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日本に30人しかいない「空師」の取材をしたらマジ泣きしてしまった

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日本に30人しかいない「空師」の取材をしたらマジ泣きしてしまった

こんにちは。ヨッピーです。

突然ですが皆さんに問題です。

Q:この方の職業は何でしょうか?

 

この方の装備を見て「あっ!アレだ!」って気づいた人は相当なマニアです。

 

正解は……、

 

空師(そらし)

 

という職業です!!

まあアレですね。記事タイトルにも「空師」って書いてますもんね。

「そりゃそうやろ」っていう感じですよね。

 

というわけで本日は「空師」というお仕事について取材したのですが、取材を進めるうちに僕がガチ泣きしてしまうというイベントに遭遇してしまいました。取材中に泣いたのは初めての経験だわ……。

 

空師とは

空師とは、こんな風に高い木に登って伐採するのがお仕事です。

 

「住宅街にデケェ木があって、台風の時に倒れたら危ないから切ろう」とか、

「腐りかけた木が今にも倒れてきそうだから切っておこう」とか、

そういう需要に対応するのが空師のお仕事で、高い木に登る「空に近い仕事」だから「空師」と呼ばれるようになったそうだ。古来から日本に存在するお仕事なのだけど、今では日本全体でも30人くらいしか居ないそうです。

 

本日はこの、「空師」のお仕事を見せて頂きました!

 

取材に来たヨッピーこと僕(真ん中)と、株式会社アットライフのこんちゃんさん(右)。

 

空師の仕事は基本的にチームを組んで対応するそうです。

 

実際に木に登る空師と、地上でそれをサポートする部隊の分業制になってまして、空師が切った木をロープ使ってゆっくり地面におろしたりとか、全体のバランスを地上から確認してインカムで指示を出したりします。

 

ロープの端っこを試しに持たせて頂く(実際にはロープの先に何もぶら下がってないけど)。切った木がそのままドカドカ落ちて来ると超絶危ないので、滑車なんかを駆使してゆっくり木をおろしていくのですが、切った木が頭上から落ちてくる可能性もあるので気を抜けないんだそうだ。

 

 

この日は「興味ある!行きたい!」と騒ぎだした友人2人を連れてお邪魔したのですが、器具をつけて木に登る体験もさせて頂きました。

 

おっ、3人とも上手いですよ!

我々は野生児ですからね。

 

現場を見に来た、株式会社アットライフ代表の赤松さん。

こんな男くさい仕事なのに、なぜ女性が代表なのかについては色々と事情があるのであとで説明致します。

 

ロープを駆使してスルスル登っていく空師のたくやさん。

 

ロープクライミングの技術に似てますね。

そうですね。ロッククライミングとかロープクライミングなんかは、使う機材や技術に共通する部分はありますね。

「木を切る仕事」って聞いてたから来るまではなんとなく林業みたいなの想像してたんですが、ぜんぜん違うなーーー。

そう、林業って山の中に入って木を切るので、根っこの方から切るじゃないですか。根っこから切って、あらかじめ予定していた方向に倒す、っていう。でも我々が対応する木はそもそも住宅街の中だったり、倒す事が出来ない木なので上から少しずつ切って、切った木をゆっくりおろしていくんですよ。

 

こういう状態の木を切るので「倒してから解体」という工程が出来ない。たしかにこの木を放置してたら危ないのもわかる。

 

林業も危なそうだけど、こっちはさらに怖そう。

すごく神経を使う仕事ではありますね……。例えば、家の庭に木があったとして、その家の持ち主がお亡くなりになってそのまま放置されたりすると、気付いたらすごく大きく育ってたりで危ないんですよ。大きく育つ前の木なら処理するのはそんなに難しくないんですが、大きくなればなるほど難しくなります。

今、空き家がどんどん増えてるしそういう事案も増えるんでしょうね。

 

空師、たくやさん28歳の腕。

 

なんか、右腕だけデカくなってません?

木に登って左手で体制を保持しつつ、右手でチェーンソーを動かす事が多いので右手だけ発達するのかもしれないですね。

「花の慶次」に出て来る岩兵衛みたい。

 

©隆慶一郎・原哲夫・麻生未央

「花の慶次」に出て来る岩兵衛。左腕で船を運んでいたせいで左腕だけ異常に発達した、という設定。

 

先代の話

そもそも、どういう経緯でこのお仕事をはじめたんですか?

元々は便利屋だったんですよ。先代、つまり私の主人ですが、16歳から色んな仕事をやってたんですね。バーテンだったりおしぼり屋さんだったり営業だったり。それで色んな職業を経験していたので「なんでも出来るな」という事で30歳で独立して便利屋をはじめたんです。

そしたら「木を切ってくれ」って?

そうそう。空き家の掃除をしたりゴミ回収したりする中で、「木を切って欲しい」っていう依頼があって。でも何にもわからないからとりあえずハシゴとノコギリ持って現場に行ったら造園業者の人に「それじゃ無理だよ」ってすごいバカにされて火がついちゃったんですよ。

 

本当はこんな感じだそうです。そりゃハシゴとノコギリじゃ無理だわ。

 

アメリカには「アーボリスト(樹護師)」っていう職業があって、木に登って枝を払ったり今我々がやってるように切ったりっていう仕事があるんですよ。それで先代が「その技術を身に着けよう」という事で色々調べて機材も買い揃えて夜の公園で木に登る練習をしたり……。

へーー、調べたらアメリカには養成所まであるんですね。

そう。それでチェーンソーの免許取ったり高所作業の資格取ったり、色んな講習を受けて練習して、1年も経たないうちに30mの木にも登るようになって、それでなんか憑りつかれちゃったんですよね。

なるほど、楽しくなっちゃったんだ。登山にハマったりクライミングにハマったりする人と同じなんだろうなぁ。しかもこの仕事ならお金も稼げますもんね。

そうなんですよ。それで便利屋業より伐採の仕事がどんどん増えていって。たくやくんは親戚なんですけど、元々造園の仕事をしていたから「見学させて欲しい」って言って一度見に来て、そのままこの仕事をやるようになりました。

 

なんていうか、カッコ良かったんですよね。高い木にスルスルって登っていって、本当に早いんですよ。

そう。本当にすごかった。それでどんどん難しい現場までやりはじめるんですよね。

「難しい現場」って例えばどういうのですか?

単純に大きければ大きいほど難しくなりますし、斜面に立ってる木とか、すごく狭い土地に立ってる木とか、難しい現場もあるんですよ。でも先代はどれだけ難しい現場でも断らないから、他の業者さんが「ウチは無理だけどあそこなら出来るかも」ってウチを紹介するようなケースが増えてくるんですよ。

 

どう考えても怖いなこれ。

 

それで更に燃える、みたいな。

そうそう。だからお客さんには先代のファンも多いんですよ。大宮にある普門院さんていうすごい大きなお寺の住職は先代のものすごいファンで、ずっとお仕事を頂いてます。

本当に技術がすごかったんですよね。見てると「うわー、すごいな」って圧倒される感じで。

空師の仕事の楽しさってなんなんですか?

うーん、爽快感とか達成感ですかね。意外とものすごく頭を使うんですよ。あそこを切るとこうなるから、そのあとこっちをこうして……、って計算してから切るので、それがばっちりハマった時とか、切ってる最中とか、切り終わった後とか、変なスイッチが入ってるのが自分でもわかります。

「クライマーズハイ」に近い状態になるのかな。でも、家族からすると気が気じゃないですよね。

そうなんです。危ない現場はちゃんと断って欲しいし、「もう年齢的にもピークは過ぎてるんだからいい加減登るのはやめて」ってずっと言ってたんです。5年くらいずーっと。それで「もう今年で最後にするから」みたいな事を言ってたのに……。

先代がお亡くなりになったのは何歳の時でしたっけ。

47歳ですね。やっぱり、結婚して子どもが出来るとすごく怖いんですよ。毎日毎日、先代が現場に行く朝には「今日はちゃんと帰って来てくれるかな」って思いながら送り出しますしね。ケガだって多いでしょう。本当に気が気じゃなくて。

 

一度、先代がくも膜下出血で倒れた事があって、一週間くらい生死の境をさまよって、命はとりとめたんですけど、お医者さんには「後遺症で半身不随になるかもしれない」って言われて、「これでもう木には登れないな」ってある意味安心したような所もあったのに、退院後一か月もしたら「リハビリだ」って言ってまた木に登る練習をはじめて。本当に何度も何度も「もうやめて」っていう話をしてたんですけど……。

先代は足の骨が折れてても登る人ですからね。

そう、亡くなる2ヵ月前くらいにも足の骨を折ってて、「これでやめてくれるかな」と思ってもやっぱりやめなくて。毎日電話がかかって来るたびに「ひょっとして」って怖くて仕方がなかったんです。そんな毎日を過ごしていたある日、16時くらいかな。子どもと遊んでたらこんちゃんから電話がかかってきて、こんちゃんも泣きながら「ダメかもしれません」って。

斜面に映えてた木が根っこから抜けて挟まれちゃったんですね。ものすごく大きな木に。すぐに救急車も呼んだんですが、簡単にどかせる木じゃないので作業も難航して。普通の救急じゃもうどうしようもないからレスキューの人達が何十人も来てくれて

 

下の子が産まれてすぐの頃。

 

立派な野生児に育っているそうです。

 

子どもが当時6歳と4歳かな。下の子はまだあんまりわかってなくて「パパ死んじゃったの」って幼稚園で言うくらいだったんですが、6歳の男の子はもう一か月くらいずっと泣いてて。毎週日曜日は必ず家族で山とか川に出かけて、そういう自然のある所で色んな事を教えてたのでパパっ子で、全部パパに教わってたから……。

ハト捕まえたり蜂を捕まえたり色々してましたよね。

 

本当にパパ大好きだったから……。今は元気なんですけど、先生から「たまに寂しそうにしています」って。

あーダメだ。僕も泣いてしまう……。僕も小さい男の子がいるから……。

僕からしても親同然みたいな人で、とにかく格好良い人だったんですよ。それに先代の悪口を言う人を見た事がない。

 

端的に思ったのが「強そう」。

 

なんか、今回「取材してくれ」って言われた時に僕聞いたじゃないですか。「取材で最終的にどうなると御社にとって良いんですか?採用の応募ですか?それとも仕事の依頼とか?」って。そしたら「応募も依頼もあるに越した事はないけど、とにかく先代の仕事をどこかに残しておきたいんです」って。

そうなんです。子どもが大きくなった時に、「パパはこういう人だったんだよ」って見せてあげられるようなものをとにかく残しておきたくて。

それで今社長が継いで仕事を続けてるんですね。

我々、アットホームって言い方はあれですけど、インカムで冗談言いながら仕事してたりとか、そういう「楽しくやる」っていうのも先代が作った文化なんで、それもちゃんと残したいし。

だから、こうやって取材して頂けるのは本当にありがたくて……。

 

このご自宅も相当立派ですよね。腕一本でこの家建てたんですもんね。

そうなんです。私の希望にも全部答えてくれて。

お子さんも立派な野生児に育ってるみたいですし、こうやって意思を継いでくれる人も居て、そういう意味ではやっぱり立派に生きて来た証拠みたいなものはたくさん残ってるんじゃないかと思います。

 

まとめ

というわけで「空師」のお仕事について、いかがだったでしょうか。

 

「木」って、大きくなればなるほど切るのが難しくなるし、当然費用もかさむようになるので、「あれ、そろそろどうにかしなきゃ」とか思いつつもついつい放置している人、アットライフさんにお願いすると良いんじゃないでしょうか!

 

伐採屋・解決本舗(アットライフさんのHP)

https://kusakariya.com/


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