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組み合わせは無限大! ベルト難民を救うオーダー革職人に惚れた話

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こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

突然ですが、ベルト選びって難しくないですか?

実は僕、ここ10年くらいずっと同じベルトを使ってました。誕生日プレゼントで貰ったこともあり思い出深いものの、1本だけだとズボンを履き替えるときに不便…。その後も服屋さんで次の1本を探しても全然見つからなかったんです。

 

ブランド物は手が出ないし、店によってはゴテゴテの派手な装飾のバックルで自分に似合う気がしないし。結果、「今のやつでまだいいや」の繰り返し。こんな迷えるベルト難民、意外と多いんじゃないでしょうか。

 

本来、ベルトひとつでファッションの印象もがらりと変わるはず。もういい大人だし、自分に似合うベルトをちゃんと選んで使いたい……と思っていた時に出合った店が長野市にありました。

 

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OND WORK SHOP
住所:長野県長野市鶴賀田町2417 
営業時間:11:00~19:00
電話番号:026-477-2496
定休日:毎週火・水曜日
HP:http://ondworkshop.kim

 

長野の善光寺門前にある「OND WORK SHOP(オンドワークショップ)」は、ベルトや革小物など、革製品をセミオーダーで作ってくれる店です。

ただ、一つだけ注意点があります。ここではネット注文を受け付けていません。オーダーする方法は店に来て、職人さんと顔を合わせて注文すること

 

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例えばこんなベルトを、職人さんと一緒に色や形を選びながら作ってもらえます。対面で選ぶから、素材を実際に手に取りながら、自分に似合うのはどんなものか気軽に相談できる。だから、ちゃんと納得のいくものを作ってもらえます。

 

でも、オーダーって高そうって思うじゃないですか。

 

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OND WORK SHOPのオーダーベルト基本価格は5000〜12000円が目安(幅や仕様に応じて変わります)。

 

写真で腰に巻いたベルトが12000円です。

思ったよりお手ごろではないでしょうか。

 

 

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ちなみにこのベルト、僕が実際にオーダーしたものです。

「柿のベルトを作ってください!」とお願いしたら、バックルは仏壇屋さんの素材を取り寄せてくれました。柿のヘタをモチーフにして、緑色にしてくれるなんて…。柿次郎の名前に囚われている僕にピッタリの一品。

 

世界に1本しかない自分専用のベルト…!

最高…! こんなのが欲しかったんだよー!!

 

さらにベルト以外にも財布やポシェット、キーケースなどの革小物もオーダー可能。

 

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店内には素敵な作品が並んでいます。店のHPにもいろんなオーダー例が載っているので参考までに。

 

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テンションが上がって財布も一緒にオーダーしちゃいました。こちらは15000円。これまで登山用の薄いナイロン財布を愛用していて、「これぐらい薄い革を使って、同じようなデザインにできますか? あと柿の雰囲気も出してください」と気が狂ったように依頼したモノ。

 

値段はお手ごろな上、自分で選んだデザインだから愛着が湧きます。おまけに革製品は使い込むほど革の風合いが増し、壊れてもメンテナンスを受けて使い続けられる「一生モノ」です。

 

僕がこのお店を知ったのは、店主であり作り手である木村真也さんとの出会いがきっかけでした。 

 

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この風貌に加えて「直接注文しか受けないオーダー職人」と聞くと、“頑固で真面目な職人堅気”の人を想像しませんでした?

木村さん、そうでもありません。職人のこだわりと適度なダメさを併せ持っています。

 

どうして直接注文のみのオーダーショップを始めたのか? 適度にダメってどういうこと? 気になることがたくさんあるので、お店でインタビューしてきました!

 

充電期間を経て一念発起

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木村さんは長野・飯山市出身。18歳で上京し、デザイン専門学校に通ったのち、東京・蔵前のベルトメーカーに就職しました。そこで10年間修行するも、30歳のときに退職します。そして、長野市に移住。

 

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「移住後、1年半くらい充電期間があって」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「その間はなにしてたんですか?」 

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「温泉に入りに行ったり、家のソファでビール飲んだりして彼女が仕事から帰るのを待ってました。あ、夕飯も作って待ってましたよ」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「ほほう。そこからまた働こう!ってなったきっかけって何だったんでしょう」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「あるとき、彼女に『いつまでそんなことやってるの』って泣かれちゃって。そこで人は働かなきゃいけないんだって気づきました

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「この世の真理」

 

木村さんが以前、東京で勤めていたのは、大量生産のベルトメーカー。同じデザインのベルトを10万本近く製造するような仕事でした。辞めるきっかけとなったのは、とある疑問が浮かんだからです。

 

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「『これ、買った10万人全員に、絶対フィットしないよな?』ってモヤモヤするようになって。ベルトの色は黒じゃなくて茶色がいいとか、金具の形が違うとか、人によって微妙に好みは違うと思うんですよね」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「たしかに。僕はなにがフィットするのかわからないまま、なんとなく市販品を使い続けてました。大量に作られるなかから漫然と選んでると、合わないと捨てちゃいますよね」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「そうやってゴミになるかもしれないものを作りたくないって思ったんです。大量生産を否定はしないです。僕も使うことがありますから。前の会社にはめちゃめちゃお世話になってとても感謝していたのですが、でも、もっと使う人に合った、長く使ってもらえるものづくりがしたくなったんです」

 

当初は「年をとって、余裕ができたらやろう」と思っていたものづくりの夢。しかし、彼女に泣かれ、一念発起して人生設計が早まりました。「働かなければ!」となったとき、木村さんが唯一自信があったこと、それが「ベルト作り」だったからです。

今やらないと意味がない」。木村さんは自分の店を開くことを決意します。

 

「顔の見えるものづくり」がしたかった 

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「OND WORK SHOP」と名付けられた木村さんの店は、2014年10月に開店。店舗は、かつて布団屋だった築70年ほどの建物。入り口横の窓からは、木村さんのものづくりの様子を見ることができます。

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「なんか、お店とお客さんの距離が近い感じがしますね」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「それが理想でした。この建物に決めるときも、元々あった『小上がり』が決め手。お店っぽくしたくなくて、僕の家に遊びに来る感覚でお客さんに来てほしかったんです。お茶飲みに来るくらいな」

 

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インタビューも小上がりに座って行いました 

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「まさに『顔が見えるものづくり』!でも、商売としては直接販売のみってストイックに思えますけど」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「大儲けしたいわけじゃないですから。自分なりにやっていける販売目標には届いてます。ベルト以外の革小物含め、1日1点作るくらいのペースですね。お酒を飲み過ぎなければ大丈夫です」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「ちょいちょいダメさが出てる。注文は店に来なきゃできなくて、完成品の受け取りってどうなんですか?」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「発送もできますよ。取りに来てくれたら嬉しいですけど、そこまで無理はいいません。あくまで『知り合って、自分の思いを込めたものを作ってもらって、長く使ってほしい』っていうのが理想なので」 

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「『無理しない』はこの店のテーマですね」

 

子供でも買いに来れる値段にしたかった

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店内には革の色見本も。仕上がりをイメージしながら選ぶことができる

オーダーにしてはお手ごろなOND WORK SHOPの価格設定。間に卸問屋や小売店を挟まない「直取引」もその理由ですが、もうひとつ、価格に込める想いがあるそうです。

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain適正価格でやりたいんです。誰かのためにちゃんとものを作って渡す。すごい昔の人がやっていたことを、特別なことではなくて普通にやりたくて。大人も子供も関係なくて、いろんな人の手に届くような。」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「確かに、頑張ればお小遣いやバイト代で払える値段ですよね」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「前に、中学生の男の子が来たことがあって。『父の日にプレゼントしたい』って財布からクシャクシャの千円札を出してくるので『これ、絶対お小遣いを一生懸命貯めたんだろうな』と思ったら、すげえグッと来て、頑張っちゃいました。嬉しかったですね」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「地元の子供がオーダー頼みに来るってめちゃくちゃいい」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「女子高生も来てくれました。全然キャピキャピしてない雰囲気で、まわりはブランドものの財布を持ってるけど、私はちゃんとそうじゃないのがいいって」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「絶対いい子だ。特に思春期でファッションに目覚める時期って、ベルトとか財布選ぶの苦労するじゃないですか。まだ自分に自信がないし、知識も乏しい。そんなときに、相談しながら、しかも手の届く値段でオーダーできるお店って絶対欲しいですよ」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「若い子に『一生モノ』の価値が伝わるとすごくいいなって思うんですよね。10代から使えば、大人になった頃にはとってもいい風合いになってるはず。傷んだところはうちで無料で修理しますし。その時まで店が潰れてなければ」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「そこは頑張りましょ!!経営者!!」

 

 

長野でノーストレスに生きる

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バックルはすべて真鍮製。砂の型に真鍮を流し込んで作るため、砂のザラザラ感が表面に残り、味わいが出るのが魅力だそうだ

実は木村さん、店を始めるときの自己資本は0円だったそう。長野市には『創業支援資金』という融資制度があり、事業を始める際に、低金利かつ長い返済期間で資金の借り入れが可能なんです(※)。その制度を利用し、「失敗しても頑張って働いて返せるくらい」の約500万円を借り入れ、開業することができました。

※融資制度の詳細については、長野市のHPなどをご参照ください

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「いっぱいお金は入るけどそのぶん大変、っていう状況はやだなと思って。飲みにも行けて、好きなことをできるっていう背伸びしないそこそこのラインを考えました」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「個人で商売を立ち上げやすい環境があるんだ。個人事業主が多いと、横のつながりもできますよね」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「よく周りの友人と飲みに行って、飲み会のノリで『これやろう!』って決まることもあります。いい飲み屋も多くて、ここで店を始めてよかったって思います」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「顔見てたらわかりますね。異常に目がキラキラしてるし、肌ツヤもいいし」

 

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f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「しょっちゅう温泉入ってるからかな(笑)」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「いや、マジでストレスなさそうな感じがします」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「怒ること、ないですね〜お酒飲んでたら幸せだし」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「店燃やされたら?」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「それはさすがに怒ります。ストレスといえば商品の納期だけですね。納期に合わせて焦って作るのは辛くて……」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「僕の編集の仕事は、納期を設定する側なんですよね。ライターに何日までに原稿くれって。でも、たまに『〆切なくてもいんじゃない?』って思います。なにか、別の仕事の進め方がないかなって」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「納期ありきで進めなくてもいいんじゃない?ってことですよね。無理して納期に合わせるより、もう1ヶ月待ってもらって、いいものを納品したほうが、結局長く使ってもらえるんじゃないかって思うんですよ」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「そう!いいものを作るのにはある程度時間もかかるし、お互いのタイミングもあるし。そういうユルいやり方はなかなか難しいですけど……って、ダメな感じが伝染ってた。危な……これを見てジモコロのライターが全員締切無視したらえらいことなりますよ。見ててもするなよ!」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「うんうん。あくまで理想ですけど、言葉を選ばず言えば、楽しいことだけして生きていたいってことですね(笑)。可能だとは思うんです。楽しそうなほうが人は寄ってくるし、その方がちゃんとした『商い』になってくるし」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「相当ダメな発言にも聞こえますけど、つまり、人と人との関係性でものを売るってことですね。いいもの作ったら、別の人を連れて来てくれて、次に繋がっていって。それはたしかに理想です」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「うちはそれでもってるところがありますよ」

 

 ダメさを許容する社会

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意識はどちらかというと低めですが、それも木村さん流。彼の仕事の進め方には、土地の風土も関係があるような気がします。木村さんの店がある権堂町は、かつて遊郭があった場所。いまも店の裏は歓楽街になっています。

 

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「遊郭周辺の土地って、ダメさを許容する文化がありませんか?美味い飲み屋があるから、そこにダメなおっさんが集まってくるけど、なんとなく許されて社会が成り立ってるような」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plainダメでも大丈夫な世の中になってほしいですね。めっちゃ働く人も必要でしょうけど、僕はそうはなれない(笑)。けど、ダメなりに自分のペースで、できることはしっかりやりますよ。僕ならベルト作りを」

 

1年半の充電期間があったからこそ、木村さんは今こうして働けているのかもしれません。背伸びはせず、やれる範囲で、自分にとって価値を感じられる仕事をする。そして、それが「商い」になる。ある種の理想を、木村さんは長野で体現しているように思います。

 

 f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「そういえば、何の動物の革を使ってるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「牛さんです」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「牛さん」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「結局、生き物の命をいただいているので。革をとるために殺すのではなく、お肉を取る際の副産物として、牛さんの革を利用させていただいています。無駄を出さず、できるだけ長く使っていただくことで、牛さんごめん!全部大事に使うから!っていつも思ってます」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「そっか、このベルトも財布も牛がいたからできてるんだ…ありがとう牛さん!」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「人間のエゴで動物の命を無駄遣いしたくないんですよね。あと、店も、もっと山奥に移したいと思ってます。ちょっと街に疲れた人が、休みの日に来て、癒されて帰っていくって風になったらいいなと思って」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「あえてハードルを上げていくんですね」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「40歳過ぎくらいからできそうかなと思って。開業時の借金を返し終わるタイミングで。それで、もう一回借金したいんです、1千万円くらい。その時は妻も巻き込んで」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「あ、充電期間の彼女と結婚してたんですね。もう泣かせちゃだめですよ」

f:id:tmmt1989:20170301230053p:plain「妻は美容師なんですが、自分で美容室をやりたいと言っていて。妻の美容室と、僕の革の工房が一緒になってるお店を山でやりたいんです。革についての考えも、ものづくりのあり方も、世の中の価値観を少しでも変えられたらと思ってます」

f:id:tmmt1989:20170301230108p:plain「……めっちゃいい夢!ダメダメ言いまくってすいません。木村さんのこと、すっかり好きになっちゃいました」

 

 

おわりに

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柿色のベルトを手に入れて、もうベルト難民から解放されました。 胸を張って身につけられる「一生もの」とともに年を取っていくことに、とてもワクワクしています。

 

その人の生活に合わせてモノを作り、長く使ってもらう。壊れたら修理もする。木村さんの仕事は、まさに昔の職人がやっていたことそのものだと思います。職人文化の衰退が叫ばれる昨今ですが、彼のような現代の職人もまた、少しずつ現れ始めています。

 

「自分も作ってほしい」という方は、ぜひ、長野まで足を運んで、お店に遊びにいってみてください……というところなのですが

 

関東圏にお住まいの方に朗報です。

 

この取材を通じて、僕が木村さんに惚れすぎて東京に呼んでしまいました。

 

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3/24(金)〜30(木)、「mAAch ecute 神田万世橋」で開催される「Anonymous Camp Tokyo」にジモコロが出店することになりました。そのブース内でOND WORK SHOPの小物製品の販売、そしてオーダー向けの商品サンプルを展示。さらに28日(火)に限り、長野の店舗を休んで1日限定のセミオーダーを受け付けます!

 

【注意事項】 

※3/24午後以降〜27、3/29〜30は、キーホルダーなど一部の商品の販売・サンプル品の展示のみ

※オーダーから納品まで数ヶ月かかる可能性があります。気長に待てる人向け!

 

長野以外でオーダーできる本当に貴重なチャンスです。たぶん編集長の柿次郎もいるはずなので、ぜひぜひ気軽にご来場ください。ジモコログッズ(Tシャツ・手ぬぐい・写真集など)も販売予定。さらに28日の夜はトークイベントもやります。

 

 

▼取材協力

OND WORK SHOP

http://ondworkshop.kim

 

ライター:友光 だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光 哲 / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

企画・編集:徳谷 柿次郎

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株式会社Huuuu代表取締役。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916 Mail: kakijiro(a)gmail.com


【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (12) - アフターケア/おなじみのナンバー

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<ポテン生活|一覧>

 

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

「フリーマガジンをきっかけに再評価」奇跡の画家・池田修三をたどる旅

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こんにちは、ライターの友光だんごです。

どこか憂いを帯びた目の少女が、繊細な色使いで描かれた絵(と、しまりのない僕の顔)が並んでいますが、みなさん、この絵を描いた人をご存知でしょうか?

 

秋田県にかほ市象潟出身の木版画家池田修三(いけだ・しゅうぞう)」と聞いてもピンとこない人が多いと思うので、まずはこちらをご覧ください。

 

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池田修三さんは秋田のフリーマガジン『のんびり』をきっかけに没後、再評価された奇跡の画家です。

 

彼の一番特別な点は

地元での愛され方

なんです。

 

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秋田の人、池田修三好きすぎじゃないですか?

こんな風に「土地に根づいた」アーティストって、なかなかいないと思うんです。

 

今まで、僕は池田修三のことを知りませんでした。でも、初めて絵を見て感じたのは、なぜか心の奥の郷愁が刺激されるような、妙に気になる感覚。

この画家のことを教えてくれたのは、関西出身だけど池田修三好きすぎな編集者・藤本智士さんでした。

 

案内人:藤本智士(ふじもと・さとし)

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1974年兵庫県生まれ。編集事務所「りす」代表。雑誌『Re:S』編集長を経て、秋田県発行のフリーマガジン『のんびり』の編集長を務める。現在はWEBマガジン「なんも大学」編集長も。2011年には嵐が日本各地を旅する様子を記録した『ニッポンの嵐』の編集・原稿執筆を担当。2017年4月14日に発売を控える、俳優の佐藤健が熊本を旅した「るろうにほん 熊本へ」の編集・原稿執筆も。

 

取材対象やスケジュールを事前に決めず、現場での奇跡のような偶然の出会いを記事に落とし込むスタイルで日本中を取材してきた編集者である藤本さん。

 

しかもあの超人気アイドルグループ「嵐」と本作ってるし、最近では旅バラエティ番組『のんびりし〜な』を企画・出演したり「いちじくいち」や「なんもダイニング」などのイベントを主催したりと、活動の幅をどんどん広げまくっている、とにかくヤバい人なんです。ネックウォーマーはかわいいクマですが、秘めたる想いはグリズリー級です。

 

藤本さんと池田修三 

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藤本さんと池田修三作品の出会いは、秋田の友人宅。

その後、2012年に編集長だった秋田のフリーマガジン「のんびり」で池田修三を特集。特集の取材を通じ、藤本さんは池田修三という人に深く惚れ込んでいきます。

そして、『のんびり』の特集は、ふたたび池田修三が注目されるきっかけとなりました。

 

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「秋田からニッポンのびじょんを考える」をテーマとし、2012〜2015年にvol.16まで発行されたフリーマガジン『のんびり』。

 

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誌面はWEBから閲覧可能。池田修三の特集号はvol.3

藤本さんが池田修三の作品に出会ったときの感動は、特集号に込められています。

池田さんの作品に出会ったあの日以来、僕はことあるごとに、インターネット上にある池田さんの作品画像を見ては、ため息をつく日々が続きました。それらの作品達が、あまりにも素晴らしかったからです。そして、先ほどの略歴のとおり、池田修三さんという人が、既にお亡くなりになっているという事実が残念でなりませんでした。しかしです。まさに僕は池田さんが死してもなお、生き続ける作品にまっすぐ胸を打たれました。そして僕は、秋田の人々の暮らしのなかにある池田修三という存在について知りたいと思い始めます。それはシンプルに、僕と池田修三との出会いが、どこかの美術館でも、何かのコマーシャルでもなく、友だちの家の壁だったからです。

のんびり Vol.3 秋田「池田修三という、たからもの」から引用

その後、現在に至るまで、画集の出版、さらに各地での展覧会の開催など、池田修三の魅力をさらに広く伝えるためのさまざまな活動を行なっています。

 

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そんな藤本さん、以前からジモコロ編集長の柿次郎のことが気になっていたというのです。そしてジモコロ読者にぜひ池田修三のことを知ってほしいと、藤本さんみずから象潟を案内してくれることになりました。

柿次郎や僕にとって、藤本さんは「ローカルの大先輩」。願ってもない機会です。

 

 

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かるく吹雪です

正直なところ、柿次郎も僕も「地元の人が池田修三を好きすぎなこと」に、最初はピンときていませんでした。なぜなら

・絵画(アート)って気軽に買えるイメージがなくて、馴染みが薄い

・「絵が地元に根付いてる」状態がよくわからない

からです。

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「『亀有にこち亀の両さんの銅像がある』みたいなこと…?」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「フィンランドのムーミンみたいな…?」

 

頭にいくつもの「?」を浮かべて象潟へと向かったわれわれは、驚くような町の風景を目の当たりにすることになります。

さて、それでは「奇跡の画家・池田修三」をたどる旅が始まります。

 

 町のいたるところに絵がある! 

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象潟へは、秋田市内から車で1時間ほど。東の鳥海山、西の日本海に挟まれた地形で、冬は日本海側らしい荒れた天候の多い土地です。取材した2月はまだ雪景色。

 

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まずは象潟駅前へ向かうと、駅前のロータリーの時計に少女の絵がありました!

 

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駅のホームにも大きな「ようこそ」というパネルが。電車で象潟へやって来ると、真っ先に出迎えてくれます。藤本さんと柿次郎で記念撮影。

 

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「さっそく絵がありましたね」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「いや、駅は観光協会とかが置いた可能性もあるから…」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「疑り深いな」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「まあまあ、ついてきてみて」

 

やはり気になるのは「地元の人の家や店に絵が飾ってある」という話。まずは行って確かめてみることにしましょう。お邪魔しまーす……

 

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ありました。チューリップと少女の絵!

 

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奥にもまだまだあります。

 

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棚にも飾ってある。こちらもチューリップの絵です。

 

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絵の持ち主は、須藤恵子さん。勤め先の建築事務所に、池田修三の絵を飾っています。現在、作品を大小合わせて40枚ほど所有しているそう。

 

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「な、ほんまに飾ってあるやろ」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「ほんまでした。ご実家の物置で絵を見つけたのが、作品を集めるきっかけだったんですね」

f:id:tmmt1989:20170321112249p:plain「そう、物置を整理していたら、隅からホコリまみれの絵が出てきたの。7年くらい前だったかしら、今みたいに修三さんが人気になる前で。あんまり素敵だったから綺麗に修繕してもらって飾ってね。それから集め始めて、気づいたら増えちゃった」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「須藤さんみたいに見つけてくれる人もいたけど、『のんびり』で特集した2012年は、ギリギリのタイミングだったんよね。没後10年くらい経って、玄関に飾っていた絵がいよいよしまわれちゃったり、世代が変わって、埋もれかけてしまってた」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「そこに藤本さんが滑り込んだんですね…!そういえば、2月なのにチューリップの絵を飾ってありますけど」

f:id:tmmt1989:20170321112249p:plain春を先取りしてるの。今日は雪だし、せめて部屋の中では暖かい気持ちになりたいでしょう? 飾る絵は季節に合わせてかけ替えてるのよ」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「『絵を飾る』って習慣があまりないんですが、絵を通じて季節を感じるっていう楽しみ方もあるとは」

f:id:tmmt1989:20170321112249p:plain「そうね、修三さんの絵は、季節のモチーフもたくさんあるから。埋もれたままで終わらずに、こうやってまた注目されるようになって、本当に良かったって思うの」

 

 

須藤さんの元を後にして、町のなかの池田修三探しを続けます。

 

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通りがかったケーキ屋の店内にも絵が。ここでは池田修三の絵を再現したイラストケーキをオーダーできるそうです。

  

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書店の店先にも発見。

 

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地元の施設にあるトイレの男女の表記も池田修三!

 

聞いていた通り、行く先々で絵が見つかります。しかも、さりげなく風景のなかに溶けこんでいる。

こんな風に愛される絵の作者はどんな人だったのだろう?という思いが、歩みを進めるごとに募ってきます。

 

そこで、生前の彼を知る人を訪ねてみることにしました。

 

「池田修三の手紙」を見つける

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出迎えてくれたのは、柴田尭さん。奥さんが営んでいた象潟駅前のお店を改装した私設ギャラリー「柴田さんち」には、たくさんの池田修三作品が飾られています。

 

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町のいたるところに、池田修三作品が自然と根づく象潟の町。その町全体を美術館に見立てた「まちびと美術館」という試みの一貫で、「柴田さんち」はオープンしました。壁に並ぶのは、柴田さん所有のコレクションです。

実は柴田さん、池田修三の親戚にあたる人。昔、開店祝いに絵を本人からプレゼントされたのをきっかけに、どんどんコレクションが増えていったそうです。

f:id:tmmt1989:20170321112415p:plain「私が定年退職するときには、お世話になった人たちに、修三さんの絵をプレゼントしたんだよ」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「『秋田の人は池田修三の絵を贈り合う』ってやつですね。本当なんだ!」

f:id:tmmt1989:20170321112415p:plain「プレゼント用に何十枚も絵をまとめて買うことが多かったんだけど、そんなとき、修三さんは小さなサイズの絵をオマケでくれたんだ。本当に欲のない、人に与えるばかりの人で…そうだ、手紙も残ってるから見るかい」

 

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池田修三さん直筆の手紙。柴田さんが注文した絵を贈る際、同封してあったもの 

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「修三さんは、絵を納品する際、必ず手紙をつけてたらしい。彼の言葉って本やインタビュー記事としてはほとんど残ってなくて、手紙でしか触れることができないねん」

 

手紙には、『指のバレンダコとハケと曲がった腰が唯一の私のブリキの勲章です』という言葉が綴られています。

 

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「木版画って実は彫ったりするより、刷りが一番難しいって言われていて。だから刷りだけは、刷り師さんに頼むことが多いんやけど、修三さんは小さい作品以外は、自分の手で何百枚と刷ってた

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「それは、手にタコはできるし腰も曲がりますよね…」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「うん、そしてそれを『勲章』と言ってる。『ブリキ』っていうのも、謙遜のあらわれだと思うんよね」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「『ブリキの勲章』って、最高のパンチラインですね。『無私の人』感ハンパないな…‥」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「修三さんの絵の価格が安いのも、価値が低いってことではなくて、修三さんの意志だった。当時修三さんの絵を扱っていた画商さんはみんな、価格を上げて欲しいって頼んでたみたいだけど、修三さんは、『広く手に渡ってほしい』からって、頑なに価格を上げなかったらしい」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「修三さんが今でも慕われる理由、だんだんわかってきました」

 

 

柴田さんちを後にして、藤本さん絶賛の「園食堂」で昼休憩。

 

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冷えた体にアツアツのタンメンがたまりません。

 

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麺をすする合間に見上げると、さりげなく池田修三の絵が!どこへ行っても絵があるのに驚いて、柿次郎がむせてしまいました。

 

藤本さんが出会った当時は、池田修三の全国的な知名度は低かったものの、秋田の人は、大半の人が「絵を見ればわかる」ほどだったといいます。

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「地元銀行や企業のポスターに絵が使われていたのも理由やけど、大きなカギは『地元の広報誌』やと思ってる」

 

それならばと、広報誌を編集していた方の家を目指すことにしました。

 

地元に根付くきっかけは、スーパー公務員編集者

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次に訪ねたのは細矢宗良さんのご自宅。当時の象潟町役場の職員として、昭和56年ごろから広報誌「広報きさかた」の編集を担当していた方です。細矢さんが作っていた頃の表紙がこちら。

 

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ここにも池田修三!!広報誌の表紙だったんだ!

 

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一同、思わず見入ります。昭和60年4月号からの2年間、池田修三の絵が、表紙を飾ったそうなんです。そして「広報きさかた」は、当時の象潟町内の全戸に配布されていた!地元に住んでいた人が皆、絵を目にする機会があったということです。

 

今までの広報誌のイメージと違う版画の表紙は、好評を博しました。そして、人気を受け、1年目の表紙絵12枚を使って「町の広報カレンダー」が作られ、こちらも全戸に配布されました。

 

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f:id:tmmt1989:20170321113132p:plain「カレンダーもとっても好評でね。絵だけを切り取って飾るような人も多かったんです。これは掛け軸にしたものですね」

 

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カレンダーは、部屋に飾り、日々の生活のなかで幾度となく目にするもの。この時期から、いっそう池田修三の絵が町の人の「日常の一部」になっていったはずです。

 

そして、話は「編集者としての細矢さん」に。

 

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f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「僕は細矢さんを編集者の先輩やと思ってる。修三さんを表紙に起用しただけでなく、そこに地元の詩人・今川洋さんをかけ算したのがすごい。これは、いち地方公務員のレベルじゃない編集」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「ほんとだ!詩も載ってる!カレンダーを作ったのも細矢さんの企画ということですよね」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「そう。細矢さんは公務員だし、特にカレンダーの企画なんて、通すのは大変だったと思うよ。そこを貫いた細矢さんは、編集者としてめちゃ尊敬できる。そもそも、『広報きさかた』の月刊16ページを一人で作ってたらしいからね」

f:id:tmmt1989:20170321113132p:plain「担当になって2年目くらいから、毎月16ページ、取材・撮影・執筆・編集・入稿まで、全部一人でやってました」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plainスーパー公務員編集者じゃないですか!! すごいな!!そういえば細矢さん、体もがっちりしてますよね」

f:id:tmmt1989:20170321113132p:plain「今も野球をやってますから」

 

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ポジションは内野手だそうです

f:id:tmmt1989:20170321113132p:plain「池田家が近所にあったので、修三さんの甥と仲が良かったんです。その甥と、藤本さんが瓜二つ。藤本さんが『のんびり』の取材で初めて会いにきた時、驚きましたよ。修三さんのお導きかと思った」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「『のんびり』の取材で象潟を回ってたとき、ほんとに『導かれてる』って感じるくらい、不思議なことが多かったんよ」

 

藤本さんが池田修三と出会ったタイミングも、まさに不思議です。『のんびり』のなかで、藤本さん自身が次のように書いています。

 

かつて修三さんが教鞭をとった由利高校ですら、絵が飾られなくなっているという現実を前に、僕たちは何かギリギリのタイミングのようなものを感じていました。つまり、今回の取材旅がなければ、もう池田修三さんに光があたることはなかったかもしれない……。今回の取材で、様々なお家にお邪魔し、そこに息づく修三作品に触れてきましたが、その一方で、修三作品がいよいよ奥にしまわれつつあるということも、僕たちはうっすら感じていたのです。

のんびり Vol.3 秋田「池田修三という、たからもの」から引用

 

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「細矢さんという編集者が地元で広く知られるきっかけを作って、さらに藤本さんという編集者が再び光を当てるきっかけを作り……お二人がいなければ、僕たちはこんな風に絵を見られていないかもしれない。本当に面白いですね」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「奇跡みたいな話ですよこれは……池田修三についてもっと知りたいんですが、オススメの場所はないですか?」

f:id:tmmt1989:20170321113132p:plain「地元の資料館がありますよ。よかったら行ってみたら」

 

編集者の大先輩との出会いに身を引き締めながら、細矢さんのお宅を後にしました。

  

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道すがら、「九十九島(くじゅうくしま)」と呼ばれる風景を見に立ち寄りました。田んぼの中に点在する松の木々が、海に浮かぶ小島のように見えませんか?

実は、象潟の「潟」という字は、かつて海だった名残。はるか昔、東にそびえる鳥海山の噴火による地殻変動で地面が隆起し、海が陸地へと変わった土地なんです。今も残る松の部分は、かつての島だそう。かの松尾芭蕉も『奥の細道』のなかで訪れているのですが、その頃は海。島々に船で渡ったそうです。

 

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「修三さんは東京へ出た後は、地元へ帰ることはほとんどなかった。けど晩年には、地元の人が喜んでくれるからって、それまで作ってなかった秋田の風景の木版画をたくさん描いてるんよ」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「この九十九島もですか?」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「うん、でも実際の風景というよりは『記憶の中の風景』なんやと思う。そのままズバリの風景って実はなくて。だから東京にいて、秋田を思い出しながら描いていたんだろうなあって。あくまで想像だけど、遠く離れた東京から秋田を描くっていうことに、修三さんらしい『故郷への想い』を強く感じるんよね」

 

「修三さんならどうしたか 」

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九十九島を出て、到着したのは「にかほ市象潟郷土資料館」。

 

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館長の齋藤一樹さんです。資料館3階の展示室にて、年2回ほどテーマを変えながら、池田修三の企画展を行なっています。

 

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展示のなかには愛用の道具も。版画を刷るのに使うバレンやハケが並んでいます。

 

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そして「版木」も。木版画は、「黄色の版」「緑の版」のように、異なる色の版を重ねていき、最終的に一枚の絵になります。池田修三は通常よりも多い8〜12もの版を重ねていたそう。色をいくつもかけ合わせることで、あの繊細な美しい色合いが生まれているのです。

 

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f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「一樹さんは修三さんの没後、遺族の人から絵や版木を預かって、最初は一人で管理してたのよ。この人がいなければ、今みたいに展示会もできてなかったかもしれない」

f:id:tmmt1989:20170321114432p:plain「修三さん以外の文化財の仕事も山ほどあるうえ、預かった多数の資料をたった3人ほどで整理している状態なんです。とても作業が追いついてなくて」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「僕は修三さんのことをもっといろんな人に知ってもらいたい、広めたい、と思って活動してる。だけど、活動の規模が大きくなりすぎると、現場にいる一樹さんや、遺族の池田家の人に迷惑をかけかねないっていうジレンマがあるんよ」

f:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「グッズを作ったり絵をたくさん売ったりするには、それだけ事務処理や物理的な作業量も増えますもんね」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「うん、だから『修三さんならどうしたかな』って考えながらやってる。もう亡くなってるけれど、本人の意志に反することはしたくない。『広く手に渡って欲しい』って絵の値段を上げなかったくらいの人やからね。本当に凄い人だと思うからこそ、大切に大切にしていきたいんよね」

 

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f:id:tmmt1989:20170321114432p:plain「修三さんをどう広めていくか?ってことを常に藤本さんたちが考えて行動してくれているんです。秋田出身ではないのにここまで関わってくれる人は、なかなかいないですよね」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「根っこには『秋田ってめちゃおもろいやん』ってシンプルな想いがあって。よそものだからこそやれることはあると思うし、『のんびり』で始めた『秋田に関わること』を、最後まできちんとやり遂げたい」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「なんだか藤本さん、『秋田』そのものを編集しているみたいですね。池田修三に関するプロジェクトは、アーティストから地元を盛り上げる、ひとつの理想の形な気がします」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「修三さんに出会えたのは、編集者として、神様からプレゼントをもらったような気持ち。だからこそ、『覚悟』をもってやるつもり」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「象潟を旅してみて、池田修三に藤本さんが惚れ込んだ理由がよくわかりました。僕も絵を家に飾りたくなっちゃいましたよ」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「僕も知ってもらえて嬉しいわ。そうや、柿次郎くん、起業祝いに修三さんの絵をプレゼントする!」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plainf:id:tmmt1989:20170321111949p:plain「えええ!!」

f:id:tmmt1989:20170321112219p:plain「修三さんの絵はそうやって贈ったり贈られたりするもんやから。僕は池田家のみなさんからいただいた絵があって、それがあれば十分やねん。だから地方を旅しながら、たまに画廊さんとかで修三さんの絵を見つけたときは、こうやって理解してくれる人にプレゼントするために買うようにしてるねん」

f:id:tmmt1989:20170321111932p:plain「ありがとうございます!やったー!!」

 

 

おわりに

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後日、藤本さんから柿次郎の元に絵が届きました(羨ましい)。

 

今回の旅で強く感じたのは、池田修三が地元の人の「当たり前」になっていること。暮らしの一部であり、当たり前になりすぎたからこそ、池田修三の絵は一時は埋もれかけてしまったのかもしれません。

けれど、藤本さんにより大きな大きな「地元の魅力」として再発見され、ふたたび「大切な当たり前」として光が当てられることになりました。

 

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地元のひとびとが池田修三の絵を見るときの、やさしいまなざし。それは、池田自身が人々へ与えたやさしさのお返しではないでしょうか。

そして、藤本さんのまなざしにも同じやさしさと、揺るぎない覚悟が宿っていました。「ローカル」に関わる上で忘れてはいけない大切なものを、今回の旅で学んだように思います。

 

 ここで、私も池田修三の絵を見てみたい!という方にビッグなお知らせです。

 

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3/24(金)〜30(木)、東京の「mAAch ecute 神田万世橋」で開催されるイベントにジモコロが出店。そのブース内で、池田修三のポストカードや画集などの関連グッズを販売、さらに原画も展示します。木版画の質感を生で観てみてください。

 

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SHUZO IKEDA OFFICIAL SITE 『木版画家 池田修三』

 

書いた人:友光だんご

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編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光 哲 / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

写真:小林 直博

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長野県奥信濃発のフリーペーパー『鶴と亀』で編集者兼フォトグラファーをやっている。1991年生まれ。ばあちゃん子。生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中。

【記事連動型】「マーチエキュート神田万世橋」でジモコロのポップアップショップ展開中!(3/30まで)

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こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

秋葉原駅から徒歩5分のところにある「マーチエキュート神田万世橋」ってご存知でしょうか。元々「万世橋駅」であり、その後は鉄道博物館として活用していたんですが、2013年から商業施設として大勢の人を集めています。

 

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そんな歴史のある、すんげー人が集まる商業施設で…!

 

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3月30日(木)まで、ジモコロのポップアップショップを開いています!

 

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●イベント情報
『Anonymous Camp Tokyo Vol.0』

2017年3月24日(金)~3月30日(木)
会場:東京都 秋葉原 マーチエキュート神田万世橋
時間:11:00~21:00(日曜、祝日のみ20:00まで)


参加作家:
シャムキャッツ、黒木雅巳、stomachache.、MESS(宮崎希沙)、礒野桂、河村実月、やないももこ、ミシシッピ、POP●COPY、ちえちひろ、上坂元均、磯優子、西風によせる歌、yucco、まちこ!、原田響、玉川ノンちゃん、Natsuru Matsuda、エヒラナナエ、ズック、日向山葵、オカタオカ、佐藤拓人、松岡マサタカ、any、足立拓人ほか

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気になる出展内容は?

 

ジモコロは、先日公開の記事連動型企画として・・・

 

●納期に追われると蕁麻疹が出る革職人「OND WORK SHOP(木村真也)」


 

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28日(火)は今回のためだけに、普段長野市でしか受注していない革製品のセミオーダーを「マーチエキュート神田万世橋」でやります。

 

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手に取る人が一番多かったレザートレイ。玄関に置いて鍵置きたいヤツ!

 

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レザーブレスレット

 

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くつべらキーホルダー

 

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ちっちゃいキーケース

 

などなど、革の小物製品も販売中!(在庫あるだけ)

詳しくは記事をご覧ください。

 

●没後10年後、敏腕編集者の手によって再評価された画家「池田修三」


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木版画家「池田修三」のグッズを揃えました!

おすすめはポストカード。全種類揃えたくなります。

 

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かわいい付箋!

 

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使い勝手のいいクリアファイル

 

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マスキングテープなんかも売ってます。

 

原画も数点展示しているので、木版画の深みを現地で確認してみてください。

 

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老若男女、国籍問わず、「なんだろ?」と立ち止まる人がとにかく多いです。

 

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ジモコログッズもあるよ!

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ジモコロTシャツも今回のために作り直しました!

漫画家・カメントツデザインのロゴを蛍光オレンジでプリント。前回よりもボディ素材をやや厚くして、男の乳首透けをストップ。さらにS・M・Lのサイズ展開がありながら…利益度外視の各2,000円(税抜き)です。50着限定なのでお早目に。

 

さらに!

 

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誰が買うんだ?でおなじみの写真集「ジモコロおじさん(赤・白)」(各1,000円)も増版しました。長野のフリーペーパー「鶴と亀」の小林直博の作品でもあります。彼がジモコロ取材で撮影した写真のみで構成したもの。そこに僕が汚い文字でコメント入れています。

 

前回刷った分は奇跡的に完売…。気が向いたらポケモンみたいに「ジモコロおじさん(金・銀)」を作ろうと思っているので、誰得な写真集を買ってみてはいかがでしょうか。寄付感覚で。こちらも利益ナシ。

 

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並べた直後、奇跡的に二人買ってくれました。赤・白セットで。

 

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こちらの二人は汚物でも見るような表情でチラ見をして、棚に戻していました。

まぁ、正しい反応かもしれません。

 

山形・山口・山梨のユニット「さんてん」

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ジモコロ取材でも度々お世話になっている山形・山梨・山口のユニット「さんてん」も、自分たちでセレクトした13点の商品を販売。なかなか手に入らない商品を持参してきているのでおすすめです。

 

 

山口県萩市でゲストハウス「ruco」を運営する塩満さんのインタビュー記事はこちら。

 

 

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さんてんのブースはこんな感じ。

 

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僕も大好きな山梨県「五味醤油」の味噌かりんとう。

 

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こちらは山形県南陽市で知る人ぞ知る「唐からし粉」!

 

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山口県のソウルフード「どんどん」の食品サンプル(展示)はじめ、手ぬぐいやマーマレード、野菜のピクルスなど、いろいろ販売中。

僕はマーマレードと唐からし粉を買いました。

 

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同じローカルメディアの「雛形」も出店しています!

 

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赤鬼の手ぬぐい、山Tシャツ、どっちも欲しい…。

 

 

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Anonymous Camp presents トークセッション#1「“場の編集”から考える、未来の編集」

さらに28日(火)はトークイベントも開催します!

「Anonymous Camp」のコンセプトである「場の編集」をテーマに、『CINRA.NET』編集長/CINRA取締役・柏井万作、
東京ピストル代表・草彅洋平、『ジモコロ』編集長/Huuuu代表・徳谷柿次郎という時代をリードする3人の編集者にお越しいただき、トークイベントを開催します。

気になるトークの内容は、「場の編集」とは? という話に留まらず、3人の編集者それぞれが考える「未来の編集」「編集者という人生」「今後の展望」など、「編集」をキーに、普段はあまり聞けないお話もざっくばらんに伺います。

編集者、ライター、イベントオーガナイザー、デザイナー、ディレクター etc.クリエイター必見の内容です。

 

というわけで皆さんお待ちしています!

 

※詳細はこちら

http://www.anonymouscamp.com/archives/712

【調査】なぜ、佐賀県は過小評価されるのか? -唐津焼は海賊の器だった説-

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ジモコロ読者の皆さまこんにちは。発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
発酵入門の記事や、編集長柿次郎さんの旅日記にも登場している「ジモコロ仲良しおじさん」です。

 

 

でね。今回のジモコロ記事のライター、なんと僕なんですよ。
ふだん編集やライターが本職でない僕が登場するには、ちょっと理由があってだな。

 

今回のお題は「なぜ、佐賀県は過小評価されるのか?」。佐賀県の魅力を少し違う視点で掘り下げてほしいとジモコロ編集部にいわれたんです。

というのも、僕の母方の実家が佐賀の小さな漁村で。小さい頃身体が弱くて、中学生まで毎年夏休みは佐賀の田舎の海で鍛えられてたんだよね。

 

つまりルーツは佐賀にある! 掘り下げ役としては適任なのかもしれない!

 

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佐賀時代の写真。漁師のおじいちゃんと海で遊びまくっていました。中央のガリガリの子どもが僕。今もガリガリ…! 

 

たしかに佐賀の魅力ってわかりづらい!?

みんな佐賀県の位置は大丈夫だよね!

…というわけで、佐賀の文化を調査して皆さまに紹介することになったわけですが。
確かに佐賀の文化ってとっつきづらいかもしれない。

 

・福岡と言えば中洲の屋台

・滋賀と言えば琵琶湖

・シンガポールと言えばマーライオン

 

的なわかりやすいアイコンが思いつかない。

 

「大阪と言えばヒョウ柄のおばちゃん!」「沖縄と言えば島唄大好きのおじいとおばあ!」的な明快なキャラクターも思い浮かばないな…。

 

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そもそも僕の母も何考えているのかよくわからない性格でした

僕の幼少期の記憶を辿ってみるに、佐賀の村でお世話になった親戚のおじちゃんやおばちゃんの事を思い返しても、喜怒哀楽のリアクションも単純じゃなくて、言葉数が多いわけでもなく、いっけん何を考えているかわかりづらい人が多かった。

これぞ田舎!的な感情をストレートに伝えてくるような文化はなかった記憶がある。

 

うん。佐賀、たしかにとっつきづらい。
でも、実は気になるものもいっぱいあるんだよね!

 

最初に選んだのは、唐津焼!

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佐賀県唐津市エリアを中心に伝わる伝統の焼き物。発祥は400年以上前

佐賀の文化のなかで、僕が最初に思い浮かんだのは唐津焼

実は佐賀県は焼き物大国。伊万里焼・有田焼・唐津焼と有名なブランドがあり、コレクターでなくても、フツーの家庭の玄関に伊万里焼が飾られていたり、唐津焼でお茶を飲んでいたりするわけです。

 

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左が伊万里焼(wikipediaより引用)。右が有田焼(wikipediaより引用)。どちらも装飾的なスタイル。高級感ある!

唐津のはじの漁村に生まれ育った僕の母は、当然のごとく唐津焼が大好き。少年時代のヒラクは、実家の戸棚にしまわれた唐津焼を「なんかフシギな焼き物があるな〜」と眺めていたわけです。

 

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実家の焼き物棚。唐津焼が中心の渋い趣味

装飾的な伊万里・有田焼は「いかにも芸術品!」といったわかりやすいテイストですが、唐津焼はゴツゴツしてるし、色もベージュとか茶色で地味。よく見るとカタチもゆがんでいたり、とにかくシュッとしていない。テキトーに土をこねてみましたけど何か?的な無愛想な焼き物なわけです。

 

小さい頃は「なんだろう、あのヘンな器」とアウトオブ眼中だったのですが、年をとってだんだんおじさんになってくると、唐津焼の良さが沁みてくるわけですよ。それなりに社会的責任を負い、それなりに人を愛し、それなりに人に裏切られ、それなりにお金を稼いだり借金したりして辛酸をペロリペロリと舐めてきたおじさんからすると、

 

無愛想さ→天真爛漫さ
地味さ→素朴な味わい

 

に脳内変換が起こってくるわけです。かつてはわからなかった価値が「滋味深ぇ…!」とジワジワくる。

 

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この天真爛漫で朴訥とした風情を、いつまでも眺めていたい!
…と、「日向ぼっこしている猫ちゃんのお腹をなでなでしてえな」的な欲望がドライブしまくって、いてもたってもいられなくなるわけよ。

 

ということで、窯元を訪ねてみました

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「もっと唐津焼のことを知りたい」
「もっと唐津焼のことを愛(め)でたい」

あまりにも気持ちがたかぶってしまったので、九州への出張ついでに佐賀に寄って、唐津焼の窯元を訪ねてみました。

 

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ヒラク母。保険代理店の仕事をしながら日本舞踊の先生や陶芸のコレクションをしている

口利きしてくれたのは唐津焼大好きなヒラク母です。

f:id:tmmt1989:20170327133440p:plain「唐津焼のおおもとのルーツは、北波多というエリア。そこに古い唐津焼のスタイルで器を焼いている三帰庵という窯元があるから行ってらっしゃい」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「えっ、北波多?唐津焼の老舗の中里家※のある市内からは離れているけど…」

※14代続く、唐津焼を代表する陶工一族

f:id:tmmt1989:20170327133440p:plain「家系的には中里家が古いんだけど、三帰庵のあるエリアは唐津焼が生まれた場所。唐津焼の歴史を調べたかったらまずはそこへ行かないと」

というわけで。一路、佐賀県唐津市北波多の『岸岳窯 三帰庵』へGO!

 

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三帰庵の入り口。林に囲まれたのんびりとした風情

唐津市中心部から車で約30分ののどかな里山に、三帰庵の窯があります。
この佐賀っぽい景色、なつかしいな〜。

 

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朝鮮から伝わった登り窯。坂道に沿って複数の窯が連結されている。薪の火を無駄にしないための合理的な仕組み

 

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工房。作り途中の器がいっぱい

 

話を聞いた人:岸岳三帰庵・冨永祐司(とみながゆうじ)さん

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およそ80年続く、唐津焼発祥の地北波多で窯を営む陶芸家。古いルーツの唐津焼のテイストを残した味わい深い器をつくっている。ヒラクの母が大ファン。

 

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「やあいらっしゃい。唐津焼の歴史のことを知りたいんだって?」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「はい。唐津焼って、朝鮮の作陶技術を取り入れてできた焼き物ですよね。豊臣秀吉の朝鮮出兵※の時に生まれた文化なんですか?」

※1592〜1598年にかけて起こった、豊臣秀吉による大明帝国・李氏朝鮮の征服を目指した大規模な出兵。唐津に本拠地を起き、のべ20万人の兵を大陸に派兵した、16世紀では世界最大規模の国際戦争。いちいちスケールがデカい

 

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ヒラクの大好きなマンガ「へうげもの」のエピソード(10巻106席より引用)※出版社の許可済

茶頭の古田織部※が朝鮮に出向いて朝鮮の作陶技術と陶工を持ち帰ってきて革命的な器をつくった。右ページの色の黒い男が松浦党の海賊。左ページに北波多の地名が登場しています。

※古田織部:16世紀末〜17世紀前半に活躍した武将茶人。利休の弟子だが、わびさびとは一線を画した自由奔放で豪快な茶の湯を拓き、斬新な茶器を次々にプロデュースした。その数奇な人生は漫画『へうげもの』で詳細を知ることができる

へうげもの(10) (モーニングコミックス)

へうげもの(10) (モーニングコミックス)

 

 

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「そうだねえ。唐津焼が有名になったのは秀吉の出兵以降なんだけど、実はその前から唐津焼はあったんだよ」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「な…なんですと?じゃあ秀吉や織部が見つける前に、朝鮮の作陶技術に目をつけていたヤツがいた…?」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「そうそう。秀吉がくる前にこの北波多を支配していた松浦党という地方豪族…もっといえば倭寇という海賊のような組織がいたんだね。この海賊が唐津湾を通って朝鮮半島と交易をしていた。その時に向こうの焼き物の技術を輸入して、朝鮮スタイルの日用雑器をつくりはじめた。それが一番最初の唐津焼なんですねえ」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「ええーッ!知らなかった。唐津焼って、海賊の器だったんだ!」

 

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三帰庵の近所の岸岳に残る、松浦党時代の窯の遺跡。豪族感ある。

 

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唐津焼のルーツは芸術品ではなく、普段使いの日用雑器だった

 

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「唐津焼って、茶席の時に使う器として有名だけど、この頃の唐津焼はほんとに日用品。芸術的な価値というよりは、手軽で丈夫であることが大事だったんだ」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「それがどうして今知られているような茶器としての価値を持つようになったんですか?」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「うーん。当時のことを直接見たわけじゃないから推測だけど、唐津焼の荒々しい感じが、武家の茶道の美意識にマッチしたのかもしれないね」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「確かに…。利休的な洗練されたわびさびよりも、無骨で荒々しい美学…!」

 

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漫画「へうげもの」より(11巻110席より引用)

器を大胆にゆがませた「織部スタイル」。元々海賊の器として生まれた無骨な焼き物を、アートディレクター織部がさらに無骨さをデフォルメすることによって、素朴な日用雑器が芸術作品に進化した。

 

へうげもの(11) (モーニングコミックス)

へうげもの(11) (モーニングコミックス)

 

  

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「織部が唐津焼に目をつけた頃、この地を支配していた海賊松浦党は秀吉に征服されてしまったんだ。そしてもともとこの北波多で唐津焼を焼いていた松浦党の陶工たちは他の場所へ移らざるをえなかった。それで唐津焼の最初のルーツはいったん忘れられてしまったんだね」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「なるほど〜!」

 

 

唐津焼のフシギなスタイルはどのように生まれる?

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唐津焼の底の部分。ここの凹凸を指先で掴んで釉薬のプールに器を浸ける

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「なるほど〜。朝鮮伝承の日用雑器のざっくりしたテイストと、武家の荒々しい美意識が合体して今の唐津焼が生まれたわけですね。唐津焼の特徴的なスタイルってそもそもなんですか?」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「まずは器の底の部分。釉薬※がかかっていなくて、土の部分が露出しているでしょ。これは実はルーツとなった朝鮮の器にも見られないものなんだ」

※土の素焼きの陶器の上にかけるガラス質のコーティング剤。器が水分を吸収しないようにする役割を果たすのと同時に、器に色彩や光沢を与える 

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「おおっ、確かに!なぜそうなったんですか?」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「手間を省くためだね。釉薬の液体が入った桶に、器の底を手で持ってドブンと釉薬に漬けるんだけど、その時に底のほうまで漬けると手が汚れるでしょ。手を拭き取る時間がもったいないから、じゃあ底は釉薬なしでもいいや!っていう発想になったんだね。普段使いの雑器だったからそれでもよかったんだね」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「ああ〜、なんか織部の気持ちがわかるよ。この『まあいいや!』感にグッと来るんだよね。作為のない面白み…!」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「あとはね、唐津焼は『蹴りロクロ』といって、器をつくる時のロクロを手じゃなくて足で回すスタイルなんだね。足でガンガン蹴って回すから、ロクロの回転が微妙にガタガタして、そのぶん器のカタチが歪む。これも唐津焼の器の個性になる」

 

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蹴りロクロ:手回しロクロよりもスピードが速く回せるので合理的に器を成型することができる

 

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「この『自然に生まれた歪み』の良さ、わかる〜!唐津焼のずーっと見ていても飽きない理由はコレなんですよね。あと僕が好きなのは素朴な絵付け。草とか木とかのフォルムがシュッ!シュッ!とざっくり描かれるじゃないですか。これもいい味ですよね〜」

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「唐津焼に使われる土は他の陶器に比べても土が粗め。だから器の質感もザラザラと粗めになる。そういう器にね、複雑な絵は描けないんだよ」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「だから単純なストロークでシュッ!と草を描くわけだ。この感じ、ミロの抽象画みたいなテイストがあってたまらないんだよな〜」

 

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唐津焼特有の絵付け。一筆でシュッ!と描く。狙いすぎずに描くのが大事


唐津焼の特徴は、作家の意図が生んだものではなかったわけで。とにかく「手間をはぶく」「多少ユルくてもかまわない」という、日用品づくりのコンセプトが反映されていたんですね。

f:id:tmmt1989:20170329103113p:plain「唐津焼もねえ、時代が下っていくとだんだん複雑な色使いや絵付けの作品が出てくるんだけど、古い唐津焼のおおらかな感じはまたいいものだよねえ」

f:id:tmmt1989:20170327133327p:plain「いいですね〜」

 

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冨永さんの作品たち。唐津焼ならではの魅力が詰まっている

素朴な味わいを大事にする冨永さんの器たち。これがもしかして、織部が発見して大興奮したどルーツな唐津焼の魅力なのか…?

 

深みのない深み。作為のない作為。

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僕がデザイナーとして独立して最初に手がけたお味噌屋さんのデザイン。割と天真爛漫な仕上がり

最近は「とにかく発酵が好きなおじさん」として認識されているヒラクですが、基本はデザイナー。このデザイナーとしての目で見てみると、唐津焼には「時代のトレンドを超越する面白さ」を感じずにはいられないわけですよ。

その面白みとは何かというと、「深みのない深み」。そして「作為のない作為」という禅問答のようなコンセプト。作家性が前に出ない、ひたすら天真爛漫なその佇まい。「つくってみたら、できた」という、作為を感じさせない必然性。

 

めっちゃ良い…めっちゃいさぎよいよぉ〜!!!!

 

最近のデザインって、なんかシュッと洗練されたオシャレなヤツ多いじゃないですか。
余白多めで、上品で、清潔感あって。それはそれで素敵なんだけど、どこもかしこもそんなお洒落デザインまみれになる世の中、つまんなくないですか?

 

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野に晒された唐津焼の器たち。この飾らない天真爛漫な美しさよ…!

それに比べて、どうよこの唐津焼の野太くかつ土臭い佇まい。しかしよくよく見ると、必然性に溢れた説得力がある。もう最高すぎる。この最高さは、例えるならば、銭湯に置いてあるケロリンの風呂桶!

 

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ケロリンの風呂桶。誰しも一度は見たことはある、銭湯のアレ

オシャレや洗練から百万光年離れたデザインながら、特に変える必然性がないので何十年も変わらず定着してしまったこの天真爛漫さ。もしケロリンの風呂桶を、有名デザイナーが崇高なコンセプトを立ててデザインし直したら、5年くらいで廃れるかもしれない。

「天才クリエイターによる作家性」という「作為」から距離を取ることで至る普遍性。
冨永さんのように「いつもご機嫌なおじさん」が日々工夫しながら焼き上げる三帰庵の焼き物は、デザイン疲れしたデザイナーを「そんなに肩肘張らなくてもいいんだよ」と肩をモミモミしてくれるような魅力に溢れているのでした。大好きー!!!!

 

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日本酒用のお猪口と、熱燗用の器、抹茶茶碗。このクオリティでめちゃくちゃリーズナブルでした

もちろん三帰庵の器をゲットしてきました。僕の日本酒器のコレクションに加えてだな…

 

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我が家に遊びに来た熱燗おじさんに、買ったばかりの唐津焼で日本酒を注いでもらうの図

ナイスな日本酒をクピっと飲むのさ。唐津焼で飲む酒はこれまた格別。ということで、次回の「佐賀の面白い文化特集」のテーマは日本酒の予定です。

それではまた次回!

 

 

●書籍発売のお知らせ 

http://hirakuogura.com/wordpress/wp-content/uploads/2017/02/hakko_B2-650x431.jpg

最後にヒラクから宣伝でーす。2017年4月後半に新著『発酵文化人類学』が出版されます。僕の専門である発酵・微生物を切り口に日本各地のローカルなカルチャーを「文化人類学的」に掘り下げる、ジモコロ読者の皆さまが好きに違いない内容になっています。よろしければ下のページからご注文どうぞ〜!

ソトコト連載『発酵文化人類学』事前予約のお願い&お祭りやります! | 

 

 

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【オマケ】唐津焼のルーツを受け継ぐ三帰庵。僕と同い年の冨永将一さんが、父祐司さんの後継ぎになるべく修行中だそうな。唐津焼のこれからが楽しみだ!

 

書いた人:小倉ヒラク

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山梨県在住の発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し活動中。絵本&アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。2015年より新作絵本『おうちでかんたん こうじづくり』とともに「こうじづくりワークショップ」をスタート。1000人以上に麹菌の培養方法を伝授。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZYTALK』パーソナリティも務めている。公式HP→

【漫画】高知の英雄・坂本龍馬に今更ながらハマる男【ママ会同盟】

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こんにちは、漫画家の宮川サトシです。

今年はあの“大政奉還”から150年のメモリアルイヤーなのだそうで。

 

みなさんは大政奉還って詳しく知ってます?

 

「誰の必殺技?」「どれぐらいゲージ消費するの?」って人もいるかもしれませんが……大丈夫。僕も「歴史の授業で習った幕末のイベントだったような?」そんなふんわりとした記憶程度です。

 

漫画家になる前は塾講師として働いてたくせに、正直ほぼ覚えていません。

そこで今回は、幕末について勉強し直し、大政奉還とそれを画策した坂本龍馬について漫画にしてみました。

 

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……いかがでしたか? 数々の“あたりまえ”をひっくり返してしまう龍馬先生の大胆な発想、憧れますよね……豪快ですよね……。

 

僕もこれからは龍馬先生にならって、ワリカンの時に一円単位まで割るのをやめることにします!

 

 

幕末維新博 公式サイト

 

なお、現在高知県では『幕末維新博』を開催中!

高知城歴史博物館や、こうち旅広場、その他 幕末維新ゆかりの歴史文化施設などの地域会場が協力した、県を上げての一大博覧会です!

 

特に注目を集めているのは、新たに発見された龍馬 直筆の手紙! 現在は高知城歴史博物館に展示されていますよ!

 

今度の休日には高知県で、幕末を駆け抜けた龍馬の、アツい風を感じてみてはいかがでしょうか! カツオのタタキや皿鉢料理など、食べもんも……うまいぜよ~!

 

 

(おわり)

 

 ※宮川サトシの作品

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (バンチコミックス)

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (バンチコミックス)

 

 

※4月8日には宮川サトシが原作をつとめる「宇宙戦艦ティラミス」の最新 第3巻が発売されます!

宇宙戦艦ティラミス 3

宇宙戦艦ティラミス 3

 

 

 【合わせて読みたい】

www.e-aidem.com

 

漫画:宮川サトシ

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1978年生まれ。岐阜県出身。大学卒業後、地元で学習塾を経営していたが、漫画家を志し上京。漫画教室『古泉智浩 池袋マンガ教室』へ通い、2012年に漫画家デビュー。代表作は『情熱大陸への執拗な情熱』『宇宙戦艦ティラミス』『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『東京百鬼夜行』など。Twitter→ @bitchhime

別府は温泉好きじゃない「おっさん」一人でも楽しめるのか?

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ライターの中村ヒロユキ(43)と申します。インターネットが大好きなおっさんです。

 
みなさん、温泉は好きですか?
 
実はわたくし、さほど温泉に興味がないんです。「嫌い」というわけではないのですが、「微妙」という感じ。
 
気持ちよさ < 面倒臭さ ∴ 行きたくない
 
腰を据えて作業をするのが苦手で落ち着かず、あちこち行くのでアクティブな人と勘違いされることもあるのですが、本当はかなりの出不精。頭の中ですぐにこんな式ができあがってしまいます。
 
それと、温泉といえばいつも気になるのが「日本人なら、みんな温泉好きでしょ」という周りからの無言の圧力。旅行先の検討でも、温泉地がまず初めに候補に挙がってきますよねー。まあ、行けば行ったで楽しいんですけどね!
 
そんな自分になぜか、ジモコロ編集長より、温泉の聖地「別府」行きの命が、それも、ソロで!

 

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別府といえば、言わずと知れた日本一の温泉街!

 

最近では、温泉につかりながら楽しめるアミューズメントパーク「湯〜園地」企画をぶちあげたり、温泉でシンクロする「シンフロ」動画がバズったりと、何かと話題になっている文字通りのホットスポット。

 

それほど温泉が好きでもないおっさんが一人で訪れて、果たして楽しめるのかどうか……。確かめるべく、別府ソロツアーに行ってまいります!

 

参考までに今回のおっさんソロツアー全体MAPをお見せしておきます!

 

まず別府の玄関口で出迎えてくれるのは……

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別府駅のド真ん前で両手を拡げるこのはっちゃけた銅像。別府の大恩人として今でもジモト民に慕われている“ピカピカおじさん” こと、油屋熊八(あぶらやくまはち)さんです。

 

明治の時代に、別府を日本一の温泉街にした立役者で、今で言う「地域おこし協力隊」であり「地域プロデューサー」。48歳で亀の井旅館(現在の亀の井ホテル)を創業、日本中で浸透した名キャッチコピー「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」を拡めたという伝説のおっさんなんです。

 

今回の旅は、彼の功績を見直しつつ普段世間から虐げられているおっさんの「底力」というものを検証することが、もう一つの目的だったりします。ファイト・ザ・パワー!

 

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熊八さんのマントにしがみついているのは、人の子ではなく鬼の子。子どもに好かれる熊八さんはなんと鬼っ子にも大人気!じゃれつかれているところをイメージしたようです。マントの裾を引っ張っているのがオスで、おちんちんがついてます。

それと、 パッと見では気づきませんが、もう一匹マントの中に。こちらはメスバージョン、もちろんあそこもついておりません。

 

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駅前に設置される手のひら用の温泉からして、この湯量っ!ボコッ、ボコッ、ゴボッ、という感じで、たまに思いっきり湯を吹き出すタイミングがありテンションあがります。

 

おっさんソロツアーにはレンタサイクル一択

ソロで観光するのにレンタカーを利用するのはコスパ微妙で小回り悪し!ということで、体力に自信はないですが、街の雰囲気をジカに肌で感じるためにもレンタサイクルを利用することに。
 
別府駅にはJRが運営するレンタサイクルがあるのですが、電動自転車を3台しか用意していないとのこと。この日も天気が良かったせいで、すでにすべてレンタル中……。仕方なく、10分ほど歩いた先の別府タワー一階にあるレンタサイクル屋へ。

 

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これが市民のシンボル「別府タワー」。建築家・内藤多仲が建てたタワー六兄弟のひとつで、三男坊にあたります。1957年に竣工され今年で60周年。東京タワー(五男坊)よりも古い建造物で登録有形文化財に指定されており、晴れた日の眺望はサイコーとのこと(昼に登り忘れました……)。

 

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レンタサイクルはここを選んで大正解。クルージングツアーなども手がける「Experience Oita」オーナーの安達さんは、東京の大手新聞社に務めていたこともあり、探索能力が高く、説明も丁寧。

観光マップに載っていないような弁当屋などのジモトスポットも教えてもらいました。貸し出してくれる自転車は素人の自分でも知っているGIANTのマウンテンバイク。サドルを跨いだだけで健康になった気分です。

 

安達さんオススメ、別府湾半周コースにGO

日曜日で晴れているため、人気温泉は軒並み人でごったがえし。なので、安達さんイチオシのサイクリングコースである別府湾半周コースに出発!

折り返し地点は、湾の反対側にある日出(ひじ)の高級会席料理店「的山荘」。ランチで数千円、会席料理だと万超えになるお店ですが、14時~17時だけお得なカフェメニューがあり眺めもサイコー。

おっさん一人でも十分に楽しめるとのこと。 良かった…。

 

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ビーチ沿いを走る絶景のサイクリングコース。 途中に大きな国道沿いを走る地点もありますが、基本海岸沿いを走っていくルート。自転車を飛ばせばソロツアーでも寂しくない!

 

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別府と大阪、神戸などを繋ぐフェリーさんふらわあが見えてきました。昔、プラモデルも流行りましたよね。

 

7kmくらい走ったところで、もう息は絶え絶え。ろくに運動もしていないのに、無理してサイクリングで来たことを後悔……。そんな時目に入ったのは……。

 

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黄色いバッティングセンターの看板!

久しぶりにあのカキーンという感触を味わいたくて急遽、右折。サイクリングのソロツアーは気ままに寄り道できるのが素晴らしい。

 

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バッティングマシーンを製造している会社が運営している「バッティングセンター海ぼうず」。昔ながらのバッセンの雰囲気でタイムスリップした感覚に浸れます。

 

気分転換の後、再度「的山荘」を目指して出発!

途中、何度も心が折れそうになるも無心にペダルを漕ぎ続けること40分、ついに折り返し地点となる的山荘に到着。

 

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そこに現れたのは巨大な門構え、広大な庭に建つ伝統的な日本家屋。別府湾を一望できる素晴らしい眺望、国の重要文化財に指定されており、皇族もお忍びで来るという由緒ある割烹料理店です。食事をするだけで自分のステイタスが上がった“気分”を味わえました。

 

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この絶景を望みながらのほうじ茶&菓子で、なんと756円(税込み)!

日曜日でもすごく空いていてマジで穴場スポットです。教えてくれた安達さんありがとう!

 

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往路の辛さから、復路出発になかなか踏ん切りがつかなかったのですが、日が暮れ始めたので腹をくくってライドオン。

 

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海苔をすくっている漁師を傍らに見ながら別府湾を爆走、途中、フランシスコ・ザビエルが浜出したという公衆トイレの前を通り過ぎ、とにかく無心で走り続け、なんとか別府タワーに到着しました。

 

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本日の夜は、宿のそばにある落ち着いた雰囲気の公衆温泉「海門寺温泉」へ。

「あつ湯」と「ぬる湯」、2種類の温度が用意されており、熱めの湯が苦手な人にもオススメ。公衆浴場には、タオルや石鹸、シャンプーなどがほとんど用意されていないので、別府の街に入ったらバッグの中にハンドタオルを必ず1枚は常備しておこう。

 

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街の至る所にある公衆温泉。ジモト民それぞれがマイフェイバリット温泉を持っている。温泉好きなら、鉄輪(かんなわ)のような有名温泉だけでなく、別府の市街地に点在する公衆温泉を巡るのも楽しいぞ!(たぶん)

 

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本日の結果はこんな感じ。

30キロを超えるサイクリングは、普段まったく運動をしていないおっさんにとってはかなりの苦行…。ただ敷地3760坪の高級料亭「的山荘」は無理してでも行く価値あり!

4月からは、別府湾を船で突っ切って的山荘から別府タワーまで帰ってこられるクルージングツアーも開始するとのこと(今、使いたかった……)。体力ない人はこちらがオススメです。

 

朝イチの ジョギングはいつも通り電車に乗り遅れそうになって走ったものがカウント。朝5時から動き回ってもうヘトヘトです、おやすみなさ~い。

 

「茶房 たかさき」に究極の温泉名人あり!

2日目は昨日の疲れを癒やすため温泉巡りに、まずは温泉名人がいるという噂のお店へ。

 

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市街地からちょっと離れたこの「茶房 たかさき」、実はコーヒーを飲んだり食事をすると温泉に入ることができる珍しい温泉喫茶店なんです。

マスターの高崎さんは別府の88湯を巡ると与えられる「別府八湯温泉道名人」を9回も取った温泉名人の中の温泉名人、奥様も5回名人認定されており、まさしく温泉漬けのご夫婦。

 

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別府温泉のことならなんでもござれ、気さくに温泉の話をレクチャーしてもらえるので、ここは別府初心者が湯巡りをする前に必ず訪れておいたほうがいいマストスポット。

Googleマップを見ながらでも迷ってしまうような、少しわかりづらい場所にあるので注意です。

 

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自宅の温泉を改造して、お客さんに提供している同店の湯。水で薄めない源泉100%を保つため、適温の43℃になるように調整するのが難しいとのこと。

柔らかい湯質のため-2℃(=41℃)くらいの体感となり、この湯温でも熱さを感じないという。入った瞬間は熱いかな?と思うが、すぐに慣れて心地よい感覚に。あがった後もしばらくポカポカでした。冷えがちなおっさんにも嬉しい!

 

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入り口扉の裏に描かれた絵。温泉につかりながら眺められるので、おっさんソロツアーにはちょっとしたうれしい特典でございます。

 

やはり外せない竹瓦温泉の砂湯

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別府温泉の代名詞のような存在の竹瓦温泉。砂湯が有名で混んでいると1時間待ちになることも。家族・友だち連れやカップルにまぎれて時間を潰すのも辛いので、おっさんソロツアーでは極力並びたくない!ということで平日の午前中に行くべし!

 

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ビフォア 

 

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and

 

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アフター

受付で借りた浴衣に着替えて砂にイン。温泉を吸った砂が身体の上にのしかかりいい具合に圧力が。規程の15分が経つと全身から汗が吹き出しています。入浴前には水分をしっかり取っておきましょう。

 

油屋熊八さんを詳しく知りたければ平野資料館へ

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竹瓦温泉そばにある平野資料館。こちらでは平野館長の油屋熊八コレクションを鑑賞することができます。ご本人も熊八さんの意思を継ぎ、別府のガイド組織を構築するなど、現在の町おこしの中心人物。

 

別府のおっさんは熱いです!

 

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油屋熊八さんは、米相場で大成功し一度は大富豪になりますが、日清戦争の相場で無一文に。その後アメリカに渡り見聞を広め、38歳の時に別府に移住。「別府はこれから温泉で発展する」とピンと来て前述の旅館やバス会社を起ち上げたそうです。

その後は、日本発の女性バスガイド付き定期観光バスを走らせたり、「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」と書かれた標柱を富士山山頂に設置するなど、別府の魅力をアップさせ日本全国にアピール。いつしか別府観光の父と呼ばれるまでに。

とにかくアイディアが豊富、そして実行力のある人だったようです。40歳を超えてからの大活躍、これぞまさしく「おっさんの鑑」!見習っていきたいです!

 

熊八さんが考案した「別府地獄めぐり」バスツアーを体験

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熊八さんが創設した亀の井バスが運行する「別府地獄めぐり」バスツアーが日本のバスガイド発祥ということで乗車してまいりました。

メロディーに乗せるように「ここは名高き流川、情けも厚き湯の街の、メインストリートの繁華街、夜は不夜城でございます」などと七五調案内というガイドをしたことで大人気に。今でもこのバスツアーでは七五調案内が楽しめます。

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別府では、以前から鉄輪(かんなわ)一帯の温泉噴出口のことを「地獄」と言っていたらしく、そのネーミングを熊八さんが利用して「別府地獄めぐり」を開発、一大ブームに育て上げたのでした。

「海地獄」、「血の池地獄」、「鬼石坊主地獄」など7つの地獄をバスで巡るのですが、どこも温泉の湯気だらけ。温泉の熱を利用し饅頭やプリンも売られています。

 

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なぜか「かまど地獄」だけは韓国人でぎゅうぎゅう詰めに。足踏まれまくりました。

 

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当日ガイドをしてくれた須賀さん。そのキュートすぎな笑顔で、足を踏まれて不機嫌だったおっさんの心を癒やしてくれました。

彼女ののんびりとした七五調案内は3,650円(バスツアー料金)の価値ありですぞ!

http://www.kamenoibus.com/teikikanko_01.php

 

地獄巡りでおっさんソロツアーの大先輩を発見!

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一緒にツアーに参加している人のなかに、この「別府地獄めぐり」バスツアーが今回でなんと159回目だという石上さんと遭遇。

6年半前からコツコツとソロで通いつめており、すでに58万円以上も費やしている計算に。毎回、お手製のフリップを持って参加者を誘導しているそう。今回は名付けて「ホワイトデー前日ツアー」とのことでした。

 

別府のおっさん御用達「赤ちょうちん みはら」で一杯

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別府市街地の路地裏にはおっさんの好きそうな飲み屋が軒を連ねます。

「赤ちょうちん みはら」もそんな店のひとつ。おばちゃんの人柄の良さで人が集まってきているようで、店内の壁一面に常連さんたちのメッセージが書き込まれた色紙が貼られています。こういうお店は、おっさんソロツアーの中でなんかホッとしますよね。

 

まとめ:おっさん的に別府の街はどうだった?

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初日に自転車で30キロ走ったのに、翌日、そして東京に帰ってきてからもまったく筋肉痛&腰痛にならなかったのは、もしかして別府の温泉効果? 

別府温泉保養ランドの泥湯(混浴ですよ!)や薬草の上に寝転がる鉄輪むし湯なども弾丸体験、それほど温泉好きでない自分でも飽きもこなく色々と楽しめました。

温泉地へのバス網が整備されており、観光ガイドやバスツアーも各種提供、おっさんソロツアーでも十分楽しめる街なのは間違いありません。

 

油屋熊八さんのコンセプト「旅人を懇ろにせよ」(旅人をもてなすことを忘れてはいけない)が今でもしっかりと息づいていることを実感。

温泉ばかりがクローズアップされがちですが、人、町並み、建物、食べ物、オススメポイントがいっぱいありました。孤独なGWを迎えそうなおっさんは旅先候補に入れてみてはいかがでしょうか。

 

結論:温泉好きじゃなくとも、おっさん一人で別府は楽しめる!

  

書いた人:中村ヒロユキ

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編集者/ライター。1973年北海道旭川市生まれ、神奈川県逗子市&埼玉県所沢市育ち。体力に自信がありません。「神田経済新聞」http://kanda.keizai.biz/を運営。 Facebook:恒吉(中村)浩之 Twitter:@nakahi

【マンガ】いきなり肉親が死んだ時はどうしたらいい? 遺族がやるべき葬儀マニュアル

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http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/e/eaidem/20170307/20170307105152.png?1488851528

 

こんにちは、石垣りょうです。
インターネット上にうさぎとくまの絵を描いたりしています。

omocoro.jp

 

実は先日、父が急死いたしまして、それはもう頭が真っ白になったのですけれども、

遺族は悲しむ間もなく、葬儀の準備や手続きを行わなければなりません。

しかし葬儀に関する前知識があまりにも少なく、また真っ白になった頭で一から学ぶのはとても大変で、必要以上に手間取ってしまいました。

 

…というわけで、今回僕が体験した事を気軽に読める漫画にしてみました。どなたかのお役に立てれば幸いです。

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか?
葬式や相続に関しては「法」と「お役所」に関わる事が多く、情報も説明も堅苦しい感じになってしまう事が多いです。(事が事なので当然なのですが…)

今回の簡略化した漫画によって大まかな流れを把握し、皆様が有事の際に身構えやすくなって頂けましたら、幸いです。

 

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変に工夫するよりも、単に親族が興味を惹かれないような名前をつけたフォルダに入れておけば大丈夫だと思います。

 

 

 

最後に手続き関係のことなど、やるべきことをざっと書いておきます。

※大まかに知ってもらうという意図なので、詳しくは役場や業者さんにお聞き下さい

 

市役所、区役所または町村役場へ

●死亡届 7日以内
必要な物:「死亡診断書」「届出人の印鑑」

 

●死体火・埋葬許可書

必要な物:「死体火葬許可申請書」

※死亡届と同時に行うので忘れる心配はまずありません。

 

●世帯主変更届 14日以内

必要な物:「届出人の印鑑」「本人確認書類」

 

●介護保険資格喪失届 14日以内

必要な物:「介護被保険者証」「介護保険の資格喪失届」

 

社会保険事務所や国民年金課へ

●年金受給停止手続き 14日以内

必要な物:「年金受給権者死亡届」「年金証書」「除籍謄本」など

 

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おわりです。 

 

ライター:石垣りょう

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札幌在住のマンガ家・イラストレーター。うさくましています。Twitter個人ブログ


『メイドラゴン』トール役の桑原由気に聞く!新人声優の一日ってどんな感じなの?

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 こんにちは、昼休みに会社の会議室でアニメを見るのが日課のマンスーンです。 

今日はニコニコ動画で公式配信されている『小林さんちのメイドラゴン』を見ています。

  

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最近アニメを見ていて思うのですが、その作品自体はもちろんのこと、キャラクターに魂を吹き込む声優についてもいろいろと知りたくなってきたんです。

 

なんで声優を目指したのか、どんなアルバイトをしていたのかなどを実際に会って話を聞いてみたい!!

でも、さすがに無理ですよね…

まさか今まさに僕が見ている『小林さんちのメイドラゴン』の主人公トールを演じている声優に会って話を聞くっていうのは…

 

無理……?

 

ですよ………ね?

 

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って会って話聞けるんかい!!!

 

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桑原由気 (マウスプロモーション所属)

『ひめゴト』有川ひめ役、『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』ひまわり役、『灼熱の卓球娘』出雲ほくと役などを演じる声優。

現在放送中の『小林さんちのメイドラゴン』では主人公トール役としてドラゴンの女の子を熱演している。

Twitter : https://twitter.com/yuuki_0624

 

 
TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』 PV第2弾

 

声優に話が聞きたいという個人的な願望だったので絶対に無理だろうと思っていたのですが、本当にお話を聞けることになったので、桑原さんの事や声優という職業についていろいろと聞いてみました。

 

コンプレックスが声優を目指したきっかけに

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「声優さんってやっぱり子供の頃から『声が変わってるね』みたいなことを言われたりするんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「中学生の時に学校で私のモノマネをされたりしてました。最初は喋り方が変なのかな?って思っていただけだったんですけどやはり声が特徴的らしくて。それから私は生徒会に入っていたので大勢の生徒の前で喋る機会もあったのですが、私は真面目に喋ってるのにみんなにはそれが伝わらなかったりして…」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「それはつらい…。でもそれが声優になるためのきっかけでもあった訳ですよね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。ある時、授業で朗読をしたんです。その時に先生に褒めてもらった事があって。それで声優という仕事を意識し始めました。あと、その時にアニメがすごい好きだったというのもあります」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「何のアニメを見てたんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain『NARUTO』です!」  

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちなみに一番好きなキャr…」

 f:id:mansooon:20170327095544p:plainうちはサスケです!!!!!!!!!」

 

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「まだ質問し終わってないです(笑) それで声優になるための勉強はどんな風にしていたんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「私は出身が長崎なので中々そういう勉強をすることができなかったんです。なので東京の専門学校に入るまでは図書館で声優になるための本とか滑舌の本を使って独学で勉強していました」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「なるほど」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「あとは朴璐美※さんのワークショップに参加したり、新人声優コンテストに出たりもしました」

※.朴璐美…『∀ガンダム』の主人公ロラン・セアックや『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリックを演じるベテラン女性声優。

 f:id:mansooon:20170327095545p:plain「コンテストの結果はどうだったんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「嬉しいことに特別賞をもらったんです!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「すごい!その頃からもう声優としての才能があったんですね」

 

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f:id:mansooon:20170327095544p:plain「でも私が覚えてるのは自己PRの事なんですけど、普通は好きなアニメの話とかどんな声優になりたいとかを言うじゃないですか」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そうですね。普通は声優に対する熱意を喋りますよね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「でも私は自己PRの時に自分がどれだけ歌丸さんに会いたいかをずっと喋っていたんです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「歌丸さんって笑点に出ている緑の人という認識でいいですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「え?なぜ!?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「あんまり覚えてないんですがとにかく好きだったんです!!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain(歌丸さんに会いたいなら声優は若干遠回りなのでは...)

 

声優はどんな風に一日を過ごしているの?

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声優さんはいったいどんな風に1日を過ごしているのか気になったので、桑原さんのとある1日のスケジュールを表にしてもらいました。

 

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これが桑原さんのとある一日のスケジュール。
 

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「まずはアフレコですね。10時からですが、これよりも早いアフレコ現場ってあるんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「一番早いのが10時からです。アフレコじゃなくてイベントとか撮影だともっと早いときはあります」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「15時までアフレコだとお昼ごはんはどうしているんですか?」

 f:id:mansooon:20170327095544p:plain「空いている時間にゼリー飲料みたいなのを飲んだりちょっとしたものをつまんだりしています。お腹の音が鳴らないように気をつけないといけないので」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「やっぱり声優さんでもお腹って鳴ってしまうものなんですか?」

 

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f:id:mansooon:20170327095544p:plain「食べなくても鳴ってしまうし、鳴らないようにたくさん食べると今度は消化音が出てしまうので調節が難しいんです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「それは大変ですね。自分だったら絶対に我慢できないと思います。他にもアフレコで大変なことってありますか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「私は背が小さいので男性の方が多い現場だとマイクまで届かなくて…。だから今はアフレコの時に厚底の靴を履いてます」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちなみにどのくらいの厚底なんですか?」

 

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f:id:mansooon:20170327095544p:plainこのくらいです

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「なるほど」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「この写真いります?(笑)」

 

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そしてアフレコが終わったら移動とごはんですね。そういえば、普段生活していて誰かに声優って気づかれることはあるんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「タクシーで降りたい場所を言っただけなのに『声優さん?』って言われた事があります」

 

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一瞬で声優ってバレる桑原さん

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「おお!!やっぱりあるんですね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「あと美容室で『何されてる方なんですか?声の仕事ですか?』って言われた事もあります。でもそこで話が広がっちゃうと『何のアニメ出てるの?』とか聞かれちゃうじゃないですか。だから『デスクワークです』って言ってます(笑)」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「たしかにそれは困りますよね。どうせ美容師ってアニメ見てないでしょうし。オシャレですからね美容師は。ぜったいにアニメ見てないと思う!!!見てたとしてもサザエさんくらいですよ!!(マンスーンの勝手な意見です)

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「すごい偏見ですね…」

 

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「夕方にゲームの音声収録ですね。ゲームの収録って台本がすごい分厚いみたいな話を聞いたことがあるんですけど本当なんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。シュミレーション系でフルボイスだと選択肢によって言葉が変わるので全部を録音するのはすごい大変です!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ダメージを喰らう時の声とかも何パターンもありますよね」

 

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f:id:mansooon:20170327095544p:plain「そうなんです。ダメージだけでも大・中・小ってあるので根気よく収録しています。ゲームのボイスって今まで自分でプレイしていた時は特に気にしていなかったんですけど、いざ自分が収録を経験したらボイスを飛ばせなくなりました。ちゃんと聞かなきゃ!って(笑)」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちなみにゲームの台本って例えばどのくらいの厚さなんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「もちろんゲームによって全然違いますけど…」

 

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f:id:mansooon:20170327095544p:plainこのくらいはあります

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「なるほど」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「いや、この写真っているんですか?」

 

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そして18時〜20時がお茶とスマホゲー。2時間もお茶をしながらスマホゲーだなんて目が悪くなりますよ?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「大丈夫です」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「これは自分の出ているゲームもやるんですか?」

 f:id:mansooon:20170327095544p:plain「もちろんやります!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「自分のキャラが出るまで課金したりは...」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「普段は堅実なのであまり課金しないですけど、収録したのがどんなふうに聞こえるのかは気になるのでたまには....」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「空き時間にお芝居の練習をしたりもするんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。カラオケで練習したりもします。でも同じ店に行き過ぎて顔を覚えられているので恥ずかしいんです!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちょっとした疑問なんですけど、人とカラオケに行った時に『キャラソン歌ってよ!』とか言われると内心『またかよ〜』とか思うんですか?」

 

f:id:mansooon:20170327095530j:plain

 f:id:mansooon:20170327095544p:plain「またかよ〜は思わないですけど(笑)、周りの友達でアニソンに詳しくない子もいるのでカラオケの選曲にすごい困ることがあって。そういう時に『由気ちゃんの曲歌ってよ』って言われると、しょうがないな〜って顔をするんですけど、内心はすごい助かってます」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そういうアニソンに詳しくない子達と行くカラオケでのレパートリーとかあるんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「私が好きなのってロック系の曲が多いので歌えないんです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「例えばどんなアーティストですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plainマキシマムザホルモンとか…」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「桑原さんの声とは似つかわない激しさですね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「だから好きなのにあんまり歌えないんです」

 

f:id:mansooon:20170327095528j:plain

マウスプロモーションの会議室には落語のCDが置いてありました。

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「桑原さんが一緒にカラオケに行くぐらい仲のいい声優さんって誰かいますか?もしいなかったらすみません… 」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「ちゃんといます!!(笑) 小野早稀ちゃんですね。前にユニットをやってたことがあって今でもよく遊んでます」

※.小野早稀...『ひめゴト』運子役『温泉幼精ハコネちゃん』ハコネちゃん役、『けものフレンズ』アライグマ役などを演じる女性声優。桑原さんとは『あいまいみーまいん』というユニットを組んでいた。

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「小野さんは今話題の『けものフレンズ』に出演してますよね」

 

ようこそジャパリパークへ(初回限定盤)

f:id:mansooon:20170327095527j:plain

f:id:mansooon:20170327095544p:plainそうなんですよ!『けものフレンズ』よろしくお願いします!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「友達のために自分が出てないアニメの宣伝を」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「もちろん『小林さんちのメイドラゴン』も見てくださいね! 」

 

f:id:mansooon:20170329180755p:plain

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そして最後はニコ生のお仕事ですね。こういう時の衣装って自分で用意するんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。用意されている時もあるんですが、基本は自分で用意します」

 

f:id:mansooon:20170327195842j:plain

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「前から疑問に思っていたのですが、女性声優さんのファッションってけっこう系統が似ていると思いませんか?実はみんなで合わせてたり?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「合わせてはいないです!でもたしかに似てしまうんですよね。買ってる店が被ったりもするので他の声優さんの写真を見て『あっ、これ私も持ってる!』ってなることもあるんです!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「衣装選びで気をつけている事とかってありますか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「服もアクセサリーも、その作品のキャラクターに合わせるようにしています。でも本当はもっとカジュアルな服装が好きなので、『これはちょっとフリフリ過ぎるな〜』って思うこともたまにあります」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「最近は声優さんが表舞台に立つことも多くなってきているからイベント毎に衣装を揃えるのは大変ですね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。でもニコ生とか試写会とかのイベントはアニメを見ていてくれてる方のリアクションがその場で見れるのですごい楽しいです!ここで笑ってくれるんだとかそういうのが分かるので」

 

f:id:mansooon:20170329181223p:plain

 f:id:mansooon:20170327095545p:plain「帰宅してからのお笑いというのは…」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「大好きなお笑いのDVDを見てます!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そういえば桑原さんってお笑い芸人を目指してた事※もあるんですよね」

※昔、コンビを組んでお笑いライブにも出たこともあるそうです。

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「よく『お笑い芸人を目指してて、いつから声優になりたいと思ったんですか』と聞かれるので勘違いされていると思うんですけど、最初から声優を目指してました!!!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「すみません。お笑いが好きでコンビを組んでいたぐらいですし、桑原さんには元気な女の子のイメージがあるのですが、『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』の汐留白亜や『灼熱の卓球娘』の出雲ほくとなど淡々と喋るキャラクターを演じる事も多いですよね」

 

俺がお嬢様学校に 「庶民サンプル」としてゲッツされた件 白亜 ハンドタオル

『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』汐留白亜

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「そうですね。実は私の根本にあるのは大人しくてあまり自分を前に出さない性格なんです。もちろん元気なキャラも好きですけどあまりに元気過ぎると無理をしてる感みたいなものが出てしまうかもしれません」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「もしかして桑原さんって意外と根暗ですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「はい。人と喋るのがあまり得意ではなくて…

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「え!? 声優なのに!??」

 

f:id:mansooon:20170327095524j:plain

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「アフレコ現場であんまり喋らなかった事があって、でもその作品のニコ生に出てすごい喋ったら他の共演者に驚かれました。そんなに喋る人だったの!?って」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「つまり仕事になるとスイッチが入る。天才タイプなんですね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「そう言ってもらえると助かります(笑)」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちなみに休みの日って…」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「ほとんど家にいます!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「やっぱり…」

 

声優っぽくない意外なアルバイト体験

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「今の事務所(マウスプロモーション)に所属して何年目なんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「もうすぐ4年目です」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「正直に言って1年目から声優だけで食べていけるものなんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「私はあんまりお金を使わない方なので苦しくはなかったです。でも最初の方はやっぱりバイトをしてました」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「どんなバイトですか?声優っていうと飲食店とかテレフォンオペレーターとかのイメージですけど」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain清掃のアルバイトが多かったです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「それは…まさか人と喋りたくないからですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「…はい。喋らなくていいし元々掃除が好きだったので天職でした」 

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「どんな清掃をしていたんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「いろいろあったんですが、某ファッションビルでは1階から順番にトイレ清掃をしてました」

 

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トイレをピカピカにする桑原さん

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「たぶん今、ファンが10000人くらい増えましたよ

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「いやいや(笑)、ただ掃除が好きだっただけです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「他にはどんなバイトをしてたんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「学生の時は、食品工場でコンビニのパスタに明太子のチューブを絞るバイトをしてました」

 

f:id:mansooon:20170329135431j:plain

流れてくるパスタに明太子チューブをひたすら絞る桑原さん

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「またファンが10000人増えました」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「7時間くらい明太子を絞ってるとだんだんおかしくなってきて、『私、何しに東京来たんだろう...』って悲しくなってくるんです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「明太子を乗せるコツって何かありますか?何も考えないとか」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「いや、あまりに何も考えないと明太子に乱れが出るのでちゃんと真ん中に乗せるということは意識していました。あと今回って声優としてのインタビューですよね?」

 

f:id:mansooon:20170329115239j:plain

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「なるほど。何も考えないのもよくない…っと。つまり明太子は心を映す鏡なわけですね。他にもまだ明太子の話ってありますか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「明太子の話はもうないですけど、他のバイトだとビールのキャンペーン応募シールがちゃんと規定枚数貼られているかのチェックをするバイトもしてました。一人で淡々とやるのでそこまで苦にはなりませんでした」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「桑原さん…。人間のこと嫌いですか?殲滅したいと思ってます?

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「そんなことないですよ!!清掃のバイトは周りが年上の方ばかりで、私が声優を目指しているのも伝えていたんです。だから急なスケジュール調整とかも『行ってきなさいよ』って言ってくれたり、私の事をすごい応援してくれてたんです。

なので人間が好きです!(笑)

 

キャラクターになりきれた初めての体験

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「そんな人間嫌いの桑原さんは、現在放送されている『小林さんちのメイドラゴン』で主人公のトールを演じていますが、トールも最初は人間を殲滅させたいと思いつつも、自分を助けてくれた小林さんと触れ合うことによってだんだん人間も悪くないなと思うようになっていきますよね」

 

TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』ED主題歌「イシュカン・コミュニケーション」

 左から二番目が主人公のトール。

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「ちょっと!人間嫌いキャラにするのやめてください!(笑) トールは演じていて、自分とキャラクターがリンクする瞬間がすごい多いんです。小林さん(人間の主人公)に『わたしのとこくる?』って言われるシーンがあるのですが、それを聞いた時にトールとしての感情が高ぶりすぎて台本を無視で『はいっ!!』って言ってしまったんです。音響監督さんには『台本通り演技してください!』って注意されました」

 f:id:mansooon:20170327095545p:plain「まさに桑原さんとトールが一つになったと」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「台本通りに演技をしていたはずなのに、そこに自分自身の感情が乗ったというのがすごい不思議で、その瞬間役になりきれたというか役が自分に降りてきたという感じを初めて体験しました

 f:id:mansooon:20170327095545p:plain「トールは桑原さんが演じるべきキャラクターだったんですね。ところで自分が演じるキャラクターをテレビで見てる時ってどんな気持ちなんですか?」

 

f:id:mansooon:20170327095527j:plain

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「すごい不思議です。テレビから自分の声が!?って感じで。でも収録の時とは聞こえ方が違かったりするので、次はここを気をつけようとか勉強の気持ちで見てはいます。なので素直に作品を楽しめていないかもしれません」

 f:id:mansooon:20170327095545p:plain「どんなに自分が好きなことでも、それを仕事にすると楽しめなくなるってよく聞きますよね。つまり…」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「何ですか?」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「桑原さんが大好きな『NARUTO』に桑原さん自身も出演してましたが、もう『NARUTO』も楽しんで見れないってことですか…?」

 

f:id:mansooon:20170327095531j:plain

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「(出演した)劇場版は6回観に行きました!もう毎回号泣で!!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「めちゃめちゃ楽しんで観れてるじゃないですか!」

  

声優さんってどんなのど飴を舐めているの?

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「声優さんは喉が商売道具ですが、喉のケアってどうしているんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「私はプロポリスの原液を水に垂らして飲んだりしてます。でも、すごい匂いがするので家でしか出来ないんです」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「すごい匂いってどんな感じですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「なんとも言えない独特な匂いです。あとプロポリスの飴も舐めてます」

 

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桑原さんオススメのプロポリスキャンディーとボイスケアのど飴

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「プロポリスキャンディーは舐め慣れていない方が舐めるとピリピリして痛かったり染みてる感じがするかもしれません」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「痛い!? 」

 

f:id:mansooon:20170327095541j:plain

プロポリスキャンディーを舐めてみたら午前中の病院みたいな匂いで、味は本当にピリピリして痛かったです。

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「辛いものとかも喉によくなさそうですが、あまり食べないようにしてるんですか?」

 f:id:mansooon:20170327095544p:plain「好きなんですけどやっぱり喉にダメージがある感じがするので、昔ほど食べなくなりましたね」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「カレーもやっぱりアンパンマンカレーですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「甘すぎます」

  

将来は子供向け番組の声をやって子供に好かれたい

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f:id:mansooon:20170327095545p:plain「将来こんなことに挑戦してみたいなっていう事はありますか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「NHK教育テレビみたいな子供向けの番組できぐるみの声をやりたいんです!子供たちに『あの声の人だ!』って言われるのが夢で」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「子供が...好き...なんですね」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain意味深な感じに言わないでください!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「すみません。前に桑原さんが出演したラジオを聞いた時に...その...子供が...違う意味で好きみたいな事を言っていたので」

f:id:mansooon:20170327095544p:plainサンリオピューロランドって知ってますか?」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「はい。(突然どうしたんだ...)」

 

f:id:mansooon:20170327095534j:plain

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「あそこは最高なんですよ!」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「桑原さん、サンリオのキャラクターが好きなんですか?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plainいや、子供がたくさんいるんです!

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「え?」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「キャラクターを見ている子どもたちを見て… 」

f:id:mansooon:20170327095545p:plainストーップ!!あぶないからこの話はやめましょう」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain「あくまで観察ですよ!お芝居のための人間観察です!子供っぽく喋ることは誰にだって出来ますけど、子供を演じるにはちゃんと観察しないと出来ないですから」

f:id:mansooon:20170327095545p:plain「ちゃんと声優っぽく締め括ってくれてありがとうございます」

f:id:mansooon:20170327095544p:plain声優です!」

 

そんな声優の桑原由気さんが主役のトールを演じている『小林さんちのメイドラゴン』最終話が本日(4月5日)放送されます。

人間とドラゴンという異種間で繰り広げられる笑いあり涙ありの物語がいったいどうなるのか今から楽しみです。出来ることなら一生見ていたいのでサザエさんくらい長く放送してくれー!

 

『小林さんちのメイドラゴン』

13話『終焉帝、来る!(気がつけば最終回です)』

■TOKYO MX1
4/5(水) 25:05~25:35
■ABC朝日放送
4/5(水) 26:14~26:44
■テレビ愛知
4/5(水) 26:55~27:25

maidragon.jp

  

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それでは将来声優になる人が作っているかもしれない、コンビニの明太子パスタの画像でお別れです。

 

 

書いた人:マンスーン

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「ハイエナズクラブ」「オモコロ」などで記事を書いています。理系大学出身をまったく生かせていない低い技術力で役に立たない電子工作をしたり、B級映画のVHSテープを収集したりしています。
Twitter:http://twitter.com/mansooon
HP:http://man-sooon.tumblr.com/

 

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 - 14話「桜の名所で聞いた話」

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<柳田さんと民話・一覧>
14

 

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<柳田さんと民話・一覧>

 

・1話~10話までをまとめ読みする!

 

●「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

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じいちゃんとわたし「介護を受け止めること」第3話

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

ジモコロをご覧の皆さん、こんにちは。食いしん坊イラストレーターの杏耶です。

私は母子家庭で育ったため、保育園の送り迎えやゲームの相手になってくれたのはじいちゃんでした。だけど、ある時から祖父の言動におかしなところが増え……

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この物語は、大好きなじいちゃんを蝕んだ認知症と、家族の絆を描いた漫画です。

 

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介護疲れで心身ともに参っている家族の方の気持ちが軽くなるような、介護にも色んな道があるんだと思ってもらえるよう漫画で伝えたい。

というわけで第3話、気軽に読んでみてください!

  

3話「介護を受け止めること」

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『じいちゃんとわたし』一覧

 

書いた人:杏耶

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食いしん坊イラストレーター、食べることと料理をすることが大好きで、趣味の一環で手軽に作れる様々なレシピを独自に考案、それをイラスト化した「あやぶた食堂」を2015年に発売。その他に丼物オンリー漫画「ド丼パ!」、東北のお酒と郷土料理を紹介したコミックエッセイ「のんで東北たべて東北」も発売中。Twitter ID→ @ayatanponpon / WEBサイト→ http://ayabubububububu.jimdo.com/

 

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わたしのパパはヨガきこり

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こんにちは。長野県在住のナカノです。

 

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いきなり合成のような写真で驚かせてすみません。

私の左にぶら下がっているのは実のお父さんです。

大丈夫です、怖がらないでください。

 

f:id:hitomonji:20170329214827j:plain

実は、前々から「私のお父さんって異常にすごいんじゃないの…?」と思っていたんですよね。

ほら、写真を見ても明らかに異常じゃないですか。

 

まだハイハイしかできない私をおぶって山登りをしていたり、自宅にロッククライミングの設備を自作したりとお父さんとの幼いころの想い出は、かなり色濃く残っています。

 

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そして今でもお父さんとの仲は良好。休日に軽井沢へ2人で買い物に行ったりマンガの貸し借りをしたり、とても仲がよいのです。

 

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ただ、仲が良いからこそあんまりお父さんのことを知らなかったりするんですよね。そこで今回は、異常にすごいうちのお父さんの仕事に密着してみようと思います!

 

実の父親インタビュー

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ナカノの父である宏は今年、還暦を迎えます。

祖父の代に設立した土木建築会社を引き継ぎ社長となるも、48歳の時に平成不況の荒波に揉まれ倒産。現在は、個人事業主として林業(特殊伐採)を中心に生計を立てています。

 

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f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「今日はお父さんの仕事について話を聞こうと思っていて」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「仕事? 主に林業だね。俺がやってるのは林業の中でも『特殊伐採』というジャンルなんだよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「特殊伐採?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「そうそう。普通の伐採は地面で。特殊伐採は身体一つで木に登って伐採する高所作業のことだね」

 

f:id:hitomonji:20170329215130g:plain

 

今年還暦を迎えるとは思えない!

 

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スパイダーマンさながらの軽い身のこなし!

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「伐採っていうとバッサバッサと重機でなぎ倒していくイメージがあったなー」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「そうそう、今は林業ってほとんど機械化されているよね。建物やお墓のすぐ近くみたいに、重機が入っていけない場所の木を切っていくのも特殊伐採だな」

 

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商売道具のチェーンソーは10本近く所持。家に並んでいる様子が物騒すぎる。

 

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ぶっとい命綱に身体を預けます。

 

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チェーンソーの爆音に耐えられるよう、ヘルメットには防音が施されています。

 

衣服、ヘルメット合わせて約10万円。特殊伐採を始めるにあたっての初期投資は200万円程。常に命がけの仕事にこの投資、決して高くは感じません。

 

特殊伐採、木こりの「見積もり」

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f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「特殊伐採ってどうやって仕事を集めることが多いの?お父さんってそんなにウェブに強いイメージはないし、チラシとか?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「最初の1、2年は全然仕事がなかったけど、口コミで仕事をもらえるようになったよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「口コミ!田舎あるある!」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「軽井沢が近いだろ。なんてったって別荘地があるから」

 

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f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「最近は別荘地での仕事が多いね。単価が高いのが魅力の一つ。あと個人だから価格競争にも勝ちやすいんだよ。たとえば他の企業に頼んだら20万円だったりするけど、個人の俺だった8万円でやれちゃう」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「倍以上も安くできるんだ!それでお父さんに頼む人が増えていくわけだ」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「そうそう、別荘管理の会社の人から『これだけ安くできるなら…!』って知ってもらえたことによってどんどん仕事がもらえるようになったよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「特殊伐採の見積もりって1本いくらって出すの?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「例えば10本、20本切ってもらいたいと依頼が来たら、それが何日で切り終えるか算出して見積もりを出している。だから1本の依頼でも、太かったり枝が多かったりと日数がかかるようならそれだけ値段も高くなっていくね」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「仕事は口コミで広がっていったってことはわかったけど、そもそも特殊伐採って稼げる仕事なの?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plainその気になれば年収1000万円くらいいけると思うよ

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain1000万プレイヤーも夢じゃない!

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「でも俺は身体がもたないかなぁ(笑)」

 

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切った木は、種類やサイズによって炭焼き小屋で炭をつくったり、薪にしたり。資源を余さず使い切ることも大切なようです。

 

youtu.be

炭焼きの様子はこんな感じ。

 

平常心が仕事のパフォーマンスをあげる

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f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「そういえばお父さんってヨガもやっているよね?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「ヨガを始めたのは48歳くらいだったかな。ちょうどその頃会社の経営が危なくなって。精神的に乗り越えようと思って始めたんだよ。ジムには35年通っていて身体は常に鍛えていたけど、精神が参っちゃってね」

 

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お父さんがやっているのは「アシュタンガヨガ」。様々な種類のヨガの中でも運動量が多いそう。

 

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ジム通い35年だけでは作り出せない体幹の強さ


ねぇねぇ、どうなってるの、これ。

 

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人間のなせる技なの!?

 

初めてダルシムを見た時に、「お父さんをモデルにしたのかな?」と思いました。

 

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「そうそう、ヨガを始めたことでよかったことがあったなぁ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「よかったこと?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「特殊伐採で必要な平常心を養えたことだよ。高所にいる時はパニックになることが一番まずいことなんだよね」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「たしかに。登ってきた足元を見たら、我に返ってパニックになりそう」

 

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心を癒やす効果を持つ「ティンシャ」はチベットの密教法具。ヨガの最中に鳴らして、意識を集中させます。

 

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「ヨガにおいて一番大切なのが『呼吸』なんだ

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「呼吸?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「深く長い呼吸によって、精神を安定させてセルフコントロールができるようになる。だから、伐採中も呼吸は常に意識しているね」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「なるほど、自分の呼吸を意識したことってなかったかも」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「木から落ちる自分を一瞬でもイメージした途端に、どんなベテランでも怖くなってしまうんだよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「だから平常心が大切なんだ」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「木に登っている時に大切なことは、いかに集中して目の前だけを見つめられるか。そのためにヨガが必要なんだ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「いやー、まさか特殊伐採とヨガがつながっているとは…」

 

 

遠回りでもオリジナルでコツコツやる

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f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「お父さんが働く中で、大切にしてることってなに?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「俺はナンバーワンにはなれないから、自分のオリジナルでやることが大切だって思っているよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「自分のオリジナル?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「特殊伐採だって最初は自己流だったからね。当初は、まず木の登り方わからないからドリルで穴を空けて、鉄筋を木に刺して登って…と手探りだった」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「うんうん」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「その後、実は木登り専用の道具があることを知って、道具の使い方を自分で考えて…」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「火が使えるようになった原始人のようだ…」

 

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伐採時はカギ爪を装着し、木の表面をえぐるように登っていきます

 

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「私だったらすぐにググってしまうようなことも、自分で試して失敗して、よりよい方法を探していったんだ。調べたり人に聞いたりしないのはどうして?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain過程を積み上げていくのが楽しいんだよ。自己流の仕事は、洗練はされていないけど味がある。いつまでも未完成だからこそ、いつまでも楽しむことができる。答えは自分で見つけていかなきゃいけないんだよ」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「最近、自分の頭で考える機会がどんどん減ってきたもんなぁ。世の中が便利になりすぎてるし」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain遠回りでも、自分でやるのが俺の仕事のやり方だね

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「良いこと言うな〜!お父さんは何歳まで仕事を続けるの?」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「80歳くらいまでやりたいね(笑)」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「あと20年も。その頃には仙人みたいになってそう!」

 

 

最後に、お父さんに今一番の悩みをぶつけてみました

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「お父さん、私会社を辞めようと思っていて…」

f:id:tmmt1989:20170404175437p:plain「うん」

f:id:tmmt1989:20170404175340p:plain「今の職場ではできないことをやっていきたいんだけど、それをうまく社長に伝えられる自信がなくて」

 

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なぜか笑顔になるお父さん。会社を辞める相談をして普通こんな笑顔になる?!

 

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…と悩みをつらつらと話す私を横目に、多くは語らずに優しいまなざしを向けてくれていたお父さんを見て改めて思いました。

 

「答えは自分で見つけなきゃいけない」

 

そういえば昔から多くを語らず、自分に考えさせるお父さんでした。仕事を辞める相談も一緒。「うんうん」と頷いてくれるだけ。

 

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改めてインタビューを通して向き合ってみたけど、やっぱりお父さんはすごい人だし、変わり者でした。

ナンバーワンを目指さず、泥臭く自分で道を切り開いてきたお父さんの個性、努力の積み重ね。娘として誇らしい気持ちになりました。

 

…そして取材の一週間後、自分の中で考えをまとめた私は会社を辞めました。

 

「移動式のピザ窯つくろうと思っているんだけど一緒にやる?」と顔を合わせる度に提案してくるお父さん、100歳まで現役バリバリで働きそうな勢いです。

 

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私のパパはヨガきこり。

 

書いた人:ナカノ ヒトミ

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1990年長野県佐久市生まれ。最近、意識的に散歩をはじめた。
twitter: @jimonakano/個人ブログ: ナガノのナカノ

 

写真:小林 直博

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長野県奥信濃発のフリーペーパー『鶴と亀』で編集者兼フォトグラファーをやっている。1991年生まれ。ばあちゃん子。生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中。

ロシアの夫とハラショー日本「オーチン プリヤートナ!(はじめまして!)」

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東京で生活するマンガ家・シベリカ子が、夫のロシア人男性・P氏と共に、日本をレポートします。料理や文化など、ロシア人から見た日本や東京を、優しい絵柄でのんびり切り取りますよ!

きっとハラショー(素敵)なニッポンが待っている……?

 

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ロシアの夫とハラショー日本|一覧

 

 

●シベリカ子の単行本情報

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

おいしいロシア (コミックエッセイの森)

 

 

書いた人:シベリカ子

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埼玉県出身、東京都在住。漫画家、イラストレーター。ロシア人の夫と1年間ロシアに滞在した時のことを描いたコミックエッセイ「おいしいロシア」で単行本デビュー。
ツイッター:@ShibeRikako
ブログ:シベリカ通信

【朗報】これぞ京都の町家文化! 名物長屋「あじき路地」がクリエイター募集中

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京都の街からこんにちは、おかんです。

 

京都の町並みに欠かせない存在、それは町家。

町家(厳密には「京町家」)とは、伝統的な建築法に基づいてつくられた家屋のことで、定義はいろいろとありますが、通りに面した格子戸や瓦屋根などが特徴の建築物。

 

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Googleの画像検索画面から。「京都っぽい建物」といえばコレじゃないでしょうか。

 

住むにもお店を営むにも、町家の物件ってやっぱり超人気!町家のリノベーションを専門とした不動産屋さんもあり、町家カフェや町家ギャラリーなど、町を歩けばそこかしこに現役で活躍している町家を見ることができます。

 

もうひとつ、京都の町並みに欠かせない存在、それは路地。

 

以前「路地酒場」をご紹介したんですが、碁盤の目の間を無駄無く生活スペースとして利用するために発展した路地は、京都の人々の暮らしや文化が細道のなかにギュっと詰まった空間です。

 

www.e-aidem.com

 

路地×町家。そんな極上の京都らしい場所で、お店ができるとしたら……

 

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こんな……

 

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風情が爆発したような場所で……

 

そう、できるんです!!

 

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京都のとある町家路地の大家さんから「新しく入居してくれる作家さんやクリエイターを募集したい」と依頼を受け、お話を聞きにうかがってきました。


募集する物件の間取り図や詳細なども後述します。京都でこじんまりしたお店やりたいな……と考えている全国のみなさん要チェックです!

 

町家が並ぶ路地でクリエイターが職住一体の生活を送る「あじき路地」

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みなさんは「あじき路地」をご存知でしょうか。

 

あじき路地は清水寺や八坂神社がある東山区の住宅街のなかにひっそりとたたずむ路地。細い路地に築100年近い小さな町家がずらーっと並んでいます。

 

ところで、京の町に詳しい人に「京都で有名な路地といえば?」という質問をしたら確実に「そら、あじき路地やろ」と返事が返ってくることでしょう。

 

なぜなら、あじき路地はただの路地ではなく、
若手の作家が町家に住まいながらお店を構える、職住一体の路地だから。

 

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今回お話をうかがった、大家である安食弘子さん。

 

安食さんは、まだクリエイター育成の価値が見いだされていなかった13年も前から、若者の才能ひとつひとつに注目し、住む場所と商いの場所を貸し出して、たくさんの作り手を育ててきました。若手のクリエイターを育てる活動はいまや全国各地で盛んに行われていますが、あじき路地&安食さんはそのパイオニア的存在。

あじき路地で研鑽を積み、人気やネームバリューを獲得していった数多くの作家たちが「卒業」というかたちで独立し、各地で「好きなこと」を仕事にしています。

 

いわば安食さんは、京都の名物プロデューサー!!

 

ただ場所を貸し出す大家さんとしてではなく、あじき路地には、家族のような距離感で作り手がコミュニティをつくる独自のカルチャーがありました。

 

入居者から「お母さん」と呼ばれる路地の大家 

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アクセサリー屋さん、帽子屋さんなど、現在7組の作家が町家の1階部分を利用して、店舗や工房を構えています。町家の前部分を店舗、奥を工房にする人もいれば、広々1階部分すべてを店舗化している人も。

 

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「今回は2軒も空きが出たということで」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「はい。なるべく告知にあたっていろんな人に『あじき路地』の存在を知ってほしいっていうのがあるのと『あじき路地』がただの貸家じゃなくて、どんな文化があるのかを知ってほしいと思いまして」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「わたしも京都に住んで7年弱、安食さんのお話はかねてよりおうかがいしておりました。安食さんは入居してる作家さんたちから『お母さん』って呼ばれてるんですよね

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「そうなんですよ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「それが他の物件と全然違うところですよね」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「ものづくりに励む若者を応援したいって気持ちから、みんなを『子どもたち』として接しているんです。『お母さん』と呼んでくれるのは嬉しいです。できる限りは子どもたちの面倒は見てあげたいと思うんですよ。生活の距離感が一般的な大家と借り主の関係とは少し違いますね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「そもそも一般的な物件では、大家さんの顔を見る機会もないですよね」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「その点、わたしは毎日のように路地に足を運んでいますから、人によっては煩わしいかもしれません」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「面倒見よすぎる……。言い方は悪いかもしれませんが、どうして他人の子を我が子のように、そこまで応援できるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「わたしも若いころ、彫金作家としてものづくりに関わっていたんですが、結婚を機に作家を諦めたんですね。なので、そのぶん若い子どもたちを応援したいんです。あじき路地を職住一体の家として貸し出したのも、そういう経緯があって」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「クリエイターを中心に集めたのはいつから?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「2004年ぐらいから、職住一体を条件に若手の作家を募集しはじめました。傷んでいた家を亡き夫と修理することを決めて。とはいえ、古い建物なので、維持費も大変なんですよ……!」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「町家の修理ってものすごくお金がかかりそう!」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「去年も大屋根を全部直したので、何年分かの家賃が吹っ飛んじゃって……。でも、みんなには家賃を後回しにしても制作を優先しなさいって思ってしまいます」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「それはやりすぎ!みんな家賃はちゃんと払って〜!!」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「甘いとは周囲からも言われるんですけどねえ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「しかも、安食さんは住まれている方におかずとかお菓子とかを持っていったりするらしいじゃないですか」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「そうですね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「完全に『お母さん』やん!」

 

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お話をうかがったこの日も手づくりのにんじんケーキが出てきた。マジパンまで手づくりだそう。売り物レベルのクオリティ!

 

共同体に住まうことを楽しんでほしい

f:id:yh1123:20170321130709j:plainほぼ膝つきあわす感の距離ですまう住人たち。

 

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「具体的にはどんな人があじき路地に向いていますか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「あじき路地に入る子はみんな家族だと思ってるので、家族のように親密なコミュニケーションがとれる人がいいですね

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「というと?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「さっきおすそ分けの話をしたと思うんですけど、とある作家の子でね、『お正月は帰省しない』って言ってたから、せめてお雑煮でもと思い、手づくりしたものを持って行ったんですよ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「わざわざお雑煮をもってきてくれるってやさしすぎない?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「けど、家にはいなかったんです。後から聞いたら『実家に帰ってた』って。なんでも親御さんが地元から来て一緒に帰ったらしいんですね。でも、親御さんが来てはったらせめて声をかけてくれたらいいのに……って。そういうことは一言いえる関係でありたいですよね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「難しいですね、共同体の意識が低いとそうなっちゃうのかなぁ。都会で育った人だとハードル高いかも」

 

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町家の窓から挨拶を交わす安食さんと住人の作家さん。この風情!

 

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「入居する人もいろんなタイプがいるんですよ。トランクひとつで、なにも家財道具を持ってこなかったり。その子に『お布団も無いし、どうするの』って言ったら『どうしましょうね?』って(笑)」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「自由すぎる」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「どうしましょうって……私が聞きたいわ!って(笑)。結局、毛布やら布団やら全部私が手配したんです」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「そんなことまでするのか」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「それで子どもたちが何か助かるならいいかと」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「普通は大家さんってだけでそこまでしないですよねえ」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「『私が○○してあげたんだから』『●●すべきだ』って、恩着せがましく言うつもりは全然ないんですよ。それは『お母さん』としてはやってることなので。ただ、入居する子どもたちにも、他より濃い人間関係を煩わしがらずに、家族のように楽しんでほしいですね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「なるほど、たしかに実家住まいなら、親に何も言わずに何日も空けたりはしませんもんね。共同生活に楽しみを覚えてもらえる人ならものすごく合いそう!」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「お店に関しても『これやったらどう?』とか『こういうのつくって売れば?』とか口を挟むことがあるんですが、それも子どもたちの成功を願ってのことで……口うるさいなぁと思っても、拒絶はしないでほしいなぁ、と」

 

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京都には地区ごとにお地蔵さんがいます。お地蔵さんの掃除も生活に重要なこと。

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「路地の衛生管理なんかも入居者共同でおこなうんですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「そうです、当番制で。目の前の道の掃除や、お地蔵さんへのお花やりなんか」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「昔の井戸端にあった交流が現存しているの、いいですねえ」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「でも結構サボっている子が多いんですよ……」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「当番は守る人も項目に追加しときましょう」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「他はせやねぇ、隣同士でもクレームは直接言わないように伝えています。やっぱりワンクッションあると言葉も変わりますから、思うことがあったら私に言って欲しいですね」

 

入ってうれしいのはカフェ!具体的な募集要項

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路地は消防車が入らないため、こうして軒先に防火用バケツが置いてあることも。燃えたらもれなく路地全部が灰燼に帰すので、火の元には気をつけましょう!

 

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「具体的な募集要項ってどんなものがあるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain珈琲屋さんとか、ちょっと一服できるカフェが入ってほしいなとは思っています。遠くからお越しくださった方が、あじき路地に滞在してくれるようなスペースを設けたいなと。誰かいませんかねえ?」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「いや、京都の路地の町家でカフェをはじめたい人なんか、山ほどいるんじゃないでしょうか」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「あと、物件によっては職住一体が条件になりますので、生活に配慮して職種に制限をかける場合もあります。たとえば『音の出るもの』や『匂いのキツイもの』はお断りしてるんです。たとえばアロマテラピーなんかは、残念ですけどお断りさせていただいています」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「じゃあバンドマンなんかはだめですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「じつを言うと三味線の先生が入っているんですが、三味線には『忍び駒』というものがあって、音を小さくできるのでOKとしています。実際に音を鳴らしてみて、他の子どもたちも同意してくれたので。三味線は心がゆったりする音色ですし。どういうお店やどういう方が入るのか、それによってあじき路地の毛色が決まると思うので、そこは慎重ですね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「年齢の希望はありますか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「はっきりは明示していないんですけど、お若い方は経済面で苦労しやすいと思うので、なるべく応援したいという気持ちがあります。そのため、30歳以下をひとつの基準として見ているかもしれません。多少は過ぎても大丈夫ですが、40歳近くなっていたり、逆に大学卒業直後なんかは若すぎて少し心配ですかね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「では、適齢としては25〜32歳くらいでしょうかね」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「あとたまに50〜60代の方からの応募もあるんですが、やはりお断りさせてもらっています。若手の作家支援を優先したいんです」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「たしかに、定年後は京都で甘味処を……という夢は一定の需要がありそうですが、他をあたっていただくとして」

 

募集の要項を以下にまとめました!

・年齢は25〜32歳くらいまで
・音が大きい、アロマ系の匂いが発生するお店はNG
・それ以外ならお店の業種は問わず。でもカフェ系だとうれしい
・共同生活に楽しみを覚えてくれる人
・家賃がちゃんと払える人
・掃除の当番などがきちんと守れる人

 

さてそれでは、くだんの物件を見させていただきましょう〜。
職住一体と言いましたが、あじき路地は路地の北側が職住一体の2階建て町家、南側が店舗のみの平屋の物件になっています。今回募集する2軒は、職住一体型と店舗のみ型がそれぞれ。

 

募集物件1:あじき路地の一番手前!お地蔵さん横の2階建物件「北1」

f:id:yh1123:20170411165142j:plain北1の物件は目の前に植え込み、隣にお地蔵さんがあって雰囲気ムンムン!

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「『北1』は職住一体の物件になります。1階の2畳&4畳半ぶんの板間を店舗スペースとして活用することができます」

 

f:id:yh1123:20170411165340j:plain1階部分はこんな感じ。京間は畳のサイズの一種で、195cm×95.5cmと、マンションなど集合住宅の畳よりもひと回り大きいんです。つまり4畳半でも広め。

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「床の間があるあたり和の雰囲気ですけど、畳じゃなくてフローリングだから使い勝手がいいですね!」

 

f:id:yh1123:20170411170150j:plain土間の台所&洗濯機置き場。シンクのみついているので、お店に応じてキッチン機材を配置してください。

 

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町家の魅力、台所の天井がたかーい吹き抜け!

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「開放感ある〜!」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「台所の空間のヌケは町家ならではですね。明かり取りの天窓もふたつあるので、昼間は電気がいらないくらい明るいですよ」

 

f:id:yh1123:20170411173020j:plain各引き戸は開閉が可能なので、現状復帰できる範囲で取り外ししても。

 

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1階部分の奥には土間にお風呂とトイレが設置されています。じつはこの物件がいちばん大きなバスタブのあるお風呂場なんですって。

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「もともとあじき路地はシャワールームしかなかったんですよ。で、お風呂に改装したいっていうから、お風呂場をリノベーションしたんです」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「住んでる人がじゃなくて、安食さんが?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「はい。それで浴室の一式を発注したら、ものすごくいいバスタブが届いたのでびっくりしました」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「こういうことを言うのはなんなんですが、マジでやりすぎじゃない?私財なげうち過ぎじゃない?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「あっ、台所は改装不可です!ここは台所が昔ながらの土間になっているんです。他の物件はみんな要望に応じて板間の台所に改装してしまって、土間の台所はここしか残っていないので」  

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「そうだぞ!みんな現状で快適に暮らすべきだ!」

 

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住居部分の2階へ。さすが長屋の建物だけあって階段がメチャクチャ急。

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「ほぼはしごだけど、現状で快適に暮らすため気をつけて乗降してください」

 

f:id:yh1123:20170411171726j:plain2階部分は3畳間と4畳半の板間をぶち抜いた大部屋!天井は150cm以下の私でも手が届きそうなほどしかありません!

 

f:id:yh1123:20170411171330j:plain南北どちらにも窓が設けられているので、めちゃくちゃ明るい!元押入の収納もでかい!

 

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南側の窓には手すりがついていて、路地を一望することができます。

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「ここで読書しながらひなたぼっことか、窓越しに隣人と話とかできたら最の高ですね」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「2階のこの日差しに惚れたっていう人も多いですよ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「ただ、写真を撮ってて気づいたんですが、けっこう床の水平が傾いてませんか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「築100年を超えているので、どうしても歪みやひずみがあるんです……。気になる人は、絨毯と床の間に板などを噛ませて調整してください」

 

そんな北1の間取り&お家賃はコチラ!

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f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「店舗+住居&このネームバリューでこの値段って、わたしが安食さんの子どもなら『何考えてんねん』って言うと思う」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「お金がない若者からはあんまり取れないですから……」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「聖母?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「ただ条件をつけるとすると、この北1と南1は路地のいちばん入り口に近いところ、つまりお客さんの第一印象を決める場所なんです。だから中途半端な人は来てほしくないですね」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「やっと厳しめの言葉がでた」

 

募集物件2:日替わり店舗で1日店長が可能!採光豊かな平屋の町家「南2」

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ふたつめは路地の南側にある平屋で、物件番号は「南2」。

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「この店舗はいわゆる『貸しスペース』になってまして、1日あたりの金額で自由に使ってもらえます」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「週に何日ここでお店をする、という使い方ができるんですね」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「そうですね。お店だけではなく、たとえば写真やお花、お茶の教室などの会場に使うのもオススメです」

 

f:id:yh1123:20170411174748j:plain引き戸を開けると、土間になっている台所と8畳ほどの板張りの部屋。

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「いまは荷物が置きっぱなしになっていますが、日替わり使用の入居者が決まり次第整理していく予定です」

 

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外からは見えにくく、中からは見えやすい京町家の格子戸。

 

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南側は共用の土間を改装したテラスになっていて、戸を開け放って客席をつくることも可能!可動式の屋根がついているので雨でも安心です。

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「屋根もお店の子がテラスを客席にしたいって言うから設置したんですよ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「安食さんが?お店の人じゃなくて?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「ええ。」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「気前よ過ぎない?さっきから聞いててなんだけど私財なげうちすぎじゃない?」

  

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テラススペースにある共有トイレは、しっかりリノベーション済み!

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「一度外に出ないとトイレにいけないという点は現代的ではないんですが」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「暖房便座なので冬でもあったか。一生座ってられる」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「最低限の水場しかないので、ここで何かを調理して提供するというのは難しいかもしれません。注意点と言えばそれくらいでしょうか」

 

1日から借りることができるので、たとえば普段は勤めていて定期的にお店を開けることが難しいとか、町家でちょっとした販売イベントをしたいという人にピッタリです!

 

南2の間取り&お家賃はこちら!

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f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「この金額なら学生でもグループで支払えば格安ですね。作品展をしてもよさそう」

 

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外に出ると、奥に住まう男性と安食さんが立ち話をしていました。こうして大家さんと入居者の作家が綿密にコミュニケーションを取れる空間、なかなかないでんな……。

 

応募から入居まで

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f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「入居まではどんな流れになるんでしょうか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「まずは書類審査があります。あじき路地の募集用紙があるので、それに応募内容を明記して郵送で送ってください」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「郵送オンリーですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「以前はメールでも受けていたんですが、紙の方が読みやすいので、郵送だけに絞りました」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「書類審査に通ったら……やはり面接でしょうか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「そうです。『お見合い』と呼んでいるんですが、わたしと入居している子どもたちみんなで面接をするんですよ」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「入居している方全員でされるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「やっぱり家族として迎え入れるわけなので、人柄や先住者との相性も気にしておかなければいけませんし。子どもたちの意見もしっかり参考にします。わたしがOKでも、みんながNGを出したら入居の許可を出しません」

f:id:tmmt1989:20170410233118p:plain「徹底したこの家感!」

f:id:tmmt1989:20170410233133p:plain「入居が決まれば、あとは一般的な流れと変わらないと思います。各々準備をしてもらって、生活しながらお店やアトリエで作家活動を行なっていくかたちですね」

 

応募用紙&送り先はコチラ! ※郵送のみの応募です!ご注意!

住所:〒605-0831
京都府京都市東山区大黒町通松原下ル2丁目山城町284 あじき路地 行

 

※応募のやりとり、入居後のトラブルについて一切責任を負えません

※あくまでこの記事は「きっかけ作り」としてご了承ください 

※上記に関して、ジモコロへのお問い合わせはお控えください

 

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画像を保存してプリントアウトして使ってね!

 

京都でひと味違った創作活動をしたい人へ

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ご近所さんとの挨拶もなくなりつつある昨今において、もはや希少ともいえるほどの濃密な人間関係。もちろん「合う」「合わない」はありますが、合う人には、これ以上の場はないんじゃないでしょうか。

あじき路地は、1万3000千本ともいわれる京都の路地のなかでも、メジャー中の大メジャー。路地界のイチロー。だって、Wikipedia先生に項目がある路地なんですもの。

多数のニュースやドキュメンタリー番組にボコボコ出演し、マンガのモチーフになったり、映画のロケ地になったり。路地裏でありながら注目の的という、二律背反の壁を乗り越えた唯一無二の路地!

こんなところでお店をやりたい、本気で夢を叶えたいと思っている人、大チャンスですよ!

 

個人的な思いですが、安食さんもハツラツとされているとはいえ、ご高齢ですし、行政が立ち上がるずっと前から若手作家の育成や路地文化の継承・保全活動に携わってこられました。相当な努力と強い思いがあったからこそ!

「路地のネームバリューに乗っかるような人や、『ダメなら路地を出て就職すればいいし……』なんて甘い考えがある人は絶対にダメ。自分の技術で成功してやるんだ!っていう気概がある人が応募してきてほしい」と安食さん。ギラリと光るその目は、名物長屋を守り続けてきた作家としてのまなざしでした。

だから、そんなお母さんの情熱とやさしさをしっかりと受け止め、創作活動に励んでくれる人がきてくれたらいいなあと思います。

 

クリエイターとしての新しい一歩を踏み出したい人、新天地で自分の力を試したい人、みなさんのパッションをあじき路地はお待ちしております!

 

Googleマップで場所を見て想像を膨らませよう!祇園にも近いスポットだぞ!
気になる人は「いきなり応募じゃ!」じゃなくて一度路地を覗きにきたらいいかも!

 

写真借用:松村シナ

 

 

書いた人・平山(通称:おかん)

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京都の編プロ、合同会社バンクトゥの編集/ライター。兵庫県出身。大学のあだ名「おかん」がそのまま通称に。しかし実態は色々とおっさんに近い。酒場と酒を愛し、将来の夢はスナックのママ。
個人ブログ:おかんの人生飲んだくれ日記/Twitter:@hirayama_okan/所属:合同会社バンクトゥ

 

もはや伊豆半島そのものが珍スポットな件

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どうも、こんにちは。 観光会社別視点の松澤です。

ふらりふらりと珍スポットばっかりめぐって生きています。けっこう楽しいです。

  

前回の記事で、伊豆の珍スポット「まぼろし博覧会」をご紹介いたしました。

「リアル世界にたちあらわれたマッドなコラージュ空間」ってかんじで最高なんですよね、ここ。

でもね、最高なのはここだけじゃないんです。

 

ホットな博物館にイカした喫茶店。

どうしてこうなったのか、伊豆は最高の珍スポだらけ。まさしく珍スポの聖地。

伊豆半島、そのものが珍スポットみたいなもんですわ。

 

というわけで、前回紹介しきれなかった伊豆半島のおすすめ珍スポットを8つご紹介いたします。

こういうとこに行き過ぎてそのへんの感覚がなくなってるんですが、どうもヘビーすぎるとこばかりだと「読むだけならいいけど、行くのは怖いよ…」となってしまうみたいなので、扉をあけるのに勇気がいる重量級から、ふらっと1人旅でも立ちよりやすいライトなとこまで幅広くそろえてみました。

 

【テーマパーク系】  

家族経営の地獄テーマパーク「伊豆極楽苑」

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 まずご紹介したいのが伊豆市にある「伊豆極楽苑」。

 

「極楽苑」という名称ですが、そのじつ展示の8割が地獄…。オープン30年目をむかえる家族経営の地獄テーマパークなのです。

 

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のぼりにも「じごく」の3文字 f:id:matsuzawa7:20170207120714j:plain

作ってから「珍しい」ということに気づいたのでしょうか

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あの世を手作りのジオラマやイラストで再現しています。

 

f:id:matsuzawa7:20170207104126j:plainまずは館長の奥さんが、死んでからの流れを軽妙な語り口で説明してくれます。

   

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賽の河原

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えんま大王

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地獄

人間は死ぬと、49日の審査期間にはいります。

生前のおこないを審査して、

天上界・人間界・畜生界・阿修羅界・餓鬼界・地獄界

の6つから、エンマ大王が行き先を決めます。

これらをじっさいに巡ってまわれるのが、伊豆極楽苑なんです。

 

 

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ちいさい子だとビビッて泣いてしまうことあるそうですが、ご安心ください。

最後にたくましいメス鬼が「あなたは今後、地獄には縁がありません」と断言してくれます。

無間地獄におとされて、349京2413兆4400億年、責めさいなまれるのはごめんですからホッとひと安心ですね。

 

  

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極楽浄土

 地獄から一転、極楽浄土はハッピーです。

・温度ハワイと同じ。家賃敷金礼金ナシ

・阿弥陀さまは極楽のオーナー

と説明文もイケイケです。

  

 

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極楽浄土には六道サイコロがあるので、死後の世界を占ってみましょう。

わたしは「餓鬼界」に堕ちるそうです。地獄には縁がないようですが、糞尿が主食の餓鬼界に堕ちてしまうんですね。

フェルトのかわいいサイコロですが審判はシビアです。

 

サービス精神の塊「熱海城」 

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お城は人気の観光スポットですよね。

歴史的建造物を眺めて、はいって、江戸時代に想いをはせるのは楽しいものです。

 

熱海城のおもしろさは王道の城とはまったく別種のものです。そもそも歴史上存在しない架空の城ですから。

観光用に建てられた城なんですが、そのぶん、サービス精神が過剰なんです。入り口から天守閣まで、すき間なくみっちりとサービス精神が詰めこまれています。

そのほとんどが城も日本史も関係ないのですが、客を楽しませようという熱い心意気は伝わってきます。

 

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 まず城内で待ちかまえているのは米粒芸術家の真庭さんです。

米粒に文字を書きつづけるうちに、不思議なパワーが宿ってしまったとのこと。

「王監督や槙原投手のケガや不調も右手で直した」と言っていました。

 

800円の米粒アートを買えば、一生涯ハンドパワーを受けられるそうです。

米粒アートには連絡先が同封されていて「なにかいいことがあったら、この電話番号に報告して!」と何度も何度も念を押されました。

 

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6階の天守閣からは熱海の町が一望できます。

本来それだけでいいはずなのですが「もっとお客さんを喜ばせたい」とジェンガやオセロが用意されています。

お殿さまでもやったことがないでしょう、天守閣でのジェンガ。

 

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このお城でいちばんホットなエリアが地下1階のゲームコーナーです。

おどろくことにすべて無料、テレビゲームがやりたい放題。

ふだんはゲームに見向きもしないだろうおじいちゃんやおばあさんが、無料ならばと音ゲーを叩きまわり、レーシングゲームでハンドルをにぎっています。

たいへんプレミアムな光景ですね。 

 

 

【食いもの系】

海鮮丼の昔ばなし盛り「漁師めし」

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海にかこまれた伊豆半島、せっかくなら海鮮料理を食べたいですよね。

「とにかく量だ、腹いっぱい海鮮をむさぼりたい」

そんな人にオススメしたいのが伊東の「伊豆高原ビール本店」の漁師めしです。

 

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漁師の漬け丼膳 1980円

これ一人前ですよ、信じられますか。

漬けにしたマグロ、アジ、サーモン、イカにイクラが隆起してます。

まさに日本昔ばなしの盛りかた。

 

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スプーンを潜らせても、なかなかごはんに到達しません。

海鮮の山が崩落しないよう、すこしずつ切り崩す、土木工事のような食事が楽しめます。 

  

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漁師の三種丼 1980円 

いろいろ食べたい場合はこういうのもあります。プチ丼を3種類食べ比べできるセットです。

 

 

マンボウ食べましょ「まるたか」

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伊豆ならではの変わった地魚を食べてみたいかたは「伊豆鮮魚商まるたか」がおススメです。

居酒屋っぽい外観ですけどフードメニューが充実してるしランチもやってるので、お酒が飲めなくても問題なし!

 

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ふつうの焼き鳥などもあるんですが、堂々と「おすすめしません」と書かれています。

あくまで地魚がウリなんです。 

 

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これ、なんのお刺身かわかりますか??

 

正解はマンボウ。

 

「ひゃくひろ」といってマンボウの小腸なんですって。

こりっこりで貝のような食感。

身に水分がおおいので早めの消費が望ましいし、そもそそも網に偶然かかるだけで漁獲量もすくないので、地元以外で流通されることはほとんどないそうです。

 

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こちらはドライドルフィン。つまりイルカの干し肉。

クジラ肉同様、味と匂いにクセがありますが、好きな人にはそれがいいってかんじです。

マヨネーズをつけて食べます。

 

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こちらは、サバの生ハム。

サバとサバのあいだにはさまっているのは大根です。

「どこが生ハムなんだ」っておもいますけど、ひとくち食べたらあら不思議、おもいっきり生ハムの味がします。

見た目はサバなのに、味は生ハム。オーマイコンブ!ってかんじです。

 

 

コンテナ営業の激ウマおそば!「究極のそば」

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国道136号沿いを車で走っていると、「究極のそば」というパワーワードが目にとびこんできます。伊豆極楽苑のすぐ近くです。 

ここまで強気にでられたらどんなそばか確認したくなるのが人の性。

 近づいてみると、完全にコンテナでした。 

 

f:id:matsuzawa7:20170207130234j:plain どっからどうみてもコンテナです。

 

ラーメン屋ですとコンテナでやってるところもたまにありますが、そば屋のコンテナ営業は珍しいですね。

平日でお昼どきをはずしてたので、すっと入店できましたが、じつはこのお店、超人気店。休日のピークタイムは整理券を配るほどの行列ぶりで、1時間待ちもざらだとか。

究極の名は伊達じゃありません。

 

「なんでコンテナかって?おもしろいからって答えてるけど、じつはですね……お金がなかったからなんです!!」と店長さん。

「こないだテレビ見てたら、スイーツやラーメンでもコンテナでやってるお店があって安心しました」とのこと。 

 

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そば600円 + ちょこっと天ぷら200円 

f:id:matsuzawa7:20170207124717j:plain のどごし最高の歯ごたえあるそば。なみなみ入ったお汁もおいしい。

これは人気になるのもわかるし、究極の名に偽りなしです。

 

 

【ミュージアム系】

日本で”秘宝館”はここだけ「熱海秘宝館」 

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いまや「秘宝館」は絶滅の危機にあります。

秘宝館とは、ちょっとエッチな大人の博物館のこと。温泉街を中心に70年~80年代に最盛期をむかえました。

 

2014年鬼怒川秘宝殿が閉館してしまい、施設名に”秘宝館”を冠する施設は、日本でもここ「熱海秘宝館」だけとなってしまいました。

(名前に秘宝館をつけてないだけで、コンセプト的に秘宝館なスポットはまだ各地にあります)

 

展示の特性上、写真をのせるわけにいきませんので、その特徴を箇条書きさせていただきます。

・バラエティー色強めの笑えるテーマパーク

・「面白くしたい」という気持ちがあふれすぎてて、もはやエロくはない

・ただし、けっこうガチな浦島太郎のパロディーAVが最後に待ちかまえているので、油断してると面食らう

 

「いつか行ってみたい…」とおもっているうちに、なくなってしまうかもしれないのが秘宝館。おもいたったが吉日です。  

 

 

ヒトラーの遺品がめちゃくちゃある「風雲文庫」

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今回紹介する8スポットのなかで、もっとも濃厚にして得体のしれぬオーラをはなったスポットです。

どういうところなのか。

ひとくちで言ってしまえば「ヒトラーの遺品がめちゃくちゃある博物館」です。

「わが闘争」を入力したタイプライター、愛用していたフォークと皿、自筆の演説原稿、行軍時に使っていたベッドなどなど。

本物か否か判別はつきませんが、とにかくたくさん展示されています。

モーセの杖や如意棒もありました。

  

どういう経緯でこの博物館ができたのか、くわしい情報はけっして明かしてくれないものの、管理人のおばちゃんはとても優しくて、お茶をだしてくれます。

展示物は撮影禁止なので、現地にいって、その目でたしかめてきてください。

 

 

へんちくりんな創作万華鏡をのぞこう「アトリエロッキー万華鏡館」 

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上記2つのミュージアムはいろんな意味でアダルト向けなので、家族づれでも安心して楽しめるところをご紹介しましょう。

伊豆高原の「アトリエロッキー万華鏡館」です。

 

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鼻の穴をのぞくとキレイな模様がくるくるまわっています

20個ほどの創作万華鏡がありまして、王さまの鼻をのぞく「ツタンカーメン万華鏡」、便座をのぞく「トイレ万華鏡」、まわるお寿司をながめる「寿司万華鏡」などへんちくりんな万華鏡だらけ。

 

これはトイレの万華鏡ですね。

センサーが反応して立ち去るときに、ジャーーと水洗音がながれます。

のぞき穴付近がやたらいい匂いがするなあとおもったら、毎日シャネルの5番の香水をふりかけているそうです。

へんてこな万華鏡を作るだけでも熱いのに「毎日、香水をかける」という継続的で”無意味”な努力をしているところに、静かな狂気をかんじます。

  

 

モノマネショーが楽しめる喫茶店「さる~と」

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最後に紹介したいのが、伊東にあるカラオケ喫茶「さるーと」です。

こういう手書きの看板をかかげてるお店ってだいたい良いんですよ。入店する前からわかります。「ここは、匂うぞ」と。

赤、黄、黒の警告色の比率が高いと、さらに期待値が跳ねあがるんですが、その点このお店は申し分ないですね。

 

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駐車場の木です。

カラオケ喫茶さるーとのご神木のようで鳥居が描かれています。

 

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店長のかもめ次郎さん。「この格好で買い物するし、ご飯も食べに行くけど、べつに観光地だから恥ずかしくない」そうです。

 アポを取っていたわけでもなく、飛びこみで入店したにもかかわらず、入るやいなや肩をつかまれ「取材だよね!?」と顔を近づけられました。

いや実際そうなんですけど、心の準備をする間もなく迫られたのでギョッとしました。 

「そうですけど、なんで分かったんですか?」とたずねたところ「数年前、おでこにコブが出来てからいろんなものが見えるようになった」とのこと。

コブは聖人の証らしく、道ゆくインド人に拝まれるそうです。

 

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かもめ次郎さんがいないときのための撮影パネルだそうです 

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腰につけるだけで歌がうまくなるカラオケ発声ベルト

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金運があがると力説していたサザエゴールド。サザエの殻を金色に塗ったもの。

席に座るや

「このベルトはわたしが開発したカラオケ発生ベルトだよ!腰につけるだけで歌がうまくなる。3万本以上売った!」

「これはサザエゴールド。サザエの殻を金色に塗ったの!金運があがるよ」

「わたしの先祖はどうやら本多忠勝らしいんだよ!伊豆には徳川四天王の子孫がもう1人いるから、あと2人そろえば完璧」

と夢まぼろしのようなお話しを怒涛の勢いでされました。

  

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店長のかもめ次郎さんが、このお店をはじめたのは20年前。

そのまえは流しの歌手として銀座や赤坂のクラブで歌っていたそうです。

ものまねが得意で、名刺代わりに自作のものまねCDを配っています。

   

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f:id:matsuzawa7:20170126154924j:plainマシンガントークに一区切りついたらモノマネタイムです。

歌手の顔面を片手にもって、モノマネメドレーを20分ほど見せてくれます。

途中「ノリノリの曲ですね!」と口をはさんだら「え?もぅ、やめよっか?」と不安げにたずねてきましたし、「よっ!」と合いの手をうったら「もぅやめたほうがいいよね??」とマイクを置きそうになりました。やめないでください、自信満々につづけてください!

 

「前にテレビ取材はいったときさ、その場では『うまいですね!』ってさんざん褒めてたのに、番組観たら『ちっとも似てないモノマネ特集』だったんだよ」とかもめ次郎さん。「そういうのもおもしろい!」とのこと。強いですね。

 

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両手がつかえるマイクスタンド。Youtuberに売れるんじゃないか、と言ってました。

 

ショーのあともしばらく世間話をしていました。

なんでも、赤羽にかもめ次郎さんのニセモノがいるそうです。

「べつに有名でもないのに、なんのために私のニセモノやってるのかわからない」とブキミがっていました。

Youtubeにも「かもめ次郎」の名前で動画があったそうなんですが、カラフルな波のようなものがゆらゆらしてる映像だったそうです。

都市伝説めいててゾクゾクしますね。

 

 

というわけで伊豆半島のおすすめスポットを8つご紹介いたしました。

ひとくちに伊豆半島といっても、熱海から伊豆市、伊豆高原とかなり広い領域にちらばっています。

一気にめぐるのはしんどいかもですが、ゴールデンウィークや夏休み、近くを旅するさい1つでも組みこんでみてください!

そこからズルズルと珍スポ沼にハマってもらえたらしめしめです。

 

 

 

 

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ちょっと別視点のお知らせ

 

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2017年4月22日(土)~23日(日)に「1泊2日伊豆別視点ツアー」をおこないます。

・家族経営の地獄テーマパーク「伊豆極楽苑」

・トイレの神さまをまつってる「明徳寺」

・ディナーショー&海底温泉があるホテル「サンハトヤ」

などなど伊豆半島の珍スポ13個を貸し切りバスでめぐりたおすツアー。もちろん、まぼろし博覧会も行きますよ。

ご興味あるかたは、こちらをごらんくださいませ~。

 

www.another-tokyo.com

 

 

書いた人:観光会社「別視点」

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取材・文:松澤茂信 観光会社「別視点」の代表。「東京別視点ガイド」書いてます。(Twitter

撮影:齋藤洋平 観光会社「別視点」副代表。観光カメラマン。(Instagram


鏡にむかって「お前は誰だ?」と言い続けた結果

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この話はけっこう有名だと思うんですが、知らない人もいるかもしれないので、一応簡単に説明しておきます。ほとんど都市伝説のように語られている話です。

自分の家の鏡にむかって、

「おまえは誰だ?」と言い続けていると、

徐々に頭がおかしくなり、

最後は完全に狂ってしまうらしい……

私がはじめてこの話を知ったのはもう十年以上前なんですが、そのときからものすごく印象的だったんですよ。幽霊が出てくるような怪談よりもずっと怖えな、というか。

 

何が怖いのか?

やはり、試そうと思えば今すぐ試せるというのがポイントだと思うんですね。誰の家にだって鏡の一枚くらいはあるし、毎日のように鏡を見ている。そんな日常的なもので結果が「発狂」というのは、入口は広く谷底は深いという感じがして素晴らしい。

しかしなかなか試す勇気は出てこないし、そんな暇もない。仕事やら何やらで忙しいですからね。だから大抵の人は「へえ」とか「なんか怖いな」と思っても、実際に試したりはしないと思います。

 

実験してました

んで、私はこれを数年前に試してたんですよ。

ちょうどその時、私は仕事をしておらず、金はないが時間だけはあるという状態だったので、色々と以前から気になってたことを実験してたんですね。この連載でもいくつか書きましたが、文字を読むことをやめてみる(参照とか、自分の記憶をデータベース化してみる(参照とか。そうした色々のなかに、この実験もありました。

結論から言えば、べつに狂ってはないんですが(そしたらこんなふうに文章を書けてない)、どんなことが起こるか、なぜ起こるかに関する理屈は分かりました。

ということで、どんなふうに実行してみたかと、その考察です。

 

実行してみる

とりあえず実行ですが、まあ、手順も何もないわけです。非常にシンプルです。平日の昼間から鏡にむかって「おまえは誰だ?」と唱えてました。はじめのうちは、口に出すんではなく、頭のなかで唱えるという感じでした。

やってみると分かりますが、この時点でハタから見れば頭がおかしいムードは出ます。おまえ平日の昼間から何やってんだ、ということです。もしご近所のかたに見られれば、確実に「ヤバいやつがいる」とは思われますね。

まあ、それはおいといて、最初はとくに何も起きませんでした。鏡には見慣れた自分の顔が映っているだけ。仕方ないので、頭のなかじゃなく実際に唱えてみました。

しかし声に出して「おまえは誰だ?」とか言ってみると、余計にバカバカしくて笑ってしまう。「おまえは誰だ?」と問いかけてみても、「俺は俺だろ?」とスーパスターみたいなことを思ってしまうし、結果的に押尾学みたいになっている。いまいち入りこめない。何日か続けてたんですが、アホらしさは増すばかり。

 

「知らない人が映っている」と感じる

んで、こっちも意地になってるんで、試行錯誤をはじめました。

まず、顔だけが映るような小さめの鏡でやってたんですが、家に全身鏡があったので、そちらに変えてみました。床に正座して、自分の全身が映る状態にして、ジーッと見つめる。

「おまえは誰だ?」と唱えるのもやめました。そうじゃなく、ただボーッと自分の顔を見る。頭のなかを空白に近づけていく。

このとき、目元の力をゆるめて、「自分の顔」じゃなく、その少し後方を見るようにしてみると効果的でした。焦点を自分の顔には合わせずに、ボーッと見るわけです。

するとたしかに、フッと意識の状態が変化して、「知らない人が映っている」と感じる瞬間がやってくるんですよ。これは明確に、「変化」として感じられました。鏡のなかで、知らない人間が正座している。

 

なぜか防犯が気になる

ただ、そこで反射的に頭に浮かんだのは、

「防犯」

の二文字だったんですね。「知らない人が家にあがりこんでいる」という恐怖感が湧いた。「カギ締めてないのか!」というふうに。

どうも、「自分の顔」は見慣れないものになったが、後ろに映っている「自分の住んでる家」はそのまま認知していたみたいで、結果的に「見慣れた家に知らない人がいる」という意識状態になったようです。

この展開はさすがに予想外でした。いまいち怖くないというか、怖さのベクトルが期待していたのとちがう。そんな現世的な恐怖を感じてしまっても、という。

それはそれとして、たしかに「知らない人が映っている」という感覚は明確に起こりました。べつに、それでいきなり発狂したりはしませんでしたが。

 

ゲシュタルト崩壊

さて、いったん考察します。これは「ゲシュタルト崩壊」とか呼ばれるものだと思うんですね。たとえば、ひらがなの

をジーッと見つめていると、そのうち、「ん、こんな形だったか?」と不思議になる瞬間がやってくる。それの顔面バージョンですね。

普段はいちいち意識せずに、パッと「自分の顔」として認識している。認識したうえで、自然と色々なことを考えるわけです。自分の顔が好きだとか嫌いだとか、鼻毛が出てるとか肌が荒れてるとか、性別や年齢によって変わると思いますが、鏡を見ると、反射的にさまざまなことを考えるわけです。

この「反射的に」というのがポイントなんですね。無自覚なわけです。ほっといても勝手に考えてしまう。「対象をただ見る」というのは普通にしていると起こらない。見た瞬間に色々なことを連鎖的に考える生き物です。

鏡を見る→自分の顔だと認識する→感情と思考が展開する

普通、この「矢印」は勝手に進むんですが、この実験は、その反射的なプロセスを止めてみるための方便みたいなもんだと思います。

「おまえは誰だ?」という言葉も、その言葉自体に意味があるというよりは、特定の言葉を指定することで、反射的に色々なことを考えてしまうのを防ぐ効果があるんじゃないでしょうか。

 

「知らない人が笑っていること」の怖さ

その後も続けてみたんですが、ひとつ興味深いのは、「鏡のなかの知らない人がフッと笑った瞬間」に、すさまじい恐怖感が生まれたことでした。自分が笑みをこぼしただけなんですが、この「顔が動いた」ことに対する恐怖感は大きかった。

「鏡のなかに知らない人がいる」という状態よりも、「その知らない人が微笑んだ」という状態のほうが、ずっと怖かったんですね。

以前、2000連休の記事(参照)で書きましたが、「意識と肉体がつながっていることの根拠」がぐらついた時に、強い恐怖が生まれます。そして、ただ座っているんじゃなく、その人間の顔が動いたときに、「意識と肉体のズレ」みたいなものが強く実感されて、恐怖感を生んだんじゃないかと思います。

 

「顔の特別視」がすこし薄れた

あとは余談です。実験の副産物として、街中で他人の顔を見るときにも、反射的な思考・感情のプロセスが起きていることに気づいているようになりました。

こんなふうに表現するとややこしいですが、分かりやすく言えば、「おっ、あの子かわいい!」みたいな反応とのあいだに距離ができたということです。

もちろん判断自体は以前のように起きているんですが、そのプロセスを他の位置から観察している状態ですね。そして、以前よりも人の顔に対する「観察力」は上がった気がします。感情的反応に吹っ飛んでしまうと、観察はできませんからね。

 

顔とヘソ

それと、社会における「顔」の扱いにも敏感になりました。たとえば履歴書には「顔写真」を貼っている。ツイッターやフェイスブックのアイコンも「顔」です。そのへんが面白くなってきました。なぜ特定の部位をこんなに重視してるんだという感覚ですね。

あるいは、顔にモザイクをいれたり、目元に黒線をいれることで、プライバシーを守ろうとしている。それで何かを「隠せた」ということになっているのも笑えてきます。

このへんは、試しに、ヘソで考えてみると分かりやすいです。

もしも「その人間」はヘソで代表される世界があったらどうなるか。履歴書にはヘソの写真を貼り、ツイッターにはヘソのアイコンを設定する。ヘソの自撮りをあげる。見栄えのよいヘソにするためにフォトショでいじる。反対に、ヘソにモザイクをかけたり、ヘソだけ黒く塗りつぶしてプライバシーを守る。

そんな世界はギャグにしかならないんですが、

「じゃあなんで顔の場合は、ギャグだと感じないのか?」

ってことですね。

 

まとめ

この実験というのは、「顔を見る」という自動的なプロセスに、待ったをかける効果があるんだと思います。「頭がおかしくなる」というのは、「常識の土台を掘り崩される」とでも言い換えたほうがいいかもしれません。当たり前だと思って気にもしなかったことを、意識にあげてみるということですね。

それでは、また次回。

 

 

ライター:上田啓太

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京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita

【裏京都】デートスポットで打ち首!?京都精華大学の名物教授と行く古都オカルトツアー

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f:id:eaidem:20170422001453j:plain

こんにちは、ライターのおかんです。

 

さてテレビ番組の「ブラタモリ」や「モヤさま」の人気からもわかるように、日本はいま空前の「街ブラブーム」!ともすれば「ムダ知識」として一部のマニアにしかウケていなかった情報が、多くの人を魅了しはじめているように思います。

 

さて、 私の母校は京都市の北にある「京都精華大学」。じつは"街ブラの達人"が多いんです。以前、ジモコロ内でも「マンガ学部」を紹介して話題になりました。

www.e-aidem.com

「人文学部」と言われても、いまいちピンとこない方も多いと思うのですが、昔から国内外のあちこちに出かけ、現地で「フィールドワーク」をする人が多いというのが私のイメージ。

ほとんどの学生がタイやインドに行ってしまい、キャンパスに全然人がいなくなっちゃった、なんて話も聞いたことがあります。

フィールドワークもとい、本気の「街ブラ」。そんな学生たちを教える教員陣には、現場主義の人が多く”街ブラの達人”がたくさんいます!

今回は、街ブラ記事の多い「ジモコロ」で、京都を舞台に人文学部の先生に出張授業を行ってもらいました。読めば京都のイメージがガラッと変わるはず!

 

案内役の人文学部教授は「怪談研究」のエキスパート!

f:id:yh1123:20170418193924j:plain京都精華大学 人文学部 総合人文学科 文学専攻 堤邦彦教授!
世の中の役に立たない(と見はなされてきた)怪談研究をライフワークとして、国内外の妖怪、その裏に秘められた文学や歴史を追っかけ続けている方。

 

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「堤さん、お久しぶりです!」(※ 精華大では教員と学生が対等な立場で学ぶ文化があり、「先生」と呼ばず、自然発生的に「○○さん」と呼ぶ習慣があります)

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「あいにくの雨ですが、むしろ怪談研究者的には『縁起がいい』と言えるかもしれない……」

 

 

今日は私の他にも同じく京都精華大学の卒業生を生徒にお招きしているんです。ドン!

f:id:yh1123:20170418193855j:plain
株式会社人間の書けるムードメーカー、社領エミちゃんです!

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「私もエミちゃんも同じ京都精華大学の出身。ちなみに学生時代、私は芸術学部、エミちゃんはデザイン学部に所属していました」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「こんにちは〜!」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「さっそくですが、エミちゃんは在学時代、人文学部や堤さんを知ってました?」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「全然知らなかったです!」

 

f:id:yh1123:20170419181505g:plain何で知らんのじゃボケーー!!

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「『水木しげる・京極夏彦・堤邦彦』と言っても過言ではないくらいオカルトカルチャーいえばこの人なんだよ!!」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「うう、今日はイチから『人文学』を学びます……」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「むしろ全然知らない人の方が面白いかもね。今回巡るのは、京都の『首』にまつわるスポット。華やかな京都に生々しく残る歴史をひもといていきましょう」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「ひえー!首!怖オモシロそう!!」

 

・今回のツアーのルートはこちら!

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f:id:yh1123:20170421171420p:plain「どう考えても『ブラタモリ』オマージュ」


妻子39人を河原で斬首!?悲劇の武将・豊臣秀次の墓所「瑞泉寺」

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今回スタート地点となったのは三条大橋。天気が良ければ、カップルがひしめくデートスポット。荒れ狂う鴨川を越えて、最初の目的地である「瑞泉寺」に向かいます。

 

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f:id:yh1123:20170421171420p:plain「ここ三条大橋の河川敷は、カップルや学生などでいつも賑わっているスポットですね」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「そうですね。ただ、この河原は平安時代末期から明治時代初期まで、罪人が斬られた『刑場』だったんで……」

 

 

バギャン!!

 

 

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f:id:yh1123:20170421171650p:plain「ギャーー!!傘が崩壊した!!」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「帽子!帽子!」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「刑場って言った瞬間にこの仕打ち」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「祟りや……鴨川にいる水神さまの祟りや……」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「こういうのは『龍神がクシャミをした』って言うんですよ。いやぁ幸先がいい」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「いいわけあるか」

  

f:id:yh1123:20170418194321j:plainやって来たのは京都随一の繁華街、木屋町三条にひっそり建つ「瑞泉寺」!

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「めちゃくちゃ繁華街だ!何回も通っているのに全然気づかなかった……」

 

f:id:yh1123:20170418194354j:plainお話をうかがう中川龍学さんは、イラストレーターを兼業する異色の住職。あと春風亭昇太さんに似てる。

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「ここは昔からあったんですか?」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「いえ、江戸時代初期までは河川敷でした。ここは豊臣秀吉の甥にあたる豊臣秀次公とそのご一族の墓所です。ここに秀次公の首が納められていた塚があったことに由来しています」

 

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f:id:yh1123:20170421171650p:plain「首……」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「事の発端は、跡継ぎ問題です。秀吉は長らく実子に恵まれず、次の関白……いまでいう総理大臣みたいな役職に、甥である秀次公が任命されていたんです」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「あ、でも実子の秀頼が生まれちゃうんだ」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「そう。やっぱり実子に後を継がせたい秀吉は、次第に態度が変わっていってしまった」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「不憫すぎる」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「諸説ありますが、秀次公は謀反の疑いをかけられて切腹させられてしまうんですね」

 

f:id:yh1123:20170418194505j:plainお寺のなかにある資料室には、かつて鴨川の中州だったこの場所を描いた絵巻が展示されている。

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「秀次の首は高野山で斬られ、河原にさらされました。そのさらし首の前で、秀次の正室・側室35人と、4人の子どもたちの首が次々にはねられたといわれています」

 

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f:id:yh1123:20170421171650p:plain「まじで〜!??ヴエッッホ!!ゲホッ!!ゲホッ!!」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「驚き過ぎてむせる奴はじめて見たよ」

 

f:id:yh1123:20170420145139j:plain「瑞泉寺絵巻」の一部。正室・側室や側近たちが、秀次の首を見て泣いている様子。生首との対面後、妻子は処刑され、鴨川が赤く染まったという。

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「妻子たちの遺体は一緒くたに埋められ、その塚の上に、秀次公の首を納めた石櫃(死者を葬るのに用いられた石製の容器)が置かれたと伝わっています。人々からは『畜生塚』と呼ばれ、極悪人としてさらし者になっていたそうです。その後、江戸時代初期に、供養のためこのお寺が建立されました」

 

f:id:yh1123:20170418194634j:plain35人の妻たちのなかには10歳前後の子どもまでも。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「悲惨な死だったからこそ、秀次は後世でも語り続けられています。たとえば江戸時代後期の怪談集『雨月物語』の一編『仏法僧』には、ある親子が高野山で秀次一行の幽霊に会い、帰りに瑞泉寺の首塚を見て異様なオーラを感じた、という話があります」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「永らく反逆者との認識が強かった秀次公ですが、最近の研究では『名誉を守るために自ら切腹した』という説も出てきています。現代でもわかっていないことが多いからこそ、物語のキャラクターとして愛されている部分も多いんでしょうね」

 

f:id:yh1123:20170418194741j:plainお話のあとは供養塔でお参り。

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「いまも供養塔の中には首が入ってるんですか?」

f:id:yh1123:20170421192453p:plain「じつは阪神・淡路大震災で被災した際に、先代が石櫃の中を見たんですね。でも、中がどうなっていたかというと……語ってくれませんでした」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「うおおお、気になる……!」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「せめて今は安らかに眠っていることを願うのみ……」

●「首スポ1:鴨川&瑞泉寺のまとめ」

秀次一族39人が公開処刑された、まさにその地に建つ瑞泉寺。境内には豊富な歴史資料があるが、知れば知るほど顔をしかめるレベルの残忍さ。「血の気引く度」は、いきなり満点の星5つ!!!

血の気引く度:★★★★★

 

光秀の前世は延暦寺の坊主!?和菓子屋さんが守る「明智光秀の首塚」

f:id:yh1123:20170418194840j:plain一行は地下鉄東西線で一駅先の「東山駅」付近にやって来ました。祇園へと美しく流れる白川。さて、次はどこに連れて行ってくれるのでしょうか?

 

f:id:yh1123:20170421193035p:plain

 

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「豊臣秀次の首に続いて、次は明智光秀の首にまつわるスポットに行きましょう」

f:id:yh1123:20170421171650p:plainまた首ィ……美術館とかギャラリーが建ち並ぶキラキラなスポットなのに、そんなものがあるんですか……」

 

f:id:yh1123:20170418194943j:plain白川のほとりにある和菓子屋「餅虎」さん。景観に配慮した緑のカラーコーンが京都らしい。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「じつは、この和菓子屋さんは代々、光秀の首塚の守人をしているんです。首塚自体は、お店の横にある細い路地のなかにあります」

 

f:id:yh1123:20170418195034j:plain住宅に取り囲まれるように小さな塚が建てられています。

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「この祠のなかに光秀の首が置いてあるんですか?」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「いえ、ここは光秀の首が埋まっている場所と伝わっていて、お堂の中に首があるわけではないんです」

 

f:id:yh1123:20170418195059j:plain小さな神社のような佇まい。人感センサーでライトが点灯し、夜に来るとドキっとする。けっこうイマドキの工夫がされています。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「光秀は比叡山焼き討ちをおこなった武将なんですが、本人は仏教を厚く信仰していたという説もあるんです」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「仕事とプライベートは別だったのかなあ」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「江戸時代の小説『御伽人形』のなかに、こんな記述があります。昔、比叡山でイジメをうけたある坊主が、山を降りて『いつか比叡山を燃やしてやる』と言って死んでいったと。その坊主の名前が『明智(みょうち)坊』だというのです」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「明智光秀と同じ漢字だ!」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「江戸時代のオカルト話として、『明智光秀は明智坊の生まれ変わりで、だから比叡山を焼き討ちにしたんだ』という、都市伝説のようなものが流布したんですよ」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「へええ〜!面白い!けど普通に考えると、非科学的な話ですよね?」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「非科学的ではありますが、人々の間に広まった噂話や信仰心が、光秀のキャラクターを強化して後世に伝わったのは事実です。つまり、怪談話のような疑わしいものが文化をつくっていく

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「そんな噂がなければ、今日の光秀人気もなかったかもしれないですよね」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「事実だけでは世の中面白くないんです」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「たしかに、小説やマンガ、アニメなどの創作物も『事実だけではない世界』を描いてますね」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「あと、おまんじゅう屋さんが首塚の守人をしているという点も実に面白い。信仰の対象が商売と結びつき、大衆化することで守られているわけですから」

 

f:id:yh1123:20170418195339j:plain「餅虎」の名物「光秀饅頭」をおやつに小休止。焼印は光秀の家紋に使われていた桔梗の花。

 

f:id:yh1123:20170420145316j:plain甘さひかえめでおいしいですー。

 

f:id:yh1123:20170419183711g:plain今日イチで目を見開く堤さん。

●「首スポ2:明智光秀の首塚のまとめ」

比叡山焼き討ちの死者数は、1500人とも4000人とも。光秀の因縁が本当ならば、首塚に立ち寄るのも怖ろしい!?しかし「光秀饅頭」のやさしい甘さが怖ろしさをやわらげてくれます!!

血の気引く度:★★★☆☆

 

町の名前に隠された謎と、突如現れる◯◯の聖地

f:id:yh1123:20170420150712j:plain三条通を東に向かって進みます。次に目指すのは三条通沿いに建つ「金剛寺」。

f:id:yh1123:20170421194416p:plain

 f:id:yh1123:20170418195526j:plain金剛寺門前で堤さんが話し出すと、なぜか雲行きが怪しくなり、雨が強くなってきた。

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「やっぱりここも首関係ですか?」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「はい。こちらの金剛寺は応仁の乱で荒廃したのですが、阿弥陀如来像の首だけが残されたといわれています」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「首スポット多発過ぎ!」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「信者たちは、戦地に残った阿弥陀如来像の首を持って、ここからもう少し東の地に仮のお堂を建て、菰(こも/藁で織ったむしろ)の上に祀ったんですね。現在、一帯は『小物座町(こものざちょう)』と呼ばれていますが、昔はこの出来事にちなんだ『菰座町(こもざちょう)』という地名でした」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「地名ってそんな風にできてるんですか!知らなんだ〜!」

 

f:id:yh1123:20170418195558j:plainお寺の案内板には「菰座町」の文字が。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「すべての地名に当てはまるわけではないですが、土地の名前には過去の出来事が関わっていることもありますね」

 

f:id:yh1123:20170418195618j:plainちなみに過去そんな激しい戦で燃え尽き、阿弥陀如来像の首だけ残った金剛寺、現在はWi-Fiが使えて電子タバコなら吸えるナウいお寺です。

 

f:id:yh1123:20170418195834j:plainさらに東に進むと、突如現れる合槌稲荷神社!

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「ここは首に直接まつわる場所ではないんですが、『戦といえば刀』ということで。刀鍛冶に関係した神社です」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「あっ!三条小鍛冶宗近!!小狐丸〜!!!」

 

f:id:yh1123:20170418195852j:plain説明の看板を見つけて突然のテンションMAX。

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「ああ……、ゲーム『刀剣乱舞』の聖地なんだ」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「平安時代の刀工『三条小鍛冶宗近』が『小狐丸』という刀を打った時に、稲荷の力を借りたという伝説にもとづく神社なんです。最近は『刀剣乱舞』ファンの間で話題になりつつありますね」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「小狐丸は初期キャラでイケメンだから人気があるんです!こんなところに聖地があったんだ〜!キャピピピ〜!」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「民家の間をすり抜けるように参道が続いています。住人の方もおられますので、静かに参拝しましょう」 

f:id:yh1123:20170420150249j:plain朱色の鳥居をくぐり、

f:id:yh1123:20170419184952j:plain民家の隙間を縫うように歩き、

f:id:yh1123:20170420144018j:plain6畳ほどのスペースしかない本殿に到着!

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「刀鍛冶にキツネというのはよくある組み合わせなんですか?」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「稲荷神社は狐が神の使いですね。商売繁盛の神様として信仰が厚いですから、お商売のために刀鍛冶の職人さんが勧請したのだと思います。ただ『狐火』という言葉にもあるように、キツネは火をつかさどると言われている生き物なので、もっと深い関係性を見ることができるかもしれません」

●「首スポ3:金剛寺&合槌稲荷神社のまとめ」

仏像の首なら怖くない&刀剣乱舞の聖地は秘境感抜群。「血の気引く度」は、ここにきてまさかの星1つ!

血の気引く度:★☆☆☆☆

 

 

あの世とこの世の境目!ゴールは「粟田口刑場跡」

f:id:yh1123:20170420024148j:plain三条通から東を望む図。かつての東海道へと続く三条蹴上のゆるやかな坂道。道の高低差が「街ブラ」の注目ポイントだそうです。

 

f:id:yh1123:20170421194628p:plain

 

f:id:yh1123:20170418200056j:plain三条通脇の斜面にポツンと建つ石碑には、なぜか「南無阿弥陀佛」の文字。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「さて、三条河原の刑場から、豊臣秀次の墓所、明智光秀の首塚と続いて、いよいよ本日のゴール、粟田口刑場跡です」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「処刑場がゴールか……まあ、ある意味では終着点になった人も多いのか」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「うまいこと言うやん」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「このあたりは『粟田口』と呼ばれる地域。『粟田口刑場』という公開処刑場があり、平安時代から江戸時代後期までの間に、約1万5千人ほどの罪人が処刑されたと伝わります」

 

f:id:yh1123:20170418200147j:plainあああああああ……。

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「ついに4桁突破!打ち首のインフレやーー!」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「刑場は明治時代になって廃止され、その後、『粟田口解剖場』が置かれます。古くから忌み地とされてきたんですね。ここに建つ石碑は、その慰霊碑です」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「どうして処刑を公開したんですか?」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「近代以前の処刑は公開が基本だったんです。それに、この場所は都の果て……処刑場というのはよく大都市の入口に設けられました」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「見せしめの意味もあった?」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「大都市は人口や流れ者も多いぶん、犯罪が起きやすいんですね。街外れに処刑場を設けて罪人をさらし、人々を牽制していたという見方はできると思います」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「見ず知らずの人に、死体を見られるんや〜!辛すぎる!」

 

f:id:yh1123:20170418200226j:plain楽しそうに語る堤さん、イキイキしている。

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「東海道の入口、つまり『ここから先は都ではありませんよ』という境目です。怪談の世界でも峠や橋、辻などの『境目』は、怪異が発生する重要なポイント。江戸時代の小説『新御伽婢子(しんおとぎぼうこ)』のなかに、粟田口を舞台にした、こんな怪談があります……」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「ヨッ出た!精華大の稲川淳二!」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「昔、都である坊主が女と恋仲になる。しかし、坊主は修行の身なので都から離れた関東のお寺に修行に出なければいけなくなった。ギリギリまでお坊さんに付いて行こうとした女は、ついに粟田口まで来てしまう。そこから先は都の外、まさに限界点。そこで女が坊主に懇願します。『私の首をはねて持っていって』と」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「メンヘラすぎる」

 

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f:id:yh1123:20170421171500p:plain「そこで坊主は本当に首をはねちゃうんですね。その首を修行先にこっそり持っていく。女の首は生きていて、『今日はどんな修行をしたの?』というふうに首のまま坊主に語りかける秘密の日々が続く」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「さすが怪談研究のプロ。話し方が怖い」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「しかしある時、坊主が京都に帰省したにも関わらず、無人の部屋から女の声がすると大騒ぎになる。仲間の坊主が部屋を覗くと、生きた女の生首に出会うわけです。坊主たちに気づくと、女の首はそのまま干からびて動かなくなった……。これで話は終わらず、坊主の実家から一通の訃報が届きます。女の生首が命を失うまさにその時、坊主も不慮の死を遂げた、という知らせでした」

 

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f:id:yh1123:20170421171650p:plain「こ わ い」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「そんな怪談話が生まれるほど、粟田口は死と密接に関わってきた土地なんですよ」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「大きな刑場だったのに、京都在住者でも粟田口刑場のことはあまり耳にしませんね」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「京都は数多くの忌むべき土地がありますが、大規模都市としての歴史が長いぶん、時代の変化によって再開発や土地の区画整理が進み、土地のもつ歴史や雰囲気が大きく塗り替えられてきたんです。かつて菰座町と呼ばれ、処刑へのカウントダウンだった蹴上の道も、いまや桜の名所ですから」

f:id:yh1123:20170420152930j:plain堤さんが見せてくれた昭和34年7月の『京都新聞』には、粟田口付近の怪談話が載っている。少し時代をさかのぼっただけでも、土地のイメージが大きく異なる。 

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「たしかに、最近では駐車場やホテルなどが増え、街の雰囲気がガラッと変わりましたよね。そして、前にあった建物のことはすぐ忘れちゃう」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「後世に残る街の記録なんて、ごくわずかにすぎません。現地を歩いて感じる印象や空気こそが、その街のリアルな姿であり、その時代その場所でしか見られない貴重な資料なんですよ」

f:id:yh1123:20170421171650p:plain「普段何気なく歩いている場所に、こんな一面があるなんて……!怖かったけど、別の角度から京都を見られるようになりました」

f:id:yh1123:20170421171420p:plain「街の見方が変わる、ものの見方が変わる。それが昨今の街ブラブームの理由なのかもしれませんね」

f:id:yh1123:20170421171500p:plain「『街ブラ』が流行する背景には、学歴や資格といったわかりやすい『学』だけではなく、『教養』という、すぐには役に立たないかもしれないけれど、『心を豊かにしてくれるもの』の価値が高まっているのかもしれませんね。まさに、モノゴトをいろんな角度から見るための学問。それが『人文学』だと思います」

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すぐ近くに多くの観光客が訪れる桜の名所があるとは思えない。死の残滓がただよう慰霊碑の前で、パシャリ。堤さん、ありがとうございました!

●「首スポ4:粟田口刑場跡のまとめ」

1万5000人の魂が眠るあの世とこの世の境目。今まで何気なく通っていた道も、知られざる歴史を知ればゾゾ〜!「血の気引く度」は星10コ!

血の気引く度:★★★★★★★★★★

 

終わりに 

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f:id:yh1123:20170418200557j:plain京都の「首」を共通ワードにひと味違った街歩き、いかがでしたか?
当たり前に暮らしている身の回りの世界のことを、いかに一方向からしか見ていなかったか、よーく思い知りました……。面白すぎる!もっと知りたすぎるよ、街!

 

● 「フィールド・プログラム」が魅力の京都精華大学・人文学部

京都精華大学の人文学部では、3年次前期の1学期間、キャンパスを離れて学ぶ「フィールド・プログラム」を実施します。滞在先は学生が選択でき、アジア圏を中心に世界各地に設けています。今まで見えていなかった世界の可能性を発見できること間違いなし!

● 気になる人は要チェック!

オープンキャンパスではこの夏、京都の街を舞台にしたフィールドワークの体験授業を実施予定。一度参加すれば、好奇心がむくむく育っていくのがわかるはず。もちろん親御さんの参加もOKです。

 

詳しくは京都精華大学のHPで告知します

www.kyoto-seika.ac.jp

2017年のオープンキャンパス開催日はこちら
・4/30(日)※ この日はフィールドワークを行いません
・6/18(日)※ フィールドワークでどこかに行く予定です
・7/29(土)&7/30(日)※ フィールドワークでどこかに行く予定です

(堤さん以外の教員が登場する可能性もあります!)

本日の記事に負けず劣らずの面白いフィールドワークを用意して待っています!
ぜひご参加ください!

 

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京都精華大学

書いた人・平山(通称:おかん)

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京都の編プロ、合同会社バンクトゥの編集/ライター。兵庫県出身。大学のあだ名「おかん」がそのまま通称に。しかし実態は色々とおっさんに近い。酒場と酒を愛し、将来の夢はスナックのママ。
個人ブログ:おかんの人生飲んだくれ日記/Twitter:@hirayama_okan/所属:合同会社バンクトゥ

 

人気フェス「森、道、市場」の裏側には主催者の「熱狂」があった

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こんにちは、ライターの友光だんごです。皆さん、「フェス」はお好きですか? 

 

全国で開催されるフェスは年々増加し、2016年に開催された音楽フェスは180以上ともいわれます。

人気フェスの2016年の来場者数をみると

・FUJI ROCK FESTIVAL  約12万5千人(3日間+前夜祭)

・ROCK IN JAPAN FESTIVAL 約27万人(4日間)

・SUMMER SONIC 約19万4千人(2日間)

となり、この3つのフェスだけで鳥取県の人口と同じくらいの人が動いているようです…! 

 

それだけの人を動かすイベントの運営ってめちゃくちゃ大変そうですよね。アーティストや出店ブースの調整、ましてや雨が降って中止になったらどうするんだろう…? チケット代の払い戻しだけで破産しそうじゃないですか…?

 

「フェス運営」という仕事に興味が湧いていたちょうどそのとき、なんと愛知県の「森、道、市場」というフェスの主催者にインタビューする機会ができました。

 

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森、道、市場

開催日:5/12〜14(12日は前夜祭)

会場:大塚海浜緑地(ラグーナビーチ)&遊園地ラグナシア

●出演アーティスト

Chara / THE BEATNIKS(高橋幸宏+鈴木慶一) / KIRINJI / Gotch & The Good New Times / フラワーカンパニーズ / ストレイテナー / ZAZEN BOYS / クラムボン / チャットモンチー / 安藤裕子 / cero / 中村一義 / ハンバート ハンバート / 石野卓球 / THA BLUE HERB ほかおよそ80組が出演予定(詳しいラインナップはこちら

森、道、市場 | 2017〜行き交う色と、ふたつの場所〜

先にこの「森、道、市場」(以下「森道」)の説明をすると、どうもいわゆる「フェス」とはひと味違うようなんです。

 

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音楽ステージだけでなく、森道にはフードや雑貨などのブースが出店しているんですが、その数なんと300以上。イオンモール並みです。カフェやクラフト好きにはたまらない面子で、ピースフルなゆるい雰囲気を絶賛する声も多いです。

 

去年の様子はこんな感じ。

 

しかし、その「ゆるい雰囲気」の裏側には、主催者のグツグツと煮えたぎる「熱狂」がありました。フェス運営の裏話から今年の森道の注目ポイントまで、ガッツリ聞いてきたのでご紹介します!

 

フェス主催は超多忙!なかなか主催者と話せない

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「森道」の舞台となる愛知・蒲郡市にやってきました。写真奥に見えるのは三河湾。夏は海水浴でも賑わうほか、愛知県内最大の温泉地でもあります。

 

 

この日は、「森道」内のコンテンツ「EATBEAT!FIRE」予告動画の撮影が行われていました。

 

↑この時撮影された動画はこちら

 

現場には「森道」本番に出店するお店や生産者、料理家さんら約40名近くが集まり、料理やお酒が並んでいます。その中に、主催者の方の姿がありました。

 

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話を聞かせてくれた人:岩瀬貴己(いわせ・たかみ)さん

愛知県岡崎市在住。主催をつとめるイベント「森、道、市場」は2011年の初回以来、今年で8回目の開催となる。本業は建築関係。

 

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「こんにちは!」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「あーどうも!まあしっかり食べてください!」

 

と言うなり岩瀬さん、なぜかスッと去ってしまいました。ひっきりなしに電話で通話し、とてもせわしない様子です。そばにいた人に理由を尋ねてみると、

あの人、出店する300店舗以上と直接連絡とってるから忙しいんですよ」との答えが。

……そんなことってあるんですか?

 

謎が深まるなか、岩瀬さんをつかまえてインタビューが始まります。

 

逆ピラミッド構造が、結果ラク? 

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f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「料理を食べつつ失礼します。岩瀬さんが出店者に直接連絡をとってるって本当ですか?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「そうですよ!毎年、市場の出店依頼はぜんぶ僕が直接メールして、一部、人に任せてるエリアもありますが、ほとんどは本番まで直接やりとりします」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「一人で300人以上も相手にしてたら僕なら気が狂いそうです」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「結局、直接やったほうが早いなってなったんですよ。森道の最初は市場の担当者がいたんですが、色々トラブルが起きてしまって。森道の第3回で『もういいわ!』って僕の下に直接全国の店ってシステムにしました」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「普通、運営の組織ってだんだん大きくなっていくと思うんですが」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「うちは問題が起きて人がやめていって『逆ピラミッド構造』ですね。でも、結果、一番ラクですよ。間に人を挟んだら時間かかっちゃうけど、僕が即決できるのでいろんな交渉ごとも早い」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「いやいや、なんか一周回ってる気がする。楽ではないでしょう!」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「『周りを巻き込む』のがコツですよ。森道の出店って基本的には紹介制なので、勝手を知らない新規の店でも、出店者の知り合いがサポートしてくれる。僕が全部カバーしなくてすむようになってます」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「それで回せます…?本当に…?」

 

 

利益をとらなければ、チケットは安くできる

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撮影現場に集まった森道出店者の皆さん

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「フェスの運営の人って、普段は別の仕事をされてるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「そうですね、僕は建築関係で、お店の内装なんかをやってます。生計はそっちで立てていて、森道はあくまで『日常』。お金儲けが目的じゃないんです」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「なるほど〜ではチケットが安いのって儲け度外視なんでしょうか? 3日通し入場券が6400円(通常価格)って驚きました」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「いえ、赤字にはなってないです。やれるんですよ、利益さえとらなければ!

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「いや、普通なかなかやれないと思います」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「森道は『市場』がメインなので、チケットを高くしたくないんです。市場に買い物に行くのに、何万円も払わないでしょ? だから、できるだけ自分たちで頑張って、コストを抑えてます。主催側の意識としては、森道はフェスではなくて『市場』なんですよ」

 

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森道の会場にはビーチがあり、ヨガを楽しむ姿も

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「あと気になってたんですが、野外フェスって雨が降ったら大変ですよね。出店者への制作料の払い戻しとかってどうしてるんですか?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain『イベント保険』っていうのがあるんですよ。事故賠償からイベント自体が中止になったとき用まで、保険料に応じて何種類かあります。保険料かけ捨てのもったいないやつですよ。うちも3回目で初めて入ったら、4回目が天気のせいで中止になって、入っててよかったなって(笑)」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「保険があるんですね、ちょっと安心しました。しかし岩瀬さんの肩に乗っかってる金額、想像したらゾクゾクします」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「そう、今の運営の形だと、僕が死んだら終わりなんですよね(笑)。だから健康に気をつけなきゃいけないんだけど、さっきも安い缶チューハイがぶ飲みしちゃった。出店者さんの日本酒の方が体にいいんだけど、日本酒飲めないから」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「甘酒とか体にいいやつ飲んでください」

 

 

今年は遊園地を『大人借り』した

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出店者の皆さんはとても仲の良い雰囲気。まるで家族のようです

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「森道の最初は、蒲郡にある『三ヶ根山』っていう場所が面白くて、いろんな人に見てもらいたいなと思ったのがきっかけ。人を集めるために店を呼んで市場にして、音楽も必要だなと思ってアーティストを呼んで。その1回目でいきなり3000人くらい来たんです」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「それが2011年ですよね」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「最初の会場はすぐにキャパオーバーになって、2014年からいまの『ラグーナビーチ』に移りました。毎回、トイレが足りないとか駐車場が少ないとか問題が出るので、対応するうちにどんどん規模が大きくなっていったんです」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「いまの来場者数ってどれくらいですか?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain今年は1日あたり18000人くらいが目標です。出店者や子どもも含めたら、20000人くらいになるのかな。会場も手狭になってきたので、今年は隣の遊園地を『大人借り』しました」

 

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新しく会場に加わる遊園地を下見。森道の参加者は遊園地のアトラクションに無料で乗れるらしいんです…!

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain遊園地を借りると駐車場が1000台分ついてくるんですよ! 遊園地のスタッフがそのまま森道のスタッフになってくれて、チケットのもぎりをしてもらえるし」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「『めっちゃお得』みたいに言ってますけど、それで普通、遊園地丸ごと借ります?タダじゃないですよね?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「1日あたり〇〇〇〇円くらいかかってますね」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「相当な金額…!!!」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「それも遊園地と僕が直接交渉してたので、早かったですよね」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「そういう問題じゃないような」

 

 

音楽で集客して、市場を知ってもらうという発想

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f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「相当苦労して運営してることはわかってきたんですが、森道のコンセプトって何なんでしょう?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「ひとつは『いいものを体験してほしい』ってことです。たとえば添加物を使わずに作ったいいみりんって、味が全然違う。体験してもらえばファンになるはずなんだけど、『いいみりんです』だけ言ってても人は来ない。だから、音楽で人を呼んで集客するって発想です」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「音楽で集客!他のフェスにはなさそうな発想ですね」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「うちはあくまで『市場』なので。市場が安定したほうが、長く続けられると思うんですよ。それといいものの良さは若い子にこそ知ってほしいんです。森道の今のメインの客層は30〜40代だけど、そこだけに伝えてたら、10年後食いっぱぐれちゃうから」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「下の世代につなげるってことですね」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「まあ、カウンターカルチャーですね。愛知って元々ヒッピーが多い土地柄で、オーガニック志向みたいなものも強いんです。ただ、それを別にお客さんに押し付けるつもりは全くなくて、トップレベルなものをリアルな場で共有したいってだけです」

 

f:id:tmmt1989:20170423190521j:plain

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「運営をやってて大変なことってあります?ネットでディスられたりしません?」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「『今年変わってません?』とは言われますね。こちらが変わったつもりはなくても、何度も来てくれる人はその人のなかにイメージができちゃうので。それは仕方ないっちゃ仕方ないし…めっちゃ寝てないしスケジュール調整もめっちゃ大変ですけど、笑顔に勝るものはないんで」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「純粋に疑問なんですが、岩瀬さんって何百人と連絡とってて、愛が枯渇したりしませんか?全部投げ出してどっか行きたいってなったり…」

f:id:tmmt1989:20170419103335p:plain「愛?愛は切らさないようにしてますね。5分に一回電話かけてくる人にはちょっとげんなりするけど、枯渇しません。元がめっちゃ多いんじゃないかな」

f:id:tmmt1989:20170419103321p:plain「なかなか出ない答えですよ…今日はありがとうございました!」

 

 

おわりに

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岩瀬さんの愛の総量の底知れなさは、すなわち森道の裏にある「熱狂」なんだと思います。

「直接やったほうが早い」「駐車場がついてくるから遊園地丸ごと借りよう」で本当にやれてしまうエネルギーは尋常ではなく、岩瀬さんのなかにはその熱狂が渦巻いているはずです。

しかし、滾るエネルギーを表にみせることなく、思想も押しつけず、あくまで「楽しんでほしい」というバランス感覚が、森道をここまで大きくしたのでしょう。もちろん、裏に潜む主催者の熱狂にどこか気づいて惹きつけられている人も、少なからずいるはずです。

 

僕も今年は現地で、その熱とともに「森道」を体験してきたいと思います。

 

 

 

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さて、おまけとして「今年の森道のここがすごい」まとめです。

 

①会場に遊園地が加わり、広さが倍に

前年までのラグーナビーチに加え、隣の遊園地も会場に!駐車場も増えました!そしてなにより森道の来場者は遊園地のアトラクションに無料で乗れちゃいます。

 

②出演アーティストも過去最多の約80組

「市場がメイン」といいつつ、音楽部門も充実。海エリア4ステージ、遊園地エリア2ステージの計6ステージ!!僕はGotchバンドが楽しみです。

 

③コンテンツ量が尋常じゃない

前夜祭にはサカナクションの山口一郎さん率いる「NF」、食をテーマにしたライブパフォーマンスイベント「EATBEAT!FIRE!」、物語音楽家 × 裁縫師 × 照明作家による音と布と光のステージ「仕立て屋のサーカス」などなど、コンテンツも目白押し!

 

④地域がテーマのブースや企画も

糸島から「暮らす、食べる、糸島」、沖縄から「リトルオキナワ」、 台湾から「台湾日和」など、各地域の食や作家が集まる企画も!

 

いや〜、泊まりで行かないととても回りきれないボリュームですね。というかうっかり遊園地で遊ぶだけで1日潰れそう。

 

 

チケットはこちらで発売中!まだ間に合います!急げ〜〜〜〜!!!!


※公式サイト: http://mori-michi-ichiba.info/

※instagram: 森、道、市場 (@morimichiichiba) 

 

書いた人:友光だんご

f:id:tmmt1989:20170202163058j:plain

編集者/ライター。1989年岡山生まれ。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。Facebook:友光 哲 / Twitter:@inutekina / 個人ブログ:友光だんご日記 / Mail: dango(a)huuuu.jp

【検証】渋谷には「イチ公」から「ハチ公」までいるのか?

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東京大学をバックにこんにちは、散歩おじさんトリオです。「サンポー」という散歩メディアで愉快な散歩をしています。この短時間で「散歩」という単語を3つも出して恐縮です。記事を書いているのは左端の井上マサキです。

今日は東京大学駒場キャンパスに来ました。京王井の頭線で渋谷から2駅、駒場東大前駅の目の前です。さて、まずはこれを見てもらえますか。

 

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中央に犬が見えますね。こちら、東京大学運動会のキャラクター「イチ公」といいます。東京大学の前身である「旧制一高」が名前の由来だそう。学帽と凛々しい眉毛に知性を感じます。

 

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一方、渋谷には「ハチ公」がいることは皆さんご存じでしょう。

 

そう、2駅離れた距離に「イチ公」「ハチ公」という2匹の犬がいるのです。ということは、イチ公とハチ公の間に、二公からナナ公がいると思うんですよ。もう一回言いますね。イチ公とハチ公の間に、二公からナナ公がいると思うんですよ。

というわけで今回は、まだ見ぬ二公~ナナ公を探し歩きたいと思います!

 

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【登場人物】

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「駒場東大前集合って何かと思ったら、これか〜。秘密主義やめてくれません?」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「居ません。ニ公もサン公も居ません」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「じゃあ、1と8の間には何があるか言ってみてくださいよ」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「2とか、3とか、あと4」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「ほら〜! あと、5とかもありますよ〜」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「東京大学の前で喋っちゃダメなレベルの話! だいたいハチ公のハチは数字じゃないですよ」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「(無視して)今回のルールはこちらです」

 

【ルール】

・イチ公(駒場東大前駅)を出発し、ハチ公(渋谷駅)まで歩く。

・道中で『これは』という存在に二公からナナ公まで命名する。

 

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「見つけるのは、犬じゃないといけないんですか?」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「原則犬です。イチ公からハチ公までグラデーションになるのが理想です」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「うまくいくのかなー。そんなに犬居ますかね?」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「青森の地名で一戸から八戸まであるじゃないですか。あれと一緒で、ニ公、サン公って、ハチ公までぽんぽんと犬が居るんですよ」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「居るんですよ、って言い切った」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「あ、でもさっきの八戸の話、ホントは四戸だけ無いんですよね。あと八戸で終わりじゃ無くて、九戸まであるんですって」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「何の話だよ。不安しか無い」

 

東大前商店街へ

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それでは駒場東大前駅を出発して渋谷駅を目指します。脇目も振らず歩けば徒歩20分ほどの距離です。Googleマップがそう言ってました。

 

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「あっ!あれ二公じゃないですか!」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「もう!?」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「出発から5分も経ってないですよ?」

 

f:id:INO:20170407135640j:plain

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「ほら!犬!犬でしょこれ!ね!犬だ~」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「井上さん、めちゃめちゃ嬉しそうですね」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「企画が成立するか不安だったんだろうな」

 

f:id:INO:20170407135655j:plain

歯医者のマスコットらしく尻尾が歯ブラシになっています。歯を磨くときは胴体を握るのかなと心配になりますが、誠に勝手ながらこちらを「二公」としましょう。(以後、全て誠に勝手ながら命名していきます)

 

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次はサン公を探します。「東大前商店街」に出ました。のぼりには「ご入学おめでとうございます」の文字。日本一偏差値の高い商店街の予感がします。

 

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こちらは「キッチン南海」のショーウィンドウ。ザ・学生街の食堂といった面持ちで、ガッツリ系の洋食がリーズナブルなお値段で並んでいますが、その中に……。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plainがいる。なんで置いちゃったんだ」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「『カツカレーは象と比べるとこれくらいの大きさです』っていう表現かな」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「カツカレー、めちゃくちゃ大きいじゃないですか」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「あ、犬ですよ。これサン公でいいんじゃないですか」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「この犬はあちこちで見るからなー。やっぱりオンリーワンの存在じゃないと。犬だけに」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「おっ」

 

f:id:INO:20170407140108j:plain

動物を探しながら東大前商店街を歩きます。車2台がすれ違うのがやっとの道幅。昭和を感じる佇まいの店も多く、ちょっと行ったら渋谷とは思えないくらい静かです。カフェもありました。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「これ犬かな……」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「犬ですかね……」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「ではこれをサン公とします」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「なんで迷わないんだこの人」

 

ヨン公とゴ公、突然進化する

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順調に二公、サン公が見つかり、次はヨン公。東大前商店街が終わり、そばを走っていた京王井の頭線とも一旦お別れです。超近くで線路を見られるポイントがあって、おじさんたちは釘付けになってしまいました。

 

f:id:INO:20170407140159j:plain

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「この落書き、『FTS』って描かれたあとに『vs』以降が描かれてますよね」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「宣戦布告っぽい。ゴシック体と筆記体の戦争だ!」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「筆記体が勝ったら看板の文字とか全部読みづらくなりそう」

 

f:id:INO:20170407140227j:plain

逃げるようにして進むと山手通りにぶつかりました。今まで歩いていたのは目黒区で、この辺から先が渋谷区になります。

 

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山手通りとの交差点に「ヤマザキ動物専門学校」という専門学校が。動物!これはヨン公がいる予感……!正面に回ってみると……

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「デカい!これをヨン公にしましょう!」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「これ、キリンじゃないんですか!?」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「進化ですよ進化! 高い場所のエサを取れる個体が生き残り、やがてハチ公になったんですよ!」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「その説明だとハチ公もこれくらい首が長いよ?」

 

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とにもかくにも残るはゴ公、ロク公、ナナ公です。住所で言うと松濤二丁目、もうすぐ神泉駅といったところ。犬も距離もちょうど折り返し地点になりました。先を急ぎましょう。

 

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しかし、メダカみたいな魚がたくさん飼われているのを見つけてタイムロス。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「これどう?ゴ公とロク公にならない?」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「待ってる感じ出過ぎかなぁ。ゴ公でここまで忠犬っぽさが出るのはちょっと早いかも」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「忠犬っぽさ?」

 

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この辺りは高級住宅地だけあって、犬を散歩させる人も多い様子。犬のふんの始末をお願いする貼り紙もあちこちで見かけます。その中に……

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「なんだこの犬、めちゃめちゃ賢い!」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「『自分のケツは自分で拭く』みたいな男らしさもあるなぁ。この賢さはゴ公に認定せざるを得ない」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「ヨン公で肉体が進化したあとに、頭脳の進化がきたんですね」

 

ロクとナナ、ハチ公に着くまでに見つかるか

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さて、神泉駅まで来ましたよ。渋谷につながる京王線のトンネル、上り下りで独立しててたまらんですよね。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「この無料相談会、『ご相談内容に応じた複数の専門家(7士業)が同席し……』ってあるけど、なんでブルーだけ顔出しなんでしょうね」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「プレイヤーセレクト画面みたいですよね」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「ブルーは電卓持ってるし税金とか詳しそう。他の人は何持ってるんだ」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「ピンクはセクハラ相談かな。セクハラピンク!的な」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「今の言いたかっただけでしょ」

 

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渋谷駅を目指しながら、なるべく路地へ路地へ……と入り込んでいったら、いつの間にかホテル街になっていました。ロク公とナナ公を見つけないといけないんですが、動物の姿が少なくなって焦ります。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「いっそ、これをロク公に……」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「志半ばで投げ出しすぎですよ」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「あ、これ犬に見えない……?」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「壁のシミだけど」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「言われてみると犬に見えてきますね……」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「なんかラスコーの壁画っぽさがあるなぁ……ゴールも近いし、これをロク公で……!」

 

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ついに壁のシミまで許容するようになってしまいました。残るはナナ公のみ。壁のシミと石像の間を埋めないといけません。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「あの商店街の事務所、細すぎじゃない?」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「4人いれば倒せそう」

 

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百軒店を歩きます。創業80年90年オーバーの店がゴロゴロしててすごい。「86周年」の看板は毎年アップデートしているのかな。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「誰だ、牛の上にBEEFって書いたの」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「安易!」

 

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ナナ公を探しますが、「犬っちゃ犬っぽいステッカー」や「犬だけどもはやハチ公なんじゃないか」みたいなのしか見つかりません。最後なので華々しく終えたい、という気持ちが無駄にハードルを上げていきます。

 

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百軒店から道玄坂小路を抜けて、いよいよセンター街が近づいてきました。ハチ公に着くまでに見つけなくては……。

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「あれは……」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「羊ですね」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「これは……」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「ケバブを狙う鳩ですね」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「これは……」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「これは……ん?」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「お?」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「なんていじらしい……このPepper、ご主人を待ってませんか……?」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「待ってますね。言いつけを守ってじっと待ってますね」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「そして適度に石像っぽい……」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「では……これをナナ公とします!」

 

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センター街を抜け、ゴールの渋谷駅が見えてきました。気がついたら20分の道のりに1時間以上かけていました。道ばたのものに逐一ツッコみすぎです。

 

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ようやくたどり着いたハチ公とパチリ。これにてイチ公からハチ公までコンプリートです!

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進化あり、二足歩行あり、機械化あり。バラエティに富んだ忠犬たちが集まりました。これまで日の目を観なかった名も無き犬たちも、これで胸を貼って生きていけることでしょう。俺たちはハチ公に繋がる血統なのだと……。

 

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「それにしても思っていたよりスムーズに見つかりましたね……そして周辺にはまだ犬がいる……」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「え」

 

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f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「これは……ハチ公の先もまだまだいますね。N公がいますね(Nは自然数とする)」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「またややこしいこと言い始めた」

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「ちょっと調べてみたんですけどね、大分県に『萬公寺』っていうお寺があるんですよ。つまり、渋谷と大分の間に9公~9999公が9991匹いるはずなんですよね。徒歩で移動すると……」

 

f:id:tmmt1989:20170413221757p:plain「8日とちょっと。理論上は約100mに1匹いるはずで……」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「やらないよ」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「やりません」

f:id:tmmt1989:20170413221730p:plain「はい、終わり終わり」

f:id:tmmt1989:20170413221745p:plain「帰りましょう帰りましょう」

 

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(おわり)

 

 

▼散歩おじさんたちの記事をもっと読みたい方はこちら

 

書いた人:井上マサキ

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ライター。好きな路線図はロンドンとプラハ地下鉄。子供のころ「脱サラ」はサラ金から逃げ切ることだと思っていました。 Twitter:@inomsk  個人サイト:イノミス 

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (13) - 転倒事故/モザイクあり

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<ポテン生活|一覧>

  

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<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

書いた人・木下晋也

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1980年大阪生まれ。2008年、『ポテン生活』で第23回MANGA OPEN大賞受賞。単行本『ポテン生活』全10巻、『おやおやこども』が好評発売中。Docomoエンタメウィークで『マコとマコト』連載中。木下晋也公式サイト、cakesでもいくつか作品を公開中です。趣味はプロレス観戦。TwitterFacebook

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

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