50Centのド名盤 1stアルバム『Get Rich Or Die Tryin』。50Centはあるトラブルがきっかけでレコード会社のブラックリストに載ってしまい、大舞台での活動ができなくなっていたんですが、くすぶりながらも続けていた音楽活動が結果としてEMINEMによって見いだされ、大型ラッパーとしての地位を獲得します。
Image may be NSFW. Clik here to view.串カツ屋の後は我が家で深夜まで飲んだあと並んで寝た。4畳半にいい歳した成人が4人川の字で寝るなんて完全に無茶をさせてしまったと反省してます。写真はおかん得意の強制マッサージ中。
Image may be NSFW. Clik here to view.「そのEMINEMも、もともとはN.W.A.っていう伝説的なヒップホップグループの元メンバーで、いまはヘッドフォンの開発や音楽プロデューサーとして活躍するDr. Dreがプロデュースしたことがきっかけでヒットに繋がったっていう経緯があるんだよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「黒人主体のヒップホップ業界で白人のエミネムが成功したのは、Dr. Dreあってこそだって言いますもんね。『Without Me』がリリースされたとき、あまりのカッコよさに衝撃を受けたのを覚えてるなー。MDに入れて聴きまくってた」
Image may be NSFW. Clik here to view.「この話みたいに、ヒップホップ業界には『上の立場にいる人が下の人を捕まえて、引き上げてあげる』っていう文化が根づいてるんだよね。その引き上げる、持ち上げてあげる行為のことをフックアップと呼んで、まだ世に知られていない才能を世間に広めていくんだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「フックアップ素敵やん……!ただ、フックアップといま京都に柿さんともっちーさんがいるのがあんまり繋がらないんだけども」
Image may be NSFW. Clik here to view.「よくぞ聞いてくれました」
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「僕たち、フックアップブラザーズです!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「何それ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕ももっちーもヒップホップが大好きだから、前にフックアップの文化っていいよね、フックアップをテーマにしたメディアをつくりたいよねって話をしてて。ユニットとしてフックアップ文化を啓蒙すべく、フックアップブラザーズとしてやっていくことにしたんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ジョナサンでね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう、ジョナサンでうっすいハイボールを15杯くらい飲みながら……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「3時くらいにね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう、昼の3時くらいに」
Image may be NSFW. Clik here to view.「笑う」
Image may be NSFW. Clik here to view.翌朝、昨日の銭湯で朝風呂をキメてから近くの渋〜い喫茶店「CAFE WORLD 新町」で一服。
Image may be NSFW. Clik here to view.「まあ、そんな感じで、フックアップカルチャーを広める活動をしようということに決まって、一度東京でふたりでトークイベントをしたんよね。その後ももっと全国的にこの活動を広げたいなーと考えていたところに、今回のナノボロ出演のお話をいただいたというわけ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「にゃるほど。ふたりが京都にフックアップを伝導しにきたってことか。フックアップが音楽シーンのなかで生まれた文化なら、フェスで話すのはごく当たり前ですしね」
フックアップされた経験があるからこそ、フックアップを広めたい
Image may be NSFW. Clik here to view. お昼は美味いスパイスカレーが食べたい!というリクエストで「240(ニコヨン)」へ。パンチ力のあるカレーで美味い。ひとつのお皿にカレーと副菜が盛られた小宇宙のようなビジュアルは関西ならではって聞いたんですがホンマですか?
Image may be NSFW. Clik here to view.「フックアップを推すのは、ただヒップホップが好きだからって理由だけじゃないですよね?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うん、ぼく自身の経験も大きいよね。バーグハンバーグバーグ社長のシモダにフックアップしてもらったからこそ今の自分がいるから。最終学歴松屋だし、どうやって社会に上がるかわからなかった」
Image may be NSFW. Clik here to view. スパイス欲がガツンガツンに満たされる!めちゃくちゃうまいと大好評
Image may be NSFW. Clik here to view.「大阪でくすぶっていたある日、上京していたシモダからメッセンジャーでエクセルシートが送られてきたんよね。確認したら半年で50万円を貯めろ!そして上京しろ!っていう内容で。毎月貯金額を記入して送り返せって言われた」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、信頼関係がないと通じないやり方ですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まぁね。自分自身このまま大阪でくすぶっていても先が見えなかったから、そこから必死で働いたなぁ。朝8時〜夜22時まで松屋でアルバイト。23時〜深夜2時までスーパー銭湯でアルバイト。休み関係なく半年働いたら50万円ぐらいあっという間に貯まって。『よっしゃ、上京だ!』って行動に移したのが26歳の終わり頃だったかな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「8年ぐらい前のことですね。へー!そんな経緯があったんだ!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「上京直後は編プロで2年間修行したんだけど、バーグハンバーグバーグの4人目として誘われて合流。紆余曲折を経てジモコロ編集長に至るんだけど、シモダのフックアップがなかったら、おかんちゃんとも出会ってないね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう考えるとフックアップ超大事…!」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「さらにシモダ自身は、paperboy&Co.(現:GMOペパボ)創業者の家入一真さんにフックアップされていて。その関係図を分かりやすく伝えるために用意したのがこちらです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わざわざ6人分の似顔絵イラスト用意してまで伝えたいんだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うん。これが一番分かりやすいからね。この図で言えば、Dr.Dreと家入一真さんはフックアップおじいちゃんにあたるんよね。つまりフックアップの恩義を感じている人間は次に繋げようとするんじゃないかな?と思っていて」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど〜! 次は柿さんも誰かをフックアップしないといけないわけですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そういうこと。ジモコロ視点でいえば、ロゴや紙周りのデザインをお願いしているデザイナーの中屋辰平くん。写真をよくお願いしている鶴と亀の小林直博くん。そしてジモコロのメインライターとして一緒に動いている根岸達朗さん。この3人はほっといても実力があるし申し分ないんだけど…僭越ながらジモコロきっかけでフックアップできたらいいなと思ってる」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そういえば3人よく一緒にいますもんね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まぁ、気の合う人と一緒に仕事できるのが一番だからね!」
Image may be NSFW. Clik here to view. 2日目、男子チームは京都のゲストハウス「Len」に宿泊。ホステルの1階にあるカフェバーで飲んでいたら、たまたま柿さんの東京での知り合いが現れてしばらく一緒にお茶をすることに。
Image may be NSFW. Clik here to view.「まさか旅先で三ノ輪のご近所さんに会うとは思わなかった」
Image may be NSFW. Clik here to view.「偶然が生み出すエモ」
Image may be NSFW. Clik here to view.昨日たくさん飲んだのに結局みんなビールを飲み出す。
Image may be NSFW. Clik here to view.「もっちーさんのフックアップされたエピソードはどんな感じなんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼくは柿次郎さんとシモダさんのような上下関係だけがフックアップだけじゃないと思ってるんだよね。横どうしの関係、『水平フックアップ』での経験が多いかもしれないなぁ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「水平フックアップ。そういうのもあるのか……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「若いころはアンチ上下関係だったし、この人に拾ってもらったって言える上の立場の人はいなかった。でも柿次郎さんみたいに、同世代の人が『飲みに行こうよ』って誘ってくれることで、ふだんインドア派の僕は新しい人たちと知り合えることがあって」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それは柿さんがもっちーさんをフックアップしてるてこと?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう、でも柿次郎さんとは上下のフックアップにある同業種の繋がりはない。すごく水平な人間関係なわけで、ぼくはこれを水平フックアップと呼ぶわけです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「水平フックアップなら、知らず知らずのうちに誰もが一度はやっているのかもしれないなぁ」
Image may be NSFW. Clik here to view. 夜はボロフェスタOBの人たちを中心に前夜祭。ボロフェスタOBの大学の後輩、京都在住のDJ、バーグさんとこの社員、まきのゆうきさんの弟がやってきたりして、人が人を呼ぶ大型飲み会に。
Image may be NSFW. Clik here to view. しっかり梅湯にも行きました。湊三次郎さんのインタビュー記事はこちら!
Image may be NSFW. Clik here to view. かもめブックス&校閲会社・鴎来堂代表の柳下さんも登場。
Image may be NSFW. Clik here to view.「柳下さんのインパクトがスゴい。知のドワーフ存在感ありすぎ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「知らないうちに来てて、パっとみたら豪快に身体洗ってたからびっくりした」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なにそれ。続々とジモコロと接点のある人が集まっていてすごい。そんな柳下さんが校正校閲について語る記事はこちら!」
Image may be NSFW. Clik here to view. 10人くらいいたのに、女が私ひとりだけだっため悲劇のソロ入浴。男子チームのキャッキャしてる声を聞いてました。壁の向こうは楽しそうでいいなぁ。
Image may be NSFW. Clik here to view.「梅湯では10月28日から11月15日まで、記事の冒頭で小林くんと私が行ってた『VOU』っていう雑貨屋とコラボして、オリジナルグッズの販売や、銭湯でのアートイベント、ライブなどをおこなう『Get湯!』が開催予定です」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なんだその新しいイベントは!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ちょうどボロフェスタ本祭と日程がかぶっているので、ぜひ合わせて行ってみてください。より京都のカルチャーにどっぷり浸かれますよ!風呂だけにな!」
Image may be NSFW. Clik here to view. 風呂行って食って飲んでを繰り返し、ようやくメインイベント、ナノボロフェスタの会場へ。本当はこの日も直前まで銭湯行って豆腐食べてしてました。
Image may be NSFW. Clik here to view. アルミホイルがギャンギャンに巻かれたろうそくのオブジェに……
Image may be NSFW. Clik here to view. 手描きのタイムテーブル。
Image may be NSFW. Clik here to view.会場のひとつである「喫茶マドラグ」での演奏の様子。イベント限定の特製メニューなどを食べながらのんびり観賞が可能。
Image may be NSFW. Clik here to view.「なんというか、こう……ものすごくユルくないですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ユルい!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「この独特のユルさがボロフェスタの魅力なんですよ。スタッフが学生なので、すごく学園祭のようなのどかさがあるんです」
Image may be NSFW. Clik here to view. ジモコロ出演陣と、ボロフェスタのOBスタッフのみなさんも会場に集結! 左から、ボランティアスタッフからそのままSCRAPに入社した松田さん、デブ(わし)、柿さんともっちーさん、星海社で編集をしている今井さん、新婚旅行先のハワイから昨日帰ってきた久保さん。
Image may be NSFW. Clik here to view. そして……この方がボロフェスタ創始者のひとり、今回のトークイベントオーガナイザーである飯田仁一郎さん!
Image may be NSFW. Clik here to view.「今日はよろしくお願いします〜!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「前置きがあまりに長過ぎたけど、やっと本番やど!」
ボロフェスタは「フックアップされなかった」人たちがつくった
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Image may be NSFW. Clik here to view.「今回はフックアップをテーマとしているんですが、フックアップについて、飯田さんはピンとくるものがありました?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「もちろん過去を振り返るとフックアップと呼べるものはあったんですが、それよりなにより、ボロフェスタの起源がフックアップされなかった、もしくはされたかった人たちのイベントなんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いきなり重要な話きた!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「15年前の何があったかというとですね、くるりがその2年前にメジャーデビューを果たしたんです。現在のくるりと言えば名前が大きく知られていますけど、当時もう京都は震撼したんですよ。『くるりがメジャデビュー!?』って」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ほほー!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「しかもメジャーに行っただけではなく、売れた。それによって何が起こったかというと、大手レコード会社のA&Rがくるようになったんです。『なんか京都がすごいらしいぞ』って。SONYとかVictorなんかの袋を持った人たちが小さなライブハウスに大挙したわけです」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「そこから『キセル』『つじあやの』『ママスタジヲ』に『越後屋』っていうバンドがメジャーに輩出されて、いわゆる京都ブームがどかーんと起こったんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「みんな有名なアーティストばっかりだ!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「問題は京都出身のアーティストが根こそぎ持っていかれたこと。いいバンドをあらかた拾いきってA&Rたちが去ったあと、京都の音楽シーンは焼け野原になった。その頃に出てきたのが僕たちのバンドで」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ほおほお」
Image may be NSFW. Clik here to view.「上の世代はあんなに目をかけてもらえたのに!?って。これじゃあ見てもらう機会さえない、フックアップされる術がない。俺たちをみてくれよ。そんな思いが募って、フジロックが5年目を迎えたタイミングで『自分たちでもできるんじゃ?』と決起してはじまったんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「のっけからエモい話だ!よくよく考えれば音楽フェスってフックアップそのものですよね。フェスで人気のアーティストがセールスを延ばして、強い固定ファンを獲得して、次のステージに上がっていく」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「消費型ではないリアルな体験というのもいいですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ジモコロにフックアップを絡めると、地元の良さってまだまだ見つかってないんですよ。かといってその場所に長く住むと良さが見えなくなる。外からの目線で『これいいぞー!』って発信する、これもフックアップだと思ってます。フックアップはどこにもある」
ボロフェスタだからこそできるフックアップ
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Image may be NSFW. Clik here to view.「『今年はコイツをフックアップしたい!』っていうのはありますか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ありますね。去年だと『Have a Nice Day!』と『NATURE DANGER GANG』という東京のバンドです。まだ京都では知られていなかったんですが、相当カッコいいんです。けど、アングラな音楽だからメジャーシーンのフェスには出られない」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうなるともう『俺らしかいない!』って。Have a Nice Day!はエレクトロな曲なのに、モッシュやダイブが起こるバンドなんですよ。そんな特徴もふまえて、彼らは新しいカルチャーだからこんなふうに暴れたりするんだよ!って紹介しました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「他所ではポテンシャルを出せないアーティストを出せるのがボロフェスタなのかもしれないですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たとえば話題の岡崎体育くんは去年マドラグで歌ってたんですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ええっ!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「彼もめちゃくちゃおもしろい。ただ、オルタナ対比で見ると特殊すぎて、現在のフェスルーツには乗れないんですよ。そんなアーティストを僕たちが紹介していくってのはボロフェスタの意義としては大いにあります」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「ただ、NOTフェスルーツのアーティストであっても、岡崎体育くんや『水曜日のカンパネラ』みたいに、売れていくと呼ばない場合もあります。呼ばないっていうか、アーティスト側が、自分たちが来るとチケットが売れすぎるからって辞退していきますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「特定のファンだけがドッと来て、他のアーティストを熱心に見てくれないってことですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。あんまり1アーティストで引っ張ると客層が変わっちゃうし。1500人規模のフェスには、1500人規模に見合ったキャパがありますから。客側にも演奏する側にも」
Image may be NSFW. Clik here to view.「業界としてすごくきもちいい循環があるんですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「その上で、『このアーティストいいな』って思う基準はなんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「知名度に地域差があるときかもしれない。拠点地では完全にアツいのに、プロモーションが下手だったり、有能なA&Rがついてなくてその場に留まっている。実力があるのに進めてない。そんな人はフックアップしていきたいと思います」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ローカルでくすぶっている人たちだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「地元で熱が出てるってことは、どこでも活動できるんです。でもバンドマンって人見知りだったりするから。酒が飲めたらそれでいいとか言っちゃうし」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あー、ありますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それ以外のフックアップ予備軍といえば?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「近しい人たちに認められなきゃ、俺がフックアップしても無理だぜ、っていうのはありますね。まずは地元のライブハウスをパンパンにしなさいよって」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そこまでは死にものぐるいで登ってきなさいってことですか」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうです。やっぱり実力主義なので、おもしろくても演奏やメロディーがよくないとだめ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それは熱量以前の問題なんですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「東京のバンドによく言うのは『ぼくは君たちを応援したいが、いま呼んでもボロのステージの前に集まるのはたった10人だ。それじゃダメだろう。だから東京のLIQUIDROOMを満杯にしてくれ。そうしたら絶対に呼ぶから』って」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ほぉー」
Image may be NSFW. Clik here to view.「で、その説得から7年かけて今年来るのが『MOROHA』です」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おおお、MOROHA!知ってます!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう、MOROHAにはこの話をして、以前このステージに呼んだんです。ボロフェスタ本祭じゃなく、こっちのナノボロフェスタに」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そしたら彼らはラッパーなんで、MCで『なんで俺らを本祭に出してくれないんだ』って内容をラップして、めっちゃ盛り上げたんですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それはアガりますねえ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼくはその場にいなかったんですが、主催者のひとりから『こんなに盛り上がったから本祭に呼びたいんだ』って電話があったんです。でもぼくは言ったんです、『待とう』って」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「ええっ、まだ早いってこと?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まだ早いというか、そのエネルギー持ってる奴は京都にもいっぱいいるんですよ。『そんなMCがよかったからって出してどないするねん。 お前の周りにもあるやろそれくらいの情熱ある奴』って説得して」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おあずけフックアップだ!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「厳しい」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『あいつらが1000人収容のLIQUIDROOMを埋めたら、京都でも100人は埋まるから。そこまでいってから呼ぼう』って、渋々納得してもらいました。それで7年後、MOROHAから『LIQUIDROOMに見に来て』って連絡があったんです。すごくいいライブで、チケットもソールド。感動しました。そしてその日の夜に、是が非でも出てほしいですって連絡しました」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「エッモ〜〜!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「エモすぎる!!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「7年越しの気持ちよさ!ふぁー。僕たちなんか飯田さんに比べたらフックアップ新人ですね」
パッパラパーだからこそ京都の学生はいい
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Image may be NSFW. Clik here to view.「こんなイベントができるのも京都だからじゃないですか?たしか人口の3割が学生なんですよね。『学生さん』なんて、さんづけで呼ばれるのなんて京都だけですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うーん、京都の学生さんは本当に……パッパラパーなんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ええ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いやこれはスゴい大事なことで。たとえば東京で同じようなイベント立ち上げると、人は集まるけど、みんな就職活動のためだったりSCRAPへの入社を目的としてるんですよ。でも、京都の学生は誰もそんなこと考えてないんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「パッパラパーすぎるでしょ!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「超ステキじゃないですか。東京の人はみんな確固たる目的があるのに、京都の人はただおもしろそうとか、刺激的だからってだけでやってくる。それが最高なんですよ」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「今年は小学生から立命館の4回生までずっとアメフトやってたような奴が『刺激を求めて……』なんて理由でスタッフとして参加してます。もう意味がわからない」
Image may be NSFW. Clik here to view.「学生間の仲のよさとか、街全体が学生さんを甘やかしてるところがあるのかな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼくも甘やかされて育ってきました。京都の特性でもあるんですけど、むしろ東京がシビアすぎるのかも。東京は著名な経済人スゴい!ってなるけど、ローカルはぜんぜんそんなことない。先輩がいて街の飲み屋がいて……その土地に沿ったコミュニティがありますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼく、もしなにかあったら京都で人生リセットしたいですもん。ダメな人を受け入れてくれそう」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そんなこともないですけど、街全体がエモーショナルな感じ、優しい感じがあると思います。特別な街であることは間違いないですね」
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くだんのアメフト部。でかい。
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼく、もともと音楽ライターになりたかったんですよ。京都に来たらボロフェスタのボランティアからはじめようかなぁ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「全然いいですよ、来てください!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ひとまず、ぼくはスモールフックアップのカルチャーを育てていきたいんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「スモールフックアップ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「その人なりの影響力が人生のなかで積み上がってくるにしたがって、助けられる人の数が増えてくるんですが、まずは誰でもできるフックアップのひとつがSNSの活用なんですよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「フックアップは明確な立場がある人だけじゃなくて、だれでもできるっていうのが現代、SNS時代ではOKなんですよ。たとえば友達が曲をつくってYouTubeにアップした。それをスルーするんじゃなくて、コイツのためにシェアするっていう踏みとどまりが大事だと思うんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ああ、なるほど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「シェアも、ただシェアするだけじゃなくて、なにか一言添えてあげる。それだけで周囲の人の印象に残りますよね。そうした『小さなことからコツコツと』フックアップはできる。西川きよしスタイルです」
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「……?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「完全にスベッて悲しい。誰か何か話して」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うん。話は少し変わるんですが、SNSの使い方って難しくないですか?ちょっと最近疲れてきて。そんなに自分が何してるかって知りたいかなあって。『コイツおもしろいで』って内容は呟けるんだけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『SNSってこういう場所だよね』っていう斜に構えたイメージがあるとおもうんですよね。それぞれごとに。それに流されてる場合じゃないんです」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「おお……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕はSNSは広報ツールでしかない。FacebookやTwitterとかは『俺通信』。僕はこういうことやってますっていう告知で、キャラを明確にする。投稿は疲れるんだけど、自分の影響力を上げることは恥じらうことなくやるべきなんです。その方が、何か発信した時に潜在的に届く数が増える」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たとえばSNS上で寄付を募ったとして、俺がシェアしたらこんだけ拡散するんだぜ!っていう影響力が育ちます」
Image may be NSFW. Clik here to view.「つまり影響力が高いほど、シェアしたときのフックアップ度合いが高まるってことですね。フォロワー数が多いほど、たくさんの人に拡散されるから」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼくも日頃の発信は欠かしません。しかも楽しそうに発信します。『いま京都に来てまーす』って楽しそうに言うだけで『この店がおすすめです』とか『◎◎さん京都に来てますよ!』とか、周りが情報をくれて、新しい出会いがあったりするので」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほどなー、おもしろかった。スモールフックアップ、すごいな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『京都でうまいもん食ってまーす』って言われても知らんがな、なんですよ。でも知らんがな……の向こうに何かがある。それを積み重ねていくとメリットがあるかもしれない」
Image may be NSFW. Clik here to view.「すごく勉強になった!勉強になったところで、いい時間なのでそろそろ終わりにしましょうか。おふたりともありがとうございました」
Image may be NSFW. Clik here to view.Image may be NSFW. Clik here to view.「ありがとうございました〜!」
Image may be NSFW. Clik here to view.
で、ここからが本番「ボロフェスタ」の告知なわけですよ
Image may be NSFW. Clik here to view.「今日のはあくまでプレイベントなんだな!」
イベントのなかで登場したMOROHAを筆頭に、クラムボンやtofubests、話題の岡崎体育、アイドルのBiS!クリトリック・リスにeastern youthにサニーデイ・サービスに!POLYSICSにHave a Nice Day!に忘れらんねぇよに踊ってばかりの国に……あああああああああああ!!!
Image may be NSFW. Clik here to view.「去年ね、ウチのお向かいのカフェが高校生にポスターを作ってもらってて、うらやましかったんですよ。それで今年は、風音ちゃんがこんなに素敵なポスターを作ってくれたでしょう。本当に嬉しかった〜。生きがいですよ!お店がある限り、ずーーーーっと飾っておきます!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ほんとに嬉しかったんですね〜」
Image may be NSFW. Clik here to view.「御柱祭にはずっと興味があったので、今日は来れてよかったです。聞くところによると、地元の人の祭にかける想いは並々ならぬものがあるとか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。7年に一度しかないこともあって、この時期になると地域全体に熱がこもります。地元の新聞もニュース番組も毎日御柱の話題ばかりです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「御柱がメディアをジャックしちゃうんだ……すごい。あと僕、以前長野の人に聞いてびっくりしたのが、このあたりの人たちって、御柱が終わると次の御柱に向けて貯金をするんですよね? 家によっては数百万円…」
Image may be NSFW. Clik here to view.「昔はみんなそうだったみたいですね。御柱のときって、家を開いてお客さんをとにかくたくさん呼ぶんですよ。もうこれでもかっていうくらい料理やお酒を振舞う。だから何十万円ってお金がすぐに飛んでいっちゃうんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕ならそのお金でハワイに逃げると思います。この土地では、御柱のときはみんなにおもてなしするのが当たり前っていう感覚なんでしょうね。太っ腹だなぁ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「どこの家もそうなんですよ。誰でも寄りなさいという感じ。この時期だけの独特な雰囲気ですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.
Image may be NSFW. Clik here to view.「独特といえば、御柱ならではのルールも変わっているんですよ。たとえば、開催の年は結婚式や葬式を控える、家の改築を控えるといったこととか。諸説ありますが、祭に奉仕するために個人的なことは控えるべきという意味があるようですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「結婚できないんだ! あくまでも神事を優先するなんて徹底してますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「家の出費がすごいのもあるでしょうね。御柱祭って約1200年前に始まったとされているんですが、一度も休んだことがなくて、織田信長が諏訪大社を焼き討ちしたときもやってますし、戦時中でもやってますからね(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ええー! 執念がすごい!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「……強い思いの表れですよね。だから、各地域の氏子の中心的な存在にもなれば、命をかけるくらいの気持ちがないと務まらないんですね」
地域ごとに御柱との関わり方がある
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Image may be NSFW. Clik here to view.「ところで、柿次郎さんは御柱祭、今回が初めてですよね? わかりにくいところも多かったんじゃないですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうなんですよ。気になってネットでいろいろと調べてみても、ほとんど情報がないし、あっても断片的なものが多くて……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「じゃあちょっと簡単に説明しますね。御柱祭というのは、諏訪大社で7年に一度、寅年と申年に行われる神事です。諏訪大社に山から切り出したモミの木を運んで奉納し、所定の場所に人力で建てるんですよ。あ、ちょうど今柿次郎さんが開いている本に写真が載っていますね」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「あ、これですね。人が何人も乗ったまま垂直に立てるんだ。やばい…。あの、そもそもなんで大きな柱を建てるんですか? 巨人の棒倒しゲームの準備?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うーん、実はよくわからないんです。諏訪大社の社殿造営に関わる説が有力ですが、神域を示すためとか、神霊の依代であるとする説とか。諸説が20種類以上あると言われていて…御柱祭について正確に語れる人は数少ないと思います」
Image may be NSFW. Clik here to view.
御柱は樹齢100年を優に超えるモミの大木を使用する
Image may be NSFW. Clik here to view.「へえ……建てる巨木はこの1本だけなんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いえ、全部で16本あります」
Image may be NSFW. Clik here to view.「16本!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「諏訪大社と一言にいっても、それには上社と下社があって、さらに上社には本宮と前宮、下社には春宮と秋宮があるんです。それぞれのお宮に4本ずつですから、4×4で16本ですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど。諏訪大社って4つのお宮の複合体みたいな感じなんですね。それにしても、それだけの数の大木を運ぶのは大変そうな……しかもすべて人力でしょう。1本にどのくらいの人が関わるんですか?」
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御柱に10人以上の大人が乗り込んでるのすごくないですか?
Image may be NSFW. Clik here to view.「1000〜3000人くらいですかね。上社の場合は、諏訪地域のどの地区がどの柱を担当するのか、くじ引きで決めます。下社の曳く柱は、地区ごとに決まっています」
Image may be NSFW. Clik here to view.「数千人単位! しかも、柱ごとに各地域が関わっているんだ。どうりで全体像が掴みづらいわけだ……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「じゃあ、そのなかでメインイベントというか、比較的広く知られているのは山から木を落とすところですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あ、下社の『木落し』ですね。4月に行われている山出しの最大の見せ場で。人がまたがった御柱が急斜面をすごい勢いで滑り落ちます。滑り落ちきった後に、一番前に座っていられた男がすごいという。さらに上社では木落しのあとに、川幅43メートルの宮川を越える『川越し』というのもあります」
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長野の4月上旬は、まだまだ凍えるような水温らしい
Image may be NSFW. Clik here to view.「もうめちゃくちゃな行事ですね。そういえば僕、先日NHKのドキュメンタリーで見たんですけど、木を動かすときって独特な歌を歌いませんか? おじさんが結構高いキーで歌ってたのが印象的だったんですけどあれは……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「木遣り歌ですね。あの歌を合図に、みんなで気持ちを揃えて大木を動かすんですよ。あの歌を練習する声が聞こえてくると、御柱がやってきたなあという気持ちになります」
Image may be NSFW. Clik here to view.「一度聞いたら忘れられないような、独特な歌い回しですもんね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。でも、この地域の女性たちって、歌は知ってても、生で御柱を見たことがないっていう人が結構多いんですよ」
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建御柱の瞬間。危ない、危ないよー!!
Image may be NSFW. Clik here to view.「え、それはなんで?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「古くからの習慣として、男の人は氏子として御柱に関わるけれど、女の人は家にいてお客さんをもてなすことが多いんですよ。木遣り隊やラッパ隊に所属している氏子の女性もいますが…。家にいる女性は料理の準備とかとにかくやることが多すぎて、生の御柱を見に行く暇がないんです。もちろん地元のケーブル局の番組で見てはいるんですが、直接見に行くことはなかなか大変なんでしょうね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あーなるほど。小野さんのお家もそうだったんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。小さい頃は、来客のもてなしの手伝いはあまり好きじゃなかったし、御柱の年は結婚式挙げちゃいけないってなんのことだろうって思っていました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ああー。それって僕みたいな観光者には絶対に持ち得ない、土着的な思いですよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうかもしれないですね。でも大人になって、街の観光に関わる仕事もして、これがこの土地の文化なんだなあって前よりも受けいれられるようになってきたんですよ。この土地で生きていくということは、いろんな思いを抱えながらも、御柱とともに歩んでいくということなんじゃないかなと思います」
Image may be NSFW. Clik here to view.「貴重なお話、ありがとうございました。完全なよそ者ですけど今度の下社里曳き、楽しんできます!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぜひぜひ。できれば法被着ていくといいですよ。ちょっと地元の人っぽく見えますから(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ナイスな情報、ありがとうございます!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ハガキ職人のシンデレラストーリーじゃないですか! 失礼ですけど、なんでハガキ職人をやろうと思ったんですか? 僕もなんですけど、ラジオ聴くのはまあよいとして、ネタを送るって結構ハードル高いですよね?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「元々バンドのラクリマ・クリスティーが好きで彼らのラジオを聴いていたのと、お笑いが好きだったんですよね。ネタメールでない“ふつおた”(普通のおたよりの略、コーナー宛でない質問メールなどをこう呼ぶ)は送っていたんですけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うんうん」
Image may be NSFW. Clik here to view.「アンタッチャブルさんの番組が始まったくらいにネタコーナー送ってみたら読まれて『全然知らない人が僕が考えたことを聴いているのって楽しいな、と思ったのがキッカケですね。そこからは生活がネタ投稿中心になりました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお! ネタ投稿中心というと?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「当時、大学も卒業してすることもなく『何のために生きてるのかな?』って考えた時に”ラジオでネタが読まれてるってことはそこを誰かが評価してくれてる”って思いまして」
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他人事とは思えないラジオリスナーっぽい顔をしているセパさん(失礼)
Image may be NSFW. Clik here to view.「ああ!!! いいですね!!典型的な暗いラジオ好きの持つ闇パワー!!って感じで。そういう方がいま表現する側になっているっての夢があります。
Image may be NSFW. Clik here to view.「人間関係も苦手でバイトも半日で辞めてしまうような性格だったので、それだけが楽しかったんですよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わかります。僕もバイト先で着ていったインドの神様柄のTシャツを爆笑されてバックれた事がありますし」
Image may be NSFW. Clik here to view.「その顔でインドの神様柄のTシャツは僕も引きます」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「番組から引き抜きっていうのは、どんな感じで誘われるんですか? あの番組は多くのハガキ職人が投稿をしていたと思います。ライバルがたくさんいる中でセパさんに白羽の矢が立った理由ってなんですかね?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「番組のイベントでハガキ職人が漫才師のネタを書く他力本願ライブというのがありまして。僕がビーグル38さんのネタを書いて採用されたのがキッカケだと思います。その後、TBSラジオの方から電話が来て誘われました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ビーグル38は『それエアロスミスやないか!』の芸人さんですね。その一発勝負で!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それ以前にもシカマンでブラックマヨネーズさんが出演された時にブラマヨ風のネタを書いて送ったらご本人らに褒められたってのがありましたね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ブラマヨのやつ覚えてます! 100点中98点って絶賛されてたやつでしたよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ちゃんとその漫才師のネタを研究してその人達のパターンを把握した上で構成してました。そういう真面目さを見抜いてくれた…のかな?(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「やっぱり研究して狙いに言っていたんですね、頭一つ抜ける訳だ!」
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セパさんが当時思いついたネタを書き溜めてたアイデアノート
Image may be NSFW. Clik here to view.「ハガキ職人から構成作家に転身しましたが、仕事は面白いですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「やっぱりハガキ職人と構成作家は違うなと思いますね。ハガキ職人は思いついたネタをとりあえず大量に投げて相手に委ねるだけでいい。構成作家は台本などを作る作業なので、アイデアを取捨選択した上で固めてから絶対にウケる1球にしないといけないんですよ」
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レモンティーのレモンを絞るセパさん
Image may be NSFW. Clik here to view.「辞めようと思ったことは?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「辛いところも勿論ありますけど、でも楽しいですし、絶対辞めないと決めているんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「お! それはなぜ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「TBSの方から電話があって誘われたときに心に決めてたんですよ。多くのハガキ職人の中から僕1人だけ誘われたってことは、同じ志(こころざし)を持った仲間の上に僕が立っているという事じゃないですか。他にも放送作家になりたかった人っていると思いますし、その方々を裏切らないように"絶対辞めない"と決めました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「セパさん……惚れました……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「Aって異常なくらいネタを投稿して読まれいて、当時一番有名なハガキ職人だった訳じゃない? あの時代ってなにを考えてそんな行動してたのかなって思って。どこからそんなパワーが来てたの?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕は大学時代はいわゆる"ぼっち"で。話す人も全くいないし、周囲のチャラいノリが大嫌いで馴染めなかったんだよね(笑)。そういった恨みつらみを糧にしてネタ投稿に昇華していたって感じかなぁ? もちろんお笑い好きだったし。ラジオ投稿が唯一の生活の楽しみだったっていうのもある」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ハガキ職人って全員、闇パワーで活動する闇属性なの? 『大学では全く友達いないけど、ラジオの中だったら俺は読まれてるんだぜ!』ってのが痛快だったって感じ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「完全にそれだわ。こんな大学、絶対最速の4年で卒業しやるって思って、単位取りまくって3年の時点で残すはゼミと卒論という状態にしたなー」
Image may be NSFW. Clik here to view.「出来るだけ大学と関わらない様にしたのか……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「でも、ゼミも知り合い同士の大学生ばっかりでさ。居場所がなかったから結局行かなくなった。教授になんとかお願いして卒業はさせてもらったけど」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「そこからAは、ハガキ職人をキッカケにお笑い養成所の門を叩いて芸人になったんだよね? ハガキ職人と芸人とでなんか違いはあった? ネタを考えるって事には自信あったと思うんだけど?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ハガキ職人ってなにかお題があってそれに答える大喜利が基本だから。アイデアを思いついたら投稿しまくって投げっぱなしでもいいんだけど。0から作るって所がハガキ職人とは違うかな?そこはやってきてなかったから難しかったね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「でも芸人は思ったような結果が残せなかったから手を引いた。そしたら事務所からラジオの作家の仕事を紹介されて」
Image may be NSFW. Clik here to view.「元ハガキ職人にとっては、ラジオの現場で働くのは夢の様な気持ちだと思うんだけどどうだった?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「やっぱラジオの裏側見ると『普段フツーに聴いていたラジオってこんなにも人が関わっているのか』って思って感動したのを覚えてるね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「だろうね!でも今は作家も辞めちゃったんだよね? ラジオにネタを送っていた身としては、Aみたいな人に、のし上がって売れっ子になって欲しいってのが個人的にあるんだけど。どうして辞めちゃったの?」
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作家時代の話をするA
Image may be NSFW. Clik here to view.「業界トップの芸人さんや作家の方と会議とかで話せたんだけど、話せば話すほどに『こんなにポンポン面白いことが浮かんでドンドン発言できる人に自分なんかがなれるわけがない!』って感じて。それが続くうちに向いてないなって思っちゃったな。あと、やっぱり第一に社交性が必要って実感した」
Image may be NSFW. Clik here to view.「社交性って人と接しないと身につかないもんね。そもそも、そういうのがうまく出来てたらネタ投稿やってないかもね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうだね。周囲のチャラい大学生のことバカにしてたけど、本当は友達多い人のこと、めちゃくちゃ羨ましくて。そういった妬みがネタ投稿の力になってたわけだから(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それは悪いことじゃないと思うけどなぁ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「暗くていつも一人でいるような人ことこそ面白いみたいな考えあるじゃん? 全く関係ないね! ほんとに若い頃の自分にアドバイス出来るなら、『とにかく人とは接しろ』って思うなあ。」
Image may be NSFW. Clik here to view.「えー!!不器用な方が闇パワーで面白いこと出来そう気がするけどなあ……というか、そうであってくれ…」
Image may be NSFW. Clik here to view.「多分闇パワーってね、ある程度までは行きやすいんだよ。その代わり最大レベルが意外に低い。限界がすぐにきちゃう。結局人とうまくやれる人が一番強いって思ったな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕は未だに闇パワーで行動してます……ちょっと考え直すわ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ジモコロのおじさんたち、こんにちは。今日はせっかく我が家まで来てもらったので、僕が普段やっているいろいろな発酵食品の仕込みを体験してもらおうと思っています」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わーい。よろしくお願いします!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「根岸さん、いつになく高揚してるように見えるんですがどうしたんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「実は最近、趣味で発酵食品をつくりはじめたんですよ。だから、僕なんかよりもぜんぜん深いレベルで、発酵を探求している先輩に話を聞かせてもらえるのがうれしくて」
Image may be NSFW. Clik here to view.「え? そうだったんですか。いつの間に……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、発酵食品仕込んでるんだったら話は早いですね。じゃあまずは、今夜食べるパンからいきましょうか。今日つくるパンは果物の酵母パンです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「パン! これって、天然酵母のとか、そういうやつ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうそう。パンは発酵の本丸なんですよ。酵母液はそうですね、このへんのやつを使いましょう」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ん? 酵母液って?」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「酵母液っていうのは、パンをこねるときに混ぜ合わせる液体ですね。この液体のなかにいる酵母菌がパンを膨らませるんですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ほー。根岸さん知ってた?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「果物に酵母菌が付いているんですよね。密閉できる瓶のなかに果物と水を入れて数日放っておくと、だんだんシュワっとした感じで微発泡してくるんですが」
Image may be NSFW. Clik here to view.「え? なんで発泡?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「酵母菌が果物の糖分を餌にして、炭酸ガスとアルコールを発生させているからですよね。そのあたりは今いろいろと本を読みながら勉強中で」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なんなんだその知識……。僕が知ってる根岸さんじゃない!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいですね。酵母菌って気温が30〜33度くらいのときに最強になるんですけど、ベストな条件を出すと、1日に10の9乗増えます。だから今の時期、キッチンで仕事をしていると、突然『バチン!』とすごい音がして、瓶のふたが弾け飛ぶこともあるんですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わーすごいですね。僕は東京郊外のマンション住まいなのですが、うちでやってもそこまでになったことがないです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「我が家のキッチンに天然の酵母菌が棲み着いているというのもありますね。実は野生の酵母菌って空気中にもたくさんいるんですよ」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「目には見えないけど、この空気中にも酵母菌が? 漫画『もやしもん』の世界まんまですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。我が家は築60年くらいなんですが、こういう古民家の方が菌は棲みつきやすいんです。もちろん空気中には酵母菌以外の菌もたくさん飛んでいるんですけど、僕はここで酵母菌を育て続けているというのもあって、このへんを飛んでいるのはほぼ、酵母菌しかいなくなりましたね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「へえ。そういうものなんですね。おもしろいなあ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ただ、酵母菌っていうのは、たくさんある菌のなかのひとつのジャンルのようなものなんです。音楽にヘビメタとかクラシック、ヒップホップなどがあるのと一緒ですね。どちらかといえば、おしゃれなジャンルです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はあ〜、菌の世界におしゃれとかあるんだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「パンとかシードルとか、酵母菌の発酵によるアウトプットがわりとおしゃれ感ありますもんね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。でも逆におしゃれじゃない菌の世界もあって、たとえばカビですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「カビ! あの梅雨時にうっとうしいやつ⁉︎」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。実は僕の専門はそっちなんですが、カビの世界はマジでおしゃれじゃないんですよ。でもその話をするととても深い世界に入ってしまうので、今日はとりあえず置いといて、パンつくりましょ。実は僕、子どもでも簡単にパンが焼ける方法を研究してるんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「楽しみです!」
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原始的なパンを作ってみる
Image may be NSFW. Clik here to view.「早速始めましょう。まず、分量はこちらです」
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<材料>
強力粉・・・200g
酵母液・・・120g
塩・・・ひとつまみ
ハチミツ・・・大さじ2
バター・・・10g
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、シンプルな材料」
Image may be NSFW. Clik here to view.「材料はたったこれだけです。これらを全部ボウルに入れたら、全力でこねてください。こねるマシーンと化してください」
Image may be NSFW. Clik here to view.Image may be NSFW. Clik here to view.「よーしやるぞぉ!」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「ん……でもこれ、いきなり手でいっちゃっていいやつ? ちゃんと洗ってないような…」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいですよ。手には常在菌というのがいるんですが、ちょっと洗ったくらいじゃ取れませんから。この際、柿次郎さんの常在菌も混ぜ込んじゃってください」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいのね。いっちゃうよ……って、根岸さんもうやってる!?」
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なんだよその笑顔!
Image may be NSFW. Clik here to view.「いやあ、なんか楽しくなってきまして」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいですね。たまにどういうわけか『発酵』させるのが奇跡的にうまい人というのがいて、もしかしたらそういうタイプかもしれませんよ。菌に愛されるタイプの」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うれしいですね」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「ちなみにこれ、どのくらいやったらいいの? だいぶいい感じになってきた気がするけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「5〜10分くらいですね。コツは薄く広げて、折りたたむようにしてつぶすのをエンドレスにやること。最後にまるく整形したら、5時間くらいゆっくり寝かせて、生地を発酵させます。発酵するとちょっとずつ膨らんできますよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ちなみにこれはストレート法といって、もっとも原始的なパンのつくり方です。僕はライ麦と水だけでつくるサワードウというパンも好きなんだけど、詳しくは僕のブログを見てくださいね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うーむ。それにしてもこれがパンになっちゃうなんて……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「むっちゃ楽しみですね」
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ひたすら発酵、発酵、発酵・・・
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Image may be NSFW. Clik here to view.「じゃあどんどんいきますよー。次は納豆です!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、納豆〜!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「納豆⁉︎ 自分でつくれるの? まじで? おいしいの?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「スーパーで買うやつとは、違うものになりますね。野性的な味になるんですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「野生的な味! そういえば、納豆ってワラに包まれたやつがあるじゃない? あれはもしかして発酵と何か関係がある?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ありますね。ワラには大豆を納豆にする納豆菌がいるんです。ただ、今回はワラは使いません。市販の納豆を使います。じゃあ柿次郎さん。今ここに4時間くらい茹でた大豆があるので、ここにかきまぜた市販の納豆を半パックくらい入れましょう」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「え〜これ、ほんと〜? こんなので納豆になるの〜? まじかよ〜」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まじですね。僕も家でやったことありますけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あるの!? 未知の一面出しすぎでしょ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい、混ぜ合わせたらこれをジップロックに入れて、ヨーグルトメーカーに突っ込みましょう。そして45度くらいにして保温。ヨーグルトメーカーがなくても、保温できる箱があればできますね。これが明日には納豆になっています」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「むむむー。こんなのが世に知れたら、納豆が売れなくなっちゃうんじゃない? 納豆メーカーの逆鱗に触れるんじゃない?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「納豆菌は誰のものでもありませんからねえ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そういうもの? それにしてもすごい量の納豆ができそうな……」
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米麹はカンタンに作れる
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。まだまだいきますよ。次は米麹です」
Image may be NSFW. Clik here to view.「米麹?」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「お酒を仕込んだり、甘酒をつくったりするときに使うやつですね。コウジカビという、発酵に有効なカビを米に繁殖させたものです。ここにあるのは種麹といって、コウジカビだけを純粋に培養して乾燥させたもので、種麹屋さんなどでは『もやし』と呼ばれます」
Image may be NSFW. Clik here to view.「漫画『もやしもん』のもやし?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そうですね。実はこの米麹の作り方も簡単なんですよ。まずここに5時間くらい浸水させてから水を切っておいた米があります。これを全部蒸し器のなかに入れてください。じゃあ、菌に好かれてそうな根岸おじさんお願いします」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい! 光栄です」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「こんな感じでいいでしょうか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいですね。そしたら、できるだけ真っ平らにならしてください。はじっこまで詰めるようにしましょう。それができたら蒸し器のふたをして、卓上コンロで40分くらい蒸します」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わかりました!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「蒸している間は特にやることもありませんから、みんなで昼寝でもしましょうか」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいですねえ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ゆるすぎる、おじさんたちの夏休み」
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そして、40分後・・・
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Image may be NSFW. Clik here to view.「蒸しあがりましたね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお。食べるには結構かたそうな感じだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ではこれを一粒一粒ばらすようなイメージでほぐしていきましょう。これ、地味ですが、大事な作業ですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「わかりました。集中してやります」
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パラパラ……………
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パラパラ…………
Image may be NSFW. Clik here to view.「本当に地味な絵面ですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「やってみると結構楽しいですよ。だいぶほぐれたような感じがします」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。では、先ほどの種麹を全体にまぶしましょう。お米があんまり熱すぎると麹菌が死んでしまうので、種麹をまくのは、あら熱が取れてからの方がいいですね。ここからは僕がやります」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。わかりました!」
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蒸米に種麹をふりかけた状態
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再びふきんをきつくしばって保温容器へ。ペットボトルにはお湯が入っている
Image may be NSFW. Clik here to view.「麹づくりは温度管理がちょっとむずかしいんですよ。でも、そのあたりは僕のワークショップに参加してくれたら極意をお教えします。条件さえ整えてあげれば、48時間後には米麹ができあがりますよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、丸2日ですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「へええ。でも、米麹って日常生活だとあんまり馴染みがないじゃない? できあがったとして、それをどうやって使っていけばいいのかな?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いろんな使い方がありますが、そうですね、今日はお酒好きのおじさん達がいるので、どぶろくでも仕込んでみますか」
Image may be NSFW. Clik here to view.Image may be NSFW. Clik here to view.「どぶろく!?!?!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。どぶろくっていうのは、米に麹と酵母を加えて発酵させた昔ながらの濁り酒ですね。日本では、お酒づくりの免許のない人が1%以上のアルコールを発生させるのは禁じられているんですが、酒税法が制定される前は一般家庭でも普通に作られていて、今でも一部の地域では……☆*@¥+☆*@+¥#%」
Image may be NSFW. Clik here to view.「*+%$#☆*%!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「@#$%&*¥+*#$%&$@☆*」
Image may be NSFW. Clik here to view.Image may be NSFW. Clik here to view.「!!!!!!!」
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はっ!!!!
Image may be NSFW. Clik here to view.「ちょっと根岸さん! いつまで寝てるんですか! メシの前に温泉いきましょ、温泉!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「え? あれ? あれれ??? さっきどぶろくを仕込んでて……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なに寝ぼけたこと言ってるんですか? 根岸さんは米を蒸している間に爆睡してたでしょ。僕も出張続きで疲れてたからずっと寝てて、さっき目が覚めたんですよ。早く準備してくださいね。外で待ってますから」
Image may be NSFW. Clik here to view.「……???? ……え、あれ、どぶろ……????」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「いやーでもさっき、僕は夢のなかでどぶろくをね……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まだ言ってる」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ははは。夢のなかでも仕込んでるなんて、完全に発酵おじさんじゃないですか。あ、そろそろさっき仕込んだパンが焼けるんじゃないかな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「移住の成功は良きキーマンの存在、と思いましたね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ぼくも相当お世話になりましたね……。というのも、移住ってその自治体からのバックアップももちろん大事ですけど、個人レベルでの横のつながりも大事なんですよね。友達やご近所さんとだとちょっとした事で助け合えるし、何より寂しくないし。結局人と人とがつながっていれば、楽しく生きていけるような気がしますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「都会で働くより、まったりした感じでとはまた違ったつながり方や働き方ができる町なんだな〜 」
Image may be NSFW. Clik here to view.「今日はよろしくお願いします。哲学的で深遠な話を期待してます!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるべく深遠なことを言えるようにします」
Image may be NSFW. Clik here to view.「土屋さんはお茶の水女子大学を定年になって、今は神戸に住んでいるんですよね?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。岡山県から上京してきて、定年までずっと東京に住んでいたから、神戸に深いゆかりがあるわけではないんですけどね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「このインタビューが掲載される『ジモコロ』は『地元と仕事』がテーマなのですが、土屋さんが神戸に住んでいる理由はなんでしょうか。哲学者の琴線に触れる何かがあるとか……?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「出張で神戸に行ったときから、山と海に囲まれた環境が気に入ってたんです。深夜でも町が賑やかで、ケーキ屋まで開いてることにも驚いて『いつか引っ越そう!』と思ってた。でも、結局どこに住んでも同じだよね(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「えええ……。『どこに住んでも同じ』って、ジモコロ的には一番の禁句ですよ!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「引っ越してからわかったんだけど、自宅からじゃ山も海もぜんぜん見えないんですよ(笑)。それに夜に出歩くような歳でもなくなっちゃったしね。どうせ半径100メートルしか移動しないなら、どこに住んでも大して変わらない。たとえばもし、寝てる間に地球そっくりの惑星に移動したとしても、きっと気づかないでしょ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たしかにそうですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕らは『場所』にこだわるけど、自分がどこにいるのかをどうやって認識してるのかって、実は曖昧です。結局は頭のなかに地図があるだけなんじゃないでしょうか。『場所』とは一体なにか……と、こういう話にすると哲学者っぽいでしょ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『ぽい』です。気を遣ってくださってありがとうございます」
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東京大学で「疑うこと」を知った青春時代
Image may be NSFW. Clik here to view.「土屋さんは2010年までお茶の水女子大学で哲学を教えていた、生粋の哲学者ですよね。哲学には昔から興味があったんでしょうか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いや、若いころは哲学なんてぜんぜん興味なかったですね。でも最近は『中学2年生のころからニーチェ※を読んでいました』なんて学生がいる。尊敬しちゃいますよね」
※ニーチェ…ドイツの哲学者。力強い言葉でいろいろ断言するので、弱い人に人気がある。
Image may be NSFW. Clik here to view.「生徒を尊敬してどうするんですか。土屋さんは中学2年生のとき、何に興味があったんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うーん……。鉄棒かな」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ニーチェと鉄棒じゃ大違いですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「1962年、東大の文科一類に合格したときは、親に言われるがままに官僚になるつもりでした。『官僚』が何をする仕事かもわかってないのに、漠然と『官僚にさえなれば一生安泰だ』と思ってたんだよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「本当はエリート街道を進んでいく予定だったんですね。官僚が何かわかってない人はたぶん官僚になれなかったと思いますけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「東大に入学して、今はなき『駒場寮』っていう学内の寮に住んだんだけど、そこで出会ったものが僕の価値観を大きく変えることになりました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど、そこで哲学書ですね?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「マージャンです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ダメ学生じゃないですか」
Image may be NSFW. Clik here to view.「東大駒場寮は1部屋6人の、ぼろぼろの刑務所みたいなところなんだけど、本当に24時間、誰かが卓を囲んでるんですよ。寝ていても頭の上でずっとジャラジャラ鳴っている。でも誰もそれを気にしない、おおらかな空間でした。毎日、マージャンに疲れたら寝て、起きたらマージャンして……の繰り返し。当然、講義なんか出るヒマないですよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「親は、信じて東大に送り出した息子がそんなことになってるとは夢にも思わなかったでしょうね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「食事すらロクにとらないから栄養状態も悪くて、みんな痩せてたなあ。そもそも、学食の壁に張り出されてる『本日メニューの栄養素』の円グラフが全部基準値を下回ってるという……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「すごい時代だ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「でも、そのときはじめて自由ってものを知りましたね。ほら、親っていろいろと子どもに指図するでしょう? 『勉強しろ』『風呂入れ』とか。だから反動で、駒場寮時代は『2週間、禁風呂する』なんてストイックな目標を立てたりして、楽しかったですね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そういうのはストイックとは言いません」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あと、パチンコにもハマってました。あれは本当にお金と時間を浪費しますよ! いつかパチンコ屋で見た隣の席のおじさんは『なんで俺はこんなことを。この金で子どもに何か買ってやれたのに』って嘆きながら、ハンドルからは手を放さない(笑)。まあ、僕も同じ穴のムジナなんですけど」
Image may be NSFW. Clik here to view.「あれ、この記事って『多重債務者にインタビュー』でしたっけ?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「寮生活時代はそうやってどんどん堕落していったんだけれど、極めつけはドストエフスキーの小説※を読んだことです。彼の小説には饒舌で型破りで魅力的なキャラクターがたくさん出てくるんです。それに既存の価値観を完全に破壊されてしまった。『本当に官僚になるのが一番いい生き方なんだろうか?』と疑わしく思えてきたんです。官僚の道を捨てて哲学に行ったきっかけは、今思うとそこからですね」
※ドストエフスキー…ロシアの小説家。登場人物の多くが、怒りながらよくしゃべる。
Image may be NSFW. Clik here to view.「子どもを官僚にしたい親は、ドストエフスキーを読ませないようにしたほうがいいですね」
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ドストエフスキーの写真。ヒゲが生えている。
「存在と時間」の謎に取り憑かれる
Image may be NSFW. Clik here to view.「あの、そもそも『哲学』ってなんなのでしょうか」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たとえば小さな子どもが『なぜ空は青いの?』と質問します。そこで『光の拡散によって青い波長だけが見えて……』というような説明をしても、子どもは納得しないでしょう。子どもにとっては、そんな法則が成り立っている事実も空が青いのと同じくらい不思議だからです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「さらに法則が成り立っている理由を説明しても納得しないでしょうね。たぶん『なぜ?』『なぜ?』が無限に続く……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「つまり、すべての事実が明らかになったとしても残る謎があるんです。これが哲学的な問題に共通する性質だと思います」
Image may be NSFW. Clik here to view.「なるほど……。それを解き明かすのが哲学なんですね。大学時代に哲学を知った直接的なきっかけはなんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ある日、なんとなく受けた講義で先生が面白いことを言ってたんです。『ハイデガー※というすごい人が『存在と時間』という『存在とは何か?』を突き詰めた本を書いていて、何百ページもあり、しかも未完である』と。それを聞いて『存在』と『時間』という言葉の組み合わせの不思議さ、深遠さに打ちのめされちゃった。これを理解しないまま死んでいくのは絶対に損だぞと思ったんです。
※ハイデガー…ドイツの哲学者。『存在と時間』の新訳版は未完なのに全8巻もある。
Image may be NSFW. Clik here to view.「実は以前、私も『存在と時間』という言葉が気になって読んでみたことがあるんですが……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「何を言ってるのか、本当にさっぱり何一つわかりませんでした!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう。僕もさっぱりわからなかった(笑)。普通、どんなに難しい本でもやろうとしていることのだいたいの方向性はわかりますよね。たとえば『宇宙の端っこはどうなってる?』って疑問を解くのはとても難しいけど、少なくとも調べたいことの意味はわかる。でも、この哲学書が出す疑問は『存在とは何なのか?』なんだよね。何がどうなったら『存在がわかった』ことになるのか、まずそこからわからない。難しさのレベルが違うんです。そんな種類の問題があるなんて思いもしなかったから、若い僕は衝撃を受けた」
Image may be NSFW. Clik here to view.「結局、私は『存在と時間』を読むのを断念してしまいました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「僕も最初は1ページどころか1行たりとも理解できませんでした。でも『こんなに深遠で面白そうなことをわからないまま生きていくのは絶対にいやだ』と思って、必死に勉強して読み解きました。そして2年生のとき父親の反対を押しきって、哲学科に転科したんです。将来をどうしようとかは全然考えてなかったなあ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「深遠なことが気になるわりに、自分の人生の決め方は軽薄ですね。哲学科に転科して、ハイデガーはわかるようになりましたか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「全然わからなかったですね。それどころか、ガッカリしちゃった。ハイデガーに詳しい先生の話を聴いても、ハイデガーの言葉をハイデガーの言葉で言い換えてるだけで、本当に知りたい謎の答えはわからないままなんだよね」
哲学者になった理由は「仕方なく」
Image may be NSFW. Clik here to view.「結局、自分でハイデガーの問題意識を理解するまでに10年かかりました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「10年!?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「10年経ってわかったのは『今までの成果はぜんぜんムダだった』ってこと。僕がずっとやってたことは完全に見当ハズレだったんですよ。理由はあとで説明しますね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「えええええ……!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ハイデガーに没頭しているうちに、身の振り方を考えないといけない歳になっていました。大学院まで進んでしまうと、官僚はもちろん、普通の就職先もないわけです。哲学の教師くらいしか道はないんですが、僕は当時流行していた学生運動に面白半分で参加して、校舎に立てこもったりしていた。先生に歯向かったあげく『じゃあ、先生になります』なんて言えないじゃないですか(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『哲学者になるまでの話』というよりは『官僚になれなくなるまでの話』を聞いている気分です」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「仕方なく、いろんな商売に手を出しました。たとえば『競売にかけられた不動産を買って、すぐ転売すればボロ儲けなんじゃないか?』と思って裁判所に通いつめたり」
Image may be NSFW. Clik here to view.「不動産を買うお金なんかあったんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「ないですよ。競り落としてからお金を払うまでに一週間くらい猶予があるから、その間に買い手を見つければいいや、と思ってた」
Image may be NSFW. Clik here to view.「めちゃくちゃだ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「結局、そんな商売はすでにヤクザみたいな人が手を付けていて、僕がつけ入るスキなんてなかった(笑)。いよいよどうしようもないなと思っていたら、大学の先生にバッタリ会って『キミの卒論、なかなか面白かったから博士号取れば?』と言われました。『もう潰しがきかないし』ということで博士号を取って、先生になって……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「今に至るわけですね。おそろしいほどに行き当たりばったりですね」
哲学の問題に答えはない。でも、すべて解決できる。
Image may be NSFW. Clik here to view.「話を戻しますが、10年間も勉強したハイデガーの研究成果が『見当ハズレ』だったんですよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うん。その根拠はいろいろあるんだけれど、一番大きな理由は『この問題に答えは出せない』とわかったこと。問題に答えが出せないんだから、問題の研究も無意味に決まってますよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「え? それって『敗北宣言』ですか? 哲学の問題なんか、どうせ解決できないっていう……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いいえ」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「すべての哲学的問題は解決できますよ」
Image may be NSFW. Clik here to view.「すごい、言い切った……。でも、哲学の問題に答えは出せないんですよね? 矛盾してるじゃないですか」
Image may be NSFW. Clik here to view.「うん。だからね、哲学の問題は『そもそも問題がまちがっている』ということなんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「問題そのものが?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たとえば『ろうそくの火が消えたとき、その火はどこへ行くのか?』という哲学的な問題があります」
Image may be NSFW. Clik here to view.「おお、哲学っぽくてかっこいい問題ですね!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「でも、答えはないんです。それどころか、問題ですらないんです。なぜなら『言葉のルールに違反している』から。だって、火は消えたらどこか別の場所に行くわけじゃなくて、消滅するものでしょう? だから『消えたらどこに行く』って質問自体、意味がないんですよ。これはヴィトゲンシュタイン※という哲学者も似たようなことを言っているんですが」
Image may be NSFW. Clik here to view.「す、すごく常識的! 哲学者なのに!」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「僕は『なんのために生きるのか』『心とは何か』『自由とは何か』みたいな哲学的な問題は、全て『問題がまちがっている』という形で解決することができると考えています。もちろん、それをきっちり指摘するためにたくさん言葉を使って論証しないといけないし、ハイデガーの『存在とは何か』なんて問題になると、プロセスはかなり複雑になりますけどね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「だから、答えがあると思ってハイデガーを研究した10年は『見当ハズレ』だったんですね……」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そう気付いてからはヴィトゲンシュタインを中心に研究することになるんだけど、これがハイデガーとは別の意味で難しい。言葉はとてもシンプルなのに、それを言う『意図』が読めない、不思議な文章なんです」
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ヴィトゲンシュタイン『哲学探究』(岩波書店)より。短い断片の集合で成っている。
Image may be NSFW. Clik here to view.「ヴィトゲンシュタインは前置きもなしにいきなり問題を解き始めるんですね。で、読みながら自分なりに『こうすれば解けるだろう』と思っていると、先回りして反論されてしまう。『だったらこうしたら…』と思っても、さらに先回りして反論される。そのうえ、こっちが想像もしていない斬新なアイデアまで出してきて、それにも自分で反論してしまう。彼の思考の鮮やかさに魅了されました」
Image may be NSFW. Clik here to view.「武道の達人みたいですね……!」
Image may be NSFW. Clik here to view.「その面白さがわかったのは三十代後半でしたけどね」
哲学は役に立たない?
Image may be NSFW. Clik here to view.「よく『哲学は役に立たない』みたいなことを言う人がいますよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いますね。僕の読者が『ツチヤって哲学者がいるんだよ』ってお母さんに教えたらしいんですけど、返ってきた言葉が『誰でもそういう時期はあるわよね』だったらしくて(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「土屋さんはもう50年以上『そういう時期』……。失礼ですが、話を聞いているかぎり、哲学が役に立つようには感じないです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「たしかに哲学は日常的には役に立ちません。でも、日常を成り立たせているものに疑いの目を向けることができるのが哲学です」
Image may be NSFW. Clik here to view.「『哲学は役に立たない』と言う人がイメージする哲学は『難しい言葉で深遠そうなことを言っているだけ』という感じだと思います。土屋さんがやっている『哲学』は、むしろ逆に見えますね。深遠そうな言葉に疑いを向けている」
Image may be NSFW. Clik here to view.「はい。哲学は何でもかんでも、『存在』でさえも疑いますが、それはわかっていないことをわかったような気にならないためには大切なことなんです」
Image may be NSFW. Clik here to view.「みんながなんとなく信じていることってたくさんありますね。そういうときに暗黙の前提を疑う人がいないと、おかしな方向に行っちゃう気がします。疑ってはいけないものがある世界は窮屈そう」
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Image may be NSFW. Clik here to view.「そう思うと、曖昧な言葉をむやみに使ってるのは哲学者より普通の人たちのほうなんじゃないかという気がしてきました」
誤解を解くには「対話」が必要
Image may be NSFW. Clik here to view.「『哲学なんてひとりで勝手にやってればいいじゃないか』という人もいますよね。大学のような場所で哲学を学んだり教えたりすることに意味はあるのでしょうか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「哲学の祖と言われている古代ギリシアのソクラテス※は、通りがかりの人に話しかけて哲学的な議論をしていました。互いに意見が一致するところから話をスタートして、ちょっとずつ相手の間違いをあぶり出していくんですね。プラトン※は学校を作ったし、アリストテレス※も先生です。僕も、哲学をやるなら対話できる環境が必要だと思います。他人は思わぬ角度から反論してきますから」
※ソクラテス…一番有名な哲学者。レスリングも得意で、けっこうガッチリしていたらしい。
※プラトン…ソクラテスの弟子。ソクラテスを主人公にした本をたくさん書いた。
※アリストテレス…プラトンが開いた学校の元生徒。アレキサンダー大王の家庭教師もしていた。
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ラファエロ『アテナイの学堂』で議論しながら歩くプラトンとアリストテレス。ヒゲが多い。
Image may be NSFW. Clik here to view.「そのために大学は役に立つ、と。土屋さんも生徒に反論されるんですか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「もちろんです。反論されると『こんな考え方があったか』と気づけるので嬉しいですね。あのソクラテスですら、論証の過程でけっこうインチキをしていて、いまだに批判されています」
Image may be NSFW. Clik here to view.「それにしても、そのへんの人を捕まえて言い負かすって、ソクラテスはイヤな人ですよね」
Image may be NSFW. Clik here to view.「結果的に民衆の恨みを買って死刑になっちゃうほどですからね(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「そんな哲学を学ぶと、人は変わりますか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「変わりますよ。哲学科の1年生に、流行の新書を読ませて感想文を書かせると『とても参考になりました』みたいなことばかり書くんです。それが4年生くらいになると『この本は言葉の定義が曖昧でぜんぜん話にならない』『前の章と言っていることが矛盾している』と、冷静に批判できるようになっている。だから、哲学をやるとイヤな人になるかもしれない(笑)」
Image may be NSFW. Clik here to view.「いい子を育てたかったら子どもを哲学科には入れないほうがいいですね……。お聞きしたいのですが、土屋さんは哲学に飽きることはないのでしょうか?」
Image may be NSFW. Clik here to view.「まったくないですね。いまでも面白い問題を思いつくと解くのが楽しいです。」