神奈川県・横須賀市―
米軍や自衛隊の基地があって、スカジャンが有名で、ハンバーガーとカレーが名物で……行ったことがない人でも、そんなイメージが浮かぶのではないでしょうか。アクセスは、東京駅から電車で1時間ちょっと。
そんな横須賀に今回やって来たのは、恒例のグルメ&飲み歩き企画のためです!
あらためましてこんにちは、ライターのコエヌマです。
というわけで今回は横須賀の「ドブ板通り商店街」でグルメと飲み屋巡りをしてみます。
まず目につくのが、たくさんの英語の看板。横須賀にはアメリカ海軍の基地があるからです。「どこの国に来てしまったのだろう?」と錯覚しそうになりますね。
訪れたのは平日のお昼だったんですが、チラホラと軍人さんが歩いてたりしました。海軍と共存している街であることが伺えます。
ミリタリーやサバイバルグッズのお店も何軒もありました。
かっこいいミリタリージャケットですねー! 中には米軍払い下げの商品もありました。これを使ってた人も、命がけで大変な訓練をしていたのかな……など想像してしまいますね。
そして横須賀と言えばスカジャン!
スカジャン専門店や、刺繍やワッペンの専門店が何軒もありました。
スカジャンというとヤンキーっぽい柄のイメージが強かったのですが、可愛らしいデザインのものもたくさんありました。
本当はもっとたくさんのスカジャンを紹介したいところなのですが、ネットで公開すると、デザインを模倣されてしまう場合もあるとのことで……今回は許可をいただけたお店の一部のものだけにとどめますね。
ほかに横須賀っぽい業態として、米軍関係者向けの不動産屋がいくつもありました。
軍人さんやその家族は、基本的にはベース(基地)の中で暮らしているのですが、許可が出れば外で住むことが可能になります。そういったときに借りる部屋を主に扱っているそうです。
商店街に突然潜水艦が!? と思ったら普通におみやげ屋さんでした。海軍カレーのレトルトが山のように色々置いてあったので、おみやげに買って帰りました。
商店街というと、肉屋や八百屋や本屋があって、地域の人たちが買い物に来るイメージがありますが、ドブ板通りはちょっと違うようです。
観光客が多く、米軍&海上自衛隊の方たちが行き交う、ファッションとグルメのストリートって感じですね。
それでは、おなかも減ってきたのでグルメ&飲み歩きのスタートです!
ドブ板横丁グルメ
TSUNAMI BOX(ツナミボックス)
横須賀と言えばネイビーバーガー! 行列ができているお店がありました。こちらの『TSUNAMI BOX(ツナミボックス)』さんはドブ板でも一二を争う有名店。
ボリュームがエグい!!!!! これは……気をつけて選ばないと食べきれないぞ……
ハンバーガー、チーズバーガー、照り焼きバーガー、アボカドバーガーなどいろいろな種類があります。「ロナルド・レーガン」や「オバマ」など、歴代のアメリカ大統領の名前が冠されたメニューもありました。
せっかくなので、「ロナルド・レーガンバーガー」を注文しました。やばっ!!! 巨大すぎる!
このサイズ感、伝わりますか……? 完全に学生街のデカ盛りメニューで出てくる巨大さですが、店員さんに聞くと、女性でもぺろりと平らげる人も珍しくないとか。
さて、お味の方は……?
ジューシーでウンマ~~~イ!!
滝のごとく流れ出るハンバーグとベーコンの肉汁に、雪崩のようなチーズが絡み合って、とんでもなく濃厚なうまみエキスになっています。これがまたバンズと合うし、新鮮な野菜も良いアクセントですね!
TSUNAMI BOX(ツナミボックス)
住所|〒238-0041 神奈川県横須賀市本町2-5-4
マイクス横須賀店
続いてはメキシコ料理店の「マイクス横須賀店」へ。
あとで詳しく説明しますが、実は「この街の新しい名物はタコスです!」という熱い推薦を受けてやって来たのです
こちらのお店を利用するのは、ほとんどが外国人とのこと。確かに、入り口には日本語の表記が一切ありません。先客も外国人の女性でした。
片言の英語とジェスチャーでタコスを注文しました。すると、付け合わせに豆のカレーライスみたいなのが付いてきました。どうやら、タコスと一緒に食べるものらしいです。
カレーライス・オン・ザ・タコスにして、いただきます。
なんだこれ、辛い! しかも辛いのはルー的なものではなくご飯。カレー的な見た目からは想像がつかない味だけどおいしい!!!!!!! めちゃくちゃスパイスが利いていて、一味唐辛子とかとは全然違う、日本ではあまりない辛さです。これが本場そのものの味なのでしょう。あらゆる部分で、異国情緒にどっぷり浸れました。
マイクス横須賀店
住所|〒238-0041 神奈川県横須賀市本町2-5-2 ミマツビル2F
さて、おなかいっぱいになって、日もすっかり落ちました。次は酒場巡りです!
CHARA(チャラ)
「CHARA」さんは、カウンターとテーブル席がある広いバーです。お客さんは外国人が中心とのことですが、この日は日本人の先客もちらほらいらっしゃいました。
お店ではヒップホップを中心に、レゲエやR&Bなどがかかっていることが多いそうです。音楽に合わせて踊ったり、バーとクラブが融合したような形態なのかな?
ビリヤードやダーツもありました。
横須賀のバーというと外国人客ばかりで日本人の自分は肩身が狭いのでは?と身構えていたのですが、入ってみると日本人客も普通に飲んでたし、店員さんも気さくでよかったです。
CHARA (チャラ)
住所|〒238-0041 神奈川県横須賀市本町1丁目2−5
Venus Resto Bar(ビーナスレストバー)
続いては「VENUS」というバーへ。
ちょっと怪しげな照明だし看板の表記は英語が中心なので、少々不安ですが、せっかく横須賀へ来たので思い切って入ってみました!
店内も怪しいんかい~~!!!
でもママもスタッフも日本語&英語を喋れてフレンドリー! 普通に落ち着けるバーって感じだったので安心してください。
客層は国籍問わずだそうで、日本人も外国人も訪れるのだとか。
その秘密はフードメニューの豊富さ? ガッツリ食べられるの、良いですね。特にフィリピン料理が売りなのだとか。
ロナルド・レーガンのせいでおなかがパンパンだったため今回はスルーしましたが、次回は食べてみたい……。
お店にあるゲームも、ダーツやカラオケのほか、「立体版オセロ」みたいなものがあって、お客さんたちは夢中になっていました。静かに飲むのも、ワイワイ盛り上がるのもいいけれど、ゲームに興じるのもいいですよね。言葉が通じなくても楽しめるし。
Venus Resto Bar(ビーナスレストバー)
住所|〒238-0041 神奈川県横須賀市本町1-9-16
Jack Honch Shell(ジャックホンチシェル)
いかにもアメリカン!な「Jack Honch Shell」お店に入ってみました。けれど、スタッフさんもお客さんもこの日は日本人ばかり。海外からようやく日本に帰ってきたような、安心感を覚えました。
女性スタッフの方に何気なく、「このお店のコンセプトは何ですか?」と聞くと、「VFW公認のお店なんです」と返答が返ってきました。ぶ……VFW?ってなんだ??
VFW(The Veterans of Foreign Wars of the U.S.)とは、アメリカの退役軍人たちによる慈善団体。戦地から戻った軍人さんやその家族のケア、地域社会や国への貢献などの活動をされているそうです。
こちらのお店でも、お客さんに軍人や退役軍人の方がいれば、毎晩9時に戦死者たちを偲んで献杯を行っているそうです(もちろん軍人でない日本人も歓迎のお店です)
ちなみにカレーパンが名物とうかがったので、おみやげに買いました!
Jack Honch Shell(ジャックホンチシェル)
住所|〒238-0041 神奈川県横須賀市本町3-6
ドブ板通りの副理事長に話を聞く
ドブ板通りのことをもっと詳しく知るために、ドブ板通り商店街・副理事長の横地広海知さんに話を聞くことにしました。
「いきなりで失礼なのですが、横地さんは夜な夜なバイクで暴走行為を行っている人ですか?」
「違います。私はスカジャンの絵師、つまりデザイナーをしています」
「スカジャンの柄をデザインしている人ってことですか?」
「はい。1940年代後半~1950年代までに作られたヴィンテージスカジャンの柄を伝統柄といって、トラや龍やワシなどが定番なんですが……私は技術を習得して、ヴィンテージのタッチで新しいスカジャンを作ってるんです」
「横地さんが着ている服の動物も、ご自分でデザインされたんですか?」
「そうなんです。鹿とか猿とか、スカジャンではこれまでに無い柄なのですが、ちょっと抜けてる感じが良いでしょ?」
「確かに! スカジャンというとギンギンにカッコ良さを追求したリアルな柄をイメージしていたので意外でした」
「ギンギンにカッコ良さを追求したリアルな柄ってこういうのですよね? こういうテイストって実はむしろ後発なんですよ」
「へー! 横地さんがデザインしたヴィンテージテイストの刺繍は、ちょっとマンガっぽいというか、可愛げがあって良いですね。刺繍の密度も高い!!」
「スカジャンはもともと、戦後間もない頃に米兵の“日本みやげ”として人気だった服なんです。だからアメリカではスーベニアジャケット(おみやげの上着)って呼ばれてます。伝統柄はその頃のテイストですね」
「ドブ板通りってちょっと変わった名称ですけど、どうしてこの名前になったんでしょう?」
「戦前の横須賀は、日本海軍の軍港がある街として栄えていました。当時、ドブ板通りの一帯はドブ川で、人や車が通るのに不便だった。そこで軍から鉄板をもらい、川の上に並べて道にしたことから、この名称になりました」
「それでドブ板って言うんだ……戦前からだとかなり歴史があるのですね。今は米兵向けのお店が多いですが、それはいつから?」
「もともとこの近くに、海軍下士官兵集会所っていう、日本軍のための施設があったんです。敗戦してそこがアメリカ軍に差し押さえられて、EMクラブという名前になって」
「EMクラブ?」
「兵のための娯楽施設ですね。建物の中にはライブホールやディスコがあったので、仕事が終わった米兵はよく、基地からEMクラブに通ってたんです。その人の流れの途中に、レストランや仕立て屋さんなど、米兵の生活にかかわるお店が自然とできていったんです」
「ドブ板通り自体は戦前からあったんですよね? ということは、戦後 米軍向けのお店にチェンジした……?」
「ドブ板の特徴として、お店がどんどん業態を変えながら発展してきたっていうのがありますね。戦後は米兵向けのお土産屋さん、古着ブームのときは古着屋さんとか。日本人観光客が増えると日本人向けもできたり」
「そのときどきの人の流れや、ニーズによって変わってきたんですね。現在、ドブ板通りには何店舗ぐらいあるんですか?」
「商店街として加盟しているだけで76店舗です。それ以外も含めると、1.5~2倍弱くらいのお店があるんじゃないかな。狭い建物にギシギシに店が入ってるし、外国人が急にお店を始めることもあるので、いつの間にか増えてることもあります」
「先ほど回ってきたのですが、本当にいろいろなお店がありました。夜は外国人もたくさん歩いてましたね」
「ドブ板通りは主に、
・昼に営業しているお店は日本人向け
・夜は米兵の方向け
が多いですね」
「何軒か飲みましたけど、僕が行ったお店は日本語でも全然大丈夫でした」
「週末になると、外国人たちが路上で『カントリーロード』の大合唱をしているんですよ。日本人が行くと、外国に来ちゃったのか? ……ってなると思います」
「ご当地グルメについても教えてください。横須賀といえばネイビーバーガーと海軍カレーが有名ですが、地元の方からするとどうでしょう?」
「基本的にはどの店も大体おいしいですが、私は、横須賀は『タコスの街』だと宣伝するようにしているんです」
「タコス? それはまたどうして?」
「横須賀に来る観光客は、昼はネイビーバーガーを、夜は海軍カレーを食べたい、って人が多いんです。でも、ネイビーバーガーはボリュームがあるので、大抵『夜はいいや』ってなってしまいます」
「確かに、僕もかなり腹パンになりました……」
「でも、せっかく来たのだから、バーガー以外にもいろいろ食べたいですよね。タコスなら軽めなので、おなかいっぱいになりづらい。しかもこの界隈は、タコスを扱っているお店が13店舗あるので選り取り見取りです」
「そういえば、メキシコ料理店やタコス屋が何軒もありました! 米兵の方たちに馴染みのある料理だから、自然と増えていったのかもしれませんね」
「ドブ板に気取った料理はあまりないので、どの店でも気軽に立ち寄って食べてください」
「次はもっと色々食べて飲んでみます! 今日はありがとうございました!!」
まとめ
取材後、海を眺めながら、『Jack Honch Shell』で買ったカレーパンを食べました。最高に贅沢。
ドブ板通りは、日本とアメリカの文化・生活をリアルに感じられる場所でした。戦前からの歴史があり、時代に合わせて変化し続けてきて、今の形がある。そして、この街に暮らす人々や訪れる人々と共に、これからも変わり続けていくのでしょう。