こんにちは! ジモコロ副編集長のギャラクシーです。
今日は編集長の柿次郎と共に、『金時山』に登るため、神奈川県箱根町に来ております。
なぜなら―
この記事が公開される5月11日は、ジモコロがこの世に産声を上げてちょうど2年の記念日なのです。
というわけで今回は2年間のことを振り返り、そして3年目のジモコロを考えるために、山行で身を引き締めてみます!
それがなぜ金時山なのか……というのは、ちょっと特殊な事情があるので次項で説明しましょう。
金時山とマサカリ型の標柱
「今回僕らが登る金時山って、どういう山なんですか?」
「金時山は、箱根山の北西部に位置する標高1,212mの山……と言うより、昔話の金太郎が熊と相撲をした『足柄山』と言えばわかりやすいですね」
※ちなみに『足柄山』という山は存在していません。金時山から足柄山地にかけての山域の総称を『足柄山』と呼びます。
「へぇ、金太郎の……。ここを登りながらジモコロの2年間を振り返ろうってことですね。関東近郊に山は色々ありますけど、金時山を選んだ理由は……?」
「金時山って、神奈川県と静岡県の境にあるから、長い間、頂上がどっちの県にあるのか、フワっとしてたんですよ。実際は、神奈川県の箱根町に山頂が位置してるんですけど、わかりにくかったという」
「まあ、地面に矢印があって『ここです!』って書いてるわけじゃないですもんね」
「そこで、『ここが山頂です!』というのがわかりやすいように、本日、箱根町をあげて、マサカリ型の山頂標柱を立てるそうなんです。そんな瞬間、見たことあります?」
「登山は好きなので山頂に『○○山 山頂』っていう柱はたくさん見てきましたけど、マサカリ型なんて見たことないですね。しかも立てる瞬間!」
「ちなみにこの標柱、制作費に数十万円かかってるんだって! 特注品ですよ!」
出発前に、標柱プロジェクトに関わったみなさんが集合して、写真を一枚。
発起人の『金時山を愛する会』のメンバーや、町長さん、議員さんなど。すごい大人数が関わってました!
そんな標柱をたった今から頂上に運ぶと聞けば、なるほど、それはぜひ見学してみたい! でも重さが60kgもあるそうだから、頂上まで持っていく人は大変なんだろうなぁ。
ご苦労様でーす!
ってワシらが担ぐんか~~い!
「なんでこんな重いモン背負わなきゃいけないんですかー!」
「メディア運営って、楽しいことはもちろん、苦しいことだって多いでしょ? 三年目を前に、重い荷物を背負いながら、一歩一歩登っていきましょうってことですよ!」
「今の状況に『楽しいこと』は無いですけどね」
「僕だって苦しいんだから我慢してよ!」
ジモコロ黎明期
60kgの角ばった塊は、山道で揺れるたびに肩にグリグリ当たってめちゃめちゃ痛い!
「ジモコロが誕生した時、僕はまだ関わってないどころか警備員のバイトをやってたんですが、そもそもどういう経緯で始まったメディアなんですか?」
「運営会社であるイーアイデムさんが『メディアをやりたい』って声をかけてくれたのがきっかけですね。担当の人が、当時僕が所属してた会社(バーグハンバーグバーグ)のファンだったらしくて」
「へ~、柿次郎さんは、どこに魅力を感じて引き受けることにしたんでしょう? お金ですか?」
「お金もあるけど! メディアを運営するってそれだけじゃないでしょ?」
「??? 他に何が……?」
「あなた本当にライターですか? “想い”とか“社会的な意義”とかあるでしょ」
「あったんですか?」
「いや、最初は『経費で好きなだけ旅行できる!』としか思ってなかったけど」
「余計悪いわ」
一年目のジモコロ
話してる間も着々と山を登っている我々。北斗の拳で聖帝十字陵に石を運んでる人のよう。
「最初のほうは記事を作るのも手探りだったと思いますが、イーアイデム側の反応はどうでした?」
「初期はオモコロ(バーグハンバーグバーグが運営する笑いに特化したWEBメディア)っぽい企画案を持っていったんだけど……反応はいまいちでしたね。僕自身もオモコロと同じことやってたら意味ないなと思って」
「なるほど。ターニングポイントになったような記事ってありますか?」
「あります。風岡さんの記事ですね」
「あぁ、クワガタとタケノコでフェラーリを買った男性の記事ですね。あとからテレビで話題にもなりましたよね」
「あの記事は、別の取材で通りがかった場所に、気になる看板を見つけて寄ってみたっていう、偶然が生んだ奇跡ですね。自分の足で探してちゃんと取材する……という一次情報ってスゲー大切だなと思いました」
「すでにネットにある情報を繋いで、記事っぽい体裁にまとめただけっていうメディアにはなりたくないと」
「そういうトゲトゲした言い方はやめてください。他には、自分の名前『徳谷』姓のルーツを探すっていう記事も、メディアとして大事な発見がありました」
「あぁ~! あの記事は民俗学っぽいけど身近に感じられるというか、ご近所感があるというか、確かにジモコロというメディアのカラーが出た記事ですね」
「あと、こちらも別の取材の“ついで”で行った場所だったんですが、沖縄の座間味島の記事も、足で一次情報を探した結果ですね」
「その記事、未だに毎月検索が1万ページビューくらいあるんです。実は僕、読んだ時に『オッサンが夏を満喫してるだけやんけ』と思ったんですが、誰かの役に立ってる記事なんですよね」
「意外とウェブって細かい情報が省かれてるんですよね。あとジモコロは一次情報を大事にしたいんで、地方取材に行くときは準備しすぎないっていうのを心がけてます。現地で飛び込んでいくのが一番良い!」
「……当日いきなり60kgの柱を担ぐことになった立場として言いますけど、僕には準備が必要なのでちゃんと教えてください」
「まあまあ、ほら! ここから先は車で標柱を運べるみたいなんで、ね? しんどいのはもう終わり!」
「とはいえ僕らが同乗するスペースはこの車になさそうですね。こんなにヘトヘトのカラダで今から標高1200mまで登るのかよ……」
車にマサカリ型標柱を積み込んだところ。情けないことにもうヘトヘトです。
休む間もなく頂上へ登り始めます。
早く登らなきゃ標柱を立てるのに間に合わない! 急げ~!
2年目は実験の年
「はぁ、はぁ、つっれぇ~……。で、なんでしたっけ? もう2年目にいっちゃっていいですか? 2年目ってどうでした?」
「雑かよ! 1年目がメディアを運営するための、いわば勉強の年だったから、2年目は実験の年にしたかったんですよ」
「実験? 具体的にはどういう記事がそれに当てはまるんでしょう」
「御柱などのお祭り取材とか、ですかね」
「お祭りって、本当にその地方に深く根ざしたものだから取材するの難しいですよね。僕も岸和田のだんじり祭りを取材したことがありますけど、難しかったナー」
「そう、何百年も続いた祭りを1日とか2日で取材するのって無理がありますよね。でも興味が湧くと取材せずにはいられない……まさに実験のつもりで体当たりしました」
「あと、奥出雲のたたら製鉄みたいな、渋い記事も積極的に作ってました。WEBにまだ汚染されてない情報を、ネット上に正しくアーカイブしていくという役割もジモコロでやりたいなと思って」
「正直、内容が難しいから敬遠されるかなと思ってたんですけど、意外と興味を持ってくれる人が多かったんですよね。難しすぎて僕は4割くらいしか理解できなかったのに」
「それでよく編集者やっとるな……」
「NHKスペシャルのイゾラド(未開の森に住む部族)の記事なんかも良かったですね」
「これは、事前にめちゃめちゃ資料とか読み込んでから取材しました。動画とかもほぼすべて見たと思います」
「さっき“事前に準備しすぎない”のが大事って語った僕の立場は?」
「人それぞれやり方がある、ということです」
苦労話も、山の空気を吸いながらだと楽しい思い出として語れますよね。
写真は、汗をかいてきたので上着を脱いだけど、関係者の人にもらった“前かけ”を律儀に着け直してるところ(前かけは山頂で買うことができます)
金時山は、開けた場所が多くて登山するにはほんと気持ち良い山でした。山頂まで70分くらいでいけるので、初心者でも登りやすいですよ!
「記事として印象深いのは、山本さほさんの、『さわやか』っていうハンバーグ屋さんへの愛を描いたマンガとか。愛って、すべてを突破できるんだなって思った」
「僕はARuFaくんの、インテリアコーディネーターに自分の部屋へのアドバイスをもらう記事が好きでした。爆発的に伸びましたね」
「インターンの子に書いてもらった旅荘秋元の記事も良かったですね。実際に1週間くらい泊まってもらったから、すごくリアルな記事になった」
「記事以外の、ジモコロ全体の活動として『こんなことあったなー』っていうの、あります?」
「熊本地震の復興のために何かやりたいと思って、ライターを100人集めるイベントをやりました。色んな人が来てくれて、嬉しかったなぁ」
「支援というのは色んなやり方がありますけど、すごく新しい形でしたよね。素晴らしい試みだったのではないでしょうか」
「うん、まあ、ギャラクシーさんは来ませんでしたけどね」
「忙しかったから……」
グッズを作ったのも思い出深いですね。こちらはジモコロの手拭い。
あ、これは関係ないです。たまたま持ってた「宇宙戦隊キュウレンジャー」のタオルです。
3年目のジモコロはどうなる?
もうすぐ頂上。ヒョエ~! すごい絶景!
「ここ最近の出来事で言うと、柿次郎さんが独立したっていうのが大きいですかね」
「そうですね。今は外部編集長という立場になりました」
「興味なかったんで今まで聞きませんでしたが、なんでバーグハンバーグバーグを辞めたんですか?」
「もうちょっと興味持ってよ! 当時は、取材や打ち合わせで地方に行き過ぎて、会社にいる時間がほとんどなかったんです」
「柿次郎さんがバーグにいた頃、僕は隣の席だったんですが、確かに全然デスクに座ってなかったですね」
「一方で、他のローカルメディアとかにも認知されて繋がりができた。一気に幅が広がったというのがあって。それならいっそ独立して、ジモコロで気づいたローカルの世界に専念したくなったんですよね」
繰り返しますが初心者でも余裕で登れる山です。僕らが登ったルートは人もたくさんいたし、道しるべも多かったので、張り切って購入した地図を一回も開きませんでした
「立場も変わって、ジモコロもかなり認知されてきて……さて、3年目ですけども。何かやりたいことはあります?」
「人を育てたいという思いはずっとありますね。新人ライターに力をつけてもらって、新しい風を起こしてほしい。ただしジモコロの核になる部分はずっと変わんないです」
「それは一体……?」
「仕事と地元という大きなくくりと、それを伝える温度感が大事だって思ってます。人肌の温度感がある記事、人間が見える記事」
「なるほど、それは僕も忘れず、心掛けたいと思います!」
「(この人、かなり忘れてる気が……)あっそうだ! 去年、紙版のジモコロ(フリーペーパー)を出したんですよね。メチャクチャ好評だったんで、今後は半年に一回くらい作ろうかなって思ってます」
「最新のフリーペーパーは現在鋭意製作中です。お楽しみに!」
「おや、そんなことを言ってる間に……」
「あっ、もう頂上?」
ついに山頂に到着! 富士山まる見え~~!!! 疲れが吹き飛ぶ光景ですねこれは。
そして、車とリフトで運んできたマサカリ型の標柱も到着!
神秘のベールが今……
御開帳じゃ~!
さっそく登山客が次から次へと記念撮影してました。いやぁ、最初の方だけとは言え、担いで登った身としては感無量です。
みなさんも金時山に登った際は、ぜひ山頂のマサカリと一緒に、金太郎気分で写真を撮ってくださいね!
「ふう、今日はジモコロのことを振り返れたし、金時山の歴史的な瞬間にも立ち会えたし……良い登山でしたね」
「これからも頑張ろうって、決意を新たにしましたよ僕は!」
「ですね。富士山を前に、今こそ誓いましょう。ジモコロを日本一素敵なメディアにしてやるって!」
「はい! それはもう、金太郎のごとく!」
「よくぞ言った~!!!!」
「……………」
「……………」
「(金太郎ってそんな話だっけ……?)」
「(金太郎って熊と相撲する以外に何した人だっけ……?)」
(3年目に)つづく
ざっくりわかる:金太郎ってどんな話?
金太郎は平安時代に実在した人物・坂田金時をモデルにした昔話です。
足柄山で熊と相撲をとるなど、元気でたくましく育った金太郎は、武将・源頼光と出会い、その力量を認められて家来となります。そして丹波の国の大江山(京都府福知山市)に住む酒呑童子を退治するなどして活躍したそうです。
ライター:ギャラクシー
株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy