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孤独を愛する ふしぎな動物―「オランウータン」のすべてを研究者に聞いた

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こんにちは! ライターのギャラクシーです。

最近、オランウータンの新種が発見されたというニュースをご存知でしょうか。

 

これまで、「スマトラ・オランウータン」と、「ボルネオ・オランウータン」の2種だけが知られていたんですが、2017年、新たに第三の種類「タパヌリ・オランウータン」が確認されたんです。

 

で、ブームに乗っかるわけじゃないんですけど……

 

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僕、以前からオランウータンが大好きなんです!!!

 

オランウータン

・霊長類ヒト科オランウータン属
・スマトラ島とボルネオ島のみに生息
・体長|オス:約97cm、メス:約78cm
・体重|オス:約85~30kg、メス:約30~45kg
・寿命|50~60年

 

つぶらな瞳とオレンジ色の鮮やかな毛並み。そして何より彼らの、孤独を愛する生き方が大好きなんです。

そう、世界には人間を含めてたくさんの霊長類が生きていますが……昼に行動する霊長類の中で、群れずに生きていくのはオランウータンのみです。

そして現在、

近絶滅種(もっとも絶滅が危惧されるカテゴリー)指定されている

という一面もあります。

 

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どうです? オランウータンという生き物のことが気になってきました? 僕はとても気になっています。

 

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というわけで今回は、筑波にある国立科学博物館・筑波研究施設にやってきました。ここに、世界でも有名なオランウータンの研究者がいるらしいのです。

 

さあ! あの不思議な生き物のことを、たっぷり教えてもらいましょう!

 

▼もくじ

・孤独の理由は?

・樹上ゆえにアクロバティックすぎる交尾

・オランウータンはiPadを駆使できる

・どれくらい強いの?

・彼らが住む森はどんな場所?

・「最もヤバい」カテゴリーに入る絶滅危惧種

 

 

樹の上で孤独に過ごす「オランウータン」……どんな動物?

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 話を伺ったのは国立科学博物館 人類研究部・久世濃子さん。世界的に有名なオランウータンの研究者です。

※ちなみに今回はオランウータン全般についてお聞きしましたが、新種発見についてもブログでコメントしておられます。

 

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「よろしくお願いします! 今日はオランウータンってどういう生き物なのか、教えてもらうために来ました」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「興味をもってくれるのは、研究者として嬉しいことです。何でも聞いてください」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「僕がオランウータンに興味を持った理由は、『生涯の殆どを樹上で、孤独に暮らす』というところなんです。自分が人付き合いが苦手なタイプなので……。オランウータンも付き合いが苦手なんでしょうか?」              

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「孤独に暮らすのは確かですね。昼に行動する霊長類の中で、群れを作らず単独で生活するのはオランウータンだけです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「やっぱり珍しいんだ。一体なぜオランウータンだけ? 群れてたほうが外敵が現れた時に対抗しやすいと思うんですが」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「オランウータンは、生涯のほとんどを20~30mの高い樹の上で暮らすので、外敵の脅威はあまりないですね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「20~30mってビルの15階くらい!? めちゃめちゃ眺望の良いとこで生活してるな……」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「彼らが孤独に暮らすもっとも大きな原因は、エサと環境にあるんじゃないかなと考えています。オランウータンは主にフルーツを食べるんですが―」

 

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f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「フルーツには、実のなる時期というのがありますよね? 桃なら夏、柿なら秋という具合に。彼らの住むボルネオの森では、なんと数年に一度しか好物の果実がならないんです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ええ~! なんて生きにくい環境だ。あっそうか! ということは“エサのない時期”に群れで行動すると、少ない食料を奪い合ってケンカになっちゃう……?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「そういうことですね。1頭ずつ離れた場所で暮らしていれば、エサのない時期も自分一人のエサくらいは何とかなる、ということなんでしょう」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「何とか……なります? 数年に一度しかフルーツが実らないって、まあまあ致命的では?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「一応、イチジクは毎年実るんですよね。でも日本のと違ってマズいんで、あまり好きではないようです。“非常食”みたいな感じかな。イチジクすらなくなると、樹の皮を食べたりします」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ウゲ~、樹の皮なんて超マズそう」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain私も食べてみたんですが、全然おいしくなかったですね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「食べたの!?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「研究者ですから、オランウータンが食べるものは大体味見してます。樹の皮はとにかく苦いだけ。苦味に耐えて耐えて噛み続けていると、フッと味がなくなる瞬間がある」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「研究者って、そこまでしなきゃいけないの……?」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「エサの問題で群れを作らないということはわかりました。では、一年中エサが溢れている環境なら、オランウータンも群れを作る?

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain動物園などではグループで行動する場合も見られますね。だから彼らは、望んで孤独というわけではないのかもしれません」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そうだったのか……じゃあ動物園に行けば集団行動してるオランウータンが見られるんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「多くの頭数を飼育している動物園では見られるかもしれませんね。多摩動物公園は、オトナ雄2頭、オトナ雌4頭、若雌1頭、コドモ3頭いますのでおすすめですよ」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「会社の経費で行きます!!」

 

www.tokyo-zoo.net

 

 

孤独な動物が樹上で行うセックスとは?

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「野生のオランウータンは、樹上で孤独に暮らしてるんですよね? 交尾の相手はどうするんですか?」              

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「オスは年中交尾できますが、メスはヒトと同じで一ヶ月に一回 排卵があって、その2~3日前が発情期になります。その期間にオスを受け入れるんです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ちなみに子育てはどうするんでしょう?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「子育てはメスだけで6~9年くらいかけて行います。これは哺乳類で最長の子育て期間です。ちなみに、オスは交尾が終わった直後に、さっさとどこかに行ってしまいます」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「最低のクズ男じゃないですか」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「あと、オスは交尾の前に、メスに対して性器検分というのをします。妊娠すると大陰唇が腫れるので、それを見ると『いま交尾しても妊娠させられない』ということで、相手にしません」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「最低度のランクがまたひとつ上がった」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「まぁ、命をつなぐための知恵ですから……」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ちょっと聞きにくいことなんですが、オランウータンってその~、“アレ”は、大きいんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ん? ペニスの大きさですか? 4cmくらいじゃないでしょうか」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「4cmのペニスで、不安定な樹の上で交尾するって、まあまあ難しいパズルなのでは?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「そうですね。かなり不思議な体位でする必要がありますね。例えばこんな―」

 

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f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「お互い枝にブラ下がりながら、とかね。枝の形に合わせて色んな体位で行われます」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「アクロバティック過ぎる! 体位のバリエーションが豊富というのは珍しいのでは? ジャンプでやってたマンガ『ジャングルの王者ターちゃん』でも、チンパンジーのエテ吉はいつも後背位でした」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「まあ珍しい部類だと思います。チンパンジーやゴリラは後背位のみですからね。オランウータンはフェイス・トゥ・フェイスが多いかな」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「人間っぽい! 素朴な疑問なんですが、知能が高いなら、相手がいなくても“自分でする”ことを思いついたりしないんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「動物園だと、マスターベーションできる個体もいます。そういう個体なら、飼育員が手でして精液を採取できるんで、研究者にとっては助かるんですけどね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「マスターベーションすることを、“できる”って呼ぶんですね。やっぱり“自分でできる”って、『能力』なんだ。ちなみにメスもするんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「飼育下だと、メスもマスターベーションしますね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ほうほう、それはどういう感じで?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「どうって、手や木の枝に陰部をこすりつけるみたいな……あの~、オランウータンの性に興味持ちすぎでは?」

 

 

なんとなく頭が良いイメージがあるけど……?

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「オランウータンというと、“すごくかしこい”というイメージですが、実際のところはどうなんでしょう」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plainヒトの5歳の子供と、ほぼ同じくらいの知性と言われていますね」              

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「じゃあ道具は使えますか? そんなに知性が高いなら、ひょっとしてスマホでLINEしてたりして(笑)」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「動物園だとiPadを使う個体がいますよ」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain嘘ぉっ!? せいぜい木の枝でアリを食べるとか、そのレベルだと思ってたのに!」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plainお絵かきソフトを使ったり、ゲームをしたり、スカイプしたりといった使用が可能ですね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plainイラストレーター目指してる中学生じゃん」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「将来的にはスカイプでお見合い、なんてことにも使えるんじゃないかと」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「すごいな。iPadなんて、実家のオカンでも使えないのに……。カメラロールに入ってる写真では、どういうものに興味を示すんですか? やっぱりエサの画像?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「興味を示すのは圧倒的に“オランウータンの写真”ですね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「人間で言うとグラビアとかピンナップを見る、みたいなものなんでしょうね。ゲームもプレイするということですが、課金してガチャやったりするんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「そこまではさすがに……。でも今後はVR(バーチャルリアリティ)や、視線を感知する機械なんかを使って、さらにオランウータンの心を理解できるような実験が進んでいくと思います」

 

 

オランウータンは強いのか?

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「『ジョジョの奇妙な冒険』というマンガで、『オランウータンは人間の5倍の力があるから、腕なんか簡単に引っこ抜かれる』って言うセリフがあるんですが、本当ですか?」              

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「引っこ抜けるかどうかは実験してませんが、骨はいとも簡単に折られると思います。特に腕の力がすごくて……測ったことはないですけど、300kgとか言われていますね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「何十キロもの体重を樹の上で支えてるんだから、そりゃあものすごい力なんでしょうね」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「好物のドリアンも、手でバカッと割って食べるんです。ドリアンって木の高さが15m~30mあって、そこから落ちても割れないくらい硬いんですけどね。人間だとナタを使わないと絶対無理」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「格闘家でも勝てない?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「鍛えてる人だとちょっとわからないですけど……ただ、掴まれたら終わりなのは確かですね。骨を砕かれちゃうと思います」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「じゃあ、走って逃げるしかないってことですか」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ですね。私は追いかけられたことがあるんですが、平坦な道であれば人間のほうが速いです。ただ、草が多く生えてたり、藪だとオランウータンのほうが速い。もし追いかけられることがあったら、平坦な場所へ走ってください

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「今後の人生でオランウータンに追いかけられる機会があるとは思えませんが、覚えておきます」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「まあ、必要以上に怖れる必要はありません。オランウータンは比較的おとなしい動物ですから」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「凶暴ではないと」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ゴリラやチンパンジーの場合は、人が死ぬような事故や、大怪我を負った話もあります。でも野生下のオランウータンに殺されたとか、大怪我を負わされたなんて人は聞いたことがないですね」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「オランウータンって、子供の頃は丸っこくて、超かわいいじゃないですか。でも大人になると顔の周りにビラビラしたもの(上の写真参照)が生えてきますよね? あれ、何なんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「あれは“フランジ”といって、地域で一番強いオスがなります」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「へぇ~、全部のオランウータンがなるわけじゃないんですね! でも、自分が地域で一番だ!って、どう判断してるんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「オランウータンは群れない動物ですが、行動範囲の中で、別のオスに出会ってしまうことはあるんですね。そういった中で、自分の実力を知っていきまして、『俺って強い!』と思うと、徐々に顔の皮膚が張り出していくんです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「思っただけで顔面があんなに変わっちゃうの!? 変わらないほうがかわいいのに!」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「いえ、フランジは強さの象徴なので、モテます! その代わり、ケンカなどで負けると小さくなってしまいます」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「不思議すぎる……」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「不思議といえば、こんな話もあります。動物園で1頭だけ飼われていたオスが、まったくフランジにならなかったんですね。なのに、飼育員が変わった途端にフランジになったんです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「なんで!? 1頭だけで飼われてたから、他のオスとは比較できないハズですよね?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「以前の飼育員は体格が良くて高圧的なタイプだったらしいんですけど、次に来た飼育員は細身で優しいタイプだったんですね。だから『この飼育員より自分のほうが強い』と思われたんでしょうね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「オランウータンの飼育員を目指してる人は、筋トレしないとナメられるんで頑張ってください」

 

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ちなみに、何か話のタネになるかなと思って、10年近く大事にしてるオランウータンのぬいぐるみを持っていったんですが……

 

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「あ、『ナカジマコーポレーション』のぬいぐるみだ! 最近のバージョンより毛が硬いから、これは旧タイプですね~」と即答されました。

さすが研究者!

 

 

研究者って何するの?

 

久世さんがオランウータンの調査を行っているのは、インドネシア・マレーシア・ブルネイの3か国にまたがる島、ボルネオ島。人口約1750万人。

 

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日本の国土の約1.9倍の大きさであり、全体的に山が多い地形。広大な熱帯雨林は「世界最古の熱帯雨林」と考えられている。森は多いが、果実に乏しい。

 

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「久世さんが調査している森は、どういうところなんでしょうか」              

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ボルネオ島北部のダナムバレーという場所ですね。一年中、昼間は30度を超えるくらい暑くて、湿度は90%以上。鬱蒼と茂る熱帯雨林です」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「めちゃ不快そう」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「私やスタッフは、京都大学の出資で建てた小屋を拠点に、調査を行っています。一応、水や電気も利用できるので、不便ではないですね。お湯じゃないけどシャワーもありますよ」

 

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拠点となる小屋がこちら

 

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「でもとかいますよね?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「いますね。小屋は虫がガンガン入ってきます。朝起きたら床が虫だらけということも……」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「インディ・ジョーンズ2じゃん」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「お金を節約する為に、廊下に壁をつくらなかったので……。まあ、どっちみち、一日の大半は森の中で調査してますから、アブや蚊、ハチ、ヒルといった虫の被害は防ぎきれないです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そんな……」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ヒルなんかはチャックの隙間からでもチュル~っと侵入してきます。あと、ダニは命にかかわることもあるので、注意してください」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「虫以外に、危険な生き物はいないんですか? 熱帯のジャングルと聞くと、猛獣とかいそうですが」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plainウンピョウ(ネコ科の肉食動物)はいますが、遭遇頻度は低いんで、そこまで怖くはないかな。アシスタントはバッタリ出くわして驚いたって言ってましたけど」

 

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ウンピョウ、かわいいけど強そう

 

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「あとはヘビイノシシ……それにです」

 

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f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「象に追いかけられたことがありますが、何トンもある巨体が全力で走ってくると、メチャメチャ怖いですよ」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plainジャングルで一番恐ろしいのはダニと象、ということでいいですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「いえ、実は一番やっかいなのは植物です。森を歩いてて、いつのまにか“かぶれる植物”に触れているということが多くて。気づいたら腕がパンッパンに腫れてたりするんですよね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「ボルネオ島には一生行かないことにします」

 

 

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調査に向かう久世さんとスタッフ。調査中は1分毎に「何もしていない」など、対象のオランウータンの記録をつけていく

 

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ちなみに食事は、現地で雇ったアシスタントが、マレー料理を作ってくれるそうです。めちゃおいしそうですね!

 

 

絶滅の危険! 最もヤバいカテゴリーに

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そもそもオランウータンって、どういう地域に生息してるんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「生息数がどんどん減っていまして、現在はインドネシアとマレーシア(スマトラ島とボルネオ島)のみに生息しています」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そんな限られた場所にしか生息してないんですね。なのに、さらに数が減っている?」              

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain1900年に32万頭だったものが、2004年の調査では6万頭まで減少していました。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも、『近絶滅種(絶滅寸前)』にカテゴリーされています」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「レッドリストって、ウナギの時にも話題になりましたけど、色々種類がありすぎて、わかりにくいんですよね……。つまり、どれくらいヤバいんですか?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「簡単に言うと、絶滅が危惧されているカテゴリの中で、一番ヤバいです」

 

絶滅種危険度ランク

「絶滅」すでに地球上から姿を消した種
「野生絶滅」野生ではすでに絶滅(施設などでは生息)
「絶滅危惧」

  └近絶滅種←オランウータン
  絶滅危惧種←ウナギ
  └危急種
「準絶滅危惧」
「低懸念」

 

f:id:jimocoro:20171213145950p:plainめっちゃヤバい!!!! なんでこんなことに……?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「森が伐採されて、オランウータンが暮らせる環境が減ってるんです。かつて森だった場所は、アブラヤシが植えられた畑になってることが多いですね」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「あ、アブラヤシ? そんなワケのわからんもののためにオランウータンが……」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「いえ、アブラヤシって、誰もが“ワケがわかっている”ものですよ。パーム油というオイルが採れるんです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そう言われても、パーム油という単語にも馴染みがないですけど」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「パーム油は、『植物油脂』という名称で、みなさんが普段食べているものや、洗剤など、すごい数の製品に使われてたりするので、チェックしてみてください。一日生活すると、どこかで必ずパーム油を使った製品に出会っているハズです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「え、そんなに!?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「全世界の植物油……ゴマ油とかナタネ油とか、そういうのの中で、パーム油がダントツ1位で生産されてますから」

 

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f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「そのせいでオランウータンの住む森が脅かされていると」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「はい、でも現地の人にも生活があるわけで、オランウータンのために貧乏になれとは、絶対に言えません」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「じゃあ、どうしようもないってことじゃないですか!」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plainWWF(世界自然保護基金)などの環境保護団体が、『できるだけ自然を壊さない方法』でパーム油を生産している農園や企業を認定し、認証マークを発行しています。それが、対策といえば対策ですね」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「『できるだけ自然を壊さない方法』というのは、具体的にはどういうやり方なんでしょう?」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「現状では、森がアブラヤシの畑に分断され、オランウータンが閉じ込められていることがあるんですね。そこで畑と森の間や、川沿いなどに、廊下のように森を残してあげると―」

※参照|ボルネオ保全トラストジャパン・緑の回廊事業

www.bctj.jp

 

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「オランウータンはその廊下を通って、エサが残っている別の森に行き来できるわけです」

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「なるほど。そういった取り組みを行っている農園や企業には、認証マークが発行されると」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain『RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)というマークをつけて流通させています。RSPOマークのついた製品を選ぶことで、熱帯雨林の保護や、オランウータンの保護に繋がる仕組みですね」

 

www.wwf.or.jp

 

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「パーム油のことも、そんなマークがあることも、全然知らなかった……」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ですよね。学者の考え方かもしれませんが、知ることからすべてが始まります。愛すべき兄弟であるオランウータンのことを、まずは多くの人に知ってほしい。そして彼らのために何ができるのか、一緒に考えていけたらと思っています

f:id:jimocoro:20171213145950p:plain「わかりました。僕も微力ながら、できることを探してみたいと思います! 今日はありがとうございました!」

f:id:jimocoro:20171213150005p:plain「ありがとうございました」

 

 

まとめ

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孤独を愛するふしぎな動物、オランウータン。彼らは今まさに、滅びようとする危機に直面しているようです。

 

新種発見についても、久世さんはこのようにコメントしています。

生息数は800頭未満とみられます。オランウータンは繁殖のスピードが遅く、保全対策が必要でしょう。

 

我々が今できることって、何なんでしょうか?

とりあえず僕は、オランウータンについて、もっとよく勉強してみます。

 

オランウータンってどんな『ヒト』? (あさがく選書5)

オランウータンってどんな『ヒト』? (あさがく選書5)

  • 作者:久世濃子(くぜ・のうこ),木月すみよし(きづき・すみよし)
  • 出版社/メーカー:朝日学生新聞社
  • 発売日: 2013/12/25
  • メディア:単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

f:id:jimocoro:20171213171753j:plain

日本オランウータンリサーチセンター公式HP

 

久世さんは、最近はホームページを作って研究を紹介したり、クラウドファンディングで調査費を集めたりもしているそう。心の底から応援したいですね!

 

 

 

(おわり)

 

▼ギャラクシーの他の記事を読む

 

ライター:ギャラクシー

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy


「辞めやすくなる商店街」で地方は変わる

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こんにちは、ライターの友光だんごです。取材が夏だったため季節感皆無の服装で失礼します。

さて、皆さんの地元に「商店街」はありますか?

 

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こんな元気な商店街だと、ぶらぶら歩いて店をひやかすだけで楽しいですが…

 

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シャッターが下りた店ばかりの「なんだか元気ないな…」という商店街、多くないですか。こうした「シャッター商店街」は日本全国で増えているんです。

 

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Google検索の予測変換でも「活性化」「衰退」が上位にくるほど。

 

なんでそんなに元気がないのか…ざっくりまとめると次のようになります。

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『商店街はいま必要なのか』(満薗勇・著、講談社現代新書刊)によれば、日本の商店街が繁栄したのは1970年代にかけて。その後、1980年代には衰退傾向に入り、シャッター商店街が増え続けている、といいます。

 

実際、皆さんも商店街のお店より、スーパーやコンビニで買い物をすることの方が多いのではないでしょうか。

 

時代の変化といえばそれまでですが、肉屋でコロッケを買い食いしたり、八百屋のおじさんに「大根とネギで300万円ね!」みたいに言われたり…商店街のよさってあると思うんです。

果たして、このままシャッター商店街ばかりになってしまうんでしょうか?

 
 

シャッター商店街を再生させた「90万円の男」

しかし、見事「再生」に成功し、全国から熱い注目を集めている商店街もあります。

それが宮崎県の南、日南市にある「油津商店街」です。

 

 

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この油津商店街、以前はご覧の通り。

 

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4軒に1軒は空き店舗という、まさにシャッター商店街でした。

アーケードの下で地元の子どもたちが野球をできるくらい寂れてしまっていたそうなんです。

 

しかし、それが今では…

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すごい賑わってるー!!!

 

復活を生んだキーマンが、こちらの木藤亮太(きとう・りょうた)さん。

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元々は福岡で環境設計やランドスケープデザイン、まちづくりなどに関わっていた木藤さん。2013年に日南市へやって来て以来、次のような実績を築いています。

 

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その復活ぶりは数字の面にも現れ、地方創生大臣が訪問したり、経済産業大臣から「はばたく商店街30選」に選ばれたりと油津商店街は全国から注目を集める存在になっています。

 

ちなみに木藤さんはメディアで「90万円のひと」として取り上げられていたそうなのですが、どういう意味でしょう…?

 

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「商店街を再生させるため、日南市が全国から人材を公募したんです。その条件が『月額90万円の委託料』で」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「その公募で採用されたのが木藤さんだと。月給90万円ということは年収1000万円超え⁈ 外車買えるじゃないですか!」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「いや、諸々の経費が含まれてるので、懐に入るのはもっと少ないですよ」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「安心しました。木藤さんがやってきた時、油津商店街はシャッター商店街だったんですよね」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「はい。営業している店舗が全盛期の半分以下になっていました

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「かなり寂しい状況だったんですね。ただ、シャッターだらけの眺めって、終末SF好きとしてはちょっとワクワクもしちゃうんです。人のいなくなった世界というか……!」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「急に興奮するのやめてくださいね。あのね、シャッターが閉まってても、意外と人が住んでる場合があるんですよ

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「まさか空き家に誰かが忍び込んで勝手に…終末の世界…!」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「SFからいったん離れてください。商店街のお店は店舗と住宅を兼ねているところが多いですから。店は営業していなくても店主一家が住み続けている場合があって」

 

f:id:tmmt1989:20171129002927j:plain

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「あ、なるほど。でも、店をやらないなら引っ越したりしないんですか?」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「持ち家の場合が多いですし、店主は高齢の方が多いですから。そのまま住み続けるんでしょうね」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「それだと新しい人には貸さないですね。お子さんが継いだりは…?」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plainよく聞くのは子どもは都会で就職しているパターンですね。しかも、頑張っていい大学に行かせたので、医者とかになっていて」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「子どもには勉強させて偉くなってほしい!と都会の大学へ行かせた結果、家業の後継ぎがいなくなる、か…」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「あとは、油津商店街では、家主が別の場所に住んでいるけれど『実家だから』と手放すことに消極的なケースも多くて」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「その気持ちも理解できます…難しいな〜全国でシャッター商店街が増えていく理由がわかってきました」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「気持ちの問題も絡むので、なかなか難しいですよね」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「では、木藤さんはどうやって油津商店街をどうやって再生させたんでしょうか?」

 

 

「1週間だけ鍵を借りる」テクニック

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油津商店街の入り口にあるカフェ「アブラツコーヒー」。長く閉店していた喫茶店をリノベーションし、地元の人たちの憩いの場として復活させた

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「僕の大きなミッションは、シャッターの下りた空き店舗に新しい店を誘致すること。そのためには家主さんとの交渉が必要です」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「でも、家主さんは人に貸すことに消極的な人が多いわけですよね」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「そうです。そこで上手くいったやり方の一つは、『夏休みのお化け屋敷として空き店舗を使わせてもらう』ことでした」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「??『幽霊が出るから早く出て行ったほうがいい』と家主さんを説得する…?」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「違います。地元の高校生が、毎年の夏休みのイベントでお化け屋敷を企画してるんです。『その会場で使うから』と数日間だけ鍵を借りて、シャッターを開けるんですよ。これって、一時的にでも使ってる状態を見せるのが目的なんです

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「なるほど、何年もシャッターが下りたままだった場所が…」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「賑わう状態が生まれる。そしたら昔見てた風景が蘇るじゃないですか。『ああ、そういえばこんなに人が来てたな』って思うと、貸すことに前向きになれると思うんですよね。実際、過去4回、お化け屋敷として使った物件はすべて新しい店に変わってます」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「すごい!数日だけ、というのは心理的なハードルを下げる効果もありますよね。異性を口説くテクニックみたいだ…!」

 

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f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain『辞めやすくなる商店街』というのはありかな、と思うんです。これまでは店が廃業してシャッターが閉まると、閉まったままだったんですよね」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「店主の皆さんは、未来への前向きなビジョンを持てなくなってた…」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「はい。だけど、今年に入って廃業された布団屋さんがあるんですが、そこにIT企業のオフィスがはいることになったんです。高齢で後継ぎのいないお店も多くあり、こういった事例ができれば、いつまで続けようかなってことが考えやすくなりますよね」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「日本人って周りに合わせがちですからね。そうやって1軒ずつ新しい店を開拓していったと」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「まあ、菓子折りを持って1軒ずつまわって、会合に顔を出してお酒を飲んで、みたいな泥臭いことがほとんどですよ。結局は人対人のコミュニケーションですから」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「九州の人ってお酒が強そうなイメージですが」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「はい。僕が公募で選ばれた決め手は『焼酎の注ぎ方』だと言われました

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「地元の人をオトしたテクニック、後で教えてください…!」

 

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油津のご当地アイドルとして誕生した「ボニートボニート」。写真の会場はスタジオや子供会、ライブ会場などとしても利用できる交流スペース「油津yotten」

 

 

商売の場所ではなく、新たな価値を生む

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「正直なところ、僕がしたのは『商売の場所としての再生』というより『新しい価値観をつくる再生』だと思うんですね」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「商店街が商売の場所ではなくなっている、ということですか?」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「少し商店街の歴史をお話しますね。油津には港があって、江戸時代はブランド杉の積み出しで、昭和に入るとマグロ漁などで栄えていたんです。やがて油津駅ができて、港と駅の間に商店街が生まれました

 

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昭和40年ごろの油津商店街

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「人通りの多い場所にということですね」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「商店街ってそういうもので。買ってくれる人がいるから『俺は野菜売るわ』『じゃあ俺は魚売ろう』なんて商売をする人が集まる。そこに店舗が並んでアーケードが作られて商店街になると」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「なるほど」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「ただし、人の流れは時代とともに変わるわけです。まず魚が取れなくなって港が寂れる。車社会になって、駅を使う人も少なくなる。すると人通りが減りますから、商店街での商売も苦しくなると」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「そうなると、昔と同じだけのお客さんを呼ぶのは難しいですね」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「はい、だから『新しい価値』=『つながり』や『チャレンジ』を生む再生を目指したんです。例えば住人が集まれる新しい公民館や交流スペースをつくったり、起業家の出店を支援したり」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「たしかに、油津商店街には保育園やIT企業のオフィスがあるのが面白いですよね。いい意味で商店街らしくないというか」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「町の空気感を前向きに変えることは意識しました。あとは『覚悟』ですね。私が市と結んだ契約には『4年で20店舗を誘致』と明記されていて。具体的な目標の数字を入れるって、行政側の覚悟の現れだと思うんです

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「移住して、地域のなかから活性化させるっていうのも本気度を感じます」

 

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商店街の一角にできた保育園。誘致には子どものいる人が商店街で働きやすくなれば、という狙いもあったそう

 

 

今後、日本の商店街はどうなっていくの?

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f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「油津は一つの成功例だと思うんですが、日本の商店街って今後どうなっていくんでしょうか」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「新陳代謝は促進されるでしょうね。空き店舗の状態にすると税金が高くなる、みたいな法律ができるって話も聞きますし」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「先行き不安だからとりあえず手放さずにおこう、だとじわじわ衰退していくだけですからね…」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「ただ、意外と表には見えない商売で成り立ってるお店もあるんです」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「どういうことですか?」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「例えば布団屋さんが近くの学校の合宿のたびに布団を貸し出してたり、傘屋さんが夏に農家向けに麦わら帽子を売ってたり。儲かってるように見えなくても、地域に根付いた商売があるんです」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「知らなかったです…」

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「だから必ずしも『人通りが全然ない=商売が成り立ってない』ではなくて。何を持って賑わってるかの定義はすごく難しいんです。それに、人の流れがまた変わる場合もある。油津には広島カープのキャンプ地があって、ここ数年のカープ人気ですごく観光客が増えました」

 

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「油津yotten」の中には広島カープの資料館も

 

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商店街からキャンプ地の「天福球場」へ通じる道

f:id:tmmt1989:20171202184342p:plain「油津港にクルーズ船が寄港するようになって、海外からの観光客も増えました。ただ、そういう外からくる追い風は宝くじみたいなものですから、やっぱり地域の中から変えていかないと。我々としては、ここで『次の世代に渡す』いい成功例を作って、それを伝えていきたいです」

f:id:tmmt1989:20171202222347p:plain「『次に渡さないとかっこ悪い』くらいの空気が生まれればいいですね。ありがとうございました!」

 

 

おわりに

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取材を終えて商店街を歩いていると、道端でゲームに興じる少年たちの姿がありました。こんなのどかな光景が見られるのも、油津商店街がよみがえった証なのでしょう。

 

「次の世代に渡す難しさ」は、今の日本がさまざまな場所で直面している課題のように思います。

地域活性に関する著書も多いまちビジネス事業家の木下斉さんは、「東洋経済オンライン」の連載で次のように指摘しています。

 

国土交通省実施の「平成 26 年空家実態調査」では、空き家にしておく理由の3分の1以上を占める37.7%の人が「特に困っていないから」と回答しています(調査結果の概要の14ページ、複数回答)。

(中略)他人に貸したり、売ったりしなければ、家計や事業が破綻するような切羽詰まった状況にあれば、必死になって営業してどうにか借り手や買い手を探します。つまり、そこまでに至らない空き家が問題の中心になっているのです。

「シャッター商店街」は本当に困っているのか(http://toyokeizai.net/articles/-/139294?page=2)より引用

 

 そして、この空き家問題と同じ構造なのがシャッター商店街の問題である、と木下さんはいいます。

「困っていない」家主たちにより、シャッターが閉まりっぱなしの通りが生まれる。しかし、そのままでは地域は先細っていく一方です。

 

そんな時に、地域が変わるための一つの答えが「辞めやすくなる商店街」なのではないでしょうか。だからこそ、油津商店街の事例はこれからの地方の希望になりうる。そんなことを感じた取材でした。

 

 

この記事でみなさんの商店街観が少しでも変われば幸いです。それではまたー!

 

 

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。インタビューと犬とビールが好きです。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

コミケ前は徹夜⁈ 同人誌の印刷所が語る「これだけは守ってほしい」3つの注意点

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こんにちは。ライターの斎藤充博です。

 

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先日、生まれて初めての同人誌を作って、小さな即売会に参加しました。

 

f:id:fushigishiatsu:20171213134324j:plain66ページの同人誌を400部刷ってみたところ、86,000円くらいかかりました(オフセット印刷・一部カラーあり・早期入稿割引付き)

本がこのくらいの値段で作れるなんて、ぜんぜん知らなくて。超楽しい経験でした。

 

f:id:fushigishiatsu:20171213091556j:plain今回印刷をお願いしたのは、東京都の文京区にある「スターブックス」という印刷所です。

 

同人誌製作についてよく知っている友達によると、スターブックスは丁寧で評判が良い会社だとか。僕が作った入稿データはメチャクチャだったのですが、確かに親切に事細かく教えてくれました。

 

なかでも驚いたのは「目次に書いてあるページ数がバラバラですよ!」と指摘してくれたこと。そんなに中身を細かく見てくれているんだ! もっと一発勝負かと思っていました。

 

僕の同人誌を印刷してくれたのは一体どんな人たちなんだろう……?

 

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というわけで、僕の同人誌を作ってくれたスターブックスに来ています! 今日は12月8日。冬コミの準備で忙しくなるギリギリのタイミングです。

 

*冬コミ……日本で行われる世界最大規模の同人誌即売会をコミックマーケットという。年に2回開かれており、冬にやるのが通称「冬コミ」

 

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お話をうかがうのはスターブックス部長の山内文吾さん(左)と、オペレーターの佐藤莉飛斗さん(右)。

 

そもそも印刷業界って今どんな感じなの?

・印刷所的に作りやすい同人誌ってある?

・今からでも冬コミに間に合う原稿作成時の注意点ってある?

・どんな同人作家が「売れる」かってわかります?

・印刷所が作家に一番「伝えたいこと」とは……?

 

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ものすごく「実家っぽい」スペースでいろいろ聞いてみました!

 

 

印刷業界は沈んでいるけれども同人は元気

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「出版不況っていうじゃないですか。すると印刷業界も大変なんじゃないのかなって想像しているんですが、どうでしょうか」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「今、電子媒体が増えていますよね。すると当然、その分の印刷の仕事は少なくなってきます。印刷業界全体としては仕事が少なくなってはいるんです」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「なるほど……。やっぱり厳しいんですね」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「ただ、同人誌の市場は広がっている印象です。同人イベントも毎週何かしら必ずありますし」

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「今の時代に、一般書籍で1万部売るのって相当大変じゃないですか。でも同人誌だと1万部の単位はよく出ますね。重版を何度もする方も多いですよ」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「商業出版が沈んでいて、逆に同人が元気というのは面白いです」

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「やっぱり商業出版と同人は異文化なのかなって思います。世界が違うというか」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「単純に部数だけの話だけでもないんです。同人誌には作家さんの『紙の形に残したい』って思いがありますよね。だから、同人誌印刷は『紙の価値』が最後まで残る分野なのかな、と思っています。出版社だったら、利益が出れば紙である必要はない。電子でもなんでもいいんです。そうすると我々の出番はなくなってしまう」

 

 

同人誌の作り方

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f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「そもそも一般の書籍と同人誌って作り方は違うんですか?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「一般の書籍は総ページ数が『8の倍数』になっていることが多いんですよ。同人誌はそんなことはないと思いますが」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「確かに! 普通の本には128ページとか256ページの本が多い気がします」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「印刷所は、1枚の紙に8ページとか16ページとか『8の倍数』のページを一気に刷るんですよ」

 

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f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「そこから紙をどんどん折って、束ねて本にするんです。これを私たちは『折り丁合(おりちょうあい)』と呼んでいます」

 

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「折り丁合」で作られた本 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「一般の書籍は紙を無駄なく計画的に使うので、ちょうど8の倍数になるんですね」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「僕は同人誌を作るときにページ数を『8の倍数にしよう』なんて思わなかった……」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「そうですよね。同人誌は作家さんが書きたい分だけページを作るので、紙を折らないで、1枚づつ紙を入れて作るんです。私たちは『ペラ丁合』と呼んでいます」 

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「同人誌でも8の倍数のページ数で作成した方が、印刷所の人はラクなんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「うちは『折り丁合』はやらずに全部『ペラ丁合』なんです。ただ、32ページ単位で発注いただけると多少ラクですね。一度に印刷できるので」

 

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f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「なるほど……。基本的には他の人の本も一緒に印刷するんですね。32ページ単位だと、全部自分の印刷になる、と」 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「でもホント、好きなページ数で作っていただけるのが一番ですよ! 同人誌ですからね」

 

 

印刷所は原稿はどの程度チェックしているのか

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「今回スターブックスさんに印刷をお願いしたら『目次に書いてあるページ数が間違っていますよ』って連絡をいただいて、ビックリしました。印刷所がそんなに細かいところを見てくれるのか、と」

 

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f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「原稿をどこまでチェックするかは、印刷所によってかなり違いますね。確認用のPDFファイルを渡して、それで終わりの印刷所もあります。うちもあくまでも完全データでのご入稿が前提ではありますが、スタッフが気づける範囲で不備のご連絡をさせて頂いています」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「僕は初めてだからわからなかったのですが、スターブックスさんってやっぱり丁寧ですよね……?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「丁寧だという評価を頂いていると思います。ただ、内容のチェックに責任を持つのは難しいですね。あくまでもプラスアルファのサービスと考えていただければ。年間1万以上は案件を受けているので……。」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「すご! そんなにあるんですね」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「さらに、本の中身をしっかり見られるのが作家さんにとって良いのか悪いのか、という問題もあります。 きっとあまり見られたくない方もいるはずなんですよ」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「ああ~~~。それは確かに。同人誌って、自分の欲望をストーリーにしたり、しますもんね……」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「誤字を見つけた場合、指摘するのがいいのか。それともあえて言わない方が良いのか……。とても悩むところです」

 

印刷所がこんなにデリカシーあるなんて、思ってもいませんでした。

それにしても「見られた方がいいのか」「見られない方が良いのか」は難しい問題……。僕は見てもらった方がありがたいですが。

 

 

全面ベタはつらい……

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「この記事が公開される頃は、同人作家は冬コミの締め切りに追われているころだと思います。今からでも間に合う原稿作りのチェック事項とかってありますかね?」

 

f:id:fushigishiatsu:20171212154114j:plain

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「なんとなく雰囲気で原稿を1ページ丸々『ベタ』(真っ黒)にされると大変です。意図があるなら良いのですが……」 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「ああ~~。それな。それはあるね」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「(二人の間ですごい共感が生まれた……)どういうことですか?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「例えば、マンガを30ページ描こうとしたけれど間に合わなくて、余ったページを全部ベタにしてしまう方が時々いらっしゃるんです」

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「ところが、印刷所からすると全面ベタは本当にむずかしくて。印刷機も汚れるし、時間もかかるし、その部分だけ手作業にしなくてはいけないこともあるんです。何よりお客様の本に汚れが出てしまう可能性があります

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plainそんなリスクがあるんですか。きっと深く考えずに、イラストソフトを使ってワンクリックで塗っているだけだと思いますが……」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「何も描いていない、一面の真っ黒は本当にむずかしいです。なにも描かないなら真っ白にしていただくか、そうでなかったら黒い紙を入れていただくのが良いですね」

 

ちなみにこの話は「オフセット印刷」を使った場合で、「オンデマンド印刷」だとそのようなことはないそうです。

オフセット印刷の時は真っ黒に注意だ。

 

 

締め切りは守って欲しい

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f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「その他にも、原稿の作り方でいえば細かいことがいろいろあるんですが……。一番言いたいのは締め切りを守っていただきたい……ということです」

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「締め切りさえ守ってくだされば、原稿に不備があっても対応できますから」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「ちょっと待ってください。締め切りってみんな守らないものなのですか?

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「基本的には皆さんに守っていただいてはいるんですが、そうも行かない場合もありますよね。その時に印刷所としては『受けるか』『断るか』を決断することになるんです」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「ああ…なるほど」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「例えば、部分的には入稿は済んでいて、印刷もしている。そんな状態で断ると、うちが部分的に印刷した物を他社さんに送って、残りを製本してもらう、なんてことにもなってしまうんです。それが忍びなくてお受けすることもありますね。しかし、それが積み重なって、貯まっていくと……

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「修羅場だ」

 

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f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain……徹夜にはなりますね(ボソッ)」 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「正直、コミケ前はスタッフをなかなか家に帰してあげられない……」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「みんな締め切り守りましょう。締め切り大事だ! 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「ほんと、よろしくお願いします」

 

 

仕事場はまるっきり民家

ここで、スターブックスの仕事場を実際に見せてもらうことになりました。

 

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さっき話を聞いていた応接スペースのみならず、スターブックスの外観はまるっきり「家」なんですが……。

 

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中はもっと家でした!

 

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3階にあるのは事務所。奥の方に床の間が見えますね。

 

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「社員の方は同人活動をしている人が多いんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「なかには同人活動している者もいるらしいんですが、意識して採用はしていませんね」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「同人作家さんが多いのかと勝手に思っていました……」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plainむしろうちで働いていたらコミケに出られません。だから面接時に『コミケは参加できないけど大丈夫ですか?』って聞いています」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「確かに! 一番忙しいときですもんね……」

 

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2階は印刷機がたくさん置いてあります。

 

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こんな感じで次々と本文が印刷されていきます。

 

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僕の背よりも高い印刷機もある。お値段を聞いたら7,000万円だとか。

 

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紙の在庫。スターブックスは使える紙の種類が豊富なことで有名なんだそう(同人誌仲間からの情報)。

 

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1階は製本のスペース。

 

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これがオフセット印刷の製本機。2階で印刷した本文と表紙を入れると……この中で糊付けされて本の形にになって出てきます。

 

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こちらは切断機。本の余分な箇所を切り取ります。

 

しかし本当に同人誌って手作りですね。自分の作成した同人誌もこんな風に作られていたかと思うと、頭が上がらないです。

 

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こういう注意書きをみると「断裁を間違えて作り直すこともあるんだろうな」と思ってしまう……。

 

 

イベント直前って大変ですか?

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f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「大型イベントの前ってどのくらいギリギリまで作業しているものなのでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「まずですね。同人対応している印刷所は、発送も自社でやるのが大前提です。イベント会場のサークルさんの足元までキチンと届けるまでが仕事。そこでコミケを例に出すと、搬入に使えるのは、前日の17時から19時の2時間だけなんです」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「短い!」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「毎回サークルが3万以上あって、うちが届けるのが1000弱くらい。これをこなすにはかなりのノウハウがいります。この点は印刷所が同人誌に対応するときの参入障壁の一つになっていると思います」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「2時間で1000サークルに配るのは、確かに普通じゃできない……」

 

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事務所に貼ってあったポスター。根性入れて同人誌を届けてくれるわけだ 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「話を戻して、質問に答えますね。19時がビッグサイトへの搬入のリミットで、17時まで印刷していることもあります。(※文京区のスターブックスからビックサイトは車で40分くらい)うちでは10台トラックを準備します。9台は先に行ってもらって、1台がギリギリまで待機して受け取るいう……」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「想像をはるかに超えたギリギリ……。トイレ行ってる暇もないなこりゃ」 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain胃が痛くなりますね

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「でもそれさえ乗り切れば! パーッと打ち上げに行けますよね?」

 

f:id:fushigishiatsu:20171213092013j:plainf:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「まだ終わっていないです。イベントの期間中にサークルさんにあいさつまわりにいきます。これをやる印刷所も珍しいかもしれませんが、印刷の状態などに関して生の声が聞けるので」 

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「そんなことするんですね……」 

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「もっとも『あいさつに来られるのが困る』って方もいらっしゃいます。女性向けの本を描いているのに、私みたいなおじさんが現れちゃうと、ねえ……。でも、大体の方には喜んでもらえているように思います」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「そりゃ喜ばれるとは思いますが……。あいさつ回りが終わったら、仕事の山は終了ですか?」 

f:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「実はコミケの1週間後くらいの時期に、『コミックシティ』というコミケと同程度の規模のイベントが2日間あるんです。だから、コミケが終わってもまだ落ち着かないですね」 

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「修羅場が全然終わらない! どうなっているんだ!」

 

 

売れっ子同人作家の特徴は

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「たくさんの同人誌を見ていて『こういう作家が売れるな』っていうのはありますか?」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「ちょっと偉そうな言い方になっちゃいますが……。出るイベントに本を毎回用意する方は人気が伸びるように思います。続けている方は結果が出やすいんじゃないでしょうか」

 

f:id:fushigishiatsu:20171213092057j:plainf:id:tmmt1989:20171213195935p:plain「最後のページに『今日はこのへんで……』みたいな感じに完結しないで終わってしまったり……。新刊が間に合わずに落としてしまう方もいますからね」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「読者さんからしたらガッカリしてしまうとは思います」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「ある意味『ちゃんとやる』ってことですね。でも継続するのはむずかしそう……。同人誌だしなあ」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「さっき『締め切りは守って欲しい』と言ったこととは矛盾するんですが……。一生懸命作っている作品が『間に合わないかもしれない』と思っても、諦めないで相談して欲しいですね

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「おお! いいんですか。そんなこと言って」

f:id:tmmt1989:20171213195917p:plain「同人誌って、人から頼まれて出す物じゃない。自分のモチベーションで出す物ですよね。そういう熱意って私の人生にないんですよ。そこは作家さんたちをリスペクトしています」

f:id:tmmt1989:20171213195900p:plain「すごい。僕は印刷所さんをリスペクトです!!!!」

 

 

まとめ

というわけで、同人誌対応している印刷所はものすごく気合いが入っていました。自分たちが遊びで作った同人誌が、こんな覚悟の上で印刷されていたとは……。

 

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こんな風にスターブックスが睡眠時間を削って一生懸命印刷してくれた僕の同人誌ですが、現在そこそこ売れ残っています。これどうすりゃいいんだよ。

お願いだから、誰か買ってくれ!!!!!

 

 

おまけ

今日聞いたメッセージをA4の紙に印刷できるように、PDFファイルにまとめてみました。部屋に貼って自分をはげましてみよう。

 

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PDFのダウンロードはこちら

それでは同人作家の皆さん、冬コミがんばって下さい~~~!!!

 

 

取材協力:株式会社明光社スターブックス

ツイッター:@e_STARBOOKS

ホームページ:http://www.starbooks.jp/

 

 

書いた人:斎藤充博

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1982年栃木県生まれ。指圧師をやっています。インターネットで記事を書くことをどうしてもやめられない。
ツイッター:@3216
ホームページ:下北沢ふしぎ指圧

「仕事も育児も頑張りたい」働くお母さんによる、働くお母さんのためのカフェ経営

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11月3日、大阪の「四天王寺前夕陽ケ丘駅」という駅の近く、少し変わったカフェがオープンした。

 

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その名も「Laugh Rough Laugh(ラフラフラフ)」。

www.facebook.com

www.instagram.com

 

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看板にあるように、カフェのスタッフが全員「保育士、幼稚園の先生、または育児経験者」なのだ。

 

このカフェを作ったのは、僕の知り合い……というか、僕が勤める株式会社バーグハンバーグバーグにとって重要な人だ。

 

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高橋美幸さん。大阪を中心に活動しているフリーランスのWEBデザイナーであり、1児の母だ。

正直、高橋さんはWEBデザイナーとしてかなり忙しい。たぶんデザイナー1本でもじゅうぶんな稼ぎがある。でもカフェを作った。高橋さんをそうさせたのは何なんだろう。

 

そこには、「働くことと育児」という生きていく上で多くの人がぶつかる問題があった。これは最近1児の父となった僕にとっても、自分ごととなるテーマだった。

 

 

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山口むつおどうもお久しぶりです。高橋さんとはもう7年くらいの付き合いになりますけど、お会いしたのはその間に1度だけなんですよね

高橋さんお久しぶりです。そうですね、そもそも出会いが、ねぇ

山口むつおねぇ……

f:id:e_yamaguchi:20171219110443p:plainなんかあったんですか?(撮影に同行していた)

山口むつおまだギャラクシーさんが入社する前の話なんですけど。 Twitterで「バーグハンバーグバーグバーグって美容院のサイトとかも作るんだ」ってツイートを見かけまして。

f:id:e_yamaguchi:20171219110443p:plainほう……?

山口むつおいやいや、ウチはそんなの作った覚えがないぞと。それで、そのツイート主さんにURLを教えてもらって見てみたら、その美容院のサイトにウチのコピーライトが入ってたんです

 

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※こんな感じで、オシャレな美容院のサイトにバーグハンバーグバーグの名前が。

高橋さんそのサイトをね、作ったのが私なんです

f:id:e_yamaguchi:20171219110443p:plainん?どういうこと?

高橋さんコピーライトのつづりって、難しくて覚えられないじゃないですか。それで、普段からよく見ていたバーグさんのサイトがたまたまその時もブラウザで開いてて。あとで社名のところだけ書き換えようと思ってコピペしたのを、そのまま公開しちゃったんです……

山口むつおそれが僕らの目に入った、というわけで。笑っちゃいました。とりあえず美容院に連絡したんですよ、変な社名になってますよって

高橋さんもうね、連絡もらった時真っ青になりましたよ

山口むつおウフフフ……

高橋さんこれは慰謝料やと思いました

山口むつおでもね、その時社員全員まっ先に思ったのが「この人のデザイン、めっちゃ良い〜」だったんですよ。こんなことってまずないし、せっかくだからこの人と組めないかな?ってみんなで話しまして

高橋さんお詫びのメール送ったら「それより一緒に仕事しましょうよ」ってお返事もらって、それからよくご一緒するようになりましたね

f:id:e_yamaguchi:20171219110443p:plainよく一緒に仕事してますけど、過去にそんなことがあったとは

山口むつおそれから7年くらい、ホントよく一緒に仕事をしてますよね

 

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山口むつおこれも、

 

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山口むつおこれも、

 

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山口むつおこれも。出しきれないけど、もっともっとあります。よく「バーグハンバーグバーグの作ったサイトだと思ったら、その通りだった」ってTwitterとかで言われるんですけど、そのデザインの起源は高橋さんと言っても過言ではないです

高橋さんいえいえそんな……

山口むつおそんなこんなで、4年くらい前に、高橋さんにお子さんが生まれて。たぶんこのカフェの誕生にも関係してくると思うんですけど、あの時は産後の復帰がめちゃくちゃ早くなかったですか?

高橋さんそうですね、相当早かったと思います。「もうお仕事できますんでいつでも言ってください〜」って。今考えると無茶だなと思うし、実際無茶してました……

山口むつおさすがにこっちもね、すぐにはお仕事お願いできませんでした。無理だろ!休んでよ!って思いましたもん

高橋さんあとで詳しくお話しようと思うんですけど、私も旦那もフリーランスで家にいたので「育児も2人で分担して乗り切れる!」と思ってたんですよね。完全に甘く見ていて。でもその経験が、このカフェを作るきっかけになったんです

 

 

フリーランスになったのは「付き合ってるのがバレたから」? 

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メニューにあった、カボチャの入った美味いサンドイッチ。いただいております。

山口むつおそもそもWEBデザイナーになったきっかけって何だったんですか?

高橋さんちょうど私が専門学校を卒業しようという時に「WEBは儲かるらしいぞ」という話をチラホラと聞いていたので……

山口むつお金かぁ

高橋さんもともと美術的なものは好きでしたよ!でもイラストレーターになれるほど画力もなかったし、フォトショップをいじる事が好きだったので、WEBデザインなら私に向いてるんじゃないのかな?って。

山口むつお最初からフリーランスで働き出したんですか?

高橋さんいえ、専門学校を出てから何社かで働きましたよ。全部WEBの制作会社ですね。

山口むつおそれで一念発起して独立しようと。

高橋さんいや……そういうわけじゃないんですが……

山口むつお

高橋さん最後に働いていた会社にいる時は今の旦那と付き合っていまして、社内恋愛だったんです。4人くらいの小さな会社だったんですけど、社長さんがそのことを知らなくてですね…なんとなく怪しんでたみたいではあるんですけど……

山口むつお???

高橋さんある年のクリスマスの翌日に旦那と2人揃って遅刻しまして。盛大に付き合ってる事がバレて、「この人たち、不潔よッ!!!」と……。それでクビになってしまったので、仕方なくフリーランスになって今に至ります

 

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 山口むつお(いらんこと聞いてしもたなぁ……)

 

 

 「育児」も「仕事」も、両方頑張りたい人のためのカフェを作りたかった

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ここで旦那さんも合流。ちなみに旦那さんもフリーランスのエンジニアです。

山口むつおなんでカフェをやろうと思ったんですか?ウェブデザイナー1本で、じゅうぶんやっていけるでしょうに

高橋さんやっぱり私自身が母親になったのが大きいですかね。うちは私も旦那もフリーランス同士で家にいますから、育児もうまいこと分担できるやろうと思ってたんですけど……

旦那さん完全に見誤ってましたね〜

山口むつおあらまぁ……

高橋さん2人が抱えている仕事に、単純に子育ての負担が乗っかっただけだったんですよ

旦那さんほんまに大変でした。2人とも結構な量の仕事を抱えてまして。なんとか無理を通しましたけど、地獄でしたね

高橋さんそんな経験もあって、子育ても仕事も両方頑張りたい。だから仕事をしたり、ゆっくりしてる間、子供の面倒を見てくれるようなカフェがあったらいいな〜と思ったんです

山口むつおなるほど

山口むつお(「デザインの仕事してカフェ経営もやるほうがしんどそうだけど、ここはいったん黙っておこう」)

山口むつお実際、ノマドをしに来るお母さんもいらっしゃるんですか?

高橋さんいますねー。その方にはめっちゃいい!って言ってもらってます

旦那さん僕たちフリーランスみたいに、家で仕事をしていると特にそうなんですけど、子供をそばに置いといて仕事するじゃないですか。しばらく仕事に集中した後にふと子供を見ると、めちゃくちゃ退屈そうにしてて

山口むつおそれはすごいわかる

高橋さんその罪悪感たるや!というのがあって。だからお母さんが仕事や休憩をしてる間に、子供はカフェのスタッフと全力で遊べる……というシステムにしました。だからスタッフはみんな育児経験者なんですよ

 

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スタッフさんは保育士、幼稚園の先生、または育児経験者。カフェのコンセプトを考えると、この条件は必須だったということか。

 

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カフェの地下は子供が全力で遊べるスペース。カラーボールの海に飛び込むもよし、おもちゃで遊びまくるのもよし。その間、カフェのスタッフさんが子供の面倒を見てくれます。

  

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2階には、いわゆるノマドっぽ〜いスペースも。もちろん電源は完備、WiFiもバリバリ飛びまくっています。

 

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まだ地下で遊ぶには早い年齢の子供が遊べる柵や、授乳室も完備。

山口むつお完全に自分の経験が活きた感じですね

高橋さんそうですね。あと、「将来の働き方」についての布石でもあります

山口むつおほほう?

高橋さん私たちが60歳くらいになったときに、まだWEBのデザインしてるかな……と思うと、正直怪しいじゃないですか。なのでそれ以外の働き方を持っておくのは必要かなと思いまして

山口むつお最近は国をあげて副業を奨励してる節もあるし……複数の働き方を持つ人って増えてきてますよね

旦那さん4,000万で家建てるなら、1,000万のお店を4つやったほうがいいんちゃうか、と思ってるんですよね。そのほうが将来の可能性が広がるし。まずはこのカフェを軌道に乗せてからですけどね

山口むつおちなみになんですけど、スタッフさんはどうやって雇ったんですか?友達つながりとか?

高橋さんいえ、普通にa◯で……

山口むつおストップ!ジモコロはアイデムのメディアだから、こりゃ〜載せられまへんわ!

 

▶みんな!仕事探しならアイデムだヨ〜〜☆

 

  

旦那さんもカフェをやりたかった

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山口むつお実際にカフェをやってみて、どうですか?

高橋さんまだオープンしたばかりなので、これからだというところもあるんですけど、色々な方とコラボレーションできる楽しさがあるとわかりました。WEBのデザインだけだと得られないような刺激があったりして、結局それがデザインもしかり、次のやりたいことにも繋がっていくんだなと感じてますね

 

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ヨガの先生や英語の先生、ジェエリーデザイナーといった多ジャンルの人達とコラボレーションしたワークショップを開くことも多いため、そこから輪が広がっていくそうです。

旦那さんほんとはね、僕が先にまったく別のコンセプトのカフェを思いついてたんです

山口むつおえっ、そうなんですか?

旦那さん仲間を集めて、デジタルアート的なカフェをね。そのあと妻もこのカフェのアイディアを思いついて、じゃあ先に実現の目星がついたほうをやろうと夫婦で決めまして。結局妻のほうが先に開業資金を引っ張ってきたので、このカフェをやることになったんです

山口むつお拗ねました?

旦那さんどっちをやるのも楽しそうだったので、拗ねませんでした

 

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カフェのロゴや店舗のデザインコンセプトは高橋さんが手がける。

 

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カフェの地下と1階にある、謎のモニター。

これは現在企画中の、地下のプレイスペースで行われる「Youtuberごっこ」の様子をリアルタイムで見れるよう、エンジニアの旦那さんがシステムを組んでいる真っ最中。夫婦お互いの強みを生かしているのがすごい。

山口むつおじゃあこのお店も落ち着いたら、次は旦那さんのお店ですかね

旦那さんそうなりますかね

高橋さん実はこんなことやりたい!っていうアイディアはいっぱいあって、カフェはその中の1つでしかないんです。夫婦で話してるうちに満足しちゃうこともあるんですけど

旦那さんそうなんです!実はね……

  

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このあと旦那さんが「60歳になったら息子の部屋を再現したラブホテルを作りたい」という夢を延々語り出しやがったので、お話を聞くのはこのへんで。

 

 

まとめ

とにかく、高橋さんは面白いと思ったことをすぐやる。その面白さは自分のいまいる場所や立場とリアルにつながっていて「あ〜それあったら嬉しい〜」というものが多い。

 

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お店の工事着工前に、壁じゅうに落書きをするイベントをしたり、

  

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地下のプレイスペースを風船で埋め尽くしてみたり、

  

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「サンタさん、来たよ」という写真を合成して作ってあげるサービスをやったり。ぜんぶ、育児のリアルな経験の中からアイディアが生まれてきているようだ。

 

母親になった時の苦労や経験から、高橋さんはこのカフェをはじめた。行動力はすごいけど、そのきっかけは僕らも普段感じているようなちょっとしたことなんだな、とも思った。

 

「WEBデザイン以外の働き方を持っておきたい」というのもリアルだった。今は絶対に安全な働き方なんてないし、いくつかの収入口や可能性に投資することの重要さを改めて考える良い機会になったように思う。

カフェを経営する!って、たぶん「夢」みたいなフワフワしたものじゃなくて、「自分の将来」を見据えた、現在と地続きなものなんだな、と。

 

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あ、最後に高橋さんはバリバリでWEBデザイナー現役なので「デザインのほうのお仕事もお願いしますー!」とのことでした。

もう産後すぐの時みたいな無茶はしないでよね!

 

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〒543-0001
大阪府 大阪市 天王寺区上本町9丁目3-1
Tel:06-4302-5882

大阪市営地下鉄谷町線「四天王寺前夕陽ケ丘駅」より徒歩6分

 

書いた人:山口むつお

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株式会社バーグハンバーグバーグで働く、海鮮丼の化身。

Twitter: @e_yamaguchi

 

「ローカルにこそ編集が足りない」藤本智士が語る編集者の可能性

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こんにちは。ジモコロ編集長の柿次郎です。

 

誰しも尊敬している先輩の一人や二人いると思います。会う度に新たな視点や勇気をポロっと分け与えてくれる。そして心に刺さるような言葉を投げかけてくれる。

優しさと厳しさを兼ね備えた先輩と対峙するのは、嬉しい反面めっちゃ緊張しますよね。

 

今まさにそんな状態です。

 

目の前に、この人がいるから。

 

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ローカルの編集者として大先輩にあたる藤本智士さん。

 

無知のまま飛び込んだ全国取材の現場。ジモコロ編集長として手探りの日々を過ごしていましたが、今年初めに出会った藤本さんは「この道の大先輩」です。

同じ関西出身。藤本さんは紙の世界からローカルの編集者へ。僕はWEBの世界からローカルの編集者へ。歩いてきた道のりは違えど、行き着いた表現方法はとても近かったんです。

 

ざっくり要点をまとめると…

・無名の人物や土地を紹介するために、あえて自分たちが前に出る

・前に出る以上は自分自身の影響力を強くしなければいけない

・現地に行ってから取材対象を見極めて、フリースタイルで編集する

・方言や特徴ある言い回しをあえて残して、その人の個性を出す

などなど。

 

藤本さんが10年前に手掛けた雑誌『Re:S』は、上記の手法で一切耕されていないローカル領域を開拓していきました。そんな誌面構成はありえない時代。藤本さん自身も「当時は批判された」と語るほどです。

10年の月日を経て、43歳の藤本さんと35歳の僕がこのタイミングで出会ったのは何か運命的なモノを感じずにはいられません。2017年1月に初めて飲んで以来、2月の山形秋田のジモコロ取材ツアーも同行してもらって親交を深めてきました。

 

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そんな藤本さんが意を決して『魔法をかける編集』という本を今年7月に出版しました。本の冒頭には次のように書いてあります。

 

ある種「狭義」な編集を、「広義」なものに変えたとき、編集はぐっと身近なものとなり、ときにそれは、目の前のさまざまな問題の解決に役立ったり、行き詰まった状況を突破してくれたりします。

そういう意味で僕は、編集とは魔法であり、編集者は魔法使いだと本気で思っているのですが、それが魔法であるがゆえに、これまでは一部の人だけが持つ特権的能力として扱われてきたように思います。

しかし編集力というのは、なにもホグワーツに通わなくても、すべての人がすでに備えている能力であり、意識することで鍛えられるものなんです。

 

ブログやSNSで誰でも情報発信ができるようになった今こそ、「編集」という視点がとても重要になっています。

藤本さんの言う「広義な編集」とは何か。20年という編集者人生を紐解きながら、「編集とは魔法であり、編集者は魔法使い」の言葉の意図を掘り下げてみました。 

 

話を聞いた人:藤本智士(ふじもと・さとし)

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1974年兵庫県生まれ。編集事務所「りす」代表。雑誌『Re:S』編集長を経て、秋田県行のフリーマガジン『のんびり』の編集長を務める。現在はWEBマガジン「なんも大学」編集長も。嵐が日本各地を旅する様子を記録した『ニッポンの嵐』や、俳優の佐藤健が熊本を旅した「るろうにほん 熊本へ」の編集・原稿執筆を担当。2017年7月、『魔法をかける編集』『風と土の秋田』の2冊を刊行。

 

 

「自分が前に出る」スタイルが異端じゃなくなった

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f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「……」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「……」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「あの…藤本さん、いきなり怖い感じ出してません?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「いや、たまたま。この姿勢が楽なだけやねん」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「良かったー! いきなり説教が始まるのかと思いました」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「柿次郎のせいで最近怖いイメージついてるからやめて」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「では本題へ! 藤本さんは自主制作のフリーペーパーから始まって、雑誌や書籍の編集に約20年間関わられてきたわけですよね。この20年、世の中のメディアってどんな風に変わってきたと思いますか?

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「わかりやすく例えると、柿次郎という編集者が出てきたことかな」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「???」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「つまり、作り手が紙面に出てくることって昔はありえなかった。でも今のウェブに顕著だけど、編集者やライターが記事に出てくるのは当たり前になったよね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「なるほど。藤本さんも10年以上前から雑誌『Re:S』で紙面に出てましたよね」

 

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藤本さんが2006〜2009年に制作していた雑誌『Re:S(りす)』。発行元はリトルモア。取材対象やスケジュールを事前に決めず、藤本さんや編集部が日本各地を取材する当時としては異色のスタイルで作られていた

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そう、だから昔は異端やったと思う。でも、そのやり方をずっと変えずにいたら、いつのまにか世の中が変わってきた」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「作り手が裏方だった時代に、なぜあえて紙面に出てたんですか?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain『ローカル』を扱う以上、自分たちが前に出るしかなかってん。芸能人を取材するような雑誌と違って、ローカルにいるまだ誰にも評価されてない人を僕らは取り上げてたから。当たり前やけど、何者でもない兄ちゃんが誰にも評価されてない人を紹介したところで人は興味持ってくれないよね?」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「誰?ってなりますね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そうそう。だから、まずは自分が『何者か』にならないといけなかった。すると、僕を知ってもらわないとあかんやん。だったら自分をどんどん表に出していくしかない……そんなことを雑誌『Re:S』の4年間はやり続けてた」

 

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『Re:S vol.5』にて、広島の靴メーカーを取材したときの誌面。取材相手との飲み会の様子まで誌面にするのは雑誌として珍しいが、『Re:S』ではいつものこと。お酒の席だからこそ聞ける話や現場の空気が、そのままに誌面に詰め込まれていた

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「例えば『ローカルのこの人が面白いんです』って、ぶっちゃけ北野武が紹介した方がみんな興味もってくれるやん? でも、それにはお金がかかる。限られた予算の中で最大限やろうと思ったら……」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「自分たちが出ていくしかないと」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うん。そしてどんだけ自分たちを丸裸にできるかが大事。取材中の失敗や葛藤、苦悶みたいなものを全て記事に詰め込むねん。すると、そこにある種の『ドキュメンタリー性』みたいなものが生まれるわけ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「なるほど。テレビのバラエティ番組的でもありますよね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「このやり方が絶対正しいとは思ってないんやけど、僕の編集の中で『自分をさらけ出す』っていうのは軸かもしれない。だから時代と共にそれがいつしかスタンダードになってきてるのは面白いなあって思う」

 

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人気アイドルグループの嵐や俳優・佐藤健さんなど、数々の芸能人の本からローカルを泥臭く取材した雑誌まで、実に幅広い編集仕事を手がけてきた藤本さん。そのキャリアはなんと20年。

 

 

大事なのは「チーム」の力

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f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ジモコロも自分たちが出るしかなかったんですよね。若者向けに教科書で習うような歴史や文化を伝えるためには、普通の手法では限界があって……。

まずライターが顔出しで登場。次に取材の必然性を前置きする。顔アイコンの対話形式でテンポや軽やかさを作って…さらにGIFアニメや写真を散りばめる。

最後まで飽きずに読んでもらえるような構成を追求した結果が今のジモコロです」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そういうやり方を見て、『ジモコロ』面白いなあって思ってた」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ありがとうございます。でも、スタンダードになると、同じやり方でみんなが記事を作り出すってことですよね?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うん。同じやり方だからこそ、クオリティは様々。粗が見えたりもする。だからそこで大事なのが『チーム』やと思うねん

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「チームですか!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「『Re:S』はいわば、ド素人がローカルに飛び込んで、色んな出会いがあって最後に感動して…みたいな話。今見ると拙い文章もあるけど、やっぱり写真やデザインのクオリティが、ちゃんとした雑誌たらしめてくれてる」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「カメラマンやデザイナーやいろんなプロが関わることによって、クオリティが担保されると。そんなプロの人をチームに巻き込む力も大事ですね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「それも含めてディレクション。つまり編集の仕事やと思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ジモコロも2年以上やってきて、チームができてきた感じはあります。信頼できるデザイナーやカメラマンと出会って、彼らを巻き込んで……」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「傍から見てもチーム感は伝わってくるよ。だからチーム作りもそうだし、地方でメディアを作ろうとする人たちはみんなもっとクオリティをキープする努力をしたほうがいい」

 

 

「東京は三流でも飯が食える」

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f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「今って、一定のクオリティまで行くのはうんと楽になってると思う。将棋の羽生さんが言ってた『知の高速道路』って言葉は知ってる?

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「いえ、初耳です」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ネットみたいに知識にアクセスしやすい環境が発達してきて、将棋が強い子供がどんどん出てきたっていう話でね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「最近だと藤井四段みたいな」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うん。ある程度のレベルまでは『知の高速道路』のおかげで昔より何倍も早く到達できる、と。ただし藤井四段みたいに本当に強くなるためには、逆に高速道路を使った人は難しい、と羽生さんは言ってるんよ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ある程度まではみんな到達できるけど、その先は難しいと。デザインでも文章でも同じ話かもしれませんね。

そういえば、藤本さんは以前『東京は三流でも飯が食える』と言ってましたよね。東京のメディアから取材を受けてる最中だったので、その言葉で場がめちゃくちゃ緊張したのを覚えてます」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「東京はとにかく物量がすごいから。高いクオリティを目指すより、そこそこのレベルでも一定のスピードで納品するって仕事の仕方が成立するよね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それでも評価されるから、三流でも飯が食える…!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「でもさ、そういう東京の薄く広く届ける人たちがメジャーな状況って面白くないやん。深く本質的なことを考えている人がローカルにはいて、こっちの方が絶対メジャーになるべき!とずっと思ってた。だから、ネットが出てきた時はワクワクしたわけ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ネットが世界をフラットに変えてくれるかもと。でも、結局ウェブメディアの世界も、深さよりスピード感やバズることを重視する方が多くて…」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「悶々とする感じはあるよね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plainああー!悶々とするーーーー!!

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「急に大声出すのやめて」

 

 

今のウェブの世界で“一流”とは?

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f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「特にウェブ業界の前線にいる人はすごく悩んでるんじゃないかと。個人として前に出てると色んな声が飛んできますから」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ちょっとしたことで炎上したりね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「日々どこかで誰かが燃えてるじゃないですか。それでどんどん消費しちゃう。でも、みんなそれでも『このやり方しかない!』と進み続けていて」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うんうん」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plainそんなウェブの世界で“一流”のような上のフェーズにはどう上がっていけばいいんだろう、とよく考えるんです」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「僕はずっと関西にいるから、芸人さんの成り上がり方を見続けてて。彼らは『面白い奴は絶対売れる』って言う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「絶対、と」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ただ、売れる前にみんなやめちゃうんだと。『一流』というのは必ず売れるから、芸人さんの言うことを信じるなら、やり続けることやなって

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「『やり続けること』か……」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「今の柿次郎の質問も、5年10年と続けたら全然違うかもよ。どんな業界も変わり続けて行くし、その中で自分も動いていかなきゃいけないから」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「そういう意味では、藤本さんは今までに何度も新しい雑誌を始めるような『次に行く』経験をしてますよね。そこでどんな風に決断してたのか、聞いてもいいですか?」

 

 

「柿次郎がジモコロを捨てるのはいつ?」

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f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「えっとね、『Re:S』を辞めようと思った時の話なんやけど、ちょうど『魔法をかける編集』には書けなかった話」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「聞きたいです!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「柿次郎は『雀鬼』の桜井章一さんって知ってる?」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「一応は……『闇麻雀で無敗』みたいな伝説の人ですよね。麻雀がとにかく強い」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そうそう。ってことは当然、他人の捨て牌から相手の状態を読む、その推測力がハンパないんやろうって思うやん」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「そうですよね。麻雀って相手の捨て牌から、残りの牌を読み合うゲームですもんね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「で、その桜井さんの本か雑誌のインタビューかを読んでたら、『俺は他人の捨て牌なんか見たことない』って書いてたのよ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「えーーーっ!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「さらにね……」

 

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『答えは自分の捨て牌の中にしかない』って言ってるのよ

 

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「かっこいい!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「せやろ!それで僕もかっけーーー!ってなったのよ。でもね、よくよく考えたら僕自身、最初はフリーペーパーを作ってたけど世の中のフリーペーパーブームを見て嫌になって、次に売る本を作って、本屋さんへの流通の壁にぶつかって、それも辞めて、今度は雑貨みたいな本作ってみて本屋以外に流通したけど、これじゃアカンってなって、次にRe:S作って…って」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ふむふむ」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そうか、『僕もずっと捨ててきてる!』、確かに自分の捨て牌の延長にしか未来はないんだって気づいて。それで『Re:S』も捨てなあかんって思ったわけ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それがきっかけで…」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「他の要因もあるけど、とにかく踏ん切りがついたのは桜井さんの言葉やった」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「その後も『捨てる』感覚はずっとあります?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うん。『のんびり』を始める時も、それまでとは真逆のことをやろうと思ってたから」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「捨てていく先に、新しい仕事があるんですね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plainだから柿次郎がジモコロを捨てるのはいつなんだろう、とか思うよね」

 

 

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f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ん、ああ、たしかに…。今、考えちゃってました」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「『次』は必ずあるから、実はすごくポジティブな話やと思うねん。捨てるのはしんどいけど。いつかそういう気持ちやタイミングがやってくるから、その時は気持ちよく捨てれば良いと思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「自分の中で代表作というか。『最後までやりきった』ものでないと捨てる意味もないですよね。自分の軸を持ってクオリティの高いものを生んで、自分の『捨て牌』を人生の中でどう作っていけるか…」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「その道筋の延長線上にしか、自分の未来はないから」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「会社員であり続けるとか。働く場所を変えるとか。誰しもに当てはまる考え方ですね」

 

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2012〜2016年に秋田県から季刊発行されたフリーマガジン『のんびり』。「広義な意味での編集者」を育てるべく、藤本さんが地元・秋田のスタッフとチームを組んで作られた。現在、のんびり編集部によって“秋田のおもてなし精神を日本中に届けるウェブマガジン”の「なんも大学」が制作されている。

 

 

編集者になりたいなんて思ったことはない

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水筒を愛する様々なクリエイターに各自の「すいとうスタイル」を取材するなど、「水筒のある暮らし」を提案した『すいとう帖』

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「急に自分の将来の話になってドキドキしてるので、話題を変えますね。クライアントに突っ込まれちゃうので。『魔法をかける編集』で触れられている『すいとう帖(※1)』の仕事が本当にすごいなぁと」

 

※1 藤本さんが水筒に『マイボトル』という名前を命名。2004年には約600万本だった水筒の生産本数が2016年には約1800万本にまで増加した仕事

 

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ほんまに? ありがとう」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「『もっと皆が水筒を持ち歩けばいいのに』というビジョンを実現するために本を作ったわけですよね。で、本をきっかけに『マイボトル』という言葉が生まれ、最初のビジョンが実現してしまうという…」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「奇跡みたいな話だよね。出会いの連続やから、ほんまにありがたい話なんやけど。でもとにかく、ゴールが『本を作りたい』ではなかった。そもそも僕は編集者になりたかったわけでもないし」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「僕も考えたらそうですね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「でしょ? 伝えたいものと出会って、それを表現する手段がそのときは紙の本だと思っただけで。それに『すいとう帖』をつくった時に『編集の面白さ』が何か少しわかった気がして」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それは一体…?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「『編集は目に見えるものを作るだけじゃない』ということかな。それを編集者としてのスタートの時点で発見できたのはラッキーやと思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「ビジョンがまず最初にあるわけですよね。僕は『すいとう帖』の話で、とにかく『まず作って見せる』ことが大事なんだと思ったんです。水筒について調べるために、魔法瓶の組合に行く話があるじゃないですか」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ああ、組合のおっちゃんに『水筒の本を作りたいんです』って言ったら、なんのこっちゃわからんみたいな反応されたやつね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それです!で、その後に完成した『すいとう帖』を改めて見せに行く場面が大好きなんです。ちょっと引用しますね…」

 

いつものようにまるで身内のごとく僕を事務所に招き入れてくれたおじさんは、完成した本と僕を交互に見ながら、目を丸くしてこう言いました。

「君、こういうもんが作りたかったんか! ごめん、おっちゃん、いまはじめてわかったわ……」

そしてさらに畳み掛けるようにこう言いました。

「もうすぐ魔法瓶の会社の社長がみんな集まる理事会があるから、おっちゃんそこにこれ提出したる。これは見てもらわなあかん!」

 

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「あれにはびっくりしたわ。おっちゃん、前と全然反応が違ったからね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「理事会に提出してもらったのを機に、象印マホービンの社長に会い、マイボトルの誕生につながるわけじゃないですか。それも、ただビジョンを話すだけじゃなくて、藤本さんが本を作って見せたからで。この話はいろんなことに繋がると思うんですよ」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そうかもね。形にしないと伝わらない。で、『伝える』ってとこで思うのはね」

 

エンタメ性に欠けた東京のトークイベント

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「やっぱりエンターテイメント性はすごく大事で。東京ってすごいなって思うのが、全然面白くないトークイベントがたくさんあるやん

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「そうですね。全員真剣にメモ取ってるような…」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「俺あの空気に耐えられへん。笑かしてくれんでもいいけど、エンターテイメントになってないことが不安じゃないの?と思う。関西の血もあるけどね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「僕も最近イベントで喋ることは増えたので、少しでも面白くなるようには意識してます」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ジモコロは記事がエンターテイメントとして成立してるから、ただの事例紹介で終わらないんだよね。パワポの内容をそのまま喋るみたいな、ほんまの事例紹介ってあるやんか」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「僕はそういうプレゼン方法については、完全にバーグハンバーグバーグのシモダ社長の影響を受けてますね。彼も関西の人間で、プレゼンのやり方にもすごいこだわりがあったので」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「ジモコロの記事も、ある意味プレゼンが上手なんよね。出てるのは元々面白い人ばかりなんやろうけど、さらに見せ方の工夫が加わることで、さらに面白くなる。タイトルでつかんで、導入はこうして、写真をこう入れて…みたいにね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「元の素材が最高ってのはありますね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「うん、だからブログの記事でもなんでも、エンターテイメント性を意識すると変わってくると思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「間口を広げて、より多くの人に届ける努力は今後も大事にしたいです」 

 

ローカルにこそ『編集』が足りない

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f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「もう少し『魔法をかける編集』の話を聞きたいんですけど、本の中で『編集が足りない』と書かれてますよね。このことにはいつ頃気づいたんですか?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「秋田の『のんびり』をやったのが大きいかな。関わってる一人一人には情熱があるのに、結果として一過性のもので終わっちゃう事例が地方にはいっぱいあるんよね。そこに何が足りなかったのかを考えると、編集者であり、もっと言うと関わる人自身が編集者であると自覚してもらうことじゃないか、と」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「編集者としての自覚。『誰でも編集者』の言葉につながるんですね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そう、誰もが編集者だから。銀行の人でもゲストハウスを作ってる人でも、やってることは『編集』だと思う。原稿の赤字の入れ方とか台割の作り方とか、そんなところに編集の醍醐味はないからね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「今のローカルの『編集者』の現状ってどうなんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「地方に編集者がいないわけじゃないけど、地元情報誌や行政関係の仕事を請け負うライター兼編集みたいな人が多いよね。あとは、デザイナーが編集作業もしてる場合がすごい多いと思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「写真と文章まで、デザイナーがやっちゃうみたいな」
f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「本にも書いてるけど、ローカルのデザイナーさんって本当にしんどいなと思ってて。なんでかって言うと、孤独なんよね。ローカルはプレイヤーが少ないから一人で仕事をしていて、良い悪いの判断がクライアントだけ、みたいな世界で」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それは辛い…めちゃくちゃ不安じゃないですか?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そういうデザイナーに『お前こんなデザインじゃあかんやろ』って言うと『それホント言って欲しかったんです』みたいになるわけ(笑)。みんな答え合わせをしたがっているんよ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「あー、なるほど」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「今は『デザイン』が広義になりすぎてるんかもね。『街をデザインする』っていろんなところで聞くけど、僕に言わせれば『街を編集する』。要は地方だけじゃなく、世の中に『編集の視点』が足りてないだけじゃないかなと」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「そこで『編集』をもっと広義に捉えると、編集の視点も増えるし、地方で編集者という職業も成立しやすくなる、と」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「そうやと思うねん。広い意味での『編集者』が活躍できる余地が、地方にはまだまだある。そうやって地方の人が編集というものに気づいた時に、世の中が変わるなって思う」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「5年、10年経った後に『藤本さんの本を読んで編集者になりました!』って人が増えてるといいですね」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「それは超理想やなあ」

 

 

藤本さん、仲間になってくれませんか?

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「藤本さんの20年を振り返ってきたわけですけど、これからのことはどんな風に考えてますか?」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「自分のやりたいことはキープしながら、新しいことはやりたい。ウェブメディアの世界でももっとチャレンジしたいなと思うし。知らなすぎるから」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「それなら藤本さん、ジモコロのライターになってくれませんか?

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「え、めっちゃやりたい!嬉しいわあ」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「よかった!ドラクエ5でゴーレムを仲間にした時の主人公の気持ちです」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「あんなゴツゴツしてへんけど。なんにせよ仲間は大事やもんね」

f:id:tmmt1989:20171204211547p:plain「これからよろしくお願いします!」

f:id:tmmt1989:20171204211608p:plain「こちらこそ!」

 

 

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皆さん、いかがだったでしょうか。  

 

「広い意味での『編集者』が活躍できる余地は、地方にまだまだある」

 

藤本さんが本を通して伝えたかった想いは、この言葉に凝縮されています。また「自分が編集者だと自覚した瞬間、編集の面白みがわかった」と話してくれました。

そして何より大事なのは「つくり続けること」。やりきったときに「勇気を持って捨てること」。この2つの覚悟がローカルの編集に必要なのかもしれません。

 

 

最後に。

2018年は藤本さんが出版ツアー全国62カ所で蒔いた”編集者の種”が、芽吹く一年になるのではないでしょうか。

だって総動員数2,570名ですよ?

約半年で40県の土地をまわってるんですよ?

この記事のタイミングでKindle版のリリースですよ?

かっこいい背中を見せ続けてくれている藤本さんの意思を引き継いで、ジモコロもこれまで同様に”つくり続けたい”と思います。それではまた!

  

※藤本さんに興味を持った人はこちらの書籍をどうぞ

魔法をかける編集 (しごとのわ)

魔法をかける編集 (しごとのわ)

 
風と土の秋田 二十年後の日本を生きる豊かさのヒント

風と土の秋田 二十年後の日本を生きる豊かさのヒント

 

 

『魔法をかける編集』につながるWEB連載(全15回)も合わせてどうぞ。

第1回 究極のローカルメディアとは?!|ローカルメディアのはなし。|みんなのミシマガジン

 

書いた人:徳谷 柿次郎

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株式会社Huuuu代表取締役。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916 Mail: kakijiro(a)gmail.com 

田無・美女木・物集女……「なんでそんな名前?」な地名の由来を当てようゲーム

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みなさんの住んでいる町には「なんでそんな名前なの?」という地名がありませんか?

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たとえば埼玉県戸田市の地名「美女木(びじょぎ)」
「美女木ジャンクション」で有名ですが、なんで「美女木」? 冷静に考えたら意味がわからない。何があったらそんな名前になるの?


しかし、どの土地にも歴史があり、その名称には土地が経てきた果てしのない時間が反映されているはず。
今回はジモコロ編集部のメンバーで「なんでその名前?」という土地の名前の由来を当てて、当てて、当て果てたいと思います。

 

※地名の由来には諸説あります。この記事における「正解」は、現状最も信憑性の高そうな説とします。

 

地名の由来を当てようゲーム

参加者

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain恐山
東京都出身。
ずっと東京に住んでるのにまだ新宿駅で迷う。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain原宿
神奈川県出身。
命名にはこだわりがあり、ゲームキャラの名付けに1日使う。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain加藤
愛知県出身。
自分でも信じていない理論を力説するという、議論に決定的に向かない悪癖を持つ男。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainまきの ゆうき
兵庫県出身。
あだ名は「チッチ」だが、由来はない。以前は「ゲル」だったこともあるが、由来はない。

 

無さを名前にするってアリ?「田無」

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainというわけで「なんで?」っていう地名の由来を推理してみましょう。まずはこちら。

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain東京都西東京市「田無(たなし)」です。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain確かになんで「田無」なんだろう。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainストレートに「田んぼが無かった」のでは?

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainでもさ、ふつう「無い」を名前にする?

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain「無さ」を名付けていいなら、なんでもありだよね。ニューヨークだって「田無」じゃん。

 

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f:id:jimocoro:20171225183250p:plainこういう由来、時代とともに当て字とかで書き方や発音が変わりません?

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain昔は違う名前だったのが、なまって「田無」になったってこと?

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainそうです。つまり……

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f:id:jimocoro:20171225183250p:plain幕末。黒船来航の時代にやってきたアメリカ人の「ターナー氏」が住んでたのがなまって、田無になったんです。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainそんなわけなくないですか?

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainいやいや、意外とあるんだって。逆に「田んぼがないから田無」の方が安直すぎてありえなくない?

 

正解発表

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain正解は……「田んぼが無いから」です!

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainそのままかい。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain資料によると室町時代にはもう「田無」は存在していたらしいです。湧き水の流れが階段状の「棚瀬」だったのがなまった、とか、税制が厳しくて種もみまで取られたから「種無し」がなまった、など諸説あるのですが、これが一番有力とのこと。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainターナー氏説は……?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainありません。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainちなみに現在では田無にも田んぼがあるらしいです。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainよかったね。

 

怖すぎる地名「馬喰町(ばくろちょう)」

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain続いては東京都中央区の「馬喰町(ばくろちょう)」です。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainあー、これ気になってた!

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain字面が怖すぎ。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainやっぱり、馬肉が旨い地域だったんじゃないの?

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainでも昔の日本人って明治維新くらいまで肉食文化なかったよね。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainこっそり食ってる物好きくらいはいたんじゃない?

 

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f:id:jimocoro:20171225183307p:plainわかった!

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain江戸時代。当時は「乗り物」だった馬を、空腹に耐えかねて調理して食してしまった男がいた。そして叫んだわけです。「めちゃめちゃ旨いやんけ」と……。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainその男の「めちゃめちゃ旨いぞ〜!」という叫びがきっかけとなり、突発的な馬肉ブームが誕生!しかし、移動用の馬がいなくなって、滅亡の危機に!

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain幕府はそんな事件の戒めの意を込めてこの地域に「馬喰町」と名付けた……。

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f:id:jimocoro:20171225183307p:plainつまり、馬が食べれることを「暴露(ばくろ)」してしまったんですな。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain最後ので一気に信憑性が薄れたな。

 

正解発表

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain正解発表です。江戸時代、牛や馬を競り落としたり病気を治したりする「博労(ばくろう)」がいた町だったのが、表記が変わって馬喰になった、でした。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainそんな言葉、知らね〜。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainなんで表記変えたんだ。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain博労が「あっし、馬で喰ってる身でさァ……」とか言ってたんだと思う。

 

 

そのまんまな理由なのか?「三軒茶屋」 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain続いては東京都世田谷区「三軒茶屋(さんげんぢゃや)」です。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainこんなのもう、1個しかないでしょ。昔、有名な茶屋が3軒あったんですよ。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainまあ、それしかないわな。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainで、お互いに客を奪い合っていたと。三つ巴の経営戦争はどんどん過激化し、地名にまでなってしまった。

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f:id:jimocoro:20171225183235p:plainそれがのちの「コメダ珈琲」「ドトール」「ルノアール」である。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainそこはそんなわけなくない?

 

正解発表

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain最後の余計なボケ以外は正解です!

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainうおお!やったー!

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain江戸時代、ここは神社へお参りするために遠出する人が通る道になっていたんだそうです。で、そこに「しがらき」「角屋」「田中屋」という3軒の茶屋があったので、今も三軒茶屋と呼ばれているとか。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainちなみに田中屋は「田中屋陶苑」という陶器店になって今も存在するそうです。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain第一次茶屋戦争、勝者は田中か……。

 

美女がいた?「美女木」

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain続いては埼玉県戸田市「美女木(びじょぎ)」です。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain「美女木ジャンクション」の語呂の良さは好き。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain私もまだ答えを知らないので、答えていいですか?

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain以前このあたりは空気の澄んだ森林になっていて、日本にはいないと思われていた美しい種族「エルフ」が住んでいたのではないでしょうか?

 

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f:id:jimocoro:20171225183250p:plain日本以外にもどこにもいないよ。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain偶然木に登っているエルフに遭遇した村人たちが「美女木」伝説を広めたんだろうね。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainしかし、ジャンクション建設決定によって森が切り倒され、今はもうエルフはどこに行ったかわからないんです。そんな、哀しいお話。

 

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainいや、ストレートに「美女木」がここに生えていたのでは?

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f:id:jimocoro:20171225183235p:plainこういう形の木が。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain最低。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainネットに出せるかよ。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain全部描くな。

 

正解発表

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainこの美女木という呼称、1300年代にはすでにもうあって、江戸時代には由来も曖昧だったらしいです。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainそんなに昔!?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainというわけで由来は諸説あるのですが、1800年代に書かれた『新編武蔵風土記稿』という本によると……。

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain美女が来たことがあるから、らしいです。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainは?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain「大昔、訳あって京都から関東に移り住んで来た美しい官女がいたから美女木になった」というのが有力らしいです。その本にも「いとおぼつかなき説なれど」って書いてあるんですけど。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain一番有力な説でもいとおぼつかないのかよ。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain美女が来て地名になるって、当時よっぽどインパクトある事件だったんだな……。うちの男子校、今年から共学になるらしいぜ! みたいな。


物を集める女?「物集女」

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainつづいて京都府向日市「物集女(もずめ)」はどうでしょう。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainそんな地名あるんだ。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain物を集める女……。それって「片付けられない女」のことでは?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain夕方のニュースでよくやってるやつ。自治体の人が注意しに来ても聞かない。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainたぶん、片付けられない女、発祥の地なんでしょうね。平安時代あたりに。脱ぎ散らかした十二単が山のように積み上がって。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainいたとして、それを地名にします?

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainコレクター的な意味の「物集め」じゃないですか?

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f:id:jimocoro:20171225183235p:plainアニメイト一号店ができたのがここだったのでは?

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain女性向けグッズが充実してたんだろうね。光源氏のアクリルキーホルダーとか。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain「ちょ、待たれ待たれ……あはれ……あはれなり……尊し尊し……無理……」

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain推しのグッズを手に入れて感極まった大昔のオタクだ。

 

正解発表

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainこれも諸説あるようなのですが「大鳥郡(今の大阪)の百舌鳥(もず)という地域に勢力を持っていた豪族が移り住んできた説」が有力です!

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain「百舌鳥(もず)」が「物集女(もずめ)」になるの、意味わからんな。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain「もず」に当て字した「物集」を「もづめ」と読むようになって、「女」を足して……みたいな変遷があったようです。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain大阪の「百舌鳥(もず)」って地名も相当変だけど、それはなんで?

 

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain百舌鳥駅前にはあの有名な古墳の仁徳天皇陵があるんですけど、そこは「百舌鳥耳原(もずみみはら)」っていう名前なんです。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain「耳」? なんで「百舌鳥耳原」なの?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain日本書紀によると、古墳建設工事をしてたら鹿がこっちに走ってきて「やばい!襲われる」と思ったら、なぜか鹿が急死したらしいんですよ。

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainで、死んだ鹿の耳から百舌鳥(もず)が飛び出してきたんだそうです。

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainそして人々は「そうか、この百舌鳥は鹿から俺たちを守るために鹿の体内に潜り込んで戦ってくれたのか!」と感激し、「百舌鳥耳原(もずみみはら)」になったそうです

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain何言ってんの?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain実際そういう伝説があるんだからしょうがないじゃないですか。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain百舌鳥の戦い方、スタンド攻撃みたいでエグいな。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainで、鳥のモズはなんで百舌鳥って書くの?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainもうやめましょう。キリがない。

 

 

謎のラスボス「????」


最後はこちらです。

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!?

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plain岩手県江刺区稲瀬「天竺老婆(てんじくろうば)」です。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain名前ヤバすぎだろ。

 

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainこれ、私もまだ由来を調べてないので全員で予想してみましょう。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain天竺ってインドのことよね?

f:id:jimocoro:20171225183250p:plain天竺といえば仏教のイメージがあるので、ここにお寺があったのでは?

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f:id:jimocoro:20171225183250p:plainで、そこで老婆用のお経をもらえたんです。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain字、薄っ。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainお経に老婆用とかなくない?インドから来た尼さんがいるお寺があったとかならまだわかるけど。

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f:id:jimocoro:20171225183307p:plain暗い由来ですが、シンプルに「姥捨山」だったのでは? 食いぶちを減らすため、肉親を「インド旅行に行きましょうね〜」と騙して山に……。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainうーん、それで「天竺」がつくのは無理がある気がする。

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainこの「老婆」の正体が謎を解くキーだと私は推理します。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain「天竺」も必ずしもインドじゃないと思うんですよ。昔の人にとっては「外国=天竺」くらいの認識だったかもしれない。つまり……。

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f:id:jimocoro:20171225183217p:plainクレオパトラがローマから逃げて来て着いた先がここだったんじゃないでしょうか?

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain青森には「キリストの墓」とかあるしね。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainこういう説を何十年も唱えてる変わったおじいさん学者ってたまにいるよね。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainあ、思いついた。

 

f:id:jimocoro:20171225183435j:plain

 

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain「点字クローバー」

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainだから何?

f:id:jimocoro:20171225183307p:plain帰れ。

 

正解発表

 

f:id:jimocoro:20171225203056j:plain

 

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainでは正解発表を……。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainめちゃめちゃ気になる……。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain正解は……

 

f:id:jimocoro:20171225210842j:plain

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainわかりません!

f:id:jimocoro:20171225183235p:plainおい、ふざけるなよ。このモヤモヤをどうすればいいんだ。

 f:id:jimocoro:20171225183217p:plainいままではネット上の情報から参考文献を手に入れて調べてたんですが、「天竺老婆」に関しては全く手がかりがないんです……。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainなんか怖くなってきたな。

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain大きめの図書館に行って調べなおしてみます。

 

f:id:jimocoro:20171226184757j:plain

数日後…

 

 f:id:jimocoro:20171225183217p:plainまったくわかりませんでした……。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainでっかい図書館行ったんだろ、おい!!

 

角川日本地名大辞典42【プリントオンデマンド版】

角川日本地名大辞典42【プリントオンデマンド版】

 

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain『角川日本地名大辞典』っていう、ひとつの県の地名情報だけで広辞苑くらい分厚いうえ全47巻もあるバケモノみたいな本を調べたんですが、そもそも項目が載ってませんでした。そのほかの辞典類もダメです。

 

f:id:jimocoro:20171225200545j:plain

『新訂 全国地名駅名よみかた辞典』(2006),156p

 

f:id:jimocoro:20171225183217p:plain手がかりと言えば、『新訂 全国地名駅名よみかた辞典』にかろうじて名前だけ載ってたくらいですね。あまりに狭い地域なので、文献が触れる機会すらなかったのかもしれません。

f:id:jimocoro:20171225183235p:plain天竺老婆の謎は迷宮入りか……。

f:id:jimocoro:20171225183250p:plainこの名前で言及されないことってある?

f:id:jimocoro:20171225183217p:plainちなみにこの周辺には「目割沢(めわりさわ)」「耳取(みみとり)」などの地名もあります。

f:id:jimocoro:20171225183307p:plainマジで怖くなってきた。

 

情報求む

 

……というわけで、岩手県の地名「天竺老婆」に関しては、地名の由来をつかむことができませんでした。

もし読者の皆様の中に、この地名の手がかりをご存じの方がおられましたらご一報ください。

 

f:id:jimocoro:20171225204239j:plain

 

求む! 情報!

 

 

 

【参考文献】

ユーキャン東京の地名の由来研究会, 浅井 建爾(2012)『まるごと一冊! 東京の地名の由来』U-CAN

日外アソシエーツ編集部(2006)『新訂 全国地名駅名よみかた辞典』日外アソシエーツ

「角川日本地名大辞典」編纂委員会(1989)『角川日本地名大辞典』角川書店

http://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/jutaku/jutaku/jukyohyoji/chimeiyurai.html

http://blog.goo.ne.jp/0000cdw/e/c9228197496d358ed6a106930b87a243

http://www.toda-c.ed.jp/site/bijyogi-e/bijyogi-e-yurai.html

https://edokara.tokyo/conts/2016/08/13/528

http://www.city.nishitokyo.lg.jp/siseizyoho/syokai/ayumi/oitati_tanasi.html

 

 

 

 

ライター:ダ・ヴィンチ・恐山

f:id:eaidem:20160613113601j:plain

株式会社バーグハンバーグバーグ所属。作家名義は品田遊。
レトルト食品の湯煎や椅子の高さ調節など、多方面で活躍中。

ブログ→品田遊ブログ
Twitterアカウント→@d_v_osorezan

 

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渋滞にハマったら左車線が速い? 帰省・Uターン前に学ぶ、渋滞のメカニズム

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f:id:yto4410:20171217013026j:plain

こんばんは。ジモコロライターの田中嘉人です。めちゃめちゃ不機嫌な顔で申し訳ありません。

 

しかし高速道路を運転中、目の前にこんな光景が広がっていたら、誰だって不機嫌になるのではないでしょうか。

 

そう……

 

 

f:id:jimocoro:20171221114301j:plain

もう〜! 遅々として進まない状況に、自分も車も、そして膀胱もストレスが溜まっちゃう! そもそも高速料金を払ってるのに、こんな渋滞に巻き込まれるなんて、おかしくないですか?

 

これって、完全に高速道路を管理している会社の職務タイマンじゃないんですか! 

 

f:id:jimocoro:20171221115041j:plain

というわけで、中日本地域の道路を管理・運営しているNEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)の川崎道路管制センターにやってきました。

 

そもそもなぜ渋滞してるのか。そして、これから年末年始にかけて予想される帰省・Uターンラッシュを前に、渋滞解消する策があるのか、ハッキリさせましょう!

 

オラー! 責任者どこー!? どこよー!?

 

f:id:jimocoro:20171221115826j:plain

どんっ……!

 

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「はじめまして、NEXCO中日本・高速道路ドライブアドバイザーの花房です。渋滞に関して知りたいことがあるとか?」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「ありますとも!『高速道路の渋滞、どうなってるんですか!』という文句を言いに来た本日、ここに来るまでの間にまたも渋滞にハマったんですけど、どうなってるんですか?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「……申し訳ありません」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「こっちだって急いでるんだから! 車線変更を繰り返して繰り返して、やっとここまでたどり着きましたよ!」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「あの~、車線を変更するより、走行車線をキープしたほうが早く渋滞を抜けられると思いますよ」

 

f:id:yto4410:20171220114915j:plain

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「あ、あれ? そう…なの? 追い越し車線を走ったほうが早く抜けられると思ってた……」  

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「そういうドライバーさんが多いため、結局左のレーンを走ったほうが速いんです。何より渋滞中の事故は、6割は追い越し車線で発生しています。やみくもに車線変更はしないほうがいいですよ」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「へぇ~そうなんですか。こりゃ冒頭から良いこと聞いちゃった! ありがとうございます!」

 

 

意外な原因! 渋滞は簡単に解消できる?

f:id:jimocoro:20171221121153j:plain

f:id:yto4410:20171219162648p:plainというわけで、あらためてよろしくお願いします! 今日はお察しの通り、渋滞について聞きに来ました」

f:id:yto4410:20171217013452p:plainお手柔らかに」

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「中央道の『小仏トンネル』とか東名の『大和トンネル』とか、週末の夕方はいつも渋滞してますよね? これって、一体誰のせいなんですか?」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「もちろん、我々の力不足という面もあるんですが……『誰』のせいかという問いに関してだけお答えするならば……

 

f:id:jimocoro:20171221132157j:plain

 

 

f:id:jimocoro:20171221132310j:plain

「あなた……かもしれません」

 

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「……はい? いやいやいや、渋滞の原因ってアレでしょ? インターチェンジやサービスエリアなんかの合流がうまくいかないからなんですよね? 僕、そんなとこでモタモタした覚えはないですよ!」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「確かに、以前は合流地点で渋滞が起こっていたんですが、実は最近ではほぼ解消されています」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「じゃあ、一体何が原因で渋滞が起こってるんですか?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain高速道路が渋滞する最大の原因は、ゆるやかな下り坂が、上り坂に転換する”サグ部”と呼ばれる箇所なんです」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「ジオン公国軍の緑色のモビルスー……」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「違います」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「サグ部と呼ばれる箇所で渋滞が起こっているのはわかりました。でも、それは“なぜ”なんでしょう? そして“僕のせいかもしれない”という理由は?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「ではお聞きしますが、サグ部は『大和トンネル』や『小仏トンネル』にもあります。気づいてました?」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「え、そんなのあったっけ……?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「そう、あまり気づいていない。気づかないうちに坂道をのぼると、どうなるか? 気づかないうちに速度が落ちて……

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「はっ! 後続の車も速度が落ちて、その後ろも速度が落ちて、さらに後ろも……」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「実はそれこそが渋滞の原因だったのです!」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「な、なんだってーッ!!!」

 

f:id:yto4410:20171220105249j:plain

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「まさに、知らないうちに、僕が渋滞の原因になってるかもしれないってこと? こっわ~! そんなの『ここから上り坂だよ~』とか言ってくださいよ!

 

f:id:yto4410:20171220104016j:plain

「言ってますよ!!!!」

 

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「坂の手前の看板、LED電光掲示板、色んな場所で『ここから坂道ですよ~!』って書いてあります。ぜひご覧になってください」

 f:id:yto4410:20171219162648p:plain「知らなかった……いや、『坂道ですよ』という看板は見た憶えがあるような気はしますが、『だから何?』って思ってました」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「極端に言うと、ドライバーのみなさん全員が、『坂道だから速度が落ちてるな……』と気づいてくれれば、渋滞はかなり少なくなるでしょう」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「……ん? あれ? たった今グッドアイデアを思いついてしまったんですが……ひょっとして、サグ部を埋め立てて平らにしちゃえば、問題解決では?」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「いえ、現実的にはインターチェンジを設置する土地の標高がバラバラなので、直線で繋いでも、ず~っとゆる~い上り坂になるか、ず~っとゆる~い下り坂になるか、どっちかです」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「むむむ……」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「それに、サグ部は渋滞の主な原因ではありますが、唯一の原因というわけではありません。新東名は斜度を2%くらいに抑えられましたが、それでも渋滞は起こっている。となると、莫大な工事費を投じて斜度をゼロにするのは難しいでしょう」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「八方塞がりだー! 何か策はないんですか!!」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「私たちも、渋滞のポイントを知ってもらえるように努力はしているつもりです。さっきも言いましたが、道路上の電光情報板に『速度低下ポイント』『速度回復願います』といった文言を掲示したり……」

 

f:id:yto4410:20171220110111j:plain

道路の上の掲示板、「速度低下に注意」の表示が見えるでしょうか

 

 f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「坂道のサグ部だからスピード落ちてるよ~ってことですよね? もっと具体的に『スピード出してー!』って言葉にしたほうがわかりやすいのでは?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「それが言えたらどんなに楽かと思うんですが、安全面のことも考えて、我々の口から『スピード出して!』とは言えません。暗に伝えなければいけないんです」

f:id:yto4410:20171217013439p:plain「月が綺麗ですねと言って愛を伝えるニュアンスだ 」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「本音で言うなら『アクセルを思い切り踏み込もう!』とかにしたかったんですけどね……。警察から事故の原因になるような文言はやめてほしいとNGが出まして」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「う~ん、安全面のことを考えたら、仕方ないのかな……」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「しかしですね、実は……」

 

f:id:jimocoro:20171221145442j:plain

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain高速道路で起きる交通事故の4割は渋滞が原因だと言われているんですということは、渋滞をなくせば、交通事故の4割を減らすことができるとも考えられませんか? そうでしょ!?」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「つまり『スピードを出せ!』と」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「私の口からは何とも申し上げられません」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「『アクセル踏め!』と」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「私の口からは何とも申し上げられません」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「え~っと、つまり……はい、わかりました」

 

 

渋滞解消のためにNEXCOが取り組んでいること

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話を続けながら、施設内を案内してもらいました。ここは高速道路を管理するための管制室。もちろん年中無休、24時間営業です

 

f:id:jimocoro:20171221161839j:plain

エヴァのネルフみたいでかっこいい!

どこで事故が起こってて、どこで工事しているのか、などが表示されていて、職員が対応します

 

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無数にあるモニターの中には、ひとつだけテレビ番組が映っていました。サボってる……?と思いきや、地震や災害の速報はテレビが一番早いので、常につけているんだそう

 

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「スピードを落とさずに坂道を上れば、渋滞は解消できるけど、『アクセル踏んで!』とハッキリ言うわけにもいかない。そこで考えたんですが、“ドライバーがスピードを出したくなるような仕掛け”を作ってはどうでしょう?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「ほう、例えば?」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain『ロッキー』のテーマソングを、上り坂のところだけ大音響で流すとか」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「良いですね! 確かに『ロッキー』のテーマソングを聴けば、人はアクセルを踏みたくなるものです。高速道路のFMはかなりピンポイントで流すことができるので、実現できるかもしれません。考えておきます」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「あと、ドッグレースってあるじゃないですか。オモチャのネズミを追いかけて犬が走るやつ」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「ありますが、それが何か?」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「ああいう感じで、“追いかけたくなるもの”が前方を走っていれば、アクセルを踏むんじゃないでしょうか。例えばフライドチキンを高スピードで走らせるとか」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「この時代にフライドチキンを追いかけたい!と思う人がいるかどうかわかりませんが、似たようなシステムはすでに採用されています」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「嘘でしょ!?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「道路脇にライトが並んでいて、光の点滅がスーッと前方に流れているように見えるシステムですね。実際に、ある程度効果はあるようです」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「冗談で言ったのに……」

 

f:id:jimocoro:20171221165429j:plain

 

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「トンネルの入り口で速度を緩める人がいることも、渋滞の原因のひとつだと聞いたことがあります。明るいところから暗い場所に行くと、やはり速度を落としたくなるものですからね」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plainトンネル入口も、渋滞の原因のひとつではありますね」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「もっとビカビカに明るくしたらダメなんですか? スーパー玉出みたいに」

 

f:id:jimocoro:20171221170836j:plain

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「実は明るくすればいいというものでもないんですよね。簡単に言うと、トンネルの内と外で同じくらいの明るさにするのが理想なんです」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「あ、そうか……夜中だと今度は『急に明るいところ』を警戒してスピードを落とそうとする心理が働くのかな」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「現在のトンネルは、暗さをセンサーで感知して、ちょうど良い光量に自動調節するライトを使ったりしています。なので、一昔前ほど大きな渋滞理由ではなくなってますね」

 

f:id:jimocoro:20171221155750j:plain

NEXCO中日本 川崎道路管制センターに併設している『コミュニケーション・プラザ川崎』には高速道路のジオラマが設置されています。細けぇ~!

 

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「ずっと『これを聞くとアホと思われるかもしれない』と思って黙ってたことを聞いてもいいでしょうか」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「何でも聞いてください」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「そもそも、車線を増やしたら渋滞ってなくなるんじゃないですか? 100車線くらいに」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「それはもはや道路というか、大地と呼ぶべきものだと思いますが……そうですね、車線を増やせば確かに渋滞はなくなるでしょう」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「やっぱり! 渋滞解消だ!!」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain『大和トンネル』などは3車線から4車線に増やす工事が始まったところなので、2020年までには、今よりは快適になると思います」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「その調子でジャンジャン車線を増やしましょう!」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「ところが、そうカンタンにはいかないんですよ。車線を1つ増やすには、膨大なお金がかかるわけです。本当にもう、“膨大”としか形容できないくらいの金額です。そのお金がどこからくるかというと……」

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「……もしや?」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「そう、みなさんにお支払いいただいている高速料金にはね返ります。しかも、高速料金はプール制。たとえば、地方に住んでいる人が、普段利用しない首都圏の路線拡張工事のために、地元の高速道路の料金を値上げされたりするわけですね」

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「うっ……それは、お願いします!とは言いにくい」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「ですよね~」

 

 

天気みたいに渋滞の「予報」を知ろう!

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NEXCO中日本の建物屋上からは、東名高速道路の東京料金所が見えます

 

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こんな角度で料金所を見たことない

 

f:id:jimocoro:20171221120021p:plain「もうすぐお正月ですね。年末年始もすごい渋滞が起きるんだろうなぁ……」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「道路の渋滞と言っても、24時間365日ず~っと混んでるわけではありません。渋滞が起きる時間は避けることができます」

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「理屈はわかるんですが、渋滞が起きやすい時間帯ってどうやったら知ることができるんですか?」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain私たちが全力で作った『渋滞予測ガイド』にすべてが記されています!

f:id:yto4410:20171217013439p:plain「『待ってました!』って感じが出すぎです」

 

f:id:yto4410:20171217014636j:plain

こちらが『渋滞予測ガイド』の冊子

 

●WEB版はこちら

www.c-nexco.co.jp

 

f:id:yto4410:20171217013452p:plainたとえば、2017年度の年末年始、東名でいうと、年末は『連日16時〜翌早朝4時の間に下り車線の秦野中井ICを通過』、年始は『深夜0時〜早朝7時の間に上り車線の大和トンネルを通過』できれば、事故などの場合を除いて渋滞を回避できる見込みです」

f:id:yto4410:20171219162648p:plain「めちゃめちゃ流暢に告知するじゃないですか。これ、本当に当たるんですか?」

f:id:yto4410:20171217013452p:plain「当たらないほうがいいんです。この予測を公開したところ、2017年のお盆は、1年前には35kmだった渋滞を27kmまで減らすことができました。天気予報と違って、渋滞予測は人間のチカラで覆すことができるんです」

f:id:yto4410:20171217013439p:plain「なるほど、当たらないほうがいい予測かぁ」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「我々だけでできることって、たかが知れてるんです。ドライバーの皆さんの協力あってこそ、渋滞は緩和できると考えています」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「そうですね。坂道で知らず知らず速度が落ちて、自分が渋滞の原因になっていたのかもしれません。僕も気をつけます! 今日はありがとうございました!」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「こちらこそ、ありがとうございました! よい年末年始を!」

f:id:jimocoro:20171221131259p:plain「最後に今回の記事を一言でまとめると、『坂道ではアクセルを踏んでスピードを出せ』ということでいいですよね?」

f:id:jimocoro:20171221115931p:plain「私の口からは何とも申し上げられません」

 

 

まとめ

f:id:yto4410:20171217022237j:plain

NEXCO中日本さんが渋滞解消のためにあの手この手で工夫をされていることがよ〜くわかりました。インフラ関連の事業って”できて当たり前”と思われがちですが、見えない苦労がたくさんあるんですね。

 

僕も「速度低下に注意」という表示を見かけたら、ロッキーのテーマ曲をかけて、全力で速度回復に努めたいと思います。

 

では、よいお年を!

 

 

 

(おわり)

 

書いた人:田中嘉人

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1983年生まれ。静岡県出身。2008年にエン・ジャパン入社。その後CAREER HACKをはじめとするWebメディアの編集・執筆に関わる。2017年5月に独立。Twitter=@yositotanaka

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 23話「ここほれワンワン」

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<柳田さんと民話・一覧>
23

 

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f:id:madmania:20171227155121j:plain


 

<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

11話~20話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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【まとめ】2017年総括! 地べたの「文化」と「仕事」を伝えるメディアへ

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ジモコロ編集長の柿次郎です。

全国47都道府県のローカル愛のある皆さんに支えられて、3度目の年末を無事迎えることができました。

2017年は通常運営だけにとどまらず、フリーマガジンの制作・配布、ポップアップショップの運営、写真展の開催、全国各地でのイベント登壇など、ウェブの領域を超えた動きに時間を使いました。リアルな場で読者との接点を生む機会は、今後もどんどんやっていきたいと思います。

それでは、毎年恒例の編集部おすすめ記事をお楽しみください!

 

2017年 PVランキング

1位

たくさんの「できないこと」に直面し、学校へ行けなくなった岩野響さん。両親のすすめで「できること=コーヒーの焙煎」を仕事にし、群馬県桐生市にコーヒーショップ「HORIZON LABO」を15歳で構えた響さんを取材しました。

 

 

2位

なぜ海外映画のポスターを日本で作ると、全然違うデザインになってしまうのか? ライターの社領エミが映画配給会社に突撃した結果、「お客さんの最大公約数」を狙うがゆえの映画配給のジレンマがみえてきました。

 

 

3位

どの学校でもいましたよね、「学年トップ」。あの人たちは大人になった今、どうなってるのか気になりませんか。お金持ちで幸せに…? それとも落ちぶれてド不幸に…? 
『国立大で奨学金の免除をうけたAさん』『進学校出身・全国模試一位だったBさん』の二人の今からみえる、人生の悲喜こもごもをどうぞ!

 

 

4位

実は「子どもの貧困」先進国である日本。その実情は見えづらく、社会が把握するのも困難なのが現実です。今回は社会活動家の湯浅誠さん、NPO団体の小澤いぶきさんに話を聞き、「子どもの貧困」の実情をわかりやすく伝えるマンガを制作しました。

 

 

5位

おじいちゃんっ子だったイラストレーターの杏耶さんですが、ある時、大好きなおじいちゃんが認知症に。親子で介護に取り組む中で直面したさまざまな出来事を、杏耶さん自らが漫画にしました。高齢化が進む日本で介護問題とどう付き合うべきか、考えるきっかけになれば何よりです。

 

 

6位

ニュースなどでよく目にする「国境なき医師団」って、一体どんな団体なの? ライターのヨッピーが、実際に現地で活躍する医師団の人に話を聞きました。さらに、支援者でもある高須クリニック院長・高須克弥さんにも取材!さまざまな角度から「国境なき医師団」の実像に迫ります。

 

 

7位

誰にでも訪れうるのが「肉親の死」。そんなとき葬儀の準備や手続きをどうすればいいのか、ライターの石垣りょうが自分の経験を元に漫画で紹介します。いざという時に落ち着いて対処するために、きっと役に立ってくれる記事です。

 

 

8位

この記事が公開される頃、まさに開催中の「コミケ」。同人誌のイベントはいまや全国で毎週のように開催されています。そんな同人誌の印刷を手がける「印刷所の中の人」に、原稿データに関する注意や印刷の苦労話を聞いてきました。みんな、とにかく締め切りだけは守ってあげて〜〜!

 

 

9位

百貨店の経営を支える超セレブなお得意様「外商顧客」の存在、知っていましたか? 「百貨店の売り上げの約6割を担っている」「専用サロンがある」など、わりとヤバめな暴露話をデパートの匿名社員の方にコッソリ伺いました。

 

 

10位

好きな漫画を聞かれると、大抵「カッコいいと思われたい欲」が顔を出してファッションとしてのベスト5を言ってしまう…そんな説が立証された対談企画。皆さんもぜひ、正直に「カッコつけてない漫画ベスト5」を友人同士で、社内で出し合ってみてください。確実に盛り上がれますよ。

 

 

11位

消費量がなんとピーク時から100万キロリットル以上も減っているという日本酒。自身も日本酒の飲み方がわからない漫画家・カメントツが、長野の酒造「大雪渓」に突撃しました。その結果、なんとカメントツがデザインしたラベルの「ジモコロ大雪渓」が完成!?

 

 

12位

「無くなっても気づかない都道府県」なんて存在するのか…? リサーチの結果、大胆不敵にもそのランキングを発表しています。いや、意外と気づかないものなんです…本当に。「都道府県マスター潤」の真骨頂というべき1本です。

 

 

13位

大小様々な工場で働いてきたライターのギャラクシーが、経験者だけがわかる「あるある」50個を発表! 元ヤンってやっぱり多いの? ぶっちゃけ給料って? 人間関係って難しいの? …などなど、工場で働いたことのない人には驚きの連続かもしれません。 

 

 

14位

最後には気が狂ってしまうといわれる「鏡の中の自分に『お前は誰だ?』と問い続ける」行為。試してみるのも怖いですが、ブログ「真顔日記」作者・上田啓太が本気で検証してみました。浮かび上がったのは「意識と肉体のズレからくる恐怖」。たまにはこんな哲学的なジモコロも。

 

 

15位

600種の野菜を山形で育て、日本で初めて食用ハトを養殖し、講演料は50万円…という謎の「マッドサイエンティスト農家」山澤清さん。「微生物が人類の未来を作る」という彼の壮大な人類改造計画(と、乳首上げ計画)、必読です。

 

 

ジモコロ編集長・徳谷柿次郎のおすすめ

60歳とは思えない肉体美、そして自立心と学びに多くの時間を割いてきたであろう哲学。この2つを兼ね備えた父親、滅多にいないのではないでしょうか。ライター・ナカノヒトミの源泉はこの父親にあるんだなと実感できた取材でした。記事タイトルを最後にスッと差し込む構成も気に入っています。

 

ジモコロのフォーマットがまたひとつ確立しました。それは地方で元気に活躍する中小企業社長の「ガハハ感たっぷりなエピソード力」です。関東ではお馴染み「キンミヤ焼酎」の知られざる事実も秀逸。やはり酒を酌み交わしながら、心と言葉を少しずつほぐしていくインタビューは素晴らしいですね。ライター・日西愛さんの技量あってこその記事でした。

 

地球全体の資源が枯渇し始めていて、できるだけ環境負担の少ない選択肢が必要となってきています。とはいえ、ここまで資本主義が拡大した「便利すぎる生活」を捨てることは難しく、ちょうどいいラインを探す必要がある。いっそ主語すら柔らかく置き換えて伝えるのはどうだろう? そういった経緯でこの意味深なタイトルが生まれました。公開後10日以上もジワジワとSNSでシェアされた珍しいケースですが、それだけ世の中の関心も高まっているんでしょうね。

 

ジモコロ初の「県知事」インタビュー! ライター・友光だんごの父親のコネクションを頼りに頼って実現しましたが、この事例を懐に忍ばせておけば、残り46都道府県の県知事インタビューも可能かもしれません。いや、やるしかない。

 

年末に公開したばかりですが、ジモコロ編集長として伝えたいことがすべて詰まっています。全国のライター編集者、デザイナー、ゲストハウス&カフェのオーナー、行政の方々などなど、「今住んでいる地域を盛り上げたい」と考える人全員に読んで欲しい。なぜなら、ローカル編集者の大先輩・藤本智士さんが10年以上かけて行き着いた答えだからです。知り合いに該当する人がいたらURLを送りつけよう!

 

ジモコロ工場長・ギャラクシーのおすすめ

ビジュアル系というと、人や町からかけ離れたイメージがあるけど、20年も専門店を続けることで、クールな文化に(本来なら異質なはずの)地元感がうまく溶け込んでいる。店員さんにも、ライターのひにしさんにも、ビジュアル系に対する深い愛があって、結果、すごく温かい記事になっていると思う。

 

自分自身が小学校の頃 中森明菜のブロマイドを持っていたし、そういう世代だった。なので、仕上がってくる写真すべてに「っぽい~!」と思って爆笑してしまった。銀幕のスタアや人気歌手など、僕が住んでた地方では異世界のできごとだったけど、「浅草」ではこれが地元感だったんだろうな、という不思議な感覚。

 

ライターが実際に経験したヒグマ遭遇エピソードを軸に、北海道ならではのクマ対策を聞きに行った記事。専門家の語る生態や対策が生々しくて、北海道以外の人にとっては「異国感」が楽しめる記事になったと思う。ヒグマの写真も迫力があって、絵的にもおもしろい記事だったと思う。

 

何の役にも立たないし、誰の得にもならない会話が延々続くのが良い。「友だちの家に遊びにいって、やることないから地元を散歩してる」みたいな感覚。不思議な郷愁があるけど、後に何も残らない潔さが最高ではないだろうか。

 

撮影に同行したんですが、ご主人の鍵マニアっぷりがすごくて、ず~~っと古今東西の鍵のことを喋ってた。本当に鍵が好きなんだろうなぁと。ライターは「ちょっと興味があった」くらいの立ち位置だけど、鍵愛の凄さにタジタジになってました。

 

株式会社アイデム・藁品優子のおすすめ

「名前は知っているが、細かい仕事内容はそういえばよく知らないな…」

そんな仕事をライター自ら一日体験し、記事にする企画の第一弾です。ライター・みくのしんさんの握力が27キロだと知った時は「なぜ解体作業をチョイスしたんだろ…」と愕然としました。

最初はぎこちない雰囲気だったのが、映画談義(?)に花を咲かせ、全くウケない冗談をいえるぐらい馴染み、顔に泥が飛ぶほど熱心に作業をしていくさまがリアルで面白い。
「実はよく知らなかった」仕事を掘り下げて、楽しく詳しく解説するこの企画。求人メディアのアイデムとしても続けていきたいです。第二弾、第三弾も乞うご期待!

 

日本の職人文化が危機に瀕している一番の原因とは? 記事内で飴細工職人・手塚新理さんは「知られていないこと」と話しています。ならば、アイデムはそれを支えたい。

少しでも多くの人に日本の職人文化の実態を、その技術の尊さを伝えたい。それが「地元メディア」と銘打つジモコロの役割だ!と志を新たにした記事です。

 

カンピューターおばちゃんこと藤原さんの元気で明るすぎるキャラクターもさることながら、雇用問題への取り組み、柔軟な働き方、リーダーとしての指導方法など、マネジメント手腕も学ぶところが多かったです。
まだまだ日本にはカンピューターおばちゃんのような元気で想像&創造力のある方がたくさんいるはず。2018年もたくさんのおもしろ人間を紹介して、地元メディアとしてジモコロも成長するぞー!そしてわたしも孫にぽんっと5万円渡せる元気で気前のいいおばあちゃんになりたいっ・・・!

 

2017年 締めの言葉

来年5月に3周年の節目を迎えます。企画と熱量。現場主義の”一次情報”を掴んでくるのはもはや当然の使命です。だからこそ今後の編集方針を新たに考えました。

 

地べたの「文化」と「仕事」を伝える

 

今後も中央集権の他人事意識が、ローカルの可能性をスルーし続けるかもしれませんし、メディアが流行りものとして消費し続けるかもしれません。きっと憧れや嫉妬が判断を鈍らせることも。また、成功事例のコピーに飛びつく地方自治体の動きも気になりますよね。

 

そういうの一回、無視しませんか。

まずは自分がやれることから始めませんか。

 

社会変化の激しい時代だからこそ今一度立ち止まって、”地べた”を見つめ直す。手の届く範囲にある価値を再評価する。気の合う仲間を集めて、楽しい場を自ら作り上げる。ジモコロはそうした人たちを応援するメディアでありたいと思っています。

 

それでは来年もよろしくお願いします!

 

 

ジモコロ編集長:徳谷 柿次郎

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株式会社Huuuu代表取締役。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916 

 

じいちゃんとわたし「仕方ない」第6話

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

ジモコロをご覧の皆さん、こんにちは。食いしん坊イラストレーターの杏耶です。

私は母子家庭で育ったため、保育園の送り迎えやゲームの相手になってくれたのはじいちゃんでした。だけど、ある時から祖父の言動におかしなところが増え……

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アルツハイマー型認知症と診断された祖父。まるで別人になってしまったかのような祖父の介護に、母と私は次第に「限界かもしれない」と感じ始めます。

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じいちゃんとわたし「大好きなじいちゃん」 第1話

じいちゃんとわたし「負の連鎖」第2話

じいちゃんとわたし「介護を受け止めること」第3話

じいちゃんとわたし「話を聞いてもらう」第4話

じいちゃんとわたし「ケアマネージャーの存在」第5話


 

この物語は、大好きなじいちゃんを蝕んだ認知症と、家族の絆を描いた漫画です。

 

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介護疲れで心身ともに参っている家族の方の気持ちが軽くなるような、介護にも色んな道があるんだと思ってもらえるよう漫画で伝えたい。

というわけで第6話、気軽に読んでみてください!

  

6話「仕方ない」

 

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

 

書いた人:杏耶

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食いしん坊イラストレーター、食べることと料理をすることが大好きで、趣味の一環で手軽に作れる様々なレシピを独自に考案、それをイラスト化した「あやぶた食堂」を2015年に発売。その他に丼物オンリー漫画「ド丼パ!」、東北のお酒と郷土料理を紹介したコミックエッセイ「のんで東北たべて東北」も発売中。Twitter ID→ @ayatanponpon / WEBサイト→ http://ayabubububububu.jimdo.com/

 

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「未来の林業は稼げる」北海道・下川町の60年構想が芽吹いた話

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こんにちは。犬とみせかけてライターの根岸達朗です。

 

今日は、北海道の下川町(しもかわちょう)にきています。

 

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下川町? あんまり聞いたことない町だなあ・・・という人も多いかもしれないので簡単に説明させてください。まず、下川町というのはこのあたりにあります。

 

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旭川から北東に約100キロ。東京23区とほぼ同じくらいの面積に約3400人が暮らしている小さな町です。

 

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スキージャンプのレジェンド・葛西紀明さんの出身地としても知られていて、ジャンプ競技ではオリンピック選手を数多く輩出。町内には誰でも無料で使うことができるジャンプ台なども設置されていて、ウィンタースポーツが身近な町です。

 

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そんな下川町は、町の9割が森林。

 

ゆえに、主要産業は「林業」。約3000ヘクタール(東京ドーム640個分くらい)の町有林を活用した循環型の森林経営を進めていて、余すところなく木を使うというのが、この町のポリシーになっています。

 

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切り出した木を加工・販売する「林産業」も盛んで、木工作家の移住も近年はどんどん増えているそう。トドマツやアカエゾマツなどからエッセンシャルオイルや防腐・防虫効果のある燻煙剤をつくったり、市内の各所で下川町産の木を使った加工品が販売されています。

 

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▲フプの森 北海道モミエッセンシャルオイル 公式サイト

 

余すところなく木を使うのは加工品だけではなくて、たとえば、木質バイオマスエネルギーもそのひとつ。間伐や山の手入れなどから出た残材を集めて燃やし、その熱で温水をつくり、配管を通して公共施設や温泉施設、集落に供給しています。おかげで室内は、冬でも半袖でいられるほど快適に過ごせます。

 

目指すは、町中のエネルギーをすべて再生可能エネルギーに変えて、暮らせるようになること。木質バイオマスの導入によって浮いたお金で、子どもたちの給食費や医療費を安くしたり、育児手当を手厚くしたりなんてことを現在、町は進めています。いやはや、壮大な計画ですが、すべて実現できたらこれめちゃくちゃすごいし、いいですよね。

 

さらに、下川町には・・・

 

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こんなにすてきな雰囲気のフランス料理店もあって

 

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ここの料理がとにかく絶品。都会でもそうそうないよ!ってくらいの洗練された味で感動を与えてくれますし、

 

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ほかにも、世界中を旅してきたおじさんが開いたとても雰囲気の良いカレー屋さんもあって、

 

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ここのカレーがもう毎日食べたいくらいのおいしさ。

人口規模の割には個人経営の飲食店がたくさんあるような印象で、グルメもなかなか楽しめそうなんですよね。

 

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いやー北海道の大自然に囲まれながら、悠々自適に暮らすにはこの下川町、実はとてもいいところなんじゃない? 

 

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いやーほんといいところだよなあ・・・下川町。

 

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ほんといい。よさがある。よさしかない。

 

いやーこれは・・・・

 

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住んでみてえ〜!!

 

……と、まあ、地方好きの僕なんかはそんな気分にもなったわけですけれども、実際下川町は2012年には転入者の数が、転出者の数を上回りました。以前は北海道のなかでもトップクラスの過疎地域だったのですが、住環境の良さや就労支援の手厚さなどでそうした状況を脱しつつあるのです。

 

shimokawa-life.info

 

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環境はいいし、食は豊か。林業も盛んだし、働く場所もちゃんとある。外からどんどん人が集まってきているのには理由があったんですね。

 

今回はそんな下川町に暮らす人たちの雇用の受け皿にもなっている林業をめぐるお話。これからどこかに移住してみたいな〜、森に関わる仕事に興味があるな〜、なんていう人はぜひ下川町の取り組みに注目してみてください!

 

それでは、始まります。

 

森へ

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ブロロロロロォ〜

 

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キイッ……。ガチャガチャ(立ち入り禁止のチェーンを外す音)。

 

f:id:ONCEAGAIN:20171201150505j:plainガタゴト……ガタゴト……

 

f:id:ONCEAGAIN:20171201150541j:plainガタゴト……ガタゴト……

 

f:id:ONCEAGAIN:20171201150955j:plainゾロゾロ……

 

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「みなさんこんにちは! ようこそ北海道下川町までお越しくださいました。私はこの町で『森林(もり)づくり専門員』をやっている斎藤丈寛です」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「今日はみんなで下川町のことを学びにやってきました。ぜひいろいろと教えてください!」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「はい。まず、下川町は町の面積の9割が森林で、その森林を利用したまちづくりを進めています。2011年に国から環境未来都市の選定を受けて、環境・社会・経済の三つの価値を創造し続ける“誰もが暮らしたいまち”“誰もが活力あるまち”の実現を目指しているのです」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「ふむふむ」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「それは豊かな森林環境に囲まれ、森林で豊かな収入を得て、森林で学び、遊び、心身の健康を養い、木に包まれた心豊かな生活を送ることができることを目指そうというもの。基幹産業である林業・林産業が移住者の雇用の受け皿になっていてこれが一定の成果を上げています」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「へえ」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「実は私も森で働きたいという思いがあって、18年前に埼玉からIターンで移住しました。本当はツリークライミングで起業しようと思ったんですが、この仕事を始めたらそれがおもしろかったので、そのまま今日に至っているという感じですね(笑)」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「森林づくり専門員ってあんまり聞きなれない職種ですけど、どういうことをやる仕事なんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「簡単にいうと、下川町の循環型の森林経営を進めていく役割です。下川町は約4700ヘクタールの町有林を管理しているのですが、そこで伐採⇒植林⇒育成のサイクルを人がこの町に暮らすかぎり、永遠に繰り返すことができる仕組みをつくりました

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「永遠に。すごいですね」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「このサイクルは毎年50ヘクタールの土地に、カラマツやトドマツなどの針葉樹を植林していくことで成り立ちます。針葉樹は60年で太い木に成長するのですが、これを60年間続けることによって、3000ヘクタールの土地に1年生〜60年生の木が育ちます。そういう環境をつくることができれば、毎年一定数の木を確実に収穫することができますよね」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「なるほど。でもそれってつまり、60年間の下準備が必要ってことじゃないですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「はい。下川町はこれを昭和29年からやっています。きっかけとなったのは、この年に発生した洞爺丸台風。これが下川町の林業に甚大な被害を与えたことが、先々を見据えた循環型林業を始めたきっかけになっています」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「では今の下川町というのは、60年の下準備を経て、やっと動き始めたところといってもいいのかもしれない? 壮大な計画だったんだなあ・・・」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain林業というのはすぐに結果が出るものではないんですよね。でもそうやってちゃんと循環する仕組みをつくることができれば、永続的に山の手入れをする仕事は生まれますし、木材加工の仕事だって生まれます。私たちが今この町で豊かに暮らすことができるのは、60年で循環するこの人工林があるからなんです」

 

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伐採した木は町内の工場で、建築・土木用資材や木炭にするほか、割箸、木酢液、アロマオイルなどの原料にもする。利用法がない質の低い木材は木質バイオマスボイラーの燃料にするなど、資源を余すところなく活用しているのが特徴

 

素人でも働ける林業へ

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「ところで最近は下川町は移住者にも人気があるということなのですが、それというのは、循環型林業が成果を出し始めて、雇用が安定しているという点もありますか?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「そうですね。実際にU・Iターンで下川町に移住をした多くの人たちが、林業、あるいは林産業で通年の仕事をしていますし、いつ来ていただいても森の仕事はあるというのが、この町のひとつの強みにはなっているのかもしれません」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「すごいなあ」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「特に、下川町の林業は未経験者でも働けるということもあって、近年は若返りも進んでいるんですよ」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「え、そうなんですか? 林業って職人技で、未経験者が入っていくには敷居が高そうなイメージがあったんですけど」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「でもそれだと移住してきてもらえないですし、循環型の森林経営も持続可能なものではなくなってしまいますよね。そこで、下川町の森林組合はかれこれ20年ほど前に、先々を見据えて、林業未経験者でも受け入れる体制を全国に先駆けてつくったんです

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「へえ。20年も前に」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「下川町の森林組合には今20数名のメンバーがいますが、そのうちの8〜9割は私と同じように森で仕事をしたいと思ってやってきたIターン移住者で、そのほとんどの人が未経験からこの世界に飛び込みました。平均年齢は40歳くらいです」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「おお、若い」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「都会の満員電車で通勤して、夜遅くまで残業している人たちに比べたらかなりホワイトな職場だと思います。残業もありませんし、有給休暇もついています。あと、町内にはいくつか現場があるんですが、どの現場にも車で直接アプローチできるように町がお金を出して林道の整備をしているんですよね。これは同時に木材の運搬の効率化にもつながっています」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「では、お給料はどうですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「都会みたいにたくさんもらうことはできませんけど、家族を持つことができるくらいには安定した収入がありますよ

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「へええ」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「移住をしてきた人たちが、通年で働けて、家族を持てて、生活する基盤をつくることができる。下川町はそのためのツールとしてこの林業を使っています。たとえば、20名の林業従事者がいて、それぞれが4人家族だったとしたら、その掛け算の人数が下川町で生活することになる。そうなれば当然お金も動きますし、人口も増えます。町としてそこに投資をするのは理にかなっているんです」

 

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町内の中心部から作業現場となる「職場」までは車で10分程度。自宅から職場までドアtoドアで通勤できる。

 

設備投資は惜しみなく

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「でもいまふと思ったんですけど、下川町って冬はとても寒いですよね?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「はい。マイナス30度くらいになるときもあります

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「マイナス30度……! そんな環境で山に入って木を切るとかハードすぎません?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「大丈夫です。今はチェーンソーで一本一本、木を切っていくなんてことはしないので。『ハーベスタ』という専用の機械を使います。コックピットのなかはヒーターが効いているので、厳冬期でもスニーカーで快適に作業ができます

 

 

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木を切った瞬間にその木の太さや重さなどを計測する装置もついているハイテクマシン。近い将来、測定した数値は携帯回線などを使って、事務所に電波で飛ばすことが可能になるかもしれません。

 

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「基本はラジコンみたいなものですね。ゲーム好きの人なら、たぶん2年くらいあれば自在に動かせるようになるんじゃないでしょうか

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「ゲーム好きレベルでいいんですか!?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「はい。実際ゲーム好きの人のほうが、この機械の扱いがうまい印象がありますね。さらにこの機械、最新のVR技術を使えば、シミュレーターでも操作練習が可能になっています。将来的には実際の現場に入る前に2台のシミュレーターを組みわせて、作業の流れを体験できるようになると思います」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「おお……テクノロジーの進化を感じますね」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「でもこの機械、結構な値段するんですよね。いくらだと思います?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「うーん……500万円とか?」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain3000万円です

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「さらっと笑顔で言ってますけど……フェラーリ買えますよ?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「そうなんですよ。でもそこは誰でも林業ができるようにしなくちゃいけないですし、必要な投資だと考えています。あと最近ではオーストリア製の視認性の高い林業専用ジャケットの導入なども進めていますね。これがまたスタイリッシュでかっこいいんですよ」

 

f:id:ONCEAGAIN:20171202073016p:plain

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「ファッション性にも機能性にも優れた“いいもの”を使う。機械の導入も含めて、それらすべてが林業を働きやすい仕事にするために必要な投資だと考えています」

 

循環型林業のその先へ

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f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「近年では映画『Wood Job!』などのヒットもありましたが、林業に少しずつ注目が集まっていますよね」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「そうですね。とはいっても、ほかの一次産業に比べたら進んでいるとはいえないでしょう。まだまだ林業にはやれることがたくさんあると思っていて、たとえばICT、IoT化して、機械にまかせられる仕事は機械にまかせることもそのひとつだと思っています」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「確かに最近は一次産業もIT化がどんどん進んでいますよね。農業だったらたとえば、無人トラクターシステムも実装段階だと聞きますし」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「もちろん、職人的な経験が必要な仕事もあるし、テクニックは継承しないといけないので、すべてを機械にまかせられる段階にはありません。ですが、林業は新しいことを実践しても、結果がでるのが20年〜30年後だったりするので、やれることは今すぐにでもやっていかないと手遅れになるんですよね

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「それでいうと、何か新しいことは始めているのでしょうか?」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「ひとつは成長の早い苗木の植林。これは、北海道の林業試験場が開発したもので、マグロでいうと全部大トロのおいしいところみたいな、そういう品種です」

 

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CO2の固定能力が一般的なカラマツよりも良い新品種。通直生が高く、まっすぐに伸びる。土に根付く確率を示す活着率は100%に近い(一般的なカラマツは80〜90%くらい)

 

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「成長が早いので下刈り作業が省力化でき、人出をあまりかけずに森にすることができます。この新品種が中心の森になれば、これまで60年かかっていた循環型林業のサイクルにかかるコストを下げることができます

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「そうなのか〜」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「でもそういう新しい取り組みや、職場環境の整備といったことは、下川町だけが力を込めてやっていても本当はだめだと思っています。日本全体で林業のことを考えて、みんながちゃんと儲かるようにしなくちゃいけないし、みんなが楽できるようにならないといけない

f:id:ONCEAGAIN:20171213111121p:plain「確かに。儲からなくてきつい仕事は先細りが見えていますからね」

f:id:ONCEAGAIN:20171213111111p:plain「一次産業のなかで林業はこれからの成長産業です。循環型の森林経営はすぐに結果が出るものではありませんが、地道にやり続ければ確実に成果が出ます。森からの恩恵を短期的な視点で消費してしまうだけではなくて、長期的な視点で循環させるための努力をこれからも惜しまずにやっていきたいですね」

 

まとめ

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町有林を60年サイクルで計画的に運用することによって、資源とお金、そして雇用を循環させる下川町の持続可能な森林経営。

 

地方創生の名のもとに行われる公共事業の多くが、持続可能かどうか疑わしいものも多いなかで、長期的な視野で林業と向き合う下川町の取り組みは、一次産業のこれからを考える上でも、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

 

これから本格的な人口減少時代を迎えるなかで、僕たちの暮らしを支える一次産業としての林業はどのように変化していくのか。テクノロジーの発展とともに進化する林業のこれからに注目していきたいものです。

 

それではまた!

 

 

☆下川町の関連記事はこちら

移住先は見ず知らずの土地。26歳の編集者が見つけた「地域の編集」(BAMP)

一人ひとりが歴史を紡ぐ風を生む【北海道下川町】特集、暮らしながら始めます。(灯台もと暮らし)

 

 

書いた人:根岸達朗

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1981年生まれのライター。文章を書いて生きています。東京・多摩地域在住/Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗/note:愛する自由について

 

写真:藤原 慶

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21歳からカメラとバックパックを持って日本放浪の旅に出る。
全国各地を周りながら撮った写真を路上で販売し生き延びる生活を続け、沢山の出逢いと経験を積む。
現在は東京に落ち着きカメラマンとして活動中。

Instagram : @fujiwara_kei

 

「安倍晴明は国家公務員だった」子孫が教えてくれた陰陽師の真実

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こんにちは、ライターの菊地です。

突然ですが、みなさんは陰陽師(おんみょうじ)という職業をご存知でしょうか?

映画やマンガ、ゲームなどで一度は聞いたことがあるはずです。例えば―

 

陰陽師 2 (ジェッツコミックス)

原作・夢枕獏|画・岡野玲子の漫画『陰陽師』

※映画やドラマにもなっています

 

帝都物語

原作・荒俣宏:主演・嶋田久作の映画『帝都物語』

 

新・豪血寺一族-煩悩解放-

ニコニコ動画で有名になった動画『レッツゴー!陰陽師』

※PS2用ゲーム『新・豪血寺一族 煩悩解放』のPV

 

など、陰陽師をモチーフにした有名な作品はたくさんあります。

それらの作品から陰陽師という職業を推察すると、以下のようなイメージになるのではないでしょうか。

 

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呪術の天才・安倍晴明が、使い魔である式神を操り、都を騒がせる鬼や魔物を相手に七面六臂の活躍! いにしえの魔法戦争、今 決着!

 

 

か、か、か、カッコイイ~~!

 

 

 

でも……それって……

 

 

 

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というわけで今回は、陰陽師の代表格・安倍晴明の末裔に会うため福井県おおい町にやってきました。

聞きたいことは以下3つ!

 

・陰陽師って実在した職業?

・本当にあったとして、マジで呪術を駆使するような職業だったの?

・謎めいた天才・安倍晴明ってどんな人だったの?

 

これらの疑問をぶつけて、陰陽師の真実を白日のもとにさらしてみたいと思います。

 

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話を伺ったのは、安倍晴明の末裔として、土御門神道本庁(つちみかどしんとうほんちょう)の宮司を勤める藤田 義仁(ふじた・よしひと)さん。

 

さあ、さっそく話を聞いていきましょう!

 

 

 安倍晴明の真実! 50歳で学生……?

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f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「今日はよろしくお願いします!」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「よろしくお願いします。陰陽師について、どういったことを聞きたいんですか?」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「僕、陰陽師や安倍晴明が登場するような作品が好きなんです。夢枕獏さんの小説や、岡野玲子さんの漫画みたいな。そこでお聞きしたいんですが……」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain夢枕獏さんと岡野玲子さんなら、取材に来たことがありますよ。ていうか岡野さんは昨日来ました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「へぇ~……えぇっ!マジで!?

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「お二人とも熱心な方でねぇ。うちに残ってる文献や資料を色々お見せして、お話をしました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「そ、そうなんですか。すごいな……。で、えーっとどこまで話しましたっけ? あぁ、陰陽師をモチーフにした作品はたくさんあるって話です。あれって、真実なんでしょうか?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「『あれ』というのは?」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「つまり、そういった作品によると、彼らは式神を自在に操って妖(あやかし)を成敗したり、呪術を使って要人を守ったりしてますよね。それは、実話なんですか?」

 

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f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「そんなバカな(笑)」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「くっ……薄々思ってたけど、やっぱりあれは架空の物語なのか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「たしかに小説や漫画に登場する安倍晴明は、呪術を使ったり式神を操っていたり、オカルトなイメージで描かれていますね。でも残念ながら、それは少し違います」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「では、実際の安倍晴明はどういう人物だったんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「実は詳しい情報があまり残っていないんですよ。残っている記録は、ほとんどが50歳前後になってからのもの。だから、どういった人柄だったのか、どんな生活を送っていたのかも、わかっていないんです」

 

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f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「物語の晴明は若い姿で描かれてることが多いのに……歴史に登場するのは50歳からなんですね。逆に50歳の時に何があったんですか? 出世した?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「いえ、普通の学生でした」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain50歳で学生?? キテレツの勉三さんを凌駕する遅咲き!」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「遅咲きですよねぇ。しかも生涯、一番えらい位にあたる陰陽頭(おんみょうのかみ)になることもなかったし、特別すごい身分の陰陽師というわけではありません

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「イメージと違う~~! 言っちゃ悪いですけど、めちゃめちゃ平凡な人じゃないですか。なぜ安倍晴明が陰陽師の代名詞になるほど有名になったんですか?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「私は、今昔物語などで登場する逸話がきっかけじゃないかと考えています」

 

今昔物語とは

平安時代に登場したとされる説話集のこと。貴族や侍、農民、そして鬼や盗賊、陰陽師など様々な人物が登場する著者不明の物語集。

その中で晴明は『天文博士の安倍晴明という陰陽師がいた。若くして昔の大家に勝るとも劣らない優れた陰陽師であった』と記述され、鬼を察知して回避したり、式神を追い払ったりするなどのシーンがある

 

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「ただし、平安期の今昔物語はあくまできっかけで、名が広まるようになったのは江戸時代あたりからかな。色んな逸話が語られたり、物語に登場するようになりました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「安倍晴明が生きてた時代から、100年以上も経って突然有名になったと。一体なぜ、特に偉くなかった安倍晴明が、逸話の主人公に取り上げられたのでしょうか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「詳しいことはわかりません。ただ、偉くはないけど天文学の分野ではかなり優れた人物だったようで。そういう立場的なものから、物語に使いやすかったのかもしれません」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「なるほど。50歳まであまり情報がないから自由に想像できるし、偉くはないけど優れた人物だったということは伝わっているから神秘性がある……。そう考えると、創作の主人公にはピッタリなのかもしれません」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「言い伝えでは、狐の子だったとか、鳥の話す言葉を理解していたとか、いろいろ言われていますけどね。事実かどうかはわかりません。私は、残っている逸話の9割は創作だと考えています」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「安倍晴明の子孫がそんなこと言っていいの!?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「晴明の子孫ということで結構色んな方が相談に来られるんですけどね。『何か変な霊がついてる』といったような相談は全部お断りしています。私にはよくわかりませんから」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「式神を使って追い払ったりしないんですか? 」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「しませんよ! 病気の相談もよくされますが、『病院に行ってください』とお伝えします。病気のことは医者の方がよくわかっとりますから」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「ごもっとも」

 

 

陰陽師ってどういう仕事だったの?

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f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「安倍晴明の逸話は、あくまで創作ということなんですね……。では、実際は陰陽師ってどんな仕事をする人たちだったんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain陰陽寮という……今でいう文部科学省のような国の機関があったんですが、そこで働く国家公務員のことを陰陽師と呼んでいました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plainえー! 陰陽師って国家公務員だったの!? イメージと違いすぎる!」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「逆に聞きますけど、どういうイメージだったんですか?」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「フリーランスとして、魔物に困ってる公家や市井の人々を相手に、エクソシスト的な業務を請け負っているのかと」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「夢を壊して申し訳ないですが、ガチガチの国家公務員ですね。博士や学生なども在籍し、教育機関としての役割も兼ねていたようです」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「役所と大学が一緒になったみたいなイメージ……?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「そんな感じですね。業務としては、主に占いや天文、暦や時間などを編纂(へんさん)していました」

 

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天体の位置を測定するために用いられた渾天儀(こんてんぎ)

 

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「時間を編纂……って、すごいことでは? 時を司る神、クロノスじゃないですか!」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「それは別の宗教です。時間を編纂するというのは、時間を測定するという意味ですね」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「時間を測定……素朴な疑問なんですけど、昔の人ってどうやって時間を測ってたんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain漏刻(ろうこく)と呼ばれる時計を使っていました。いわゆる水時計ですね」

 

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こちらが『漏刻』。上の水槽から下の水槽に落ちた水量で時間を割り出します

 

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「漏刻を使って、日の出から日の入りまでの時間を測り、今が何時なのか測定していました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「たぶん漏刻というのは、昔はめちゃめちゃ貴重で、最先端の機械だったんでしょうね。いわば、それの“番”をして、時刻を調べていたと 」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「はい。陰陽師たちは時間を測定したり、日々 天文学を勉強したりして、暦(こよみ)を作っていました。それがメインの業務と言えるでしょう」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「 暦というのは、僕たちが普段から使っているカレンダーのことですか?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「はい。といっても、今のカレンダーは『新暦』ですが、当時は『旧暦』のカレンダーが使われていました」

 

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これが「旧暦」のカレンダー。月の運行をもとに1年を計算する手法で作られている(ちなみに「新暦」は、太陽の周りを地球が一周する時間を基準に作られている)

 

 

メイン業務のカレンダー制作と占い

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安倍晴明の末裔として、土御門神道本庁の宮司を勤める藤田さんは、現在でも歴を作る仕事を続けている。

写真は来年・平成30年度の『運勢暦』。三嶋大社や平安神宮、稲荷大社にある『運勢暦』は、昭和20年からずっと藤田さんが作っているそう。

 

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「陰陽師って、カレンダーを作ってたんですね。なんか……業務内容、地味すぎません?

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「呪術も魔物も出てこないので、かなり地味に聞こえるかもしれませんね。でも当時は大切な仕事だったんですよ。暦がなければ、祭りの日時も決められませんから」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「祭りの日取りなんて、いつでもいいのでは?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「いえいえ、祭りも、日取りも、すごく大事です。今でも結婚式は『大安』や『友引』にするし、葬儀の日に『友引』は縁起が悪いといって外すでしょ? あれ『六曜(ろくよう)』といって、陰陽道から来てるんです」

 

カレンダーに書いてある『友引』『仏滅など』六曜の意味

・先勝
「先んずれば即ち勝つ」の意味。万事に急ぐことが良い。

・友引

「凶事に友を引く」の意味。葬式を行うと、友が冥土に引き寄せられる(=死ぬ)と言われる。

・先負
「先んずれば即ち負ける」の意味。勝負事や急用は避けるべき。

・仏滅
六曜の中で最凶の日とされ、婚礼などの祝儀を忌む習慣がある。

・大安
六曜の中で最も吉の日とされる。何事においても成功しないことはない日。

・赤口
午の刻(午前11時ごろから午後1時ごろまで)のみ吉で、それ以外は凶。

 

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「そして『祭り』とは、本来は神を『祀る』ことであって、神さまや尊(みこと)に祈る儀式でした。古代における非常に重要なイベントだったんです。だから日取りが重要だったわけですね」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「祭りというと出店でアメリカンドッグを食べるイメージしかなかった」

 

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家の間取り図に重ねて、家相を占う道具。間取り図にの中心において方位を確認しながら、水場の位置や窓の位置などを決める。

 

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「旧暦の中でも、当時の歴は『具注暦(ぐちゅうれき)と呼ばれ、朝廷が厳密に管理していました」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「ぐちゅうれき……というのは、どういうものなんですか?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「日時だけではなく、方位などの吉凶、その日の運勢などが書き込まれた暦ですね。この暦をもとに、色々な物事の日取りを決めたり、占っていたわけです」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「む! 占い!?」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「そんなに食いつかれると申し訳ないんですが、菊地さんの持つイメージとは少し違うかもしれません。ここで言う占いとは、いわば統計学なんですよね。『今までは、あの星に動きがあると良くない年になった。だから今年もそうなるだろう』みたいな」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「う~ん、天気予報のような感じなんですかね? 『3月に、ここに低気圧があると雨が多くなる』とか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「過去のできごとから事象の原因を考えたり、予測していたんでしょう。なので、未来を占ったり行動指針を決めたりするのも、平安の当時なりに、綿密な計算があったんです」

 

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外出先や出張先で方角を確認するために使う、方位磁石のようなもの。陰陽道では、あらゆる場面で方位が重要視される。商談や打ち合わせのときには、自分が北を背にして座ると有利に進むらしい。

 

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「そうか……今みたいに物理学で原因が解明してるわけじゃないですもんね」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain今まではこうだった、というデータを集めて、対処を“暦”という形で伝えていたんですよ」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「学者でもない町民なんかは、『理解できない天候や運勢に、占いで対処する陰陽師』のことを聞いて、超常的な能力をもった人間、という風に描いたのかな」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「実際の陰陽師は、天文学で星の運行を調べ、吉凶を記した暦を作り、時間を測る公務員だった。なんとなく、どんな仕事か、わかって頂けましたか?」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「はい! 魔法みたいなロマンチックなものではなかったけど、当時の科学者として未来を予測するために星を眺めてたんだな……と思うと、別のロマンを感じてきました」

 

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f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「でも、霊的なものが本当に一切なかったというのは、やっぱりちょっとだけショックでしたね(笑)」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「いや、霊的なものが『一切なかった』というと、それはそれで、私には断言できません。伝えられてる逸話があまりにも多すぎる

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「でも、『残っている逸話の9割は創作』っておっしゃってたじゃないですか」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「9割はね。でも残り1割は……」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「(ゴクリ)」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「あはは、まあそういった逸話も、陰陽師を知るきっかけになってくれればと思ってます」

f:id:jimocoro:20171226203421p:plain「僕が完全にそのパターンでした。では、今日は興味深い話を色々とありがとうございました!」

f:id:jimocoro:20171226203433p:plain「はい、ありがとうございました」

 

 

 

まとめ

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いかがでしたか?フィクションの世界だけの、どこか遠い存在だと思っていた陰陽師。

 

しかし実際は、私が想像していた陰陽師とはかけ離れていました。まさか陰陽師が国家公務員で、カレンダーを作っていたとは! 

 

それに、あの安倍晴明が50歳まで無名だったなんて……。

 

なんだか元気が湧いてきました!だって今から頑張れば、僕でも歴史に名を残せる可能性があるってことですよね? ?

 

よーし! 頑張るぞー!

 

俄然やる気が出てきたので、今日はこの辺で失礼します!

 

 

取材協力:天社土御門神道本庁 藤田 義仁さん

おおい町暦会館 館長 谷川泰信(たにがわ・やすのぶ)さん

※取材のため特別に写真撮影の許可をいただいております。

 

 

書いた人:菊地誠

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自社メディア事業を手がける西新宿のデジタルマーケティング企業、株式会社キュービックのPR担当兼ライター。タイ人と2人で暮らしています。タイでドリアンの畑を作成中。動物とぬか漬けが好き。Facebook:菊地 誠 / Twitter:@yutorizuke / 所属:株式会社キュービック

「俺のダチは二人死んでる」危険なハチを追い続ける信州の男

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こんにちは、ライターの友光だんごです。

僕は今日、長野県の辰野町(たつのまち)に来ております。

 

ここ辰野町には東日本一といわれるホタルの名所「松尾峡」があります。しかし目的はホタルではなく、

 

「ハチ追い」名人に会うため

 

なんです。

 

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いや、ハチって見た瞬間に脳が「ヤバイ」って叫ぶ見た目じゃないですか。カラーリングといい顔つきといい凶々しすぎる。その上刺すし。

 

そんなハチを…追う………? なんでわざわざ……?

って思いますよね。つい数ヶ月前にもハチに人が襲われる事故がニュースになってました。

 

 

不安になって調べてみると、2010〜2015年に日本でハチが原因となった死亡事故は119件。

1年に約20名以上が亡くなっていて、日本での有毒生物による死亡件数の第1位だそう。

※参考文献『子どもにも教えたい ハチ・ヘビ危険回避マニュアル~刺される咬まれるには理由がある』(西海太介著・ごきげんビジネス出版刊)

 

そんなハチを追う名人とは、一体何者なんでしょう???

  

  

ハチを追い続けて半世紀以上!

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待ち合わせ場所の林に着くと、車が何台も止まり、なにやら準備をしている様子です。

 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「あの、すみません、皆さんは『ハチ追い』の方たちですか」

f:id:tmmt1989:20180109021141p:plain「そうだよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「やっぱり!ハチ追い名人がいるって聞いたんですが…」

f:id:tmmt1989:20180109021141p:plain「ああ、大久保さんだな。あの人はすごいよ。あ、ちょうど大久保さんが来たよ」

 

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あっ!

 

f:id:tmmt1989:20171205141641j:plain

あれが……

 

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ハチ追い名人だーー!!!

 

名人は大久保巻彦(おおくぼ・まきひこ)さん、御年70歳。

確かにツワモノの風情が感じられます。

 

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「あんたかい、ハチ追いに興味があるってのは」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「はい!ちなみに名人はいつからハチ追いを?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ガキの頃からだから、もう60年近くやってるんじゃねえかな」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「大ベテランですね。最初にそもそもの質問なんですが、『ハチ追い』って何なんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「知らずに来たのか? しょうがねえなあ。ハチを追いかけて巣のハチの子を採る信州地方の伝統猟が「ハチ追い」だよ

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「猟なんですね。ハチの子を採ってどうするんですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain食べるんだよ。ここいらじゃイナゴもハチの子も昔からずっと食ってるからな」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「そうか、長野は昆虫食の文化があるんだった。でも、ハチって刺しますよね? 危なくないですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そうだな……」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain俺のダチは二人、ハチに刺されて死んだ

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「!!!!????」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「刺される場所によるんだけどな、動脈を刺されちまうと一発であの世行きよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「そんな…」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「俺も一度刺されたことあるけどな、数分で目が見えなくなるんだ

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「もう帰ろうかな」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「まあ大丈夫よ、運が悪くなきゃ。それじゃ始めっからよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「この流れでやるの怖すぎませんか…?」

 

 

ハチをおびき寄せ、走る走る!

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名人がいかつい風貌の仲間と準備を始めました。

 

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「名人、それは何ですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ああ、イカの切り身を吊るしてるんだ。ハチを呼び寄せる餌だな。奴らは鶏肉でも馬刺しでもカエルでもなんでも食うぞ。ほれ、もう何匹か来た」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「え、どれですか……?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「これだこれ」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「あれっ、スズメバチみたいなのを想像してたんですが意外と小さい!これひょっとして余裕じゃないですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ここいらじゃ『スガレ』と呼んでるが、クロスズメバチってスズメバチの一種よ。刺されたらかなり痛いぞ

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「スズメバチの一種!ということは毒も…?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「もちろんある」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「あるのか…で、ハチをおびき寄せたらどうするんですか?」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「これを食わせるのよ。餌に目印をつけてな」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「小さく丸めたイカの肉団子に、白い目印をつけてるんですね」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「昔は目印に『こより』を使ってたが、今はビニール製だな」

 

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イカに寄ってきたハチに目印付きのエサをうまく抱えさせます

 

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「こうやって餌を抱えたハチは、巣まで飛んでいくんだ。そこを追いかけて、地面の下にある巣の場所を突き止めるのよ。奴らは巣を地中に作るんだ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「ハチを追いかけるのは大変じゃないですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「だから、奴らの習性を利用する。餌を見つけると、ハチは仲間を呼ぶんだ。そして仲間たちと一緒に、餌を少しずつ肉団子にして巣まで運ぶ。その間、奴らが飛ぶルートは同じなんだ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「つまりハチを見失っても、ルートに張り込んでればまたハチが飛んでくると」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そうだ。今日は俺の仲間もいるから、手分けしてルートを見極めていく。そして巣を見つけるって寸法よ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なるほど!」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plainただし追ってる間はハチから目を離せないから、下を見れない。穴に落ちたり転んだりしてケガする奴も多いから気をつけろな。よし、じゃあやってみるか!」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なんか不穏なことを聞いた気がする!!」


しかしもう戻れません! 餌を吊るした木の近くで待機します。

 大久保さんの「ハチ行ったぞー!!!」の声でスタートしたものの…

 

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……ハチはどこだ?

 

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矢印のところにいるんですが無理無理!こんなのわからないって!!

 

ハチの飛ぶスピードって早いんですね。正直なめてました。そのうえ体のサイズも小さいので、すぐ見失ってしまいます。

 

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速攻で諦めそうになったのですが、名人の仲間からの圧がものすごくて逃げることはできません。追うしかない。

 

しばらくやっていると目が慣れてきたものの、すぐに次なるハードルが。ハチを追いかけて走るのは薮の中。しかも全速力で走らなければいけません。

 

道もなんにもないところを下を見ずに走るってメチャクチャ怖いんです。普通やらないと思うんですが。

 

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走ってる時の視界はこんな感じ。下に転がってる枝とか穴とかを上空のハチから目を逸らさずに避けるという草食獣並みの視界が要求されます。

 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「ハア…ハア……アアッッ!!」

 

当然つまづいたり転んだりしまくりです。これ無理ゲーじゃない?と思ってたら、遠くから声が。

 

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「巣を見つけたー!」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「1ミリも役に立てなかった」

 

 

ハチ追い猟の成果は… 

名人たちの元へ駆けつけると、なにやら用意しています。次の瞬間…

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シュボッ!!

 

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モクモクモクッ!!!!

 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「な、何してるんですか?? まさか爆破??」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「んなことするか。煙幕でハチを気絶させてるんだ。その隙に巣を掘り出す。殺虫剤を使うとハチの子が食えなくなるから、使うのは煙幕なんだな」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なるほど。そういえばどうやって巣の位置がわかったんでしょう」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ハチを追っかけていくと、地中に出入りしてる場所がある。そこが巣の入り口だ。どれ、これから掘ってくから見てな」

 

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地面をしばらく掘ると…

 

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出てきた!これがスガレの巣!!!

 

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どんどん出てくる。どうやら巣は地中で何層にもなっているようです。
「まだあるぜおい!」とテンションの高い名人の声が聞こえたので、かなり大物のよう!

 

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掘り出した跡。転々と気絶したハチたちが見えますね。パシャパシャ写真を撮ってたら、いつの間にか遠くにいる名人たちから声が。

 

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「おおーい、そろそろ復活するから気をつけろよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「え?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「復活したハチたちは気が立ってるから群れで襲ってくるぞ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「怖い怖い怖い怖い!!!!」

 

慌てて走って逃げました。

 

 

実食!ハチの子

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「いやあ、大漁だ」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「巣は1〜2kgくらいが普通だけど、これはもうちょいあるな。だいたい1kgが5000円くらいで売れるんだ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「大儲けですね。しかしこれ、アップで見ると…」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「めっちゃウネウネしてる!!!ぎゃあああ」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「うまそうだろ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「いや、ちょっと修行が足りなくてすみません…」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「どれ、生でいってみるか」 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「本当に言ってるの???」

 

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しかし、ここまで来たら退けません。覚悟を決めて、いざ実食……

 

えいっ! 

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プチッ…と口の中で何かがはじける感触に戦慄しつつ…………あれ、意外と食べたことのある味がする…?

 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なんか、味付けしてないイクラみたいな感じですね。和風ダシの味と」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そうか。まあ、地元のもんはあんまり生じゃ食べないけどな。おいしくねえから」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なんで食わせたんですか」

 

ということで、オススメのおいしい食べ方を教えてもらいました。まずは佃煮

 

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地元ではもっともポピュラーな食べ方。保存食として常備してあるそうです。甘辛い味で普通にイケます(見た目に慣れさえすれば)。

 

もう一つの食べ方はバター炒め

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ピンセットでつまんでフライパンに放り込んだら…

 

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ジュワッとバターで炒めます。

こちらも見た目はアレですが、あたりに香ばしい匂いが漂います。味もいい! バターと醤油で炒めたら大体なんでも美味しくなることがわかりました。

生の蜂の子を使うので、巣を採った直後にしかできない食べ方です。

 

さて、腹ごしらえも済んだところで、名人に話を伺ってみました。

 

  

名人にインタビューしてみた

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「なかなかハードですね、ハチ追い」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そうだな、けど追っかけるときが一番面白えよ。若い頃は3mくらいの崖も飛び降りて追いかけてたな。穴に落ちたり川に落ちたり、大変だよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「ケガしますよね、それ」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「骨折ったりな!まあ、それくらい面白えわけよ。だいたい3〜4人でチームを組んで、毎月日にちを決めてやることが多い。巣がまだ小さい時に掘り出して、家の庭で育てる人もいるよ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「巣を大きくするんですか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そう、伊那で毎年、育てた巣の大きさを競う大会があるんだ。俺はそういうのはやらねえ、採って食うのが専門だ。地元のスーパーや道の駅に行きゃあ売ってるけど、高いからな。自分で採った方が面白いし安い」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「自然の恵みなんですね」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「信州は海がねえから、昔はなんでも食ったのよ。スズメバチの成虫は焼酎漬けにする」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「めちゃくちゃ精がつきそう」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「おお、紹興酒みたいな味になるよ。俺はウイスキーしか飲まねえけどな。ハチの子は栄養があるから滋養強壮にいい」 

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「いやあ、食べてみたら思ったより美味しかったです」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「だろ? 他の土地の人は知らない味だけどな」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「そういえば名人、さっきハチに刺されてましたよね」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ああ、ジバチはちょっと痛いな。まあ俺は慣れてるから重曹ぶっかけときゃ大丈夫よ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「たくましすぎる。あの、ハチに刺されないコツってあるんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そうだな、ハチを見かけても手を出したらダメだ。手で払ったりすると興奮して襲ってくる。手を出さずにじっとしてるのがいいな

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「ネットと一緒ですね…攻撃に反応したら負け…」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「あと、香水とかの匂いにも反応することがあるから、山に入るときは注意したほうがいい」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「やたらめったら刺してくるわけじゃなくて、ハチが襲ってくるときは何かしら刺激してしまってると」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「そう、ミツバチなんかは仲間の危機にしか反応しない。出会っていきなり刺してくるハチはそういないよ」

 

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f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「しかし、こうやって仲間と集まってやるのは楽しそうですね」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「ああ、家でゴロゴロしててもつまらんからね。この時期は山へ来ちゃあ歩いてるよ。栗を拾ったり、キノコを探したり」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「名人、70歳には見えないですよ。ハチの子パワーですね」

f:id:tmmt1989:20180109020021p:plain「山のもんを食ってればまだまだ現役よ」

f:id:tmmt1989:20180109020026p:plain「ハチに刺されるのだけは気をつけてくださいね。くれぐれも動脈だけは…!!」

 

 

おわりに

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その後、軽トラで颯爽と去って行った名人。小さい頃から山で遊び、自然の恵みを食べて育った名人と僕とでは、なにか根本的な生命力の違いを感じます。

 

そして、今まで闇雲に怖がっていたハチですが、習性をきちんと知れば共存できる…のかもしれない。そんなことを学んだ取材でした。

 

 

☆ジモコロ編集長の柿次郎とライターのヨッピーさんが出演する辰野町のPRムービーが公開中。ハチ追いの様子が映像で見られます!こちらもぜひご覧ください!

 

www.youtube.com

 

 

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。インタビューと犬とビールが好きです。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

【教育現場】小学校の教師あるある50選【モンスターペアレント】

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こんにちは! ジモコロ編集部です。

編集部の周囲には、なぜか教育関係の経験を持つ人間が多く、実際に小学校の教師をやっていたという人もいます。

 

話を聞いて「へ~! 小学校の先生ってそんな感じなんだ!?」と驚くことが多々あったので……今回は小学校の教師だけがわかる『あるある』を50連発でお届けします!

 

※この記事はあくまで話を聞いた数人の経験に基づくものであり、すべての学校に共通するものではありません。

 

小学校の教師あるある50選

01:「夏休みがあっていいね」→教師は休みではない

子どもたちが来ないだけで、教師は普通に働いている。というか、むしろ研修だの出張だのたくさん入ってて忙しい。

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02:教師は意図があって指名をしている

次にどの子どもを当てるかは、教室内を巡回しながらノートのとり方をチェックして決めている。わかっている子に説明してもらう意図とか、わかってない子にわかりやすく教える意図があったりする。

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03:年に数回、吐く子どもがいる

周りの子もつられて吐いて、連鎖すると地獄

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04:嘔吐物にはコーヒーの出がらしを乾燥させたやつをかけるのがベスト

専用の「固めるやつ」も市販されている

 

 

05:おしっこを漏らす子どもがいる

“大”の場合もある。子どもにもプライドがあるので、大ごとにしないよう「ハイハイハイ、あるある」という顔を作って、流れ作業のように速やかに処理する

 

 

06:30人以上のクラスでも、字を見れば誰か分かる

顔や声と同じくらい、字にも特徴がある。名前がないプリントがあっても、誰のかすぐわかる。まあ名前を書き忘れる子どもは、大体いつも決まってるんだけど

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07:聖徳太子のように1度にたくさんの子どもの声を聞き分ける

子どもは人が話していても、平気で話しかけてくる。

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08:大人が相手でも、子どもに言い聞かせるみたいな口調になってる

「というわけで、ポッキーは最高のお菓子だと言えるわけですね。わかりましたか?」

 

 

09:教師って実はめっちゃめちゃ忙しい

のんびりした仕事というイメージがあるかもしれないけど、授業の用意や研修、出張、テストやプリントの作成など、時間がいくらあっても足りない。

 

 

10:男女ともに呼び方が「さん」

最近は「くん」を使わない。あだ名も禁止。出席簿は男女でわけずに混合(名前も中性的なものが増えてるので、本当に把握しにくい)

 

 

11:「卒業アルバムの運動会の写真、ウチの子の顔が切れてて縁起悪いだろ!」

こういう言いがかりがあるので、最近の卒業アルバムでは、運動会や遠足のスナップ写真コーナーを少なめにしたり、全く無しにする学校が多いそう。

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12:「うちの子が学校に行きたがらないので連れていってくれ」

「親である私が連れて行くべきなんでしょうけど、今から仕事なんでお願いしたい」って言われたことあるんですが、こっちも仕事中だよ!

 

 

13:「子どもが親の言うことを聞かないから、学校でしつけして!」

ドラクエで言うと、レベル上げを業者に依頼するみたいな感じ?

 

 

14:小学校教師は圧倒的に女性が多い

女(8):男(2)くらい。男性教師は子どもにも保護者にも、女性教師にも人気が高い

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15:教諭の給与は、校長の評価で左右される
S→A→B→C→Dの順にランク付けされ、Sは特別な昇給、Aは普通の昇給、Bはちょっと昇給、Cは給与が下がる→Dは特別に下がる、という感じ。

 

 

16:校長の給与は、教育委員会の評価で左右される
ただし教育委員会は、校長の働きっぷりを直接見てるわけではない。……おかしくね?

 

 

17:4月の始業式からの3日間を「黄金の3日間」と言う

子どもは、新しい教師と出会った時、「この先生は、どこまで許すのか、どこまで信用できるのか」を試してくる。そのため、最初の3日間で「ボスは先生だ」と関係性をハッキリさせる必要がある。

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18:赤ペンのインクの消耗が激しい
テストの○☓などにめちゃめちゃ使う。無いと仕事にならない大事なアイテム。

 

 

19:体育の号令のかけ方、笛の吹き方一つでも上手い・下手がある
ちなみに、笛は中の玉がコルクになってるやつがいい音が出る。

 

 

20:最近の給食はおいしくてバラエティに富んでいる
チリコンカン、ナン、フランスやドイツの料理、和食など。ケーキが出ることもある。自分が子どもの頃とは随分変わった。

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21:教師だって好き嫌いはある……

みんなには「好き嫌いしないように」って言ってるけど、教師にだって食べられないものがあるのだ、子どもたちよ……内緒にしてるけど……

 

 

22:授業が始まってから、職員室に忘れ物をしたことに気付く

それ無しで何とかならないか一生懸命考えるが、大抵の場合、どうにもならない。

 

 

23:教師の堪忍袋の尾は3人目で切れる

大したことないマイナスでも、三連続になると3人目が怒られる。3人目の子ども、可哀想。

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24:放課後、教室に籠る派と職員室で仕事をする派に分かれる

職員室では、すぐに誰かに相談できるが、別の仕事を頼まれることも多い。教室では、自分のペースで集中して仕事ができる。

 

 

25:通知表がパソコンになり、便利になった

昔は所見をひたすら手書き、「よくできる」などの評価の○もハンコを一つ一つ押していた。今はパパッとやれる。ただ年配の先生は余計に時間がかかるという人も。

 

 

26:教科書もデジタル

教室にある大きな画面に、直接ペンで書き込めたり、音声や画像も入っていたりして便利。

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27:授業でネットを使ったりもする

Yahoo!きっずという、「子ども向けの検索サイト」がちゃんとある。※例えば「セックス」で検索しても結果は0件など、子ども向けに配慮されたネットを楽しめる

 

 

28:「ウチの子がネットでエロいの見てるみたいなんです」

たまにそういう相談を受けるんですが、よい子のみんな、履歴はちゃんと消そう!

 

 

 29:自分は一体何屋なんだと思うことがよくある

体育で運動し、花や野菜を育て、版画を刷り、学期末にはお金の計算で頭を悩ませる。

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30:10年ごとに教員免許の更新講習を受けなければならない

30時間ぐらいの講義などを受けなきゃならない上に、全部自腹。

 

 

31:プライベートで、自分のクラスの子どもと会うのは、なんかイヤ

「プライベートの顔」をしてるから見せたくない。夫婦や友だちといる時なんかは特に見られたくない。なので校区のショッピングモールなどは避ける。

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32:どうしてもトイレが我慢できない時だってある

「ちょっと教材を取りに行ってくるから自習してなさい」という安定の言い訳。

 

 

33:服装はある程度ちゃんとしてないとダメ

一日中ジャージとかはダメで、着替えはちゃんと体育の直前にしなければいけない。

 

 

34:ダンスの振り付けはYouTubeからパクる

ダンスが得意な人は、オリジナルをちゃんと考えることもある。

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35:ひとまとめに教師と呼ばれるが、実は「教諭」と「講師」がいる

どちらも教員免許は持っているが、

「教諭」は都道府県や政令指定都市の採用試験に受からないとなれない。

「講師」は期限付きの採用。いわば正社員と契約社員のような違い。産休や病休の時に代わりにくる期間限定の人はだいたい「講師」。

 

 

36:おしりとかウンコとか言うだけでめちゃウケる

簡単に笑いがとれる環境に慣れているので、たまに大人と話すと全然ウケなくて焦る。

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37:自分の子どもの名前をつける時、教え子の名前とかぶらないようにする

同じ名前だと、その子のイメージが引っ付いてきてしまうから。

 

 

38:自分の学校と息子の学校の行事がかぶる

入学式や卒業式は市内で同じ日なので絶対にかぶる。といっても1年や6年の担任でなければ、自分の子どもの方に行ける
ただし運動会は、勤めてる学校のほうを優先しなくてはいけない。

 

 

39:運動会では、お揃いのTシャツやポロシャツを作る

普段なら学校内にいる大人はほぼ全員教師だけど、運動会の時は父兄もいるのでわかりにくい。そこで、「黄色のポロシャツを着てるのが教師」と識別するために作ったりする。

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40:宿泊訓練や修学旅行では、教師はあまり眠れない

子どもたちが就寝したら打ち合わせ、その後も各部屋を見回ったり、夜中 トイレに起こしてくれと保護者から頼まれていたりする。アニメみたいに教師だけで飲んだりなんてあり得ない。

 

 

41:自分の口癖や言い方が、子どもたちにうつる

「あれ? その注意の仕方、聞いたことあるな」と思ったら、自分だった。

 

 

42:「金八先生やGTOに憧れて教師になったの?」

よく聞かれるが、そんな人はほぼいない。ほぼいない……はずなんだけど、なぜかみんな見るのは見てるので、よく話題になる。

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43:子どもの流行は軽くチェックしている

今はみんなYouTubeを見ている。

 

 

44:鬼ごっことドッヂボールはいつだって人気

どの時代でも廃れない、永遠の定番。

 

 

45:自分の小学校の時の担任と同僚になることがある

すごく不思議。そして、あの頃こんな苦労をしてたんだな……とわかり、尊敬する。

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46:保護者に同業者がいるとちょっと怖い

授業参観でヘタなことを言ったりやったりすると、同業者にはすぐバレる。プレッシャーがハンパない。

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47:終業式などに、同僚の先生とランチに行くのが楽しみ

やっと子どもたちから解放された~!という喜びに浸る。

 

 

48:この仕事はしんどいことも多いけど……

こんなに頑張ってるのに、とかく文句を言われがちな職業だし……

 

 

49:子どもたちの成長には、いつも感動させられる

たった一年で驚くほど成長する彼らを見ると、胸が熱くなる。

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50:何だかんだ教師という仕事に誇りをもっている

「人を育てる」というこの仕事ほど、やりがいのある職業はないと思っている

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まとめ

自分が子どもの頃は、教師なんて邪魔な存在であり、わかってくれないオトナを代表する人間でしたが……

 

今、学級崩壊やモンスターペアレントなどと実際に向き合っている教師の話を聞くと、きっとあの頃の先生たちもこんな風に頑張ってたんだろうなぁ……と思っちゃいますよね。

 

というわけで今回の“学び”としては、

「教師の『ちょっと自習してなさい』はトイレに行きたい時」

ということでしょうか。これを読んでるちびっこ諸君は、決して尾行などしないようお願いします。

 

 

 

(おわり)

 

書いた人:ジモコロ編集部

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どこの地元にもコロがっているような魅力ある「場所」や「仕事」「小ネタ」など、地元愛を感じてしまう話の数々を集めて発信していくメディアの編集部です。TwitterFacebook

 

イラスト:ぞうむし

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トラック運転手をしながら、夜な夜な漫画を描いています 、ぞうむしです。「死ぬまで諦めんやったら、俺の勝ち!」をモットーに日々精進しております。Twitter:@zoumushi6

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (22) - しみじみ呑めば/オン・ザ・へべれけ

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<ポテン生活|一覧>

 

 

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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ウガンダ人「ゲートボールはCOOL!」 老人の娯楽から世界のスポーツへ

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皆さんは「ゲートボール」を知っているだろうか?

「ああ、おじいちゃんおばあちゃんが広場でノホホンと球を打つアレね」と思った人も、ゲートボールのルールを聞かれるとほとんど答えられないと思う。

 

何がどうやったら勝ちになるのか? そもそもなぜ、老人はあんなにゲートボールをやるのだろうか?

知ってるようで知らないスポーツ、それがゲートボールだ。

 
もしかすると傍目には気づかないだけで、とんでもない快楽が潜んでいるのではないか。そこに快楽があるとなっては、いてもたってもいられない。

 

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埼玉県の「彩の国くまがやドーム」でゲートボールの全国大会があると聞きつけ、さっそく現地へ向かった。ゲートボールの“甲子園”的な聖地らしいが、そもそも全国大会があるのが意外だ。

 

会場の中へ入ると、驚くべき光景が広がっていた。

 

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子どもがゲートボールをしている!!

 

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と思ったら海外の方まで! 皆とても楽しそうにゲートボールに興じているではないか。

 

目を見張りつつ会場で取材をした結果、ゲートボールに関する4つの意外な事実が発覚した。

 

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もはやゲートボールは「老人の娯楽」などではなかった。世界で愛される一大スポーツ・ゲートボールの世界へ、いざご招待しよう。

 

 

もともとゲートボールは「子どもの遊び」から始まった!

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今でこそ高齢者が楽しむものというイメージだが、ゲートボールは子どものために生まれた日本発祥のスポーツだ。

 

1947年、戦後の混乱期。北海道芽室町(めむろちょう)の鈴木栄治氏(のちに和伸に改名)がヨーロッパの伝統的競技「クロッケー」をヒントに考案した。

広場に子どもたちを集め、遊びながらルールを完成させたそうだ。

 

その後、1964年の東京オリンピックをきっかけに、日本全体でスポーツフォーオール(国民皆スポーツ)というムーブメントが起きる。そのなかで、ゲートボールも爆発的なブームに。全国大会も開かれるようになった。

 

この日、取材場所で開催されていたのもジュニアと社会人の全国大会だ。

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「第22回全国ジュニアゲートボール大会」「第18回全国社会人ゲートボール大会」(主催:公益財団法人日本ゲートボール連合)。2大会の同時開催でジュニア79チーム、社会人24チームが参加した。

 

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会場では6歳の子どもから80代のお年寄りまで、幅広い世代が入り混じっていた

現在、シニア層のプレーヤー数は減少傾向にあるが、小学生から高校生にかけてのジュニア層のプレーヤーが少しづつ増えてきているという。

 

いったい、どんな子どもたちがゲートボールチームに所属しているのだろう?

 

 

小1からジュニアチームでゲートボールをしている

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福井キャプテン(左)と福井監督(右)。キャプテンは監督のお孫さんだ

 

岐阜県「緑ヶ丘ジュニア」の福井監督に話を聞いてみた。シニアの経験者がジュニアの指導をしているチームが多く、福井監督もプレーヤー歴20年のベテラン。

 

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「まずはゲートボールのルールから伺っていいですか」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「はい。ゲートボールは5対5のチーム対抗戦でプレーします」

 

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f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「番号順に、自分の番号が描かれたボールを打つんです」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「なるほど、10人だからボールが10個と」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「ボールの数字が自分の打つ順番ですね。コート内には第1〜第3のゲートがあって、ボールがゲートを通過すると得点になります」

 

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f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「ボールが各ゲートを通過するごとに1点、ゴールポールに当てると2点。30分のゲームのなかで、チームの合計得点が多いほうが勝ち。すごくざっくり説明すると、こんな感じですね」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「わりとシンプルですね」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「ただし、ゲートを通すことだけを考えると勝てません。ゲートを通したあとどこにボールを置くか、相手のボールをどう防御し、味方をどうサポートするかがポイント」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「なるほど、打ったボールはグラウンドに残るから、それを利用すると」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「その通り。戦況を見ながら作戦を立てなければいけない『知的スポーツ』なんです

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「おお…でも、結構小さな子どももチームにいますよね」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plainうちは小学校1年生から高校3年生まで所属してますよ。団地の子どもたちで作ったチームで、今は全員で11名。今年で結成10年目です。みんな部活もバイトもあるしね、なかなか練習できない。試合前だけでも来てねって言ってますよ」

  

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f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「練習試合はどうしてるんですか?」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「年寄り連中と混ざってやります。子どもたちの面倒を年寄りに見てもらうんです。『こんな子どもとできるなんて楽しくてしょうがない』って人がいる一方、遊びながらやりたい人たちは『面倒なのはいやだなあ』と子どもたちが入るのを敬遠します

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「難しいですね」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「『2~3か月もやれば上手く回るよ』って説得しても『我々は元気なうちに楽しくできれば、それでいいや』って人もいるしね」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「『カワイイ子どもたち大歓迎!』ばかりでもないと」

f:id:tmmt1989:20180118205646p:plain「だから中学・高校にゲートボール部がもっと増えたらいいんですけどね。せっかく小学校から始めても、中学に入るとやれる環境がなくなってしまう。なので、私たちがクラブチームを続けることで、ゲートボールを続けられる仕組み作りをしていきたいです」

 

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「おじいちゃんが監督なので自然とゲートボールを始めた」という福井くん。中3でゲートボール歴は7年目

 

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緑ヶ丘ジュニアの皆さん。今大会ジュニア2部クラス(小中学生の部)で見事第3位入賞。ノビノビと楽しくプレーしていた。

 

  

なぜか「進学校」にゲートボール部が多い理由

ゲートボール部のある中学・高校は少なく、続けていくのが難しい。

そんななか、意外な学校にゲートボール部があった。

  

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それが全国トップクラスの進学校、東京都の「開成高校」だ。東京大学合格者数の全国一位を何度も獲得している。

  

ほかに青森山田高校や栃木県の作新学院にもゲートボール部がある。いずれも部員のほとんどが特進クラスの生徒だという。

 

進学校や特進クラス御用達の部活。これは知的だ。ゲートボールがどれだけ知的なのか、開成高校ゲートボール部主将の太田さんに聞いてみた。

  

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f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「ゲートボール部に入ったきっかけはなんですか?」

f:id:tmmt1989:20180118205854p:plain「クラブ体験会で、先輩に打ち方を褒められまして。向いているのではないかと思い入部しました。週3回練習がありますが、ハードに動き回るスポーツではないので勉強と両立できます

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「知的スポーツと言われますが、ゲートボールのどの辺りが知力の使いどころでしょうか」

f:id:tmmt1989:20180118205854p:plain「ゲームの中で複数のボールを使うので、作戦が複雑なんです。サッカーや野球、テニスは同時に使うボールが1つですよね。でも、ゲートボールは10個もボールを使います。それを赤白交互に打っていく中で作戦を組み立てるのは、頭を使うんです」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「開成チームの作戦ってどんな感じですか?」

f:id:tmmt1989:20180118205854p:plain実現可能な戦略を確実に行うことですね。理想的な作戦を考えても実行できなければ意味がありません。自分たちの技術力をしっかり把握して、実現できる最善策をとります」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「ち、知的……!ゲートボール部に入って良かったことってあります?」

f:id:tmmt1989:20180118205854p:plain「勉強が忙しいので、あまり部活動に時間をかけられません。こうして仲間とゲートボールをするのは楽しいですし、リフレッシュできるいい時間になっていますよ」

 

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プレー中の表情にも、知性の香りが漂っている。

 

ゲートボールは、体への負担が少なくて勉強と両立させやすいスポーツ。だから、進学校にはゲートボール部が多いのだろう。

 
 

ウガンダからやってきた青年。「クールなゲートボールをアフリカ全土に広めたい!」

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ゲートボールをプレーしてるのは日本だけではない。世界五大陸の50ヵ国以上でプレーされている。

とくにアジア圏の競技者が多く、中国にいたっては550万人以上もプレーヤーがいる。日本の5倍以上だ。

 

この日も一人の青年がゲートボールを祖国ウガンダで広めたいとやって来ていた。「アフリカのハーバード」と言われる、ウガンダ共和国のマケレレ大学で経営学を学ぶロバート・バカゼさん(28)だ。

  

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ウガンダからゲートボールを学びに来たロバート・バカゼさん

 

ロバートさんがゲートボールを知ったきっかけはYouTube。たまたま見かけたゲートボール動画にはまり、「アフリカ大陸に広げたい!」と壮大な構想を抱いて、日本のゲートボール連合へ猛アプローチしたそうだ。

 

熱意にほだされた連合は、2年半前に1セットのゲートボール用具をウガンダへ送った。そして今回、ロバートさんは念願叶って来日をはたしたのだ。

 

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「日本からゲートボール用具が一式送られてきたときはどうでしたか?」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「そりゃあ、すごく嬉しかったよ!ゲートボールへの想いが届いて感激したね!その道具で大学の友達と住んでるナンボレ村の人たちと練習してるよ」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「友達を誘ったらどんなリアクションだったんでしょう」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「スポーツ好きの友達だし、ゲートボールによく似たマレットゴルフをよくやってたからすんなりと楽しめたよ。ゲートボール用具がカラフルでカッコ良かったのも気に入ってた」

 

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予想以上に色とりどりのゲートボール用具。最近はシニアの方もカラフルな用具を好むそうだ

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「ウガンダではどんなスポーツが人気ですか?」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「サッカーとバスケが特に人気だね。僕はどんなスポーツも大好きで、卓球、バスケ、フロアボール、サッカーをやってるよ」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「なんでもやるんですね!そんな中で、ゲートボールのどこに魅力を感じたんでしょう」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「そうだね、まずはチームスポーツということ。あとは考える要素が強いスポーツだってことだね。今日も試合を見て、こんなに色んな作戦があるのかと驚いてるよ!」

 

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f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「わざわざ日本に来た甲斐がありましたか」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「GOOD!もちろん!すごく良かったよ!ウガンダではYouTubeや雑誌でしかゲートボールに触れられないからね。つきっきりで解説をしてくれたから、いろんな戦術を学べたよ。あとはこの腕につけるスコア記録用の器具が最高にクールだよ。大会の運営を生で見られたのも大きいね」

f:id:tmmt1989:20180118205638p:plain「将来はアフリカでも大会を?」

f:id:tmmt1989:20180118205959p:plain「そう、ゲートボールをアフリカに広めるためにはこういった大会が必須だと思う。だから、どうやって運営してるか分かったのは大きな学びだ。将来的にはアフリカ全土でゲートボール選手権を開催するのが夢なんだ。ゲートボールを通じて平和で友好的な世界になったらいいよね」

 

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ゲートボールに魅了され、来日したロバートさん。

日本ではお年寄りの娯楽というイメージが強いけれど、そういったフィルターを通さない目にはクールなスポーツに見えるのだ。

 

これからロバートさんの情熱が、アフリカ大陸にどれだけ広がるか楽しみだ。

 

  

おわりに

知ってるようで知らないスポーツ、ゲートボール。

「お年寄りの娯楽」などではなく、年齢性別、国籍すら問わずにプレーできるすごいスポーツだった。

 

都内にも100ヵ所を超えるゲートボール場がある。

日本ゲートボール連合のサイトで近所のゲートボール場を探せるので、トライしてみるのも一興だ。新しい発見があるかもしれない。

 

 

 

取材協力:公益財団法人日本ゲートボール連合

  

書いた人:観光会社「別視点」

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撮影・文:齋藤洋平 観光会社「別視点」副代表。観光カメラマン。(Instagram

編集:松澤茂信 観光会社「別視点」の代表。「東京別視点ガイド」書いてます。(Twitter

囲碁棋士から見た「ヒカルの碁」ってどうなの? 初代本因坊の孫に聞いてきた

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ジャラジャラ……ジャラ…………

 

 

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パッ…シィィ~~~~~ン!!!

 

囲碁……

それは日本では平安時代から親しまれる「対戦型テーブルゲーム」である。白黒の石を、碁盤と呼ばれる板へ交互に配置し、最終的に、より広い領域(地)を確保することを目的とする。

 

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あ、こんにちは、ライターのもりれいです。

みなさん「囲碁」を知っていますか? 名前を知っている人は多いと思いますが、じゃあルールは? と聞かれると……ほとんどの人が答えられないのではないでしょうか。

 

私は囲碁が趣味なので、初めて会う人にはいつも「囲碁って知ってます?」と聞くんですが、返ってくる答えは99.999%コレです。

 

「あぁ『ヒカルの碁』のやつでしょ?」

 

ヒカルの碁 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

ヒカルの碁 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

  

いや、確かに『ヒカルの碁』は名作ですよ。

伊角さんとの対局で、ヒカルが盤面に佐為を見つけるシーンなんて、もう何十回も読んでるのに、未だに号泣してしまいます。

 

でも、碁を知っていたらもっとおもしろいんです! 本当です! 信じてください! 

だからみんな、もっと碁をやってくれ~!!

 

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というわけで、やってきたのは大阪府・水無瀬にある「囲碁サロン 関山」。

こちらで、関西棋院のプロ棋士として活躍する関山利道九段に話を伺ってみましょう

 

実はこの方、なんと初代「本因坊タイトル」を獲った方の孫なんです!

 

関山利道

実父は関山利夫九段、実祖父は第一期本因坊 関山利仙という関西棋院きってのサラブレット。また、「囲碁サロン 関山」にて一般の方に碁の指導も行っています。

 

 

プロ棋士から見た『ヒカルの碁』

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f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「こんにちは! 今日は碁のおもしろさと『ヒカルの碁』について、プロ棋士の意見が聞きたくて伺いました!」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「はいはい、僕でわかることなら何でもどうぞ」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「そもそも関山先生は『ヒカルの碁』のことを、ご存知なんですか?」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「もちろん! 大好きな漫画です!」

 f:id:mori_rei:20180110010146p:plain『ヒカルの碁』が流行したとき、どう感じました? 当時は囲碁が漫画になること自体、珍しかったと思いますが」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「あの頃 僕はすでにプロ棋士になっていて、仲間と『囲碁が漫画になるなんてね~』と話していたのを覚えています。その後、まさかあんなブームになるなんて思いもしませんでした」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「周囲の反応はどうでしたか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「関西棋院で院生師範(プロ候補生を指導する仕事)をしていたことがあるんですが、囲碁を始めたきっかけが『ヒカルの碁』だという子供が多かったですね」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「『ヒカルの碁』がきっかけで囲碁を始める人が増えたとは聞いていましたが、プロ候補生までも……」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「囲碁界全体でもかなりの人が読んでいたんじゃないでしょうか。アニメにもなって、『囲碁』という言葉が一般の人にも普及して……」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「『俺の時代が来た!』って思いました?」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「それは思いませんでした(笑)。ただ、囲碁の時代がきた!とは思ったかな。囲碁という文化が海外にも波及していって囲碁人口が爆発的に増えは、とてもありがたいことだと思いました」

 

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 f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「プロ棋士の方に是非聞きたかったことがあるのですが……『ヒカルの碁』の藤原佐為って、強いんですか?」

 

藤原佐為

作中でも1~2位を争うほど強い。その正体は、平安時代に天皇の囲碁指南役をしていた棋士の霊(?)。主人公・ヒカルにしか見えない。ヒカルの前には実在の棋士・本因坊秀策にとり憑いていたという設定。

 

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「藤原佐為が強いかどうか……? めちゃくちゃ強いと思います!」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「おぉ、『ヒカ碁』ファンなら嬉しい言葉ですが……プロがそう思う要素って、漫画のどういう部分にありましたか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「そもそも本因坊秀策の中身が藤原佐為という設定なので、出てくる棋譜(対局の記録)も秀策そのものです。つまり囲碁の歴史上最強と呼ばれた本因坊秀策と同じ強さということです。そりゃ強いですよ!」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「とはいえ、囲碁は日々打ち方が進歩していますよね。秀策の棋譜だって研究されてるはず。一方、昔の棋士は現代の打ち方を知りません。ということは、対局すれば現代の棋士のほうが強いのでは?

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「どうでしょう。マンガの中の佐為のように、『現代の戦い方を学んで、さらに強くなってしまう』気がします。残された棋譜を見ると、彼がどれほど強く、柔軟な思考の持ち主であったかわかります」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「ホントにそこまで強いの?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「たいていのプロ棋士は、秀策先生なら今でも間違いなく最強だと答えると思います」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「本因坊秀策・最強説……うわぁ、『そうであってほしい』と思ってたことを、プロ棋士の口から聞くとゾクゾクしますね!」

 

 

 本因坊って結局なんなの?

f:id:jimocoro:20180117105152j:plain

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「先ほどから“本因坊”の名がよく出てきますが、囲碁のことも『ヒカルの碁』のことも知らない読者のために、あらためて“本因坊”についてお聞かせください」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「そもそも“本因坊”というのは、江戸時代に囲碁が強かった家系のひとつである、本因坊家からきています」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「家(け)! 個人ではなく家系なんですね」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「当時は、お城で碁を打ってお殿様に披露するお城碁というのがあって、本因坊家を含む四家が切磋琢磨していました。その中でも最も多くの名人を輩出し、一番強いとされていたのが本因坊家です」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「さらにその中でも、最強と噂されるのが本因坊秀策だったと」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「はい、秀策先生は今でも最強の棋士に名前を挙げる人が多くいる伝説の棋士です。平安の本因坊から数えると、150年後くらい……江戸時代に活躍した棋士ですね」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「一体どのあたりが強いとされてるんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「有名なエピソードとしては、1849年から御城碁に出仕し、それ以後19戦19勝無敗の大記録を作ったというのがありますね。特に先番(先手)での打ち方は堅実無比と呼ばれ有名です」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「おぉ……。そんな天才を輩出したのが本因坊家だったと」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「ですね。本因坊の名は長いこと家元制だったんですが、1938年(昭和13年)、二十一世本因坊が引退してからは、実力制になりました。現在でも存在する『本因坊』の名を冠したタイトル戦がそれですね」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「囲碁界の七大タイトルのひとつですよね」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「そうです。で、そのタイトルを初めて獲ったのが、僕の祖父というわけです。第一期本因坊 関山利仙ですね」

 

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関山先生の宝物を見せて頂いたんですが、その中にはお爺様の写真も。写真からでもすごい闘志が目に見えるよう!

 

 

 

初心者でも囲碁が打てるようになる3つのルール 

さて、この記事は“囲碁を普及させたい”というのも目的のひとつなので、ここで趣向を変えて、「初心者でもわかる囲碁のルール」を関山先生に教えてもらいましょう。

初心者代表として、この人をお呼びしました!

 

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ジモコロ副編集長のギャラクシーです。

囲碁に関しては『ヒカルの碁』の知識しかありません。なお、好きなキャラは伊角さんとのこと。

 

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「よろしくお願いします! 囲碁って分かりにくくてとっつきにくいよなぁ~というのが正直なイメージです!」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「まあ、みなさんそんなイメージだと思います。分かりにくそうに見えますが、実は覚えるべきルール3つだけなんですよ!」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plainぉ!」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「本当です! 実際にこれでやってみましょうか」

 

f:id:jimocoro:20180117134451j:plain

f:id:jimocoro:20180117134526p:plain「あの~、これ、盤もちっさいしヒカルの碁のキャラも描いてあるし……明らかにお子さま用のやつですよね? 脚が生えてるようなカッコイイ碁盤でやってみたいんですが……」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「これで十分だって! これは6✕6の盤だけど、ちゃんとしたやつはもっと大きいんですよ? 最初からそんなのでやると絶対混乱するって!」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「その通り。最初はできるだけシンプルに学んだほうがいいです。では、まず石を持ってみましょうか。ギャラクシーさんは先番(先手)なので、碁石の色は黒です。人差し指と中指で、中指を上にして石を挟み込む感じで…」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「こ、こう…ですか…? 」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「そうです! そのまま石を置きましょう。空白の部分ではなく、線が交差してる交点に打ってください

 

f:id:jimocoro:20180117135541j:plain

ペチッ

 

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「良いっ! 良い感じですよ~! ピーンとした小指がいいですね! もしかして才能がおありなんじゃ……?」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「営業トークすごいな」

 

 ルール1:石は交点に置く

f:id:jimocoro:20180117140008p:plain

 

 

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「囲碁は交代で石を置いていきます。次は僕、その次はギャラクシーさん、さらにその次は僕、という感じですね」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「そのへんは将棋と同じなんですね」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「さて、ちょっと局面が進んで、こういう状況になったとしましょう。で、ここに僕が石を置くと……どうなると思います?」

 

f:id:jimocoro:20180117141858p:plain

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「……裏返る?

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「オセロかい!ていうか碁石は裏返しても黒は黒、白は白です」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「正解は、取られるでした!」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「えええー! 初めて知った! “取る”という概念があるゲームなんですね。次々と置いていくだけのゲームかと思ってた」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「やったことのない人って、ここまで知らないものなの……」

 

ルール2:石の周りを囲まれたら取られる

f:id:jimocoro:20180117142642p:plain

 

 

 f:id:jimocoro:20180117134526p:plain「ていうか、囲まれる前に移動したらダメなんですか? 将棋みたいにタテヨコナナメに“駒を移動する”という概念はないんですか?」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain残念ながら移動はできません。それができればどんなに楽かと思いますが」

f:id:jimocoro:20180117134526p:plain「じゃあ、どこかに到達したら勝ちってわけでもないのか……。どうやったら決着がつくんでしょう」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「打ち進めていくと、こんなふうに白と黒の境界線がはっきりとしてきます。こうなったら終局です」

 

f:id:jimocoro:20180117143117p:plain

 f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「???これで終わり? でも、どっちが勝ってるか全然わからないんですけど」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「白の陣地と黒の陣地の交点を数えて、多い方が勝ちです」

 

ルール3:自陣の交点の数が多い方が勝ち 

f:id:jimocoro:20180117143242p:plain

※ここではわかりやすくするため、コミ(ハンデ)がないものとして数えています

 

 

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「おさらいしましょう!

ルール1:石は交点に置く

ルール2:石の周りを囲まれたら取られる

ルール3:自陣の交点の数が多い方が勝ち

この3つさえ覚えれば、ほとんど碁は打てます!」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「なんとなく分かったような……でもこれ、やっと入り口にたどり着いただけって状態ですよね?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「どこまで行っても、基本はこの3つです。ここから、難しい戦術などに発展していくんですが……それは、やり始めてから覚えればいいと思います」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain囲碁の魅力ってすごく伝えるのが難しいですよね。現に目の前のギャラクシーさんに伝えることもままならないわけなんですが、いったいどうしたらいいでしょう?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「たとえばさっきみたいに小さな碁盤だとすぐ終わるのでとっつきやすいです。大きい碁盤も、ようするにあれと同じことを19✕19でやってるだけなので」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「19もあるの?! ちょっとやってみた僕からすると『途方もねぇ!』って思っちゃいますね。もう永久に小さい碁盤でいいわ」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「いつかギャラクシーさんにも、小さい碁盤を狭く感じるときが来ますよ」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「プロみたいなこと言うな」

 

f:id:mori_rei:20180110202150j:plain

 f:id:mori_rei:20180110010237p:plain「…ちなみに、19✕19の碁盤っていくらくらいするんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「ピンキリですけど、これは5万円くらいかな?」

f:id:mori_rei:20180110010237p:plainご、5万……!!

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「あ、今は盤を買わなくても、『囲碁クエスト』という無料アプリもあります」

 

f:id:jimocoro:20180117145915j:plain

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain『囲碁クエスト』私もやっているんですが、関山九段もやられるんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「僕もやっていますし、やっているプロはけっこういますよ。プロから初心者まで楽しめるアプリだと思います」

f:id:jimocoro:20180117134526p:plain「5万の碁盤を買うのは難しそうなので、僕はアプリにしておきます……」

 

囲碁クエスト

囲碁クエスト

  • Yasushi Tanase
  • ゲーム
  • 無料

 

play.google.com

 

 

 

プロ棋士って毎日何してるの?

f:id:jimocoro:20180117173338j:plain

初心者でもわかる囲碁のルールを解説できたところで、さらに深い話を聞いていきましょう。プロってどうやって生活してるんでしょうか

 

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「関山先生のようなプロの棋士って、どうやって収入を得ているんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「収入は、プロ同士の対局なら対局料、アマチュアの方への指導碁なら指導料などがあります。他にも講演したり、本を書いたり……ただ、メインのお仕事はやはり対局です」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「対局料というのは、勝っても負けても必ずもらえるものなんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「ボクシングのファイトマネーみたいなもので、負けても対局料は出ます。さらにタイトルを獲れば賞金ももらえます」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「囲碁の対局は何時間もかかりますよね。その間どんなこと考えてるんですか? 『ヒカルの碁』みたいに、『まさかそこに打ってくるとは…!!』とか『右辺が囲まれただと!!??』みたいなことは思うんですか?」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「思いますよ。もっと何十倍のスピードでですけど」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「想像もつかない。それが九段の世界なのか……」

 

f:id:jimocoro:20180117152531j:plain

特別に見せて頂いた九段の免状には「将(まさ)に神域に達す」という文字が

 

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「長い対局の場合は、さすがにずっと集中してるのは無理なので、他のことも考えます。『終わったらどこ行こうかな~?』とか」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「え、そうなんですか?! もっとストイックなものかと……」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「どんなゲームでもスポーツでも同じだと思いますが、集中しっぱなしだと、逆に集中できなくなってしまいます。自分をベストな状態に持っていくためには、適度にリラックスすることも大切ですね」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「なるほど、適度なリラックス! 仕事の時に活かしたいと思います! 今日はご協力本当にありがとうございました! 最後に、関山九段が『ヒカルの碁』でいちばん好きなキャラクターを教えてください」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「もちろん 藤原佐為です!」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「即答!」

f:id:mori_rei:20180110010216p:plain「佐為は実在していませんが、本当に真摯だし、強いし、ダントツにカッコいいですよ! そう思いません!? 思うでしょう?」

f:id:jimocoro:20180116191901p:plain「あ、は……はい」

f:id:jimocoro:20180116192122p:plain「自分の対局中にふと『もし佐為だったらどう打つかな?』と考えたこともあります」

f:id:mori_rei:20180110010146p:plain「(……ひょっとして取り憑かれてる?)」

 

 

 

おわりに

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関山九段は、毎年文化の日に行われる島本町の文化祭囲碁イベントを開催されています。

囲碁棋士といえば、ただでさえハードな職業なのに、地域のため・囲碁普及のためにと活動されるなんて、まさにスーパーマンですね!

 

私はそこまでのことはできないので、とりあえず『囲碁クエスト』で修行しつつ、囲碁の素敵さを伝えていきたいと思います。

みなさんも、ぜひ…!!

 

 

 

(おわり)

 

囲碁サロン 関山

住所:大阪府三島郡島本町水無瀬2-2 善歯科医院2F

最寄駅:阪急水無瀬駅・JR島本駅から徒歩5分

電話:075(962)3747

 

改訂版 傑作詰碁事典

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ヒカルの碁 全23巻完結セット (ジャンプ・コミックス)

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kansaikiin.jp

 

 

書いた人:もりれい

f:id:jimocoro:20180117160725j:plain

テクニカルライター 兼 webライター。北海道出身、大阪府在住。取説が好き。
Twitter個人ブログ取説ユニット「テク×テク団」HP

国内シェア96%!福井県鯖江はなぜ「メガネの聖地」なのか

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はじめに

f:id:kakijiro:20180125121643j:plain

福井県・鯖江で、良いメガネを買いました。

 

 

 

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かっこいいですね。

 

鯖江は、「メガネフレームの国内生産シェア96%」とメガネフレームを作りまくってるまさにメガネの聖地のような街らしいです。へ〜

 

 

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クレヨンで描いた地図です。場所はだいたいこの辺。

 

 

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なんで鯖江でそんなに作りまくってるのか気になってきましたし、私自身メガネをかけ続けて十余年。せっかくなんで鯖江で聞いてみることにしました。

 

 

 

メガネ一筋60年!鯖江の「谷口眼鏡」へ

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今回話を聞いたのは、有限会社谷口眼鏡さま。メガネ一筋60年です。

 

 

 

f:id:chicchi0411:20180117140251j:plain

代表の谷口康彦さんに、お話をうかがいました。

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「本日はよろしくお願いいたしますです」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「こちらこそ。遠いところまで来ていただきありがとうございました」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「早速なんですが、鯖江市がメガネフレームの産地として活発になった起源って何なんですか? 2文字以内でお願いします

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plainふゆ

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「なるほど…。1905年に増永五左衛門という人が、『冬の間に農業の代わりに出来る軽工業』として村人に伝えたのがキッカケなんですね…」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「よく分かりましたね。そうなんです。この辺りは冬の積雪が厳しいので、その間の地域活性化という意味も込めて始めたんですよ。ちなみに増永氏の胸像は市内のメガネミュージアムに飾られています」

 

 

f:id:chicchi0411:20180117144820j:plain

これがその増永五左衛門の胸像。

増永家は、旧足羽群麻生津村生野(現・福井市)の庄屋を務める旧家だったそうです。

 

 

 

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メガネをかけていなかったので、一旦私のメガネをかけてもらいました。

 

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「冬の間の軽工業と言っても色々あったかと思うんですが、どうして数ある軽工業の中でメガネフレームをチョイスしたんですか?

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「これは、明治から大正にかけての戦争が鍵になっているんです(※)」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain戦争と、メガネフレームの関係性…?

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「チッチッチッチ…」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「あっ、制限時間が!」 

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「時間切れです。では答えをどうぞ」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「え〜。兵隊が遠くの敵を把握できるように視力を上げた…とか?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「残念、はずれです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「チキショー!100万円のチャンスが!」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「正解は…『新聞を読むため』です」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「新聞?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「戦争をして、勝敗などの情報伝達は、当時新聞しか無かったわけです。人々が戦況を把握するために新聞が読まれる。ということは…?」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain(ざわ…

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「目の悪い人も小さい字を読むための道具が必要になってくる。ということで、メガネの需要が急激に拡大していったんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「五左衛門、先見の明ありすぎ〜〜!青年実業家〜〜!!」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「当時は都心部で作っていたんですが、鯖江の人たちが努力を重ねて、品質的にも負けないぐらいのメガネを作って産業を大きくしていきました。そして戦火から逃れた鯖江が逆転したんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「なるほど〜地の利もあったということなんですね」

 

 

f:id:kakijiro:20180125121826j:plain

※【補足】増永五左衛門の弟・幸八さんが大阪でメガネのサック(袋)作りをしていた際に、兄・五左衛門さんに「メガネの需要が高まるぞ!」という話を持ち帰ったんだそうです。

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「日本国内のシェア96%ってすごい数字ですよね」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「実際には鯖江市を中心とする近隣都市(福井市・越前市・越前町)を含めて『メガネの産地鯖江』なんですが、2014年ごろで335億円です」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「すごい数値だ」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「ですが、最近安価で買えるメガネ小売店が増えていて、産地にとっては打撃になっていますね…

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「ああ、確かにアレとかコレとか、街にすごく増えた印象が」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain『メガネは1万円以下で買えるんだという意識』が人々に根付いてきたことが少なからず影響していますね」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「時代に合わせて安くするという選択肢もあるかと思いますが、産地としては生き残りにくくなりますよね」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「まさにそうです。我々は自信を持って良いメガネを作ることは出来ます。しかし、こだわりが強いがゆえ安くすることは難しい。鯖江=良いメガネというポジションをしっかり作って今後もやっていくしかないですね」

 f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「たしかに。生き残りをかけて良いメガネを作っていこう、という舵取りをする必要がありますね」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「ですね。鯖江はメガネの産地らしい…という認知は漠然とされてきたんですが、まだまだお客さんとの距離は遠いのが現状なんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「こんなに頑張っているのに…」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「例えば『今治のタオル』は完成品で、その場ですぐ使えますよね? 対して『鯖江のメガネフレーム』はあくまでパーツ。今治のタオルと同じように流通させたくても出来ないんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「ルートが少し遠回りになってしまうのは不利ですね。お客さんとお近づきになるために何かしているんですか?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「最近の鯖江の取り組みでいえば、今年の成人式で新成人600人にメガネを配りましたね。郷土愛と鯖江産メガネのPRを兼ねて…」

 

↑その時のニュースがこちら

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「あら!いいですね〜」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain地道ですが、こうした活動で少しでも鯖江のメガネが広まっていくといいなと思ってます

 

 

 

谷口眼鏡が自信を持っている「強み」とは?

f:id:kakijiro:20180125121911j:plain

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「谷口眼鏡さんは今年で60周年とのことですが、産地で600社以上が切磋琢磨する中での強みとは何なんでしょうか?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「『TURNING』というブランドを持てたことですかね」

 

 

f:id:chicchi0411:20180117181859j:plain

 

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain『TURNING』…1996年の立ち上げから、一番大切に追求してきた“掛け心地”にこだわった谷口眼鏡が自信を持ってお届けしている、あの…」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「パンフレットを読みながらありがとうございます。まさしくそれです。1996年にこのブランドを立ち上げたんですが、当時14〜15人の工場で自分のブランドを持つのは非常に稀だったんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「ほうほう」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「というのも、1994年に倒産寸前まで追い込まれたことがあって。当時鯖江には大きい会社が三社あって、我々はその内の一社の下請けをしていたんですが、そこが潰れてしまったんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「芋づる式にピンチが訪れたんですね」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「残り二つの会社に営業をかけるのも手なんですが、絶対潰れないと思っていた三社のうち一社がそうなってしまったので、この先その二社も存続しているか分からない……。だったら小さいけれど、自分たちで相撲を取らなきゃと思って、独自のブランドを立てる決心をしたんです

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「おおお、まさにターニングポイント。生き残りをかけてプロダクトを作るという決断が功を奏したんですね…」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「今も鯖江で頑張ってる会社さんはそういったキツい経験をしているので強いんです。順風満帆な会社はありません」

 f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「素敵です。工場も少数精鋭ですが、手作り感がすごく伝わります」

 

 

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作業場の全景

 

 

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こちらは小さな蝶番(ヒンジ)をフレームに埋め込む機械

 

 

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 一つ一つ丁寧に埋め込んでいきます

 

 

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フレーム上部の「マユ」をつけていく作業。これも手作業! 

 

 

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熱を加えてフレームの歪みを整えて、規格通りのラインに修正する作業

 

 

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高速回転する丸い布(羽布・バフ)にフレームを当てて研磨する作業

 

 

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奥にひときわぐるぐる回っている機械が。

 

 f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「これ何ですか?中でジャラジャラという音がしてます。超巨大おみくじ?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「これはですねぇ」

 

 

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f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「中にこのような木片とギザギザのプラスチックを大量に入れて、そこにメガネフレームを入れるんです」

 

 

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f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「そして一晩ぐるぐる回し続けることで、フレームのツヤを出しているんです」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「へ〜!そんな過程があるんですね〜〜〜中の木片もプラスチックも、擦り切れてめちゃめちゃ丸くなってる…」

 

 

 

自分にあったメガネを選ぶコツとは?

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 f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「最後に、メガネのプロフェッショナルが考える『メガネの選び方』って何かありますか?」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「う〜ん、これは正直に言いますとね」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「はい」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「センスの良いメガネ屋さんの店員に見てもらうのが一番良いと思います」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「あ、でもそれやったこと無いですね。メガネを買う時は、店員に聞かず自分で無難なやつ選んだりしてるかも。奇をてらったデザインは買うのが怖い…」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「メガネはそもそも視力を良くすることが最優先の医療器具。デザインは二の次になってしまうかもしれませんね」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「最近めちゃめちゃなデザインのパーカーを『似合う』っていう確信があるから買ったりしますけど、メガネを似合う重視で買ったことは無いですね〜」

f:id:chicchi0411:20180117144043p:plain「自分に似合うメガネを選ぶセンスを身につけるのはなかなか難しい。

そもそも、他人が見る顔の印象はほぼ目や鼻に集中しているでしょう。メガネはそこに位置づけるもの。目や眉の形、鼻やアゴの印象など…客観的な視点で似合う、似合わないを判断するのは大変です。

メガネアドバイザーという職業もあるくらいですから、やはりセンスの良い店舗、その店員さんに選んでもらうのが一番!」

f:id:chicchi0411:20180117142940p:plain「じゃあ買うぞ〜〜」

 

 

 

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というわけで、めがねミュージアムにやってきました。

メガネの歴史が分かる博物館を見た興奮冷めやらぬうちに、そのままメガネも買えるという便利なミュージアムです。

 

 

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博物館には有名人のメガネが寄贈されています。これはさだまさしさんのメガネ。

 

 

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これはダブルメガネ…ではなく昔の鉄製眼鏡式双眼鏡と言った歴史を感じるものまで。

 

 

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そしてミュージアム内部のメガネ屋さん。普段手を伸ばしたことのないかっこいいメガネがたくさん並んでいます。

 

 

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アドバイザーの高宮さん曰く、「見た目が派手なので、メガネも遊びをきかせた派手なものでもいいかも」とのこと。

 

 

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ちょっと試しにかけて見てもらいます。

 

 

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ウケました。

 

 

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ウケたし、色々かけてみてその場にいた人全員が満場一致で「それが一番似合ってる」と言ってくれたやつに決定!いつも買うようなところではやってくれないようなありとあらゆる視力検査で私の目をめちゃめちゃ調べてくれました。

 

 

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で、これが私が購入した谷口眼鏡さんの「TURNING Step / TP-325(レンズ込みで約38,000円)」ってやつ。全員に似合うと言われつつ、いつもかけてるようなものとはタイプの違う、かつ自分の今の年齢や見た目に合ったものを選んでみました。

 

 

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何より、MADE IN JAPANが良い!

 

 

 

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というわけで、今回はこの辺で。

 

鯖江のメガネ産業を支えるのは、メガネに対する愛情を持ち、メガネ作りにひたむきに情熱を注ぐ職人さん達の姿でした。これからも「メガネ=鯖江」というイメージが定着するように頑張って欲しいです!私も一端のメガネかけとして、応援しております。

 

それではさようなら。

 

▼取材協力

谷口眼鏡

めがねミュージアム

 

 

書いた人:まきのゆうき

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株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。姉妹メディア「オモコロ」でたまに記事を執筆。かつて「メガネバリヤー」というテキストサイトを運営していた。Twitterアカウント→@yuuki(凍結中)

焼き芋屋に夏は何してるのか聞いたら「ベガスでポーカーしてる」ことが判明

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こんにちはー! ライターの社領エミです!

 

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いや〜、寒いですね〜〜〜!!! ブルブル!

 

40年に一度の寒波が訪れたこのクソ寒い冬、みなさんいかがお過ごしですか?

私はと言いますと、この寒い時期限定のめちゃめちゃ美味いアレを心ゆくまま堪能して、楽しい冬を過ごしております!

それは……

 

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そう、焼き芋で〜す!

 

私、寒い日に食べる焼き芋めちゃめちゃ好きなんですよ!

でも最近、気になってることがありまして……。

 

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これ!

焼き芋屋さんって夏はやってんのか、めっちゃ気になりません……!?

 

冬が終わるとパタッと姿を消す焼き芋屋さんですが、夏場は一体何を……?

夏場だけある職業といえば、金魚すくいやたこ焼きのようなテキ屋、あるいは海の家とかですが、そういう所で働いてるんでしょうか。はたまた、普通にアルバイト?

 

いや、あるいは働いてなかったりして……? もしかして焼き芋屋さんって、冬の稼ぎだけで1年中過ごせるスゴイ職業だったりして……!?

 

気になる〜〜〜!!!

 

というわけで、焼き芋屋さんの夏場の裏の顔を、実際に聞いてみることにしました!

 

 

京都の焼き芋屋さんに話を聞こう!

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はい!こちら、「松屋の蜜いも」松井さんです!

 

松屋さんは京都市内を中心に商いをされており、以前から私も客としてお世話になっています。

 

焼き芋大好きな私、この冬は数度こちらで焼き芋を頂いてるんですが……、

この松屋さんの焼き芋、ほんっとに、めっちゃくちゃおいしいんですよ……!

 

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見てください、このねっとり感!

普通の焼き芋って、割ったら栗のように黄色くほくほくした感じだと思うんですが、松屋さんは特別に甘い品種のさつま芋を使用しているので、蜜が絡んでねっとり甘くて超なめらか。

 

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▲食べていると、手にポタポタと蜜がこぼれ落ちます……! 贅沢!

 

普通の焼き芋って冷めたらパサパサして味も落ちちゃうと思うんですが、このお芋はとにかく蜜でしっとりしているため、冷めても超おいしい! 翌日には、まるで芋ようかんのようなずっしりとした食感が味わえちゃうんです……!

 

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100回おかわり……ッ!

 

もちろんそんな時間は無いので、早速こちらの松井さんに話を聞いてみたいと思います! 

 

 

なぜ焼き芋屋を始めた?『伝説の芋師』との出会い

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f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「松井さんは、どうして焼き芋屋をやろうと思ったんですか?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「う~ん、実は焼き芋屋は副業なんよ。本業の合間に何かしよっかなーと思って、『そういえば大学のとき、焼き芋屋のバイトでめちゃくちゃ儲けたなぁ』と思い出して、始めてみたわけよ。焼き芋カー 一式、全部ネットオークションで揃えて」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「これネットオークションなんですか!?」

 

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▲その時購入した焼き芋カー。車から釜からスピーカーから、全て込みで30万円だったとか。や、安ーッ!

 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「今の時代、ネットでこんなものまで買えるんだ……。でも、のんびり焼き芋を売って暮らすなんて、最高に楽しそうで羨ましい」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「いや、のんびりどころか、かなり苦労したよ。昔はちょっと田舎の方に行ったらすぐ人だかりができて、アホみたいに売れた。だから同じように行ってみたんやけど……全く売れへんねん。『石焼〜き芋〜』って音出しながら回っても、シーン……や。なんでやと思う?」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「うーん……あ、お腹がすいてないから!?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「そう! 昔は駄菓子屋くらいしかなくて、子供達のお腹がすいてた。けど、今はなんでも売ってるコンビニがどこにでもあるから、みんな腹一杯で焼き芋なんかいらんねん!」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「えー!大変だ!」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「それでかなり困ってたんやけど、ある時俺は、『伝説の芋師』に出会ったんや」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「で、伝説の芋師……!?」

 

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f:id:emicha4649:20180127163356p:plainはて……?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「市場では有名な、芋専門の師匠や。とにかく焼き芋を売るのがうまいねん! もともと噂は聞いてたんやけど、その人がたまたま俺に声をかけてくれて。で、芋の売り方をいろいろ伝授してもらって、芋の品種も美味しいやつに変えた」

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「確かに、松屋の芋は蜜がたっぷりでネットリしてて最高なんですよね……!」

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「せやろ。そうやって、ちょっとずつ改良していったら、だんだん軌道に乗って……今に至るわけ」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「焼き芋にもコツが色々あるんですねぇ。どういうことが大事なんですか?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「色々細かい事あるよ。まず、売る場所や焼き方はもちろんやし、車ひとつでも見た目の雰囲気とか、ちょうちんの下げ方とか、笛とか音とか、大事なことがいっぱいある。

あと『匂い』ね。たまに、わざと匂い出すんよ。釜の底に芋を擦り付けながら潰すと、いい匂いがぶわ〜っと出る!」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「えー!わざと匂いをだす!」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「焼き鳥屋でもそうやろ、あのええ匂いで食べたくなるやろ。そうやって、お客さんの食欲をそそる方法が色々あるわけ」

 

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▲この石の下の鉄板に芋を擦り付けると、あたりに芋の匂いが立ち込めるそう。私が大好きなあの匂い……! 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「焼き芋って1日どのくらい売れるもんなんですか?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain多い時は十万円以上かなぁ」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「1日で!? すごいなぁ! 普通のサラリーマンより全然稼いでる!」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「俺より稼いでる人なんぼでもおるけどな。でも、伝説の芋師はもっとすごいで! 1日30万円とかや!」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「1ヶ月で私の年収軽く超えるやん! さすが、伝説の芋師……!」

 

 

焼き芋屋さんって、夏は何をしているの?

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f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「実は今回、松屋さんに話しかけたのには理由がありまして。焼き芋屋さんって、夏の間は何をして暮らしてるの?ってことを聞きたかったんです。さっき、焼き芋は副業であって、本業は別にあるって言ってましたけど……」

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「う〜ん……。俺はほかの焼き芋屋とちょっと違うと思うけど、ええんかなぁ。

俺、焼き芋のオフシーズンは海外行ってんねん」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「か、海外? バカンスですか!?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「違う違う。ブラックジャックとか、ポーカーってわかる?

俺はポーカープレイヤー。

一年のうち半年くらいは、ラスベガスとかでポーカーしてるねん。

だから、夏は本業のポーカーやって、冬は副業として焼き芋を売ってるって感じやな」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ど、どういうこと〜〜〜!?」 

 

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▲この全く普通の焼き芋屋のおじさんが、ポーカープレイヤー!?

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「ポーカーも焼き芋屋も、どっちも最近はじめてんけどな。その前は、富士ゼロックスで普通に営業してたで」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「め、めちゃめちゃ大手じゃないですか!」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「14年前、48歳で早期退職して、ずっとなりたかったカジノプロの道に進んでん。焼き芋屋を始めたんはそのあと、5〜6年前くらいになるかな」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ポーカー師の方が先なんや……!」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「せやで、それが本業やからな」

 

 

ポーカー=スポーツ!? 仕事としての「ポーカー」って?

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「で、夏場はベガスでポーカーしてるんですよね……?」

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「そうやで。毎年5月〜7月は、定年した嫁とベガスでポーカーや!

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ど、どういうこと〜!? ポーカー=仕事ってこと……!?」

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「そやで。今は一年のうち、多いときは7ヶ月くらい海外に滞在して仕事してるよ。日本にはカジノ無いから、ベガスとかマカオ、韓国でポーカーしてる」 

 

f:id:emicha4649:20180126192023p:plain

 f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ちょ、ちょっと待って、全然想像がつかん!! もちろん、収入源としてポーカーをしてるってことですよね?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「もちろんや! 海外に滞在するだけでも、宿泊費、レンタカー代、食費……生活費諸々で、毎月20〜30万円かかるねんで。それ以上稼がんと保たへんわ!」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「え! 月にどのくらい稼いでるんですか?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「俺は大したことないよ。年間数百万ってとこやな」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「賭け事でそんなに〜〜!?!? 儲かるの!?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「そりゃあ、仕事やから儲けな!  儲けてる人は何千万、何十億と儲けてるよ!

日本ではギャンブルって印象強いけど、ポーカーはスポーツやねんで。プロスポーツで一番賞金が高いのはポーカー。

世界ではめちゃめちゃ有名な職業やし、アメリカなんかでは『子供達のなりたいスポーツ選手』の3本の指に入るほど人気やねんで」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「本当に……!? でも、ギャンブルですよね?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「いやいや、めちゃめちゃ競技性高いよ! ポーカーは確率と計算のゲーム。運はもちろんやけど、頭脳と豊富な経験に、屈強な精神力も必要になってくる、れっきとしたマインドスポーツや」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ず、頭脳……。例えば、囲碁とか将棋って計算さえできれば勝てる感じがするんですが、いわゆるカジノでやる事はほぼ『運』なイメージでした」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「将棋だって、棋士同士の実力がある程度拮抗してたら運の要素もあるやろ。ポーカーも同じや。

何より、ポーカーで一番大事なのは『常に何が起こっても冷静に対処すること』。頭が真っ白になったらなんぼでも負ける。ゴルフもテニスも、スポーツならなんだってそうやろ。

人から見たらギャンブルで、リスクが高い仕事と思われるかもしれへんけど、俺は一番リスクが無いと思ってポーカー師を選んだよ」 

 

 

「ポーカー」と「焼き芋屋さん」 、好きな事を生業に

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「ちなみにほかの焼き芋屋さんって、夏場は何をしてるもんなんでしょうか」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「わからんなぁ……。氷売りやってる人多いと思うけどなぁ、人それぞれ色んなことやってるんちゃう?」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「松井さんは、どうして『ポーカー師』と『焼き芋屋』を選んだんですか?」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「なんでやろうなぁ。どっちも性に合ってるねんな。

ポーカーは、ヒリヒリした雰囲気がおもろい。それなりに年々レベルアップして、だんだん勝てるようになって、収入も上がってきたし。

焼き芋は、人と話もできて収入もあるし、気晴らしにもなるしなぁ」 

f:id:emicha4649:20180127163356p:plain「どっちも全く違う職業だけど、補い合っててバランスが良いのかもしれないですね」 

f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「せやなぁ。で、どっちも自分の力次第やろ。やったらやっただけお金もらえるやん。何かするならお金であったり評価であったり、その分の見返りがある方が絶対楽しいやん」

 

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f:id:emicha4649:20180127163359p:plain「定年まで働いて年金暮らしもええかもしれへんけど、家でじーっとして起きてテレビばっかり見て好きなことして……そのまま60から90までずっと暮らすなんて、おもろないやん!

好きな事してそれが生業になる、今が一番楽しいよ。

どっちも、嫌になる日まで続ける!嫌にならへんと思うけどな。」 

 

 

結論

 というわけで、焼き芋屋さんは夏場何やってるのかというと……

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ということでした!

 

しかし、たまたま取材した焼き芋屋さんが「ポーカープレイヤー」って、そんなことある〜!? 

いやいや、もしかしたらそんなに珍しい話じゃないのかもしれません。私たちが知らないだけで、夏場にもっとおかしな仕事をしている焼き芋屋さんがいるのかも……?

あなたの街の焼き芋屋さんは、夏場はどんなことを生業にしているのでしょうか。もし見かけたら、話しかけてみるのも良いかもしれません!

 

それでは!

60歳の時の私は何をしているのか、好きな事を生業として生きていけているのだろうか……松井さんと話して将来がすこし楽しみになった、社領エミでした!

 

 

撮影:ニシキドアヤト(@art_0214

書いた人:社領エミ

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1990年兵庫県生まれ。Webを中心におもしろい記事を書こうと日々奮闘しているフリーのライター。女性が脱ぐとなぜ面白くならないのかいつも悩んでいる。
Twitter:emicha4649 

世界初!ソーダ割専用の日本酒「サマーゴッデス」に出合って、美味すぎるから翌日に取材した

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キレイな女将さんは、好きですか?

 

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ジモコロ初の福井県取材の前乗り。直感でふらっと立ち寄った小料理屋「のちのち」にお邪魔したんですが、キレイな女将さんはそりゃもう大好きだし、出てくる料理がめちゃめちゃ美味しくてこんな顔になりました。 福井駅に来たら絶対寄ってください。

 

あ、どうも、編集長の柿次郎です。

 

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その土地の美味しい食べ物に出会えるのは、地方取材の特権。地の物とお酒はペアーズばりのマッチング精度なんですが、この日の体験はちょっと想像を超えてきました。

 

東京から新幹線で片道約3時間半。福井県のポテンシャルそのものと出会ってしまった…といえば大袈裟かもしれませんが、2日連続でこの小料理屋に通ってしまったのは事実です。

 

僕の美味しんぼトリガーを引いたのはこちら!

 

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世界初! 炭酸割専用の純米大吟醸「SUMMER GODDESS」(真名鶴酒造)

 

「日本酒のソーダ割…?」

「普通、冷やして飲むか熱燗で飲むんじゃないの…?」

 

皆さんの疑問がありありと浮かんできますが、実はめっちゃ美味いんです。きっかけは宮城県の酒屋さん。「兄ちゃん、辛口の日本酒はソーダ割でも美味いんだぜ?」と粋な語り口でその魅力を教えてくれました。

 

この日も、女将さんに「ソーダ割でも美味しい辛口の日本酒はありますか?」と調子こいた感じの訳知り顔で聞いたら、「ソーダ割専用の日本酒がありますよ」と即答されたわけです。

 

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さわやかな口当たりと、ほのかな酸味と甘味。みんな大好きハイボールの日本酒版といえばイメージがつくかもしれません。日本酒が苦手な若者ウケも間違いなし。

 

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どんな味付けの料理も、喉越しのいい炭酸がスカッとリセットしてくれます。ああ、美味い。なんだよこれ。気づいたら2日間で計10杯飲んでました。

 

気になるのは、なぜソーダ割専用の日本酒を作ったのか?

水着と津波が描かれたラベルと「SUMMER GODDESS」の意味とは?

 

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気になるーー!!

 

 

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というわけで、アポなしのまま真名鶴酒造のある福井県大野市にやってきました。過去にこんな記事も作っていて、日本で一番水がキレイな町です。

 

ジモコロは、現地入りしてから行き当たりばったりで企画を考えて取材しています。今回は前乗りの小料理屋から発展した珍しいパターンで!

  

 

真名鶴酒造の杜氏・泉さんに話を聞いた

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アポなしで伺ったにも関わらず、取材を快く受けてくださった真名鶴酒造・杜氏の泉恵介(いずみけいすけ)さん。尊敬する人はジョン・レノンとスティーブ・ジョブズ。お店にはあの中田英寿も訪れています。

 

f:id:tmmt1989:20180116195156p:plain「突然押しかけてすみません。福井市の小料理屋『のちのち』で飲んだSUMMER GODDESSのソーダ割が、あまりにも美味しすぎて来ちゃいました」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「それはそれは(笑)。わざわざありがとうございます」

f:id:tmmt1989:20180116195156p:plain「個人的な興味もあるんですが、これは普段日本酒を飲まない若者こそ絶対好きになると思ったんです」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「まさにSUMMER GODDESSは、日本酒を飲まない若者に楽しんでもらいたくて作ったんですよ。酸味や甘味など、日本酒慣れせずとも美味しく感じられるよう飲みやすさにこだわりました」

f:id:tmmt1989:20180116195156p:plain「なるほど! ソーダで割ることによってビールやハイボールと同じ感覚で楽しめる。料理を選ばないのも素敵だなと思いました」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「そうでしょう。もしよろしければ、そちらに試飲用のSUMMER GODDESSが冷やしてあるので、好きにやってください(笑)」

f:id:tmmt1989:20180116195156p:plain「いいんですか! やったー! ではお言葉に甘えて……」

 

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今回はソーダで割らずにストレートで飲んでみました

 

「ぐびっ…」

 

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「あー、やっぱり美味いなぁ。ソーダで割らなくてもスッキリしてますね。日本酒って飲むと、喉の奥がアツくなっちゃうじゃないですか。SUMMER GODDESSにはそれがないというか」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「普段日本酒を作るときは黄麹(きこうじ)を使うんですが、SUMMER GODDESSでは白麹(しろこうじ)を使っています。そうするとクエン酸が出てほどよい酸味が生まれるんですね」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「なるほど! だから、柑橘系の風味があるのか」

 

 

日本酒を飲まない若者にも愛される新しいカタチ

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おじさんの感想ばかり伝えても仕方がないため、前日に声をかけていた地元出身の女の子二人に飲んでもらいました。ちなみに二人は普段日本酒を飲まないのだとか。

 

f:id:tmmt1989:20180116192832p:plain「美味しいー! スッキリしてて日本酒っぽくない!」

f:id:tmmt1989:20180116193132p:plain「これが日本酒ですか?!甘みがあって口当たりも軽い!」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「普段から日本酒を飲まない方に、そう言ってもらえるのは嬉しいですね」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「次はソーダ割でぜひ 」

 

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特別にソーダを用意していただいて、ソーダ割も試飲させてもらいました。氷を入れて、SUMMER GODDESSとソーダを1:1の割合で作るのがオススメとのこと。

 

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f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「初めて飲む日本酒のソーダ割はどうですか?」

f:id:tmmt1989:20180116192832p:plain「さらに飲みやすいですね!やっぱり日本酒とは思えないなぁ」

f:id:tmmt1989:20180116193132p:plain「正直日本酒には悪酔いするイメージがありました。でも、これはスッキリしてるから何杯でも飲めちゃいそうです」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「そうそう。ついつい飲みすぎちゃうから、こういうお酒を飲ませてくる男には注意した方がいいです」

f:id:tmmt1989:20180116192832p:plain「あなたのことですよね」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「(ほんとだ…!)」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「でもソーダで割ることで、アルコール度数が15度から7度に下がります。飲みすぎや二日酔い防止にもなるんですよ」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「それは大事な視点ですね。お酒に飲まれないためには知識も必要というか。そもそも、若者が日本酒を飲まないのって、出会い方に問題があると思っていて。こういう飲み方を教えてくれる大人が近くにいれば、日本酒ファンも増えるはず。せっかくなので過去のジモコロの日本酒記事も合わせてどうぞ」

 

 

 

 

f:id:tmmt1989:20180116192832p:plain「5億回読みます!」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「そんなに?」

 

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写真左がリンゴ酸酵母を使った珍しい日本酒「NEWTON 77 (ニュートン)」。写真右が柑橘系の酸味と上品な甘みが特徴的な「奏雨(そう)」。

2つの原酒を掛け合わせて生まれたのが「SUMMER GODDESS」なんだとか。

 

泉さん曰く「リンゴ酸酵母で醸(かも)すと柔らかくて、さわやかな口当たりになります。フルーティーな香りもリンゴ酸ならでは。また、ソーダで割っても薄くならないよう独自の製法で作っています」とのこと。

ここまで話を聞いて、普通の杜氏とは全然違った感性で日本酒づくりに取り組んでいるのが伝わってきました。

 

固定観念をぶっ壊すロックな日本酒作り

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取材中にも関わらず、どんどんお酒が進んでいく。

 

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「いやー、改めて美味しいです。泉さんの日本酒造りは、どこか型破りな発想から生まれている印象を受けました」

 

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「実は日本酒を飲む人は、日本の飲酒人口の7%しかいないと言われているんですよ」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「割合でいえばかなり少ないですね」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「そんな狭い市場で戦っていては、日本酒のこれ以上の発展はありえないと思っています。だから私はこれまで日本酒を飲まなかった層にも、積極的にアプローチをしていきたい。『SUMMER GODDESS』もそのひとつです」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「ソーダ割専用に振り切ったのもユニークですよね」

 

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f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「ありがとうございます。パッケージも日本酒のデザイナーに依頼すると、既存のイメージに寄ってしまう…筆字で酒名がドンっ!みたいな。だから自分自身でデザインしています(笑)」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「え、泉さんが手がけたんですか? たしかにセクシーな水着と津波の組み合わせは目を惹きますね」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「画像素材サイト『PIXTA』で見つけて組み合わせました」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「はは〜。なんでも自分で作っちゃう姿勢は、まさにクリエイターですね」

 

Summer Goddess

Summer Goddess

 

 

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「 ロックといえば、ネーミングも日本酒っぽくないですよね。僕も大好きなジャズバンドのSOIL & "PIMP" SESSIONSの『Summer Godess』という曲と同じで気になりました」

f:id:tmmt1989:20180116192718p:plain「ネーミング自体は、お酒のテイストに合うものを探していたら閃いたんです。だから曲名と被ったのは偶然なんです(笑)」

f:id:tmmt1989:20180116192702p:plain「なんと! メンバーの社長さんに連絡したら『絡みたい!ライブ会場で別注ジャケで売りたいわー』と良い反応がありました。社長さんも福井県出身なんですよね」

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f:id:tmmt1989:20180116192718p:plainおお!それはぜひぜひ。一緒に作れると楽しいですね

 

※後日2人を引き合わせたら意気投合。夏に向けてコラボ日本酒「SUMMER GODDESS」が生まれるかもしれません…!

 

取材を振り返って

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ふらっと立ち寄った小料理屋で偶然出会った「SUMMER GODDESS」。調べていくと、そこには今の日本酒のイメージを覆そうとする泉さんのアツい想いがありました。

 

最後に泉さんは、「日本酒業界には『日本酒はこうあるべき』という固定観念がある。でも僕は日本酒もビールみたいにバリエーションに富んでいてもいいと思っているからこそ、市場を広げるような新しい日本酒を作っていきたい」と語ってくれました。

 

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炭酸割専用純米吟醸 SUMMER GODDESS - 越前大野の地酒 清酒 真名鶴

ちなみにジモコロ編集長イチ推しの「SUMMER GODDESS」は夏に限らず、年間を通して公式HPから購入可能。ぜひ一度飲んでみてください。

 

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後日、初めて日本酒を飲んだ地元の女の子からメッセージが届きました。

地元の酒蔵に初めて訪れて、日本酒の美味しさを知る。彼女が同世代に「この日本酒がおすすめ!」と伝えていけば、きっと泉さんも大喜びでしょう。

 

それではー!

 

企画・編集:徳谷 柿次郎

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株式会社Huuuu代表取締役。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916 

写真:小林 直博

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長野県奥信濃発のフリーペーパー『鶴と亀』で編集者兼フォトグラファーをやっている。1991年生まれ。ばあちゃん子。生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中。

書いた人:菊地誠

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自社メディア事業を手がける西新宿のデジタルマーケティング企業、株式会社キュービックのPR担当兼ライター。タイ人と2人で暮らしています。タイでドリアンの畑を作成中。動物とぬか漬けが好き。Facebook:菊地 誠 / Twitter:@yutorizuke / 所属:株式会社キュービック

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