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巨大スズメに肩乗りスズメ⁉︎ かわいい鳥グッズと野鳥観察で癒されてきた

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巨大スズメに肩乗りスズメ⁉︎ かわいい鳥グッズと野鳥観察で癒されてきた

ライターの井口エリです。今回のテーマは「野鳥」。

野鳥というとピンと来ない人もいるかもしれませんが、実はみなさんの身の周りにもたくさんいるんです。

たとえば晴れた日にベランダに降り立つスズメ。

 

これは実家のパラボラアンテナに暖を取りに来ていたスズメ(かわいい)

 

チュンチュンと鳴く鳥たちのさえずりを耳を傾けてぼんやりと眺めていると、めちゃくちゃ癒されたりしませんか? 

実は街中で耳を傾けてみると、スズメに限らず、鳥の声が飛び交っているんです。

 

株式会社 鳥の「社長」ならぬ「社鳥」のスズメ社鳥さん。言葉の節々に鳥を絡めた言い回しが小気味いい

 

今回は、そんな野鳥に癒された結果、彼らの魅力を世の中に伝えることに人生をかけたのが、「株式会社 鳥」のスズメ社鳥(しゃちょう)さん。

 

「歩く鳥百科事典」と呼んでも差し支えないほど野鳥への造詣が深く、その野鳥愛から周りの方に「とりさん」と呼ばれるほど。自他ともに認める「鳥バカ」のお人柄なんです。き、気になりすぎる……。

 

左は2017年に香川の「ことでん」とのコラボをした『toritoritori展』。右はカタネベーカリーとのコラボ展『おスズメのベーカリー』にて販売されたかるた

 

そんな彼が中心となる「株式会社 鳥」は全長12mのスズメ型のバルーン「メガ・チュン」や代々木上原のパン屋・カタネベーカリーとコラボした「かるた」の制作など、鳥を「とり」いれた製品の企画や工作ワークショップ、野鳥観察のガイドなどをおこなっているそう。

 

今回はそんなスズメ社鳥さんに野鳥の魅力を伺うべく、1日ツアーを開催していただきます!

…とその前に。

 

「あれ、スズメ社鳥さんの肩に……」

 

肩チュンbird。かわいい

 

「弊社のワークショップで作っている『肩チュンbird』です。こちら後ほど彩色いただけますよ!」

「やったー!! 肩にスズメ乗せるの夢でした。ゲームの吟遊詩人っぽいじゃないですか(吟遊詩人キャラは小鳥と語らいがちという偏見)。こんな形で叶うなんて!」

 

ということで、まずは株式会社鳥の「アとりエ」のある国立駅周辺の野鳥観察スポットを回っていきます。

普段展示などの際にも、ギャラリー周辺でお客さんと一緒にこうした「バード・チューニング」(野鳥観察という意味)もおこなっているのだそうです。野鳥に会えるかなぁ……!

 

都内でバード・チューニングを体験してみた

谷保駅近くの谷保天満宮に来ました

 

「神社って森がありますもんねー。神社って野鳥見やすいんですか?」

「結構見やすいですね。周りが全部自然だと野鳥が広がってしまうので、実はこういう神社みたいな、都会の中の自然の方が実は野鳥が見やすかったりします」

「へー! 神社をそういう野鳥視点で見たことなかった!」

「ただ一般の参拝客の方もいるので、迷惑にならないように気をつけないといけないですね。まずは神様にご挨拶をしてから、見ることにしましょう!」

 

神社に参拝しました。神社には鎮守の森と呼ばれる緑地があるので、都会の中の神社でも意外に緑があり、野鳥をはじめとした野生動物が集まってきます。

こうしている間にも、頭上からはチュンチュンとスズメの鳴き声が……!

 

「……あ、あちらにコサギがいますね」

 

コサギ。いきなりすごそうなやつにエンカウントしたぞ

「コサギ!? えっ本当だ、すごい。サギは川にいるイメージだけど、こういうところにも現れるんですね」

「水があるのかもしれないですね。コサギたちは足のつま先が黄色くてくるぶし靴下を履いたような模様になっています。それが見分けるポイントですね」

※実際近づいたら小さな池のようになっていました

 

社鳥が鳥について解説してくれます

 

社鳥が視界に入る鳥を次々に見つけてくれます。社鳥の鳥の見つけ方はまず耳をすませて、鳥の鳴き声のした方向に意識を集中して動いているものを探す……。

「あ、シジュウカラが鳴いてますね。……あそこにいます」

「え、どこですか?!」

 

いたーーー!!

 

シジュウカラ(写真撮れませんでした)

 

「シジュウカラって、メスとオスで『ネクタイ』のような首の下の模様の太さが違って、オスの方がネクタイが太いんです」

「あれはネクタイが太いからオスかなぁ…」

「そうですね。ちなみに“シジュウカラ”の名前の由来って、漢字で“四十雀”と書くのでスズメ40羽分の価値があった説や、昔の人があの鳴き声を『シジュシジュ』と聞いていた説など、いろんな説があります」

「(めちゃくちゃ詳しい……)でも双眼鏡で見つけるのって、難しいですね」

「双眼鏡のコツは覗いたまま探すんじゃなくて、野鳥を肉眼で視界に入れてから顔を動かさないように、目の前に双眼鏡を持ってくるイメージですね」

「なるほどー!」

「観察会の際は、一応双眼鏡を貸し出してるんですけど、声だけでもかなり楽しむことができますよ。こうして当たり前に声が聞こえる野生の動物って鳥の他になかなかいないですよね?」

 

強い(確信)。勇者になれと村を送り出されて、はじめのしげみにコイツがいたら断念して裸足で逃げ出すレベル。

 

そしてこの神社、何故かニワトリ(超強そう)が1羽だけじゃなく、わらわらいました。ニワトリも古くから日本人と暮らしてきたなじみの深い鳥ですね。

 

まるで恐竜みたいな爪

ニワトリの爪ってこんなにするどいのか……。鳥に対してアンテナを張っているので、いつもより細かいところが気になる。

「ハトもいますねー。普段よく見かけるやつだ」

 

街中でよく見るアイツ

 

「この鳥は『ドバト』ですね。もともと飼われていたのが野生化した鳥なので、厳密には野鳥じゃないんです。日本にもともといたハトは『キジバト』と言って、羽にオレンジ色のウロコ模様が入っているので、もう少し色鮮やかですね」

 

左がドバトで、右が日本にもともといたキジバト。比べてみると色が全然違う

 

「ドバトたちは模様がバラバラで、真っ白な鳥もいたりします」

「あ、たまに神社とかでも見かける白い鳩ってドバトだったんですね」

「今でもレースバトとかで放されたハトが群れに合流していたりします」

 

解説を聞いてると、身近でよく見かける鳥でも結構知らないことが多いんですよね。

野鳥が見れなかったら悲しいなと思っていましたが、声しか聞けなかった鳥でも社鳥の解説を聞いて想像したり、野鳥の好きそうな行動範囲を張ってみて痕跡を探るなど、「野鳥を見る」だけじゃない楽しさ、野鳥の奥深さを感じることができました

社鳥が野鳥観察会を「バード・チューニング」と呼ぶのは、見つけることだけを楽しむのではなく、野鳥を探そうとアンテナを傾ける行為の楽しさも伝えたいからなのだそうです。なるほどなぁ……!

 

肩チュンbirdの彩色ワークショップ体験

スズメ社鳥とスズメ先生の長年の相棒感よ

さて、野鳥観察のあとはワークショップを体験させていただきます。実物の1/3サイズのスズメフィギュア「肩チュンbird」に彩色を施します。

 

本物のはく製である「スズメ先生」をお手本に、ベースが紙粘土で作られた「肩チュンbird」に色を塗っていきます。塗り方は詳しく教えてくれるので、不器用な人やお子さんでも安心して参加できます。

 

スズメ社鳥が羽や部位について解説してくれるのに合わせて、鳥の色をつける作業は楽しい。

 

世界にひとつだけの、自分で彩色した「肩チュンbird」ができました。ちなみに「肩チュンbird」には磁石がついていて、洋服に小さな缶バッチをつけることで固定しています。これが意外としっかりと安定感があります。

他の余計な事を考えない、目の前の鳥さんに向き合う作業。なんか、こういう時間ってすごく尊いかも……。

 

「ビッグ・チュン」に乗ってみた

そして株式会社鳥さんの「とり」くみで私が気になっていた、2mほどのバルーンの「ビッグ・チュン」を膨らましていただきました。

 

私は「モフモフでかわいいスズメに飛びつきたい!」という夢を持っていたのですが、「ビッグチュン」であっさり叶っちゃったな。

 

膨らむところもどうぞ。

 

後頭部です

バルーンのチュンは「ビッグ・チュン」と「メガ・チュン」の2種類なのですが、これは遊具として作っているものなので、実際に触ったり乗ったりして遊ぶことができます。

ビッグ・チュンに入った感想は「あたたかい」。中に入ると空気の壁であたたかさを感じるのは、自分の羽を膨らませることでダウンジャケットみたいに空気の壁を作って断熱する、リアルスズメさんのようです。

 

「株式会社鳥」はどんな会社なの?

さて、そんな鳥に関するいろいろなことをしている株式会社鳥とは。スズメ社鳥とはどんな方なのか。改めて社鳥に話を伺っていきます。

 

「いろいろ体験させていただいたのですが、『株式会社 鳥』とは実際には何をしている会社なのでしょうか?」

「弊社は野鳥に関することはなんでもやっ『とり』ます。野鳥のグッズを作ることが一番多いですかね。あと工作のワークショップをしたり、先ほどのビッグチュンに乗ってみたり。野鳥観察会のガイドも最近は多いですね」

「いろんなことをやってるんですね」

「研究者や、ずっと公園など現場で働いている方に比べると、知識も感度も高くはないので、自分は野鳥のことを多くの人にわかりやすく伝えるのが、一番いいんじゃないかなと。だから肩書きとしては『野鳥プレゼンター』と言っ『とり』ます」

「たしかに社鳥の立ち位置は研究者でもなく、鳥ファンでもなく独特ですよね」

「以前、編集者の方にも『スズメ社鳥は野鳥の編集者なのかもしれないですね』と言われて」

「たしかに、わかりやすく発信するというのは編集者やライターとも通じるかも。しかも鳥グッズのデザインもやっているという」

「そうですね。ただ野鳥がメインなので、人に飼われている鳥のグッズ制作は基本的にはやっていないんです」

「やってないのには、何か理由が……?」

『かわいい鳥グッズを作る』ことよりも『野鳥の魅力を伝える』ことを大切にしたいなと思っているんですよね。商品開発も、野鳥観察会も、ワークショップも、会社として行なっていることは、野鳥を楽しむ文化を広げるためにしているんですよ」

 

野鳥に関するデザイン業務

「例えば、これがうちで作った商品なんですけど」

「かわいい! 冠海雀(カンムリウミスズメ)せんべい」

「カンムリウミスズメという鳥のお菓子ですね。ハトより小さいサイズの鳥なんですけど、絶滅の危機にある鳥のうちのひとつなんです」

「カンムリウミスズメはなぜ数が少なくなっちゃったんですか」

「もともと数自体が少ない鳥で、いろんな要因が考えられているんですけどね。漁師の魚の網に引っかかってしまったり、マイクロプラスチックなどの海ごみの影響があります。だからお菓子を包む梱包材もなるべくプラスチックを減らそうということで、薄紙にしました」

 

ペーパークラフト作家さんによるペーパークラフトもついてきます! 知ることができるし、かわいいし。

 

「うちだけで保護事業をやるのはなかなか難しいので、こうした商品の収益の一部で『(公財)野鳥の会』の保護事業を支援して、野鳥のためになることに使われる予定です」

「お菓子はかわいいし、なおかつ野鳥のためになるのってすごくいいですね」

 

野鳥の存在に救われたスズメ社鳥

スズメ社鳥の彩色したいろんな野鳥の彩色例。鳥ごとに土台の形も作り変えて、月に100チュンぐらい制作するのだそうです

 

「今日一日同行してみて思ったんですけど、スズメ社鳥って野鳥のことを好きなだけでなく、『野鳥のために』という視点を持ってますよね。あとは鳥のことを何か褒めると、社鳥が『でしょう』って自分のことのようにドヤ顔するんですよね(笑)。本当に鳥愛を感じました」

「最近、知人に鳥への想いについて語ったんですよ。『野鳥って自由だし、自分の力で街の中を生き抜いてる強さを感じるから尊敬している』と。そうしたら『スズメ社鳥は野鳥を尊鳥(そんちょう)してるんだね』と言っていただけて」

「“尊鳥”! 社鳥も周りの方も言葉回しの上手い方が多いですねー!」

「『守ろう』とか『保護』と言うと、ちょっと上からな感じがしてしまうんですよ。だから野鳥たちの生き抜く力を見習いつつ、『尊鳥』して野鳥に寄り添っていきたいんですよね。野鳥の存在自体に、ありがたいと思っています。本当に心の中で手を合わせている感じですね。毎日元気頂いていますと」

(存在しているだけで尊い、『推し』と一緒だ……!)

※「推し」とは…特に好きな人物やキャラクターのこと。

「自分自身、鬱で悩んだ時期に野鳥の存在に救われていたんです。会社でつらいことがあった時も、窓の外にいる鳥の姿や鳴き声は入ってくる。野鳥たちは僕らと別のルールで生きているわけですよね。その事実が自分にとってはありがたいなと思ったんです」

「自分が大変な時に、『推し』に自分の大変さを理解してほしいわけではなく、『推し』の世界で頑張って輝いていてほしい。それが自分の勇気になるという時は確かにあるから……わかる」

「最近は物理的や心理的にパーソナルなスペースに侵入されちゃうことって、自分ではコントロールしづらいなと感じていて。SNSとかでも『別に見る気なかったのにあの人の近況を知っちゃった』みたいなことが起こりがち

「SNS開くと勝手に情報入って来ちゃうますもんね」

「ですよね。でも野鳥たちはずっとマイペースで。その上で天候とか大きな自然の流れというものにはしっかり付き添って生きている。鳥のそういうところすごく見習いたいなって」

甘党のヒヨドリも、市街地ではよく見かけるおなじみの鳥です

 

「あるがままに生きる野鳥の姿に励まされているんですね」

「会社員時代は野鳥が好きでも『それで絶対に食っていく』という必死さはなかったんです。ずっとこのまま会社員として生きていくのだなとぼんやり思っていました。ただ、鬱の経験がある意味、今の仕事で頑張っていこうという後押しになったんです」

「文字通り社鳥は野鳥に救われたのか……!」

「はい。自分が自然にやりたいこと・エネルギーが出る事で食べていくほうにシフトしていこうとなりました」

「野鳥と共に生きることを選択したんですね」

会社以外でも別の場所、例えば学校での問題とも繋がるところがあるんですよ。学校には行きたくない子でも、野鳥観察会は行ってみたいと思ってくれたら、そこで居場所を見つけられるんじゃないかなとか」

「外に場所があるのはとてもいいですねー!」

「うちの会社としての最終目標は保育園とか幼稚園を作れたらいいなと思っているんです」

「野鳥とともに育つ保育園!」

「そうなんです。小さい頃から人間社会以外の世界観を知ることが、のちのち何か生かされるんじゃないかなと。だから、野鳥を通じてそういう多様性を提案できたらなと思っています」

 

野鳥の存在に救われ、野鳥の魅力や情報を発信することを通じて、野鳥のためにも繋がるような働き方を目指すスズメ社鳥さん。

バード・チューニングやワークショップを通して、童心に返って楽しむことができたほか、気持ちがすごく落ち着きました。耳を開いて鳥の声を聞いて、鳥と向き合って彩色を行うことで、余計なことを考えることなくもくもくと集中する。「瞑想」とかそういうものに近いのかもしれないなとも思いました。

 

そんな「株式会社 鳥」のスズメ社鳥さんですが、3/21~30にかけて自由が丘のDiginner Gallery Workshopで展示を行うほか、5月からは植物観察家の鈴木純さんと共に親子向けのピクニック観察会も行うのだとか。

そして株式会社鳥では、一緒に「とり」くむ「ヒナ社員」も募集中だそうですよ〜〜!

興味を持った方はぜひ!


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