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若者たちが「最高の青春」を送ると、みんながジモトを好きになる【地域×教育】

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若者たちが「最高の青春」を送ると、みんながジモトを好きになる【地域×教育】

こんにちは、ジモコロ編集長の友光だんごです。突然なんですが、今日は僕の友人を紹介させてください。いま撫でている馬ではなく……この男です。

 

彼の名前は斎藤和真(さいとう・かずま)くん。山梨県の富士吉田(ふじよしだ)市在住、趣味はラーメンと筋トレです。以前、筋トレの魅力を聞いたら、こんな返事が返ってきました。

 

筋トレって、やった分だけ成果が返ってくるんですよね。それが楽しいんです」

 

彼の仕事は、いわゆる「教育」の分野。僕も母親が中学校の先生だったのでわかるんですが、教育の成果=子どもの成長って、可視化がなかなか難しいじゃないですか。もちろん偏差値やいい学校への進学数みたいな結果の数字はあれど、それだけで子どもの成長が100%測れるわけでもなくて。

 

わかりやすい成果が出る分野ではない。もちろんそれでも楽しいけれど、たまに成果が欲しくなるときもある。だから筋トレに通う……って和真くんが好きで。ちょっと余談が長くなりました。

 

和真くんが活動する舞台は「学校」ではなく「地域」なんです。なので今日のテーマは「地域の教育」

 

地域の教育とは? というと、たとえば学生が地元で働く大人たちを取材して、インスタマガジンを作ったり、

 

「山梨に帰る=梨バック」という地元の言葉を冠したインスタマガジン「梨バック」。就職活動を控える大学生2〜3年生を中心に参加し、富士吉田へUターンやIターンした大人たちの取材を通じて「地元で働くこと/暮らすこと」の魅力を知る企画

 

地元出身のアーティスト、志村正彦さんの楽曲にちなんだポスターを制作したり……

バンド「フジファブリック」のボーカルだった志村さんは、2009年に急逝。「地域とフジファブリックのことを知ってもらうために」と富士吉田の高校生たちがはじめた企画「#私たちのすべて」は、SNSで大きな話題となった

 

これらすべて、和真くんが代表をつとめるNPO「かえる舎」が手がける「地域の教育」なんです。

 

かえる舎が作っているのは、富士吉田の若者たちが「最高の青春」を体験できるような、さまざまな機会。そこで若者たちが地元について深く知り、発信していくことで、学生だけでなく、地元の大人たちにも「富士吉田への愛」が生まれる。そんなすごい循環が起きているんです。

 

かえる舎のメンバーたち。写真左から、代表の和真くん、渡邉紀子さん、赤松智志くん。富士吉田市の地域おこし協力隊として赤松くん、和真くんが前身の活動をスタート。2016年からかえる舎としての活動を開始

 

子どもたちの成長を通じ、数年先、数十年先の価値を生む教育という分野。投資的な側面を持つからこそ、世の中の余裕がなくなるほどにコストも削られかねません。学校教育ももちろん大事ですが、「地域の教育」の価値も、もっと知られていくべき!

 

「ということで和真くん、取材させてください」

「ずっとジモコロは出たかったですけど、荷が重そうなテーマすぎません?」

「いや、かえる舎の取り組みはもっと全国的に知られるべきなんですよ。僕が知ってる中で、こんなに熱量高く、地域との強い関係性を持ってる教育系の団体ってなくて」

「ありがたいですけど、『かえる舎のことを説明しづらい』って僕自身がずっと抱えてる悩みがあって。口下手なのもあるんですけど、ほんと僕みたいな奴が……ってなっちゃう」

「謙遜しがちマンだ。僕はつい先日、編集長になったばかりなんですけど、『学び』は追っていきたい一つのテーマで。特に、かえる舎みたいな学校外の教育の価値をもっと言語化したいんです」

「ますます荷が重い! とりあえず、かえる舎の周りの人たちに話を聞いてもらってもいいですか。たとえば市役所に僕たちの『おかん』がいるんです」

「市役所に『おかん』? 会いたいです!」

 

市役所にたくさん!? “かえるの母”たち

外壁にポップなイラストが描かれた、富士吉田市役所の庁舎

 

「そもそも、かえる舎がやってるのは市の事業になるんですか?」

「そうですそうです。『若者への郷土愛を醸成する事業』を市から委託されていて、毎年、いろんな企画を学生たちと一緒にやってる感じですね。あとは富士吉田の小学校・中学校・高校で地域がテーマの授業をしたり」

「なるほど。というか市役所と逆のほうに来てません?」

「大丈夫です、だんごさん。こっちの建物です」

 

市役所のはす向かいにある建物の2階で、和真くんが一人の女性に声をかけました。

 

「美奈枝(みなえ)さん、こんにちは! いまちょっと大丈夫ですか?」

「うん、さっきメッセージくれた件よね。取材なんだって?」

「そうなんです。まずは市役所の『おかん』を紹介したくて。ふるさと納税推進室の萩原美奈枝さんです」

「いつも突然ね(笑)。でも、かえる舎のみんなにはお世話になってます。なにしろ富士吉田のふるさと納税を作ってくれたといっても過言じゃないし」

「それは過言です!(笑)」

「ふるさと納税にも、かえる舎が関わってるんですか?」

「5年前に、富士吉田のふるさと納税の返礼事業者さんを紹介するカードを学生と一緒に作ったんです。それ以来ずっと、かえる舎でお手伝いさせてもらっていて」

 

学生たちが返礼事業者を取材し、紹介するカードを作成(写真左)。2021年度からは冊子形式に(写真右)

 

「毎年、学生の皆さんにいろんな視点からふるさと納税の発信をしてもらうんですけど、本当にありがたくて。正直なところ、ふるさと納税が返礼品競争みたいになってる風潮がある気がしていて。でも、事業者さんへの取材を通じて、そもそも自治体がなぜ、この制度に取り組む必要があるのか? も一緒に考えてもらっていると思うんです」

「地元の学生が、地元の返礼事業者さんに取材するって座組みがすごくいいんですよね。学生からしても『富士吉田にこんな産業があるんだ』『この織物屋さんかっこいいな』とか思うきっかけになるじゃないですか」

「地元にかっこいい大人がいるんだな、と気づくのって大事ですよね」

「そうそう。それが郷土愛を持つきっかけになるので。コロナ前には寄付者さん向けのツアーも一緒にやったんです」

 

富士吉田のふるさと納税に寄付した人の中から募集し、抽選に当たった人が参加。北海道や関西、四国からの参加者も

 

「学生さんたちがツアーの行程も考えて、当日のアテンドもしてくれて。私自身、すごく楽しかったので覚えてます」

「美奈枝さんも市の担当者として同行してくれて。学生たちが最後に『美奈枝さん、一緒に写真撮りましょう!』って言うくらい仲良くなってましたよね」

「本当にね。だから私、その子たちが就職したところにお客さんとして行きました。授業参観じゃないですけど」

「完全に親心が沸いてますね」

「私も普段はそんなに学生さんと接する機会はないんです。だけど、ツアーの時は一緒に何かしたり、お話しする回数も多くて。『学校の先生ってこういう気持ちなんだ、すごくいいな』って思いました」

 

「あとは私自身、かえる舎の活動を通じて『この街は面白いんだ、いい街なんだ』って気づかせてもらったと思ってます。同じような人は、富士吉田にたくさんいるはずですよ」

「以前は街が面白くは見えてなかったんですか?」

地元愛があるほうだったとは思います。でも、それは『良さを感じている』とは別で。好きだけど、人に『いい街だよ!』と自信を持って言えるほどではなかったんですよね。でも、かえる舎の和真くんや赤松くんたちを見てると『あっ、そうなの? この街っていいんだ?』と思えるようになってきて」

「町への視点が変わったというか」

「それもあるし、本気で『富士吉田の良さをもっと伝えたい!』と本気で動く二人を見てたら、触発されますよね。それで変わっていった人は、市役所に何人もいます」

 

富士山のふもとにある富士吉田では、町のあちこちがビュースポットに

 

美奈枝さんはいつもかえる舎のことを気にしてくれてるし、喜んでくれるんです。僕らが不当な扱いをされてたら、誰よりも怒ってくれるし」

「学生さんたちと一緒で、やっぱり気になる存在なのよね。和真くんとの初対面は今でも覚えてます。地域おこし協力隊になって、市役所に初めて挨拶に来た時にサンダル履きだったんです」

「めちゃくちゃ怒られましたね……」

「その時に比べたら、ずいぶん大人になりましたよ」

「時にはちゃんと叱ってくれる。本当に『おかん』みたいな感じですね」

「美奈枝さんもそうですけど、かえる舎を担当してくれた市の職員の人は、その後もずっと気にかけてくれて、関係が続いてるんです。だから、異動になった先の別の課でもかえる舎と一緒に仕事をすることになったり

「すごい、異動後も関係性が続いてるんだ!」

 

富士吉田市教育委員会の武藤智恵子さん。市役所の地域振興・移住定住課へ勤務していた2020年度に、かえる舎を担当。コロナ禍に市外在住の大学生へ食品などの物資を送って支援する「ふじよしだ若者エール便」をはじめとする事業に関わった。「かえる舎は、高校生たちの気持ちを一番わかっている存在」と語ってくれた

 

「他の地域で話を聞いてると、市役所は数年に一度、異動で担当者が変わる。それで事業や関係性が終わっちゃうのが悩み……みたいによく聞きます。かえる舎みたいなケースは珍しいですよね」

「不思議な関係性だと思います。かえる舎の場合、担当だった人が異動になればなるほど、事業が幅広くなっていくんですよね」

 

現在、市役所の地域振興・移住定住課でかえる舎を担当する萱沼妙子(かやぬま・たえこ)さん。「私たち公務員の立場では難しい、地域と住民の皆さんを繋ぐ役割をかえる舎がしてくれている」「私たちの課が市役所内で動いて、他の部署との連携ができるように意識しています」と語る

 

「そうやって市役所内で関係性を広げていくのは狙ってたんですか?」

「いや、本当にたまたまです。富士吉田市役所の人って、皆さんめちゃくちゃ懐が広いんですよ。僕らみたいなのも受け入れてくれて、応援してくれるんです」

「うちの市役所ならではの風土だと思います。市長もかえる舎の活動をすごく理解していますし」

「いい関係性……。かえる舎と関わってる学生にも会いたくなってきました」

「この時間なら活動拠点に誰かしらいると思います。行きましょう」

 

和真くんは「富士吉田の食べログ」?

こちらが、かえる舎の拠点「センゲンボウ」。

 

中に入ると、ちょうど和真くんを訪ねてきたという学生二人が。ひとしきり賑やかに話し込んでいました。

 

「高校三年生の子なんですけど、進路が決まって報告に来てくれたんです」

「それはめでたい!」

「かえる舎の活動に参加してる学生たちを『かえる組』と呼んでいて。長く活動してると学校を卒業して社会人になっていく子たちも増えてるんですけど、その後も関係が続いていくことが多いですね」

「それも市役所の人との関係性と似てますね」

「あ、社会人やってる卒業生がもう一人来ましたね。 ちょうどいいので話聞きましょう。井上、こっち座って〜!」

 

「え、私いて大丈夫なやつですか?」

「うん、大丈夫大丈夫。井上にも質問いくから、よろしくね」

「緊張する!(笑) 一回違う話しててほしい」

「じゃあ、僕から井上の最近よかった話をします。富士吉田で毎年ハタオリマチフェスティバル(以下、ハタフェス)ってイベントがあって、かえる舎も関わってるんですよ。今年のハタフェスが終わった17時くらいに井上から連絡が来て『なんか片付け手伝う?』って。激アツじゃないですか?」

「社会人ということは、仕事終わりにわざわざ?」

「井上は高校生の頃からハタフェスも手伝ってくれてて、その時間に片付けが大変そうだな、ってのも知ってるんですよ。それでわざわざ連絡をくれるのが嬉しいっすよねえ」

「なんか恥ずかしいな」

 

「しかも井上って、17時まで仕事してて、そのあと20時から別の仕事もしてる。この間のたった3時間に『手伝う?』って言ってくれるのがもう、いい奴すぎるんです。本当に助かる」

「都合がいい女なんです」

「和真くんたちを助けよう、みたいな感じだったんですか?」

暇だから行こうかなって。ほんとそれだけです。そもそも高校のときはそんなに、かえる舎に来てなかったし」

「卒業後のほうが来てくれてますね。スライムとかポッポくらいの出現率。仕事終わったあとにNPOに来て手伝いしてるって、すごいことですよ。……本人は釈然としない顔してるけど」

 

「かえる組のみんなから見て、和真くんってどんな存在なんですか? 先生なのか先輩なのか。同級生みたいな距離感の会話だな、と思ってましたけど」

「先生とかじゃないし……なんだろう。『河口湖に熊が出たらしいよ』みたいな話しかしてないし」

「本当に何でもない話(笑)。何か和真くんに教えてもらった、みたいなことは?」

ラーメンくらいかなあ。美味しいラーメン情報は教えてくれる。だから『食べログ』かも」

「僕は富士吉田の食べログです(笑)。まあ、真面目な話もすると、学生の頃も学校のこととか、進路のこととか学生のいろんな悩みも聞きます。でも、社会人になってからも別の悩みがあるわけですよ。直近の上司と歳が離れすぎてるとか、同世代と休みが合わなくて話す時間がないとか」

「たしかに、悩みの質が変わってくる」

「地方で働くゆえの悩みもありますね。仕事が終わった後、暇だとか。最近、井上みたいなかえる組の卒業生たちと、夕方にバスケしてますもん」

「でも、たぶん東京に住んでても暇になるんですよ。あっちで就職した友達も言ってました」

「その『暇』って、コミュニティの薄さゆえでもあると思うんですよね。何か一つでも、自分たちが動かしてるような実感があるコミュニティがあれば違う気がしてる。だから、井上には大人版の『かえる組』を作ってよって話をしてて

「してるね。全然やるよ」

「やってくれるそうです(笑)。だいぶ話聞けたから、井上は行っていいよ」

「えー、黙って聞いてる! 大丈夫」

 

「変化」を自分がやれるのは、友達と一緒のとき

「今日いろんな話を聞いて、周りにいる人たちとの信頼関係を感じました。それがすごくフラットというか、ラフな距離感だなと」

「井上も言ってましたけど、『先生と生徒』って感じじゃないんですよね」

「もっと目線が一緒というか」

「なんでしょうね。赤松が慶応SFCの4年生のときに地域おこし協力隊として富士吉田に来て、僕がその一年後に来て。街の人と夜飲んでると『若い世代がいねえ』『この街はなんもねえ』って言うんですよ。『何もねえ』の呪縛がある」

「富士山もあるし富士急ハイランドもあるし、何もなくはないですよね」

 

高台から見下ろした富士吉田市の街

 

「だけど、『何もなくない』は言うだけだと伝わらない。なんていうか、テレビゲームを説明書だけ読んだり、友達の隣で見てるだけだとあんまり面白くないじゃないですか」

「自分でやるのが一番面白いかもしれないですね」

「そうそう。よくわかんないけど動かしてみて、ボスの倒し方考えて、レベル上げてクリアするみたいな。地域もゲームと一緒で、自分でプレイしていったほうが楽しめるんじゃないかと思ったんですよ。だから、ただよさを言うんじゃなくて、どう『地域をプレイする』に関わってもらえるかを最初は考えてました」

「教育って『上から教える』みたいにもなっちゃうけど、同じ目線で、一緒にプレイすることにずっと取り組んできた」

「かえる舎も最初は学校で授業をやらせてもらって、その中の有志20人くらいの生徒たちが集まって『かえる組』ってグループを立ち上げて。より一層、地域に入っていくみたいなのが最初ですね」

「和真くんを見てると、人と一緒に何かやるのが好きな人だなって思います」

「めっちゃあるかも。僕は本当に小心者だし、変化とか超苦手なんですよ。『かえる』舎のくせに」

 

「変化がないほうが楽なんだけど、でも、変化があるほうが面白いのも知ってる。その変化を自分が起こそうと思う瞬間って、友達と一緒のときなんですよ」

「誰かと一緒なら、変化にチャレンジできる」

「だから、かえる舎も、プロジェクトを一人で走らせることは一回もなくて。みんなで経験を共にしたり、お互いに支え合える関係性とか仲間みたいなものがベースになる気がしますね」

「学生たちを巻き込むのもそうだし、市役所や地域の人も巻き込んでますよね」

一人でどんどん行ける人は行けちゃうじゃないですか。でも、僕みたいに面白いのは知ってるけど一人だと踏み出せない、みたいな人もいる。そういう人にとって関わりやすい、いやすい場所みたいなことは考えてるかもしれないです……井上、横でニヤニヤしないで」

 

「大丈夫、黙って聞いてる」

「めちゃくちゃやりづらい(笑)。例えば井上はこんな感じですけど、僕が『超困ってるんだよ』って言ったら、たぶん無視はしないじゃないですか。流石にしないよね?」

「え、しないしない。かわいそうじゃん」

「かわいそうだから(笑)。でもありがとう。そんな風に『困ってたら助ける』みたいな関係性って、一瞬じゃ生まれなくて、無駄な時間をたくさん重ねてきたことが実は活きてる気がするんですよね」

 

発表の準備をする、かえる組と和真くん(編集部撮影)

 

「ふるさと納税課の美奈枝さんが、ツアーの活動を通じて学生たちに親心が沸いた話をしてたじゃないですか。あれもまさに『一緒にやった』からこそ生まれた関係性かもですね」

「僕、幼稚園のお遊戯会とか高校球児とかを見て『めっちゃ美しい』と思うんですよ」

「へー! なんでだろう。一生懸命だから?」

「どちらも親と子や監督と生徒、チームメイト同士の関係性があって、それを元に努力してる。すると勝った負けた、上手い下手とかじゃなく、頑張ってる姿が胸を打つし、心が動くと思うんすよ」

「なるほど! 仲間と一緒に頑張って何かをやってる姿が美しい……まさに青春だ」

「そうやってやりとげた時の感情ってすごくハッピーだと思うんです。その感情は見てる側にも伝わるはずだし、参加したくなる。狙ってたわけではないですけど、富士吉田でも、結果としてそんな循環を起こせてきてるのかも」

 

原動力は、富士吉田への恩返し

ふじよしだ移住促進センターで働く松浦樹菜(じゅな)さんも、かえる組の卒業生

 

「結果としてすごくいい循環が生まれてると思うんですけど、和真くんのモチベーションって何ですか? 富士吉田が地元なわけでもないですよね」

「僕も赤松も、違う土地出身ですね。社会をまだまだ知らない新卒のタイミングで地域おこし協力隊になって。そんな僕たちを受け入れて、育ててくれたことへの『恩返し』でしかないです。自分が何かやりたいみたいな使命感はゼロで」

「へ〜! モチベーションは自分の外側にあるんですね」

「受け入れてくれた上の世代への感謝ももちろんだし、何か教えるわけでもなく、環境や機会さえあれば感じて動いてくれる学生の子たちにもめちゃめちゃ感謝してます。そういう意味では、僕らは場を作ってるだけかもしれない」

「参加しやすい場を作って、そこで皆が楽しく一緒に活動できるようにしている」

『失敗できる』ってこともすごく大事だと思うんです。じゃないと新しいものは生まれないし、変化も起きない。0→1が繰り返せるような場を作ろうとはずっと考えてる……って赤松が言ってました」

 

「(笑)。失敗してもいいからチャレンジできる場は、地方に限らず大事ですよね」

「あとはシンプルに、富士吉田で生まれた高校生たちに、一番最高な時間を過ごしてほしいですね。それこそ青春というか。地域と関わることがみんなにとってプラスに働いたり、高校時代が他のどの地域の学生たちより豊かになるように、と思って向き合ってます」

「将来的に『こうなったら一区切り』みたいなのってあります?」

「うーん、どんどんかえる舎の卒業生が増えていってて。すると、関わってる子たちのライフステージもどんどん変わる。すると課題感も変わるじゃないですか」

「新卒の子と、子どもが生まれた30歳の課題感はたぶん、全然違いますよね」

「だから、今のかえる舎としては高校生の活動支援がメインだけど、そこを次世代に引き継いで、僕自身はもうちょっと上の世代の課題感に向き合っていく、って可能性はあると思ってます。結局、目の前の皆が何に悩んでるか? が気になるし、そこに向き合いたいみたいなのしかないんですよね。たぶん」

「どこまでも目の前の人たちと一緒に何かやりたい人なんですね」

「そうですね、だからずっと一緒にかえる舎をやってくれてる赤松と紀子にもめちゃくちゃ感謝してます。あの二人とかえる舎やってるのが、最高に楽しいので!」

 

おわりに

「部活を辞めちゃって、放課後に時間があるから楽しそうだと思って入りました。そしたら楽しくなってきちゃって、友達で一番の暇人を連れてきて入れました」

 

取材後に遊びに来た、別のかえる組の子がこんな風に話してくれました。

 

「地域の活動をするNPO」ではあるんですが、かえる舎の作る場は、どこか放課後の部室や溜まり場のよう。ゆるくて自由な空気が、若者だけでなく地域の大人も巻き込んで「一緒に楽しく作る」、青春のような時間に全力投球させてくれる。

 

僕自身、かえる舎の活動に何度か参加して、「この時間、青春じゃん!」と感じたんです。上下もなく、一緒に頑張る仲間として何かを作る。全力で楽しんでたら、結果として富士吉田のことも好きになっている。そんな風に地域のみんなを「かえる」、和真くんたちの活動をこれからも応援しています。

 

そして、かえる舎の活動のように、「学び」にも色んな形があるはず。今後も自分の一つのテーマとして、ジモコロで取材していきます!

 

撮影:土屋誠
編集:くいしん


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