「さいきん調子どう?」「この間、久しぶりに外食したよ」
長く続いた緊急時事態宣言が解除され、「やっと日常が戻る」と安堵したのもつかの間。都市部では感染者数が再び増加し、未だ心休まらない日々が続いています。
新型コロナウイルスの感染拡大はスポーツ界へも大きな影響を与えました。国内外の大会やリーグが中止・延期になり、今まで通りの練習もできない日々が続いています。
しかし、そんな状況でも前向きに、今できることへ精一杯取り組んでいるアスリートの方々がいます。
ジモコロの連載「みんなの現状報告〜そっちはどうだい〜」、今回はパラアスリートの皆さんにお話を聞きました。
それでは……
アスリートのみんな〜〜〜!!! そっちはどうだい???
【今回、紹介する人たち】
・田中 愛美さん(車いすテニス)
・西田 杏さん(パラ競泳)
・前川 楓さん(パラ陸上競技)
・森 宏明さん(パラノルディックスキー)
田中 愛美さん(車いすテニス)
名前:田中愛美さん
競技種目名:車いすテニス
SNS:Twitter
■現状
車いすテニスは車いすのスポーツの中でも特に健常の競技とルールがほとんど変わらない競技です。用意されるコートも用具も同じなので、練習などをする時に必要なのは、テニス用の車いすとコートに行くまでの動線です。
比較的わかりやすい基準で練習環境を用意することができますし、同じコートで立っている人も車いすの人も一緒にプレーができるのが魅力の競技だと思います。
私はありがたいことに、コロナの影響をほとんど受けずに現在も通常通りの練習をさせていただいています。トレーナーとの室内トレーニングはリモートに変わりましたが、最低限のスタッフでテニスの練習はやっています。
ただ、2019年には25大会ほど出場していた国際大会は3月から中止が相次ぎ、次の試合の日程もわからないままです。
いつも大会と大会の間に日本に帰国し、試合のイメージを持って練習ができていたので、少しずつ試合の感覚が薄れていることに正直不安も感じています。 何も分からない中ですが、まずは代表選手への内定を目標に、今後も練習を続けていきたいです。
そして、この空白の時間も準備期間が伸びたと捉え、コートに立った際に自信を持ってプレーできるように、この1年を無駄にしないように過ごしたいと思います。
西田 杏さん(パラ競泳)
名前:西田杏さん
競技種目名:パラ競泳
SNS:Twitter
■現状
わたしは現在、競技人生で初めて自宅のみでのトレーニング生活をしています。水泳は3日泳がなければ水の感覚が変わると言われるスポーツなので、最初はプールに入れないことへの不安もありましたが、様々な工夫をして充実したトレーニングを積めています!
例えば、普段ジムで行っていたトレーニングに近い動きが家でもできるように道具を揃えたり、コーチとタイミングを合わせてオンラインでトレーニングをしています。また、普段は車移動ばかりでしたが、この機会に毎日2時間散歩をするようになり健康意識も高まりました。
パラ競泳は、障害の種類や度合いによって14の障害区分(クラス)に分かれています。細かく分けられたそれぞれのクラスで競うため、違う障害の人たちと同じレースで競うこともあります。泳ぐ際は選手それぞれで障害に合わせた工夫をしています。
わたしは片手片足が欠損しているため水中でのバランスが取りにくいですが、呼吸の向きや手をかくタイミングをずらしたりして真っ直ぐ泳いでいます。
目標とする大舞台まで練習できる期間が伸びたので、その分確実にタイムを縮められるように頑張ります。
緊急事態宣言が解除されましたが、気を緩めることなく引き続きしっかり感染予防対策をして、できることをやりたいです。そして、早く世の中が落ち着くことを願っています。
前川 楓さん(パラ陸上競技)
名前:前川楓さん
競技種目名:パラ陸上競技
SNS:Twitter
■現状
私は約8年前に交通事故で右足を失い、その2年後に義足で陸上競技を始めました。種目は走り幅跳びと100m走です。この春から大学の部活に参加させてもらう予定でしたが、コロナの影響でまだ実現できていません。そのため現在は、実家のある三重県で引き続き練習をしています。
自粛期間前の私は、仲間と刺激し合って練習することを大切にしていました。仲間と共に練習すると、お互いの動きをフィードバックし合えるし、試合と同じように競い合うことができます。そして何より仲間とコミュニケーションを取り合うことで、どんどんやりたいことが見えてきて楽しいのです。
ただ、自粛期間中は仲間と集まれなくなってしまったので、1人で人が少ない早朝に公園で練習したり、自宅でできることを工夫して行っていました。
仲間と練習することが好きな私にとって、1人で練習していくことは容易ではありませんでした。モチベーションの維持も正直大変で、「なんて私はダメなんだ!こんなの私じゃない!」と、できない自分を受け入れられずとても苦しかったです。
しかし、その辛い気持ちをコーチや家族に聞いてもらうと、「どんな自分も自分なんだ」と少しずつ受け入れていくことができました。これはこの自粛期間で得た、かけがえのない宝物だと思います。
コロナの感染拡大以前に、友人とSEKAI NO OWARIのライブへ遊びに行った際の写真
また、憧れの選手の動画を何度も見て、良いと思うことは繰り返し真似してみたりと、今だからできることもたくさんできました。そうして過ごしていると、遠く離れていても「私はひとりぼっちじゃないんだなあ」と気づくことができたのです。
それでも辛い時は、友達とオンラインお茶会をしたり、絵を描くなど好きなことをたくさんしました。そうしていると心が穏やかになって、自然に物事を考えられるようになったのです。
心身共に、この期間で得たものは本当にたくさんあります。いつか来る大切な日に向けて、これからも日々楽しく頑張っていきたいです。
森 宏明さん(パラノルディックスキー)
名前:森 宏明さん
競技種目名:パラノルディックスキー
所属会社HP:https://corporate.potaufeu.asahi.com/corporate/info/12875641
■現状
ノルディックスキーには、雪の上をスキーやストックを用いて走る「クロスカントリー」と、走りと射撃を組み合わせた「バイアスロン」の2種目があります。「雪原のマラソン」と呼ばれ、距離は約1kmのスプリント系種目から、5〜10kmの中距離、20kmなどの長距離種目が行われます。
パラ競技の選手は障がいの種類によって立位、座位、視覚障がいの3カテゴリーに分けられて、その中で順位を競います。私は座位の部に所属します。
今回の新型コロナウイルス感染拡大防止のために、政府の緊急事態宣言が発令されてからは、選手・スタッフが一同に集まる強化合宿や会議はすべて中止になりました。それに伴い現在は、メンタルサポートやチームでのオンライントレーニング指導へと切り替わっています。
また、今後もしばらくは外での活動が不安だということもあり、自宅では個人トレーニングのための機材を着々と揃えていきました。コンディショニングはお気に入りの「DOCTORAIRストレッチロールS」でケアをします。「おうち時間」はトレーニングで充実しています。
「一つ一つを着実に」という言葉を胸に、たとえ逆境のなかでもチャレンジの姿勢で困難に挑み続けていくことが自身の強みでもあると信じています。また、競技活動と同時にスポーツの普及と発展、そして次の世代のアスリートたちのことを想って、それを守るために行動していくこともアスリートとしての責任だと、長い自粛期間のなかで考えるようになりました。
「自分たちの競技は、競技者たる自分たちで考えていく」ことを念頭に置いて主体性のあるアスリート像を目指していきます。今後はスポーツ社会全体の発展を目指し、個人をつなぐ架け橋となるべく「社会のために我あり」と言える存在へと成長することが目標です。
みなさんの現状もお待ちしています
アスリートの声はそちらまで届きましたでしょうか?
いつも通りの練習ができない中でも、オンラインでトレーニングをしたり、憧れの選手の動画をみたりしながらも、競技力とモチベーションの維持に励げむ様子がうかがえます。
暗い世の中にあたってスポーツの果たす役割は大きいです。
不安を抱いている世の中だからこそ、アスリートから勇気をもらいたいと思っているファンは多いのではないでしょうか。
イチローが選手時代にこのようなことを言っていました。
「壁というのは、できる人にしかやってこない。超えられる可能性がある人にしかやってこない。だから壁がある時は、チャンスだと思っている」
試合でプレーをする場面だけではなく、この状況下でも「壁」を乗り越えていこうとするアスリートの姿から、私達はとても勇気をもらいます。
来年の東京で、奮闘するアスリートの姿をみんなで応援できる日が来ますように……。その日を心待ちにして、これからもがんばっていきましょう!
アスリートの皆さん、心から応援しています〜!