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世界で最も愛情のある伝統市場を通して、食と農業から町を学ぶ|ガイドブックアウトサイドin台湾

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世界で最も愛情のある伝統市場を通して、食と農業から町を学ぶ|ガイドブックアウトサイドin台湾

 

こんにちは、連載「ガイドブックアウトサイド in 台湾」の水先案内人のピギーです!

 

タピオカブームは毎回あっと言う間に過ぎ去ってしまいますが、日本でも食だけに限らない台湾のブランドや文化が広まってきている気がします。

 

そうして、台湾文化に触れる機会が増えていく中で、すでに台湾に興味を持つみなさんは、次回の旅行が首都である台北だけではちょっと物足りないのでは!?

 

 

台湾に長く暮らしていると、改めてこの小さな島には多様で、独自な文化が大小の地域で花開いていることを感じます。

 

この連載の目的は、台湾の伝統的な市場をテーマに、ローカルな人々の視線を通じて、各地域の魅力や取り組みを伝えること。そうすることで、台湾を訪れた人が、様々な地域を訪問するきっかけをつくりたいと思っています!

 

 

スーパーマーケットやネット販売が普及した現代では、日々の買い物もついその便利さに流されがち。時代遅れと言われてしまうこともありますが、近年は市場で若い人たちの姿を見かけることも増えてきました。

 

台湾にはまだまだ多くの伝統的な市場が街の中に残っていて、エネルギーを生み出しています。

 

そうした伝統的な市場での様々な取り組みの裏側には、それぞれの地域で好奇心と強い意志を持ちながら、粘り強く活動する人々がいるのです。そうした方々をガイドに迎えた連載も最終回! 4回目となる今回は、台湾北東部に位置する「宜蘭(イーラン)」を訪ねます!

 

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農業は儲からないと言われて久しい台湾の社会

バスでも電車などの公共交通機関でもアクセスが容易です

 

宜蘭は台北から車で1時間ほどの距離にあります。サーフィン、登山などのアウトドアスポーツに加えて、温泉などのレジャーも体験できる、山に囲まれた自然豊かな町として知られています。

 

私も何度も訪れたことがあるのですが、広大な蘭陽平原(ランヤン・ピンユアン)にはいつもゆったりとした雰囲気が漂っています。実際、宜蘭は家族や友人と静かな休暇を過ごす場所として人気のエリアです。

 

さらに、きれいな水と肥沃な土壌があることから、宜蘭は農業が古くから盛んでした。ここ10年は、そうした資源を活かした農園や牧場が観光客向けに随分と開いてきたように思います。

 

 

産業の形が変化する中で、「土地」そのものに関する人々の価値観も大きく変わってきているようです。

 

たとえば、農業を営んでいる人たちは、日本と同じように高齢化が進むと同時に後継ぎがいないという問題を抱えています。その結果、農業を営むよりも、農地を利用して家を建てたり、民宿を経営したり、土地を売ったほうが儲かるという判断をしてしまうとか。

 

 

こうした判断を私たちが責めることはもちろんできませんし、ある種、やむを得ない合理的な判断とみることもできます。

 

しかし、そうなったときに私たちの基本的な食生活は誰が支えることになるんでしょうか。

 

さらに、私たちの生活にこのような均質的な選択肢しか残らないとしたら、農業や市場などと紐づいた暮らしは、当然ながら徐々に失われることになります。

 

こういった選択は、「これまでの農業を軽視した教育の影響が大きい」と考えたのが、本日のガイド、宜蘭の市場で食と農の啓蒙活動をしている「少年おじさん」こと方子維(ファン・ズウウェイ)さんです。

 

彼は農業という道を選択する若者が少ないのは当然と受け入れ、日本やオーストラリアで農業を学んだことを活かして、「次の世代の人々と、農業との距離をいかに縮めるか」に注力することを選びました。

 

市場の北館に構えるオフィスで取材を実施しました

 

話を聞いた人:方子維(ファン・ズウウェイ)

宜蘭生まれ。学生時代の専門はビジネス管理。2015年に農業協会の仕事を辞めて日本の静岡と福岡に行き、農家と一緒に暮らしていた。帰国後、『音楽米』という会社を立ち上げ、2018年に「宜蘭の市場でぶらぶらしよう」というプロジェクトを開始。現在は学校や観光局と結び、市場を中心に様々なツアーガイドを行う。

 

都会で最も農業的な場所、それが市場だった

今回、方さんと一緒に訪問する駅近くにある南館市場と北館市場は、宜蘭で生まれ育った人にとって慣れ親しんだ市場のひとつです。

 

この市場の歴史は古く、1912年(明治45年)1月24日に開幕した南館市場はアクセスが便利なこと、そして整然とした清潔な場所であることから、当時から多くの出店者が集まってきました。20世紀初頭には出店者数も売り上げも台湾で2番目に大きい市場になったとか。

 

 

これまでの連載記事でも触れてきましたが、伝統市場 *1は、人情があり、野菜などの価格も安いのですが、量販店の台頭や人々の生活習慣の変化によって、少しずつ数を減らし、衰退してきています。

 

現在は、休日やお祭りのときに人が集まる場所になってきていて、出店者は若い世代があまり行かないような薬草のお店、お菓子屋さん、雑貨店などが中心です。

 

*1 衣食を中心とした台湾で古くから営業される市場(詳しくは連載の第一回を参照)

 

そんな中、方さんは、若い世代が市場と接点を持てるように、市場の仕組みやそこで働く人々の物語を紹介するガイドツアーを企画。

 

地元の学校と連携することで、食材の調達や生産、調理方法まで理解を深めてもらう食農教育に着手しています。

 

「取材の日も近隣の中学生への市場のガイドツアーを行っていた

 

なぜ、農業に強い関心を持っている方さんが、市場のガイドツアーを学校向けに行うのでしょうか? 一見遠回りにも見えるそのアプローチについて、話を聞いていきましょう!

「方さんは大学では経営学を学ばれていたとのことですけど。なぜ農業に興味を持たれたのでしょうか? そして、その後『市場』という場所に注目した理由を教えてもらえますか?」

「農業は以前から関心を持っていて農協で働いていました。そこから、自分でも農業に関わっていこうと思ったときに、それまでに培ったマーケティングの経験を活かしてより広めていきたいと考えたら、そもそも今、農業そのものが私たちの生活からあまりにも遠いところにあるような気がしたんですよね」

「なるほど」

「だから、市場を入り口として、農業をもっと身近なものにすることができないかと思ったんです」

 

「たとえばどのような点で、その『入り口』をつくっているんですか?」

都会で一番農業的な場所があるとすれば、それは市場です。野菜や果物はいつも農家から直接、伝統市場に運ばれてきますよね? そうしたものに触れられると、日々の変化で季節を感じ取ることもできるし、地元の食材の特徴を知ることもできます。それが第一歩ではないかと思ったんです」

「たしかにそうですね」

「それに、台湾の市場は農具を扱うお店との距離も近くて。学生が市場に行く機会があれば、小さくとも『社会の成り立ち』を肌で感じることができるのもいいところです」

「言われてみれば台湾の市場は、『商』と『工』の距離が近い距離にあるのが特徴のひとつなのかも。農具もそうですけど、レストランが麺をつくる工場になってたりもする。だからこそ、いいフィールドワークの材料になると。中でも、方さんが学生に向けて力をいれているのはなぜですか?」

 

 

「我々の親世代を中心に『農業は上の世代がやるもの』という考えが根強いですよね。それに時代ごとに成功体験が違うから、世代の想像力に差がある。だから、上の世代の意識を変えるのはとても難しいと思ったんです」

「農業に限らず、世代ごとに固定化されたイメージというのは、変えていくのが難しいものですね」

「でも、楽観的に考えたら、少なくとも、今の若い世代に『農業は大変だ』とか、『遠い存在だ』とか、そんな先入観はないはずでしょ? それならまずは、『中学校や高校と協力したらいいんじゃないか?』と」

「近隣の学校とはどのような取り組みをしているのでしょう?」

「たとえば、学校の美術の授業と連携して、生徒を市場の紹介に連れ出したり、市場の出店者の看板づくりを手伝ってもらったり、最終的にはそれを展覧会にまで発展させたり。出店者は今の時代を生きる学生からのフィードバックを受けることができるし、学生は社会的な構造の理解や、市場とのつながりを得ることができます」

 

「印象に残るエピソードはありますか?」

「実は、私はこの活動をもう8年間もやっていて。意義を感じられたのは、最近になってようやくなんですよ」

「8年もやってようやく!」

「たとえば高校時代に私のツアーに参加してくれた学生の中に、今は他の町の大学に進学した人がいます。彼はたまに宜蘭に帰ってくると、市場に行って、ツアーを通じて知り合った店主を訪れたみたいで、『お正月の春巻きを買った』と、私に報告してくれたんです」

「その学生にとって、帰る場所のひとつを宜蘭につくれたんですね。感動します。学生のツアーの他にも、国外の観光客に向けたツアーも行っていますよね?」

「やってますよ! ようやく往来も回復してきましたし、最近は香港やシンガポールから多くのお客さんが来てくれています」

 

「海外の方と台湾の市場について、どんな話をされるんですか? 純粋に、同じツアーを何度もするのがすごいと思ってて(笑)」

「少し前にお客さんから『台湾人がよく使う農民服は、実はオランダと関係があるのでは』と言われたことがあります。

 

方さんのお店で販売されている農民服(カラーver.)

「これを着ているオジサンは市場にたくさんいて、私たちは見慣れてしまっていますよね? その衣装の歴史を、私自身も知ろうとはしていませんでした。しかし、このスリッパのロゴもよく見ると、オランダ東インド会社のロゴなんです。同じことを100回やっても、ターゲットが違えば、新しい発見があるのがおもしろい。だからこそ、やり続けることに意義があると思うんです」

 

土地の力を引き出す親から子への引き継ぎ

2018年、方さんは宜蘭市場(北館市場・南館市場)を拠点とした「宜蘭の市場でぶらぶらしよう」プロジェクトを立ち上げ、地元30校の生徒や先生を市場に導き、食と市場について学ぶ機会をつくりました。

 

「事務所のポスターには多くの書き込みが寄せられている

 

さらにこれまでアジア・欧米23の国や地域から旅行者を招き、市場について学ぶ機会や、食品の買い付け、農村での料理体験を実施

 

「よりローカルで、よりインターナショナル」を合言葉に、複数の視点からひとつの市場を徹底的に読み解き直しています。

 

そうした取り組みが評価され、宜蘭市場はオランダの旅行会社から「世界で最も愛情のある伝統市場」と賞賛されたこともあるそうです。

 

方さんの実家の洋服店

 

実は、方さんは市場育ち。

 

母親は宜蘭市場で洋服屋を営み、家族はそのお店の2階に住んでいました。だからこそ方さんは、市場で売っている果物や野菜のことだけでなく、人間関係や、バックグラウンドについても熟知しています。

 

こうした知識が、ガイドツアーに説得力をもたらし、そして訪れた人が愛着を持てるように働きかけるのです。

 

そんな方さんのキャリアはどのようなものなのでしょうか?

「方さんは、ワーキングホリデーで日本とオーストラリアに行ってますよね? どういったことをされていたんですか?」

「最初は、『どうして台湾では農地が減ってしまっているのか?』という疑問があって、それに関する解決のヒントが欲しかったんです。日本では語学学校に通っていたのと、福岡と静岡で半年ずつ、農家で生活しながら農業そのものや、農業体験について学びました」

 

「外に出て、台湾を見てみていかがでしたか?」

「台湾の社会全体の価値観として、『農業は儲からない』というものがあると思うんです。野菜や米を作っても年間で40〜50万台湾ドル(おおよそ200万円前後。2023年6月時点)しか儲からないから、民宿にするか、売って数千万ドル儲けたほうがいいとなってしまう。でも土地を手放してしまうと、世代の積み重ねができずに農園はあっという間に途絶えてしまうんです」

「世代の積み重ね?」

「そうです。祖父母の時代には、都会に行って野菜や果物を売ったり、簡単な商売をしたりする機会がありました。両親の時代には、大都市に行って働いてお金を稼ぐか、農園を大きくするという機会がありました。そして今、我々の世代が食と農の観光サービスや体験、教育ツアーを行うようになりました。

しかし、おもしろいのはどの世代も必ず『慣れない土地』に向き合って、その場所との関係を構築する必要があるということです。だから土地の力を最大化して、価値を引き出していくのは世代を超えた連携があってこそだと感じていて」

 

「そんなこと考えたこともなかったです」

「でも実は今、宜蘭に高速鉄道を走らせるという話が出ていて……。このことで、また先祖から引き継いだ土地を手放さないといけない人が出てきてしまう」

「台湾を高速鉄道で一周させるという話ですよね。今は西側にしか走ってないけど、東側にも走らせるという」

「そうなんです。では、もし家族の土地が売られてしまったら、そういった世代間の連携はどうなってしまうんでしょうか? 今は、帰るべき土地があって、そこで生活するおばあちゃんがいるから世代を超えてつながれるのであって、土地がなかったらみんなバラバラになってしまいますよね」

 

市場のお店は2世代か3世代で営まれていることが多い

 

「その先にあるのが、土地に紐づかない均質化された都市の暮らしだってことですよね」

「そうです。だから、便利になるかもしれませんが、私は高速鉄道に反対しているんです。ここ10年、20年と農地はいくつか犠牲になるでしょう。そうした流れにのっかることなく資源を再編成し、誰かの決定に今までと違う選択肢を少しずつ与えることが私の活動の第一歩です」

「そのひとつが市場を通じた、土地に紐づく農業の再生なんですね」

「市場には私たちの生活の本質があります。対話が必要で、前の世代の知恵が息づいていて、現代の台湾でそうした場所は随分と少なくなりました。だからこそ、その入り口となる市場は今も、それなりの価値があると思います」

 

生きる術が生きる、市場という場所

伝統市場は、農産物の販売所であり、近隣住民が集う文化センターであり、世界を旅する人々のためにローカルな生活を紹介する博物館でもある。それは、これまでの取材を通じて私も肌で感じ取ってきたことです。

 

そして、私は市場を守ることは、ただシンプルに「見過ごしてしまいがちな小さな市場の価値を再発見していくこと」なのではと感じています。

 

そうしたエピソードは宜蘭市場にもあって、北館というエリアに50年以上続く漢方薬局の店主がいます。

 

彼女は「魔法のおばあちゃん」と呼ばれ、普通のハーブを蚊よけパックや健康茶、冷えピタに変身させることができます。

 

普段は娘さんと2人で方さんのツアーのガイドも務め、参加者にさまざまなハーブティーのつくり方について教えています。

 

 

近代化の中で、一度はその価値がなかなか認められにくくなったもの。それでも、そこに詰まった知恵や技術に今もう一度目を向けると、新しい発見があります。

 

そんな彼女は、最近では伝統市場そのものが少なくなっていることを残念がっているのと同時に、「市場とはどんなもので、どんな仕組みがあり、そしてどんな大変さがあるのか」を知ってもらうため、方さんの市場のガイドツアーはいいモデルケースだ、と語っていました。

「学校との授業の連携は、どのように行われているんでしょうか?」

「市場での学びを産学連携のカリキュラムそのものに組み込んでもらっていて。そのステップは、大まかに3つに分けています。

ひとつ目は、学校を訪問して台湾や海外の伝統的な市場についての講演を行い、生徒の好奇心を引き出すこと。ふたつ目は、教師と生徒を招いて市場のツアーに参加してもらって、市場の文化に直接触れてもらうこと。3つ目は、学生が市場を舞台に先生から与えられた課題をこなすことで、順を追って生徒の学習意欲を刺激するイメージです」

「知識を得ることから始まり、体験を通じて、最終的には自らが市場に関わるステップになっているんですね! その過程を通じて、社会の仕組みに徐々に触れていくと」

 

台湾の市場にはこうした手仕事の現場も多く残る

 

「市場はとても賑やかで知的な場所なんです。市場のおいしさを味わいながら、働く人の足跡を追いかけ、手仕事の技術を学ぶ。そうした生きる術はどこの教室でも学べないことなんです」

「私たちが長い時間をかけてそれぞれの場所で培ってきた知恵と経験が詰まってますもんね」

「そう。食は社会や文化と密接に関係しているから、社会を知るための大切な一歩として、食卓に並ぶ食べ物がどこから来ているのかを知ることは大切です。それが食農教育の基礎となる考え方ですね。世の中がどんなに便利で速くなったとしても、私たちは毎日食事をする必要がありますから」

 

「そして社会を知っていくと、その地域のアイデンティティも自然と育まれていきますね」

「そうです。そうした意味でも、市場もそうですし、土地という動かせないものに紐づいた農業というものが非常に大切になってくるわけです」

「方さんのようなツアーは実は、誰でもできる活動ですよね。でもやる人が少ないのって、なぜなんでしょうか?」

「わからないですが、前向きに考えれば、少なくとも私はそれをやり始めてますから。そして、長い時間がかかると思いますが、私たちの未来には変化の余地があると思っています」

「最後に、方さんはご自身で市場でやっていることはある種の地方創生だと思いますか? 客観的に見れば、そうした活動と捉えられることも多いと思うのですが」

「自分では、全然そういうふうには思ってません!『人々に何ができるか』『人々が一緒に参加することは可能か』、この2点が今、台湾のローカルクリエイティビティの本質だと思います。私たちも、ただ現地のことを観察し、参加することで、問題を発見し、解決策を提案したいだけなんです」

 

さいごに

宜蘭は台北市民にとって日帰り旅行の最適なチョイスです。

 

台北と宜蘭を結ぶ、雪山トンネルが開通したあとは、宜蘭に住み、台北に通勤することを選ぶ人もいるくらい、物理的にも心理的にも近い距離にあります。

 

私も子どもの頃から何度も訪れていますが、きちんと宜蘭のアイデンティティや地域を知る機会は実はありませんでした。

 

博物館や史料館に行っても、なんだかんだ表面をなぞっただけのような気がしていたんですよね。今回の取材を通じて、改めて宜蘭は台北の裏庭以上の存在であるべきだと感じることができました。

 

 

そうした意味でも、私はこの連載をやってよかったと思っています。これほどハイテクで、効率的な社会を生きていて、アナログで、伝統的な仕組みで成り立っている市場からこれほど多くのことを学べるとは、連載前に思ってもいなかったんです。

 

この連載は台北からスタートし、新竹、高雄を回り、台湾の東エリアに位置する宜蘭にたどり着きました。

 

台北の下町では、かつての市場が文化的なスペースに生まれ変わった事例を見ました。新竹では、100年以上の歴史を持つ市場が若者の起業の拠点になっているプロセスを聞きました。高雄では、世代を超えた対話の仕方について学びました。

 

そして、最後に宜蘭市場では、伝統市場の役割を農業の入り口として再解釈することができた。

 

 

「伝統市場の未来」については、近年台湾のマスコミでもよく話題になります。

 

クリエイティブな活動で人々を市場に呼び戻そうとする試みも多いですが、気をつけないといけないのは、市場を「歴史的な風景」と考えてしまわないこと。

 

伝統的なものを、今を生きる私たちと地続きな「場」としてどのように捉え直すのか、そういった感覚こそが、日常的で長続きしていくコミュニケーションなのではないかと思います。

 

この連載はこの記事で終了となりますが、台湾の市場についてはまだまだ学ぶべきことがありそうです。次回、台湾にお越しの際は、ぜひ市場にも足を運んで、お気に入りの場所を見つけてください。

 

連載にお付き合いいただきありがとうございました!

 

また近いうちにお会いしましょう!

 

編集:堤大樹/くいしん
撮影:堤大樹
イラスト:小林ラン


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