キレイな女将さんは、好きですか?
ジモコロ初の福井県取材の前乗り。直感でふらっと立ち寄った小料理屋「のちのち」にお邪魔したんですが、キレイな女将さんはそりゃもう大好きだし、出てくる料理がめちゃめちゃ美味しくてこんな顔になりました。 福井駅に来たら絶対寄ってください。
あ、どうも、編集長の柿次郎です。
その土地の美味しい食べ物に出会えるのは、地方取材の特権。地の物とお酒はペアーズばりのマッチング精度なんですが、この日の体験はちょっと想像を超えてきました。
東京から新幹線で片道約3時間半。福井県のポテンシャルそのものと出会ってしまった…といえば大袈裟かもしれませんが、2日連続でこの小料理屋に通ってしまったのは事実です。
僕の美味しんぼトリガーを引いたのはこちら!
世界初! 炭酸割専用の純米大吟醸「SUMMER GODDESS」(真名鶴酒造)
「日本酒のソーダ割…?」
「普通、冷やして飲むか熱燗で飲むんじゃないの…?」
皆さんの疑問がありありと浮かんできますが、実はめっちゃ美味いんです。きっかけは宮城県の酒屋さん。「兄ちゃん、辛口の日本酒はソーダ割でも美味いんだぜ?」と粋な語り口でその魅力を教えてくれました。
この日も、女将さんに「ソーダ割でも美味しい辛口の日本酒はありますか?」と調子こいた感じの訳知り顔で聞いたら、「ソーダ割専用の日本酒がありますよ」と即答されたわけです。
さわやかな口当たりと、ほのかな酸味と甘味。みんな大好きハイボールの日本酒版といえばイメージがつくかもしれません。日本酒が苦手な若者ウケも間違いなし。
どんな味付けの料理も、喉越しのいい炭酸がスカッとリセットしてくれます。ああ、美味い。なんだよこれ。気づいたら2日間で計10杯飲んでました。
気になるのは、なぜソーダ割専用の日本酒を作ったのか?
水着と津波が描かれたラベルと「SUMMER GODDESS」の意味とは?
気になるーー!!
というわけで、アポなしのまま真名鶴酒造のある福井県大野市にやってきました。過去にこんな記事も作っていて、日本で一番水がキレイな町です。
ジモコロは、現地入りしてから行き当たりばったりで企画を考えて取材しています。今回は前乗りの小料理屋から発展した珍しいパターンで!
真名鶴酒造の杜氏・泉さんに話を聞いた
アポなしで伺ったにも関わらず、取材を快く受けてくださった真名鶴酒造・杜氏の泉恵介(いずみけいすけ)さん。尊敬する人はジョン・レノンとスティーブ・ジョブズ。お店にはあの中田英寿も訪れています。
「突然押しかけてすみません。福井市の小料理屋『のちのち』で飲んだSUMMER GODDESSのソーダ割が、あまりにも美味しすぎて来ちゃいました」
「それはそれは(笑)。わざわざありがとうございます」
「個人的な興味もあるんですが、これは普段日本酒を飲まない若者こそ絶対好きになると思ったんです」
「まさにSUMMER GODDESSは、日本酒を飲まない若者に楽しんでもらいたくて作ったんですよ。酸味や甘味など、日本酒慣れせずとも美味しく感じられるよう飲みやすさにこだわりました」
「なるほど! ソーダで割ることによってビールやハイボールと同じ感覚で楽しめる。料理を選ばないのも素敵だなと思いました」
「そうでしょう。もしよろしければ、そちらに試飲用のSUMMER GODDESSが冷やしてあるので、好きにやってください(笑)」
「いいんですか! やったー! ではお言葉に甘えて……」
「ぐびっ…」
「あー、やっぱり美味いなぁ。ソーダで割らなくてもスッキリしてますね。日本酒って飲むと、喉の奥がアツくなっちゃうじゃないですか。SUMMER GODDESSにはそれがないというか」
「普段日本酒を作るときは黄麹(きこうじ)を使うんですが、SUMMER GODDESSでは白麹(しろこうじ)を使っています。そうするとクエン酸が出てほどよい酸味が生まれるんですね」
「なるほど! だから、柑橘系の風味があるのか」
日本酒を飲まない若者にも愛される新しいカタチ
おじさんの感想ばかり伝えても仕方がないため、前日に声をかけていた地元出身の女の子二人に飲んでもらいました。ちなみに二人は普段日本酒を飲まないのだとか。
「美味しいー! スッキリしてて日本酒っぽくない!」
「これが日本酒ですか?!甘みがあって口当たりも軽い!」
「普段から日本酒を飲まない方に、そう言ってもらえるのは嬉しいですね」
「次はソーダ割でぜひ 」
特別にソーダを用意していただいて、ソーダ割も試飲させてもらいました。氷を入れて、SUMMER GODDESSとソーダを1:1の割合で作るのがオススメとのこと。
「初めて飲む日本酒のソーダ割はどうですか?」
「さらに飲みやすいですね!やっぱり日本酒とは思えないなぁ」
「正直日本酒には悪酔いするイメージがありました。でも、これはスッキリしてるから何杯でも飲めちゃいそうです」
「そうそう。ついつい飲みすぎちゃうから、こういうお酒を飲ませてくる男には注意した方がいいです」
「あなたのことですよね」
「(ほんとだ…!)」
「でもソーダで割ることで、アルコール度数が15度から7度に下がります。飲みすぎや二日酔い防止にもなるんですよ」
「それは大事な視点ですね。お酒に飲まれないためには知識も必要というか。そもそも、若者が日本酒を飲まないのって、出会い方に問題があると思っていて。こういう飲み方を教えてくれる大人が近くにいれば、日本酒ファンも増えるはず。せっかくなので過去のジモコロの日本酒記事も合わせてどうぞ」
「5億回読みます!」
「そんなに?」
写真左がリンゴ酸酵母を使った珍しい日本酒「NEWTON 77 (ニュートン)」。写真右が柑橘系の酸味と上品な甘みが特徴的な「奏雨(そう)」。
2つの原酒を掛け合わせて生まれたのが「SUMMER GODDESS」なんだとか。
泉さん曰く「リンゴ酸酵母で醸(かも)すと柔らかくて、さわやかな口当たりになります。フルーティーな香りもリンゴ酸ならでは。また、ソーダで割っても薄くならないよう独自の製法で作っています」とのこと。
ここまで話を聞いて、普通の杜氏とは全然違った感性で日本酒づくりに取り組んでいるのが伝わってきました。
固定観念をぶっ壊すロックな日本酒作り
取材中にも関わらず、どんどんお酒が進んでいく。
「いやー、改めて美味しいです。泉さんの日本酒造りは、どこか型破りな発想から生まれている印象を受けました」
「実は日本酒を飲む人は、日本の飲酒人口の7%しかいないと言われているんですよ」
「割合でいえばかなり少ないですね」
「そんな狭い市場で戦っていては、日本酒のこれ以上の発展はありえないと思っています。だから私はこれまで日本酒を飲まなかった層にも、積極的にアプローチをしていきたい。『SUMMER GODDESS』もそのひとつです」
「ソーダ割専用に振り切ったのもユニークですよね」
「ありがとうございます。パッケージも日本酒のデザイナーに依頼すると、既存のイメージに寄ってしまう…筆字で酒名がドンっ!みたいな。だから自分自身でデザインしています(笑)」
「え、泉さんが手がけたんですか? たしかにセクシーな水着と津波の組み合わせは目を惹きますね」
「画像素材サイト『PIXTA』で見つけて組み合わせました」
「はは〜。なんでも自分で作っちゃう姿勢は、まさにクリエイターですね」
- アーティスト: SOIL&“PIMP”SESSIONS
- 出版社/メーカー:ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2005/07/21
- メディア: CD
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (47件) を見る
「 ロックといえば、ネーミングも日本酒っぽくないですよね。僕も大好きなジャズバンドのSOIL & "PIMP" SESSIONSの『Summer Godess』という曲と同じで気になりました」
「ネーミング自体は、お酒のテイストに合うものを探していたら閃いたんです。だから曲名と被ったのは偶然なんです(笑)」
「なんと! メンバーの社長さんに連絡したら『絡みたい!ライブ会場で別注ジャケで売りたいわー』と良い反応がありました。社長さんも福井県出身なんですよね」
「おお!それはぜひぜひ。一緒に作れると楽しいですね」
※後日2人を引き合わせたら意気投合。夏に向けてコラボ日本酒「SUMMER GODDESS」が生まれるかもしれません…!
取材を振り返って
ふらっと立ち寄った小料理屋で偶然出会った「SUMMER GODDESS」。調べていくと、そこには今の日本酒のイメージを覆そうとする泉さんのアツい想いがありました。
最後に泉さんは、「日本酒業界には『日本酒はこうあるべき』という固定観念がある。でも僕は日本酒もビールみたいにバリエーションに富んでいてもいいと思っているからこそ、市場を広げるような新しい日本酒を作っていきたい」と語ってくれました。
炭酸割専用純米吟醸 SUMMER GODDESS - 越前大野の地酒 清酒 真名鶴
ちなみにジモコロ編集長イチ推しの「SUMMER GODDESS」は夏に限らず、年間を通して公式HPから購入可能。ぜひ一度飲んでみてください。
後日、初めて日本酒を飲んだ地元の女の子からメッセージが届きました。
地元の酒蔵に初めて訪れて、日本酒の美味しさを知る。彼女が同世代に「この日本酒がおすすめ!」と伝えていけば、きっと泉さんも大喜びでしょう。
それではー!
企画・編集:徳谷 柿次郎
株式会社Huuuu代表取締役。ジモコロ編集長として全国47都道府県を取材したり、ローカル領域で編集してます。趣味→ヒップホップ / 温泉 / カレー / コーヒー / 民俗学など Twitter:@kakijiro / Facebook:kakijiro916
写真:小林 直博
長野県奥信濃発のフリーペーパー『鶴と亀』で編集者兼フォトグラファーをやっている。1991年生まれ。ばあちゃん子。生まれ育った長野県飯山市を拠点に、奥信濃らしい生き方を目指し活動中。
書いた人:菊地誠
自社メディア事業を手がける西新宿のデジタルマーケティング企業、株式会社キュービックのPR担当兼ライター。タイ人と2人で暮らしています。タイでドリアンの畑を作成中。動物とぬか漬けが好き。Facebook:菊地 誠 / Twitter:@yutorizuke / 所属:株式会社キュービック