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浅草のマルベル堂でプロマイドを撮ってもらったんですけど

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どうですか?こんにちは、まきのです。

 

 

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浅草の仲見世商店街からちょこっと横の通りに入ったところにあるプロマイド専門店「マルベル堂」でこういう写真を撮ってもらえるんです。 

 

 

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店内には所狭しと往年のスターのプロマイド写真が並んでいて、大正10年開業から96年の歴史を感じさせます。

 

 

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映画俳優からプロレスラー、男性アイドルに女性アイドルなど、昭和を彩った人々が、あの時と変わらぬ姿で微笑んでいます。とにかくものすごい数!

 

 

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せっかくなので、そんなプロマイド写真の老舗「マルベル堂」店長の武田さんに、プロマイドにまつわるエトセトラを聞いてみました。

 

 

 

伝統あるプロマイドの世界とは 

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain今日はお時間いただきましてありがとうございます!

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainはい!全然問題ありませんよ

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plainいきなりなんですけど、『ロマイド』じゃなくて、『ロマイド』なんですね。ずっと『』だと思ってました

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainこれはどっちも間違いではなくて、『ロマイド』は"印画紙"のことで、『ロマイド』は"販売目的で撮影したスターの写真"のことで、造語なんですよね。マルベル堂では創業当初から『ロマイド』と呼んでます

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「なるほど。そんなマルベル堂さん、96年の歴史があるだけに店内の写真はものすごい数ですね。どれだけあるんですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「およそ8万5000版はありますね」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「すご…ざっくり計算すると、1日2.4枚、1年885枚のペースでスターのプロマイドを撮り続けて96年…歴史の重みを感じる!」

 

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地下には男女別・50音順にきれいに並んでおりました

 

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain戦前は他にもプロマイドのお店があったんですけど、皆さん廃業しちゃって、うちだけになってしまいましたね

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「あら。どのようにして続けられたんですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain写真撮影の他に、うちは美容院やレストランも経営していたんです。それらが一つの建物に入ってるから、スターがうちで撮影する前の待ち時間にレストランでコーヒーを飲み、美容院で整えて、いざ撮影…という一連の仕組みができていたんです」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「へ〜!確かにワンパッケージになっていたら撮られる側もやりやすくなってリピートしちゃいそうですね。撮影については、スター以外にも一般の人も撮っていたんですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainいえ、七五三や成人式、お見合い写真のようなものは撮影してましたが、プロマイド的な写真はスター専門でしたね。一般の方をプロマイド撮影するサービスを始めたのは、実は3年くらい前からなんです

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「え、けっこう最近ですね!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain色んなお客さんから『私もプロマイドを撮りたい』という声はいただいていたので、亡くなった私の師匠と話してそういう企画を立ち上げようじゃないかと決めたんです

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「そうだったんですね。twitterで回ってきたのを見たんですが、地方で出張撮影サービスとかもやられてるんですよね。ぼくはそれでこちらの存在を知って、『撮ってもらいて〜』って思いました」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「ありがとうございます。せっかくなんで撮っていきましょうか

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「え!いきなりいいんですか」

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「じゃあジャケットを片手で背中にかけて、椅子に片足のせてください

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「こうですか?」

 

 

 

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 f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainで、右手でメガネを触って、視線を斜めに…そう!!それ!!そのまま!!!!!すごい!!良い!!これで撮ると…(カシャ)ほら!!!!!すごい!見てください!!

 

 

 

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152650p:plainはっはっは!!!プロマイドになってる〜〜〜〜!!

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「最高ですねえ!すごく表情が良いから一枚しか撮ってないですよ!!」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「めちゃめちゃ面白いですね…全国で出張サービスするべきですよ!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「そういうお声がけもいただいておりまして、3月には札幌の百貨店でやらせてもらいましたね。あとは岐阜県や原宿とかでもやりました。意外かもしれませんが、10代〜20代の女性が結構昭和に興味を持っているみたいですね

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「スターと同じようなプロマイド写真が撮れるのはすごくいい経験だと思います!撮影する時に気をつけてることってありますか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain私が6代目のカメラマンをさせていただいているんですけど、代々伝わる『構図』があるわけですよ

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「決まった角度とか視線とかですね?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「そうです。さっきみたいにジャケットをかけて片足あげる『波止場のポーズ』とかは定番なんですけど、そういったルールに基づいて撮っていますね。そうするとね…単純に古くなるんですよ!

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「プロマイドの再現という意味では抜群ですね!お客さんの撮られたい願望は応えてるから最高だと思います!」

 

 

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撮影スタジオにはいい意味で時代を感じる衣装やアイテムが多数!

 

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「私はもう毎日スターのプロマイドを見て来ましたから、こうするとあの人だな、このポーズはあの人だ、みたいに思い浮かぶんですよ」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「代々受け継いできた構図と、店長さんの深い知識とノウハウがなせる技なんですね…」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「プロマイドで言えることは、『ファンのためにあるものだ』っていうことですね。これは師匠から教わった大切なことで」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「ファンのため」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「当時はスマホみたいなものは無くて画像も簡単に検索できないので、スターとファンをつなぐものとして、手帳に挟んで持ち歩いていたんですよね。そういう経験ありません?」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「あ〜〜〜〜〜〜〜。プロマイドじゃないですけど、ぼく中学の生徒手帳に内田有紀の切り抜きを入れてましたね…」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainそうそうそういうこと!プロマイドは『ファンとスターを身近にするもの』なんですよね。さらに言うと、手帳を開いた時にスターと目が合うようにカメラ目線を極力もらうようにしてます。そして顔をハッキリ写さないとダメなんですよね」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「なるほど。持ち歩いて、何気ない瞬間に見て、スターと目が合う…と。あとプロマイドを持ってることでコミュニケーションにもなり得ますね。『お、お前明菜好きなん…?』みたいに」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainそんな感じですね。あと師匠から教わったのが、『ファンは指先まで見たがるから、指を入れてポーズを撮るとファンは喜ぶ』っていうのもありましたね」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「あ〜なんかそういうポーズも見たことありますね」

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain具体的に言うと、右手を顔にそえて、左手で右手首を包み込むように…そうそう!!それです!!!!いきますよ〜〜〜!!!(カシャ)

 

 

 

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「面白すぎる〜!!!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「出来上がりを見たら正直誰でも撮れそうなんですけどね。でもスターに『このレンズの奥にはファンがいますから!』『ファンのために!』って話しかけながら撮るので、過程が他とはまた違うわけです

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「武田さんの思い入れが一枚一枚にこもってますね」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「そういう『誰にでも撮れることを96年ひたすら続けて、誰にでも撮れるところに薀蓄がある』ってのがマルベル堂のプロマイドなんですよね」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「ひたすら続けていくことで一つのブランディングになりますね…」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「ノッてきたからどんどん撮りますね!お〜い!ジャンパーとクリームソーダ持ってきて!!

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainほっぺに付けて『つめた〜い!』これでいきましょう!!

 

 

 

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152650p:plainすげ〜写真!

 

 

 

 

 

プロマイド全盛期を振り返る

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plainプロマイドの全盛期はどんな感じだったんですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「第一ブームは日活・東映・松竹・東宝が成長してきた昭和初期の映画時代ですね。当時はカメラマンが日活や太秦の撮影所に毎日足を運んで撮りに行ってたみたいですよ。あと浅草は映画館がたくさんあって、見終わったあとにみんなマルベル堂によってプロマイドを買いに行くのがお決まりだったと聞いてます」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「その見た映画の主演の人のプロマイドですね」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「その通りです。その後は…やっぱり70〜80年代のアイドル時代ですね。ピンク・レディーのプロマイドの発売日には行列ができたと師匠から聞いてます。他にも子どもが『ピンク・レディーの新しいプロマイドが出るんだ!』って言いながら走っていったとか」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「わ〜、プロマイドの新作という概念が無かったのでその話すごく新鮮ですね。定期的に新しいのを撮って更新していったんですね」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「ピンク・レディーに関してはテレビ局まで押しかけて、番組と番組の間の2分間にババっと撮ったりしてたみたいです。そのおかげで、背景が非常階段になってるものもありました

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「ほげ〜当時の忙しさ、えげつなさそうですね…。他にもスターに会いに行ったりもしてたんですよね?」 

 f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「してましたね。菅原文太さんは自宅で撮りましたよ

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「自宅で!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「師匠の体験談ですけどね。撮影しようと自宅まで行くのもすごいんですけど、快く迎えてもらった上に、本人お酒飲んでて。で、そのまま撮影したついでにアジの開きもごちそうになったらしいです。今じゃ考えられないですよね」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plainほんとにそうですね。なかなか豪快な人だな〜」

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「あとは…新沼謙治さん。ご存知ですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「名前ぐらいしか存じ上げないんですけど、昔のジャンプ漫画で『新沼謙治は』『鳩が好き』っていう合言葉があって、それはすごい記憶に残ってます」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「ほんとに、まさにそうなんです。すごい表情が固い人で笑顔がなかなか撮れなかったんですけど、浅草寺に行って鳩を見たら今までに見たこと無い笑顔になって…その瞬間を撮りました」

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「ほんとだ、鳩と一緒に写ってる」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「プロマイドが当時大人気だった岡崎友紀さんも、何回かの撮影の時に愛犬を連れてきて、一緒に撮影するというのもありました。プロマイドは基本的にキメてる写真が多いんですが、その中でもスターの優しさや、素の面がとらえられたりするのはこの仕事しててとても楽しいですね

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「それをファンに伝えられる架け橋になってるプロマイドは素晴らしい文化ですね〜!ちなみに、歴代で一番売れたプロマイドって誰のなんですか?」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「それはもう言わずもがな、美空ひばりさんですね」

 f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「おお、やはり…!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「これはもう誰もが納得ですね。プロマイドの種類も、一人だけずば抜けてるんです。他の人は多くて900種類なんですが、ひばりさんだけは1460種類もあるんです」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「めちゃめちゃ多いですね!」

f:id:chicchi0411:20170911152712p:plain「マルベル堂にとっても、日本にとっても大スターであることは今でも変わりありませんね。大スターなのに、子役時代から見ているからファンの方は『ひばりちゃん(のプロマイド)ある?』ってな具合で聞いてきてくれて、すごく親しみやすさもありますし」

f:id:chicchi0411:20170911152650p:plain「う〜んすごい。ぼくもひばりちゃんみたいに愛されたいものですね…

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainならばどんどん撮っていきましょう!!ラジカセの上に腕と顔をのせて、上目遣いで!!そ〜〜〜〜〜!!!それ〜〜〜!!

 

 

 

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainこれ巻いて!!サムズアップでこっちに笑顔ちょうだい!!

 

 

 

 

 

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f:id:chicchi0411:20170911152712p:plainもうローラースケートもルービックキューブもレモンもパフェも全部持ってきて!!!で、散らして!!!そこに座って!!

 

 

 

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…みたいな感じで楽しい撮影会は終了しました。これ、マジで楽しかったので皆さん一回はやるべきですよ本当に! 

 

 

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出来上がった写真はこうやってすぐに印刷してパッケージングしてくれてサービス満点!さらにデータでももらえます!

 

武田さんもめちゃくちゃ気さくで面白い人で、撮られる側も楽しくなっちゃう上に自分が芸能人になったかのようなプロマイドのおかげで撮影中は終始笑いっぱなしでした。カップルや夫婦で行くのも大変良い思い出になると思うので、是非皆さん自分のプロマイドを撮ってみてはいかがでしょうか。

 

今と昔、スターとファンをつなげる思いの詰まったプロマイド、これからもますます盛り上がっていくといいですね!

 

それではさようなら。

 

 

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【マルベル堂】

・所在地:東京都台東区浅草1-30-67
・電話:03(3844)1445
・プロマイド撮影:5枚印刷+CDデータで12,960円
・詳細はサイトをご確認ください→

 

 

 

書いた人:まきのゆうき

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株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。姉妹メディア「オモコロ」の立ち上げメンバーで12年間同じキャラクターで4コマまんがを描いていた。かなり写真に写りたがる。Twitterアカウント→@yuuki


じいちゃんとわたし「ケアマネージャーの存在」第5話

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

ジモコロをご覧の皆さん、こんにちは。食いしん坊イラストレーターの杏耶です。

私は母子家庭で育ったため、保育園の送り迎えやゲームの相手になってくれたのはじいちゃんでした。だけど、ある時から祖父の言動におかしなところが増え……

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アルツハイマー型認知症と診断された祖父。まるで別人になってしまったかのような祖父の介護に、母と私は次第に「限界かもしれない」と感じ始めます。

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じいちゃんとわたし「大好きなじいちゃん」 第1話

じいちゃんとわたし「負の連鎖」第2話

じいちゃんとわたし「介護を受け止めること」第3話

じいちゃんとわたし「話を聞いてもらう」第4話


 

この物語は、大好きなじいちゃんを蝕んだ認知症と、家族の絆を描いた漫画です。

 

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介護疲れで心身ともに参っている家族の方の気持ちが軽くなるような、介護にも色んな道があるんだと思ってもらえるよう漫画で伝えたい。

というわけで第5話、気軽に読んでみてください!

  

5話「ケアマネージャーの存在」

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

書いた人:杏耶

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食いしん坊イラストレーター、食べることと料理をすることが大好きで、趣味の一環で手軽に作れる様々なレシピを独自に考案、それをイラスト化した「あやぶた食堂」を2015年に発売。その他に丼物オンリー漫画「ド丼パ!」、東北のお酒と郷土料理を紹介したコミックエッセイ「のんで東北たべて東北」も発売中。Twitter ID→ @ayatanponpon / WEBサイト→ http://ayabubububububu.jimdo.com/

 

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警察官だけが身につけている格闘技 『逮捕術』って強いの?

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こんにちは! 散歩してたらよく警官に職務質問されるライター、ギャラクシーです。

 

今までの人生で10回以上は職務質問されていますが、基本的に素直に協力することにしています。なぜなら―

 

 

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こんなやつに声をかけない警官がいたら、職務怠慢だと思うからです。

 

先日も職務質問されまして、身元照会されてる間、暇だから色々質問してたんです。で、「警察の人ってやっぱり格闘技とかやるんスか?」と聞いた時に、

「私らは、学校で『逮捕術』という格闘技を習うんです」

と言われまして。

 

逮捕術?

 

たしか、『バキ』で、最凶死刑囚に肉まん詰め込まれてた刑事がそんなことを言ってたような……?

 

バキ(1) (少年チャンピオン・コミックス)

バキ(1) (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

 

市民の安全を守り、いざという時には凶悪犯罪者と戦わなければならない職業・警察官。彼らだけが身につけている、秘密の格闘技術とは……?

 

 

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というわけで今回は、逮捕術について調べるために、『田村装備開発 株式会社』にやってきました。ここに、元警察官で、逮捕術大会での優勝経験を持つ人がいるという! ていうか大会とかあるの!?

 

田村装備開発 株式会社

住所:埼玉県東松山市 大谷4453

業務内容:特殊部隊向け装備品販売・護身術指導・サバイバルゲーム他

 

実際に技をかけてもらったり(ムチャクチャ痛かった……)、誰でもできる護身術も教えてもらったのでお楽しみに!

 

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逮捕術ってどういう格闘技?

 

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話を伺ったのは、田村装備開発の代表取締役でもある、田村 忠嗣さん。

 

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain田村 忠嗣

警察本部 警備部 機動戦術部隊

警察本部 警備部 警備課 突発重大事案対策班

皇后陛下警衛警備

パトリオットミサイル警備

警察学校 逮捕術大会 徒手 優勝

機動隊 逮捕術大会 徒手 優勝

 

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f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「いきなりですけど、経歴すごすぎません?

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いえいえ、そんなことないですよ。今日は逮捕術について知りたいとか?」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「そうなんです。あまりにも馴染みがない格闘技なので、そもそもどういうものか、ざっくり教えてほしいなぁと」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain逮捕術は、被疑者や現行犯人などを制圧・逮捕・拘束するための技術のことですね。警察学校で必須科目として習います

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「必須科目ということは、町を歩いてる警官は全員身につけてるんですか? 女性も?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「女性警官もです。警察学校を卒業するまでに、逮捕術検定というものに合格する必要があるので」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「じゃあ、婦警さんにイタズラするのはやめたほうがいいですね……」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いや、誰であろうとイタズラするのはやめてください」

 

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ちなみに、田村さんほどの“強者”なら、相手を見ただけで戦闘力がわかるのでは? と思って評価してもらったんですが、僕の戦闘力は「43点」とのこと

 

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain一般的な格闘技と、逮捕術との違いってありますか?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「もっとも大きな違いは考え方ですね。普通、格闘技は相手を破壊するためのものですよね? でも逮捕術は、相手を制圧するためのものなんです」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「なるほど、警官だから犯人を破壊しちゃだめ……ってことですか」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「そう、できるだけ無傷で取り抑えるための技が逮捕術です。当然、技術体系も変わってきます」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「ん~、言葉だけだとちょっとわかりにくいんで、実際に技をかけてもらえませんか?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「え、いいですけど……痛いですよ?」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「いやぁ、こう見えて若い頃はヤンチャしてたんで(笑)。警官の技なんて効くのかなぁハハハ」

 

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「二カ条」という技を教えてもらいました。まずはこういう感じで相手(僕)の手を掴みます

 

 

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親指を下にして、手を外側にひねると……

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

 

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ア゛ッア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!

 

 

f:id:jimocoro:20170913120023j:plain

痛ぇぇぇぇ!!!!!

 

f:id:jimocoro:20170913120504p:plain「あの~、急にすいません。カメラマンとして言いたいんですけど……ちょっと大げさすぎません?」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「……は?」

f:id:jimocoro:20170913120504p:plain「そこまで痛くないでしょ? リアクションが嘘くさいかな~って」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「じゃあテメーもやられてみろ!」

f:id:jimocoro:20170913120504p:plain「はぁ、いいっすけど……」

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

f:id:jimocoro:20170913120504p:plain「マジで痛かった」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「ハハハ、じゃあ、まぁこのへんで……」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「いや、もうちょっとやってください」

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

大して力が入ってるわけではないんですが、人体の構造上、この方向に手首をひねられると、痛みで立ってられません。術者の思いのままコントロールされてしまいます。

 

あとヤンチャしてたってのは完全にかっこつけただけで、実際はアニメージュが愛読書のオタクでした

 

 

ベースになった格闘技とは

 

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まだ手首がジンジンしている僕

 

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「今の形の逮捕術が発生したのは、いつ頃なんでしょうか」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「私は歴史には明るくないんですが、ベースになったと言われるいくつかの格闘技の中で、比較的新しい日拳(日本拳法)は昭和初期に創設されてるはずなので、それ以降ではないでしょうか」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「意外に最近なんですね。日拳がベースってことは、逮捕術のパンチは縦拳?」

一般的な格闘技でのパンチは、拳を地面と水平(横向き)にして打つが、日本拳法には拳を縦向きにして打つ突きがある

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いや、パンチは普通……ですね。おそらく勘違いなさってると思うんですが、“逮捕術”という決まった流派があるわけじゃないですよ?」

 

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f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「へ? 違うんですか?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「えーっと、例えば……総合格闘技ってあるじゃないですか。あれ、パンチの打ち方とかが決まってるわけではないですよね? ベースがボクシングの人はジャブを使うし、空手の人は正拳突きを使うわけで」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「あぁ~! そういうことですか! 試合のルールだけが決まっていて、その中ではどんな打ち方でも良いと!」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「その通りです! 逮捕術で言うと、『最終的に犯人を逮捕する』というルールを守れるなら、空手でも柔道でも良いんです。だから教える先生によって、地域によって、ベースが変わってきます」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「とはいえ、『逮捕する』ってかなり特殊な技能なので、格闘技によっては役に立つ/立たない、があるのでは?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「それはありますね。なので、メインになっているのは古流の武術、柔術、合気道と言われています。突き(パンチ)や蹴り(キック)は、空手が多いのではないでしょうか」

 

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ドシッと体重をかけた突き(右は田村さんに格闘術を教えてもらっている生徒さん)

 

 

逮捕術に正々堂々なんてあり得ない 

 

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ナイフなどの武器に対抗する技

 

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain犯人がナイフとか持ってたらどうするんですか? いくら逮捕術を習ってるとはいえ、素手で立ち向かうのは怖くないんですか?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「逮捕術には、徒手で武器に対抗する手段もあります……が! 基本的に武器を持った犯人に対して、一人で、しかも徒手で立ち向かうなんてことはしませんね。まずは応援を呼びます

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「なるほど。じゃあ複数人で一気にタックルとかして……」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いやいや、ナイフを持った相手に対しては、武器を使って対抗します」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「え、武器術まであるんですか!?」

 

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f:id:jimocoro:20170912190750p:plain“警棒術”や“警杖術”がありますね。警棒は、警察官がいつも腰から下げてるあの棒です。ソバを延ばす棒みたいなやつですね」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「警杖というのは?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「交番前や施設を警備してる警官が、たまに長い棒を持ってるでしょ? モップの柄くらいの。あれが警杖ですね。警棒術は剣道が、警杖術は杖術がベースになってます」

杖術=棒術の一種で、杖やステッキを使った武術。警察で使われているのは神道夢想流杖術がベースになっているという

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「なるほど、武器を使って制圧する、と。ちょっと整理していいですか? ナイフを持った犯人を発見したら……

1)応援を呼ぶ

2)警棒・警杖などの武器を手に取る

3)集団でボコボコにする

これで合ってます?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「改めて箇条書きにすると、ムチャクチャ卑怯に思われそうですね……。でも実際、正々堂々闘うことはあり得ないです。『圧倒的に有利な状況を作り出す』ということが、何よりも重要なので」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「命がけの仕事ですから、そりゃそうですよね」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain“卑怯と言われてもいいから、一人も死傷者が出ないようする”……警官が意地を張るべきは、そこです。『一人も』の中には、無関係な市民の方はもちろん、自分や仲間、犯人すら含まれます」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「その制約の中で戦うの、めちゃめちゃ無理ゲすぎません? ゲームだとしたら即日売りに行くレベル」

 

 

一般人が犯罪に出くわしたらどうすればいい?

 

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田村さんが逮捕術の大会(徒手部門)で優勝した時の写真

※大会には他に警棒や警杖などの部門があるそうです

 

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain逮捕術って、警察関係者以外には門外不出なんでしょうか」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いや、そんなことはないですよ。大会も開催されてるし、一般の方も見ることができます。あと、学校の先生にも教えたりします

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「え、なぜ教師が逮捕術を? 誰かを逮捕するの?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「不審者が学校に侵入した時に、取り押さえるためですね。護身術としても教えることがあります」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「へぇ~! じゃあ僕でも習うことができる?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「う~ん、公職の人に教えることはありますが、一般の人に道場で教える……というのは、ないかもしれませんね」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「な、なぜ? やはり門外不出の暗殺奥義があるから!?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「犯人を暗殺してどうするんですか! そうじゃなくて、一般の人は『逮捕』を最終目標にする必要がないからです。普通に空手や柔道を習えばいいので、需要がないと思いますよ」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「しかし、一般人でも、たまたま凶悪犯罪に出くわしてしまう可能性ってありますよね?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「その場合、何はさておき、まず逃げることを考えてください。戦闘することの危険というのも もちろんありますが、戦った結果、過剰防衛になってしまうことがあるからです」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「えー! 相手が犯罪者でも?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「はい。例えば路地裏で不良少年にからまれたとしましょう。で、防衛のために殴ったら、相手にケガをさせてしまったと。その時、警察の人には『逃げることで対処できたのでは?』って言われますよ」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「とはいえ、逃げることすら難しい状態ってありますよね? 例えば女性だと走る速度も遅いし」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「それはありますね。では、そういう時の護身術をひとつお教えしましょうか?」

 

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教わったのは「肘当て」という技。手首を掴まれ逃げられない時の対処法です

僕=暴漢、田村さん=女性、と思ってご覧ください

 

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まず手を開きます

 

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そのまま自分のヒジを暴漢のヒジに当てると、弱い力でも簡単にロックが外れます。痛いのではなく、角度的に手首を掴んでいられなくなるんです

 

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逃げます

ここではゆっくりやってもらいましたが、本気でヒジを入れたり最後に突き飛ばしたりしたら、かなり逃げる時間が稼げます。

 

逃げる時に一番危ないのは「振り返る瞬間の背中」なので、一瞬の隙を作るというのはすごく重要だそう!

 

 

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後ろから抱きつかれた時はこう。自分の腕を開くと、相手の腕が上がるので抜けやすくなります。

 

 

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胸ぐらをつかまれたら、こう

掴まれた手を外にひねり、お辞儀をするように相手の手首に体重をかけると、下方向に逃げる(座り込む)しかなくなるので、その隙に逃げましょう!

 

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「では、逃げるのではなく、運良く犯人を取り抑えられたとして、警察に連絡した後は何をしたらいいんですか?」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「その場で警官が到着するのを待ってください」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「その間ずっと押さえ込んでるんですか? それとも犯人をヒモとかベルトで捕縛したほうが良いんですかね」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain暴れる男を身動きできないように縛るのは……素人には難しいと思いますよ。関節を極めるのが楽だと思いますね」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「関節極めながら警察待ってたら、絶対疲れてホールドが解けそう」

f:id:jimocoro:20170912190750p:plain「いや、楽なやり方があるんです。実際にやってみましょうか」

f:id:jimocoro:20170912190749p:plain「痛くしないでくださいね……」

 

 

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前述の「胸ぐらを掴まれた時の対処法」と同じですが、今回は逃げるのではなくそのまま取り抑えるパターンをやってもらいました

 

掴まれた手を外に開いて体重をかけると……

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

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これ、田村さんに「こっちに行ってください」とか「寝てください」とか言われてるわけじゃないんです。

痛みから逃れるためにはこの方向(この場合だとうつ伏せで寝る)しかないので、簡単にコントロールされてしまいます。

 

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上に乗ったら、「両手を後ろに回せ」と声をかけます。痛すぎるので、言うことを聞く以外に何もできません。ライターって大変な仕事ですね。

 

 

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で、左手もまったく同じように後ろで極めたら、太ももで固定します。

 

すると―

 

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

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ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!

 

 

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はっ、ハア゛ア゛ア゛ァァァ、ハハァ~~~~、サファ~~~(声が枯れた)

 

後ろで極められた両手は、田村さんの太ももが壁になって下方向には動かせません。それ以外の方向に動かすと激痛が走るので、マジで何もできません。

 

なのに、取り抑えてる方は「ただ座ってるだけ」の状態であり、両手がフリー。力も不要なので、警察がくるまで余裕でアルフォートとか食べながら待ってられます。

 

ブルボン アルフォートFS 204g

ブルボン アルフォートFS 204g

 

 

 

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(警察官に歯向かうのは、やめよう……)

 

 

まとめ

 

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というわけで、今回はあまり馴染みのない職業・警察官が、実は逮捕術という格闘技を学び、命がけで犯罪者に立ち向かっていた、というお話でした。

 

教えてもらった護身術は役立つものなので、いざという時には思い出してくださいね!

ただし、決して遊び半分では使わないでください。僕はこの取材の後、2日くらい手首が痛かったです。

 

 

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ちなみに、事務所に劇場アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』のポスターが貼ってあったので、「好きなんですか?」と聞いたら、なんと田村装備開発が戦術指導や武術指導として関わっているとのこと。

 

www.youtube.com

 

ナイフ使いの悪者みたいなキャラが、ほぼ田村さんの動きそのままなんですって!

 

田村さん(田村装備開発)はいくつかの作品で武術の指導をしてるそうなので、「この作品、アクションすげぇな……」と思ったら、ひょっとしたらスタッフロールに田村装備開発の名前があるかも……?

 

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さて、そんな田村さんですが、自身の経験を活かして本も書いてます。

護身術や危機管理に興味ある方はぜひどうぞ。現在2巻まで発売中ですよ!

 

元機動戦術部隊員に学ぶ危機管理トレーニング

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  • 作者:田村忠嗣,長田賢治,田村装備開発株式会社
  • 出版社/メーカー:ベースボール・マガジン社
  • 発売日: 2016/06/18
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元機動戦術部隊員に学ぶ危機管理トレーニング2

元機動戦術部隊員に学ぶ危機管理トレーニング2

 

 

 

(おわり)

 

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ライター:ギャラクシー

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株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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日本人が意外と知らない「和紙」の世界

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ラベンダー越しの富士山でこんにちは。ライターの友光だんごです。 

富士山といえば日本のシンボルですが、「和食」「和菓子」「和服」「和紙」など、日本ならではの「和〇〇」は色々ありますよね。

 

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例えば和紙。古くから障子や団扇などに使われ、日本人の暮らしには欠かせないものでした。

 

しかし一説によると、「和紙」とは明治時代に西洋から入ってきた「洋紙」と区別するために生まれた名前。それまでは、あくまでただの「紙」だったそうなのです。

 

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小学校のときの習字で使った『半紙』やおじいちゃんちの『障子』、そしてお金の『お札』だって、そういえば和紙でできています。

 

意外と身近にある和紙ですが、改めて考えてみると知らないことだらけではないでしょうか。あの独特な手触りは何なんだろう…? そういえば和紙の素材って? パルプとかいうやつだっけ…??

 

そもそも、和紙って何なんでしょう? 

 

日本人が意外と知らない和紙の世界。その秘密を探るべく、山梨の和紙メーカー「大直」の一瀬美教さんに話を聞いてみることにしました。

 

話を聞いた人:一瀬美教(いちのせ・よしのり)

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1000年の歴史を持つ和紙の産地・山梨県市川大門に本社を構える「大直」社長。地場産業である障子紙をはじめ、和紙雑貨ブランド「めでたや」や深澤直人さんがデザインを手がけた「SIWA|紙和」などを展開し、紙の新しい可能性を発信し続けている。

  

 

何をもって「和紙」と呼ぶか?

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f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「いきなりですが、『和紙』って何なんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「それは、実はとっても難しい問題なんですよね。歴史も相当長いし、なかなか簡単には言えるものではなくて……まあ、私の知る限りでお話しします」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「ありがとうございます!」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「まず、そもそも『紙』というのは紀元前に中国で発明されたと言われています。その後、紙の製法は中国から世界各国へ伝えられます。日本には朝鮮を経由して入ってきたんですね」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「なんと、紙の発祥は中国だったんですね! 知らなかった……ところで、紙ってどうやって作るんでしょうか」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「ざっくり言うと、いわゆる『紙』というのは何らかの植物の繊維を水の中で分散させて、それを漉いてシート状にし、乾燥させたもの。ただ、国によって生えている植物は違いますよね。だから、紙づくりの技術は、それぞれの国の風土に合わせて独自に発展してきたんです」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「では、中国の紙と日本の紙も違うんですか?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「簡単に言うと、日本の紙の方が『薄くて均一』です。その理由は日本人の技術の高さと、紙漉きの際に独自の『粘り成分』(トロロアオイという植物)を使っているから。これは日本で発見された製法なんです」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「日本オリジナル成分! 薄くて均一のきれいな和紙は、トロロアオイのおかげなんですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうですね。そして明治時代になり、文明開化とともに西洋から向こうの紙が入ってきて、『洋紙』と区別するために『和紙』という名前がついたという説がありますそもそも、自国の紙にわざわざ名前をつけてるのは日本だけなんです。他の国ではただの『紙』ですよ」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「知らなかったです……昔から日本人は自国の文化にプライドを持っていたのかもしれませんね」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「日本人の美的感性が、薄くてきれいな紙を求め、それを作り出す加工技術が生まれたんでしょうね。書道用紙のように『ものを書く』だけでなく、障子や提灯、団扇や傘など、暮らしの中のさまざまな用途で和紙が使われていました」

 

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和紙の製法を解説した『紙漉重宝記』より。紙漉きはとても工程が多く、手間がかかる。かつては農家の副業として行われ、特に冬に漉く紙は紙質が良いとされた

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「ちなみに、日本で和紙の素材に使われてきたのは以下のような植物なんですが」

f:id:tmmt1989:20170806112450j:plain

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「和紙の材料になっている楮はアジア、特にタイから輸入されているものが多いんですよ。海外の紙漉き工場で生産されている和紙もあります

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「材料や生産まで海外で!! そう聞くと気になってしまうのですが、海外産の材料を使ったり、海外の工場で作られても和紙は和紙なんでしょうか

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「それが難しい問題なんです。文化としての和紙と、産業としての和紙という2つの考え方があると思うんですが……例えば、和紙はユネスコの世界無形文化遺産に指定されています。文化遺産として考えれば、楮のみを使用した伝統的な製法を守ろうという人もいる

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「ふむふむ、それが『文化としての和紙』ですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「ただし産業、つまり和紙メーカーとして会社を経営していくためには、伝統的な和紙だけを作っていたのでは難しいんです

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「『産業としての和紙』は、時代に合わせて考え方を変える必要があると。その『文化』と『産業』の構造、業界内でいろんな議論がされていそうですね……」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうなんです。あとはコストの問題もありますよ。さっき言ったように和紙の原料の多くは海外産になっているので、『純国産』にこだわるとコストが上がり値段が高くなる。すると売れない。だから、うちは国産だけでなく海外産の原料を使うこともあるし、一部の和紙は海外の工場で作っています

 

 

日本の暮らしから和紙が消えていった

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手のひらサイズの「めでたや」の干支。それぞれヒノキの枡に収まっている

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「日本だけでなく、海外でも和紙を作っているんですね! どのような経緯だったんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうですね、まず、うちの歴史から簡単に説明しましょうか。大直のある市川大門は昔からお寺が多くて、写経用の紙の需要があったんです。だから、昔から和紙屋がたくさんあった。江戸時代には幕府が使う専用の紙『御用紙』を作り、市川大門から幕府へ納めていました」

 

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市川大門産の和紙は「肌吉紙」(肌良し紙)と呼ばれ、良質な紙として名高い存在だった

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「写経紙に幕府専用の紙…いろんな和紙の需要があったんですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうですね。書道用紙や障子紙づくりは今や市川大門の地場産業になっていますが、江戸時代には300軒の紙屋があったといわれています。大直もそのなかの一つとして始まりました。私が小学生のころまではどこも手漉きだったから、町を歩くと紙を漉く『ピッチャンピッチャン』って音がしてましたね」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「まさに和紙の町!町中に紙漉きの音が響いてたって、風流な感じがします……」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「ただし、時代が変われば、需要も変わります。市川大門に関して言えば、オイルショックの時がピークだったかな。書道をする人も、障子や襖のある家も減っていきましたから」

 

f:id:tmmt1989:20170805181709j:plain

美教さんの妻であり、大直の専務取締役を務める一瀬富久美さん

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「私や妻はいわゆる団塊の世代で、アメリカの文化に憧れて育ったんです。ビートルズや平凡パンチが好きでね。だから、自分たちがものづくりをする際も、モダンな和紙製品を作ろうと考えたんです。伝統を守っていくことも大事ですが、新しい挑戦も必要じゃないかと。それが30〜40年前かな」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「ミニスカートやアイビーが流行した頃ですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「それに『デザイン』という考え方が海外から入って来た時代でもあった。だから、和紙とデザインを組み合わせようと、デザイナーさんと一緒に作り始めたんです。当時、和紙業界でそういうことをしている人は少なかった」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「斬新な取り組み! 最初に作った『モダンな和紙製品』はどんなものだったんですか?」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「和紙のロールスクリーンが最初だったかな。当時の横浜そごうのインテリアコーディネーターに、テーブルまわりのものを和紙で作って欲しいって頼まれたんです。時代に合った和紙製品はまだ少なかったので、とても人気になってね」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「その頃、生産は日本だけで?」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「はじめは京都の工場で作ってもらってたんですが、生産量が追いつかなくなっちゃってね。そこから海外の工場との出会いがあったんです

 

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和紙で『日々使えるもの』を目指したSIWA。山梨出身のプロダクトデザイナー深澤直人さんと共同で開発した。和紙のしなやかさをもちつつ、耐久性があり、水に濡れても破れない。国内外問わずファンの多いシリーズとなった

 

きっかけは「Made in Thailand」の紙

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f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「80年代のことですが、たまたまヨーロッパの紙の展示会に行って、手に取った紙の見本に『Made in Thailand』と書いてあったんです。パッと見たときに日本の和紙かな?と思うくらいの品質だったんですね

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「でも、タイで作られた紙だったと!」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「はい。ちょうど和紙を作れる工場を探していたので、『アジアに行かなきゃ』と思って、家内と現地へ飛んだんです。自分たちの足で工場を回って、まずタイとフィリピン2社ずつと付き合いを始めました

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「向こうの紙屋はどんな風だったんでしょう。昔ながらの職人さん?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「中国から伝わった製法で、現地の植物を使って紙を漉いていましたね。産業としては歴史が浅かった。タイでは楮やパイナップルの繊維を、フィリピンではマニラ麻やバナナの繊維を使った紙でした」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「パイナップルやバナナで和紙を! 本当に国によって原料は色々なんですね。面白いなあ」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「そこに私たちが日本の和紙の『製法』の一部と『感覚』を伝えて、うちで扱う和紙の一部をお願いするようになりました。そして、その和紙を使い、クラフト(工芸)品も作り始めたんです」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plainそこからアジアの工場との関係が始まって、もう30年近く続いていんですね。僕の生まれる前から……すごいですね」

 

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f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain当時は国内の人件費が上がってきたから海外で作ろうというのが一般的な流れでしたけど、我々は違いました

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「と言いますと?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「大量生産も考えていませんし、コストを求めるんじゃなく、高い技術で継続的にものを作っていくということが重要でした。こちらの要求に応えられる職人がいたのが、たまたま海外だったんです」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「ものづくりのクオリティや継続性を考えた結果だったんですね。なるほど…」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「アジアの人って器用なんです。メインの工場はタイの北部にあるんですが、タイの人は勤勉だから技術もどんどん伸びます。日本人より、日本人らしい感性を持っているといってもいいかもしれない」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「へえ〜、ものづくりへのこだわりということですか?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「はい。向こうの人には日本のものづくりに対する憧れがあり、プライドを持って仕事をしてくれます。和紙を通して理解し合えたからこそ、文化の壁を越えて30年も取引が続いたのかもしれません。うちでは『逆フェアトレードな関係』と呼ぶんですが、向こうの工場の人も豊かになっていますよ」

 

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大直の商品を手がけるデザイナーやイラストレーターは、ほとんどが社内のスタッフ。写真の商品のイラストもデザイナーの社員が手がけたもの。社内に人材が揃っているからこそ、細部にまで一貫してこだわったものづくりが可能となる

 

 

目先の数字よりも「好きなもの」を目標に

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f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「大直さんの根っこには『時代に合わせ、ちゃんと使われるもの、需要のあるものを作る』という姿勢がありますね。新しいものを作るために変化を恐れず、使ってもらうためには、品質にもこだわる。品質を求めた結果、たまたま海外の工場でも和紙を作ることになったという」

 f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「基本的なスタンスが、目先の利益を追うってことじゃないんですよ。機械生産ではない、手仕事であり手工芸の和紙製品を作りたかった。『自分たちの好きなものを作る』を目標にするのがいいんじゃないかな、とは昔から思っていました

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「自分たちが欲しいものを作る、ということですね」

f:id:tmmt1989:20170820202134p:plain「利益追従じゃないから、会社の経営としては難しいですよ。数字が付いて回りますから」 

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「真面目な話、今の若者もあまり求めすぎず、自分たちの手の届くところで何かを作る方が幸せじゃないかと気付き始めてるように思うんです。そんな時代の変化と、大直さんの姿勢は同じなような気がして」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうかもしれないですね」

  

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富士山を望む河口湖そばの「ハナテラス」内にオープンした「めでたや」の新店舗。めでたやの和紙雑貨からSIWAの商品まで、豊富に取り揃えている

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「そういえば、河口湖に『めでたや』の新店舗をオープンされたんですよね。『めでたや』はモダンなものというより、日本の伝統がテーマなんでしょうか」 

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain和紙の小物や雑貨を通じて、日本の行事や歳事を大事にしてほしい、少しでも生活のなかで感じて欲しい、というのが『めでたや』です。その伝統を昔ながらの形ではなく、デザイナーさんと組んだり、今の暮らしに合わせた形で提案しているんです」

 

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f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「大きな正月飾りは置くのが難しいかもしれませんけど、小さな和紙の小物だったら、アパートでも飾れますよね。これも『時代に合わせた形』ですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「親から子へ、少しでも伝わればいいなと思いますよ。そういう『心』みたいなものを載せる役割は、和紙にはまだまだあるんじゃないかな。その役割を果たしてもらうには、やっぱり、時代に合わせて変えてかなきゃいけないんです」

f:id:tmmt1989:20170820202128p:plain「これから、さらに挑戦していきたいことはありますか?」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「産業としての和紙だけでなく、文化としての和紙ともうまく共存していきたいですね。日本各地に伝統的な和紙を作る産地がありますが、その産地とタッグを組んで、継続的なものづくりをできたらと考えているんです」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「伝統的な和紙を使い、例えばデザイナーさんと一緒に時代に合わせた製品をつくったり…」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「そうですね。イタリアにファブリアーノという製紙会社があるんですが、ユーロの紙幣も手がけるような大企業で。産業としてちゃんと利益を生んでいる一方、紙の博物館を作り、文化としての紙も遺す活動をしている。理想の形ですね」

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「『産業』と『文化』が両輪になっているんですね」

f:id:tmmt1989:20170812211921p:plain「やっぱり伝統は業界がちゃんと残さないと。1000年以上続いた伝統があるからこそ、現代的な紙のものづくりも可能になっていますから。基本は『伝統と革新』ということを忘れず、これからもやっていきたいです。『和の心』を大切にね

f:id:tmmt1989:20170812211934p:plain「和の心があれば和紙なのかもしれないですね。今日は勉強になりました。ありがとうございました!」

 

 

 

 

ここでお知らせです。

読者の皆さんにジモコロ編集部が選んだ「めでたや」の商品をプレゼントします!

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①「ふじさん御朱印帳」1名様

河口湖から見える富士山と季節の景色をあしらった御朱印帳。期間限定の「夏」柄です! 

 

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②鏡もち&三毛猫&柴犬のセット 1名様

正月飾りの鏡もちと、和紙の小さなアニマルシリーズから三毛猫&柴犬をセットにしました。いずれも4cm前後のミニサイズながら、精巧な細工が施されています。

 

応募方法はこちら↓ 

 

大直がこだわりぬいて作った和紙雑貨のクオリティを感じるチャンス。ドシドシご応募ください!

 

 

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光 哲 / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

【10/4まで】『ジモコロ』×『鶴と亀』の写真展「ジモト」が開催中!

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よいしょ、よいしょ……準備をしながらこんにちは。ライターの友光だんごです。

え、何の準備をしてるのかって? なんと、ジモコロの写真展が開催されるんですよ!

 

写真展の名前は「ジモト」。 

ジモコロとフリーペーパー「鶴と亀」のコラボ展なんです。

 

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「鶴と亀」は、長野県飯山市に住む小林直博くんが兄とともに制作する“じいちゃんばあちゃん×ヒップホップ”がテーマのフリーペーパー。

2013年8月に創刊し、現在までに5号が発行されています。

 

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その魅力はなんといっても、“田舎だからこそ”の格好よさを放つ、じいちゃんばあちゃんたちの写真! 撮影しているのは編集者兼カメラマンである小林くんです。

 

ジモコロでは前後編にわたって小林くんのインタビューを掲載しています。

 

9/18には、これまでの集大成となる写真集『鶴と亀 禄』も発売されています。

 

そして小林くんは、ジモコロでもカメラマンとして活躍中。

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この「ヨガきこり」をはじめ、数々の強烈なおじさんたちを写真に納めてくれています。

 

ジモコロ、そして「鶴と亀」に共通するのは「人」と「地元」。その2つをテーマに、今回、小林くんの写真を集めた展覧会が開催されることになったのです。

 

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●イベント情報

どこでも地元メディア『ジモコロ』 × フリーペーパー『鶴と亀』写真展「ジモト」

2017年9月28日(木)~10月4日(水)

 

時間:午前10時~午後6時 (入場無料)※日曜休館、最終日は午後3時まで 

会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」(東京メトロ丸ノ内線「新宿御苑前」駅徒歩2分)

 

 

準備の現場に潜入!

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写真展の開始前日、会場では準備の真っ最中!

編集長の柿次郎はコナンくんのポーズで写真の順番を考えているようです。

 

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専門の業者さんも入って、着々と準備が進んでいきます! 

 

会場はアイデムフォトギャラリー「シリウス」

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会場となるのは、ジモコロのスポンサーである「アイデム」のフォトギャラリー「シリウス」。

2001年にオープンした由緒正しいギャラリーです。照明から何から本格的! 写真の良さを何倍にもUPしてくれていますね。

 

場所は「新宿御苑駅」から徒歩2分。そしてなにより入場無料!

新宿の買い物のついでにフラッと来ちゃうのもありですね。

 

 

展示の見所は……

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展示されるのは、「鶴と亀」、そしてジモコロの記事からより抜いた写真、計49点!

 

見所としては、なんといっても「写真の迫力」です。 

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こんな写真が、「A0」( 84 × 118 cm ) というどでかいサイズで展示されるんです。

入れ歯や耳毛は実物よりはるかに大きいサイズに。生で見ると本当に圧巻ですよ。

 

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ジモコロの写真も大きくなって、ディスプレイ上とはまた違った見え方に。フリーペーパーを作った時と同じく、「モノ」としての良さを感じます。

ぜひ会場で体験してみてほしいです!

 

 

トークイベントも9/30(土)に開催!

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そして、小林くんとジモコロ編集長の柿次郎によるトークイベントも開催されます!

日時は2017年9/30(土)14時~15時。

 

撮影の裏話、地元で出会った魅力的な「人」のこと、「ジモコロ」「鶴と亀」それぞれのメディアのこだわり……などなど、ふだんから仲の良い二人がトークを繰り広げます。

定員は50人程度を予定していますが、立ち見も大歓迎!

 

ちなみに、9/30は12時ごろから小林くんが在廊します!

普段は奥信濃が拠点の小林くんに会える、貴重なチャンス。写真集へサインをしてくれるかも⁉︎ 小林ファン集まれ〜!!

 

 

写真集の販売も

そしてそして、発売されたばかりの写真集『鶴と亀 禄』も会場で販売されます!

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・じいちゃんばあちゃんたちの伝説エピソードをポテチ光秀さんが漫画化

・奥信濃を飛び出し、秋田&沖縄でじいちゃんばあちゃんを撮影

・ラッパーの田我流さん、Yogee New Wavesの角舘健悟さん、女優の「のん」さんという3人の「じいちゃんばあちゃんっ子」な有名人との対談

 

などなど特別企画も満載。すごいボリュームと熱量の詰まった1冊なんです。

 

この『鶴と亀 禄』、発売から数ヶ月間は一般の書店には流通しない「直販兄弟」という一風変わった売り方をしています。

 

☆「直販兄弟」について、詳しくはこちらの記事を↓ 

 

つまり、どこでも手に入る写真集ではないということ。気になった方は会場で購入するのがオススメですよ!

 

 

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ちなみに、こんなグッズもアイデムさんが用意してくれたので、インスタ映え?する写真も撮れちゃいます(会場内は写真撮影OK)。

 

最後に小林くんと柿次郎から、写真展に寄せたメッセージを。

 

ぼくの中で「ジモコロ」と「鶴と亀」の撮影は似ていると思うところがあって、それは『意外と身近なところに面白いものがある』ってところです。

普段生活していて、ふとした時に浮かぶ疑問や気になること、面倒で放り投げてしまう煩わしさの中にだって『面白いなあ』と思わされることがあるなと。「ジモコロ」の取材も「鶴と亀」の撮影も、いつもそんな感じでした。そんなことを皆さんと共有できたらと思っております。

編集者兼フォトグラファー 小林直博

 

「鶴と亀」、「ジモコロ」ともに写真展は初の試み。ローカルで暮らす爺ちゃん婆ちゃんのリアルな姿、都会育ちの人間が全国を飛び回って取材してきたゆるい軌跡を並べています。

綺麗事で現実を包み隠さず、ウェブと紙の価値観が混然一体となっている世界を楽しんでください。

その後、紙の『鶴と亀』とウェブの『ジモコロ』を読んでもらえると新しい発見があるかもしれません。

「ジモコロ」編集長 徳谷柿次郎

 

 

ウェブとはまた違った形でジモコロの世界観を感じられる貴重な機会です。

皆さん、ぜひぜひ会場へお越しくださいー!!!

 

 

※イベント詳細はこちら

https://www.aidem.co.jp/company/topics/942_d.html

 

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光 哲 / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

ロシアの夫とハラショー日本「ロシアのゲーム機・デンディを知ってる?」

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東京で生活するマンガ家・シベリカ子が、夫のロシア人男性・P氏と共に、日本をレポートします。料理や文化など、ロシア人から見た日本や東京を、優しい絵柄でのんびり切り取りますよ!

きっとハラショー(素敵)なニッポンが待っている……?

 

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ロシアの夫とハラショー日本|一覧

 

 

●シベリカ子の単行本情報

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

 

 

書いた人:シベリカ子

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埼玉県出身、東京都在住。漫画家、イラストレーター。ロシア人の夫と1年間ロシアに滞在した時のことを描いたコミックエッセイ「おいしいロシア」で単行本デビュー。
ツイッター:@ShibeRikako
ブログ:シベリカ通信


1/12サイズの巨大スラム・九龍城!? 異端のドールハウス作家が語る「汚しの美学」

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ドールハウス。

 

一般的に1/12スケールで作られたミニチュアの家のことを指し、部屋の内装や調度品も制作します。

可愛らしい趣味とあって、ドールハウス作家の8割は女性。ほとんどの作家さんが可愛くてキレイなミニチュアを作るなか、ひときわ異色のドールハウスを作りつづける作家さんがいるのをご存じでしょうか。

  

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「廃墟のドールハウス」を得意とする遠藤大樹さんです。

 

禍々しい空気を放つこの作品は、香港にあった巨大スラム・九龍城(クーロン城)をモデルにしたドールハウス。

ゴミが散らかった道路、乱雑にエロチラシが貼られた薄汚れた壁、からまった電線があまりにもリアルです。

 

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人間と比較するとこんなに小さい…!

 「貼った壁にサビを作ったり、ツタを這わせたりしてるときが最高に楽しい。汚しが楽しいです」と語る遠藤さん。

はじめて見たドールハウスのトイレが、あまりにピカピカで一度も使われてないようだったそうです。一般的なドールハウスは汚しをあまりせず、1枚の絵のように美しく仕上げるのが特徴。

そこで遠藤さんは人間らしさがないと面白くないな、ひたすら人間らしいものを作ってやろうと胸に誓い、これだけの生活感と使用感が溢れるドールハウスを作るようになりました。
 

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もともとは歯科医師を目指して学校に通っていた遠藤さん。

体を壊して中退したのですが、せっかく買った石膏を削る道具や細かい作業をする技術を、そのまま使えるのは何かなとかんがえたときに辿りついたのがドールハウスだったそうです。

 

www.youtube.com

ドールハウス制作を始めたのは2009年頃。模型作家・芳賀一洋さんの教室に通って、はんだごての使い方や薬品で金属を黒く染める技術などを習いました。

これまで制作したドールハウスは小さいものをふくめて20個ほど。普段は茨城の工房で制作に励んでいます。

 

見立ての技術! みそ漬けの包装紙が革バッグに変身する?

 

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このミニチュアの革バッグ、質感が渋くてかっこいいですよね。

みなさんにちょっと考えてほしいのですが、どうやってこの質感を出してるとおもいますか?

 

実は・・・

 

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 「おとうふの味噌漬けのパッケージ」をそのまま使っているんです。

 

あの渋い革バックが、味噌漬けのパッケージの使い回しだなんて信じられません。

遠藤さんは「それほど難しく考えず、100円均一で売ってる物やお菓子の包装紙など身の回りにあるものでドールジオラマは作れます。アイデア次第ですね」と当たり前のように話します。

 

 

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 おもむろにゴソゴソと箱から取りだしたのは家具の足の部分。

 

「こうやってひっくり返して置くと、樽にも見えるし、椅子にも見えますよね」

 

 

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「これは工場で拾った鉄の残骸。必要な部品をパンチで抜いたあとのゴミですね。でも、こうやって横にすれば錆びたベランダの柵になります」

 

 

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「下の白いやつはノートパソコンの裏ブタ。でも、こうやって地面に置けばドブの側溝のフタにも見えますよね?」

 

見立ての力で、ゴミが家具にもインフラにもなるのです。すごい。

 

使えそうな物はなんでも集めて寝かせておくので、5~6年使ってなかったパーツが急に必要になると「どこにやったかな?」と家中を探しまわることもあるのだとか。

 

 

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この床屋のサインポール。銃の薬きょうとパチンコ玉で作っているそうです。

意外な物同士を組み合わせて、リアルな質感を追求する姿勢が狂気的…!

 

「本物に近づけたリアリティではないけど、組み合わせの工夫で自分だけのオリジナリ

ティが出ます」と遠藤さん。

 

こういうミニチュアはてっきりゼロから手作りしてるものばかりだとおもっていたので、これなら初心者でも楽しんで妄想を膨らませそうです。

 

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プラモデルの捨てる部分(ランナー)も、材料パーツとして使えるのでたくさん保管しています。

  

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たとえば、左の蛍光灯はランナーで制作。こういう作り方は珍しく、木やプラスチックでゼロから作るのが普通だとか。遠藤さんの技術が光ります。

   

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さらにこちらは・・・

 

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京極夏彦の小説『書楼弔堂』の表紙になったドールハウスです。

日本家屋は見慣れている分、極端なアレンジをすると違和感を覚えます。そのため海外をモデルにしたドールハウスよりも、寸法も正確に測り、釘を打つ位置から調べる徹底ぶり。

 

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このドールハウスで一番手間がかかっているのは、意外なことに入口の「すだれ」。枝で作るにはあまりに細すぎるので、ワイヤーや紙、木などを使って試行錯誤しましたがどうもピンとこなかったとか。

最終的には蓮系の植物のスジを抜きだし、乾燥させて束ねたそうです

気の遠くなるような作業というか、そもそも植物のスジを抜き出すってどうやるんでしょうか。

 

キレイに作っても汚したくなる

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冒頭でもお見せした巨大スラム・九龍城のドールハウスは、完成まで3か月もかかっています。 

 

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「朝ご飯を食べて夜寝るまで、ずっと作業をし続ける。締め切り直前ともなると16時間ぶっ続けで作業することも珍しくないですね」

趣味でやってる人の中には、週末に一つずつミニチュアパーツを作って、1ハウス完成させるのに10年かかるなんてケースもザラ。3か月でも早いほうなんですね。

 

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クーロン城のエレベーター内は、「アスベスト(石綿)」が施されています。芸が細かい。

 

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ちなみにどうやって質感を再現しているのか尋ねたところ・・・

 

「このアスベストはタオルをちぎって貼りつけたものです。外壁のペンキは一回塗って直射日光に当てて、ポロっと剥がれたものをもう一度貼りつける。これでペンキ剥がれを演出できます」

 

説明されてようやく工程をイメージできる職人芸…! キレイに作るよりもむしろ一手間かかるわけですね。

 

 

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 小さな自分になって、廃墟ドールハウスの中に入る妄想が楽しいと話す遠藤さん。

「ミニチュアの人形を入れてしまうとドールハウスがその人のものになってしまう気がするので、建物や小物だけで人の気配を感じさせるのが一つの到達点ですね」

ただし、物語が出て良い案配になるので、かならず動物は1匹入れているそうです。

 

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これは映画「イージーライダー」に出てきそうなガソリンスタンド。

映画本編に出てくるわけじゃないけど、その世界観を想像して作ったドールハウスです。

  

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「人間は作らないんですけど、そこに住んでる人の設定はきちんとします。廃墟探索と同じで、どんな人が住んでたのか考えるのがおもしろいんですよ」

 

バイクの横にある台に注目してください。いくつか空きビンが乗っていますが、栓抜きはなく、スパナが転がっています。

自由を求めてハーレーで旅するイージーライダーの主人公。ワイルドな性格なので豪快にスパナで開けちゃうんじゃないかとの設定です。

 

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普通は水洗いしない革靴も、ワイルドに蛇口で洗って干してますね。

  

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「こっから先は時間にしばられないぜ」とバイクの脇には時計が捨てられています。

 

 

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これはアメリカ・ダウンタウンの治安が悪いエリアのコインランドリーをイメージしたドールハウス。制作期間は約半年。貧しい白人、ヒスパニックや黒人が独自ルールに従ってみんなで使っていて、待合い室のベンチもコーラで薄汚れています。

 

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店先に置かれたバイクもボロボロ!

バイクの写真をたくさん集めて、乗ってるうちにどこが焼けつくかを研究し、新品のプラモを汚していったそうです。 

 

断面が嫌いな男の子っていますか?

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廃車になった車が放置されてる廃ガレージ。

このハウスはクーロン城の10倍ほど手間がかかっていて、完成まで半年間かかった超大作。360°どこからでも鑑賞できるようにしているので裏側で補強することもできず、耐久度を高めるのが難しかったそうです。

 

 

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シャッターを巻きあげる内部機構まで作っています

 

この廃ガレージもそうなのですが、遠藤さんのドールハウスは断面へのこだわりが異常です。普通は黒一色にして済ませる断面部分を精密に作っています。

 

この写真はシャッターの断面。どうしてもリアルに作りたかったので、壊れたシャッターを見るために、廃墟を巡りまわって群馬で見つけたんだとか。

 

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「断面図鑑シリーズ」を何冊も持っていました


子どものころから断面が大好きで、断面図鑑シリーズは買いまくっていたとのこと。

「断面って嫌いな男の子いませんよね?空港の断面図、トキメキませんか?」と熱弁されていましたが、そんなシリーズがあること自体知りませんでした。

 

  

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タイヤの断面

 

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洗濯機の断面

 

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ドラム缶の断面

断面の美学がすごい!

とにかく断面を作りたくて、タイヤも洗濯機もわざわざ断面にしています。ドラム缶の中にはガソリンが入ってますし、横のコンクリブロックの隙間にはわざわざ空き缶が詰まっています。異常な世界…。

 

業界の異端児に修復の仕事がまわってきた

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遠藤さんはドールハウスの修復仕事もしています。

箱根のドールハウス美術館から、18世紀のアンティークドールハウスの修復依頼がある日届いたそうです。

 

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これはカリフォルニアのトレーラーハウス。

貧しく生活してるヒッピーが住んでるという設定。浜辺に止まっているので潮風であちこち錆びています。 

テレビでこちらのトレーラーハウスが取りあげられた2年前から、ちょくちょく修復依頼が回ってきたそうです。

 

「元々業界でも異端児扱いだったんです。ドールハウスの王道かくあるべしってのが当然あって。いろいろ言われてたんですよね。でも、ドールハウス協会の会長さんが頭の柔らかい方で、テレビの取材依頼で私を推薦してくれました。ドールハウス作家のほとんどが女性。私のような男性がほとんどいないため、競合のない世界でやれているんでしょうね」

  

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美術館やテレビ局からのドールハウスの制作依頼、レンタル依頼も多いそうですが、ミニチュア単体での制作依頼はあまり多くありません。

遠藤さんが作る物は異端過ぎて、お客さんが持ってるハウスとマッチングしないんだとか。

「ピカピカのお皿を飾りたい人は、私が作ってる廃墟感ある汚れた食器棚は買いません。一時期、迷走して売れそうなキレイなものを作ってたころもありますけど、やっぱりもっと汚したい、個性的にしたいっておもっちゃうんですよね」と笑っていました。

 

 

5分で酒瓶が作れちゃう

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プラモの捨てる部分(ランナー)を切ります

 

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使い終わったボールペンの替え芯も切ります

 

ワークショップを開いて、初心者向けにミニチュア作りを教えることもある遠藤さん。今回は5分もあればサクッとできちゃう酒瓶の作り方を教えてもらいました。

 

主な材料はプラモデルの捨てる部分ランナーと、油性ボールペンの替え芯ケースです。

音波で振動する超音波カッターを使うと、プリンのようにサクッと切れます。

 

 

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 替え芯のなかに樹脂を流しこんで、ランナーを刺しこみます。

 

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ランナーの先端にガラスビーズをくっつけ、飲み口を表現します。

これでもう大枠は出来たようなものです。

 

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紫外線照射装置に入れると樹脂が固まり、パーツがくっつきます。

  

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ビンの形は完成です。

 

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旅行鞄に貼るラゲージラベルを小さくプリントしてシール化したものです。

好きなラベルを選びます。

 

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先ほどの替え芯+ランナーに貼りつければ、酒瓶の完成です。

手先が不器用な私でも5分ほどで出来ました。

 

 

2017年8月、横浜ランドマークタワーで作品展があるよ

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遠藤さんに「これからも汚しの効いたドールハウスを作りますか?」と質問したら、こんな答えが返ってきました。

 

「突き詰めればドールハウス作りの技術は似てしまうので、観たことない材料を使っていたり、他の人が作らない物を作ってるのが差別化になります。

アメリカにはミニチュア椅子だけを作って40年という元家具職人もいます。なんでも作る私みたいなのは技術力で勝てるわけがない。総合力でおもしろいドールハウスを作っていきたいですね」

 

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遠藤さんの作品を生で見てみたいという方に朗報!

『遠藤大樹 作品展』

日程:2017年8月5日(土)、6日(日)10:00~18:00

場所:横浜ランドマークタワー33階パナホームビューノプラザ

料金:入場無料

記事では1つ1つ紹介しきれないほど細かいところまで作り込んでいるドールハウスの数々…。実物の情報量は異常です。貴重な機会なのでぜひ遊びに行ってください。

 

 

書いた人:観光会社「別視点」

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取材・文:松澤茂信 観光会社「別視点」の代表。「東京別視点ガイド」書いてます。(Twitter

撮影:齋藤洋平 観光会社「別視点」副代表。観光カメラマン。(Instagram

巨人軍の宮崎キャンプを23年間支えた「グラウンドキーパーおじさん」

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まだ暑い夏の盛り、宮崎のとある球場。

照りつける日差しの下、僕は観客席へと向かっていました。と、その時。隣にいた男性が突然話しかけてきたのです。

 

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f:id:tmmt1989:20170908135448p:plain「土はいいなあ!」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「???」

f:id:tmmt1989:20170908135448p:plain「やっぱり球場は土のグラウンドがいいよ。兄ちゃんもそう思うだろ?」

 

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面食らう僕をよそに、止まらぬ男性。

 

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「なんだあ、ぼんやりして。野球を見に来たんじゃないの? 高校野球の宮崎県予選」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「あ、はい」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「俺も23年間土をならしてたけどな、やっぱり球場に来ると胸が熱くなるなあ。野球はいいよ。長嶋さんを思い出すよな」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「(23年間…長嶋さん…?)あの、おじさんは何者なんですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「俺か? 俺はグラウンドキーパーおじさんだよ!

 

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「(だから何者なんだろう……)」

 

この時はまだ、単なる野球好きのおじさんと思っていたのです。「23年間土をならしてた」という言葉が気になり、そのまま話を聞いてみることにしました。

 

 

毎日女の子とLINEしてるから元気なんだ

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f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「兄ちゃんはどこから来たんだ?」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「東京からです。近くを通っていたら立派な球場が見えたので」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「だろう? この球場は毎年、巨人軍がキャンプで来るんだよ。キャンプの時期は大勢の人でここも埋まるんだから!」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「キャンプ地なんですね」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「おお、いい当たりだ!あのバッターはいいねえ、重心がしっかりしてるから球が伸びるね。しかし暑いな。ちょっとそこのファミレスでも行くかい」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「(いきなりだな)え、僕はちょっと…」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「いいからいいから、長嶋さんと撮った写真見せてやるからさ、来なって!」

 

 

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f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「いやー涼しいなあ、今年の夏は暑すぎだよ。なあ?」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「元気ですねえお父さん」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「当たり前だよ、球場で知り合った姉ちゃんたちと毎日LINEしてるんだから!

 

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「!!本当だ、しかもスタンプまで使いこなしてる。お父さん、おいくつですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「今年で72歳だな。私の年はどうでもいいのよ。この写真を見てよ」

 

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「え、LINEのお相手ですか! 可愛い…!! 電話帳もすごいですね、一人だけじゃなく何人も女の子の名前が……どこで知り合ったんですか??」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「だから球場だよ。巨人ファンでキャンプを見に来てた子が声かけてくれたの

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「さっきから巨人ってよく言いますけど、お父さんは巨人の関係者なんですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「だから言ってるでしょう。私は巨人キャンプの裏方を23年間してて、ずっとグラウンドキーパーをやっていたの。歴代の監督は皆んな知ってるよ。長嶋さんをはじめね」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「長嶋さんって長嶋茂雄さんですか! 大スターじゃないですか」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「そうだよ、長嶋さんはすごい人なんだから」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「お父さん、今更ですがお名前を伺ってもいいですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135307p:plain「ん? 関屋征雄だよ」

 

72歳で女の子と毎日LINEとは羨まし…いやいや、プレイボーイっぷりはひとまずさておき、気になるのは「23年間、巨人キャンプの裏方」の方です。

いきなり声をかけてきた人が、まさかそんな経歴だとは。数々のスターたちを間近で見てきた関屋さんの話にグンと興味が湧いてきました。

 

 

グラウンドキーパーとは?

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「いま調べたんですが、巨人の宮崎キャンプって60年近い歴史があるんですね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「そうだよ、最初は巨人だけだったけど、今は5球団(※二軍キャンプは除く)が来てるね」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「巨人、ソフトバンク、オリックス、広島、西武……5球団合わせて58万人もキャンプの観客が来てる※2017年、宮崎観光協会・日南市調べ)! 巨人だけで11万人。一大産業ですね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「昔はもっと大勢来てたんだから」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「お父さんはそんなキャンプの裏方をやっていたと…ところで、グラウンドキーパーというのは何をする人なんでしょう」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「球場の土の部分を整備する仕事だな。選手のケガを防ぐために重要なんだよ。なんたって選手には1億円とかのお金がかかってるだろ? 大事な選手がケガなんかしないように、グラウンドをちゃんと平らに整備しておくことは大事なわけ

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「それをキャンプ期間中は毎日やってたんですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「そうだよ、1ヶ月、毎日ね」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「その間お仕事はされてたんですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「電気関係の会社で働いてたね。会社の仕事は夜勤だったから昼間にキャンプの手伝いをしてた。キャンプ期間中は3〜4時間しか寝られなかったな」

 

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f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「なあに人間、寝なくても大丈夫なんだ。それに憧れの巨人の選手たちのために働けるんだから。こんなに楽しいことはないよ」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「グラウンドキーパーをしていて、他に大変だったことってありますか」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「雨上がりが困るんだ。キャンプの期間は決まってるから、球団としては1日でも多くグラウンドを使いたいでしょう。だから雨が止んだら、すぐ使える状態に整備しなきゃいけないの」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「雨が降れば、土のグラウンドは水浸しですよね。そこで腕の見せ所だと」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「そう。ただね、晴れ続きでも大変だよ。今度は水を撒かなきゃいけない。乾いてるとボールが跳ねすぎちゃう」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「ちょうど良い土の状態があるんですね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「だけど今はドームが多いから、グラウンドの土の状態なんてあまり考えなくてよくなってる。ただなあ、野球はやっぱり外だと思うけどなあ

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「だから最初に『土はいいなあ』と…!やっと理解しました」

  

 

“ミスター”長嶋茂雄伝説

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「それで兄ちゃん、この写真を見なきゃ始まらないでしょう」

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「長嶋さんだ!右が関屋さんですね。あっ、真ん中は原監督!さっきまでの話は本当だったんですね…」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「何言ってるのよ。この写真なんだけどね、長嶋さんの方から握手を求めてきてるじゃない。それがあの人のすごいところなんだよ。長嶋さんはね、お世話になった人に自ら握手をしに来てくれるの」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「長嶋さんほどの有名人になれば、普通はファンから握手をお願いしますよね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「そうだよ。私のことも覚えてくれててね、毎年ありがとう、と来てくれるんだ。そんな人にならなきゃいけないよ、兄ちゃんも」

 

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f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「ほれ、こっちはサインも入れてくれてるのよ」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「これはもしや、左手で?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「そう、左手で書いてくれたそうだよ。利き手の右が不自由になってしまったから、相当リハビリを努力されたんだろうね」

 

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f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain長嶋さんは器が大きかったね。人の悪いことを決して言わない。例えば監督だったら、普通はコーチや選手に対して厳しいことを言うでしょう。でも長嶋さんは『あいつを辞めさせろ』なんて言う人じゃなかった」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「コーチや選手を信頼していたんですね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「選手が女の子と色々あって、週刊誌に叩かれるようなことがあるでしょう。そんなときもね、長嶋さんは選手に『そんなに可愛かったか?』って言うくらい」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「選手と女の子、何組も思い浮かびますね…奥さんいるのに、とか…」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「バレるのはよくないよね。うまくやればいいのに。プロ野球選手っていうのはスターなんだから、元気なくらいでいいのよ

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「長年プロ野球選手を見てきたお父さんが言うと妙な説得力がありますね。長嶋さんが監督の頃は、キャンプのお客さんもすごかったですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「球場内に見物客が3万人いたら、球場の外にもう3万人見に来てたんだから。当時、長嶋さんを探そうと思ったら人の動きを見ればよかったの。人がワーッと動いてる方向に長嶋さんがいたから」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「それはすごい!」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「長嶋さんは時代が生んだスターだね。子供が好きなものは『巨人・大鵬・卵焼き』って言葉があったくらいだから」

 

野球の実力もさることながら、長嶋さんの人格も日本中の人々を惹きつけた理由なのではないでしょうか。目を輝かせながら当時のエピソードを語る関屋さんの様子が、なによりそれを裏付けているように思います。

 

さて、ここで僕は関屋さんに聞いてみたいことがありました。

それは以前に比べて下火になってきたように思える、野球人気について。今の状況は、長年野球に身を捧げてきた関屋さんの目にどんな風に映っているのでしょうか?

 

 

スポーツは浮き沈みがあるもの

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「僕が子供の頃って、巨人軍は松井や清原、高橋由伸、上原…と錚々たるメンバーのスター集団って感じだったんです」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「2000年くらいかな。あの頃が一番選手層が厚かったな」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「当時と比べて、今のプロ野球人気を正直どう思いますか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plainスポーツは浮き沈みがあるもんだからなあ。人気がある時っていうのは、スターがいるからなんだよ。みんなスターを見に来るんだ。でも、今は長嶋さんみたいな人はいないからね。そんなもんなんだよ」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「メジャーにも行く選手も増えましたね。スターがどんどん海外へ行ってしまって…」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「あれは良くないねえ。やっぱり近くで見られなくなっちゃうから」

 

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f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「宮崎でもね、少年野球をやる子供がとっても多い時期があったんだ。でも今は全盛期の半分くらいじゃないかな。子供の数も減ったしね。野球をする子供が減ってるけど、それは時代の流れでいいんじゃないかな

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「昔より娯楽の対象も増えたわけですからね」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「もう野球人口がドカンと伸びることはないだろうけど、野球の魅力が減るわけではないからね」

 

 

人生一度きりなんだから、好きなことをしたほうがいい 

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f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「やっぱり野球は好きですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「野球はいいよ。野球の話をしたら朝までいくからね。『あの時あの選手がいて…』みたいに終わらないんだ。あとはチームでやるじゃない。仲間は大事だよ」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「関屋さん、長嶋さんの話をしてる時とっても楽しそうでしたよ。そうだ、もし生まれ変わったら、選手と裏方とどっちをやりたいですか」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「……やっぱり選手かねえ。目立ったほうがいいよ。金稼いで、モテたいねえ。週刊誌に撮られるくらいボインちゃん狙ったほうがいい。人生一度きりなんだから、叩かれても目立った方がいいよ

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「今の時代に響く言葉…!! 楽しんだもの勝ちってことですね。今もグラウンドキーパーは続けているんですか?」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain「さすがに年だからね、数年前に引退した。キャンプ前後の手伝いだけはしとるよ」

f:id:tmmt1989:20170908135323p:plain「でも、まだまだお元気ですよね。女の子とLINEもしてるし」

f:id:tmmt1989:20170908135912p:plain遊んでないと老けちまうよ。やっぱりファンとしては、長嶋さんより先に死にたくないからね」

 

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裏方として球界のスターたちを見続けてきた関屋さん。そのパワフルさは、まるでスターたちのエネルギーが乗り移ったようでした。

 

「遊びがないと、老けちまう」の言葉は、彼の口から出ると、うんと説得力をもって響きます。こうして若者と話すこともまた、関屋さんの「遊び」なのでしょう。

再び球場へ行くと言って去った関屋さんは、どことなく肌ツヤが良くなっているように見えました。

 

 

おわりに

関屋さんと別れてすぐ、1通のLINEが届きました。

 

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早い…そして、なんてマメさ。こんなむさ苦しい男にまですぐお礼を…!

グラウンドキーパーおじさんが若い女子と仲良くなれる秘訣はこれなのかと感じた瞬間でした。

 

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

 

「解体作業」ってどういう仕事? 未知の職業を一日体験したい!

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はじめまして! ライターのみくのしんと申します。

現在、時刻は早朝6時。前日に職場で飲み会があったため、死ぬほど眠そうな顔で申し訳ありません。

 

こんな朝っぱらに何をしているのかと言えば、実はとある職業を体験しにきたのです。

それは―

 

 

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解体作業とは―

新しい建物を立てる際に、古くなった建造物を取り壊して更地に戻す職業。

 

昔、屈強な男性がハンマーか何か(?)でドアをバキッバキに壊してる映画をみたことがあります。それ以来僕は「あぁ、気持ち良さそうだな。やってみたいな」とずっと思っていたのです。

確か「シャイニング」とかいう映画だったかな?

 

シャイニング (字幕版)

シャイニング (字幕版)

 

 

 

 

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というわけで、店舗や家屋の解体工事業を行っている『株式会社トーシン』を訪れてみました! 今日はこちらで、一日職業体験させてもらいます! 解体するぜえぇ!

 

 

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株式会社トーシン

埼玉営業所|〒352-0011 埼玉県新座市野火止2-4-54

公式HP|http://www.tosin.co.jp/index.html

 

 

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株式会社トーシンの社長・柴山さん

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「はじめまして。27歳フリーターの、みくのしんです」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「はい、よろしくお願いします。一日だけですが、頑張ってくださいね!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「あの~僕、握力27kgなんですけど、大丈夫ですかね?(27kgだと小学校高学年くらいの握力)」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「大丈夫」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「まだ1ミリも働いてないのに、そこまで断言する?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「どの仕事にも言えるけど、やる気があるかどうかが一番重要だから。難しく考えないで、とりあえず現場に向かいましょう!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plainキュウン…心強い…/// それでは今日一日、よろしくお願いします!!」

 

 

 

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では、さっそく作業現場へ向かいましょう。今日の現場は事務所から車で30分くらいの場所にあるそう。

僕は、作業員の方が運転するダンプに同乗させてもらうことになりました! よろしくお願いしま~す!!!!

 

 

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ぶぅううう~ん……ブロロロロ……

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「……」

 

 

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チッカチッカチッカ

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「…………」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「…………」

 

 

f:id:jimocoro:20170915190906j:plain

ブロロロロ……

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「……」

 

 

f:id:jimocoro:20170915193415j:plain

ブロロロ~……

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「………………」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「(気まじぃ……)」

 

 

~現場到着~

 

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広すぎて僕がフィギュアみたいに見えますが、ここが今日の現場です。何もない!

解体状況でいうと、今は三分の二くらいが終わっているそう。

 

 

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ちなみにこれが2週間前、解体スタート時の写真。立派な家が建ってたみたいですね 

 

 

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こちらは1週間前の現場。幻影旅団の基地じゃん! すっげえ!

  

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「大体どれくらいの期間をかけて解体するんですか?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plainこのくらいの建物なら3週間近くで解体できるね」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain3週間!? 思ってたより早い! あの、少し気になるんですけど、コンビニとかってどれくらいで解体出来るもんなんですかね?

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「コンビニかぁ。解体した事無いけど、多分1週間もあれば余裕で解体(こわ)せるかな」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「作るのは時間がかかるのに、破壊は一瞬……人間関係と同じですね」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「?」

 

 

就業開始~午前休憩まで

 

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朝礼で今日の作業を確認し、いよいよお仕事体験スタート! 基本的には8時~17時までが就業時間です。

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「まずはガラ出しを手伝ってもらおうかな」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「???ガラとはなんですか?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「簡単に言うと解体作業で出たコンクリートのゴミだね。大きいガラはユンボ(ショベルカー)を使うんですが、細かいのは人間の手でやるんです」

 

 

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細かいって聞いてたけど、結構重い!

 

 

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自分以外の全員がスゲーでかいガラを持ち運んでる! よし、僕も……! 僕…………も……

 

 

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ポトッ……

 

 

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ふう……

 

 

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ガラをある程度集めたら、ユンボが一気にダンプカーに積み込みます。

 

 

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ドザァァ……!

 

“ガラをユンボで運び、トラックの上で荷を解く”

単純に見えますが、このコンビネーションをスムーズに行うには、相当な経験が必要です。

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「みくのしん君も、トラックの上に乗って作業してみない?」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「ありがとうございます! 今日は遠慮しておきます!!! シャッス!!

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「まあそう言わずに! せっかく体験にきたんだから」

 

 

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社長の図らいで、トラックの上での作業を手伝わせていただける事になりました。ありがとうございます……。

 

 

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ゴワアァァアアンッ!!!

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain恐怖恐怖恐怖!!! こわいって!!! 大丈夫!? コレ死なない?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「大丈夫だって!! ただ、ユンボの真下には行かないように。コレはマジで

 f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「えぇえぇええ~…」

 

f:id:micu0904:20170912180726j:plainズザザザザザザザザ………

 

 

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ガンッ! ガジャラララララガゴ!!!

 

 

f:id:micu0904:20170912180825j:plainザラハァ…

 

 

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「…………はい?」

 

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「ワ~ッハハハハ!!上出来上出来!!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「はぁ~すごい迫力だった……でも、ユンボのアームが近くに寄ってきた時は、なんか、凶暴な恐竜が心を許して頭を垂れたみたいで可愛いですね

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「その表現は全然わかんないけど、今ユンボを運転してる人は、この道40年のベテランなんですよ。ムチャクチャうまいから、全然怖くなかったでしょ?」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「40年も! こんなにアームの操作が上手いってことは、ひょっとしてUFOキャッチャーとかも上手いのでは!?

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「いや、ド下手」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「ド下手なんかい」

 

ここで、10時になったため午前の休憩。

トーシンでは、お昼休みの1時間とは別に、10時と15時に30分ずつの休憩が入ります。休憩時間、多くね?

 

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休憩で飲んだスポーツドリンクは、一生忘れることがないだろってくらいうまかったです。

 

解体を生業とする漢(おとこ)たちは、一体どれほどハードボイルドな話をしてるんだろう?と興味があったのですが、ド下ネタが多かったので僕でも楽勝で参加できました。

この休憩で、かなり職場に馴染めた気がします。こういうのが肉体労働の良いところですね!

 

 

 午前の作業再開~昼休みまで

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「よし、じゃあ作業を再開しようか!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「次はどうしたらいいですか?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「さっき積んでもらったガラを、回収場へ持っていくのに同行してもらいましょう」

 

 

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このダンプに、午前いっぱい集めたガラが積み込まれています。

同行させてもらうドライバーの方にも挨拶して、と。よろしくお願いしま~す!!

 

 

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ブロロロロ……

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「……」

 

 

f:id:jimocoro:20170926155430j:plain

ブロロロロ……

 

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「……」

 

 

 

f:id:jimocoro:20170926155048j:plain

ブロロロロ……

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「あ、あの……え~~~っと、好きな映画とかって……あります?」

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「…え? 映画? う~ん……映画、あんまり見ないんだよね」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「あ……」

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain今までの人生で、映画館に行ったのは一回だけだなぁ……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「ちなみに、その一回は何の映画を観たんですか?」

 

 

f:id:micu0904:20170913231006j:plain「MASK(マスク)」

 

 

マスク(字幕版)

マスク(字幕版)

 

 

 

 

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f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「そうですか……」

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「うん」

 

 

 

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到着しました。

ここは「リサイクルセンター」。ガラを回収・粉砕し、また再利用できるようにするところです。様々な会社がこの場所へガラを捨てに来ます。

 

 

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広大な敷地は砂と石塊で埋め尽くされ、粉塵で煙る中を重機が行き交っています。シンプルにカッケー。男の心、ユンボに鷲づかみっ!

 

 

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ゴゥン…ゴゥン…

 

 

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ガラッ…

 

 

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ドガララララアアアァァ!!!ドラァ!!

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「ウオオオ!!!すげえ!」

f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「はい終了! それじゃ現場に戻りましょうか。その前に、ちょうど昼休憩だから、コンビニで何か食べようかな」

 

 

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カラダ動かしてると本当にごはんがうまい! 何を食べても究極のメニューです。

 

この作業員さんに聞いたところ、解体業には大きく分けて2つの職種があるそうです。

1つは「現場」=実際に現場で手や重機を使って解体する人。この中でさらに「作業員」「重機オペレーター」に分かれます。

もう1つは「ドライバー」=解体で出たゴミなどをリサイクル場なんかに持っていくのを何往復も繰り返す役割。

 

※もちろん、それだけをやるということではなく、例えばドライバーの人も運転以外の時は現場の手伝いをします

 

 

午後の作業開始~午後休憩まで

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リサイクル場から戻ってきました。ふと見るとホースで水を撒いてる人が……?

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「あの、ちょっと聞いてもいいですか? あそこで水撒いて遊んでる人は何なんですか?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「遊んでるわけじゃないよ! 水を撒いて濡らしておけば、粉塵が舞い上がらないんです。粉塵が舞っちゃうと、近隣の方の迷惑になるからね」

 

 

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僕も水撒きをさせてもらいました。こりゃ~楽だわ。

 

 

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ついでに水 飲もっと。は~ウんメー!

でもチョロチョロとしか出ないな。もうちょっと……

 

 

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ダワッフ!!

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「何やってんの? マジで」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「すいません……」

 

 

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続いて呼ばれたのは現場の隅っこ。

ユンボなどで手当たり次第に掘削してると、ガス管などを傷つけ、“終い”になってしまいます。そのため、ガス管の周辺は手作業で掘っていくんだそう。

 

 

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f:id:jimocoro:20170927201212p:plain「スコップだろうとガス管傷つけちゃったら大爆発するから気をつけてね」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「そんなんばっかりかよ。ちょっと慣れたわ」

 

 

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一心不乱に掘り続けていると、作業員の人に「よく頑張ってくれるね~」と褒めてもらいました

 

 

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が、今までの人生で使ったことない筋肉を使うせいか、この作業はド直球でしんどかったです

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plainアラバスタで砂掘りしてたトトおじさんかよ! 砂に大敗かましてるわ」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「すごい汗かいてるね……よし、ちょうど休憩時間だから、水でも飲んできてください。熱中症が一番怖いから」

 

 

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f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「やったー休憩だー!! 水、水……っと!!」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「いや、マジで誰?」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「僕です。みくのしんですよ。少し頭皮が解体されちゃってますが(笑)」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「あぁ、うん」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「ウケもせんのかい」

 

 

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最初は30分過ぎた段階で「これは体力的に無理かも」と思ったんですが、気づけばあと1時間半で作業終了。

 

頑張ろう!

 

 

午後の作業再開~終了まで

 

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作業再開後は再び荷台に乗り、ハンマーで大きいガラを小さくする作業をします。

これこれ、こういうのがやりたかった!

 

 

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この大きいガラを―

 

 

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ドゴォッ!!

 

このように壊していきます。そうすることでかさばらなくなり、より多くのガラを積むことが出来るわけですね。

 

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「コツとしては端の方から少しずつ崩していくイメージだね!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「なるほど! 端から攻めていくことでより細かく砕く事ができるんですね!」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「あと、ハンマーでガラを割る時に、ドロが顔にかかることがあるから、アタックの瞬間は目に気をつけてね!」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「またまた~! ハンマーで叩いてドロなんてかかります~~?(笑)」

 

 

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よっしゃ行くぞオラァァ…!!

 

 

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どっこいしょお!!!

うおおぉぉぉ最高~! 

 

 

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もいっちょソラァァァ~~!

 

 

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ダッシャーーーーー!!!

破壊のカタルシスが両腕にジ~ンと……!

 

 

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 あれ?

 

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「めっちゃドロ飛ぶじゃないすか!」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「言ったよね?」

 

 

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水撒き用のホースで顔を洗います。もう完全に職場に馴染んできました! 緊張もなくなってきたし、ここからは「使えるやつ」になるぞ!

 

 

 

 

と思ったら、

 

 

ここで―

 

 

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終わった……!

 

 

作業を終えて

 

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f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「おわったー!! もうヘトヘト……」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「お疲れ様!!今日はどうだった!?」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plainマジで疲れました……運動不足がたたってます」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「ハハハハ!!それじゃ事務所の方に戻ろうか!」

 

 

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f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「では、本日の給料をお渡しします! 本来は日雇いはやってないんだけど、今回は『1日分に換算した場合のギャラ』を渡しますね」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「よっしゃぁ~! い、いくらですか?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「1万円です!!」

 f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「うわぁ、ありがとうございます! 全然役立たなかったのに……! ちなみに、新人の給料っていくらになるんですかね?」

 

 

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f:id:jimocoro:20170927201125p:plain最高だと年収600万くらいかな……」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「600万!?すげ!!そんなに!?」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「ユンボに乗れるとか、即戦力になるスキルを色々持ってればって話だけどね。ちなみに免許取得なんかはサポートするよ!

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「夢あるなぁ」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「うちはちゃんとボーナスもあるし、社員旅行もある。仕事仲間は家族だと思ってるんです」

f:id:jimocoro:20170927201110p:plain「思ってたんと違う。もっとカイジの地下強制労働施設みたいな世界かと……」

f:id:jimocoro:20170927201125p:plain「失礼だな!(笑)」

 

 

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ということで、しんどかったけど充実した一日体験が終わりました。

最後に一日体験して気づいたことを書いておきます。

 

・年齢も学歴も関係ない、大事なのはヤル気だけ

ただし高給がほしければ免許や資格の取得を(サポートしてくれます)

 

・体力はめちゃめちゃ必要

ただ、まだカラダができてなくて一番しんどいハズの初日ですら乗り切れました。なので慣れたら何とかなると思う

 

・服装は長袖・長ズボンで

服の素材はスポーツ用のやつ(汗を吸い込んで重くならないやつ)がおすすめです

 

・現場はいつも同じではない

今回体験させてもらった現場も、初日と終わりかけでは全然違うそう(ちなみに今回のは楽なほうって言ってました)。また、屋外だけではなく、屋内での内装解体もあります

 

・映画は「MASK」だけで十分

ジム・キャリーは最高

 

また、解体と言っても「作業員」だけではなく「重機オペレーター」や「ドライバー」と役割があります。

モデルとしてトーシンさんの例を挙げると、

重機オペレーター|日給12000円~

解体作業員|日給10000円~

ダンプ運転手|日給10000円~

こんな感じ!※2017年現在のデータです

 

解体に興味が出た方はぜひチャレンジしてみてください。

現場からは以上になります! ありがとうございました! 

 

 

 

 

「身体を動かすアクティブワークはこちら」

 

 

(おわり)

※今回のレポートは、あくまでライターが体験させてもらった現場に限定したものです

 

ライター:みくのしん

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本名、高杉 未来之進(たかすぎ みくのしん)と申します。それ以外の特徴は1mmもありません。1990年生まれ東京育ち、将来は大きい声を出しても良い部屋に住むのが夢です。ご検討の程お願いします。Twitter:@no_inngurissyu 

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 20話「やまんば愛用の品」

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<柳田さんと民話・一覧>
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<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』11話~20話 まとめ読み!

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<柳田さんと民話・一覧>

11話~20話 まとめ読み

 

11話|彦八ぞうに

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12話|昔話の教訓

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13話|ひとり旅と女子と昔話 

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14話|桜の名所で聞いた話 

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15話|聞きあきた昔ばなし 

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16話|カフェと民話と 

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17話|温泉にまつわる民話

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18話|セミの呪い

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19話|お孫さんに一冊 

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20話|やまんば愛用の品

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「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

f:id:eaidem:20160322122138j:plain

1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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ウンコを土に還さない現代生活は、想像以上にヤバかった

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こんにちは、ライターの根岸達朗です。

 

突然ですが、皆さんは普段どうやって用を足していますか?

トイレでうんちやおしっこをしたら、そのまま流して終わり……というのが、おそらく大半の人の排泄スタイルなのではないかと思います。

 

たとえばそれを、人間の生活サイクルで考えると、このような図に表せるのではないでしょうか。

 

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では、次のような場合だったらどうでしょうか?

 

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これが今回の記事のテーマになる「パーマカルチャー」の仕組みです。

  

パーマカルチャーは、英語のPermanent(永久)とAgriculture(農業)をつづめた造語で、ざっくり言うと、上記のイラストで示されているような循環を生活のなかでひたすら繰り返していくことを意味します

 

そして、その仕組みを生活のなかに取り込んで、人の暮らしもそこにある自然も同時に豊かにしていくことを目指すのです。

 

もしパーマカルチャーが人間にとって、生命にとって、正しい循環の仕組みであるとするなら、現代社会のシステムってだいぶヤバいことになってる気がするんですが、僕の気のせいでしょうか。こんなこと思うのは、僕がオーガニックくそ野郎だからでしょうか。

 

そこで今回はこの考え方に基づいた循環生活を山梨県北杜市の自宅で実践している、パーマカルチャーデザイナーの四井信治さんを取材してきました

 

うんちやおしっこを土に還すってどういうこと!?

おしえて、四井さーん! 

 

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話を聞いた人:四井信治(よつい・しんじ)さん

パーマカルチャーデザイナー、土壌コンサルタント。“人が暮らすことでその場の自然環境・生態系がより豊かになる”パーマカルチャーデザインを山梨県北杜市の自宅にて実践。日本文化の継承を取り入れた暮らしの仕組みを提案するパーマカルチャーデザイナーとして、国内外で活動中。2児の父。

   

すべては土に還る 

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はい! というわけでやってきました四井家。

 

今回のカメラマンは、四井さんともつながりのあるアートディレクターの土屋誠さん。土屋さんは東京からのUターン移住者で、現在は山梨の暮らしを伝えるフリーペーパー「BEEK」を手がけるなど、地元を拠点に精力的に活動しています。

 

f:id:ONCEAGAIN:20160608103449p:plain「ジモコロ初登場! よろしくお願いします!」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いやーそれにしてもすごい家! でも、肝心の四井さんが見当たらないなあ……」

 

……ダダッダダッダダッ

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「あ、四井さんですか!? 今日はよろしくおねが……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「ああ、悪いんだけどさ! このヤギちょっと見ててくれる? すぐ戻るから!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「え? はい…!」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「ちょっ…すごい力!」

 

……ああッ!!!!!!

 

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ドンッ!!!!(頭突き)

 

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いってえ!!!!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103449p:plain「いい絵が撮れました」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「おい、鬼か」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「はっはっは。野生動物の力ってすごいでしょう

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「はぁ……思ったよりもかなり……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「この子はキューちゃんって言うんだけど、うちでは草刈り担当だね。土に杭を打って、草ぼーぼーのところに紐でつなげておくでしょ。朝から夕方までの間に草がなくなってて、食べた後がきれいな円になってるんだよ」 

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「ええ! ヤギってそんなに草食べるんですか!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「すごいよ。で、食べたら土の上に糞をするでしょ。土のなかにはみみずとか、そのほかにもたくさんの微生物がいるから、彼らがその糞を分解するんだ。結果的にそれが堆肥になって、土が豊かになるんだよ。で、今日は何しにきたの?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いや、パーマカルチャーについて教えてもらおうと……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「ふーん、そうなんだ。じゃあこっち来て。見せたいものがあるから」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「おお。ウサギやニワトリも飼ってるんですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「うん、ここは堆肥小屋だよ。家畜の糞はここにある土で堆肥化してるんだ。ストックしておいて、タイミングを見計らって畑に使うんだよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「へえ、畑に。それにしても、家畜が集まっている場所にありがちなにおいがほとんどないですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだよ。小屋のなかにこの土があるからね。土の上で糞をさせればそのまま堆肥化するでしょ。ちゃんと発酵すれば、いやなにおいってほとんどないんだよ。だから、人間の糞尿もここに撒いてるよ。子どもたちもここでおしっこしてるし」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「え、おしっこも!?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plainおしっこが大事なんだよ。人間のおしっこってのはさ、うんち以上に自然にとっていい養分が入ってるの。だからうちの家族はみんな専用の瓶におしっこを貯めているんだよ。ほら、これにね」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「まじっすか!すごい……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「それにね、おしっこってのは、人間のテリトリーを示すためにも、土に還すことが大事なの。ほら、最近は野生動物が山から人里に降りてくるじゃない? あれは人間が山におしっこをしなくなったからなんだよ。人のにおいを感じないからどんどん降りてくる」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「おしっこが結界になってた!?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだよ。うんちやおしっこを土に還すっていうのは、全部意味があるんだよ。ついでだから、僕が普段使ってるトイレも見ていきなよ」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「へ、これがトイレ!?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「うん、堆肥小屋と同じ仕組みだよね。このなかに土や枯葉が入ってる。ここで用を足したら、容器の横についてるレバーをぐるぐる回して、なかのギアでかきまぜるの。座ってみる?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いいんですか? じゃあ、失礼して……」 

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「どう? くさくないでしょ?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「……ですね。うちは水洗トイレなんでなんかすごい新鮮な感じです」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「僕はここでドアを開け放って用を足しながら、スマホでFacebook見てるの(笑)。これは僕専用になってるんだけど、だいたい3ヶ月くらい使えるかな。なかの土が堆肥化したら、これもストックしといて畑に撒くよ。そうやったら無駄がないじゃない。でも、今の世の中って水洗トイレに流して終わりって感じでしょう。そんなことずっとしてたらさ……」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「文明が滅びるのは間違いないよ」 

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「なんかすごい話になってきた」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「だって、陸上のミネラルが海にどんどん流れてるんだよ。それが還ってくればいいけど、還ってこれないんだ。川も護岸しているから、流れている途中で栄養分を回収できないしね。当然生き物は少なくなるよ。土の質も変わってきているし、作物に含まれている栄養分も、60年前に比べたら10分の1くらいになってると言われているんだ。長い年月をかけてゆっくり変化してるから、みんな気付かないんだよね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「ケンシロウにお前はすでに死んでいるって言われてるような気がしてきました。大丈夫か、地球」

 

循環が人と自然を豊かにする

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「でも、とりあえず、自分のうんちは自然の力で土に還すことができるわけで、それを覚えておくだけでもいいかもしれないですね。住環境的にできるできないはあると思うので」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだね。ただ、僕はそれだけじゃなくて、自分が堆肥化させた土で食べ物を育てたいし、そこで育った食べ物を食べて、またそれを住んでいる土地に還していきたいんだ。その循環に意味があるんだよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「意味?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「うん。これは僕の持論なんだけど、食べるっていうのは、体のなかにものを集める行為なの。食欲が出たら、なんとしても食べ物を見つけなくちゃって、いろんなところを歩いて回ったり、ときには誰かに食べ物をもらったりとかするわけじゃない。やり方はさまざまだけど、結果的に人の体にはものが集まる。で、食べたら用を足す。それを自分が住んでる土地に還すということは?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「えっと……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そこに栄養が集まるんだよ。つまり、その人がそこに暮らせば暮らすほど、その土地が豊かになる。土地が豊かになるということは、ほかの生き物の生態環境にも良い影響を与える。それを繰り返していくことで、人も自然も豊かになっていくんだよね。あらゆる生き物は本来、そういう循環のなかに生きている。それが命の仕組みであり、その仕組みに沿った暮らしをしていくのが、僕の考えるパーマカルチャーなんだよ

 


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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「命の仕組みかあ……すごい話だ

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「いやいや、当たり前の話だよ。僕らは生き物だから、生き物の仕組みに沿っていろんなものごとを考えていくのが一番間違いがないのよ。だって、40億年近く生き物としてやってきたわけだからさ、その仕組みに沿わないのは愚かとしか言いようがないじゃない?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「くわー!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103449p:plain「どういうリアクションだよ(笑)。でも、考えさせられるよね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「考えさせられます。まじで」

 

手を動かして、考える

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103449p:plain「そういえば、四井さんってこういう暮らしをしているからなのか、腸内細菌がすごいことになってるそうで」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「腸内細菌? なんか関係あるんですかね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「ああ、テレビの『世界ふしぎ発見』に出たときに調べてもらったんだよ。腸内細菌には善玉菌、日和見菌、悪玉菌っていうのがあるでしょ。それらの理想的なバランスって、2:7:1と言われているんだよね。つまり善玉が2に対して、日和見が7、悪玉が1の割合がいいとされているんだ。でも、うちの家族はさ……」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「善玉が5割もあったんだよね」

 

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「なにそれすごい! 循環をくり返すと、善玉が増えるの⁉︎」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「いやーよくわからないんだけどね。ただ、腸内細菌を住んでいる土地に還すっていうのは、命の仕組みに沿った循環だから、それが人間の体に良い影響を与えてくれるならうれしいよね」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いやあ、一貫してますね。なんか、自然のなかで、壮大な実験をしている感じがします」 

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「ほんと楽しいんだよなあ、これが。寝るのも惜しんで考えたりつくったり、一日中なんかずっとやってるもんねえ。ビニールハウスもつくるし、農具もつくるし……最近はものを持たない生き方っていうのもあるみたいだけど、僕の暮らしではものが必要なんだよ。だから、必要なものはできるかぎり自分の手を動かしてつくるよ。ほんとは手を動かすっていうのが考えることじゃない? 頭のなかだけで考えたって、考えてるとは言わないんだよね

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「くわー!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103449p:plain「だからどういうリアクション?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain情報なんていうのは、全体の一部でしかないんだから、手を動かさないとだめなんだよ。自然っていうのは、人知を超えてるんだ。自然は僕たちが考えているよりも、ずっとずっと、深いんだよ

 

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自作の回転式コンポスト。主に落ち葉が入っていて、これで生ゴミを発酵させて堆肥化する。堆肥づくりは切り返しと水分調整と、窒素と炭素の割合が重要。小さな力でも回転させることができるので、子どもたちの遊び道具になっている。

 

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台所の排水をろ過する「バイオジオフィルター」。ブロックのなかは石の層になっていて、そのなかに数十万匹のミミズが生息している。水をろ過する(排水中の有機物を分解する)のは、石に棲んでいる微生物の役割。ミミズが根詰まりを食べて、浄化の手助けをしている。

 

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バイオジオフィルターで浄化された水は配管を伝ってこの「ビオトープ」に流れる。ビオトープにはメダカやカエルなどの生き物が生息している。水辺にはみつば、せり、しょうぶ、わさびなど、食べられる植物から薬草になる植物までわんさか。

 

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四井家の給湯システムのひとつが、屋根に設置している「太陽熱温水器」。太陽の熱で水を温め、それを貯めておいて給湯する。太陽熱温水器 - Wikipedia

古い技術だが、太陽光パネルなどの自然エネルギーを利用する機器のなかでもエネルギー効率が高く、費用対効果もいいらしい。設置費用は40〜50万円ほどだが「すぐにペイできるよ」と四井さん。

 

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四井家のもう一つの給湯システムがこの「マッチボイラー」。太陽熱温水器は雨の日になると使えなくなるため、そういうときはこのマッチボイラーに切り替えてお湯をわかす。紙ゴミなどはすべてここで燃やすことができる。

燃料は庭に自生している竹。竹は体面積あたりのエネルギー生産量が高く、「非常によく燃える」らしい。竹1本で約200リットルの水を沸騰させることが可能。

 

都会でもパーマカルチャーはできる

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「いろいろ見せていただきましたが、四井さんの仕事っていうのは、こういうライフスタイルを広めていくことなんですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだよ。一個人、一世帯の暮らしをあたかも『小さな地球』のような仕組みにしていくっていうのが僕の考え方で、そういう暮らしをしていきたい人に、それを実現するための方法を提案しているんだ。だから家づくりのアドバイスから技術指導、新しくできる施設の監修や本の執筆など、いろんなことをやってるよね。今はまだパーマカルチャーを取り入れた暮らしをしている人は、地球全体から見たら点のようなものかもしれないけれど、その点が増えればそれがいずれは線になる。線と線が面になって、いつかは全体がほんとにいい仕組みに変わっていったらいいと思ってるよ」

 


f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「たしかにこの考え方で生きる人が増えたら、世界が変わりそうですね。でも都会に住んでる人がこれを実践しようとしても、どこから手をつけていいかわからない気が……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「家にベランダとか庭とかある? 小さくてもいいから」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「あ、携帯に写真が入ってたような。東京郊外のマンションなんですが、一階なので一応小さい庭がありまして……」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「ふーん、なるほどなるほど。いいじゃない。十分パーマカルチャーできるよ。まずは生ゴミコンポストとかやったら? 探せば小さいのも売ってるしさ。トイレは囲いつくらないといけないから、ちょっと難しいかもだけど」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「実はコンポストは昔、適当なゴミ箱に土を入れてチャレンジしたことあるんですよね。でも、ふたを開けたらハエがわーっと出てきて……」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「それは、炭素分が入ってないからだね。堆肥化させるには、窒素分と炭素分のバランスが大事なんだよ。炭素分を増やすには、そのへんに落ちてる枯葉を入れたら大丈夫」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「おお、そうだったんだ!」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plainどんなに小さな単位でもいいからやってみるのが大事だよ。一度生態系ができれば、自然っていうのは自己増殖するからね。あとはそれを広げていく力を利用していけばいいんだ」

 

パーマカルチャーを楽しむ

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「循環が大事なのはすごくよくわかりました。でも、現代の暮らしってそれすらも意識させないくらい、遠いところにいっちゃってる感じはありますよね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだなあ、今の人たち、特に都会に住んでる人たちって、水耕栽培みたいな暮らしをしてるわけでしょう。土を必要としない暮らしというか、お金さえ払えば、一応生活は成り立ってね。でも、本来の暮らしってそういうものじゃないんだよ。だって、暮らすっていうのは、汗水垂らして食べ物をつくったり、暮らしていくための道具をつくったりっていうものだったわけじゃない。今は分業化が進んで、お金の仕組みにそれが忘れられちゃってるのよ。だから一個人、一世帯の自立性がなくなってしまったわけで」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「たしかに自分が考えればできることも、必要以上にほかの人に委ねているところがあるかもしれませんね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「別に自給自足をする必要はなくて、他人に委ねるところは委ねてもいいんだよ。社会は依存しあうことでできてるから。ただ、委ねすぎるといざというときに自分では何もできなくなってしまう。だから自分でもできることは、ある程度自分でやれるようになっておいた方がいいんだよ。それをさらにレジャーみたいにやれたらさ、やっぱり楽しいじゃない?」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「そうすね、無理なくやっていく方向を目指せたらいいなとは思います」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「そうだね。ただ、今の世の中ってさ、残念ながら自立性が失われているわけ。そうすると、どっかで集約的にインフラを整備しなくちゃいけなくなるんだけど、たまたま今の社会がぜんぜん命の仕組みと真逆のことをやってるから、どんどん国土が痩せていっちゃってるんだよ。社会のインフラが命の仕組みに沿った暮らしになっていれば、ほんとうはそこに人が暮らせば暮らすほど環境はよくなるはずなんだ

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「人が暮らせば暮らすほど環境がよくなる」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「本来はそうだよ。僕らは生き物なんだから、命の仕組みを社会や個人の暮らしに応用すれば、みんなもっと自分のペースで生きていけるようになるんだよ。パーマカルチャーの世界には『適正規模』っていうのがあるんだけど、今の世の中ってお金とか機械に人間のペースを合わせているから、それに追いつけなくてしんどいんだよね

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「人類は息切れしながら、お金や機械のペースに追いつこうとがんばりすぎてるわけか。パーマカルチャーが、命の仕組みにそって無理なく生きることだとしたら、それは今の時代に普遍的な価値を与えてくれるものかもしれないですね」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain命の仕組みで説明できないものはないんだよ。自然だけじゃなくて、会社だってそうだよ。命の仕組みがちゃんとデザインされている会社は命があると言ってもいい。昔のホンダなんかはそうだよね

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「なるほど……おもしろいですね」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20160608103503p:plain「でもね、僕はパーマカルチャーが答えだとは思ってないよ。まだ発展途上だしね。でもそれが自然の仕組みを本当に応用した考え方だとしたら、パーマカルチャーはすべての人にとって正しいものだと思うんだ。もし都会でもやっと考えていることがあるなら、まずは手を動かしてやってみたらいいんじゃない? きっと楽しいよ」

f:id:ONCEAGAIN:20160608103442p:plain「そっかあ、ありがとうございます。なんか不思議と生きる勇気が湧いて気がするなあ。楽しかったー!」

 

取材を終えて

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パーマカルチャーの考え方に基づいて、命の仕組みに沿った暮らしをしている四井さん。植物を育て、生活の道具をつくり、子育てをして……なによりも楽しそうに日々を送っている姿が印象的でした。

 

生きている間に人類が滅亡するくらいの劇的な何かってもしかしたら起きないかもしれません。でも、僕たちが「小さな宇宙」をつくっていくことで、少しでも未来が明るいものになるならそれにこしたことはないし、そのためにできることがあるならやっていくっていうのが、人として素直で気持ちのいい生き方のようにも思いました。

 

人と自然のつながりは、都会生活のなかにいると感じにくいのは事実。かといって、満員電車に揺られながら社会への不満を募らせても、人生は楽しくなんてならないわけです。だったら、パーマカルチャーしかないでしょ。命の仕組みに沿っていくしかないでしょ。

 

その方が楽しそうでしょう!

 

というわけで、僕は取材後、ヤフオクで早速コンポストを落札。

価格は4千円でした。飲み会一回ガマンすればいいんだから安いもんだ!

 

それがこちら↓

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やり方はこのなかに土や枯葉を入れて、生ゴミをぶちこんで回すだけ。

もう中身はセットしてあるので、あとは回すだけという状態になっています。

 

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それではただ今より、記念すべき第一回転を行います。 

 

いくぞぉ……ふんっ!

 

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今日が僕の循環記念日。

 

ライター:根岸達朗

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1981年、東京生まれのローカルライター。1児の父。多摩ニュータウンの端っこで子育てしながら、移住に想いを馳せてます。Mail:negishi.tatsuro@gmail.com/Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗

登山家・服部文祥に聞いた「都会でもサバイバル」する方法

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ライターの根岸達朗です。 

 

みなさん、ここにいる生き物がなんだかわかりますか?

 

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ミドリガメです。

 

正式名は「ミシシッピアカミミガメ」。

 

元々はアメリカ南部からメキシコ北東部の国境地帯に住んでいたカメなのですが、ペットだった個体が都市部の河川や沼で繁殖して、今ではイシガメなどの日本原産のカメの生息を脅かす要注意外来種と見なされています。

 

実はこのカメ・・・

 

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食べられます。

 

しかも、めちゃくちゃ旨いらしい。その味は、超高級地鶏に勝るとも劣らないという話。スッポンならわかるけど、都会の川に生息するミドリガメが食べられちゃうなんて、ちょっとびっくりじゃないですか・・・???

 

実はここにご紹介したい本があるんです。

 

アーバンサバイバル入門

アーバンサバイバル入門

 

『アーバンサバイバル入門』 

 

これは登山家で作家の服部文祥さんが、都会(アーバン)暮らしで実践しているサバイバルノウハウを紹介した一冊。

 

ミドリガメやザリガニ、ヘビやウシガエルなどの都会の生き物の食べ方から、ニワトリやミツバチの飼い方、生活に必要なものをDIYする方法まで、さまざまなノウハウがぎっしりと詰め込まれています。

 

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同書は「アーバンサバイバル」という言葉を次のように定義します。

 

▼アーバンサバイバルとは?(抜粋)

都市で猟師のように「獲って殺して食べる」を実践することである。衣食住をできるだけ自分の力で作り出すという試みである。 

たとえば、身近なミドリガメやザリガニ、シマヘビを食べる。ニワトリやミツバチを飼って卵や肉、蜜を食べる。庭で排便して菜園の肥料にする。廃材でウッドデッキや家具を自作する。刃物を自分で研ぐ。なるべく自転車で移動するーー。

現代の都市生活では、お金を払えば他人がなんでもやってくれる。けれども、なんでも人まかせにしていては「生きる」感覚は味わえない。「生きる」ために、自分の体を動かしてみよう。そのさきに驚くべき絶景が隠れている。

 

なんでも人まかせにしていては「生きる」感覚は味わえない。

うーん、なんだか胸に突き刺さる言葉です。

 

都会の猟師生活「アーバンサバイバル」とは一体どんな暮らしなのでしょうか。真夏の太陽が照り付けるある日、横浜北部の閑静な住宅街の一角にある服部さんの自宅を訪ねました。

 

話を聞いた人:服部文祥(はっとり・ぶんしょう)

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登山家。作家。山岳雑誌『岳人』編集者。1969年横浜生まれ。94年、東京都立大学フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。オールラウンドに高いレベルで登山を実践し、96年、世界第2位の高峰K2(8611m)登頂。99年から長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」をはじめる。妻、二男一女と横浜に在住。著書→

 

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あらゆる「いのち」を食べること

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f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「服部さん、今日はよろしくお願いします。早速ですけど、ミドリガメが食べられるって話、びっくりでした……」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「ああ、ミドリガメね。うまいんだよなあ。汚染はちょっと気になるけど、都会で獲れる食べ物のなかでは圧倒的にうまい。雑炊にするといいダシがでるんだ。家族もミドリガメの雑炊は大好きだね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「家族も食べるんだ! すごいなあ……」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「うん。ほかにもザリガニ、シマヘビ、ウシガエルなんかも食べられるよ。あと、ハクビシンね。うちの菜園を荒らしたり、飼ってるニワトリを連れ去ったりするのでワナをしかけて殺して食べたこともあるんだ」

 

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ハクビシンを解体する服部さん

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「は、ハクビシン……!? 捕まえられても、解体できる気がしない」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「誰でもできるよ。哺乳類の解体はそんなにむずかしくないから、都会暮らしでも身につけておくといいと思うな」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「そ、そうですか……」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「うん。それができたら、カエルやカメなどの脊椎動物もすべて同じように処理できるよ。あとこの技術を持っていれば、ロードキルの動物を見かけたときにも、理想的な対処が可能になる」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「ロードキルっていうと、車にはねられて死んでる動物とかですよね。理想的な対処って……食べちゃうってこと!?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。状態にもよるけど、テンとか食べられるからね。背ロースと脚肉を炒めてチャーハンにするとうまいんだ」

 

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テンのチャーハン

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「ほええ……テンのチャーハンかあ」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「俺は、地球でともに生息する生き物はすべて食べることができるはず、という視点で世の中を見ることにしているんだよ。命というのはお互いに食べたり食べられたりしながら、対等にこの世のなかに存在しているもので、自分の体に害を及ぼすものを除けば、食べちゃいけないものなんてないと思う」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「ほんとはそうなんでしょうけど……人間社会の道徳とか倫理とかでややこしいことになっている現実はありますよね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そうだね。でも人間社会のルールなんて、動物にとっては関係ない話だからね。俺は生き物を食べるし、ほかの生き物も俺を食べてくれないとほんとはおかしいんだよ。人間は一方的に獲物を食べるばかりになってるから、そのへんがちょっとよくわからなくなってるんじゃないかな」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「あ〜。しかも、自分が食べる獲物を自分で殺すことも最近はほとんどの人がやらないからなおさらなのかも……」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「俺は狩猟をしているというのもあるんだけど、日々狩猟を繰り返していると、人とケモノに違いはないという考え方を持つようになっていくんだよね。都会にいるあらゆる生き物と人間の関係も一緒だよ。いのちはただいのちを食べて続いていく、それだけのこと」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「……ある意味、シンプル!? 考えさせられるなあ」

 

横浜の住宅街で「アーバンサバイバル」

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コッ……コッコッコ……

 

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「あれ? 唐突にニワトリが来ました。そういえば、飼ってるんですよね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「うん、採卵目的でね。ニワトリは人間には不要になった生ゴミを食べて、それをおいしい卵に変えてくれるんだよ。採卵が最大の目的だから調子を落としているメス鶏やオスの若鶏はつぶして食べなくちゃいけないんだけど」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「ああ、ニワトリも・・・」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。まあ、情も湧くからあんまり積極的にやりたいことではないんだけどね。ちょっと小屋の方にいってみる?」

 

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ウッドデッキの下は傾斜地になっていて、そこに建てた小屋でニワトリを飼っている。ちなみにウッドデッキもニワトリ小屋も服部さんの自作。

 

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「へえ、こんなところで。土の地面に放し飼いにしているんですね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。うちはものすごい斜面の敷地の上に立ってる問題物件でさ。その斜面を利用してニワトリを飼ったり、養蜂をやったり、果樹や野菜を育てているんだよ」

 

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服部家の全体図

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「いい環境だなあ。横浜北部の住宅地でこの敷地面積はすごくないですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「問題物件だったから安かったんだよ。古家付きの敷地20坪+草ぼうぼうの斜面の敷地75坪で1980万円だったからね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「えええ!? このあたりで同じ広さの土地がほしいと思ったら、億いっちゃうんじゃないですか」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「だから問題物件なんだって。普通の人はこんな何も建てられない斜面の土地なんて、買おうとしないよ。不動産屋もここには何も建てられないって諦めてたからね。でも俺にとってはパラダイスでさ。後でわかったんだけど、カキ、ビワ、夏みかん、ミョウガ、孟宗竹が自生してたんだよ。果樹野草付きの物件なんて最高じゃない」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「そうですねえ。東京でも探せばあるのかなあ、こういうところ」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「郊外で根気よく探せば見つかると思うよ。その際に大事なのは、土の地面があること。身近に土の地面があると、できることの幅がグンと増えるからね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「土は確かに大事ですね! 野菜も育てられるし、それなりの広さがあればニワトリだって育てられる」

 

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庭に定着しているサトイモ。毎年、何もしなくても勝手に生えてくるそう

 

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「それだけじゃないよ。たとえば、生ゴミを積み上げて堆肥にできれば、ゴミ焼却場で燃やしてもらう必要もなくなる。庭に穴を掘ってそこに排便すれば、自分のウンコを土のなかの微生物や虫が食べて浄化してくれる。それを肥料として使うことだってできるよ」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「確かに。土があれば、一気に自然に近い暮らしができますね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「生活に使える土の地面があるということは、あらゆるマイナスを凌駕して、生活を豊かにしてくれるよ。俺は都心に勤めるサラリーマンだけど、サラリーマンだって環境さえあればできることはたくさんあるんだよね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「え、サラリーマンって普通に会社勤めてるってことですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そうだよ。満員電車のるよ。でも有給はすぐに全部使うし、こういう活動もあるから休ませてもらうことも多いんだけどね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「へええ。都心に仕事を持ちながらこの生活かあ……」

 

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写真奥の木箱で養蜂もしている服部さん。自家製ハチミツは、雑味がなくとてもおいしいのだとか

 

人はサバイバル登山で「自由」になる

f:id:ONCEAGAIN:20170824154228j:plain f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「と、まあ、そんな感じかな」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「いやあ、すでにかなりガツンときてます」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう? この時期はちょっと山行が忙しくて、あんまり家に手をかけられていないのが正直なところでさ。ほんとはもっとやりたいこといろいろあるんだけど」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「山行。ああ、そういえば、服部さんはできるだけ荷物を持たず、食料や燃料を現地調達しながら山の中で何日も生活する『サバイバル登山』をしているんですよね!」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。文明から離れて、太陽の角度でときの流れを読む。風を感じて天気を予想する。食べるものを自分で殺し、食べられるものと食べられないものは自分の舌で味わいわける

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「自分の舌で……」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「大地の上に眠り、暗闇の怖さについて考える。ほかの生き物より人間が秀でた能力は何か。ほかの生き物が秀でている能力は何か。知識とは何か。存在とは何か。自分の体と自分の野生、そして自分のいのちを、そのまんま意識する。そこに本当の意味での『自由』があると思っているんだ」

 

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サバイバル登山中の服部さん。仕留めたオスジカを解体するために、シカの足を木に吊るしている

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「都会にいるときと顔つきが全然ちがう……。そもそもなんでこれをやろうと思ったんですか? かなりの危険を伴う登山だと思うのですが」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「ひとつのきっかけは、K2に登ったときのポーターたちとの出会いだなあ。俺はそのとき、現地のポーターを300人雇ったんだよね。登山に必要な物資をベースキャンプまで運んでもらうために。どうしてそれができたと思う?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「え、どうしてって……お金を払ったからじゃなくて?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain経済格差のおかげだよ、日本とパキスタンの。それがなかったら、300人のポーターを雇うなんてできなかった。日本という国で物資に囲まれた生活をしている俺が、経済格差を利用してポーターたちに物資を持ち上げてもらったんだよ」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「んー。でも多くの登山家がそうやって現地のポーターを雇い、海外の高峰を登っているんじゃないですか?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。でも、俺はそれに違和感を覚えた。小綺麗な格好をした異国の若者が、300人の村人を雇って山に登るって、現地の人からどう見えるのかなと。そうまでしてわざわざ海外の高峰に登ることに何の意味があるのかなあと思ってね」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「それともうひとつはフリークライミングの思想によるところがある。フリークライミングというのは自然の、あるがままの岩を、自分の力で登ること。それにのめり込んだことで、あるがままの山をあるがままにフェアに登りたいという思いを持っていったんだね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「極限に削った装備でのサバイバル登山というのは、そうしたフェアネスへの挑戦ということでもあるんでしょうか?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。サバイバル登山は、極限の装備で自分で考えた計画を自分の肉体で試すところにおもしろみがある。食料をうまく調達できずひもじい思いをしても、焚き火がうまく起こせずに寒い夜を過ごすことがあっても、俺は自分で考え、行動し、その結果も自分で引き受けたいんだよ

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「自力への強い意志……。そこまでの登山ができる人は限られているのでは?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「自分の力で登ったと心地よく感じられる方法を、自分で選び出すことは誰にでもできるよ。登山そのもののレベルではなくて、自分で登り切るというこころざしを持って登る。そこにサバイバル登山は生み出されるんだ」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「自分なりのやり方を見つければいいんですね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そうだね。自然環境で体を使って、自分に何ができるのかを試してみたらいい。それがギリギリであればあるほど、リスクを抱えた登山になればなるほど、生きている実感も得ることができるはずだよ。もちろん自分の登山レベルに見合ったことをやる必要はあるけれどね」

 

↓こちらの本もめっちゃおもしろいのでオススメです!

サバイバル登山入門

サバイバル登山入門

  

 

自力で生きれば「絶景」は庭にある

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f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そうこうしているうちに、俺はいつしか狩猟者の立場から世界全体を見るようになっていったんだよね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「日常生活が狩猟というような?」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。近所の食べられる草木の生育状況が気になり、昆虫の発生を確認し、天気の巡りからその場の野生動物の動向を予想する。首都圏に隣接した住宅街の片隅に暮らしていても、猟師としての小さな覚悟を持つことで、世界はまったく違って見えてくることに気付いたんだ」 

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「おお、まさにアーバンサバイバルが……」 

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「ありふれた日常の延長にこそ、これまでには見たこともなかったような絶景が隠されていると俺は思う。その絶景を見るには、ひとつの動物として生きようという気概を持ち、その上で自分の手を動かし、自分でできることは自分でやろうとすることが大切なんだよね」

 f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「胸にぐっさりと刺さることばです」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「野生動物を獲って食べるのがむずかしければ、まずは自分で育てた野菜を使って料理をしてみるとか、その料理のための刃物を研いでみるとか、車を使わずに自力で移動してみるとか、身近な道具を使って何かをつくってみるとか……小さなことから始めたらいいんじゃないかな」

 

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f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「確かにそのくらいからだったらやれそうな気がしてきます」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「まずはやってみて考えるくらいでいいと思う。人生はそうやって考えて、行動し、また考えることの繰り返しだからね。アーバンサバイバルも手探りではじめて、手応えを確認し、考えてその先に進むということがほとんどなんだ。それを繰り返して、ようやく、何かを掴んで納得する、もしくは重大な改良の余地を発見して、なんで気付かなかったんだろうと落ち込んだりする」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113351p:plain「試行錯誤の連続ですね」

f:id:ONCEAGAIN:20170825113407p:plain「そう。結局、何かが『わかる』というのは、実は無為に見えるような時間の積み重ねなんだよね。だとしたら、短い人生でわかることなんてたかが知れていて、ほとんどが『考え中』のまま消えていくのかもしれない。『わかった』という気持ちよさに少しでも多く出会うために、俺はこれからも手応えのある生活を積み上げていきたいな」

 

まとめ 

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都会の猟師生活「アーバンサバイバル」。これだけ文明が発展しているのに、自力にこだわる必要なんてあるのか? なんて、考える人ももしかしたらいるかもしれません。

 

でも、自分で獲物を獲ったり、自分で生活に必要なものをつくりだすことは何よりおもしろいことだと思うし、それができてはじめて見えてくる世界もきっとあるのではないでしょうか。

 

現代社会に居心地の悪さを感じている人も少なくない時代。自分にとって確かなものは自分が手を動かし、考え抜き、また手を動かし続けることからしか得られないのかもしれません。僕自身も狩猟、そして自力生活への好奇心がムクムクと湧き上がってきた今回のインタビューでした。

 

服部文祥さんの現代を生きる知恵がぎっしりと詰まった『アーバンサバイバル入門』。とても読み応えがあり、考えさせられる本なので、ぜひみなさんも読んでみてはいかがでしょうか。おもしろいよー!

 

アーバンサバイバル入門

アーバンサバイバル入門

 

 

ではまた!

 

 

☆シリアスバージョンの記事も合わせてどうぞ!

 

書いた人:根岸達朗

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ライター。発酵おじさん。縄文好き。合気道白帯。ニュータウンで子育てしながら、毎日ぬか床ひっくり返してます。メール:negishi.tatsuro@gmail.com、Twitter ID:@onceagain74/Facebook:根岸達朗

 


【配送】トラックドライバーあるある50選【物流】

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こんにちは! トラックに乗りながらオモコロなどでマンガを描いているぞうむしと申します!

ネット通販の影響で、何かと話題になる物流業界……今回は実際にトラックドライバーとして働く僕が、この業界のあるあるを50連発でお届けします!

※この記事はあくまでライターの経験に基づくものであり、すべての会社に共通するものではありません。

 

 

トラックドライバーあるある50選

01:事故らないためのジンクスがある

洗車、室内を掃除。ハンドル、メーター周りを綺麗に拭く。左足から乗る。キーを回す前にハンドルを優しくトントン叩くなど。

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02:重いものをもつための筋肉が発達している

が、運動が得意なわけではなく、それ以外のことには役立たない。

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03:爺ちゃんドライバーは細く見えるのに、軽々と荷物を持ち上げる

筋肉ではない謎の技術を使って持ち上げてる。ネテロみたいな感じ。

HUNTER×HUNTER モノクロ版 29 (ジャンプコミックスDIGITAL)

HUNTER×HUNTER モノクロ版 29 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 

 

04:マンションや、山の上の邸宅などを見ると職業病が発症

無意識に「ここに荷物を入れるなら……」と考えてしまう。イヤな職業病。

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05:Googleマップの普及により土地勘が鈍っている

昔は地図を駆使していたため、頭のなかに地図がインプットされていた。今は電波が弱かったり通信障害などがあると詰む。

 

 

 

06:バックモニターが付くと野生の勘が衰え、ヘタになる

昔はセンサーもカメラもないのに「何かヤバい!?」というニュータイプ的な勘が働いたが……。便利な道具とともに、我々は本来持っていた能力を失ったのだ。

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07:スマホが便利すぎる

昔はCDチェンジャーに数百枚のCDをセットしてる人いたが、今はスマホが一個あれば事足りる。地図や無線、オーディオなど、スマホのおかげで車内が広々使えるようなった。

 

 

 

08:鏡を見て「ダッセェ作業服だな」と思ってたけど、イケメンが着てたらカッコよかった

単にモデルが悪かっただけなのかもしれない。

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09:トラックドライバーだからといって、運転がうまいわけではない

プライベートで運転を頼まれる時、過度な期待はしないでほしいと思う。ただし道には詳しい。

 

 

 

10:大学を出ているだけでエリートとかインテリといったアダ名がつく

 物珍しいから……(ちなみに僕は高卒です)

 

 

 

11:デジタコという機械でトラックの動向が事務所に管理されててサボれない

もう「待ち時間が長いからコンビニに行ったよ?」「事故起こしそうなくらい眠かったから寝た」って感じで開き直るのが吉。

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12:積んで降ろす、というシンプルな仕事だからこそ上手い下手の差がすごく出る

1件の荷下ろしが5分遅いと、10件の配達で50分残業することになる。

 

 

 

13:トラックは大きいから運転するのが怖い?

いいえ。むしろ車高が高いから、視野が広くて運転しやすい。

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14:乗り心地の悪い乗用車を「トラックみたい」というが……

最近のトラックはラグジュアリー感すごい。

 

 

 

15:大きなトラックだと運転席のすぐ後ろにベッドがあったりする

仮眠用だけど、家の布団よりふかふか……。

 

 

 

16:こだわる人は、内部を家みたいに快適にしてる

オーディオの充実、電気ポットでラーメンを作ったりコーヒーを淹れたり、お風呂セットを常備したりしている。

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17:対人ストレスは通常の職種より少ない

荷物さえ積み込んでしまえば、あとは一人だから。

 

 

 

18:他人にあまり関心がないくせに、トラックのカスタムにはめちゃ興味ある

トラックのサイドを照らすマーカー球を変えただけでも、すぐ気付いて集まってくる。

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19:ギアチェンジのためのシフトノブを変えたがる

クリアな材質の中に造花が入ってるやつとか。原始人の槍みたいに長いのもある。

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20:狭い住宅街で荷下ろしをしている時に限って乗用車が来る

例え10m程度であっても、絶対迂回してくれないのでこっちが移動する(一般車両が絶対的に優先)

 

 

 

21:時間指定が異様に細かい現場がある

8時32分指定とかマジである。それ以外の時間には行けない。

 

 

 

22:一見曲がれそうにない道でも、30回くらいハンドルを切り返せば曲がれる

人とトラックに不可能はない。

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23:荷物を持つ時のゴム手袋は伊達ではない

摩擦によるグリップ効果で3倍くらいの重量が持てる。引っ越しの時なんかにも役立ちますよ!

 

 

 

24:配送用エレベーターが永遠に下りてこないので階段で行く

配送用のエレベーターは、多くの荷物を積み下ろしできるように「開けたまま固定できる」。そのため、上で使用してる人が開けたままにしてると、永遠に下りてこない。

 

 

 

25:荷積みするヤードのゴムの部分に鳥の巣が出来たりする

条件が良いのか、たびたび巣が作られる。

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26:無骨なオヤジたちも雛たちの様子を優しく見守る

凶悪な顔のSさんも、プロレスラーみたいな体格のHさんも、全員頬が緩むのであった

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27:運ぶ荷物が変わると、別業種と言っても過言ではない

たまに違う部署へ出向するが、ルール、積み方、伝票処理、納品方法……全てが違うのでド新人ドライバーと同じレベルで何もできない。

 

 

 

28:急勾配でツルツル滑ってトラックが上がれない時、牛と荷車で上げたことがある

平安時代じゃなくて21世紀の話です。

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29:急勾配すぎる道は一度止まってしまったら終わり

どっちにも動けなくなって、ただ冷や汗だけが流れ続ける。

 

 

 

30:狭い道をバックで出なければならない時、巨人に助けてもらいたくなる

そんな巨人は来るはずもなく、泣きながら数百メートルバックする。

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31:細い路地にハマって動けなくなった時、大型クレーンで吊り上げて救出してもらった

ホッとしたけど、トラックのフレームが曲がってしまった。

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32:大雨、大雪、酷暑だと、実は大雪が一番マシ

雪はチェーンを巻けば無敵!ってくらい普通に走れる。でも酷暑と大雨は、荷下ろしの時逃れようがない

 

 

 

33:4階以下はエレベーターついてないとか、キツ過ぎる

2階建てのアパートすらエレベーターをつけてほしい。

 

 

 

34:できたてのダンボールはあたたかい

ダンボールそのもののみを運ぶ専門の業者もいます。

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35:意外とその土地の美味しいものなど食べたことはない

仕事柄、各地には行くんだけど、タクシーと違い、トラックを停められる駐車場が限られているんです。

 

 

 

36:停めるところがないのでトイレもめちゃめちゃ我慢する

なので、携帯トイレを常備している。一回も使ったことはないが、「携帯トイレがある」と思うと安心感が生まれる。

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37:コンビニはドライバーたちのオアシス

ドライバーそれぞれ行きつけのコンビニがあり、マドンナがいたりする。郊外のコンビニなら駐車場が大きく、確実に「駐車できる」。そして「食事」「トイレ」も済ませられる。まさに天国。

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38:眠気対策は、無い

何をやっても眠い時は眠い。事故を起こしそうなくらい眠い時は諦めて仮眠をとるか、一回駐車してスクワットしてます。

 

 

 

39:自宅のリビングでうつらうつらしてる時にビクッとして飛び起きる

運転中に眠っちゃったかと思った……。

 

 

 

40:倉庫へ帰るまで配車(仕事の内容)はわからない

めちゃめちゃ楽な時もあればキツい時もある。僕のように「言いやすいメガネキャラ」は、厳しい配車に回ること多し。

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41:無線を使っていた時代はハンドルネームを名乗っていた

・シリコ玉

・便所サンダル

・ダークナイト

・ウスゲグラスボーイ

無線なので声とハンドルネームだけしか知らない人もいます。なのでオフ会もありました。

 

 

 

42:そして妙な隠語を使っていた

白バイ→パンダ

重量取り締まり→鉄板が焼ける

ネズミ捕り覆面 →タイガーマスク

バイバイ→口笛を吹いて無線を切るとさよならの合図

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 ※上記は昭和のお話であり、現在は通信機を手に持って運転することは禁止されています

 

 

 

43:現在はスマホのグループチャットで喋ってる

暇だから永久に喋り続けてるおっちゃんもいる。

 

 

 

44:深夜に繁華街を通り抜ける時ワクワクする

昼間はあんなに人がいたのに、今は自分が道を独占してる!という快感。

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45:トラックのナンバープレートは2種類ある

緑ナンバーは他社の製品などを運ぶ営業用(宅配便なども緑)、白ナンバーは自社製品を運ぶ自家用(通称 自社便)。今は白ナンバーはほぼいない。トラック野郎みたいな人はもう絶滅危惧種

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46:電磁波をカットする高級なシートが話題に

エンジンからは電磁波が出ているというオカルトまがいの説があり、電磁波カットシートの購入を検討する人がいた。

 

 

 

47:夜明け前くらいに「もう無理~!」ってなる

何年もドライバーやってるのに、夜明け前くらいはいつも最強に眠たく、疲労もピークに達して、「無理……もう無理~!」となる。

 

 

 

48:というあたりでうまいこと到着する

夜通し走って到着した朝は、缶コーヒーが死ぬほどうまい。どんなこだわりの喫茶店より美味しい。

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49:帰り道はラジオや音楽を聴いたりして最高の気分

達成感がハンパない。さっきまで眠かったハズなのに、鼻歌まじりでご機嫌になってる。

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50:朝日が照らす景色は息を呑むくらい美しい

こんな仕事も悪くないなぁと思う。

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まとめ

配送トラックのドライバーだけがわかる「あるある」、いかがだったでしょうか?

ハードな仕事ではありますが、ひとりの時間が多くて気楽だったり、夜明けの帰り道で達成感を感じる瞬間もあったりします。

 

「こんな“あるある”もあるよ!」とか「俺のハンドルネームは○○だったぜ」というご意見があれば、#トラックドライバーあるあるのハッシュタグでつぶやいて頂けると嬉しいです。

 

給料に関しては会社と本人の努力次第だとは思いますが、僕のところでは平均すると

2トン=月給20万
4トン=月給23万
大型=月給27万

くらいですね。

興味のある方は検索してみてください。では!

 

 

・トラック業界に興味を持った方、求人情報はこちら!

 

 

 

 (おわり)

 

※この記事はあくまでライターの経験に基づくものであり、すべての会社に共通するものではありません。

 

書いた人:ぞうむし

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トラック運転手をしながら、夜な夜な漫画を描いています 、ぞうむしです。「死ぬまで諦めんやったら、俺の勝ち!」をモットーに日々精進しております。Twitter:@zoumushi6

「大都会岡山」の噂を岡山県知事に聞いてきた

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こんにちは、ライターの友光だんごです。

僕の出身は「岡山県」なのですが、全国の皆さん、岡山ってどんなイメージですか?

 

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桃太郎、フルーツ王国、晴れの国……などなど出身者としてはアピールポイントはあるんです。

 

しかし他県の人からすると、ぶっちゃけ「兵庫のもっと西のほう」くらいの印象じゃないですか? 広島県とどっちが右か、わかります?

そう、岡山県っていまいち印象が薄いんですよ。

 

地元出身者として、そんな岡山県をなんとか全国にアピールしたい……そのためにはどうすれば……

そこで思いついたのが「一番偉い人にインタビューしよう」ということでした。

 

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そう、「岡山県知事」です。

 

ただ、こんな「だんご」なんてふやけた名前の奴が正面からアポをとったところで、県知事は会ってくれないでしょう。なにせ県で一番偉いということは、めちゃくちゃ忙しいわけですから。

 

しかし、僕には作戦があったのです。うちの親父が以前「県知事にコネがある」と言っていたから。

 

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この僕と同じ顔をしているのが親父です。岡山県知事は地元の百貨店「天満屋」の前社長であり、父は天満屋グループで働いています

 

これは……コネを使う時が来たのでは……?

 

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ということで、県知事にインタビューすることができました。コネ万歳!

 

話を聞いた人:伊原木隆太(いばらぎ・りゅうた)さん

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1966年岡山県出身。実家は岡山県に本社を置く百貨店「天満屋」の創業家。東京大学卒業後、外資系経営コンサルティング会社に就職。その後、渡米し、米スタンフォード・ビジネススクールを修了し、MBAを取得する。1998年から天満屋社長を14年務めたのち、2012年に岡山県知事に就任。現在2期目。

 

せっかくお会いできたので、「インターネットで話題の岡山に関するネタ」「知事はぶっちゃけ岡山のことをどう思っているのか」などなど、普段なかなか聞けない内容を聞いてきちゃいました。

 

 

インターネットでネタにされる岡山

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「やあ、こんにちは。本当にお父さんに似てますねえ。同じ眉毛じゃないですか」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「祖父も同じ眉毛です」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「なんと血が強い! さて、本日はどんな話をしましょうか」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「いきなりなんですが、インターネットでは『大都会岡山』という……」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「(あっ…聞いちゃダメなやつ…?)」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「ああ、あれですね。ずいぶん茶化されましたね、もう」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「(大丈夫だった…!)ご存知だったんですね」

 

 

※「大都会岡山」とは

いわゆる“グンマー”の逆パターン。近未来SF風の大都会の画像が「岡山の風景である」という説明とともにネット上に出回り、ネタとして流布した現象のこと。

大都会岡山 - Google 検索

 

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「私も、なんでこんなに『大都会、大都会』と言われるんだろうと思っていました。どうもアンジェラ・アキさんのテレビでの発言が元になってるらしいですね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「あの歌手の!」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「彼女は徳島で育って、10代前半で岡山に引っ越して来たんですね。そこで『駅前に店はたくさんあるし地上波テレビも全局入るし、岡山は大都会だ!』と思った、と全国放送でお話しされたそうなんです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「徳島に比べたら岡山は……おっと、余計な争いが起きそうなので止めましょう。とにかくアンジェラさんはそう思ったと」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「そうです。あくまで個人の見解としてね。ただし、その放送を見ていた人たちが反応したんです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「『岡山がwwwwww大都会wwwwwww』みたいにネットへ書き込んだんでしょうね」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「いや、あくまで想像ですよ」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「わかってますよ。岡山県民の知らないところで、どんどん『大都会岡山』というイメージができあがっていったんですね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「ネタ画像がネット上に出回ったり。僕が上京したときも『大都会から来たの?』といじられました」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「でもね、私は埋没するよりネタにされてるほうがいいと思うんです。全国の都道府県を47人のクラスだとすると、目立つのは北海道や沖縄や東京。放っておけば、基本は埋もれてしまいます」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「ネタだとしても、気にしてもらっていれば、何かのタイミングで良さに気づく場合がある。その『とっかかり』として考えれば、いじってもらえることもチャンスなんですよ

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「なんとポジティブ!!」

 

 

岡山はクラスの「意外といい人」

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「他県の人に『岡山ってどんなところがあるの?』と聞かれた時、返事が難しくて。大阪の『通天閣』とか高知の『龍馬』とか、わかりやすいアピールポイントがないんですよね。桃じゃないしなあ…と」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「そう、私が言うのもなんですが、なかなか地味なところなんですよ」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「知事が仰るのも確かにアレですが、地味ですよね」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「私自身、東京に出ていた時にそのことを感じました。良さはあるんだけど、いまいち外の人から見るとピンとこない。クラスでいうと普通のいい人なんだけど、話しかけないと魅力がわからないというか」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「ああ、クラスの女子に聞いたら『あんま喋ったことないけど、いい人っぽい』って言われる感じの。モテはしないキャラ……」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「ちょうど私やだんごさんみたいなね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「なんか悲しくなってきたので話題を変えましょう」

 

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1597年に大名・宇喜多秀家が築城した岡山城。隣接する「後楽園」は日本三大庭園のひとつと言われている

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「知事の思う岡山の魅力ってなんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「色々ありますが、『住みやすい、居心地のいい場所』であることはぜひ知ってほしいですね。例えば、岡山に転勤になって、最初から大喜びする人ってあまりいないと思うんです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「そもそもどんな土地か、ピンと来ない人が多そうですね」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「でも、実際に住んで働いてみると、皆さん『あれ? いいところかも』と気付くそうなんです。まず、山も海も森も街から近くて、自然が多い」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「よく東京から来た人は『オフィスから30分以内の場所に家を借りたい』みたいに言いますが、岡山にはオフィスから5分圏内のマンションがたくさん。だから、岡山に来て、通勤時間もぐっと短くなって本当にゆったり過ごせるようになった、という話をよく聞きますよ」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「ということは岡山は移住にピッタリ?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「もちろんです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「どれくらいピッタリなんでしょう?」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「これくらいです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「知事めちゃくちゃいい人ですね」

 

 

県民性より、日本人っぽさを意識すべき

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「岡山は晴れの日が多いじゃないですか。だからのんびりしてる県民性なのかなと思ってました」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「降水量1mm未満の日が全国で一番多い(※1)ですから、数字の上でも『晴れの国』であることは裏付けられています。災害も少ないですし。ただね、私はあまり県民性って意識しすぎなくていいと思ってるんです

※1:気象庁「全国気候表」(1981~2010年【30年間】の平年値)より

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「そうなんですか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「私は若い頃に海外へ行って、シャイすぎたり、つるむと妙に元気になるような『日本人っぽさ』を感じたんですね。そのあとで岡山に戻ると、そういう『日本人っぽさ』2割増しみたいな人が多いぞと」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「わからなくもないです…!」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「でも、これは地方で起きがちな現象じゃないかな、と思うんです。東京や海外のように、いろんな違う人と切磋琢磨する環境にいると、自分たちの価値観が通用しないことに気づく。そして、意思表示や人付き合いが上手くなります」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「地方は都会に比べて、他人の価値観と衝突する場面が少ないかもしれませんね」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「多様な人が集まる場所に行って、初めて気づくことは多いですから。外の人から『なんか閉鎖的だな、独りよがりだな』と思われてしまうようなことは、日本の色んなところで起きているような気はしています」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「なるほど…」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「学校のクラスにも元気な人、おとなしい人、いろんな人がいますよね。だから、県民性はそう極端なものではないと思いますよ

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「知事、クラスで例えるのがお好きですね」

 

 

14歳で家を脱出すると決めた

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「知事は、岡山に本社を置く百貨店『天満屋』の創業家の一族ですよね。ある意味、家業を継ぐ運命にあったと思います。代々続く伊原木家に生まれなかったら、と考えたことはありますか?

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「私自身、ずっとそれをテーマとしてやってるところはあります。とにかく跡を継ぐのは嫌だと。私からすると『損』なんですよ」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「損、ですか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「はい。自分の実力があって、家業というのが別にありますよね。家業は自分のサイズに関係なく用意された服のようなもの。もし自分の実力が高ければ、服が小さすぎて悶々と思い続けることになる」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「はい」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「一方で、自分にとって大きすぎる服、つまり実力不足だったなら、周りの人から『あんなやつが社長になって』とか言われてしまう。だから、家業と自分の実力がピタッと合うことはなかなか少ないんです

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「上手くいったとしても『親の七光りで』と言われたり…」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「その点、外に出れば自分に向いた仕事を探すことができる。だから私は中学2年生の時に、家を脱出すると決めたんです

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「家を脱出!!」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「29歳でMBAをとり、アメリカで働くんだと目標を決めて、そこまでの計画を細かく作ったんです。まず日本の大学を出て、入学に必要とされる実務経験を積んだ上で、アメリカのトップ校へ行って…とね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「とっても勉強をされたのでは」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「10代の頃は1日4〜5時間睡眠でしたね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「めちゃくちゃ努力されたんですね…」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「日本で就職した会社も、とにかく休みがなくて」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「日々追い立てられるようで、寝ている間も仕事の夢ばかり見て……あの頃は本当に……」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「ち、知事、知事! その時に比べて、今の方がよく眠れてるんじゃないですか?」

 

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f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「格段にいい夢を見ています」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「本当によかったです。人生の計画は、その後順調に進んだんですか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「MBAをとるまではその通りに進んだんです。そしてアメリカで就職が決まり、目標達成!と思ったところで『家業が厳しいから戻って来てくれ』と言われまして

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「そして天満屋に戻られたと。抵抗はなかったんですか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「学んできた経営を生かせると思いましたし、ずっと学費も出してもらっていましたから、断るのも薄情だなと。できる範囲のことをやろうと思って戻りました」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「そして、社長を経て県知事に。人生何が起きるかわかりませんね…」

 

 

2020年に向けて、岡山は

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f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「今、2020年の東京オリンピックに向けて、ある種の『オリンピックブーム』のようになっていると思います。東京から離れた岡山からは、今の動きをどのようにご覧になっていますか?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「東京一極集中で地方がみんな困ってる時に、それを加速させるとは……という人もいますし、私もチラッと思います」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「思われるんですね」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「ほんのチラッとですよ。ただしバブル崩壊後の25年間、日本全体が沈んでいるというのは事実なんです。残念ながら」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「そんな状況で知事をやられるというのも大変そうです」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「私はね、日本における岡山のポジションと、世界における日本のポジションが『パラレル』だと感じているんです。海外では、中国の方がよっぽど存在感がありますよ。我々が思っているほど、日本は世界で気にされてはいないです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「ある意味、日本が世界の『田舎』というか、閉じてしまっている…」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「だから、もう一度オリンピックをやって日本に注目してもらうことは大事だと思います。そんな時に東京以外が足を引っ張るのは、日本全体として損ですよね」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「せっかくのチャンスですから」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain地方は地方で頑張るべきなんですよ

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「実際、まだまだ外国人旅行者は増えていますよね。昨日も倉敷のゲストハウスに泊まったんですが、色んな国の方がいて」

 

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岡山県南部の倉敷市にある「美観地区」。江戸時代に「天領」として栄えた、白壁づくりのレトロな街並みが今なお残る。海外からの観光客も多く訪れている

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「美観地区の街並みは素晴らしいですよね。岡山にはいいところがたくさんあるんです」

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「岡山としてのこれからの目標はなんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20171006223040p:plain「東京オリンピックをピークに、日本へ注目が高まります。最初はやっぱり東京か京都か富士山か、というのがゴールデンルートになります。でも、2回目以降は岡山も十分選択肢になる。だから、もっと岡山に目を向けてもらえるように頑張りたいですね

f:id:tmmt1989:20171006223128p:plain「日本国内だけでなく、海外の人にも岡山の魅力を知ってほしいですね。今日はお忙しい中ありがとうございました!」

 

 

おわりに

f:id:tmmt1989:20171006222938j:plain

当初の予定では30分間の予定だったインタビュー。しかし「昼食の時間を削るのでいいですよ」という知事のご厚意で、15分延長して終了。最後にジモコロのフリーペーパーもお渡ししてきました。

始まる前はとっても緊張しましたが、気さくな知事の人柄に助けられました。

 

この記事を読んで、少しでも岡山に興味を持っていただけたら何よりです。

知事も仰っていましたが「意外といいところ」なので!騙されたと思って一度遊びに来ていただければ、「意外といいじゃん」となるはずです。

 

あと、岡山県は広島県の右側です。それだけでも覚えていただけたら!ではまたー!

 

 

イラスト:オノカズエ

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光だんご / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

 

写真:藤原 慶

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21歳からカメラとバックパックを持って日本放浪の旅に出る。
全国各地を周りながら撮った写真を路上で販売し生き延びる生活を続け、沢山の出逢いと経験を積む。
現在は東京に落ち着きカメラマンとして活動中。

Instagram : @fujiwara_kei

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (19) - おすすめアイテム/さらばチョロよ

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<ポテン生活|一覧>

  

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

年商8.6億円‼︎ 日本一みかんを売る「みかん社長」に聞いた “発展させない”地方創生論

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みなさん、はじめまして! スタミナラーメンを食い散らかしそうな体型で失礼します。

和歌山の北西にある湯浅町の「田村」という地区でみかん農家を経営している「かっしー」と申します。

 

昨年末に脱サラし、生まれ育った「田村」のみかんを発展させるべく、およそ10年ぶりに帰郷しました。

今回はみなさんに、僕がみかんの活動を通して出会った和歌山の「みかん社長」、とち亀物産の上野真歳(うえのまさとし)さんをご紹介したいと思います。

 

話を聞いた人:上野真歳(うえの・まさとし)

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1970年和歌山県生まれ。1999年に「株式会社とち亀物産」代表取締役社長に就任。有田みかんを中心に、和歌山の特産物を扱うネットショップ「紀伊国屋文左衛門本舗」の運営を開始する。みかん社長・日本一みかんを売る男として活動しながら、地元である和歌山県湯浅町の地域活性化事業にも深く携わる。

 

「みかん社長」の会社は、なんと年商8.6億円。全身みかん色なだけではなく、かなりのやり手社長なのです。

その上、実は地方創生にまで着手するマルチな「みかん社長」。 

なぜみかんにこだわるのか? どうして全身みかん色なのか? そして、愛する地元のための得策とは? などなど、気になる点が山ほどあります。

 

そこで、彼と私の地元、和歌山県湯浅町にてインタビューを実施。「みかん社長」の秘密に迫りました。

 

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いつからみかん社長に?

「みかん社長」に会うべく、とち亀物産さんに突撃します。

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建物にはぶっといオレンジラインが一本、そして駐車場の一角にはみかんの樹が植樹されています。

 

まちがいなくここに「みかん社長」がいることでしょう。ここじゃなかったら逆に怖い。少しばかり緊張しますが、いってきます!

 

玄関を入ってすぐの受付には電話が置かれており、受話器をとるとすぐに受付担当のお姉さまにつながります。

 

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f:id:tmmt1989:20171005150922p:plain「はい、受付です!」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「あ、あの、かっしーと申します。みかん社長に会いに来ました」

f:id:tmmt1989:20171005150922p:plain「あー!どうぞどうぞ!(ガチャン)」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「話が早い」

 

2階へあがり、おそるおそる入口の重厚なドアをあけると……

 

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あっ! 

みかん社長だーーーーーーー!

どこからどう見てもみかん社長だーーーーーー!!

 

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「お久しぶりです!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「久しぶりやねえ!で、今日はどうしたの?」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「今日は上野さんがみかん社長と呼ばれるようになった理由をお聞きしたくてやって来ました」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「ああ、そういうことね。まあまあ座ってよ。みかん社長と呼ばれるようになった理由かあ……あんまり公の場で喋ったことないなあ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「えっ!いちばん聞かれるところじゃないんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「みんなビジュアルにもってかれるんじゃない?」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「い、一般的なビジュアルだと思いますよ……!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「逆に失礼やと思うで」

 

 

みかん社長になったのはいつから?

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「上野さんはいつからみかん社長をなさってるんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「実はこの会社は俺で4代目でね。もともとは水産加工品の流通業者だったんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「最初からみかんを扱ってなかったんですか!?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そうそう、山のものとは全く逆。海産物を加工して卸す仕事をしてた」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「先代はお父様とお聞きしたことがあるのですが、みかんはいつ頃から取り扱ってるんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「俺が29歳で社長になったときやから、1999年からやね」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「上野さんの代で、初めてみかんの取り扱いを始めたってことですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そうそう。大好きな地元のみかんを全国に広めたいっていう気持ちがずっと強かったからね」

 

f:id:kassyy:20170929181310j:plain

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「わずか十数年でみかん社長の異名を手にするって並大抵の腕じゃないですよ」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「いやいや、ホンマにたいへんやったんよ。いきなり社長になったもんやから業績がひどくて……。だってね、俺が社長になった途端に1年で売上が10%も下がったんやで?」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「10%もですか!?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう、このままやったら5年もせえへんうちに会社つぶれるやん!と思って夜も全然寝られへんかった」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「とてつもない重圧ですね……」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「100年以上続く流通会社やのに、社長である俺の給料は今のうちの社員より少なかった」

 

 

暗黒時代を抜け出すための「禁じ手」

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「そんな暗黒の時代からどうやって脱出したんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そんな時ちょうど楽天さんが現れて、これは絶対に逃したらあかんと思ったんよ。今から18年前のことやね」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「『楽天市場』のネットショップですね!今でこそネット販売は主流ですが、当時はどんな感覚だったんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「ネットで売れるイメージを持ってたのが俺しかいなくて、今までの仲間や親族から猛反対されたよ

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「そんなにですか……!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「携帯電話だって、電話を外に持ち出すなんて出来るわけないやん!って言われてたでしょ? 当時の人からすると、ネットショップも同じくらい新しすぎる感覚やったんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「全く信用されていない中での勝負だったんですね」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう。ずっと取引してた農家さんや仲間も離れていく状況で、俺にはもう楽天さんにかけるしかなかった」

 

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「『楽天市場』は競合他社のショップも多いと思うんです。出店側としてはお客さんに見つけてもらう努力もしないといけませんよね?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「その通り。そこで俺は禁じ手を打った

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「禁じ手……!?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「今は廃止されてるけど、売れた個数が多いショップが『楽天市場』のトップページに表示されるシステムを利用してん」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「個数ですか……! 同じ考えのショップも多かったんじゃないですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「1個単位で売り始めるショップが乱立したね。だから俺は他店に対抗するために、梅干しを1g単位で販売したのよ

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「1g単位⁉︎」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう、1g。100g買うと100個売れたことになる

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「け、結構な禁じ手……!」

 

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f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain売ってるものにはとっても自信があったからね。和歌山の梅やみかんは日本でも最高峰やから、それを知ってもらうためにはこの手段が最適だった」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「これが商売の知恵か……!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「半年後にはみかんだけで売上が200万円を超えてたよ。みかんがネットに定着した瞬間だった」

 

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今ではみかんシーズンになると倉庫がみかん箱で埋め尽くされる

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「社長の会社が日本中に知られるキッカケを、みかんが作ってくれたんですね」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「農家さんが最高のみかんを作ってくれてるからこそやで。地元を愛する者として協力できてるのが本当に嬉しいよ」

 

 

全身をみかん色に包んだのはいつから?

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「もう一点、お聞きしたいことがありました。全身をみかん色に包まれたのはいつ頃からですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「んー、2005年ごろかな……?」

 

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今ではトレードマークとなったオレンジ色

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「みかん販売の実績が伸びるにつれて、周りの人からみかん色のグッズをプレゼントされるようになったんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「ご自身で用意し始めた訳じゃなかったんですか!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「それまではずーっと地味な服を着てたね(笑)」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「そのオレンジスーツもプレゼントで?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「いや、これは作った!スーツ屋の友人に勧められたのがキッカケでね。俺自身がみかんの伝道師になろうと決めた瞬間やったわ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「こんな田舎だと変な目で見られそうですが」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「完全に不審者扱いやったわ!インターネットで商売始めた時より、みかん色になった時の方がひどかったかも(笑)」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「一歩外へ出るだけで視線が集中しそうですね」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「うん、あと消防隊員によく間違われるで」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「そんな派手な消防隊員いないでしょ」

 

 

「地域を発展させるべきではない理由」とは?

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「上野さんはみかん社長だけでなく、積極的に地域の活性化にも関わってらっしゃいますよね」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そうそう」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「最近では、湯浅町内で『重要伝統的建造物群保存地区』に選定されたエリアに、ゲストハウスを開業なさったと聞きました」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「会社から徒歩3分のところにこんな素敵な街並みがあったら、みんなに知ってもらいたいよね。生まれたこの町が大好きやから自分にできることはやりたいよ。ちょっとそこへ向かいながら話そうか」

 

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f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「いま『地方創生』というワードが飛び交っていますが、上野さんが考える地方創生とはどんなものですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「俺はね、それぞれの地域住民の特性を知ることが先決やと思ってんのよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「地域の産物じゃなくて地域住民ですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう。例えばかっしーは‘’田村‘’っていう村の出身やろ? 以前、地域の活性化を目指したいって言ってたけど、本当はどう思ってる? 単純に観光客が増えればいいと思う? かっしーは自分の住む村が観光客で溢れることを望んでる?

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「……いえ、実を言うとすごく不安です。村のリズムが変わってしまうんじゃないかと…」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そうよね、多分それは他の住人もそう思ってるはずよね? そんな中で観光客を呼ぼうとコンテンツを整備することは、果たして正しいと思う?」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「いえ、地域住民の意思を無視してしまいます」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そのとおり。地域住民を無視して整備された観光資源は、一時的なものでしかないんよ

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「たしかに…」

 

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ゲストハウスの近くでは、古くからの街並みを愛する観光客がスケッチブックに絵を描いていた

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「地域住民を無視して作られた場所に来た観光客は、二度とそこには来てくれへんよ。魅力を感じることもない。そうじゃなくて『地域を発展させずに、維持することが重要なんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「発展させずに維持すること……」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう、湯浅はこのままがええねん。このままの雰囲気がこの地域の最大で最高の武器や。発展が全てではないんよ。この町を生かさなあかん」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「でも、今までのままじゃ何も変わらないのでは…?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「俺らがこれから取り組まなあかんのは、せっかく来てくれた大事な人たちを離さんようにすることや。作り上げられた不自然な地域じゃなくて、ありのままのこの地域に魅力を感じてくれた人を大事にするんや」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「そういうことか……!」

 

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この街の良さを深く知ってもらうため、ゲストハウスは“一棟貸し”のみ

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「これは俺がみかんをインターネットで売る上で大事にしてることとすごく似てるんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「共通点があるんですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「みかんをネットで売ることで大事なのは、なるべく多くのリピーターを作ることや。ネットショップの世界では購買客の10%がリピーターになればええ方やねんけど、うちは40%近くもあるんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「えっ!40%!?

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「その40%近くがうちの経営を支えてくれてるんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「どうやってそんな数のリピーターを作ってるんですか!?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain情報を発信し続けることが大事なんよ。売ってるものには絶対的な自信があるもん。新商品をバンバン出していくよりも、その商品の魅力を定期的に発信してあげるのがいちばん効果的なんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「手あたり次第では効果が激減してしまうというわけですね」

 

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f:id:tmmt1989:20171005151015p:plainその人にはその人に合った地域があるんやし、そこを無視してひたすら声をあげるのは違うと思う。だから俺らはこの町を維持することに全力を注がなあかんのよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「僕は長い間外に出ていた人間ですが、地元という感覚を除いても、ここの住み心地がいちばんです」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう思ってくれる人が絶対他にもいるんやから、そういう人たちにアプローチしていこうよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「みかん以外の注力方法が見えなかったのですごくありがたいです…!」

 

 

民が動けば街が動く

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「それから、今は俺らが行政を巻き込む時代やで」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「僕らが…ですか?」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「そう。行政主導じゃなくて、町をいちばんよく知る俺らが主導権を握らなあかん。民が動けば街が動く。自分たちの街は自分たちで変えていくべきや。そうすることで俺らにも責任感が生まれる。誰も他人事じゃなくなるんよ」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「まさにそれこそ理想の流れです!」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「俺らが責任をもって声をあげていかんとね。ちゃんと地域のことも考えてるんよ。ただ単にビジュアルだけのみかん社長じゃないやろ?」

f:id:tmmt1989:20171005150542p:plain「いえ、そんなにイカツくは…」

f:id:tmmt1989:20171005151015p:plain「だからそれは逆に失礼やって言うてるやん」

 

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会社の方針をみかん販売中心に大きく変更したみかん社長。

 

周囲の反対に遭いながらも生産者への最大のリスペクトを貫き通した結果、みかんの伝道師となり、地域になくてはならない存在となりました。

 

そんなみかん社長は生まれ育った地域の魅力をそのままで伝えるため、人々や街のさまざまな風景を残すプロジェクトに挑みます。

そしてこれからも生まれ育った地域への愛情一本で突き進んでいきます。

 

まもなくみかんシーズンがやってきます。

今年も最高のみかんを皆さんにお届けしますよー!

 

 

書いた人:かっしー

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1989年和歌山生まれ。大学卒業後、ソフト・オン・デマンド株式会社(SOD)に新卒入社。現場ADや営業課長を務めたのち2016年末に退社し、地元である和歌山県にてみかん農家に転向。みかんシーズンに向けて各地で様々なイベントを準備中。お寿司とルマンドに目がない。Facebook:樫原 正都 / Twitter:@Kassy_Dotsubo

人気商品をやめたら売上げ4倍!? 「キンミヤ焼酎」の社長と飲んできた

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こんにちは、非常勤ライターのひにしあいです。

 

今日は東京からおよそ3時間、三重県四日市の楠駅に来ています。この小さな駅に何をしに来たかというと―

下町で愛されまくっている『キンミヤ焼酎』が作られているから……!

 

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東京下町の居酒屋で絶大に愛されている「キンミヤ焼酎」は、芸能人でファンを公言する人も多く、おじさまたちだけではなく若年層にもその人気は広がっています。

 

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このラベル、飲み屋さんなどで一度は見かけたことがあるのではないでしょうか?

 

しかし、この「キンミヤ」―ずっと古くからあったにも関わらず、4~5年前から「甲類焼酎といえばキンミヤ」というイメージがなぜか急速に広まりブームになったという状況で……一体何が原因なのか、以前から気になっていました。

 

ということで、『キンミヤ焼酎』を作っている製造元「宮崎本店」の社長と―

 

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飲みにきました

 

いきなりの急展開で何を言っているのか分からないと思いますが……私、毎晩のように家でも外でもキンミヤ焼酎を飲みまくっている大ファンなのです。

 

とある記事にて「キンミヤへの愛」を語った所、宮崎本店からご連絡を頂き、気がつけば「飲もう」という流れになっていました。

 

社長、自由すぎかよ!

 

なので今回は「キンミヤ」の販売戦略や、「シャリキン」というキンミヤの大人気商品はどう広まっていったのか? など、ブームの秘密を、泥酔覚悟で社長に伺ってきました。

 

 

売上の半分を占めてた商品の販売をやめたら売上が4倍に成長?

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昔ながらの黒塀の蔵が立ち並ぶ宮崎本店。飲む前にちゃんと真面目にお話を伺いに来ました。

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「最近、テレビや雑誌で下町人情系の居酒屋が熱くなるのにつれて、キンミヤもブームになっている印象です。やっぱり売上はぐんぐん伸びているんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「そうだね。ここ5~6年はおかげさまで2桁増の成長を続けていて、今は年間で一升瓶換算でだいたい400万本くらい出荷しているかな」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「すごい右肩上がりっ!」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「需要に生産が追い付いていなくて現状も製造のタンクを増設しても間に合っていない状態が続いているんだよね」

 

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最近増設されたという「キンミヤ」用のタンク。まじで全然足りないらしい

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「5~6年前から2桁増の成長ということは、そのタイミングで何か販売戦略を変えるなどしたのでしょうか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain会社全体の売り上げの4割を占めていた『4Lサイズ』の販売をやめたことが大きかったかな。結果として売上が4倍になったからね!」

 

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f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「ええっ?!  でも普通に考えてそれだけの売り上げを占めている商品の販売をやめるなんて、現場は唖然としそう…」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「まあ、そうだよね。会社の半分近くの売り上げを担っているわけだから、コケたら会社潰れるからね。がっはははは」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「全然笑い事じゃないですよ……。なんでそんな思いきった決断をしたんですか? 」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「4Lのサイズって、昔売っていた時は、競合さんと同様の価格(4Lで1800円くらい)で売っていたのね。でもそれって正直完全に赤字だったの」

 

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f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「当時は『キンミヤ』の知名度が低くて、『安くたくさん飲みたい』ってお客様に売るためには、競合より価格を上げるわけにはいかなかった。だから赤字でも一番売れる4Lサイズを販売し続けていたのね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「『キンミヤが飲みたい!』ではなく、『安い甲類焼酎が欲しい』というニーズのお客さんには、価格だけが買う基準ですもんね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「でも、このままほとんど儲けにならない商品を売り続けても、それは『ゆるやかな自殺』だよな…と思ったの」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「たしかにそうですね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「で、実は2.7Lと4Lで売ってた時のキンミヤって、これなんだけど…」

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f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「えっ!『好きやねん』って全然違う商品名だし、『キンミヤ』とは思えないデザインじゃないですか!」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「なんかどっかでね、『キンミヤ』は他より絶対いい商品なのに同じ値段で売っていることに負い目があったんだよね。だから無意識のうちに商品名を分けていたのかも」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「でもこれが4Lの販売から大幅に減らした時にも功を奏してね。『市場から急にキンミヤが減った』というイメージにはならずに済んだ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「でも、4Lや2.7Lの大きいサイズを大幅に縮小しただけだと、普通売り上げが伸びることにはつながらないと思うんですが。そのタイミングで他にも何かしたんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「売るものが減ったなら、別のものを増やそう!と思ってね。1.8Lの紙パック、600mlの瓶、200mlのカップに加えて、新たに720mlと300mlのラインナップを増やしたんだ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「それって売上に繋がるんですか?」

 

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f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「4Lの大容量サイズって、お店で使われていても、それをお客さんが認知する機会って無かったの。だって、裏でお酒を作ったり、カウンターの下で使っている焼酎の銘柄なんて、見えないからさ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「はっ!確かに……。普通はどんな焼酎つかっているかなんてわからないですね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「大容量サイズをやめたことで、720mlの瓶がお店の棚にダーッと並んだり、カウンターの上に置かれたままお酒を作る機会が増えた。『今飲んでいる焼酎はキンミヤ』という認知を増やせたんだね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど! それで何かと目にする機会が増えたと感じたのか…」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「4Lサイズをやめて1年で売上は元に戻った。今ではやめる前の売り上げより4倍に増えたんだよね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「まさにブランドイメージの構築による低価格競争からの脱却じゃないですか……。そんな戦略のもとに今のブームがあったなんて!」

 

 

最初はパクりだった?看板商品シャリキン発売の裏側

 

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シャリキンは「シャリシャリのキンミヤ」の略で、凍らせた焼酎にそのまま割り物を入れて楽しむ酎ハイ。氷を入れないので薄まるどころかどんどん酒が濃くなっていく呑兵衛仕様の逸品。

写真のシャリキンパウチは、なんと100円!

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「私、『シャリキン』が大好きでこの夏はおそらく100杯くらい飲んでます。特に最近出すお店が増えたなーと感じているんですが、あれはどういう風に販売を仕掛けていったんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「実をいうとね、あれは最初うちが提案したわけじゃないの!お店側がやっていたのを見て、逆にうちが売り物にしちゃったのよ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「え? そ、そうなんですか? 要はパクったってことですよね?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「おそらく最初に始めたと思われるお店に、『うちで商品としてシャリキン出してもいいですか?』って聞いたら、『いいよ、いいよ! でもたぶんできないんじゃないかな』って感じで言われてね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「そ、それってどういう意味で…?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「キンミヤ焼酎は通常アルコール度数が25℃なのね。そのままだと普通の家庭用の冷凍庫だと凍らなかったんだ。試行錯誤の結果、アルコールの度数を20℃まで下げてパウチパックにしたら、凍るってことが分かったのよ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「うおおお!ということは、普通に瓶で売っているキンミヤよりもパウチのシャリキン用キンミヤは度数が低かったんだ…。どうりでスイスイ飲みやすいわけだわ…」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「いや、お店は特殊な冷凍庫(家庭用とは違う)を使って、アルコール度数25℃のまま凍らせてる。つまりうちが専用のパウチを出す前からやっているお店ってのは、アルコール度数高いままだよ」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど……。いつも何気なくシャリキン飲んでいたけどこれからは心して飲むことにします!」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「よし! ここでの取材はこのへんでいい? そろそろ飲みに行こうよ! 実は時間ないんだ!」

 

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というわけで、オフィスを飛び出して、四日市駅からほど近い地元の人気店へ向かいます。なぜそんなに急いでいるのかというと―

 

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オープン直後に行かないと入れないという、人気店に連れて行ってくれたから。取材をものすごく巻きで終わらせました。社長の勢いすでにやばい。

 

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何を食べても美味くて安くて感動でちょっと泣いています。

 

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左が380円で山盛りのカワハギの肝和え、右がつぶ貝580円。東京ではこの値段じゃ絶対無理だ。

 

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値段と味のバランスが全体的におかしい…三重ってこんなに美味いもんが安かったのかよ…

 

 

「他社の焼酎とぶっちゃけ差なんて無いと思っていた」

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酒も入ったのでここからさらに深く聞いていきます!

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plainキンミヤならではのこだわりとか、他社との差があるからここまでブームになったんでしょうか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「昔はぶっちゃけ、キンミヤと競合他社の焼酎に味の差なんてないと思っていたの」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「メーカーの社長とは思えない発言」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「まず、甲類焼酎って、さとうきび糖蜜を蒸留して出来上がったアルコールを、水で割るってだけの単純なものなのね。原材料はおそらく競合他社さんと大した差はない。だから味に差が出るなんて全く考えていなかったんだよね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど…。だとしたら、昔は『まあ他社と差はないけど売れる商品だし売っとくか~』みたいなノリだったんですね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「ぶっちゃけそうだったよね」

 

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途中から社長の奥様も飲みにきたのでたまに写真に写りこんでいます。自由さが加速。

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「まじかよ…なんてこった。じゃあ、その考えが変わるきっかけが、何かあったんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「あれは20年前くらいだったかな……。都内の居酒屋さんが、キンミヤ焼酎と他社さんの甲類焼酎を、ストレートでいくつかテイスティングできるように出してくれたのね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「ほうほう、他社の焼酎と比べてみろってことですね?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「そう。で、初めて飲み比べてみたんだよね。そしたらさ、これがまあ全然違ったのよ(笑)

 

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f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「うちの焼酎はピュアというか、雑味が無くて、割り物の焼酎としてすごいうまいなと、飲み比べて初めて知ったんだよね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「うわー、普通はメーカー側が『うちの商品は他と違うよ!』ってプレゼンするものなのに、お店側から教えてもらうまでメーカーの社長が気づいていなかったなんて…斬新すぎる」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「お店の人には、『元々お店を訪れるお客様がキンミヤが他社さんより美味しいって教えてくれたんですよ』って言われてね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「お客さんが一番評価してくれてたんですね。私もキンミヤ大好きだからその美味しさはわかるつもりですけど、原材料がだいたい一緒なのに、違いは一体何なのでしょうか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「詳しい事は企業秘密だけど……鈴鹿川を源流にした地下150mから水を引いているのがポイントのひとつだね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「水……ですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「だって100℃のアルコールを20℃なり、25℃にするために水で割って商品にしているわけだから……75%以上を占める水はそりゃ重要なわけ

 

f:id:sunwest1:20170928145455j:plainこれが宮崎本店の敷地内にある井戸。ここからくみ上げる水が超重要

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「まあ、そんなこといってるとさ、『おまえのとこは水で金とってんのか!』ってよく言われるんだけど(爆笑)。もちろん貯蔵の期間とかも研究を重ねているけど、まあ、水は重要って話だね! わかる?」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「はい……」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「だからキンミヤと同じ製品を作ろうとしたらね、うちが井戸からくみ上げている地下水が必要なわけ! つまりうちを買収するっきゃないよね! がっはっははは!」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain(だいぶ酒が入ってきたな…社長…)

 

 

素敵なラベルデザインも戦略のうち?

f:id:sunwest1:20170928152647j:plain工場内で瓶詰めされてベルトコンベアを流れる「キンミヤ焼酎」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「キンミヤといえばこのレトロなラベルもブームに一役買っていると思っているんですが、何かのタイミングでリニューアルなどされたんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「いや、このラベルは基本的に戦前から変わっていないんですよ。更に言うとね、ぶっちゃけ誰がデザインしたかも分かんないんだよね。がははは」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「えっ?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「昔は印刷屋さんがデザインもしてたから、お抱えの印刷屋が昔に考えたものを使い続けているだけなんだよね。単純に」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「ここには戦略はまったく無かったのかよ。逆にすごい。じゃあ、あの特徴的な青色も狙ったものではない?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「広告代理店の人らに聞くと、この色を『キンミヤブルー』と呼んだりするらしいけど。僕ら的にはなーんも考えてないね(笑)」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「この社長、いいこと言ったり適当だったり、バランスの振れ幅がでかすぎる」

 

 

見えていなかったお客様の存在

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だいぶお酒も回ってきて2軒目突入です。奥さんとひにしはもうベロベロなのに、社長は元気。さすが!

 

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宮崎本店の日本酒「宮の雪」で乾杯!どんだけ飲むんだ…

 

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「ぶっちゃけた話、こんなに美味しいのに、シャリキンパウチなんて1個100円で売って本当に大丈夫なの? 採算合うの? と思うのですが」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「これはシャリキンのパウチのサンプリング調査をした時の話なんだけどね。90mlで100円で売る!って決めたときに、現場からはそれは高いんじゃないかって声が上がったのね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「え、どうしてですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「もともと25℃の4Lを1800円で売っていたわけで、シャリキンの場合アルコール度数も低いのに、10ml当たりで考えるとこの違いだからね」

 

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f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「あーたしかに。その計算式で比較すると、高いような気もしてきますね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「だから、パウチパックを手に色んな飲み屋のお客さんに、『これ100円で売るんですけど、どう思いますかー?』って聞いて回ったのね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「ふむふむ、結果はどうだったんですか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「なんと、『高い』っていう方は1人もいなくてね。むしろ、『そんな安い値段で売ったら儲からねえだろ!200円くらいにしたら?』と言ってくれる方が続出で……」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「気持ちわかる!だってシャリキン1回分が100円とか安すぎますもん!」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「そう。そう言ってくれるお客様の存在が昔は見えてなかった。それまでは4Lのお客様しか見えてなかったから」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「価値がわかってるユーザーを知ったわけですね。自社製品の価値をお客様から教わるってほんと素敵な話だなあ」

 

 

「物語を呑んでいる」キンミヤ人気、本当の理由

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f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「キンミヤが置かれているお店って東京だけでなく全国に増えていますが、これからもかなり手広くやっていくんでしょうか?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「年間でだいたい800店くらい、新規のお取引が増えているね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「Webサイトを見ると『キンミヤが飲める店』の紹介があっていつも行くお店選びに役立ててますがそんなに!」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「あ、でもね、あの『キンミヤが飲める店』に載せないでくれって半分くらいのお店には言われちゃうんだよね、実は」

 

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宮崎本店 公式HP「飲める店」

 

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「常連さんをメインにひっそり営業されているお店が多いから、『急にたくさんのお客さんが来ちゃうと、常連さんに迷惑をかけてしまう』っていうのが主な理由かな」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど、そういうタイプのお店に愛されているってことなのか」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「ちなみに、いわゆる全国に支店がたくさんあるようなチェーン店さんには『キンミヤ』は卸していないんだよね。引き合いは正直たくさんあるんだけど」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「えっそうだったんだ…でも言われてみれば見たことないかも…」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「現状、個人店の需要にさえカツカツで対応しているから、物理的に難しいってのもあるけど、『売れて儲かるなら、どこにでもうちのお酒を卸す』ってのはちょっと違うなあと思っていてね」

 

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f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「と、言うと?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「キンミヤを呑んでくれる方は『物語を呑んでいる』のではないかなあ、と考えていてね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「物語を……呑む……?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「キンミヤを好きと公言してくれている芸能人って、ありがたいことにかなり居て、しかも飾らなくて親しみやすい人が多いんです。地元の小さなお店に通っていそうな。そういう方に愛していただいていることが、私はなにより嬉しいんだよね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「芸能人のキンミヤファン、私もよく耳にします。では一般の方でキンミヤが好きという人は、どういうタイプが多いんでしょう」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「最近だと仙台や札幌でキンミヤの取扱店がすごく増えているんだ。どちらも単身赴任者が多い土地だから、『東京でいつも飲んでいたキンミヤの味を求めるお客様が多い』って共通点がある」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「あぁ、そういうお酒……沁みるでしょうね」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「キンミヤと共にある風景や、匂いや佇まいが『物語』になっている。常連を大事にするお店や、親しみやすい芸能人、仙台や札幌の単身赴任……みなさんそんな『物語』を求めて、キンミヤを手に取っていただいてるんじゃないかな」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「なるほど。宮崎本店がその物語のイメージに反するようなことをしない、ということなんですね?」

f:id:jimocoro:20171017103942p:plain「そう! 『物語』を壊すような販売の仕方はしたくないし、愛してくれる人々の元に商品を届けたいんだ。そのために今後も頑張っていきたいですね」

f:id:sunwest1:20171012102546p:plain「めちゃくちゃ酔っているのに、こんないい話をしてくれるだなんて……。ますますキンミヤのファンになりました! 今日はありがとうございました!社長!」

 

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まとめ

「キンミヤ」では他にも、日本酒の「宮の雪」を始め、色んな商品を扱っています。というわけで一通り飲ませてもらいました。

 

特に生原酒山廃の「宮の雪」は最高でキンミヤフリークの皆さんにも現地でぜひ味わってほしい味でした。

 

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三重県四日市の近くに訪れる機会があれば、キンミヤ焼酎の宮の雪酒造さんの酒造見学や昔ながらの蔵の風景は一見の価値ありですよ!

 

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販売戦略のお話から、看板商品シャリキンのお話、人気を支えている企業姿勢など、ざっくばらんすぎる感じで、酔っ払いながら教えてくださった宮崎社長でした。

まじで、いい社長さんだったなあ……。

 

 

さて、今晩もキンミヤで晩酌しよっと!

 

 

 

(おわり)

 

 

取材協力

www.miyanoyuki.co.jp

 

 

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ライター:ひにしあい

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本業はSEOの非常勤ライター。好きな本は路線図、好きな音楽はビジュアル系。特技はカラオケ芸。嫌いなものは犬好きを装う女。スクールカーストは常に2軍。女ならではのあるあるを試し続ける人。トゥギャッチやコネタ –Exciteで活動中。個人サイト「hinishi.com」。Twitter ID→@sunwest1 

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