ハイパーヨーヨー、ミニ四駆、そしてポケットモンスター……
1988年生まれの筆者にとって、小学生時代のカルチャーは常にコロコロコミックの影響下にありました。
月刊コロコロコミック
小学館が発行している小学生向けの月刊漫画雑誌。1977年創刊、現在も発行中。ドラえもん、ビックリマン、ミニ四駆、ポケモン、星のカービィ等を扱い、小学生男子にとってのバイブルかつ、カルチャー発信基地だった
クラスの男子のほとんどがコロコロを読んでましたね。少なくとも僕の小学校はそうでした。
・・・
オイッ!! 俺たちを無視するな!!!!!
語られなさすぎだろ!! コミックボンボン派のことがよォ!
コミックボンボン
講談社より発行されていた月刊少年誌。1981年創刊。ガンダム、ロックマン、ウルトラマン、ビーストウォーズ、サイボーグクロちゃんなどが有名。コロコロの対抗馬として創刊されたが、発行部数ではほぼ負け続けていた。特にコロコロがポケモンとタイアップして以降、差は顕著に。2007年廃刊。
確かにボンボンはマイナーでした。でも、ボンボンを選んだ理由は各々にあると思うんです。そして小学校の時にマイナー誌を選んでしまったが故のカルマみたいなのもあると思うんですよ! 俺はある!!
「ボンボン派はオタクになりやすい」みたいなネットの論調もよ~~~く見ます。それってホントかね?
だからさ! ボンボン派だった当事者で集まって「なぜ俺はボンボンを選んだのか! そして、その後本当にオタクになったのか!?」ってのを、一度顔を突き合わさせて話さなきゃいけなんじゃないか!? なあ、みんな!!!!
ということで、今回、ジモコロライターの中でボンボン派だったやつが集合!
登場人物
ボンボンでは『お気楽忍伝ハンゾー』『海の大陸NOA』が好きだった
他の参加者のほぼ一回り年上。『プラモ狂四郎』が好きだった
『やっぱアホーガンよ』『SDガンダム』が好きだった
『サイボーグクロちゃん』『ロボットポンコッツ』が好きだった
元ボンボン派が「振り返って、ボンボンとはなんだったのか?」を話し合います!
▲購入した資料(ボンボン関連、ほぼプレミア化しててビビった!)
※あくまで4人から見たボンボン観を語っているだけであり、それが「正しいボンボン観」という訳ではありません。人の数だけ「観」はあるから……
という訳で……。なぜ、僕らはマイナー誌であるボンボンを選んだのか? そして、それによる影響はどんなものがあったのかを当事者が語る場を設けました
ボンボンのことを話すなんて人生初です
前提の確認なんですけど、コロコロとボンボンはライバルで、かつボンボンの方がマイナーだったって認識はみなさん共通ですよね?
ボンボンは売れてなかった
それは間違いないです
時代もあると思うけど、僕は対立構造ってイメージは持ってなかったです。同じような雑誌があった程度の認識ですね
ふむ。僕の感覚ですけど、ボンボンの話ができる友達ってクラスに1人いるかいないかって感じ。ほとんどがコロコロ読者でしたね
そんなに差があったの!?
いや、間違ってないと思います。僕も印象としてはそれぐらいですね
wikipediaのを参考にボンボンとコロコロの公称発行部数の推移グラフを作ってみました。
※発行部数不明の時代があり、そこはブランクとしてます
96年のポケモンブームが凄い。ちなみ初代ボンボン編集長は「ガンプラブームと重なった91~93年はコロコロに勝っていた」と語っています
参考リンク
では、「なぜ、マイナーであるボンボンを選んでいたのか?」理由を聞かせてください。僕は「みんながコロコロ買うなら……、俺はボンボンで行く!」って感じで”あえて”で買ったのを覚えてるんですよ
逆張りってこと?
いや、どちらかというとバランサーというか。「このボンボンという穴は僕が塞いでおくね」みたいな公益的な考えでしたね
僕はボンボンを買って、友人のユウキくんがコロコロを買って。読んだら交換っていう制度を導入していました
分業制だ
ただ、それだとコロコロ派の話題についていけないんですよね。ずっと「コロコロを先に読みたいのにな……」ってコンプレックスを抱えながらボンボンを読んでました
やはりボンボン派は業(ごう)を……
僕はコロコロはちょっとお子様向けって感じがしたんだよね。ミニ四駆もそこまで興味なかったし。というか、ボンボンの方が漫画が面白かったのよ。特に『やっぱ!アホーガンよ』の下ネタのレベルが高くて
やっぱ!アホーガンよ/柴山みのる
1984年連載開始。プロレスラーのハルクホーガンをモチーフにしたアホーガンが活躍するプロレスギャグ漫画。下ネタが豊富。
アホーガン、資料で買ってありますよ。どれどれ……
▲本当に気分が悪くなる下ネタだったのでボカしました
うわ~~~~~~!! 最悪~!
そうそう、こういうの(笑)。「ギャグってここまでやっちゃっていいんだ!」って思ったんだよね! コロコロよりリミッターが振り切れてるというか……
僕も掲載されているマンガが面白くてボンボンを買っていたんですよ。特にガンプラ直撃世代なので『プラモ狂四郎』ですね
プラモ狂四郎/クラフト団・やまと虹一
1982年連載開始。プラモ狂四郎こと京田四郎が「プラモシミュレーションマシン」でライバルたちとプラモデルを仮想空間で戦わせ、次第にモデラーとして成長していくマンガ。
プラモをそのまま作って完成! じゃなくて「パテを使って別パーツを作ろう」とか「発泡スチロールを加工して~」みたいな、技術を要するネタも紹介するプラモデル漫画なんですよ。子供心に「ガンプラってこんなことも出来るんだ!」って思いました
▲プラモ狂四郎の解説ページ
▲こちらはボンボンのプラモページの内容
僕の世代も『プラモウォーズ』っていう似たようなマンガあったな~
パテをやたら推してたの覚えてる! 「こんなん小学生にできね~よ」って思いながら読んでました!
他にも『ファミコン風雲児』っていうTVゲームを題材にしたマンガは「逆アセンブラで解析」とか、「サブルーチンにジャンプ」みたいな、やたらとプログラマー目線でゲームを攻略するんです。その”背伸びさせてくれる感”がたまらなかったんです
ファミコン風雲児/池原しげと
1985年連載開始。プログラマーを目指す少年の天竜研(通称ケン)は世界征服をたくらむ謎の組織「シャドウ」と、ファミコンを使っての激戦を繰り広げる。
▲ファミコン風雲児での一コマ。改造すな
めっちゃギークだ。『OH!MYコンブ』もそうだけど、ボンボンは改造的な楽しみ方をプッシュしてたよね
OH!MYコンブ/かみやたかひろ
1990年連載開始。グルメ漫画。実際の商品を掛け合わせて新しい料理を作る「リトルグルメ」が人気だった。企画はあの秋元康。
「ものごとを”そのまま”で受け取らず、一段階上で楽しめ!」ってメッセージをボンボン編集部は発信していたのかもしれない
まあ、素直な楽しみ方ではないですよね
「ボンボン派はオタクになりやすい」っていう論調はこういうとこ由来かもしれないですね。僕のボンボンのイメージってドラえもんでいうスネ吉兄さんみたいなんですよ。みんなより一段回上を楽しんでる嫌味なお兄さん的な
▲スネ夫の従兄弟。ジオラマ、ラジコン等にうるさい描写がある
あ、この号ドルアーガの塔特集じゃないですか!
なち~~!!
ボンボン派、その後のルート
ゲームの話で言うと、ボンボン派とセガ派ってなんか同じ感じがあるよね
僕、まさにセガ派の人生ですよ! SG-1000II→メガドライブ→セガサターン→ドリキャスと歩んできました
王道はファミコン→スーファミ→プレステか64って感じでしたね
ボンボン派はメジャールートを避けがちになるんですかね? “その後に買うようになった雑誌”にも影響が出てくる気がしません?
ボンボン→ガンガンって流れは多い気がする。ファミ通も通過しそう
分かる。ゲーム雑誌なら電撃王とかゲーメストもいってそう
あ~~! あったな~!
月刊少年ガンガン
エニックス(現スクウェア・エニックス)発行の雑誌。ファンタジーバトルものと萌えマンガが多い印象
ファミ通
KADOAKAWA発行のゲーム雑誌。いちばん有名なゲーム雑誌。ゲーム帝国やファミ通町内会といったネタページのクオリティが異常に高かった
電撃王
メディアワークス発行のゲーム雑誌。PCゲームや18禁ゲームも扱っていた
ゲーメスト
新声社発行のアーケードゲーム専門誌。誤植で有名。インド人を右に
この後、各々の雑誌ルートから『「ボンボン派とは?」が導き出せそう』という話になり、各々の雑誌ルートを思い出しました。
僕はメジャーへの憧れが溜まっていたので、そんなに変わった雑誌は通らずに、名作マンガをみつけては友達に布教するようになってました
プログラミングとか改造文化に触れると『プロアクションリプレイ』を面白がる子供になる気がするんですよね。そっからのゲームラボとか
プロアクションリプレイ
▲ちょうどボンボンの広告スペースに載ってた
ゲームハードに接続して数値を強制的に書き換える、いわゆる「改造コード」が使えるようになる周辺機器。ゲームラボは改造コード等を掲載していたちょっとアングラな雑誌
逆に王道の雑誌ルートってなんだろうね?
ジャンプはみんな買ってましたよね? それ以降は?
スピリッツ? ビジネスジャンプ?
いや〜、マンガ雑誌自体を卒業するってのが王道だったんじゃない?
うん、ちょっと前まで「マンガ雑誌は大人になったら卒業するもの」って空気があった気はします。今はそんな空気ないですけど……
そんな感じで雑誌における「王道ルート」と「ボンボン派が辿りそうな雑誌」の話で盛り上がり……
出来たのがこの図です
※4人が感覚で作ったルートのため、正確性は皆無です
こう見ると王道ルートってあっさりしてますね
マンガ以外の活動が盛んになるんでしょうね、サークル活動とか。就活で凄く評価されそう
ボンボンは室内が似合うな
幼少期にボンボンから「ちょっとマニアックな楽しみ方」を植え付けられると、次に進む道もコアなものを選ぶようになるのかもしれません。
ボンボン発の流行らなかったやつ
最初に書いた通りコロコロはミニ四駆、ハイパーヨーヨー、ポケモンのようにメーカーと上手くタイアップを図り、流行を生み出しました。
もちろん、ボンボンが仕掛けたものも多数あるのですが……、ほとんどが流行りませんでした。
そう! ボンボン派は「流行らないものを掴まされた経験」が必ずあるッ……
そんな「ボンボン発の流行らなかったやつの話」を今日はしようじゃないか。だって、こういう時じゃないとできないから……。
かまどが挙げたのは『ロボットポンコッツ』
ロボットポンコッツ
1998年発売のゲームボーイソフト。簡単に言うとポケモンのロボット版。ボンボンではコミカライズも行われた。女性キャラが異常なまでのグラマラス体型
▲ボンボン、エッチなマンガが多かったな
ロボポン、ポケモンの次に来ると思って買ったんだけどな~
知らない……。そんなのあったの?
ポケモンの二匹目のどじょうを狙ったソフトが当時たくさんあったんですよ。僕も持ってました。ボンボンで育ったからか、素直に流行ってるポケモンにはいけなくて……。『もんすたあ★レース』とか。『ディノブリーダー』も持ってたな……
ディノブリーダーあった! 勝敗が数字のルーレットで決まるクソゲー(笑)!
そう、クソゲーなのよ! うわ~、ディノブリーダーの話通じるの、すげ~嬉しい!!
(世代が違うためついてこれず)
ディノブリーダー
1997年発売のゲームボーイソフト。クソゲーなのに4くらいまで出てたな……。
僕、イラストの楽しさもロボットポンコッツに学んだんですよ。確かに女性キャラが語られがちなんですけど、作者のロボットのデフォルメセンスも凄いんですよね。かわいさとメカメカしさを両立させてます。
▲ポケモンでいうところのピカチュウがこのロボまる
ちなみに『メダロット』の画風も独特でカッコいい。いや~、影響受けたな~
メダロット
1997年発売のゲームボーイソフト。ボンボンでコミカライズされ、アニメ化も
された。これは小ヒットしたよね?
▲主線が太い独特のイラスト。今見てもおしゃれ
原宿の「ボンボン発の流行らなかったやつ」はガムラツイスト(ラーメンばあ)
『ガムラツイスト』も『らーめんばあ』もシール付きのお菓子ね。まあ、言ってしまえばビックリマンのパクリなんだけど
出た、ボンボンお得意のやつ
ビックリマンシール
ロッテのチョコレート菓子『ビックリマン』に付いていたシール。一般的には85年から始まった「悪魔VS天使シール」以降のオリジナルキャラクターが描かれたシールを指す
でも、ビックリマンより “1個 のっかってた” んだよね。『Wシール』っていって、キャラのシールをめくると、変身後の姿が描いてあるって仕様だったのよ
参考URL
でも、僕の周りは誰も買ってなくて。一人で裏面のストーリーとか楽しんでました
小学生時代ってメジャーなものでないとバカにされるんですよね、多様性を学ぶ前なので。ボンボン派はそこでなにかしらのダメージを食らってる気がします
でも、逆張りの気持ちよさを覚えちゃうってのもあるよな~。知識も時間も必要ないのにマウントを取れる行為、それが逆張り
良くも悪くも一人遊びに慣れちゃうのかもね
……僕はゲームとかおもちゃとか買ってもらった覚えがないので、なにもありません
……
資料読んでたら久々に思い出しました! 『すげゴマ』、めっちゃ好きだった!!!
すげゴマ
1995年にタカラから発売された地球コマ×ロボットのおもちゃ。パーツを分解して色々な技ができる。初期はなぜかカップラーメンとコラボしてた。
あと、ほんとにこれは誰も覚えていないのですが、一時期『POG』っていうメンコを流行らせようとしてましたよね? 誰か覚えてる??
今、ボンボンみたいな存在ってない
やっぱ、かなり特殊な立ち位置の雑誌だったのかな? コロコロのライバルっぽく見せてるけど、マンガはコアだし、取り上げた玩具も流行らないし。ボンボン派がへそ曲がりになるのもやむ無しというか……
いや、ボンボンのせいにするのはちょっと違うと思うんですよ。ボンボンはずっとボンボンを貫いてただけで。影響受けたのは僕らなんで。
めっちゃ正論だ
「うまく馴染めなかった人が、あとからボンボンのせいにしてるだけ」じゃないんですかね?
……
な~んも言い返せません!
でも、『人生でボンボンを通過しないと現れないルート』ってのは確実にあると思います!
個性とかトガりとか反骨精神みたいなのは生まれやすいかもね
今の小学生にも「コロコロ」VS「ボンボン」みたいなやつあるのかな?
「iPhone」VS「Android」? ちょっと違うな……
「Nintendo Switch」VS「PCで洋ゲー」みたいな?
ああ、ちょっと近いかも! でも、当時のコミック誌って今とは比較にならないくらい”情報源”だったからな~。今はネットもあるし……
エンタメの選択肢がたくさんあるから、メジャーもマイナーもなくなっちゃったしね。そう考えると、やっぱあの頃のボンボンの立ち位置って独特すぎるな……
今回、ボンボンの思い出話をしていて、思ったことがあります
「当時のボンボン編集部の方々、何を考えながら雑誌を作っていたの?」
対抗馬が明らかに強い場合の戦い方にすごく興味があります!!
本当にコロコロに勝とうとしてたの? それとも諦めて、2位ならではの戦いに徹していたの? それともマジで何も考えてなかったの!?
元ボンボン編集部のみなさん!! 僕らはあなた達に良くも悪くも影響を受けました!!
なあ、ボンボンよ! 僕らをどうしたかったんだ!?
編集部の方々、ご連絡をお待ちしております。インタビューさせてください!!!
ボンボンは現在YouTubeでウケている
ちなみに講談社がボンボンTVっていう、ボンボンの名前を受け継いだYouTubeチャンネルを運営してるの知ってます?
え? どれどれ……?
画像引用元:https://bom2.tv/
登録者228万人!?
テーマソング、3800万回も再生されてるの!?
男女でドキドキお泊り修学旅行♡だって!?!?!? めっちゃ人気チャンネルだし、ワイワイしてる……。
「これは俺らの知ってるボンボンじゃないな……」
でも……、これでいいんだと思う……。俺はボンボンがウケてくれて嬉しいヨ……。
▲懐かし広告過ぎてウケました