こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。
後ろに写っているのは、熱海のキレイな海とカオスな様相を呈している建造物ですね。昭和のバブル期に多くの日本人を癒やした熱海も、時代の流れと共に変わってきています。
東日本大震災直後は観光客が激減したそうですが、2016年時点では外国人旅行客を含めて多くの人で賑わっています。特に連休のゴールデンウィークや夏休み、年末年始は世代を問わず熱海に押し寄せていて、「まさかこんなに混んでるなんて…」とトホホな状況になることも…熱海の人気は普遍的!
その人気を生んだひとつに「熱海のハリウッド化」を目指す熱海市役所 観光経済課に勤める山田久貴さんの尽力があったり…
熱海港からたった25分で行ける離島「初島」のちょうどいい魅力もあったり…ジモコロの取材を通して、熱海のポテンシャルに驚かされるばかりです。どうせ熱海をプッシュするなら、と。旅行プランに組み込むだけでグッと満足度が上がる3つの観光スポットを紹介させていただきます!
秘宝館!
熱海城!
熱海トリックアート迷宮館!
この3つの観光スポットは一連の流れでまわることができるし、極限までハードルを下げた状態で入ってみると、めちゃめちゃ楽しめることが判明しました。ぜひ熱海を訪れた際は、騙されたと思って行ってみてください。
以下、ざっくりとしたレポートです!
若者が押し寄せる「秘宝館」
漠然としたイメージしかない「秘宝館」だったんですが、実は山の上にあってロープウェイを使わないといけません。全然知らなかった…。
ロープウェイ乗り場の一階は、昭和レトロすぎてタイムスリップしたような感覚になれるゲーム筐体が並んでいます。
ちなみにロープウェイと秘宝館入場券はセットです。往復乗車券付きで1,800円。
上がってくると売店や休憩所、そして「愛錠絵馬」という恋愛スポットが目に飛び込んできます。
いやー、微笑ましいですね。毎年年末にかかっている絵馬はすべてお焚き上げするそうなんですが、取材をした2月時点でかなりの量が結ばれていました。これ、かなり儲かってるんじゃないでしょうか。
「こちとら恋愛どころじゃねーよ」「不景気で仕事がやばいんだよ」という方は、こちらの「祈願堂」で不景気をぶっ飛ばしてみてはいかがでしょうか。いちいちシュールで良いですね。
秘宝館のコピーも秀逸!
で、肝心の秘宝館のレポートなんですが…実は「写真撮影禁止、模写禁止」という徹底した情報統制が行われているんです。そこで同行した同僚のまきのと印象トークだけお届けしようと思います。
「いやー、想像以上におもしろかったね。日本唯一の秘宝館として生き残った意味が分かった。基本的にレトロでチープなんだけど、時代背景的にバカバカしさが上回ってくるというか」
「写真撮影禁止、模写禁止も納得。あと若い女の子がグループで遊びに来てるのが意外だった」
「うんうん。SNS全盛期のこの時代、写真レポートで満足することって往々にしてあるからね。その点で秘宝館は『現地に行かないと何も分からない』し、『行った人は友だちに教えたくなる』設計になっていてすごい」
「ほんとそれ。リアル脱出ゲームみたいに現地での体験を大事にしてるから、ネット上の消費に流されない強さがある」
「何十年も前からこの視点に気づいてるってヤバくない? あと、売店のおばちゃんに聞いたんだけど、運営元が後楽園ホールや東京ドームをやってる株式会社東京ドーム(正確には関連会社の株式会社アタミロープウェイ)らしいよ」
「意外すぎる」
「観光客が絶えないこともあって、いまだに施設のアップデートを繰り返してるとも言ってた。入り口の人魚は最新のモノで、白蛇神社も近々リニューアル予定だとか」
「いつの間にそんな情報仕入れてたのよ」
「恐るべし秘宝館…。熱海を訪れたら絶対行くべきスポットだと思う。ジモコロが自信をもってオススメします!」
「おっさん二人じゃなくて、女の子と行った方が絶対楽しいね」
「間違いない」
入り口にはゴールデンボンバーのサインが。この商魂たくましい熱海秘宝館には、これから老朽化を迎える観光地にとって大事なヒントがありそうです。いやー、過度な競争の中で最後のひとつになるまで生き残ることってビジネスの極意なのかもしれませんね。
●公式サイト
住所=静岡県熱海市和田浜南町8-15
電話番号=0557-83-5572
営業時間=9時30分〜17時30分
入館料=ロープウエイ往復(セット券) 1,800円
実は日本で一番新しい城「熱海城」
次は秘宝館の後、歩いて行ける距離にある「熱海城」へ。そもそも熱海に城があるなんて知らないですし、聞いたら1959年に鉄筋コンクリート造で建てられた日本で一番新しいお城だそうです。
入場料900円を支払って城に入ってみると、なぜか1階にはマジで貴重な歴史的資料が飾られてあったり…
海抜120mのジェット足湯という謎な癒やしスポットがあったり…
ゴッドハンドの異名を持つおじさんがいる「米つぶ人形の店 一風堂」も入ってます。なにがすごいのかって言うと…
写真では伝わりづらいかもしれませんが、米一粒に数十文字の漢字を筆で書いているんです。話せば長くなるというか、このお店を取材するだけで記事1本作れるぐらいの情報量だったので今回は割愛します。気になる人はぜひ寄ってみてください。
海抜160mの天守閣展望台に上れば、Googleで「熱海」画像検索したら真っ先に出てきそうな眺望を拝めます。この景色を楽しむだけでも熱海城に入る価値がありそうです。
「ほかにもいろいろあったけど、良い意味で統一感がなかったね」
「米粒に字を書くおじさんが気になって仕方がなかったけど、クイズコーナーがあったり、マッチ棒で作った城が大量に展示してあったり…好きなもの詰め込んでる感がすごかった」
「施設内の展示は好みがあると思うけど、ジェット足湯もあるし、展望台は天気が良ければ最高だし、なんだかんだで楽しめたなぁ」
「一度バブル全盛期を通った観光スポットって、今だからこそおもしろいのかもしれない」
熱海城に併設された「海の見える喫茶&レストラン」では、地味に美味いそばで腹ごしらえできます。秘宝館の後、もしくは帰り際に寄ってみてはいかがでしょうか。
●公式サイト
住所=静岡県熱海市曽我山1993
電話番号=0557-81-6206
営業時間=9時〜17時(年中無休)
駐車場代=500円(100台まで可)
入館料=大人900円、小中学生450円
リニューアルしたばかりの熱海トリックアート迷宮館
わー!タコに襲われるー!!
北極の氷の割れ目に落ちて、後ろの白熊に殺されるー!!
巨人に襲われるー!!
仕返しだー!!
「…みたいなオモシロ風写真が撮れるトリックアート迷宮館でした」
「うん。おじさん二人でも正直楽しめたね」
「実はここ熱海城の派生的なスポットで、2014年にリニューアルしたばかり。あちこちにトリックアートってあるけど、最新なだけあって工夫が施されていて満足度高い!」
「Instagramが流行ってるから、こういったオモシロ風写真が撮れるのは若者にウケるだろうね。実際、男女3人ずつの大学生グループと同じタイミングで入ったけど、気が狂いそうなほど傍目に見ていて楽しそうだった」
「俺たちにあんな青春はなかったからね」
「熱海城とのセット券を買えば合計1,500円(通常900円×2=1,800円)になるからお得です」
●公式サイト
http://atami-trickart.com/index.html
営業時間=9時〜17時(年中無休)
入館料=大人900円、小中学生450円
熱海を訪れて改めて感じたこと
旅行先として熱海を思い浮かべる瞬間…それは「1泊2日で楽しみたい」「遠出するのが面倒だから」など、アクセスの良さに起因した理由が多いのではないでしょうか。実際、今回の取材で熱海を訪れるまで僕は正直ナメていました。
いざ面白いものを探す目線で熱海をウロウロしていると、「ただ近いだけの温泉宿」「寂れた昭和の観光地」といったこれまでのイメージは払拭されて、バブル期を通った熱海のポテンシャルは2016年になってより一層際立つ存在だと認識を改めた次第です。
だって、画一的な開発が進む地方都市が増える中で、熱海の文化は圧倒的な「個性」そのものじゃないですか。メシは美味いし、温泉の泉質は間違いないし、ところどころ廃墟になってる町並みすら愛することができます。なんだろう、この感覚は…。もっと熱海に滞在したかった…。
ちなみに昨年末には熱海にもゲストハウス「guest house MARUYA」がオープンしています。最近泊まった友人いわく「3600円〜で泊まれるし、300円の朝食は向かいの干物屋で売ってる魚を焼いて食べるシステムで最高だった」とのこと。新しい文化も育まれつつあるようです。
いやー、少しでも熱海の魅力が伝わりましたでしょうか? 僕自身が触れた熱海の文化はほんの一部に過ぎなくて、視点次第でまだまだ面白い「場所」「お店」があるはずです。冒頭で伝えた通り「ハードルを下げた状態」で熱海を訪れて、自分なりの楽しみ方を見つけてみてください。それでは!
書いた人:徳谷 柿次郎
ジモコロ編集長。大阪出身の33歳。バーグハンバーグバーグではメディア事業部長という役職でお茶汲みをしている。趣味は「日本語ラップ」「漫画」「プロレス」「コーヒー」「登山」など。顎関節症、胃弱、痔持ちと食のシルクロードが地獄に陥っている。 Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916