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【トラックドライバー】大型免許取得……それは給料“激”アップへのパスポート

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【トラックドライバー】大型免許取得……それは給料“激”アップへのパスポート

 

こんにちは、トラックに乗りながら漫画を描いている ぞうむしです。ジモコロでは以前、こんな記事を書きました。

 

【配送】トラックドライバーあるある50選【物流】

 

実は現在、トラック業界は未曾有のドライバー不足なんです!

以前は普通免許で4トン車まで乗れたのが、2007年に免許法が改正され、現在では2トン車すら一部運転できなくなりました(同じ2トン車でも総重量によって運転できる/できないがあります)。

そのため、普通免許しか持ってない人は、大きいトラックを運転できず、結果、ドライバー業界は圧倒的に人手不足なんです。

 

僕は、4トンまで運転できる中型免許を持っているのですが、大型を取得したら10トン以上の車でも運転が可能。圧倒的にトラックドライバーとしての幅が広がり、給料アップも期待できます。

だって2020年には国際的なスポーツの祭典がありますよね? そのための特需で、大型免許を持っているドライバーは高給で雇ってくれるという噂も……?

 

というわけで今回は、大型免許取得への道のりをレポートしてみます。

 

※ちなみに、マイクロバスなども運転できるようになるので、社員旅行や子どもの部活の遠征などで大活躍できます。まあ、そんな運転したくないと思うので、黙っとくのがかしこいですね。

 

大型免許の取得方法、期間、費用など

中型免許まで持っていれば、直接 試験場へ行って、1発合格を目指すという方法もあります。が、僕は教習所に入ることにしました。

なぜなら……

 

試験に使われるトラックのサイズが大きくなったから!

 

以前は、試験場で使われる車両のサイズは4トンで、普段トラックに乗っているような人であれば、さほど苦にならない大きさでした。でも、改正後は試験車両が本当の10トン車になったんです。

慣れてないとちょっとした山にしか見えません。

 

というわけで、いきなり巨大モンスターマシンを操縦する自信がない人は、教習所に行ったほうが良いでしょう。

 

必要な期間

僕の場合は、中型免許まで持っているので、学科無しの実技20時間。

普通免許しか持っていない人だと、実技だけで30時間、学科に1時間必要です。

実技は1日2時間までしか乗れないし、働きながらだと、1時間の教習すら大変なので、免許取得までには、平均2ヶ月半くらいかかるのではないでしょうか。

 

必要な費用

費用は、入学金の約27万円に加え、仮免、卒検にそれぞれ約1万円ずつかかるので、全部で30万円くらい必要。うぐぐぐ……高い〜!

※教習所によって違います

 

でも、一生モノのライセンスだし、本気出して大型トラックのドライバーをすれば、たぶん数ヶ月で元はとれます。

職場の先輩ドライバーによると、大型を持ってたら生涯年収が数千万は変わるぞ!……とのこと。ただしその先輩自身は、4畳半のアパートに住んでパチンコばっかりやってるような人なので、真偽の程はわかりません。

 

大型トラックドライバーの先輩 通称「便所サンダルさん」

 

ちょっと変わった適性検査

入校にあたっての最大の難関は、適正検査の中で行われる深視力。物体の遠近感、立体感、奥行きなどを捉える目の能力の一つです。
この能力により、物体の位置状況が把握できるため、大きな車を運転する時には非常に重要です。

 

今まで試されたこともないような能力なので、かなり戸惑うのではないでしょうか。

 

他は普通免許の時と同じような検査なので、誰でもクリアできます。すべてクリアしたら、いよいよ入校です!

 

実際の教習はこんな感じ

18歳で免許を取って以来、26年ぶりの教習所は、周囲を見渡すと若者ばかり。先生すら若い! 昔はもっと年取った鬼教官ばっかりだったけどなぁ。

 

久しぶりの「学生気分」に、かなりワクワクしてしまいました。ひょっとして……

 

ピチピチの女子大生と仲良くなれるかも!?

 

 

はい、大型トラックのクラスはオッサンばっかりでした。本当にありがとうございました。

 

というわけで、いよいよ実技の始まりです。

 

10トン車は巨大なので、乗りこむことすら一苦労。やっとのことで乗り込んで周りを見てみると……

 

車高、高ぇぇぇぇ~~~!!!

 

が、車高が高いということは、視界が広いということでもあります。道路状況の把握しやすさは乗用車の比ではありません。

 

最初は車体の大きさや幅、長さにビビり倒すと思いますが、教習所内のコースなら絶対に大型車が通れる設計になっているので大丈夫です。縦列駐車や方向転換(車庫入れ)も絶対入ります。

公道では「車体が通るかどうか」などの判断を自分でしなくてはいけないので、教習所にいる間に感覚をつかみましょう。

 

もうひとつ、驚くだろうと思われるのがブレーキ。4トン以上の大型車は、エアブレーキというシステムなので、乗用車や2トン感覚で踏むと信じられないくらいガツンと効きます!

 

・エアブレーキ

一般乗用車のが採用する油圧ブレーキとと異なり、外部から空気を取り入れて圧縮しブレーキにする機構

 

サイドブレーキを戻す時なんかには、エアーが排気されブシューッという音を響かせる。この音を聞くと、大きい車を運転してる感があり、テンションが上がることでしょう。

 

1段階目

大型免許の教習は2段階しかなく、すでに中型を持っている僕の場合は

1段階目で8時間乗車→見極め→仮免

2段階目は12時間乗車→見極め→卒検

合計20時間(学科なし)

という流れになります。

 

ちなみに普通免許しか持っていない場合だと

1段階目で12時間→見極め→仮免

2段階目で18時間乗車→見極め→卒検

合計30時間(+学科1時間)

となります。

 

1段階目で難しく感じたのが「隘路(あいろ)」。直線から曲がって枠線の中に一発で入れる、という項目です。

 

ハンドルを切るタイミングが想定してるよりかなり遅いんです。

右手に見える図のAの部分をだいぶ過ぎてからハンドルを切るのですが、通り過ぎてしまうのでは?と不安になります。

車体をラインに真っすぐ合わせるのが難しくて最後まで(検定でも)微妙にななめってました。

 

2段階目

 

1段階目で仮免を取っているはずなので、2段階目は路上にも出ます。一般ドライバーの小さな車(大型車と比較すると乗用車がラジコンみたいに見える)が足元をビュンビュン通っているので、めちゃめちゃ怖い!

 

といっても、路上講習のコースも大型が走れる道しか通らないので、必要以上に怯えることはありません(個人的には、通れる・通れないの判断こそ大型車両の運転におけるキモだと思います)。

 

テクニックとして難しく感じたのが、教習所コース内の縦列駐車です

 

普通車でも苦手なひとが多いといわれる縦列駐車……これが大型車ともなると、大きさ、挙動が全然掴めません。

僕は仕事で乗っているので感覚で入れることができたんですが、横から教官に「何番目のポールが見えたらハンドルを2回まわして!」など、口を出され、「なぜ2回まわすの?」なんて考え始めたら手と思考が追いつかなくなってパニックになります。

 

とにかく言われたままやればできるので、感覚を掴むまでは「自分はロボット自分はロボット」と割り切ったほうがいいです。

 

もうひとつ難しかったのが、後方確認。バックで入れて、奥のポールまで50cm以内に停車します。普通車と比較すると、運転席からの距離が長過ぎるのでめちゃめちゃ難しいんです。

 

検定の時に「こんなもん何に必要なんだ」とボヤいてた深視力は、ここで必要になってきます。車体の端がどこにあって、奥のポールとの距離はどれくらいなのか、深視力で判断するわけですね。

 

後方確認に関しても、「まず最初に感覚を掴もうとする」のではなく、「ポールの色がここまで消えたらブレーキ」みたいに、機械的に覚えたほうが楽です(それを繰り返していれば、勝手に感覚は掴めるから)

 

余談

あらゆる検定で必要になってくるのが、確認。曲がる前に「右・左」が基本であり、この時……

 

検定員に「ほら確認してますよ!」とアピールするため、首を大きく振ったほうがいい、という通説があります。

僕も石臼のごとく首を振っていたんですが、検定員さん曰く「目の動きを見てるんで、過剰な確認はしなくて大丈夫」とのことです。

 

卒業検定

実技をすべてクリアしたら、最後は卒業検定です。この時の緊張感はハンパなかった……。

僕だけではなく、教官サイドも緊張するそう。そんな教官を見てさらに緊張が高まり……という地獄のスパイラル。

 

しかも、検定の時は不正がないように、後ろに事務員さんなどが乗るんです。なんで急に!? 視線が一人分増えてさらに緊張は高まるのでした。

 

会社を休んでの試験だし、落ちたらまた休みをもらわなきゃいけない。同じ職場(運送会社)には、教習所に通わず、試験場で一発で取った先輩もいるのに……20時間も教習を受けて落ちたらどうしよう。

 

そんな心の葛藤については、僕からは何とも言えないのですが……物理的なアドバイスをひとつ言うと、『とにかくポールだけ見る』ことを心がけてください。

教習所内のポールなどに接触したら、その時点で即・検定中止なので、生き延びたければポールの位置を把握し、車体との距離を深視力で見極めましょう。

 

公道での検定もあります。

※公道で事故を起こすと自己責任なので、気をつけてくださいね

 

僕の場合は、黄色信号だけどタイミング的に行ったほうがいい!と判断して発進したんですが、その後、検定が終わるまでずっと「停まったほうが良かったかな? 教官も渋い顔をしてる気がする。だめだもう落ちたわ」という後悔が頭の中をグルグル回って、全然集中できませんでした。

 

さて、そんな調子で我ながら全然できてなかった卒業検定ですが、さて結果は……?

 

 

 

 

 

やったああああああああああああああああああ!(何でそんなにもったいつけるの?!)

 

僕が通った教習所は国の認定校なので、試験場での実技は免除されます。中型を(普通でも)持っているので、筆記試験も必要ありません。

試験場で行われるのは、視力、深視力の検査のみ。あとは数時間の手続きで取得できます。

 

僕は教習所を卒業したその足で試験場へ向かい、大型免許をついに取得できました。

 

まとめ

結局、僕は2ヶ月半で教習所を卒業できました。

仕事をしながら教習所に通ったので、18時に勤務を終えて19時に教習所へ、家へ帰るのは20時とかでしたが、不思議と疲労はありませんでした。

久々の学生気分で本当に楽しかったです。

 

なお、教習生たちと仲良くなれるかな? なんてワクワクしていましたが、誰とも一言も話すことはありませんでした。

 

費用

入学金 43,200円

授業料 194,400円

夜間料 25,920円

適正検査料 2,490円

高速手数料 2,160円

合計 268,170円

 

期間

約2カ月半

※普通免許しか持ってない人はもう少しかかります

 

 

さて、大型免許を取得してから何か変化があったかというと、僕の場合、給料が……

 

1日300円アップ

 

しました!

苦労の割に微々たるものだな~と思うかもしれませんが、1ヶ月で7,200円、1年で86,400円のアップです。

3年ちょっとで大型免許取得にかかった費用は元がとれる計算ですね。

※僕の会社では、免許さえ持っていれば、大型車に乗ってない時でも「大型手当」が付きます

 

みなさんの会社にも毎年 昇給ってあると思いますが、一気に8万以上も給料がアップしたと考えてください。ね?すごいでしょ。

 

というわけで、大型免許を持っていないトラックドライバーの人……もしくは別業界で働いてるけどトラックドライバーになろうと考えている人は、大型免許の取得を考慮してみてください。

 

ちなみに大抵の運送会社には大型取得費用をフォローしてくれるようなシステムがあると思います。僕の会社にもあったんですが、免許だけ取ってすぐ辞めるような人がいたからか、「3年間は辞めません」という誓約書を書かされます。

僕はそれが厭だったので自腹で取りました!

 

だってせっかく大型免許を取ったんだから、もっと良い会社に転職することだってできるかもしれないでしょ? 稼ぐぞ~!

 

 

取材協力:福岡県公安委員会指定 大善寺自動車学校

 

 

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『キャンプは道連れ世はお酒』第4話「春の会津へ!花より酒と、朝ラーメン⁉︎」

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『キャンプは道連れ世はお酒』第4話「春の会津へ!花より酒と、朝ラーメン⁉︎」

7年間で1000泊以上キャンプをしたキャンプコーディネイター&イラストレーターのこいしゆうかさん。「キャンプ×お酒」をテーマに、日本のいろんな地元を旅しながら地元のお酒と食材を紹介していく連載です。福島・喜多方を訪れたこいしさんは会津の酒を堪能しながら旅館に泊まって……朝ラーメン⁉

 

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25年前の伝説的ゲーム『MYST』、何が凄かったのかサンソフトに聞いた

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25年前の伝説的ゲーム『MYST』、何が凄かったのかサンソフトに聞いた

こんにちは、ジモコロライターのもりれいです。

みなさんは『MYST』という、伝説のゲームソフトを知っていますか? 不思議な島に迷い込んだプレイヤーが、様々な謎を解き明かしていくアドベンチャーゲームです。

20年以上前、その不思議な魅力に取り憑かれた私は、プレイステーション版を何周もクリアしました。

 

 

『MYST』(ミスト)とは…
1993年、アメリカのゲームメーカー・Cyan(サイアン)が制作。サンソフトが全世界の家庭用の権利を取得し、セガサターンやプレイステーションなどでも販売された。

 

このゲーム、とにかくハチャメチャに難解。

 

なんせ一切説明がないので、自分が誰なのか、これから何をしなきゃいけないのか、まったくわかりません。なのに、ゲームの世界には自分以外誰もいないため、ヒントも聞けない。

島には謎や仕掛けがいっぱいで、それがまた意味わからんくらいムズい。

 

だからこそ、自力で謎が解けたときの嬉しさは尋常ではなく、「ミスト島」を彷徨い続けるプレイヤーが続出したんです。

 

そんな『MYST』が今年の9月24日に25周年を迎えるということで、「25周年アニバーサリーコレクション」が発売されるというのです(詳細はこちら

この喜びを分かち合うため、ゲーム好きな担当編集・ギャラクシーに話をしてみました。

 

「ギャラクシーさん、あの伝説のゲーム『MYST』が25周年ですよ!」

「あぁ、『MYST』ね、僕もプレイしたことありますよ。15分で挫折したけど」

「嘘ぉ!? 『MYST』のおもしろさを理解しないまま人生終わるのは、もったいなさすぎます。頑張ってクリアしましょうよ」
「無理。あんな難しいゲーム、絶対クリアできない」
「あぁ、なんとかクリアさせてあげたい……。そうだ、『MYST』を販売したサンソフトさんなら真のおもしろさを教えてくれるはず。そうすればきっとギャラクシーさんでもクリアできますよ。行ってみましょう!」

「ゲームをクリアするために、わざわざ販売元に行くの…?」

 

というわけで、やってきたのは愛知県にあるサン電子株式会社。なんと当時の『MYST』担当さんといっしょにプレイできることになりました。神対応すぎ!

 

サン電子株式会社

ファミコン世代にはおなじみのゲームブランド「サンソフト」の会社。電子機器の製造やスマホアプリの開発なども手掛ける世界的なメーカー。

代表作|いっき(FC)、アトランチスの謎(FC)、歪みの国のアリス(スマホアプリ)など多数

 

こちらが、販売開始当時から『MYST』にかかわっているという清水さん。

さあ、ミスト島の謎を、余すこと無く教えてもらいましょう!

サンソフトさんと『MYST』をプレイ!

「はじめまして。『MYST』は大好きなゲームで、何周もクリアしました! よろしくお願いします!」
「こんにちは、『MYST』は15分で挫折しました。よろしくお願いします」

「話は伺ってます。モニターは用意してますから、さっそくプレイしていきましょうか」

「話、はやっ!」

 

ソフトをセットして、電源を繋いで……っと

 

ドゥ~~~……ン

「ちなみに、前回はどのあたりで挫折したんですか? 最初の島は出ました?」
「島? 最初???」
「なるほどわかりました」
「もうほぼ記憶を失ってますねコレは」
「職員室で説教されてる気分になってきたんだけど」

 

『MYST』の物語は、主人公が不思議な本の中に吸い込まれるところからスタートします

 

気づけばそこは謎の島。何もわからないまま、主人公はこの島を探索し始めます

グラフィックめちゃめちゃキレイだな。歩いてるだけで楽しい」
「そう、23年前とは思えない美麗グラフィック。これも『MYST』の魅力の一つです」

「そこかしこに仕掛けはあれど、目的もゴールも、何の説明もないゲームですね。一体このゲームは何をしたらいいんだ

「自分なりに、主人公はどういう立場で、どうすれば良いと思います?」

「だから、全然わかりませんって」

「あえて! あえて予想するなら?」

「う~ん、そうですね。主人公が吸い込まれた本は、異世界の技術が結集した“時空の門”であり、この島は、地球を管理させるための“適格者”を呼び寄せ、教育する施設なのではないでしょうか。最終的に、他の“適格者”たちと協力し、“管理者”に対して武装蜂起するゲームだと予想してます

めちゃめちゃ考えとるんかい! しかも中二病丸出しの設定を!」
「まあ、的外れな予想ではありましたが……そうやって自論を立てたり、あれこれ推測するのが『MYST』の醍醐味です。ファンの間では未だに考察が重ねられてますからね。あえて説明しないことで、想像の余地を残す美学と言いますか」

 

「今の時代だと『ICO』とか『LIMBO』なんかを経験してるから、説明が少ないゲームというのも理解できなくはないですけどね。当時はそんなゲームあり得なかったから、『なんだこれ?』で放り投げてもおかしくないと思う」

「そうですね。説明や誘導がないっていうのは、販売する立場の我々としても、『はたしてこのゲームの面白さは伝わるんだろうか?』という心配はありましたね」
「言っちゃ何ですけど、よく販売しようと思いましたね」
「すでにアメリカでは話題になって人気があるゲームでしたし、私自身プレイしてみて『これは絶対におもしろい!』という信念があったものですから」
「おもしろいのは間違いないと思います! でも、さわりで諦めちゃう人と、やってみてどハマりする人と、両極端に分かれるゲームですよね」

 

インタビューと並行して、黙々とゲームを進めるギャラクシー

 

「ん? ここってひょっとして、こうできるんじゃ……?? 」

「(ニヤニヤ)」

「(ニヤニヤ)」

 

シーン……

 

「あれ? 何か変化あった? 間違ってたの?」
「何の絵も音もないですが、正解です」
「何の絵も音もないんかい! 僕が15分で挫折した理由、コレです。例えば『ゼルダ』の場合、正解ならピロリロリーン♪って音が鳴るでしょ。『MYST』は正解だったのか間違っていたのかすら判断できないから、先に進んでいいのかわかんない
「制作したCyanは、リアルさにすごくこだわりを持って作ってるんです。だって、現実世界ではピロリロリーン♪なんて言わないですよね?」
「そうですけどぉ……」
「リアリティを追及するがあまり、最初はBGMもなかったそうです。さすがにそれだとゲームらしくないってことで、仕方なく付けたらしいですけど」
「英断」

 

少し離れたところに時計塔のようなものが見える場所にやってきました

 

「あ~、これ時計の針を12時にしたら何か起きるんでしょ」

「どうして12時だと思ったんですか?」
「どうしてと言われても、シンデレラの頃からそうでしょうが」

「ひとつアドバイスすると、『MYST』の謎を根拠なしに解くのはおそらく無理です。また、一箇所だけで謎が解決することは ほぼないです。わからない時はいったん置いて、別の場所にヒントを探しに行くといいですね

「えー! いったん置いといたら、謎がどんどん積みあがって途方にくれちゃいません??」
確かに普通のゲームは、脱出ゲームみたいに謎をひとつ解いたら次の謎へ…それを解いたら次の謎へ……と数珠つなぎ的に解いていくことが多いですよね?」

「『MYST』はむしろ、謎が放射状に広がっていく感じですかね。すべての謎がオープンになっている大規模な脱出ゲームみたいな。ただ、どれがどれのヒントなのかはわからない」

そらむずかしいわ!!

でも、今は脱出ゲームやオープンワールドのゲームが人気だから、『MYST』のゲーム性を面白く感じる人も、当時より増えている気がします

 

「あの~、すでに1時間プレイしてますが、今って進捗どれくらいですか? けっこう進んだと思うんですけど……80%くらい?」
「今日は無理でしょうね、初見だと3日はかかるんじゃないかな」
うォエ!? 取材中には絶対クリアできないじゃん!」
「ですね。でも実は、あるやり方をすると、10分でエンディングまでいけます。答えを知らなければ思いつかないやりかたなんですけど……」
「それ知らなかった! もしかしてその方法って……」
「はい。xxxとxxxをxxxせずに、いきなり×××を×××に×××するとxxxがxxx……」
「うわーすごいこと聞いちゃったー!」
「二人で盛り上がってるとこ悪いんですが、正攻法では本日中のクリアは無理みたいなので、あとは家でプレイします。せっかく付き合って頂いたのに申し訳ありません……」

 

※後日LINEで送られてきた写真。ギャラクシーでもクリアできたようです

 

『MYST』の制作秘話や裏話とは?

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 – 28話「絵本の付加価値」

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【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 – 28話「絵本の付加価値」

<柳田さんと民話・一覧>

28

 

 

<柳田さんと民話・一覧>

 

1話~10話までをまとめ読み

11話~20話までをまとめ読み

 

 

「柳田さんと民話」とは?

ひとり旅を趣味とする男性・柳田久仁夫が、日本各地で地元に伝わる民話を聞き歩く、ユルくておもしろくてためにならない8コママンガです。

 

ジモコロは求人情報サイト「イーアイデム」の提供でお送りしています

「本当は捕まえたくない」増えすぎた奈良の鹿はどうなるのか?

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「本当は捕まえたくない」増えすぎた奈良の鹿はどうなるのか?

こんにちは! ライターの吉川ばんびです。私は今回、奈良県奈良市にある「奈良公園」に来ています。

 

ご存知の方も多いと思いますが、奈良公園付近では、このように至るところに鹿が歩いており……

触れ合ったり、購入した「鹿せんべい」を与えることもできます。

 

人慣れしているので近づいても逃げませんし、鹿の方から近寄ってきて「食べ物ちょうだい」とアピールをしてくることも。

 

「何か手に持ってる?」

「持ってないよ、ゴメンね」

 

つぶらなお目目が可愛い

 

よく見ると鼻ちょうちんが!

 

そんな「奈良市の鹿」ですが、実は国が指定する天然記念物であることを知っていましたか?

 

奈良には「神様が鹿に乗って平城京にやってきた」という伝説があり、古くから鹿は『神鹿』としてあがめられてきたのです。

 

そのため、奈良市にいる鹿は野生であるにもかかわらず、人間によって保護されているのです。ちなみに、野生の鹿が街中で人間と共存するのは、世界中で奈良市だけなんだとか! なるほど、奈良に外国人観光客が多く訪れるのも納得です。

 

しかし昨年、奈良県によって、とある重大な決定がなされたのをご存知でしょうか。

その決定とは「奈良市の鹿を捕獲・殺処分する」というもの。

 

ええ〜〜〜奈良市の鹿は天然記念物で、神様の使いだから保護されてるんじゃないの……!? どうして殺処分されてしまうの!?

 

……と疑問に思ったため調べてみると、どうやら「鹿による農作物の被害」 が深刻化していることが原因だそうなのです。

 

平成26年のデータによると、鹿による奈良県全体の農作物の被害金額は5,374万円にも上ります。

※参照:「野生鳥獣による都道府県別農作物被害状況」(平成26年度) 

 

農作物を荒らされてしまった農家の方にも十分な補償金が出ておらず、野菜や米を作っても赤字になってしまう事態がかれこれ何十年も続いている、というのが現状です。

 

この「奈良市の鹿の殺処分」についてはインターネットやSNSでも話題にのぼり、

「今まで保護してきたのに、突然殺処分するなんてかわいそう」

「殺処分以外に選択肢はないの?」

など、様々な意見が見られました。

 

これに関しては私も思うところがあって、鹿の捕獲・殺処分が決定した昨年から「モヤモヤ〜モヤモヤ〜」としていました。

 

そこで、

実際に奈良市の鹿問題を詳しく知る人は、どう思っているのか?

を知るべく、鹿の捕獲を担当することになっている「奈良県猟友会」の方々にお話を伺うことにしました。

 

鹿による被害の範囲は?

やって来たのは、奈良駅からバスを乗り継いで30分ほどの興隆寺(こうりゅうじ)町。バス停で、誰かが作った雪だるまが出迎えてくれました。

 

前日に降った雪が残っており、山に続く道には、数種類の獣の足跡が見られます。鹿……いやタヌキ……猫かな……?

 

今回お話を伺うのは、奈良県猟友会・奈良支部長の西川博史さん

他にも猟友会の仲間が集まってくださっているとのことで、急いで部屋に入ります。

 

「お邪魔しま……」ガラガラ

 

 

あっ、コレ駄目なやつだ……。

 

すみません今日帰っていいですか? ダメ?

これだけ人がいるのに、笑ってる人が一人もいない現場ってあります?

 

……早速めちゃめちゃ帰りたいですが、この重い空気を打破するのも、ライターとしての力量が試されるところなのかもしれません。

困ったときは、とりあえず大きい声を出しておきましょう。

 

「本日はお集まりいただきありがとうございます、よろしくお願いします!!!」

 

「……………」

 

「(ああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)」

 

完全に萎縮。

 

「ま、まず、今回の捕獲処分の背景には『深刻な農作物の被害』があると伺ったのですが、被害はいつ頃から起きていたのでしょうか……?」

猟友会の方が語る深刻な鹿被害とは?

山口県を見ると無性に尻を入れたくなるらしい

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山口県を見ると無性に尻を入れたくなるらしい

 

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都道府県マスター潤|一覧

 

 

 

 

 

みなさん都道府県にちは!潤です!

 

 

 

前の記事からだいぶ時が立ちましたがまたやってまいりました

お久しぶりの都道府県マスター潤です!

 

 

 

さて今回紹介したい県はこちら!

 

 

 

 

 

 

皆様は山口県のこちらの説をご存知でしょうか

 

 

 

 

 

 

 

そんなバカなとお思いの方もいることでしょう

かくいうわたしもそう思っていたのです

 

 

 

しかしご覧ください

 

 

……

 

 

 

 

ス…

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

ピョン

 

 

 

 

 

 

 

 

くる

 

 

 

 

 

 

こういうわけなのです

 

 

オホホホホホ!何をバカ言ってるざますか!

 

 

 

 

 

 

ほら、どうってことないざます

 

 

 

そんなことより早く下関でふぐ料理でもいただきたいざます

山口に尻を入れてる場合じゃないざます

 

 

 

でもちょっとだけこっち向くざます

 

 

 

ちょっとだけ向いただけざます

 

 

 

 

しゃがむざます

 

 

 

ピョンざます

 

 

 

ズボ

 

 

 

 

 

皆があまりにも山口のそこに尻を入れたがるので県は対応せざるを得なくなった

 

 

 

 

 

入れさせてくれよ~ 山口に尻を入れさせてくれよ~

 

 

 

 

 

 

ダメ!帰りなさい!

 

 

 

うるせぇなー!入れさせてくれよー!

 

 

 

 

 

 

やめんかー!!!

 

 

 

 

 

 

入れさせろー!

 

 

 

バカものーー!!!!

 

 

 

 

 

 

オラーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

まだまだーーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、あなたは!

 

 

 

山口が生んだスーパースター 伊藤博文

 

 

 

わしの尻も入れられんのかね

 

 

 

そ、それは…

 

 

 

わしの尻入れよう見ちょけ!

 

 

 

これが初代総理大臣の…!!!山口尻入れ…!!!

 

 

 

 

 

 

おみそれいたしました…

 

 

 

……え?

 

 

 

さらに奥へ!!?

 

 

 

伊藤先生!!

 

 

 

ああ!

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エ…………

 

 

エスパー伊藤博文じゃねえか

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさい

 

 

(おしまい)

 

都道府県マスター潤|一覧

「大阪はツッコミ文化で個性が育つ」カジカジ編集長が語る関西ファッションカルチャーの謎

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「大阪はツッコミ文化で個性が育つ」カジカジ編集長が語る関西ファッションカルチャーの謎

ジモコロをご覧の皆さん、はじめまして。ライターの長橋です。本日は、大阪のアメリカ村からお伝えいたします。

 

なぜ僕が大阪に来ているのかというと、大阪のファッション文化を調査するため。

かなり勝手なイメージではありますが、大阪のファッションってかなり独特ですよね。

 

よくイメージに持ち上げられる「ヒョウ柄の服を着たおばちゃん」然り、派手な服装の人が多いようにも思えます。

 

とはいえ、実際に大阪に住んでいるオシャレな人は、どんな格好をしているのでしょうか?

 

先日なぜかそのことが気になってインターネット上で調べてみたのですが、世のファッションサイトは“東京の情報”を届けていることが大半のようで、大阪のファッション情報があまり出てこないのです。

 

そう考えてみると、大阪のファッションカルチャーは他の都道府県に比べると独自の進化を遂げているのではないでしょうか。ヒョウ柄の服を着るおばちゃんが大量発生するとか、大阪以外は絶対ないはず。

 

大阪のファッションカルチャー気になる。めっちゃ、気になる。

 

大阪のストリートで調査してみた

ということで、実際に調べにやってきてしまいました。新幹線に乗って、日帰りで。

 

到着し、気ままに大阪の街を歩いていると、運良く(マジで運良く)オシャレな皆さんにめぐり合うことが出来たので、以下で伺ったお話を紹介します。

 

堀江にある古着屋「MIXED BAG」のスタッフさんたち

 

「すみません、お兄さんのヒゲはダリを真似しているんですか?」

「いえ、これはインカアジサシという鳥のヒゲがモチーフです」

(さすが大阪人、初対面でボケをかまして来た……)いやでもお二人とも、色物や特徴的なアイテムを使っていて、いかにも『大阪の古着屋さん!』って感じのファッションですね…! やっぱり東京に比べたらちょっと派手なのかも」

「それ褒めてます? で、何の用でしょう」

「あの、関西のオシャレな皆さんはどんな雑誌を参考にしているかを聞きたくて」

「そうですね、やっぱりカジカジです」

「僕ももちろん、カジカジですよ。もう20年くらい読み続けていますね」

「(……?)」

 

堀江のセレクトショップ「THE GROUND depot.」のスタッフさん。着ている服は「nonnative(ノンネイティブ)」の新作だそう

「店内もお兄さんもオシャレでカッコイイですね…。ちなみになんですけど、ファッション雑誌って、どんな雑誌を読んでらっしゃいますか? お兄さんほどかっこいい人が、どんな雑誌を読んでいるのか気になって」

「やっぱりカジカジですよ。ずっと僕らのバイブルです」

「(……??!!)」

 

中崎町のセブンイレブンで出会ったオシャレな若者たち。写真/ようすけさん(古着屋JAMスタッフ)、写真右/たくみさん(学生)

 

「かっこいいお兄さんたち、よく読む雑誌とかってありま…」

「やっぱりカジカジですね。カジカジがなかったら、今の僕はなかったと思います」

「僕もカジカジ以外のファッション雑誌は読まないです」

「(……????!!!!)」

 

カジカジって、何?

 

なんなのだろう、さっきから出てくる「カジカジ」というワードは。街のオシャレな人に話を聞くと、僕が知っていることを当然のように皆「カジカジ」という雑誌を挙げてくる。あと「やっぱり」って言い過ぎじゃない?

 

あまりに気になるので近くのコンビニに入ってみると、確かにあった。これが「カジカジ」か!

どうやら隔月で発行されている関西圏のファッション雑誌らしい

 

オシャレな人はみんな「カジカジ」を読んでいることはわかったが、ちょっと全員が全員、読みすぎじゃないだろうか?

 

というか大阪には「ファッション雑誌を読む」という文化がちゃんと残っているということも衝撃だ。
Zipper」や「CHOKi CHOKi」など一時代を築いたファッション雑誌が休刊し、「ファッション雑誌は明るい未来がない」と言われている昨今だが、大阪はどうやらそうではないらしい。

 

何より、「カジカジ」という雑誌が大阪ファッションを牛耳っていると言っても、過言ではないのではないか。

 

ということを思っているだけでは仕方ないので、「もういっそのこと行ってしまえ!」とカジカジ編集部に実態を聞いてきました。

 

カジカジはInstagramのはしりだった?

今回お話を聞いたのは、カジカジの編集長・羯磨(かつま)さん。珍しい名字。

 

「今日は関西のファッション文化と『カジカジ』がローカルに根付いた雑誌として人気を誇っているワケについてもお聞きしたいんですが……というか羯磨さん、お顔がめっちゃ怖いんですけど、怒ってますか……?」

「いえいえ、全然怒ってないですよ。9歳の頃からこんな顔です

「(9歳の時になにがあったんだろう)でははじめにお聞きしたいのですが、関西の人、皆さんカジカジ読み過ぎじゃないですか? ひょっとしてサクラ仕込んでました?

「いやいや、たまたまですよ(笑)。でもおかげさまで、関西圏ではすごく愛していただいてますね」

「たまたまでそんなに読まれてます? そもそもカジカジって、どのくらい続いている雑誌なんですか?」

1994年の秋頃に創刊をしたので、今は24年目になりますね。当時は関西エリアを中心に取り上げるファッション誌はなくて。たぶん全国的に見ても、ローカルに絞ったファッション誌はカジカジが初めてだと思います」

 

「カジカジ」の記念すべき創刊号

「おお、時代を感じる表紙! でも『アメリカ村がスキになる!!』や『みんなのスタイル満載!!』は今でも普通にありそうなキャッチコピーですね」

「基本的にはカジカジって、創刊号から最新号に至るまでの24年間、雑誌をつかさどる大きなテーマは変えていないんです。それがカジカジの売りの一つでもあるかもしれません」

「大きなテーマとは……?」

実際に街にいる人を紹介する、というところです。例えば雑誌の表紙も含め、誌面に登場するモデルさんは基本的にプロの人ではなくて、街にいる人なんです」

 

創刊号から続いている「街の眼」では、一般の方のスナップ写真を掲載している

 

「街にいる学生さんとか、古着屋のスタッフさんなどに直接声をかけてお願いをしているんです。これはなぜかというと、モデルや俳優などのプロを使ってしまうと読者にとって親しみがあんまり無いからで……

「親しみがない? どういうことでしょうか」

「プロの方ばかり誌面に載っていたら、それは一般的なファッション雑誌と同じになってしまいますよね。もちろんモデルさんに出ていただいた方が誌面に彩りが出ると思うのですが、それでは“関西の今”は伝えられません。街での流行りもわからないし、ローカルでやる意味もなくなります」

「確かに、それだと東京の雑誌と変わらないですもんね」

「はい。また、プロは読者にとっていわゆる“高嶺の花”。ゆえに憧れというよりも、少し“壁”ができてしまうんじゃないかと思っていて。手の届かない存在を紹介しても、読者は簡単に真似をすることはできません。ローカルファッション誌なのに、親近感がなくなるんですよ」

「なるほど! だから読者が真似をしやすい、同じ立場の人を載せていると」

「そうですね。誌面には友達が載っている場合もあれば、よく行くショップの店員さんが載っていることもあるかもしれません」

「なんかInstagram(以下、インスタ)とかでよく見るインフルエンサーに似てるなって思いました。10代の憧れる対象が芸能人から、より身近なインスタの有名人(隣の学校の可愛い子、くらい)に移ってるって話を最近聞きまして。カジカジはインスタの走りだったのかもしれない!

「そうかもしれませんね(笑)。ただまあ、それはローカルだからこそ、できることなんですよ。特に半年に一度の“スタコレ(スタイルコレクション)”という特集では、400人ほどの読者が出ていまして」

「400人もいたら『この人の格好、真似してみたいな』と思う人もいるでしょうね……。しかもその辺にいる人だから、親近感もあって真似しやすい」

「またもう一つ。これは僕の一意見ですが、ファッションに興味を持つのって、“モテたい”という意識から入る方が多いのかなと思っていて。ただ、うちではその要素は極力入れないようにしているんです。『春のモテファッション!みたいな特集って組まないんですよ」

「え……?」

「ファッションって、異性にモテたいから頑張るものなんじゃないんですか?」

「長橋さん、それは偏見です」

「失礼しました」

「ファッションへの興味の最初の入り口は、“モテ”でも、“憧れの芸能人が着ているから”でも、なんでも良いと思うのですが、その興味を突き詰めていくと、最終的にはモテるのが目的ではなくなって、“ファッションが好き”になっていくのではないかと思うんです

「ふむふむ」

「ただ誌面がいつまでも“モテ”を意識していては、モテを通り越してファッションが好きになった人が別の雑誌に移ってしまいますよね。それだけが理由というわけではないですが、カジカジはトレンドを追いかけるばかりではなく、“ファッションが本当に好きな人向け”に記事の構成をしています

「世の中のファッション誌が、すべてモテを意識しているわけではないんですね……」


「『変わらない』ことは『新しさがない』と受け取られるかもしれませんが、ファッションが好きな層からはある程度支持を受けているのかなと」

「ああ、どうりで街で話したカジカジ読者のみなさんは『自分の好きなファッション』をしてた感じがしますね」

 

カジカジの誌面に出てくる“街の人”は、なぜかヒゲとロン毛が多いという。羯磨さん曰く「これも関西ファッションらしさ」とのこと。

 

関西のファッションは、なんで派手な人が多いの?

「関西のファッションって、勝手なイメージですが『派手』という印象があるんです。いわゆる『大阪のおばちゃん』とか」

「インターネットの台頭によって情報の伝達が均等になってきていて、昔よりも各地域のファッション性がフラットになってはきていると思います。ただ、やはり“色物”や“柄もの”をコーディネートに取り入れる方は今でも多いかもしれませんね」

「なぜなんでしょう?」

「たぶんですけど、周りの人と一緒の服を着たいと思う人が少ない土地柄なんでしょうね。長橋さん、関西といえば、パッと何が思いつきますか?」

「えっと、お笑い……ですかね」

「そうです、そうです。関西の人って、やっぱり“お笑いの文化”が強いんですよ。で、言うなれば、ボケとツッコミの文化です。要するに派手な洋服を着て、友人に『それどこの?』って聞かれて『どこどこのブランド』って言いたいんですよ。個性を出したいというか

「派手な洋服というツッコミどころを作るということですか?」

「ギャグというわけではなく、あくまで個性を出すということですよ。そういう意味では“古着”なんかは一点ものであるので、人と違うものを着ることができますよね。関西に古着屋が多く、根強い人気を誇っているのはそういう理由があるかもしれません。あくまで持論ですけど」

「言われてみると『何すかそれ?』と聞きたくなる人が多かったような」

「あとは『東京の人のように似通ったファッションをしたくない!』といった反骨精神もあるのかも」

「羯磨さんも実は僕を見て『この東京人には負けねえ』って思ってます?」

 

「………………」

「………………」

 

「いやいや、思ってないですよ(笑)」

「なんで無駄に溜めたんですか」

「東京と関西の違いで言うと、関西では古着やストリート・アメカジブランドが20年ほどずっと人気ですね。一時期東京で流行っていた“細身の洋服”などは、着ると周囲からイジられていたこともありましたよ」

「モード系はあまり好まれないと」

「個性が出しづらいんでしょうね。全身黒い服だと、見た目も目立ちませんし(笑)」

「やはり目立つのが重要なのか……!」

 

ファッション雑誌って、今後どうなるなの?

「先ほど『関西はファッション好きが多い』というお話がありましたが、羯磨さんから見て、ファッションを好きな人って減っている傾向にあるのでしょうか。東京だと様々な雑誌が休刊をしていますし……」

SNSやインターネットの発達によって多種多様の世の中になっているので、そういう意味では減っているのかもしれません。安くて良いものを選べるようになっている時代ですし。ただ、関東に比べるとそこまで減っていないかもしれません。トレンドを追いかけている人も、東京よりも少ないと思いますし」

「というと、紙媒体の不況と言われる昨今でも、カジカジはそこまで部数は落ちていないのでしょうか」

「いえ、全然そんなことはないですよ。正直な話、採算が合わない号はどうしても出てきますそれは仕方ないことだと思う反面、仕方ないでは片付けてはいけないと思っていて。カジカジは『カジカジなりのやり方』で工夫をしています」

「例えばどんな?」

「ひとつは、2015年の秋から毎月の版行から隔月の版行に変更したんです。今まで1ヶ月周期で作っていた企画が2ヶ月になることでより濃い内容を作ることができますし、また2ヶ月の間書店やコンビニに置かれるんですよ。そうすると必然的に売り上げが良くなると」

「また、Web媒体も展開していて『comepass』というメディアを早くから立ち上げています。紙媒体と同じネタではなく、新店のオープンなど速報性の高い情報を出したり、スマートフォンで読めるような短い記事を出したりと、Webでしかできないことをして間口を広げていますね。あと最近、関西以外のファッション誌も展開してます

「関西以外……?」

「札幌、名古屋、福岡と、その地域に絞ったファッション誌を年1回ペースでのムック本として作っているんです。あくまでこれは地元の人向け。というのも、地方ってどうしてもファッションに特化した雑誌がないんですよ。住んでいても『こんな店があるんだ』という発見にも繋がるのかなと思っていまして」

「地元の人は嬉しいですね!」

 

ローカルで今何が流行っているのかが一目でわかる。観光にも使えます!

 

「カジカジ」が考える次の展開

「最後に、カジカジはどのように未来を見据えているのかを聞いても良いでしょうか」

「最近感じるのは、20年前にカジカジを読んでいた世代が親になって、その子供たちがファッションを好きになっていることです。 “ファッションの流行は20年周期”みたいな言葉がありますが、本当にその通りで最近の若者には“90’sのスタイル”が流行っています」

 

20年前の“街の目”。確かに今見ると新鮮な気持ちで見ることができる

「子供からすると、タンスに入っていたお父さんが若かりし頃に着ていた洋服がかなりオシャレに見えたりするのかも」

「はい。このように業界は盛り上がっているところもあるので、ファッション誌不況と言われていても、そこまで不安には思っていません。ただ、手放しで食っていける感じではないんで、新しいことは考えてはいます。例えば、今借りているスタジオをお店にしようかなとか。出版社が店をやるのって、なかなかないのかなと思っていて」

「会いにいける雑誌ですね!面白い」

「そうですね(笑)。また、カジカジに出ている皆さんは若者から40代くらいまで幅広いのですが、近頃は意識的にスナップには10代〜20代前半の若い子たちを載せています。なぜかというと、下を意識しないと未来がないので。おじさんの雑誌という印象は植え付けたくないですからね」

「なるほど、若者を取り込むのは大事ですね」

「ただ、真似をしたいと思わせるスタイルって、おじさんでも20代でも、読者によって変わると思うんです。だからこれからも、『カジカジらしさ』を大幅に変えることはしないと思います」

「ちなみにカジカジって、東京でも購入できるのでしょうか」

「はい。大型書店さんであれば置いてありますよ。人と被るのがイヤ、という東京の方に、ぜひ一度読んでいただきたいですね

「この記事を入り口に、カジカジに興味を持ってくれる人がいたら僕もうれしいです。本日はありがとうございました!」

「また関西に遊びに来てくださいね」

 

おわりに

いかがでしたか? 街の人みんなの愛読書が「カジカジ」だった理由、理解いただけたのではと思います。

 

関西の人のバイブルである「カジカジ」。あくまで街の人を追いかけ、トレンドを追わない。20年以上続けてこられたのは、そういう姿勢を貫いてきたこともあるのだと思います。

 

羯磨さんはインタビュー中に「Instagramなどで街の写真をアップする人もいますけど、うちは20年前から街を見てますからね(笑)。まだまだ負けませんよ」と話していました。

 

新しいWebの情報だけに頼るのではなく、たまには紙の雑誌も読んでみると新しい発見があるかもしれませんよ。面白い雑誌は、世の中にたくさんあるんです。皆さんも見つけてみてはいかがでしょうか。

 

没後70年―太宰治を巡る東京観光と、小説のモデルになった女性

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没後70年―太宰治を巡る東京観光と、小説のモデルになった女性

文豪ストレイドッグス(1) (角川コミックス・エース)

今、「文豪」が静かなブームになっていることをご存知でしょうか。

文豪たちをモチーフにしたコミック「文豪ストレイドッグス」は、シリーズ累計500万部を突破。他にも「文豪失格」「月に吠えらんねえ」「文豪とアルケミスト」など、文豪を題材にしたコンテンツが続々大ヒット中なんです。

 

申し遅れました、ライターのコエヌマカズユキと申します。新宿で文壇バーの店主をしているくらい本好きです。

 

皆さんは文豪と聞くと、誰を思い浮かべますか? 夏目漱石、芥川龍之介、森鴎外、梶井基次郎などたくさんいますが、この人を忘れてはいけません。そう、太宰治(1909~1948年)です。

 

有名な作品には「斜陽」「津軽」「ヴィヨンの妻」「走れメロス」、そして「人間失格」などがあります。

 

人間失格 (新潮文庫 (た-2-5)) 人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))

 

作家として多くの功績を残した一方で、私生活ではこんな人間臭いエピソードが残っています。

太宰治・人間臭すぎep1

熱海にいた太宰のところへ、作家・檀一雄が遊びに来た。二人は豪遊し、お金を使い果たしてしまう。仕方なく、太宰は檀を宿に残し、お金を取りに東京へ戻った。しかし、いつまで経っても戻ってこない。檀が宿の人と一緒に東京に戻り、太宰を探すと、作家・井伏鱒二の家で、のん気に将棋を指す太宰の姿があった。

 

太宰治・人間臭すぎep2

太宰がある場所で酒を飲んでいると、年よりの文学者3人が入ってきた。彼らは知り合いでもないのに太宰を取り囲み、作品の悪口を言い始める。笑って聞き流していた太宰だが、家に帰ってご飯を食べていると、悔しくて嗚咽が出て、茶碗も箸も手放しおいおい泣いてしまった。女房は呆れ顔で太宰を寝床に連れて行ったが、嗚咽はなかなか止まらなかったという。

 

太宰治・人間臭すぎep3

小説「逆行」が第1回芥川賞の候補になった太宰。しかし落選してしまい、選考員だった川端康成に対し「刺す」「大悪党」など過激な文章を発表する。一方で、同賞の選考委員であった佐藤春夫に対し、「芥川賞をもらへば、私は人の情で泣くでせう」「こんどの芥川賞も私のまへを素通りするようでございましたなら、私は再び五里霧中にさまよはなければなりません」「見殺しにしないで下さい」など、受賞を懇願する手紙を出していた。

 

孤高の文学者というだけでなく、こういった人間臭いエピソードを知ると、ますます彼の魅力にはまってしまう……というわけで、ファンの方々は今でも毎年6月19日に「桜桃忌」と呼ばれる追悼イベントを行っています。

 

今回は桜桃忌に合わせ、太宰の人物像や魅力により迫るべく、東京にある、ゆかりのスポットを巡ってきました。小説のモデルになった女性にもインタビューできたのでお楽しみに!

 

太宰治を巡る東京観光|三鷹

まず向かったのは三鷹市・三鷹駅。

青森で生まれた太宰治は、1939年(昭和14年)9月から、亡くなる1948年(昭和23年)6月まで三鷹で暮らしていました。

「ヴィヨンの妻」「桜桃」など同地を舞台にした作品も複数あり、ゆかりのスポットもたくさん残っています。その中から、現存する場所を中心に紹介していきます。

 

①太宰治のお墓がある「禅林寺」

駅から10分ほど歩いたところにある禅林寺に、太宰治(本名は津島修治)のお墓があります。桜桃忌もこのお寺で行われ、毎年たくさんのファンが訪れます。

 

ちなみにすぐ近くには、文豪・森鴎外のお墓があります。

太宰は短編『花吹雪』の中で、「この寺の裏には、森鴎外の墓がある(中略)私の汚い骨も、こんな小綺麗な墓地の片隅に埋められたら、死後の救いがあるかも知れないと、ひそかに甘い空想をした日も無いではなかったが、今はもう、気持ちが畏縮してしまって、そんな空想など雲散霧消した」と書いています。それを受け、夫人がこの場所にお墓を建てたのだとか。

 

禅林寺

住所:東京都三鷹市下連雀4-18-20
墓地の開門時間:8時から日没まで

 

②太宰治が入水した玉川上水

太宰が愛人の山崎富榮さんと入水し、そのまま最期を迎えたのが玉川上水です。

小説「乞食学生」にも登場しますね。川べりには、その一文が刻まれたレリーフがあります。

 

近くには、太宰の故郷である青森産の玉鹿石(ぎょっかせき)が、石碑としてまつられています。太宰が入水したのはこのあたりだと言われているのです。

 

今は水が浅く、流れも緩やかですが、当時は自殺の名所として知られた急流だったようです。

 

ちなみに6月19日の桜桃忌が、太宰の命日だと思われがちですが、実は命日は6月13日です。19日は遺体が発見された日であり、誕生日でもあることから、桜桃忌が開かれ、浸透していきました。

 

玉鹿石

住所:東京都三鷹市下連雀3-3-50 

 

③太宰が通っていた「太宰横丁」

太宰の行きつけだった小料理屋・喜久屋があった飲食店街です。

横町の名前は、太宰が通っていたため付けられたのだとか。お酒好きだった太宰は、ここを毎日のように千鳥足で通ったのでしょうね。

 

 

太宰横丁

住所:下連雀3-27-8 ムサシ三鷹ビルの東側の通り

 

④貴重な資料が見られる!太宰治文学サロン

「太宰治文学サロン」では、年表や資料、直筆原稿の複製や初版本などが展示されているほか、企画展も定期的に開催しています。

実はこの場所は、太宰が通っていた酒屋・伊勢元の跡地。まさに太宰ゆかりのスポットなのです。

 

せっかくなので、学芸員の吉永麻美さんにいくつか質問をしてきました。

 

太宰作品の魅力や、時代を超えて共感を集める理由は何でしょう」

「まず、作品に”古さ”を感じないこと。それは、太宰が生み出した独特の語りかける文体によるものでもあります。また、時代を超えて人々が抱える普遍的な苦悩、喜びなどが表現されていることが、読者の共感を得る要素となっているのではないでしょうか」

「最近ではマンガやゲームなどを入り口に、太宰治のファンが増えています。そういった状況に関してはどう思いますか?」

若い読者の入り口としては、最高のツールだと思います。マンガやゲームで興味を持ったら、ぜひ実際の太宰治の人となりや、作品の素晴らしさにも目を向けて欲しいですね」

「では、初心者にもおすすめの太宰治作品を教えてください」

「太宰治と聞くと、ほとんどの人が『人間失格』や『斜陽』など、晩年の作品を手に取るでしょう。ところが、中学校の教科書で『走れメロス』を読んでから、年を経て晩年の作品に入ると、必ずと言っていいほどギャップに驚いて、アレルギーになってしまう場合があるんです」

斜陽 (新潮文庫) 斜陽 (新潮文庫) 走れメロス 走れメロス

「確かに……僕も、あの『メロス』の作者が、こんな暗くて悲しい話を書くの?って驚きました」

「けれど昭和13年以降に発表された中期の三鷹時代の作品は、妻を得て、子どもにも恵まれ、家庭人となった太宰の、明るい作品が多くあります。『富嶽百景』『東京八景』などですね」

「熱烈な太宰の読者からも、末永く愛されている作品ですね」

「太宰作品は、太宰の人生に重ねながら、年代ごとに順を追って読むと、彼の人生を理解しやすいのではないでしょうか」

 

太宰治 名作ベストセレクション『走れメロス』『富嶽百景』『人間失格』『斜陽』『ヴィヨンの妻』『グッド・バイ』など 太宰治 名作ベストセレクション『走れメロス』『富嶽百景』『人間失格』『斜陽』『ヴィヨンの妻』『グッド・バイ』など

 

太宰治文学サロン

住所:三鷹市下連雀3-16-14 グランジャルダン三鷹1F
電話:0422-26-9150
営業時間:10時~17時30分
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日と翌々日)、年末年始

 

太宰治を巡る東京観光|国分寺・浅草・銀座

⑤行きつけだったうなぎ屋「若松屋」

三鷹から国分寺へ移動し、向かったのは若松屋という うなぎ屋。

太宰は仕事を終えた後や、編集者との打ち合わせに、当時は屋台だった若松屋を、よく使ったそうです。元々は三鷹にあり、現在は国分寺で営業しています。

 

若松屋

住所:東京都国分寺市東元町2-13-19
電話:042-325-5647
営業時間:17時~22時
定休日:水曜日・第3火曜日

 

⑥電気ブランが名物「神谷バー」

東京をほぼ横断して、続いては浅草の神谷バーへ。

ここは日本で最初にできたと言われているバーで、電気ブランというお酒が有名です。太宰の小説『人間失格』にも、「酔いの早く発するのは、電気ブランの右に出るものはない」と書かれています。

 

ちなみに電気ブランの通な飲み方は、割りものなしのストレートで、ビールをチェイサー(口直しの水)にするというもの。電気ブランはアルコールが30~40度もあるので、お酒に強くない人は気を付けて!

 

神谷バー

住所:東京都台東区浅草1-1-1
電話:03-3841-5400
営業時間:11時30分~22時 
定休日:火曜日

 

⑦文豪たちが通った文壇バー「ルパン」

銀座で1928年から営業している、歴史ある文壇バー・ルパン

永井荷風・直木三十五・武田麟太郎・川端康成・大佛次郎・林芙美子といったそうそうたる文豪も通っていたそうです。

 

太宰治も、同じく無頼派作家と言われる織田作之助、坂口安吾とよく訪れていたそうで、有名なあの写真(上記画像参照)も、ここで写真家の林忠彦氏により撮影されました。

林氏が織田作之助を撮影していると、酔っ払った太宰から「俺も撮れ」と言われ、例の写真が誕生したというエピソードがあります。

 

太宰と同じ場所、同じポーズで写真を撮りたいというお客さんは多いようで、撮影していると、お店の方が「もっと右足を前にしたほうが良いよ!」などアドバイスをくれました。

 

ルパン

住所:東京都中央区銀座5-5-11 塚本不動産ビル地階
電話:03-3571-0750
営業時間:17時~23時30分
定休日:日曜日・月曜日

太宰治を巡る東京観光|新宿

⑧ママは太宰の小説のモデル「風紋」

最後は新宿のバー風紋へ。お店の開店は1961年で、57年もの歴史があります。

ママの林聖子さんは、太宰治と親交があった方。小説『メリィクリスマス』に登場する少女・シヅエ子のモデルでもあります。

 

歴史の証人であるママに、太宰さんとの思い出話を聞きました。

 

変わった歩き方をしている人が太宰治だった

「聖子ママは太宰治さんと親交があったそうですね。出会いはいつだったんですか?」

「小学校6年生のときです。両親が離婚して、私は父と暮らしていたのですが、高円寺に住む母のところへよく遊びに行っていました。母は絵描きを志していて、太宰さんと知り合いだったんです」

「初めて太宰さんに会ったときのことを覚えていますか?」

「私が母の家へ行こうとして歩いていると、踏切の向こうから、前へつんのめるように歩いていらっしゃる男の人がいて、『あ、この人……母が言っていた太宰さんだ』って」

「え、それまでは一度もお会いしたことがなかったんですよね? なぜ“この人だ”と思ったんですか?」

「母がスケッチブックに、太宰さんはこういう顔の人よ、ってよく描いて見せてくれていたんです。だからわかったのね」

「お母さん、絵描きを志してただけあって、メチャメチャ絵がうまかったんですね。その時は、『太宰さんですか?』って声をかけた?」

「いえいえ、確信はあったんですが、会ったこともない男の人だし、私も子供でしたからね。声をかけずに、私は本屋に寄ったんだったかな? そのあと母の家に行ったら、玄関に、さっきの男性(太宰治)がしゃがんでた。下駄の前歯が取れちゃったようで、金づちで叩いて直していました」

「だから前へつんのめるような歩き方をしていたんですね。初めて会った太宰さんはどういう印象でした?」

「もう最初の会話は憶えていませんけど、静かで大きくて(太宰の身長は当時としては高い175cm)……今まで見たことがないタイプの男性だなと。太宰さんは、ひっきりなしにタバコを吸っていましたね」

 

「太宰さんとは、どんなお話をしたんでしょう?」

「夏休みに父のお供で、中禅寺湖に行ってたんです。そのことを母に話していると、太宰さんはそばで静かに聞いていました。それからも母のところへ遊びに行くと、太宰さんはよく来ていましたね」

「何をしに来ていたんですか?」

「遊びに来ていたのでしょうね。あと当時はお酒が配給制でしたから、それを楽しみにしていたようです。母は自分では飲まないので、太宰さんは母に配られたお酒を、ニコニコしながら召し上がってました」

「お酒好きの太宰さんらしいエピソードですね。ちなみに聖子ママはそれまでに太宰さんの小説は読んでいたのですか?」

「母が、これ面白いわよって本を貸してくれたんです。『御伽草子』ですね。電車の中で読んだんですが、面白いものだからついニヤニヤしたり、ウフフって声出して笑っちゃったりして、恥ずかしかったわ。それから、太宰さんの本はかなり読みましたね」

「学芸員さんもおっしゃっていましたが、太宰さんの作品は暗いと思われがちですが、ユーモラスなものもたくさんありますよね」

 

戦後、偶然に再会

「それからは太宰さんと どのようなお付き合いを?」

「戦争で一時、母の実家がある岡山県に疎開していたんです。落ち着いてきたので東京に戻って、三鷹に住み始めました。そうしたら、駅前の本屋で太宰さんを見かけたの」

「それは偶然ですよね? で『太宰さんじゃない?』って感じで声をかけたと」

「いえ、声をかけられなくて立ち尽くしてました。だって私は17歳になってたし、小学6年生の時と比べたら、見た目が変わってるわけです。『誰?』って言われるかもと思って迷っていたら、太宰さんが気づいてくれましてね。『聖子ちゃん!?』って」

「それはうれしいですね。太宰さんも三鷹に住んでいたから、よく顔を合わせるようになったんでしょうか」

「はい。太宰さんはよく若松屋(屋台のうなぎ屋)に居てね。屋台って、普通は店主が中にいて、お客さんは反対に座るでしょ? でも、太宰さんは中に座って、通る人を観察していたわけね」

「へぇ! 小説の材料にしようとしていたのかもしれないですね」

「私がその前を通ると、『聖子ちゃん!』って呼ばれて。『ここは関所だから素通りはできない』って、一緒にうなぎを食べたりしました」

気さくな方だったのですね。ああいう作風の方だから、気難しい人だったのかな?と思っていましたが」

「仕事中はものすごく集中なさるんですけど、飲んでいるときは、すごく周りに気を使って、人をもてなす精神が旺盛な人ですね。太宰さんを作家として尊敬していましたが、私にとっては、話し上手で楽しいおじさんでした」

 

文豪からのクリスマスプレゼント

「ところでママは、太宰さんの紹介で新潮社(出版社)に入社したとか」

「はい。その前は事務員をしていたんですが、私はそろばんが苦手で(笑)。いつも数字の計算を間違ってたんです。向いてないな、と思ってたときに、太宰さんに紹介されて新潮社へ入りました」

「本当にかわいがられていたのですね。小説『メリィクリスマス』のモデルになったときの気持ちはどうでしたか?」

 

メリィクリスマス

津軽から東京に戻った主人公の笠井は、書店で偶然シズエ子に会う。シズエ子は、笠井にとって”唯一のひと”であった女性の娘。5年ぶりに再会し、大人になったシズエ子への淡い気持ちと、その母への思いが描かれた作品。

メリイクリスマス (青空文庫POD(ポケット版)) メリイクリスマス (青空文庫POD(ポケット版))

 

「太宰さんがうちへいらして、懐から中央公論の新年号を出して、『これ、あなたたちにクリスマスプレゼント』ってくれたんです。その場で母と二人で読みました」

「うわ、それはとんでもなく貴重なプレゼントですね。やっぱり嬉しかったですか?」

「嬉しいとかは、特にありませんでしたね(笑)」

本当ですか!? ファンにしてみればそれ以上に光栄なことってないので羨ましいんですが……。では太宰さんは、お二人が目の前で作品を読む姿を見て、どうだったんですか? 嬉しそうにしてました?」

「いえ、普通でした」

淡々としてますね! まあ、聖子さんと太宰さんはよく知った間柄だったので、『ファン』という立場とはまた違いますもんね」

 

太宰さんからもらった宝物の行方は……

6月は太宰さんが亡くなった月ですよね。訃報を聞いた時は、どういうお気持ちだったんでしょう?」

「新潮社の方(編集者の故・野平健一さん)から『太宰さんがいらっしゃらなくなった』と聞いたんです。それで、さっちゃん(愛人だった山崎富榮さん)の部屋に行ったら、小さいテーブルに二人の写真が飾ってあって、お線香も上がっていて

「心中する段取りをなさってたんですね……」
「遺体が発見された時は、まさかそんな、という気持ちでした。太宰さんは何回も自殺しそこねた方だから、また今度も自殺を失敗して、そのうちひょっこり出ていらっしゃるわよって思ってたの。でも、今回は本当だったんだと」

「ママはいろいろな文豪と親交をお持ちですが、太宰さんはやはり特別な作家のおひとりなんでしょうか?」

「そうですね。昔から知っていたし、ああいう亡くなり方でしたし、とてもショックが大きかったです」

「生前の、一番の思い出は?」
三鷹でペンダントを買っていただいたんですよ。お誕生日とかではなかったんですが、なんとなく通りすがりにね。銀色で、彫刻みたいな模様が入ってるペンダントでした」

「それはものすごく貴重ですね! 今も大事にお持ちだと思いますが、見せて頂けないでしょうか」
「いえ。すぐ無くしちゃったのよね(笑)」

「ええぇぇ!? せ、聖子ママ~~~!!」

 

風紋

住所:東京都新宿区新宿5-15-2 
電話:03-3354-6696
営業時間:18時30分〜24時
定休日:日曜日

※風紋は残念ながら、2018年6月下旬に閉店予定です。お越しの際は、お電話で確認のほど、お願いいたします。

取材を終えて

今年は太宰治の没後、70年。

文豪と聞くと、歴史上の人物のような、遠い昔に生きていた印象があるかもしれません。

 

けれど太宰さんの場合、まだまだ関係者も存命の方が多く、ゆかりのスポットも彼の体温をリアルに感じられる場所ばかりです。実際に足を運ぶことで、きっと太宰治の新たな魅力と出会えることでしょう。

 

それでは、グッド・バイ。


東京のフリーランスに朗報!受診3時間、費用4万円で受けられる大自然の「人間ドック」の話をしようか

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東京のフリーランスに朗報!受診3時間、費用4万円で受けられる大自然の「人間ドック」の話をしようか

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

 

いきなりですが、個人事業主やフリーランスの皆さん、しばらく健康診断をしてないんじゃないでしょうか? 

35歳以上なら人間ドックも考えなくてはいけませんし、ドキッとした人は多いはず……と、言いつつ、完全に自分のことでもあります。

 

「健康」と書かれたTシャツを着るほど健康への憧れを抱く僕ですが、忙しい毎日の中で時間を捻出するのが面倒くさく、ズルズル人間ドックへ行かずじまい……。

 

そんな時、たった3時間で完了する人間ドックと出合ったんです。

 

それが長野県茅野市にある「ライフクリニック蓼科」

 

「たった3時間で終わる人間ドックへ行きます!」とFacebookに投稿したところ、同じ個人事業主やフリーランスの友人たちから勢いよすぎる食いつきが。

 

 

……社会の荒波で奮闘するフリーランスたちの悲痛な叫びが聞こえてくるぞ~!! 

 

目の前のタスクに真面目に向き合う姿勢は素晴らしいこと。

ですが、長く好きな仕事を続けるためにも、一番の資本である健康を損うことがあってはならないはずです。

 

ということで、そんな不健康な大人たちに、実際に僕が受けた人間ドックの模様をレポートします!

 

3時間で終わる人間ドックとは?

身長は?という質問に対して「170cmくらい(過去の測定では169.8cm)」と答えてきましたが、ようやく証拠写真撮れたーー!

 

タワレコで視聴してる学生のようですが、聴覚検査です。なんかピーピー鳴ります。

 

血圧検査は毎回、予想以上に腕しぼられてこんな顔になりませんか?

 

館内は白と木を基調とした明るく、清潔感のあるデザイン。圧迫感がなくて、精神衛生上めちゃめちゃ良い気がします。

 

こちら南アルプスの山の景色が楽しめる待合スペース。たまたま和製アラン・ドロンみたいな男性と居合わせました。

 

こちらはエコー検査。身体にローションみたいなのを塗られて、洗濯バサミみたいなものが全身につけられます。

 

人生初のCTスキャン。一軒家建てられそうな最新の医療機器に身体が吸い込まれていきます。スタートレック!

 

世界初公開。私の中身です。画像の鮮明度がやばい。

 

一番抵抗感のある胃カメラ(内視鏡検査)直前。一切プレミアム感のない思春期を過ごしてきた私ですが、プレミアムな雑誌を読みつつ温かい飲み物を口に運びます。

 

その直後に鼻麻酔!! 首がカメみたいに!!

 

鼻の感覚が失われたら、先生による鼻からの内視鏡検査がスタート…。幸い鼻ストレートなため、まだ楽な鼻から内視鏡ですけど、鼻腔が曲がってるとできない可能性あり。一回調べといた方がいいかもしれません。

 

鼻から喉、そして胃の方へ内視鏡の管がグイグイ入ってきます。このとき先生は、右足でリズムを取りながら「ふんふんふん♪」と楽しそうに手を動かしていました。とはいえ、無抵抗のこの状態。ザンギエフでも抗えないと思います。

 

ボカシを入れていますが、意外にキレイな胃だったことをご報告しておきます!

 

以上、約3時間で人間ドックの全検査が終了。「あ、もう終わりなの!?」と感じるくらいあっという間でした。検査結果は後日、郵送 or 再びライフクリニックを訪れて先生のフィードバックをもらうことができます。

 

しかも、基本パック「LIFEドック」は4万円(税込み)ポッキリ。

「人間ドックって1日がかりで10万円くらいかかるのでは?」となぜか思い込んでいたので、短時間かつ、この費用感で丁寧に対応してくれるのは良かったです。

 

その他の項目、費用はこちらをご覧ください。

なぜ長野に病院を開いたのか? 

さて、人間ドックを終えたところで、ライフクリニックの麻植ホルム正之(おえほるむまさゆき) 院長に話を伺います。

スウェーデン生まれで6歳から大阪で育ったという正之院長。いったいなぜ長野の地に病院を作ったのでしょうか?

 

「思った以上に人間ドックがあっという間で驚きました。しかし先生、なぜ長野に病院を作ったんですか?」

「まず、通勤のために満員電車へ15分以上乗るのが嫌だったんです

「わかります!!!」

「まあ、他にも理由はありますが。ただ、人って動物なので縄張りがあるんです。満員電車ではそのパーソナルエリアを犯される上に、新聞を広げたり、携帯を眺めたり『わたしに触れないで』って無意識にアピールをする。それを二重のストレスだと思っていたので」

「僕も長野に家を借りて、車移動が多くなっただけで体調が随分よくなりました」

「お医者さんって、人が健やかに生きていく方法を考えていく仕事ですからね。そのためには自分の心身も生き生きと健やかな状態に保っておかないと

 

「ライフクリニックの窓から見える景色もいいですよね。長野の山を眺めてると、病院ってことを忘れて非日常感に癒されてる自分がいました」

「病院って何か不安な気持ちで来る人が多いと思うんです。景観で少しでもホッとしてもらえたなら良かったです」

「先生はずっと長野にいらっしゃるんですか?」

「いえ。ライフクリニックを作る前は9年間、新潟の病院で修行しました。長野は母親が働いていたので、毎月のように通っていたんです。自分の病院を作ろうと考えたとき、都会よりも長野の方が僕にとってもクライアント(患者)にとっても優しい選択だな、と気づいたんですよ」

「『優しい選択』とは?」

「ライフクリニックは、比較的大きな規模の病院です。この規模の病院を建てるのに、東京なら費用も大きくなります。それに、同じ治療をするなら、自然豊かなところのほうが患者さんの体にもいいですよね」

「都会の人でも、自然に触れるついでに人間ドックを受けに来たくなるような環境ですよね。なるほどなあ」

 

 

カフェのように気軽に通ってもらい早期発見を目指す

「僕が驚いたのが、先生が待合室に迎えに来てくれることと、患者を『クライアント』って呼んでいることなんです。かなり珍しいですよね」

僕たち医師が診るべきなのは『病気』ではなく『人』だと考えています。挨拶もろくにせずに、カルテだけ見ながら話して『はい次の人』というのは違うと思うんです。クライアントさんの方をちゃんと向いて話すとか、触れて確認してないと、いつしか病気だけを見ている人になってしまいます」

「よく医療ドラマとかに流れ作業で患者を診る偉そうな院長いますよね。大名行列みたいな回診をしたり」

「あれは大げさですけどね(笑)。ただ自戒も込めて、うちでは患者さんと直接話すときはお名前で、スタッフ間では『クライアント』と呼びます。言葉を変えることが行動を変える第一歩だと思っているので、そこは大切にしているポイントですね

「患者としてではなく1対1の人としての交流が深まっている感覚があったので、なんかうれしかったです」

「安心感を感じていただけるのが一番うれしいですね。病院名の『ライフクリニック』にも、病気だけでなく、その人の人生ごと見ていきたい、人の人生に寄り添う場所になりたいって想いを込めていますから」

 

「あと、病院の内装がめちゃくちゃお洒落ですよね! 椅子がかっこよすぎてググったんですが、『ハンス・J・ウェグナー』とか『ベルグファニチャー』とか老舗ブランドの高級家具ばかりじゃないですか」

「古くから残るデザインって、人々にとって心地が良いものだと思うんです。まわりの自然豊かな環境と同じく、家具にも、ここへ来てくださった人たちを『大切にしています』ってメッセージを込めています

「下世話な話、相当お金かけてますよね…?」

「まあ……○億くらいですかね」

「すごい! 設備投資にも気合が現れてる」

 

「ここまでお洒落だと、なんだか病院というよりカフェみたいな感じでした」

「実際に、カフェ使いをしてくれたらいいって思って作ったんです。病院には『病気にならないと行けない』って固定概念がありませんか?

「え、違うんですか?」

「もちろん。僕は病気になる前に来てもらいたいと考えてます。上司に怒られたあとのちょっとした息抜きとか、今日は天気がいいからぼーっと山でも眺めながらライフクリニックでコーヒー飲むか、みたいな。いい意味で病院としての境目をなくしたくて

「境目をなくす」

「はい。敷居を下げて通いやすい場所にしたいという概念的な意味はもちろん、建物としてもです。目の前に八ヶ岳がありますが、この建物も、実は山の一部なんです」

 

「どういうことですか…?」

「建物の外観は、山に囲まれた環境に馴染むようなデザインにしています。クリニックのサインも、山や川、水、青い空など、建物の回りにあるものからイメージしていて。環境と体との調和も大切ですけど、地域との調和も大事。日常にいきなり変な建物がぽこっと建ったら嫌ですよね」

「京都の街にあるコンビニがモノトーンの看板みたいなことですね」

「ええ。地域にとって不自然なものは、やっぱり長くは続かないですから。来る人は地元のおじいちゃん、おばあちゃんが多いんですが、僕はここを『健康の公民館』と考えています。情報交換したり、お茶を飲んだ流れで『そういえば最近ちょっと調子が悪いなあ』くらいの感じで診察を受けてもらったりしてほしくて」

「病院がそれくらい生活の身近にあれば、病気の早期発見にも繋がりそうですね」

「例えばガンの早期発見において、単発ではなく、定期的な検診がすごく重要なんです。だから、ライフクリニックでは日常的に通ってもらうなかで変化を捉えて『超早期発見』を目指してます」

「だから病院にカフェまで併設してるんですね」

「できるだけ場の敷居を限りなく低くすることで、身体にはもちろん、精神面でもバリアフリーを実現したいんです」

 

「確かに普通の病院って、外からは何も見えないし、理由がないと行けない。でも、ここは例えば僕みたいに都内のフリーランスの人間が『なんかかっこいいから来た』みたいに、フラっと訪れてもいいわけですよね」

「もちろん! 理由はなんでもいいんです。都内から長野への日帰り旅行のついでに、3時間だけ寄って人間ドックを受けてもらうイメージですかね。診察をきっかけに、リフレッシュできる休日を過ごしてもらえたら。理由があった方が、休みも取りやすいでしょ」

 

 

大人の免疫の7割は腸にあり?

「あと僕、さっき診療中に聞いた『腸内フローラ移植』っていうのがすごい気になってて」

※腸内フローラ…人間の腸内には、数百種・600兆個以上の細菌が小腸~大腸にかけて種類ごとにグループを形成してまとまり、腸壁面に生息している。その様子が植物が群生している花畑(英:flora)のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれ、腸内フローラの状態を「腸内環境」と呼ぶ

「ああ『糞便微生物移植』ですね。薬の投与ではなく、腸の細菌を移植することで病気を改善する治療法です」

 

「つまり……『うんこ』を移植する?」

 

「あ、といってもそのままじゃないですよ。うんこから抽出した液体を移植するんです」

「安心しました。新しい治療法なんですか?」

「はい。海外発で臨床実験中の治療ですが、腸の菌を入れ替えて腸内環境を整えます。するとアトピーや自己免疫疾患、いわゆる難病と言われているものや、鬱の人にも効果が期待されています」

「すごいですね」

 

大人の免疫機能の7割以上は腸が担っているので、健康でいるには腸内環境を保つことが必要不可欠なんです

「胃腸が弱い僕としてはめちゃくちゃ興味があります。腸内フローラって、どういう時に状態が悪くなっちゃうんですか?」

「原因は色々ですが、人生におけるなんらかのイベントが影響しているとされています。仕事が忙しすぎたあとに燃え尽きたり、幼稚園から小学校にあがるタイミングで不登校になったりした時に、一気に腸内環境が変わった例があります」

「原因はストレスなんでしょうか?」

「一概には言えませんが、おそらくは。腸内環境を整えるには水と食物繊維と乳酸菌が必要ですが、大きく変わってしまうとその3つのマネジメントだけでは困難になります。じゃあもう腸内フローラごと移植しよう、という治療法なんです。今は実験段階で、日本ではうんこの提供元として7人のドナーがいます

「選ばれた7人! でも、田舎で毎日七分づきのお米を食べてるおじいちゃんとかも、めちゃくちゃいいうんこをしてそうですけど」

 

「まさにそうですね! 腸内フローラが元気な状態で年を取った人は、活力や元気があるから体を動かす仕事を長くできるんでしょうね」

「そういう腸の丈夫さってなにで決まるんでしょう?」

人体において遺伝子が規定するのは3割で、7割は環境要因なんですよ

「7割が環境か〜〜、まさに日々の生活と食べるものが健康を作っているんですね」

もし生まれた瞬間にすべて遺伝的に規定されているなら、その人の人生は何なんだ?って話じゃないですか。生活習慣や食生活で、改善の余地は大いにあります」

「おおお、胃腸弱い人間の僕にもまだ挽回の可能性がありそうで、やる気が出てきました!!!」

 

 

大切なのは、自分の体をよく知ること

大切なのは自分の体をよく知ることなんですもし体内で不足しがちな栄養素があれば、その分をサプリメント(サプリ)で補いましょう、という考え方『サプリメーション』もあります」

「東京だと、食べ物で栄養をすべて補うことも難しいですよね。生命力の高い新鮮な野菜も高価になってますから」

「なので、サプリを武器として持っておくのはオススメですよ。僕は診療においても、選択肢を増やすことが大切だと考えています

「選択肢、ですか」

「例えば貧血の場合、一般の病院では鉄分の薬を処方します。しかし、化学的に合成された薬が合わずに気持ち悪くなってしまう人もいます。そういう人は、『ヘム鉄』のサプリを飲めばいい。しかし、一般的な日本の病院において、鉄分の薬とヘム鉄のサプリを両方処方することはできないんです」

「え、どうしてですか?」

「サプリを処方するのは『自由診療』になるからです。一方で、日本の病院の多くは保険診療です。認可内の薬と認可外のサプリを両方出すと、混合治療になってしまうんですね」

※自由診療……国内で保険認可外の治療法や薬剤を選択できる代わりに、治療費の全額を患者が負担する(保険が適用されない)診療のこと

 

「うちは『自費診療』をベースとしていますが、それは治療時にクライアントにとってのより良い選択肢をひとつでも多く提供したかったからなんです。体調の改善が目的なら、サプリでいい場合もありますし」

「はー、病院イコール薬をもらうところだと思ってましたが、それ以外の選択肢もあるんですね」

「自費診療の場合、検査に関してもできることの幅が大きく広がります。人間の性格はすべて体内の物質量が規定しているので、例えば鬱っぽい人であれば、セロトニンとドーパミンのどちらが足りないか、みたいに細かく原因が調べられるんです」

「単純なユーザー目線でいうと、選択肢が多い方がありがたいです」

 

「僕は、病院がちゃんと知りたいことを知れる場所にしたいんです。もしガンになって訪れた人がいれば、放射線か手術、化学療法だけじゃなく、温熱療法や水素吸収、免疫治療という選択肢があってもいい。もちろん保険適用内で行えるものは、極力それで治療します。ただ、選択肢を隠すことはしたくないんです」

「保険治療にもメリットはあるわけですよね? 」

「もちろん。日本には国民保険があるおかげで、たった数万円で一流の先生にかかれます。アメリカでは健康保険制度がないから医療費が高額という話もありますよね」

「そんな風に、先生が患者の選択肢にこだわる理由ってあるんでしょうか?」

僕はガンで親を亡くしてるんです。当時、親は63歳だったんですが、親孝行も全然できないままで。その時、病院から『自費診療』という選択肢は知らされなかったんですよね。過去へは戻れませんから、自分の悔しい体験をクライアントに還元したいという一心なんです」

「選ぶかどうかはさておき、知っているかどうかは大きいですね。日本はルールが多すぎて、『郷に入れば郷に従え』な風潮が強いなとたまに思います」

 

「僕は6歳のとき、親の仕事の関係でスウェーデンから日本に来ました。そこで日本語が全然話せなかったせいで、すごくいじめられました。ライフクリニックの開業前に日本の病院へ勤めたときも、そこ特有のルールや縛りに違和感を感じることが多くて」

「そういう環境だと、多様な選択肢ってなかなか許されないですね」

「だから医療や治療にかかわらず、大切なのは『自由と多様性』だと思います。集団のための個ではなく、個のために集団があるはずなので。もちろん学ぶために郷に従うことも必要ですよ。僕も長年、日本の病院で郷に従った上で、そろそろ個を出していいかなと、ここを開業しましたから」

「ライフクリニックの真摯な姿勢の理由がわかった気がします。今日はありがとうございました!」

 

 

おわりに

豊かな自然空間の中に佇む、カフェみたいに居心地の良い病院「ライフクリニック」。

地域のコミュ二ティであり、クライアント(患者さん)へ提供される選択肢の多さが生む、大きな安心感に包まれた場所でした。ここなら定期的に人間ドックを受けるモチベーションが湧きます。

 

最後にもう一度、ライフクリニックによる人間ドックのおすすめポイントをご紹介します!

気になる!という方は、以下から人間ドックの詳細をチェックしてみてください!
http://www.lifeclinic-t.jp/service/general-checkup.php

 

ちなみに「ライフクリニック蓼科」から車で約30分にあるコワーキングスペース「富士見 森のオフィス」。大自然の中にある立派な木造建築でインターネット環境が最強なんですけど…

 

フリーランスの新たな働き方だけではなく、働き方×健康の価値と可能性を見出したコラボプロジェクト「Work & Wellnessサービス」を実施中。森のオフィスの年間会員であれば人間ドックの割引があったり、麻植ホルム正之先生が定期回診で訪れたりなど、全国的にも珍しい取り組みとなっています。

 

仕掛け人は人間ドックの待合室にいた和製アラン・ドロンこと津田賀央さん(写真左)と、松井彩香さん(写真右)。

 

自然豊かな長野の環境、そして知恵と創意工夫で人を呼び込みたいプレイヤーの動き。東京から通える距離だからこそ、フリーランスを含めた「新たな働き方」の視点に健康面の価値を見出してみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに私は東京の満員電車に乗らなくなって、温泉通い(週3回)を始めたら風邪をひかなくなりました。健康第一! 健康な身体あってこその人生です。この記事がより多くのフリーランスの人に届くことを願っています。

 

それではまた!

 

写真:小林直博

【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (27) –デパーチャーズ/水も滴る

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【8コマ漫画】木下晋也 『特選!ポテン生活』 (27) – デパーチャーズ/水も滴る

 

 

<ポテン生活|一覧>

 

 

 

 

 

 

 

<ポテン生活|一覧>

 

●「ポテン生活」とは?

ギャグ漫画界の新鋭・木下晋也が描く、の~んびりして、クスッとしてしまう8コママンガ。独特の中毒性から、10巻までの単行本は大きな話題になりました。ジモコロでは、そんな「ポテン生活」から、おもしろかった話を毎月2本、選り抜きでお届けしますよ!

 

 

【美しすぎ!】なぜか山の『映像』を専門に撮り続ける男

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【美しすぎ!】なぜか山の『映像』を専門に撮り続ける男

こんにちは! ライターのギャラクシーです。

先月、WEBメディア『ジモコロ』は3周年を迎え、大幅リニューアルを行いました。PC版に関しては、最もわかりやすい変化として、トップページに動画が使われています。

 

トップページの映像(音ありバージョン)

 

あの映像は誰が撮ったの? というお問い合わせをいくつか頂いてるわけですが……

 

この人です。

 

井上卓郎

スポーツ映像、ビデオゲームのプロモーション映像、TVCM等の制作、ディレクションを経て、現在は主に自然映像を中心とした作品を制作Twitter

HAPPY DAYZ PRODUCTIONS(ハッピーデイヅ プロダクションズ)
住所|〒390-1520 長野県松本市安曇1776
公式HP

 

井上さんは山の『映像』を専門的に撮っている映像作家。『写真』じゃないですよ? 『映像』です。

……なんで?

 

井上さんが撮った山の映像、とりあえず見てみてください。

なんだこれー!と思ったでしょ? 永久に見ていられるくらい美しく、そして、楽しい!

 

というわけで今回は、なぜ山の、しかも映像にこだわるのかといった疑問を聞くために、井上さんの自宅兼作業場にお邪魔しました。

 

ちなみに僕はカメラや撮影のことには詳しくないので、カメラマンの小林くんにも同行してもらいましたよ!

 

小林 直博|フリーペーパー「鶴と亀」HP

 

ではさっそく、山を映像で撮り続ける男の実像に迫ってみましょう!

 

ニコニコ動画で見つけた山の映像

長野県松本市の、山に囲まれた小さな集落。ここが、古民家を利用した井上さんの住居兼 作業場。

 

ん?

 

何か、視線を感じる……?

 

2階から猫に監視されてました。5匹くらい飼ってるそう。

 

ちなみに今回の記事、インタビュー中もちょいちょい猫が横切ったりしますが、気にしないでください

 

「今日はよろしくお願いします! ジモコロのサイトに、かっこいいトップ映像を作って頂いてありがとうございます」

「突然のお声がけだったのでびっくりしました」

「井上さんは、ニコニコ動画で『水道管を背負って山々を撮影してきたシリーズ』を投稿してましたよね? 実は僕、その頃からファンだったんです」

「『水道管~』は一番古いのだと2010年だったかな。かなり前から見てくれてるんですね」

 

「当時僕もニコニコでゲーム実況をやっていて、しかも趣味として登山を始めた時期だったんです。で、山の“映像”ってないのかな~と思って探してたら『水道管を背負って……』という、気になるタイトルの動画があって」

「実はタイトルで気になってクリックしたっていう人が多いんですよ。10万再生とか行った動画もありますが、タイトルの勝利だったかもしれません」

「水道管っていうのはつまり、撮影用の機材を水道管で自作したってことなんですよね?」

「ですね。ビデオカメラを滑るように移動させる『スライダー』という機材があるんですけど、当時日本で一般人が手に入れるのは難しかったんです。じゃあ、自作しちゃえ!と」

「なんでそこで『じゃあ作ろう』という発想になるんだ……」

「水道管を背負って山に行くと、工事の人に間違われて『おつかれさまでーす』ってよく言われてました」

「水道管をそんなふうに使うなんて、普通は思いつかないからね。ちなみに今は?」

「今はさすがに、ちゃんとした機材を購入してます。日本でも手に入れやすくなったんで」

 

ビデオカメラの下にあるレールみたいなものが『スライダー』。レールに沿ってカメラがなめらかに移動する

 

近くの渓谷で実際に『スライダー』を使って撮った映像がこちら。動くとやっぱり、めちゃめちゃ「っぽく」なりますね。かっこいい~!

 

ひょっとしてスライダーさえ使えば……僕みたいなオッサンがモデルでもかっこよく見えるんじゃ!?

 

『できるだけカッコ良く!』という注文のもと、撮影してもらいました!

 

 

無理でした

 

なぜ山の“映像”なのか

「そもそものことを聞きますが、なんで山の“映像”なんですか? 山の“写真”を撮る人は結構いますけど、“映像”を専門的に撮ってる人ってほぼ居ないのでは」

「ずっと映像やってたんで、山でも撮ってみるか、という軽い気持ちですね。元々スポーツとかアウトドアとかが好きだったんで」

「ただ、映像ならではの苦労というのもあったんじゃないですか?」

「“ならでは”というと、重さでしょうね。これ、僕が使ってるブラックマジックデザインというメーカーのカメラなんですが、ちょっと持ってみてください」

おっっっも! 何これ! 僕が筋トレで使ってるダンベルより重い!」

 

ちなみにお値段は70万くらいだったとのこと

 

「重いでしょ? さらに三脚とかスライダーとかも加わるから、大体20kgくらいの荷物を持って山に登ることになりますね」

「『北斗の拳』で聖帝十字陵の石を運んでた人の気分になれますね」

「それは何のことかわかりませんが、とにかく軽量化にはすごく気を使ってます。本来 撮影機材って重いほうが安定するんですけど、山では軽さこそ正義ですね」

「写真を撮っている人間からすると、データの容量がすごく気になります。写真でもデータが重くて、外付けのハードディスクが溜まっていくのに、映像はさらに重いわけですよね?」

「確かに、データ容量の悩みも映像ならではかもしれませんね。一泊で撮影にいくと、256GBのSDカードを3枚くらいは消費しますから。ハードディスクは4TBのをバンバン買ってますよ」

 

そこら中、ハードディスクだらけ。たぶん人間丸ごとデータ化しても、5人分くらいは入るのでは

 

「こんなにHDがあれば、奥さんに内緒でエッチな動画を溜めたやつもあるのでは?」

「(台所で料理する奥さんをチラッと見てから)昔はありましたけどね~。今はもうクラウドで……ハハハ……え? これ書かないですよね?

「もちろん書きませんよ」

「映像の苦労というと、カット数を多く撮らないといけないのも大変かな。2分半の動画でも、30~40カットくらい必要です。1カットで使うのは1秒とか4秒とかなんですけどね。しかもカットの度に重い機材を出し入れして……」

「うわ~、めんどくさそう!」

「最近はドローンも使ってるんで、ますます機材が増えました」

「いっそ自宅からドローンを操作して、一歩も外に出ないで撮影したら楽なのでは?」

「それは楽でしょうけど……でも楽しくないんじゃないですか? 自分が楽しくないとおもしろいものはできないと思います」

「そ、そうですよね~! まったくもう、楽することばかり考えるやつなんてクリエイター失格ですよ!」

「おまえだよ」

 

こちらは映像の色調整をやりやすくするためのコンソール。30万円くらい(!)

 

おぉ、空が七色に変化する……! コンソールは絶対に必要なものではなく、単に作業が捗るだけだそう(それに30万てすごくない?)

 

写真と映像の違いって何でしょうか? カメラマンである僕が映像を撮ると、やっぱりちょっと違うな~という感じになるんですけど」

写真は1枚ですべて伝えなければいけない。それが難しさであり、おもしろさでもある。でも映像は何十カットかを組み合わせるのが普通だから、その中にちょっと外したカットがあっても、そんなに目立たない」

「え? 外したカット?」

僕の映像では、山の動画なのになぜこのカットが? と思われるような、ちょっと外したカットもあえて入れています。でも写真やってる人が映像を撮ろうとすると、『すべて決めカット』にしちゃう人が多いんです。全部バチッと目線が合ってるとかね」

「すべて決めカットのほうが良いような気がしますけど……。外れてるカットなんて、入れないほうがスッキリするのでは?」

すべてが意味のある決めカットばかりだと、見てて疲れてしまうこともあるんです。どこか抜いた部分が混ざってるほうが、構えずに見れる。映像は、写真より長時間見るものだから、抜き加減って大切なんですよ」

「なるほど、僕が井上さんの映像を好きな理由は、それなのかも。ただ美しいだけの映像って、遠い世界の他人事に感じてしまうけど、井上さんの映像はどこかユルい部分もあって、身近で楽しいんですよね」

「アート的な映像も嫌いではないですけどね。僕は、見ていて気持ち良いものを撮りたい。本当に自分が山登りしながら見ている景色のような」

 

ゲーム会社で『GTA』を担当!?

「井上さんはずっと長野なんですか?」

「いや、僕はもともと東京出身なんです。学校がスキー部だったんで、長野の山にはスキーで訪れたわけですね。当時は映像を撮ろうなんて考えてなくて、でも、美しい山々に魅了されました」

「馴染みすぎてて、完全に長野の人だと思ってました」

「卒業した後、就職したのも東京でした。設計会社でしばらく働いてたんですが、そのうち会社が傾いてきたので辞めまして……で、長野でスキーばっかりやってました」

「まあ人生、時には休むことも大事ですよ。それはどれくらいの期間だったんですか?」

「う~ん、7年くらいかな」

「長すぎ」

 

「ただ、スキーばっかりやってる頃、海外のスキービデオに触発されて、自分でもスポーツ映像を撮り始めたんですよね。テレマークスキーとかMTB、スノースクートとか」

「おぉ、ムダな7年ではなかったんですね」

「映像を撮るようになると、知り合いのゲーム会社の人間に誘われまして。東京に戻って『カプコン』『スパイク』と就職しました。ゲームのプロモーション映像のディレクションとかね」

「すごい!」

「どっちも超有名なゲーム会社じゃないですか!」

「『カプコン』では海外事業部で『GTA』なんかを担当してました」

※GTA=グランド・セフト・オートシリーズ。全世界で累計2億2000万本以上の売り上げを記録している大ヒットゲーム

 

グランド・セフト・オートV 【CEROレーティング「Z」】 (「特典」タイガーシャークマネーカード(「GTAオンライン」マネー$20万) DLCのプロダクトコード 同梱)- PS4 グランド・セフト・オートV 【CEROレーティング「Z」】 (「特典」タイガーシャークマネーカード(「GTAオンライン」マネー$20万) DLCのプロダクトコード 同梱)- PS4

 

「僕もGTAは何本かやったことがありますが、どれかに井上さんが関わってたかもしれないんですね」

「ゲームの仕事も楽しかったんですが、最終的に、さらに自分の好きな表現を掘り下げようと思って、2009年に本格的に『HAPPY DAYZ PRODUCTIONS』を起ち上げました」

「『HAPPY DAYZ PRODUCTIONS』では、どういった活動をおこなってるんですか?」

「主に自然映像を中心とした映像を制作しています。まあ、これは『水道管 背負って~~』からあまり変わってないですね。機材は良くなりましたけど。あとは自治体、企業のプロモーション映像などを制作しています」

「7年ブラブラしてたとは思えない活動っぷりですね……」

 

クリエイターとして長野で暮らすこと

左は奥さん……いや、ネコのことではなく、ネコの隣の女性が奥さんであり、『HAPPY DAYZ PRODUCTIONS』のメンバーでもある、井上のぞみさんです。

ここからは奥さんにも加わってもらい、映像作家として長野という場所はどう作用するのか?について聞いてみます

 

クリエイティブな活動をする時、長野という場所はネックにならないんですか? 東京のほうが仕事自体は多いような気がします」

「東京のほうが仕事は多いでしょうね。ただ、『長野で』『山の映像をメインに』仕事している、というのは、僕の場合少なからずプラスに働いている気がします」

「ここには他に競合が居ないので、強味になってると思いますね」

「まあ、井上さんはアウトドアとかスポーツが好きということなんで、ここでの生活も刺激的かもしれません。でも奥さんは都会のタワーマンションで華やかに暮らしたいと思わなかったんですか?」

「ないない(笑)。そういうのは全然ないです。こっちのほうが性に合ってますね」

妻は僕よりハードな登山をバリバリやる人なんで、本当にこっちのほうが向いてると思います」

「奥さん、山屋(登山愛好家)だったのか……」

「こっちは家賃がびっくりするくらい安いのもポイントが高いんですよ。さっき『東京のほうが仕事が多いのでは?』っておっしゃってましたけど、そもそもそんなに稼ぐ必要がないかもですね」

「あと、山の撮影が多いんで、当日に“雨なら撮影中止、晴れたら撮りに行く”とか決められるのは大きなメリットですね。東京から撮りに来るとなると、気軽なフットワークでは動けないんで」

 

「ずっと疑問だったんですが撮影する場所ってどうやって決めてるんですか? 山なんて無限に撮影スポットがあるのに『あの山のあの場所を撮ろう』って、よく決められるな~と」

「まあ、長野の山なら勝手知ったるというか」

「そうですね。庭みたいな感じで、大体わかってますね」

「大体わかってるってすごくないですか? 裏庭とかじゃないんですよ? 山ですよ、山」

「妻が登山好きなんで、すごく詳しいんですよね。『どこか良い撮影スポットない?』って聞いたら、大体パッと答えが返ってくる」

「でも、依頼されて他府県の山を撮影するとなると、どうですか? さすがの奥さんも、庭のように案内するというわけにはいきませんよね?」

「その場合は、行ってみて感じたものを撮るしかないですね。クライアントから『このポイントを入れてください』っていう要望はあるけど、そればかりを繋ぐと宣伝っぽくなっておもしろくないですから」

「難しそうだなぁ」

「僕なんか『山の映像を撮れ』って言われたら、頂上からの景色くらいしか思い浮かばないわ」

「頂上からの景色って1カットか2カットくらいしか使わないですね。意外におもしろいのは、歩いてる足元とか。アイレベル(視点)を上にしたり、下にするだけでも良い映像になるものですよ」

映像の場合は、写真と違って『移動させて動きを加えることができる』のが良いですね」

「最近だと、我ながら最高だな!っていう撮影はありました?」

「憶えてるのは北穂高岳かな。しとしと降ってた雨がフッと上がって、複雑なグラデーションの中に山が浮かび上がった瞬間……この仕事やってて良かったなぁと思いましたね」

 

ちなみに、さっき色調整をおこなっていた映像が北穂高岳です

 

「都会でゴミゴミしたグレーの風景しか見てない僕としては、非常に羨ましいです。今日はおもしろい話を聞けて楽しかったな~。この調子でいつまでも山の映像を撮り続けてください」

「50代になっても、重い荷物担いで山に登れる?」

「50代になったらさすがに体力的な面で厳しいので……猫の動画を撮って暮らそうかな

「それも見てみたい」

 

話が楽しすぎて2時間以上も喋ってしまったため、ネコは眠そうでした

 

まとめ

というわけで今回は、ジモコロのトップ映像を撮ってくれた「山の映像作家」井上さんにお話を聞いてきました。

 

自分がしっくりくる場所で、自分のやり方で、好きなものを撮る。

結果的にその方法が競合を無くし、クリエイターとして成功しているという図式は、興味深いですよね。

あと、どんなに優れた映像作家が撮っても、モデルが冴えないオッサンだと絵にならないという事実も興味深かったです。

 

 

以上です。

 

 

 

●取材協力|井上 卓郎

HAPPY DAYZ PRODUCTIONS(ハッピーデイヅ プロダクションズ)

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牛のオシッコが地球を救う!? 北海道で出会ったミラクル液体「きえーる」

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牛のオシッコが地球を救う!? 北海道で出会ったミラクル液体「きえーる」

こんにちは、ジモコロ編集長の柿次郎です。

突然ですが、「牛のおしっこが地球を救う」と聞いたら驚きませんか?

 

先日、僕は『道東誘致大作戦ツアーinオホーツク』というイベントで北海道の東側「道東」を訪れていたのですが……

 

そこで出会った液体が、地球を救うレベルでめちゃくちゃすごいヤツだったんです!

言葉であれこれ説明をするよりも、まずはこちらの水槽をご覧ください。

 

「水が濁っているなー」と思った方が多いのではないでしょうか。でも、水槽の右上にある注意書きをよく見てください。

 

なんとこの水槽、最後に水の交換をしたのが平成25年。つまり5年間、水換えをしていないそうなんです! しかもろ過装置は使っていないのに、水槽内をスイスイ魚が泳いでいます

 

「5年間そのままなら、もっとドロドロの水になっているのでは…?」

「魚の健康状態は大丈夫なの…?」

 

皆さんの疑問がありありと浮かんできますが、驚くのはまだ早い。

実はこの水槽がキレイに保たれているのは、牛のおしっこで作られた液体を加えているからなんです!

 

それを聞いて、「え? 牛のおしっこなんか使って魚は大丈夫なの?」とさらなる疑問が生まれたはず。

 

というわけで積もりに積もった疑問を解決すべく、噂の液体の製造・販売元「株式会社環境ダイゼン」本社へとやってきました。

 

牛のおしっこから生まれた奇跡の液体『きえ〜る』

お話を伺ったのは、株式会社環境ダイゼンの創業者で代表取締役社長の窪之内 さん(写真右)と、代表取締役専務の窪之内 誠さん(写真左)。ちなみに2人は親子です。

 

「さっそくですが、水槽の水を5年も換えなくても魚が生きてるってすごくないですか? しかも牛のおしっこのおかげというのは本当ですか?」

「本当です。もちろん、おしっこをそのまま使っているワケではありません(笑)。水に混ぜているのは、牛のおしっこが原料の液体です。その液体に含まれる微生物の働きで、水はきれいな状態を保てているんですよ」

 

「水槽の底に黒く見えるのは、もともと魚の古い糞と餌の食べカスだったものです」

「『だったもの』とは…?」

「もう土に変わっています」

「水槽内で土に!!?? そんなことあります?」

「微生物の働きです。彼らは土に住み着き、新しく出た糞や食べカスも分解してくれる。だから、水換えをしなくても大丈夫なんです」

「……あ、よく考えたら自然界で行われている連鎖反応と同じなのか。月に1度、水換えをするよりも自然の環境に近いのかもしれませんね。そしてさっきから気になってるんですが」

 

 

「その『透明な液体』の種類めちゃくちゃ多い…。『きえ〜る』って書いてありますが、もしかして全部、牛のおしっこが原料なんですか?」

「はい。用途ごとにパッケージと商品名は変えていますが、どの商品も成分はだいたい同じ。牛のおしっこを乳酸菌や酵母菌などの微生物で分解した液体が原料になっています」

 

取材に同行していた小倉ヒラクくん。『発酵文化人類学』という本も出版している「発酵デザイナー」です

「急に失礼します! 発酵デザイナーの小倉ヒラクです。僕は発酵を研究しているので、微生物の話と聞いたら口を挟まずにはいられなくて。その液体に有機物を分解する働きがあるんですか???」

「すごい食いつきですね……その通りです。うちのメイン商品は『きえ〜る』という消臭剤なのですが、水中の常在菌を活性化させて、過剰な有機物を分解させる効果があるんです

「あぁ! じゃあ、コンポストの液体版みたいなものですね!!! 」

「おっしゃる通りです」

「(ヒラクくんが興奮してるから、きっとすごいんだろうな)僕は熱帯魚を飼っていた時期があるんですけど、水換えって地味に大変なんですよね。当時『きえ〜る』と出会えていれば、めちゃくちゃ楽だったなぁ」

 

「すごいのは、それだけじゃないんです。もとは消臭剤ですからね。柿次郎さん、ちょっと場所を移動して…。きえーるの水槽タンクに手を入れて、ニオイを嗅いでみてください」

「ええっ、一体何が起こるんだろう…」

 

ヒタッ…

 

スゥ…

 

「あれ? 無味無臭だし手がすべすべする! 」

 

「なんか温泉みたいな質感で。このままダイブしてきえーる風呂に浸かりたいくらいの衝動に駆られますね。牛のおしっことは全然思えない…」

「そうなんですよ。さらにね、コレ…」

 

キュッ…キュッ…

 

「ぐびっ…」

 

社長が、牛のおしっこ飲んだーー!

「ふふふ…実はこれ飲めるんですよ。積極的にオススメしているわけではありませんが、天然成分100%なので健康に害はありません(※)。柿次郎さんも1杯どうですか?」

※あくまで社長の見解です

「お酒みたいにすすめないで。でもせっかくなので、思い切っていきますね…虎穴に入らずんば虎児を得ず…南無三…」

「早く飲みなよ」

 

「ぐいっ…」

 

あ、コレ飲めるヤツだ。無味に近いけど、どことなく奥底の方にヤクルトのような乳酸菌飲料の香りがする気も」

「ちなみに僕は8年間飲み続けてます。そのおかげでうんこが全然臭くないんですよ」

「えええ! 体の中からうんこを消臭できるんですか!?」

「実際にペットの飲み水に混ぜてあげれば、ふん尿のニオイを減らすこともできます」

「すごい話を聞いている気がする。バイオテクノロジーの最先端じゃないですか!」

「ありがとうございます。『きえ〜る』の原液を作っている酪農家さんでは、牛の飲み水に原液を混ぜています。すると、牛舎特有のニオイもしないそうですよ」

「いろいろな場所で悪臭問題を解決できそうですね」

「実際、2011年の東日本大震災のときに被災地へ『きえ〜る』を寄贈させていただきました。そのときは避難所の仮設トイレだけでなく、冷蔵庫で腐ってしまったナマモノの消臭にも活用いただけたんですよ」

 

「腐ったナマモノも消臭できるということは、生ゴミにも使えるってことですか? 僕は長野と東京の二拠点生活をしているんですが、ゴミの日に家を空けることが多くて、溜まった生ゴミが臭うのに悩んでいて」

「それは大変ですね。『きえ〜る』を使えば、生ゴミの腐敗臭も消臭できます。あとでお土産にさしあげますので、ぜひご自宅でも試してください」

「やったー! ありがとうございます。これで生ゴミの心配をしなくて済む…!」

 

「ちょっといいですか。これって商品の効能をわかりやすくするために『きえ〜る』と言ってますけど、正確にはニオイを消しているわけではない……つまり、消臭剤ではないですよね?」

「おお、よく気づきましたね。僕らは『バイオ活性水』と呼んでいます」

「急に推理サスペンスみたいなやりとりしないで。バイオ活性水…ってなんですか?」

「この商品は消臭するのではなく、そもそもニオイを発生させないようにする仕組みなんですよ。柿次郎さん、嫌〜なニオイが発生する理由ってわかりますか?」

「おじさんが強烈なストレスを感じたとき?」

「まぁ、それもそうなんだけど。目には見えませんが、僕たちの身の回りでは『発酵させる菌』と『腐敗させる菌』が栄養を含む有機物を取り合っています。そこで腐敗させる菌が勝つと、腐ってイヤなニオイが出る。『きえ〜る』は、腐敗させる菌が栄養物に手を出せないように誘導してあげるヤツなんです」

「おぉ! まさにその通りです」

「つまり厳密には消臭剤ではないんですよね。だからこそ僕は、消臭剤として販売しようと思った経緯が気になっていて」

「(この取材にヒラクくんを連れてきてよかった……)」

「それでは、その経緯からお話ししましょう。キッカケはね、僕が地元のホームセンターで店長をしていたときに、お客さんから苦情をいただいたことだったんです」

 

『きえ〜る』が消臭剤として誕生したワケ

「ある日、お客さんに『あんたの店で買った消臭剤を使っても、ペットのおしっこのニオイが全く消えないぞ!』と言われたんです。従業員に聞いたら、そういった苦情が度々あることがわかりまして」

「ふむふむ」

「大手メーカーが販売している消臭剤は全て取り揃えていたのに、ニオイが消えないなんて変だなと思いましてね。すぐにうちで取り扱ってる消臭剤を全部集めて、生ゴミで実験したんです」

「社長ご自身で?」

「はい。そしたらね、消臭剤の香りが加わるだけで、生ゴミ自体のニオイが消えないんですよ。消臭剤なのにニオイが消えないんじゃ、お客さんが怒るのも当然だなと。それから僕は、本当に効果のある消臭剤を探して、2年かけてあちこちを回ったんです。でも、いい消臭剤は全然見つからないんですよ」

「2年間も!そんなに見つからなかったんですね」

「そんなとき、僕のことを聞きつけた地元の酪農家が『お前んとこで売ってくんねえか』とボトルに入った茶色い液体を持ち込んできた。聞けば『牛の尿を乳酸菌で分解した液体』で、植物の活性剤になるというんです」

「そのおじさんが自分で作ってたんですか?」

「はい。というのも北海道の北見市では酪農が盛んなのですが、牛の糞尿が地元の常呂川(ところがわ)に流れ出て、悪臭や水質汚染が問題になっていたんです」

 

「だから国が助成金を出して、酪農家のもとで糞尿を川に流せるよう処理してもらう計画を進めていました。その結果、誕生したのが…」

「『きえ〜る』の原液だったと」

「そういうワケです」

「きえ〜る爆誕! もともと汚染を引き起こしていた糞尿が、乳酸菌を加えるだけで良いものに変化することってあるんですか?」

ここでいう『汚染』は、牛の糞尿が大量に川に流れ込んだことで、水中が栄養過多になってしまった状態のことなの。本来であれば僕たち生き物の糞尿は、汚いものではなくて栄養物の塊自然に返すのはむしろ大切なことだから」

「ヒラクさんのおっしゃる通りです。だから乳酸菌や酵母菌に栄養素を分解してもらって減らすことができれば、汚染を防ぐことができるわけです」

「なるほど! やっと仕組みを理解しました。では、なぜそれを消臭剤として利用しようと?」

「牛のおしっこってね、本来であれば臭いんですよ。でも、酪農家さんが持ち込んだ液体からはニオイがしなかった。ちょうどその時期、僕の頭は消臭剤でいっぱいだったもんで、すぐに『これには消臭効果もあるんじゃないか?』という直感が浮かんでね」

 

「だから、その原液を空いたペットボトルに入れて、従業員や取引先、お得意さんに配って使ってみてもらったんです。そしたらね」

「そしたら…?」

 

「そりゃもうスゴかった(笑)」

 

「社長、めちゃくちゃ嬉しそうだな〜!ずっと牛のおしっこの話で嬉しそうだな〜〜!」

「ペットの糞尿にはもちろん、汲み取り式のトイレや排水溝、どんな悪臭でも消えたんですよ。みんなに電話で『どうだった?』って聞くと『いやあ、よく消えるよ!本当によく消える!』って口を揃えて言うもんだから『きえ〜る』って名前で商品化することにしたんです」

「(そのまま…)」

「しかも『きえ〜る』が消臭するのは、腐敗臭やアンモニア臭といった不快なニオイだけ。リンゴやミカンのように、素材本来のニオイは全然消えないんです。生の状態のいいニオイはね。それが腐って、嫌なニオイになると消える」

「そんな都合のいい話があるんだ……公害の元だった、牛の糞尿が公害を解決してしまったと」

「はい。ただ、当初の液体は有色だったので、そのままでは水などに使った時に色がついてしまう。そこで、試行錯誤を重ねて無色透明にしたわけです」

 

左が原液に近い有色の消臭剤。右が無色透明化させた消臭剤『きえ〜る』

 

「さらに北見工業大学や研究機関と協力して、消臭効果も高めることにも成功しました。そのあと数々の安全性試験を行い、科学的にも安全性が証明されたので、無事に販売を開始したわけです」

「あれ、そういえば社長はホームセンターの店長をやっていましたよね? 」

「『きえ〜る』の発売を機に、店長を降りて事業部にしてもらいました。生産体制を強化して8年くらい経つと、原液を仕入れていた酪農家から『きえ〜るを仕入れ値で売ってくれ』と言われるようになって

「立場が逆転したんだ!面白いなぁ」

「そんなことになったもんだから、当時の会社の代表に『会社を辞めます。退職金はいらないからきえ〜るの権利をください』ってお願いをしましてね。それで独立して作ったのが今の会社です」

「すごい決断!こんなにスゴい商品の権利をくれるなんて、当時勤めていた会社も太っ腹でしたね」

「当時は、誰もここまで売れると思っていませんでしたから(笑)。それに仕組みが謎すぎて、商品の説明をできる人がいなかったんです。だから比較的、詳しい僕が権利を持っていた方が安全だった」

「仕組みが謎…?」

「『きえ〜る』の消臭力と安全性は科学的に実証されていますよ。ただ、わかっているのは、牛のおしっこが微生物によって分解されるときに発生する酵素が、ニオイを消してくれる効果をもっていることだけなんです」

「要するに、どの微生物のどういった働きが消臭効果をもっているのか、具体的にわかっていないんです」

「微生物を研究している僕からしても、この仕組みは謎が多そうだなぁ。だってコレ、分離・同定できないですよね?」

「そうなんですよ」

 

「分離・童貞…? 分離したことないヤツのこと? 」

「違います。それぞれの菌がどういった働きをしているのか、個別の菌に分けて(分離)、菌種を特定する(同定)ことです。Aの菌がこういう働きをしていますって証明するためには、Aの菌だけ隔離しないとわからないでしょ?」

「消臭の働きを持つのがどの菌か調べるためには、Aの菌とBの菌に分けてそれぞれ調べなきゃいけないってことかな」

「そうそう。さらにややこしいのが、Aの菌とBの菌が一緒にいることで、はじめて消臭効果を生んでいる可能性もあるのね。だから、この菌のおかげで消臭効果があると断定するのが難しい」

「うーん。ちょっとピンとこないので、 漫画で例えてもらっていい?」

 

漫画で例えるならヤンキー野球マンガの『ROOKIES』かな。不良が個で悪さしてるとどうしようもないけど、主人公の川藤先生が掌!(たなごころ)って言いながら9人の不良を束ねると超強くなる状態。菌の世界って複数要因が重なると現在の科学で解明できない効果を発揮することがあるんだ

「無茶振りしたのに、めちゃくちゃわかりやすい…! つまりチーム(『きえ〜る』に含まれる微生物たち)全体で消臭効果があることはわかっているけど、どの微生物のおかげかはわからないってこと?」

「そうそう。そんな感じ」

「仕組みが謎だらけなんて、まさに魔法のような液体だなあ」

「もしかしたら、北海道の土地固有の菌が関わっているかもしれないですね。この技術を沖縄に持っていったら、再現できない可能性もありそう」

「そうですね。以前はいろんな酪農家さんが汚水処理事業をしていたのですが、全員がおしっこを無害化できたわけじゃないんです。同じ北海道でも、原液を作れる酪農家さんとそうでない酪農家さんがいました

「汚水処理するためには施設代や管理コストもかかりますから、金銭的な理由もあると思います。でも、おそらくそれだけが原因じゃないんです」

「処理作業をする場所の気温や湿度にも影響を受けているだろうし、酪農家さんの性格による向き不向きもありそう」

「そんなに環境に左右されるということは、季節や仕入先の酪農家によっても原液の品質に差が出ますよね?」

 

「酪農家さんによって、牛を育てる環境も与えている餌も違いますから、品質に差がでるのは当然です。我々はその違いを、甘口、辛口、コクという言葉で違いを表現していて

「うちの工場で色や手触りを確認したり、成分量を数値化できる機械を導入したりして、完成品の品質に差が出ないように、それぞれの原液をブレンドしているんです

「職人さんたちの技術も『きえ〜る』を支えているんですね」

「そうですね。うちの杜氏たちが日々研究を重ねながら頑張ってくれています」

「わからないことは多いですが、大切なのは『いかに乳酸菌や酵母菌が発酵しやすい環境を維持してあげられるか』なんですよ。それがうちの誇るコアスキルでもある」

「仕組みが解明されていない分、未知なる可能性をまだまだ秘めていそうだなぁ。 近い将来、環境ダイゼンが日本を代表するグローバル企業になってもおかしくない…!」

「いやあ、面白いなぁ。公害の原因だったものが、微生物の働きで今や公害を防いでいるなんて。しかも偶然、発酵に適した環境が揃っていた酪農家さんが原液を作って、たまたま、消臭剤を探していた窪之内さんの元へ持ち込んだ。これだけ偶然が重なったからこそ誕生したわけだもんね」

「不思議液体すぎる!」

 

取材を終えて

『きえ〜る』は、いろんなミラクルが重なって生まれた魔法のような液体でした。

牛のおしっこから生まれたこの液体が、いつの日か本当に地球を救う日がくるかもしれません。

 

実際、農薬の使いすぎで土壌汚染が深刻化している発展途上国では土壌改善剤として使用され、ベトナムやカンボジアなどに年間150トンも出荷されているようです。

 

もちろん、僕たちの日常生活でも活躍の場はたくさんあります。記事で紹介した以外にも、加湿器や空気清浄機に入れて使用するタイプや、車内消臭用など、30種類以上の商品が販売されています。

 

【大容量】加齢臭 世代臭 部屋干しの嫌なニオイを消臭 きえ〜る微笑 衣類のバイオ消臭液 無香 1L 【大容量】加齢臭 世代臭 部屋干しの嫌なニオイを消臭 きえ〜る微笑 衣類のバイオ消臭液 無香 1L

 

ちなみに1番人気は、洗濯のときに洗剤と併用することで、生乾きや汗の不快なニオイを防いでくれる『きえ〜る 微笑(ほほえみ)』だそうです。これから梅雨を迎える今の季節にはピッタリ!

アマゾンからも購入できるので、ぜひ一度試してみてください。

 

それではまたー!

 

写真:小林直博

「レンタルバイク」って知ってる? 元ライダーたちがふたたび風になる方法

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「レンタルバイク」って知ってる? 元ライダーたちがふたたび風になる方法

みなさん、風、感じてますか?

 

風といっても、大都会を吹き抜けるビル風でも、地下鉄がホームに連れてくる列車風でもありません。


ブーン! ブンブンブーン!!!

 

青春時代のシンボル的乗り物……そう、バイクだからこそ感じられる”あの爽やかな風”です!

 

申し遅れました。ジモコロライターの田中です。

 

実は僕、学生時代に普通二輪の免許を取得してバイクも購入したのですが、上京のタイミングで手放してしまったんです。

以来、10年以上バイクとは疎遠に……。

 

でも、スカッと晴れた日や、海沿いの道なんかを見ると、今でも無性に感じたくなるんですよね、あの風を!

という話をジモコロ副編集長のギャラクシーにしたところ……

 

「レンタルバイクって知ってます?」

「何それ? レンタカーみたいに、バイクをレンタルできるサービスがあるんですか??」

「あるらしいよ。実は僕も15年前までバイクに乗ってたんだけど、売っちゃったのよ。久しぶりにバイクに乗ってみたいんだけど。そのために買うのも、ちょっとねぇ? そんな時に……」

「レンタルすれば良いと! なるほどメッチャ最高じゃないですか! ぜひ借りてツーリング行きましょうよ!」

「オーケー! じゃ今から行こう

「今!? いや予約とかしてないし、心の準備が……」

 

手ぶらでも安心! レンタルバイクってどんなサービス?

半ば強引に連れられてきたのは、『レンタル819(バイク)』お台場店。全国130以上の店舗を展開し、そのシェアは国内最大規模。

 

店内には、最新のバイクがズラリと並んでいます。カッコイイ!

 

「うぉぉぉ~! 久しぶりに血が騒ぐぜー!」

「確かに、改めて見るとバイクってカッコイイですよね。でもいきなり『バイク貸してください』なんて言っても……」

 

「いけます」

「誰!?」

「はじめまして。『レンタル819』を運営するキズキレンタルサービスの林です。初めてのご利用でも、免許証と本人名義のクレジットカードさえあればご利用いただけますよ」

「あの~、バイクは遠い昔に売っちゃったんで、ヘルメットもグローブも持ってないんですけど」

 

「いけます」

「嘘っ!?」

 

店内にはヘルメットやグローブのレンタルコーナーが。サイズも幅広く用意してくれているので、僕のような頭囲60cm以上のビッグヘッドにも対応してくれるそう(本来ヘルメットは要予約です)

 

予約とかしてないんですけど、それでも?」

「えぇ!? 予約を……していないぃぃ~~~?」

 

 

「いけます」

「マジで!」

乗りたい車種がある場合は事前にご予約いただいたほうがいいですけど、アポなしでもご利用できます」

「ちなみに、どういった車種をお借りできるんですか? 借りることが可能とわかった途端に、めちゃめちゃ目移りしてきた!! あれも良い! これもかっこいい!」

「定番のものから、かなり新しいモデルまで、しかも国内メーカーだけではなく、DUCATIやHARLEY-DAVIDSON、BMWといった海外メーカーも取り揃えてます。お好きな車種を選んでください」

※思い出のバイクや乗ってみたかったバイクがある人は予約しよう!

 

ド迫力のハーレー! 高くて買えなかった憧れの車種も、レンタルなら……!

 

「街乗り用から、オフロード用、さらにはビッグスクーターまで、あらゆるニーズに応えてくれるラインナップだ……。あ、原付も借りられるんですね」

「そうなんです。最近では、TV番組『水曜どうでしょう』に影響を受けてカブを借りにきた大学生のグループがいたり、アニメ『ゆるキャン△』の影響でソロキャンプをしたい女の子が原付を借りに来たこともありました」

 

世の中のトレンドを受け、東京モーターショーにはアウトドア仕様にしたクロスカブを出展。かなり話題になったそうです。なにこれ、めちゃかわいい!

 

ふじさんとカレーめん ふじさんとカレーめん

実は「バイク離れ」はそれほどでもない

「若い世代の方たちや女性の方たちも結構利用されているんですね。『バイク離れ』のイメージが強かったので、少し意外でした」

「バイクを購入する世代は50代の人たちが多いんですが、レンタルとなると、利用者は20代から70代まで平均的に分布しています。『バイク離れ』と言われていますが、若い人たちも乗りたいということですね」

「乗りたいけど、買うお金はないってことか……と言ってる僕も、買うのはちょっと厳しいから、こうしてレンタルバイクに興味を持ったわけですけど」

「バイクの価格はこの20〜30年でだいぶ高騰していますからね。昔は70万円ぐらいだった車種が、今は140〜150万円くらいになっています。それに対して若者の給料はそこまで上がっていないので……」

「140〜150万円のバイクを購入できる人と、レンタルする人、二極化してきてきてるのかな?」

「ちなみに、バイクを購入する場合とレンタルして月に数回ツーリングにいく場合、車体や維持費含めてどのくらい差が出るものなんですか?」

「あくまでも当社のデータですが、レンタルは購入する場合と比べて、およそ100分の1の費用で済みます

やっっす!! でも、そりゃそうか。バイクそのものだけじゃなくて、駐輪所も要らないし整備代もかからないんだもんなぁ

 

レンタル819の料金体系。250ccのバイクを24時間利用すると、12,400円!詳細はこちら

 

「僕らのように、免許はあるけどしばらく乗っていなかったペーパーライダーだと、やっぱり保険が気になるんですが……」

「まず、基本料金のなかに任意保険が含まれています。対人賠償や対物賠償ですね」

「正直、久しぶりすぎてうまく運転できる自信がありません。もしコケちゃったら……?」

「コケてしまった場合などは車両補償があります。車種のクラスによって金額は異なるんですが、P-4のクラスだと1日3200円を支払えば、全損させてしまっても、免責の5万円をご負担いただくだけで大丈夫です」

 

その他詳しくはこちら

 

「手厚い! これで心のつかえが取れた」

「では、実際にレンタルしてツーリングしてみてはいかがですか? お台場からだと、千葉方面なら富津岬、横浜方面なら三浦半島や江ノ島、八景島あたりがいいと思いますよ」

「ツーリングコースまで教えてくれるの!?」

「私もスタッフもバイク大好きなライダーばかりですから。どういうツーリングにしたいとか、どこを見たいとか、漠然と『どっか良いコースない?』とかでも構いませんので、お気軽にご相談ください」

「でも、実際に運転するのは、まだ不安が……」

「とりあえず、どういう車種にするか、試乗して選んでみましょう。バイクにまたがってみれば、気分も盛り上がってくるはず!」

 

バイクを選ぶ時間は最高に楽しい

レンタルするなら、まずは車種を選んでまたがってみましょう。

僕は、ずっと乗ってみたかったオフロード車にトライ……しようと思ったんですが、足の長さに不安が残るので、違うのにしようかな。

 

結局、足が楽々届くカワサキのエストレヤにしました。おしゃれバイクの代表格ですね。林さんによると、女子人気も高いそう! モテるかな〜?

こうやって、気軽に色んな車種を試せるのも、レンタルバイクの魅力ですね!

 

ギャラクシーは一度乗ってみたかったというビッグスクーター(スズキのバーグマン)を選んだようです。ブラックのボディがかっこいい!

 

車種が決まったら、車体にキズがないかチェックしたり、

 

契約に関するアレコレを記入したり。このあたりはレンタカーと同じですね。

 

スマホホルダーも借りられるから、ナビ機能を使えば土地勘がなくても安心!

運転が久しぶりという人は、どの道をどう通って……なんてことを考える余裕がないかもなので(僕がそうでした)、絶対に借りたほうが良いです。

 

オプションの料金表

ヘルメット(要予約) ¥1,000/1日
ディスクロック/ワイヤーロック ¥200/1日
グローブ ¥300/1日
ツーリングネット ¥100/1日
スマホホルダー ¥500/1日
インカム ¥1,500/1日

※店舗により取り扱いが異なるため、詳細はご利用予定の店舗にご確認を!

 

優柔不断な僕らは車種選びでかなり時間を使いましたが、ここまでの所要時間は30分くらい。あっけなく借りることができました。

 

「じゃあそろそろ、実際にツーリングに行ってみましょう!」

「あ、はい……まあ、どうします?」

「ん? え? もう行くの? え?」

 

「じゃあ……うん、はい」

 

「ビビりすぎ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいね。え~っと……左手がクラッチで、左足はギアですよね……?」

「え、このボタン何? ウインカーどれ?」

「落ち着いてください! 運転の仕方はスタッフがちゃんと教えますから!」

「不安しかない」

「大丈夫ですって! お店にはお二人みたいに10年20年バイクに乗ってないって人もいっぱい来るんですから。そんなお客さんでも、戻ってくる頃には晴れやかな笑顔になってるものですよ」

 

「え? あ……はい?」

 

「(聞こえてねーな……)」

 

とりあえずバイクを借りることには成功したので、ここからは二人で実際にツーリングに行ってみたいと思います!

 

ツーリングスタート!

「じゃあ、行くか」

「10年ぶりだからマジで運転の仕方がわからない。まずはセルスターターを押しながらアクセルを回して……」

 

キュロロ! ブォンッ! ドッドッドッドッ……!

 

おぉ、エンジンかかった! で、一速にチェンジしたら……

 

ドドドドドドドドドドドド……

 

「うわ怖~~~!!!!」

「風になるどころじゃない。マジで怖い。恐怖以外の感情を失ってしまった」

「次はどっちに行くんだっけ。道なりに真っ直ぐで、途中で……」

「田中くん、ウインカー出しっぱなし!!!」

 

最初はビビり倒しの二人でしたが、30分もすると余裕が出てきました。頭ではバイクの運転を忘れていても、体が憶えてるものですね。

 

最高~~~~!!! そっちどう?」

周りを見る余裕が出てきてからは楽しくてしょうがない。そうだった、バイクってこんな感じでした。これを求めてたんです僕は!」

「僕なんか車の免許を持ってないから、公道に出ること自体15年ぶりだったのよ。最初はホント怖かったけど、気づいたらいつのまにか、『イージュー★ライダー』口ずさんでたわ」

「僕は玉置浩二の『田園』でした。あ、なにやら巨大な橋が見えてきましたよ! あれは……」

「横浜ベイブリッジだ~~~~~~!!!!」

「イエ~~~イ!!!」

 

 

横浜ベイブリッジをバイクで渡るなんて滅多に経験できないので、ヘルメットにカメラを装着してみました! 横風がちょっと怖いけど、開放感がすごすぎる!!

 

「気分も盛り上がってきたところで、オナカすいてきましたね。このへん、ウマいラーメン屋があるんですけど、行きません?」

ツーリングと言えばラーメンだよね! 行こう行こう!」

 

というわけでやってきたのは、横浜家系ラーメンの名店、杉田家さん。

 

このコッテリ感がたまらん〜〜!!

まさに家系。濃い味が疲れたカラダに染み込む……

 

普段食べるラーメンの何倍もウマい気がする!!

 

「バイク、楽しいですね。明らかに車より不便な乗り物なのに、何がこんなに楽しいんだろ」

「登山でも、ロープウェイで頂上に上るより、歩いて登ったほうが達成感はあるでしょ。不便とかしんどさって、決して悪いものではないですよね」

「(ライダーあるある……カッコつけたセリフ言いがち)」

「20年前、淡路島をバイクで一周したことあるんですよ。途中で雨が降って顔が痛くて、半泣きで走り続けたつらい旅だったのに、人生で一番覚えてる旅がその時のツーリングで。その後、車でも一周したんだけど、そっちはまったく記憶に残ってない」

 

20年前のギャラクシー

 

「つらい旅のほうが記憶に残りますよね。バイクは特に天候とか気温がダイレクトにのしかかってくる。『夏は涼しそうで良いね』って言われがちだけど、実はメチャ暑いとか、意外と知られてない」

「あるある」

 

お腹もいっぱいになったところで、再び目的地を目指します。目的地と言っても、何となく海の方……くらいしか決めてなかったんですけど。

 

「それにしても、エストレヤは安定感抜群! 車高が高くないからトラックが横を通っても風の影響を受けにくくて、めちゃめちゃ運転しやすいです! 信号待ちでも足が地面にラクラク届くので安心感もありますね」

「なるほど、だから小柄な女性ライダーにも人気なんだろうね。手軽にマニュアル車のおもしろさを味わえるというか」

「ギャラクシーさんはビッグスクーターに乗ってみたかったってことですけど、今回、実際に乗った感じはどうでした?」

「バイクは不便さが良いって話をしたけど、ビッグスクーター……めっちゃ快適です。まず、ギアチェンジの必要がないっていうのが、久しぶりに乗るライダーにはピッタリ。なのにスピードも出るし、ポジションも楽だし、メットは収納できるし」

 

さてさて、そんな約2時間のツーリングの末、ついに目的地に到着しましたよ! 

 

八景島!! クルマでも電車でも来れるけど、バイクだとアドベンチャー感が段違い!!

 

ツーリングの定番といえば、やっぱりソフトクリームと……

 

甘めの缶コーヒー! カップに入ったコーヒーじゃだめなんですよね。缶コーヒーじゃないと! 理由はしりませんが、とにかくそうなんです!!!

 

「ギャラクシーさん、改めてですが、バイクめっちゃ楽しくないですか?

「うん、最高。若かりし日のことを思い出しちゃうね」

「わかる〜! 青春時代にカムバックしちゃう〜! 甘酸っぱい〜!」

「落ち着いて」

「そりゃ利便性を考えればクルマの方がいいかもしれないけど、やっぱりバイクにはバイクの魅力がありますね」

 

 

当初はビクビクしながら運転していましたが、帰る頃にはすっかり慣れてました

 

というわけで、再び2時間ほどのツーリングを経てお台場まで帰ってきました。ガソリンを満タンにして返却しましょう

 

時間としてはたった4〜5時間。行き先も都内から目と鼻の先。どうってことのない日常です。でも、バイクに乗ったとたん、日常の風景が非日常になる……それがバイクの醍醐味なんじゃないかと感じました。

 

「ペーパーライダーのみなさん! レンタルバイク、楽しいよ!!」

 

(おわり)

その挫折は「物語」になる。困難を生きるすべての人へ

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その挫折は「物語」になる。困難を生きるすべての人へ

みなさんは人生で挫折を経験したことがありますか?

 

受験での挫折。仕事での挫折。理想と現実の狭間で、自分なりに手を尽くしたけれどそれでもどうにもならないことって、世の中にはたくさんあるような気がします。

 

でも、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。

 

その挫折は、物語になります。

 

もちろん、困難の度合いは人それぞれです。「生きていれば必ずいいことがある、だから頑張れ」なんてことを言える立場でもありません。現実は厳しいこともそれなりに分かっているつもりです。

 

でも、暗闇のなかにいても諦めずに「走り続けること」さえできれば、走り続けただけの世界は見えてくる。少なくともそれだけは、言えるような気がするのです。

 

ここにみなさんにご紹介したい本があります。

 

『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』(著・安田裕輔/講談社)

 

この本の著者である安田祐輔さんも、そんな挫折から「走り続けること」で這い上がった人です。

 

 

安田さんは、発達障害によるいじめ、一家離散、暴走族のパシリ生活などを経て、偏差値30から猛勉強の末に2浪でICU(国際基督教大学)の教養学部国際関係学科に入学。

 

一流大学に入って順風満帆な人生が始まるかと思いきや、卒業後に勤めた大手商社ではうつ病を患い、1年間の引きこもり生活を経験します。

 

人より3年遅れて会社員になり、4ヵ月でドロップアウト……。それが僕の履歴書の全てだった。うつ病なんて、心の弱い情けない人がかかる病気だと昔は思っていた。でも、僕は明らかにうつ病だった。(中略)ちょっとしたことをきっかけに、僕も「異常」だと思っていた世界の仲間入りをした。「異常」と「正常」の壁は、すごく薄いことを知らなかった。「異常」な世界に入るために、複雑な手続きはいらないらしいーー(『暗闇でも走る』より)

 

毎日30錠の薬を飲みながら、暗闇のなかで自分に問い続ける日々。自分のやりたいことは何なのかを悩み続けた先に、安田さんは社会のなかで弱い立場にある人、最も苦しい状況にある人を幸せにするために「何度でもやり直せる社会をつくる」という、自分なりの「正しさ」を見つけます。

 

そして、「勉強」という自分ができる唯一の能力を生かして、2011年に一念発起して中退・不登校経験者向けの受験塾「キズキ共育塾」(以下、キズキ)を立ち上げます。

 

立ち上げ当初は生徒が思うように集まらず困難の連続だったといいますが、半数が挫折経験者の講師陣による生徒の心に寄り添う指導が評判を呼び、着実に事業規模を拡大。現在生徒数は約300名、東京と大阪に5つの校舎を展開するまでになりました。

 

「世の中に必要とされているけれど、これまでになかったもの」を生み出した社会起業家として、今やメディアからも注目を集める存在になった安田さん。彼はなぜ、挫折を乗り越え、人生をやり直すことができたのでしょうか。

 

若者たちに伝えたい「挫折を乗り越えるために大切なこと」を、ライターの根岸達朗が聞いてきました。

 

話を聞いた人:安田祐輔(やすだ・ゆうすけ)

1983年神奈川県生まれ。国際基督教大学(ICU)教養学部国際関係学科卒。大学卒業後、総合商社勤務を経て、中退・不登校経験者向けの受験塾「キズキ共育塾」を立ち上げ、現在同代表を務める。中退予防のための大学への講師派遣・研修、貧困家庭の子どもの学習支援プロジェクトなども立ち上げ、多岐にわたるアプローチで若者を取り巻く社会問題と向き合っている。

 

逃げてもいい。でも救いは求め続ける

根岸「安田さん、今日はよろしくお願いします。まずは安田さんが挫折を乗り越えて立ち上げた受験塾『キズキ』について教えてください」

安田「はい。キズキは不登校・中退・ひきこもり・うつ・発達障害・再受験など、もう一度勉強したい人のための個別指導塾です。講師のほとんどが挫折の経験者ということもあって、挫折した人の気持ちに寄り添えることが僕たちの強みにもなっています」

根岸「なるほど。僕もうつで会社に行けなくなったことがあるのですが、今の世の中って、本当にいろんな困難を抱えている人が多いなあと感じていて」

安田「そうですね。不登校やうつなど、何かしらの課題を抱えて社会から孤立しかけている若者は、ここ30年で割合にして3倍くらいに増えていると言われています。社会と個人のあり方が不適応になっている。原因はひとつではないと思います」

根岸「多様性という言葉が注目を集める時代ですが、まだまだあらゆる場面で『普通』であること、つまり『みんなができることは、できて当たり前』が求められています。だから、学校や会社の『普通』に合わせられなくて苦しんだり、自分はだめな人間だと思ってしまったりする」

安田「そうなんです。それが子どもであれば不登校、大人であればうつというかたちで現れてくる。そうして落ち込んだ人間ほど、人に触れるとまた失敗するかもしれないと思ってひきこもっていく。状況が苦しければ苦しいほど、まわりとの関係を絶ちたくなるのが人間です

根岸「負のスパイラルですね。そうして体もどんどん衰弱していくわけで……」

安田「ええ。僕も会社を辞めてうつ病でひきこもっていたときは体がボロボロでつらかったですね」

一日30錠近くの薬を飲んでいたため、幻覚が見えていた時期もあった。(中略)食欲もなくなり、体重は40キロ台にまで落ちた。身長はうつ病になっても当然変わらないので、176センチ47キロというガリガリの体型になった。食欲がわかない中でも体重を戻したくて、カロリーの高いピーナッツばかり食べていたら、肌がニキビだらけになったーー(『暗闇でも走る』より)

 

根岸「大切なのは、そこでどう人生を諦めずにいられるかですよね。安田さんは何とか気持ちを前に向けて、週末だけはかつての同僚だったり、学生時代の仲間に会おうとしていた。だから救われたところがあったわけで」

安田諦めずにほかの人に救いを求め続けることは大事なんです。そうすれば、誰かがかならず手を差し伸べてくれるし、チャンスも与えてくれる」

根岸「会社や学校が合わないなら、そこから逃げ出してもいいと」

安田「はい、もちろんです。その瞬間はとてもつらいかもしれない。でも、そこに合わなかったからといって、そんな自分を見限る必要はないと思っています。遠くまで行くのがつらければ、地域のNPOや地域活動などに参加してみるのもいいと思います」

根岸「僕もうつでしたが人とつながらないとヤバいことになる気がして、外との接触を絶たないようにしたのはよかったと思っています」

安田「一歩の出し方っていうのは人それぞれでむずかしいんです。自分で一歩を踏み出せる人もいれば、そうでない人もいる。でも、僕はそのなかなか一歩が踏み出せない人にも、諦めずに一歩を踏み出してもらえるようにしたい。そのためには、まわりの人がどれだけの希望を見せてあげられるかが大事だと思っているんです」

 

「絶望」を「希望」に変えること

根岸「希望というのはつまり、人生を諦めなくてもいいのかもしれないと思ってもらうということですよね」

安田「はい。キズキでいえば、僕はその希望をまずはホームページから感じてもらえるようにしているつもりです。スマホで寝転んで、『不登校 進学』とか『不登校 受験』で検索した時に、うちのホームページが上の方に出るようにしているのはそのためです。実際、ホームページを入口に初めの一歩を踏み出してくれる人は多いです」

 

根岸「でもそこから塾に通って、勉強を続けられるようになるかというと、またハードルがありそうですね」

安田「今は必死に頑張っているキズキの生徒たちも、相談に来た当初は『人よりも遅れてしまった』『もうやり直せないかもしれない』と悩んでいました。不登校や中退は、クラスで数人くらいしか経験しないような特異なことなので、そんな経験をしてしまったが故に、『自分は特別に劣った存在だ』と思ってしまうんです」

根岸「どうやってそこから希望を感じてもらうんですか?」

 

安田「僕はそんな若者を前にしたときに、まず自分の話をしたり、キズキで働く講師たちの話をしたりします」

根岸「ふむふむ」

安田「例えば、僕は2年遅れで大学に入って休学もして、3年遅れで卒業した。ある大学生講師は、高校中退してずっとひきこもって、4年遅れで大学に入学し、誰もが知っている大手企業の内定をゲットした。考えてみれば当たり前なんですけど10代の挫折で人生が決まるわけがないんです

根岸「そうですね」

安田「そもそも学校という制度自体、140年くらい前に『誰かがつくったもの』。合わない人がいても当然です。そんな話をすると、相談に来た若者が少しだけ顔を上げてくれるのを感じますね」

根岸「まず、相談に来ていることが『人生このままでいいと思ってない』証だと思うし、まずはその勇気をちゃんと評価してあげることも大切なんでしょう」

安田「はい。でもそのときに、闇雲にこれからは『頑張ればなんとかなる』ということを伝えてもだめだと思っています。そもそも困難な状況にある人たちは『頑張れない』ことに悩んでいる。じゃあどうしたら『頑張れる』ようになるか。大切なのは『頑張った』先の未来を想像できるようにしてあげることです

根岸「頑張った先の未来」

安田「これは中退・ひきこもりの若者だけに限った話ではありません。大きな挫折経験のない人でも、実現不可能に見えるすごく高い目標に対して、努力し続けられる人は少ない。だから日々の会話を通じて、少しずつ希望を提供する。それが支援の第一歩だと考えているんです」

 

その挫折は、物語になる

根岸「時間はかかるのかもしれないけれど、あのとき挫折していたからよかったって思えたらいいですよね。僕も今フリーライターをやっているのも、会社勤めが合わないという自分なりの挫折があったからだなあって思いますし」

安田「僕も親の離婚、暴走族のパシリ、中退、ひきこもり……いろんなことを経験してきたけれど、それがあったから、社会のなかでつまずいた人の気持ちが分かるようになった。『何度でもやり直せる社会をつくる』という、自分が人生をかけてやりたいことも見つけられたんだと思います。

何かしらの挫折を経験した僕らは、ラッキーなんですよ

根岸「ラッキー。確かになあ……」

安田「僕の好きな言葉に、マッキンタイアという政治哲学者の言葉があります」

『私は何を行うべきか』との問いに答えられるのは、『どんな(諸)物語の中で私は自分の役を見つけるのか』という先立つ問いに答えを出せる場合だけである」(『美徳なき時代』アラスデア・マッキンタイア著、篠撝榮訳/みすず書房)

 

安田「『時間』の力は偉大で、いつかすべてを癒してくれます。それだけではなくて、『時間』はその苦しみを『物語』に変えてくれます。

その『物語』の中で、自分はどんな『役』を見つけるのか。それに答えを出せたときに『今、何をすべきか』が現実的に見えてくるんでしょう」

根岸「なるほど。ただ、いくら挫折は物語になるとはいっても、その渦中だとなかなかそうは思えないものですよね。どん底の状態から抜け出すために必要な思考法ってあるんでしょうか?」

安田「まず、『考え方をずらしてみる』ことですね。『こうじゃなきゃいけない』という思い込みをできるだけ外すことが大事。早起きして会社にいかなくちゃいけないとか、人とうまくコミュニケーションできないといけない、とか思わなくていい」

根岸「ああ。僕も『社会人とはこういうものである』という謎の幻想に囚われていたようなところがあったなあ……(しみじみ)」

 

安田「現代社会において『こうしなければならない』はほとんどないですよね。『学校』という仕組みも『会社』という仕組みも、所詮は誰かが作り出したものに過ぎません。

だからその仕組みになじめなくてもがいているのであれば、逃げ出して新しい道を探してもいいんです。それが挫折を物語にする第一歩です」

根岸「勇気を持って、逃げ出すのも大事ですね」

安田「そうですね。多くの人から賞賛されるような学校に行くことや、給料が高くて有名な会社に勤めることよりも、自分の『物語』に沿って、自分の納得する道を歩んだ方が幸福や自己肯定感には繋がるんだと思います。あともうひとつ大事なのは、『変えられるもの』だけに注目するということ

根岸「変えられるもの?」

安田「たとえば僕の場合、発達障害があること、温かい家庭に生まれなかったこと、早起きが苦手なこと、人とのコミュニケーションが苦手なこと……そういうものは『変えられない』。

誰しも人間は生まれ持った条件の中で生きなければならないから、『変えられない』ものを『変えようとする』のは諦めた方がいいんです

根岸「大切な考え方ですね。絶対に『変えられないもの』を無理に『変えようとする』から、コンプレックスだって強くなるわけで。天然パーマがコンプレックスでストレートパーマをかけてみたら、違和感がすごいみたいなのと一緒だなあと。昔の僕のことですけど。はははは……」

安田「僕は早起きができないから仕事は昼からするようにしているし、対面のコミュニケーションが得意ではないから、誰かと揉め事があったときは文章で考えを伝えるようにもしています。『変えられないもの』は『変えられないもの』として受け入れることも大切なんですよね

根岸「いやー僕はそういうことに、結構最近まで気付けなったかもしれないなあ……」

 

安田「気付けてよかったじゃないですか。これも僕が好きな言葉のひとつなんですけど、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーの『ニーバーの祈り』をご紹介したいです。彼の言葉は、アルコール依存・薬物依存の治療メソッドのなかで広く使われています」

神よ

変えることのできるものについて

それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては

それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ。

(訳:大木英夫)

 

安田「僕は特定の宗教を信仰しているわけじゃないけれど、この言葉がいつも強く響くんです。なぜなら僕には『変えられないもの』がたくさんあったから。

でも一方で『変えられたもの』もあった。それは僕の努力というよりは、偶然出会った人たちのおかげだったと思っています。そういう人たちに出会えた僕は、やっぱり運が良かったんです

 

「運の良さ」を認める

根岸「それでいうと今回の本でも、安田さんは『自分は運が良かった』ということを意識的に書かれていましたよね。そのあたり、もう少し詳しく話を聞かせてください」

安田「実際、僕は本当に苦しんでいる人たちよりも運が良かった部分が結構あるんです。親が予備校のお金を払ってくれたこととか、中学受験のために小学生のときに勉強していたこととか……やり直しがしやすかった部分もあるんですよね」

根岸「なるほど」

安田「でも、この仕事をしてきて、自分なんかよりももっと苦しい状況にある人たちが、それでも挫折を乗り越えて頑張って生きていこうとしていることも知ったんです。

小さいときにまったく勉強してないから、20歳を越えても小数点の計算ができない。けれど、どうにか人生をやり直したくて僕たちのところに来てくれた人もいて」

根岸「そうなんですね」

安田「そういう人たちが人生をやり直すには、僕がやってきたことより、もっともっと大変な勉強をしなければいけません」

根岸さらにお金がないとなったら、やり直したくても、どこの教育機関にも頼れませんよね」

安田でも、僕はそういう人たちを絶望させたくなかったやっぱりうちにはお金がないからとか、この人みたいにはなれないからと思ってもらいたいたくなかった。だから自分は運が良かった、ということをまずは認めようと思ったんです」

根岸「それは人生の本質なんだと思うなあ。今この瞬間に自分が生きているのはすべて運のおかげ。それを認めてから始まる人生もあるような気がするんです」

安田「今でもよく夢の中で、すべての人に見捨てられて誰も助けをくれない時があります。でも、目が覚めて少し経つと、『あぁ、もうこんなに苦しいことは起こらないんだろうな』って思う。オフィスに行くとたくさんの人たちの笑い声が聞こえます。毎日大変ことばかりだけれど『もう少しだけ頑張ってみるか』って思うんです

 

 

まとめ

人は挫折します。それは自分がこうありたいという理想があるから挫折するのだとも思います。でもその理想ははたして、現在の状況に苦しみながら、「我慢して」でも叶えなくてはならないものなのでしょうか。つらい気持ちになるくらいの理想なら、いっそ諦めることだって必要なのではないでしょうか。

 

もちろん、その理想が心の底から実現したいと思えるものであれば、我慢は我慢でなくなるのでしょう。だからもし、我慢が耐え難いと思うような理想であれば、それは真の理想ではない可能性だってあります。

 

僕は今回、安田さんの話を聞きながら、人生を健やかに生きるためのヒントは、自分なりの「正しさ」のなかで理想を持つということなのではないかと感じました。

 

誰かからあてがわれたものではなく、自分の「正しさ」に目を向ける。それが「正しい」と思える、美意識を持つ。それは、正解も不正解もない世の中で、何を自分は信じられるかということでもあるのでしょう。もしそうして信じたものが「違った」としても、その都度舵を切ってもいいくらいの世の中が僕は好きなんだなあ、ということもあらためて感じた今回のインタビューでした。

 

最後に、安田さんの言葉を紹介します。

 

 

安田さんが代表を務めるキズキグループでは、不登校・中退者向けの学習塾の運営に加えて、今後はうつ・発達障害の人向けに特化したビジネススクールの展開も考えているそうです。

 

安田さんが発起人のひとりとして始まった貧困家庭向けの「スタディクーポン」も、さらなる普及を目指していく考えとのことなので、こちらもぜひ注目してみてください。

 

ではまた!

 

写真:藤原慶(instagram

高所恐怖症は絶対ムリ!“橋の上”や“風車の先端”で仕事する男たち

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高所恐怖症は絶対ムリ!“橋の上”や“風車の先端”で仕事する男たち

株式会社バーグハンバーグバーグのかんちと申します。

福島県南相馬市生まれの33歳、みずがめ座、A型、男です。先日家族で実家に帰省したところ、海沿いにこんなものが4基建てられていました

 

みなさんご存知、風車(風力発電機)です。

風の力でクルクルと羽を回転させて発電し、クリーンなエネルギーを生み出しています。

 

 

僕の地元(南相馬市)は東日本大震災以降、土地の有効活用自然エネルギーへの関心の高さから、発電のためのソーラーパネルがあちこちに設置されていたのですが、ついに風車まで建てられたのかと驚きました。

 

 

近くで見るとバカでっかい!

この大きさが皆さんにも伝わるよう、僕と風車の大きさ比較写真を息子(4歳)に撮ってもらったんですけど……

 

 

ダメでした。

 

目測ですが、地上から羽の先端まで100mほどあるでしょうか。

しばらく息子と二人でウォンウォンと音を立てながら回転する風車を眺めていて、ふとこう思ったんです。

 

 

と。

地上のソーラーパネルであれば手の届く範囲で点検やメンテナンスできますが、あれほど巨大な建造物だとクレーン車などを使わないと難しい気がします。

 

そこでちょっと調べてみたところ、風車の点検・保守作業エキスパートがいると知り、京都に飛び立ちました。

 

 

 

こちらが京都府京都市に本社を構える株式会社 特殊高所技術さん。東京と福岡にも営業所があり、全社員78名の会社です。

 

今回はお話を伺ったのはこちらのお三方。

 

「よろしくお願いします! 特殊高所技術さんでは風車のメンテナンス専門の会社なのでしょうか?」

「いえ、風力発電関連の業務は一部でして、一番多い仕事は橋の点検・調査の業務です。他にはダムや崖、道路の法面(のりめん)とといった急斜面の点検・調査業務なども行っています」

「橋の点検って、なんたら大橋やつり橋とかですか?」

「はい。もちろんそれも含まれますが、2m以上の橋は全て点検の対象となっていて、5年に1回近接目視することが法律で義務付けられています。ここで問題です。全国に2m以上の橋ってどのくらいあると思いますか? 約70万橋です!」

(答えさせて!)

「その橋がもし落ちてしまったら甚大な被害が出てしまいます。事故を未然に防ぐためにも定期的な点検が非常に重要となっています」

「そういえば橋じゃないですけど、数年前に中央自動車道の笹子トンネルで天井が崩落する悲惨な事故がありましたよね。高度経済成長期に作られたトンネルや橋の老朽化が進んでいてヤバい、といったニュースを見たことがあります」

 

【インフラ再考】迫りくる崩壊(1)老朽化「いずれ橋は落ちる」20年後、7割が建設50年超 – 産経ニュース 

 

「インフラの老朽化問題は国難とまで言われていますね。点検は橋に近付いたり重機使ったりして簡単にできるものもあるのですが、それが難しい場所もあるんです。そんな時に我々の出番となります」

「難しい橋の点検ってどんなのですか?」

「そうですね……」

 

 

「こんなのや」

 

 

「こういうのとか」

 

 

「こういうやつです」

「完全理解」

 

「このように私達は近接困難箇所と呼ばれる普通では近付けない場所に行って至近距離で点検します。そのあと図面に損傷箇所とその状態を記入し、損傷写真とセットで報告をしています」

 

橋梁点検報告書の例

 

「これで橋を補修すべきかどうかが判断できるんですね。事故を防いで人の命を守る重要なお仕事だ!

 

風車の点検は何するの?

「橋については分かりました! 風車の点検はどんな感じなのでしょうか?」

「そうですね……」

 

 

「こんなのや」

 

 

「こういうのとか」

 

 

「こういうやつです」

「最後カッコつけ過ぎでは?」

「すみません」

 

 

「これ、どうやって上まで登るんですか? ドラゴンボールのカリン塔みたいに1日がかりでよじ登るとか?」

「近いですが、上までは数分で行けます。タワーの内部に上まで一直線のハシゴがあって、機材抱えてひたすら登るタイプがありますね。他にも一人用ゴンドラがついていて自動で昇降するやつもありますよ。ゴンドラが動いている時はエレクトリカルパレードみたいなメロディが流れるんです」

「一生役立たない豆知識ありがとうございます! 点検はどのようにするのでしょうか?」

「模型を使って説明しますね」

 

「ここが風車のタワーの頂上で、ここに発電機などの装置が置かれています。ここまではハシゴやゴンドラでただ登ってくればいいので、言ってしまえば誰でも点検できる場所なんですね」

「ま、まぁ確かに」

 

「僕らはさらにそこからロープを使って移動し、この羽の先端まで至近距離で点検しています」

「それって双眼鏡やドローンでも出来ませんか?」

「近付いて触ってみないと気付かないような小さな損傷がよくあるんですね。そこに雨水が侵入して、湿ったところに被雷すればさらなる被害を招くことになります。そういった事故を防ぐためにも、近接点検にこだわっています」

 

「また点検・調査だけでなく羽の補修をすることもあります。羽の先端まで行きその場で補修したり、交換用のパーツを作って持っていって接着・塗装したりして補修します」

「宙ぶらりんの状態で補修作業するのすごい! 上の写真も雷による被害ですか?」

「そうですね。落雷によって羽の先端が破壊されたのを補修している様子です」

「風車の敵はカミナリなのか……。点検中に雷が来たらヤバくないですか?」

「そうなんです。風力発電機の点検の仕事で一番怖いのがなんです」

「どうやって仕事するんですか? 当たらないようにお守り持ったり祈ったりするしかない……?」

 

 

「風車の点検の際は、ストライクアラートと呼ばれる雷検知器を携帯しています。作業中にこれが鳴ったら急いで全員撤収します」

「へぇー、そんなガジェットがあるんですね」

 

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「あっ、Amazonだと意外と安い!買おうかな」

「なんで?」

 

「僕の地元に最近風車ができたのですが、風力発電機の数はどうなんでしょう? 橋に比べたら圧倒的に少ないのは分かりますが

「日本の風力発電機は2017年3月現在で2203基あるそうです」

「少ない……ですよね……?」

「そうですね。風力による発電量日本の全発電量の0.6%ほどしかありません。日本風力発電協会によると2050年には全発電量の10%以上を風力発電で供給するという目標を出しているので、今後さらに増えていくでしょうね」

「将来、日本のあちこちで風車がクルクル回ってるかもってことですね」

「はい。日本には風力発電向きの平地が少ないことや、周辺地域への騒音問題もあるので、今後は地上ではなく海上に風力発電機を設置することが増えていくと考えれています」

「海の上! 確かに騒音も土地の問題もクリアになるし良さそうです」

「欧州では洋上風力発電が急速に普及しているのですが、日本はかなり出遅れています。日本周辺の海は深く、発電機を海底に固定することが難しいんですね」

「日本海溝!」

「そこでいま、風力発電機を海にプカプカと浮かべる浮体式洋上風力発電という技術が研究されていて、実証実験が進められています」

 

浮体式洋上風力発電

 出典元:福島洋上風力コンソーシアム

 

「弊社ではこの海に浮かぶ風力発電機の点検もしたことがあり、それをやったのはうちの会社が世界初ではないでしょうか」

「これから浮体式洋上風力発電が普及したら、特殊高所技術さん、むちゃくちゃ儲かりますね!」

「日本は四方が海で囲まれていて、洋上風力発電のポテンシャルが世界で最も高いと言われています。クリーンなエネルギーが求められている今だからこそ、風力発電をもっともっと普及させてほしいですね。うちの会社も儲かりますし!」

 

この仕事の過酷なところ

特殊高所技術さんは本社が京都にありますが、現場もこの周辺が多いのでしょうか?」

「現場は日本全国、北海道の端から沖縄の端までありますね。さらにタイやモロッコなど海外での事業も進めています」

「となると過酷な現場を色々経験してそうですね。坂井さんどうですか? 『あっ落ちて死ぬかも……』 みたいなことありませんでした?」

「死ぬかも、というのは無いんですが、カンボジアに『日本カンボジア友好橋(チュルイ・チョンバー橋)』という橋があって、数年前にそこを点検させてもらった時は現地の暑さにやられそうになりました」

 

「カンボジアって1年中30℃を超える気候ですよね……。そこでこの重装備キツい……。でも『日本カンボジア友好橋』と名付けられた橋の点検でぶっ倒れるわけにはいかないだろうし」

「そうですね。この仕事で怖いのは落下事故もそうですが、熱中症もなんです。安全面から肌を露出することもできませんし、このとき熱中症対策の大切さを改めて痛感しました」

「もし誰かが熱中症で倒れたらどうするんですか?」

「そういったもしもの時のための訓練もしています。訓練体験してみます?」

「いいんですか!? やったー!」

「では熱中症の人役でお願いします」

「熱中症の人」

 

こちらは本社内にある訓練施設。崖の下で熱中症になった僕を上から釣り上げて救出する想定です。

 

「熱中症になっちゃった……う゛ぅ……うぅ……」

 

 

「…………」

「大丈夫ですかー!? いまそちらに向かいます!」

「(あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ~~~~!こえぇ……)」

 

救出の様子

 

「救出完了です!」

「ナイスレスキュー! 助かって良かったですね」

 

パチパチパチパチ

 

 

「……救急車呼んで!」

 

みんなスリル好きなの…?


秋田の「なまはげ」実はイイやつって知ってた?

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秋田の「なまはげ」実はイイやつって知ってた?

みなさんこんにちは。ライターのきむらいりです。

 

突然なのですが、「人を見かけで判断してはいけない」と実感することってないですか。

 

たとえば、いつも首に鎖を巻いているのに実は金属アレルギーなプロレスラーの真壁刀義さんや、スイーツキングとしてバラエティ番組に出まくっているX JAPANのToshlさん。彼らをテレビで見るたびに「人は見かけによらないなあ」と思わずにはいられません。

 

ほかにも最近、「見た目で判断してはいけない」と強く実感する出来事がありました。それは、秋田県でのなまはげとの出会いです。

 

なまはげとは?
秋田県西部に位置する男鹿半島で行なわれる、伝統的な民俗行事。大晦日の夜に「泣く子はいねがー、親の言うこど聞がね子はいねがー」などと叫びながら、地域の家々を巡る。
なまはげに扮装するのは集落の青年たち。昭和53年には「男鹿のナマハゲ」として、国重要無形民俗文化財に登録されている。

 

なまはげの語源は、「火斑(ナモミ)を剥ぐ」という言葉が訛ったものといわれています。長時間火にあたっていると、火斑と呼ばれる赤い斑点が手足にでることがあります。この火班を方言で「ナモミ」といい、冬に囲炉裏などで暖をとってばかりいる怠け者を戒めるため、「ナモミを剥ぎ取りに来る存在」が、なまはげなのだそう。

 

「悪い子はいねが〜〜」「泣く子はいねが〜〜」と子どもたちに迫る様子は、完全にトラウマレベル。しかも、あの見た目でナモミを剥ぎ取りに来るんですよ……? はっきり言って「怖い」の一言に尽きます。

 

な・の・で・す・が!

 

みなさん知ってました?
なまはげって、実はめちゃくちゃイイやつなんですよ。

 

今回は、世間が抱いているなまはげのイメージを塗り替えるべく、GIF漫画を用意しました。

 

作ってくれたのは、GIFアニメーション制作をメインに活動している、イラストレーターのクイックオバケさん。

わたしが秋田で見聞きしたことをもとに、なまはげが誤解されていることを力説したところ、こんなGIFを作ってくれました。

 

はい、イイやつ〜〜。

 

ちなみにクイックオバケさんの普段の作品はこんな感じ。

 

 

真実を知ってしまったからには、もっと多くの人に本当の姿を知ってほしい!
ということで、ただのおせっかいかもしれませんが、見かけによらずイイやつだったなまはげについて紹介させてください。

みんな、アイツのこと誤解してるって!

 

実はイイやつ、なまはげの正体って?

訪れたのは、なまはげゆかりの地である、秋田県男鹿市にある真山(しんざん)神社。この神社では、毎年二月に「なまはげ柴灯祭(せどまつり)」が行なわれています。

 

その真山神社で、こんな看板を見つけました。

 

真山神社の特異神事として行なわれている「柴灯祭」について書いてあるところ、よーく見てみてください。

 

神の使者、って書いてあります。
しかも村内安全・五穀豊穣・大漁満足・悪疫除去の、神の使者。

 

この時点で「あれ? なまはげって子どもたちを脅かして、いい子にさせるためのものじゃないの?」と思いはじめます。

 

社務所には柴灯祭で使われるなまはげの面が置いてあるのですが、

 

髪はボサボサだし、口からはモリモリ毛が飛び出ています。これが神様の使い!!? 人のようで、人じゃないような……。

もっと鬼っぽい見た目を想像していたため、戸惑いが隠せません。

 

「なまはげって一体なんなの……??」

 

ますますわからなくなったので、真山神社の隣にある「なまはげ館」に行ってみることにしました。

 

※なまはげ館に併設されている「男鹿真山伝承館」では、真山地区のなまはげ行事体験をできるのですが、取材日はあいにく休館日でした……。

 

街灯も、なまはげ!!

 

なまはげ館には名前の通り、なまはげに関連するさまざまな展示があります。

 

そこで目にした男鹿のなまはげは、わたしが想像していたものとは、すこし違っていました。

 

ドアを叩き、荒々しく現れるなまはげですが、わざと大きな音を立てるのは悪いものを祓い落とすため。

家中を歩き周り、そこかしこに落としていくケデと呼ばれる衣装の藁は、無病息災のご利益がある縁起物。

 

男鹿の人たちにとっては年の節目にやって来る来訪神であり、一年の厄を祓い、新年を迎えるにあたっての祝福の意味もある、ありがたい行事。

 

一見コワモテだけど、無病息災、田畑の実り、山の幸、海の幸をもたらしてくれるなまはげって、本当はハチャメチャにありがたい存在だったんです……!

 

60地域、150枚。多種多様ななまはげの姿

なまはげ館には、男鹿市内60地域のなまはげのお面が展示されています。一部を除いて、ほとんどが実際に使われていたものです。
その数はなんと、150枚!!

 

地域によって見た目の特徴は異なり、なかには全然怖くないなまはげもいることがわかりました。

 

ずらり、なまはげ

 

いわゆる赤鬼っぽいのもいれば……

 

緑色の顔に赤と黄色の目は、なまはげというよりデビルっぽかったり、

 

もじゃもじゃヘアーとヒゲで、おじさん感強めだったりするなまはげも。

 

メタリックなやつもいるし、

 

これとか絶対知能指数高めでしょ……。

 

しかも、なまはげの起源については諸説あり、「漢の武帝説」や「修験者説」、「山の神説」、「漂流異邦人説」など地域によってさまざまな説が語り継がれているんです。

 

 

 

 

あれだけ種類豊富ななまはげのお面を見たあとだと、どの説も「たしかに、そうなのかも」と思えてしまうから不思議……!

 

鬼のようだったり妙に人っぽかったり、カラフルさがどこか異国の雰囲気を感じさせたり……。こうしたバリエーションの豊富さは、諸説あるなまはげの起源にも由来するのかもしれません。

 

衰退しキャラクター化する、伝統文化としてのなまはげ

秋田空港で遭遇したなまはげ御一行

 

なまはげの真の姿を知り、衝撃を受けた日の夜。

たまたま立ち寄った温泉で、地元のおじちゃんとお話する機会があったので、なまはげの話を振ってみました。

「今日、男鹿のなまはげ館に行ってきたんですよ〜」

「お、どうだった?」

「小さい頃、親に『いい子にしてないとサンタさん来てくれないよ』と言われていたのを思い出しました。男鹿の子どもたちは『いい子にしてないとなまはげ来るよ』と言われてるんだろうな、って」

「そうだなぁ。んだけど、最近はなまはげをやる地域もだいぶ少なくなってんだよ

「え! そうなんですか? 今でも男鹿市内全域で行なわれているものだと思ってました!」

「そもそも子どもが減ってるし、なまはげ役の若者も減ってる。それに、家々を回ってたくさんお酒を飲むから、酔っ払ってトラブルになることもあるみたいでな」

「ええ〜! そんなことが……」

「んでも、柴灯祭みたいな祭りは今でもやってるし、観光としてなまはげをたのしむには充分だけどな!」

「秋田の人にとってなまはげは、観光資源として最適化されたキャラクターみたいなものになってるのかあ……」

 

おわりに

子どもたちにとっては、トラウマ級に怖い存在であるはずのなまはげ。日本の大切な伝統行事として後世にも受け継がれてほしいと願う一方で、地元のおじさんの話によると、悲しいかなしっかりと少子高齢化の波を受けているようでした。

 

……どうですか、みなさん。

「なまはげのこと、誤解してたわ……!」と、すこしでも思っていただけたでしょうか?

では、最後に改めて、こちらをご覧ください。

 

「中身を知る前に見た目で判断しちゃいけない」という教訓エピソードとして、心に留めてくれたら幸いです。

 

そして、秋田県に立ち寄る機会があれば、ぜひ「なまはげ館」まで足を運んでみてください。
150枚のなまはげのお面が並ぶ様子は、想像以上の迫力です。

 

それぞれにいろんな特徴があるので、自分の「推しなまはげ」を見つけるのもたのしいですよ!

わたしの推しなまはげはこちら。顔が大きくてずんぐりむっくりで、ちょっと抜けてそうなところが推しポイント

 

それではみなさん、またお会いしましょう!

 

 

よいしょ……

 

 

 

「泣ぐ子はいねがぁ〜〜」

 

写真:小林直博

GIFアニメーション:クイックオバケ(Twitter:@QuickObake

【まとめ】「職人」のスゴい技術と未来を知るジモコロの記事10選

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【まとめ】「職人」のスゴい技術と未来を知るジモコロの記事10選

こんにちは、ジモコロ編集部です。

皆さまのおかげで4年目に突入したジモコロですが、「ここらで過去記事にも再びスポットを!」ということで始まった「まとめ記事」第2弾をお届けします。

 

☆第1弾はこちら

【まとめ】知って備えよう!ジモコロの「災害」記事12選

 

さて、今回のテーマはスバリ「職人」

いろんなものが均質化していくこの時代にあって、自分の腕一本でモノづくりをする職人はとにかくカッコいい。

その生きざまや課題、そして職人の「これから」を、ジモコロならではの目線で切り取った10本を紹介します!

 

日本のモノづくりってスゴいんです!

技術のムダ遣い!? 職人に8万円するチタン製「コロッケケース」を作ってもらった

 

まずはこちら。ライターのマンスーンさんが、精密板金加工を得意としている海内工業さんの工場へ!

 

「精密技術」という言葉のイメージ通り、機械好きにはたまらない工場内の様子……!!

 

こちらは「2/100mm」の精度(もはやよくわかりません)で作られた金属製の筒。サイズが違う5つの筒がつながって、スムーズに伸び縮みするんです。つまり精度がマジでスゴい。

 

その技術力に惚れこみ、「コロッケケースを作ってほしいんです」とめちゃくちゃなお願いをするマンスーンさんでしたが……

 

なんと作ってくれました。お値段は約8万円。どんな高級コロッケ入れればいいんだ……?

妥協を許さぬ職人技にひたすら感服です。

 

※ちなみに唐突な「コロッケ」の理由ですが、実は「ジモコロ」のコロには「コロッケ」の意味合いもあったんです。ご存知でした?

 

お次はこちら!

 

【職人】日本の鍛冶技術は世界レベル! 新潟燕三条の「モノづくり」がヤバすぎる

 

ジモコロ編集長の柿次郎が新潟県燕三条(つばめさんじょう)のモノづくり現場を回ってきました。

そのスゴさを伝えるため、「スマホ時代の文章量は抑えるべき説」をガン無視して詰め込んだ盛りだくさんの記事!

 

とりわけ、金属加工技術を世界に誇る「MGNET」さんはインパクト大です。

 

鉄の塊の出っ張りがこんなにキレイに収まることあります……? これが0.001mmの金属加工の世界!

 

最初はこんな顔だった編集長も、

 

燕三条のモノづくり現場を見て回ったあとは、ご覧の通り精悍な顔つきに。

 

太古から伝わる究極の職人技術

【神仕事】伝説の鉄づくり!奥出雲「たたら製鉄」の奥深すぎる世界

 

そして、日本の製鉄文化のルーツ! スタジオジブリの映画『もののけ姫』にも出てくる「たたら製鉄」の現場を、ライターの根岸達朗さんが取材しました。

 

ヤマタノオロチ伝説でも有名な島根県の奥出雲(おくいずも)。写真は現存する唯一の高殿(製鉄作業を行う建物)だそうです。

 

往年の製鉄技術を説明してくださったのは、「菅谷たたら」施設長の朝日光男さん。

 

たたらと共に時を刻んできた奥出雲という土地、門外不出の技術、地元住民の想い……すべてが絡み合ったローカルの魅力をめいっぱい感じられる記事です。

 

「職人問題」の根っことは?

職人の「後継者不足」が叫ばれる日本。職人の持つ無二の技術も、継ぐ人がいなければ途絶えてしまいます。その損失は、あまりに大きい。

 

そうした「職人問題」にスポットを当てた記事を紹介します。

 

「若きアメ細工職人」と「引退を余儀なくされた鋏職人」の物語

 

話の発端は、若きアメ細工職人・手塚新理さん。この美しいアメ細工を作るには「握り鋏」が欠かせません。そしてその鋏作りもまた、伝統技術のなせる技。

 

燕三条の最後の鋏職人・外山健さん。写真に写っている額縁、右側の「ただの鉄」から徐々に左側のキレイな鋏になっていく過程がお分かりいただけますか? これぞ、外山さんが長年の経験で培った技術です。

しかし……なんと外山さん、取材直前にドクターストップがかかり、医者から「二度と鋏を打ってはいけません」と忠告されたというんです。

 

素晴らしい技術も、時代の流れと共に失われていく……。

「技術の継承には10年はかかるけど、10年後じゃ俺の体が持たない。そんな中途半端に弟子を取るなんて無責任なこともできない」という外山さんの言葉が印象的でした。

 

さて、外山さんが鋏を打てなくなり、握り鋏の技術はこの世から消えてしまった……と思いきや、物語にはまだ続きがありました。

 

「日本最後の一人になったから弟子を取った」燕三条から播州へ受け継がれた職人魂

 

前回の記事から約1年後。アメ細工職人の手塚さんがSNSを通じて出会ったのは、兵庫県在住の鋏職人・水池長弥(みずいけ・おさみ)さん。

 

なんと燕三条の外山さんが打った鋏を参考に、水池さんがアメ細工用の鋏を作ってくれているというのです。まさに奇跡のバトンパス!

 

そんな水池さんですが、「手打ち」の技術で鋏を作ることのできる「最後の鋏職人」

その技術を絶やすことのないよう、お弟子さんを採られたそうなんです。

 

並んで作業する、師匠と弟子の姿。

「もっと職人が儲かって、子どもからカッコいいって憧れられるような仕事になってほしい!」という手塚さんの言葉が刺さります。

 

さて、前の2つの記事でも紹介したように、後継者不足、時代と価値観の変化、儲からない……などの色々な問題点がある職人文化。

 

でも一番の課題は、技術の価値やその危機的状況が「知られていない」ことです。

 

そんな状況を改善するために動いているのは、職人の家に生まれながらデザイナーの道を選んだ「シーラカンス食堂」の小林新也さん。

 

「職人である以上、クオリティを落としての大量生産はできない。売り方を変えて、価格を上げるのが唯一の解決法」ということで……

 

地元である兵庫県小野市の職人技を「ブランド化」することによって、価値を高める作戦に!

 

ひとくちに「職人文化の問題解決」といっても様々な切り口があるのだなぁと、目を開かされる思いがしました。

 

なぜ日本の職人文化は「後継者不足」に陥ったのか?

 

世の中にはいろんな「職人」が!

ここまでは「モノづくり」というフィールドで戦う職人たちを紹介してきました。

でも、世の中にはまだまだいろんな職人がいるんです。

 

【本好き必見】「面白いと感じたら失敗する」校正校閲の職人仕事とは?

 

話を伺ったのは、校正・校閲の専門会社「鴎来堂(おうらいどう)」の柳下恭平さん。

「校正職人」と呼ぶべきでしょうか。

 

「校正・校閲には客観性が大切だから、ゲラ(原稿)を読んで面白く感じたらこの仕事は失敗」と語りながらも、「本が好きだからこそ、小さな誤植ひとつで没入感を途切れさせたくない」という愛のある言葉。

本を100%楽しめるのはこうした細やかな仕事あってこそなんですね。

 

本を読んでるうちに身についたという、柳下さんの「片手ページめくり」もスゴい! まさに本のために生まれてきた人です。

 

「AIには絶対真似できない仕事だ」印刷界のレジェンド・熊倉桂三が語る職人論

 

お次は「印刷職人」。ジモコロのフリーペーパーの印刷をお願いしている山田写真製版所へお邪魔しました。

 

「紙の印刷物は、五感でその良さを味わうもの。『人間の目』と『感性』が必要である以上、機械やAIには絶対に真似できない仕事」と語るのは、山田写真製版所のプリンティング・ディレクター、熊倉桂三(かつみ)さん。

 

高級印刷を謳うからこその、どこまでいっても妥協できないプライド……! どんな仕事にも通じる山田さんのこだわりをぜひご覧ください。超カッコいいです。

 

まだまだいます! 異色の「職人」たち

最後に、「なにこれ!?」と思わず口をついて出るような異色の職人を2人紹介します。

 

家ですね。というか、廃墟ですね。でも、引きで撮ると……

 

あれ?サイズ感がおかしくない?? そう、この廃墟、1/12スケールの「ドールハウス」なんです。

 

この作品を作ったのは「廃墟ドールハウス職人」の遠藤大樹さん。作品からも伝わる通り、並々ならぬ美学とこだわりの人です。

 

1/12サイズの巨大スラム・九龍城!? 異端のドールハウス作家が語る「汚しの美学」

 

最後に紹介する職人さんに至っては、仕事じゃなくて趣味で職人をやってらっしゃいます。

というか家にどでかい大仏がある。なんだこれ…?

 

自宅に大仏とか天守閣とか水車とかを作っているのは、こちらの吉澤眞治さん。

この超ハイクオリティな日曜大工を見たあとだと、中途半端な覚悟で「クリエイティブ」とかいう言葉を使えなくなりますね。

 

こういった作品を作り始めたきっかけは「孫のため」という……最高のおじいちゃんじゃないですか。トガりすぎだけど。

 

自宅に大仏!? なんでも我流で作っちゃうおじいさんに会ってきた

 

以上、「職人」テーマのまとめ記事をお送りしました。いかがでしたか?

 

磨き上げた技や己の生きざまを語る職人たちの言葉には、まぎれもない「真実」が宿っている……今回、記事をまとめていてそう感じました。素直にカッコいいんですよね。

 

日本の誇るそんなカッコいい職人文化。長く永く継承されるものであってほしい。そのために少しでもジモコロが役に立てていれば、メディア冥利(?)に尽きます。

 

それでは次回のまとめ記事でお会いしましょう~!

【8コマ漫画】木下晋也 『柳田さんと民話』 – 29話「幸せを願って」

M-1王者、メインMC、同期の花形、だいたい友達! 芸能界最弱芸人ネゴシックスが実は幸福な理由

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M-1王者、メインMC、同期の花形、だいたい友達! 芸能界最弱芸人ネゴシックスが実は幸福な理由

みなさんこんにちは。ひょんなことでジモコロデビューすることになりました。藤本智士です。はじめまして。

 

大好きなジモコロで何を書かせてもらおうかなぁ~って考えてたんですけど、あらためて過去記事を読みながら、ジモコロっていうメディアの使命は

「世の中の『イメージ』と『実際』との間の距離をぐっと縮めること」

にあるのかな? と思ったんですね。

で、それって編集の最も大切な仕事の一つだと思うんですよ。

 

という前振りのもと、今回まず見ていただきたいのがこのイラスト。

 


参考:http://negosix.com/gallery-nego6/

だいぶ奇妙な絵ですね。僕もこの絵を最初に見たとき、これ描いたやつ完全にこじれてるなって思いました。

 

©文藝春秋 ©PATRICK ©すごろくや

 

でもほら、実際こうやって書店に並んだり、アナログゲームのパッケージで使われたり、スニーカーまで発売されちゃって……

ひょっとしてこのイラストレーターさん、だいぶ人気なんじゃないか?と。

 

で、実はこのイラストを描いてるのがこの人物。

 

ん? どこかで見たことあるような……。

 

イラストレーターとして、ストリートファッションやネットの界隈をちょっこす賑わせているこの人物こそが、僕が今回、世の中の「イメージ」と「実際」の間の距離をぐっと縮めるべく、ジモコロで紹介したい人物。

 

本名、根来川悟(ねごろがわ・さとし)。ネゴシックスと言えばわかってくださる人も多いんじゃないでしょうか?

 

ということで、いきなりですが……

 

M-1王者、メインMC、同期の花形、だいたい友達!
芸能界最弱芸人ネゴシックスが実は幸福な理由

をお届けします。

 

お笑い以外で求められるものを探したら、イラストだった

ネゴシックスが生まれたのは島根県・安来(やすぎ)市。

豆絞りを被り、鼻には一文銭、竹ザル片手にひたすらエアどじょうを掬いまくるという、これぞニッポンのザ・余興、どじょうすくい踊りで有名な「安来節」のふるさとです。そんなオモシロタウンに生まれたネゴシックス。

 

その継承か、はたまた反発か、華やかなお笑いの世界を目指して大阪に出た彼は、いくつかのプチブレイクを経ていよいよ東京へ。

そこからもう12年。

 

……正直売れてるとは言えないけれど、ネゴシックスという一人の芸人さんの「知られざる姿」をお伝えすれば、そのゆるやかな多動力にジモコロ読者ならきっと共感してもらえるんじゃないか?と、テレビの収録で島根県松江市にいた彼の元を訪ねました!

 

「実は僕とネゴちゃんはもう14年くらいの付き合いになるんだけど、ネゴちゃん、変わらへんね」

「見た目に年齢がやっと追いついてきました。もう39歳です、やべえですよ。藤本さん、いくつですか?」

「僕は44になった。ネゴちゃんと知り合った頃は、まだ僕も自分の職業は編集者ですって言えるほど、ちゃんとメシ食えてない感じやったから」

「マジっすか?」

「マジマジ。それこそ当時のネゴちゃんは島根から大阪に出て来て、若手ながら存在感しめしてたわけじゃないですか。例えば『めちゃイケ』だったり、さらに元をたどれば『オールザッツ漫才』だと思うんだけど、分岐点的ないくつかのプチブレイクがあって」

 

※『オールザッツ漫才』…1990年スタート。毎日放送(MBS)の関西ローカル名物年末特番。約5時間という長丁場の深夜公開放送のネタ番組。ムーディ勝山の「右から左へ受け流す歌」、天津・木村の「エロ詩吟」から、最近では、ゆりやんレトリィバァ、霜降り明星、尼神インターなど、若手たちがその面白味を存分にアピールし、その活躍をもって、東京でブレイクするという流れが後を絶たない。

 

「その時は、これでいくか? いくか? と思って期待してたけど、なんとなく芸能界ではくすぶりつつ。最近の『アメトーーク!』では『あいつだけまだ牢屋に入ってる』なんて言われながら

「はっは! そうやって名前だしてもらえるだけでありがたいです」

「そういう意味では確かにお笑い芸人としての成功じゃないかもしれないけど、単純にネゴちゃんは今、本当に好きなことをいい塩梅でやってるように見える

「そうっすね。やれてるなって思います」

「それってとても幸福なことだよね。世間の皆さんは、ネゴちゃんのお笑い芸人としての活動以外のことはあまり知らないと思う。だけどネゴちゃんといえば、ストリートファッションの世界で少し面白いことになってるよね? 最近では、ネゴちゃんの絵のスニーカーが出たりとか」

「そうなんす。ありがたい」

「原宿でイラストの個展やったり、グッズ売ったりっていうのを、僕も実はこっそり見に行ったりしたけど、それが自己完結じゃなくてちゃんと広がっていってるのはすごいことだなって

「東京出て10年ネリネリして、何が自分にマッチすんのかな? っていろいろ考えて。でもまあ、自分の好きなものをやるしかないので、我ながらよくこんな変なのが好きなもんだって思いながらイラスト描いてたら、それをいいと思って使ってくれる人たちが現れたんですよね」

 

イラストの個展を開けば、ご覧の通りたくさんのファンの方々が

 

ワークショップの様子。子どもたちにも人気!

 

「そもそも、芸人たるものこれはやんなきゃいけない、もしくはそれやっちゃいけない、っていうのをスゲー気にしてたんです。わかりやすく言うとゴールデンの冠番組を持つのがゴールみたいな、芸人みんなが思い描くほうに行こうとしてた。でも、それをできない人は違うやり方をしなきゃいけないんだって気づいて」

「それはいつ頃?」

「東京出て4年くらいのときですかね。仕事はフワフワあるものの、スゲー減ってくんですよ。家からも出ずに、真っ暗な部屋で目だけ開いてるみたいな(笑)。月給もすごい少ないんだけど、稼働してるのが月に2日とかだから、そりゃ少ないわなって。世の中の人は月に20日以上働いてるわけじゃないですか」

「そうだよね」

「そりゃダメだわって思った。ラーメン屋さんでも、クリーニング屋さんでも、みんな自分で何かをやってるわけで、ただじっと仕事を待つんじゃなくて、自分で何かをやらなくちゃって。それをお金に換える仕組みを作ればいいんだと」

「その仕組みが難しそうだよね」

「そうなんです。そこからみんなが欲しくなるものなんだろう? っていろいろ考えて。とにかくお笑いは一つの窓口にみんなが集中しちゃってるので、お笑いじゃないところで『これ欲しい!』って言われるものを作ろうと思って。そこで悶々としてると、まわりの芸人が本を書いたり映画を撮ったりしはじめるわけですよ」

「そういう時代だったよね」

「僕も本書いてみたら、信じられないくらいつまらなくて……」

 

「なんだこれ!!!って」

 

「書いたんや(笑)」

「音楽もやってみようと思って、ギターをボローンって弾いたら弾けんわ!ってなって。バッコーンって投げて。料理とかやってみたり。動画の編集を覚えてみたり。それこそ、とろサーモンの単独ライブのオープニングVTRとか作ったんです」

「へえー」

「それも『いいね』って言われるけど、作るのに3日くらいかかるのに、サクサクやったみたいに思われて。信じられないくらい割に合わんわと。それでイラストやってみたら案外、評判良かったんです」

 

お笑いの素養がその世界だけで使われるのはもったいない

「そうかー。で、いまやネゴちゃんはイラストレーターとしても活動してるわけだけど、僕がなんで今日、松江までやってきてネゴちゃんに話を聞きたいと思ったか? っていうと」

「はい。気になりますね」

ネゴちゃんの生き方って、実は今、とても世間に響くんじゃないか? と思ってるんです」

「ええっ! マジですか? ちょっと落ち着きたいから寿司食お…」

 

 

 

「うめーーー! 染みる~〜〜」

 

「落ち着いた?」

「すんません。ちょっと嬉しくて」

これまでの世の中って、成功の形っていうのが、ある種ワンパターン化してて、みんなが思うゴールに行けば成功だし、そこに辿り着けなかったら失敗だった。いわゆる勝ち組と負け組みたいな言われようが延々と続いて来たけど、ここ数年のうちに一気に、いろんな幸せがあるじゃんってことに、多くの人が気づきだした」

「そうですね」

ある側面からネゴちゃんを見たときに、不憫に思う人がいるかもしれないけど、また別のほうから見たら、めちゃめちゃ幸せそうだよ、って」

「藤本さん、乾杯しましょう!(笑)」

 

「嬉しいなぁ。火照ってTシャツになっちゃいましたよ。いやあ、でも、そう思ってもらえれば最高ですね」

「少なくとも僕はそう思う。でね、じゃあネゴちゃんはどうして今そういうところまで来れたのか? を解き明かしたくて。今に至るまでいろいろやってみたけど、結局帰ってきたのって、自分自身のルーツ。それって、とてもストレートに言うと、ネゴちゃんの田舎者体質でしょ」

「あっはっは! そうっすね」

「『田舎者がひたすら都会に憧れてた』って自分の恥部みたいなものを、どこかの時点でとてもストレートに恥ずかしげもなく出していったよね? すると、とたんに響いた! みたいな感じじゃないかと」

「ほんと、格好つけポイントは山ほどあったと思うんですよ。とにかくスタイリッシュに!みたいな憧れとともに東京とか大阪に行って。あんな先輩みたいに売れたい!って考えるんですけど、東京出た瞬間に『俺、無理だな』って……

 

「それでも、さあどうしよう?っていうのが3年か4年続いたと思うんです。でも、どうやってもならんもんはならんし。もう自分の乗り物でやりくりするしかない

「そこ、みんなわかってても行けない」

「そうですよね。でも全員同じ条件ですから、全然行けると思うんですよ。たしかに昔はもっとやり方が限られてたから難しかったけど、今はインターネットのおかげで『それいいね!』って言ってくれる人と出会いやすくなってる。同時に自分の表現に辿り着きやすくなってる。そうやって100人支持者がいれば、全然やっていけると思います」

「そうだよね。ネットがあるから出会えちゃう。素早い動きだけあれば。そういう意味ではネゴちゃんはちょっとしたカリスマ感すら感じるんよね」

「いやいやそんなことはないっす! でも僕はタレントでも芸人活動でもイラストでも、好きだって言ってくれる人が存在すれば、出会える時代だと思うんですよ」

「千原ジュニアさんたちがよく言う『おもろいやつは必ず売れる。ただ売れるまで続けられるかどうか』って言葉が僕はすごくいいなあと思うんだけど、でも続けるってことはめっちゃ大変だよね。やめちゃう人も多いわけやんか」

 

「続けることのハードルが高いのは、特に僕らの世代だと『君は一体何者なの?』っていう問いをすぐ立てられちゃうからかも。つまり芸人だったら芸人として生きろっていう、一つに絞れ的な強迫観念がすごくある。だけど若い世代の人たちは、もうちょっとそれが寛容。いろんなことを好きにやってもいい時代になってる」

「確かにそうですね」

大きな組織ほど維持することが大変な時代で、大船に乗るなんて選択肢より、いろんな小舟抱えてたほうが安心だからねでも僕らの世代が、いろいろ手を出すのは、基本的には否定されることが多い。そういう意味で、ネゴちゃんもなにかと言われたりもしたのかな? って」

「それはありますね」

「料理やったり本書いたりするのは、あくまで『芸人としての軸につなげるため』というのが、多彩な芸人さんの言い訳的美学だったと思う。けどネゴちゃんの場合、結果論としてイラストとかが芸能とかテレビとかにつながってることはあっても、そもそもそこにつなげようとしてやっていない

「そうっすね」

「でもきっと、少し前まではネゴちゃんもそうやったと思うねん。それでいろいろやってみたんだと思う」

「そうっすね。いいあきらめがついたっていう感じで。今は芸人っていうのが一般化しちゃって、いろんな人がお笑いをできる状況になってますよね。だから、医者からのお笑いとか、先生からお笑いとかのほうが、テレビの世界では受け入れてもらいやすい。ということは、お笑いからのスタートがかなり不利な状況というか……」

「たしかに、そうだよね」

「アイドルもオネエの方もみなさんお笑いやるんで。でもお笑いの感度というかヒットポイントが強いのは絶対お笑いから入ったやつだと思うんです。なので、そこをうまいこと世の中に活かしたい!」

 

お笑いの素養ってすごい武器になると思うんだけど、それが、いわゆるお笑いの世界だけで使われるのはもったいないもっとオールマイティに使ったら、いろんな業界が変わるのにね」

「うん、マジで思いますね。例えば普通の企業の会議でも、ちょっとお笑いの要素が入れば変わると思うんです」

「みんながつっこまれへんのをつっこむとかね」

「そういう役回りっていうのが、役職としてないのが残念ですね。そういう人が高給取りになってほしいですよ」

「それこそネゴちゃんも島根県の役所のいち担当課長になってもいいんじゃないかな。1日警察署長的なやつじゃなくてね。ガチのやつ」

「言いにくいことを笑いにしてざっと言っちゃう担当。無粋担当とか」

 

「それいいね(笑)。それこそ芸人さんの数も今めちゃめちゃ増えて、劇場に立てない人もいるわけだよね? そんななかで、じゃあその劇場が企業の会議室でもいいよね?」

「吉本でも、芸歴10年以上の芸人が出るライブがあって、みんなそれに出ようとするんです。でも、なんで出るんだろう。10年やったんだったら違う角度からやってもいいのにって思う。でも芸人は舞台しか見えてない

「今の若い芸人さんたちもそうなのかな?」

 

「うーーーん、あの、芸人の話じゃないんですけど。若い人の話でいえば、僕がイラストやりだした5年くらい前に『学生でお金がないんですけど、めちゃめちゃラジオが好きなんです。今度ラジコロっていうホームページを作りたくて、そこのヘッダーにネゴさんのイラストを使いたい』ってメールが来たんですよ」

「うんうん、それで?」

「学生だし、『お金はいいよ、大丈夫』って言ったんです。そしたらその子たちがその後『面白法人カヤック』って会社に入って『名刺を作るのにやっとお金を払えるようになりました。みんなイラストの名刺を作っているので、僕たちはネゴシックスさんに頼みたい』って連絡をくれました」

「へー。いい話」

「彼らは1~2年後に会社を辞めて、地元の鹿児島でデザイン事務所を起業したんです。そのホームページのイラストデザインは全体的に僕がやりました」

 

ネゴシックスさんがイラストデザインを手がけた「Lucky Brothers & co.」のHP

 

「その流れがめちゃめちゃ面白くて。今まで何か依頼を受けるときに、面白いことをやる人って芸人しかいないと思ってたんですよ。それは違うなって思ったんです」

「なるほど」

「なんかやろうって悶々としてた人たちが、勝手になんかやり出してるんで、今の20代ってスゲーなって思いますね」

 

「ネゴちゃんがくれた恩を、きちんと返したいっていうのは、彼らにとって、ものすごいモチベーションになってたと思うなあ」

「僕が体感してた25歳と今の25歳って全然違うって思うんです。だからこそ『面白い』っていう価値観は大切にしたいですね。芸人だけが面白いっていう考えはやめてほしいな

「それを芸人であるネゴちゃんが言うっていうのがいいなあ」

「みんな気づき出してると思うんですよね。うっすらと。今まで憧れて来た芸人の姿ってのがかっこよくあるけど、芸人もいろいろやり方を増やしていて。面白いって価値観がもっと多様的に広がったらいいですよね」

 

 

今の時代の「売れる」ってなんだ?

「あと僕がもう一つ話したかったことなんだけど、最近ネゴちゃん、島根でレギュラー番組やってるじゃないですか。TSK(山陰中央テレビ)の『ヤッホー!』って番組でMCを」

 

「それって一昔前だと嬉しい反面、都落ちっていうか。単純にレギュラー持ったぞ! わーい!って話ではなかったと思うねん」

「確かにそうですね」

「ネゴちゃんが大阪経由で東京に出て。今も東京でのいろんな思いとか夢とか捨ててるわけじゃないんだけど。結果的に再び地元の仕事をしてるっていうのは、これは明らかに、島根を出て行ったときの思いとは全然違うと思うんだよね」

「僕はやっぱり『俺、東京住んでるんだぜ』みたいに思ってたんですよ。出たときは。でも今は東京とローカルの差は、ほぼないなって思っていて。もちろん住んでる人からしたら感じると思うんですけど、その差の埋め方がいろいろあるんじゃないかなって思うんです」

「例えばネゴちゃんは、吉本がローカルを盛り上げようと芸人さんたちを各県に住まわせる『住みます芸人』として島根にやってきたわけじゃなく、島根のことを頑張ってる。それって、結構大きなポイントだと思う。吉本クリエイティブエージェンシーっていう会社組織と、ネゴシックスっていう個人との間を、うまく生きてる

「目立たないように(笑)」

「最近、評価経済って言葉が使われたりとか、自分の価値や信用に対して経済がついていくっていう価値観があって、世の中全体がそういう方向にチェンジしてるのも感じる。そういう視点で見れば、M-1王者になったとろサーモンの久保田くんや、MCはってる南海キャンディーズの山ちゃんみたいな同期の芸人よりも、ネゴちゃんが一番先端を行ってる可能性だってある

 

「くううううう。いや、売れたいですよ(笑)。でも、売れるっていうのが、まわりが今まで使ってきた単語なだけであって、売れる売れないっていうことじゃないんだろうなって」

「ふんふん」

「ただ、まだまだ世の中の人の目線って、売れる売れないなんですよ。今まで使ってきていない言葉で新しい評価が言えるようになったらいいですよね」

「今の『いや、売れたいっすよ』って言葉は、お笑い芸人としてのサービス精神と瞬発力だと思う。だけど、それもこれもまさに『売れたい』ってことが共通言語であり、みんなが理解してくれるからこそ、笑いになるわけで。そもそも『売れる売れないの本質ってなんだ?』なんて問い出すと、芸人としては笑ってくれなくなるよね」

過激なこと言ったら芸で笑ってくれなくなるっていうのがあるんで。尖ったことは言わない。日本でお笑いやるんだったら、それはしょうがないかなって思うんですけどね」

「一方で、そこに対してクレバーで言語化が得意なキングコングの西野さんみたいな人は、それはそれで評価されてるわけだよね。芸人の世界でどう言われようと、別のところで自分のコミュニティを構築して、結構なクラスタを持っている」

「そうですね、まあ西野も激しめですね」

「そうなんだよなあ、ネゴちゃんはほんとソフトなんだよね。最近だとウーマンラッシュアワーの村本さんとかと比べても全然タイプが違う」

 

僕はガンガン切り開きたくないんですよ。僕も吉本とどこまでやっていいか線引きのバトルをするとき、8人くらいの社員に呼ばれて囲まれたことがあるんです」

「それは怖いわ(笑)」

「そうっすよ。そこでケンカするのも嫌だし、昭和のやり口だからしょうがないかとも思いながら。でも納得してるわけじゃないので、誰か行かないかなと思ってたら、西野みたいなやつが現れたので『よし、いいぞ! 行け行け! ぶっ壊せ!』って(笑)」

「確かにネゴちゃんは自ら切り拓くっていうよりも、時機を待つ感じがあるよね」

「沸々とあるんですけどね。でもこのナリが言っても、社員も聞かないでしょ(笑)。強面じゃないとダメなんすよ」

「でもネゴちゃんが気づいてる世界っていうのが僕にとっては面白みだし、言い換えれば希望だよね」

「ただ、バレたくない(笑)。ボコボコにされるんで。僕、HPが少ないんですぐにやられる……」

「無駄にマジックポイントはいっぱいありそう(笑)」

 

「魔法の種類が少ないですけどね(笑)。器用になりてえっす」

「ネゴちゃんのある種の不器用さは、ネゴちゃんがチャーミングである所以だから」

「スイスイを目指してたんですけどね。今世はそういうやつじゃなかった。来世に期待ですよ(笑)。来世見とけよ!」

「つっても、やっぱ売れたいか(笑)」

 

まとめ

ネゴちゃんと再会するまでのこの12年間……。

お笑いの世界地図は、大きく変わっていないように思います。還暦の明石家さんまさんはいまでも茶の間のヒーローだし、ダウンタウンさんはもちろん、さま〜ずさんも50歳オーバー。若手然と振る舞うテレビで活躍する芸人さんのほとんどがアラフォーです。

 

でもこれ、意外と他の業界も一緒ですよね?

 

かつての成功者のやり方でもない。僕たちなりの方法を見つけなきゃいけない時代にあって、僕はネゴちゃんの泥んこな生き方を賞賛したいと思っています。

人生百年時代。世の中をガンガン開拓していくようなHPはなくとも、あたらしい生き方を見つけていくことはできるし、そこに確かな幸福があると思っています!

 

 

 

写真:Hiragi Ayako

二人の話はまだまだ続く…ということで、おまけの懐かし対談をどうぞ!

【1kgおにぎり】ネットでバズりまくってる弁当屋、なぜ話題になった?

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【1kgおにぎり】ネットでバズりまくってる弁当屋、なぜ話題になった?

こんにちは、ライターの松岡です! 

昨今、SNSでバズりまくっている弁当屋があることをご存知でしょうか。しかも、大手弁当チェーンなどではなく、個人が経営する“街の弁当屋さん”です。

 

それがこちらの、『キッチンDIVE』というお店!

 

キッチンDIVE

住所|東京都江東区亀戸6丁目58−15

営業時間|24時間営業

 

こちらのお店、Twitterのフォロワー数は1万2千を超え、イベント告知のツイートが2万回もリツイートされるなど、SNSを活用したマーケティングがずば抜けているお店なんです

 

 

▼Twitter以外にも

・お弁当屋さんなのに、ニコニコ超会議に出店

・ニコニコ生放送の来場者数が17万人超え

・投稿されたYou Tubeの動画再生数が約240万回再生

 

などの経歴を持つ、かなり変わった弁当屋さんなのです。一体、どうしてこんなにSNSでバズっているの?

 

その秘密を、店長の伊藤慶(いとう けい)さんに伺ってきました!

 

 

バズるきっかけは店長の遊び心とお客さんの投稿

「はじめまして! 今日は、“街の弁当屋さん”がなぜこんなにバズるのか、話を聞きに来ました」

「よろしくお願いします。なぜバズるか……ですか。難しいですね~。きっかけは、おにぎりを売る目的で、店にぬいぐるみを置いたことかな

「??? すいません、ちょっと意味がわからないです。おにぎりを売るために、ぬいぐるみを置いた? なぜ?」

「あ、わかりにくいですよね(笑)。えっと、まず売りたかったおにぎりというのが―」

 

「こちらですね」

「おぉ、おいしそうじゃないですか!」

「比較するものがないとわかりにくいかもしれませんが、サイズはこんな感じです」

 

「デケェェェ~~~~!!!」

「1kgあります」

お茶碗だと7杯分近いじゃないですか」

「で、置いたぬいぐるみっていうのが、これです」

 

「あ……あああぁぁ~~!! これはあの、ゲームの……!」

「そう、『風来のシレン』のマムルです。“巨大なおにぎり”といえば『風来のシレン』じゃないですか? だから有名な登場モンスターのひとつ、マムルのぬいぐるみを置いてみたんです

 

不思議のダンジョン2 風来のシレン 不思議のダンジョン2 風来のシレン

『風来のシレン』はスーパーファミコン用のゲームソフト。定期的におにぎりを食べながら冒険します。また、「マムル」はシリーズを通して登場する敵モンスターです。

 

「そしたら、ゲーム好きのお客さんが気づいて、お店のツイートをしてくれたんですね。それが7千リツイートされてものすごく話題になったんですよ

「先ほどおっしゃっていた、『きっかけは、おにぎりを売る目的で、店にぬいぐるみを置いたこと』という意味が100%理解できました」

 

『キッチンDIVE』がバズるきっかけとなったお客さんのツイート

 

「ひょっとして、この流れは想定していたんですか?」

「いえ、ただ『風来のシレン』が好きだから、なんとなく1キロおにぎりの横に置いたらおもしろいんじゃないかと思っただけです。全く予想していませんでした

「ちなみに、1キロおにぎりは『風来のシレン』の何作目をイメージして作ったんですか」

「え、それ重要なんですか? 1作目が好きなので、「不思議のダンジョン2 風来のシレン」のおにぎりのイメージですかね」

「真面目にお答えいただきありがとうございます。そもそも1キロのおにぎりを作ろうという発想が、まずすごいですね」

「うちのお店には、以前から1キロ弁当という商品もあります。食べ物を作る人間として、やっぱりおなかいっぱい食べてほしい!というのは思ってまして」

 

男性が好きそうなおかずを、一度に全て食べることができる1キロ弁当

 

「ここまでの話を聞いていると、Twitterのおかげでバズったって感じなんでしょうか」

「あとは、YouTubeも効果があったと思います。こちらは大食いの選手たちに助けられた部分が大きかったです

「ああ~! なるほど、1キロおにぎりとか1キロ弁当って、大食いYouTuberが挑戦したくなる気持ちがわかりますね」

「1キロだと物足りないかなと思って、遊びで3キロ弁当と3キロおにぎりを作り、選手たちに販売してみたんですよ。みなさん、それらを食べている動画をYouTubeにアップしてくれて、70万再生くらい見られていました

 

キッチンDIVEのお惣菜を一度に満喫することができる3キロ弁当

 

総量が本当に3キロ以上ある、3キロおにぎり

 

キッチンDIVEの弁当とおにぎりを食べるDracö(ドラコ)選手

 

大食いYouTuberのために作った3キロ弁当や、3キロおにぎりは、視聴者の間で大きな話題になり、注文が入るようになったそう

 

 

【フォロワーが応援したくなる企画作りとは】

「『キッチンDIVE』のTwitterアカウントを見ると、フォロワーが12,000人もいるんですね。伊藤さんはTwitterをはじめて何年くらい経つんですか?」

「2017年の4月からはじめたので、だいたい1年くらいです

 

『キッチンDIVE』Twitterアカウント

「え!? 1年でフォロワー数が12,000人もいるんですか!?  さっき聞いたマムルのぬいぐるみと、大食いYouTuber、2つの出来事だけが理由で?」

「それだけではないですね。フォロワーが増えるようなイベントをお店で開催したのも大きいです

「具体的にどんなイベントを」

「フォロワー500人達成の時はおにぎりを10円で販売したり、1,500人達成の時は1キロ弁当を100円で販売したり、3,000人達成の時はカレーを無料で配りました

 

フォロワー1,500人達成記念・1キロ弁当100円祭り

 

フォロワー3,000人達成記念・カレー無料祭り

 

「Twitterって、みんなに応援されないとフォロワーは増えない。だから応援したくなる企画を考案して、みんなが私の背中を押してくれるようにしたかったんです」

「いや、でも……どれも赤字確定のイベントばかりじゃないですか! お店にメリットあるの!?」

「イベント自体は身銭を切っているので赤字です。でもそれがきっかけでフォロワーが増えて、お店のファンが増えれば、お店としては強いんですよ」

「精神的に嬉しいってだけではなく、物理的にお店の経営にとって強みになるんですか?」

「例えばフォロワー数が1,000人の場合、1日5人くらい買いに来てくれるとします。フォロワー数が12,000人だと1日に60人のお客さんが買いに来てくれる計算です。1人800円くらい買ってくれるとして、1日に5万円の売り上げになります

「うわ、そう考えたらすごいですね」

「月単位で換算すると約150万円、年間で考えると1,800万円近く売り上げが変わります

「莫大な数字だ!」

「まあ、うちはアクティブなファンが多いから成り立つ計算ですけどね。同じ1万人のフォロワー数でもそこまでいかないお店もありますし。逆に『ラーメン二郎』さんのように、熱狂的なファンがいるお店は、もっと売り上げが伸びているのかも」

「なるほど。今までの話を聞いていると、SNSを利用しない手はないです

「飲食店を経営してるなら、絶対利用した方がいいと思います。大手のチェーン店じゃなくても、SNSを使えば個人で情報を発信できる時代なんですから」

 

 

【キッチンDIVE】ニコニコ超会議2018に出店

ニコニコ超会議2018(2018年4月)出店時の様子

 

「今年はニコニコ超会議のブースに、キッチンDIVEを出店されましたよね。これはどのようなネット戦略だったのでしょうか?」

これは全く戦略とか関係ないです

関係ないんかい! ここまでずっと、緻密な計算に基づいて行動してるという印象だったんですが」

「姪っ子の高校受験が大変そうだったので、ニコニコ大好きな姪っ子を応援するために出店を決めました

そんな理由!?

「ちゃんと出店料金を払えば、出店するのは飲食店でも可能なので。姪っ子の思い出になれば、利益とかいいかなと思って」

「出店の時にニコニコ生放送でお店の様子を36時間放送していましたが、何人くらいの方が視聴されたんですか?」

 

最終的に17万人近くの方が放送を見てくれました

「17万人!? 17万人って千葉県の浦安市民が全員視聴したくらいの人数ですよ! 一体どれほどの売り上げを稼いだんですか!

 

「うふふ……聞きたいですか?」

 

「結構な赤字でしたよ」

 

「なんでー!? 計算おかしくないですか?」

「出店の2週間前に私が骨折をしてしまい、予想よりもお弁当の生産が追いつかなかったんです。でも、来年やればトントンまでいけそうなので、3年続けて出店しようと決めています」

「ちなみに、姪っ子さんはイベントの出店を喜んでくれたんですか」

「最初に言った時は狂喜乱舞して喜んでくれたのですが、それから準備期間を経て、いざイベント!って頃には、もう『ふ~ん』って感じになってました

 

 

「でも、超会議に出店した時は、お客さんたちがコスプレをして手伝ってくれまして。みんなが楽しそうにしていたので、やって良かったですよ」

「お客さんが一緒にお店を手伝ってくれるイベントなんて、なかなかないですからね!次回は僕もコスプレをしてお手伝いさせてください」

 

 

バスる方法とSNSとの付き合い方について

「最近、『子ども食堂をやります』というツイートが、1,000リツイートくらいされてましたよね」

「そうですね。子供の虐待に関するニュースを見て、何かやろうと思い立って。今、その仕組み作りを模索しています」

 

 

「体力的には毎月1,000食子供たちに配ったとしても、お店の利益はそれ以上出ているのでやれるし、その行動を起こせばお店のファンもフォロワーも増えると思うのでいいのですが」

「けど?」

「Twitterはあくまで僕の個人的なアカウントとはいえ、もう、こうなってくると弁当屋を超えた発言になっているなと」

「確かに。フォロワーも12,000人いるわけですし」

「1,000人で転ぶのと、10,000人で転んだときだとダメージが違うので、肩にのしかかってくる責任を感じることもあります」

「確かに、規模が大きくなると、トラブルが起きた時に大事(おおごと)になっちゃいますよね。伊藤さんは、フォロワー数が伸びていくことについては、どう考えてるんですか?」

フォロワー数は信頼と共感の数値だと思うんです。つまり、身元保証みたいな感じではないでしょうか」

「なるほど。多くの人に信頼され、共感されている人(お店)ですよ、と数字で示せるわけですね。では、SNSがない時代にお店を出していたら、どんな方法でお店を話題にさせました?」

「う~ん、もともと200円弁当とか3キロ弁当とか、キッチンDIVEでしかやっていない商品を販売してますからね。口コミだろうとチラシだろうと、バズらせ方は思いついていたかもしれないですね」

 

キッチンDIVEでは毎日、200円という破格の値段でお弁当を販売

 

1キロ弁当、1キロおにぎりに続く、新商品の1キロカツ丼など話題性が豊か!

 

「頼もしい……! ズバリ、バズらせるコツって何なんでしょう?」

「お客さんだけではなく、自分だけでもなく、お客さんとお店が一緒に盛り上がれる方法を考えることじゃないですかね」

「うわぁ、めっちゃ勉強になります! 最後にこれだけ聞きたいんですが、伊藤さんがSNSを始めて、失敗したコトってあるんですか?」

「Twitterを始めてからというもの、一日中、ず~~~~~っとTwitterにのめり込みすぎているコトかな」

「今回の記事、飲食店にとってSNSは有効っていう内容なんですけど」

 

 

まとめ

店内にはファンの方たちがプレゼントしてくれた、ぬいぐるみやフィギュアが色んな場所に飾ってあります。愛されてますね~!

 

というわけで今回は、キッチンDIVEの店長、伊藤さんにSNSの活用について伺ってきました。

WEB業界で働く身として、想像以上にSNSの使い方を熟知している店長の話は、本当におもしろくてためになりました。

 

ちなみに僕も、規格外の1キロおにぎりを購入してみました。お値段は500円!

※右は比較用に買ったコンビニのおにぎり約100グラム(なんと10倍のサイズ!)

 

中を切ってみると、こんなにもたくさんの具が待ち構えています

 

大きいだけじゃなくて、お米も具材もメチャメチャおいしくて、お得ですよ!

ただし、食べても食べても一向に減らないので、食べ始めて10分後には「絶望」という言葉が頭をよぎります。※僕は食べきるのに1日かかりました 

 

 

(おわり)

 

取材協力「キッチンDIVE」

 

 

 

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