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誰もが知る缶詰『ホテイのやきとり』―工場で炭火に焼かれる肉を見てきた

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はじめまして。

静岡出身のジモコロライター、田中嘉人(たなかよしと)と申します。

 

突然ですが、静岡県はマグロ類缶詰(いわゆるツナ缶)の国内シェアが98.6%もあるって知ってました?

しかも『シーチキン』でおなじみのはごろもフーズや、『タイカレーシリーズ』が人気のいなば食品の本社も静岡市にあり、缶詰大国と呼ばれているのです。

※ 出典:「缶詰時報」公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会

 

そんな中、今回僕が訪れたのは……

 

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ドドドドドド……!

 

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ヒュイン、ヒュイン、ヒュイン、ヒュイン!

 

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ガラ、ガラ、ガラ、ガラ……

 

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ドドン!

 

これです! 1億3千万人の日本国民全員が、一度は食べたことがある『ホテイのやきとり』

 

昭和45年(1970年)から、この商品を作っているのがホテイフーズさん。他社がツナ缶の開発に注力しているのに、なぜよりによって焼き鳥の缶詰をつくっているのでしょうか。

 

今日はその秘密を探ってみたいと思います!

 

ホテイ やきとりたれ味 3缶

ホテイ やきとりたれ味 3缶

 

 

 

やきとりの缶詰は、社運をかけた大勝負だった

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お話を伺ったのは、ホテイフーズコーポレーション 開発部 商品企画課の水野さん。

 
f:id:yto4410:20171013172912p:plain「缶詰と言えばツナ缶、というイメージがあるんですが……なぜホテイフーズさんは焼き鳥を選んだんでしょうか? いじわるされてマグロが手に入らなかった?」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「いや、そんな『将太の寿司』みたいな状況はありませんでした。元々はホテイフーズもツナ缶が主力商品だったんです」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「え、そうだったんですか!」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「と言っても、当時はほぼ海外向けという感じで、売上の8割は輸出でした。ところが、高度経済成長期に入ると賃金高騰や為替の変動によって、国際競争力が低下してしまって」
f:id:yto4410:20171013172912p:plain「なるほど。昔の日本は『安く作れる』のが売りだったけど、コストが高くなって海外で売れなくなったわけですね」

 

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f:id:yto4410:20171013172857p:plain「そうですね。かなり危機的な状況だったようです。なので、国内向けにシフトしようと」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「で、焼き鳥を? それまで主力だったツナ缶を、そのまま国内向けに売るという考えはなかったんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「寿司屋に行けばわかりますが、まぐろやカツオは『時価』といって、値段が安定しないんですね。そこで、比較的相場が安定している鶏肉で何かできないか、と考えた結果、焼き鳥になりました」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「『時価』の値札がついてるような、高い寿司屋で食べてらっしゃるんですね」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「今それ重要?」

 

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f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「当時の缶詰業界のことを推し量ることはできませんが……缶詰で焼き鳥っていうのは、『あり』だったんですか?」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「いえいえ、『缶詰で焼き鳥って(笑)』という状況でした」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「ではどうやって発想したんでしょう? もしかして、アイデアに行き詰まって居酒屋で飲んでる時、たまたま手にした一本の焼き鳥を見て『こ、これだ!』という一幕が……」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「そんなドラマみたいなシーンはありませんでした。普通に会議室で生まれた発想ですね」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「あ、そうですか……」

 

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f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「昔、缶詰で焼き鳥という発想がなかったのは、『焼き鳥といえば串に刺す』というイメージがあったからです。でも、串は本来、鶏肉をまとめて焼くための工夫であって、味的には串がなくても成立するんです」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「確かにそうですね」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「つまり焼き方さえ工夫すれば、缶詰でも本格的な焼き鳥が食べられる。イケるんじゃないかと

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「そこまで決まれば、あとは順調に発売までこぎつけたって感じですか」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「ところが、焼き鳥の缶詰誕生までの道は、平坦ではありませんでした。特に炭火は火加減が難しくて、当時の開発者たちは研究室に炉をつくって、煙にむせながら試行錯誤を繰り返したそうです」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「ちょ、ちょっと待ってください! え、これって本当に炭火で焼いているんですか? 今も?」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「もちろんです! パッケージにも『国産鶏肉炭火焼』って書いてあるでしょ? そんな炭火へのこだわりが功を奏して、1970年の発売直後から、大ヒットしたんですよ」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「まさか本当に炭火で焼いていたとは……それが一番の驚きでした」
f:id:yto4410:20171013172857p:plain「では、実際にどんな工程で缶詰が作られているのか、見てみますか?」

 

 

『ホテイのやきとり』の味を守る、炎の番人

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工場の案内は、工場長の松村さんにバトンタッチ。僕も白衣に着替えました

f:id:yto4410:20171013172852p:plain白衣のサイズ大丈夫ですか?」

f:id:yto4410:20171013172922p:plainキツキツです。特に頭周りが」

f:id:yto4410:20171013172852p:plainこれが最大サイズなんですけどねぇ……」

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 f:id:yto4410:20171013172922p:plainさっそく大量の鶏肉が……! こちらは何をしているところですか?」

f:id:yto4410:20171013172852p:plain「均等に火を入れるために、隙間なく鶏肉を並べています。

f:id:yto4410:20171013172922p:plainということは、この後『焼き』の工程が……?」

f:id:yto4410:20171013172852p:plainはい。こちらです」

 

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f:id:yto4410:20171013172922p:plainおぉ、すごい熱量だ……。でも、あれ? 炭火じゃなくてガスバーナー!?

f:id:yto4410:20171013172852p:plainまずはこちらのバーナーでじっくりと火を通すんです。次に、仕上げの工程として炭火で焼いていきます。こちらです」



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ジュオオオオオオオォォォ!!!!!!

 

 

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f:id:yto4410:20171013172922p:plainうわー!!ジュウジュウいってる!!あっつい!!」

f:id:yto4410:20171013172852p:plainこうやって炭火焼きしてます。鶏肉から落ちた脂の煙でいぶされて、本格的な炭火焼の風味になるんですよ」

 

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あああああああああああああ! 遠赤外線効果ァァァ!!!!

 

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f:id:yto4410:20171013172852p:plain「美味しい焼き鳥をつくるために専門の炭職人が厳しく目を光らせて5~6分に1回くらいのペースでチェックしています。この工程は味のキモですから、本当に気を使います」

f:id:yto4410:20171013172922p:plain「ヤバい、なんておいしそうなんだ。目の前に炭火で焼きの入った鶏肉が大量に……脂の焦げるニオイが堪らない……これ、ちょっと試食しても良いですか? あくまで取材の参考に」

f:id:yto4410:20171013172852p:plainこの段階では、まだ完全に火を通していないんで、食べられないんです。この後、缶ごと加熱殺菌するタイミングで完全に火が通るように計算されてます。それがおいしさの秘密ですね。火を通しすぎると鶏肉が硬くなってしまうので」

f:id:yto4410:20171013172922p:plainなるほど、いや、忘れてください。オナカが減っていたわけではないんで。ほんと、オナカが減ってたわけでは……ないんで……」

 

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炭火工程のあと、鶏肉は一口大にカットされ―

 

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焦げた部分や皮のみの部分などは目視ではじかれます。

この女性たちの手の動き、ハンパなく早いです。たぶん卓球とかムチャクチャ強いと思う。

 

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そしていよいよ缶に入れられ―

 

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ひとつひとつタレが注入されていきます。店頭に並ぶまでの間に、缶詰内で鶏肉とタレの味がじっくり馴染むんです。

 

「缶詰内で味が整えられる」というのは業界では常識らしく、例えばツナ缶だと、製造から1年経ったものがオイルの染み込み具合がちょうどおいしいんだそう。役立つ知識!

 

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タレが注入された焼き鳥は密封され、一箇所に集められます

 

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コンテナにびっしりと並べられたら、

 

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こちらの釜で加熱殺菌されます。そして、ようやく出荷されるというわけです

f:id:yto4410:20171013172922p:plainもっと機械化されていると思ったので、想像以上に人が関わっていたのが驚きでした。1日でどれくらいの缶詰が生産されるんですか?」

f:id:yto4410:20171013172852p:plain1日約8万缶ですね。1年だと250日稼働だとして……2000万缶ですね」

f:id:yto4410:20171013172922p:plainちなみにですが、2000万缶の缶詰を作るために、ニワトリはどれくらい必要なんでしょう」

f:id:jimocoro:20171017164117p:plain「どれくらいだろう……おそらく1日1万羽だから1年で250万羽くらい、かな。実は1年に一回、愛知県豊橋市の神社で供養してるんですよ」

 

社員考案のオススメレシピを大公開!

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工場見学を終えて、再びオフィスに戻ってきました

 

f:id:yto4410:20171013172857p:plain工場はいかがでしたか?」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「炭火は迫力がすごくて感動しました。おいしそうだったなぁ! まぁ、実際には食べてないんですけどね。おいしそうだったけど、食べてはね、いないんですよね」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「……せっかくなので試食していきますか?」

f:id:yto4410:20171013172912p:plainえ!? いいんですか! やったーーーーーー!

 

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定番のたれ味に始まり、塩味、激辛味、ガーリックペッパー味、柚子こしょう味をご用意いただきました。

 

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あぐっ

 

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うんまい……!

 

お酒のつまみにピッタリの「塩味」、若者に人気だという「ガーリックペッパー味」、そして缶詰のなかに焼き鳥と煮玉子がまるごと入ってる『やきとりたまご』等など……

 

これもう缶詰のレベルを遥かに超えちゃってる!

 

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「おいしい~! 特にこの、もっともスタンダードな『たれ味』! 子供の頃から変わらない『これこれ!』っていう味ですね」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「えーっと、実はタレの味は、時代に合わせて進化しているんですよ。最近はりんご果汁などをたれの材料に加えているので、以前と比べてやさしい甘さになっています」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「全然気づかなかった……。でもパッケージの男性イラストだけは、昔から変わってないようですね」

 

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ホテイフーズさんに見せてもらった資料。

写真は昭和50年前後のポスターをまとめたページ。右下に現在も見覚えのある男性のイラストが……

 

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「この男性は誰なんですか? 工場の近くで焼き鳥屋をやってた人がモデルとか?」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「いえ、特にモデルはいないと思います。漫画家のおおば比呂司さんに描いていただいたものなんです。実は名前はありませんが、社内では『ヤキヤキ親父』と呼ばれています

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「え~! もったいない! 名前をつけてグッズを売れば儲かりそう。え~っと、ホテイの缶詰だから『寅泰(トモヤス)』さんではどうですか?」

f:id:jimocoro:20171017120017p:plain「怒られそうなので遠慮しときます」

 

 

ホテイのやきとり―おいしい食べ方は?

 

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食べながら取材しちゃってすいません。こちらは『やきとりたまご』。煮玉子に味がメチャ染みてる! 

 

f:id:yto4410:20171013172912p:plain『ホテイのやきとり』の食べ方として、僕が思い出深いのは、バーベキューや焚き火の時に、缶ごと焼き網に乗せるやり方です。屋外でアツアツの焼き鳥を食べるおいしさが……」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「あ、それはやめてください」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「え、え? なぜ?」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain缶の内側は樹脂でコーティングされているからです。缶ごと直火にかけると樹脂が溶けてしまうかもしれません。アツアツで食べたければ、湯せんするか、皿に移してレンジしてくださいね」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「知らなかった……。食べ方といえば、ホームページには『ホテイのやきとり』を使ったアレンジレシピの紹介もありますが、水野さんイチオシのレシピってあります?」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「イチオシですか。ちょっと照れくさいんですけど……」

 

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モジモジと見せてくれたのがこの本。

 

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バターでやきとり(ガーリックペッパー味)とご飯を炒めて、そのうえに目玉焼きを乗せるというガーリックチキンライス。

 

f:id:yto4410:20171013172857p:plain数年前にレシピ本を出版することになって、社員でアイデアを出し合ったんです。そのなかのひとつに、僕が考案したものが選ばれまして」

f:id:yto4410:20171013172912p:plain「おぉ、おいしそ~~~! どうやって考えたんですか? 何回も作ってはやり直し……」

f:id:yto4410:20171013172857p:plain「いや、料理はしないんで、想像で考えたレシピだったんですけどね」

f:id:jimocoro:20171017115918p:plain「想像かい」

 

 

まとめ

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いかがだったでしょうか。今回は、誰もが知る『ホテイのやきとり』について、工場にまで潜入して調べてきました。

常識にとらわれることなく、果敢にチャレンジした結果 生み出された商品だったんですね~。

 

最後に、水野さん考案のレシピを実際に作って、この記事の締めくくりにしたいと思います。だってみなさん、「想像で考えた」という一言がメチャメチャ引っかかっているでしょう?

 

<材料>

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使用する食材はこちら。『ガーリックペッパー味』(黒いやつ)を使用するのがポイント!

・ホテイのやきとり ガーリックペッパー味 1缶

・ごはん お茶わん1杯分

・卵 1つ

・バター 10g

・レタス 1枚

・ミニトマト 2つ

・パセリ 適量

 

<作り方>

▼レタスを一口大にちぎる。ミニトマトを半分にカットする。

▼バター5gをフライパンに溶かし、目玉焼きを作る。目玉焼きはお皿にうつす。

▼残りのバターをフライパンに溶かし、ホテイのやきとりとご飯を炒める。

▼レタスを敷いたお皿のうえにご飯をもりつけ、目玉焼きを乗せる。

▼トマトとパセリをいい感じにもりつけて…

 

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完成~~!!

 

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うンめ~~~~!

 

想像で考えたくせにめちゃめちゃおいしかったです。みなさんもぜひ作ってみてくださいね! ホテイフーズ公式サイト「ホテイのレシピ」では、その他おいしいレシピを公開中ですよー!

 

 

 

 

(おわり)

 

 

書いた人:田中嘉人

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1983年生まれ。静岡県出身。2008年にエン・ジャパン入社。その後CAREER HACKをはじめとするWebメディアの編集・執筆に関わる。2017年5月に独立。Twitter=@yositotanaka


ロシアの夫とハラショー日本「ドストエフスキーやトルストイ……ロシア文学ってロシアではどう扱われてる?」

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東京で生活するマンガ家・シベリカ子が、夫のロシア人男性・P氏と共に、日本をレポートします。料理や文化など、ロシア人から見た日本や東京を、優しい絵柄でのんびり切り取りますよ!

きっとハラショー(素敵)なニッポンが待っている……?

 

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ロシアの夫とハラショー日本|一覧

 

 

●シベリカ子の単行本情報

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

 

 

書いた人:シベリカ子

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埼玉県出身、東京都在住。漫画家、イラストレーター。ロシア人の夫と1年間ロシアに滞在した時のことを描いたコミックエッセイ「おいしいロシア」で単行本デビュー。
ツイッター:@ShibeRikako
ブログ:シベリカ通信

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 21話「マイノリティー」

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<柳田さんと民話・一覧>
21

  

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<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

11話~20話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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【いわもとQ】ド素人が立ち食いそば屋を経営したら、食べログ評価3.5以上になった

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こんにちは、ライターの松岡です!

 

都会の冷たい風に吹かれながら、仕事に追われる毎日……ゆっくり食事をとることもできないそんな時、僕は立ち食いそばを食します。

 

特に頻繁に訪れるのが……

 

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『いわもとQ』というお店!

 

いわもとQ 歌舞伎町店

住所|東京都新宿区歌舞伎町1-4-8 らんざんビル1F

営業時間|24時間営業(年中無休)

※他に池袋店、高田馬場店、神保町店があります

公式HP

 

こちらのお店、低価格の立ち食いそばチェーン店にもかかわらず、

都内4店舗全店で食べログの評価が3.5以上ある

んです!

過去にラジオで、ライムスターの宇多丸さんや、伊集院光さんもおすすめしていました。

 

こだわりの専門店や高級店でもこんな高評価はなかなか無いというのに、チェーン全店舗で3.5以上の評価って、はっきり言って異常です。

 

果たして、このお店の評価と人気の理由はどこにあるのか?

 

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 代表取締役の、岩本浩治さんに秘密を伺ってきました!

 

 

おいしさの秘密はゴミ捨て場にあり?

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f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「はじめまして! 今日は『いわもとQ』のおいしさの秘密を伺いたいと思っております。岩本さんは、お店を始める前、どこで修行をなさってたんでしょう?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「修行……? それは、どこかのそば屋でってこと?」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「はい。よほどの名店で、長年修行してきたんだろうな、と……」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「いや、まったくのド素人です。料理に興味ないし、台所に立ったことすらなかった。前職もそばとは何の関係もない“経営コンサルタント”でしたね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「『なぜおいしいのか?』という疑問が、さらに深まってしまった。だって料理したこともなかったんですよね?」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「はい。だから、おいしいそばの店を探しては、そこのゴミ箱を漁ったりしてました

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「ん? どういうこと?」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plainゴミ捨て場には、しょうゆのビンとか捨ててあるでしょ? それを見て『ははぁ、このメーカーのものを使ってるのか』なんてメモったりしてた」

 

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ポカーン

 

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「あとお店に入っても、どこの製麺機を使ってるのか、なんてことを調べてました。あるチェーン店の店員さんには2回捕まってますよ。『あんた何してんの?』って。そりゃそうですよね(笑)」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「ものすごい体当たりな学習法ですね……じゃあ、何というか、パクッたというとアレですけど、えーっと、研究? 色んな店の味を研究して、今のおいしさになったと」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain携帯で話してるふりをして、厨房の裏口とか、非常階段に置いてある一斗缶なんかをチェックすると最高ですよ」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「なるほど、ありがとうございます。でも今は、便利なパクりかた講座は必要ないです。味の秘密は他にありますか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「すごく単純明快な理由ですが、“新鮮であること”が最大の理由ではないでしょうか。そばも天ぷらも、注文を受けてから作るので」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「僕も初めて『いわもとQ』で天丼セットを食べた時は感動しました! 天ぷらがカリッカリのサクサク! 立ち食いそばのチェーン店で作り置きをしていないって珍しいですよね」

 

『いわもとQ』おすすめメニュー

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天丼セット/税込750円

※そばは“もり”“かけ”“ひや”が選べます(写真は“ひや”の並盛り)

『いわもとQ』を代表するメニュー。茹でたてのそばを冷水で引き締めたコシのある麺はのどごしが抜群。天丼には「エビ、キス、イカ、カボチャ、インゲン」の、揚げたたての天ぷらが盛られている。

 

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「だってねぇ、いくら高級店の職人が揚げた天ぷらでも、冷めてしまったらおいしくない。それよりは、素人が作ったものでも、揚げたての方がおいしいわけです。茹でたてのそばも同じですね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「天ぷらは冷めるとベチャベチャになっちゃいますもんね。では、素材に関してはどうでしょう? 例えばそば粉は特別なもの使ってるんですか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plainチェーン店としてはあり得ないくらい良いものを使ってる自負がありますね。なんせ、ものっっっすごく試行錯誤した結果なので。2003年の創業時から、よりおいしくて低価格なものを……と、数百回以上は変えたかな」 

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「アツい信念で地道な努力を重ねる姿……かっこいいなぁ! 『いわもとQ』では、普通の立ち食いそば屋なら必ず置いてるカレーやカツ丼、うどんなどを取り扱ってないですよね? それも何か信念が?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「同時に複数の作業を走らせないほうがいいからってだけですね。評価的にも、利益的にも、“全部そこそこ良い”より“1つだけ抜きん出てすごい”方が、ビジネスとして効率がいい

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「そこはビジネスライクなんですね」

 

 

ド素人だからエゲツない失敗を繰り返した

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f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「そもそも、なぜド素人なのにそば屋をやろうと思ったんでしょうか? そばを食べるのが趣味で、何百店も食べ歩きするようなマニアだった?」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「そばを食べるのは好きな方でしたが、そもそも私の場合、『好きだから店をやりたい!』という発想ではなかったんです。『何かお店をやりたいけど、何の店にしようかな?』という選択の中から、結果的にそばを選んだって感じ」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「選択肢は他にもあった? その中からそばを選んだ理由は何だったんでしょうか」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plainビジネスとしてですね。私はもともと、セブンイレブンで加盟店を巡回し、接客や陳列、発注などを教える指導員をやっていたんですが、『企業相手ではなく、お客さん相手の商売がしたい』と思って独立したんです。で、どんな店がいいかなと考えて」

 

『いわもとQ』おすすめメニュー

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かけそば/税込300円

甘みのあるスッキリとしたダシは、心があたたまるシンプルな味。麺は独自の、シコシコした歯ごたえで伸びにくい工夫がなされている。寒くなるこの時期にオススメしたい一杯。

 

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「お客さん相手の商売といっても、ドラッグストアとか洋食チェーンとか、色々ありますよね? その中からそばを選んだ理由は?」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「小売店だと価格競争になるし、コストを考えるとファストフードかなと。ただ、ハンバーガーや牛丼など、ライバルの多い業界だと埋もれてしまうので、消去法で考えて立ち食いそばになりました

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「そばへのこだわりとか、愛とかじゃなくて、ゴリゴリにビジネスライクな理由でそばを選んだんですね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「仮にも経営コンサルタントでしたから、価格はこれくらいにして、コストをこう抑えて、チェーン展開して……と考えてたら、良し!これは成功以外にあり得ないぞと。2003年に、麹町に1号店を出しました」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「結果はどうだったんですか?」

 

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木っ端微塵に失敗しました

 

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「えぇ? そんなに明確なビジョンがあったのに、失敗したんですか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「結局すべて机上の空論だったんです。思っていた1/3しか売れないし、思っていた1.5倍経費がかかる。本当に愚かでした……」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「ああぁぁ……」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「コンビニみたいに、工場で作られた規格品をコーディネートするみたいなイメージだったんですけどね。そんなにうまくいくわけがない。死ぬ一歩手前の失敗でした」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「まさに危機的な状態ですね。どうやって持ち直したんですか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「なぜ失敗したのかという理由を洗い出して、ひとつひとつ修正しました。1.5倍の経費を1.0倍の経費になるまで、食材の仕入れを含めて考え直して、3ヶ月目くらいで、やっとトントンになりました」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「立て直すスピード、早っ!」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「まぁトントンと言っても、自分が死ぬほど店に入って人件費を切り詰めたってのもありますけどね。1ヶ月500時間は入りましたから」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「よく過労死しなかったな……」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「おかげで、1号店はようやく利益が出るようになりました。じゃあ2号店に取り掛かろうと。オフィス街(麹町)でのビジネスは大体わかったから、次は新宿歌舞伎町でやってみたんです!」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「やっと現実的な経営をやれるようになって、さて、歌舞伎町はどんな結果が出たんでしょう?」

 

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「(ニコッ)わかるでしょ?

 

 

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「木っ端微塵に失敗しました」

 

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「なんでぇぇぇーー!?」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「普通に考えたら立ち食いそば屋に向いてる立地じゃないですよね。1号店の売り上げの半分くらいでしたよ、ハハハ」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「笑ってる場合じゃないでしょ! 失敗の原因はどこにあったんでしょうか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「1号店の麹町はオフィス街だから、お客さんが来るのは昼時ですよね? 当時はまだ“茹でたて揚げたて”ではなかったんですが、作り置きしてもすぐ売れるから問題なかったわけです」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「なるほど。一方、2号店の歌舞伎町では?」

 

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f:id:jimocoro:20171102181746p:plain繁華街では、決まった時間にお客さんが来ない。作り置きしてたらどんどん古くなるから、いつ行ってもマズいわけですよ」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「またも失敗だったと。今度はどんな修正を行ったんでしょう?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plainそばも天ぷらも全部、注文が来てから作るやり方に変えたんです

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「今と同じやり方だ!」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「そしたら、お客さんが2回ビックリし始めたんですね」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「2回? どういうことでしょうか。まず1回目はどういうことにビックリされたんですか?」

 

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f:id:jimocoro:20171102181746p:plain『立ち食いそばなのに、いつまでたっても出てこねぇじゃねーか』と」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「注文聞いてから作ったら、そりゃあ時間かかりますよね」 

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「繁華街のお客さんは、サラリーマンみたいに昼休憩が1時間あるわけじゃないんでね。すぐに戻らないといけないのに、いつまでも待たされる。『てめえ、いい加減にしろよ!』と 」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「ごもっとも」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「で、やっと出すじゃないですか。そしたら、天ぷら揚げたて、そば茹でたてですよ。ひとくち食べて『……うめぇじゃねーか』ってね、2回ビックリしてくれた」

 

『いわもとQ』おすすめメニュー

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天ぷらセット/税込650円

※そばは“もり”“かけ”“ひや”が選べます(写真は“もり”の並盛り)

『いわもとQ」でも1~2を争う人気メニュー。天ぷらがまとう衣は軽く上品な仕上がり。高級店にも勝るクオリティの「エビ、キス、イカ、カボチャ、インゲン」が堪能できる。

 

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「じゃあシンプルに、“おいしいものを作ったら持ち直した”ってことですか」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain歌舞伎町は、多くの人が集まって会話をする街でしょう。中でも、『あそこの店はうまい!』って話は誰もがするんです。口コミでお客さんが増えはじめて、3年くらいで利益が出始めました」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「一時は麹町店の半分しか売上げがなかったのに」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「手痛い失敗ではありましたけど、歌舞伎町に店を出したことがきっかけで、今の揚げたて・茹でたてのシステムが生まれたので、結果的に良かったですね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「マイナスをプラスに変えて、経営者としてどんどん成長してますね!」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「まあ、その後 赤坂に店を出してまた大失敗するんですけど

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「1回は必ず失敗してる……!」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「ただ、TBSがある赤坂に出店したことで、伊集院光さんや宇多丸さんのラジオ番組で、『いわもとQっていうお店がおいしい』と話題になりまして。その恩恵は今でも続いてて、すごく感謝してます」 

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「怪我の功名ですね。ところで、前から気になってたんですが、店名の『いわもとQ』というのは、どういう意味なんですか? 社長の名前が岩本だから『いわもと』なのはわかるんですが、『Q』は?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「まず言っておきたいのが、最初は『いわもとQ』じゃなかったんです。もともとIt’s ぷりぷり そば・天丼』という店名にしようと思ってて

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「はい?」

 

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『It’s ぷりぷり そば・天丼』です」

 

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「いや、なんで?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「名前はそんなに重要じゃなくて、記憶に残ってもらえばそれでいいと思っていた部分と、素人の私がちゃんとした店名をつけるのは抵抗があったから。そしたら店を借りる時に大家さんが 『そんなふざけた名前なら貸せない』って言うんです」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「今となっては大家さんに感謝ですね」

 

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店名が『It’s ぷりぷり そば・天丼』だったら、こんな感じになっていた? 大家さんのファインプレーと言えるだろう

 

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「『店名がいわもとなら貸すよ』って言われて、じゃあそれでいいかと」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「で、『いわもと』になったと。……あれ?『Q』は?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「『いわもと』というロゴの後ろに、キャラクターを配置してたんですよ。そのキャラクターは丸い輪郭に小さな目が点々とついてて、そばを食べてた。そのそばが斜めに伸びてたから、お客さんには、『Q』に見えたらしくて」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「あぁ~、丸いキャラクター『○』が、斜めに飛び出したそば『\』を食べてたから、『Q』に見えたんだ」

 f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plainみんなが『いわもとQ』って呼んでるから、じゃあそれを正式な店名にしちゃおうと。つまりお客さんの勘違いから生まれた店名ですね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「マジで名前に無頓着すぎる」

 

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現在のロゴにも『Q』の部分には目が描かれている。昔は斜めの棒「\」が、そばだった

 

 

食べログ3.5という評価に思うこと

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『いわもとQ』では、スープジャーで保温されているそば湯が飲めます。忘れずに飲んで帰りましょう!

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「『いわもとQ』って、そばへの愛や想いも強いけど、ビジネス的なアツさで経営してるイメージです。なのに4店舗すべてで食べログ3.5以上の評価があるってすごくないですか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain私はそんなにおいしくないと思ってますよ。謙遜ではなく、現場にも言ってるんですが、過剰評価です。ちゃんとしたお店に失礼なのでは……?と心配すらしてます」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「そうかなぁ、おいしいと思いますけど」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain 「14年もそば屋やってると、色んなお店に食べにいくわけですよ。うまい店は本当に、感動するくらいおいしい。それを自覚してるから、『いわもとQ』はコスパで戦うんです」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「コストパフォーマンスなら無敵ですね」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「安く済ませたい人と、おいしいものを食べたい人、二者だけじゃなくて、実際には、その中間のお客さんがほとんどです。だからこそ、『いわもとQ』が、この価格でおいしいってことに意義がある。中間のお客さんにとってコスパが良い店でありたい」

 

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f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「目指しているのは名店ではなく、あくまで立ち食いそば屋ですか?」

f:id:fccmatsuoka:20171031052528p:plain「ですね。私は職人じゃないし、たくさんチェーン展開したくて立ち食いそば店の世界に入ったわけですから。良いビジネスにしたいけど、14年経ってまだ4店舗ですよ。まだまだです」

f:id:fccmatsuoka:20171031052515p:plain「都内にもっともっと『いわもとQ』が増えるのを楽しみにしています。できれば、僕が働いてる会社の1階で営業してください」

f:id:jimocoro:20171102181746p:plain「それが、ビジネスとして効率が良いと判断したら、やります」

f:id:jimocoro:20171102181716p:plain「本気で待ってます! 今日はありがとうございました」

 

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公式HPより

今回紹介したもの以外にも、『いわもとQ』にはおいしいメニューがいっぱい! ぜひ食べにいってくださいね!

※メニュー、価格はすべて2017年11月現在のものです

 

まとめ

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 というわけで今回は、立ち食いそばの革命児『いわもとQ』の社長に、おいしさの秘密を伺ってきました。

 

・実は料理をしたことすらないド素人だった

・経営コンサルタントとしてビジネス的な視点が強い

・木っ端微塵に吹き飛ぶような失敗ばかりだった

・ヘタしたら『It’s ぷりぷり そば・天丼』という店名になっていた

 

色んなことがわかった結果、ますます『いわもとQ』が好きなってしまいました!

 さて、今夜も「天丼セット」を食べて帰ろうかな!

 

 

(おわり)

 

 

 取材協力「いわもとQ」

iwamotoq.co.jp

 

 

書いた人・松岡クジャク

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1990年生まれ。千葉県八街市出身。
元テレビ番組の制作スタッフ(AD)で、現在は株式会社バーグハンバーグバーグ所属のアルバイト。好きな古典落語の演目は「時そば」。Twitter:@matsuokujyaku

たこ焼きは関西人のソウルフードだ! 地元民が語る「鉄板」の思い出話

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たこ焼き・イズ!

 

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マイ・ソウルフード~!!

 

記事冒頭から実家の一角を晒してごめんなさい。
大阪出身のライター、ネルソン水嶋です!

 

我が地元のソウルフード、たこ焼き。この理想的な食感として「外はカリカリ、中はふわふわ」という表現があります。しかし…わたくし正直、まったく納得しておりません!

 

同郷の友人たちとその話題になればいつも「外も中もふにゃふにゃなやつが一番ええ」という結論に落ち着きます。

そう、たこ焼きはカリふわではなくふにゃふにゃが一番!これは声を大にして訴えたい。だけども、どうしてみんな共通してるんだろう? それって……

 

大阪人なら、誰でも「行きつけのたこ焼き屋」があるってこと?

 

よく考えるとこれってすごいことなんじゃないか、床屋か美容院かよ。
こちらを検証するべく、大阪人の友人たちに行きつけのたこ焼き屋を聞いてみました!

 

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女の子にはフラれたけどたこ焼きはお持ち帰りした…天王寺の「やまちゃん」

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まずは大阪でも有数のビッグシティ、天王寺へ。日本一高いビル「あべのハルカス」もここにあります。


そんな街が地元のシティボーイ・白井さんに、行きつけのたこ焼き屋を聞いてみました。

 

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f:id:tmmt1989:20170928185421p:plain『やまちゃん』ですね! USJや、それこそお台場にも支店のあるチェーン店なんですが、本店に子どもの頃からよく行ってました」

 

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やまちゃん本店、チェーン店ながらも親しみを感じる外観

f:id:tmmt1989:20170928185421p:plain「高校か大学の頃に、イートインスペースのある二号店ができたんです。最初は鉄板が使い込まれていないとかで『やっぱ本店の方がうまいよな』とか言ってたんですけど、すぐに違和感もなくなって、大学の友達や当時の彼女と店内で食べてましたね~」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「イートインが出来るたこ焼き屋ってデパートならよく見るけど、戸建ての店舗は珍しいですねぇ」

f:id:tmmt1989:20170928185421p:plain「そうですね。夜も23時くらいと遅くまでやっているので、バイトが終わってから持ち帰りして、缶ビール飲みながら食べてました」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「まぎれもなく行きつけだ」

 

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味付けには、ベスト、ヤング、ヤングB…などの独特なネーミングもやまちゃんの特徴。ベストが「何もつけずそのまま」とあるあたり、味の自信がうかがえます

f:id:tmmt1989:20170928185421p:plain「あ、持ち帰りといえば全然関係ないんですが、大学の飲み会でいい感じになった女の子を本店の前で口説いたところ失敗しちゃって……。たこ焼きだけを寂しく持ち帰ったことがあります

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain本当に関係ないな

 

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白井さんオススメのヤング(ソース&マヨネーズ)。

王道ど真ん中のザ・たこ焼きという味。外はすこーしパリッとしたうすーい皮が張られており、ところどころで厚みが違っていて楽しい食感でした。

 

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ハフッハフッ!とある意味で王道の食べ方をする白井さん。

 

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本店にイートインスペースはないけど、お店の脇にあるスペースがそんな感じだった。

 

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店主さんからお土産もらっちゃった。やった。

 

やまちゃん(本店)
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-2-34
価格:8個440円 (※価格は取材時点のものです)

 

 

常連だとバレたくなくてデートで素通り…箕面の「きんちゃん食堂」

続いては、大阪のベッドタウンとしても知られる箕面(みのお)。府内でも数少ない、山や滝などの自然の多い場所として知られています。

そんな箕面が出身地の岩城さんに、行きつけのたこ焼き屋を聞いてみました。

 

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訪問した時間は夕暮れ時、橙色に光る田んぼと住宅街に箕面らしさを感じる

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「岩城さんの行きつけはどこでした?」

f:id:tmmt1989:20170928185825p:plain「私は『きんちゃん食堂』ですね~、近所だったので母がよく買ってきてまして」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「よくあるパターンやね! 行きつけってほぼ子供の頃の親チョイスな気がする」

 

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きんちゃん食堂の店構え。古き良きという言葉が似合う佇まいです。

 

f:id:tmmt1989:20170928185825p:plain「当時は『もっとええとこあるやろ』と思いつつ(笑)、それでも母が『ここのんがええねん!おいしい!』と言って買ってくるんですよ。私がぜんそく持ちだったので、病院の帰りとか学校を休んでいるときに、よく家で食べていたという印象ですね」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「行きつけのたこ焼きは、ときに食卓にのぼるよね」

f:id:tmmt1989:20170928185825p:plain「でも、高校ではじめて彼氏ができて、下校デートでいつも店の前を通っていて……。『ここの常連とか恥ずかしくてよう言われへん!って思って何も言わずに素通りしてました! ごめんなさい」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「わざわざ言う必要はないにせよ、思春期ならではの思い出やな……」

 

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持ち帰り専用の小窓はこちら。

店内に入ると、テレビから「キーン」という音に応えて「わっ」「おっ」という声。地元のおじさんらしき人たちが甲子園の延長回をつまみに飲んでいました、居心地良さそう…。

 

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たこ焼きは小ぶりで粘度は高め、小腹を埋めるのにちょうどいいサイズです。その分、7個で150円とめちゃくちゃ安い。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「ちなみに、きんちゃん食堂のたこ焼きは好き?」

f:id:tmmt1989:20170928185825p:plain「はい、今でもたまに食べたくなる懐かしい味です!」

 

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名前の由来は店主さんいわく、「萩本欽一と同じタレ目で『きんちゃん』と呼ばれていたから」とのこと。看板が「欽ちゃん」ではなく「金ちゃん」になっている理由は、「業者が間違えた」そう。業者が間違えたんかーい。

 

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取材時には気づかなかったけど、「うまい?!」って! 謙虚だ。

 

きんちゃん食堂
住所:大阪府箕面市牧落3-7-22
価格:7個150円 (※価格は取材時点のものです)

 

 

ソース以前のたこ焼きはこうだった!京橋の「アスカ」

アスカ」がある場所は京橋。ここは私の地元でもあります。

 

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京阪百貨店の地下フードエリア。色鮮やかな惣菜やきらびやかなお菓子の販売エリアから離れた隅の方にある、珍しいイートインスペース

この街で生まれ育ったにも関わらず存在を知りませんでしたが、母親に話すと「あんたが子どもの頃からあるよ~たぶん」とのこと。30年くらい前からあるみたいです。

 

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こちらがアスカのたこ焼き。マヨネーズはもちろんソースも青のりもございません!
そのまま食べられるほど、シッカリときいたダシと独特な食感が特徴。

 

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付け合わせは紅しょうが! はじめて見た。

 

こちらのお店は、多数の映画監督や脚本、また「『痴人の愛』を歩く」などの書籍を執筆されたエッセイストでもある樫原さんから教えていただきました。

たこ焼き屋のエピソードについてもエッセイ調の素敵な文章でいただいたので、そのまま掲載します。

 

たこ焼きというのはもともと戦後の大阪でラジオ焼きという軽食があり、西成区の会津屋という店の大将が「明石ではコレにタコを入れてるで」と聞いたことが始まりで、発祥の地は明石であり、大阪だと会津屋ということになる。会津屋のたこ焼きはダシで味がついていてソースをかけずに食べる。つまり本来の大阪のたこ焼きにはソースがなかった。戦後、ソースが普及する中でたこ焼きにもソースをつけるようになったのだけれど、僕の父親は若い頃から会津屋の常連だったので僕自身もソースのないたこ焼きに目がない。20代の頃はそんなソース無したこ焼きを求めて大阪中を食べ歩いたものだ。そんな中で一番美味しいと思ったのが実家から二駅のところにある京阪モール地下のアスカだった。たこ焼きの本家会津屋に匹敵するのはアスカだけだと今でも思っている。ぽってりとした大きめのたこ焼きにガリショウガを乗せて食べるのは、ここだけのオリジナル。唯一無二である。

 

ラジオ焼きというものは知っていたけど、なんと…!

たこ焼きにソースは今や当たり前の組み合わせですが、そもそもはダシで食わせるものだったんですね。

 

ってことは、アスカは昔の形を今に残す元祖たこ焼き。そしてたこ焼きのたこは明石焼きにルーツがあったという点も大阪人的に衝撃の事実です。兄弟関係やないか。

 

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私も含めて「たこ焼きはソースや青のりがかかっている」だと思い込んでいる人がアスカのたこ焼きを食べると、違う食べ物だと感じるかもしれません。

 

「外カリ中ふわ」が固い皮と柔らかい生地をあらわす食感だとすれば、アスカのたこ焼きは「皮のような生地」「生地のような皮」だという印象。クセになります。ぜひ食べてほしい。

 

アスカ
住所:大阪府大阪市都島区東野田町2-1-38 京阪百貨店内
価格:8個411円 (※価格は取材時点のものです)

 

 

たこ焼きとプレステはセットだった…鴫野の「イマノ」

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ここで私自身の行きつけのたこ焼き屋もご紹介!「イマノ」です。

 

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中学・高校の頃はよく遊んでいた友人の家への途中にこのお店があります。日曜日には弁当代わりに買って行って、一緒に食べながらプレイステーションやセガサターンで遊んでいました。

なので、今でもイマノのたこ焼きを食べると、なんとなくバイオハザードを思い出します。

 

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特徴はホワイトソースっぽいなと感じるくらい小麦粉多めのクリーミーな生地。

容器の隅を埋めるようにたっぷりと盛られたマヨネーズは酸味が強くサッパリとしていて、そのままだとくどくなりがちなもったりした生地と相性抜群。

 

小学生の頃は別のお店に行っていたのですが、イボを治すために通っていた皮膚科医院で患部に当てられる液体窒素に浸した綿棒が怖くて怖くて、よく母親から「泣かんかったらたこ焼き買ったるから」と言われてよくこらえていました。

大阪の子どもにとってのたこ焼きは、馬にとっての人参みたいなものかもしれない。

 

イマノ
住所:大阪府大阪市城東区鴫野西5-2-27
価格:7個200円 (※価格は取材時点のものです)

 

 

「たまご」なんか入ってへんねん…今はなき悲哀のたこ焼き屋

また、行きつけが「あったけどなくなった」という話もあったのでご紹介します。

f:id:tmmt1989:20170928190407p:plain「家から5分、8個で100円という安いお店で、おばちゃんがひとりで切り盛りしているお店で。友達とじゃんけんやゲームでよくそこのたこ焼きを賭けたりしてました」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「いいね、情景が思い浮かぶエピソードやな」

f:id:tmmt1989:20170928190407p:plainでもある日突然閉店しちゃって…あとから分かった話では、『たこ焼きの中にゴキ●リの卵が入っていた』って噂が流れて、瞬く間に地元で広がって。おばちゃんはわざわざ学校に出向いて『そんなん入ってへんよ』と説明したらしいのですが、その甲斐なく閉店しちゃったそうです」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「真実にしろ嘘にしろホラーすぎるやろ」

f:id:tmmt1989:20170928190407p:plain「ホラーですねぇ」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「ひとりやのに学校まで出向いたくだりも泣かせるし…どんな不幸話聞かせとんねん! 」

f:id:tmmt1989:20170928190407p:plain「聞いたからじゃないですか」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「うん、そうですね」

 

 

剣道部の帰りに先輩たちと…伊丹の「いさ」

最後は、大阪ではありませんが、そのお隣の兵庫県の伊丹市。

周辺県でも大阪に近い地域なら行きつけのたこ焼き屋があると言えるようです。こちらのお店は、ジモコロライターでもあるおかんさんに話を伺いました。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「どういうお店?」

f:id:tmmt1989:20170928190713p:plain「『いさ』ですね~!昔、近くの団地に住んでいて、友達と小銭を握りしめて行くようなお店でした。中学の頃は部活帰りに先輩たちとよく食べてましたね。それと、家でもたこ焼きやお好み焼きはつくるんですが、『すじこん』や『チーズ』入りの美味しさを教えてくれた存在です」

 

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こちらが「いさ」。想像以上にきれいだと思ったら、当時から改装したとのこと。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「めっちゃお世話なってるやん」

f:id:tmmt1989:20170928190713p:plain「ほんま。いさの南隣は今住宅地なんですが、昔はそこに『食彩館てるや』っていう、照屋さんという沖縄にルーツのある方が経営するスーパーがあって、サーターアンダギーやうこん茶みたいな沖縄の食材も取り扱ってました。道路を挟んではす向かいには『ぼくらの店』っていう駄菓子屋さんがあって、小学生の頃はここで駄菓子を買って近所の長尾公園で遊んでましたね。あ、部活は剣道部だったんですが、ひとつ上の先輩が好きで、ラジオで聴いたACIDMANの『赤橙』に衝撃を受けて録音したMDを『カッコいいから聴いて!』って言って渡して…夕焼け空が印刷された便箋に歌詞書いて…あまずっぺ~~!!」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain思い出がパンドラの箱みたいに飛び出しとるやないか!!

f:id:tmmt1989:20170928190713p:plain「でも、いろんなものがなくなったり変わったりしてますね。思い出は色あせないけど、やっぱり寂しくもありますねー

 

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青のりもかつおぶしも少々、だが適量、素朴かつ王道です。「なにも足さない、なにも引かない。」という昔のお酒のキャッチコピーを思い出す。

 

いさでは、店主の奥さまにお話を伺うことができました。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「実は、友人が子どもの頃にかくかくしかじか…」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「そうなんですか、その頃だったら今とお店の見た目も変わってますね」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「そう、私も思った以上に新しいなーと思って。改装されたんですよね?」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「はい、これまでに二度改装してますね

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「多いですね! いつ頃からあるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「主人の母の代からなので、昭和49年からやっています。掘っ建て小屋みたいなお店からはじめたそうです」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「長い!僕もまだ産まれてない頃ですね…」

 

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きれいなお店で若い店員さんが働いていたので、創業40年以上の老舗と聞いて驚き。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「ほかのお店と、差別化を図っているところってありますか」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「うーん、ないですねぇ」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「ない」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「あまり凝ったことはしてなくて。お客さんが言うには、『最近はいろんな食べ方をして値段を高くしてるとこもあるけどそんなん要らんねん』って。しいて言えば、『特徴のないところが特徴』なのかもしれません」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「それ、私の印象と同じです! マヨネーズもなく素朴かつ王道な味ですよね」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「そうですね。ソースは創業から尼崎のツバメ食品さんというところから仕入れていたんですが、今は製造をハリマ食品さんというところが引き継いでいます。辛口な味がお客さんに気に入ってもらっているみたいです」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「なるほど、40年以上にわたって味を守ることにはいろんな苦労がありそうですね」

 

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こちらがそのママソースのパッケージ用シール、レトロ感が素敵です。京都にもツバメ食品というソース業者がありますが、そちらはツバメソースとのこと。

 

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どれも本当においしかったけど、個人的にはドツボだった。大人好みかも。

 

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「今でも、当時の友人のように学校の帰りに寄るお客さんはいますか?」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「いや、もう最近は学生も多くなくて…」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「え、そうなんですね」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「近所の高校が県内各地から入学するようになり、地元の子が減ったようで」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「そうか、学校が終わったら駅に向かって帰るだけだから」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「それに最近はファミレスも増えたので、あんまり見なくなりました」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「こんなにおいしいのに、地元でなければ知るきっかけがないですもんね…」

f:id:tmmt1989:20170928191122p:plain「30~40代のお客さんがしばしば来られるので、その人たちは高校の頃に来てくれていた方なのかもしれないですね」

f:id:tmmt1989:20170928185358p:plain「そうですね。私も帰省すると行きつけだったお店で買うし、子どもの頃に食べていたものってどこに行っても胃袋を掴みつづけていると思います」

 

いさ
住所:兵庫県伊丹市北野5-3
価格:10個250円 (※価格は取材時点のものです)

 

 

大阪人なら誰でも行きつけのたこ焼き屋は…だいたい、ある!

私を含む5人の大阪人&兵庫人に聞いたところ、確かに全員に行きつけのたこ焼き屋がありました! また、Twitterでも大阪人(出身者)に限定してアンケートを募ったところ…。

 

 

22人中17人の方から「あった」「あったけどなくなった」という回答が!大阪人には、ほぼ8割近くという高い割合で行きつけのたこ焼き屋が存在することが判明しました。

その1/3が「なくなった」ということは、寂しいですが…。「大阪人なら誰でも行きつけのたこ焼き屋がある説」、必ずとは言えないまでもほぼ真実ではないでしょうか。

 

でも、これ、大阪だからたこ焼きというだけで、大なり小なりその地元の行きつけのソウルフードってあると思うんですよね。

それがたこ焼きのような手軽に食べながら移動できるストリートフードなら、紐付いた思い出がたくさん出てくるような気はします。

 

地元を離れている人であればなおのこと、生まれ育った風景というものはなるべく変わってほしくないと思うもの。街が便利になろうとする上でそれを望みつづけることは難しいかもしれませんが、たびたび行きつけのお店に行って、せめてその味は地元全体で守りつづけていきたいもんだなと思いました。

 

最後に、余談ですが…

 

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地元のたこ焼きを見せたふたりのリアクションがまったく同じで笑った。

 

 

書いた人:ネルソン水嶋

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1984年の早生まれで大阪出身。東京でSEとして5年働いたあと、ベトナム旅行中に現地の日本人から「うちで働かないか」と誘われて快諾、2011年10月に移住、だけど4ヶ月で辞めました。そのままだらだらブログやってたらライターに。ジモコロのネタは一時帰国中にせっせとつくる。

 

狩猟本能を刺激せよ! 離島で「磯タコ捕り」にドハマりした話

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はじめまして。身近な生き物を捕まえて、食べることを趣味にしているライターの玉置です。

私が紹介するのは、知る人ぞ知る島における、知る人ぞ知るイベント、粟島の『磯ダコ捕りツアー』です。

今年発刊された私の著書『捕まえて食べる』という本でも紹介したのですが、これがすごい!

 

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ほら、楽しそうでしょう。

「粟島ってどこ?」「磯ダコ捕りってなに?」「ツアーってどういうこと?」と、疑問だらけかと思いますので、じっくり説明させていただきます。

 

 

粟島ってどこにあるの?

まずは場所の確認ですが、粟島とは新潟県の沖合に浮かぶ離島で、周囲は23キロしかなく、人口は361人(2017年9月1日現在)しか住んでいません。粟粒のように小さいから粟島と名付けられたとも言われています。

 

佐渡島なら知っているけど、粟島は知らないなーっていう人も多いんじゃないでしょうか。実は私も2013年にその存在を初めて知ったのですが、今年で早や3回目の来島になります。

なんでそんな小さな島に3度も?と聞かれたら、「そこにタコがいるからさ」と答えるでしょう。

 

日本海に浮かぶ離島といっても、新潟県村上市の岩船港からフェリーで1時間半、高速船なら55分と、アクセスはそれほど悪くありません。

欠点は埼玉の我が家から岩船港まで行くのがなかなか大変なことですが、粟島の魅力の前にはあばたもえくぼです。その遠さも楽しみのひとつと前向きに受け止めましょう。

 

乗船時におこなう切符の確認では、昔懐かしの『改札鋏』でパッチンとやってもらえます。これってなんだか嬉しくないですか? 「旅にきたなー」と思える瞬間のひとつだと思います。

 

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さて、周囲23キロの島っていうのがどれくらいのサイズ感なのかというと、以下のように一枚の写真に納まるくらいです。後ほど詳しく説明しますが、レンタル自転車でぐるっと一周して約三時間。

 

なお島へ向かう船からでは全体が撮影できないので、帰りの便からの写真なのはご了承ください。

 

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こんな小さな島ですが、宿泊施設は民宿27軒、旅館2軒、ゲストハウス1軒と、全部で30軒もあります。その気になれば1か月間、毎日違うところに泊まることだって可能です。

島に集落は二つあって、フェリーが停泊する「内浦」と、島の反対側にある「釜谷」。船が港に到着すると、宿の方がお出迎えをしてくれます。アウトドア派の方には、キャンプ場やコテージもありますよ。

 

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上陸したら、まずは大きく深呼吸をしましょう。この全身で感じる潮風が香る島の空気が最高なんです。

 

下の写真は内浦のメインストリート。こののどかさ、なかなか他では味わえません。 

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磯ダコ捕りツアーとは、磯でタコを捕る大会である

で、この粟島に何をしにきたのかといえば、『磯ダコ捕りツアー』に参加するために他なりません。

このツアーは粟島旅館組合が主催するもので、毎年9月の週末、3週に渡って毎回100名が参加する一泊二日の冒険の旅。そのメインイベントが磯でタコを捕る大会なのです。すでに終了しましたが、2017年の募集要項はこちら

 

タコ捕りというローカル大会に出場するため、はるばる海を渡って毎回100人が来島するってすごくないですか。それも3週だから述べ300人。島民が361人の島にですよ。まるで渡り鳥のように、毎年必ずやってくるリピーターも多いとか。

この素晴らしきイベントについて、粟島観光協会の松浦拓也さんに話を伺いました。

 

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f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「まずお聞きしたいのですが、磯ダコ捕りは昔から行われていたものですか?」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「いつからかというのは定かではないですが、私の父親が子供の頃からやっていたという話なので相当前からだと思います。ちなみに父は、農山漁村体験のインストラクターである『なりわいの匠』として新潟県から認定されたタコ捕り名人でして。私も子供の頃から一緒にタコを捕っていました」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「おお、タコ捕り界のサラブレッドじゃないですか! お父さんはタコ漁師なのですか?」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「磯ダコ捕りは出荷する程捕れる訳ではないので、昔から漁師の仕事ではなく、島民の遊びですね。もちろん子供もやりますが、大人の方が夢中になる遊びかもしれません」

 

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f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「そんな島民の遊びが、立派な大会に発展したいきさつを教えてください」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「今年で18年目になるのですが、旅館組合長をされていた方が、粟島観光の目玉として発案したそうです。でも最初は協力してくれる宿も少なく、30人程度の募集でした」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「小規模でのスタートだったんですね」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「それが回を重ねるごとに口コミで人気がでてきて、10回目以降は宿で受け入れられる上限の100人×3週の募集が埋まるようになりました。近年はネットでの認知度アップもあり、今年は募集開始から3日で予約が埋まりましたね」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「一回でも参加するとまたリピーターとして来たくなるし、この楽しさをSNSで伝えたくなるという参加者の気持ちはよくわかります」

 

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f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「大会は内浦で60人、釜谷で40人ほどに分かれて土曜日の昼にそれぞれ行い、捕ったタコの総重量で競います。上位3名には島の名産品のプレゼントと表彰状の授与があります

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「名産品のプレゼント!」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「もし大会中にタコが捕れなくても、大会後の夕方や翌朝などに再チャレンジをしていただいて、一匹でも捕ってもらえれば嬉しいですね。ちなみに島民の方には、大会前はなるべくタコを捕らないようにお願いしています」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「私は前回来た2014年に、3週目の内浦地区で準優勝をしたんです。あのときの嬉しさと悔しさが忘れられなくて、また粟島に来てしまいました。今年こそ優勝を狙いますよ!」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「頑張ってください! ちなみに、大会は気候の良い9月ですが、タコは寒くなるほど大きくなります。今は磯ダコ捕りの体験を大会という形でやっていますが、日にちを決めて1か月も前から予約していただく大会形式だと、どうしてもお客様にご不便をかけたり、宿の受け入れ態勢が難しい部分もあったりして……」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「小さい島ならではの悩みでもありますね」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「大会でなくてもタコ捕りを体験をしたいという方が増えているので、今後の募集方法を見直すタイミングなのかもしれません」

f:id:tmmt1989:20171031141619p:plain「確かに大会だと順位が決まるので盛り上がりますが、大会の週にだけまとめて来られるよりは、ある程度ばらけて来てもらった方が受け入れやすいでしょうね。また客の側としても、悪天候時には予定を変えられますし」

f:id:tmmt1989:20171031141633p:plain「そうですよね。島民の方は天気さえよければ12月でもタコを捕りに海に出ますよ。またタコ捕りの人が増えてくれば、海を仕事場とする漁業関係者との調整も必要になってくるかもしれません。その辺りのルール作りをしっかりとして、今後も旅行者が気持ちよく遊べるようにしなくてはと考えています!」

 

 

2017年磯ダコ捕り大会レポート

ということで、ここからは大会の模様をお届けします。

私が参加したのは3週目の内浦大会。参加者60名が集まって開会式がおこなわれた後、各宿ごとにポイントへと移動します。

 

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タコを捕るための道具は宿が用意してくれるので、濡れても大丈夫な格好と滑りにくい靴さえ用意すれば、手ぶらで気楽に参加できます。

 

赤い帽子をかぶっているのが宿の方で、タコ捕りのインストラクター役でもあります。参加者は優勝を狙うリピーターもいれば、初参戦でタコを触るのも初めてという人がいたりと様々。

 

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タコ捕りに使うのは2本の長い棒で、それぞれエサとなるカニ(宿によってエサは違う)と、タコを引っ掛けるハリがついています。この二刀流っていう装備がかっこいいですね。

 

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エサのついた棒をタコが潜んでいそうな場所に近づけてタコを誘いだし、飛びついてきたところをハリのついた棒で引っ掛けて捕るというのが、磯ダコ捕りの基本的な流れ。

 

タコがいる場所はびっくりするほど浅く、戦いのフィールドは水深が膝下程度の穏やかな磯なので、女性や子供の参加者も多数います。

 

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インストラクターが丁寧に教えてくれるので、初めての方でも大丈夫。抱き着いたタコをハリで引っ掛けるのは慣れないと難しいので、そこはお願いしちゃいましょう。

 

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こんな感じでタコが潜んでいそうな岩陰の近くで、エサを踊らせます。

 

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近くにタコがいればスーッと飛び出てきて、がっちりとエサに襲いかかります。エサの竿がグッと重くなる独特の手ごたえに大興奮する瞬間です。この一瞬のために粟島へと渡ってきたといっても過言ではありません!

 

普通の釣りでは、魚がエサに食いつく瞬間は水の中での出来事なので見ることができません。しかしこのタコ捕りは、すべての動きが丸見えです。岩陰から飛び出てくるタコを視覚でとらえると同時に、エサの付いた棒が重くなることにより触覚で実感する訳です。

 

これぞ4D体験な訳ですよ! ヴァーチャルじゃなくてリアル最高!!

 

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さあタコがガッチリとエサに食いついたら、もう一本の棒の出番です。ハリで引っ掛けて抜きあげたら一丁上がり!

 

このハリを使った確保の成功率は、初心者で6割、ベテランで9割といったところでしょうか。二本の先端が違う棒を駆使して、タコを誘い出して仕留めるという、この流れが堪らないのです!

 

これほどまでに狩猟本能が満足する遊びなんて、なかなかないですよ!! それに捕る対象がタコっていうのが、なんだかいいじゃないですか。

 

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まだ時期的にそれほどタコが大きくないですが、11月にもなればキロオーバーのタコが次々と捕れることもあるとか。近年はあえて大会が終わった10月以降に来る、大ダコハンターのお客さんも増えたそうです。

 

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このように大会中はタコ捕りに夢中になっているため、景色なんて全然見ていないのですが、あとで写真を確認すると、息を飲むほどに美しい光景が広がっていました。

 

こんな場所でタコ捕りができるなんて、最高すぎやしませんか。見てないけど。

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さて大会の結果ですが、私は5匹と数は伸びたのですが、サイズが小さく682グラムで入賞ならず。優勝は6匹で1609グラムを記録した方でした。おめでとうございます!

 

こちらは惜しくも準優勝だった11年連続出場の友人。私を粟島に誘ってくれた人で、年に一度出場するタコ捕り大会のために日々を生きているとか。

 

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ということで、今回も残念ながら磯ダコ捕り大会優勝という名誉は手に入りませんでしたが、だからこそまた来島しなくては!

 

 

粟島はタコだけじゃない!

このように楽しすぎる磯ダコ捕りですが、粟島観光はもちろんタコだけではありません。私が考える粟島の魅力をざざざっと紹介いたします。

 

レンタサイクルで自転車一周

天気さえよければ是非チャレンジしてほしいのが、レンタサイクルでの島一周です。所要時間は約3時間で、絶景が続く外周道路を、気持ちよく走ることができます。

そこそこアップダウンのある道が続きますが、体力に自信のない方には電動アシスト自転車もありますよ。

 

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私は普通のママチャリを利用したのですが、運動不足の体に23キロの道のりはまあまあ辛いです。大変だからこその達成感が味わえましたが、次はたぶん電動アシスト付きにするかな。

 

脚に自信のある方は、自分の足で一周してもいいかもしれません。4月にはマラソン大会も開催されています。

 

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自転車で回るからこそ見える島の景色が、あちらこちらにありました。

 

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けっこう脚が疲れてきたところで、この看板が与える絶望感がすごい。

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でも上り坂があれば、もちろん下り坂もあります。

島の南西側の下り坂は、日本有数の気持ちよさだと思います。

 

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この道はフェリーからも見ることができます。

 

ほら、気持ちよさそうでしょう。

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もちろん釣りの天国でもある

周囲を海に囲まれた自然豊かな粟島なので、当たり前ですがタコ以外の獲物も狙えます。

釣り人にとってはまさに天国みたいな場所で、春になると磯から大物のマダイやイシダイが狙えることで有名です。本格的な釣りでなくても、その辺の堤防で糸を垂らせば、小物だったらいくらでも釣れます。

 

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また最近はアオリイカ狙いで訪れる人も多く、関東では釣れた試しがない私のような下手な釣り人でも、昼間っから釣れてしまう魚影の濃さです。タコとイカの両狙いができるので、毎回時間配分に悩んでしまいます。

 

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釜谷の集落もいこう

粟島にはフェリー乗り場のある「内浦」と、島の反対側にある「釜谷」の2つの集落があります。余裕があれば、ぜひ両方の集落をのぞいてください。

 

私の場合は内浦に泊まり、レンタサイクルで釜谷にきて、食堂で昼飯を食べるというのが定番コースになっています。次は釜谷に泊まって、じっくりと釣りやキャンプをしてみたいかな。

 

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釜谷にこないと食べられない名物料理もあります。

 

これはタコとサザエがたっぷりと入った磯ラーメン!

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釣りのポイントだらけの港と磯!

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作家の椎名誠さんが泊まりに来たワイルドなキャンプ場もあります。

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酒と食べものもうまい!

宿の食事は、もちろん島で捕れた魚がメインです。

どんな魚が食べられるかは季節と海の機嫌次第ですが、野菜や海草もたっぷりで体が元気になる食事です。豪華絢爛ではありませんが、私はこういうその土地に根付いたメニューが大好きです。

 

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なにげなく出されたメバルの煮付が、

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島の名物料理は「わっぱ煮」。わっぱと呼ばれる木の器に焼き魚と味噌を入れてお湯を注ぎ、そこに熱した石を入れて食べる豪快な料理です。地魚からダシの出たスープがうまい!

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すっごい熱いので気をつけて食べてください!

 

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粟島には酒造メーカーがないので、島で作った地酒というのはないのですが、この島でしか手に入らない超レアなお酒なら存在します。

粟島の水で仕込んだ日本酒に、粟島のジャガイモで作った焼酎です。島で飲むも良し、お土産に買うも良し。

 

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帰りの船の前にちょっと時間があったので、この日本酒を1合飲んだのですが、旅の疲れもあったすぐに寝てしまい、うっかりもう一泊しそうになりました。

 

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あわしま牧場で馬にも乗れる!

その昔、粟島には野生馬がいたそうです。今はさすがにいませんが(鹿が増えすぎて問題になっているけど)、2011年にあわしま牧場ができました。

ここは海が目の前にある牧場で、海の向こうの本土を眺めながら気軽に乗馬体験ができます。

 

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なんと温泉もある!

せっかく旅行に行くなら温泉がないと物足りないという方も多いかと思いますが、粟島にも「おと姫の湯」という立派な温泉があります。

タコ捕りで冷えた体を温泉で芯まで温めて、のんびりと冷たいアイスを食べるという贅沢。温泉は粟島以外にもたくさんありますが、粟島に温泉があるというのが嬉しいじゃないですか。

 

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つい長くなってしまいましたが、粟島の魅力が少しは伝わったでしょうか。すれ違う子供たちは元気にあいさつをしてくれます。雲のない夜なら満天の星空が見られます。ぼんやりするには最高の環境です。

 

春には渡り鳥が多数やってくるので、バードウォッチングの聖地にもなっています。そして夏はもちろん海水浴のシーズン。秋はタコ捕りにアオリイカ釣りとやることがたくさん、冬は海が荒れがちですが防波堤からヤリイカが釣れるとか。

日本海に浮かぶ小さな離島、ここにしかにない魅力にあふれていますよ。

 

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書いた人:玉置標本

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趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。 個人サイト:私的標本 / 趣味の製麺

『キャンプは道連れ世はお酒』第2話「キャンプで熱燗⁉︎ 秋の会津へ」

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7年間で1000泊以上キャンプをしたキャンプコーディネイター&イラストレーターのこいしゆうかさん。「キャンプ×お酒」をテーマに、日本のいろんな地元を旅しながら地元のお酒と食材を紹介していく連載です。今回は秋の会津へ電車で向かったこいしさん。なんとキャンプで熱燗を⁉︎ 

 

【登場人物】

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☆今回紹介したアイテム

・焚き火台:笑's コンパクト焚き火グリル 『B-6君』

・お燗用アタッチメント:B-6君専用 ステンレスメッシュ カン(燗)グリル

 

 

『キャンプは道連れ世はお酒』|一覧

 

書いた人:こいしゆうか

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キャンプコーディネイター、イラストレーター。引きこもり系キャンパー。ソロキャンプスタイルでクルマでも飛行機でも船でもキャンプに行きます。酒と焚き火が好き。苦手は料理。作るものが8割くらい沼のようになります。著書「キャンプ、できちゃいました」(アスペクト)、「日本酒語辞典」(誠文堂新光社)が発売中。
ツイッター:@koipanda

現代の「カウボーイ」に密着!『ブランディング』の起源は牛の焼印だった

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ジモコロをご覧の皆さん、コラムニストの前田将多と申します。本日はカナダの牧場からカウボーイスタイルで失礼します。

 

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皆さん、最近ステーキは食べましたか? ハンバーガーは好きですか? アメリカへ行ったことはありますか?

私はアメリカが好きです。コーラを片手に、バーガーを食べて、メジャーリーグ・ベースボールを観る。アメリカ人って、楽しいことや、単純にうまいもの、楽チンなことを考えさせたら天才なのではないかと私は考えています。

 

そんな北アメリカ大陸の歴史は、牛肉抜きには語れません。牛肉になる牛って、誰によって、またどうやって育てられているかご存知でしょうか?

 

食肉牛はカウボーイたちが育てています。そう、あのカウボーイです。

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日本ではファッションにまつわるイメージが強かったり、西部劇のガンマンと混同しがちなカウボーイ。ですが、カウボーイは今でも北米(カナダ・アメリカ・メキシコ)にいて、世界中の食を支えています。その仕事はタフで、豪快で、誇りあるものなのです。

 

そして、実はカウボーイと日本の広告業界でよく聞く「ブランディング」はとても関係が深いんです。

 

カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で (Tabistory Books)

カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で (Tabistory Books)

 

私は電通でコピーライターをしていましたが、2015年に会社を辞めて、カウボーイの取材に出かけました。電通の労働問題が大きな話題になる直前のことです。

出せるかどうかの見通しもない本を書くために、無職になって牧場に住み込みで働くというのはなかなかキツイ体験でした。しかし、「働く」ということを新たな気持ちと視点で見つめ直す機会になったと今は思います。

 

今回、無事できあがった本を取材先であるカナダの牧場に届けに行ったところ、ちょうどあちこちの牧場で「ブランディング」が行われる時期だったため、再びお手伝いをしてきました。

 

この記事では本場の「ブランディング」の様子を紹介することで、カウボーイの誇り高い仕事の一端を知ってもらえればと思います。

 

 

牛の焼印こそ「ブランディング」の起源

「企業としてどう見られたいか」「顧客にどういう印象づけをしたいか」「製品でなにを約束するか」といったことをコントロールするのが、広告業界でいういわゆる「ブランディング」です。

 

私は広告会社出身ですので、毎日のようにこういったことを考えたり話し合ってきました。ただし、牧場でいうブランディングとは「焼印捺し(やきいんおし)」のこと。仔牛に焼きゴテで牧場の印を付ける作業です。

  

焼きゴテを当てたら痛いんじゃないの…?と驚かれるかと思うのですが、どうかご安心を。牛の皮は人間の5倍くらい厚いため、大した痛みは感じないようです。

 

そして、この作業こそが、広告用語でいう「ブランディング」の語源となったものです。

 

なぜ、一種残酷な行為である焼印捺しを牛にするのか。歴史を簡単にお話ししますと、元々はスペイン人が始めた習慣です。

彼らはアメリカ大陸を「発見」し、牛馬を持ち込みました。そして畜産を広めていったのですが、1870年代に有刺鉄線が普及し、土地をフェンスで囲うことが浸透する以前は、牛は公有地で放し飼いになっていました。

 

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つまりスミスさんの牛も、ジョンソンさんの牛も、広大な土地のある部分では混ぜこぜになる可能性があったため、消えない印を付けて誰の持ち物なのかを明確にする必要があったのです。

 

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それどころか、焼印のない牛を捕まえて焼印を捺してしまえば、自分のものにできたと言います。

 

きちんと管理されている牛は、予防接種の注射や駆虫剤の塗布などを受けています。

焼印を捺さずに飼い、他の人の牛と混ざったり誰かに盗まれたりすると、劣悪な環境で育てられ、そのせいで病気が広がってしまう……なんてことも起こり得ます。そのため、焼き印による牛の管理は理にかなった行為なのです。

 

余談ですが、牛のことを英語でcattleというため、cowboyは別名cattleman(キャトルマン)とも呼ばれます。Cattleは、ラテン語で「財産」の意味で、capitalと同じ語源だそうです。

そう、家畜に自分のところの印を付けることはすなわち財産を守ることだったのです。

 

 

埃まみれ、クソだらけに

歴史も説明したところで、さっそく作業をはじめていきましょう。

 

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その手順ですが、春に産まれた仔牛を夏にブランディングするといっても、産まれた時点で牛は体重40kgくらい。生後ふた月程度で80kgくらいに育っています。

 

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デカいんです。重いんです。ものすごいパワーなんです。人間の力だけでは無理なんです。

 

そのため馬を使います。カウボーイは今でも馬に乗って仕事をしますが、それはカッコいいからとか、楽しいからというわけではなく、その必要があるから乗るのです。

 

ブランディングの日は、その牧場のイベントみたいなもので、近隣のカウボーイたちや友人たちが手伝いに集まります。お返しに、また彼らのブランディングの際には手伝いに行きます。そうやって、別の牧場(会社)であっても、同業者同士で助け合っています。

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報酬はハンバーガーとビールといった、その日のエネルギー、それだけです。カッコいいですね、カウボーイは。

 

まず、牧場の広い牧草地に放してある牛の群れを、みんなで馬に乗って集めに行きます。

牛は母子で一組になっていますが、まとめて鉄製のコラル(囲い)の中に閉じ込めます。そうしておいてから、ブランディング開始前になるべく母牛をコラルの外に追い出します。仔牛だけ「入れ!」というわけにいかないのです。

 

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ブランディング作業は、馬に乗るチームと、地上のチームに分かれて行います。

 

馬に乗ったカウボーイがロープを使って、仔牛の両後ろ足をキャッチ。これにはかなりの技術が必要なので、「カウボーイ見習い」の私はもっぱら地上班の作業をお手伝いします。

 

後ろ足を両方つかまえるのは、家畜への負担を軽くするためです。荒々しい仕事ですが、牛はあくまでも「商品」なので、むやみに傷つけたいわけではありません。

 

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両後ろ足をロープでとらえられた仔牛が、馬力によってズルズルと引きずられて、コラルから出てきます。

 

さて、ここで私の出番です。ヘッドキャッチャーという金具を使って、仔牛の頭を固定するのです。 

 

これがそのヘッドキャッチャー。

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ヒモがついた鉄の輪っかで、ヒモはクッションとしてのタイヤチューブにつながっていて、その先のペグは地面に打ち込まれ固定されています。

 

それを仔牛が引きずり出されていたところでタイミングよく、ガシッと頭にかけるのです。相手は生き物ですから、動きます。というか、暴れるやつもいます。

 

獣の動きや咆哮にビビることなく、冷静に対処しなくてはいけません。私もはじめは恐怖で足が震えました……。

 

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タイミングよく引っかけて……

 

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押さえる!

 

 

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暴れるけど押さえる!そして焼印を捺していきます。

 

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5倍の厚みの皮膚に守られているため、終わると意外に平然と立ち上がります。

 

ヘッドキャッチャーに失敗すると、そのまま引きずられて行ってしまう仔牛を追いかけて、タックルして、プロレス技のボディスラムのように地面になぎ倒して組み伏せなくてはなりません。これはキツイのでなるべく避けたいところです。

 

だいたい一日に処理できる頭数というのは300頭くらいかと思います。私は先日、手伝いに行ったカナダの牧場で500頭を相手にしましたが、その日は馬上班、地上班合わせて15人くらいと、人数が少なくて大変でした。倍近い人数がいてもよかったかもしれません。

 

土埃だらけ汗まみれになり、こんなヒドイ顔になります。ジーンズは汚れ、ブーツはクソだらけです。

 

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原始的に見えて、効率的な仕事

ロープとヘッドキャッチャーでうまく仔牛の動きを封じることができると、焼印に加えて、予防接種の注射、駆虫剤の塗布、個体識別の耳タグの取り付けと、様々な作業を人間たちが寄ってたかって済ませていきます。

これも、家畜へのストレスを最小限に、仕事の効率を最大限にしようというカウボーイの工夫です。

   

牛をはじめ、動物を食べることに賛否両論はあるでしょう。ただ私個人としては、肉体を使って大地を拓き、人間的生活を築き、何かをとにかく食らってエネルギーにしてきた人間の生存手段としては当然だったと思っています。

食うに困らない都会生活者が、肉食をやめるのも霞を食うのも自由ですし。

 

馬や犬と一緒に働いて、牛や羊といった家畜を扱う仕事を体験すると、人間も獣の一種にすぎないということを強く感じることがありました。食って寝てヤッて子孫を残す。身も蓋もない言い方をするとこういうことでしかありません。

 

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いろいろ高尚なことを並べ立てることはできますが、この獣としての基本から逃れるなら種の保存は叶いません。

北米でカウボーイたちが尊敬されているのは、時に冷たく、時に温かい目で命を見つめ、ごちゃごちゃ言わずに、身体を使って人の生活を支える仕事に従事しているからなのだと思います(もちろん動物愛護団体からは非難されますけど)。

 

見た目ほど牧歌的ではなく、実に厳しい仕事です。ひとりで黙々と取り組んだり、仲間と助け合ったりしながら、受け継いだ土地や(家畜を含む)財産を、次世代にどう引き継ぐかを思い描いています。

 

ブランディングは、その財産を守るために、牧場ごとに固有のマークを牛の体に付け、自社の印とすることです。それは、カウボーイの誇りを刻むような作業でもあります。

 

普段の牧場は、どこもギリギリの少人数で営まれていますので、ブランディングの日には友人、知人が無償で駆けつけてお互いに助け合う。仕事中の昼間から散々ビールを飲んで、賑やかに近況を話し合ったり、新しい仲間を紹介されたりして、体力のいる仕事を楽しくこなしていきます。

 

一日の終わりには倒れそうになるくらい疲労することもありますが、ストレスと呼べるようなものとは無縁です。私が出会ったカウボーイたちは、(使う言葉は汚くても)他者へのリスペクトを忘れない、気持ちのよい男たちでした。

 

カウボーイたちの仕事と生活と、彼らとの友情について、さらに深く知りたい方は、私のひと夏のルポルタージュ『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』を手に取ってみてください。

  

カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で (Tabistory Books)

カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で (Tabistory Books)

 

 「旅した気分になれる」「仕事に悩む人にこそ読んでほしい」と好評をいただいています。

  

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ちなみに、フライパンで煮込まれているのはオス牛の去勢に取ったキ○タマ。一部のカウボーイにはごちそうなのだそう……。

 

それではまたどこかでお会いしましょう!

 

 

書いた人:前田将多

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コラムニスト・株式会社スナワチ代表。1975年生まれ。ウェスタン・ケンタッキー大学卒業、法政大学大学院中退。2001年、株式会社電通に入社。関西支社で主にコピーライターとして勤務し、2015年に退職。カウボーイの本質を体験的に見定めたいと、カナダの牧場でひと夏カウボーイとして働いた。著書に『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』(毎日新聞出版)。Twitter ID:@monthly_shota


【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (20) - リターンズ/栄枯盛衰

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<ポテン生活|一覧>

  

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

ミニ四駆に第3次ブーム到来! 絶妙マーケティングとSNSで「親子」を鷲掴み

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ギュワーーーン!!!

 

唸りを上げて走るこちらの「ミニ四駆」、皆さん見覚えありますか? 

 

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そう。模型メーカー「タミヤ」の販売するミニ四駆。今年で35周年目を迎えるヒット商品です。

かつて二度の大ブームを巻き起こし、累計販売台数1億8000万台、公式大会への総動員数30万人(1996年)など、数々の記録を打ち立てています。

 

そして近年「第3次ブーム」と呼ばれるほど、ミニ四駆が再び盛り上がっているのだとか!

 

そんな第3次ブームを象徴するひとつがこの雑誌。

 

2014年に、『コロコロコミック』を卒業した中学生〜大人向けとして創刊された『コロコロアニキ 』(小学館)。これがもう、ミニ四駆世代(僕もその1人です)を狙い撃ちなんです。

 

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雑誌『コロコロアニキ』では、ミニ四駆マンガ『ダッシュ! 四駆郎』、そして『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』の新作を連載中。ともにアニメ化された大人気作のため、復活の知らせは大きな話題を呼びました。

※前者は第一次ブーム、後者は第二次ブームを象徴する作品です

 

往年の名マシンたちが蘇り、限定ボディが雑誌の付録に、そして公式HPで通販も……いまや「大人の財力」を手にした我々ですから、それは買ってしまうわけですよ。

さすがポケモンやベイブレードなど数々のブームを生み出した小学館、マーケティングがうま過ぎる。

 

さらに「最新技術」と合わさった動きも要注目。

 

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このミニ四駆らしからぬデザインのマシンは、3Dプリンターを使って作られたもの。3Dプリンターやセンサーなどの電子工作を駆使した「FAB四駆」なるジャンルも生まれ、ワークショップやイベントが日夜開催されているそうです。

 

しかし一体、なぜ再びブームが起こったのでしょう? 

 

気になるので第三次ブームの背景を調べてきました!

  

 

「ミニ四駆バー」へ潜入!

まずやって来たのは東京・池袋にある「ミニ四駆バーDRiBAR」。どうやらここにファンの間でミニ四駆の生き字引と呼ばれる人物がいるそうなのです。

 

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ビルの6階にあるお店に入ると……巨大なミニ四駆のコースが鎮座!

 

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そして壁にはミニ四駆のカスタマイズ用パーツがずらり。バーというより模型屋レベル!! 

 

驚く僕を、店長のアストさんが出迎えてくれました。

 

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第一次ブームの頃からミニ四駆を知るアストさん。現在は「DRiBAR」店長の傍ら、ミニ四駆のイベントでMCなども務めている

 

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「今日はよろしくお願いします。久しぶりにミニ四駆のコースを見て、早くも興奮してます!」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「お、子どもの頃にやってましたね。じゃあ初めてのミニ四駆ってどのマシンでした?

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ええっと…たしか『ビートマグナム』です」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「なるほど、では20代後半ですね」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「えっ、今のはミニ四駆好きの挨拶なんですか?」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「世代を知るには今の質問ですね。ミニ四駆の歴史って35年もあるので、世代によって知ってるマシンも全然違うわけですよ。ちなみに僕は『ファルコンJr.』です」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ということはミニ四駆歴は何年くらいですか?」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「20年以上と言っていますけど、まあずっとやってますね。人生の中でミニ四駆をやってない時間の方が短いです」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「それはすごい。そもそも『ミニ四駆バー』って店があるのを初めて知りました。こんなにミニ四駆好きの大人たちがいるとは……」 

 

 

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f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「お客さんたち、見るからにミニ四駆に没頭してますよね。バーとして商売は成り立ってますか…?

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「90分1500円・延長30分につき500円の時間制なので大丈夫です」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「大丈夫だった。しかも皆さん、めちゃくちゃパーツ買ってるからむしろ儲かってそう。では皆さん、やはりミニ四駆目的で来ている?」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「そうですね。ミニ四駆のコースは大きいので、自分で持ってる人は少なくて。だから皆さん、うちに来てミニ四駆を走らせるんです

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ああ、子どもの頃にコースを持ってる友達って貴重でしたね……だから道路で走らせたりコロコロコミックを並べてコースを作ったりして」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「昔は模型店くらいにしかコースはなかったですからね。でもここ数年で状況が変わってきたんですよ」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「そう!ミニ四駆の『第3次ブーム』を調べるために今日は来たんです。なぜ今、こんなに大人のミニ四駆好きが増えているんでしょう?

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「そうですね、きっかけは2012年の『ジャパンカップ復活』だったんです」

 

 

“大人もできるミニ四駆”に

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f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ジャパンカップ!全国をキャラバンして回るミニ四駆の公式大会ですよね。僕も子どもの頃、地元の大会へ出たことがあります」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「1988年に始まったジャパンカップですが、1999年以降は開かれなくなっていました。しかしミニ四駆30周年を迎えた2012年にジャパンカップは復活。その時、大人の出場枠ができたんです」 

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「出場枠ができるということは、それまでに大人のファンが増えていたということでしょうか」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「2006年くらいから『ミニ四駆PRO』っていう大人も意識したマシンが出たんですよ。実際のクルマに近いデザインで。その頃からじわじわ大人のユーザーが増え始めたんです。さらに大会にも出られるようになって、『大人がやれるミニ四駆』という流れが一気に生まれました」 

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「なるほど、メーカーであるタミヤ側の仕掛けがまずあったんですね。ミニ四駆ってカスタマイズパーツがとても多いですから、財力のある大人の方がやり込み度が高いですよね」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「そう、パーツだけじゃなく工具にこだわったりモーターを育てたり……奥深い世界ですよ」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plainモーターを育てる?

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「新品よりも、ある程度慣らしたモーターの方が性能がいいんです。一番性能のいい状態に持っていくための作業といいますか」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「すごい世界だ…。大人、つまり親世代が再びミニ四駆をやるようになると、親子のミニ四駆ファンも増えたんでしょうか」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「もちろん!親子二世代でやってる人も多いですよ。うちも休日は親子連れもわりと来ます」

 

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f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「子供と一緒にできる趣味っていいですよね。父親なら子どもにいい格好を見せるチャンスだし、お小遣いを使う言い訳にもなるし……。ちなみに今の子ってどこでミニ四駆に出会うんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「仲間内でやってる子がいたり、今は家電量販店にコースがある場合も多いですから、そこで見て興味を持ったとかはよく聞きます。あと『コロコロイチバン!』で子ども向けのミニ四駆マンガも連載されてますし」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ミニ四駆といえばコロコロですよね!先ほどの流れでいうと、2006年頃からタミヤの仕掛けでミニ四駆熱が盛り上がり、2012年に爆発。そして2014年に『コロコロアニキ』でかつてのファンたちが戻ってきたと。メーカーとメディアが連携した完璧なマーケティングじゃないですか……!!!

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「ただ、昔ってメーカーや出版社が主導するブームでしたよね。でも今はユーザー発信で盛り上がってるのが面白いと思ってます」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「ユーザー発信、ですか?」

 

 

「ブーム」ではなく、もはや「定着」

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f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain昔は『地域ごとのコミュニティ』で楽しんでたと思うんです。地元の模型店中心で、マシン改造の情報を交換して。ある意味、村っぽい感じですよね。でも今はインターネットで繋がって情報共有できる」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「世代も住んでるところも関係ないですもんね。確かに大人も入りやすい環境になってる」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「ちょっと前ならブログの記事で、今ならSNSかな。そうやってユーザー主体で盛り上がってるんです」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「SNSで繋がって、大会やミニ四駆バーで顔を合わせて…昔より楽しみ方が多様化してるんですね」 

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「はい、『ブーム』って言ったらせいぜい1〜2年でしょう? でも、2012年からと考えると、もう5年目。だから、ブームというよりミニ四駆って遊びが『定着した』と言った方がいいと思いますよ

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「企業側のマーケティングと、さらにネットの普及という時代性と…いろんな要因が合わさって、この大きな盛り上がりが生まれていたんだ。『DRiBAR』のお客さんにも、初心者らしき人がいるようですね」

f:id:tmmt1989:20171107163535p:plain「マシンも販売してるので、手ぶらで来てもミニ四駆を組んで走らせるところまで楽しめます。毎日通う人もいますけど、『懐かしいな〜』ってふらっと来て楽しむ人も多い。そういうライトな楽しみ方の人が増えてることに、裾野が広がっているのを感じますね

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「なんていい時代!僕も今度また遊びに来ます」

 

  

ミニ四駆は最新技術との相性も良い?

さて、裾野が広がっているというミニ四駆ですが、「FAB四駆」もその広がりの一つ。

最新技術を駆使したヤバいミニ四駆もいろいろ生まれています。

 

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例えばこのマシン、発光しながら色が変わっています。

ボディは3Dプリンターを使って成形され、「光散乱導光体ポリマー」という光を拡散する特殊な樹脂素材を使用。サイバー空間を走ってそう!

 

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こちらもボディを3Dプリンタで成形。「諏訪大社」がモチーフなので、ボディ横に立っている4本の茶色い棒は「御柱」。神々しい…!

 

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このマシンはスマホと連動! スタート&ストップ、走る速度などをアプリを通じてコントロールできるそう。ミニ四駆を操作って子どもの頃に妄想したやつだ! すでに現実に…!!!

 

ここまでの3台は、長野県諏訪市のものづくりメーカーの技術で最強のミニ四駆を作ろう!という「スワッカソン」でつくられたもの。 

諏訪市は日本でもトップレベルの精密加工技術が集まる地。その技術をアピールする「SUWAデザインプロジェクト」(主催:諏訪市、企画・運営:(株)ロフトワーク)での今年度のテーマが「ミニ四駆」なのです。

 

企業や自治体も注目するということは、ミニ四駆と最新技術の相性がいいということ?デザイナーでFAB四駆カルチャーにも詳しい根津孝太さんに話を伺ってみました。

 

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スワッカソンの審査員長も務めていた根津さん。元トヨタのカーデザイナーの経験を活かし、ミニ四駆のデザインも手がけている

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「『FAB四駆』って、普通のミニ四駆とどう違うんでしょう」

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plain「タミヤさんの公式大会って、タミヤ製のパーツを使ったマシンしか出られないんです。でも、公式のレギュレーションにとらわれずに独自の視点で楽しみましょう、っていう流れがあるんですよ」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「なるほど、自作パーツで魔改造されたミニ四駆ってことですね」 

 

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FAB四駆の大会には、例えばこんなマシンも登場。ボディからシャーシ、タイヤに至るまで自作され、写真左上のはしごみたいなパーツを使ってコースをショートカットできるそうです。ぶっ飛んでるけど、いや、ぶっ飛んでるからこそかっこいい。

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plain「公式の速さを競うレースもいいけれど、ものづくりの技術やアイデアを競うのも面白いですよ。いろんな楽しみ方が増えてるってことかな」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「単純に見ててワクワクしますね」

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plainミニ四駆って技術を組み合わせるのにピッタリなプラットフォームなんですよ。パーツやボディを自作したり、電子部品やセンサーを組み込んで走りを制御したり。シンプルに見えて、いろんな可能性がある。自分なりの工夫がいっぱいできるところが教材としてすごく優れていると思いますよ」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「教材ですか! 子どもというより、大人のエンジニアの方に?」

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plain「子どもの時と何が違うって、工学的な知識がついてるじゃない? だから『エンジニアの性格を知るには、ミニ四駆をやらせるといい』って話もあります」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「へえー!そんな言葉が…」

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plain「題材として面白いんですよね。専門技術を生かした自分なりのアプローチが見つけやすいから、大人でも楽しめる」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「実験の場にできるわけですね。ド文系の僕としては、理系の人の楽しみ方がうらやましいです」

f:id:tmmt1989:20171107164936p:plain「別に敷居は高くないですよ。高度な楽しみ方をしてる人もいますけど、子ども向けのFAB四駆のワークショップだってあります。気軽に遊んでほしいですね」

f:id:tmmt1989:20171107163511p:plain「なるほど、子どもにできるなら僕だって…ありがとうございます」

 

  

おわりに

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大人から子どもまで、広く愛されるミニ四駆。30年以上も愛され続け、三度ものブームが起きるホビーはそうそうないでしょう。

そして何より、大人の高度なやりこみも、最新技術すらも受け止めるミニ四駆のポテンシャルの大きさに驚かされる取材でした。

 

そして、そんな盛り上がりの一端である「スワッカソン」について、こちらの記事で詳しく紹介しています。 
 

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「東洋のスイス」とも称される世界レベルの諏訪市の精密加工技術を結集し…

 

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こんな魔改造されたマシンたちが勢揃いし…

 

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ド迫力のレースあり…

 

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男たちのプライドをかけたドラマがあり…

という熱狂の模様をレポートしています。ぜひご覧ください!

  

 

僕はミニ四駆熱が再燃したのでショップへ走ります。それではー!!

 

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書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。インタビューが好きです。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

 

ミニ四駆を魔改造!世界レベルの精密技術でバトルさせると…

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こんにちは、ライターの友光だんごです。

今日は長野県諏訪市に来ています。といっても行き先は「諏訪湖」や「諏訪大社」ではなく、とあるプロジェクトに参加するため。

諏訪市って、実は「精密加工の技術」がとんでもなくスゴいんです。

 

諏訪では、戦後に「時計・カメラ・オルゴール」といった精密機器の製造がさかんになり、現在も、日本最高峰の技術を持つメーカーがひしめき合っています

 

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そんな諏訪市の精密加工技術をアピールする「SUWAデザインプロジェクト」(主催:諏訪市、企画・運営:(株)ロフトワーク)が行われていると聞き、実際に訪れてみました。

 

「SUWAデザインプロジェクト」の今年のタイトルは「スワッカソン」

諏訪市全面協力のもと発足したプロジェクト……どれほど凄まじい最先端技術を、どれほど壮大なスケールで展開するのか……

 

 

その全貌がこちらです

 

 

 

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フォォォ~ン! ギュイイィ~~ン!

 

 

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 ドギャアアッ!!

 

 

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 バァァ~~ン!

 

 

あっわかった、ふざけてる?

 

と一瞬思ったんですが、実はミニ四駆というのは、改造することが前提のおもちゃであり、工学的な技術や電子的な装飾、デザインなど、技術力を表現するには最適な素材なんだそう。

 

そこで公式ガイドラインを一切無視して、とにかく魔改造技術で作られたミニ四駆の大会やろうぜ!となったわけです。

 

でも、日本最高峰とも言われる諏訪市の技術を、おもちゃであるミニ四駆に全力投球しちゃったら……

一体どうなるの?

 

 

 

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こうなります

見てください、ギラギラと光り輝くメタルボディ!

 

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こちらはフロントウインドウに謎の画面!!

 

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本物のレーシングカーばりに躍動するサスペンション!!!

 
これらはすべて「スワッカソン」の参加作品。公式ガイドライン無視×大人げない技術力、この2つが組み合わさると、ミニ四駆はこんな有り様になってしまうようです。

 

こんなムチャな魔改造ミニ四駆で、最速を決めるバトルが開催されるわけです。最高じゃないですか?

 

 

魔改造ミニ四駆 大会開催!!

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では、大会に出場する参加者をご紹介しましょう!

この地上で誰よりもッ! 誰よりもッ! 最速を飢望(のぞ)んだ男たち!

 

入場ッ!!!

 

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▼エントリーNo.1:バネメーカー『デーデック』 

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バネの製造メーカーの『デーデック』が、チーム・デーデックとして出場。微細な技術に定評があるバネメーカーです。ミニ四駆のサスペンションを作るなら、めちゃめちゃ有利なのでは……?

 

そんな『デーデック』が作ったマシンがこちら!

 

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大人気なく、完全に勝ちに来たマシンですね。サスペンションやスライドダンパーなど、デーデック製の特注バネをふんだんに使用。速さにこだわったマシンです。

 

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▼エントリーNo.2:レンズメーカー『nittoh』

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続いてはレンズを作っているメーカー、『nittoh』のチームnittoh。

「光散乱導光体ポリマー」という技術により、入った光がロスせず、樹脂全体が均一に光るという。美しき武器を引っさげて、大会に殴り込みッ!

 

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光散乱導光体ポリマーで作られたミニ四駆(中央)。LEDの光でボディ全体が光ります。早いかどうかは、まあ、いいじゃないですか。

 

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▼エントリーNo.3:金属加工『丸安精機製作所』

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金属を機械で削る「切削(せっさく)」が得意。カメラの操作ボタンやオーディオのボリュームつまみのような「丸い金属パーツ」を中心に手がける『丸安精機製作所』。チーム名はL.P.M.。

 

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高級感あふれる金属のローラー&ホイールを搭載。フロントウインドウに表示されているパラメーターは一体何? 路面の状態やタイヤの耐久値……?

 

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と思ったら、ギターの音と連動してパラメータが動き、ライトが光る機能だそう。つまりまったく意味はありません。

 

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▼エントリーNo.4:金属部品製作『小松精機工作所』

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腕時計から自動車まで様々な金属部品を手がける『小松精機工作所』のチーム、小松精機×YLAB。

注目はスーパー金属「コバリオン」。プラチナと同等の輝きを持ちながら「金属アレルギーになりにくい」「さびにくい」という特徴がある素材です。

 

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『レッツ&ゴー!』世代には懐かしい、「シャイニングスコーピオン」がベース。高硬度のスーパー金属「超微細粒鋼」をギアの素材に使用!

 

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しかもマイコン搭載なので、コースのセクションを記憶して最適な速度に制御してくれるそうです。それって「GPチップ」じゃないですか…!!

※GPチップ……原作に登場する「シャイニングスコーピオン」が搭載している学習機能を持ったチップ

 

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▼エントリーNo.5:電子機器『エー・アイ・エヌ』

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電子機器の設計・開発を得意とする『エー・アイ・エヌ』が、TEAMエー・アイ・エヌとして参戦!

ミニ四駆の小さなボディを、電子の要塞と化すことはお手の物。

 

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なんとスマホで操作できるミニ四駆「BlueNinja」というハードウェアを組み込むことによって、加速度などを検知してるんです。

 

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スタート&ストップ、さらに走るスピードなども操作可能。少年時代に妄想したマシンそのままですよ、「操作できるミニ四駆」って。

 

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▼エントリーNo.6:金属加工『共進』

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金属加工部品専門メーカー『共進』。チーム名は、やっぱチョメズ。

金属を接合する独自の技術で躍進するこのメーカー、ミニ四駆というフィールドで持ち味をイカせるのか!? 

 

これがその解答だ!

 

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マシン後方には諏訪大社のシンボル「御柱(おんばしら)」が。

ボディ横のローラー部分には『共進』が得意とする「カシメ接合」(溶接やネジなどを使わず、金属同士を接合する技術)が使われています。

 

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▼エントリーNo.8:金属研磨『松一』

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ナノレベルの研磨加工技術を持つ『松一』は、松一×乱反車というチーム名で参加。

研磨と聞くと、一見ミニ四駆とは何の関係もなさそうですが……果たして自らの技術をどう融合させるのか?

 

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はい、融合させる気ゼロ! いいからとにかくウチの研磨技術を見ろ!という自負を見事に表現しています。日本刀の材料となる玉鋼を使用(ただし速さとは関係ありません)

 

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こちらも松一のマシン。貼り付けられたウロコの研磨具合を使い分けることで、それぞれが違った光の反射をするというこだわりの逸品(ただし速さとは関係ありません)

 

 

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ちなみに、大会はレース順位の他に、自社の技術をうまく昇華できているか? 諏訪の魅力を表現できているか? などもポイントになります。

つまりレースで1位になったからといって優勝できるとは限らないのですが、勝つことが有利なのは間違いありません。

 

そのため、全員の目がギラついていました。

 

  

いよいよレーススタート! 結果は?

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選び抜かれた精鋭7組が揃い、いよいよレース開始です!

 

なお、レースは総当たりで行われ、ミニ四駆は何台使っても構いません。気分で「今回はこっちを使おう」というのも可能です(そのため、上の写真も11台並んでいます)

 

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どうですか? イイ大人がこんなに真剣にミニ四駆のコースを見つめることってあります? 素敵すぎるでしょ。

 

正直なところ「コレ絶対まともに走らないでしょ……」という見た目のマシンもあったので、それだけが心配なんですが―

 

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フォォオオアアン!!

 

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キュオォォ~~ン! ギャギャギャ……!

 

 

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ズバァァッ!

 

 

速すぎて目で追えない。なんだこれ。

さすが諏訪の技術を結集したレース、すべてのマシンがちゃんと走ってる!

 

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中には速すぎてコースアウトしちゃうマシンもありました。速度と安定性のバランスが難しい!

 

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実は一番「これダメだろうな~」と思っていたのが、『松一』の玉鋼を使った「剣刃虎」。だって重そうだったから……。

 

でも、速さはないものの、堅実に走っていました。むしろ、速すぎてコースアウトしてしまうマシンより、確実にゴールにたどり着けるため、意外にも勝ちを多くひろっていた印象です。

 

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まあ、周回遅れになって後ろから追突される一幕もありましたが(頑丈なので壊れない) 

 

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御柱がそそり立つ『共進』の「諏訪大車」。走る前に祈りを捧げてて大丈夫かな?と思ったのですが―

 

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めちゃくちゃ速い! こんなのサギでしょ!

 

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『丸安精機』のマシンは再調整を繰り返し、ボディをテープで止めながら疾走。

 

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『nittoh』の光るマシン。ライトの残像が尾を引いてめちゃかっこいい!

 

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レースは、全戦大盛り上がり! そこかしこで「あぁ~……!」とか「よっしゃぁ~!!」という歓声が上がっていました。

 

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ただ、速く動くものを見すぎて、そろそろ動体視力の限界が……

 

 

 

というところで、1時間以上に及ぶ総当たり戦、すべてのレースが終了しました。

 

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結果はご覧の通り。

1位|nittoh「LIGHT FACE RACER / NANO METAL RACER」(全勝で文句なしの1位)

2位|共進「諏訪大車」(御柱パワーのご利益を見せつけた)

3位|デーデック「スプリングマシン2号」(バネを有効に使い安定した強さ)

 

ただし、「レースで1位=大会で優勝」ではありません。レース順位の他に、自社の技術をうまく昇華できているか? 諏訪の魅力を表現できているか? などもポイントになるからです。

 

果たして、この一大プロジェクトを制するのはどのチームだ……!?

 

 

結果発表

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では発表します。

第一回「スワッカソン・プロジェクト」、優勝は……

 

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ざわ…

 

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ざわ……

 

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ざわ……

 

 

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ドギャーン!

 

 

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「LIGHT FACE RACER / NANO METAL RACER」のnittohチーム!!!

 

レースで1位をとる圧倒的な速さに加え、自社の技術「光散乱導光体ポリマー」によって、樹脂全体が均一に光るという美しさが評価されました。文句なしの優勝ですね。

 

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続いて準グランプリは……

 

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「諏訪大車」の『共進チーム』に!

 

レースでの強さはもちろん、諏訪大社の御柱を取り入れたという地元愛。バランスの取れた準グランプリと言えるでしょう。

 

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続いては準グランプリとジモコロ賞をダブル受賞したこちらのチーム

 

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「剣刃虎」「龍鱗」の松一×乱反車

速さを捨てて見た目に全振りした『取り繕わなさ』が素晴らしかったですね。

 

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 ジェイ・キッズ賞

 

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地元企業の「ジェイ・キッズ」からの賞はデーデックチームに! 実はこのチームのお手伝いをさせてもらっていたので、嬉しかった~!

 

 

まとめ  

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大人たちが全力でミニ四駆と遊び倒した今年の「スワッカソン」諏訪市をあげての技術アピールを、ミニ四駆でやるというのは、かなり斬新だったのではないでしょうか。

 

何より、色んなメーカーや工場が、全員もれなくメチャクチャ仲良しになっていたので、新たなビジネスにつながりそうな匂いがビンビンします。

 

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なにより諏訪市の担当者2人の満足げな表情が、プロジェクトの成功を物語っているように思います。

 

来年があるならまた参加したい! 次は自分でイチから作ってみようかな……

 

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☆ミニ四駆の「第3次ブーム」を取材した記事もぜひご覧ください!

  

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

写真:藤原 慶

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21歳からカメラとバックパックを持って日本放浪の旅に出る。
全国各地を周りながら撮った写真を路上で販売し生き延びる生活を続け、沢山の出逢いと経験を積む。
現在は東京に落ち着きカメラマンとして活動中。

Instagram : @fujiwara_kei

「昨今のネット社会に警鐘を鳴らさない」スカッとしないインターネットの話

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インターネットという地元

 

このサイト「ジモコロ」は「地元」を取り上げるメディアだ。場所に根付いた文化や産業には歴史があり、理由があり、特有のおもしろさがある。

 

「地元」の意味を精選版日本国語大辞典で引いてみると

 

「その土地。その地区。その人またはその事に直接関係のある土地。本拠」

 

 とある。ヒト(および、ヒトがする行為)と「場」は切っても切り離せない。

 

しかし、この十数年でヒトと場所とのつながりは弱くなってきている気もする。インターネットがあるからだ。いまや情報収集はほとんどネットで済ませる人が大半だし、人とのコミュニケーションだってネットを通じて行うことが普通になった。

 

 ここで「地元」という言葉をあえて拡大解釈してみると、私やあなたが使っている「インターネット」もまた独特の「場」であり「地元」なのではないか、という気がしてくる。

 

 であれば「ジモコロ」というメディアで「インターネット」の話をすることも、あながち場違いではないのかもしれない。……そう考えて、これからインターネットという「地元」について書いてみたい。そう、こじつけだ。


 しかし、ネットを俯瞰したうえでスパッと一刀両断にして、切り口からネット全体を語る、ようなことはむずかしい。いくら「地元」といっても、ネットには物理的なカタチがない。個々のネット利用者が見ているネットはそれぞれ全く違う相貌をもっている。

 

 このコラムでは、あくまで筆者の観測範囲において見つかった面白げなネット文化をひとつ取り上げて、それについて良いとも言わず悪いとも言わず、いや~、どうなんですかね? と、モニョモニョと、結論を出さずに締めたい。

 

 

怒涛の情報を浴びる日々

 

 私は「ツイッター」をもう8年くらいやっている。

 

 

 しみじみ感じるのは、とにかく流れ込んでいる情報の量がハンパじゃない、ということ。人間の脳ってこんなに大量のデータを送り込んで大丈夫なのかな? と、いつも不安になる。

 

 タイムライン(TL)をただスクロールするだけでも、愚痴、会話、猫画像、イベント告知、マンガ、ジョーク、おもしろ動画、ニュース、政治、自撮り、おもしろエピソード、などが無作為に、ごちゃまぜに、上から下へとなだれ込んでくる。

 

 TLを見るとき、1ツイートあたりにかける時間は短くて1秒、長くても1分。外部リンクを踏んで戻ってきてもせいぜい1~3分。1時間タイムラインを見ていたら、得る情報は大小合わせて300種を超すのではないか。かなり異常な情報の摂取量だが、これは現代ではそんなに珍しいライフスタイルでもないだろう。

 

「いろんな情報が」「断片的に」「ごちゃまぜに」流れてくる。

 

 インターネットの、特にツイッターという地元は、そんな特徴を持っているといえそうだ。

 

 

スカッとであふれるタイムライン

 

 流れる情報の内容は、媒体に合わせて変化する。ツイッターナイズされてくるのだ。

 

 このまえタイムラインで目にして驚いたことがある。ネット掲示板でのやりとりをまとめた「まとめサイト」の記事をスクリーンショットして、さらに4枚の画像に「まとめたツイート」が10000以上リツイート(拡散)されていたのだ。

 

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 ツイッターでは、短くまとまった文章、画像、動画がウケる。いまのところ文字数制限は140文字で、画像は4枚まで、動画は2分20秒まで貼ることができる。そこからはみ出すようなものは、1時間に300の情報を処理するツイッター地元民にとって都合が悪い。

 

 だから、うまいオチのついたツイートが特にRTされる。4ページで完結する短編マンガや、数秒~1分でオチのつく動画がウケる。「まとめサイトをまとめたツイート」が広く拡散されるのは、そのツイートの中で完結しているからだ。

 

 それらのツイートはどれも、ごく短時間で読者に「スゴい」「笑える」「知らなかった」「わかる」という感情を呼び起こす。後腐れなくスカッとできるのだ。珍しいエピソード、美しい天体の写真、決定的瞬間の動画。100年前の世界に生きていたら一生に一度見られるかどうかという奇跡を、いまのツイッターでは10秒にひとつ消費してスカッとしている。

 

 意見を発信するときもそうで、ツイッター上では断言したほうがウケがいい。政治の話をするにしても

 

「~という政策については絶対賛成(反対)だ!」

 

 くらいに、スッパリ断言したほうがいい。その意見に反対の立場を取る人も「それは違うぞ!」と簡単に反応できる(そして忘れられる)。

 

「~という政策については問題点もあるが、検討すべき部分もあり、まだ議論の余地は残されていて……」

 

 みたいな歯切れの悪い言い方だと「どっちの味方なんだ」という感じで読んだほうまでモヤモヤするし、次に開いたネコ動画を見ているときに、さっきの政策のことを思い出してしまうかもしれない。

 

 いろんな断片を大量に摂取するなら、情報は尾を引かないものが好まれる。そういう理由で、ツイッターにはスカッとするものが溢れているのだと思う。

 

 

警鐘を鳴らさない

 

 

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疑問呈し蟹「それで、そういう流動食しか食えなくなった人類に警鐘を鳴らしてるの?」

 

 うわっ、疑問呈し蟹だ。

 

 

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「どうなの? 鳴らすの? 警鐘」

 

 うーん、いや、だからといって、今の世の中が悪くなった、とは思わない。

 

 これはあくまでツイッターという「地元」が持っている性質であって、人のアタマが悪くなったとか、文化が先細りしていくとか、そういうこととはまた別の話だから。

 

 ツイッターが断片をごちゃまぜに垂れ流す仕様である以上、この傾向は絶対に変わらないだろうし、それは人々がそういうモノを求めた結果だ。柔らかいものばかり食べていると歯が弱くなるかもしれないが、固いものしかない時代の人だって柔らかい食べ物は食べやすくて好きなはずだ。

 

「じゃあいまのツイッターみたいに情報が消費されまくるのは良いことなの?」

 

 …いややっぱり、これは手放しに「良いこと」でもない気がする。やっぱり人類がどんどん難しいことを考えられなくなって、アホになっていくのは困るし。

 

「人類ってアホになってるの?」

 

 うーん、正直、それもわからないけど。

 大昔なんか、文字も読めない人が大半だったわけで、それと比べれば平均的な知性は大幅に賢くなったとも言えるな。

 

「そもそも、さっきのツイッターの分析って本当に正しいの? 自分の観測範囲がそういうふうに見えてるだけなんじゃないの」

 

 主観だけど、ある程度の根拠はあると思うし、わりといろんな人の共感は集められると思うんだけどな……。

 

「共感を集めてどうするの?」

 

 どうするって……まあ、この話題についても簡単に言い切っちゃうとすぐスカッと消費されて忘れられちゃうだろうから、あえて善とも悪とも言い切らず、読者の人に心残りみたいなものを作れたらいいなとは思ってるけど……。

 

「責任を負わず、自分の意見は言わず、あいまいなまま投げるってこと? それって、意見をハッキリ言って白黒つけるより良いことなの?」

 

 ………。

 

 

・ ・ ・

 

 

 にっちもさっちも行かなくなってしまったので、今回は、このへんで投げることにする。さようなら。

 

 

 

 

 

ライター:ダ・ヴィンチ・恐山

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。作家名義は品田遊。
風呂の湯沸かしや宅配便の再配達依頼など、多方面で活躍中。

ブログ→品田遊ブログ
Twitterアカウント→@d_v_osorezan

 

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鼻息がかかる距離でヒグマに遭遇した私が、専門家に対策を聞きに行く

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こんにちは。 北海道・知床出身のライター、モンゴルナイフです。

今回は何も言わずに、まずこちらの漫画をお読みください。

 

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これは私が子どもの頃に、実際にヒグマと遭遇したときの話です。

 

子供だったので全然気にしていなかったのですが、大人になってからヒグマに関する怖い事件を知って、「もしかして私、あのとき死んでたかもしれない……?」と思うようになりました。

 

だとしたら怖すぎません?

今度また同じようなことがあったら、どうしたらいいの? 素直に食べられちゃうしかないの?

 

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100歳まで生きたいので、専門家に対処方法を教えてもらうことにしました。

 

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お伺いしたのは『公益財団法人 知床財団』で長年ヒグマの調査・対策をされているヒグマの専門家・葛西さん

 

 

ヒグマに出会った時やっちゃいけないこと、やるべきこと

 

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f:id:jimocoro:20171124204516p:plain「今日はよろしくお願いします! 早速ですが、私は至近距離でヒグマに遭遇したことがあるんです。次に同じことがあったら、どうすべきですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「なるほど、対処法ってことですね? ただ、まず言いたいのは、『そもそも遭遇しないようにする』努力を最大限行ってください、ということです。それがお互いにとってベストですから」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「『お互いにとって』? 向こうは圧倒的な強者なのに?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「いえ、ヒグマだって人間や、人間の持っている武器が怖いんです。なので、ラジオとか鈴を鳴らすなりして、人間の存在を知らせてあげれば、遭遇する確率はグッと減ります

f:id:jimocoro:20171124204516p:plain「なぬ、大きな音を出せば良いってことなら、例えばHAKAでもいいでということですか?」

 

 HAKA

マオリ族の戦士が戦いの前に、手を叩き足を踏み鳴らし自らの力を誇示し、相手を威嚇する舞踊。

Haka 2006.jpg
ハカ (ダンス) - Wikipediaより

 

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「モンゴルナイフさんがそれでOKなら……まぁ、いいんじゃないでしょうか。先ほどモンゴルナイフさんはヒグマと遭遇したことがあるとおっしゃってましたが、その時はラジオや鈴をつけてました? もしくはHAKAをやってました?」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「めちゃめちゃ静かにステルス作業してました……」

f:id:jimocoro:20171124204533p:plain「もしつけていれば、熊には遭遇しなかったかもしれません」

f:id:jimocoro:20171124204525p:plain「でも、常日頃からいつもラジオや鈴をつけておくというのは無理ですし、たまには油断してしまうものです! そんな時バッタリ出会ってしまったら、どうするべきなんですか?

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「最大限の『遭遇しない努力をして、それでも出会っちゃった』という場合ですね? まずやらない方がいいことから、お教えします。至近距離で出会った際に『大きな声を出す』のは、やめたほうがいいですね」 

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「悲鳴とか? 私は人間ですが、女性の『キャー』という悲鳴が苦手です」

 

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f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「そう、そういう不快な叫び声はヒグマにとってもストレスになるんです。刺激しないように静かにしましょう。」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「叫びそうになったらハンカチを噛んで耐えよう……」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「次にやめた方がいいのは走って逃げることです。これは走っているものを追いかけてしまうという、熊の習性を刺激してしまいます

f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「短距離走にはかなり自信があるんですが、それでもやめた方がいいですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ヒグマは車と並走した例も報告されているので、時速40〜50キロは出るんじゃないかな。人類だとウサイン・ボルトでも時速37kmくらいなので、逃げ切れないでしょうね」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「『はじめの一歩』に、熊は前足が短いから、体の構造的に下り坂は苦手って書いてありました。登山してる時に出会った場合、下方向に走るべき?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「それは、正しいかもしれませんが、熊にバッタリ出会ってしまったというシチュエーションで、『熊は前足が短いから下方向に逃げよう!』なんて考えて……スタスタと走れないと思いますよ」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「うぅ……八方塞がりか。じゃあ次は、やった方が良いことを教えてください」

 

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f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「やった方がいいことは『ゆっくり距離を取ることです。人間との距離が近いというのは、熊にとってはストレスなので」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「目をしっかり見つめてジリジリさがるやつですね!」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain諸説ありますが、目を合わせることはヒグマにとってストレスだと思います。チラチラとなら見てもいいので、とにかくゆっくり距離をとってください」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「こっちもストレスで白髪になりそう…… 」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「あと本当にヒグマが心配であれば、自分の身を守る最後の手段として『クマ撃退スプレーを持つ』のも良いでしょう。」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plainクマ撃退スプレーって効くんですか? 逆にヒグマを刺激して激昂させるということは……?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「私の同僚には、クマ撃退スプレーで実際に命が助かった人もいます。また、成分の入ってない『練習用』を、本物のスプレーと勘違いして使ったところ、クマを撃退したという人もいます。『シュッ』という噴霧音も聞き慣れない音で苦手なのかもしれませんね」

 

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 f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「なるほど……他にヒグマが苦手なものってありますか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「蛇は嫌いだと思います。私は学生の頃、研究で熊がたくさんいる施設でお世話になっていたことがあります。ある時、蛇が嫌いかどうかを試すため、餌を求めて手を振っている熊に、先輩が蛇の抜け殻をポイっと投げたんですよ。」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「イタズラ好きな先輩ですね。熊は餌がもらえると思ってたのに、怒り狂ったんじゃないですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ところが、蛇の抜け殻が口に入った途端、熊が『ふあああ~』と腰をぬかしちゃったんですよ」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「ええ! かわいい~!」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「科学的に実証はされているわけではないですけど、私はクマは蛇嫌いだと思いますね」

f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「じゃあ今から修行して蛇遣いになるしかない……!!

f:id:hirakocha:20171122114829p:plainクマ撃退スプレーを持った方が楽では?」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「わかりました、爆買いします! クマ撃退スプレーっておいくらですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「一本1万円くらいかな」

 f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「ふあああ~」

 

カウンターアソールト 熊撃退スプレー 02194 CA230

カウンターアソールト 熊撃退スプレー 02194 CA230

 

 

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クマ撃退のスプレーも、かばんの中にしまっておくだけでは緊急時に取り出せない。ホルスターなどに入れ、すぐに使えるようにしておくことが大切。

 

クマ撃退スプレーは危険物のため、取り扱いには注意が必要です。航空機に持ち込めないなどの制限があります。購入の前に注意点をよく確認しましょう。

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「人間を撃退するためには、ゆめゆめ使わぬように……」

 

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ヒトはヒグマを倒せるのか?

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「クマって案外臆病で、蛇の抜け殻で腰を抜かすかわいい一面もあることがわかりました。私、一応ジムで鍛えているんですが……ひょっとして、戦えば勝てるかも?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ヒグマの筋肉と比べると、ヒトは紙細工みたいなものですよ。 特に引っ張る力が強くて、爪を引っ掛けてほとんどのものをバリバリと剥がしてしまいます。シャッターも破るし、窓ガラスも壊します

 

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ヒグマの剥製の手。これでも決して大きいほうではないそう

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain熊に襲われた人が、殴りあいして勝ったみたいな逸話を聞きますが、あれは嘘なのでしょうか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ちゃんとした記録がないので、そこはわからないです。ロマンはありますけどね……」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「動画があるわけでもないし、口伝ですしね」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「嘘ではないけど、真実ではない、というケースもあります。クマに遭遇すると、極限の恐怖と興奮で、記憶が曖昧になったりするんです。 自分でも気づかずに若干話を盛っている、なんてことも考えられます」

f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「やっぱり人類はヒグマに勝てないの? 空手家とかレスラーでも倒せない?『グラップラー刃牙』っていうマンガだと、むしろ熊くらい倒せないと笑われますよ」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「絶対とは言いませんが、現実の人間では基本無理です。一般の人は、ヒグマが接触してきたら『守る』しかないと思いますね」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「ヒグマの攻撃力から身を守れる!? どうやればそんな護身が完成するんですか?」

 

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f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「まず首は両手で守りましょう。なぜなら血管が集中しているので命に関わるからです。あとはお腹も柔らかいので地面にうずくまって守りましょう。これは海外で推奨されている方法のひとつです。

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「でもヒグマは引きはがす力が凄いんですよね? なら、すぐひっくり返されるのでは……?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「でしょうね。そしたらまた同じポーズになってください

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「あれ? その状況ってひとことで言うと『絶望』……?」

f:id:jimocoro:20171124204533p:plain「そのうち飽きてくれるか、助けが来るかも……」

 f:id:hirakocha:20171122114826p:plain葛西さんは、行政からヒグマ対策の業務を請け負っているプロですよね? では、ヒグマに遭遇しても余裕綽々で対応できるんでしょうか」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「いやいや、余裕というわけではないですね。以前こんなこともありましたよ――」

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「怖いっ! そんな状況なのに、なぜ銃を撃つことをためらったんですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain銃を使うのは、実はかなりリスキーなんです。 手負いにさせてしまい、状況を悪化させてしまうこともあるので」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「頭を狙ってバンバン撃てばいいだけでは?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「頭はかなり硬いんですよ。弾がぶつかったときの角度によっては跳弾することがあるくらいなので」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「知らなかった……」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain実は銃を持っている人のクマ被害は多いんです。人間が殺す気になれば、クマにもその気持ちは伝わり本気になるからだと思います。そうなればどっちかが死にます。だから銃を使うときは命を懸ける『覚悟』が必要なんです。

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「すごい、まるでバガボンドの世界……」

 

 

ヒグマってそもそもどんな生き物?

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「お話を伺って、ヒグマという存在に大きな興味が湧いてきました。一体どういう生き物なんでしょう?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ヒグマ(エゾヒグマ)は、日本では北海道のみに生息する熊で、日本最大の陸棲哺乳類です。メスで最大150〜160キロ、オスで最大400キロくらいあります。そして、知床にはおおよそ500頭前後が生息すると推測されています」

f:id:jimocoro:20171124204525p:plain「ご、ごひゃくっ!? ヒグマだらけじゃないですか! じゃあいつ出会ってもおかしくない?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「いえ、大人の―特にオスのヒグマは警戒心が非常に強いんです。
夜やひと気がないときに行動するので、人の目に触れることはほとんどありません。警戒心が強いヒグマしか生き残れないんです」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「あんなに強いのに?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「人間の居住区に姿を表すと、すぐ捕獲されたり駆除されたりします。結果、警戒心が強い個体が生き残ったのが、今の状況です」

f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「ジャイアンのように強気でもだめ、のび太のように油断しまくっていてもだめ。スネ夫みたいに神経質なヒグマだけが生き残ることができるんですね

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「スネ夫にもヒグマにも失礼な気がしますが、そういうことです」

 

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f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「エサはどうですか? 人間以外にはどういうものを食べるんでしょう

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain人のことはまず食べないですね。ヒグマも人間を怖いと思っていますし。それにもし食べたクマがいたらすぐに捕殺されます。つまり彼らが人を食べることを学習する=死なんです」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「人は食べないのか。ホッ……」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「といっても、何かのきっかけで人間を食べてしまい『ああこれは食べられるんだ』と思ったら、捕殺されるまでは食べるかもしれませんね

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「え゛!」

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「通常は人間を食べないということですが、ではシカとか他の動物をハントして食べているんですか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「積極的に生きている動物を襲って食べるというよりは、死んでいるもの(エゾシカ等)を食べる感じですね。また、雑食なので普段食べているものは木の実だったり木の芽だったりします。春先には山菜を食べたりしてますよ」

f:id:hirakocha:20171122114701p:plainおじいちゃんみたい!」 

 

 

有名な熊害事件はどうして起こった?

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ちょうど美しい夕暮れ時だったので、施設の回りの遊歩道を歩きました。熊だってこの雄大な自然の一部なんですね……

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「有名な熊害事件として、三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)というものがありますよね? これはどうして起こったと思いますか?」

 

三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)

1915年12月9日から同14日にかけて、北海道苫前郡苫前村三毛別で発生した、クマの獣害(じゅうがい)としては日本史上最悪の被害を出した事件。

体重340kg、体長2.7mのエゾヒグマが数度にわたり民家を襲った。開拓民7名が死亡、3名が重傷を負った。事件を受けて討伐隊が組織され、問題の熊が射殺されたことで事態は終息した。

 

事件は、冬眠に失敗したいわゆる「穴持たず」が、空腹に凶暴性を増し引き起こした例と思われていた。

三毛別羆事件 - Wikipediaより

 

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「こういう事件っていくつか共通点があります。クマと人間の間でトラブルが起きるときは、必ず食べ物を介した関係が出来上がってるんですね」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「三毛別の事件でも、干してあった食べ物を取られそうになったような記述がありましたね」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain人間→食べ物→ヒグマという関係をつくらないことが最重要です。例えば道で見かけたヒグマにエサをあげると、ヒグマは『人間に近づいたら食料をもらえる』と認識してしまいます」 

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「それが食べ物を介した関係の一例なんですね」

 

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f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「その通りです。テントの外に食料を置いておくという行為も、ヒグマにそれを食べられてしまえば…、ヒグマが『人間に近づいたらエサをもらえる』という認識を持つことに繋がります」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「三毛別の事件でも、軒下に干していた食料などが、悪い関係性のスタートだったのかな……。クマって食べ物にめちゃくちゃ執着するっていうし」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「よく知ってますね。その通りです。一回クマが『自分の食料』だと認識したものを取り返そうとするのは、やめた方がいいですね。それは、つらい決断になるかもしれませんが……」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「こういう事件って、100年くらい前の開拓時代だったから起きたことなんですか? それとも、現代でも起こり得ること?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「現代では、クマの出没情報が行政や警察に集まる仕組みになっています。『クマが出没した』、『クマに食べ物を取られた』、『人に寄ってくるクマがいる』といった情報ですね。適切な対処が行われれば、人が次々とクマに襲われるような事件は発生しにくいと思います」

 

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「ただ可能性はゼロではない……?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain起こる可能性はあります。去年も秋田県で何人も連続でツキノワグマに襲われる事件がありました」

 

十和利山熊襲撃事件(とわりやま くましゅうげきじけん)

2016年 (平成28年) 5月から6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯(とわだおおゆ)で発生した、日本では戦後最悪の被害を出した獣害事件。

 

タケノコ採りや山菜採りに来ていた人をツキノワグマが襲撃し4人が死亡、3人が重傷を負った。

被害者を襲ったクマや、食害したクマが複数存在しており、クマによる襲撃事件では非常に稀なケース。

十和利山熊襲撃事件 - Wikipediaより

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「最近は知床で人的被害はありますか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ほとんどないですね。 最近ハンターさんがクマに頭を叩かれたという事件がありましたが、それは30年ぶりくらいの事故ですね。」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain思ってたより少ないんですね! 」

 

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f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「でも、重大な人的被害につながりそうなきっかけは、数知れず起きていますね。食料を求めたヒグマにシャッターを破られたり、窓ガラスを割われて家屋に侵入されたり、軒先に干していた魚を取られたり……ね」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「このあたりは、居住区のすぐ裏がヒグマの生息地ですもんね」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「だから人間の側が気を付けて対策をすることが重要ですね。ただこれは現実的には非常に難しいです」

f:id:jimocoro:20171124204525p:plain「な、なんで? 誰もが熊に襲われたくはないんだから、簡単なのでは?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「ヒグマがごみを漁るかもしれないから、ちゃんとごみ出し日の朝に出しましょう!となったとして、全員守るかというと、やっぱり難しいんですよね。東京でも、朝を待たずに夜にゴミ出ししちゃう人はいるでしょ?」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「確かに。一人でも守ってないと意味がないから、『どうせ意味がないなら私も守りません』って人だって出てくるかも」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「野生生物の管理と言いつつも、人への働きかけのほうが大事なんですよね。 ひとりだと気をつけられることも、集団になればほころびが生じる。 だから、私たちはこれからも、トラブルになりうる行為をやめてもらうように、伝え続けていきます」

 

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f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「葛西さんにとってヒグマと人間がうまくやっていく道はなんだと思いますか?」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「私はお互いに緊張感のある関係を保って暮らしていけることが大切だと思います。」

f:id:hirakocha:20171122114826p:plain「緊張感……決して馴れ合いの関係ではなく、ということですか」

f:id:hirakocha:20171122114829p:plain「はい。ヒグマと遭遇しないよう最大限の努力をする。食べ物を介した関係が発生しないように注意する。するとヒグマも、人間には不必要に近づかないようにしようと考えてくれます」

f:id:hirakocha:20171122114701p:plain「私は人間として自分の出来ることをやっていきます!葛西さんありがとうございました!」

 

 

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ヒグマは怖いし過去に悲しい事件も起きているけれど、すべてのヒグマが悪いことをしようとしているわけではないし、私たち人間と同じように生きています。

 

彼らのルールを理解して、今後みなさんが山に行く時には、HAKAをしながら進むことをおすすめします。

 

 

 

(おわり)

 

今回伺った知床財団のお土産屋さんで、熊避けの鈴を買ってきました!

1名様にプレゼントするので、ドシドシご応募ください! もうすぐクリスマスなので玄関に飾ってもおしゃれかも~?

 

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★応募方法はこちら!

 

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書いた人:モンゴルナイフ

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北海道は道東出身の元気で明るいOLです。仕事のストレスをインターネット(オモコロ)で日々発散しながら暮らしています。好きな食べ物はカレー。
twitter : @amanattif

社長と語らう夕べ「天才との出会い」―僕らが出会った天才たち

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こんにちは、ジモコロを運営している株式会社バーグハンバーグバーグの取締役社長・シモダです。

 

会社という生き物がもっとも重視しなければいけないのは、外交よりもむしろ内部のコミュニケーションではないか……?

―という信念のもと、社員を集め、こんな話し合いの場を設けてみました。

 

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今回のテーマは「天才との出会い」。生きてたらたまに出会ってしまう天才たち……今まで「この人、天才だな」と思ったエピソードを教えてもらいます。

 

集まってもらったのは、豊富な出会いを経験してきたこちらのメンバー。

 

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メンバー紹介

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バカのくせに知り合いだけはやたらと多く、それが連鎖して変わった人たちによく出会う

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仕事が長続きしない性格ゆえ、バイトや会社を転々とし、色んな職業の人間に出会ってきた

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様々な会社を渡り歩き、人脈を築いてきた。今回はある有名会社在籍時のエピソードらしいが……

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学生時代からネットにどっぷり。特にオモコロというお笑い系WEBメディアでの出会いが衝撃的だったという

 

シモダ:「遅刻してくる家入一真さん」

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f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「今回は、今までの人生で『この人、天才だな』と思ったエピソードを教えてください。例として、僕の場合をお話しすると……僕、前職の社長に家入一真さんって方がいたんですけど、この人は『天才だな』って思いました」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「家入さんというと、上場もしてるIT企業『GMOペパボ株式会社(当時は株式会社paperboy&co)の創業者ですよね」

 

家入一真

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投資家・連続起業家。1978年生まれ。2003年、GMOペパボ株式会社(当時は株式会社paperboy&co)創業者。2009年に代表取締役を退任後、株式会社CAMPFIREを創業。
株式会社CAMPFIRE
Twitter

 

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「僕が起業する前、家入さんのもとで働いてたときの話なんですが、プライベートでも仲良くてよく遊んでもらってたんですね」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「家入さんといえば、新しいサービスを次々と起ち上げたり、話題になる発言をしたりで常にネットの中心にいる人ですね。確かに『天才』と呼べる方かもしれませんね」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「ということは今日は、アイデアの考え方や、会社運営のやり方についてのエピソードを話してくれるんでしょうか」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「いえ、家入さん、あの人すごいんですけど『怒られ回避の天才』……なんですよね」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「?」

 

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f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「ある時、日曜日に遊ぶ約束をしてまして。僕は待ち合わせの時間通りに着いて、しばらく待ってました。なのに、いつまで経っても来ないんですよね」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「まあ、数分の遅刻なんていうのは誰にでもあることですから」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「数分ならいいんですけど、10分待っても20分待っても一向に現れない。30分を過ぎてさすがに僕もイライラして『今どこっすか!?いい加減にしてください!いつになったら来るんですか!』ってメールしたんです」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「30分は確かにキツイ」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「家入さんも『ごめんごめん! すぐ行くよ!』って返信くれたんですけども、40分経ち、50分経ち……僕はもう、家入さんが来たら殴ってやろうと思ってました」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「確か、社長と部下の関係でしたよね?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「それはそうなんですけど、もう怒りが頂点に達してしまって、後のことはどうでもいい、と。そこに家入さんが『お~い!シモダく~ん!』って言いながら現れたんです。でも、よく見ると……」

 

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f:id:jimocoro:20171127215810p:plain二人で会おうって話だったのに、子供をつれてきたんです!」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「なんで急に子供を?」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「シモダさんは、家入さんのこと殴らなかったんですか?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「いくら極悪人であれ何の罪もない子供の前で父親を殴るなんてできるわけないじゃないですか! それどころか、子供の前で怒ることすらできませんよ!」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「まさかそこまで計算して……」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「そう! そのために、急遽子供をつれてきたんですよ! その姿を見て、あぁ……この人は怒られ回避の天才だって思いました」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「そういう天才っているの?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「と、まあこんな感じで、みなさんが出会った天才たちの話から、勉強になる要素を学んでいきましょう!」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「家入さんなら、もっとちゃんとした天才エピソードがあったのでは……?」

 

 

ギャラクシー:「ベテランの工場職人」

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f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「では、僕が出会った『天才』をご紹介しましょう。ある工場で働いてた時のこと。僕は機械にドリルで穴を開けて、もうひとつの機械と合体させる、という業務を行っていました」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「えーっと、片方の機械は凸になってて、もう片方は凹になってるっていう感じなんですかね?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「そうです。その、凹になってる穴を僕がドリルで開けたわけですね。大きさは1m、重さは数百kgの機械です」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「でかっ。何の機械なんですか?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「わかりません」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「え」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「工場で働いてると、自分が何を作ってるのか全然わからないものです。とにかく僕は2つの機械を合体させようとしてたんですが、どんなに押し込んでも入らない。ドリルの穴が小さかったんですね」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「もう一回、大きめのドリルで穴を開け直せば良いのでは?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「ところが、中途半端にハマってしまって、今度は抜けないんです。この状態じゃ納品できない。数百万する機械なんで、『あ、完全に人生終わった』と思って真っ青になりました。……そこに、ベテランのYさんが通りがかったんです」

 

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f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「Yさんは60歳手前の冴えないオッサンです。顔つきがダサいんで侮ってた人なんですが、藁にもすがる思いで、助けを求めました」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「顔つきで侮るな」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「半泣きで『なんとかしてください』と訴えたところ、『ほな、クレーンで上げてみてや』って言うんで、言われるがままにロープで吊り上げました」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「なんとか……なるのか?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「ところが『次はどうしたらいいですか?』と聞こうとすると、Yさんは背を向けてスタスタと歩いていくんです」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「無理だったから諦めた?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「何か特殊な道具を取りに行った?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「どちらも違います。Yさんは3mほど歩いて、振り返り、突然ダッシュで走ってきたんです。そして……」

 

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f:id:jimocoro:20171127215820p:plain機械にドロップキックしたんですよ……!」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「!?」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「60歳手前の男性がドロップキックする絵が浮かんでこない」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「その瞬間、『ゴウンッ!』と音がして、2つの機械はピッタリと合体しました。Yさんは、『蹴ったのがバレたら怒られるから、内緒やで?』って言って去っていきました」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「かっこいい!」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「去り方も良いなぁ」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「今まで侮ってた人だったのに、それ以降は尊敬するようになったわけですね?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「いや、顔つきがダサいんでやっぱり心のなかで笑ってました

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「カスか」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「僕らはクリエイターと言われる職種ですけど、おそらくクリエイティブなやり方や考え方というのは、あらゆる場所で行われてるんでしょうね。勉強になりました」

 

 

長島:「ゲームが好きすぎる会長」

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f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「以前働いていた会社に、TVにも出るような、有名な会長がいたんです。その人は発想とかアイデアがムチャクチャ飛び抜けていて」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「あぁ、誰のことかわかった。確かにすごい方ですね」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「誰も思いつかないアイデアをバリバリ実現させて、新しい企画を形にして……なのに、どこか幼稚な部分がある人だったんです」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「幼稚というと、例えばどういう部分が?」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「例えば、ゲームが異常に好きで、大作RPGなんかが発売されると、しばらく完全に仕事がストップするんです」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「たまにそういう人いますけど、まあ、大作RPGなんて数年に一度のことじゃないですか」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「いや、普段からアプリゲームなんかにも熱中してて、しかも、自分だけじゃなくて周りの社員にも勧めるんですよ。社員の課金分を負担してまで!」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「羨ましい……」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「おかげで、仕事中もみんなゲームしまくってて、事業部のキーマンが廃人になったりしてました」

 f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「自分の会社だからダメージ喰らうのは自分なのに……」

 

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f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「そんなある日、会長がドハマリしてるゲームを作ってる会社から、仕事の依頼があったんです」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「おぉ、やっと仕事に役立ちそう!」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「僕は打ち合わせの席で、その場に居ない会長をダシに機嫌を取ろうと思って、『“○○戦記(仮名)”という御社のゲーム……あれ、うちの会長が大ファンでして』と伝えたんですね。先方も喜んでくれまして」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「まあ、テレビに出るような人が、自社のゲームにハマってるとなると、気分良いですよね」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「で、会長のことを知らない人もいるかもしれないと思って、全員の前でツイッターアカウントを表示して紹介したんですね。『これが弊社の会長です!』と。そしたら……」

 

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f:id:jimocoro:20171127215842p:plain『○○戦記」死ねよ!!!』ってツイートてたんですよ。課金ガチャをやったのにクズカードしか出なかったらしくて……」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「タイミング悪っ!」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「奇跡」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「場が凍りついてメチャメチャぎこちなくなったんですが、『……とまあ、こんなに入れ込んじゃうほど夢中になっておりまして』とフォローし、事なきを得ました。ワキ汗ビッチャビチャになりましたね」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「確かに、なんだろう……ただの偶然なのに『天才』のニオイがする」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「こんなにもゲームにのめり込める幼稚性……こういう人だから、誰も思いつかなかった仕事ができるんだろうなって思いました」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「ひょっとしたら、マーケティングのためにゲームをやってただけかも……?」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「当時は、その会長が作ったチームが全国で1位になるほどやり込んでたんで、絶対研究のためじゃないです」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「度を超えすぎ」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「僕もゲームは相当好きなんですが、のめり込みすぎないように気をつけます。勉強になった」

 

 

シモダ:「とんでもない方法で営業を行った天才」

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f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「長島さんの話で思い出したんですが、僕も、ある天才的な社長に出会ったことがあるので発表してもいいでしょうか。ものすごく営業が得意な人のエピソードです」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「営業って、うまい人がやると紙コップひとつにも価値をつけて売っちゃうらしいですからね。どんな話か楽しみです」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「その人物がまだ20代だった頃、あるセキュリティ関係の営業をやっていたらしいんです。一般家庭を訪問して『セキリュティをつけませんか?』と回るんですが、そのまんまやっててもなかなか話を聞いてくれないじゃないですか?」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「普通はそうですよね。門前払い」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「そこで、その人がやったのが、不審者を演じてその近辺で目撃されるようにしたんです」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「!?!?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain全身を黒タイツでほっかむり

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「はい!?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「さらに、唐草模様の風呂敷を装備して……」

 

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f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「めちゃめちゃオールドスクールな泥棒だ」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「そう! その格好で……訪問するのではなく、しばらく郵便受けにセキュリティの広告をポスティングし続けたんです」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「?……あっ、ああああぁぁ!!!!」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「なるほど! わかってきた!」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「行為自体は犯罪でもなんでもないんです。だって黒い服でポスティングしてるだけですから。でも、周辺ではやっぱり噂になるわけですよ」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「そりゃそうだ」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「『最近この周辺で不審な(?)……泥棒っぽい服装の人を見かける』といった噂が広まったタイミングで、今度はちゃんとしたスーツで、再び訪問を開始したんです。『最近、物騒なので家にセキュリティをつけませんか?』と」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「うますぎる」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「掴みとしては最強ですよね」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「全身黒い服で風呂敷……そんなマンガみたいな泥棒ファッションだと、不審だな~とは思っても、恐怖を感じて通報するほどでもない。バランス感覚がすごいですね」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain営業活動にストーリーを作ってることに感心するし、しかもそれがおもしろい! まさに天才だなと思いました」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「これは勉強になったって人が多いのでは」

 

 

まきの:「寝言の天才」

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f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「最後は僕から。オモコロというWEBメディアで様々なライターと出会ってきたんですが、中でも一番驚愕した天才が、タニという男性です」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「タニさんは僕もよく知ってますが、確かに天才」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「彼の天才的な才能は、ただ寝るだけで発動されます。ものすごく高度な寝言を喋ってくれるんです!」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「僕も存じております。あまりにも寝言がすごいということで、何度かテレビにも出演されてますよね」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「どんな説明をするよりも、彼の『制作』したコンテンツを見てもらうのが一番手っ取り早いと思うので、こちらをご覧ください」

 

 

f:id:jimocoro:20171127215820p:plainすごい寝言! 何回聞いても笑っちゃう」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「実際にそばで聞くと『え、なに!? なんなの!?』と思って心臓に悪いんですが、動画として見たら最高でしょ」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「タニさんを家に泊めたことがあるんですけど、起きてるものだと勘違いして、寝言相手に喋りかけちゃいましたからね。しばらく話してると、全然会話が成立してないことに気付いて、あれ?って」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「会話できるくらいハッキリ喋ってるんだ……」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「ハッキリと『そういえばアレってどうすんの?』って聞いてくるから、『アレってどれのこと?』と返したら、『そこのカドを右に曲がった店をね……』って意味不明なことを言われたりして」

 

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f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「ワケのわからない寝言もイヤだけど、突然『うぁあ゛あ゛あ゛ぁぁ~~らい!』とかって絶叫するのが怖かった。心配になって『大丈夫!?』って聞いたら『ろこモン~♪』なんて謎の寝言が返ってくる」

f:id:jimocoro:20171127215820p:plain「隣で寝たくないな~」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「知り合いがタニさんの家に一ヶ月居候したことがあったんですが、『毎晩ノイローゼになる寸前だった』って言ってましたね」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「迷惑ではあるんですけど、『寝るだけで永久にコンテンツを生み出せる』って、天才じゃないですか?」

f:id:jimocoro:20171127215810p:plain「天才」

f:id:jimocoro:20171127215955p:plain「ね、最高でしょ?」

f:id:jimocoro:20171127215842p:plain「おもしろかったけど、勉強になるところはひとっつも無かったですね」

 

 

f:id:jimocoro:20171128164356j:plain

 「あっ……」

 

 

まとめ

f:id:jimocoro:20171128162947j:plain

様々な天才たちのエピソード、いかがだったでしょうか。

彼らに何を学び、その叡智を自分の人生にどう活かすのか? 「あの人は天才だから仕方ない」と、自分の才能に見切りをつけず、貪欲に吸収したいものですね!

 

読者のみなさんも、身近な天才のエピソードがあれば、

#天才エピソード

のハッシュタグと共にツイートして頂けると嬉しいです。

 

 

 

 

 ・シモダテツヤの座談会「社長と語らう夕べ」一覧

 

(おわり)

 

 

書いた人:シモダテツヤ

f:id:eaidem:20150428154322j:plain

1981年京都生まれ。Webクリエイター。バーグハンバーグバーグ代表取締役社長。 代表作は「インド人完全無視カレー」「分かりすぎて困る! 頭の悪い人向けの保険入門」など。著書に『日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術』がある。Twitterアカウント→@shimoda4md

 

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 22話「寿司屋のおやっさん」

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<柳田さんと民話・一覧>
22

 

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f:id:jimocoro:20171201110448j:plain


 

<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

11話~20話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

f:id:eaidem:20160322122138j:plain

1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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野犬をハグする人気動画 -「それ噛まれないの?」日本とタイのペット問題

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突然ですが、みなさんはこの動画をご存知でしょうか。

 


Gluta Story : The First Hug - กอดครั้งแรก

これは、Sorasart Wisetsinさん(愛称:ヨーチさん)というタイ人の男性と、INSEEというタイの会社が合同で製作した「The First Hug」という動画です。

その内容は、野犬に初めてのハグをしてあげようというもの。

 

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野犬が初めてハグをされたときの反応は、涙なしでは見られません。動画は多くの感動を呼び、FacebookやTwitterで拡散され、瞬く間に世界各地で話題となりました。

 

しかし、ひねくれた僕はふと思いました。でも、なぜ野犬にハグをするの? そもそも危なくない? タイって野犬がわんさかいる国だよね? 野犬に噛まれたら、狂犬病にかかる可能性だってあるよね?

…というわけで!

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実際にタイまで行って確かめることに!

 

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タイの街を歩いていると、いたるところで野犬の姿を見かけました。

 

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野犬はレジャースポットにも。

 

本当にそこら中を野犬が歩いています。だからあの動画が作られたのかな……。

よし!ここまで来たら「The First Hug」の発案者に直接聞いてみよう!!!

 

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今回お話を伺うのは、ファーストハグの発案者でもあるヨーチさん。タイ在住の彼はInstagramのフォロワーが8.7万人もいる、今風に言うと『インフルエンサー』です。

 

話を聞いた人:Sorasart Wisetsin(愛称:ヨーチさん)

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1990年生まれ。現在は、野犬だった5匹の犬を保護して共に暮らす。野犬問題をはじめ、捨て犬の里親探しなど、さまざまな犬にまつわる問題に精力的に取り組む。愛犬であるグルターとの生活をSNSで配信している、タイでは有名なインフルエンサー。ちなみに好きな日本料理はサーモン丼。Facebook:Gluta Story / Instagram:@glutadog

 

 

なぜ野犬にハグをするのか

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f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「本日はよろしくお願いします。『The First Hug』の動画見ました!仕事中にも関わらず、職場で泣いちゃいました」

 f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「動画を見てくれてありがとう! でも仕事中は仕事をした方がいいんじゃないかな(笑)」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「返す言葉がないです。さっそくですが、どうして野犬にハグをしようと思ったんですか?

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「もともと犬が好きだったんだよね。あとは、自分が飼っている犬たちが野犬だったってこともあるかな。それにハグって最高のボディランゲージなんだよ」

 

f:id:yutori_style:20171115144011j:plain

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「といいますと?」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「言葉が通じなくても、体を寄せ合ってお互いの体温を感じれば、幸せな気持ちになるでしょう?」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「わかる気がします」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「 野犬はハグされる機会がないから、僕とすることで少しでも幸せを感じてほしかったんだ。ここにいるグルターも野犬だったんだよ」

 

f:id:yutori_style:20171104180905j:plain

通訳の女性とじゃれるグルター

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「ええ! 野犬だったなんて信じられません。ペットショップにいる犬より毛並みがいいし、とてもいい匂い」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「グルターは、僕が学生のときに出会ったんだ。6年前、タイでは大洪水があってね。彼はその洪水から逃れて、僕の住む学生寮の近くにやってきた」

 

f:id:yutori_style:20171115153720j:plain

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「タイでは野犬なんて珍しくないから、最初は気にも留めなかった。でもあるとき、大学の管理局の人が、グルターを寮の敷地内から追い出そうとしたんだ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「たしかに。敷地内に野犬が住んでいるのは、人間にとって危険だし衛生的にも問題があるかも」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そうだね。当時のグルターは、いろんな病気にかかっていて見た目も清潔とは言えなかった。でも毎日姿を見ているうちに、僕はグルターを放っておけなくなっていたんだ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「気づかないうちに愛着が湧いていたんですね」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そうなんだよ。『このままじゃグルターが追い出されちゃう!誰も助けないなら、僕が引き取ろう!』ってね」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「すごくいい話だ」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「でも、引き取ってからが大変だったんだ。ひとまず病気を治してあげなきゃと思って、病院に連れていった。いろいろ検査をしたらグルターはガンも患ってたんだよ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「ガンですか……。治療費が高額になりそう」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「大学生だったから、全財産はたいてもお金が足りなくてさ。大学中をまわってカンパを募った。そしたら、みんなが思った以上に優しくてね。治療費が集まるのに、そう時間はかからなかった」

 

f:id:yutori_style:20171115155615j:plain

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「みんな優しすぎる。でも、相当な額になったんじゃ……」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そうだね。正確な数字は言えないけど、かなりのお金がかかった(笑)。でも、みんながお金をカンパしてくれたから、グルターは今も元気でいられる」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「お金が集まらなければ、グルターは今頃……」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そうなんだよね。だから僕は、みんなへの感謝も込めて、グルターの写真をSNSにあげるようにしたんだ。『みんなのおかげでグルターはこんなに元気だよー』ってね」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「寄付した皆さんも、グルターの元気な姿を見られて嬉しいですね」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そしたらグルターの話が本になった」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「本に」

 

f:id:yutori_style:20171117133211j:plain

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「中国語にも翻訳されたよ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「すげえ!」

 

f:id:yutori_style:20171104181612j:plain

交通事故に遭い片足を失ったガレン

 f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「あっちにいるガレンも、昔は野犬だったんだよ。保護したのはいいけど前足が片方しかなかったから、引き取り手が全然見つからなくてね。誰も引き取らないなら『じゃあ僕が飼おう!』って」

 

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f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そんなことを続けていたら、5匹も犬を飼うことになってた」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「犬に対する愛がハンパない。でも野犬に噛まれでもしたら、狂犬病にかかる可能性もありますよね。危険じゃないんですか?」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「危険かどうかで言えば、危険だと思うよ。噛まれたら本当に痛いし(笑)。でも狂犬病の心配はあまりしてないかな」

 

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f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「地域にもよるけど、タイでは野犬にも狂犬病の予防注射をしているケースもあるんだ。もちろん、予防注射をしていない犬もいるから、絶対に野犬にハグするような真似はしないでね

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「絶対に真似しません。過去に野犬に囲まれたことがトラウマになっているので、真似したくてもできません」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「僕は犬と仲良くなる方法を知っているから、『The First Hug』の撮影中に噛まれたことは一度もなかったよ」

 

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f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「大切なのは犬と同じ目線の高さにしゃがんで、やさしい声で呼びかけてあげること。『あなたのことが好きだよ』って気持ちで接してあげれば、ハグすることは難しいことじゃない」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「好意を伝えるんですね」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「彼らも怯えているだけだからね。僕たち人間だって、見ず知らずの人が急に近づいて来たり、自分の家(ナワバリ)に入って来たりしたら怖いでしょう?」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「たしかに、知らない人が近づいて来たら怖いですね。ましてや家に入って来たら泣きます」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「でしょ(笑)?  もともと犬は優しくて寂しがり屋な性格の子が多い。本当は僕たち人間と仲良くしたいし遊びたいと思ってるんだ」

 

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道端でこちらを警戒する野犬

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「でも野犬は人間に優しくされる経験が少ないし、虐待や暴力を受けた経験もきっとある。だから吠えたり噛み付いたり、攻撃的になるんだ。僕たちの想像以上に、野犬は辛い思いをいっぱいしてるんだよ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「いままで、『野犬=怖い生き物』と決めつけていました。彼らも野犬である前に、一匹の犬なんですよね……」

 

 

タイに野犬が多い理由

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f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「そもそもの話になってしまうのですが、なぜタイには野犬が多いのでしょうか?」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「それは多分、タイ人の動物に対する考え方が関係しているんじゃないかな。タイでは、犬を飼うことが本当に簡単なんだ。飼い始める時に書類を記入する必要もないから、軽い気持ちで犬を飼いはじめちゃう」

 

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道端で水を飲む野犬

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「近所で子犬が生まれたから引き取ったり、誰かからもらったりね。でも、いらなくなったら捨てちゃう人も多いんだ。あとは家の外でリードもつけずに放し飼いをして、犬がどこかへ行ってしまうなんてこともあるね」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「そういった野犬たちは、保健所によって殺処分されるのですか?」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「基本的にタイ人は、不用意に生き物を殺すことを避けるんだ。それは宗教的にも文化的にもね。だから野犬が増えてきても、あまり殺処分という選択肢は選ばない」

 

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f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「それどころか、飢えている犬に残飯を分けてあげたり、水をあげたりする人もいる。それ自体が悪いとは言いたくないんだけど。でも、だからといって避妊治療や病気の治療をしてあげるお金はないんだ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「難しい問題だ……」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「だから野犬は、野良でも生きていけたり、繁殖してしまったりする。タイの野犬が減りづらいという背景はそういった問題が絡んでいるのかも」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「『持たぬものには分け与える』という価値観をもつタイ人にとって、飢えている犬にご飯を分けてあげたい、という気持ちはごく当然なのかな。やっぱり難しい……」 

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「そうだね。本当に難しい問題なんだ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「今でもヨーチさんは野犬にハグを続けているんですか?」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「活動としては、今はもうやってないんだ。もともと、野犬が抱える問題について、みんなに考えてもらうキッカケになれば、と思って始めたことだったから」

 

f:id:yutori_style:20171115163452j:plain

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「でも里親を探したり、SNSで情報発信をしたり、野犬のためになるような活動は続けているよ。野犬の体を洗ってあげたり、家を作ってあげたりね」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「野犬に家を……!それも素敵な活動ですね」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「ありがとう! ところで、日本でも野犬を保護するような活動はたくさんあるの?」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「僕は東京に住んでいるのですが、野犬に出会ったことはないですね」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「たしかに東京で野犬に襲われるイメージはないかも」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「ただ日本では、野犬問題よりも犬の殺処分の数が多いことが問題になっているようです。東京都が2020年までに、『犬の殺処分ゼロ』を目標に掲げるくらいなので」

f:id:yutori_style:20171127231734p:plain「それはいいことだね! でも、なぜ日本では野犬がいないのに、犬の殺処分の数が多いの?

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「………あれ、なんでだろ」 

 

 

日本で問題となっている犬の殺処分

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軽い気持ちでタイに取材にいった僕は、ヨーチさんの言葉で自分が日本の犬の問題について何も知らないことに気がつきました。

帰国後に調べてみると、日本における犬の殺処分数は平成28年度で約1万頭。

 

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出典:環境省ホームページ(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

 

年々数は減ってはいるようだけど、まだこんなにいるんだ…。でも野犬は見かけないのに、なぜ犬が殺処分されているんだろう……。

そこで僕は、八王子にある『保護犬カフェ® 西八王子店』で、どうして日本で犬の殺処分がなくならないのか伺ってみることにしました。

 

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保護犬カフェとは、1ドリンクで保護犬や猫と触れ合うことのできるカフェ。里親探しも兼ねているため、審査に通れば気に入った子を引き取ることも可能

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「突然押しかけてすみません。犬かわいいですね」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「ありがとうございます。うちのカフェにいる犬たちは、色々な事情で保護された犬ばかりなんですよ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「東京で野犬を見かけることってないですよね? ここにいる犬たちは、一体どこから保護されるのでしょうか」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「そうですね。東京に限らず、日本では『狂犬病を防ぐ』という目的もあり、放浪している犬のほとんどを保護するようになりました。だから都会の方では、野犬を見かける数はかなり少なくなりましたね」

 

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f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「うちのカフェでは、主にブリーダーさんやペットショップ、引っ越しなどの事情で飼い続けることが困難になった人から保護することが多いです」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「タイとはまた違った問題を抱えていそう……」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「あとはご高齢になられた飼育者の親族から、依頼を受けて保護することもありますね。保健所から引き取ることも多いですよ」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「でも東京都が、犬の殺処分ゼロを目標に掲げてたくらいなので、犬の殺処分が多いことが問題になっているんですよね?」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「そうですね、保健所には『犬を引き取ってほしい』と持ち込む人が多かったようです」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「やっぱり引っ越し先でペットを飼えないから?」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「はい。あとは『噛み癖が直らない』『夜中に吠える』『自分に懐かないから』なんて理由もあったみたいですね」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「そんな理由で保健所に持ち込まれて、犬たちは殺されているんですね。全然知らなかった……。やっぱり、ペットブームの影響で安易に犬を飼う人が増えているのでしょうか?

 

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f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「その可能性はありますね。犬を飼うことの大変さを理解せずに飼ってしまう人は多いと思います。それは保健所に犬を持ち込む理由からもわかります。だって、犬は吠える生き物なんですよ。『吠えるな』と言うのは、人に『喋るな』と言っているようなものです」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「たしかに『吠えるな』というのは酷かもしれない。でも、東京都では犬の殺処分数は確実に減ってきていると聞きます」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「そうですね。今まで犬を殺処分していた保健所が、犬の引き取りを拒否できるようにもなったので」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「このまま殺処分ゼロを達成すれば、不幸な犬がいなくなるんですよね?」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「それがそうとも限りません。たしかに数字の上では、犬の殺処分ゼロは達成するかもしれない。でもその理由が『保健所が犬の引き取りを拒否できるようになったから』では意味がありません」

 

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f:id:yutori_style:20171127231730p:plain今まで殺処分されていた子たちが、保健所が引き取らなければ幸せになれると思いますか?  ただ庭に繋がれて飼育放棄される可能性だって、どこかに捨てられる可能性だってあります」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「殺処分ゼロだけで素直に喜べる状況ではないと」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「そうですね。もちろん、殺処分ゼロを達成するのは素晴らしいこと。ただ、それがゴールではないんです」

f:id:yutori_style:20171127231726p:plain「では、どうしたら不幸な犬はいなくなるのでしょうか…?」

f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「何をもって不幸というか難しいですが、私たち人間が、もっと命と向き合う覚悟をもって犬を飼う必要があると思います。ペットショップに行くと、可愛い子犬が売られていますよね。私も犬が大好きなので、連れて帰りたくなる気持ちもすごくわかるんです」

 

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f:id:yutori_style:20171127231730p:plain「でも、その気持ちをグッとこらえて、本当に飼えるのかどうか、ちゃんと判断をしてほしい。犬を飼うということは、10年以上の年月を共に過ごすことです。もし引っ越し先で犬を飼えないなら、最初から飼える住まいを探した方がいい。犬を飼うことは、新しく家族を迎えるということ。家族を捨てるという選択肢を持たないでほしいんです」

 

 

国は違えど犬を想う気持ちは万国共通

いかがでしたか?私自身も犬を飼っていたこともあり、今回の取材は考えさせられることばかりでした。

 

記事ではご紹介できませんでしたが、日本やタイで犬に関わる多くの方々にお話を聞かせていただきました。人間と犬の関係のあり方には、本当にさまざまな意見があります。

犬たちとどう向き合うことが正解なのか、僕には判断することができません。ただ、はっきりといえるのは、僕たち人間の都合で犬が虐待を受けたり、殺されたりしている事実があるということです。

 

この記事がみなさんにとって、なにかのキッカケになれば幸いです。

 

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取材協力:Sorasart Wisetsin、保護犬カフェ® 西八王子店

写真提供:Sorasart Wisetsin

通訳:Jantachaiyapoom Jindamai

 

 

書いた人:菊地誠

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自社メディア事業を手がける西新宿のデジタルマーケティング企業、株式会社キュービックのPR担当兼ライター。タイ人と2人で暮らしています。タイでドリアンの畑を作成中。動物とぬか漬けが好き。Facebook:菊地 誠 / Twitter:@yutorizuke / 所属:株式会社キュービック

「住居だと思ったら映画館だった」なぜか経営まで引き継いだ家族

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こんにちは、ライターのナカノです。

 

皆さん、映画館で映画を観てますか〜??

昨年は映画の興行収入が2000年代で最高額となる2,355億円を記録した、まさに映画の年。

社会現象を巻き起こした『君の名は。』や、SNSの口コミで人気が広がった『この世界の片隅に』などのヒット作も記憶に新しいのではないでしょうか。

※日本映画製作者連盟調べ


私は大学時代にバイトをしていたこともあり、映画館の雰囲気が大好きです。

普段から積極的に劇場に足を運んでいるのですが、先日、秋田県で面白い映画館と出会いました。

 

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それが秋田県大館市にある御成座(オナリ座)です。

 

御成座は1952年に洋画専門の映画館としてオープン。約50年にわたり地元の皆さんに愛されてきましたが、2005年に惜しまれつつも閉館することになりました。

 

しかし、2014年に御成座は再び開館。2016年には歌手の柴崎コウさんによるライブが行われるなど、映画の上映以外にも活躍の場を広げています。

 

地元で愛されていた映画館は、なぜ9年の時を経て営業を再開することになったのでしょうか?

 

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復活の裏側について、御成座を運営する株式会社日本コンプリート 代表取締役・切替桂(きりかえ・かつら)さんに話を伺いました!

 

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「こんにちは、この映画館って…」

 

ガチャッ

 

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f:id:tmmt1989:20171127202033p:plain「ただいま〜」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「おかえりー、はい宿題宿題!」

f:id:tmmt1989:20171127202033p:plain「あとで〜!! 遊びに行ってくる〜!!」

 

f:id:hitomonji:20171020180614j:plain

えっ、えっ?

 

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映画館なのに「ただいま」???

 

f:id:hitomonji:20171020183021j:plain
f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ここね、家なんですよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「どういうこと?!?!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「どうぞ、まずは館内をご覧になってください!」

 

…というわけで、館内を見学することになりました。

 

 

館内を見学してみた

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はい、スクリーン!

 

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ステージからの景色はこちら。全部で200席ある劇場の雰囲気は、アーティストのPVで使われていそう!

 

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なぜか1席だけあるリクライニングシート…ではなくマッサージチェア。背中がごつごつするぞ……!

 

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ん? ジャッキー?

 

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DJブース?!

 

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カラオケ機器?!

 

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?????

 

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『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿とさせる映写室…!

 

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かつて使用していた映写機!かっこいい!

 

御成座の中には気になるものがたくさん。切替さんに詳しく聞いてみましょう。

 

 

あくまで映画館の付いた自宅

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「劇場内、とても素敵だったんですけど、ところどころ映画館とは思えないものが…」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「家ですからね」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「(家にカラオケ? DJブース?)どういうことですか!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ここは元々、住居として借りた物件なんですよ。もちろん映画館として機能していて、お客さんも入っていますけどね」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「余計ややこしくなってます」

 

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御成座の建物は2階建て。1階にスクリーンと売店、2階には映写室と仮眠室、倉庫があります。切替家の居住スペースは2階部分

仮眠室……映写技師のための部屋。御成座が開館した当時の映写機は、使用に火を伴うものでした。フィルムはセルロイド製で燃えやすい材質だったため、火の元の管理を徹底するため仮眠室が存在しているのだそう。

 

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f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「事の発端は、電気通信工事を専門とする千葉県の会社なんです。私が代表を務めてまして、旦那も社員です」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「え、いきなり映画と関係ない職種と地域がでてきた」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「日本全国で通信工事を行っていて、その度に従業員を派遣していたんですね。そうしたら2011年の東日本大震災の影響で、東北での仕事が増えて。出張の度にホテルを探したり宿泊費を出したりというコストを考えたら、いっそ東北に物件を借りてしまおうということになりました」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「なるほど、それでちょうどここが空いていたんですね」

 

f:id:hitomonji:20171020183816j:plain

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「実は、旦那が知らず知らずのうちに借りてきたんですよ!」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「ええっ! じゃあ切替さんは映画館とは知らずに…?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「事後報告だったんです(笑)。『いい物件借りた』って喜ぶ主人の話をよくよく聞いてみたら映画館!」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「それはびっくり。でも、普通の住宅を借りた方が絶対安いですよね」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ここは駅から3分の距離なんだけど、他の物件に比べて圧倒的に安かったんですよ」

 

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ご主人は当時の御成座にかかっていた「貸します」の看板を見て、思わず連絡してしまったそう

 

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ただ物件を借りてからが大変で」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「建物の中の掃除ですか?」

 

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f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「そうそう! 閉館してから約9年間、館内の荷物も当時のままだったから…。現状引き渡しの条件だったから、安く借りられたんですよね」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「ひええ、片付けるのが大変そう……!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「だから、ここを借りるきっかけになった電気工事の仕事が終わった後に、家族と従業員で半年かけて整えていったんです」

 

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f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「前に営業していたのは、喫煙所なんてない時代。壁という壁はタバコのヤニでべっとりだったから、全部自分たちで塗り替えたの」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「だから壁が黒色だったんですね」

 

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「では、床のじゅうたんも?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「そう、家っぽくしたくてタイルからじゅうたん貼りにしました」

 

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「(家にこだわるなぁ……)それだけ改修したらお金もかかりそうですよね」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ざっと計算しても500万円以上はかかっているかな…」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「結構いきましたね」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「費用のほとんどはスプリンクラーや非常ベル、消化器などの消防関係。商業施設としての利用に必要な設備を揃えなきゃいけなくて、そのお金がかかりましたね」

 

 

営業再開後はお客さんの助けを借りながら

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「住居として借りるだけだったら、別に映画館を開館する必要はなかったのでは?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「もちろんです! はじめは開館するつもりは全くなく、ホームシアターとして楽しもうと考えてたんです。でも、引っ越してきて中の片付けをしていると地元の人に『再開するの?』と話しかけられたり、街で噂になっていたり……」 

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「口コミがどんどん広がって!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「そう。大館で映画館はここひとつしかなかったから、やっぱり開けようってことになったんです」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「確かに地元に唯一の映画館だったら再開を望む声は多そう! 実際、ホームシアターとしては使っていないんですか?」

 

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f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「もちろん使っていますよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「使ってるんだ」

 

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ずらずらっと並んだ旦那さんのビデオコレクション。金曜ロードショーや音楽番組もスクリーンでみることがあるそう。大画面での映画鑑賞、まさにホームシアター!

 

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「映画館の経営一本だったら厳しいけど、うちには本業である電気通信工事があるから。だから御成座を事業部のひとつに加えて、主人をここの館長にしたんです」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「なるほど」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「映画館を経営することになったから、私と子どもも千葉から秋田に引っ越すことにしたんです。ただ、秋田に引っ越してから主人の出張が増えちゃって。秋田に来て3年目になる今年の1月までは、主人が一緒に暮らした期間は1ヶ月にも満たなくて」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「館長不在の時期が長かったんですね……!」

 

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切替家の大切なペットであり、看板うさぎの「てっぴー」。引っ越し前、長男が当時通っていた小学校で生まれたうさぎです

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「実際に営業を再開して、お客さんの反応はどうだったんですか?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「小さい街とはいえ映画好きはいますから、喜んでもらっていますね。市内の映画館はここだけだから、大館の人が来てくれるのはもちろん、関東圏から来てくださる人もいて」

 

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再開当初は週末のみの営業でしたが、現在は水曜日を除き毎日営業。約1ヶ月ごとに2本ずつの作品を上映するサイクル

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「といっても、大盛況というわけでは全然ないんです」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「そうなんですか……」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「オープン当時は、人口7万人強の大館市民が、1年に1回ずつ足を運んでくれれば経営を維持できる計算をしていました。だけど蓋を開けてみたら、来場者数は3年で1万人いくかいかないかくらい」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「想像以上に少ない……」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「だからうちは、お客さんの協力あって継続できている部分が大きいと思いますよ。例えば『御成座に1円でも多くお金を落とすために、回数券(※)を買ってたらダメだ!』と言って、毎回通常の料金を払ってくれる常連さんがいたり」

※通常の鑑賞が1300円のところ5回で5000円になる御成座オリジナル回数券

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「真のファンですね……!」

 

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窓口には「御成座募金箱」が。寄付された募金は維持費に使われています

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「冬に暖房を使わなくてもいいようにって沢山着込んで見に来てくれる人もいましたね。夏と冬は冷房代・暖房代がバカにならないから……」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「ちなみにおいくらくらいですか?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「夏と冬は1ヶ月で10万円くらいかな……?」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「家って考えるとめちゃくちゃ高い」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「そう、家ですから(笑)」

 

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二階が居住スペースのため、部屋で練習していたリコーダーの音色が上映中にスクリーン内で聞こえることもあったそう。自宅前提であることをお客さんも理解してくださっているからこそ、クレームには繋がらなかったのだとか

 

 

手描き看板は、いつしか名物に

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「この看板も味があって素敵ですよね…昔ながらというか」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「これは常連のお客さんが描いてくれたものなんですよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「え、業者に頼んでいるんじゃないんですか?」
f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「まさか!そんなに余裕がないですから。1年目の冬に『映画と言ったらやっぱり看板だよね!』と言って、家族だけじゃなくお客さんも総出で看板を作ったことがあったんです。でも、それがあまりにも下手すぎて(笑)」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「プロじゃないですから仕方ないです!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「うちのお客さんで元々デザイナ―をされてた仲谷さんという方が、その様子を見るに見かねて描かせてほしいと申し出てくれたんです」

 

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「映画好きの極みですね」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「それからずっと仲谷さんに頼んでボランティアで描いてもらっているんですよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「ボランティア!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「最初は前の絵に上書きしてたんですけど、『幸せの黄色いハンカチ』の看板を描いた時に、あまりに力作だったみたいで消したくないと言われて。それから1作品ずつ残していくようになったんです」

 

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御成座の歴代絵看板を並べるミュージアム企画も考えているらしい。楽しそう!

 

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「他の劇場でも、仲谷さんの描いた看板を飾ってもらったんですよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「えっ!どういうことですか?」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「仲谷さんが埼玉の川越まで映画を観に行くタイミングで、『この世界の片隅に』の看板を川越の劇場まで持っていったんです。主人と社員の出張のついでに運んでね。やっぱり、せっかく描いていただいた看板なので」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「御成座発で各地の劇場に飾られる仲谷さんの作品……!」

 

 

地元でもっと活用される映画館に

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f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「今日はお話を聞かせていただきありがとうございます! 最後になりますが、今後、御成座が力を入れたいことを教えてください」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「映画を見に来て欲しいのはもちろんだけど、この場所の貸出にも力を入れたいですね」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「映画館のレンタル! 貸し切りで映画を見られたら最高だけど、お高いのでは……」

 

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f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain1人1300円ですよ」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「安っ!」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「機材の利用費を含めても、1人あたり2100円から使えます!」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「えええ、学生でも払える値段……」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「やっぱり、若い人に使ってほしいから。この間は若いカップルが利用してくれましたよ。大館市出身の彼女の誕生日会を、彼氏が御成座で企画したんです」

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「なにそれ最高……」

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「コスプレ大会もいいかもね。とにかくみんな沢山使ってちょうだいっていう気持ちです!

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「もしかしたら秋田までの交通費を含めても、都内の映画館を借りるよりお得かもしれないですね……」

 

 

おわりに

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半世紀以上、大館市唯一の映画館として人々に娯楽を提供してきた御成座。


9年のブランクを経て復活した御成座を支えたのは、物件に魅せられた一家のエネルギッシュさと地元の人のサポートの積み重ねなのだと、切替さんの話から実感しました

 

ちなみに取材後、日本音楽著作権協会(JASRAC)の映画音楽の使用料値上げ検討がニュースで話題になりました。これって単館の劇場にはかなりの痛手となるのでは……?

 

そこで後日、電話で切替さんにお話を伺ってみました。

 

f:id:tmmt1989:20171127201322p:plain「映画音楽の使用料が値上げしたら、結構な打撃ですよね……?」

 

f:id:tmmt1989:20171127202107p:plain「ちょうどお客さんからその話を聞いて、家族で話をしたんです。値上げは未確定事項なので、御成座としてはまだ現実問題として受け止められていないというのが現状。もちろん、もし値上げすることになったら間違いなく大打撃ですよね。ただ、今はこれから年末年始にかけてのプログラム編成でもめていてそっちが大変……」

 

切替さんの言うとおり、映画音楽使用料の値上げについては未確定事項。

とはいえ、少しでも劇場運営の懸念事項は減って欲しいところです……。

 

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ちなみに館内の見学は無料。受付に声をかけていただくと、劇場内を案内してもらえますよ(上映時間を避けるのがベターです!)。

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■御成座ウェブページ

 

■最新情報はtwitterから!

 

 

 

書いた人:ナカノ ヒトミ

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1990年長野県佐久市生まれ。
長野↔東京で二拠点生活の実験中。
twitter: @jimonakano / 個人ブログ: ナガノのナカノ

 

写真:横尾涼

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写真のコツとフォトスポットの情報を提供するメディア、Photoliの代表。 写真と旅が大好きな平成4年生まれの25歳、フォトグラファー。
twitter : @ryopg8 / 運営webメディア : Photoli

時給1200円で『踊るだけ』のバイト募集してたから、やってみた私

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はいみなさん! 分身しながらこんにちは!

株式会社人間の社領エミです!

 

わたしは現在、とあるアルバイトの真っ最中。

というのも一ヶ月前、おかしなアルバイト募集のチラシを偶然手に入れてしまいまして……

 

それがこちら!

 

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何これ!?

 

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ダイコクドラッグ2Fのベランダから、サークルやイベントの宣伝活動をするだけ……

 

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1200円の時給がもらえる……!?

 

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人通りの多いこの道頓堀で、目立つだけでお金がもらえるってこと~~~!?

 

どうして目立つだけでお金がもらえるの? 一体何の意味があるの……!?

というわけで今回は、アルバイトの募集主である「ダイコクドラッグ」に直撃してきました!

 

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謎深いアルバイトに関するインタビューに加え、記事の最後では「私が実際に道頓堀でアルバイトをしてみた様子」もレポートしております。

 

みなさん、ぜひ最後までお付き合いくださ~い!

 

 

ダイコクドラッグ定番の「あの曲」を歌うアイドルがお出迎え!

さて、おかしなアルバイトの謎を解くべく、ダイコクドラッグへやって参りました! 

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出迎えてくれたのは、ダイコクドラッグのアイドル「DDプリンセス」のメンバーのお二人。

 

DDプリンセスって何ぞや?」とお思いのみなさん、とにかくこの曲を聴いてみてください。

ダイコクドラッグに行かれる方なら聞き覚えがあるはずです。彼女たちの超絶癖になるオリジナルソング、「サプリナ」を……

 

▲私の知るダイコクドラッグでは、とにかくこの曲がずっと流れています…!

 

ね!? 聞いたことありますよね~!?カラオケでこれ歌ったらめっちゃ盛り上がりますよね!?

 

DDプリンセスは、こういったオリジナルソングをリリースしたり、ライブをしたり、ダイコクドラッグで扱う商品をPRしたり……ダイコクドラッグのさまざまな広報を担当するグループなのです。

 

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「今日はいろいろ教えてください! よろしくお願いします!」

 f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「よろしくお願いします!」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「よろしくお願いしま~す!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain……なんかめっちゃ肌ツヤいいですね。失礼ですがおいくつですか……?」

 

f:id:emicha4649:20171113223103j:plain

18歳です……!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「ピチピチギャルや~~~っ!!!」

 

 

どうして目立つだけで1200円がもらえるのか

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「アルバイト募集のチラシを見てやって来たんですが、道頓堀でパフォーマンスするだけで1200円もらえるって本当ですか?」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plainはい、本当です。グループの方でも、ひとりにつき時給1200円ずつお支払いします」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「な、なんで~!? 誰でもいいんですか!?」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「ちゃんと審査はしますが、不快感を与えないパフォーマンスをされる方ならおおむね大歓迎ですよ!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「目立つだけでお金がもらえるのか……!」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「そこが重要なんです。私たち、目立ちたいんですよ

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「道頓堀のあたりって、ドラッグストアが物凄く沢山あるのはご存知ですか? 実は現在、心斎橋筋付近だけでも20店舗以上あって」

 

▲めちゃめちゃある!

 

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「えー! 最近増えてきたな~とは思ってたんですが、これほどまでとは!」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「インバウンド需要のため極端に増えてるんです。道頓堀店となると、現在はお客さまのうち9割程が外国人観光客の方ですよ」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「そんなに!?」

 

f:id:emicha4649:20171113223107j:plain

▲道頓堀店の店内は、観光客向けの中国語の看板だらけ。もはやここは中国か!?

 

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「ただ、ドラッグストアってどこも同じように見えるし、うちに入店して頂くのがなかなか大変で……

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「そこで、目立つことで入店のきっかけとなるよう、先月(201710月)から募集を始めたのがこのバイトなんです」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「ほんとに目立つだけでいいのか……。そういえば、ダイコクドラッグって看板振りもやってますよね」

 

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 店舗が多い関西ではおなじみ、たびたびSNSでも話題になる「ダイコクドラッグの看板振り」。

全国のダイコクドラッグで行っている呼び込みなのですが、みなさんご存知ですか? いや~おかしな呼び込みだ……

 

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「これは商品の看板を振ってるから、入店のきっかけになると思うんですよ。

でも、このパフォーマンスのバイトは『ダイコクのプロモーション一切なし』でいいんですよね!? 入店のきっかけにまでなります……?」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「いやもう、ダイコクがお客様の目に入るだけでもいいんです!」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「それにパフォーマンスは、うちの看板が絶対映り込むSNS映えスポットでやってもらうので……!」

 

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確かに

 

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「もしここを撮影した動画が超拡散されたりしちゃったら、時給1200円なんて安いもんですよ!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「でもこんな一等地だし、お金を出してでもパフォーマンスしたい人っていっぱいいると思いますけど……

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「うーん……。もともとうちのアルバイトって、バンドマンとかコック見習いとか、頑張ってる人が割と多いんですよ。だからか、『夢を持つ人を応援したい!』という社風が根付いてて。そういう人とはおたがいWIN-WINな関係でありたいってことから、時給制にさせて頂きました」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「パフォーマンスをしてくれるバイトさんのおかげでうちが目立てて、バイトさんはそのお給料で夢に向かって頑張ることができる! 最終的にスターになってくれたら、将来一緒に何かできるかもしれないですしね!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「なるほどなぁ。じゃあ、こんなドラッグストアらしからぬアルバイトを募集しても、会社のトップはなんとも思ってないんでしょうか?」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「むしろ大歓迎って感じです! というかこのバイトも、今までの中で特に変な活動ってわけでもないですけど……

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「ほ、ほかにも変なのがあるの?」

 

 

お客さんが求めるならなんでもやっちゃうダイコクドラッグ

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「ダイコクドラッグは、アイドルのいる居酒屋もみほぐしカットスペース不動産事業に、京都の南禅寺で料亭なども手掛けています」

 

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f:id:emicha4649:20171114200127p:plain待って? 節操なくない?ドラッグストアですよね?」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「お客さんに喜んでもらえるかなと思って……

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「『疲労回復の商品を手に取るお客さんが多いな、疲れてるのかな~』→『リラクゼーション作っちゃお!』みたいな発想というか」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「いやいやいやいや! だからって店まで作る!?」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「基本的にダイコク自体がとにかくお客さんが必要なことにはどんどん手を出すというスタイルなので」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「しかし、料亭ってドラッグストアのお客さんに関係なくないですか?」

 

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▲京都・南禅寺の境内にあるダイコクドラッグの料亭「大安苑」

  

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain薬要素ゼロですよね?

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain『景色が良い場所だからお客様にお見せしたーい!』って上が作っちゃったみたいなんですよね」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「無邪気~!!」

f:id:emicha4649:20171114200124p:plain「でも、アイドルだってドラッグストアと全く関係ないですよ(笑) 『お客さんを楽しませたい!』という思いでDDプリンセスができたからこそ、今私たちは歌って踊ることができているので」

f:id:emicha4649:20171114200120p:plain「そうですね、面白い社風だと思うし、ありがたいです!」

f:id:emicha4649:20171114200127p:plain「自由だなぁ……!」

 

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そこからもう少し詳しくお話を伺ってみたところ、彼女たち自身も普段はアイドルだけでなく、居酒屋やもみほぐしの店員さんとしても働いたりと、相当自由に手広く働いている様子でした。

事業が増えるごとにやることが増えるらしく、「大変じゃないですか?」と聞いてみたのですが、新しいことが増えることがむしろ楽しいそうで……

 

自由な会社に自由な人が集まっているからこそ、ドラッグストアとして他に類を見ないPRをし続けられているのかもしれません。

 

f:id:emicha4649:20171113222434j:plainちなみに、二人がアイドルになった理由を聞いてみたところ、「普通の店頭バイトに応募したら、ちょうどアイドルも募集していたので……」ということでした。自由が過ぎるでしょ!

 

 

道頓堀のど真ん中で素人がパフォーマンスするとどうなるの?

今回の取材をまとめますと、ダイコクのベランダでパフォーマンスをするには

 

・人に不快感を与えない

・目立つ

・夢に向かって頑張る

3点をクリアしてさえいれば、概ねどんな人もパフォーマンス大歓迎!

 

とのことでしたので……

 

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ジャーン! 私もパフォーマンスしてみることにしました~~!!

 

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イエ~~~~イ!!!!!

 

パフォーマンスするにも、たった一人じゃどうにも寂しい……。ということで友達数人に「道頓堀で踊らない?」と誘いをかけてみたところ全員から拒否されたので、左右に人形を作ってみました。

 

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▲私が手を上げたら左右の人形の手も上がる、「分身人形」仕様です!

 

さて、人通りの多い道頓堀ですが、ド素人の私が踊るだけで注目を浴びることはできるのでしょうか?

今日はこの人形たちとともに、きっかり1時間パフォーマンスをしてみたいと思います!

 

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ちなみに、パフォーマンスを始める前の人がまばらな道頓堀。すでに何人かはこちらを見てくれていますが……

 

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その顔。そんな怪訝な顔でこっちを見ないでくれよ!

 

それでは視線にも負けず、踊ってみたいと思います!

 

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はいはいはいはい……

 

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はいはいはいはい~~!!

 

という感じで、ダイコクドラッグの音楽に乗せて素人ながら一生懸命踊ってみました。

特に複雑な動きもしておりませんが、踊ること10分。みなさんの反応はどうなのかというと……

 

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おお……

 

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おおお……!!

 

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めちゃめちゃ人が集まる~!!

 

始めて10分でこんなことになるか~!? と信じられないくらい、一瞬で多くの人に見ていただくことができました。しかもめちゃめちゃ動画を撮られる! 立ち止まる人の7割くらいには撮られている!

人通りが多いとはいえ、素人がパフォーマンスをするだけでこんなことになるなんて……

 

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楽しいぞ~!!!

ここまで人に注目されるのって人生初じゃない!?というくらい、注目されております!

 

そのあとも人は集まり続け、

 

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撮られるわ、

 

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撮られるわ、

 

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とにかくめちゃめちゃ撮られるわ……

 

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中には一緒に踊ってくれる人も!ノリがいいなぁ、優しいなぁ~。

 

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そんな感じで、終始注目されまくりながらあっという間に1時間が過ぎ、パフォーマンスは終了となりました。

超ド素人な私でも、道頓堀にプチ・ムーブメントを起こすことができたのでした!めちゃめちゃ楽しかった~!

 

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しかもそのあと本当の本当に1200円をもらうことができました。いいの~!?

 

 

めちゃめちゃコスパが良いバイトだった!

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はてさて、皆さんいかがでしたでしょうか!

パフォーマンスをするだけで1200円もらえたのも驚きでしたが、ドラッグストアらしからぬ数々の型にはまらない施策も興味深かったですね。

 

今回のアルバイトですが、人通りも多い立地で目立ちやすく、誰からも見えやすい場所でパフォーマンスができるので、普段路上でお仕事をされる大道芸人さんなんかにとってはめちゃめちゃコスパが良いバイトだと思います。しかも時給をもらえながらできるなんて!

 

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このSNS時代、こんなに撮影しやすい場所でパフォーマンスをするのは、ともすると『有名人への近道』なのかも……。と半ば本気で思えた経験でした。

 

ちなみにこのアルバイト、募集を始めたのは201710月からで、すでに面接を受けたグループが何組かいらっしゃるとか。

ここからどんなスターが羽ばたいていくのか、今後がとても楽しみです……!

 

 

ただ……

 

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この人形、めちゃめちゃ重くてですね……

 

しばらく踊った頃には、腕はぼろぼろ、肩はパンパンで死ぬかと思いました。それでも1時間はパフォーマンスを続けなくてはならないので、皆さんはくれぐれも無理しすぎない格好で来てくださいね!

 

それでは! 社領エミでした。

 

書いた人:社領エミ

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1990年生まれ、兵庫県生まれ。株式会社人間の書けるムードメーカー。Webを中心におもしろい記事を書こうと日々奮闘しているライター。女性が脱ぐとなぜ面白くならないのかいつも悩んでいる。
株式会社人間:http://2ngen.jp/ / Twitter:emicha4649 

 

写真:もろこし

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ホームレス経験を経て、フリーランスフォトグラファーとして活動中。
持ち前の感性と体力、精神力を武器に、人物撮影から風景撮影まで幅広くこなしている。
可愛い女の子、仕事、風景写真のためならどこへでも行く傾向アリ。
http://morocoshi.com / Facebook:shibano.koji 

 

世の中の孤独な人にお届け − 孤独、街へ出る「初めての釣り堀」

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フリーランスの漫画家・イラストレーターとして活動するマキゾウの新連載がスタート! ひとり自宅にこもる日々で膨らみ続けた「孤独」を解消するため、街へ出たマキゾウの運命やいかに…?

 

 

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※マキゾウがフリーランスの孤独すぎる日常を描いた記事はこちら!

 

 

漫画:マキゾウ

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鼻ミゾにちょっとしたこだわりをもって、イラストやマンガを描いています。絵を描く以外はたいていご飯とお金のことを考えています。早起きと脂身と臭い肉が苦手です。Twitter:@makizou_11

 

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (21) - とまどい仲居/TAKAHASHI

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<ポテン生活|一覧>

  

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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