時代に天秤ふいごという装置が発明されて、これが劇的に効率を上げました。これがすごい装置でしてねえ」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「この装置、『もののけ姫』にも登場していたような」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「はい。これを番子がひたすら踏んで風を送りました。菅谷たたらでは番子は6人いて、1時間ごとに交代しながら三日三晩の連続作業をしたといいます。『かわりばんこ』の語源とされていますね

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「えーそうなんだ!」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「効率化が図られたとはいえ、この作業は番子たちにとって相当な重労働だったようです。そこで今度は天秤ふいごの代わりに、水車の力を利用することになります。1906年以降ですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「ん、水場がどこかにありましたっけ?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「実は高殿の近くに川が流れています。そこに水車を置いて風を起こし、その風を高殿の内部に地下から取り込むような構造を築きました」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160317101601j:plain

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へえ、そんなこともできたんだ」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「水車はさまざまな場面で利用していました。たとえば大胴場というところでは、ギロチンのような装置で4トン近いケラ(鉄の塊)を叩き割っていましたが、これも水車の力によるものです」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315112936j:plain

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「これも番子のように専門の人が?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「はい、大鍛冶と呼ばれる人たちがこの仕事をしていました。大胴場で叩き割ったケラはその後、中胴場小胴場と呼ばれるところに運び込んで、今度は小鍛冶と呼ばれる人たちがそれをさらに小さくしていきます。玉鋼を取り出す工程のひとつですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「なるほど、役割分担がはっきりしていたんだ。村下はそうした人たちの頂点に立つ存在だったと」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315113046j:plain

 

 f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「そうですね。秘密の技術を知っている工場長みたいな存在ですね。しかも、村下は世襲制だったんですよ。ですから、ほかの人たちは基本的に自分の持ち場以外の仕事はわからなかったわけで」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「徹底的……」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「たたらの火は消えていた時代ではありますが、私も若いころは炭焼きという仕事をしていましてね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「炭焼き?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「山から切り出した木を焼いて炭にする仕事ですね。当時この場所は田部家の炭倉庫になっていて、それを家庭向けに出荷していました。たたらの人たちが昔からやっていた伝統的な仕事のひとつです」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へー」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「当時はまだたたらが操業していた時代を知る人もいましてね、学問をしてはいけない、お金持ちになってはいけないなどと言われたものです。古来から受け継がれてきた技術が漏れることを恐れたんでしょうね」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「火が消えてもなお……」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「私が10代の頃ですからもう、50年近く前になります。だからあるとき突然、当時の田部家の方針でその仕事をしなくてもいいと言われたときは本当にびっくりしました。だって、私は一生炭焼きをして生きていくもんだと思っていましたから。菅谷たたらの長い歴史がここで終わるのかと思ったら、涙が出ましたね」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315114556j:plain

高殿の前には、菅谷たたらの歴史を見続けてきたカツラの木が立っている。カツラの木は、たたら製鉄の神様である金屋子(かなやこ)の神が、白鷺にのって降臨した木であるとされ、かつてはどのたたら場にもあった。人間に鉄のつくり方を教えたのもこの神様だったと伝えられている。

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「そうなんですね…。田部家っていうのはやっぱりこの仕事に携わる人たちにとって、特別な存在だったんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain田部長右衛門(たなべちょうえもん)さんといえば、私らにとってはもう雲の上の人ですよ。昔はまともに話をすることなんてできませんでした」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「長右衛門さん?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「田部家の当主が代々名乗ってきた名前です。田部家は日本一の山林王と呼ばれるほど、たくさんの山林を所有していて、室町時代にたたらを始めたと伝えられています」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へぇぇ……今もその血は続いてるんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「そうですね、現在の当主は25代目です」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101605p:plain「今ちょっと調べたんですが、田部家って中国地方にケンタッキーフライドチキンを広めたり、地方紙の山陰中央新報を経営したり、なんかすごい一族みたいですね。長右衛門さん、いつか会ってみたいな」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「だんだんスケールのでかさが見えてきた気がします。地元の人の声をもっと聞いてみたいのですが」

f:id:ONCEAGAIN:20160308102514p:plain「それでしたら私の同級生で、今は吉田町振興協議会の会長をしている錦織靖雄(にしこおり・やすお)さんを訪ねるといいですよ。地元の人ならではの視点で話を聞かせてくれるはずです」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「おお、ありがとうございます!」

 

観光地としての「菅谷たたら」と地元住民の想い

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「錦織さんのお宅は菅谷たたらから少し離れたところにありますけど、このあたりの人もたたらとは関係が深かったんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「私らの住んでるあたりは地下(じげ)といって、工業の主体である菅谷たたらを取り囲んで、農業をしているようなところなんですよ。だげん、なんちゅうかな、それを分けて考えるというよりは、みんなが助け合って生きてきたわけで」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315134946j:plain

 

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「助け合って」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「そう、たたらの人たちが地下(じげ)の農業を手伝うこともあったし、地下(じげ)の人は飼っていた馬や牛を出して、港まで彼らがつくった鉄を運んでいた。朝日君がやっていた炭焼きもたたらだけの仕事じゃなくて、このあたりの農家ではみんな自分とこの山で小さくやっていたよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「へええ」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「ただ、最高の技術者集団でもあるたたらの仕事っていうのは、このあたりの人たちにとって、良くも悪くも特別なものでね。助け合って生きてきたとはいっても、すべてがうまくいっていたわけではなかったんです」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「トラブルもあったと」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「例えば、たたらに必要な砂鉄をとる鉄穴流し(かんなながし)ですね。山を削って砂鉄をとる。結果地形を変えるわけだからいい面ばかりではなくて、川下に大量に流れる土砂で灌漑(かんがい)に影響が出たり、昔は農民とのトラブルも絶えなかった。それで鉄穴流しは秋から春にかけての農閑期だけの仕事になったわけで」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「そうだったのか」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「たたらが重要文化財に指定されて観光客が訪れるようになった今だって、それに伴う新たな問題というのは生まれているんです」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「新たな問題?」

f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「菅谷たたらの集落を見たと思うけど、あそこはまだたたらの歴史を受け継いだ人たちが住んでいる。歴史的に重要な地区だから観光客が来るのは仕方ないことだけど、自分の家のなかをじろじろ覗き込まれたり、好奇の目にさらされたらやっぱり誰だって気分が悪いでしょう?」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315111901j:plain

菅谷たたら山内(さんない)と呼ばれる地区。たたら製鉄の技術者たちの日常生活がここで営まれていた。最盛期は40世帯、約170人が住み、この他にもたたらの技術者集団が60人ほど生活をしていたという。

 

f:id:ONCEAGAIN:20160315111943j:plain

文化財に指定されている山内の三軒長屋。ここに村下や番頭など、菅谷たたらのなかで力を持っていた人たちが生活していた。一戸建てではなく長屋であったのは、人に甲乙をつけない田部家の方針だったという。

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160308103050p:plain「自分たちの生活は見世物じゃないんだし、プライバシーを荒らすなら『観光客なんて来なくてもいい』という声も実際に聞かれている。皆さんのようにたたらに興味を持ってこの土地に足を運んでくれるのは結構なこと。でも、ここに暮らす人たちへの配慮だけは忘れないでほしいんですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160308101553p:plain「そうですね…。後世に伝えていくべき文化である一方で、観光化による弊害も生まれていると。僕らも情報発信の担い手として考えていかなければいけないことはたくさんありそうです。突然押し掛けたにもかかわらず、貴重なお話を聞かせてくださって本当にありがとうございました!」

 

まとめ

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たたら製鉄とともに歴史を積み重ねてきた奥出雲という土地、秘密主義を貫いてきた村下の技術、地域の経済を支える鉄師たちの影響力、そして観光地化による課題まで……。

すべてを一体的に捉えたときに見えてくる「地元の仕事」には、ローカルへの回帰が進む今の時代の仕事のあり方を考えるヒントが隠されているように思いました。

 

f:id:kakijiro:20160324101802p:plain「畏敬の念を抱きながら書かせてもらったんですが、これを読んでたたら製鉄に興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいですね」

f:id:kakijiro:20160324101810p:plain「日本の製鉄文化のルーツですからね。ここから戦国時代や新選組といった歴史好きにはたまらない世界に突入し、日本の高度経済成長を驚くほど飛躍させたビジネスにもつながっていくわけじゃないですか」

f:id:kakijiro:20160324101802p:plain「日本の火縄銃の数が世界一なのも、鉄の知識と技術が圧倒的に優れていたわけで。それはたたら製鉄の影響かもしれない」

f:id:kakijiro:20160324101810p:plain「ジモコロの鉄シリーズ…今後も歴史を紐解いていきましょう!」

 

ちなみにウェブ上で読める山陰中央新報の連載「鉄のまほろば」(全48回!)は、たたら製鉄の全体像を知る上でとても参考になるので、興味があれば読んでみてください。

 

あと、EXILEのHIROプロデュースの映画「たたら侍」の公開も2017年に控えています。EXILE×たたら製鉄ってすごい。ブームがくるかもしれません。

 

冬の島根をめぐる旅は、まだまだ続きます。

  

●絲原記念館

住所:島根県仁多郡奥出雲町大谷856

電話:0854-52-0151
Mail:ito-memo@okuizumo.ne.jp
開場時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時まで)

http://www.itoharas.com/

●鉄の歴史博物館

住所:島根県雲南市吉田町吉田2533番地

電話:0854-74-0043
開場時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時まで)

http://www.tetsunorekishimura.or.jp/history.html

●菅谷たたら山内

住所:島根県雲南市吉田町吉田4210番地2

電話:0854-74-0350
開場時間:午前9時~午後5時(入場は午後4時まで)

http://www.tetsunorekishimura.or.jp/sugatani.html

  

ライター:根岸達朗

f:id:kakijiro:20160126180203j:plain

1981年、東京都生まれのローカルライター。都会と田舎の多拠点生活を目指して活動中。家では息子に「うんちばかもの」と呼ばれている。
Mail:negishi.tatsuro@gmail.com/Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗


【北海道】廃止直前の『秘境駅』を乗り鉄が巡ってみた

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3月某日、ジモコロ編集部にて。ライター・赤祖父と編集部・加藤。

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「…というわけで以前からやりたかった『秘境駅』の取材に行ってきたので報告しますね」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「お疲れさまです。今回は北海道に行ってきたんですよね? そういえば新幹線開業ですし、盛り上がってたんじゃないですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「2016年3月26日にJR北海道では新幹線開業も含めたダイヤ改正があり、それに伴って北海道の幾つかの駅が廃止になります。今回はそのうちの石北本線という路線上にある廃止対象の秘境駅4駅を訪問してきました」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「あ、そうなんですか! 知らなかった」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「確かに北海道は新幹線開業で盛り上がってる面もあるのですが、一方で駅の廃止とか列車本数が減便されるとか、そういう陰の部分の影響を見てきた感じですね…」

 

 

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今回訪問した駅はこの4駅

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「なるほど…ところで秘境駅について概要はググりましたが、具体的にどういうところが魅力なんですかね?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「私はやはり『行って体験しないと秘境駅の魅力はわからない』と思ってるのでこうやって伝えるのは難しいですね…。ちなみに私は鉄道趣味の中でも特に乗り鉄、とりわけ駅巡りが好きでして、更に言うと秘境駅巡りが旅のメインだったりします。ほら、こういうのも持ってます」

 

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f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「このDVD、昔『タモリ倶楽部』の“全然売れてないDVD特集”の回で見たことある! 買ったの赤祖父さんくらいなんじゃ…?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「まあ一口に鉄道好きといってもそのジャンルは多彩かつ細分化されていて同じ鉄道好きであっても得意分野が違うことはよくある話でして、具体的には新潮社刊のムック『旅 別冊 鉄道ファン大全』によると鉄道ファンは撮り鉄、乗り鉄、音鉄、廃線、駅弁、車両研究、列車研究、歴史研究、時刻表、きっぷ、地図、部品、関連古書などなど大別され、更に例えば乗り鉄の場合は全線完乗、全駅訪問、全形式乗車、秘境駅巡り、終着駅巡り、木造駅舎巡りなど更に専攻が分かれたりしており大変奥深いもので、大学にたとえて言ってみれば鉄道学部乗り鉄学科秘境駅専攻、みたいなものでしょうか、あっ私の場合は秘境駅なんですけど、都会では味わえない静けさや侘しさ、あとは昔は駅や駅前が賑わっていたであろう痕跡などを見て鄙びた雰囲気を味わったりするのが好きだったりしたり、あとは秘境駅に降り立った瞬間の“列車に何にも無いところに置いてけぼりにされるちょっとした恐怖感”も魅力だったりするわけですがこればかりはやはり行ってみないとわからな」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain語りだすと急に気持ち悪いな

 

 

秘境駅攻略のカギは【前日入り】と【駅間歩き】

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「で、今回はどんな行程で?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「基本的には鉄道で行きました。こんな感じです」

 

 

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f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「例によって行ったり来たりしてますよね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「今回のように非常にダイヤが薄い場合は停まる列車を無駄にできないので、前日どこに泊まるのか…そこからが勝負になります。そして駅間の移動には、徒歩など列車以外の移動手段も考える必要が…。つまり前日入り駅間歩きがキモなんです」

 

 

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まずこの列車に乗る必要がある

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「今回の場合、この上川駅始発の列車を活用する必要があるため、前日は上川に宿泊しました。本当は旭川に泊まったほうが都会だしお店も多いのですが…」

 

 

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22時頃の上川駅。人の気配、一切なし!

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「そこまでするのか…ホテルとかあるんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「駅近くの『池乃屋旅館』さんに泊まりました。ネット非対応なので電話予約です」

 

 

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池乃屋旅館の女将さん

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「趣旨を説明して女将さんにお話を聞いたのですが、やはり私と同じく秘境駅巡りの鉄道ファンもよく泊まるらしいです」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「廃止になると、お客さん減りそうですね…」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「そうですね。でも登山客なんかも多いらしく、それほど心配していなそうでした。むしろ言うほど秘境駅ファンの客はいないみたいで…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「ちょっとテーマがマニアックすぎるんじゃないですかね…今回の記事も大丈夫ですか…?」

 

 

廃止直前秘境駅巡り① 上白滝駅

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「そんなわけで、翌朝に上川駅始発の列車に乗りました」

 

 

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上川駅6:16発、網走行きの普通列車

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「すごっ! こんな雪の中でも電車走っちゃうんですね! 東京ならパニックじゃないですか。遅延で午前中自宅待機ですよ」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「電車じゃなくて気動車ですけどね。このキハ40の老朽化も今回のダイヤ改正における列車本数の減便の理由のひとつとされていて…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「あ~ハイハイ気動車ね気動車! すべてわかったので次お願いします!」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「…まあとにかく、これで次の上白滝駅を目指します」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「なるほど…あ、この写真、線路の上を人が歩いてますよ! ヤバいヤバい!! 炎上しますよ!!」

 

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右の建物は元々駅だった

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「これは、保線の職員さんが信号場から列車に乗り込むところですから、問題ありませんよ。ちなみにここ昔は、駅だったところですが今は詰所になってるようです」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「へぇ〜〜 そういう風に駅じゃないところから乗り込む、って東京だとあまりないですよね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「そうですね。そういう都会の感覚からしたら大雑把な運用も、ローカル線ならではの風景ですね」

 

  

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地元の鉄道ファンの方に伺いました

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この日は鉄道ファンが結構乗っていたので、地元の方にお話を聞きました。こちらの方は昔この沿線に住んでいたそうで、今回の駅廃止の話を受けて乗り鉄しにきたそうです」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain赤祖父さん、鉄道のことになると俄然メンドクサイのに、意外とコミュニケーション能力ありますね

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この方もおっしゃっていましたが、昔に比べ人口がどんどん減っているので、駅の廃止や減便もやむなしという捉え方が大勢でしたね。この日もたまたま乗りにきたけど普段は滅多に鉄道は使わない、と…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「そりゃそうか…」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「こういう話題ってどうしても『寂しい』とか『なくさないで』とか外野は無責任に言いがちですけど、結構地元の方は現実的に捉えてるんですよね…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「もしかして、いいこと言おうとしてますか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「そんな雑談をしつつ、上白滝駅に到着したので下車しました」

 

 

 

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上白滝駅、7:04着

 

 

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一応、記念写真を

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「これが上白滝駅の時刻表です」

 

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上白滝駅の時刻表。停車する列車は1日上下1本ずつ!

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「上下一日1本ずつ!? これ時刻“表”じゃないでしょ。ただの“時刻”でしょ。表である意味なさすぎ!」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「はい、こんな駅だったりするので訪問するだけでも大変なんです。そもそも人が使わないから秘境化するし、また停まる列車の本数も少なくなるしの悪循環で…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「じゃあ車で行ってきたんですよね?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「あえて言いますが、それは邪道! 邪の道! JADOU! 大仁田の5倍くらい邪道です。もちろん列車を使っての訪問ですっ! ファ〜ッと車で行ってファ〜っと去るだけじゃ秘境駅の魅力なんか何もわかりませんっ!!

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「…じゃあこの駅で10時間待ってたんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「いえいえ、上下車をするのは事実上不可能だったりするので、私の場合は駅を利用すること、つまり『駅に列車で降りる』か『駅から列車に乗る』を訪問のルールとしています。車で寄っただけは『見学』という解釈にしていますね」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「今、本心を言うと赤祖父さんのことをスゲェめんどくさいヤツだなって思いましたし、仕事じゃなきゃ付き合いたくないなって思いましたし、多分はてなブックマークのコメントでめちゃめちゃ悪口書かれそうって思いましたけど、でも大変さが伝わりました。じゃあその間どうするんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「すごく否定された気がしますが、質問に答えますね? 時間がもったいないので歩いて隣の駅に行くとか、場合によってバスやタクシーが使えたら使ったりはします」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「それはいいのかよ」

 

 

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駅ノートにも記念カキコ!

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「で、この上白滝駅から隣の白滝駅までを駅間歩きします」

 

 

廃止直前秘境駅巡り② 金華駅

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Googleだと徒歩で37分と出るが……

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「当たり前なんですが、歩く道も雪や氷になっているので、駅間歩きも超大変で1時間近くかかりました。その上歩いている様子の写真もセルフで撮らなきゃならないしで…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「恩着せがましく言ってますけど、こんな取材には絶対に付いていかないよ!」

 

 

f:id:akasofa:20160305074209j:plain

駅間歩きの様子

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「隣の白滝駅には1時間弱で到着しました。こちらはまだ栄えてるほうで、停車する列車も多いです。なのでこちらから次の列車を捕まえます」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain“捕まえる”って表現、なんなんだ

 

f:id:akasofa:20160305082438j:plain

白滝駅前の様子

 

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白滝駅

 

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白滝駅、9:16発の列車

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この列車で、いったん遠軽駅まで行きます」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「もうこの車両の顔からして寒そう…」

 

f:id:akasofa:20160305101914j:plain

遠軽駅、9:54着

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「遠軽ってなんとなく聞いたことがある人も多いと思います。かにめしの駅弁で有名だったんですけど、最近廃業してしまったそうです」

 

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遠軽名物の駅弁、かにめし(これは昔の写真です)

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「確かに、うっすら聞いたことはあります…」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「駅弁ってデパ地下の物産展なんかで食べてもありがたみがないし、大しておいしくない割に高いな…って感じちゃいますけど、やはり現地で食べると格別なんですよね」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「さりげなくヒドイこと言ってますね」

  

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f:id:ryo_kato:20160322164006p:plainここ! 今回一番興奮したシーンです!

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「…はぁ?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「えっ!? すごくないですか!?」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「どういうことですか…? 赤祖父さんって、こういう男性がタイプなんですか…?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「いやいや! 漫画『鉄子の旅』の案内人などで有名な横見浩彦さんですよ!? "乗り鉄界の巨人"に会えたんです! 完全に偶然だったけど、いや〜感動した…!!」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「…有名なんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「コラッ! 口を慎め!!!! すごいんだぞこの人は!! 私にとっては神みたいな人なんだぞ…!?」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「すみません…」

 

f:id:akasofa:20160305110254j:plain

遠軽駅、10:57発の特急オホーツクに乗る

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「私の使った『北海道フリーパス』というきっぷは特急も乗れるので、この特急オホーツクに乗ります。で…」

 

f:id:akasofa:20160305114630j:plain

留辺蘂駅、11:38着

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「留辺蘂駅という駅ですぐ降ります」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「るべしべ…“蘂”とか絶対読めねえ…。鉄道好きって漢字に強くなりそうですね」

  

f:id:akasofa:20160305114912j:plain

これも“車窓”

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「留辺蘂から、次の目的地へはタクシーに乗りました

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「あっ、本当に乗りやがった!」

 

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留辺蘂駅から金華駅までの道のり

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「こんな感じに都合2駅分歩かないといけないので、ほぼ確実に間に合わないんですよ…。Googleマップで雪道を1時間以上ですよ?そもそも都会の駅前と違って、タクシーが拾えるだけラッキーとも言えるんです」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「自分を正当化しようとしている感じがすごい…」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「うまく正当化できたところで、いよいよ次の目的地、金華駅に到着しました」

 

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タクシーで15分ほどかけ、金華駅に到着

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「タクシーに乗ったこと、猿岩石みたいに隠さずにキチンと話すんですね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain列車ダイヤと写真のexif情報の関係で絶対バレますから、正直にいきましょう」

 

f:id:akasofa:20160305120549j:plain

金華駅の待合室

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「こうして待合室をよく見ると、かつてのきっぷやチッキの窓口などの痕跡が見て取れます。こういった部分を見て歴史を感じるのも、駅を楽しむポイントのひとつですね」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「チッキってなんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「ザックリ言うと今の宅急便みたいなことを鉄道がやっていたということです。あとはググっていただくということでお願いします」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「はい…(長い説明聞かなくてよかった…)」

 

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雪に埋もれている金華駅の駅名標

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「うおっ! さすが北海道ですね! 東京でこれだったら大事件ですよ」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「ほんと北海道恐るべしなんですよね…で、12:22発の遠軽行きに乗ってまた遠軽駅に戻り、次を目指します」

 

廃止直前秘境駅巡り③ 下白滝駅

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遠軽駅、12:58着

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「金華駅から遠軽駅まで普通列車で行き、そこからまた旭川方面13:28発の白滝行きに乗り、3つめの目的地、下白滝駅を目指します」

 

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こちらは正真正銘、列車からの車窓

 

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下白滝駅、14:01着

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「これが下白滝駅です。どうですこの感じ! 秘境って感じしませんか?」 

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「こういうところに車もなく放り出されたら、ちょっと怖いな…というのは感じました。帰れる自信がゼロ」

 

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しっかり記念写真!

  

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駅の全体写真を撮っていたら……

 

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犬だ!!

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この近くにある牧場の犬が寄ってきてくれました。番犬かと思ったら、人なつっこくてかわいいでしょ!」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「赤祖父さんってアニメだったら動物しか信用しないキャラですよね」

 

 

廃止直前秘境駅巡り④ 旧白滝駅

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「さて、ここから2回目の駅間歩きです。ダンプカーなども通る道を歩くので、慎重に進む必要があります」

 

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今度はこの行程を歩く

 

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f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「これ、人が歩いていい道なんですか…?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「はい一応。ただただ延々と歩いて流石に疲労困憊でした…。写真じゃ伝わりませんが、超寒くて鼻や耳がもげそうになります。手も手袋してないとヤバいので写真も撮りにくいし」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「なんちゅう趣味だ…」

 

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f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain疲れすぎて髪型が和田アキ子みたいになってきてました

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain人間は疲れると和田アキ子の髪型になるって情報、初耳ですね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「そんな感じで1.5時間ほど歩いて、ようやく4つめの目的地、旧白滝駅に到着です」

 

 

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旧白滝駅、16時少し前くらいに到着

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「新○○駅、というのはよくありますが、“旧”と付く駅は珍しいのです」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「駅じゃないけど、旧ザクくらいしか思いつかない」

 

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記念写真は目が死んでいる

 

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このように特急列車は当然のように爆走で通過

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「実は、ここを訪問したときは秘境駅好きの同士が何人かいらっしゃいました」

 

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旧白滝駅で出会ったおじさん

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「定年を機に兵庫から北海道に移住したという方にお話を聞きました。鉄道写真が好きで、いろいろと撮り回っているそうです。やはり、北海道の鉄道がどんどん縮小されているのは寂しいけど仕方ないねという話で…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「JR北海道って、そんなにヤバいんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plainヤバいも何も、JR北海道が公表した資料によると赤字ばっかりですよ!

 

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※詳しくは下記pdfファイル参照

https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/160210-1.pdf

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「表の右端の営業係数というのは100円稼ぐのにいくら費用がかかったかという指標です」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「100円稼ぐのに4500円かかってる路線があるんですか…小学生でもダメだってわかりますね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「しかし赤字だからやめちまえ! ってことになると、ほとんどの路線がなくなることになるので、そうもいきませんからね。せめて合理化していこうという話は理解できます。寂しいけど」

 

 

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旧白滝駅の待合室に貼られたニュース記事や地元の方のメッセージなど

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この駅、NHKの特集で有名になったんですよね。女子高生が卒業して定期利用者が居なくなるのも廃止の理由のひとつだと…」

 

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数名の秘境駅ファンたちと列車を待つ中、妙な連帯感が生まれつつある……!

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「廃止間近だから人が結構いるんですね。こういうところで知らないファン同士交流するんですか?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「秘境駅好きって、基本的に人嫌いな人多いですからペチャペチャ喋らないですね。ニュータイプみたいに語らずに通じ合うというか…」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「何だよそれ」

  

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そして、16:53発の列車で旧白滝駅を脱出…!

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「はいこれで終了! です。この列車が停まってくれてホッとする感じは何度味わってもたまりません」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain救助を受ける感覚なんですね。しかし結局本当にまる1日使って鉄道乗って降りて歩いてるだけなんですね…。これ、休日使って趣味で行ってるんですよね…?」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「それで十分楽しいからいいんですよ。逆に問いたいですよ、鉄道に乗ってどこに行きたいの?って」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「普通に目的地だと思いますけど」

 

 

取材を終えて

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「この後日談ですが、帰りは札幌から青森までを結ぶ夜行寝台急行『はまなす』が運よく直前で取れました。実はこちらもダイヤ改正に伴って廃止になります」

 

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夜行寝台急行『はまなす』の電気機関車

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「わわっ、夜行列車! いいですね〜〜!!」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「これで北海道と本州を結ぶ夜行列車は『北斗星』『カシオペア』などと並び全廃になりますし、JRからは『急行』という区分も消滅します」

 

 

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『はまなす』のカーペットカーは安く寝て移動ができることで人気だった

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「新幹線開業!! と華やかなことを言ってる陰では、いろいろと廃止されるんですね」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「いろいろな旅の選択肢が減るのは寂しいですね。旅って、とにかく目的地に行けばいいみたいな考え方もありますけど、私は移動も旅の一部だと思っているので、移動自体も楽しみたいですし移動手段にもこだわりたいですね。ツアーで目的地だけ連れて行ってもらっても、結局どこに行ったかすら忘れちゃうって私の親は言ってました」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「それはなんかわかる」

f:id:ryo_kato:20160322164006p:plain「新幹線や飛行機も速くて便利でいいんですけど、ローカル鉄道などもぜひ利用して欲しいですね…絶対楽しいですから」

f:id:ryo_kato:20160317192037p:plain「今回の記事を読んで、楽しそう! と思う人がいるといいですね…いるかなぁ…」

 

ライター:赤祖父

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三流情報サイト「ハイエナズクラブ」の執筆や編集をしたり「全国ノスタルジー探訪」というブログを書いたりもしているインターネット大好きおじさんです。鉄道や写真も好きです。スマホの電波が入らない場所に行くと急に弱気になります。

Twitterアカウント→@akasofa

【東京 VS 名古屋】どっちが住みやすいのか議論してみた

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●サレンダー橋本の記事

●ズッキーニの記事

 

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f:id:kakijiro:20160324160550p:plain「結局、自分が"住むところを自由に選んでいいよ"ってなると、全員東京だったね」

f:id:kakijiro:20160324160556p:plain「マンガ家だったりライターだったり、打ち合わせやイベントなどの活動でどうしてもまだまだ東京のが便利…というぼくたちに限った話でもあるのかも」

f:id:kakijiro:20160324160550p:plain「2人の場合は"仕事でしかたなく"だったけど、結婚だったり子育てだったり、これから歳をとると親の介護問題だったりと、地方に住まなきゃいけない理由と言うのも増えてきそう」

f:id:kakijiro:20160324160556p:plain「また10年後に同じテーマで話し合ったら、全員意見が真反対になってる可能性もあるぞ…!!」

 

 

 

漫画描いた人:カメントツ

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仮面を被った漫画家ライターゆえにカメントツ。オモコロでもマンガを描いているという噂がある。仮面凸ポータルから呼ばれればどんなときも予定があいてれば駆け付けるぞ。Twitterアカウント→@computerozi

「グルーヴは助手席から生まれる」バンドマンが初めて明かすライブツアーの実態

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あご肉を余らせながら失礼いたします、ジモコロライターの原宿です。突然ですが、皆さんはバンドマンという職業についてどう思っていますか?

僕はこう思っていました。

 

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言うまでもなく100%偏見でしか無いんですが、本当に偏見なのかどうかは本人に会って聞いてみなきゃ分かりません。というわけで、本気で音楽活動をしている下北沢のバンドマンに会って「音楽を仕事にするってどういうことなの?」を聞いてみることにしました。

 

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話を聞いたのは、結成8年目のTHEラブ人間というインディーズバンドのボーカルを務める金田康平くん。元々THEラブ人間はメジャーで活動していたものの「もっと自分たちのペースでやりたい!」と再びインディーズへ主戦場を移しました。

今年の2月には3rdフルアルバム「メケメケ」制作の支援をクラウドファンディングで呼びかけ、見事目標金額の2倍を達成したことでも注目を集めました。

 

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本日はそんな金田くんに、特別にバンドがツアーを回るときに乗る「機材車」の中を見せてもらいたいと思います。

 

f:id:eaidem:20160330172308p:plainハイエースのグランドキャビンだね! 『日本一盗難されやすい車』と言われ、自動車窃盗団に盗まれて海外に売られちゃうやつだ」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「あれはマジで最悪なんですよ。知り合いのアーティストにも盗まれちゃった人がいるんですけど、想像しただけで気分が悪くなりますね。うちの機材車が盗まれたら、地の果てまで追いかけます!」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「とりあえず車の中の写真を撮ってもいい?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「本当に撮るんですか?」

 

 

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「どうなっても……」

 

 

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「知りませんよ……」

 

 

 

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f:id:eaidem:20160330172308p:plain「げっ」

  

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f:id:eaidem:20160330172308p:plain「うわぁ……」

  

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f:id:eaidem:20160330172308p:plain「うーーーーーん」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「どうですか?」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「そうだねえ……とりあえず……」

 

 

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f:id:eaidem:20160330172308p:plainビニ傘、多すぎない? こんなに傘使うことってある?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「無いんですけど、なんか捨てられなくて。ビニ傘って何ゴミに捨てるんですか?」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「普通に不燃ゴミでいいと思うけど。っていうか傘だけじゃなく、全体的に捨てた方がいい物が多すぎるよ! 飲みかけのペットボトルとかもう誰も飲まんでしょ!」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「ツアーから帰ってくるとみんなヘットヘトなんで、ついつい放置しちゃうんですよね。東京から福岡のライブに行く時なんかは、普通に片道14時間ぐらいかかるんで」

f:id:eaidem:20160330172308p:plainえ!? 往復28時間、全部車だけで行くの?

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「はい。レーベルに所属してた時は新幹線とか使うこともあったんですけど、今はインディーズなんでお金が無いんですよね。泊まる場所もほとんどカプセルホテルかサウナですし」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「そんな……バンドマンって全国ツアーで行った地方の美味いもの食って、パーッと酒盛りやってファンを抱いたりするんじゃ……」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「うちのバンドはあんまりしないですね。ライブの後は、スリーエフの前でラーメンとおにぎり食って済ませたりとか……。というのも僕らバンドだけじゃ食えないんで、メンバー全員バイトしてるんですよ」

f:id:kakijiro:20160331102654p:plain「ぜんぜん夢がない」

f:id:kakijiro:20160331102734p:plain「だから現地でゆっくりできる時間もあんまり無くて、例えば大阪での単発ライブだったら、朝に東京を出発して、7時間かけて大阪まで移動。そこからライブやって、また7時間かけて東京にとんぼ返りして、朝8時からのバイトに出たりしてます」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「すんごいハードスケジュール……!」

 

 

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金田くんが車中泊する時の態勢らしい

バンドマンの全国ツアー=「地方の音楽関係者からの接待に次ぐ接待」、「行く街行く街に現地妻が」みたいなことを想像していたんですが、どうやらインディーズバンドのライブツアーって僕が思っているようなものでは全然ないようです。せっかくなので、今日はもっと掘り下げた話を聞いてみたいと思います。

 

 

4人の運転手が交代制でツアーへ

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「機材車は金田くんも運転するの?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「僕は免許持ってないんですよ。ラブ人間は6人のメンバー中、4人が免許を持っているので、基本この4人の交代制で運転して行きますね」

 

 

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免許を持ってないのに妙にかっこよく運転席に座る金田

  

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「さっき言った福岡なら片道で14時間なので、3~4時間ごとにサービスエリアで運転手が交代しながら向かう感じです」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「事故にあったこととかはないの?」 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「幸いにも無事故無違反でやらせていただいてます。トラブルといえば、一度東京が大豪雪の時に、高速道路で7時間1ミリたりとも動かなくなったことがあって。あまりにもやることないし車も進まないので、非常階段から降りてみんな普通にコンビニ行き始めたりしてましたね。ようやく動き出した時は、高速道路がライブ会場になったような一体感がありましたよ。あれはイケてたなー」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「そんな苦労をして地方に行っても、ライブ終わったら基本すぐ帰るんだよね? 普通、他のバンドやスタッフとの打ち上げとかあるんじゃないの?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「あ、打ち上げはなるべく出ますよ。僕は体質的に酒ダメなんで、ソフトドリンク飲むだけですけど」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「運転する人もお酒飲めないよね?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「ですね。なので運転手同士の牽制が始まったりします。『俺、行きの運転頑張ったよなあ……』って貢献度をアピったりとか、あえて『みんな飲まないの? 飲んでもいいのよ?』って最初に発言して、帰り道への意識の高さを見せつけたりとか」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「免許持ってるメンバー同士の駆け引きがあるんだね。金田くんも免許とって、みんなの負担を減らした方がいいのでは?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「僕は助手席からバンドを支えるのが、自分の役割だと思ってるんです。免許を持ってない分、助手席にいる時のパフォーマンスには、めちゃくちゃこだわりがありますよ。正直、『助手席と運転席のグルーヴが、そのツアーの雰囲気を作る』と言っても過言じゃないと思ってるんで」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「助手席が、ライブを作る…!?」

 

THEラブ人間 金田康平が語る、助手席での立ち回り方

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f:id:eaidem:20160330113438p:plain「うちのメンバーの免許所有率を改めて整理すると、こんな感じです」

 

 

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THEラブ人間は6人体制のバンド 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「免許持ちの4人が運転席に座るとき、僕には4者4様の『助手席観』というものがあるんです」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「なるほど。ひとりひとり聞かせてください」

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain + f:id:eaidem:20160330172653p:plainの場合

「キーボードのツネは喋ってて欲しいタイプですね。ラジオをかけながら、後から思い出せないぐらいのくだらない話をしてて欲しいタイプ。僕も楽しいんですが、正直言って一番ノドに負担がかかる運転手です」

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain + f:id:eaidem:20160330114038p:plain f:id:eaidem:20160330114043p:plainの場合

「次にギターのはるかと、ドラムスのけんじです。この二人は『俺の知らない音楽かけて欲しいオーラ』があるタイプです。なのでツアーに出る時は、僕がCDのストックを作っておき、DJの役割を果たすことが重要になります」

 

 

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コンソールボックスには、ツアー前に金田がセレクトしたCDが並ぶ

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「特に一番若いメンバーであるはるかは、まだ音楽経験が浅いので、『あいつ最近スタジオで面白いギター弾かないな~』と思った時は、ビートルズやハイロウズの名盤をじっくり聴かせるんです。そうすることで本人の引き出しも増えて、実際『あの時はるかにビートルズ聴かせといたおかげで、いいレコーディングができたな』ってこともありました」

 

 

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ハイロウズの名盤「バームクーヘン」は現在行方不明

「車のどこかにあるはず」(金田・談)

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「けんじは同世代で結構同じ音楽を聴いてきた仲なんで、『知ってる? あの時期にこんなバンドいたんだぜ!』という意外な選曲でびっくりさせることを心がけています。助手席からのサプライズって結構大事なんですよね」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「なるほど。ではバイオリンのタニさんは?」

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain + f:id:eaidem:20160330114207p:plainの場合

「タニはバリバリのアニオタで、『狼と香辛料』のホロを嫁と呼んでいる人間です」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「『狼と香辛料』……筋金入りな感じがするね」 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「そんなタニですが、彼は音楽至上主義な一面もあって、ボーカルである僕に一番気を使ってくれるタイプです。僕の助手席感の一つとして、『助手席に座る人間は必ず起きていなければならない』というのがあるんですけど」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「一般的にもそれは結構言われるね」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「でも仕事柄ノドを酷使してるので、『今休まないで、明日声が出なかったらどうしよう』という不安に襲われることもあるんです。僕がそんな不安を抱いていると、タニは必ず『康平くん、寝てください。僕はアニソン聴いてるんで』と気を回してくれるんですよね」

 f:id:eaidem:20160330172308p:plain「かっこいい! バンドマンかつアニオタの鑑だね!」 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「タニが運転手の時は、安心して休めるので助かるんですよ。アニソンを熱唱し出すと迷惑ですが……」

 

 

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助手席観について熱く語る間、金田の足元にはカルパスの空き袋が転がっていた。

 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「過酷なツアー移動のなか、ちゃんとメンバーそれぞれのことを考えて助手席で立ち回る。フロントマンって大変だなあ」

f:id:eaidem:20160330113438p:plainまだ重要なポイントがあります。お菓子です」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「お菓子?」 

 

 

THEラブ人間 金田康平が語る「助手席お菓子論」

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「運転手によって、好きなお菓子って全然違うんですよ。助手席に座る人間は、運転手の好きなお菓子を把握しておくべきなんです」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「そこまでする?」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「これがめちゃ大事なんです! 僕はサービスエリアに立ち寄って運転手が交代する瞬間、助手席から渡すお菓子をコンビニで買うんですよ」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「さすがに涙ぐましいな……」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「僕には『免許を持ってない人間』という負い目があるので、みんなの食べるお菓子ぐらいは買わないといけないんです。全ては運転手のテンションを持続させて、ライブを成功させるため……ねぎらいの心を互いに持ってないと、バンドって続かないんですよ」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「なるほど。この情報に価値があるのかどうかは疑問だけど、金田くんがそこまで主張するなら、各運転手の好きなお菓子も聞いとくよ」

 

 

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わざわざイラストにするものでもない

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「ちなみに僕はアーモンドクラッシュポッキーが好きです」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「『そうなんだ』としか言いようがないけど、でも金田くんがメンバーの好きなお菓子を言えることが、THEラブ人間っていうバンドの音楽性にもつながってるのかなってちょっと思った。みんな仲が良さそうだよね」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「僕、バンドのノリって部活のノリに近いと思ってるんです。僕は高校時代ずっと弱小剣道部に所属してたんですけど、『大会で優勝するために一丸となって結束しよー!』みたいな感じじゃなくて、顧問の怖い先生が帰った後に、サッカー部から借りてきたボールで道着のまま道場でフットサル始めるような、そういうノリをメンバーともお客さんとも共有できるのがラブ人間だと思ってるんですよね」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「そういえばほとんど男5人の話になってるけど、バンドの紅一点、ベースのまりなちゃんはどうなの?

 

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THEラブ人間のベースを担当する「さとうまりな

 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「まりなの好きなお菓子は、堅いグミですね。ブルボンのフェットチーネとか」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「いや、お菓子の話もいいんだけど、バンド内で女の子が一人だけって色々ありそうじゃん」

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「正直まりなをちゃんと女子として扱えてるのかというと微妙なんですけど、せめてもの気遣いとして、泊まる所は別々にしてますね。そう言えばあいつがこの前のライブで泊まったホテルが変だったらしくて……。あ、ここから先は本人に語ってもらいましょう」 

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「ついでにその話を、ジモコロでも記事を書いてる漫画家のカメントツに漫画にしてもらいました」

 

バンドの紅一点、まりなが泊まった奇妙なホテル 

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f:id:eaidem:20160330172308p:plain「過酷なツアー移動に、やばいホテル……インディーズバンドの活動ってやっぱり色々大変だなあ」

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「でもメジャーからインディーズに変えたことに後悔はなですね。ツアーは体力的にきついと感じることもありますけど、それを乗り越えて立つライブのステージって、やっぱり全てをぶっ飛ばすぐらい最高なんですよ。音楽やっててよかった!と思う瞬間って、僕はやっぱりライブの最中ですね」

f:id:eaidem:20160330172308p:plain「明日からまたツアーなんだよね? とりあえずペットボトルと傘捨てに行こうよ。僕も手伝うから」 

f:id:eaidem:20160330113438p:plain「お願いします!」

 

 

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全国を駆け回り、常に全身全霊のライブを続けるTHEラブ人間。3rdアルバム「メケメケ」リリースと同時に敢行されているワンマンツアーファイナルは、4月3日(日)渋谷クアトロにて開催です。本物のラブソングが聴きたい人は、ぜひ観に行ってください!

 

出演 : THEラブ人間
場所 : 渋谷クラブクアトロ
開場 / 開演 17:00 / 18:00

チケット : 前売り¥3,000(別途1Drink)

 

ローソン Lコード : 73851
e+ : 販売ページ
ぴあPコード : 284-749
問)株式会社ソーゴー東京:03-3405-6455

 

 

 

 

ライター:原宿

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。ご飯をよく噛むオモコロ編集長として活動中。Twitter:@haraajukku

「8コマ漫画家」の木下晋也に、ネットで読まれる漫画の作り方を聞いてきた

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みなさんこんにちは。

今回は記事を読む前に、まずはこちらをご覧ください。このマンガ、ご存知ですか?

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こちらは、木下晋也先生の人気作「ポテン生活」の1編です。

 

今回は、木下さんの大ファンだというシモダテツヤ(株式会社バーグハンバーグバーグ)が、実際にお会いして話を伺ってきました。

 

ブログから始まった“8コマのスタイル”は、なぜ生まれたのか?

大量のネタをストックするコツとは?

そしてラーメンのトッピングには何を入れるのか?

……え? ラーメン?

 

木下晋也

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1980年大阪生まれ。2006年、「Comic ギャグダ」(東京漫画社)にて『ユルくん』でデビュー。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『もここー』全2巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。Twitterアカウント→@kinositasinya

シモダテツヤ

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1981年京都生まれ。Webクリエイター。バーグハンバーグバーグ代表取締役社長。 代表作は「インド人完全無視カレー」「分かりすぎて困る! 頭の悪い人向けの保険入門」など。著書に『日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術』がある。Twitterアカウント→@shimoda4md
※このプロフィール画像は木下先生に描いて頂きました!

 

 

木下作品はトイレで読むのに最適!?

 

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「はじめまして。今日はよろしくお願いします。木下さんの漫画はいつもトイレで読ませてもらってまして

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「あはは、ありがとうございます」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「一生懸命 描いた漫画を『トイレで読んでる』って失礼かもしれないんですけども、木下さんの作品って本当にトイレで読むのに最適だと思っていて。もっと多くの人にこの事実を広めたいんですよ」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「トイレに置いてるっていう人、多いと思いますよ。実際何度か言われたことがあります」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ですよね? 1話8コマだからサクッと読めるし、何度読んでも飽きない。僕はブックエンドを買ってトイレにズラッと並べてます。大をするたびにパラパラとめくって、大体一冊で一ヶ月くらい楽しめますね。回数で言うと60回くらいはいける」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain60回だと一日2回だから、結構な頻度でトイレに行ってますね……。僕のマンガを知ったきっかけってどこですか?」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「マンガ情報を発信している有名なサイトで友人が働いてまして、その人が『これはすごいよ!絶対おもしろいよ』とおすすめしてくれたのが、『ポテン生活』だったんです」

ポテン生活(1) (モーニングコミックス)

ポテン生活(1) (モーニングコミックス)

 

※木下先生の代表作。ユルいテンポと脱力するオチで話題に

 

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「へぇ~、それは嬉しいですね。最初に読んで『なんだこれは?』とか思わなかったんですか?」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「不思議な読後感があって、一発で好きになりました。ステーキやハンバーグみたいにコッテリしてない……まるで“ふ”を食べてるようだなって。胃もたれしないで最後までスッと読める」

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f:id:eaidem:20160322122136p:plain「今までの感想をまとめると、僕のマンガは『トイレで読む“ふ”に似た漫画』ってことですね……」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「いや良い意味です! 良い“ふ”です。くどさが無いのが好きなんです。『おやおやこども』で子供が本棚の本をガサーってする話みたいに、“怒る人が誰もいない世界”がすごい好きなんですよ」

 

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おやおやこども。

おやおやこども。

 

※木下先生が自身の体験をマンガで綴った子育てエッセイ

 

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「泣けるところを良いって言ってくれる人は多いけど、ガサーのことを言われたのは初めてです。本当にかなり読んでくれてるんですね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「あのスタイルで量産できてるっていうのもすごいですよね。今までアイデアが尽きることってなかったんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「う~ん、ポテン生活のような8コマものなら……たぶん……」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「たぶん?」

 

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「永遠に続けられますね」

 

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「永遠~!?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「でも逆にそれしかできないんですよ。題材も身の回り数メートルのことしか無理で。マフィアの話とか絶対作れないでしょうね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「あの絵でマフィアの抗争とか想像つかない」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「それ以前に何ページもある漫画が描けない。いつものクセで8コマ目で終わりそうになっちゃうんですよね。今はストーリー漫画を連載していますが、難しいですね。お話ってどうやって作るんだろうって。ほんと……どうやって作るんですか?」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「それは自分で考えてください。プロなんだから」

 

ラーメンのトッピングでマンガ家としての余裕が判明

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ネットにマンガを掲載する時、紙媒体との最大の違いは、縦方向に読み進めるってことだと思うんです。8コマ形式の木下さんにはすごく合ってる時代になったんじゃないですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「そうですね、これからは書籍でもネットでも読めるっていうケースが増えてくると思いますけど、8コマはどちらでも読みやすい形式かもしれませんね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「俺の時代きた! とか思わないですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「う~ん、単行本の売り上げがもっと如実に伸びてたらそう思うかもしれないけど。でも最近、やっと食べられるようになったなあ、とは感じますね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「具体的にはどういう時に?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「バイト時代は外食に行っても一番安いものを食べてたんです。例えばラーメン屋に行っても、トッピングなしで普通のラーメンを食べてた。『まずはシンプルなものを食べなきゃ実力がわからない』なんて言いながら」

 f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ほんとはトッピングしたかったんですよね?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「したかったですよ。でも我慢して漫画を描いて、いつの間にか連載とかが始まって、気づけば……」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「トッピングできるようになったと」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「はい。コーンとか

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「コーンでいいんだ」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「値段を見ずにコーンを入れられるようになった時は、ああ、マンガで食べられるようになったんだな、と」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ラーメンのトッピングで自分の成功を感じるのってすごくわかる気がします。良かったらホワイトボードにトッピングヒエラルキーみたいなものを描いてもらえないですか?」

 

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木下先生が描いてくれたラーメンのトッピングヒエラルキー

 

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「上位は角煮、チャーシューでしょうね。で煮玉子は真ん中に配置したい。中堅て感じがする」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ですね。高いか安いかだけではなく、贅沢かどうかが大事ですから。それで言うと煮玉子ってコスパがちょうど釣り合ってますよね」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「メンマは煮玉子より下かなあ。玉子以下・玉子以上で分けられると思う」

f:id:eaidem:20160322122137p:plainのりって贅沢じゃないですか? あんなに薄いのに他の具材と同じ値段するってコスパが悪すぎる。でもスープのしみ方がすごいからポテンシャルは高いんですよねぇ」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「じゃあ玉子の上かな」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「木下さんが一番ナメてるトッピングってなんですか? 後輩とかが入れてるのを見て、『まあ、おまえはそんなもんだろうな』みたいな」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「ん~、なんだろう。ネギ大盛りとかですかね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「あぁ~、店によっては無料で入れ放題なのに!みたいな」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「でもこれ、おもしろいですね。ラーメンのトッピングでマンガ家としての余裕がわかるとは思ってませんでした」

 

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ラーメンの絵が木下先生っぽい!

 

 

プロが語るマンガの描き方

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「マンガを描き始めたきっかけみたいなものはありますか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「もともとはお笑いが好きで芸人になりたかったんです。だから大学時代に落研(落語研究会)に入ってたんですが、向いてないなーって思って。僕、瞬発力がなさすぎるんですよね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「笑いの瞬発力……何かを見てパッとおもしろいことを言ったり、急にふられたボケにも的確につっこめる、みたいなことですね」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「落研じゃない普通の生徒にすら、瞬発力で勝てなかったんですよ。大学を卒業してしばらくフリーターをやってたんですけど、芸人は無理としても、何かの形でお笑いには関わりたいと思って……」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「それで漫画の道に進んだってことですか? めちゃめちゃ消去法的にマンガ家になったんですね」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「そうですね。ノートにマンガを描いて、それが原稿用紙になり、ブログになりって感じで続けてきました。当時から4コマとかが中心で、長い話は描いてませんでしたね」

f:id:eaidem:20160322122135p:plain「(横で聞いていたジモコロのスタッフ)ちなみに、シモダも『オモコロ』っていうWEBメディアで4コマを描いてたんですよ」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「……え? 急に何言ってんの」

f:id:eaidem:20160322122135p:plain「こちらなんですが、木下先生、読んで感想を頂けないですか」

 

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ハアァ~??? マジでやめて、そういうの。人気漫画家に昔描いた4コマを見られるって、本当にイヤなんだけど」

 

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現在もWEB上で無料で読めるシモダの4コマを、何本か読んでもらいました 

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「怖い」

 

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「すいません……」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「どんな心理状態だとこんなの思いつくんですか」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「木下さんに解説するのは恥ずかしいんですが、僕は4コマを作る時、普通のベタな4コマをまず描いて、1コマ目を消すんです」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「ん? それじゃ3コママンガになりますよね?」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「オチとして新たに1コマ描き加えるんですよ。すると二段オチになるじゃないですか。で、さらにコマを色々入れ替えたりしてるうちにワケわかんない話になって、この有様ですよ。人によってやり方は様々だということで」

 

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f:id:eaidem:20160322122136p:plain「僕の場合はよく『なぜ8コマなんですか』って聞かれますね。昔 毎日ブログにマンガを描いてたんですが、1コマ、4コマ、8コマと色々やって、後から読み返すと、8コマが一番しっくりきたってだけなんですけど」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「それが不思議ですよね。なぜ8コマがしっくりきたのか」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain4コマだと“間”を表現できないっていうのはあります。『何にもないコマ』を入れたいと思っても、コマ数に余裕がない」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「落語は“間”を大事にする笑いですよね。落研出身だから“間”にこだわるっていう部分があるんですかね」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「ああ! それはあるかもしれない。言われて初めて気づきました!」

 

 

キャラクターを大事にする必要性とは?

 

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ポテンの単行本は、ページの合間にメモみたいな感じでイラストが書いてありますよね。これは、“8コマにまでは伸ばせなかったネタの断片”なんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「いや、あれ実は『落書きを描いてください』と言われてわざわざ描いてるんですよ。じゆう帳に一気に描くんですけど、1ページに15個とか20個とか描くんで、なかなか地獄でしたね

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「うわ、大変そう。僕なら『落書き』として消費しちゃうより、いつか4コマ描く時のオチにした方がコスパが良いっていう、ケチくさいことを考えてしまいそうです」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「シモダさんはすぐコスパを気にしますね……。でも僕も『これは8コマに広げられそうだな』と思ったら消費せずにストックしますよ」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ですよね。木下さんは8コマの形式なら永遠に作り続けられるとのことですが、ネタをストックするコツみたいなものってあるんでしょうか」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain決まったキャラクターが出てくると楽だと思います。急に江戸時代に行っても、同じ顔のキャラがいれば説明しなくても状況がわかるじゃないですか。僕はキャラを全然大事にしてこなかったので、苦労しました」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「キャラを大事にする・しないってどういうことですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「昔はどう落とすかだけを考えて作ってたんですよね。この話のオチにはおじさんが必要だから出そうっていう、それだけ。キャラクターの内面にどんなドラマがあるとか掘り下げることはなかったですね」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「キャラよりネタが優先だったわけですね」

 

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「ポテン生活」の人気キャラ、ミクロガールズ

 

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「最近になって『キャラクターは大事にしてあげよう』って思ってきました。話を展開させるのが楽だし、キャラの説明にコマが要らないから」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「えらく損得勘定が前面に出てますけど、それも“大事にする”に入るんですね」

 

 

打ち合わせ…それはマンガ家と編集者の決闘 

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「マンガのあとがきなんかでよくありますけど、担当編集者に見せた結果、ボツになることって実際あるんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plainありますよ。ボツの理由としては、『わかりにくい』ってよく言われますけど……なんでこれがボツでこれがOKなの?って思うこともあります」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「怒らないんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「抵抗しても最後には言いくるめられるので、そこは『はい、わかりました』って言いますね。家に帰ってから奥さんに『これ、だめだと思う?』って」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「納得いってない部分もあるんですね? 今日は株式会社コルクの編集者・黒川さんもいらっしゃるんで、ちょっと話を聞いてみましょう。黒川さん、そんなにボツを多く出すんですか?」

※株式会社コルク(木下さんも所属するクリエイターのエージェント会社、黒川さんは木下先生担当)

f:id:eaidem:20160322122134p:plain「今は『マコとマコト』っていうストーリー漫画を描いてもらっているので、特に描き直してもらうことが多い……かもしれません」

※この似顔絵は木下先生作です

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「そうですね(苦笑)」

f:id:eaidem:20160322122134p:plain「ボツの理由は色々ですけど、キャラのブレについて、とかが多いですね。『マコはこんなこと言うかなあ?』って」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「“マンガ家VS編集者”って感じがしますね! それを聞いて木下さんはどう言い返すんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plainそうか、マコはこんなこと言わないのか……って」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「いやいや『マコはこういうキャラなんだよ!』って言ったりしないんですか?『俺の作ったキャラクターなんだから!』って」

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f:id:eaidem:20160322122136p:plain「僕より編集の人のほうがキャラクターをわかってるんですよね~。『このキャラはこういう場所で遊んだりするタイプでしょう?』とか言われたりするんですよ。こっちはそんなの全然考えたことがないのに」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「佐渡島さん(※コルク取締役社長:講談社勤務時代は「バガボンド」や「働きマン」など人気作の担当編集として活躍)がインタビューで言ってたんですが、作者の隣を伴走しながら、意見を導いてあげるのが編集者だと」

・ジモコロで行ったコルク佐渡島さんのインタビュー

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「確かに、佐渡島さんと打ち合わせしてると、ちゃんと『こっちだよ~!』って導いてくれるんですよ」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「おっ、そこでクリエイターとしてのやり取りが始まるわけですね。木下さんは自分のクリエイト道をどう編集者にぶつけるんですか?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「……え? 僕は『あ、そっちに走ればいいのか』って」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain言いなりじゃないですか」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「いや、優秀な編集さんは、導きはしてくれるけど、“走ってるのはマンガ家”という気持ちにさせてくれるんですよ。一人で考えてたら絶対に思いつかなかっただろうアイデアがポンポン出てくるのに、その道を気持よく走るのは僕っていう」

 

 

木下先生、マンガ描いてくれません?

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「実は今回、木下さんをお呼びしたのは、対談のためだけじゃなくて、あるお願いがあったからなんです。先生、ジモコロで……」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「……………」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain連載して頂けませんか!?

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「あ、はい」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「言いなり~!」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「いや編集の黒川さんからある程度聞いてましたから」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「じゃ本当に連載してくれるんですね?」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「お仕事の依頼はありがたいですから、こちらこそお願いします」

 

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f:id:eaidem:20160322122137p:plain「やったー! これからはジモコロで木下さんのマンガが読めるのか。内容はどんな感じにしましょう」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「実はもう軽く考えてきてるんですが、こういうのはどうでしょう? 主人公が地方を……」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「ほう、ほう、それおもしろそうじゃないですか。じゃあ、この対談は一旦ここで終わって、さっそく打ち合わせしましょう。なぜなら一日でも早く読みたいから」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「あ、はい」

f:id:eaidem:20160322122137p:plain「今日はありがとうございました。そして今後ともよろしくお願いします」

f:id:eaidem:20160322122136p:plain「あ、はい」

 

ジモコロで連載決定

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というわけで、なんと!

近日中に木下先生の新連載がジモコロで始まります!!

現在、先生が鋭意執筆中の内容をちょっとだけお見せすると……

 

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こんな感じ。こちらはネームといって、下描きの下描きみたいなもの。公開される時には、ここにペンが入れられるというわけですね(しかも初回はカラーになります!)。

このマンガをトイレで読める日は、もうすぐです!

 

さらにさらに、もうひとつ嬉しいニュースがあります! 先生のヒット作「ポテン生活」が、ジモコロで読めるように調整中です。

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ベストセレクションとして、選り抜きの傑作回をお届けする予定です。

どちらもお楽しみに~!!!

 

※シモダの対談シリーズ

 

ライター:ギャラクシー

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy

柳田さんと民話(01)&(02)

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<柳田さんと民話・一覧>
第1話

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第2話

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<柳田さんと民話|一覧>

 

●「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2006年、「Comic ギャグダ」(東京漫画社)にて『ユルくん』でデビュー。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『もここー』全2巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。Twitterアカウント→@kinositasinya

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

編集者とクリエイターはテクノロジーを無視できない―佐渡島庸平×加藤貞顕

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こんにちは、編集プロダクション・ノオトの朽木誠一郎です。みんなからは「メスのシュレック」と呼ばれています。

メスのシュレック - Google 検索

 

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今回ぼくは、ジモコロを運営しているバーグハンバーグバーグさんと、オフィス仲介のエキスパートである三幸エステートさんが共催する、セミナーと博物館のイベント『大ベンチャー展』へ行ってきました。

 

●大ベンチャー展ってなに?

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2016年2月3日〜2月7日、株式会社バーグハンバーグバーグ×三幸エステート株式会社が手がけたセミナー&展示会です。コンセプトは「太古のベンチャー」。家入一真のゾンビやホリエモンの恐竜などを展示し、合わせて豪華ゲストによるセミナーを開催しました。 http://venture.sanko-e.co.jp/

 

『加藤貞顕×佐渡島庸平「面白いコンテンツの作られ方」』レポート

この記事では、2月3日に開催された「加藤貞顕×佐渡島庸平 『面白いコンテンツの作り方』」のレポートをお届けします。モデレーターは弊社ノオトの社長である宮脇が務めさせていただきました。

 

加藤貞顕(かとうさだあき)さん

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ピースオブケイク代表。アスキー、ダイヤモンド社で編集者として勤務し、ダイヤモンド社時代に270万部の大ベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(もしドラ)の編集を担当する。

現在、有名作家の10,000本以上の記事が定額課金で読み放題になるWebメディア『cakes』、クリエイターが文章や写真などを自由に売買できるWebサービス『note』を運営。

後述する佐渡島さんと企画した堀江貴文さんの著書『ゼロ』では、まずcakesでコラムを連載して話題を呼んでから書籍として発売するなど、出版業界のスキルやノウハウをWebに応用しながら、コンテンツの未来を切り拓いています

ここ最近、noteには著名人たちが参入して話題ですよね。ちなみに、よく間違われるのですが、弊社(ノオト)はnoteとは関係ありません。

 

佐渡島庸平(さどしまようへい)さん

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コルク代表。新卒で講談社に入社。モーニング編集部に配属され、『バガボンド』『さくらん』などの超有名作品を担当。

編集者として企画から立ち上げた『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』は社会現象にもなった。

講談社退社後の2012年にコルクを立ち上げ、クリエイター支援事業をスタート。

2015年には著書『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社)を出版。

会場では当日のノベルティとして、コルクさんが一押しの新人漫画家・羽賀翔一さんの漫画『ケシゴムライフ』が配布されました。

“作品(商品)を無料で配布する”のは、出版社では本来あり得ない行為。しかし、コルクは作家のエージェントなので、目先の利益よりも作家の知名度を上げて、“未来においてその作家の作品が売れる”ことを優先させるそうです。既存の概念に囚われず、より本質的なプロデュースに取り組んでいるということですね。

今回のスポンサーはオフィス仲介のプロ、三幸エステートさんということで、両社オフィスの紹介も。

 

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ピースオブケイクのオフィス。オシャレすぎません?

加藤さんと佐渡島さんは出版業界にいた頃から親交を深めており、隣同士のオフィスを借りようと約束していたら、加藤さんが「やっぱりイヤ」と言い出して実現しなかったらしい。体育の時間のマラソンで「一緒にゴールしようね!」と言った友だちにゴール前でダッシュされる、みたいな展開…。

さらに、加藤さんと佐渡島さんの2人は、4月9日に発売される、平野啓一郎の最新恋愛小説『マチネの終わりに』を一緒に担当しています。毎日新聞とnoteの両方で連載していたものが、単行本になりました。2人は、仲良くしていたものの、初めて仕事をがっつり一緒にしていて、よく顔をあわせているとのこと。

 

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さて、ここからが本題。紙とWebを行き来する敏腕編集者の2人が、「おもしろいコンテンツ」「コンテンツの未来」について語り合う対談のスタートです。

 

「ひとつの出版社だけの問題ではない」ピースオブケイクは出版業界の問題とどう向き合うのか 

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「加藤さんはダイヤモンド社、佐渡島さんは講談社と、どちらも誰もが知るような大手出版社の出身です。どうして独立しようと思ったんですか?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「僕は編集者には2つの仕事があると思っていて…。それは『いいモノを作ること』と『それを売ること』

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「どちらも同じくらい大事ですよね」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「出版業界の市場規模は1996年から縮小傾向で、その中で『売る』のは当然難しくなります。『それでも出版業界で頑張る』というのもひとつの選択肢ですが、イス取りゲームになってしまう。そういう頑張り方じゃない頑張り方をしてみたかったんです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「そこで、デジタルコンテンツに興味を持った、と」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「私はデジタルがコンテンツビジネスの主流になると信じています。電車の中でも、みんなスマホを見ていますよね? スマホでコンテンツを見たり、買ったりしてもらう仕組みを実現したいと思ったんです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「『売る』とか『買う』とか、コンテンツにかかわるお金へのこだわりですね」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「お金が回ると継続性が生まれますからね。『週刊少年ジャンプ』のような漫画雑誌は、それ自体が人気であるだけではなく、たくさんの作品を生み出すエンジンになっています。そういう仕組みを作りたかったんですよ」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「ダイヤモンド社は電子書籍にも力を入れていますよね。どうして電子書籍ではいけなかったんですか?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「僕は当時、電子書籍を制作する現場のリーダーでした。『もしドラ』の電子版を出版して、実際に売れたんですが、同時に限界もあると気付いたんです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「電子書籍は紙の市場よりも小さいですよね」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「だから、電子書籍で出版業界の問題を根本的に解決することはできないと思いました。そもそも、ひとつの出版社の問題でもありません。だから外に出たというのも、独立の理由ですね」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「佐渡島さんはいかがでしょうか? 出版社を辞めたのは加藤さんの方が先だと思いますが…」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「僕はもともと起業家マインドがまったくなくて…。加藤さんが独立するときに、相談しに来てくれたんですが『(独立なんて)止めたほうがいいよ』って真剣に説得したんです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「えぇ! 意外ですね」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「大きな出版社の中で、僕や加藤さんは、比較的自由にさせてもらっている立場でした。だから『自分は講談社を使い倒しているんだから、加藤さんもダイヤモンド社を使い倒したほうがいい』と、退職に反対しました」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「それでも、加藤さんは起業したわけですね(笑)」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「サービスのローンチをお祝いする会でも『止めた方がよかったのに』と言い続けて(笑)」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「あれはちょっとムカついた覚えがある(笑)」

 

作家には作品と読者のことだけを考えてもらう、だからコルクは作家のことだけを考える

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f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「でも、そんな反対的だった佐渡島さんも独立されたわけですよね?(笑) 何がきっかけになったのでしょうか」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「朱に交われば赤くなると言いますか…加藤さんをはじめ、周囲の編集者の影響はあります。その少し前に、同世代で一番だと僕が思っている、柿内という職人的編集者が出版社を辞めました。そして、加藤さんが独立した。辞めるのも選択肢だと知ったというか、そのあたりで急に飽きたんです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「飽きたとは、何に?」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「僕は『会社の愚痴を言うくらいなら辞めちゃう方がいい』と思っています。その頃、次第に『もっと自由にしたい、講談社がもっと自由になればいいのに』と考えるようになって、愚痴を言いたくなってきたので、それじゃあ辞めようと」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「引き止めなどはありませんでしたか?」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「ありがたいことに会社は引き止めてくれました。一方、『作家のエージェント』という構想を周囲の作家に話したら、みんな応援してくれました。作家はそういうサポートを求めていたんです。現副社長の三枝(三枝亮介氏)は、初め悩んでいましたが、周囲の作家たちと話す中で決心できたようでした」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「決心する前の微妙なムードの三枝さんと佐渡島さんと、3人で飲みに行きましたね~」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「佐渡島さんが取り組まれている『作家のエージェント』について、もう少し教えてください」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「『エンゼルバンク』という漫画で取材したサイゼリヤの会長が僕はお客様のことを考えません。お客様のことを考えるなんていう社長は嘘つきです』と言っていました」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「どういうことでしょうか?」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain『お客様と関わるのは社員。だから、その社員がお客様のことを本気で考えられるように、僕も社員のことを本気で考える。それ以外のことを考える余裕はない』と。同じように、作家は作品とか読者のことを本気で考えなければいけない。そのためにも、作家が作品や読者以外のことに手を取られないように、作家のことを本気で考える。そのためのエージェントです」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「編集者とは少し違った目線ですね。出版社時代よりは、Web上での展開も増えたと思います。コンテンツづくりへの考え方に変化はありましたか?」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「起業当初はITのことをほとんど知らなかったんです。今は、『ITを駆使して作家が活躍するための方法』には、以前と比較して圧倒的に詳しくなっているし、その可能性を信じています。そこが一番変化しました」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「ピースオブケイクは、実は編集者ではなくエンジニアが過半数を占めている会社なんです。『小口』『のど』など、本の構造を知らないと本を作れないと同じように、ITを知らずしてWebでいいコンテンツは作れないのではないかと思います」 

 

「『宇宙兄弟』のヘアピン」はなぜあんなに売れたのか

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「『いいコンテンツ』という言葉が出ましたが、コンテンツのおもしろい、おもしろくないはどのように判断していますか?」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「その話をするときは、作家とはどういう存在なのか、という定義から始めなければいけないと思っています。僕の考える作家とは、ストーリーを作る人。『漫画を書く人』『文章を書く人』ではありません。その意味で、コルクの成功事例の一つ"『宇宙兄弟』のヘアピン"です。『宇宙兄弟』27巻と合わせて発売したら、これが予想外に売れました」

 

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f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「ヘアピンがなぜで売れたのか…というと、作中でこのヘアピンは登場人物の気持ちをピシッとさせる象徴的なアイテムなんです。『今日は頑張るぞ』というときに付ける」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「なるほど、それは幅広く必要とされそうです」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「はい、男性からも『今日は大事な会議だから、『宇宙兄弟』のヘアピンをタイピン代りに使いました』なんて声もいただきました。僕らが売っていたのはヘアピンだと思っていたのですが、買った人は『ピシッとした気持ち 』または『自分のピシッとした気持ちのスイッチ』を買ってくれていたんです

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「体験を重視する、というのは最近のコンテンツづくりの流れとも一致しますね」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「はい、コルクの理念は作家の価値を最大化すること、そのために作家の頭の中をパブリッシュすることです。最近では、作品の中で味わえる感情を自由に再現できるようなコンテンツを、意識的に世の中にパブリッシュしようとしています。『宇宙兄弟』のヘアピンであれば、それを使う度に作品を思い出して、気分が切り替わる。このように、感情が大きく動くのが、おもしろいコンテンツの条件なのではないかと」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「昔って、本は役に立てば売れたんですよね。もっと言うと、役に立てばおもしろくなくても売れた。『役に立つ=価値が高い』という図式だったんです。でも、今では情報自体の価値は低くなりました」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「ネットで検索すれば、大量の情報が手に入りますからね」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「なので、おもしろくなくちゃいけない。じゃあおもしろいとは何か…って話になりますよね。少なくとも、『おもしろい=役に立つ』ではないんですよ。おそらくは佐渡島さんの言うように、体験をするというのが鍵になるんじゃないですかね。『幸せ』『怖い』など、何らかの感情を想起させるのがおもしろいコンテンツではないかと思います」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「コンテンツに感情が宿っていることが大事だ、と」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「誰が最初に言い出したのかはわからないのですが、『最強のコンテンツは彼氏からのLINEである』と言われていて。彼氏からのLINEほど強力なコンテンツはない!

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「確かに、そうですね(笑)」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「だって『おはよう』でもさまざまな感情が想起されるわけじゃないですか!? 情報を届けたい相手との距離が近いし、それまでに前提になるようなストーリーがたくさんあるから、よいコンテンツになる。メディアは今後、この強力な相手に勝たなきゃいけないんですよ」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「今後、コンテンツはよりパーソナルになっていくと思いますか?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「ただ、パーソナルな手法は大変だと思います。例えばアイドルでも距離が近いものがあるけど、おそらく情報を届ける側はいろいろと大変だと思うので」

 

「これ、売れてるかも」というバズの始まりを作るのは“コミュニティ”

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f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「『売れるコンテンツ=おもしろいコンテンツ』という考え方もあるかと思いますが、こちらについてはいかがでしょう」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「直接お聞きしたわけではありませんが、糸井重里さんの記事で、『“いま売れてます”が一番効くコピー』と紹介されていました。『みんなが買っている』ということが『ほしくなる』という感情をもっとも想起させる。そして、それに勝てるコピーがない」

ほぼ日刊イトイ新聞 - 適切な大きさの問題さえ生まれれば。

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「なるほど」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plainみんな、他人と会話のきっかけがほしいんですよね共通の話題がほしい。売れているものはどんどん売れやすくなるから、『これ、売れてるかも』というバズの始まりを作るのに必要なのは、コミュニティだと思います。コミュニティで話題になったコンテンツは、外部に伝達すると一気にバーっと目立つんですよ。僕たちも作家エージェント会社として、作家が新しいコンテンツを作るのを支援するためには、作家の周りにコミュニティを作っておくことが必要だと思っています」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「日本の出版業界、特に雑誌は、実は海外と比較して特殊なんです。海外では雑誌は定期購読するものなので、雑誌自体の売り上げの落ち込みはそんなに激しくないよね。一方、日本は中央で発行したたくさんの雑誌を少しずついろいろな場所に配送し、販売するシステムを確立しています」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「雑誌がダメになったわけじゃなくて、仕組みの問題である、と」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「はい。日本の出版流通形態がスマホ中心になった現代社会に合わなくなったのではないかと思っています。デジタルで流通させるには、まったく新しい仕組みが必要です。コンテンツを作るだけじゃなくて、その仕組みも作らないといけません」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「売れる、売れ続けるためには『フローとストックをどのように組み合わせるか』が重要です。世間を見渡すと、どんなビジネスでもフローとストックを組み合わせたものが上手くいっているような気がします。初期コストの回収率が高いから」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「うんうん」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「ネットには、フローとストックの要素が両方あります。Webサイトはストック、SNSはフローですよね。SNSのフォロワーはストック。紙では漫画雑誌が上手くいっていて、女性向け雑誌が上手くいっていないのは、女性向け雑誌は雑誌の広告ビジネスモデル頼りなのでフロー、でも、漫画は単行本にしてストックできるから、フローとストックを組み合わせたもの、という違いがあります』

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plainストックの商売をしないと疲弊しますよね。大きい出版社にまだ体力があるのは、過去の作品、とっくに亡くなった有名作家の作品の売り上げが今のところ入り続けている、というのもあると思います」

 

コンテンツの未来を見据える両社に共通するのは「IT技術志向」

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f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「お時間もそろそろですが、大手出版社を飛び出し、新しい仕組み作りに取り組むお2人は、今後どのようなことをしていきたいですか?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「僕は人工知能に興味があります。『流行りものに手を出すのか』という感じですが…。コンピューターの自然言語処理はかなり進歩していて、高精度のリコメンドエンジンなどに応用が可能です。実はcakesでも稼働しているんですよ!」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「えっ、そうなんですか!?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「実は一部、cakesの中でこっそりうごいていて、記事ページの下部に人工知能のおすすめコンテンツが表示される場合があるんです。で、ランキングを表示させる場合と比べて、ABテストしています。そうしたら、すでに人工知能のおすすめがランキングを超えてるんですよね。これ、かなり有力ですよ」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「そういう機能も内製しているんですよね?」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「はい。というより、チューニングが大事だから社内でやるしかないのもあります。うちはコンテンツを作るミニ出版社みたいに言われるし、そう思われているのですが、実はエンジニアがたくさんいるテクノロジーの会社なんですよ。現在は、公開された記事がどれくらいバズるのか、人工知能で予測するアルゴリズムを作っていますね

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「それ、すごく需要がありそうですね…!」

f:id:ryo_kato:20160310183500p:plain「『この記事はいける!』と思ったのに、結局いけないときがあるじゃないですか(笑)。このアルゴリズムがあれば、リリース後のどこかのタイミングで『このままだといかないぞ、じゃあタイトルを変更しよう』ということもできるわけです。そうすると広告との親和性が高まるので、メディアの収益性も上がります。それをいろんなメディア向けに提供していくというのも、今後やりたいことです」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「先ほどの話題にも関連するのですが『いいコンテンツかどうか』を判断するツールがまだないんですよね」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「人間がおもしろがるかどうか…を機械が判断するのは難しそうですね」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「僕がいつもするのは、いくつかのキャッチコピーについて複数のFacebook広告を打つという方法です。同時に1,000円ずつくらい、少額の広告をかけて、どれがすぐ広告消費されるかを確認すると、一番いいキャッチコピーを見つけられます

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「それすごいですね。数千円でいいコピーが確認できれば、安い

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「このように、世の中にもう出ているツールをいろいろと使っていくことによって、思考をブラッシュアップすることもできるんじゃないかと思います」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「佐渡島さんの会社に入社すると、これまでの編集者の価値観が変わりそうですね」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「コルクは確かに作家が関係する会社ですが、出版関係の会社ではないので、出版社に入りたかった人に来てほしいわけではないんです。コルクがやりたいのは、インターネットの中で作家が活躍するのを、どうサポートするかなので」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain本の編集をしたい人だけを集めてはいない、と」

f:id:ryo_kato:20160310183528p:plain「そのためにはITを駆使する必要があるから、コルクでもエンジニアの働きやすい環境をもっと整備して、採用を進めていこうと思っています。最終的には会社の半分がエンジニアになればいいかな。ただ、うちはエンジニアにも作家を担当させようと思っていますけど」

f:id:ryo_kato:20160310183452p:plain「ハイブリットな人材がたくさん生まれそうですね(笑)。本日はありがとうございました」

 

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僕はWebからキャリアをスタートしたライター・編集者見習いなので、紙とWeb行き来する先輩方の思考が垣間見え、非常に勉強になりました。

僕のように紙の文化を知らず逆輸入的に紙の仕事をする…あるいはWebのみで仕事が成立するクリエイターさんも増えているでしょう。このような機会に紙の知見を取り入れておくと、加藤さんや佐渡島さんのように、紙だけ、またはWebだけに囚われない発想ができるようになるのでは…と思いました。

クリエイターだけでなく、コンテンツ産業に関係するすべてのみなさんにも、参考になれば幸いです。

 

 

ウ、ウギギギ…

 

 

 

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メスのシュレックがお送りしました。

 

 

書いた人:朽木 誠一郎

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編集プロダクション・ノオトの所属の記者・編集者。最近つけられたあだ名は「ハム」。 Twitter:@amanojerk

日本で一番「ホストに人気」な都道府県は「長崎県」に決定!?

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midashi

 

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ご機嫌麗しゅうございます。都道府県マスターの潤です。今日もみなさまに、耳よりなお役立ち都道府県情報をお届けしようと思います。本日ご紹介するお役だち情報の都道府県は……。

 

 

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長崎県です。長崎県では「おならをする」ことを「屁をふる」というらしいのですが、おならを相手にかけてやろうという精神強すぎないですか?
先人からずっとおならを相手にぶっかけてやろうと思い続けていた感じがしますね。

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それにしてもみなさん長崎県の形ってご存知でしょうか?
こちらなんですが。

 

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なんていうか、その…。

 

 

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はっきり言って、つかみどころがないというか…。

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ツゥイーっス!

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ん?君は?

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は? オレ? オレっちはご存知…。

 

 

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チャラ人間のチャラ丸ですけど?

 

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オレッちのアクセがここら辺に落ちてたと思うんスけど…。
あ、あったあった!

 

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おい、それは…!!

 

 

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対馬(つしま)じゃねえか!
九州と韓国のちょうど間くらいにある!
クロムハーツみたいにしてんじゃねえよ!!

 

 

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フーーーーー!これこれーーーー!!!!

 

 

~位置~

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すいませーん。

 

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今度はだれだよ?

 

 

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ここら辺に、僕のアクセサリー落ちてませんでした?

 

 

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またかよ。
対馬はもうチャラ丸が取ってっちゃったよ!

 

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対馬じゃないんですけど…あ、ありましたありました!

 

 

 

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今度は壱岐島かよ!

 

 

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あーしっくりくる~

 

 

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海女さんがレオタードで漁をするで有名な壱岐島を4℃みたいにつけてんじゃねえ!!!!

 

 

~位置~

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おい!
それ俺の鼻ピだろ!

 

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は? 何言ってるんですか先輩。
僕が店のナンバー2だからって、嫉妬しないでくださいよ。
どう見ても僕のネックレスでしょうよ。

 

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どっちでもねえよ!壱岐島だよ!
で、こいつら同じ店のホストだったのかよ。

 

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おいおいおい!
落ち着けよ!

 

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また誰か来た!

 

 

どうも。
ホストクラブ・ハウス$テンボスのNO.1をやらせてもらってる…。

 

 

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グラバー亭ケンジです。

 

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落語家みたいな名前のやつ来たよ。

 

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あ! ケンジさん、オハザス!!
相変わらずワイルドっすね~!

 

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長崎くんちの龍くらいかっけえっす!

 

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おい俺のピアス見なかったか?

 

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やっぱりお前もなんか探しに来たのかよ!

 

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ん?お、あったあった。
これこれ。

 

 

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 ドン!!
 
 
 

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九州本島の長崎全体をピアスにしちゃったよ!!

 

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さすが器が違うっス!!
男の中の男!

 

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もう、お前ら帰ってくれよ!

 

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んだと!?
生まれてこのかた、ケンジさんの下半身の出島は鎖国知らずなんだぞ!

 

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知るかよ!

 

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おいおい、一般の方にちょっかい出すんじゃねえよ。
お兄さん悪かったな。
そうだ、お兄さん車持ってるかい?

 

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車?
持ってるけどなんだよ。

 

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ちょっといいかい?

 

 

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このお兄さんの車に…。
 
 
 

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この五島列島を…。
 
 
 

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こうやってドアあたりに付けてよ…。
 
 
 

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まわりをこうやってマスキングしてよ…。
 
 
 

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こいつで…。
 
 

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ブシューーーー!! っと。
 

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え? 何? 何?

 

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んでまわりのマスキングをとるとよ、こうなるわな。

 

 

 

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最後に、五島列島をキレイにはがせばよ…。
 
 

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ほらよ!!
 
 
 

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ほらよほらよ!
 
 
 
 

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何かイカスだろ!! ヘケ!
 
 

 

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なにすんだ! この野郎!!

 

 

 

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お役に立ちましたでしょうか?

 

ライター:室木おすし

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イラストレーター。イラスト・マンガ・GIFアニメ等を使用して活動中。オモコロライターとしても活動。特技「たべっ子どうぶつ盲牌」がフジテレビの番組「ジマング」で取り上げられて、そのことをたまに思い出してはニヤけている。お仕事常に募集中!お気軽に! 公式サイト:スシックスタジオ(http://www.susics.com)/ TwitterID:@susics2011

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています


長野オリンピック以降の進化!? 「湯田中温泉」に独自すぎる文化が育っていた

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こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。山梨県の八ヶ岳麓にあるホテルで優雅な朝を過ごしています。パーカーの「BAHAMAS」は「優雅」って意味ですからね。

 

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僕と同じレベルの優雅さで紅茶をすすっているのが、1年前に山梨県の勝沼へ移住した発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。味噌や醤油、ビールなどのアートディレクションを手掛ける一方で、発酵にまつわる研究に余念がない「好奇心の塊」みたいな人です。

 

 

そんな小倉ヒラクさんが「柿次郎さん、山梨と長野を案内しますよ!」と言ってくれて、2泊3日で勝沼→甲府→北杜→清里→上田→若穂保科→小布施→湯田中→長野という土地をグルグルとまわってきました。

 

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ワインで有名な山梨県勝沼。江戸時代から300年以上続く「若尾果樹園/ マルサン葡萄酒」(安くて美味い!)の葡萄畑を見せてもらったり、

 

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山梨県北杜市でパーマカルチャー(持続性のある自然に近い環境デザイン)の生活を実践するソイルデザインの四井真治さんの自宅を訪れたり、

 

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長野県小布施町の町おこしの立役者であり、欧米人初の利酒師でもあり、現在では長野県若穂保科で約2000坪の広大な土地を里山保全しているセーラ・マリ・カミングスさんを訪ねたりなど…とにかく今後のジモコロに繋がるような出会いばかりでした。

 

ここからが本題!

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そのあたりは未来の自分に任せるとして、今回はなんとなく泊まった長野県「湯田中渋温泉郷」のカルチャーがガラパゴス発展を遂げている事実をお届けします。

 

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信州湯田中温泉観光協会公式サイト

 

勉強不足で申し訳ないんですが、「湯田中渋温泉郷」の存在をぜんぜん知らなくてですね。Twitterでアンケートを取ってみたところ…

274票の内、「86%が知らない」という圧倒的な知られてなさ…!

まぁ、別府温泉や草津温泉と比べるとね。それでも長野県は「宿泊施設のある温泉地数」としては北海道に次いで全国2位。まだまだ知らない温泉地があるってこと!

 

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●湯田中温泉郷

・安代温泉(あんだい)

角間温泉(かくま)

上林温泉(かんばやし)

地獄谷温泉(じごくだに)

渋温泉(しぶ)

新湯田中温泉(しんゆだなか)

星川温泉(ほしかわ)

穂波温泉(ほなみ)

・湯田中温泉(ゆだなか) 

湯田中温泉今日は1350年以上の歴史があり、この土地に点在する9つの温泉の総称のことを指すそうです。外国人観光客に人気の地獄谷温泉といえば、「あー、はいはい。猿が温泉に浸かってる場所ね」となるんじゃないでしょうか。

 

湯田中渋温泉郷に吹き込むアジアの風

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さて本題の湯田中温泉について。湯田中駅まで電車で行く場合、リニューアルしたばかりの「長野駅」を経由して長野電鉄特急で約45分。都内から車で行くと3〜4時間はかかります。

 

GoogleMapで見たらこんな感じ。山と川に挟まれた土地で、あちこちに温泉が湧き出ていても不思議じゃありませんね。

 

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温泉宿やホテルの裏側には、歓楽街の「湯河原通り」があります。昭和に隆盛を極めたような地方によくある風景。日中はこのように「いい感じの寂れっぷりだなぁ…」と、逆に落ち着いてしまいます。

 

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ちょっと店名が気になる「湯河原通り有名店ガイド」なる看板も。当時の看板がそのまま残っていることは地方の歓楽街では珍しくないんですが…

 

 

夜になると通りが激変します。

 

 

 

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あれ、時空が歪んで異世界に迷いこんだ…?

きらびやかなネオンの数々と昭和臭ムンムンの店看板の数々…。「スナック」や「パブ」、「カラオケ」といったキーワードと共に、どこか強引な日本感を演出しているようにも感じます。人はあまり通ってないけれど、車の往来は激しい。歓楽街として機能している町の息吹が感じられる…!生きてるぞー!!

 

 

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とりあえず腹ごしらえをすべく、和風居酒屋「美和」という安心感たっぷりのお店に入ろうと思います。ローカルの取材で欠かせない情報源は、「宿」と「飲み屋」って決まってるので覚えておいてください。

 

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山に囲まれた長野あるあるなんですが「魚介類への憧れ」が尋常じゃないので、地元の人向けの居酒屋は思いのほか魚系のメニューばかりが並んでいます。お通しもホタテの貝ヒモと海老でした。ちょっと値段が高いのはご愛嬌ということで。

 

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カウンターに座っている常連のオジさんに「オススメの美味しいお店ないですか?」と聞いたら、「すぐそこのタイ料理屋が本格的で美味しいよ!」と教えてくれました。謎の温泉街で本格的なタイ料理を出すお店…。

面白そうなので行ってみます!

 

本格的すぎるタイ料理屋の日本語センスがヤバい

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活気のないビルの地下1Fにあるタイ料理屋「ランナー」。予備知識ゼロだったら絶対に入らない雰囲気、一見さんを寄せつけない入り口…これはディープスポット好きとしては“当たり”の予感がします。

 

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店内はこんな感じ。夜21時の時点でお客さんはゼロ。タイ人の女性スタッフに「やってますか?」と聞いたらカタコトの日本語で「ヤッテルヨ」と微笑みの国的な返答がありました。コップンカー!

聞けばこのお店は深夜1〜2時頃が盛り上がる時間帯で、このあたりで働いているタイ人女性が本場の味を求めてやってくるそうです。湯田中温泉ならではの需要がこの「ランナー」に集中してるんでしょうね。

 

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二軒目なのでガパオライスとパパイヤの春雨サラダを頼んだんですが、本場タイで食べる味そのもの! 美味い! 日本人にぜんぜん媚びてない!

まさにタイ人向けの妥協なき味つけで、ヒーヒー言いながら食べるほどの辛味が舌を襲います。なんでタイ料理ってハズレが少ないし、こんなに美味いんだろう…。

 

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まぁ、タイ料理が美味いから紹介したいわけじゃないんですよ。この店のメニューが気になって仕方がありません。駆け足で拾っていくのでついてきてください。

 

 

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ドライ好き

 

 

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酸っぱいエビ

 

 

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ぬいぐるみのオムレツ

 

 

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酔った麺

 

 

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タイ料理

 

 

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揚げ豚肉の衝突

 

 

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バジルをかき混ぜる

 

 

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水ヘビをお楽しみください

 

最後は店長が丁寧に説明してくれてるのかな?っていう斬新すぎる料理名ですが、Google翻訳でもここまで間違えないだろってレベルです。

ちなみに好きな料理をオーダーしても「ソレハデキナイネ」と食材がないため大体断られることを覚悟してください。そういうシステムみたいです。曖昧さといい加減さを受け入れると、この手の旅は超楽しくなります。

 

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余談ですが、このお店は15年も続いているそうです

すごすぎるだろ。

 

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ドリンクメニューは商品名なしのビジュアル1本勝負。

ランナーのセンス渋すぎるぜ!

 

湯田中渋温泉郷の歴史を聞いてみた

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さて、ここまで違和感しかない湯田中渋温泉郷の裏路地にある「湯河原通り」ですが、三軒目でカラオケスナック居酒屋みたいなお店に入って話を聞いてきました。

 

箇条書きで敢えてあっさりまとめてみたので、事情を配慮してもらいつつ、好奇心旺盛な方はぜひ参考にしてみてください。

 

・元々このあたりは温泉街×赤線として栄えた土地

・戦後にGHQの手によって遊郭が廃止された

・長野オリンピックバブルで一度盛り上がりを見せるもののその後衰退…

・約20年前から日本人女性オーナーが撤退して、代わりに台湾人、フィリピン人、タイ人女性が参入

・性根たくましいアジア人女性のパワーによって地元で人気の飲み屋街に

・男女問わず、地元の消防士や役人、銀行員などがカラオケ居酒屋として利用している

・人気店は毎晩のように満員になるほどの盛況っぷりでお金が落ちてる

 

などなど、かなり特殊な歴史を辿って現在に至るようです。余談ですが、20歳そこそこの日本人女性も働いていて、「東京は苦手だから、ずっとこの土地に住み続けたい」「朝から夜まで仕事を掛け持ちして毎日3〜4時間しか寝てない」「深夜から朝5時まで足湯に浸かりながら女友だちと恋バナをするのが楽しい」といった価値観を聞くことができました。足湯で朝まで恋バナって温泉地らしいなぁ。

 

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温泉目当てで素泊まりするはずが、フラッと近所を散策してみたら驚くほどディープな文化に触れてしまいました。

同行した小倉ヒラクさんが「長野は主要の町があちこちに点在していて、インドみたいな奥深さがある」と。僕自身も20回近く長野を訪れていますが、まさか長野にこんな温泉街があるとはつゆ知らず…。

 

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というわけで、この奇妙な「湯河原通り」の飲み屋めぐりに興味を持った人は「何かのついで」にぜひ足を踏み入れてみてください。クセになるはず。

今回泊まった「味な湯宿 やすらぎ」は、Booking.comで驚きの「9.7 / 10」というハイスコアを叩きだしているのでよろしければ!温泉が最高!!

味な湯宿 やすらぎ (山ノ内町) - Booking.com

 

 

書いた人:徳谷 柿次郎

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ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916

【女子大生】飲食業界に革命!「株式会社トレタ」に潜入したらKOされた

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こんにち焼肉! 最近二十歳になりました、あぐ味でスムージ-。

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お腹が減りすぎてあいさつの語尾が好きな食べ物になってしまいましたが、

本日はここ、とある便利なサービスを開発・運営している『トレタ』にやって参りました!

 

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(ちなみに今回は、ジモコロ編集長の柿次郎さんにも同行してもらっています)

 

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トレタのオフィスは五反田にあるTOC(東京卸売センター)の中にあるのですが、ご覧の通り広々としていてとっても素敵な空間!

木の温もりに溢れていて落ち着くし、オシャレなカフェみたいです。

 

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執務スペースも明るく、社員の方ものびのびとしてます。

 

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執務スペースの奥には「リラックマがハンモックに乗っている」という、癒やしの極地みたいな謎スペースもありました。

 

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さて、そんなトレタを案内してくれるのは、広報の田(でん)さんです。

f:id:Arufa:20160330175905p:plain「今日はよろしく! で、ここってなんの会社?」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「だいぶフランクにきましたね。ここでは、飲食店のスタッフが予約の電話を受けたときに、タブレット上で簡単に予約台帳がとれるシステムを運営してるんです!」

f:id:Arufa:20160330175905p:plain「つまり、どういうことですか?」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「えっ? ですから、飲食店の予約台帳をタブレット上で簡単に管理することができるシステムを運営しているんですよ」

 

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「?????????????」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「理解度ゼロかよ」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「あとで開発者を呼んで詳しく説明させます」

f:id:Arufa:20160330175905p:plain「お願いします」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「……ところで、ちょうどお昼ですし一緒にランチでもどうですか?」

f:id:Arufa:20160330175905p:plain食べたーーーい!! ランチ食べたい!! ランチ食べたいよ!!?」

 

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「ああああーーー!! ランチ食べたいよ!!????」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「落ち着いてください。こちらのカウンターでやっている『ランチ会』に混ぜてもらいましょう」

 

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……何でも、お昼になるとお弁当を持ち寄ってこのカウンターで「ランチ会」を開くのがトレタの方々の日課なんだとか!

見ると、今日もぼちぼちランチ会が始まってるようです。

 

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よ~し、社員さんがどんなお弁当を持ってきたのかチェックしちゃうぞ!

 

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まず一人目。

これこれ、このテッカテカのしょうが焼きよ! THE弁当って感じ! でもご飯のごま塩がささやか過ぎじゃない?

 

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こちらは手作りのお弁当! 鶏そぼろと玉子が綺麗に分かれてて可愛い! 混ぜるときにポロポロ……ってなりそうだけど、美味しそう!

 

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これは……なんだろうこれ? 餃子? とにかく何かを揚げたやつだ! そしてごま塩がささやか~~~!!

 

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そしてこれは愛妻弁当!くぅ~~!! 栄養バランスがちゃんとしてそうなのが何よりの愛情~~~!!

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「みなさん美味しそうですね! 私も今日は張り切って手作りのお弁当を持ってきたので、仲間に入れてください!」

f:id:Arufa:20160330175906p:plain「わ~、いいですね! 一緒に食べながら会社の説明しましょうか!」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「ありがとうございます! ちょっと量が多めなのが恥ずかしいんですけど……」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「朝、早起きしてボイルしてきたんですよ~」

 

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f:id:Arufa:20160330175907p:plain「本当にドン引きされてる」

 

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ポリッ……

f:id:Arufa:20160330175905p:plain「くぁ~! ウンメ~! コレコレコレ! あ、会社の説明お願いします!

 

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というわけで、ここからは開発部の増井さんと、取締役の吉田さんに、『トレタ』のサービス説明をしていただきます! ポリポリポリリ!

 

『トレタ』ってどういうサービスなの? 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「さっき軽く説明してもらったんですけど、その、飲食店のスタッフが美味しく焼きそばを焼けるサービスっていうのを説明してください」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「まずはその誤解を解くところから始めましょうか。とりあえずこれを見てください」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「何だこれ」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「字がびっしり描いてありますね」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「これは従来の予約台帳ですね。飲食店のスタッフって、予約の電話を受けた時にはこういう紙の予約台帳に書いていくんですよ」

 

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f:id:Arufa:20160330175907p:plain「うわ~! 大変そう!」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「その上、変更とかキャンセルとかがあるから、鉛筆やシャーペンで書かなきゃいけない。しかも消しゴムで何度も消したりするから、紙がボロボロになっちゃう上に、『予約とったはずなのになんで席が無いんだ!』なんていう予約事故も起こりやすいんです」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「僕も、予約したのに席が無かったこと、何度かあります……」

 

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f:id:Arufa:20160330175909p:plain「で、それをiPadなどのタブレットでやりましょうと、作ったのがこの『トレタ』なんです」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「かなり見やすいですね」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「これは、店員さんの電話の近くに置いて、電話で話しながら操作することを想定してます。お客さんから電話がかかってきたらまず新規予約を押して、日にち、時間、人数を入力します」

 

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f:id:Arufa:20160330175909p:plain「すると、このように席の状況が表示されるので、青く表示されている空席を選択するだけ! あとはお客さんの情報を入れるのですが、携帯番号や名前を入れると、過去に来店したことがあればその時の情報が一気に入力されます。来店回数や、嫌いな食べ物、メモとか……。スタッフの音声も録音できるので、電話口のトラブル防止になります」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「すごい!」

 

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f:id:Arufa:20160330175909p:plain「そして最後に入力情報を復唱して予約終わり。お店の人たちは他のパソコンやiPadでも予約が見れるので重複防止にもなりますし、お客さんの携帯にもすぐにメールが届くので予約事故もなくなります」

 

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f:id:Arufa:20160330175909p:plain「あとで店長が『この人はVIP席でしょ!』と思えば移動もワンタッチで可能で、そういった変更履歴も全て残るので安心です」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「何言ってるか全然わからん」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「……トレタの今後の課題とかはあるんですか?」

 

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f:id:Arufa:20160330175908p:plain「そうですね、トレタは『いつ誰が来店したのか』は分かるけど、『何を食べたか』『いくら払ったか』『どうやって店を知ったのか』……とかは、まだ分からないんですよ」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「へぇ~そうなんですね」

f:id:Arufa:20160330175908p:plain「でも他社には、『何をいくら食べたか』がわかるPOSレジサービスがあったりして、そことウチが提携すれば、誰が何を食べたか』という詳細な情報が分かるんですよね。そうやってお互いに足りないところを補えれば、お客さんの情報がもっとお店に伝わって、より細かいマーケティングが出来るようになるかなと」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「たしかに……」

f:id:Arufa:20160330175908p:plain「だから、このサービスは九割完成してるんですけど、エンジニア的にはまだまだ解決する問題が山ほどあるんです!」

 

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f:id:Arufa:20160330175907p:plain「あぐ味ちゃん、完全に飽きてるな」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「見てくださいこれ、ウインナー牙です。さっきのはウインナー爪です」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「……?」

 

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f:id:Arufa:20160330175909p:plain「これまでの飲食店って、リピーターをどうやって育てるか、常連さんをどう作るか、というのを手助けする仕組みが無かったんですよ。店長さんの頭の中だけでお客さんの好みなどの情報が属人化することが多かったんですけど、トレタには『あの人はこんなお客さん』ってのを属人化させずに外に出しちゃって、スタッフさんと共有して全員でいいもてなしをしましょうっていう試みがあるんです」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「アッハッハッハッハッハ!!!そうなんですか!」

f:id:Arufa:20160330175909p:plain「え、全然笑うとこじゃ……怖い!」

 

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f:id:Arufa:20160330175907p:plain「便利にっていうだけじゃなくて、人の好み等のビッグデータを集めていってコンシェルジュ的な提案もされてるんですか?」

f:id:Arufa:20160330175908p:plain「そうですね。エンジニアが直接お店の人にアイデアや新機能を聞きに行ったりしてます

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「へぇ~、大きいサービス運用してて担当者の顔が見えない、ってよりも喜んで貰えそうですね」

 

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f:id:Arufa:20160330175908p:plain「このサービスって個別化されていなくて、いろんなお店が同じサービスを使うんです。だから、一つのお店に『ここにこの機能をつけてほしい』とか言われてもそのままやらないで、それはどうしてか考えて具現化、一般化したものを機能として実現化するんです」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「なるほど。すごいねぇ、あぐ味ちゃん」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「そうね」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「全然聞いてないな」

 

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f:id:Arufa:20160330175908p:plain「ちなみにこのサービス、年間で99.9%は安定して稼働しているんです。なぜって、サービスが止まっちゃうと受付や予約ができなくなっちゃうから、絶対止められない。だからそこにめちゃくちゃ力を注いでますね」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「依存させるぐらい凄いUIをつくって、依存させたら安定させないと、っていうことですね。それが月1万2千円ってかなり安い!」

 

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社内に酒見つけたぞ!

 

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ウィ~~~~~~~!!!!!!

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「なにやってんの?」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plain「ウインナーパリパリ」

f:id:Arufa:20160330175907p:plain「ちなみに、一番の競合ってどこですか? ライバル会社的な……」

f:id:Arufa:20160330175908p:plain紙の予約台帳ですね」

 

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ニュッ、ニュッ、ニュッ

f:id:Arufa:20160330175908p:plain「紙に慣れちゃってるオーナーさんが多いし、今も大多数の飲食店は紙の予約台帳を使ってるんです。そもそもこのサービスを知ってもらう所から始めないと……と!」

 

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f:id:Arufa:20160330175905p:plainパリパリリリリッリリリリリリリリリ

 

「おいお前!」

 

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「さっきから見てりゃあウインナーをパリパリパリパリ……」

 

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「ちゃんと……」

 

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「聞け~~~~!!!!!!」

 

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あ、いっつつつつ~~~~~!

 

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「要するに、トレタの今後の一番の課題は、このサービス自体を知らない人に知ってもらうこと、そして色々な企業と連携したり、飲食店側からの意見を直接取り入れたりしつつ、よりきめ細やかなマーケティングを行っていくのが目標ってことですよね~?」

 

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聞いてたんだ……

 

……ちなみに…

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この……オフィスがあるTOCの…地下には……

 

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飲食…店…街があるのですが……

 

 

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めちゃくちゃ安くて……美味しそうなものばかり並んでいます……

 

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トレタ……のランチ会でも……ここでお弁当を買っていく人が多いようです……

 

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ニコッ

 

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というわけで、本日は『トレタ』さんにお邪魔しました!

今後、サービスがどんな風にパワーアップしていくのか注目です!

よーし! 予約しまくるぞ~~~~~~!!!!

 

 

前回の連載はこちら

www.e-aidem.com

ライター: あぐ味

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現役女子大生ライター。ウインナーは1日40本までと決めている。
 あぐ味のTwitter

編集長はつらいよ!? WEBメディア編集長会議 BuzzFeed Japan×KAI-YOU×オモコロ

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こんにちは。ライターのカツセマサヒコです。

「象に乗ってみたい」という夢を叶えることができてうれしい今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 

前回の【ヨッピー×VICE JAPAN】目標は大統領!? ネットでウケるコンテンツを考えてみたに引き続き、今回も大ベンチャー展でのトークセッションの様子をお伝えしたいと思います。

 

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遡ること約2カ月前、2月5日に行われたトークセッションの後半は、WEBメディアが好きな人なら思わず唸るゲスト陣でした。

 

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オモコロ編集長の原宿さん、KAI-YOU編集長の新見直さん、BuzzFeed Japan編集長の古田大輔さんによるWEBメディア論。モデレーターは引き続き、ジモコロ編集長の柿次郎さんが務めます。

学びが多いうえに笑いも絶えない、いい感じにユルい空気で行われたトークセッションの様子をお届けしますので、皆さんの気持ちも2カ月前に戻して読んでもらえればと思います。 

 

自己紹介

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まずは登壇者の自己紹介から。

オモコロ編集長の原宿さん(写真左)は今、「メディア界隈で一番寝てる人」を目指しているそうです。オモコロを運営しているバーグハンバーグバーグは一日2時間まで昼寝OKというルールが有名ですが、この日の原宿さんも睡眠に対する執着が半端じゃなく、なんかよくわかんないけどいろいろと最高でした。

 

ご存知の方も多いと思いますが、オモコロは「平日毎日更新で、役に立たない記事をあげているメディア」として10年目を迎えた面白メディアです。学生時代にブログを立ち上げて2日で更新をやめたことがある僕からすると、10年って途方もない時間です。

 

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KAI-YOU編集長の新見さん(写真中央)は、大学時代に7000部流通する同人誌を制作。そのまま法人化してKAI-YOUを設立しました。現在のKAI-YOUはWEBコンテンツの編集や制作、イベント運営をしています。

 

KAI-YOUはちょうどサイトを大幅にリニューアルしたばかりのタイミングだったので、トーク中盤ではサイトデザインやコンテンツの見せ方についての話も出てきます。

 

ちなみに新見さんはKAI-YOUのメディアの在り方について、「最近のWEBメディアに載る記事って、ハイコンテキストなものが多いと思うんですけど、KAI-YOUはその文脈を棚卸しして、ユーザーへの敷居を低くしてあげたいんですよね」と話されていて、ユーザーへの配慮がめちゃくちゃかっこいいと思いました。

 

それに対する原宿さんの「すごいなー、説明がうまい。大学出てます?」という反応は流石オモコロ編集長。本人は高卒らしいです。

 

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最後はBuzzFeed Japan編集長の古田さん(写真右)です。

古田さんは朝日新聞に勤務していたころにタイ、シンガポールで海外勤務を経験後、デジタル編集部で2年半勤めて現職に。

 

BuzzFeed Japanはこの日、リリースしてからまだ2週間というできたてホヤホヤ具合。「どんなメディアなの?」というところに話題が集中します。

 

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「BuzzFeed Japanは社内の編集部員が全ての記事を書いているんですよね?」

 f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「そうですね。基本的に外部ライターに依存していません。BuzzFeedはCMSがすごくよくできているんです。たとえばユーザーがどこまで読んでくれたのか、どの段落で離脱したのか、すべて細かな情報として得ることができるんです」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「すごいですねそれ」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「だから公開されたコンテンツのデータをちゃんと分析して、よりよいコンテンツを作れるようになってほしいと社員には伝えています。このデータは外部ライターには渡しにくいものですし、そういった理由もあって、社内の人間だけで書いている現状です」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「扱うジャンルも幅広いですよね。原発関連のすごく堅いニュースもやるし、猫や犬も取り上げる」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「そうですね。『バズ』と言っても幅広いですが、僕らは記事を見た人がハッピーになったり、笑えたりするものを作っていきたいと考えています」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「BuzzFeed Japanは、ローンチして2週間ぐらいですよね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「はい。本当にスタートしたばかりなので、今は公開したコンテンツのデータを見て勉強している段階ですね。あと、『海外でバズったコンテンツは日本でもウケるのか?』という実験をかねて、海外のBuzzFeedコンテンツを翻訳したものをどんどん公開しています」

 

お互いのメディアの印象は?

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3人は今回のトークセッションで初めて一緒に登壇したそうです。それもあって、まずはお互いのメディアの印象を話すことに。メディアの中の人たちがお互いのメディアの話をするって、実はあまりない機会。お互いに探りをいれつつ、話が進みます。

 

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「皆さんご一緒に登壇するのは今回が初めてですよね? それぞれのメディアにどんな印象をお持ちですか?」

 f:id:katsuse_m:20160325142921p:plainf:id:katsuse_m:20160325142602p:plainf:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「うーん……」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「原宿さんは、KAI-YOUについてどう思います?」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain……サイトの色が、青いなあって。オモコロはサイトが赤いでしょ? オモコロを見た後だと、色が青く感じられるんですよ」

 

f:id:katsuse_m:20160328140039j:plain

KAI-YOU.net

 

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「頭の悪い回答だなぁ」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「でもデザインが見やすいよね」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「ありがとうございます。リニューアルしたときに、最新記事がトップに表示される仕組みをやめたんですよ。ファンは記事単位で見てくれているので、トップ画面には回遊しないんです。でも、新規のユーザーはトップ画面から来ることもあるので、トップ画面には新着記事よりも、KAI-YOUらしい記事を置こうって決めました」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「あー、なるほど! うちと真逆だ。オモコロは完全に公開順で見せているんですけど……たしかにそっちのほうがいいですねえ、変えよう」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「すぐ流される」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「僕らもこの仕組みで始めたばかりなので、結果がどうなるかはわからないんですけど、しばらくはこれで様子を見ようと思っています」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「うまくいったら教えてください」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「パクる気まんまんか」

 

 

 

f:id:katsuse_m:20160325162623j:plain

 

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「真似すると言えば、BuzzFeed JapanさんのCMS、うちも使わせてほしいです。メディアをやっていると、どこまで読まれているか気になりますし」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「知りたい知りたい」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「あのシステムは本当に面白いですよ。僕は編集長としてすべての記事に目を通しているんですけど、チェックしているときに『ん?』って違和感を覚えた段落が、そのまま読者の離脱率が高いポイントだったケースもあります」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「ページ単位ならわかりますけど、段落ごとで離脱がわかるってすごいですよね」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「いいですねー。そのシステムを使って『離脱王』とか決めたいです。『よくぞ離脱させた!』って表彰したい。離脱させる仕事とか、どんどんあげたいです」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「何言ってんだ」

 

 

f:id:katsuse_m:20160325162831j:plain

 

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「古田さんは、オモコロが好きって聞いたことがあります」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「オモコロ、大好きですね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「何がいいんですか、こんないい加減な編集長がやっているメディア」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「一見ばかばかしいけど、面白くするための仕掛けがきちんと組まれているところですね。Buzzfeed Japanは、立ち上げるときにニューヨークのBuzzfeedからベテランライターを招いてCMS周りの研修をやったのですが、そのとき外国人のライターにオモコロを見せて『これがジャパニーズスタイルのバズだ』って言ったら、すごいウケてました」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「それ、うれしいですねー。僕らがやってきたことがディス・イズ・ジャパニーズ・バズとしてBuzzFeedの海外記者の方たちに受け入れられるって、すごいことですよ」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「新見さんはどうですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「KAI-YOUは始まって丸3年になるんですけど、オモコロさんは大学時代から見ていたメディアなので、今その横に座っているのは本当にうれしいですね。憧れていました」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「おお、今日はなんていい会なんですかね。あとで1万円払いますね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「風俗じゃないんだから」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「BuzzFeed Japanも始まったばかりなので、先輩方の背中を見て成長しようと思っています」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「おお、もう1万円払います」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「なにこのくだり」 

 

編集長の悩み

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続いてのテーマは「編集長の悩み」について。メディアの編集長って責任やプレッシャーも大きそうですが、3人ともどちらかというと「メディア自体の悩み」について話されていて、編集長ってメディアそのものなんだなあと思いました。とくにローンチしたばかりのBuzzFeed Japanはチャレンジすることも多いぶん、悩みも多そうです。そのあたりにも注目ください!

 

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「皆さん編集長ということで、似たような苦労をされていると思います。編集長としての悩みがあれば教えてください」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「僕は編集長としてもスタートしたばかりですが、海外のネタを日本向けにアレンジすることの難しさを実感しています。BuzzFeedの現地メディアができるのは日本で11カ国目になるんですが、アルファベット圏ではない国への進出は日本が初めてなんですよ」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「いろいろローカライズしないと大変そうですよね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「そうなんです。インドのBuzzFeedも英語でやっているし、これまでは全て欧米圏のカルチャーだからそのままトレースすればよかった。でも日本版を作るにあたって、テーマ設定や文体、デザインを全てローカライズしなきゃいけないっていう話をしているんです。今はそれに向けていろいろとデータを出して調べているところですね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「海外でウケるものが、日本でウケるとは限らないですもんね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「あとは、『BuzzFeed JapanとYahoo!が組んでるのにコケたら笑い者だよね』っていろんな人から言われるので(笑)、そうならないように必死に頑張っています」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「期待値は高まっていたと思いますけど、スタートして反響はいかがですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「だいたい想定どおりですね。ローンチから10日ぐらいのところで、フェイスブックページが1万いいね!を超えました。これは他のメディアよりも早くてよかったなと思います。あとは小さなバグとかも散見されて、そのたびバタバタしていますね……」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「ローンチしてすぐに1万いいね!はすごいですよね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「あと、BuzzFeedはコンテンツの幅が広いんですが、メディア自体の印象が固まる前に初見の記事だけで媒体イメージを決められてしまう可能性があるんです。そこも悩みどころですね」

 

f:id:katsuse_m:20160325163132j:plain

 

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「新見さんは編集長としての悩みってありますか?」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「悩みは尽きないですが、一番はコンテンツの選定ですね。KAI-YOUはポップカルチャーを扱うメディアという大前提があるんですけど、『ポップ』の定義って、説明するのがとても難しくて、記事で見せていくしかないんです」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「どこからどこまでを『ポップ』とするか」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「最近だと、元プロ野球選手の清原さんが逮捕されたじゃないですか」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「覚せい剤で逮捕されましたね」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「あの事件自体は全然『ポップ』ではないんですが、事件の影響で『コロコロ兄貴(小学館)』で連載していたマンガ『かっとばせ!キヨハラくん』が掲載中止になったんです。そのことがネット上で話題になっていました」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「そこからポップカルチャーになるんですね」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「そうなんです。要は切り口次第なので、エロネタとかも見方によっては『ポップ』になります。AVの記事広告を受けたこともありますし」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「エロとか下ネタって、シェアは伸びないんですよね」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「そうなんですよね。でもPVは取れるという」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「ネットユーザーがどれだけムッツリなのかがよくわかりますよね」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「オモコロも、オナホールを作った記事とかはめちゃくちゃPV稼ぎますね」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「逆に、意識高い記事はすごくシェアされますけど、そこまでPVは伸びないんですよね(笑)」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「原宿さんは、編集長としての悩みとかありますか?」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「10年やってきたんですけど、KAI-YOUさんの『トップページに新着記事を置かない』って話や、BuzzFeed JapanさんのCMSの話とかを聞くと、ああ、うち、遅れてるのかな、変えなきゃなって思いますよね」 

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「オモコロは広告を入れたのも、5年目からですもんね。それまでは広告入れられないと思ってたし」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「え? それまでマネタイズどうしてたんですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain赤字垂れ流しですよ

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「えー! すごい」

 

「良い記事」ってなに?

f:id:katsuse_m:20160325163322j:plain 続いてのテーマは「良い記事」の定義について。メディアによって指標やターゲットはもちろん異なりますが、「良い記事」の定義もやはり異なるのでしょうか? 

 

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「『良い記事』と言ってもいろいろ捉え方があると思うのですが、皆さんは『良い記事』に対する指針をお持ちですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「良い記事……。やっぱり、『作っている人たちが楽しんでいるかどうか』っていうのがありますね。ライターのARuFaが書いた美女シャワーの記事とか、作っている時点でみんなゲラゲラ笑っていて、そういうものって、やっぱり世に出てもウケますから」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「新見さんはいかがですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「KAI-YOUの判断としては、『PVが伸びた記事は、ユーザーが求めている記事』ということで、良い記事と捉えています。もうひとつは、記事で紹介したモノ・ヒトが『初めて存在を知ったけど、この人すごいね!』って褒められたりしていると、認知させたっていう意味で良い記事になったのかなと思いますね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「閉じてるものを開くというか、新たな気付きを与えてあげられるのは、メディアの醍醐味ですよね。古田さんはいかがですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「BuzzFeed Japanは『良い記事』の定義を3つに分けています。①理念にマッチしているか、②定量的なデータを見て良い結果を得られているか、③定性的なデータを見て良い結果を得られているか、ですね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「それぞれどんな切り口で判断しているんですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「僕らは世の中に前向きなインパクトを与えたくて、メディアを運営しています。これが理念となるので、まずは記事がその理念からブレていないことが大切。次に、定量的な視点で見ると、どれだけ良い企画であっても読まれなければ意味がないので、どこまでシェアされたか、どこまで深く読んでくれたかをデータで見ています」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「やっぱりデータで分析できると強いですね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「最後に定性的な指標ですが、ツイッターやフェイスブックのコメントを見て、その記事で不快な思いをさせていないか、ポジティブに受け取ってもらえているかを確認するようにしています」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「すごいなー、弟子になりたい。一回2,000円で塾やってほしい」

f:id:katsuse_m:20160325142435p:plain「授業料2,000円ってひどい」

 

今年の戦略について

f:id:katsuse_m:20160325163503j:plain

最後のテーマは、各メディアの2016年の戦略について。個人的にメディアの成長はファンの数を増やすことだと思っているのですが、各メディアとも、そのためのアプローチの方法が異なっているのが面白かったです。

 

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「最後に、各メディアの今年の戦略を教えてもらおうと思います。KAI-YOUさんからお願いします」

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「『双方向性』ですね。KAI-YOUは去年、ユーザーが記事を投稿できる仕組みを作りました。投稿された記事がKAI-YOUとしてふさわしい内容であれば、こちらからコミュニケーションを取って校正して、記事化するんです。この仕組みによって、これまでのKAI-YOUでは作れなかったユニークな記事も生まれるようになりました」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「記事コンテンツで双方向ってすごいですね」 

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「あとは、ゆくゆくはKAI-YOUを『ポップ』のポータルメディアにしていきたいので、機能もどんどん拡充していく予定です」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「古田さんはいかがですか?」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「BuzzFeed Japanは始まってまだ2週間なので、今後も実験を続けていきます。春までには動画チームを作って、自分たちのオリジナルコンテンツを東京から世界に向けて発信していきたいですね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「動画チームいいですね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「あと、いま編集部の社員数が13人なんですが、年末までには30人くらいに増やしたい。人数が増えて、練度も上がれば、コンテンツ数を3~5倍にできると思います。この夏には選挙があるので政治記者を増やしていきたいですし、沖縄に駐在してくれる記者も探しています。沖縄から日本全国に現地情報を発信するメディアになりたい」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「たしかにそうですね」

f:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「あと、他国のBuzzFeedでは、LGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー)の当事者が自分たちのことを客観的に見たLGBTネタをずっと書いていて、これがすごく読まれているんです。アメリカでのLGBTについての世論は、ここ10年くらいでガラリと変わったんですけど、これは地道に取り組んできたメディアのライターたちの功績だと思います。日本でも、そういう取り組みをやっていきたいと考えています」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「なるほど。オモコロは何か戦略ありますか?」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain僕も動画チームを……作ろうかなと……

f:id:katsuse_m:20160325142602p:plain「柿次郎さん、怖い目してる(笑)」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「本当は更新数を増やしたいですね。今は平日に特集記事1本とマンガ1本しか更新していないので、たとえば土曜日にも更新するなど、本数を増やしていきたいです」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「記事本数増やすためには、編集部の体制を強化するか、あとは気合いでしょうねえ」

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plain「そうですね。あとは動画チームですね」

f:id:katsuse_m:20160325142436p:plain「すぐパクるなこいつ。長くなりましたが、以上で終わりにしたいと思います!」 

f:id:katsuse_m:20160325142921p:plainf:id:katsuse_m:20160325142602p:plainf:id:katsuse_m:20160325142519p:plain「ありがとうございました!」

 

終わりに

尖ったメディアが集まっただけあって、それぞれの個性が光る回答がたくさんありました。また、ローンチしたてのBuzzFeed Japan、3年目のKAI-YOU、10年目のオモコロと、キャリアの違いから悩みや取組みが異なることも面白かったです。

 

f:id:katsuse_m:20160325163721j:plain

オウンドメディアが乱立している今だからこそ「メディアの正しい在り方」を模索しがちですが、長く続いているメディアや尖ったメディアを見てみると、実はローンチ当初のコンセプトや独自性をそのまま強みにしているところが多い様子。「あのメディアの真似をすればイケるよね!」という安易な発想では、続けるのが難しい時代なのかもしれません。

ちなみに質疑応答では、「それぞれのメディアがあえてやっていないことを教えてほしい」という声があり、各メディア以下のように回答していました。

 

・BuzzFeed Japan:「批判のための批判をしない。人を叩くためのコンテンツは作らない」

・KAI-YOU:「時事性しかないものはやらない。ポップであるかどうかで判断する」

・オモコロ:「記事広告は商品自体に特徴がないものはやらない」

やらないことひとつを取っても、媒体の色は出ることがわかります。

 

既にメディアを担当している方、これからメディアを始める方は、自分たちが何を大切にすべきか、何を強みにすべきかを、今回のセッションを参考に考えてみても良いかもしれません。

 

 

※大ベンチャー展のイベントレポートをもっと読みたい方はこちら

 

ライター:カツセマサヒコ

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下北沢の編集プロダクション・プレスラボのライター/編集者。1986年東京生まれ。明治大学を卒業後、2009年より大手印刷会社の総務部にて勤務。趣味でブログを書いていたところをプレスラボに拾われ、2014年7月より現職。
趣味はtwitterでのふぁぼ集めとスマホの充電。Twitter→@katsuse_m

【前編】突然転勤を言い渡されたサラリーマンなんだけど、一年経った感想を書いてみる

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サラリーマン生活10年目。33歳になった僕は、勤める会社の東京本社で然して特筆すべき能力もない標準的な営業マンとして働いていた。

高校卒業後に上京して十数年。東京で過ごした年月が故郷で過ごした年月に迫ろうかというある年の冬、中途で入社して数年の会社から突然転勤を言い渡された。ちょうど一年前のことである…。


 

こんにちは、ズッキーニです。サラリーマンをする傍らWeb上でレポート系の記事を書いております。そんな僕もサラリーマンの宿命ともいえる転勤をすることになりました。

劇的に変わった生活に適応するのに必死であまり顧みることのなかった転勤生活について、ジモコロ編集長の柿次郎さんに許可を得て、改めて振り返ってみたくなり書いてみました。ちなみに前後編で超長いから超覚悟してください。

 

1.転勤は突然やってくる

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ほかの会社はどうなのか知らないが、僕の会社ではこうだ。直属の上司に会議室に呼び出され、上司と一対一、神妙な面持ちで伝えられたのは「転勤の決定」「時期」「場所」の3フレーズである。

マニュアルでもあるのか、そこに至るまでの上司の言葉は極めて簡潔だった。

その間に僕が発した言葉と言えば「はあ」とか「え!?」とか「あ、はい」程度で、とにかく急な話に呆然とするだけ。

人生でポカーンとすることはそうそう無いがこのときはポカーンとしたものだ。転勤しそうだとか、そういう気配も前兆も無かったからだ。そう、転勤の命令はいきなりくるのだ。

「嫌です」とか「待ってください」と言った言葉が出てこなかったのは、転勤先として伝えられた土地のことをまったく知らなすぎて、それが自分にとって良いことなのか悪いことなのかすぐに判断できなかったからだと思う。

転勤を打診されたとき、丁度仕事のトラブルなどを抱えている場合、目先の問題から逃げられる魔法を得たような気持ちになり転勤というリセットに安易に乗ってしまう人もいると聞く。

ともあれ僕の場合は「決まった」と言われたことで妙に諦めも早く、そもそも過去の転勤者の顛末を見るに拒否権があった様にも思えず、その瞬間から僕は抗うことより新しい生活のことを色々と想像する事のほうに頭を使っていた。

転勤があるのは承知の上だったが、それでも突然言い渡された転勤のお知らせは衝撃だ。「急なんで、今奥さんに電話していいよ」と仕事中に電話を許可されオロオロしながら電話する。普通に自分の言葉で電話するとうろたえそうだったので、やはり僕も「転勤の決定」「時期」「場所」を淡々と妻に伝えていた。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「転勤って決定事項として伝えられるんですか?」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「ルール上で正しいかどうかは別として、もう会社の命令としてほぼ否応なく」

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「イヤすぎ〜!」

 

2.マイホームを購入すると転勤を命じられる?

f:id:kakijiro:20160323113250j:plain

 

「車や家と言った大きな買い物をした、または結婚や子供の誕生など『簡単に辞めづらくなったとき』にこそ転勤を言い渡される!」

 

会社は違えど、サラリーマンの間でまことしやかに語られる都市伝説の一つだ。

実際はどうだろうか、数多いる転勤者の中で「車を買ったばかりなのに」とか「家を買ったばかりなのに」という悲惨なエピソードがあると笑い話として印象に残るからだと思うし、そもそも結婚、出産、車や家といった大きな買い物をする年齢が、入社してキャリアを積んで「じゃあそろそろアイツも転勤させよう」という時期と一致している部分も多分にあると思う。

つまり僕は冒頭の噂は完全に「気のせい」だと思っており、むしろ大きな会社になるとそこまで社員の現状を事細かに気を配ろうとはしない気がしている。なぜなら僕はもうすぐ子供が産まれようとしているときに転勤を言い渡され、なかなか大変な目に遭ったからである

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「人生で必要なカードを持ち始めると、見せしめで転勤が…?」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「よく聞くんですけど、あくまで都市伝説レベルの噂ですね」

 

3.会社の都合が優先にされがち

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例え本人には早めに告げられても、社内の諸事情に鑑みて正式に通知がなされるまでは「内々のこと」として秘密にされることがある。

その間は転勤に関わるアレコレについて一切取り掛かれない。家探しの為の交通費も、特別休暇が貰えるのも正式に周知されて以降だ。

僕のケースでは、1ヶ月前に伝えられた転勤話は転勤の2週間前になってようやく社内に通知され、それまで秘密扱い。僕が転勤することなど当然知らない取引先や他の社員と先の予定の話をするのが辛かった。

こうして完全な会社都合により、僅か2週間で新居探し、退去、入居を経て出社に漕ぎ着けなければならなくなったのだが、臨月の妻と二人で新幹線を乗り継ぎ、ホテルに泊まり、僅か2日間で、全く知らない街での家探しである。涙なくして語れない苦労の日々。今回割愛するのが口惜しいほどのドラマの連続である。

単身ではなく、家族連れの転勤であるから新居選びは重要だ。家そのものは勿論、周辺環境やその自治体がどうであるかなど、家族の今後を左右する重要なことなのだから。限られた時間でベストな選択は難しいにしても、失敗はできない訳だから必死だ。

結局「とにかくいいやつ!」という大雑把なオーダーで数件見て、半ばギャンブルであったが一番高くて良さそうな所に決めるしかなく、そういう面からも転勤は考えれば考えるほど働くものには負担の多いシステムである。

 

f:id:disco-ninja:20160306151309j:plain

 

前の家は住み始めて僅か4ヶ月で引っ越しに…

 

たまたま入社した会社の、然して重要でもない理由のために僕らの生活はガラリと変えられる。転勤によって色んなものがリセットされ、思いのほか多くのものを失わねばならない。

それはご近所付き合い、友達、馴染みの店、その街への愛着、思い出などなど、転勤先では再びイチから作り直さねばならないってことだ。

転勤して暫くの間、失ったもののことを思い出しながら、たかが会社ごときが一個人に対してこんなこと出来る権限を持っていることすら信じられない! などと憤ったものだが、転勤によって個人が被る苦労は相当なものがある。

僕は幸い妻の理解が得られたので大きな揉め事にならなかったが、家族の反発などがここに加わると、考えただけで気が狂いそうである。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「この前会ったら『刺激がなくてつまらない人間になってる』って元気なかったですよね。顔もなんか変わってたし」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「昔、バッタは過度なストレスを感じると体が変形すると本で読んだことがあるんですが、僕もこっちきて二重まぶたになりました」

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「(ストレスで変形…?)」

 

 

続きは後編をご覧ください!

 

イラスト:マキゾウ(【実録】フリーランスの「孤独」すぎる日常 

 

書いた人:zukkini

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四流情報サイト「ハイエナズクラブ」で会長を名乗っています。長所、特技、趣味等は一切無く、ただ性格はとても明るいです。ブログ「ぼくののうみそ・x・」、twitterアカウント→@bokunonoumiso

 

【後編】突然転勤を言い渡されたサラリーマンなんだけど、一年経った感想を書いてみる

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f:id:kakijiro:20160330224911p:plain

サラリーマン生活10年目。33歳になった僕は、勤める会社の東京本社で然して特筆すべき能力もない標準的な営業マンとして働いていた。

高校卒業後に上京して十数年。東京で過ごした年月が故郷で過ごした年月に迫ろうかというある年の冬、中途で入社して数年の会社から突然転勤を言い渡された。ちょうど一年前のことである…。


 

前編では、サラリーマンにとって転勤は入社当時から覚悟していたことであり、決定事項として伝えられるものであり、とにかく振り回される大変な文化だということを恨めしく書きました。

後編ではよりグジグジとした転勤のツラさを語っていきたいと思います。

 

4.サラリーマンはなぜ転勤させられるのか?

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そんな酷いことをされても会社を辞めないのは「転勤する事もあります」という事前アナウンスを承知で入社したからに他ならない。結局「嫌ならやめろ」の前にはノーコメントにならざるを得ないのが並みの能力しかない一般のサラリーマンの辛さ。

サラリーマンにとって転勤はつきものだとはいえ、しなくてもよい転勤だってあるはずだ。転勤が発生する理由は人、会社それぞれだ。職種としてはきっと営業が多いだろう。長い付き合いの中で取引先との癒着関係が構築されがちな特殊業界ではあえて長い付き合いにならぬよう、定期的に営業の配置転換が行われると聞いた。

その他に、よく言われるのが左遷(させん)。僕の会社でもミスを犯した人が海外の僻地への転勤を命じられたのも実際に見たことがあるので、これは懲罰、見せしめ的な意味で割と多いものと思っている。

 

課長島耕作 (1)  新装版

課長島耕作 (1)  新装版

 

 

また、僕の周りで一番多いのはトップが交代したときに自分のカラーを出すために大規模な配置転換を実施するケース。前任者の息がかかった人間などを排除するという、島耕作ばりの企業ドラマだって普通の会社にいれば当たり前の様に見かける光景だ。

取引先には配置転換が「社長の趣味」という信じられない会社もあり、かなりの頻度で担当者が変わっていた。信じられないがそんなノリで行われるケースもあるのだ。

必要な転勤には従うしかないが、誰かのワガママや気まぐれ、時には趣味や娯楽といったノリで、ある人の、そしてその家族の生活が一変させられているかもしれない。転勤の一つの真実である。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「島耕作大好きなんですけど、大企業ではマジのあるあるだったんですね…」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「これが一般のサラリーマンの宿命ですよ」

 

5.転勤はとにかくツラい

f:id:kakijiro:20160323113316j:plain

転勤は一体何がツラいのか? ここまで何となくモヤモヤしていた転勤に対する気持ちをまとめてみると転勤の嫌なのところは以下の3つだと考えられる。

 

●急であること

急だ。ただでさえ面倒な引越し。それを短期間でやらねばならなかったのはストレスである。スケジュールの最優先は会社がこちらに相談もなく勝手に決めた日程となると妙に腹が立つ。

 

●知らない街に行くこと

行きたくない。言うまでもなく、知り合いの誰もいない街に率先していきたがる人間などいない。「来年はみんなで○○しよう」といった色んな未来の計画は白紙になり、そして疎遠になる。泣けてくる。

 

●会社命令であること

嫌すぎる。結局のところ「会社の命令」というのがあらゆる点において納得して行動出来ない部分である。

 

「あの街に住みたい」「もっと静かなところにすみたい」「もっと広い家に住みたい」などなど、人が引越しをする場合には何かしらの「こうしたい」という積極的な理由があるはずだ。「決まったので行ってください」と言われて前向きな気持ちになれるだろうか。無理だ。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「めっちゃツラいってことが伝わってきました」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「振り返るとまたツラさ思い出してきた...」

 

f:id:disco-ninja:20160306151531j:plain

東京のど真ん中から全く正反対の田舎へ

 

6.逆に転勤のメリットは?

f:id:kakijiro:20160323113333j:plain

ここまで長々と転勤の悪口ばかり言ってみたが実際にはメリットもあるので、そこにもしっかり触れておきたい。会社ごとに差があり一概には言えないが、一般的に会社都合での転勤の場合、会社からはそれなりの見返りが得られるのも事実だ。

 

●お金が貰える

転勤のメリットの一番がこれだ。僕の会社の場合は「臨時手当」の様な一時金がウン十万貰。転勤によって発生する臨時出費をこれで賄ってくださいね、という位置づけだが、転居費用や新居契約時の費用諸々、家を探すときに発生した交通費やホテル代は全額会社負担のため、転勤するのに臨時でウン十万も費用が掛かることはない。つまりこれは事実上「無理言ってごめんね」みたいなものなのだ。

それに加えて、転勤すると家賃補助の額が数十パーセント増額される。定期昇給にも匹敵する事実上の手取り額UPで、金銭的な面から見ると転勤はメリットが多い。

 

●経験が得られる

左遷など、転勤理由がネガティブでなければ、シャケが長きに渡って回遊し戻ってくるのと同じく、サラリーマンは転勤を経て成長し、再び本社に戻って来ると信じられている。

色んな土地、色んな上司、色んな取引先との経験はずっと同じところに居続ける人よりも仕事上プラスになることも多いだろう。

プライベートでも同じことは言える。知り合いの全く居ない知らない街なんて転勤でもしなければ住むこともなく、長い人生においてプラスになる経験と考えることもできる。要は気持ちの持ちようだ。

 

●家族と過ごす時間が増える

転勤すると友達が居なくなり、それまで属していた色んなコミュニティから一気に引き離される。最初はそれが一番キツかった。単身者はもっと大変だろうが、僕の場合は幸い家族連れ。知り合いが家族しか居なくなる事で、自ずと家族の結束は強まり、一緒に過ごす時間が増えた。

転勤など無関係に子育てへの参加は必要だが、元々誘惑に弱い性格で趣味は飲み歩きの僕にとって「選択肢がほかにない」ことは重要で集中して家族に向き合うことができるようになった気がする。人生という長い目で見れば、子供の小さい時に長く一緒の時間を過ごせるのは良いことだろう。

  

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「お金があって、家族と過ごせて、会社員としてはプラスな面もしっかりあるんですね」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「やっぱりある程度アメが無いと転勤命令をきっかけに辞めちゃう人って結構いるんですよ」

 

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こういうのも書いたりして、完全に子ども中心の生活

 

f:id:kakijiro:20160323122922j:plain

ちなみに知人が東京のテレビに出演しても、遠くの出来事のように感じられる

 

7.それでも転勤はツラいよ

f:id:kakijiro:20160323113347j:plain

なんだかんだ言ってきたが、結局「転勤のツラさ」は気持ちの部分が大きいってことだ。

仕事はしつつ、Web上で記事を書く。それまで仕事とプライベート、そのバランスは半々だと思っていたのだが結局自分が一介のサラリーマンで、お仕事様には抗えないという当たり前の事実を、僕はこの転勤で突きつけられたのであった。

転勤の辛さは、この「会社都合で簡単に人生を翻弄されてしまう」という当たり前の事実に直面し、それを受け入れることではないかと思う。

僕には妻や子が居て、仕事もある。「贅沢言うな」と言われても反論する術がないのだが、今回はあえて急に転勤を突きつけられた一人のサラリーマン目線で、転勤というシステムについて自分の目線で考えてみた次第である。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「なるほど。東京で暮らしていた自分の姿を容易に想像できるからこそ、転勤先での生活にツラさを感じるのかもしれませんね」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「会社都合の命令を甘んじて受け入れるしかない自分。そして振り回される家族。心の中で折り合いをつけるのに1年かかりました。」

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「ズッキーニさんと同じ気持ちのサラリーマンが世の中のは沢山いるんでしょうね。生々しい体験談をありがとうございました」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「早く立派なシャケになって東京に戻りたいです!」

 

※そんなズッキーニの転勤先で書いた記事はこちら 

 

 

イラスト:マキゾウ(【実録】フリーランスの「孤独」すぎる日常  

書いた人:zukkini

f:id:kakijiro:20150825163800j:plain

四流情報サイト「ハイエナズクラブ」で会長を名乗っています。長所、特技、趣味等は一切無く、ただ性格はとても明るいです。ブログ「ぼくののうみそ・x・」、twitterアカウント→@bokunonoumiso

 

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