はじめに
ハフ……ハフ……ズルズル……うまっ……ズルズル……フーッ、フーッ……ハフハフ……ズルズル……
こんにちは、山口むつおです。
ただいま私……。
長崎県のリンガーハットに来ております
みなさん長崎県といえば、どんなイメージがありますか?ちゃんぽん、ハウステンボス、カステラ、ザビエル、サムライスピリッツのラスボス……。
色々あるとは思うのですが、今回は!
山口むつお
これを書いているジモコロライター。長崎と聞くとサムライスピリッツのラスボスを思い出す男。柿次郎
ジモコロの編集長。2泊3日の取材中、腸炎を発症して真っ青になり24時間寝込んだ。鳥巣
長崎県出身で、今回案内をしてくれるザビエル似の男。山口と柿次郎の友人で、五島という島に図書館を建設したというが……?
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こちらの3名で、
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この3軸を中心に、長崎の魅力、そこで生活している人たちについて取材を行いたいと思います!
目次:
・【グルメ】やっぱり長崎のリンガーハットは他県のものより美味いの?
・【次回予告】学校の授業の100倍わかりやすい「隠れキリシタンの歴史」
・まとめ
やっぱり長崎のリンガーハットは他県のものより美味いの?
ちゃんぽんと言えばリンガーハット。発祥の地はもちろん長崎。チェーン店といえども、やはり本場だと違うんじゃないかという気がします。確かめてみましょう。
ちなみになんですが、リンガーハットはもともとトンカツ屋さん(とんかつ濵かつ)からスタートしています。ちゃんぽん屋さんのうえには、そのトンカツ屋さんも
「やっぱり本場長崎……東京のより美味いのかな?」
「確かめたことはないですけど、長崎県出身の身としてはそうなってると嬉しいですね」
みなさんお馴染み、リンガーハットのちゃんぽん。もっともベーシックな「長崎ちゃんぽん」を注文。早速いただいてみましょう。
ズズッ
「……ッ!」
「うんま……!」
「これこれ。この味よ!」
「明らかに東京より美味い!」
「それにしても、ちゃんぽん久しぶりに食べたけどこんなに美味いとはな……。チェーン店でこのレベルだと、こだわりの個人経営のお店とかだとヤバイかもしれんな」
「ちゃんぽんにもラーメンみたいに『あっさり派』『こってり派』があって、それぞれに名店と呼ばれるお店が県内にあったりしますよ」
そしてこちらは、デザートで頼んだミルクセーキ。
「本来ミルクセーキって飲み物なんですけど、長崎だとこんなふうにデザートとして提供される事が多いんですよ」
「名前は聞いたことあるけど、食べたことない」
「あ、これアイスクリームみたいなものだと思ってたらシャーベットなんだ」
「そうそう、かき氷に卵とか練乳とかを入れたものなんですよ。長崎県発のデザートです」
「それにしても、さっきのちゃんぽんよ。チェーン店って調理する器具とか段取りが統一されてるもんだけど、長崎はちょっと違ったりするのかな?」
「いや〜これは違うでしょ。明らかに野菜の旨み、スープのコクが違うもん。長崎に来てどこかちゃんぽんの個人店探さなくても、リンガーハットで十分満足できるレベル」
「ジモコロ編集長!これは美味しさの秘密、店員さんに確認しておいたほうがいいのでは?!」
「よ〜〜し!」
「いや〜〜美味しかったです!ぼくたち東京から来たんですけど、やっぱり本場長崎は違うなーと思いました!やっぱり調理方法とかが他と違ったりするんですか?」
「いえ……よく言われるんですけど、全国どこでも同じ材料・器具・調理法で作っています……」
「……!!」
「(クッ……!こいつぁ……)」
「(こいつぁ……恥ずかしい……!)」
「(危なかった……柿次郎に聞きに行ってもらって助かった……!)」
・・・・・・
「………」
「編集長、あれからずっと海を見てますね」
「そっとしておきましょう」
リンガーハットは、全国どこで食べても美味しいように、材料・器具・調理方法を統一しているようです。長崎に行って「やっぱ本場は違うな!」と明言するのは避けたほうがよいでしょう。
長崎発祥の変わったおもてなしグルメ「卓袱料理」
長崎の夜。メジャーな居酒屋から、1本入るとかなりディープな雰囲気の裏路地が隣接しています。
今回案内してくれた鳥巣さんが「どうしても食べてみたい」という長崎発祥のおもてなしグルメ「卓袱(しっぽく)料理」があるという事で、みんなで付き合うことに。
「簡単に卓袱料理の説明をさせていただきますね。卓袱料理は『和華蘭(わからん)料理』とも呼ばれています。和食、中華……そして蘭はオランダのことですね。」
「なるほど。昔から貿易の拠点となっていた長崎ならではですね。一瞬、意味がわからん料理かと思ってしまいました」
卓袱料理とは
中国料理や西欧料理が日本化した宴会料理の一種。長崎市を発祥の地とし、大皿に盛られたコース料理を、円卓を囲んで味わう形式をもつ。和食、中華、洋食(主に出島に商館を構えたオランダ、すなわち阿蘭陀)の要素が互いに交じり合っていることから、和華蘭料理(わからんりょうり)とも評される。
「円卓で食べるんですね」
「はい。一般的な日本料理のように膳で食べるのではなく、このような丸いテーブルにお料理を乗せます。お料理は、大皿からそれぞれ取り分けて召し上がっていただくというのも大きな特徴ですね」
「ラフですね〜」
「まずは、みなさんにはお吸い物をお召し上がりいただきます。飲み干されたら、次の料理をお持ちいたします。これは広東料理で『まずはじめにスープを飲み干す』という慣習にならったものです
「さっそく異文化のミックス来た」
魚の美味い部分……
美味い刺身……
美味いジュレ……
美味くて皿に対して浅いやつ……
その後、続々と運ばれてくる料理の数々。和食、中華、洋食とバラエティー豊か!
かつ、全部のレベルがクソ高いうえに「みんなで円卓囲んでる」という空気感も最高。
そしてこのパイ料理が和華蘭料理の「蘭」にあたる部分です。
こうやって砕いて食べます。
卓袱料理、この取り分けシステムのおかげで、とにかく堅苦しすぎないうえに美味いので、何を話してても盛り上がるのです。
「高級なだけじゃなくて、みんなでとりわけ合うことで生まれるコミュニケーションがいいね」
「そしてそのコミュニケーションを円滑にする、料理自体のポテンシャルの高さよ……」
くぅ〜〜〜〜〜〜!!!!
「よかったです。これで中盤戦くらいなので、どんどんお持ちいたしますね」
「は?!中盤戦?!」
「このあとデザートで閉幕じゃないの?!」
「卓袱料理って、量も相当あるんですよ」
「Oh……」
美味さを固めたやつ……
茄子とうなぎに美味い味噌がかかったやつ……
美味い汁……
「まだ出ます?」
「まだ出ます」
「まだ出るかあ」
美味茶漬け……
美味い角煮……
美味くて白いやつ……
「もうちょい?」
「そろそろ腹がバーストを起こすよ?」
「次が最後のデザートですよ〜」
「とうとう……!」
そして、ついに最後のデザート・美味いおしるこでフィニッシュ。
「あ〜〜〜!マジで多かった……全部美味かったけど……」
「来る前に間食入れてたら、バーストしてたかもな……」
美味いのに残すことになったら、もったいないです。
余談ですが、なんと坂本龍馬の刀傷が残されているということで、その部屋を見せてもらう事になりました。
「あの歴史的人物の刀傷……!」
「誰か、刺客と戦ったりしたんですか?」
「はしゃいだだけかよ」
「飲んで食って、いい感じに仕上がっちゃったんだろうね」
学校の授業の100倍わかりやすい「隠れキリシタンの歴史」
さて、長崎といえば隠れキリシタンの歴史があるのは、みなさん小中学生の歴史の授業で習ったとおり。
「今日は長崎巡礼センターというところで局長をやっていらっしゃる、入口さんという方に隠れキリシタンの歴史を教えてもらいましょう」
「(もう学校で習ったことなのに、もっと知ることってあるかな……)」
……と思ってたら、めちゃくちゃおもしろくて勉強になったのですが、活字に起こすとゲロほど長くなっちゃいそうなので、別記事にまとめます。もうちょっと待っててね!
移住者が活躍する五島列島に行ってみよう
今回案内してくれた鳥巣さんは、東京にいながら「五島列島」という島に図書館をつくったといいます。また、五島列島に魅せられて移住し、働いている人たちも多いとのこと。我々も五島列島に行ってみることにしました。
移動は長崎港から高速船で!五島列島は全長80kmと意外に大きな島。離れたところにある男女群島まで含めると150kmもあります。
長崎では、船はけっこうポピュラーな移動手段のようです。早朝から船に乗り込む行列が。
「港の近くに造船所があって、そこに勤めている人なんかは会社が持ってる船で通勤していたりしますよ」
「通勤に船……東京だと考えられない移動手段だなぁ」
そんなこんな言いながら1時間半ほど高速船に揺られて……
五島列島に到着しました。さあ、どんな働き方をしているのでしょうか。
「誰かの人生の3冊」が読める図書館・さんごさん
五島の富江という町に、鳥巣さんが作った図書館「さんごさん」はあります。
外観はさんごをイメージした赤。「富江には大きな図書館や書店がない」という話を聞いていたので、地元の人にも島外の人にも楽しんでもらえるような図書館を作ろうと思ったんだそう。
「もともと、この島はさんご漁が盛んだったんですよ。さんごって宝石として高価に取引されていたので。それで一発当てたろか、という人達で賑わってたんです。そういう経緯もあって、さんごさんという名前にしました」
さんごさんの中には大きな本棚と、綺麗に陳列された本が。
「あれ?なんか図書館のわりには本少なくないですか?」
「図書館とは言っても、もともと民家なのでそんなにたくさん本を収蔵できないんですよ。なので誰かの『人生の3冊』を読める図書館にしよう、とテーマを決めたんです」
「あー、それで今回の旅の前に、マイベスト3冊を持ってきてくれって言ってたんですね」
ぼくと柿次郎の「人生の3冊」を寄贈させていただきました。
「ぼくの人生の3冊は『ドラゴンボール 27巻』『+81』『ふしぎ!なぜ?大図鑑』です」
「どういう理由なんですか?」
「ドラゴンボール27巻といえば、フリーザ戦で悟空が超サイヤ人に変身する巻で、めちゃくちゃかっこいいからです」
「子供の意見だ」
「『+81』っていうのは海外のクリエイターをいっぱい紹介する雑誌なんですけど、これを買ったのは就活の時期でして。なんかクリエイターみたいなカッコイイ仕事に就きた〜い!と世間をナメてた経済学部の僕が、本屋で買ったのがこれでした」
「わかりやすいナメ方ですね」
「結局、それからしばらくこの雑誌は買うようになって、広告やデザインに興味が湧いてWEBの製作会社に無事入社できたので、ぼくとしては恩人みたいな雑誌ですね」
「最後の図鑑は?」
「ぼくの小学生の時のバイブルです。生き物好きなぼくにとって、昆虫・哺乳類・爬虫類・両生類・鳥類・魚類・植物を1冊で網羅したこの図鑑は、お子様の成長を助ける一冊として強くオススメします」
「ありがとうございます。…って、このようにね。その本とエピソードがあると、俄然読みたくなるでしょ? そういう本の出会い方って面白いと思うんです」
「たしかに。友達がオススメしたヤツは読みたくなるっていう、ソーシャルでのクチコミに近い感覚かも」
こちらはさんごさんのリノベーションを手掛けた石飛さん。東京在住ですが、このためにしばらく五島に移住してきたのだそう。
本物のさんごが!さんごの加工の過程で出る端材をもらってきて練り込んだそうだ。「さんごさん」という名前からインスピレーションを受け、石飛さんが所属する能作淳平建築設計事務所で考えたのだとか。
五島のマジの火山岩を足場に利用しています。
そして、壁には超高速で投げつけてめり込んだ貝殻が。
「ちょっと!さらっとウソの解説入れないでくださいよ!これはリノベーションの作業中、土壁に貝殻が紛れ込んでいるのを見つけたんですけど、なんか良かったからそのままにしているんですよ」
「あ、そうだったんですね!失敬失敬……」
「実は図書館以外にもやれる事はあると思っていて……結構広いスペースがあるので、町のワークショップの場所にしたり、2階の部屋をゲストハウスとして解放したりという展開を考え中です」
「建物に雰囲気あるし、泊まったら楽しそうですね」
※現在、いろいろなワークショップやイベントを開催しています
さんごが飾られていたりと、なんでも絵になる気持ちの良い空間です。
「ここに置いてるショップカード、五島に移住してきた人がやってるゲストハウスのものなんですけど、ちょっと会いに行ってみましょうか」
「はい!」
仕事での滞在をきっかけに始めたゲストハウス「ネドコロノラ」
こちらは、港町・荒川にある「ネドコロノラ」。古民家を改装したかわいらしいゲストハウスです。
大学の同級生であるマナミさんとモエさんが運営されています。2人とも五島出身ではなく、移住組!
横浜出身のマナミさんが、3年ほど仕事で五島に移住したのをきっかけに五島に魅せられ、大学時代の友達だったモエさんを誘ってオープンさせたのだそうです。
みんなでごはんを食べたり、語らったりするテーブルに……。
こちらはキッチン。
「ええ雰囲気だな……この場で友達出来て語り合ったりしたら楽しそう……」
「ゲストハウスの醍醐味やね……」
まだオープンして3ヶ月くらいのネドコロノラ。にもかかわらず、すでに鳥巣さんとも石飛さんとも仲が良かったです。移住してきた人達はこうやってすぐに仲良くなるみたいです。
2階が宿泊スペース。ハンモックも吊るされています。
乗ろうとしたのですが、うまく乗れず補助してもらうハメに。
「え…?本当に乗れないんですか…?」
「ぼく、体が完全にジジイなんですよ」
蒲鉾(かまぼこ)で有名な「浜口水産」
こちらは株式会社浜口水産。東京の豪徳寺に支店も持つ、蒲鉾(かまぼこ)で有名な会社です。その工場は五島の富江にあります。
工場に隣接されたお店。予想と違ってめちゃめちゃオシャレなディスプレイ!
浜口水産で働くこちらの藤田さん。五島の魅力に取り憑かれ「来ちゃった」という移住者の1人です。
お店の奥に入ると、かまぼこの製造工程を見学することができるようになっています。
様々な大型の機械も使われつつ……
人の手による作業もありつつ。丁寧に作られていました。
そして藤田さんのはからいで、出来たてのイワシのかまぼこをいただく事に。めちゃくちゃ熱いのですが……。
「できたてのかまぼこ、やばいくらい美味い !」
「できたての熱いかまぼこなんてはじめて食べた。長崎に来てから美味いものしか食ってないな……」
「魚つながりだと、他にも近畿大学と豊田通商が手を組んで作った、近代マグロの一貫養殖拠点『株式会社ツナドリーム五島種苗センター』……いわゆるベンチャー企業が五島に生まれたりもしていますね」
「そういえば、五島で参加した飲み会があったじゃないですか」
※ここに写っている人、ほとんど移住者。柿次郎は体調不良でダウンしていたため、参加できなかった。
みなさんが「とりあえず来たら何とかなるよ」って口々に言ってたのがすごい印象的でした。みんな、五島に1回来たくらいで移住決めてたりするんでびっくりしました。なんでかな〜と思って話聞いてたんですが
「ここにいる人達が移住したきっかけのほとんどが、この女性が『五島に移住しちゃいなよ』って言ったかららしいんですよ」
「移住の成功は良きキーマンの存在、と思いましたね」
「ぼくも相当お世話になりましたね……。というのも、移住ってその自治体からのバックアップももちろん大事ですけど、個人レベルでの横のつながりも大事なんですよね。友達やご近所さんとだとちょっとした事で助け合えるし、何より寂しくないし。結局人と人とがつながっていれば、楽しく生きていけるような気がしますね」
「都会で働くより、まったりした感じでとはまた違ったつながり方や働き方ができる町なんだな〜 」
まとめ
遊びに来て良し、 住んでも良しな場所でした。もともと貿易の拠点として発展した長崎は、和洋が入り混じった独特な文化が多いのも魅力です。
次回もまた、長崎についてご紹介しますね。それでは!
書いた人:山口むつお
株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。物忘れが激しいが、昔プレイしたゲームのパスワードはすらすら言える。
個人ブログ: むつおちゃんブログ
Twitter: @e_yamaguchi