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美味しいうなぎが生態系を救う? 完全無投薬の「オーガニックうなぎ」養鰻場潜入レポート

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美味しいうなぎが生態系を救う? 完全無投薬の「オーガニックうなぎ」養鰻場潜入レポート

 

突然ですが見てください、このうな重。

身が分厚くて、ツヤツヤしてるでしょ。ほら、見てるだけでよだれが出てきちゃいそう。香りもたまらないんです、これ。まさに宝石箱。



もう我慢できない!いただきまーす!!

 

うわっなにこれ、めちゃうまい!!

なんという幸せ…。 

 

冒頭からこんな幸せですみません。こんにちは。ライターのしんたくです。
今日は、ジモコロ・編集長の柿次郎とともに日本橋の 「鰻はし本」さんに来ています。


こんなうなぎ食べたことないな…。

 

「しんたくくん。実はうなぎって絶滅危惧種なんだよね。今後食べられなくなるかもしれないって知ってた?

「え!? これ食べて大丈夫なんですか? じゃあ、なんで今日うなぎなんですか?

「はし本さんはうなぎの保護のために、あえて養殖のうなぎを使っているから大丈夫みたい。うなぎ自体もおもしろくて。無投薬で作られた『オーガニックうなぎ』というブランドらしい!」

「オーガニックうなぎ…? なんですか、それ。養殖だから環境の保護になるっていうのもいまいちピンとこないですね…」

「じゃあ、直接行ってみよう。養鰻場の本場・鹿児島へ」

「え???」

 

というわけで、うなぎの養殖を行う鹿児島の養鰻場(ようまんじょう)にやってまいりました。


みなさん、このニョロニョロ動いてるのなんだかわかりますか? これはうなぎの稚魚。初めて見たけど、小さくてかわいい。ペットにしたい。

 

今回、こんな突然の依頼に快く承諾してくれたのは「泰正養鰻(たいせいようまん)」の横山桂一(よこやま・けいいち)さん。完全無投薬のうなぎ「泰正オーガニック鰻」を生産するスーパー養鰻師です。

   

話を聞いた人:横山桂一さん

1977年鹿児島県生まれ。26歳までアメリカに留学し、帰国後ほどなくして、有限会社泰正養鰻2代目に就任。泰正養鰻場にて完全無投薬のうなぎ「泰正オーガニック鰻」の生産をする傍ら、インターネットを通じて料理店へのうなぎの出荷や、一般の方へのうなぎの蒲焼の販売なども行なっている。

 

実はこの泰正養鰻場。全国のうなぎを取り扱う一流の料理人たちがこぞって訪れるという、うなぎの聖地なんです

今回、あまり世に公開されていない聖地の全貌を見せていただけることに…。

というわけで潜入レポート開始です!

うなぎの養殖現場に潜入!

 

横山さんの車に先導され、たどり着いたのは見渡す限りの田んぼの真ん中。「こんなところにうなぎの養殖場なんてあるのだろうか…」と考え始めた矢先、それらしきものが!

 

「あれですねー」

 

あれ、池がない…。ビニールハウスがずらっと並んでいて、想像していたものと全然違う!


「うなぎを飼ってる池はビニールハウスの中にあるんですよ」

「ビニールハウス!?」


早速、うなぎがいるというビニールハウスの中を覗かせていただくことに。

おおっ!」

 

覗き込んだ瞬間にむわっとした熱気。中は想像以上に広くて暖かい!

てっきり冷たい水の方が良いものだと思っていたけれど、水温が低いとうなぎが冬眠してしまうそうです。そもそも、うなぎって冬眠するんだ…。

あのスプリンクラーみたいなものはなんですか?」

「水の中に酸素を入れてるんですよ。あとはうなぎを泳がせるために水流を作っているんです」

「たしかに人間も泳げそうなくらい広い」

「この池は大体25mプールと同じくらいですね。水量でいうと350~400トンくらい。この中にだいたい25000匹のうなぎがいます」

「25000匹…想像がつかない」

 

うなぎの成魚のビニールハウスは、うなぎの育ち具合によって大中小という具合に分けられている。

 

「ちなみにうなぎって餌をあげなくても1年くらい死なないんですよね。壁に張り付いた藻とかを食べて生き延びます」

「へー! 生命力が強いのか。しぶといのか。不思議ですね」



水が入っていない状態の池の様子

 

「水が入ってないと、闘技場みたいでかっこいいですね! 水がある時と全然イメージが違う。想像以上に広い」
「こんな大きな池作るの大変そう」

鹿児島には昔、でんぷん工場がたくさんあったんですけど、その跡地を利用してるんです。でんぷんって大きな池が必要なんで」

「でんぷん工場?」
「鹿児島はさつまいもがたくさん採れるから。でんぷんって芋から作ってるんですよ」

「へえ〜。養鰻場が多いのはそのためなんですね。うまいこと回っているんだなあ…」

「鹿児島県はうなぎ生産量全国一位なんですけど、その辺りも関係してるでしょうね」

 


稚魚を育てるビニールハウスは太陽光が入らないように、完全に覆われていてほぼ真っ暗。

ここで育てられる稚魚はシラスウナギと呼ばれ、一つの池でなんと約75,000匹は飼育されているそうです。

 

「これが稚魚!? 小さくてゆらゆらしてて、幽霊みたい!」

「ここ普通に入っちゃって大丈夫なんですか? 稚魚ってより繊細なイメージが…」
うちは病気出したことがないんで、普通に見てもらって大丈夫!」
「すごい自信!」
「きちんとした管理を毎日徹底してますからね」

 

全ての温室の池を調整するボイラー室には大きな機械が! 温室内はうなぎがもっとも活性化するという水温31℃・ph6.8あたりを常に保つようにしている

「水の温度やph(ペーハー)の調整をこまめにしないと、1日で25,000匹のうなぎが全滅する可能性があるんです」

「全滅!?」

「天気によって、水温もphも結構変わるんですけど…phが下がって、水の中の亜硝酸という物質の比率があがると危ないんです。だから毎日こまめにデータを取っています」

 


横山さんが毎日つけているというデータ表。

「毎日、細かくつけてある…」

「ぱっと見、ゴルフのスコア表みたいですね」

「あ、似てるかもしれないですね。26歳までゴルフのプロ目指して、研修生やってたんで」

「え、ゴルフ??」
「アメリカにいたんです。最近まで宮崎のプロツアーのキャディとして回っていましたよ」
「本物じゃないですか!どうりで横山さん体幹がしっかりしてるわけだ。でもゴルフとうなぎって関連がないような」

「意外と共通点があるんですよ。ゴルフもこういう風にデータを取るけど、それだけじゃダメで、現場の空気感を掴まなきゃいけない。数字と感覚のすり合わせですよね。うなぎの池とか見てても、水の色や匂いですぐに異変がわかる」

「緻密なデータと感覚的な職人技…」

「そう。人によって見えるものも、感じるものも違うので、自分で見ないと安心できないんですよね」

 

 

出荷前のうなぎは鮮度を保つために常に水を流した状態に。この泰正養鰻では生産だけでなく、出荷業も行なっており、インターネットを通じて、専門店と直接やりとりがなされている。

「実際にうなぎって、出荷できるまでにどれくらいかかるんですか?」

「うちの場合は稚魚から育てて、早いもので8か月、遅くても1年半くらいですね」

「倍速で育てられたりしないんですか?」
「液体酸素を溶け込ませると、うなぎが活性化して成長が早くなるとは聞きますけどね。それでもうちの成長速度と同じくらいなんで、使う必要がないというか」

「すでに倍速だった」

 


天井には大量の蛇口がついている

「ここで使っている水って特殊なものなんですか?」

「いや普通の生活用水ですよ。ただ、このあたりはシラス台地といって、火山灰が積み重なった地形なんです。水がとてもいい具合に濾過されるんで、地下水の質がとてもいい。飲料メーカーさんいわくこの水、普通に飲料水として販売できるレベルって聞きました」

「ははー、それはすごい。生き物にとって水の良さは生命線ですよね」

 


最後は、うなぎにあげる飼料を保管する倉庫。泰正養鰻のうなぎの餌魚の比率や粉砕密度などを細かく指定した特注品。そのため中に入っても独特の生臭さは全くしない。

 

「この餌は白身魚を素材にしたもので、めっちゃいいもの使ってるんですよ。多分日本で一番いい餌なんじゃないかな」

「人間でも食べられそう」
「もちろん食べられますよ。食べてみてください」

 

「全然くさくない」

「味は『いりこ』に似てますね」

飼料は4種類のものがうなぎの成長に合わせて与えられる。成魚の時のものは20kgで1万円程度だが、稚魚の時に食べる餌は2kgで4万円ほどもかかるのだという。

飼料を与える際は、粉の状態ではなく、スケトウダラの魚油乳酸菌を混ぜ込んでから池に撒く。粉のまま食べてると思ってた…。

 

「これで以上ですね。おつかれさまでした!」

「貴重な現場を見れて大満足です。ありがとうございました!」

 

さて、一通りの施設を見せてもらい、完全無投薬のオーガニックうなぎのすごさの片鱗は垣間見えたものの、まだまだ疑問は残っています。

 

・絶滅危惧種って言われてるけど、うなぎって本当に食べても大丈夫なの?

・環境の保護につながる「オーガニックうなぎ」って一体どんなもの?

 

引き続き、横山さんのご自宅でお話を伺いました。

うなぎを食べないという選択肢は取らせたくない

「いかがでしたか?」

「実は普段結構食べてるけど、全然うなぎのこと知らないんだな、って思いました。というかうなぎって黒いんですね!」

 

え??

(あれ…?).

「冗談で言ったんだよね」

「も、もちろんですよ〜」
「絶対本気だったでしょ!」

「ま、まさか。ところでうなぎって絶滅危惧種と言われていますけど、実際のところこのまま食べ続けて大丈夫なんでしょうか?」

「前提としてうなぎを食べないって選択肢は考えてません

「え? うなぎいなくなっちゃうんじゃ?」

「そもそもうなぎって養殖してるのに、なぜ数が少なくなっているかというと、養殖に使う稚魚は天然のモノを獲ってきてるんですね。今の技術だと卵の完全な養殖がまた定着していないんです」

「え、そうなんですか!全然知らなかった。でもそうしたら養殖のものも食べちゃいけないんじゃ…」

「うなぎのことだけを考えたら、まず間違いなくそっちの方がいいでしょうね」

「じゃあなんで食べないという選択肢を考えないなんてことを?」

「食べないって決めてしまったら、そこで終わりじゃないですか。絶滅させずに、みんなが美味しく食べ続けられるように探り続けていくのが、養鰻に携わる僕らの仕事だと思っています」

「かっこいい…」

「それに養殖のうなぎの生産に関わっている人は養鰻場だけじゃなく、問屋さんや加工屋さんとか、何万人もいるんですよ。それで養鰻場を一斉にやめます!ってなると、その人たちが路頭に迷っちゃうじゃないですか。だからこそ、うなぎを食べながら守るってことができないか考え続けてます」

「でもそんなことができるんですか?」

「例えば天然のうなぎって現状70トン近く漁獲されているんです。でもうなぎが卵を産めるようになるのって10年近くかかる。一般的に市場に出ている天然うなぎってだいたい7、8歳くらいなんですけど、運良く卵を産む寸前まで育ったものをバシバシとっちゃっているんです

「10年近くかかるものを獲っていれば、それはどんどんなくなっちゃいますよね」

「そう。だから天然のうなぎを獲る量を少しでも減らすことで、うなぎを食べながら守ることができないかなって

「でもそんな状況なのに、なんで天然のうなぎをたくさん獲ってるんでしょうか? そんなに美味しいのかな」

「日本って、魚に関しては天然至上主義の考え方がすごく強いんですよ。和食なんかだと天然モノのうなぎしか扱わないお店もあるくらい。でもよく考えてみると、牛とか豚ってほとんどがいわゆる養殖のものですよね

「確かに言われてみれば、気にしたことなかった…」

「養殖モノは安定した味のものを常に供給できるんですよ。だって、環境を整えて、上質な餌を与え続けているから。でも天然モノって過酷な環境を育ってきてるわけだから、当然ムラはありますよね。美味しいモノと不味いものが混在してる」

「言われてみると、至極当たり前の話ですね…僕も養殖より天然モノの方が美味しいものだと漠然と思ってました」

「でもうちのうなぎ美味しかったでしょ?」

「めちゃくちゃ美味しかったです。初めて食べたレベル。あとうなぎの刺身があるなんて知らなかったです」



「鰻はし本」で味わうことのできるうなぎの刺身。本来うなぎの血には毒性があるため、刺身にするためには鮮度はもちろん職人の腕も必要となる。

「でしょ。だから美味しいうなぎを作り続けることで、そういう考え方を少しでも変えられたらなと思ってますね

「サスティナブル=持続可能性って言葉を最近よく目にしますけど、養鰻場全体を考えた横山さんなりの方法論なんですね」

「オーガニックうなぎ」というブランドを立ち上げた理由

「ところで美味しいうなぎを作るためとはいえ、あんなにお金と時間をかけて、利益はでるんですか?」

 


「ハハッ。全然儲からないです」

「まあそうですよね。って、え…?」

 

「全然儲からないです」

「え!!うなぎ高いから儲かると思ってたのに!だって僕たちうな重に3000円ぐらい払ってますよ!」

「全然ですよ。稚魚の仕入れって、これまで一番高い時だと、1kgあたり400万円くらいしたんですよ」

「えっ高っ! 確か稚魚の餌も1kg2万円とかでしたよね」

「でしょ? でもね、うなぎを市場に卸す時って、実は値段が決められてるんですよ。年によって違いますけど、例えば1kgあたり5000円って感じで、どんな品質のものでも基本は一緒なんです」

「え、どういうことですか?」

「ざっくりいうと、美味しくても、不味くても1kgあたり5000円ってことです」

「じゃあせっかく美味しいうなぎを作っても…」

「そう、市場の段階では全部一緒。そもそも売り方として、いろんな養鰻場のうなぎが一つの桶の中にまとめられて、『鹿児島県産』と括られてしまうんですよね」

「ええー。不透明な流通だなぁ。それじゃあ天然のうなぎ、守れないじゃないですか」

「だから『オーガニックうなぎ』ってブランドを立ち上げたんですよ」

「なるほど、そこに繋がってくるんですね」

「もともと、さっき話したようなシステムが嫌だったんですよね。だからいいうなぎを作ろうとするんだけど、結局まとめられてしまって」

「それは無力感がやばそうですね」

「それでブランドを立ち上げたはいいものの、うまくいかずに途方に暮れてた時に、ふとうなぎを育てる様子をtwitterに上げ始めたんですよ」

 

「わ、面白いですね!これは勉強になる」

「もともとは一般の人たちに知ってもらおうと思ってたんだけど、意外とうなぎ屋さんからの反響がすごく大きかったんですよね。『こんなに見せてしまって大丈夫なのか』って」

「うなぎ屋さんもあまり知らないんですね…」

「そう。実はうなぎ屋さんと生産者って意外と繋がることがなかったんですよ。twitterを始めたことで、彼らと繋がることができて、結果として販路を開くことができました」

「twitterからそんなに反響が…」

「そこから大きく変わりました。東京・日本橋のはし本さんがまず初めに声をかけてくれて、口コミでどんどんと。今では料理人の人たちがわざわざ鹿児島まで見に来てくれるようになりました」

「鹿児島まで直接来てくれるんですか!すごい!

「今の時代だからできたことですよね。でも実はオーガニックうなぎというブランドも捨てようと思っていて」

「はやっ! 」

「もともと『オーガニックうなぎ』ってキャッチーな言葉が欲しかっただけなんで。だってオーガニックとか綺麗な言葉で取り繕ったところで、結局美味しくなければ一流の人たちには通用しないんですよ

「わかるけど、潔すぎる…」

「別にオーガニックや無投薬って僕の目的ではないですからね。ただ良いものを作ろうとしたら、結果としてそうなったというだけ。きちんとした管理をしていれば、普通のことだし、そこにこだわりはあんまりないんです」

「24時間365日の徹底管理をして、普通のことなんてそうそう言えるものじゃないですよ」

「もちろん辛い時もありますよ。全然飲みにいけないし(笑)。逃げ出したいことなんかいくらでも。でも、うちのうなぎを使ってくれてる海賊シェフの鳥羽さんとか一流の人たちって、みんな毎日死に物狂いなんだよね。だから僕も頑張らないとって」

「仲間の存在が刺激になってるんですね」

「はい。めちゃくちゃなってます。新しいブランド名『横山さんの鰻』(※商標登録申請中)は彼らと一緒に決めたんですよ」

「すごくシンプルになりましたね」

「いつも彼らはうちのうなぎのことをそう呼ぶんです。オーガニックっていう言葉には興味はないから。だったらもう、生産者としての誇りと覚悟を示すためにも、ブランド名にしちゃおうよって話になったんですよ」

「出せるだけのことはやってますもんね」

「だから、僕は自分のことを日本一幸せな生産者だと思っているんです

「幸せ…ですか?」

「だって、まず一緒に全力で走ってくれる仲間がいる。それに僕のうなぎを食べたお客さんが、直接『次の出荷はいつですか』という連絡をくれるんですよ。普通の生産者は自分のうなぎが、どこでどういう風に食べられているか知らないんですから」

「それはすごい…めっちゃ励みになる…!」

「だから僕がやっているのを見て、若い人が『あいつがやってるから俺もやってみよう』ってなったらうれしい。当然毎日死に物狂いだし、めちゃくちゃ大変だけど、一つのロールモデルになれたらいいなと思ってるんです」

取材を終えて

率直に言うと、うなぎが絶滅危惧種と初めて聞いた時、全然ピンと来ませんでした。だってスーパーにはずらりと並んでいるし、コンビニやファーストフード店でも食べられる。

「本当に食べられるなくなるの? まだ大丈夫でしょ」

 

きっと値段がどんどんと跳ね上がって、ついにはお店に並ばなくなって、そこでようやく気づくんだと思います。「本当にそうだったんだ…」って。そう、だから僕らはたぶん、本当は「知っている」んですよね。

 

「食べることをただやめるのも、また思考停止なのではないか」

今回の取材を通して、最も衝撃を受けたのがこの言葉です。無自覚なのはもちろん、食べないという選択肢も安易だ、と。

 

「美味しいうなぎを食べさせたい」
「うなぎを絶滅から守る」

という一見矛盾した2つの考え方。

 

無謀にも思えるその理想を実現するために、毎日死に物狂いでうなぎに向き合い続ける。そんな横山さんだからこそ、この一切の妥協を許さない言葉が生まれたのだと思います。

 

今回の記事で「うなぎ」について考えるきっかけになれば嬉しいです!

ではまた!


【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (28) –深夜妄想/野次ウーマン

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【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (28) – 深夜妄想/野次ウーマン

 

<ポテン生活|一覧>

 

 

 

    

 

<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

【工場見学】誰も知らないマンホールの作り方とトリビア

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【工場見学】誰も知らないマンホールの作り方とトリビア

ドロロロ……ジュオォーー!

 

ゴウンゴウンゴウン……

 

ドォ~~~ン!

 

お、重い……! こんにちは、ライターのみらいです。突然ですが、栃木のマンホール工場に来ています。

※ちなみにマンホールは40kgほども重量があるので、どう頑張っても持ち上がりませんでした

 

私は幼い頃から「上を向いて歩きなさい」と言われて育ったので、地面に注目することはなかったんですが……先日ふと見てみると、マンホールって、こんなに色々なデザインがあったんだっけ?とすごく気になったのです。

 

例えばこれは、多摩動物公園で見つけたマンホール。

動物が描かれていてかわいい~! 外国人観光客のかたも写真を撮っていました。

 

足立区で見つけたマンホール。

足立区はオーストラリアのベルモントという町と姉妹都市だそう。オーストラリアの代表的な鳥のひとつ、カワセミがデザインされています。

 

東京ではこのデザインのものをよく見かけますよね。東京都の花が桜なのです。

お花見の時も、桜だけじゃなくてマンホールにも注目したくなりますね!

 

かっこいい……!

マンホールって1つ1つデザインが凝っていて紋章みたい!

 

でも、なんでデザインが違うの? 他にも、ご当地柄のマンホールがたくさんあるのかな?

色々気になってきてしまった……!

 

マンホール工場へ行ってみた!

ということで、マンホール工場に見学にきたわけです。

 

工場の案内をしてくれるのは、日之出水道機器株式会社の白井さん。

それではマンホールができるまでの、遙かなる道のりを見ていきましょう。

 

母型準備

まずは、作成するマンホールの母型(おもがた=もとになる型)を選びます。

この倉庫には天井近くまで山のように母型が格納されていて、コンピューターで操作すると自動販売機のようにウイ~ンと動いて、いつでも取り出せるのです。近未来すぎ。

 

材料準備

マンホールに適した鉄をつくります。スクラップが主材料となり、それを電気炉で溶かして材料にするそう。

画面手前の操作パネルで、巨大なUFOキャッチャーみたいにスクラップをキャッチします。

 

スクラップを溶かしたものがこちら。

1500度もあるので、間違えて中に入ると人体消滅するそうです。こわっ! ひょっとして……これを使えば完全犯罪が……でき……

 

材料を型に入れる

特殊な砂で母型の型を取り、そこに先ほど溶かした鉄を流し込みます。この方法を「鋳造」と言います。

 

冷却後、砂型を壊せば、中からマンホールが出てくるというわけですね。かなり完成に近づいてきました!

 

仕上げ

この時点では、まだ端はザラザラ・チクチクしています。「バリ」という不要な突起がついているからだそう。

これを丁寧にけずっていきます。ひ、火花が散ってる~~~!

 

完成品チェック

最後は人間の目で、不具合がないか入念にチェックをします。

ちなみに「マンホールといえば黒い色」というイメージだと思いますが、できたばかりのマンホールは銀色というか、鉄の色をしています。

実は錆(サビ)を防ぐために、黒い塗装をしていたんですね!

 

カラー塗装

絵が入ったものなど、黒以外のカラーが必要な場合は、職人が手作業で塗装します。

めちゃめちゃ細かい作業なうえ、塗装に使うのは樹脂なので、固まるまでの間に仕上げる必要があります。1時間ほどで全てを完成させなくてはならないそう。

 

「マンホールのデザインは誰がやっているんですか? 各都市、各自治体の職員?」

「マンホールは、車や人が滑ったり引っかかったりしないよう、均等な滑り抵抗値じゃないといけないんです。一般的なデザイナーでは無理なので、最終的には我々のような専門業者がデザインしますね」

「確かに無地の鉄だったらツルツル滑りそうですね」

 

完成品がこちら。

キャラクターやロゴ以外の余白部分に、水玉のように小さな丸い凸部分がありますよね? これがなければ「樹脂のみの部分」が多くなって滑りやすくなるというわけです。

 

樹脂の部分は赤子の肌よりすっべすべ!

 

浮上試験

「では最後に、『浮上試験』というものを見て頂きましょう。中央のマンホールにご注目ください。マンホールは、ゲリラ豪雨などで浸水しても、マンホールが地面から外れないようになっているんです」

「ハリウッド映画では、よくマンホールがバカーン!とふっとんだりしますが、そうならないための工夫があるんですね? で、いつ始まるんですか?」

「あ、たぶんもうちょっと離れたほうがいいですよ」

「???」

 

カタッ、カタッ、カタタタタ…………ドシャァァァー!!!

 

うわあああぁぁ!! 想定してた以上の噴射だった!」

「どうですかー!? 外れてないでしょう!? 急激に雨が降った場合でも、マンホールが外れずに、空気と水を逃がす機能がついてるんです

 

「外れてない。外れてないし、虹が出てる!!」

「工場員から……あなたへのサプライズです(キラッ☆)」

「は?」

 

というわけで、マンホールの製造工程を見て頂きましたが……工場を見学したらますますマンホールに興味がわいてきてしまった!

今度はさらに深い話を、マンホールの専門家に聞いてみます。

 

マンホール専門家の門戸を叩こう

この方はマンホールのスペシャリスト、日本グラウンドマンホール工業会の山田秀人さんです。

 

日本グラウンドマンホール工業会(JGMA)

国内の下水道用マンホール蓋製造メーカー21社で構成する団体。
マンホール蓋の設計基準の全国統一や、安全で安心なマンホール蓋の普及を目的に活動している。

公式HP

 

「さきほどマンホール工場を見学してきたんですが、ますますマンホールに興味がわいてしまいました」

「それは良かった。マンホールのことなら何でも聞いてください」

「ではまずデザインについて教えてください。都内や観光地だけでもたくさんの種類がありましたけど、もしかして全国にはもっとデザインがあるんですか?

「その通りです!マンホールは都市別に必ずデザインが違います。日本にはおよそ1700の都市があるから……」

1700種類ってことですか!?

「と、言いたいところなんですが、過去のものも含めてマンホールのデザインは1万種類はあると言われているんですよ」

 

予想以上に多かった! 私が見た中では、東京23区には桜、多摩動物公園には動物……という風にその土地にゆかりのあるデザインがされるんですね」

「都市ごとに、その土地の特徴や風土、景観などを意識しながら、考えて作られているんですよ」

「工場でもいくつかマンホールのデザインを見ましたが、もっと色んな場所のマンホールの柄が見たいなあ」

「それでしたら、『マンホールカード』というものがありますよ! こちらをご覧ください」

 

じゃん!

 

マンホールカード

下水道広報プラットホーム(GKP)が、全国の自治体と共同発行しているコレクションカード

 

「各都市のデザインは、これを見ればわかりやすいです」

「わっ、ほんとだ。全国各地のマンホールがカードになってるんだ! 色鮮やかなものが多いですねー!」

「現在マンホールカードの種類は342種類。301都市が参加していて、合計発行枚数は180万枚にのぼります」

 

これは静岡県・富士市のデザイン。

富士山といえば日本の象徴ということで、すごく人気があるんだそう

 

これは大阪市のマンホールカード。言わずと知れた大阪城がデザインされてます。

工場で教えてもらった通り、この波しぶきも、滑らないように計算されてデザインされているんですよ!

 

札幌市は時計台のデザイン。

鮭が遡上してきているのも北海道っぽさがでますね。

 

岡山といえば日本が誇る昔話、桃太郎。

目のところにこだわりを感じてしまいますね。

 

多摩市にはキティちゃんのマンホールがあります。『サンリオピューロランド』があるからだそう。

 

それぞれのカードの裏面には、特徴やデザインの由来などの解説が書かれています。

詳しくは→こちら

 

「私もマンホールカード欲しくなっちゃいました! どこで買えるんですか?」

「いえ、マンホールカードは無料です。ただし、その土地の役所に行かないと手に入らないんです」

「えぇっ! じゃあ時計台のカードが欲しいなら札幌までいかないといけないの……?」

「そういうことになりますね。現地に行かないとカードが手に入らないというシステムは、地方の観光業を盛り上げることに一役買っているんです。カードを求めて都市を奔走する『マンホーラー』が数多く存在していますから

「マンホーラー?」

マンホーラーとは、マンホールを愛する人びとの名称です」

「いや、そうだろうとは思いましたけど、そんな人がいるんですね」

「熱狂的にマンホールを愛する人は、実は結構多いんです。イベントなども開催されてますよ!

 

グッズも人気なんだとか。コースターかわいいですね

 

もっと!マンホールのあれこれ

「ここでちょっと、意外に知られていない事実をお話ししましょうか」

「ゴクリ……」

「今までずっと、『マンホール』『マンホール』と連呼してきましたが、実はあれはマンホールではないんです」

「え!!マンホールじゃないんですか?!」

「マンホールとは、その名の通り下水道を管理する人(マン)が通るための穴(ホール)という意味です。なので『マンホール』というのは、穴のことを指します

「では、今まで私が『マンホール』と呼んでいた、円くて黒いアレのことは、なんと呼べばいいんですか?」

「あれは、人がマンホールに落ちたりしないように、穴を塞ぐ蓋なんです。だから、厳密には『マンホールの蓋』ですね」

 

よくよく考えたらその通りですね。なんで今までそんなことも気が付かずに生活していたのだろう……あれ、どう見ても蓋じゃん!」

「この業界ではグラウンドマンホールとか、人孔蓋とか呼ばれますが……まあ『このグラウンドマンホールが~』と書いてもややこしいと思うので、記事上ではこれからも『マンホール』と呼びましょう」

「そんなことまで考えてくれてありがとうございます。では改めて。業界的には、マンホールの数をバンバン増やせば儲かるんですよね?」

「いえ、現在マンホールの数は1500万個くらいあるんですが、実はこれ以上、もうあまり増えないんです。全国の隅々まで行き渡ってきたので」

「へー!そうなんですね。でも寿命というか、取り換えたりはするんですよね?」

「はい。30年~40年に一度、取り換え作業をします。古いものはコンクリート製のものが多くて、安全性能が今より低いんです」

「工場で見てきましたが、現代のマンホールは鉄でできているんですよね?」

 

「正確に言うと、ダクタイル鋳鉄という、比較的柔らかい鉄なんです。車道のマンホールは車にバンバン踏まれるので、固すぎると割れてしまうんですね。強い風が吹くと、硬い木は折れてしまうけど、柳は折れないでしょ」

「なるほど。素材は進化を続けてるんですね」

「そうですね。パッと見た感じではわかりにくいですが、デザイン的にも進化を遂げています。カーブのところにあるマンホールは滑りやすいから、デザインをこうして滑りにくくしよう、とかね」

「あの~、思ったんですがそもそもなぜ円盤型なんでしょうか?」

「円形なのは、最も下に落ちにくい形状だからですね。四角だと、斜めにすると落ちちゃうので」

「ハート型とか星型のマンホールがあれば可愛いと思ったんですが、無理ですか?」

「マンホールには基準というのがあるんです。日本下水道協会が寸法や規格、材質などの基準を決めてます。星型とかは無理じゃないかなぁ」

「絶対かわいいのに……。でも今日はマンホールについて色々勉強できたので楽しかったです。最後にひとつお聞きしたいことがあるんですが」

「なんでも聞いてください。マンホールのことをみんなに知ってもらうのが、私の仕事ですから」

「ルパン一味や怪盗キッドなんかが、よくマンホールを開けて下水道から逃げたりしますよね。それって可能なんですか?
マンホールには鍵がついているので、一般の人は開けることができません。逃走ルートに下水道を組み込むのはやめたほうがいいですね」
「そう……ですか……では計画を練り直します。今日はありがとうございました……」
「銀行でも襲う気だったんですか?」

 

まとめ

国民にとって重要な役割を担っている、マンホール。

それは日本が世界に誇る文化物でもあります。実際、外国人観光客がマンホールを撮影してる姿、よく見ますよね。

デザインから製作過程まで全てが奥深かった~!

 

マンホーラーがカードをもらうために土地を訪れることで、地方創生にも繋がるという、新しい発想も興味深かったですね。私もこれからはマンホーラー目指して、今まで以上にマンホールに注目してみます!

 

みなさんも、良かったら自分の町のマンホール(のデザイン)を、ハッシュタグ「#マンホールのデザイン」で教えてくださいね!

 

 

 

(おわり)

無料食堂・全メニュー半額……話題の『とんかつ屋』で仕事を一日体験した

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無料食堂・全メニュー半額……話題の『とんかつ屋』で仕事を一日体験した

こんにちは、ライターのみくのしんです。ジモコロではいつも、『一日職業体験レポート』を書いてきました。

今までに体験したのは、解体作業や冷凍倉庫、焼き菓子屋さんなど。

 

今回は……

 

ジュワワワワワ~~

 

コトトトト・・・

 

とんかつ屋さんで一日職業体験をします!

 

はい!と言う訳で、奈良県にあるとんかつ屋さん「まるかつ」にお邪魔しています。

 

このお店、ネット上では「無料食堂」や「全メニュー半額」などの企画で話題なんです……が! それは後で詳しく聞くとして、まずはお店に入ってみましょう!

 

とんかつ屋「まるかつ」神殿(こどの)店

住所|奈良県奈良市神殿町667-1

営業時間|ランチ:11:00~15:00・ディナー:17:00~22:00

公式HP

 

 

今回お世話になる、店長の金子さん

 

「本日はよろしくお願いします! 前回の職業体験では焼き菓子屋さんを体験したのですが、はちゃめちゃに楽しかったので、『まるかつ』さんも期待大です!」

「そう言っていただけると嬉しいのですが、ランチ時は結構大変ですよ?

「またまた~! 大丈夫、大船に乗ったつもりで安心してください。さて、まだ開店前だから、さっそく仕込みでもしましょうか?」

「じゃあ、まずはお店の前のノボリを変えてください」

「え?」

就業開始~お昼休みまで

 

店先にはこんな感じでノボリがたくさん はためいています

 

「この中のいくつかが新しくなったんで、営業開始までの間に取り替えてください」

「かしこまりました!」

 

ノボリを外して新しいのを付けるだけという、誰でもできる仕事です

 

「これを外して、ここを…」

 

「ん? こっちをこうするのかな」

 

モタモタ……

 

 

 

~15分後~

 

 

「出来ました! 結構難しいですねアハハ」

「……慣れたら30秒で出来ます。もうお店が開いちゃってますので、戻りましょう!」

「ひぇえ~~!」

 

お店に戻ると、営業開始早々に即満席! そして漂う…いい匂い…!

 

めちゃめちゃな大繁盛じゃないですか! あの、僕は何をす……」

いらっしゃいませー! はい、ロース一丁! ありがとうございます! え、なんでしょう?

「えっと、凄いお客さ……」

はい! コチラどうぞー! おまたせしました! それで何でしたっけ?」

「いえ、なんでもありません。いらっしゃーせー!

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!」と、大きな声を出して、仕事やってる感を出す事しか出来ない程の大盛況! その為、開店2分にして完全に孤立。飲食店のお昼時って忙しい…!

 

「(仕事してなさ過ぎて気まずい……)すみません! 何か手伝える事ありますか!?」

「うーん……そうですねー。それじゃあ食器を洗ってもらっていいですか?」

「皿洗いか……どこで、どうやってやればいいでしょうか?」

「細かいことは、あそこでしじみ汁をかき回してる女性に聞いてください」

 

この子……?

 

若くしてバイトリーダーだという小松さん。色々聞いてみます

 

リーダー! 洗い物はこちらでいいでしょうか?」

「あんまりリーダーって呼ばれないから照れますね/// そこの棚に置いてあるものを、シンクで軽く汚れを落として、食洗機に入れたらOKです!」

「食べ残しはどうしたら?

「後ろにゴミ箱があるので、捨ててから洗いましょう。小皿とかを間違って捨てないでくださいね」

 

僕は飲食店で働いた事があるんですが、洗い物って正直しんどい! まるかつさんには食洗機があるので、そのストレスからは開放されます。これ結構大事ですよ!

 

背後の棚をご覧ください。ホールスタッフが下げてきた洗い物が、次々と運ばれます。食べ残しを捨てて、器を洗い……

 

食洗機に入れる

 

食べ残しを捨てて、器を洗い……

 

食洗機に入れる

 

食べ残しを捨てて……

 

ちょっと! 小皿捨てようとしてません!?」

「あ、やべ」

「ずっとやってると、皿洗い専用ロボみたいな精神状態になることがあって、そういう時は、ゴミと間違って小皿も捨てがちなんです」

「すいません! ちゃんとヒトとして皿洗いをがんばります」

 

その後も、客足は途絶えることなく、店内は大忙し!  厨房は忙しいながらもアットホームで楽しそうですね

 

一方僕はひとりで皿を洗い、食洗機に入れて、その蒸気でメガネを曇らせたりしながら、ずっと同じ作業

 

「僕、財布忘れて 代金を皿洗いで稼いでる人みたいになってません?」

「すみません、ランチ時はいつもこうで…」

「くぅ~…」

 

 

洗えども洗えども増える、食器の数。

 

もしかしたら僕は、お皿をぞんざいに扱って、街を荒らし生計を立てていた、サラワリーノ一族の末裔なのかもしれない…

 

これは自分との孤独な戦いだ。

どこに戻していいかわからない食器の場所を丁寧に教えてくれるリーダーに、思わず涙を落としてしまいそうになった。

 

僕はなぜ生きているのだろう。いや、“生きている”というのは思い込みで、実はまだ母の胎内で、生まれたあとのことを夢想しているだけなのかもしれない。

 

では生とは、死とは……?

 

 

「…しんさん…!」

 

みくのしんさん…!

「はっ!?」

「しっかりしてください! お昼休憩ですよ!」

「オ昼…キユウ…ケイ…?」

 

わ~い! メシメシメシ~!

「調子良すぎです」

お昼休み

いくら一日職業体験と言っても、マジの本気で3時間も皿洗いをさせられるとは思っていなかったので、ここらでおいしそうな写真を入れておきましょう。

 

お昼はまかないとして、お店一番人気の「ロースとんかつ定食(1,180円)」をご馳走になりました!

ちなみに、アルバイトで一日7時間以上入ると、まかないとしてお店のメニューをなんでも食べて良いそうです。

 

「お疲れ様です! 午前中は食器洗いばっかりでごめんなさいね!」

いえいえ!

「でもね、食器洗いって、ああ見えて大切なんですよ」

うんうん!

「こう言った、お客さんに見えない仕事をキチンとやる事が……」

「あーもう、店長!!

 

もう食べていい~!?

「あ、ごめんね! どうぞ、お召し上がりください!」

「やった! いただきます!」

 

「濃厚ソースをたっぷり付けて…!」

 

サクッ…

 

うっま……

 

「こりゃ最っ高! サックサクの衣濃厚とんかつソースが合いすぎる。厚切り豚肉もジューシーで食べごたえがあるのに、油がクドくないからいくらでも食べれる

「試行錯誤しながら研究を重ねて、今の形に落ち着きました。お肉は三元豚の美味しいお肉を使ってますし、油も、食べた時に胃もたれにしにくい米油と言う油を使ってます」

「そんな所まで!」

「お客様に美味しい物を作るのは当たり前。それでいて安心安全に食べていただきたいので、商品として出すものは99%手作りです!」

「え? 残り1%は…?」

 

「…………」

「いえ、大丈夫です。そういえば、お店の壁に無料サービスのチラシが貼ってあったんでビックリしたんですけど、なぜやろうと思ったんですか? むしゃくしゃしてた?」

 

お金のない人向けに、無料で食事を提供するサービス、無料食堂。1万6千リツイートされ話題になりました。

無料食堂の詳細はコチラ

 

「テレビやインターネットで、貧困問題などの悲しいニュースが目に入る度に、なにか僕に出来ることは無いかなって考えてたんです。で、とりあえず出来ることから、と考えて始めたのが無料食堂なんですよね」

「そういう、思いやりの気持ちを逆手に取って『お金が無いわけじゃないけど、無料で食わせろ~!』みたいな輩は来なかったんですか?」

「そういうこともあるにはありました。でも、本当に日本全国、遠くから食べに来てくださったり、多くの応援をいただいたので」

「世の中捨てたもんじゃないわ……」

 

その他にも、今年の北陸を中心とした豪雪の際には、北陸の方限定で全メニュー半額にするサービスを実施して、Yahoo!ニュースにも取り上げられています。

詳細はコチラから

 

店内に置いてあるご来店記念ノート。本当にみんなから愛されてるのがわかりますね

午後の作業再開

昼を過ぎて少し落ちついたところで、次は接客を体験します!

お茶の出し方や、注文の取り方を教わりましたが……これ、結構むずかしい!

 

実際に接客してみましょう……え? 本当に!? 大丈夫?

緊張して湯呑が震える~! リーダー! リーダー! ちょっとそばに居て~!

 

「ハートよわ~」

「いや緊張しますって」

「お茶とおしぼりは出してくれたみたいなので、あとは注文を頂くだけですね。気をつけてほしいのは常に笑顔でということ! 接客も味付けの一つと店長から教わっています!」

「笑顔! 了解です!」

 

「ふへへ……ご注文をお伺いします。フヒ」

 

「実際に声に出して笑う必要はありません。あと異性として、そもそも笑い方がちょっとイヤ

「ひどい

 

お客さんが食べ終わった皿を下げるのも大事な仕事。

落とさないように必死です。

 

「ホールの方は落ち着いてきたので、今のうちにみくのしんさんにも揚げ物を作ってもらいましょうか

「お! 遂に念願のトンカツ作りですね!」

「今エビフライの注文があったので、エビフライでお願いします!

「(トンカツじゃないんだ)……はいっ!

「うちは生のパン粉を使っててサクサク食感を大事にしてますから、潰れないように優しく扱ってくださいね」

「フライヤーにはどういうふうに入れたらいいですか?」

「えーっと、『キレイに揚がって来~い!』と言いながら、ふわぁっと入れてください!」

「アバウトだなー」

 

えーと…キレイに~……

 

揚がって来~い!

 

ジュワワワワワ~~!

 

わぁ、上手! 初心者の人は高い所から落としがちなんですけどね。私の説明のおかげかな?」

「あれで説明のつもりでした?」

 

飲食店で調理のバイトをしていたことがあるので、厨房の手伝いは結構得意です。

 

色々お手伝いをしているうちに、「意外と使えなくもないやつ」という評価を得られた……ような気がします。

 

続いてはカツ丼用のカツをカットしていきます。

 

リーダー!!

「え!? どうしました!?」

「このトンカツ… サックサクだから切るの楽しいです…」

「そんな事で呼ばないでー!」

 

最後の仕上げだけはリーダーにやってもらいます。めちゃめちゃなシズル感。

 

「おぉ、やっぱり手慣れたもんですね。リーダーはいつ頃から働いてるんですか?

「私は、ここがオープンした4年前からずっと働いてますよ!」

「え!? じゃあローンチメンバーってこと? プレステで言うリッジレーサーって事じゃん! 凄ー!」

 

リッジレーサー

 

ローンチ? リッジレーサー? よくわかりませんが、たぶんそうですね」

「あれ? リッジレーサーわからない? 失礼ですが、リーダーって今お幾つですか?」

19歳です!

19歳!? 思ってたより若い。なのにリーダーってすごい!」

えへへ! あ、そうこう言ってる間にカツ丼完成しましたよ!」

 

こちらがマルカツの「カツ丼(680円)」定食もいいけど、こっちも美味しそう! ていうか安すぎだろ!

 

「『まるかつ』のカツ丼は、サクサク感も売りなので、卵でとじきってない所もポイントですね! 美味しいですよ~!」

「もうお腹空いてきた……気づけばあと30分くらいでこの職業体験も終わりか~」

「じゃあ最後に自家製ごま豆腐を作ってもらっていいですか?」

 

「あ、さっきの定食に付いてたやつ。これも凄い美味しかった! 本当に全部手作りなんだなー」

「この鍋に材料を入れているので、焦げないように混ぜ合わせてください」

「了解!」

 

ねりごま・出汁・くず粉などの材料を適量加え、焦げないように均等に混ぜ合わせます。

 

「これ、粘度が高いから 回すのにめちゃめちゃ力がいる! 重い……! ちょっとかき回しただけなのに、もう腕がキツい!!」

「そうなんですよ~。だからやってもらってます」

「なんのなんの! 僕も男ですからね、まかせてください」

 

~10分後~

 

 

~20分後~

 

 

~30分後~

 

グギギギギギ~!

 

「腕がおかしくなっちゃうよー! いつまでやればいいのこれー!」

「そろそろOKなので、トレーに流し入れましょうか! 熱いし重いので注意してくださいね!」

「……もう腕が上がりません、リーダー」

「はいはい、わかりました。私がやりますよ!」

 

めちゃ重いし、熱くて危険なので、本来なら力自慢の僕がやるべきでしたが……30分も大鍋をかきまわしてたら腕がガクガクで、どうしても無理だったんです

 

でも、もういいんです。

 

だって……

 

本日の僕の業務、終了ーー!!! 終わったーー!!!

 

お仕事を終えて

「お疲れ様です! 一日体験してみてどうでしたか? 結構疲れたでしょ?

「もうヘトヘトです! でも、店員さんやお客さんの空気がすごく良くて、働いてて楽しかったです」

なら、良かったです! 奈良だけに!」

「キーーーン」

マイナス20℃の職場!?『冷凍倉庫』の仕事を一日体験したい!

「店長のダジャレが寒すぎて、以前体験した冷凍倉庫のことを思い出しました」

「そんなに…? では、本日のお給料をお渡ししますね!」

 

ぃやったー! これこれこれ! ありがとうございます! ちなみにおいくらでしょうか!?」

8000円です!

「助かるゼ……。ちなみに僕の働きぶりに点数をつけるとしたら、90点ですか?」

 

え? そんな高得点を当てに来る事ある?」

「はい。今までの職業体験すべて90点だったから、今回もそうかなと。で、どうでしょう?」

「まぁ90点ですけど……」

「やったー! 点数とは別に、僕を一日見ていて、感想や評価みたいなのはありますか?」

「うちは職場のみんなが仲良しなので、みくのしんさんくらい話してくれると、コミュニケーションが取りやすくて良いですね

「僕みたいなお調子者でも働けるってこと?」

「もちろん! 真面目・素直・一生懸命・笑顔! これさえ出来れば未経験でも大丈夫ですよ! みくのしんさんは皿洗いがうまかったから、専属スタッフになってもらおうかな」

「それは遠慮しときます」

 

ということで、中々疲れましたが、冗談飛び交うとんかつ屋さんでの職業体験が終わりました。

 

最後に一日体験して気づいたことを書いておきます!!

 

・ランチ時は少々大変

お昼時は正直しんどいですが、仕事を覚えるとテンポよく事が進んで楽しいです!

・まかないが美味すぎる

一日7時間以上で、お店のメニューが食べれるまかない付き! そうじゃなくても月に4回、まるかつの無料券がもらえるそうです! 最高!

・未経験歓迎!

真面目・素直・一生懸命・笑顔。これが出来れば大丈夫! 出来ない人もここで学びたいって言ったら働かせてもらえるかも!?

・店長が書いた相田みつをみたいな「詩」が読める

お店の入口からお手洗いまでびっしり書かれています

なんなのこれ……

 

今回体験させてもらった『まるかつ』さんでは、元気で笑顔なアルバイトを募集しています!

気になった方は↓こちらまで連絡してみてくださいね!

とんかつ まるかつの求人情報

 

以上、みくのしんが体験させていただきました。現場からは以上です!

 

 

(おしまい)

※今回のレポートは、あくまでライターが体験させてもらった現場に限定したものです

▼一日職業体験レポート一覧

 

調理スタッフのアルバイト求人はコチラから!

「夏キャンプの強敵!ブヨ対策」- キャンプは道連れ世はお酒

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「夏キャンプの強敵!ブヨ対策」- キャンプは道連れ世はお酒

7年間で1000泊以上キャンプをしたキャンプコーディネイター&イラストレーターのこいしゆうかさん。「キャンプ×お酒」をテーマに、日本のいろんな地元を旅しながら地元のお酒と食材を紹介していく連載です。夏キャンプの強敵・ブヨと戦いながらこいしさんが訪れたのは、マスク好きの課長がいる佐賀の酒造…?

 

【登場人物】 


 

今回のおすすめアイテム

【スクリーンタープ】

・「NEMO BUGOT」

タープに蚊帳がついたタイプ。タープ下にハンモックをかけて優雅にお昼寝したい!

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・「ビッグアグネス シュガーローフキャンプ」

スクリーンタープというよりシェルターに近い。自立式で大型サイズ。メッシュを取り外して使用できるのも便利!

→詳細はこちら

 

【ポイズンリムーバー】

「ドクターヘッセル インセクト ポイズンリムーバー」

ポイズンリムーバーといえば、これが王道! 傷口に合わせて吸引口のサイズを変更可能(2種類)

ドクターヘッセル インセクト ポイズンリムーバー 00050008 ドクターヘッセル インセクト ポイズンリムーバー 00050008

 

取材協力:天山酒造

 

『キャンプは道連れ世はお酒』|一覧

商品40万点! 利益は二の次!? 超超超巨大スーパー「A-Z」の社長に会ってきた

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商品40万点! 利益は二の次!? 超超超巨大スーパー「A-Z」の社長に会ってきた

こんにちは、ライターのナカノです。

私ごとですが、最近「お店の店長」という肩書きがつきました。

 

ライターと二足のわらじで、お店づくりを1から行うことに。

しかし店長経験はおろか、お店をつくることだってはじめて。すべてが手探り状態の毎日を過ごしています。

 

不安を抱え悶々としていた折に、やばいお店の存在を知りました。

 

それが鹿児島県内で3店舗展開するご当地巨大スーパー『A-Z』です。

 

・取扱い商品数40万品超

・24時間、365日営業

・敷地面積17万平方メートル(東京ドーム3.6個分)

・売り場面積約1.6万平方メートル(コストコとほぼ同じ)

 

でかい! 長い! 多い !

の三拍子が見事に揃っているスーパー。

 

ちなみに同規模の大型スーパー『コストコ』の商品数は3700〜3800品。この数字を見て、A-Zがどれだけ豊富な品揃えか伝わるのではないでしょうか。数百円の小さな部品からウン千万円する鍾乳石(購入者が気になる)まで取り揃えているというんだから驚きです。

しかし、A-Zのすごさはその規模感では収まりきりません!

 

ちょっとハチャメチャ過ぎませんか……?


しかし、業績は右肩あがり、売上規模は270億円を超えるそう。

規模は違えどきっと店づくりのヒントが得られるのでは? そんな期待を抱き、A-Zを訪ねてみることにしました。

 

そして今回は、鹿児島県出身・在住のウェブ制作会社『Lucky Brothers & co.』代表、下津曲くん(しもつくん/写真左)に同行いただきました!

「実家が『A-Zはやと店』の近くにあるので、小さい頃から家族でお世話になっています!」

「こんな大きなお店が近くにあるなんて羨ましい!」

 

 

店内を見てみよう!

まずは『A-Z あくね店(以下、A-Z)』の店長・福吉さんの案内で、店内を回ってみることに。福吉さんは高校卒業後にA-Zに入社、30年近く店舗に寄り添ってきた生粋のエーゼッターです!

 

店内商品はこんな感じで分類されています。

思いつく限り全ての商品ジャンルは網羅されている!

 

「地元の人から『迷子になるくらい広い』と聞いていたのですが、確かにとても広いですね!」

「そうでしょう。このあくね店の売り場面積は1万8000平方メートル。これでも3店舗内で一番小規模なんですよ」

「えっ! このサイズで?」

 

あくね店の2倍の売り場面積をもつ『A-Zはやと店』。
その大きさゆえ、鹿児島空港を発着する飛行機の窓から確認できるんだとか。屋上部分のソーラーパネルが豪快すぎる!

 

「あれ、彼岸が近いわけでもないのに妙に仏花が多い!」

「鹿児島県民は他県に比べてお墓参りの回数が多いんですよ! 『先祖を敬う気持ちが強い風土だから』や、『桜島の灰から守るため』など諸説あるみたいですね。家庭によっては毎週末にお墓参りをするみたいなので、切り花は売れ筋商品だと思いますよ」

知らなかった!」

 

「うわー! この棚はカラフルなパッケージが並んでますね! もしや、全て醤油ですか?」

「そうです、こちらには約260種類の醤油が並んでいます! 鹿児島県内でつくられている醤油は全種類取り揃えているんですよ」

 

九州地方の醤油は甘口がスタンダード。「極あまくち」なんて醤油もあるんだ!

 

「ご覧いただいてわかるかと思いますが、当店の魅力のひとつは品揃えのよさにあります。食品においては、地元でつくられたものを積極的に取り扱うようにしています。農家さんから、規格外野菜を買い取って販売することもありますね」

 

鹿児島県産の野菜が目立ちます!

「なるほど! 自分の住んでいる地域でつくられた野菜は安心しますよね」

「メーカー品であっても、なるべく地元のメーカーがつくっている商品を取り揃えるよう心がけています」

 

見慣れないパッケージのジュースは大分県の食品メーカーがつくっているもの。

 

これぞ鹿児島! 焼酎の量り売りも。

 

他にも店内には、様々な商品が所狭しと並んでいます。

インドの民族衣装「サリー」や、

 

ホームセンターでも見かけないようなサイズの照明、

 

外に目を向けると軽トラックがズラリ!

 

ぐるっと店内を半周(一周は到底まわりきれなかった)したところで、なんと社長にお話を伺えることに! この規模の店舗を20年以上経営し続けているなんて、お会いする前から頭があがらない……。

 

社長登場!

「こんにちは、はるばるようこそ鹿児島へ!」

「うわー! お会いできて嬉しいです!」

「社長の著書である『利益第二主義』を読ませていただき、社長の考え方にとても感動しました。お会いできて光栄です!」

 

嬉しさのあまり拝んでしまった!

 

話を聞いた人:牧尾英二 さん

株式会社マキオ 代表取締役社長。1941年、鹿児島県阿久根市生まれ。地元の高校卒業後、富士精密工業(現在の日産自動車)に就職し、長きに渡りエンジニアとして活躍した。1985年に株式会社マキオを創業。現在に至る。

 

 

なによりお客さんのためになることを

「色々お聞きしていきたいのですが、社長はなぜA-Zを開業したのですか?

「元はといえば、弟のつくったホームセンターの立て直しがきっかけです。私自身は高校を出てから長年、車の設計に携わっていたんですよ。だから望んで小売を始めたというより、やらざるを得ない状況だったという方が正しいかもしれないね」

 

牧尾社長は手が大きい!かつて空手の全国選手権で優勝経験もあるんだとか。

 

「車のエンジニアから小売業!全く畑違いの仕事をされていたんですね」

「経営の立て直しをしていく中で、阿久根市には大型店をつくる必要性を感じたんです。A-Z開店当時の人口は2万7千人で、そのうちの40%が高齢者。気軽に足を運んでいただき、ワンストップで買い物ができる便利な場所があればいいなと思いました」

「そんなに使命感を持って……!」

 

「正直初めは嫌でしたよ。自分ではずっと自動車に携わっていたいと思っていたから(笑)。ただ任されたからには、天職だと思ってやらねば! と自分を奮い立たせていました」

「モチベーションを保てるのがすごいです!」

「理屈ではわかるのですが、なかなかこの規模の店舗を人口の少ない地域で経営していくことは難しそうです……」

「もちろん最初はあらゆる方面から大反対されましたよ(笑)。まず金融機関からお金を借りられない。経営コンサルタントに相談しても、『商圏人口が10万人規模じゃないとホームセンターは無理だ』だなんて一蹴されましたから」

「まったく規模感が見合ってなかったんですね」

「さらに、24時間営業の大型小売店は国内で前例がありませんでした。法的にも苦労しましたし、周囲の目は厳しかったです。それでも私はやってみないとわからないと思ったんです」

 

※1974年に制定された「大規模小売店舗法(大店法)」によって、A-Z出店当時、大型店の出店に規制がかけられていたそう(現在は大店法は廃止され、2000年より大規模小売店舗立地法〈新大店法〉が施行されている)

 

「コンビニならまだしも、こんなに大きな規模で24時間営業なんてむちゃくちゃすぎる…

「やりとげることができたのは、私たちが素人集団だったからかもしれないね。赤字脱却のためには、周りと同じことをやってもだめだと思ったんです。素人だったからこそ、従来の常識にとらわれない選択ができたのでしょう」

 

A-Zの全売上の4割は、夜7時から朝8時までの時間帯が占めているのだそう。
深夜まで営業している飲食店や、早朝の工事現場ではたらく人にとって、必要な商品がいつでも手にはいるのはありがたい。

 

バイヤー不在。買い付けは売場責任者の仕事

「例えば、A-Zではどんな常識破りの仕組みがあるのですか?」

「わかりやすい例だと、バイヤーの役割を各売場のスタッフが担っているね

「えっ、売場のスタッフが買い付けを?」

「そう、データを見ているだけじゃ真のニーズはわからない。もちろん商品はPOSで管理しているけど、お客さんと話す中で仕入れを決定することが大切です」

 

確かに、A-Zではスタッフとお客さんが談笑する光景をよく目にする。


今、背筋がピッと伸びました。五感をフル稼働させることが大切なんですね

「だからスタッフには『とにかく売場に出ろ』と口を酸っぱくして伝えています」

「現場第一主義……!」

 

今やA-Zの売りとなっている自動車の販売も、はじめはお客さんの声から。車の販売を始めたことで車検の需要が生まれ、車の購入から給油、車検までA-Z内で完結するように!

 

「A-Zは、いかにお客様に喜んでいただけるかだけを考えています」

「でもこれだけの規模のお店をつくるって相当な博打ですよね……」

 

「11億円借りました(笑)」

 

「ええっ、11億円!? お金を借りることに恐怖はなかったんですか? 私なんて25万円借りてビクビクしているのに……」

「元々私は0から裸でスタートしたから、なぁんにも怖くなかった。ある意味自由奔放というか。ただ建設途中で融資を断られちゃった時は困っちゃったな(笑)」

「自由のレベルが違いすぎる」

「ちなみに3号店をつくるときには37億円借りました」

「失神しちゃう……」

 

あくね店では現在総勢300名を超えるスタッフを雇用。実に阿久根市人口の1.5%がA-Zで働いていることに。めちゃくちゃ雇用を生んでいる……。

 

できない・やれないは、ない

「今まで沢山お客さんの声を聞き続けてきた中で、この要望だけは聞けなかったということはありますか?」

 

「ないですね」

 

「ないんだ」
「『できません』『ありません』ということは言わないようにしています。すぐさま、希望する商品が取り寄せ可能かどうかを調べて対応。今の世の中はインターネットで大抵のものは買えますが、きちんと店内で完結させて信頼関係を築いていくことが大切なんです
「なるほど! 信頼関係が結果として売上にも繋がっていくんですね」

 

60歳以上の方と身体障がい者に発行している『AZカード』は好評のサービス。毎回買い物金額の5%を現金でのキャッシュバックを行います。孫のためにキャッシュバック金額を貯めて、貯まった金額でおもちゃを買うシニア層が多いんだとか。新たな貯金のあり方!

 

「その通りです。最近レジを無人化するスーパーが増えていますが、当店では考えていないんですよ。レジはお客様と最も触れ合う時間が長い場所。省くことはできないですね」

「コミュニケーションの総数が大切なのですね」

「ちなみにA-Zはマニュアルもなければ売上目標も立てない。事業計画だってないんだ。ただ、お客様の要望に応え続けるだけだからね」

「簡単に聞こえるけど一番難しい……」

 

任せることで知恵を養う

「私は現場に立ちつづける環境が、今後の教育にも繋がると思っていてね」

「教育ですか?」

「極端な話、不良と呼ばれる子たちだってA-Zで働くと責任者になれるんだ。福吉くんだって、かつては不良だったからね(笑)」

 

「えぇ、実は……。恥ずかしながら、若い頃はヤンチャをしておりまして……(笑)」

「店長までのぼりつめたサクセスストーリーだ!」

「基本的に教育というのは、その人が持ち合わせていないものを育ててあげるところにあると思っていてね」

「詳しく教えてください!」

 

「たまに学校の先生が来て『どうしてうちの学校にいた出来の悪い子がA-Zに勤めるようになってから活躍できるようになったんですか!?』なんて聞いてくる。それは生徒のことを信用できていない証拠。とにかく全て任せちゃえばいい

「任せる力!」

 

A-Zはトップが下からスタッフを支える仕組みで成り立っている。
各売場の責任者が小さな商店の店主のような存在なので、管理職もいない。

 

「今の教育は教科書から得た知識がベースになっているけど、これから必要になってくるのは知恵教育じゃないかな。周りが誘導するのではなく、ポンと現場に置いて自分で考えさせること」

「なるほど……」

 

「もし全てを任せた上で失敗したら、上の人間が責任をとればいいだけさ」

「かっこいい……」

 

2018年春より牧尾社長がスタートした新事業『こどもおとな園』では、まさに新しい教育のあり方を体現しています。幼児からシニアまでの三世代が、生活体験を通じて「生きる知恵」を身につけていくのだとか。

 

「商売も雇用も生んで、ターゲットも広くて。本当に影響力がすごすぎます……」

「そうそう、私は今76歳なんですが、そろそろこの店を誰かに譲ろうかと考えていてね」

「え! 社長、引退されるんですか!?」

 

「よろしければ、ナカノさんがAZを継ぎませんか?」

 

「さすがに荷が重すぎます!!」

 

おわりに

鹿児島県民に愛されるA-Zが、とてつもないスーパーだということが伝わったでしょうか。

「地域の皆様へ喜ばれるサービスを提供し続けます」

牧尾社長が掲げたA-Zの企業理念の一部です。シンプルな言葉ですが、実際に行動に移しやりきるのは至難の業。

 

しかし、信念を持ってやり続けている牧尾社長は、まさに「利益第二主義」を貫き通す経営者だと実感しました。

そして「地域のため」の一言では収まりきらないほどの、人間愛の深さを感じます!

 

社長! 私、社長の背中を追ってがんばります!

 

(おわり)

『クマソの穴』ヤマトタケルに滅ぼされた部族が住んでた穴

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『クマソの穴』ヤマトタケルに滅ぼされた部族が住んでた穴

先日、鹿児島に行った時のこと。

移動中の車内から景色を眺めていると、気になる看板があったんです。

 

『熊襲の穴』

 

“熊襲”と書いて“クマソ”と読みます。

クマソというのは、日本神話に登場する一族で、大和朝廷に抵抗した九州南部の勢力。最終的にヤマトタケルに滅ぼされたとされています。

 

その……穴???

 

地元の人に聞くと、5分くらい山道を登ればすぐだよ、とのこと。雨だったのでちょっと迷ったんですが、雨合羽を羽織って向かってみます。

 

さて、『クマソの穴』とやらに到着する前に、ヤマトタケルについて軽く書いておきましょう。

なぜなら、『古事記』で描かれるヤマトタケルは、めちゃめちゃなサイコ野郎で、おもしろいからです。

 

ヤマトタケル

※実はクマソ征伐するまではオウスノミコトという名前だったんですが、ややこしいのでこの記事ではヤマトタケルで統一します

 

ヤマトタケルは『古事記』や『日本書紀』に登場する英雄です。

特に有名なのは九州のクマソを滅ぼした「西征」と、東海や関東、東北を平定した「東征」でしょう。

 

草むらで奇襲を受け、火に囲まれた際、『天叢雲の剣(あめのむらくものつるぎ)』で草を薙ぎ払って助かった、というエピソードも有名ですね。なので、『天叢雲の剣』は『草薙の剣(くさなぎのつるぎ)』とも呼ばれます。

 

※『天叢雲の剣』=スサノオがヤマタノオロチを倒して手に入れたとされる神剣。三種の神器のひとつ。ただし、天叢雲の剣と草薙の剣は別物だとする説もあります

 

などと話している間にも山道を登っていきましょう。

雨だからというのもありますが、鬱蒼と生い茂った草木に古代の空気を感じますね。

 

せっかく『熊襲の穴』に向かっているので、クマソ征伐についても書いておきます。

そもそもなぜヤマトタケルはクマソを征伐することになったのか?

 

理由はヤマトタケルが―

 

 

自分の兄を惨殺しちゃったんですね。殺害に至るまでにはちょっとした言葉の誤解があったんですが……とはいえ、めちゃめちゃなサイコパスです。

※ちなみに兄を殺したと書かれているのは『古事記』のみで、『日本書紀』では兄は死んでいません

 

兄を惨殺した事実を知った父は、「こいつやべぇwww」と感じ、ヤマトタケルを疎むようになります。そのため、クマソ征伐という名目で、九州という遠方に遠ざけたわけですね。

 

そんなわけで、ヤマトタケルは、九州南部の「クマソタケル」と呼ばれる兄弟(タケルは“強い男”という意味)を征伐に向かいます。

 

10代の美少年だったヤマトタケルは、女装してクマソの宴会に忍び込みました。

そして、その美しさに見惚れたクマソタケルの兄を、短刀で殺害します。

 

それを見た弟は逃げ出しますが、すぐに追い詰められ、「ヤマトの国には我ら兄弟より強い男がいた」と武勇を讃えました。

で、冒頭で書きましたがヤマトタケルは当時オウスノミコトと名乗っていたんですが、そんな彼に名を譲って「ヤマトタケル」の号を献じたわけです。

 

ちなみに、その言葉を聞いた直後に、ヤマトタケルはクマソタケルの弟を真っ二つに斬り殺してます。やっぱりだいぶヤバいやつですね。

 

以上、ヤマトタケルの「西征」でした。

※ヤマトタケルの英雄譚は、他の話も不意打ち・騙し討ち・極悪行為のオンパレードなのでおもしろいですよ!

 

どこが「5分登ればすぐ」だよ……と、恨みながら20分ほど登ると、何か門のようなものが見えてきました。

 

山門の横にあった立て札を読むと、『熊襲の穴』というのはクマソの一族が住んでいた住居らしいですね。クマソって穴居人だったの?

 

これが『熊襲の穴』……

 

まあ、こういうのは実際のモノがどうというより、古代に思いを馳せるスイッチの役割なので、僕的には十分楽しめました。

だって神話の時代、ここで英雄・ヤマトタケルが戦ったんだなぁ~なんて、考えるだけでワクワクしませんか?

 

以上です。

 

「5分で登れる」ので、近くに来た際は是非立ち寄ってみてください。

現代美術家が描いたモダンアート壁画とかも見られる……らしいです。僕は興味ないので詳しくは調べてみてください。

 

熊襲の穴

場所|鹿児島県霧島市隼人町嘉例川4381−1

時間|特になし

駐車場あり

 

 

(おわり)

クラフトビール入門編!奥多摩の山奥で飲むビールは格別だなあ

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クラフトビール入門編!奥多摩の山奥で飲むビールは格別だなあ

ビーーーーーール!!!!!

 

と、見せかけてライターの根岸達朗です。

あんまりおいしいので大きな声を出してしまいました、すみません。

 

夏はやっぱりビールが最高ですよね。

 

最近はおいしいクラフトビールが楽しめるお店があちこちに増えてきて、お酒好きとしてはうれしいかぎり。

スーパーやコンビニでも国内外問わず、いろんな種類のクラフトビールがラインナップされるようになって、選ぶ楽しさが年々広がっているなあと感じます。

 

 

とはいえ、ひとことにクラフトビールとはいっても、種類はいろいろ。

銘柄の名前を聞いても覚えられないし、ただひたすら飲むばかりで、知識が深まっていかないなあ……と思うこともしばしば。

 

この機会にクラフトビールのことを勉強してみたーい!

 

というわけで、やってきたのが東京の奥座敷、奥多摩にあるこちらのお店!

Beer Cafe VERTERE(ビア・カフェ・バテレ)

TEL:0428-85-8590
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川212
営業時間:11:00〜22:00
定休日:木曜

 

唐突にこんなことを言うのもなんですが、こちらのお店で作っているビール、めちゃくちゃおいしいんですよ〜〜〜。

 

2015年のオープン以来、多くのアウトドアファンや観光客が足を運んでいて、奥多摩のブルワリーといえばバテレ!というくらいに注目されている人気店です。

 

古民家を改装した店舗はめっちゃおしゃれだし……

 

窓の外は一面の緑でロケーション最高……

 

(名前は覚えられないけど)いろんなフレーバーのビールが楽しめるし……

 

おいしいおつまみも充実……

 

しかも、駅徒歩30秒という好立地!

 

クラウドファンディングを利用して資金を集め、都心ではなく奥多摩というローカルな土地にあえて店を開いているところにも、着眼点の良さを感じずにはいられませんよね。

 

経営者は20代の男性二人組。

 


左が醸造長の辻野木景(つじの・こかげ)さん、右がバテレ代表の鈴木光(すずき・ひかる)さん

 

今回はそのうちの一人で、醸造長の辻野木景さんにクラフトビールのあれこれについて、話を聞きました。

なお、今回はバテレのビールの大ファンで、ビールと遊ぶきっかけをつくる架空の酒屋「あおにさい酒店」として活動する工藤葵(くどう・あおい)さんも取材に同行。
一緒にクラフトビールの勉強をしてきました。

 

「今日はよろしくお願いします!」

「はい、こちらこそ! まずは醸造所をご案内しますね」

 

 

奥多摩産のビールを目指して

「わー醸造所に入るのは初めてだなあ……(どきどき)」

「私も……」

「ここはモルト室ですね。ミールという原料となる麦芽を保管しています」

 

「へえ、いろいろあるんだなあ」

「ドイツやイギリスの麦、このほかに北米系の麦やオーストラリアの麦などをいろいろと組み合わせたりしながら使っています。奥多摩で麦を育てている人からゆずってもらうこともありますね」

「あ、地元のものも使うんですか?」

「はい。まだ実験的な段階なんですが、麦のほかに、地元の町おこし団体にホップの栽培もお願いしていて。ホップ、ちょっと香り嗅いでみます?」

 


ビールの苦味や香りのもとになるホップ

 

あ〜〜! ビールの香りがする〜!!

「なかにルプリンっていう樹脂が入っていてそれが香りのもとになっているんですよね。いずれは麦芽もホップも、原料ぜんぶを奥多摩産にできたらいいなあと思っていて」

「おお、それはいいですね。地産地消的な」

「はい。ただ、やっぱり奥多摩で作ってもらうものだけだと量が少ないんですよ。奥多摩の山は杉だらけですけど、それが全部ホップだったらいいのになあって、実は密かに思っていて。そしたら、花粉症もなくなりますしね」

「はは、確かに。じゃあ奥多摩でまかなえない分のホップはどこから?」

「商社を通じて、アメリカやドイツから輸入しています」

「日本のホップ農家さんから買うことはないんですか?」

「今のところないですね。というのも、日本のホップ農家さんって、ほとんどが大手メーカーとの契約栽培なんですよ。だから僕たちみたいな、小さなブルワリーでは買えないんです。それでも買うというのなら、大手メーカーを通じてお願いしないといけなくて」

「なるほどー。そういう事情が」

「だからというわけではないですが、自分たちのローカルな関係性で原材料を仕入れることができたらやっぱりいいなあとは思いますね。地元のものだけでおいしいビールができたらそれは最高ですから」

 

バテレのビールが生まれるところ

「こちらは仕込み室です」

「へえ、いろんな機械があるなあ」

「一つひとつの設備を説明すると専門的になっちゃうので省略しますけど、ビールができる工程ってそれほどむずかしくないんですよ。簡単に言うと、麦をお湯で煮込んで、香りのもととなるホップを入れて、あとは酵母を入れて発酵させればできあがりです」

「わりとあっさり解説してもらいましたけど、いろいろコツがあるのでは?」

「そうですね。ひとつは麦とホップの煮込み時間ですね。苦くしたいなら煮込み時間を長くするし、逆に香りの良さを引き立てたいなら浅く煮込みます」

 

煮込み時間と麦芽の種類(焙煎度合)によって、ビールの色が変わる。ビールの名称は左から「Red IPA」「Cream」「Weizen」「Session IPA」「Golden」

 

「なるほどなるほど。色の違いはそういうことだったのかー」

「あとのポイントはやっぱり、どういう酵母を使うかですね」

 

「ああ、酵母! 確か、酵母が原料に含まれている糖分を食べてアルコールを発生させるんですよね。以前ジモコロの企画で少しだけ勉強したことがあるなあ」

「酵母にもいろんな種類があって、みんな性格が違うんです。あいつはこの麦をよく食べるとか、この麦はあまり食べないとか。あいつはこの麦を食べるとこういう匂いを出すとか。人間に違いがあるのと一緒で、酵母にもいろんなタイプがいるんですよ

「つまり、原材料も酵母も、組み合わせが無限大にあるということですよね。おもしろいなあ。自分でもつくってみたくなります。ほら、葵さんもビール好きならつくってみたくなりません?」

私はおいしいビールをみんなに広めたい人なので、つくらなくていいんです」

「そ、そっか……(いろんな関わり方があるな)。ちなみにタンクひとつでどのくらいの量が仕込めるんですか?」

「1タンクで580リットルです。前は130リットルのタンクで仕込んでいたので、おかげさまでだいぶ規模が大きくなりました。あと最近はこの醸造所の横にグロウラーショップもオープンしたんです」

「グロウラーショップ?」

「はい。グロウラーショップというのは、マイボトルでビールのお持ち帰りができるお店のことです」

 

バテレオリジナルのグロウラーボトル。ショップ開設時におこなったクラウドファンディングのリターンとして提供された。

 

「へえ。ビールをそういう風に買ったことがないから興味があるなあ」

「日本酒だと量り売りっていうのがありますけど、それと同じことをビールでやっています。奥多摩はキャンプや釣りとか、いろんなアクティビティが楽しめるところなので、自然を感じながらビールを楽しむ体験をしてもらえたらうれしいですね」

「いいなあ。新しいことにどんどんチャレンジしてすごいですね」

「それなりに投資をしている分、がんばらなくちゃーっていうのはあるんです。ただそうはいっても、大手と張り合おうとかもぜんぜんないですし、奥多摩のローカルでマイペースにやれればいいと思っているんですよ」

 

 

若者たちが「ビール」を選ぶ理由

「ところで木景さんはどこかでビールの修行をしたんですか?」

「高円寺で自家製ビールをつくっている『麦酒工房』というお店で、3年間働かせてもらったんです。僕、阿佐ヶ谷出身で家がめっちゃ近かったんですよ。そこでバイトしたらビール飲めるし、作り方も教えてもらえるし、最高だなと思って」

「それはいいなあ。ビールがつくりたかったんですか?」

「そういうわけでもなかったんですけど、ひとつのきっかけは今、バテレの代表をしている鈴木との出会いですね。鈴木とは高校から一緒なんですけど、あいつ出会ったときからずっと『俺はいつか社長になりたいんだ!』と言っていて」

 


バテレ代表の鈴木光さん

 

「へえ。鈴木さんはビジネス志向の人なんだなあ」

「はい。それもあって、昔からいつか一緒に何かをやろうという話もしていて。ただそうはいっても、自分たちには実績もないし、武器になるものも何もない。これじゃ誰も相手にしてくれないよね、ということで話合った結果、いったん距離を置いて、鈴木が金を貯めて僕が武器をつくる、ということになったんです」

「ときが来たら再会しようというような? ドラマチック……!」

「名前も『光』と『景(かげ)』ですから」

「そんなことあるんだ……」

「で、僕は当時、家業の便利屋を手伝っていたんですが、たまたま近くにその『麦酒工房』があったんです。ビールはもしかしたら武器になるかもしれないと思って働き始めたんですが、鈴木も店に飲みに来てくれて、『これだったら絶対にいける!』と言ってくれて」

「物語があるなあ。じゃあ、葵さんはどういうきっかけでビールの道に?」

 

  

「私は純粋にクラフトビールが好きでいろんなところで飲んだりしていたんですよね。で、ビールを普段あまり飲まない同世代の若者にビールってこんなにおいしいし、楽しいんだよーということを伝えたいと思ってイベントを始めて」

「へえ。どんなイベントなんですか?」

「例えば、こないだやったのは、バテレの『Cream(クリーム)』というビールを、歌舞伎町の喫茶店で音楽を聞きながら飲むというイベントで。『Cream』はまったりしていて、じっくり飲めるビールなので、喫茶店の雰囲気にとても合うんです」

 


マイルドな味わいで人気がある「Cream」。アルコール度は5.5%

 

「私はお店を持っていないので、シーンの組み合わせでビールを楽しんでもらえるようなことがしたいなあと

「なるほど。いろんな可能性がある活動ですよね」

「ビールって多種多様なんですけど、そのビールに対してどう過ごすのがいいのかという視点ではあまり語られていないんです。私は朝昼晩、いろんなシチュエーションでビールを楽しみたいと思うし、そうやってビールのある豊かなライフスタイルが提案できたら、みんなに幸せが広がるなあとも思っているんです」

 

みんな「ビール」でいいじゃないか

「確かにシチュエーションは大事ですよね。キャンプで飲むビールとかとてもおいしいですし」

「そうですね。僕も鈴木と店を始める前にこの近くの河原でキャンプしながらビールを飲んでいたんです。自然を感じながら飲むビールってやっぱりおいしくて、ここで店をやるしかないな〜って思いましたからね。気持ちいいところで飲んだ方が、ビールはおいしいというひとつの提案をしているつもりです

「シンプルな動機で気持ちいいなあ」

「ただ、それが誰にとってもいいというわけではないだろうし、あくまでも僕たちはそれがおいしいと思う、ということでもあるんですよね。だからうちが『これは冬向けのビールなんです』と言っても『自分はそれを夏に飲みたいんだ』という人がいても当然いいわけで」

「うん。解釈の仕方はいろいろですね」

「ビールってそもそもそういうものなんだと思います。誰でもつくれるし、誰でも好きに楽しめる。その自由さとか、敷居の低さが僕は好きなんです」

「確かに間口が広いですよね。でも、今年4月の酒税法改正で副原料の範囲が広がって、ブルワリーの新規参入がむずかしくなったという話も聞きます。簡単に言うと、これまで『発泡酒』扱いだったものが、『ビール』と表記しなければならなくなったわけですよね」

「はい。うちのように生産量の上限規定が低い発泡酒免許でやっているところは、これまで使えていた副原料を使うと『ビール』になってしまいますから、その副原料の使用にこだわるなら新たに免許を取得しなくてはいけなくなります。それによって醸造スタイルを変えなければならなくなったブルワリーさんもいるとは思います」

「みんなもっと自由にビールをつくって売れたら楽しいですよね。クラフトビールという定義付けもなんか世界を狭めているような感じがしてしまって」

「そうですね。別にクラフトビールを定義する必要はないですし、僕は大手メーカーがつくるビールも好きです。だから、呼び方はみんなビールでいいんじゃないかなと思っていて

「ほんとですね」

「ただ、どんなビールもちゃんと気持ちを込めて、おいしくつくろうとすることは大事ですし、そういうビールがいいビールなんだと思います。そこに競争は必要ないし、僕たちの店の隣で別の醸造家さんがビールを作り始めるようになってもおもしろいなあ、なんて思うんですよ」

 

まとめ

ビールに向き合う人々の健やかな感性に触れた今回のインタビュー。

多様なビールがあるからこそ、僕たちは多様な物語に出会えるし、あらゆるものが多様であることのおもしろさにも気付かせてもらえるのでしょう。

 

今はクラフトビールという言葉がもてはやされる時代だけれど、同じビールに垣根なんてないはず。本当に多様性あふれるおもしろいビールの時代は、世の中からクラフトビールという言葉が聞かれなくなった頃から始まるのかもしれません。

 

奥多摩のローカルとつながりながら、ビールの世界を自由に遊ぶ「バテレ」と、ビールのある世界観をのびのびと表現する「あおにさい酒店」。

今後の展開にぜひ注目してみてください!

 

というわけで失礼して……

 

ごくっ……ごくっ……

 

んー……

 

夏のビールは最高だなあ。

 

ではまた!

 


おさかなアメリカンドリーム! NYの「魚食文化」に一石を投じた日本人の話

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おさかなアメリカンドリーム! NYの「魚食文化」に一石を投じた日本人の話

ジモコロ読者のみなさま、はじめまして! ライターの山口祐加です。

好きなことは「料理」と「食べ歩き」。

暇さえあれば食べることばかり考えている、生粋の食いしん坊です。

 

さて突然ですが、私アメリカのニューヨークに来ております!!!

なぜニューヨークなのか。話は5年前に遡ります。

ちょうどそのころ、私はニューヨークに半年間滞在していたのですが、困っていたことがひとつありました。

 

それは魚屋で刺身が売っていないこと。

 

刺身を大好きな私にとって、食卓に生魚のない生活はとてもつらいものでした。

しかしいざ魚屋に向かうと、刺身にできそうなほど新鮮な魚がたくさん売っています
なのに、お店の人に聞くと「生食はダメ」

 

こんなにピチピチしてるのに、なぜ????

その謎は解けないまま時は経ち、この2018年。

私は「アメリカで獲れた生食ができる魚を取り扱う日本人経営のお店があるらしい」という噂を耳にしました。

 

これはすぐに話を聞きに(食べに)行かなければ! と思い立ちいざニューヨークへ。

 

ここがニューヨーク・ブルックリンの大通り沿いに面している噂の魚屋「OSAKANA」。

ここ、本当に魚屋??

 

外観がイメージと違いすぎて、危うく通り過ぎるところでした。不安になりながら、お店に入ると…

 

新鮮なお魚が!!!

 

手前は刺身用の魚で奥は下味のついた調理用の魚。このほとんどがアメリカ東海岸で獲れたものなのだそうです。

ちょっとだけ味見をさせてもらったのですが、身がプリプリでなんとおいしいこと……。

オシャレな内装に、新鮮なお刺身。なんと素晴らしいお店なのでしょうか!5年前の私に教えてあげたい!

 

こんなイケてる魚屋を営んでいるのは日本人の原口雄次さん。なんと原口さん、ニューヨークに店舗を構えるラーメン屋のオーナーでもあるのだとか。

 

こちらがそのラーメン。

 

スマホ画面の中に箸を突っ込みたいくらい、おいしそう…。

しかし、気になることが多すぎます。

 

どうしてニューヨークで魚屋とラーメン屋を?

そもそもどうしてアメリカの魚は生食できないの?

 

ということで、原口さんにお話を伺ってきました。アメリカと魚の不思議、解き明かしますよ〜〜〜!

 

魚の目利き。それがアメリカにはない。

「こんにちは、原口さん今日はよろしくお願いします。ズバリお伺いしたいのですが、どうしてアメリカは生食用の魚が売っていないのでしょうか?

 

「アメリカで生食できる魚は魚屋にたくさん売っていますよ」

 

「あれ……??」

 

「でも『生食できます』と断言してくれる魚屋はほとんどないと思います。なぜならば、魚屋側に生食できるかどうかを判断する目利きがないからです」

「生食できるけど、生食用ではない…?」

「はい。つまり魚は生食できるほど新鮮でも、目利きができず、生食用の扱い方もわからない。お店の人が生で食べたことがないのに、お客さんに勧められなくて当然ですよね。だから結果的に『生食できない』という結論に至ります」

「なるほど…。 目利きって具体的にはどういうことなんですか?」

「そもそもどの魚が生食できるのか、寄生虫対象か否かなどですね。それから生食するのであれば、内臓の処理をきちんと行い、生食用のさばき方をしなくてはなりません。アメリカの魚屋はその技術がないところがほとんどなんですよ」

「日本の魚屋は生食用の魚があって当たり前ですが、生食文化がないアメリカでは仕方ないのかもしれませんね……」

 

20代、初めて作ったパスタが料理人への道を開いた

「そもそも、なぜアメリカで魚屋とラーメン屋を?」

「もともとは料理人になりたいと思っていて」

「料理が先だったんですね。じゃあ昔から料理に思い入れが……」

「いや、料理に興味を持ったのは20代前半の頃なんです」

「あれ、意外と遅い…」

「そのときに人生でほぼ初めて作ったパスタを妹に振る舞ったんです。そうしたらおいしいと言ってもらえて

「ほうほう、いいお話ですね」

 

それで料理の才能があると確信しました」

 

「……え???」

「いや、思い込みが激しいタイプなんです」

「な、なるほど…(そういうレベルじゃないような…)。でも、かなり凝ったものを作ったんですよね……?」

「バター、醤油、ベーコンのシンプルなパスタです。絶対失敗しない組み合わせでした」

「めっちゃシンプルだった!」

「はい。それ以来ずっと毎晩家で料理を作り、週末は外に食べに出かける生活を繰り返して、料理の道に進んで行きました。そして大学時代にアメリカで3年間過ごしたこともあり、アメリカでレストランを開きたいという夢を持ったんです」

 

日本人だから気づいた「アメリカ鮮魚市場の3つの弱点」

「それでアメリカに来られたのですね」

「はい。アメリカでは料理店ではなく、魚に関わる仕事についたのですが、その中で僕はアメリカの鮮魚市場における3つの弱点に気づきました」

 

「アメリカ産の新鮮な魚があるにも関わらず、そのおいしさも知られていないし、このままだと知られることはないと」

「はい。アメリカの人にアメリカの魚のおいしさを知ってもらいたいと思うようになったんです。そしてお客さんと直接関われる飲食店として、ラーメン屋『YUJI RAMEN』を始めることにしました」

「魚がきっかけで、ついにお店を始めることに!」

「はい。僕は日本人なので、料理店を始めると同時に日本食を提供しながらアメリカの鮮魚市場をもっと良くする方法はないかと考えたんです」

 

30歳までラーメンを食べたことがなかったラーメン屋オーナー

「魚で日本食と言えば真っ先に寿司が思いつきますが、どうしてラーメンだったのでしょうか?」

「最初からラーメンをやろうとは思っていませんでした。実は僕、30歳までラーメンを食べたことがなかったんです。」

「え!? そんなことありますか??? 男子高校生とか異常にラーメン好きじゃないですか」

「ラーメンを食べるなら焼きそばがいいと思っていました。興味がなかったんです」

「ではなぜラーメン屋を?」

「当時、日本では油そばなどの汁なしそばが流行っていたんです。これならゆっくり食事をするアメリカ人でも麺が伸びないうちに食べられるし、パスタのようにフォークでも食べられるのが良いなと思いました」

「なるほど〜」

 

「そしてタレには魚のアラを使ったら面白いなと。レストランで捨てられてしまうものをあえて使うことで、日本らしい『もったいない』の精神がアメリカで伝えられると思ったんです」

「先ほどの弱点3つ目の『食品ロス』につながるのですね」

「はい。開発した汁なし麺は『ブロスレスラーメン(汁なしラーメン)』と名付けました。最初は会社勤めをしながら、バーを間借りしてYUJI RAMENの営業をはじめました」

 


「ついにお店が開かれたんですね!」

「はい。すると『ブロスレスラーメン』というワードがメディアにウケて、お客さんがひっきりなしに来るようになったんです。お客さんの後押しもあり、僕は会社を辞めてラーメン屋に専念しました」

「なんと…お店一本で食べられるように!」

「その後もイベントに出店したり、アメリカの大手オーガニックスーパーに店舗を出したりと、少しずつ認知度を高めていきました」

「おおー! ひとつのお店だけでなく、展開を広めていったと」

「そんな中で、路面店を出すためにキックスターター(世界最大のクラウドファンディング)で開業資金集めも挑戦したんです。そうしたら、なんと3000ドルの目標が12,000ドルも集まって。後で聞いたら、僕がキックスターターで日本人初の目標金額達成者だったらしいです」

 

「ええ!!すごい話ですね」

「僕も本当に驚きましたよ。そこで集まった資金を使い、2012年にブルックリンで路面店をオープンしました」

「すごいトントン拍子に話が進んでいく…これがアメリカン・ドリームなのか!」

朝・昼は定食屋、夜はラーメン屋に変わるお店

「さて、僕たちの事業コンセプトは『Honor your fish―お魚を大切に』なので、魚を丸ごと使い切ることを大切にしています。ラーメンで魚のアラを使うのであれば『魚の身』を売らなくてはならないですよね」

「たしかに」

「そこで始めたのが、アメリカ東海岸で獲れた魚だけを出す一汁三菜の定食屋『OKONOMI』です。同じ店舗で、朝・昼は定食屋、夜はラーメン屋として営業するようになりました」

「魚も店も無駄なく丸ごと使っていてすごい。あれ、でも魚屋はどこで…?」

「定食屋のお客さんから『この魚はどこで買えるの?』と聞かれるようになったんです。そこで自分たちの店で使っている魚を売り、同時に魚料理の楽しさを伝える料理教室を行う魚屋『OSAKANA』を開きました」

 

「先ほどの弱点2つ目の『魚の目利き・捌き方』を学べる場所を作ったと。緻密に戦略されていますね……!」

 

「魚」にこだわり続ける理由

「今年の5月には『OKOZUSHI』というカジュアル寿司屋をブルックリンでオープンしたんですよ。『一人50ドル以下で気楽に食べられる寿司屋』をコンセプトに、箱寿司と手まり寿司に特化したお店にしました」

「お寿司屋さんまで…。でもニューヨークに何店舗も店を開くことができるのには理由があるのでしょうか?」

ニューヨークは、新しい価値観を積極的に受け入れようとする人が多い気がします。街全体としてチャレンジャーを支援する気風がある。だから僕の出したお店がこの街にとって、新しいものだったことも大きいでしょうね」

「固定概念を持たず、新しいものを育てるという文化がある。そこに原口さんのお店がウケたと」

「全くその通りです。競争は激しいけれど、ニューヨークはお客さんが本当にいいと思ったものに対してついてきてくれる。だからこそ、ここでお店をやることに価値があると思っています」

「なるほど…激しい競争の中で残ったお店という価値なんですね」

「はい。ちなみに、日本にも出店していますよ! 去年、新横浜の『ラーメン博物館』内に出店し、今年は京都で定食屋『Lorimer Kyoto』をオープン、夏には清澄白河にラーメン屋の路面店もできる予定です」

「日本にも?! でも全てお魚に関連するお店なのには、何か理由があるんでしょうか?」

「僕は魚の目利きと捌きができて、アメリカではそれができる人が少ない。そしてその技術を欲している人がいるなら、自分にできることをやる。仕事を通じて人に喜ばれるのってうれしいじゃないですか。僕にとってそれがたまたま魚だったというだけです」

「なるほど〜〜アメリカで魚食で成功して、逆輸入されたのが面白いです」

世界で日本人が活躍できる産業は飲食業だと思います。世界中で和食の認知度が上がっているので、和食を食べたい、勉強したいという人が増えているんです。だから和食を作れる日本人が世界に出て行ったら、すぐ活躍できるはず。包丁とまな板さえあれば誰でも夢が切り開けますから、海外の和食の展望は本当に明るいですよ」

 

おわりに

原口さんはアメリカで働く中で、現地の鮮魚市場の弱点に気づき、お店を始めました。

「もったいない」をコンセプトに、魚を丸ごと使った料理を提供し、魚の目利きと捌き方を教える。店舗を使って、多くの人に魚食文化を一歩ずつ広めています。

 

「初めて作ったパスタがおいしかった」という理由で、日米で6店舗も経営する未来が待っているとは、原口さん自身も想像できなかったことでしょう。

 

大切なのは、行動力と次を見る力。

世界に目を向けると、和食の未来は明るいと本当に感じました。

 

さて、そろそろお腹が空いてきませんか…?

 

こちらはYUJI RAMENの二大人気メニュー・マグロのアラで出汁をとった、とんこつならぬツナコツラーメン(写真手前)と、卵とベーコンのまぜ麺(写真奥)。

 

待てないので、早速いただきます!!

 

魚とは思えないほど濃厚な味で、とっっっってもおいしい……!

細麺で飲み物のようにスルスルと身体に入っていく……! マグロの炙りチャーシュー、至高のおいしさ……!

取材後のラーメンは最高のご馳走でした。

それではまた!

廃墟の女王『摩耶観光ホテル』を観光資源に!? 内部の調査に潜入した!

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廃墟の女王『摩耶観光ホテル』を観光資源に!? 内部の調査に潜入した!

こんにちは。ジモコロライターの田中嘉人です。今 僕は……

 

“廃墟の女王”と呼ばれる『摩耶観光ホテル』(兵庫県神戸市)に来ています!

 

……といっても、正直なところ廃墟の魅力は「??」な僕。だって、薄暗くて怖いし、ガラスの破片とか散らばってて危ないじゃないですか。

そこで、廃墟のおもしろさを学ぶべく、廃墟好きにとっては憧れの聖地『摩耶観光ホテル』に、足を踏み入れたのです。

 

え? 廃墟に入ったら不法侵入? いいえ、今回はそうではないのです。

その説明のために、まずはこちらの写真をご覧ください。

 


長崎県沖に浮かぶ“廃墟の王”軍艦島(正式名称:端島)

 

かつては5000人近くが暮らしていた炭鉱の島だったのですが、1974年に閉山。無人島になり、廃墟と化してしまったのです。

 

ところが、なんと2015年9月に世界文化遺産に登録! 今ではツアーが組まれるほどの人気となり、観光資源として有効活用されているんです。

 

 

このような動きを受け、『摩耶観光ホテル』を登録有形文化財にすべく、活動している人たちがいるんです。

廃虚の魅力を学ぶならうってつけ!ということで、特別に調査に同行させていただくことになったのでした!

 

摩耶観光ホテルが”廃虚の女王”と呼ばれるワケ

というわけで、やってきました神戸。摩耶ケーブル駅集合って言われたけども……?

 

ようこそ、摩耶山へ! 」

「わ! びっくりした! あなたは?」

「はじめまして! 摩耶観光ホテル保存プロジェクトを担当している前畑洋平です。廃虚の魅力を知りたいんですよね? とりあえず行ってみましょうか!」

 

前畑洋平

全国の近代化遺産の保存・記録活動を手がけるNPO法人J-heritage(ジェイ・ヘリテージ)代表

HPTwitter

 

前畑さんに導かれるままに摩耶ケーブルで「虹の駅」へ。

 

「虹の駅」の脇にある立入禁止の柵を超えて進んでいきます。今回は特別!

 

普通に山の中だから草木が邪魔するし、足場にはガラスや木片が落ちてるしで、進むのが難しい。調査の方々は慣れているのかズンズン進んでいく……

 

「フウフウ……! ずいぶんと山のなかにあるんですね」

「ハハハ、“女王様”ですからね。簡単には謁見できませんよ。あ、見えてきましたよ!」

「……!」

 

木々のざわめきと虫の声しか聞こえない森の中、ぽつんと佇む廃ホテルがそこにありました。 これが……摩耶観光ホテル!

 

朽ちて色を失った建造物とは裏腹に、夏の日差しを受けた緑が生命力に溢れていますね

 

人が生活した気配が、まだ生々しく残っています。まるで、つい最近まで誰かが居たような……

 

そんなヒトの残り香を優しく包み込むように、木々の緑が建物に絡みついていました

 

「田中さん! どうですか!?」

「廃墟と言うとなんとなく怖くてオカルトチックなもの、と思っていたんですが(実際ちょっと怖かった)、どこか懐かしくて、切ないような……なんですか? この感覚は!」

「“誰かがここで生活していたんだ”という気配と、“そして、今はもう誰もいない”という侘しさ、その感覚が、廃墟好きの入り口じゃないでしょうか」

「そして、マヤカンを実際に見るまでは、まっっったく理解できなかったのに、今は“美しい”と思ってしまっている自分がいます」

 

この角度は特に、摩耶観光ホテルが“廃墟の女王”と呼ばれる理由らしく、しばらく見とれてしまいました。

 

「そう、美しいですよね! 経年劣化するアールデコ様式の建築と、周囲を取り巻く自然が、時代の変化と共に絡み合っていく美しさ……」

「これ、内部はどうなってるんでしょう?」

「中も最高なんですよ! 見てみましょう!」

 

広く寂れた空間に天窓から降り注ぐ日の光

 

もう誰も座ることのない椅子と、窓の向こうに広がる森

 

摩耶観光ホテルを語るうえで欠かせない『額縁の部屋』

 

ヒトが居なくなったこの空気の中を、今 一人で歩いているんだ……という感覚に、ちょっとくらくらしますね。

 

「美しい……! マヤカンについてもっと知りたくなりました! 教えてください」

「すっかり虜じゃないですか。マヤカンを語るうえでのキーワードは『断続的な栄光と衰退』です」

「廃墟だから衰退はわかるんだけど、断続的な栄光って?」

 

「マヤカンは営業していた時代と、廃墟の時代を、何度も繰り返しているんです」

「そうなんだ!」

「最初は、摩耶山にケーブルを設置した会社が、ホテルやレストラン、温浴施設などが一緒になった福利厚生施設をつくるべく建設した『摩耶倶楽部』として建設されました」

「最初は会社の保養施設みたいなものだったんですね。贅沢だなぁ」

「その後、ホテルとして一般の人も利用できるようになるんですが、太平洋戦争が起きて、ホテルはほぼ休止。さらに空襲の被害もあって、それが第一次廃虚時代の始まりです」

 

摩耶山の展望台から望む摩耶観光ホテル。山の中腹にひっそりと佇んでいる

 

「再オープンしたのは、1961年。ケーブル会社からホテルを買い取った民間企業が高級ホテルとして再開しました。ところが、今度は台風によって復旧不可能なダメージを受けてしまいます。結局1967年には営業を中止」

「それが第二次廃虚時代か……」

「その後、1974年にゼミ合宿やサークル合宿専門の『摩耶学生センター』として利用され始めました。『廃虚に泊まれる』という売り文句も意外とウケて好調だったそうですが、管理人だった老夫婦が体調を崩して……」

「それで今に至るまで第三次廃墟時代が続いている、と……それにしても時代によって利用シーンが異なる点は興味深いですね」

「そうなんです。だから、もともと大浴場だったところが洋室になっていたり、剥がれた壁面に相合傘の落書きが残っていたり……そういうところを見るだけでも結構おもしろいですよ」

 

よーく見ると中央の壁紙の剥がれたところに、女性がシャワーを浴びていると思われる落書きが。

かつての浴室が、第一次廃虚時代に落書きされ、高級ホテルとして再出発を図る際に壁紙が貼られたのでしょう。その後、壁紙が剥がれて再び落書きが日の目を見るようになったと。

落書き一つにも歴史があるんですね。

 

登録有形文化財を目指して

「マヤカンへの異常な知識と愛に、少々引いてるんですが……前畑さんって何者なんですか?」

「僕は単なる廃虚マニアですよ。ただ、キャリアは長いですよ(笑)。小学校の頃から『ぼくらの七日間戦争』という映画に憧れて、秘密基地をつくって……」

「セブンデイズウォーですね! 僕も好きだったなぁ」

「普通は中学に進学すると辞めるんですよね。でも、僕はひとりで心霊スポットへ行って……社会人になってからは興味の対象が廃虚へ移ったというわけです」

「では、ただの廃墟マニアだった前畑さんがなぜNPOを?」

「最初は全然仕事にするつもりはなかったんです。でも、廃墟マニアってやっぱり、勝手に侵入しちゃうんですよね。僕も強くは言えないんですけど」

「まあ、若い頃の話ね」

「所有者からすると、勝手に侵入してケガでもされると困るわけで、最悪、せっかくの廃虚を解体してしまう可能性もある。だったら、ちゃんと許可を取って廃虚へ行ける仕組みをつくろうと思って、NPOを立ち上げたんですね」

「摩耶観光ホテルには、特に深く関わっているように感じましたけど。何か理由があるんですか?」

「NHKのとある番組に、オススメの廃虚リストを用意してほしいって頼まれたんですよ。そうしたらプロデューサーの方の紹介で、マヤカンの所有者さんと会えることになりました」

「まさかの展開」

「最初は『キミらみたいな廃虚マニアに迷惑してんねん』って感じだったんですが、話をするうちに少しずつ理解を示してくれて。地域が受け皿になり、かつ僕らが保存するための活動をするなら協力すると約束してくれました」

「所有者さんも摩耶観光ホテルを残したいという気持ちがあった、と?」

「というよりも、僕らみたいなちっちゃなNPOを応援したい気持ちがあるからって言ってましたね。『おまえら飯食えんのか?』みたいな(笑)」

「めっちゃいい話……!」

「前畑さんとしては摩耶観光ホテルをどのように残していこうと考えているんですか?」

「今は登録有形文化財への登録を目指しています。建設後50年が経過していて、『国土の歴史的景観に寄与しているもの』『造形の規範となっているもの』『再現することが容易でないもの』のどれかひとつに該当することが要件なんですが、マヤカンは全部当てはまってるんですよね」

「すごい!」

「あと、個人的には、摩耶山を活性化させていくにあたりマヤカンのコンテンツとしての価値、可能性もあると思います。マヤカンの力を摩耶山、ひいては灘区エリアに還元できると考えている地域の方もたくさんいるので」

「地域の人たちに愛されているって重要ポイントな気がします」

保存プロジェクトも順調で。 クラウドファンディングも500万円の目標に対して、727万7000円を達成しました」

「すごっ! そのお金って、どういうことに使われるんでしょう?」

「不法侵入でケガ人がでないようにする、というのが一番重要なので、まずは防犯の仕組みを作りました。あとは、日照りや雨風からの劣化を防ぐカバーを用意できそうですね」

 

マヤカンのなかにはいくつもの監視カメラが。24時間監視している

 

「順風満帆ですね」

「ただ、僕はやっぱりマヤカンのなかに入ってもらえる仕組みをつくっていきたい。安全確認調査も進めなきゃいけないし、同じような想いで取り組んでくれる仲間も欲しいですね」

 

廃墟の魅力ってなんだろう?

全国的に有名な摩耶観光ホテルは、映画のロケ地としてもよく使われています。

この正面の壁、実は映画『DEATH NOTE』撮影時に塗り直したそう。雰囲気を損なわないよう、あえて廃墟っぽく塗ってあるんです。廃墟の補修としては最高の方法では……?

 

「軍艦島が世界文化遺産になったように、摩耶観光ホテルもすんなり有形文化財として登録されるんじゃないですか? 追い風が吹いているというか」

「うーん……一概にそうとは言えませんね。逆に質問なのですが、軍艦島と聞いたら何をイメージしますか?」

「え? えーっと、あの巨大なコンクリートのアパートとか??」

 

 

「ですよね。でも、あの高層アパートは、世界文化遺産ではないんです」

「え?」

「『明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業として世界文化遺産に登録されているのは、軍艦島の周りを囲っている壁と、なかに残っている薄っぺらいレンガだけ。高層アパートをはじめとする部分は大正時代につくられたものなんです」

「軍艦島まるごと世界文化遺産ではないということ……?」

「そうです。もちろん文化財的な価値はあるんですが、今のところ残すことになっているのは1号棟と3号棟だけ。100年前の高層アパートのひとつなんかは、崩壊していく様子をモニタリングするだけという状態なんです」

「知らなかった……軍艦島は全部世界文化遺産で、イコール半永久的に保存されていくとばかり……」

「どの視点で見るかによって、価値って変わるんですよ。だから、極端な話、マヤカンも登録有形文化財になったからって残せるわけじゃない。登録有形文化財は通過点で、所有者さんと地元、自治体との間で簡単には壊せないような関係をつくらなきゃいけないんです」

 

「実際のところ、有形文化財に登録される確率ってどのくらいなんですか?」

「実際は、50%くらいじゃないでしょうか。今までの文化庁のモノサシにはない価値なので。でも、軍艦島の事例からも廃墟の人気ぶりは明らかですよね。そろそろ“廃墟”の価値を認めてほしいです

「かっこいい! では、最後に教えてください。それほどまで前畑さんを魅了する廃墟の魅力ってなんなんでしょう?」

「訪れた人が過去にタイムスリップして、昔の景色を想像して、今の時代と比較して、これからを考える。そのきっかけになる場所だと思います」

「そういえば、調査隊のなかには、かつてのマヤカンのホールでダンスを踊ったことがあるというご婦人もいましたね」

 

こちらの御婦人です。戦後、まさにこのホールでダンスをしたそう。

彼女にとってはどんな高級ホテルより価値の高い建造物なのでしょう

 

「廃墟って、一般的な価値感ではくくれない孤高の存在だし、廃墟を好きな人も“価値のない価値”を見出してることが多い。だから、文化財にして『価値があるんですよ』とラベルを貼っちゃいけないのかもしれません。そのあたりはジレンマを抱えてます」

「少なくとも僕は、初めて廃墟に訪れてみて、すっかり虜になってしまいました。僕にとってはすごく価値のある時間でした」

「そう言ってもらえると嬉しいですね。いつか、調査じゃなくて誰もがマヤカンに入れるようになったら、ぜひまた遊びに来てください」

 

まとめ

摩耶観光ホテルだけではなく、軍艦島のエピソードも交えながら語られた廃墟の現状、そして魅力。

廃墟についてサッパリだった僕も、すっかり魅了されてしまいました。摩耶観光ホテルが未来に残っていくことを願わずにはいられない取材となりました。

 

あ、そうそう……念のためお伝えしておきますが……

 

廃墟への無断立ち入りは法律違反なのでやめてくださいね!

 

(おわり)

【まとめ】「一次産業」っておもしろい!ジモコロの記事10選

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【まとめ】「一次産業」っておもしろい!ジモコロの記事10選

こんにちは、ジモコロ編集部です。

ジモコロの過去記事に改めてスポットを当てていく「まとめ」シリーズ。今回のテーマは「一次産業」です。

 

農業、林業、水産業などなど……日本人の「衣・食・住」を今までもこれからも支え続けてくれる超重要な仕事たち。

 

しかし昨今、サービス業や通信業などの第三次産業が活発になっているのは周知の事実。そうした中で一次産業はどうなっているのか?

そしてこれからどうなっていくのか……?

 

いろんな視点から一次産業を見ることができる、10本の記事を紹介します! いろんな方の濃い生きざまを一気に味わえる、お得な内容ですよ!

 

一次産業って面白い!

「金がないなら稼げ」元ヒモのマッドサイエンティスト農家が語る人類改造計画

 

まずは山形県の「マッドサイエンティスト農家」こと山澤清(やまざわ・きよし)さん。

 

旅館に婿入りした元ヒモで、日本で初めてハーブを育てた人で、20万平米の農場で600種類の野菜を育てていて、製造するオーガニック石けんは皇后さまも使ったことがあって……

のっけから情報量がすさまじいー!

 

両足に2kgの重り。曰く、「重りつけて生活してっから筋肉ボッコボコだよ」

 

「ポールダンスやったことある? ピッて乳首が上がるのよ」

ここの野菜を使ったレストランの女性客のために備え付けてあるらしいです。このご時世、ギリギリの展開についていくのがやっと。

 

もちろん、ただの「尖った人」ではありません。

新品種に淘汰されていく在来種の種を保存する「シードバンク」をはじめ、人間と自然との関わりを深く考えておられる山澤さんの仕事と言葉には重みがあります。

 

お次は「伝説」と呼ばれる農家さんの記事。

 

【伝説】クワガタとタケノコで大稼ぎ! 謎の農家「風岡直宏」はなぜフェラーリを買えたのか?

 

クワガタとタケノコでフェラーリを2台買った、静岡県の風岡直宏さん。

子どもたちにクワガタを売る姿は「地元のいいあんちゃん」風ですが……

 

1990年代のクワガタムシブームで一発当てて年間3,000万円の売上を記録、さらにタケノコでも当てた超すごい人。

 

自然に任せるのではなく、年間300日以上は収獲と手入れのために山に入る。タケノコを守るため、イノシシとも戦う。インターネットを使わず、「鮮度」と「安定供給」を武器に口コミで顧客を広げる……。

 

人並み外れた努力と商売運のなせる技なのでしょうが、時代の流れに負けない一次産業の姿を見た気がします。

ちなみにフェラーリは2台とも売ってしまったそうです。残念!

 

お次はこちら!

 

わたしのパパはヨガきこり

 

ライター・ナカノヒトミが実の父親を取材した記事です。身内が取材対象ってすごい。

 

林業の中でも、身体一つで木に登って伐採する高所での「特殊伐採」を生業にしているナカノのパパ。圧倒的な身のこなし…!

 

そしてこれ。

いや、「手だけで体を支えてる風に見えるトリック写真」とかじゃないです。ガチ写真です。超人。

これが前職のとき始めたヨガの賜物(たまもの)。
結果として「伐採のための平常心を養えた」とのこと。かっこよすぎる……!

 

特殊伐採も最初は自己流だったそう。

「遠回りでも、自分でやるのが俺の仕事のやり方だね」と語るお父さんの姿勢……見習いたいと思います。

 

一次産業の問題って何なんだろう?

さて、上の3つの記事では「尖った」従事者を紹介してみましたが、一次産業の実態は明るいことばかりではありません。

 

大型紙と食べ物がセットで送られるメディア『東北食べる通信』の高橋博之さんにお話を伺った記事がこちら。

 

「キツい」「稼げない」「結婚できない」…5K問題で農漁業の現場から人が消える日

 

「一次産業従事者が減り続けている」という問題。

その原因としては「高齢化」のイメージが強いですが、それ以上に若者の一次産業離れが深刻とのこと。

 

きつい、汚い、かっこわるい、稼げない、結婚できない……そんな「5K」のイメージがある一次産業を支えてくれているのは、今は外国人労働者。

それもやがていなくなり、ロボットが多くを支えることに……?

 

そんな未来図を覆すためには、一次産業の仕事の価値を広く発信していくこと。すなわち、消費者と生産者との距離を縮めていくことが必要だと語る高橋さん。

 

まさにジモコロのようなメディアの役割…!!気が引き締まる思いです。

 

それでは、リアルな一次産業の現場をもっと見ていきましょう。

 

これが農業のリアル!

【人情ドラマ】父親の病気をきっかけに家業を継いだ「新潟の若手コメ農家」のリアル

 

さて、新潟県といえば……

もちろんおコメ!ライターの長島さん、おコメに混じって嬉しそうですね(?)。

このコメづくりの現場にも押し寄せる一次産業離れの波ですが、新潟在住のコメ農家・佐藤裕樹さんは「後継者問題は機械(システム)で対処できると思う」と言います。

 

とはいえ機械を扱うための訓練は欠かせないし、これからは管理の効率をよくするための区画整理なども必要になってくるとのこと。

若手の農家さんも、戦っています。

 

「俺たち人間は退化しとる」飛騨のウシ飼いが語る”土と内臓”の話

 

岐阜県で飛騨牛の『育種』、つまり繁殖させる仕事を行っている熊崎光夫さんは『循環する農業』のお話をしてくれました。

 

牛のフンなどの有機肥料ではなく、化学肥料を使っている現代の農業。

しかし、長期的な視点で見ると、化学肥料を使ったほうが、有機肥料を使っている土よりも質が落ちているというデータがあるそうです。

 

「画一的なものではなく、その土地に合った農業を」

第一線にいる方の言葉は、説得力も段違いです。

 

成功例から未来を考える

続いては農業、漁業、林業の各ジャンルから、一次産業の「これから」を考えるのに役立つ3本を!

 

柚子で売上33億円のゴールドラッシュ! 高知県馬路村に地方創生のヒントがあった

 

まずは柚子で一攫千金をキメた、高知県馬路村のお話。この馬路村、人口はわずか1,000人です。

 

テニスボールかと思ったら柚子だったの図。

 

今でこそ県外や海外からも観光客が訪れるほどですが、馬路村の柚子産業の最初は赤字の連続でした。

しかしその熱がジワジワ広がり、行政と民間が一体となって「六次産業(生産・加工・販売)」の構造を作ることに成功。

 

いつの世も世界を動かすのは「熱意」なんですね…!素朴かつアツい記事です。

 

お次は漁業!

 

2048年に食用魚がゼロに!? 「フィッシャーマンジャパン」が挑む海の革命

 

魚の消費量減少もさることながら、それ以上に深刻なのが漁師の減少です。

現在、日本の漁師の数は16万人。しかも高齢化が進んでおり、今いる漁師の約4割が65歳以上なんだとか。

 

さらに、「持続可能な漁業」への理解度の低さなど……山積する課題の中、まずは漁師と消費者との距離を縮めたい!

 

そこで立ち上がった漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」の長谷川琢也さんを取材しました。

 

こちらは漁師が海から電話でモーニングコールをかけてくれる「フィッシャーマンコール」。

漁師を「フィッシャーマン」と呼び、カッコよくて・稼げて・革新的な「新3K」を目指す彼らの活動はとにかく斬新で面白いです。漁師そのものの再ブランディング!シビれますね。

 

そして3番目は林業です!

「未来の林業は稼げる」北海道・下川町の60年構想が芽吹いた話

 

町の9割を森林が占める、北海度は下川町。

 

「余すことなく木を使う」というポリシーのもと、切り出した木を加工・販売する「林産業」も盛んに行われるこの町。基幹産業である林業・林産業が雇用の受け皿になっており、過疎地域を脱しつつあるとか。

 

何よりすごいのが、昭和29年から準備されている「循環型林業」です。

60年で太い木に成長する針葉樹を60年間毎年植林していけば、伐採⇒植林⇒育成のサイクルを永遠に繰り返せる……!

理論上は分かるけれど、そんな気の遠くなる考えを実行してしまうのがすごい。先人たちの努力×今の住民たちの努力のハイブリッドな町です。

 

おまけ

最後に、ジモコロでは珍しい海外の記事を!

 

【海外】1ヶ月で約40万円も稼げる!? 知られざる「バナナ農園」の仕事

 

オーストラリア北部にあるバナナ農園のお話です。日本のスーパーなどで目にするバナナたちの最初の姿!

 

これを担いでトラクターのコンテナに積み込む超・重労働。

バナナに限ったことではありませんが、ふだん我々が目にする形になるまでの汗と涙を忘れてはいけませんね……。

 

というかさすが海外、色々とスケールがデカい。

 

おわりに

以上、10本の「一次産業」記事をお送りしました。楽しんでいただけたでしょうか?

 

今回まとめるにあたって過去の記事に目を通していた最中、いろんな方の骨太な生きざまを一気に浴びすぎて、面白いやら、情報量に打ちのめされるやら。

ジモコロで取り上げるような、一次産業で目立ってる人たちは本当に「濃い」ですよね。

 

でも「目立たない」生産者の人たちの努力がないと、そもそも日本人の生活は成り立っていない。
それもまた忘れてはいけません。

 

まだ見ぬアツさへの期待、そして生産者への感謝の気持ちを携え、今後もジモコロらしく一次産業を追いかけていきたいと思います。

 

過去のまとめ記事も、ぜひご覧ください〜!

 

【まとめ】知って備えよう!ジモコロの「災害」記事12選

【まとめ】「職人」のスゴい技術と未来を知るジモコロの記事10選

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』21話~30話 まとめ読み!

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』21話~30話 まとめ読み!

柳田さんと民話

21話~30話 まとめ読み

21話|マイノリティー

 

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22話|寿司屋のおやっさん

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23話| ここほれワンワン

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24話|らっきょうの耳栓

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25話|母の本音

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26話|ネズミの恩返し

 

27話|戦え!兄弟

 

28話|絵本の付加価値

 

29話|幸せを願って

 

30話|魚屋と子猫と老婆

 

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

 

 

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 – 30話「魚屋と子猫と老婆」

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 – 30話「魚屋と子猫と老婆」

 

<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

11話~20話までをまとめ読み

21話~30話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

f:id:eaidem:20160404141459j:plain

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

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東京発、コミコミ3万円で行ける『秘湯』を全力で推させてください

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東京発、コミコミ3万円で行ける『秘湯』を全力で推させてください

「秘湯」ってなんとなく、遠いしハードル高いしどこがいいのか分からない…そう思っていませんか? いやまあ、正直わりと遠いんですけど…でも、いいんですよ秘湯。

最高の温泉にひっそりと浸かるためだけに、行ってみませんか…!

 

フィ~~~!

 

唐突にすみません、とある温泉旅館から失礼します。温泉オタクのながちと申します。これまで訪れた温泉は約400。稚内から屋久島まで、さまざまな温泉に浸かってきました。

 

オタクを公言しているためか、「東京から1泊2日、おすすめの温泉は?」とめちゃくちゃ聞かれます。年齢より出身地より聞かれます。本記事ではその質問への、私の個人的な願いがこもった解答を書いていきたいと思います。

 

温泉オタク的にはぜひ「秘湯」に行ってもらいたい

「秘湯」の意味を大辞林で引くと、「人にあまり知られていない温泉」とあります。

山奥にある一軒宿は、確かに気軽に行けないかもしれません。でも、そこに宿が残っているということは、それだけすばらしい温泉が湧き続けていて、わざわざ訪れるファンが絶えないということ。

 

個人的にはそういうところもぜひ浸かって、くったり癒やされたり、秘湯の持つ浴感やにおいや雰囲気に驚いてくれたら嬉しいなあと思います。

 

とはいえハードルが高いので、今回は「コミコミ3万円」で3カ所を選出しました。ゆるゆる電車や路線バスに乗って行ってみてください。

 

青白い鹿股川にせり出た、秘湯露天――栃木・明賀屋旅

栃木屈指の温泉郷・那須塩原。あちこちに素晴らしい温泉が湧いていますが、秘湯感たっぷりなのが明賀屋旅館です。

大正ロマンあふれる太古館と、すべて絨毯敷きの上品な本館があり、立派な大きめ旅館といった印象。こちらの魅力はやっぱり、めちゃくちゃに開放的な露天風呂でしょう。

 

いまも一部が客室としても使われる太古館

 

川岸の露天風呂へは88の階段を上り下りせねばならず、それだけでも結構な運動量になります。山肌に沿って組み立てられた階段沿いには、古くは湯治場として親しまれた廃屋もあり、なんだか最初は探検気分でした。

 

露天風呂は鉄味と塩気があり、パリパリしていて軽やかだけど、しっかり体に染み込む重めな温泉。とにかくこのロケーションが最高。

青白い鹿股川を横目に、ふうと一息。吸い込まれそうな川下を眺めながら、なんだかものすごいところまで来てしまった…、そんな気持ちになります。秘湯の醍醐味ですね。

 

88の階段。食後や飲酒後なら、ちょっと時間経ってからのほうがいいかも

 

源泉はふたつあり、内湯にある温泉は、震災の際に新しく湧き出た「新湯」。やや墨色でぬるめ。露天とはまた異なるつるつる浴感でした。

 

客室の窓の向こうはもう、緑が迫ってきていました

 

食事は太古館で。大広間の静けさが心地よい

 

夕食は「旅館メシ」で、小さな美味しいものがちょこちょこ置かれた会席料理です。栃木の名産・ヤシオマスがとっても美味しい。やわらかくて優しくて、山の宿ならではの川魚料理でした。

 

1泊2日2食付きプランは12,960円~。浅草駅から東武特急リバティ会津で上三依塩原温泉口駅へ(往復8,380円)。三依塩原温泉口駅からゆ~バスに乗り、塩原塩竈で降ります(往復400円)。合計21,740円~

宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

明賀屋本館

所在地|〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原353

電話番号|0287-32-2831

公式HP

 

南アルプスに湧くぬるとろ秘湯――山梨・奈良田温泉 白根館

山梨県の西部、南アルプスの山懐に抱かれた奈良田温泉 白根館平日でも満杯になるほど、世の温泉オタクを熱狂させる温泉が湧いています

やや開かれた山道沿いに唐突に現れる白根館は、建物は近代的で入りやすく、ほっこりする落ち着いた雰囲気が漂っています。

 

「日本秘湯を守る会」の提灯がお出迎え

 

総ヒノキの湯船に、ドボドボ注がれる極上温泉

 

南アルプスの大自然を遠くに見つめながら、チキチキ鳴く野鳥の声を聴きながら、ずぶりと体を沈めれば…まず、浴感というか肌触りに、ものっすごい衝撃を受けると思います。ぬるぬるでとろとろ。もはや、ねばねばといってもいいでしょう。まさに「全身美容液」

旅路の長さや疲れをあっという間に忘れてしまいます。

 

湯船から温泉がどんどん溢れ出ていて、新鮮そのもの

 

奈良田温泉は「七不思議の湯」といわれ、「万病に効く」「若返る」「子宝に恵まれる」など、さまざまな言い伝えがいまも残っています。

昔の人がわざわざここまで足を運んだ理由は、この湯に入れば納得。硫黄のにおいがほんのりしていて、やや緑みがかった色湯でしたが、その特徴は時間帯や天気によってくるくると変わっていきます。

ずっと入って、変化を楽しんでいたい不思議な温泉でした。

 

素朴ながら居心地のよい客室。電波も入る

 

どれも美味しかったけど、ニジマスの燻製が最高だった

 

夕食は「山人料理」と題されていて、ジビエや川魚など、その土地ならではの味覚が揃っていました。揚げ蕎麦がきも美味しかったなあ。

 

1泊2日2食付きプランは12,000円~。新宿駅から特急あずさで甲府駅まで行き、特急ワイドビューふじかわで下部温泉駅へ(往復10,020円)。下部温泉駅からはやかわ乗合バスに乗り、奈良田温泉で降ります(往復1,600円)。合計23,620円~。宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

奈良田温泉 白根館

所在地|〒409-2701 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344

電話番号|0556-48-2711

公式HP

 

足元から湧く、情緒あふれる秘湯――群馬・法師温泉 長寿館

群馬・猿ヶ京・三国温泉郷の一番奥にある法師温泉 長寿館は、個人的には「関東で最も有名な秘湯」といっても過言ではないと思います(前述した定義から早速外れていますが、感覚的に)。湯場の写真をみて、「あーここか」と感じる方も少なくないのでは…?

※法師温泉 長寿館からはお写真をお借りしてご紹介しています。

 

川端康成など多くの文人墨客に愛された老舗旅館です

 

映画「テルマエ・ロマエ」などロケでも多数使われています

 

写真から全力で伝わる、趣、そして情緒。

国登録有形文化財に登録された本館・法師乃湯は、明治時代に建てられたもの。ピリリと張った空気、圧倒的なたたずまいにもう、ため息が出ちゃいます。

 

この法師温泉 長寿館が愛され続けているのは、雰囲気だけでなく、温泉も最高だからなんですよ。

 

「玉城乃湯」。ヒノキと温泉のにおいがもうすばらしすぎて

 

約43℃の源泉かけ流し。湯船は割とぬるめなので、長湯してしまいそうです。特に推したいポイントが、ここは湯船の底から温泉が湧いている「足元湧出」状態あること。生まれたての温泉が、ぷくりと湧く瞬間を、目で、鼻で、肌で感じられます。

 

無色透明でキュキュッと弾く、浴感つるつるな温泉。ほのかに硫黄のにおいと鉄味、植物のにおいもありました。

メインの湯場は混浴で、女性専用時間が設けられています。雰囲気だけでなくぜひ温泉の素晴らしさも体感してもらいたいです。

 

ひとつひとつが美しくて、もう「たまらん」の一言です

 

地産のものをふんだんに使ったお食事も◎

 

1泊2日2食付きプランは14,040円~。上野駅から上越新幹線で上毛高原駅まで行き(往復10,360円)、関越バスで猿ヶ京へ(往復1,760円)。猿ヶ京からみなかみ町営バスに乗り、法師で降ります(往復1,200円)。合計27,360円~。宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

法師温泉長寿館

所在地|〒379-1401 群馬県利根郡みなかみ町永井650

電話番号|0278-66-0005

公式HP

 

秘湯への旅路だって、楽しみのひとつじゃい

電車とバスを乗り継いでいく、東京から秘湯への旅路。個人的にはもう少しお金を出して、レンタカーを借りて行ったほうが楽な場合が多いのではと思うのですが、ローカル線の旅もなかなか悪くないですよ。

 

とにかく奥まったところまで行くと、すこぶる温泉がいいんです。温泉がいいと、なんだか「うー、疲れとか悪い心が溶けていくー」って本当に思えるんですよね。

騒がしい温泉街も、近代的な施設もいらない気がしちゃう。静かな秘湯に身を委ねたいお休みの日にぜひ、行ってみてはいかが?

 

明賀屋本館

所在地|〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原353

電話番号|0287-32-2831

公式HP

 

奈良田温泉 白根館

所在地|〒409-2701 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344

電話番号|0556-48-2711

公式HP

 

法師温泉長寿館

所在地|〒379-1401 群馬県利根郡みなかみ町永井650

電話番号|0278-66-0005

公式HP

猫の殺処分と町の過疎化を解決へ!「港の猫とおばあちゃんプロジェクト」が生まれるまで

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猫の殺処分と町の過疎化を解決へ!「港の猫とおばあちゃんプロジェクト」が生まれるまで

こんにちは、ライターの坂口ナオです。

私は今、高知県にある小さな港町「矢井賀(やいが)」に来ています。

 

高知県の中西部に位置し、太平洋に面するこの町は、かつては漁業で栄えた町でした。

 

しかし現在の町には、お店も信号もなく、唯一あった小学校も閉校。住民の数は全盛期の1000人から200人ほどまでに減少し、そのうち7割が65歳以上という、高齢化と過疎化の進む町となっています。

 

そんな矢井賀に、なぜ私は、東京から飛行機で2時間、車で2時間もかけてやってきたのかというと……

この町で行われている、「過疎化問題」と「猫の殺処分問題」を目指した、ユニークなプロジェクトの噂を聞きつけたから。

 

そのプロジェクトの拠点となっているのは、こちらの建物。なにやらにぎやかな声が聞こえてきます。さっそく中へ入ってみましょう。

 

坂口「こんにちは〜!」

おばあちゃんこんにちは〜!」

坂口「みなさん、何をされているんですか??」

おばあちゃん「これはね、猫のおやつを作っているんですよ」

 

(写真提供:Yaika公式サイト

 

そう、この場所で作っているのは、地元の魚を使った猫の身体に優しいおやつ「おさかなグリル」

 

「港の猫とおばあちゃんプロジェクト」という、なんともほっこりしたネーミングのこの取り組みは、

(写真提供:Yaika公式サイト

 

市場で売りものにならない魚を漁師さんから買い取る

身体に優しくて美味しい猫のおやつを作る

過疎の町のおばあちゃんに作業をお願いして雇用を生み出す

さらに、売上金の一部を猫の保護活動に寄付する

 

……という、「猫」「人」「町」が喜ぶ、

なんです。

 

筆者の中学時代

 

実は私、これまで合計5匹の猫を飼い、殺処分問題にも心を痛め、高校生のときには猫の保護活動を行う団体に自ら入会したほどの無類の猫好きでした。

 

しかし、大人になるにつれて自分の生活を優先するようになり、いつしか殺処分問題に目を向ける機会も減っていきました。でも、そんな自分をどこか後ろめたく感じていたのです。

 

だから、このプロジェクトを知ったときには

「これなら私のような思いを抱えている人でも、猫の殺処分問題へ積極的に力を貸せる。このプロジェクトを、もっとたくさんの人に知ってほしい!」

と大興奮。鼻息も荒く取材依頼を取り付けた、というわけなんです。

 

夢のようなプロジェクト、どんな仕組みになっているの?

というわけで!

本日お話を伺うのは、プロジェクトの発起人である、井川 愛(いかわ あい)さん。

2018年4月に「Yaika Factory」として合同会社化し、事業としても本格的なスタートを切ったこのプロジェクトがどのようにして生まれたのか、その背景と想いを伺います。

 

坂口今日はよろしくお願いします!」

井川さん「よろしくお願いします!」

坂口「さっそくですが、材料になる魚はどこから手に入れているんですか?」

井川さん「漁師さんから、売り物にならない魚を直接買い取っています

 

(写真提供:日本微住計画

 

坂口「売り物にならない魚?」

井川さん「そう言うと聞こえが悪いんですけど、市場では、傷モノだったり、小さいサイズだったり、磯の匂いが強い魚には値がつきにくいんです。あと、人間は食べないけど猫は好んで食べる種類の魚もありますね」

坂口「そうなんだ!!」

井川さん「磯の匂いが強いって言っても、十分に美味しいんですよ。この辺の人は美味しい魚を食べ慣れてるから、基準が厳しいんです」

坂口「でも、プロジェクト的には宝の山じゃないですか!」

井川さん「環境としてはすごくいいですね。ただ、お願いできる漁師さんがまだ2人しかいなくて、毎回そういう魚が捕れるとは限らないので、なかなか苦労してます」

 

市場で売っている魚は「基準を満たした」選ばれし魚

 

坂口「お願いしている漁師さんは、矢井賀の方なんですか?」

井川さん「矢井賀と、その周辺の漁師さんにお願いしています。

プロジェクトの目的のひとつに、『矢井賀の地域おこし』も含まれているので、材料に地域のお魚を使って町を活気づけ、地元の方に仕事をお願いすることで町に雇用を生み出すようにしているんです」

坂口「なるほど、それでブランド名も『Yaika(やいか)』なんですね! あれ? でも矢井賀の読み仮名って『やいが』じゃなかったですか?」

井川さん「正式には『やいが』なんですけど、この地域の人たちはみな『やいか』と発音するんです。その響きが可愛くて、みんなにも知ってもらいたいと思って、あえて『Yaika(やいか)』と名付けました」

 

(写真提供:Yaika公式サイト

 

坂口「作業にあたっているおばあちゃんたちは、どうやって見つけたんですか?」

井川さん「役場の人から紹介してもらいました。作業をお願いしているおばあちゃんは全部で6人で、みなさんもともと『蜑(あま)の里やいか』という地域起こしグループのメンバーだったんです」

坂口「おお、すごい人たちだったんですね!」

井川さん「お魚が手に入ると、おばあちゃんたちに電話で『今日作業お願いできる!?』と招集をかけます。毎回、誰かしら都合のいい人が来てくれるような感じですね」

坂口「ゆるいですね(笑)」

井川さん「いずれ生産量が増えたら、きちんとシフトを組んでやらなきゃなぁと思ってます」

 

坂口「『おさかなグリル』はどうやって作ってるんでしょう」

井川さん魚を捌いて、専用の機械で焼いて、10gずつに分けて真空パックに詰めるだけですね。ただ、このところ雨風が強くて魚が手に入らず、今日お見せできる作業は七面鳥を使った試作品作りになってしまうんですが……」

坂口「七面鳥と魚で作り方は違うんですか?」

井川さん「基本的には同じです。捌く作業がないくらいですね」

 

専用の機械で数分焼く

 

味付けはしていないが、人間が食べても普通に美味しい!

 

10gずつに分けて、真空パックに詰める

 

あとは冷凍したら、完成!

 

井川さん「このあと、冷凍して完成です

坂口冷凍の状態で販売しているんですか?」

井川さん「そうなんです。はじめは常温販売がしたかったんですけど、そのためには、数千万円もするレトルト機を購入する必要があったんです」

坂口それで常温販売をあきらめて、冷凍で販売することにしたんですね」

井川さん「はい。でも、それが結果的にすごくいい選択になって

坂口どうしてですか?」

井川さん「プロジェクトの大きな目的である、『猫の保護活動』に貢献することができたからです」

坂口常温ではなく冷凍販売にしたことが、猫の保護活動に繋がる……?」

 

主力商品の「お魚グリル」

 

井川さん「冷凍だと普通、送料が商品よりも高くなってしまうんですが、これを解決するために、『生協方式』を採用することにしたんです」

坂口生協方式?」

井川さん『注文が一定数たまったら、届ける日と場所を指定して、お客さんに商品を取りに来てもらう』という販売方式です。これならひとまとめに送ればいいので、送料が安く済む。そこで思いついたのが、保護猫カフェをハブにすることでした」

坂口なるほど! そうすれば、商品を買いに来てくれるお客さんは、自然と保護猫カフェに足を運んでくれるというわけですね」

井川さん「そうなんです。販売先を保護猫カフェに限定することで、お客さんがカフェに行く理由が増えるし、商品のリピーターになって何度も足を運んでくれれば、そのうちにお気に入りの猫ちゃんを家族にしてくれるかもしれない

坂口それは最高……」

井川さん「今は、板橋区にある『CAT’S INN TOKYO』さんと、千葉県浦安市にある『猫の館ME』さんで販売させてもらっていて、余分に作った分をインターネットで販売するようにしています。仕組みが整ったら、ほかの猫カフェさんでも販売できるようにしたいと思っています」

 

アイデアの元は、好きなものの詰め合わせ

坂口いや、すごいです。関係する誰もが幸せになれる、理想的なプロジェクトですよね」

井川さん「そう言ってもらえるとほんとに嬉しいです! ありがとうございます」

坂口井川さんは、もともとこういう事業の立ち上げを仕事にされていたんですか?」

井川さん「いえ、もともとは東京で司会業や研修講師の仕事をしていました。ただ、このプロジェクトのアイデアができた2014年頃は、その仕事も身体を壊して辞めて、専業主婦をしていましたね」

坂口じゃあこのプロジェクトは、仕事は関係なく、自分のやりたいことから始まったんですか?」

井川さん「そうなんです。仕事を辞めたとき、ちょうど40歳目前で、今後の人生どうしようかな……って考えて。そこで思ったのが『好きなことをして社会と関わり続けたい』ということでした。『じゃあ好きなことって何?』と考えてぼんやり浮かんだのが『海の近くに住みたい』『猫に関することがしたい』の2つだったんです」

 

インタビュー中でも構わず井川さんに甘えにくる愛猫のオルカ

 

坂口昔から猫は好きだったんですか?」

井川さん「実は、もとは犬派でした。でも、ひょんなきっかけでこの子(オルカ)を飼い始めてから、夢中になっちゃって(笑) 。東京に住んでいたときは、フリーマーケットに出店しては、売上金を猫の保護活動に寄付していたこともありました」

坂口おお! すごい行動力ですね!」

井川さん「あと、主婦になって散歩が日課になったんですけど、そこで、毎日のように散歩をしている元気なお年寄りがいることに気づいたんです。そのおじいちゃんおばあちゃんのエネルギーを、私がやりたいことにうまく活かしてもらえないか、と思って……」

坂口『猫に関すること』と『海の近くに住むこと』に?」

井川さん「そうです。私、この『みさおとふくまる』って写真集が好きで。それもあって、おばあちゃんと猫、っていう構図で何かできないかな、と思ったんです」

 

「おばあちゃんと猫」のインスピレーションを得た写真集『みさおとふくまる』

 

坂口たしかにこの組み合わせ、最強にほっこりしますよね!」

井川さん「で、ある日、それらのぼんやり考えていたことを、これまでにもいろんなことを相談させてもらっていた、ソーシャルビジネスに詳しい方に相談してみたんです」

坂口なんと心強い相談相手……!」

井川さん「そこで、『猫を助けたい』『海の近くに住みたい』『お年寄りの元気を活用したい』と、そのとき考えていたことを全部ぶつけたんです。そこから話していって生まれたのが『おばあちゃんを雇用して猫のおやつを作り、猫の保護活動に貢献する』というアイデアでした」

坂口意外と早い段階で構想はできていたんですね!」

 

身体に優しくて、美味しいごはんを食べさせてあげたい

坂口それから間もなくして、プロジェクトが大きく実現に向けて動きだす出来事があったとか……?」

井川さん「愛猫のオルカが、糖尿病を発症したんです。それから、これまできちんとフードを選んでこなかった自責の念もあり、安心できるフードだけを選ぶようになりました。でも、その行動が、オルカを瀕死の危機にさらす結果になってしまったんです」

坂口えっ、フードを厳選することは、逆にオルカの命を守ることになるのでは?」

井川さん「糖尿病の治療ではインスリン注射を行いますが、そのあとに適切な食事をとらないと低血糖を起こしてしまうんです。でもオルカは、私が選んだ『健康にいい』フードをなかなか食べてくれませんでした」

坂口なんででしょう? 美味しくないから?」

井川さん「病気になる前は、カロリーが高いフードばかり食べていたので、味覚もそちらに慣れてしまっていたんだと思います」

 

坂口なるほど、ジャンクフードばかり食べて育った子供に、突然ヘルシーな食事を与えるようなものか……」

井川さん「そしてついに、オルカが低血糖を起こしてしまったんです」

坂口大丈夫だったんですか!?」

井川さん「すぐに気づくことができたので、後遺症も残らず無事に回復しました」

坂口良かった……」

井川さん「でも結局、オルカのためにと思ってしたことが、オルカの命を危険にする原因になってしまったわけです。そこから『健康にいいだけじゃだめだ。オルカが喜んでくれるごはんを食べさせてあげたい』と思うようになったんです」

 

坂口その想いが、『猫のおやつ』作りプロジェクトの原動力になったと。今では、オルカの食事は全部Yaikaで作ったものにしているんですか?」

井川さん「いえ、基本は普通のフードです。低血糖の一件で、自分が神経質になりすぎていたことに気づいたので……。Yaikaはあくまでおやつとして与えています。『そのほうが猫にとっても、たまの喜びになっていいんじゃないか』と、病院の先生からも助言をいただいて」

坂口そうなんですね。Yaikaのおやつは、やっぱり食いつきが違いますか?」

井川さん「猫カフェだと喧嘩が始まるくらい人気みたいです。オルカは気分屋なので、まちまちですね。でも、気に入ると『もっとくれ』って、お手とかハイタッチをしてくれるんですよ」

 

お手をしてごはんを欲しがるオルカ

 

この海を見てすべてが繋がった「私、ここに住みます」

坂口プロジェクト実現に向かって、最初に始めた具体的な行動って何ですか?」

井川さん「まず、都道府県が参加する移住フェアに行って、海の近くの移住先を探しました

坂口そのときは、高知県のほかにも気になる県があったんですか?」

井川さん「ん〜。いくつか候補はありましたけど、圧倒的に高知県に心惹かれてましたね。ほかの県のブースはかしこまった対応なのに、高知県だけは『いくら説明しても、実際に来てみないと分からんき〜』と呑気な対応だったんです(笑)」

坂口あ〜、なんか想像つきます(笑)。 高知の人っておおらかですよね」

井川さん「そうなんですよ! 私、適当な性格なので、その県民性が自分に合ってる! と思って(笑)。 それから、都内で開催されている高知県主催の移住相談イベントに足を運ぶようになりました」

 

坂口矢井賀とは、どんな風に出会ったんですか?」

井川さん「東京で仲良くなった移住相談員さんが、矢井賀のある中土佐町に住んでいて。彼女に会いに行ったら、近隣の町を案内して回ってくれたんです。そのなかのひとつに矢井賀がありました」

坂口初めてここに来たとき、どんな印象を受けましたか?」

井川さん「それが……一目惚れしちゃったんですよ

坂口へ?」

井川さん「この矢井賀の海を見た瞬間、なぜか『ここだーーーー!!!』って思ったんです。ここならオルカに美味しいお魚を食べさせてあげられるし、海の近くに住めるし、元気な高齢者はたくさんいるし、全部実現できる! って。その場で『ここに住みたいので家を探してください』と言いました(笑)

坂口早っ(笑)」

 

井川さんが一目惚れした海

 

井川さん「そこから本格的にプロジェクトが始動しました。移住までの間は、ビジネススクールに通って、ぼんやりしていたアイデアをビジネスとしてきちんと回せるよう、プランを整えていきました」

坂口移住したのは、初めて矢井賀を訪れてからどれくらい経ったころだったんですか?」

井川さん「2016年10月なので、9ヶ月後くらいですね。その間、矢井賀には何度も足を運んで、可能性の模索をしていました」

坂口可能性の模索?」

井川さん「まずは役場に、思い描いていることを相談しに行きました。そしたら『面白い! ぜひうちの町で実現してください!』と言ってくれて。お金がないと言ったら、地域おこし協力隊の制度を紹介してくれたり、ほかにもプロジェクトに必要な人や制度などをいろいろと紹介いただいたりしました」

坂口へえ! すごく協力的ですね!」

井川さん「高知の人は世話好きだっていうけど、その真髄を見ましたね」

坂口高知県のプロモーションコピー『高知県は、ひとつの大家族やき。高知家』でも、高知のあったかさを押してますもんね」

井川さん「オルカを連れて来たときには、中土佐町のお魚をペロリと食べてくれて、ますます『この町でやっていきたい』という思いが強くなりました」

 

矢井賀で猫を増やそうとしてるのはお前か!!

高知県主催のビジネスコンテストで優勝した井川さんのスピーチ(写真提供:井川さん)

 

坂口移住後すぐの、高知県ビジネスコンテストでは優勝されたとか?」

井川さん「そうなんですよ、ありがたいことに! で、その翌日が、矢井賀での地域おこし協力隊の着任だったので『きっと町の人たちも褒めてくれるだろうな、るんるん♪』みたいな気持ちで挨拶回りに行ったんですね。そしたら……」

坂口そしたら?」

井川さん1軒目で挨拶するやいなや『出て行け!!!』と怒鳴られたんです」

坂口えー! なんで!?」

井川さん『お前か! 猫を増やすとか言ってる奴は!』と。話が間違って伝わってしまっていたんですね。『増やすって言ってないけどな……』とぶつぶつ言ってたら、追い討ちのように『俺はなぁ、飼ってた金魚を猫に食われたんだーーー!』って」

 

なぜ野良猫が家の中にいる金魚を? と不思議に思い、「鍵は閉めてたんですか?」と聞いたところ「田舎は鍵は閉めん!!」と言葉を返されたそう

 

坂口ちょ、理由が可愛すぎるんですけど」

井川さん「『増やすんじゃなくて、おやつを作って東京で売るんです。売り上げの一部は猫の保護活動に寄付して、そのお金で去勢手術とかをするので、増えるというよりむしろ減ると思うんですよね』と言ったら『……じゃあいいよ』と納得してもらえました」

坂口素直!」

井川さん「でも、そのあとも『あんたが矢井賀を猫島にしようとしている女か』と言われることが続きました。漁師町である矢井賀では、猫は『悪者』。猫におやつをあげるなんてとんでもない! という人が続出したんです」

 

矢井賀の野良猫、クロスケちゃん

 

坂口ええ〜! 違うのに〜!!」

井川さん「そうなんです。説明したらみんな分かってくれるんですが、『こりゃマズいぞ』と思いました。どうやら仕組みが伝わりづらいらしい、と気づいたんです」

坂口田舎のお年寄りには、たしかに理解するのは難しいのかも……」

井川さん「そこで役場にお願いして、町の回覧板にメッセージを書かせてもらいました。A4用紙2枚分にびっしり『決して猫を増やしたいわけじゃないんです』と、思いの丈をこめて、このプロジェクトの概要と、そこにかける思いを綴りました。

坂口それから町の人たちの反応は変わりましたか?」

井川さん「おおむね好意的なものに変わりました。その後はみんな興味津々で『猫のおやつなんて売れるのか』『なんで犬じゃないんだ』とか聞いてきてくれるようになりましたね。なかには『自分にできることがあったら手伝うよ』という人もいました

坂口おおお、井川さんの想いが伝わったんですね」

 

目指すのは「猫とおばあちゃんが幸せに生きていける社会」

坂口そして2018年4月、ついに事業化&『お魚グリル』の販売開始、おめでとうございます」

井川さん「ありがとうございます!」

坂口プロジェクト開始から今までを振り返って、一番大変だったことって何でしたか?」

井川さん「う〜ん、それが分からないんですよね。強いて言えば、作業場のプレハブを解体しているときが一番大変だったかな……。暑いし、虫はいっぱい出るし」

 

冒頭でも紹介した作業場のプレハブ。ボロボロだったものを解体し、DIYで作り上げた

 

坂口もうやめようと思ったときはないんですか?」

井川さん「ないですね。ただ、ずっと前に進んでいないような感覚があります。それは今も続いていますね」

坂口前に進んでいないような感覚?」

井川さん「何しろ全部初めてのことだから、確信がないんです。『これだ!』『いける!』と思えたことは、まだないですね。でも矢井賀のおばあちゃんや漁師さん、猫カフェのオーナーさんや中土佐町の職員さん……とにかくたくさんの方が協力してくれて、『こんなにいい猫のおやつ、ほかにないよ!』と応援してくれるから、なんとか続けられています

 

坂口今後、事業がもっとうまく回り出したら、拡大する予定はあるんですか?」

井川さん「そうですね。今は仕組みを整えるのが先ですが、できればこれから協力してくれる漁師さんや保護猫カフェを増やして、おばあちゃんたちの雇用もきちんと回せるようにしていきたいと思っています。ただ……」

坂口ただ?」

井川さん私がやりたいことの本質は、『猫を助けることがしたい』『いくつになっても好きなことで社会と関わり続けたい』なので、そのための手段は変わってもいいと思っています」

坂口じゃあ、数年後には、もしかしたら違うことをしている可能性もある?」

井川さん「その可能性もありますね(笑)。あくまでも、目指すのは『猫とおばあちゃんが幸せに生きていける社会』。そのために今できることを全力で頑張りたいと思っています」

 

取材を終えて

「このプロジェクトをもっと多くの人に知ってもらいたい!」

そう思ってお話を伺ったあと、私はますますその想いを強めていました。
井川さんが思い描く未来、猫とおばあちゃんが幸せに生きていける未来に加担したい。そして嬉しかったのは、それを手伝う手段がちゃんとあるということ。

 

猫を飼っている人なら、自分の猫へのご褒美に。飼っていない人でも、誰かの愛猫への贈り物に。身体に優しくて美味しいYaikaの「おさかなグリル」は、きっと猫ちゃんにもその飼い主さんにも喜んでもらえるはずです。

 

都内の猫好きさんなら、購入の際、販売先の保護猫カフェ「CAT’S INN TOKYO」「猫の館ME」に足を運べば猫ちゃんたちに癒されるというおまけもあり。

 

ぜひこのソーシャルグッドな渦に巻き込まれに、Yaikaの「おさかなグリル」を手に入れてみてはいかがでしょうか?

 

☆Yaika 公式サイト https://yaikacat.com/

 

写真/二條七海(Twitter


【すべり台は42万円】懐かしい遊具から最新作まで、製作会社に聞いてきた

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【すべり台は42万円】懐かしい遊具から最新作まで、製作会社に聞いてきた

初めまして! ライターのオケモトです!

何歳になっても公園っていいですよね。

 

何がいいって遊具がいい! 最近だと形もユニークなものが多いし、凝ったギミックのものや、巨大なものまで……僕が子供の頃よりめちゃめちゃ進化してるんです。

 

※撮影|大和ゆとりの森公園(神奈川県大和市福田4112)

 

そんな遊具も公園に突然生えてきたわけではありません。作って設置している人がいるはず!

・一体誰が作ってるの?

・お値段はいくらなの?

・昔はよく回転する球形のジャングルジム(?)みたいな遊具で遊んだんだけど、今見かけなくなってるのはなんで?

 

公園の遊具のこと、もっと知りた~い!! 

 

遊具を作っている会社に行く

というわけで、公園の遊具を作っているという「株式会社コトブキ」にやってきました。

 

株式会社コトブキ

創業100年。もともとは大学の講堂やスタジアムの椅子を手がけていたが、1980年からは遊具にも着手。現在は遊具のほかにパブリックスペースに置かれるベンチや案内板なども製作している。

公式HP

 

なお今回は、年輩の人に「昔の遊具」の意見を聞きたかったため、ジモコロ編集部のギャラクシー(40代)に同行してもらいました。

 

「遊具を作ってるのって、どういう人なんですかね。きっと遊ぶことが大好きな、ハチャメチャな人が出てきますよ!」

「そんなことないと思うけどな~」

「いいや、自宅をジャングルジムで作ってるような、ブッ飛んだ人たちに決まって……」

そんなわけないでしょ

 

株式会社コトブキの井上栞さん(左)、一木誠さん(右)

 

「し、失礼しました。早速なんですが株式会社コトブキさんは、公園の遊具を作っている会社なんですよね? どれくらい歴史があるんでしょうか」

「創業100年になります。といっても、もともとは椅子の製作がメインの会社だったんですよ。市民会館や学校や野球場など、公共家具と呼ばれる椅子を作っていました」

「今でもパブリックスペースに置かれるベンチですとか、案内板なども扱っていますよ」

「ということは、遊具を作り始めたのは最近なんですか?

昭和54年(1979)頃からですかね。当時は鉄棒やブランコ、滑り台、砂場といったスタンダードなものが多かったんですが、『もっとおもしろい、新しい遊具を子どもたちに提供したい』と思い、作り始めたんです」

「もっとおもしろいって……遊具はそもそも、おもしろいものでは?」

「鉄棒とかがまさにそうなんですが、遊具は、体育用具から派生・進化してきたものなんです。なので『鍛える』『役に立つ』という目的があるんですが、弊社では『楽しい』『おもしろい』もの……つまり、“遊具”として発展させたかったわけです」

「最初はブッ飛んだ人たちなんだろうと予想してたけど、めちゃめちゃ真面目に取り組んでた……!」

 

あの遊具のお値段

「前から気になっていたんですけど遊具の値段、たとえば一般的なよくあるすべり台とかは、いくらなんですか?」

「確かに知りたい。値段の想像がつかないもん」

 

「このすべり台ですと、42万円になります」

42万円!! それなりにお値段がしますね……」

「安全性や耐久性が必要ですからね」

「これ『どうしても自宅の庭に置きたいんです』って言ったら、置くことは可能?」

「可能です。ただ、あまり買う人はいないですけどね。だって公園に行けばいいから(笑)」

「確かに家にある意味がない……他には、例えば砂場とかはいくらなんでしょうか」

 

普通の四角い砂場よりも最近のはこういう空中に浮いてるものがおススメです」

「これが砂場? 未来感あるな~。これだと猫がうんこしないですね!」

「それもありますが、車いすの子どもも一緒に遊べるというコンセプトもあります。ちなみに価格は27万円になります」

「へぇ~。遊具の値段っておもしろい! ではブランコは?」

 

「これは4連のタイプなんですが、これで40万円くらいです」

「おぉ、ブランコ安い!!」

「感覚がマヒしてない?」

 

「2連だと20万くらいです」

20万!? ありかも…ギャラクシーさん! 編集部に一つ買いましょうよ!」

「仕事するスペースが無くなるでしょ」

 

子供が喜ぶ遊具には理由があった?

 

「ちなみに、この柵は安全領域を表しています。例えばボールを追いかけてきた子供が、ブランコの可動域に入ってくると危ないですから、それを防止してるんですね」

「子供の頃はこの柵の上を、バランスを取りながらどこまで歩けるか競ってました。あの二つ目の継ぎ目までいったぜ! とか言って」

「まあ間違った使い方なので推奨はできませんけどね」

「よく見ると、ブランコの下に茶色っぽい絨毯(?)みたいなものが敷かれているような……?」

「そうなんです。最近は床にクッション性の物が敷かれる事が普通になりましたね

「昔はこんなのなかったから、地面がえぐれてましたよね。めっちゃ水が溜まってた記憶がある。それをバシャーン!ってやりながら漕ぐのがまた楽しかったものですが」

「ブランコに正しい乗り方ってあるんでしょうか。例えば立ち漕ぎって、作っている会社的にはやめてほしいんですかね」

「いえ、立ち漕ぎは間違った乗り方ではないですね。最初から想定された、オフィシャルな乗り方です」

 

 

「すごく根本的なことを聞きますが、ブランコって、何がおもしろいんですか? 靴飛ばしくらいしかやったことない」

「漕ぐこと自体が楽しいのでは?」

「そう、それがすごく重要です! ブランコを漕ぐことによって三半規管が揺れるでしょう? 前庭感覚刺激というんですけど、揺れる動きの刺激に子供は喜ぶんですよ。この感覚は子供たちの情緒の安定とも関係しています」

前庭感覚刺激!? そんなことも考えられているんですか!?」

「もちろんです。強い前庭感覚刺激は、脳を目覚めさせる快感がある……これはジェットコースターなんかがそうですね。逆に、弱い刺激は脳を落ち着かせる……ゆりかごとかがそうですよね」

「子供がどういうものを楽しいと感じるのか、学術的な理論が利用される時代なんだ……」

 

姿を消した遊具たち

「公園の遊具が、信じられないくらい進化しているというのがわかりました。ただ、逆に失われた遊具というのもあるのではないでしょうか。昔回転するジャングルジムみたいなのでよく遊んだんですが」

「はい、グローブジャングルのことですね」

 

「これこれ! まさにこれが近所の公園にありました! 懐かしい~。これをめっちゃくちゃに回すの楽しかった~」

グローブジャングルは、現在 確かに絶滅危惧種ですね」

「これ支柱が一本しかないですよね? その一本が折れると重たい金属がガクッと落ちてくることになって、いざという時 危険だということで……」

「回転するのがダメなわけじゃないんだ」

「回転がダメなわけじゃないですね。というか、グローブジャングルもダメってわけじゃなくて、安全規準上は設置してもいいことになっているんです」

「え、じゃあなぜ絶滅の危機に瀕してるんですか?」

「どの遊具も定期的にメンテナンスや安全規準を満たしているかチェックする義務があるんですが……グローブジャングルの場合は、支柱が1本しかないので、絶対に折れてはいけない。だから地面を掘り返して調べないといけないんですよ」

 

「公園を管理している方からすると、そんなことはそう頻繁にはできない」

「確かに、点検する人件費も時間もかかる……それなら、メンテナンスが楽な別の遊具を設置しようってなるのか」

今の遊具は点検の手間があまりかからないとか、そういう面も考慮されて作られたりしてます」

「じゃあグローブジャングルは、今は作っていない?」

「少なくとも弊社では作ってないです。作っている会社がないわけではないんですが、買う人は少なくなってますね」

「地元の公園はグローブジャングルが撤去されてしまったんです。子供心に悲しくて……しかも、代わりに何かが設置されたわけではなくて、ただの空き地になってしまったんですよね」

「撤去するのも、新しい遊具を置くのもお金がかかりますから」

「我々も子供の頃に遊具で遊んだ楽しい思い出があるから、こういう会社で働いてるわけです。子どもたちが遊べる遊具が無くなってしまうのは、とても残念です」

「他には絶滅した遊具ってありますか?」

「う~ん、そうですね、箱ブランコとか…」

 

「あーーーっ!! これもムチャするやつだーー!! 好きだったなぁ」

「これは当時、実際に事故がいくつかあって。重量150kgの鉄の物体がビュンッと向かってくるのは、そもそも危険ではないか?ということになりました」

グローブジャングルは安全規準上はOKなんですが、箱ブランコはNGになりました」

ちゃんとした遊び方を守っていれば問題はないんでしょうが、子どもに守らせるのは難しいですよね。実際、この遊具に関しては『どれくらいムチャできるか』という感じで遊んでました」

 

こんなに進化した! 遊具の今昔

「他にも古い遊具を見てみたいんですけど、写真って残ってますか?」

 

「これは僕が好きな遊具。揺れて回る雲梯(うんてい)みたいなものですね。『トリプルリング』と言います」

 


「こちらは1980年代の物になりますが、当時最新の遊具の展示会みたいなものです。船橋のビルの屋上で行われました(今はありません)」

 


「これはウチで作ったスプリング遊具の初代ですね。木でできてます」

「この時代にヘラジカをもってくる感性すごい。……おっ、こっちのカタログはもう少し最近のものですね」

 

 

「これは、材質は強化プラスチックかな? 進化してる!」

「いま見に行くと、さらに姿が変わっていますよ」

「え? どういうこと?」

 

「これが現行のカタログなんですが、こうなってます」

「人間の子どもがイモムシに騎乗するって、よく考えたらカオスな状況ですね」

「いや、形ではなく可動部分に注目して下さい。さっきのはスプリング式でしたが、今はロッキング機構、スイング式にどんどん変わっていってます」

 

左が昔のもので「スプリング式」、右は現在のもので「スイング式」

 

「本当だ。ぐるぐるのスプリングじゃなくて棒になってますね。なぜなんですか?」

「いくつか理由があるんですが、まずスプリング式だと劣化が目視で確認しづらいんです。メンテナンスが大変なので、対応性の高いものに変わりました

「メンテナンスしやすいかどうかって、遊具業界ではすごく重要なんですね」

「遊び方の面で言うと、スプリングだと遊ぶためには初動力が必要なんです。小さい子は力が足りなくて動かせないこともある。その点スイング式は、少ない力で楽しむことができます」

「ちなみにこれ一つ買うとおいくらなんですか?」

 

「こちらのシリーズは1つ11万5000円です」

「頑張れば手が届く値段ですね。僕は黄色の……エビフライみたいなやつがほしいです」

「よくご存知ですね。黄色の『ハニー』は、一般ユーザーにはエビフライと呼ばれることも多いです。イモムシなんですけどね」

「スプリング式からスイング式になったように、他に進化した遊具はありますか?」

「進化したと言えば、やはり滑り台系ではないでしょうか。例えば最近出た『モーグルヒル』という遊具は人気がありますよ」

 

「すべり台の坂の部分がモコモコして……あ、だから“モーグルヒル”なのか。同時に何人も滑ることができるし、確かに楽しそうですね」

「………………ん? え、何これ!! うわっ、心霊写真だ!」

 

 

「違います。斜面が半透明の強化プラスチックになっていて、下で顔を押し付けてる友だちが見えたり、上で遊んでいる子の影が見えたりする仕様なんです」

「登って、滑れて、覗ける遊具なんですね。これはおいくらなんですか?

「一番大きいタイプで580万円になります」

580万!!さすがに買えない! それにしてもすごいですね。僕が子供のころはこんなのなくて、コンクリートで作られたただの坂みたいなのがありました」

「昔はよくありましたね。コンクリートの坂とか、ありじごくとかタコ滑り台もそうですし。でも、ああいうのは今、やれなくなってきているんです」

 

「え? なんでですか? ありじごくとか、タコ滑り台とか、めちゃめちゃ好きだったんですけど」

「コンクリートって硬いんで、転んで頭ぶつけると危ないというのが、まずあります。そして技術的に作る職人がいなくなってる」

「作れる職人が減ってきているんですね……なんか寂しい」

「あと、実はコストもすごくかかるんです。モーグルヒルのほうが全然安いですよ」

「え?! そうなんですか? 逆だと思ってた! コンクリートの坂って高級品だったんだ!」

「コンクリートって、ダムとかと同じで造成工事になりますからね。値段も手間も段違いです。強化プラスチックのモーグルヒルなら、材料費も製作も安く済む。しかも、強度はあるのに弾性もあるから安全というわけです」

「現代に合った遊具なんですね」

昔あった遊具のいいところをいかに再現するかというところが、遊具メーカーに託されていることと言えます。新しいものを、より楽しく安全に、ですね」

 

未来の遊具はどうなる?

「僕らが子どもの頃には想像できなかったほど、新しい遊具がたくさん出てきています。さらに未来になると、一体どうなってしまうのでしょう」

ICカードを使った遊具ができるかもしれないですね」

「カードに自分の記録がとれる、みたいなやつですね。すでにゲームセンターの格闘ゲームや競馬のゲームなんかでは実装されてますよね。それで世界の子供たちと競争するんです」

「競争……遊具で?」

「まあ、簡単なアスレチックみたいな感じですかね。どの遊具を何秒で回れたとか、そういうのがネットに繋がって、世界のランキングになると」

「おもしろそうですね! 僕も参戦して小学生を蹴散らそう!」

「最低の大人ですね」

 

「遊具の歴史に詳しいお二人にお聞きしたいんですが、遊具だけで考えると、今と昔どちらの子供が幸せだと思います? 僕は今日見させていただいて、今のほうが楽しそうだなあと思ったんですけど」

圧倒的に今のほうがいいですよ。種類も多いし、それぞれの遊具のクオリティも高い」

「こんな遊具が私の子供時代にあったらなあ~って思います。一日中遊ぶのに!」

「うわー、遊具を作ってる人もそう思ってるんだ。今の子供たち! ラッキーだぞ!」

「ただ昔が悪かったかというとそうでもないと思いますよ。子どもの頃って危ないこととか、ムチャな冒険が好きだから。そんな中で、どういうことをしたら危ないのか学べたのかもしれない」

「なるほど。そういう機会を失った子どもたちが、大人になってから危機に直面して学び直さなきゃいけないって状況もあり得ますからね」

「それでも僕は今の最新遊具で遊びたいですけどね! 今日は懐かしくて楽しい話が聞けて良かったです! ありがとうございました」

「はい、みなさん大人になってもぜひ公園で遊んでください! 今は『健康遊具』といって、健康のための運動ができる遊具だってありますから」

「ですね。正しい使用方法を守って、楽しく遊んでくださいね!」

 

コトブキの遊具がある! 都内お勧め公園

公園にある遊具を作っているのは、子どものよりよい未来を考える人たちであり、そして……子どもより遊具が好きな大人たちでした。

みなさん、最新の遊具がどこにあるのか気になったんじゃないですか?

 

というわけで最後に、都内のコトブキ製遊具のあるお勧め公園を紹介します!

 

井の頭恩賜公園

ここには、大人と子どもが触れ合いながら遊べる遊具、「マジカルフォレスト」が設置されています。

 

こちらが「マジカルフォレスト」イギリスのデザインユニット「デザインライト」とのコラボ製品なんだとか。

一度入ったらでら出られなそうな複雑な形。こういうのを脱出するのは、子供のほうが得意なんでしょうね。

 

井之頭公園は広いので散歩にも―

 

最適ですよ!

 

井の頭恩賜公園

住所|東京都武蔵野市御殿山1-18-31

 

葛飾区 住吉公園

記事の中にも出てきた最新の遊具「モーグルヒル」が設置されている公園です。

 

こちらが「モーグルヒル」子どもたちがひっきりなしに登ったり降りたりするもんだから写真を撮るのが大変でした。

モーグルヒルは都内だと「豊島区西池袋公園」にもあります!

 

葛飾区 住吉公園

住所|東京都葛飾区高砂7丁目18-13

 

都立清澄庭園 児童公園

途中で行き先が分かれる「バナナスライダー」があります。また、近年整備が進められている乳幼児向けの遊び場もある公園です。

 

ひゃっほぉ~い! 「バナナスライダー」は、滑りながら行き先を決められるという画期的な滑り台です。

 

清澄庭園 児童公園

住所|東京都江東区清澄3丁目3-33

 


 

いかがだったでしょうか。みなさんも公園を見かけたら、遊具に目を向けてみましょう! きっと楽しいですよ。

 


まだまだ暑い日が続くので、公園で遊ぶ時は水分補給を忘れないように注意してくださいね!

 

 

(おわり)

観光しながら被災地支援!手ぬぐい片手に西日本のゲストハウス巡りへ出かけよう

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観光しながら被災地支援!手ぬぐい片手に西日本のゲストハウス巡りへ出かけよう

こんにちは。ライターの友光だんごです。

 

7月に西日本を襲った豪雨災害について、連日のニュースで多くの方がご存知かと思います。土砂崩れや河川の氾濫などによる死者は200人を超え、多くの人々が避難生活を強いられています。

 

僕の地元である岡山県も、倉敷市真備(まび)町などが甚大な被害を受けました。

実家のあるエリアは大丈夫だったものの、災害が少ないといわれる岡山で、まさかこんな事態に……と息を呑むような姿を映し出す画面に釘付けになっていました。

 

被害を受けた人たちのために何かしたい……でもどうやって……と悶々としていたある日、とある企画の存在を知りました。

 

その名も

「大雨被害から立ち上がろう!

ゲストハウスめぐり手ぬぐいプロジェクト」

 

今回はこのチャリティプロジェクトについて、詳しくお伝えします!

被災地のゲストハウスをめぐって応援!

このプロジェクトの発起人は、岡山県倉敷市の美観地区でゲストハウスなどを経営する犬養拓(いぬかい・たく)さん。

 

チョンマゲのビジュアルもさることながら、あの犬養毅のひ孫でもあるという情報量の多い人です。詳しくはジモコロのインタビュー記事をどうぞ。

「現代人には許しの心が足りない」犬養毅の子孫が語る教育論

 

犬養さんのゲストハウス「有鄰庵」。カフェも併設され、美観地区の人気スポット

 

そんな彼が立ち上げたプロジェクトは、

 

手ぬぐいを持って、豪雨で被害を受けた地域のゲストハウスを巡ろう!

 

というもの。犬養さんがまとめた資料によると……

豪雨の被害の大きさが判明し始めた7月上旬から企画はスタートし、現在、14のゲストハウスが参加を表明しています。

 

制作中の手ぬぐいには、各ゲストハウスのロゴがプリントされています(画像はイメージです。完成版とは異なる場合があります)。

 

プロジェクトを立ち上げた経緯とは? 狙いの一つに掲げる「風評被害」とは? 犬養さんに話を聞いてみました。

 

知らせること、そしてお金になることが目的

「なぜ今回のプロジェクトを立ち上げたんですか?」

豪雨の影響によるお客さんの減少と、豪雨による直接的な被害のあった地域への支援が目的ですね。前者でいうと、今回、被害が大きかった真備町と美観地区は同じ倉敷市。美観地区への被害はほぼ無かったのですが、うちの宿では大雨の直後からおよそ40件の予約キャンセルが発生しました

「それはかなりの痛手ですね…」

 

「豪雨直後の有鄰庵のツイートも、大きく拡散されていましたね」

「海の日の三連休や、夏休みの行楽シーズン前でしたから、観光施設にとってお客さんの減少は大きな痛手です。そこで『チャリティ手ぬぐいを持って、被害にあった地域のゲストハウスを巡る』というコンセプトを考えました」

「観光地やゲストハウスの側から『うちへ来ても大丈夫ですよ!』とアピールする試みということですね!」

「これはたまたまなんですが、日本各地の『ゲストハウス巡り』をテーマにした冊子を企画していたんですよ。というのも、ゲストハウスを利用する人は、他の旅先でも地元のゲストハウスに泊まる人が多いんです」

「そういえば、ゲストハウスに泊まった時に、スタッフさんから他の地域のゲストハウスを紹介してもらうこともよくありますね」

「ええ。だから『ゲストハウス巡り』の需要はあると思っていました。そこで大雨が起きたんです」

「では、その冊子のアイデアを急遽転用した形なんですね」

「そうですね。そして、今回制作する手ぬぐいの売り上げは参加ゲストハウスの収益になるため、被災地への支援にもつながります。まずは『遊びに行っていい』と知ってもらうこと。そして、被災地のお金になることの2つを狙いとしています

 

ゲストハウス巡りを通じて、被災地を応援しよう

倉敷を『食べて応援』するイベントの開催や、『#美観地区は元気だったよ』というハッシュタグを使った情報発信など、犬養さんたちの会社では様々な形で豪雨災害の支援に取り組まれていますよね」

「美観地区で仕事をする人間として、自分たちにできることを考えて活動しています。うちのゲストハウスでは、シャワールームを被災された方向けに無料で開放したり、真備町の災害ボランティアの方向けの格安宿泊プランも用意しています」

 

「僕個人としても、東日本大震災や熊本地震のときにも個人でチャリティTシャツを作って販売していました。チャリティ企画の流れもわかっているので、今回いち早く声を上げられました。有鄰庵が取りまとめることで、他のゲストハウスの負担もできるだけ少なくできたらと」

「取り組みとしても素晴らしいですが、ゲストハウスの方たちの横のつながりが可視化される、面白いプロジェクトだと思います」

ゲストハウスは地域との結びつきが強く、被害のあった地域に対してなんとかしたいという意識が大きいところも多いです。だからこそ、こうしたチャリティの担い手として連帯するのは、意味のあることかなと」

「まずは純粋に、ゲストハウス巡りを楽しんでほしいですね」

「そこから被災地にお金が落ち、少しでも力になれたらと思います!」

 

 

プロジェクトへの賛同コメント

さて、今回のプロジェクトに関して、ローカル/ソーシャルの分野で活躍する皆さんから賛同の声が集まりました。ご紹介いたします!

 

ソトコト編集長 指出一正さん

犬養さんのこの手ぬぐいプロジェクトを強く応援しています! 東日本大震災が発生した2011年以降、ぼくはそれ以前から出かけていた東北の中山間地域に、さらに頻度を高めて年に何度も渓流釣りに通い続けています。入漁券を購入し、その土地の宿に家族で泊まり、温泉施設を使用して、地元のお店でごはんを食べ、お土産を買う。復興と風評被害の払拭は、一個人として無理なくできることを、とにかく楽しみながら長く続けることが大切です。参加されたゲストハウスに、たくさんの方が遊びに行かれることを願っています!

 

編集者・Re:S(りす)代表 藤本智士さん

今回ほど、東京中心のマスメディアの限界を感じたことはありませんでした。講演予定だった島根県の江津や、以前お世話になった愛媛県の大洲や、広島や地元兵庫など、様々な土地で局地的且つ広域にわたり甚大な被害を受けていることを知ったのはSNSがあったからこそ。これが関東圏だったらまた違ったんだろうかと考えてしまいます。しかし、だからこそネットメディアの使命を強く感じました。メデイアに携わる者として、今回の企画を応援したいと思います。

 

灯台もと暮らし代表 鳥井弘文さん

今回の豪雨災害について、インターネットやラジオなどさまざまなメディアを通じてその状況を見聞きする中で、その被害の大きさにとても驚かされました。しかし、自分が何かすぐに役に立つような行動ができるわけでもなく、ずっとモヤモヤしていたところ、ジモコロさんから今回の企画について教えていただき、すぐに応援したいと思いました。被害に遭われた地域の方々が少しでも早く、いつも通りの生活に戻ることができるよう陰ながら応援しております。

 

エッセイスト・ライター・フォトグラファー 伊佐知美さん

日本に帰ってきました。伊佐知美です。西日本にたくさん雨が降っているとき、私は旅の途中で、ちょうど南米大陸からヨーロッパへ移動していました。遠く離れた土地で、ただただ心配することしかできなかったあの時。その後日本へ帰国して、ボランティアへ行きたいな、何か募金なども、と考えているときに、犬養さんのこの企画のお知らせをジモコロさんにいただきました。
「みんながやれる時に、やれることを、やれる範囲で」。今すぐに岡山県を訪れることが正解なこともあるし、落ち着いてから、という選択もあると思います。
じつは私、倉敷市にずっと行きたいなと思いながら、まだ行けていないんです。先日の詩歩さんの訪問も印象的でした。
手ぬぐいは、オンラインでの販売はされないのでしょうか? 送料や、余計なお仕事を増やしてしまうだけかな……。もしあるなら、東京で買いたいひともたくさんいるんじゃないかな。私はほしいな。
「まずは『遊びに行っていい』と知ってもらうこと」。そうそう、「岡山に遊びに行っていいんだよ」と知ることが、まず大切なのかも。「どうしたらいいのかな」と迷っているひとに最初の一歩を踏み出させてくれる企画を、犬養さん、ありがとうございます。
すごく昔、駆け出しライターの頃にお会いした犬養さん。元気かなぁ。会いに行かなきゃなぁ。がんばって、と偉そうに言うことはできないけれど、何かできること、したいな、しよう、って改めて思わせてくれました。ありがとう。
私の地元は、昔の中越地震・中越沖地震のエリアなのですが、日本で生き続けていきたいよね、だからみんなで一緒に守ろう、日本という場所を、と私は思っています。

 

トラベルグラファー・ライター  古性のちさん

今回の出来事に「私も何かしたい!でも、何ができるかな…」と私のように思っている人は沢山いるはず。まずは難しいことは何も考えず、元気に倉敷に遊びにいきましょう。あなたのワクワクした気持ちが、この町の力と元気になるはず!倉敷には、何度でも帰りたくなるような心がゆるむ空気と、歩いているだけでワクワクする場所が沢山あります。ぜひ体全体で感じてみてください。素敵な手ぬぐいを片手に。

 

働き方実験家・自転車旅ライター 松田然さん

「遊びに来て、美味しいもの食べたり観光してくれるだけでも本当に嬉しい」
東北の震災の後、東京から自転車で被災地に行った際に現地の方に言われた言葉。
今回の西日本豪雨災害でも、被害に遭われた方の苦労を考えると胸が締め付けられます。でも、僕らができることは自粛するより、現地に行って観光したり、応援していることを伝えることだと思います。微力ですが、今回の取り組みに賛同します。

 

公務員・編集者 安藤巖乙さん

学生時代に海外自転車旅行をしていたとき、よくゲストハウスに泊まっていました。地域の情報を得ることができ、世界中の旅行者と知り合える場所に泊まることは、とても楽しいひと時でした。瀬戸内海周辺を中心とする今回の豪雨で被災した地域が、地域の顔となるゲストハウスから元気な姿を発信することで、きっと世界中の人たちに届くはず! これからも地域の魅力をゲストハウスからどんどん発信していってほしいです。応援しています!

 

元ことりっぷwebプロデューサー 平山高敏さん

いくつかのゲストハウスに泊まったり話を聞いたりして感じたのは、ゲストハウスの役割がその土地を知りたい旅人に対しての「観光案内所」であると同時に、地域を盛り上げたい人たちが企てるための「集会所」でもあるということでした。それは乱暴に言ってしまえば地域の「楽しい」が流れ始める場所なのだということ。今回の取り組みによって楽しい流れが取り戻され、そしてその先で新しい旅人がこの流れに乗ってくることを期待しつつ。

 

発酵デザイナー 小倉ヒラクさん

中国地方はゆっくり歩いて楽しい、関東にも関西にもない魅力いっぱいの大好きな土地。ご飯もお酒も美味しいし、各土地に面白い人たちがいる。この企画をきっかけに、ぜひこの土地の面白さを知ってほしい!応援!!

 

ライター・編集者 望月優大さん

豪雨に襲われた西日本の広大なエリアは一つひとつの小さな「ローカル」の集積体であり、その広大さゆえに報道や支援が分散してしまいがちなのが現実だと思います。そんな各地のローカルに点在する「ゲストハウス」に注目し、オリジナルの「手ぬぐい」を通じてその間に連帯をつくっていこうというプロジェクトのコンセプトに共感しました。プロジェクトを立ち上げた犬養さんはこれまでも様々な形で、時に人から見えないところで、より良い社会のために想いを持って活動されてきた方です。応援しています。

 

プロジェクトのスタートは8/27(月)からを予定

さて、最後にプロジェクトの概要を改めてご紹介します!

 

【プロジェクト名】

大雨被害から立ち上がろう!ゲストハウスめぐり手ぬぐいプロジェクト

 

【手ぬぐいについて】

8/27(月)から各ゲストハウスで販売開始予定

・販売予定価格は1800円(税込)

有鄰庵のECサイトでネット通販あり

 

【参加ゲストハウス】

有鄰庵(岡山県倉敷市)

かくれ宿 Yuji-inn(岡山県倉敷市)http://yuji-inn.com/

ゲストハウスいぐさ(岡山県早島町)http://www.igusagh.com/

KAMP(岡山県岡山市)http://kamp.jp/

あわくら温泉 元湯(岡山県英田郡西粟倉村)http://motoyu.asia/

庄屋屋敷とくら(岡山県笠岡市)https://tokura.localinfo.jp/

ELEVEN VILLAGE(岡山県高梁市)https://www.elevenvillage.org/

広島ゲストハウス縁(広島県広島市)https://hostel-en.com/

バックパッカーズ宮島(広島県廿日市市)
http://www.backpackers-miyajima.com/

広島ゲストハウスroku(広島県広島市)http://roku-hostel.com/roku/

大山ゲストハウス寿庵(鳥取県西伯郡)
http://www.daisen-guesthouse-juan.com/

タイヨウとうみ(香川県三豊市)https://www.12sunsea.com/

シクロの家(愛媛県今治市)http://www.cyclonoie.com/

・汐見の家(愛媛県越智郡)http://shiomihouse.com/

 

【問い合わせ先】

ゲストハウス有鄰庵 電話:086-426-1180/メール:guesthouse@yuurin-an.jp

 

 

プロジェクトに興味を持たれた方は、ぜひこの夏、参加ゲストハウスへ遊びに行ってみてください! 一人ひとりができることから、被災地を応援しましょうー!

 

【漫画】杏耶が教える山形グルメの本当のすごさ〜置賜編〜

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【漫画】杏耶が教える山形グルメの本当のすごさ〜置賜編〜

 

自身で考案したレシピをイラスト化した書籍「あやぶた食堂」や丼物オンリー漫画「ド丼パ!」で御馴染みの食いしん坊イラストレーターの杏耶さん。

そんな彼女が地元山形県・置賜(おきたま)地方のグルメを宣伝する漫画です。

 

後編では山形の魚介類と日本酒が登場!

マンガで学ぶ(ほぼ)正しいお墓の参り方

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マンガで学ぶ(ほぼ)正しいお墓の参り方

こんにちは、マンガ家の下村山です。

そろそろお盆ということで、実家に帰省して墓参りをする方も多いのではないでしょうか(9月にはお彼岸もありますよね)

僕は最近、友人や、以前の職場の同僚など、墓参りに行く機会が偶然にも重なりました。

恥ずかしながら墓参りの作法やマナーって「なんとなく」でしか知らなかったため、かなり勉強したんですが……今回は、その時学んだことが誰かの役に立てばと思い、マンガにしてみましたよ!

 

【もくじ】

お墓参りの準備

お墓掃除の仕方

STEP1 植木の手入れ・雑草取り

お墓の区画に生えている雑草取りを行います。

STEP2 墓石の拭き掃除

持ってきたタオルや雑巾を濡らして、墓石を拭き掃除します。

サオ石(一番上の石)から下へ順番に綺麗にしていきましょう。家庭用洗剤やタワシなどを使用すると、墓石を傷つけることになりかねないのでオススメしません。水拭きだけでも十分綺麗になりますよ!


※お線香で熱くなった香炉に水を掛けてしまうと、温度差で香炉が割れることがあるのでご注意を

 

STEP3 小物類の洗浄

湯のみ、花差し、香炉内のステンレス台を洗いましょう。

花差しは、汚れがこびり付いていることが多いので、歯ブラシなど使用すれば丁寧に掃除ができます。

お墓参りの仕方

▼様々なマナーやルール

・お墓掃除の前に区画の四隅に線香を一本置く

・墓に敷いている玉砂利も綺麗に洗う

・関東では黒いお墓が多いが、関西ではグレーのお墓が多い

・九州では、彫り文字を金色にすることが多い

・仏教のお墓は四角だが、神道のお墓は尖っている

などなど…

ご家庭や風習、地域、もちろん宗教、宗派によっても様々なマナーやルールが存在します。

 

お墓参りまとめ

いかがでしたでしょうか?

家族揃って取り組むことの多いお墓参り。
成人して取り組んでみると知らないことがたくさんありました。

習慣や風習でお墓参りの作法は大きく変わりますが、ここで挙げたお話は、基本的な作法と、石屋さん直伝の墓石を大事にする掃除方法です。

 

最後に、お墓参りの持ち物リストをまとめておきます。何かの際にお役に立てば嬉しいです。

●お墓掃除関係の持ち物

□雑巾・タオル

□ほうき、チリトリ

□軍手

□ゴミ袋

(あればなお可)

□水(ペットボトル入で良い)

□バケツ(手桶、柄杓がない場合)

□スクレーパー(こびり付いた汚れが気になる場合)

 

●お墓参り関係の持ち物

□お線香

□お供え(盆菓子が無難だが故人にちなんだものでも可)

□飲み物(ジュースやお酒など)

□仏花(故人にちなんだ花でも可)

□ライター

□ろうそく(お線香に火をつける)

(あればなお可)

□数珠(習慣、地域によっては必須)

□敷き紙(お供えの下に敷く紙)

□卒塔婆/そとば(お寺にお願いする)

 

監修:米陀石材店・米陀光さん

有限会社 米陀石材店

住所|〒234-0053 神奈川県横浜市港南区日野中央1丁目8-1

電話|045-842-1473

公式HP

ブログ

平成最後の夏、僕たちはUFOを見た

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平成最後の夏、僕たちはUFOを見た

長野県戸隠山中に位置する「K池」でUFOが出るーーーそんな情報を元に、7月上旬某日、取材班は現場へ急行した。

時刻は深夜24時を少しまわった頃。日中の暑さは過ぎ去り、むしろ肌寒いくらいだった。

 

「本当にUFOが出るんですか?」

「うん、ただし全員が信じてへんと見えんよ」

「本当かなあ…」

 

私はD。今までUFOを見たことはない。長野で出会った男・Kに「UFOを見せてやる」と言われ、友人10人とともにやって来た。明かりの一切ない湖畔は、懐中電灯が無ければとっぷりとした真の闇に包まれる。

 

「出ませんね。それに怖いな…こんなに真っ暗…」

「そんなすぐには出えへんよ。ぼんやり夜空を見上げといてみ」

「…………」

 

時間にすれば5分も経っていないはずだ。突如として同行していたNが声を上げた。

 

「あの光、動いてません?」

 

 

「いや、星でしょ」

「でも、変な動きしてますよ。星はあんな動きしない」

 

Nが指差す、南の山の稜線からやや上あたりの白い光。たしかにジグザグに動いているように見えるが…

 

「目の錯覚で、星が動いてるように見えるだけでしょ」

いや……あれはUFOや!!!! こんなに早く出るとはツイとるで」

「(いやいや、そんなわけないでしょ……)」

 

しかし、友人たちも口々に「俺も見える!」「あれ、マジじゃない…?」と叫び始めた。全員が同じ光を見ている。

それに、UFOかもしれない光の数は増えていく。夜空のあちこちで、光がすごいスピードで動いているのだ。

 

いつしか皆、地面に仰向けになって夜空を見上げていた。こんな夜更けに星を見ているなんて、都会では考えられない。まさしく非日常。なんだか不思議な気分である。

 

「なんかもう、UFOだと信じてもいいような気がしてきました」

「せやろ。おるんよ、UFOは。……最初のやつら、見えんくなったな。そろそろ行きますか?」

「あ、待って……あそこに大きいのがいます!」

 

 

振り返った我々は目を疑った。いる。今までの光とは明らかに違う、オレンジの大きな光だ。

 

飛行機とも思えない。西の空でじっと動かず、静止しているからだ。そして……ゆっくりとその場で静かに消えた。と、つぎの瞬間、再び現れたではないか!!!!

 

「あの動き…間違いない!これはすごいなあ、こんな大物なかなか見られへんよ」

「なんか…よく見るとひょうたん型してる気がする!」

「ほんまか!いやあ、出よったなあ」

 

やがて、スーッと光は消えた。

聞けば、その場にいた12人全員が同じ光を見たという。

 

「あれはマジのUFOかもしれません……」

「せやろ。おるんよ、UFOは」

「いやあ…こんなことあるんですね」

 

と、そこであることに気づいた。

友人の1人、Hだけが起き上がらない。

 

目を閉じ横たわったまま……声をかけても反応がないのだ。

 

「え、やばくないですか?」

「あ、これはあかんかも」

「おい、H、起きろ!!!!!おい!!!!!!!!」

 

……………

 

……………

 

 

……………

 

改めまして、Dことライターの友光だんごです。暑さで頭がやられてしまったとお思いかもしれませんが、いや、あれはマジのマジでUFOでした。まさか、平成最後の夏にUFOを見ることになるとは。

 

皆さんの訝しげな顔が目に浮かびますが、ひとまず話半分でも大丈夫です。

 

今回はみなさんに「ローカルとUFO」の秘められた関係をお伝えすべく、僕がUFOを見るきっかけを作ったKさんの話をお届けします。

 

UFOを見るならローカルに行け!

こちらが冒頭にも登場したKさんもとい、日下慶太(くさか・けいた)さん。

 

日下さんは、UFOを呼ぶバンド「エンバーン」として活動していたり、UFOを呼ぶ活動=「U活」にどハマりしていたり、見た目通りのUFO愛に満ちた方です。

 

写真の下段中央、金色の人が日下さん。縄文時代の「遮光器土偶(しゃこうきどぐう)」をモチーフにした格好だそう

 

「日下さん、よろしくお願いします。『いやいや、UFOなんているわけないでしょう!』とここまで読んでいる人もいると思うのですが…」

「まあね、ただ、みなさんにまず伝えたいのは」

 

「UFOはロマンです」

「おおお……聞き手としての公平性を期すため、いったん僕はUFOに関する記憶を忘れて進行したいのですが」

「記憶、消してあげましょか?」

「え、『メン・イン・ブラック』みたいなやつ? できるんですか???」

 

「ええ。うーーーーん…………」

 

「はいっ!!! これで記憶が消えました」

「おお!……って、消えてませんね」

「嘘です。超能力者とかではないので。ただ、UFOに関してはマジです

「安心しました」

 

UFOを見るならここへ行け!

取材当日に日下さんが着ていたTシャツ。宇宙感がすごい

 

「ではまず、UFOってそもそもなんなんでしょう?」

「『未確認飛行物体Unidentified Flying Object)』の略ですね。前提として、地球人以外の知的生命体は存在すると仮定します。これだけ宇宙は広いんやから、僕は宇宙人はおると思う。で、彼らが地球人とコンタクトをとるために地球へ近づいた姿がUFOとして目撃されてると」

「なるほど。それで……UFOとローカルの関係が深いってどういう意味なんですか?」

「彼らは基本、猫のように臆病なんです。誰かが来るとすぐ逃げる。バレると攻撃されたりもするみたいだから。それで飛行機がよく飛んでいるところや、人気が多い場所、明るい場所では出にくい。必然的に、ローカルのほうが目撃されやすいわけ

「人が少ないところで、と。UFOがよく出る場所ってあるんですか?」

「霊山といわれる有名な山には出るね! 関西でいうと、生駒山、三輪山、六甲山、妙見山。関東やと高尾山もそうやったかな」

「霊山ですか」

「俺の考えやけどね、古くからの祈りの場所っていうのはUFOに祈ってたんじゃないかと思うのよ。祈り=宇宙との交信って説もある。山にある寺も、不思議なことが起きたから建てられたのかもしれんよね」

「ははー。日本で有名なUFOスポットってあるんでしょうか」

 

「いくつかあるね!まずは石川県の『羽昨(はくい)』。ここはUFOで町おこしをしてて、UFO記念館もある。それと、北海道の『八雲町』。ここは『UFOの墓場』と呼ばれてて、住民の8割がUFOを見たことがあると言われてる」

「どっちもすごいな。その2箇所へ日下さんが行ったことは…」

「まだないねんなあ、めっちゃ行きたいんやけど。あ、宮城県の『加美(かみ)町』には先週行って、UFO見たよ。山形県との県境にある田代峠ってスポットで」

「えー!そこの地元の人はみんなUFOを見てるんですか?」

「おお、地元のおじいちゃんに『田代峠にUFOを見に行きます』って言ったら『あそこは出るわ! 山形のほうからUFOが来るぞ〜!』って言われたね」

「山形に何があるんですか…?」

「あとは高知の『唐人駄場(とうじんだば)』! 僕のブログにも目撃した時の話を書いとるよ。ここは巨石が有名なんやけど、巨石があるところにはUFOがよく出る。パワースポットでの目撃情報ってめちゃくちゃ多いんよ」

「そういえば、僕らがUFOを見た戸隠もパワースポットでしたね…」

 

人間は人間の視点でしか物事が見えてない

「日下さんにとって、UFOってどんな存在なんでしょう?」

ロマンであり、人生においての『解決策』かな」

「解決策?」

「えっとね、地球に比べて、宇宙人の方がすごい高度な文明を持ってると思うんよ。宇宙開発の進み具合を考えても、地球人はアポロ13号が月に行って以来、他の星に行けてないでしょう?」

「アポロ13号が40年以上前で、それから一度も行ってないって変な話ですよね。これだけ技術も進歩してるのに…」

「その理由は諸説あるけど、消されるとあかんからここでは言わんとくね」

「誰に……? ジモコロが消されると困るので、あとでこっそり聞きます。で、宇宙人の方が高度な文明を持ってるって話ですよね」

 

「うん、そしたらもし宇宙人と仲良くなれたら、地球のいろんな問題を解決してくれそうやんか」

「ああ……地球もゴタゴタしてますもんね。国際情勢もそうですし、大きな災害も頻発していて。人間の力で解決できないことってたくさんあるので、それらに対する心の拠り所としてのUFOというか?」

「そうやね。例えばさ、天文ウォッチャーの人ってほとんどUFOを見たことがないらしい。なんでかわかる?」

「え、めちゃくちゃ夜空を見てるはずですよね。それならバンバン見てそうですが」

「『星しか見てない』から、UFOが見えないのよ。人間って、自分が知ってる範囲外のことって認識できないからね」

「なるほど……これは深い話な気がする。あの、UFOを見て『いいこと』って何かあるんでしょうか?」

 

『科学で説明できないことがある』とわかっておくこと。現代社会って『科学』が神様みたいなもので、絶対的な存在とされてるやん? でも、絶対的なものはないと理解しておくことって大事ちゃう? 科学では説明できないけど、圧倒的な身体感覚で掴めることってUFO以外にもあるやんか」

「人間の本能的な感覚というか……」

「そう。体験で知ることはある。あと、自分の気持ちが別なものに通じたら嬉しくならん? UFOを見る時って、こっちの居場所を知らせるために、光で合図するんよ。それに反応してUFOが出てきたときは、伝わった!って感動するんよなあ」

「別なものかあ。幽霊とかは信じないんですか? 僕の友達がポルターガイストを体験して『終わった後にめちゃくちゃ疲れた』って言ってたんですが」

 

「ポルターガイストはただの『低周波』やから」

「そこは現実的なんだ」

「幽霊はいると思うよ!でも見たことないし、興味ない。怖いから」

「UFOは怖くないんですか?」

「怖くないよ!疑わない方がええと思うねん。インベーダー(侵略者)ではなく、友好的存在。霊というか『怨念』も存在すると思うけど、それは負の感情でしょう? UFOはそれと違くて、めっちゃ頭のいいすごい先生が来るみたいなことやから」

「高度な文明ですもんね。それは丁重に扱わないと」

人間は人間の視点でしか物事が見えてないけどさ、もっと色んな見方ができたら面白いし、世界が平和になると思うね。僕は『UFO友達』のことを『U友(ゆーとも)』って呼んでるんやけど、だんごくん、もう僕のU友やろ?」

「もちろんU友です! また一緒にUFO見に行きましょう!」

 

おわりに

UFOを見たくなってしまった人のために、日下さんに聞いたコツをまとめました。ぜひ参考にしてください。

 

ちなみに、日下さんは商店街のユニークなポスターを作り町おこしに繋げる『商店街ポスター展』の仕掛け人であり、『迷子のコピーライター』という著書も最近出版したすごい人だということは最後にお伝えしておきますね。

 

日下さんの本業について気になった方は『迷子のコピーライター』をご覧ください。過去のUFO遭遇体験についても、なぜか全部書いてあります。

 

そういえば冒頭で気絶していたH君ですが(上はマジの現場写真です)、その後普通に起き上がりました。

ただし『夜空を見上げてて、次の瞬間みんなが心配そうに自分を見てた。意識を失ってた感覚はない』と話していたのです。

 

果たして彼の身に何が起きていたのか……?

 

それはUFOのみぞ知る……!

 

 

それでは皆さん、楽しいUFOライフを!

 

 

☆9月1日、日下さんが「日本のへそ」でUFOを呼ぶイベント「ヘソノオ宇宙祭」を開催!詳しくはこちら→facebookイベントページ

 

イラスト:日向コイケ(Instagram

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