リモートワーク、してますか?
突然すみません、ライターの栗本と申します。
5歳と3歳の遊び盛りな男児の母でもあります。
フリーランスで働いている私は、もともと自宅で仕事することが多かったですし、緊急事態宣言が解除されてからも自宅メインで仕事しています。
“リモートワーク慣れ”している私ですら、緊急事態宣言発令中の日々は、こんなことを考えていました。
それはずばり……
子守りしながら、これまでと同じパフォーマンスで仕事するの無理ゲーじゃね?
これまで物置と化していたデスクを片付けて作業場所を確保したものの、数分おきに子らの要望に応えなくてはならりません。オンラインでの打ち合わせ中に、裸になった5歳児がうろうろしていることもありました……。なぜ脱ぐ。
なんで???
ようやく自粛が解除され、保育園がはじまったこともあり、日常を取り戻しつつあります。しかしながら、いつあの状況に戻るかわかりません。
無理ゲーは無理ゲーなんだけど、学んだこともあったよね! ね!? そう言い聞かせないとやりきれない!
というわけで、子育てをしながらリモートワークをしていた業種の異なる4人のみなさんに、オンライン通話ツール「Zoom」を使ってインタビュー。お話をうかがったのは、緊急事態宣言の真っ最中の時期です。やりくりの工夫や、今後生かせそうなことを聞きました。
短期決戦のマインドが鍛えられた
(Case1.アイデム・藁品優子さん)
「藁品さんは、パートナーがフル出勤なんですね……。一人で子どもたちの相手をしてらっしゃるんですか?」
「そうですね、夫は朝7時過ぎに家を出て20時くらいまで帰らないので、基本的に一人で見ています。幸いなことにおじいちゃんおばあちゃんが近くに住んでいるので、どうしようもないときはお願いしていますが」
「どういうスケジュールで仕事するんですか?」
「勤務時間が決まっているので、8時半から17時半までは基本的に仕事しています。うちは子どもがそこまで小さくなくて、言えばわかる年頃なので、なんとかやれている状況です」
「ただ、集中して作業するのは、無理ですね(笑)。会社にいれば徐々にエンジンをかけていくことができるけど、家だとエンジンがかかったところでも、子どもに話しかけられたら中断せざるを得ないので。いかに瞬発的に集中できるかが試されているなーって思います」
「わかります! うちも子どもがテレビに夢中になっている間に集中して原稿を書いています」
「短期で決着させよう! っていう集中力は鍛えられましたね」
「藁品さんの一番上のお子さんは中学2年生なんですよね。もしかして、下の子を面倒見てくれたりも……?」
「そう思うじゃないですか。一切見てくれないです(笑)。思春期なのもありますが、彼女には彼女の世界があるんですよね。我、関せずという感じ。どっちかっていうと、小四と年長の子がつるんで遊んでます」
「そういうものなんですね(笑)」
(ガチャ)
「あ、入ってきた。ちょっと待ってください」
(長女と話す藁品さん)
「すみません。塾のリモート学習があって、今同時にオンラインにしていたから、『私の電波状況が悪くなってるんだけど』って文句がきました(笑)。子どもの年代でそれぞれで悩みが違うなと思うんですが、長女は中2で、学習もどうしようか……みたいな」
「たしかに、うちは二人とも保育園児なのでまだ学習面での心配はないですが、小学生以上の子たちは学習をどうするかという問題がありますよね」
「小さい子がいる家庭もめっちゃ大変だなと思う一方で、就学している子どもがいる家庭では、遅れている勉強をどうするんだとか、受験は大丈夫なのかっていう不安はどうしても出てきて」
「年代別に悩みが違いますね。リモートワーク中に一番大変だったことは?」
「短期で結果を出さなきゃいけないのが大変でした。コロナ禍に合わせたコンテンツを出せないかという急ぎの仕事を振られて、企画書を作らなきゃいけないことがあったんです」
「子どもを見ながらの急ぎの仕事はツライ。そうした大変なことが多いなかでも、よかったことってありましたか?」
「長女は塾や部活があって、一緒にごはんを食べる時間がなかったのですが、今回のことでコミュニケーションの時間が増えたような気がします。
リモートワークには通勤の負担がない、家族とのコミュニケーションの時間がとれるといった良い面がある一方、オフィスで同僚と雑談したり、気軽に相談できていた環境も大切だと気づかされました。
その人のその時々の環境や状況、仕事に合わせて、リモートワークか出社かを選択できるのが一番理想的なんじゃないでしょうか」
“ながら”での仕事方法を見つけた
(Case2.バーグハンバーグバーグ・山口むつおさん)
「山口さんのツイートで、『スマホメインで仕事するところに行き着いた』っていうのを見ました。どうやって仕事するんですか……?」
テレワーク。自宅の机や椅子ではどうやっても肩こりがするし、幼い子供は寂しがって膝に乗っかってくるしで思うように仕事ができず試行錯誤した結果、「子供の脇に寝っ転がってスマホメインで仕事する」に着地しました。サボってるようにしか見えないけど。
— 山口 むつお (@e_yamaguchi) April 15, 2020
「わーって子どもが寄ってくるから、日中は割り切って、身を任せるんです。地面に寝っ転がって、子どもの相手をしながらスマホで仕事する。うちはフレックスなので、夜に落ち着いたらパソコンを使って集中しないといけない仕事をやったりとか」
「身を任せるスタイル(笑)。スマホでしているのはどういう業務ですか?」
「会社やお客さんとのやりとりとか、原稿のプロットを書いたり、メモしながらアイデアを出したりですね。僕の職種によるところもあるんですけど、デザインしたり長文の原稿を書かなきゃいけない仕事じゃないから、なんとかできています」
試行錯誤の末にたどり着いた、寝転がりながらのスマホ仕事スタイル
「すごい……瞬発的に集中できるものですか?」
「常に子どもが傍らにいる状態なので、リモートワーク中に一回も集中したことがないですね。瞬発力よりも、ダラダラやるというか、“ながら”でのやり方を見つけたかなという感じ。
例えばこれ……、水場のおもちゃなんですけど、これを『とにかくくっつけてくれ』っていう依頼がくるんですよね」
「子どもからの依頼が(笑)。0歳と2歳というと、目を離せない時期ですし大変そう」
「0歳がエグくて、ずっとだっこしてないと怒るんですよ。しかも、2歳のほうはめちゃくちゃ夜更かしするんで、夜の12時くらいまで起きていることもしばしばあって。最初は睡眠時間の確保がきつかったですね。細切れで3時間くらいしか寝られないので」
「え、途中で起こされるんですか?」
「僕は0歳のほうと一緒に寝ることが多いので、お腹が減って起きたときにミルクを作ったりとか」
「パパが夜中に起きてミルクまで作ってくれるんですか! めっちゃ助かるな、それは……。両親揃っている状態で、『かまってほしい』という割合はお父さんとお母さんだとどれくらいですか?」
「ほぼ5:5ですね。わりと、リモートワークがはじまる前から育児にコミットしていたほうなので、片方にわーって集まる感じじゃなくて、隙あらば空いているほうにくるというか」
「何か対策などされたことは?」
「室内用のジャングルジムを買いました。外にも遊びに行きづらいし、かわいそうだなと思って。存在感がありすぎて、我が家から『インテリア』という概念が消滅してしまいましたが……」
「それによって少しは大変さが解消されました?」
「いえ……ジャングルジムにブランコがついてるんですが、それを『押せ』ってずっと言われてます」
「むしろ仕事を増やしてしまっているじゃないですか(笑)。一日の仕事のスケジュールはどんな時間割なんですか?」
「ほんとにバラバラで、出勤と退勤を細かく刻んでます。6時くらいに起きて7時まで仕事して、子どものご飯をつくって9時くらいからまた仕事して、お昼にご飯食べたり遊ばせたりして、仕事して、風呂に入れて上がったらまた仕事して……」
「めちゃめちゃ刻みますね」
「フレックスと遠隔打刻の仕組みを会社で導入しているから、細かく刻めるんですよ。それがなかったら、就業時間の確保が結構しんどかった気がします。今後リモートワークを検討する企業は、リモートワークとフレックスはセットにしたほうがいいと思いますね。
育児にコミットしてる人って、いわゆる通常の勤務時間外の時間が空いている場合が多いので。時間が合わないからと、ただただ時短勤務になってしまうのは会社も社員も、お互いもったいないんじゃないかなと」
「オフィスワークとリモートワークだと、どちらがいいですか?」
「今はコロナの影響で子どもを保育園に預けられないから大変だけど、リモートワークとフレックスの組み合わせはかなりいいなと思っていて。場所も時間も使い方が自由じゃないですか。
うちの場合、上の子が発達支援の療育センターへ通っているんですが、平日しかやっていないんですよ。オフィスに出勤が義務付けられているとそのためだけに休みをとらなきゃいけないけど、リモートワーク+フレックスだと療育に行く前や後に仕事ができて、融通がきくので。めちゃくちゃ仕事の効率はあがると思います」
仕事は思い切って若手に任せることに
(Case3.note・三原琴実さん)
「三原さんの一日のスケジュールはどんな感じですか?」
「朝の6時くらいから、20時、21時まで仕事しています。子どもと散歩に2回は行くので、休憩時間が長めです」
「散歩に2回行くのはすごい。でも、公園で遊ばせて体力を削ろうとしても、仕事中はお子さんに絡まれるんじゃないですか?」
「上に乗っかってきたり、Zoomの画面に映ってみたりとか。YouTubeを見せていても、広告が出てきたことに文句を言ったり(笑)。ミーティングは乱入されながらもなんとかできているんですけど、作業時間がとれないのが問題ですね」
ガンガン攻めてくる2歳児を抱えながらの仕事がデフォルトになっていたという
「そう、ミーティングは意外とできるんですよね。作業時間がとれないことに対して、何か工夫されましたか?」
「子どもが寝ている早朝の時間を活用したり、あとは思い切って若手メンバーに任せてみたりしています。会社の規模がどんどん大きくなって、ちょうどチームでも『脱・属人化』というタイミングだったので、いいきっかけになったと思います。
あとは、緊急事態宣言が出される前から、会社できめ細やかに働き方のケアをしてくれました。オフィスで使っているイスを自宅に送ってくれたり、Zoomを有料プランにしてくれたり。通勤の定期代がなくなった分を、リモートワーク補助費としてもらえています」
リモートワークになって改めて気づく、イスの重要さ
「えっ! それは手厚いですね。リモートワークになって一番大変だったことは?」
「私の場合は社歴が6年で、会社のカルチャーやメンバーのことを知っていたので、テキストのコミュニケーションでもなんとかなっていたような気がします。ただ、新しいメンバーは最初は大変そうでしたね。ちょっとした空気感って、会ったことがある人じゃないとわからないじゃないですか」
「たしかに。改めて、オフィスってそういう役割もあるのかもしれないですね」
「弊社の場合は青森に住んでいるエンジニアがいたり、もともとリモート環境は整っていたんです。リモートでできる職種なら、場所を選ばずにできるのはいいことですよね。私のような企画職の場合は、細かいニュアンスをSlackやZoomだけで伝えるのが難しい場面もあって、そういう場合は対面でコミュニケーションが取れるといいなと思いました」
「リモートワークになってよかったことはありますか?」
「会社の内外の人とオンラインで連絡できるようになったことと、時間管理のスキルが上がったことですかね。バッと集中できるようになったし、状況の判断が早くなった気がします。今は一時的に育児と仕事に集中しなきゃいけないけど、このあとは働きやすくなるんじゃないでしょうか」
「これを機にオンライン化が進んで、恩恵を享受できる時がくるかもしれないですね。個人的には、子どもがいることを言いやすくなった雰囲気もあるなと思っていて」
「そうですね。以前は『子どもがいる』ことによって、仕事が頼まれにくくなったら嫌だなと思っていましたが、それぞれの状況がわかりやすくなったので支え合いの精神が醸成されている感じがしますよね」
リモートで見つけた、新しい関係性の詰め方
(Case4.ddd inc.・及川貴雄さん)
「及川さんは個人事務所なんですね。お仕事での変化はありましたか?」
「広告の撮影ができないので、ここ1カ月はほぼ自宅作業だったんですが、昼間はそんなに仕事が捗らないですよね。基本的には妻が子どもたちの相手をしてくれているんですけど、さすがに育児負担がすごいから、分業せざるを得ない状況です。子どもが泣き喚いているのに、部屋にこもって仕事するわけにいかないし(笑)」
「一日のスケジュールはどんな感じですか?」
「仕事は9時くらいから始めるんですが、適宜子どもたちを見ながら自分の仕事をして、21時くらいに子どもたちが寝静まってから本格的に仕事するって感じですね。
『お父さん体育』って時間があって、最近は近所の公園の遊具使用禁止が解除されたので、連れてって鉄棒をやらせたりしてます」
人がいない時間帯を狙えば、マスクも外せて気持ちいい
「『お父さん体育』、いいですね! ただリモートワークだと、プライベートと仕事の境界が曖昧になりませんか?」
「自宅がオフィス化していきますよね。自宅にパソコンや資料を持ってくるので、本も物も増えていくし」
「一番大変だったことは?」
「うーん、そんなにないんですよね。子どもが学校にさえ行ってくれたら、今のスタイルでいいなと思うくらい。
ただ、これも1カ月だからいいのかもしれなくて。あまりにも続くと、煮詰まってくるだろうと思います。ぼーっとしてるときにアイデアが生まれることもあるけど、家の中だと限られるんですよね。
インターネットで調べものをしても、興味のあるものしか入ってこないじゃないですか。偶然の出合いがなくなって、効率よく出合いすぎるというか」
「ああ〜。書店でどんな本が並んでいるかを見るのも、すごく大事だったんだなと思いますよね。今後、リモートワークが推奨されるようになるかもしれませんが、どうなっていったらいいと思いますか?」
「リモートで打ち合わせするスタイルが強制じゃなくて、商習慣のひとつとして定着してくれたらいいですよね。
今まで『ビデオ通話でもいいですか』なんてクライアントに言いづらかったけど、言いやすい環境になったし。これまでビジネスシーンでしかお会いしてない人も子育てしていることがわかって、生身の人柄が見えるようにもなりました。それは、リモートでの新しい関係の詰め方なんじゃないかなって思います。
ただ、リモート化できないことを『時代遅れだな』って雰囲気にはしない必要があると思います」
「……というと?」
「リモートにできる職種の人はいいんですよ。でも、社外に持ち出してはいけないものっていっぱいあって、全員がリモートにできるわけじゃないから。『リモートをやらないのはダメな会社』ってレッテルを貼らない社会が優しくていいですよね」
おわりに
緊急事態宣言が明けて保育園がはじまったとき、「自分は無敵なのでは!?」とすら思いました。
集中できる環境、サイコー!!!
オンライン化が進んだ便利さをこれから享受できそうなので、あの我慢の日々も決して悪いことばかりではなかったのかもしれないと、自分を納得させられそうです。
みなさん初めてお話しする方たちでしたが、インタビューの途中で子どもたちが入ってくるのを見て、一気に親近感が湧きました。
わたし含めて、みんな一度は子どもたちの襲撃を受けながらの取材となりました
振り返ってみると、これまでは「仕事をしている自分」と「子育てしている自分」、地続きなはずなのに、どこか分けてしまっていたように思います。でも、この自粛期間を通して、仕事相手に対して「子どもが入ってくる可能性があります」とあらかじめ伝えやすくなりました。
子どもがいない人にとっては、子育てしながら仕事をするイメージがなかなか湧きにくいのではないかと思いますが、オンラインで他の家族を目の当たりにして、ちょっとだけ理解が進むのではないでしょうか。そうやって社会的に可視化されていくことが、子どもを育てやすい環境にもつながっていくかもしれません。
リモートワークが、子育て世代に寛容な社会への一歩になりますように!