こんにちは、ジモコロライターのギャラクシーです。開いた口が塞がらないまま失礼します。
見てもらったのは2009年に放映されたNHKスペシャル『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』という番組の一部。
ジャングルに住み、文明から離れた生活を送る先住民族「ヤノマミ」を、150日間も追った濃密なドキュメンタリーでした。
作ったのは、多くの優れたドキュメンタリー番組を世に送り出してきたディレクター・国分拓さん。
国分拓(こくぶん・ひろむ)
日本のノンフィクション作家、NHKディレクター。宮城県出身。1988年早稲田大学法学部卒業。
1988年にNHK入局。2009年ヤノマミ族を150日間同居取材したドキュメンタリー番組を制作。著書に『ヤノマミ』がある。
そんな国分さんが手掛ける新作が、来る8月7日(日)21時から放送されるというんだから、僕だって黙ってられませんよ!
その名も、
『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』
「ヤノマミ」と同じく、文明と接触を持たない先住民「イゾラド」が突如姿をあらわし、現地で暮らす村人を襲ったという。その報を受けた取材班は、ブラジルとペルーの国境付近、イゾラド最前線と呼ばれる危険地域に分け入っていく……。
こちらは4月より放送されていたNHKスペシャル『大アマゾン 最後の秘境』シリーズのラストを飾る作品。ワクワクが止まらないぜ~!
第1集 伝説の怪魚と謎の大遡上(2016/4/10)
第2集 ガリンペイロ 黄金を求める男たち(2016/5/8)
第3集 緑の魔境に幻の巨大ザルを追う(2016/6/12)
第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々(2016/8/7)
しかし一体この国分さんというのはどういう人なんだ?
150日間も「ヤノマミ」と共同生活したり、無法者の集まり「ガリンペイロ」に密着したり、どこから毒矢が飛んで来るかわからない場所に「イゾラド」を探しに行ったり―
なんでこんな取材ができるの? 怖くないの??
疑問が次々と浮かんできたので、ジモコロ編集長の柿次郎に頼んで、NHKにコンタクトを取ってもらいました。
「というわけでNHKさんにインタビューを申し込んだんですが……」
「どうでした?」
「まさかの快諾でした! 国分さんに直接話を聞けますよ! しかも、国分さんと長年コンビを組んでアマゾンを撮り続けてきたカメラマン・菅井禎亮さんも同席してくれるって!」
「おおぉ! その二人なら僕の疑問にすべて答えてくれるに違いない! 密林の危険性、先住民族が文明に触れることの是非、あと先住民族は裸で暮らしてるけどチ○コはでかいのか、とか」
「最後いらんだろ」
NHKのドキュメンタリー番組、その作り方とは
NHK局員の方が口をそろえて「あの二人はNHKの中でも伝説だから」と言う名コンビ。
「はじめまして! 今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくね」
「今回のスペシャル、試写で全部見せてもらいました。めちゃめちゃおもしろかったです! あんな危険な取材をどうやって敢行したんですか?」
「いやいや、全然危険じゃないんですよ。だって危険な目に遭うのは僕じゃなくてカメラマンだから」
「ひどい(笑)」
「ひどいでしょ(笑)。でもまあカメラを構えてるやつのところに真っ先に来るよね」
「『ヤノマミ』の時は150日間ものアマゾンロケを行ったと聞きました。一体どんな準備をして、そんな長期ロケに望んだんでしょう」
「機材と着替え、食料……現地にはちょっと離れたところに保健所もあるから、充電とかはそこでできたし。それに150日間連続でロケをしたわけじゃなくて、4回に分けて行ったから」
「機材も年々小型・省電力化してるから、楽にはなってきてるよね。ロケの準備といえば、事前にワクチンとかを打たないといけなくて。これが面倒なんですよ」
「へぇ~、それは想像してませんでした。熱帯のウイルスって強力そうですもんね」
「打つのはA型肝炎、B型肝炎、黄熱病、腸チフス、狂犬病、とか。狂犬病は致死率100%だから、絶対打ちます。それらを、2ヶ月位かけてちょっとずつ打つんです。結構高いんですよ」
「黄熱病だと1万円くらいだったかな。狂犬病は4回打つからもっと高かったと思います。もちろん経費ではあるんだけど」
「そういった準備をした上で、150日もかけて番組を一本作るって、僕らには想像もつかない作業です。事前にこういう流れにしようとか考えて現地に行くんですか?」
「何も考えてません」
「えー! そんなわけないでしょ! だって費用もめちゃめちゃかかってる一大プロジェクトなのに!」
「ほんとに何も考えてないですよ。事前に勉強はしますけど、行ってもいないうちから、机上の知識だけで方向を決めてしまうなんて、そんな番組、絶対につまらない」
「で、でも『結果的に何も良い絵が撮れませんでした』なんてことになったら……」
「まあ、そうなったらクビになるだけでしょ」
「ヒェェェ~!」
「でもね、不思議と何とかなっちゃうんですよ。本当に毎回不思議なんですけど」
国分さんは「不思議と」とおっしゃっていましたが、現場を歩く熱意と、膨大な根気があればこその話。今の時代、適当にネットの情報をつなぎ合わせただけの記事が多いわけですが、国分さんみたいなことができる人って、ほとんどいませんよね。
アマゾンてどんなとこ? = マジで危険だった
アマゾン―
南アメリカのアマゾン川流域に広がる、世界最大面積の熱帯雨林。その森は深く、地球に残された最後の秘境である。
多種多様な生態系が広がっており、特に昆虫は500万種とも1000万種とも言われる。
「国分さんの本(新潮文庫『ヤノマミ』)で、『長さ50cmのムカデが戸口の前を横断し……』っていう描写があって、アマゾンには一生行かないと心に決めました。虫が平気じゃないとああいったロケは無理なんでしょうね」
「ふふふ(笑)、僕は虫が平気なんだけど、彼は……」
「実は虫とか全然ダメなんです。気持ち悪い」
「え、意外!」
「虫が苦手な人間にとって、アマゾンは地獄ですよ。夜なんかそこら中を虫が這いまわってる。毎晩帰りたくてしょうがなかった」
「とはいえ、ロケ地がアマゾンなんだから虫は絶対に寄ってきますよね。被害には逢いましたか?」
「そりゃ被害だらけですよ。まず思い浮かぶのがブヨですね。噛まれたら一週間くらいカユい。アマゾンの森はブヨだらけでね。虫よけしてるのに、お構いなしにくるんだから」
「僕はジャングルで背中一面をマダニにやられて、もうカユいのなんの。ジャングルをちょっと歩けば、普通に100箇所以上は虫に刺されますよ」
「虫刺されとはいえ、伝染病を媒介したりしますから、ほんと危険と隣り合わせの撮影だったんですね」
「危険っていうことで言うと、ヘビが一番ですよ。ジャングルにはジャガーなんかもいるんだけど、ヘビの方がよっぽど怖い」
「えー! ジャガーの方が強そうなんですけど!」
「ジャガーは何とかなるんです。銃で撃つなりなんなり、対処法がある」
「ヘビは唐突だから。枝からぶら下がってたり、踏んづけちゃったり。突然噛まれて死ぬ。僕らはヘビにやられた原住民を見たことがあるけど、この目で見るとやっぱり『あ、噛まれたら死ぬんだ』って実感して、怖いですよ」
「ヤノマミもガリンペイロも、ヘビが一番怖いって言ってましたね。『俺は今まで3匹もジャガーを撃ち殺したんだ!』って自慢するガリンペイロがいたんだけど、そいつも『ヘビは怖い』って言ってましたよ」
「ジャングルで一番怖いのはヘビ、覚えときます」
とても役立つ知識が手に入りました。ジャングルで注意すべきは、ヘビです。みなさんも気をつけましょう。もっと役立つことを言いますと、そもそも行かないほうがいいです。
150日間「ヤノマミ」と暮らしてどうだった?
ここからは国分さんたちが作った『ヤノマミ』『ガリンペイロ』『イゾラド』のことを聞いていきます。まずは『ヤノマミ』から。
ヤノマミ
アマゾンの熱帯雨林からオリノコ川にかけてひろく居住している南米の先住民族の一部族。狩猟と採集を主な生活手段にしている。
「『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』では、バクや猿を食べるシーンがありましたが、あれ、どんな味付けなんですか?」
「味付けはないですよ。塩すらない」
「え、人体に塩って絶対必要ですよね? 彼らはどうしてるんですか?」
「塩があまり必要ないんです。ヤノマミ族は、人類の中で最も血中塩分濃度が低いらしくて」
「へーーー!!!」
「だからね、ヤノマミはあんまり汗をかかないの。汗をかかないから虫にも刺されにくいんだよね」
「あぁ! そういう理由があったんですか! あんなに虫が多い場所なのに、映像で見るときれいな肌をしてるなーと思って不思議だったんですよ」
「木の実や草など、虫よけの薬を塗ってるっていうのもありますけどね。ほら、女たちが赤い実を肌にすり込んで化粧してたでしょ? あれは虫よけのためでもあるんです。ジャングルに生きる知恵ですね」
「『ヤノマミ』では虫の映像が多く使われてましたよね。特にアリの大群が地を這うシーンは象徴的でした」
「ヤノマミ族は死んだ後、男はアリやハエに、女はダニやノミに生まれ変わると言い伝えられてる、というのがあったからですね。映像に使ったのは軍隊アリの行進なんですが、150日間ロケをして、見かけたのは2回だけだったんですよ」
「1回めは真夜中だったから撮影できなかったし、実質1回のチャンスでしたね」
「国分さんはいつも、ほとんど僕に指示をしないで、好き勝手に撮らせてくれるんですよ。ず~っと腕を組んで何かを考え込みながら待っててくれる。でもあの時は急に口を開いて、『アリの絵が欲しい。大量のアリを撮ってくれ』と」
「さすが敏腕ディレクターですね~。あと印象に残ってるのはラスト、過酷なアマゾンで生まれ死んでいく未開部族の横を、美しい蝶が横切って飛んでいくシーン。あれ、狙って撮ったんですか?」
画像だとわかりにくいですが、画面左の青い点が蝶です。地を這うアリの群れと、空を舞う美しい蝶。虫の映像が効果的に使われていました。
「偶然ですね。あの奇跡的なカットのせいで、菅井さんは蝶々に関する運を一生分使い果たしたはずです」
「そんな名前の運、ないでしょ!」
「国分さんたちはシャボノ(ヤノマミ族特有のリング状の共同住居)で、生活したんですよね? 国分さんの書いた本には、『壁も床もなくて、性生活すら筒抜け』という描写があって驚きました」
「子孫を繁栄させるためには絶対必要だから、行為自体はおかしいことじゃないんだけどね。文明人の感覚だと驚くよね」
「それは、実際に目に入ったりするんですか?」
「いや僕らもわざわざ見ようとはしないし、そもそも真っ暗だからね。ただ、僕らが目にしなかったというのは……」
「……早いからじゃないかな」
「へー! 狩猟民族は性行為が早いと言われてますが(性行為中は無防備なので、外敵の多い狩猟民族は早いという説がある)、そのせいなんですかね」
「そうだと思いますよ。そういった習慣に詳しい方に聞いたんですが、体位も立ちバックとからしいです。危険に反応しやすいとか、そういった色んなメカニズムが命を繋いできたんでしょうね」
「床が土だし、ヒザをつくと痛いというのもあるかもしれません」
「ちなみに、祭りの日だけは正常位だそうです。理由はわかりませんが、ほら、正常位って“人間の体位”って感じがするでしょ? やっぱり特別なものなんでしょうね」
「ノリノリで何の話をしてるんですか、もう」
「いやこれ、人類学的にはすごく大事な話ですよ」
「あと、先住民族って、基本的にチ○コはそんなに大きくないですね」
「な、なんだってー! 実はここに来る途中、先住民族のチ○コは大きいのか小さいのか聞きたいなって冗談で話してたんですよ。まさか解答が得られるとは!」
「森のなかで母親が赤ん坊を天に帰すシーンは、とてもショックを受けました。お二人はあの光景を見てどう感じたんでしょうか」
※ヤノマミ族は子供を生むと、ヒトとして育てるか、もしくは精霊として天に帰すのかを母親が選択する。天に帰す場合は母が赤ん坊を殺し、シロアリの巣に納める。
「最初にその習慣を聞いた時には、そんなことが許されていいのか、とも思いました。でも、あの熱帯の……あの空気の中で実際に見ると、不思議と納得してしまうんです」
「そう、まるでそれしかないような気がしてくる。山があって星があって、森は深くて、耐えられないほど暑くて、雨が降って、雷が鳴って、あの熱帯の中でだけ共有できる真実って、あるんですよ」
「クーラーのきいた部屋でだけ共有できる倫理観があるように、ですか」
「ただ、当時はやっぱりショックだったんでしょうね。日本に帰ってから、食べてもすぐ吐いちゃうし。10kgも痩せて子供みたいな体型になってました」
「僕は毎晩のように、自分の子供を殺してしまう夢を見ました」
「カラダ張ってますね~」
菅井さんはこんなこともおっしゃっていました。「シロアリの巣に赤ん坊を納める時、まるで女性器のように巣に裂け目を入れる。地球に帰しているようだった」。
自分がそんな光景を見たら、心のなかでどう処理するのか、いくら考えても答えは出ませんでした。
危険と隣り合わせ! 無法者集団ガリンペイロ
続いてはアマゾンに眠る金を掘り続ける男たち『ガリンペイロ』について。国分さんたちは無法者の集団である彼らと、50日間も寝食を共にしたという。
ガリンペイロ
金鉱採掘人、発掘人のこと。主に、ブラジル・アマゾン奥地で1970年代に起きたゴールドラッシュ以降に流入し、過酷な生活・労働環境下で一攫千金を夢見る人々を指す。
「僕、この回がものすごく好きだったんですけど、撮るのは大変だったでしょうね」
「彼らは先住民と違って銃を持ってるし、犯罪者も多いからほんと何されるかわからない」
「冒頭でボスに撮影許可をもらいに行く時から、すでに銃をチラつかされてましたもんね」
「見てて怖かったのは、人を殺したことがあるっていうガリンペイロが、ナタを担いで国分さんたちに接近してきた時です。どんな心境だったんですか?」
「『カメラマン(菅井さん)のほうに行ってくれて助かった』と」
「いや笑い事じゃないから! ほんとに怖かったよ」
「他にも、ガリンペイロ同士が些細なことでケンカになって、銃に弾を込めはじめたことがあったじゃないですか」
「あれはやばかった! 走って逃げたもん」
「菅井さんの声が入ってましたよね。『銃だ! やばいやばい!』って逃げていくのが、いや気の毒ではあるんですけど、メチャクチャ爆笑しました」
「その場にいたら誰でもああなるって! 映像だとカメラのおかげで明るく見えるけど、肉眼で見ると夜だからすごく暗いんですよ。最初は何をしてるのかわからなくて、銃だと気づいた時にはもう弾丸を込めてるんだから」
「ガリンペイロって脛に傷持つ人が多いから、仲間内でもちょっとしたことで尻尾を踏んづけちゃうことが多いんですよ。そうなるとお互い散弾銃を持ちだしてきて、そして……みたいなことはしょっちゅうあるんです」
「マッドマックスかよ。そんな人たちによく話を聞けましたね」
「仕事じゃなかったら絶対いやだけどね。だってジャングルの真ん中だから、もし僕らが殺されて埋められちゃっても、誰にもわからないんですよ」
「そうそう、ジャングルだと死体なんて3日で跡形もなくなっちゃうからね」
「ん? ちょっと待ってください。『殺されても誰にもわからない』って、国分さんたちは一体何人編成のチームで取材に行ったんですか?」
「3人です」
「少なーーっ! 引越し屋のバイトより少ないじゃないですか! もっと大規模な人数で行った方が安全なんじゃ?」
「それだとお金もかかるし、相手も警戒しますからね。少人数のほうがむしろ安全なんですよ」
「今回のスペシャルでは、森を追われたイゾラドという未開部族と、森を切り拓くガリンペイロ、いわば正反対の人々を、どちらが悪というでもなく、淡々と両方の視点で撮っていたのが印象的でした」
「どちらか一方が正しくてどちらかが悪だ、というのは横暴ですよ。それはドキュメンタリーじゃないと思う。それぞれに立場と理由があるわけだから」
「ディレクターは傍観者でなければならない、ということでしょうか。菅井さんはいかがですか?」
「僕はそこまで冷静ではいられなかったな。ガリンペイロというのは勝手に森を拓いて、そのせいで住処を追われた先住民と争いになって、殺したりしてきたんですよ。僕には割り切れない部分もありましたね」
「国分さんみたいに傍観者に徹しきれる人って、そういないですよね」
「でもどちらかに偏った視点だと番組としてつまんないですからね。実際、見てどうでしたか?」
「……正直、めちゃめちゃおもしろかったです」
「ヒトの住む世界からはみ出した人間たちの、なんとも言えない悲哀みたいなものがありましたね」
「それはよかった。でもあれ、実は撮ってる時は『おもしろいものが撮れてないような気がする』と思ってすごく焦ってたんですよ」
「そうね。だから帰るギリギリまで撮ろうってことになって。合計50日の密着取材になりました。結果的に良い絵が撮れて良かったですよ」
「あんな人たちに囲まれて50日過ごしたのを、『良かった』と言えるのって、もうどこかおかしくなってますよそれ」
「怖いだけの無法者じゃなくて、彼らにはどこか悲しさがあるんですよ」と言う国分さんに、菅井さんが「自分と似てるから気持ちがわかるんじゃない?」とおっしゃる一コマも。ドキュメンタリーという鉱脈を掘り続けるガリンペイロ……?
未開の先住民族「イゾラド」、文明と出会う是非は?
話はいよいよ、数日後に放送される『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』へ。先住民族は文明と触れずに生活した方がいいのか? それとも……?
イゾラド
アマゾン源流域、ブラジルとペルーの国境地帯にいるという謎の先住民族。部族名も言語も人数もわからない。「隔絶された人々」という意味で『イゾラド』と呼ばれる。
「では最新作『イゾラド』についてお聞きしたいんですが、まず試写を見た感想を言わせてください。めちゃくちゃドキドキしました」
「緊迫感ハンパなかった」
「ありがとうございます。苦労しました」
「イゾラドは実際に現地で暮らす村人(文明人)を襲ったことがある先住民なんですよね? そんな彼らを探し行くということで、防弾チョッキのようなものは用意されたんですか?」
「もしイゾラドが襲ってきたら本当に危険だからって言われて、防弾チョッキみたいなやつは渡されました。ロケに行ったのは、イゾラドがよく目撃される『イゾラド最前線』と呼ばれる村だったから」
「僕は着ませんでしたけどね。矢が飛んできたら、その時はその時だろうと思って。人の縄張りに来て矢で射られるなら、仕方ないですよね」
「な、なんでそんなに落ち着いてられるんですか。彼らは矢や槍に強力な毒を塗ってるらしいじゃないですか。かすっただけで死んじゃうんですよ!? 怖くないんですか」
「僕は怖かったですよ。どれほど危ない場所かという説明をずっと受けてたから。もしイゾラドが現れて、こう矢が飛んできたら、ここに隠れよう、みたいなことばっかり考えてました」
「まさに死と隣り合わせ……! イゾラドはどれくらいのロケ期間だったんですか?」
「イゾラドに関しては3日くらいなんです。なぜかというと、乗ってる船が転覆したり、色々なトラブルが……」
「へ? 船が転覆した!? そんなことを当たり前のようにスルッと言わないでください」
「現地に向かってる最中、船にトラブルが起きて転覆しちゃったんですよ。今回はそういった諸々の事情があって、結局現地には3日くらいしか居なかった」
「とにかく村に着くまでが大変だったよね。僻地すぎるよ。何回も、向かってはトラブルで引き返し、っていう繰り返し」
「イゾラドのような先住民が文明と接触することについて、どのようにお考えですか?」
「個人的な意見を言うと、先住民にはそのままの姿でいてほしいですね」
「でも今のままでいると、病気で絶滅してしまったり、文明人と鉢合わせして争いになったりということもあり得ますよね」
「そうなんです。どっちが正しいのかわからないから、客観的に撮るしかないというのもあります。そもそも僕がどう思おうと、このままいくと“文明と出会わない”なんてことはあり得ませんから」
「いくら保護区といっても、入り込む森林伐採業者などは居るわけだし、そもそもイゾラドの方から人里にやってきたらどうしようもないですね」
「先住民のことに非常に詳しい方がいて、話を聞いたところ、あと1~2年でイゾラドはいなくなる(未開の部族ではなくなる)と言ってましたね」
「1~2年って、もう目と鼻の先じゃないですか!」
「一度文明に出会ってしまったら、『今のは忘れて未開部族に戻れ』なんて、とても言えない。実際今でも、文明人が森に捨てていったステンレスの鍋を持ってたり、拾ったTシャツを着ているイゾラドだっているんです」
「一回でもTシャツを着て『あぁ、服を着るとあったかいんだ』と知った人に、『未開のままでいてほしいからもう着るな』というのも、それはそれで押し付けのような気がしますね。う~ん」
「ね? 誰にも答えを出せないんです。だからできるだけありのままを撮って、そして、みんなで考えるしかないと思う」
「『最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』は、そんな問題をみんなが考える良い機会になりそうです。今日はありがとうございました。」
「ありがとうございました」
「はい、ありがとうございました」
というわけで、先住民が文明と出会う是非や、自分と違う倫理観の話、熱帯にだけ存在する真実など、興味深い話をたくさん聞けたインタビューになりました。
みなさんの解答はどのようなものになったでしょうか。
最後に、もうすぐ放送される『大アマゾン 最後の秘境|第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々』の、冒頭部分を少しだけ見て頂きましょう!
果たして国分さんと菅井さんのチームは、イゾラドを発見することができるのか?
8月7日(日) NHK総合 21:00~21:49をお楽しみに!
NHKスペシャル|大アマゾン 最後の秘境|第4集 最後のイゾラド 森の果て 未知の人々
ドキュメンタリー番組の楽しみ方を、漫画家・宮川サトシが描いたこちらの記事もどうぞ!
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ライター:ギャラクシー
株式会社バーグハンバーグバーグ所属。よく歩く。走るし、電車に乗ることもある。Twitter:@niconicogalaxy