はじめに
こんにちは、ビックロの店長っぽい風格を漂わす、バーグハンバーグバーグのまきのです。めちゃめちゃな髪型でお騒がせしております。
本日は新宿という愛憎渦巻く欲望の街に来ています。そしてこの新宿にある「名前は聞いたことあるけど入ったことなかったな〜」というお店に先日いってみたら非常に感動いたしましたので共有したいと思います。
その場所が「そっくり館キサラ」です。
※サイトキャプチャ
そっくり館キサラ
住所:東京都新宿区新宿3-17-1 いさみやビル8F
システム
第1部:18:00~20:30
料金:お一人様5,500円(税込)
時間:18:00~20:30(ショーは19:30~60分)
内容:ショー + ビュッフェ食べ放題+飲み放題第2部:21:00~23:00
料金:お一人様4,000円(税込)
時間:21:00~23:00(ショーは21:30~60分)
内容:ショー + 飲み放題
正直に言いますとそれまでは「モノマネタレントが出るお店でしょ…?」みたいな感じであんまり乗り気ではなかったのですが、一度行ったらもうその世界にドップリとハマることは必至。その後は常にサイトの出演予定表を眺めて想像を巡らす日々。
果たして何がそこまで良いのか?キサラがすごい理由を書いてみます。
キサラのここがすごい1:入店の時点で「始まっている」
キサラは18:00〜20:30の第一部、21:00〜23:00の第二部の二部制になっており、事前に席を予約しておくことを推奨としています。
そして入り口で予約名を確認して席に案内してくれるのですが、この時点ですでに始まっているのです。場を盛り上げる重要な役目を中心となって担っているのがこちらの店長。彼のトーク力、お客いじり力、盛り上げ力は本当に目を見張るものがあります。
例えばスーツの男性4〜5人で来店したとすると「石原軍団の皆様ご来店です!」
男性3・女性1で来店すると「レベッカの皆様ご来店です!」
と言った風に、店長が来店時の男女比・人数構成で瞬間的に音楽グループやお笑いユニットに当てはめてくれるのです。全てのお客さんをそうやって例えて時にいじってくれるので、この時点で楽しくなることは請け合い。
見た目に特徴のある私などは髪型だけで入店時と退店時に「ラーメン大好き…?」と店長さんがいじってくれました(「小池さんじゃないです!」と返す)。
そんな感じで席につくと、第一部ではディナービュッフェで腹ごしらえができます。ショーが始まるまで好きなだけ食いまくりましょう。
腕に自信のあるシェフを雇って作った料理はどれもうま〜〜い、です
キサラのここがすごい2:ショー自体は「全然始まらない」
ビュッフェで取った料理を食べている間、お客さんによってはステージに上がって写真を撮ることが可能です。入店時の呼び込みをしてくれた店長がこちらも先導してくれるんですが、「それではそっくり館なので、西部警察っぽく銃を構えたポーズにしましょう!」とか「男女向かい合ってイエス、フォーリンラブ!で撮りましょう!」という感じで様々なポーズを指定してくれます。
そして先ほども述べたように店長が永遠にくだらない冗談を言いながらお客さんをいじってくれるのでそれを見るだけでも楽しい空間になっています。写真を撮る時も「私、写真係として就職してますので」「iPhoneは11まで使えます」みたいな冗談を言い続ける「愛すべきくだらなさ」がキサラを包み込みます。
ある程度時間が経つといよいよショーが始まる…?と思いきや、前説のような役割のMCが登場。改めてキサラのシステムや決まりごとなどを説明してくれます。
そして乾杯〜!という流れになるのですが、ここで店長が叫び声をあげます。
「ちょっと待って下さい!あなた…2017年の『ミス乾杯ガール』に選ばれた方ですよね!?!?」
そうしてステージに上げられたのは完全に普通の女性なのですが、毎回一人「乾杯ガール」として祭り上げてくれるようです。
そして乾杯ガールの神聖な音頭で乾杯!店長やMCもノリノリで乾杯。最早この勢いは誰にも止められません。
そしてこの辺りで「一体いつ本番のショーが始まるんだ!」と思ったりもするのですが、本番のものまねショーに入るまでの事前のやりとりや前説、お客さんとのコミュニケーションも全て含めて「キサラのパッケージ」なのです。
確かにキサラに入店してから一度たりとも退屈に感じたことはありませんでした。ステータスの「エンタメ」のパラメータに全振りした人々によるプロの盛り上げ術、文字だけで100%伝えるのは不可能なので是非その目で確かめていただきたいと思います(かなり端折ってますが、実際はこの300倍はくだらない冗談やノリを言い続けてます)。
キサラのここがすごい3:ものまねショーはマジで最高
そんな感じでようやくショーがスタート。本日は「DREAM4 スペシャルライブ」ということで、本来なら大トリを務めるような方が4組共演する良き日でした。
トップバッターはダブルネームのご両人。ケミストリー、湘南乃風、コブクロなどの分かりやすい歌ネタから、「ちびまる子ちゃん」のキャラ複数を一人でこなす声マネなど手広くこなす技巧派です。
コブクロの身長差を出すためにビールケースを用意するという小ネタでしっかり笑いも取ります。
二番手は90年代のJ-POP歌マネの翔子さん。大黒摩季、中島美嘉、ユーミン、篠原涼子、森高千里など、誰もが知っている名曲メドレー。普段聞かない懐かしい曲をめっちゃ歌ってくれるので改めて「J-POP良すぎ〜〜〜〜〜〜〜!!!」という気分にさせてくれるのもキサラの魅力。
大黒摩季の「熱くなれ」はいつ聞いても最高にアガりますね。
三番手はこの道20年のベテラン、亘哲兵さん。いきなりパク・ヒョンビンの「シャバンシャバン」という知ってる人の方が少ない韓国語の歌マネから入るあまり、観客の頭に浮かぶ「?」が実際に見えます。最早似ているかどうかが分からないのですが「ただ歌いたいから歌う」という尖った姿勢とフニャフニャした韓国語の響きと勢いには笑わざるを得ません。
そして西城秀樹、前田吟などのものまねと漫談を挟んで、「本人より歌っている」と豪語するトシちゃんの「抱きしめてtonight」のものまねメドレーは圧巻。48歳とは思えない足の上がり方です。
大トリを務めるのは電車ものまねの立川真司さん。構内アナウンス、警笛、車輪の音、冷却装置の音など、電車にまつわる全ての声・音を網羅するものまねは達人の域を超えた名人芸。構内アナウンスのマネを極め過ぎてJRの駅員に発声方法の講演を定期的に行うという逆転現象を起こしたり、「電車でGO!」の全シリーズの構内アナウンスの役を務めたり…といった、いわば究極の電車ものまね師です。
電車ものまねも去ることながら注目すべきはその「催眠術のようなトーク力」。
「私の声を聞いたあとあなたは電車にのって帰るだろう。そしてそれまでは一切気にも留めていなかった構内アナウンスや発車ベル。それらを聞いただけで、あなた達全員は今後ずっとこの黄色いおじさんの顔が思い浮かんでくるだろう…」
と言った風に、淡々とした話術で観客の心をつかみながらものまねを披露していました。私はこの時初めて立川さんの話芸を見たのですが、ちょっと感動するレベルで笑ってしまいました。一度は生で体感するべき至高の芸ですよ…。
と言った感じで「誰でも知ってる歌マネ」、「昔を思い出す懐かしい歌マネ」、「勢いで押してくるものまね芸」、「究極の話芸」という非常にバランスの取れた最高のステージが終わりました。
この楽しさの裏側に迫りたくなったので、店長さんに色々お話をうかがってきました。
店長の川倉さんに話を聞こう
こちらがショー前に盛り上げまくってくれたキサラ店長川倉正一さん。優しそうなおじさんですね。早速お話をうかがいたいと思います。
「先ほどはお疲れ様でした!めちゃめちゃ楽しかったです!過去に二度来ているのですが、何回行っても『また行きたい!』って思えるのは最高ですね」
「ありがとうございます。光栄です」
「ショー開始前のマイクパフォーマンスはどういう経緯で始めたんですか?」
「私の前の店長がとても真面目だったんですよ。ショーパブだし真面目な方がいいかなと思ってたのですが、売上がちょっと下降した時に社内の空気的に『真面目過ぎね?』ってなったんです」
「当初は落ち着いた雰囲気だったんですね」
「ですね。それで真面目過ぎるかも、ということでもうお店に入った瞬間からその世界観に浸れるように工夫してみようって話になったんです」
「なるほど」
「とはいってもどうしたらいいのかな〜って思ってた時に、ご高齢の女性の団体が来たんです。そこでちょっと踏み込んでみようと思って『AKB48の皆様ご来店です!』って言ったのが最初ですね。4〜5年ぐらい前かな。それがウケたもんだからちょっとずつそういう呼び込みをやっていこうと」
「それが今こうして全員をいじる形になったんですね…」
「でも地声で叫んでたらポリープできて声が枯れちゃったんですよ。で、マイクつけてやってたんですが、そうするとどんな声も響いてしまうじゃないですか。なので下手なことは言えないので、パフォーマンスも兼ねていこうと」
「あの空気作りがすごくしっかりしているのですごく楽しい気分になっちゃいます!」
「ですね。そんな感じで『みんなでふざけあう』『真剣にじゃれ合う』っていうことをやっていけばお店の雰囲気も良くなるんじゃないかなと思います」
「良いですね〜。あの例えって何パターンあるんですか?」
「いや〜自分でも分からないです(笑)。しかも浅いですしね!」
「いやいやでもあの楽しさは体験しないと分からないですね」
「そう言ってくれるとすごく嬉しいです。でも女性グループがたくさん来ると困りますね。おニャン子、AKB、モー娘。、タカラジェンヌ…それ以上来たらどうしようって感じですね。誰でも知ってるような人に例えないと」
「わかりにくい人で例えて『??』ってなっちゃうと変な空気になりますしね」
「そうですね。あとはフォローもいれつつ絶対に嫌な気分にはさせないように心がけてます」
「完全に別世界に来てしまった錯覚すらあるので、多少踏み込んでも笑って許してくれそうですね」
「そっくり館なんで『そういう風に見るのね』と思ってもらえればありがたいです」
「店長さんはもともとどういった経緯でここに?」
「私はもともと役者やってたんですよ。で、ここキサラが私の集大成みたいなところはありますね」
「おお」
「20代は旅劇団に入って全国回って過疎化した村に芝居しにいって活性化させる…みたいなことやってました」
「へ〜すごいカッコイイですね」
「年配の人と仲良くやれてるので続けてましたね。30代はドラマにも結構出させてもらえて。有名どころでいうと『さわやか三組』で教師役やったり」
「え!そうなんですか」
「将来、教師になるか役者になるか悩んでた時期があったんですけど、役者をやればいつか教師役になれる…と思ってたので、そこで夢は叶いましたね(笑)」
「あ、そういう意味で…(笑)」
「で、そこそこ売れてる役者同士で集まって飲み歩いたりしてるうちに『お笑いやってみない?』って話になって、サイレント芸のネタをやるユニット組みました。それが結構ウケて地方のショーパブでトリを務めるぐらいになったんですよ」
「何でもそつなくこなしますね…」
「その後キサラでオーディションしたら当時の社長が気に入ってくれたんですけど『ものまねとぶつかってしまう』ということでまた別のお店に出してくれるようになって。そっちは閉店しちゃったもののそのまま社長に声かけてもらって、今に至る…みたいな感じですかね」
「店長さん自身もネタをやってたりしてるんですねえ」
「そうなんです。『鮪男(まぐを)』っていう名義で。R-1グランプリとかにも準決勝まで行ったり、レッドカーペットにも出してもらいましたよ」
「え!そうなんですか!結構見てたけど…!どういうタイプのネタをやられてるんですか?」
「ものまねもやりつつ、結構真逆でシュールなことをやったりしてますね…キサラでやってることは誰もが笑えるものを目指してますけど、個人的なネタはマイノリティな感じのが結構好きなんですよ」
「またあとで調べてみます!意外とシュールなネタもやるんですね」
「そうなんです。でもキサラ的には皆が楽しめるものを目指しているので、最新のお笑い事情はここで教えてもらうことは多々ありますね」
「日々のショーの内容はどのように作られてるんですか?」
「基本的には演者の方にお任せしていますが、新人さんには『一緒に作り上げていきましょう』というスタンスでアドバイスは出したりしていますね。ステージに上がるまではお手伝いするけど、そこから先はあなたの仕事だぞ、と」
「確かに演者が舞台に立ってからはあまりタッチしないですもんね、みんなキャラが強いから」
「演者次第なところはありますね」
「以前見た中ですごく感心したのが、西野カナの歌まねをする のゆんさんのネタでした」
「お、あれですか」
「西野カナの歌まねって正直言うと分からない曲もあったんですが、やっぱり『観客のおじさんを無理矢理壇上に上げる』ってのがすごく良かったです。そうすることで『おじさんが西野カナの曲を聞いてる状況』と、上げられたおじさんの身内は『あいつ何やってんだよ感』が出て笑いが生まれて曲を知らなくても全員が楽しめたんですよね。あれは発明だったな〜」
「あれは私が考案したんです。分かってもらえて嬉しいな…。おっしゃる通りでその『おじさんの目の前で西野カナメドレーやったら面白いだろうな』っていう思いがあったので」
「あれは最高でした。そんな感じで盛り上げて楽しませることってかなり特殊なことだと思うんですが、何か心がけていることってありますか?僕なんかはけっこう苦手で」
「私も奥手ですよ。例えばこのあと二人きりで電車に乗って帰るとなると、めちゃめちゃ湿っぽくなると思います」
「え、そうなんですか!?」
「そういう状況で全くしゃべれなくなるか、自分を隠して別のキャラでいて間をもたせるか…と考えたら、後者になると思います。誰とでも気さくに…とかは自分の性格だとちょっと難しいかもしれません。やはり仕事の時にガツンと切り替わる感じで」
「あ〜でもお笑いに身を置く人だと結構そういう人多いかもしれませんね。モチベーションの維持なんかは何かやってたりするんですか?」
「う〜ん、毎日やってるから最早自動的にこうなっちゃってますね。感覚が麻痺してるのかもしれません」
「何度か見させてもらって、ずっとこのテンションで毎日やるって凄すぎるな…と思ってたんですが、やっぱりそうなっちゃいますか」
「どんな気分でも切り替わってやっちゃいますね。以前兄が亡くなって悲しかったんですが、その二日後ぐらいには普通に戻ってやってましたから。お客様にしてみたらこっちの事情は分からないですからね!」
「『喪中なので暗くなっちゃいますが…』なんて言えないですからね」
「そう考えるとやっぱりどこかイカレてるのかもしれませんね(笑)」
「いや〜、本当にスゴイことだと思います。初めての人こそ足を運んでもらいたいですね!」
「これからも来てくれたお客様が全員笑顔になってくれると嬉しいですね。これからも頑張ります!」
おわりに
そんな感じでここではこの辺りで!キサラの魅力はやっぱり「実際に体験してこそ楽しめるサイコーに楽しい空間」であることに尽きると思います。何回行っても本当に楽しいそっくり館キサラ、皆様も是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
それではさようなら。
書いた人:まきのゆうき
株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。姉妹メディア「オモコロ」で開設当初から「うさねこ」という4コマ漫画を連載中。「演技が終わった瞬間のフィギュアスケーターの荒い呼吸」ぐらいしかものまねのレパートリーがない。Twitterアカウント→@yuuki