こんにちはー! ライターの社領エミです!
いや〜、寒いですね〜〜〜!!! ブルブル!
40年に一度の寒波が訪れたこのクソ寒い冬、みなさんいかがお過ごしですか?
私はと言いますと、この寒い時期限定のめちゃめちゃ美味いアレを心ゆくまま堪能して、楽しい冬を過ごしております!
それは……
そう、焼き芋で〜す!
私、寒い日に食べる焼き芋めちゃめちゃ好きなんですよ!
でも最近、気になってることがありまして……。
これ!
焼き芋屋さんって夏はやってんのか、めっちゃ気になりません……!?
冬が終わるとパタッと姿を消す焼き芋屋さんですが、夏場は一体何を……?
夏場だけある職業といえば、金魚すくいやたこ焼きのようなテキ屋、あるいは海の家とかですが、そういう所で働いてるんでしょうか。はたまた、普通にアルバイト?
いや、あるいは働いてなかったりして……? もしかして焼き芋屋さんって、冬の稼ぎだけで1年中過ごせるスゴイ職業だったりして……!?
気になる〜〜〜!!!
というわけで、焼き芋屋さんの夏場の裏の顔を、実際に聞いてみることにしました!
京都の焼き芋屋さんに話を聞こう!
はい!こちら、「松屋の蜜いも」の松井さんです!
松屋さんは京都市内を中心に商いをされており、以前から私も客としてお世話になっています。
焼き芋大好きな私、この冬は数度こちらで焼き芋を頂いてるんですが……、
この松屋さんの焼き芋、ほんっとに、めっちゃくちゃおいしいんですよ……!
見てください、このねっとり感!
普通の焼き芋って、割ったら栗のように黄色くほくほくした感じだと思うんですが、松屋さんは特別に甘い品種のさつま芋を使用しているので、蜜が絡んでねっとり甘くて超なめらか。
▲食べていると、手にポタポタと蜜がこぼれ落ちます……! 贅沢!
普通の焼き芋って冷めたらパサパサして味も落ちちゃうと思うんですが、このお芋はとにかく蜜でしっとりしているため、冷めても超おいしい! 翌日には、まるで芋ようかんのようなずっしりとした食感が味わえちゃうんです……!
100回おかわり……ッ!
もちろんそんな時間は無いので、早速こちらの松井さんに話を聞いてみたいと思います!
なぜ焼き芋屋を始めた?『伝説の芋師』との出会い
「松井さんは、どうして焼き芋屋をやろうと思ったんですか?」
「う~ん、実は焼き芋屋は副業なんよ。本業の合間に何かしよっかなーと思って、『そういえば大学のとき、焼き芋屋のバイトでめちゃくちゃ儲けたなぁ』と思い出して、始めてみたわけよ。焼き芋カー 一式、全部ネットオークションで揃えて」
「これネットオークションなんですか!?」
▲その時購入した焼き芋カー。車から釜からスピーカーから、全て込みで30万円だったとか。や、安ーッ!
「今の時代、ネットでこんなものまで買えるんだ……。でも、のんびり焼き芋を売って暮らすなんて、最高に楽しそうで羨ましい」
「いや、のんびりどころか、かなり苦労したよ。昔はちょっと田舎の方に行ったらすぐ人だかりができて、アホみたいに売れた。だから同じように行ってみたんやけど……全く売れへんねん。『石焼〜き芋〜』って音出しながら回っても、シーン……や。なんでやと思う?」
「うーん……あ、お腹がすいてないから!?」
「そう! 昔は駄菓子屋くらいしかなくて、子供達のお腹がすいてた。けど、今はなんでも売ってるコンビニがどこにでもあるから、みんな腹一杯で焼き芋なんかいらんねん!」
「えー!大変だ!」
「それでかなり困ってたんやけど、ある時俺は、『伝説の芋師』に出会ったんや」
「で、伝説の芋師……!?」
「はて……?」
「市場では有名な、芋専門の師匠や。とにかく焼き芋を売るのがうまいねん! もともと噂は聞いてたんやけど、その人がたまたま俺に声をかけてくれて。で、芋の売り方をいろいろ伝授してもらって、芋の品種も美味しいやつに変えた」
「確かに、松屋の芋は蜜がたっぷりでネットリしてて最高なんですよね……!」
「せやろ。そうやって、ちょっとずつ改良していったら、だんだん軌道に乗って……今に至るわけ」
「焼き芋にもコツが色々あるんですねぇ。どういうことが大事なんですか?」
「色々細かい事あるよ。まず、売る場所や焼き方はもちろんやし、車ひとつでも見た目の雰囲気とか、ちょうちんの下げ方とか、笛とか音とか、大事なことがいっぱいある。
あと『匂い』ね。たまに、わざと匂い出すんよ。釜の底に芋を擦り付けながら潰すと、いい匂いがぶわ〜っと出る!」
「えー!わざと匂いをだす!」
「焼き鳥屋でもそうやろ、あのええ匂いで食べたくなるやろ。そうやって、お客さんの食欲をそそる方法が色々あるわけ」
▲この石の下の鉄板に芋を擦り付けると、あたりに芋の匂いが立ち込めるそう。私が大好きなあの匂い……!
「焼き芋って1日どのくらい売れるもんなんですか?」
「多い時は十万円以上かなぁ」
「1日で!? すごいなぁ! 普通のサラリーマンより全然稼いでる!」
「俺より稼いでる人なんぼでもおるけどな。でも、伝説の芋師はもっとすごいで! 1日30万円とかや!」
「1ヶ月で私の年収軽く超えるやん! さすが、伝説の芋師……!」
焼き芋屋さんって、夏は何をしているの?
「実は今回、松屋さんに話しかけたのには理由がありまして。焼き芋屋さんって、夏の間は何をして暮らしてるの?ってことを聞きたかったんです。さっき、焼き芋は副業であって、本業は別にあるって言ってましたけど……」
「う〜ん……。俺はほかの焼き芋屋とちょっと違うと思うけど、ええんかなぁ。
俺、焼き芋のオフシーズンは海外行ってんねん」
「か、海外? バカンスですか!?」
「違う違う。ブラックジャックとか、ポーカーってわかる?
俺はポーカープレイヤー。
一年のうち半年くらいは、ラスベガスとかでポーカーしてるねん。
だから、夏は本業のポーカーやって、冬は副業として焼き芋を売ってるって感じやな」
「ど、どういうこと〜〜〜!?」
▲この全く普通の焼き芋屋のおじさんが、ポーカープレイヤー!?
「ポーカーも焼き芋屋も、どっちも最近はじめてんけどな。その前は、富士ゼロックスで普通に営業してたで」
「め、めちゃめちゃ大手じゃないですか!」
「14年前、48歳で早期退職して、ずっとなりたかったカジノプロの道に進んでん。焼き芋屋を始めたんはそのあと、5〜6年前くらいになるかな」
「ポーカー師の方が先なんや……!」
「せやで、それが本業やからな」
ポーカー=スポーツ!? 仕事としての「ポーカー」って?
「で、夏場はベガスでポーカーしてるんですよね……?」
「そうやで。毎年5月〜7月は、定年した嫁とベガスでポーカーや!」
「ど、どういうこと〜!? ポーカー=仕事ってこと……!?」
「そやで。今は一年のうち、多いときは7ヶ月くらい海外に滞在して仕事してるよ。日本にはカジノ無いから、ベガスとかマカオ、韓国でポーカーしてる」
「ちょ、ちょっと待って、全然想像がつかん!! もちろん、収入源としてポーカーをしてるってことですよね?」
「もちろんや! 海外に滞在するだけでも、宿泊費、レンタカー代、食費……生活費諸々で、毎月20〜30万円かかるねんで。それ以上稼がんと保たへんわ!」
「え! 月にどのくらい稼いでるんですか?」
「俺は大したことないよ。年間数百万ってとこやな」
「賭け事でそんなに〜〜!?!? 儲かるの!?」
「そりゃあ、仕事やから儲けな! 儲けてる人は何千万、何十億と儲けてるよ!
日本ではギャンブルって印象強いけど、ポーカーはスポーツやねんで。プロスポーツで一番賞金が高いのはポーカー。
世界ではめちゃめちゃ有名な職業やし、アメリカなんかでは『子供達のなりたいスポーツ選手』の3本の指に入るほど人気やねんで」
「本当に……!? でも、ギャンブルですよね?」
「いやいや、めちゃめちゃ競技性高いよ! ポーカーは確率と計算のゲーム。運はもちろんやけど、頭脳と豊富な経験に、屈強な精神力も必要になってくる、れっきとしたマインドスポーツや」
「ず、頭脳……。例えば、囲碁とか将棋って計算さえできれば勝てる感じがするんですが、いわゆるカジノでやる事はほぼ『運』なイメージでした」
「将棋だって、棋士同士の実力がある程度拮抗してたら運の要素もあるやろ。ポーカーも同じや。
何より、ポーカーで一番大事なのは『常に何が起こっても冷静に対処すること』。頭が真っ白になったらなんぼでも負ける。ゴルフもテニスも、スポーツならなんだってそうやろ。
人から見たらギャンブルで、リスクが高い仕事と思われるかもしれへんけど、俺は一番リスクが無いと思ってポーカー師を選んだよ」
「ポーカー」と「焼き芋屋さん」 、好きな事を生業に
「ちなみにほかの焼き芋屋さんって、夏場は何をしてるもんなんでしょうか」
「わからんなぁ……。氷売りやってる人多いと思うけどなぁ、人それぞれ色んなことやってるんちゃう?」
「松井さんは、どうして『ポーカー師』と『焼き芋屋』を選んだんですか?」
「なんでやろうなぁ。どっちも性に合ってるねんな。
ポーカーは、ヒリヒリした雰囲気がおもろい。それなりに年々レベルアップして、だんだん勝てるようになって、収入も上がってきたし。
焼き芋は、人と話もできて収入もあるし、気晴らしにもなるしなぁ」
「どっちも全く違う職業だけど、補い合っててバランスが良いのかもしれないですね」
「せやなぁ。で、どっちも自分の力次第やろ。やったらやっただけお金もらえるやん。何かするならお金であったり評価であったり、その分の見返りがある方が絶対楽しいやん」
「定年まで働いて年金暮らしもええかもしれへんけど、家でじーっとして起きてテレビばっかり見て好きなことして……そのまま60から90までずっと暮らすなんて、おもろないやん!
好きな事してそれが生業になる、今が一番楽しいよ。
どっちも、嫌になる日まで続ける!嫌にならへんと思うけどな。」
結論
というわけで、焼き芋屋さんは夏場何やってるのかというと……
ということでした!
しかし、たまたま取材した焼き芋屋さんが「ポーカープレイヤー」って、そんなことある〜!?
いやいや、もしかしたらそんなに珍しい話じゃないのかもしれません。私たちが知らないだけで、夏場にもっとおかしな仕事をしている焼き芋屋さんがいるのかも……?
あなたの街の焼き芋屋さんは、夏場はどんなことを生業にしているのでしょうか。もし見かけたら、話しかけてみるのも良いかもしれません!
それでは!
60歳の時の私は何をしているのか、好きな事を生業として生きていけているのだろうか……松井さんと話して将来がすこし楽しみになった、社領エミでした!
撮影:ニシキドアヤト(@art_0214)
書いた人:社領エミ
1990年兵庫県生まれ。Webを中心におもしろい記事を書こうと日々奮闘しているフリーのライター。女性が脱ぐとなぜ面白くならないのかいつも悩んでいる。
Twitter:emicha4649