■はじめに
バーグハンバーグバーグのまきのと申します。最近、人生で初めて髪を染めました。
12月になり急に寒くなってまいりましたが、みなさんお風邪など召していませんでしょうか。
さて、私は映画鑑賞が趣味で暇さえあれば映画を見るようにしているのですが、映画には「ほぼすべての作品に存在しているくらい必要不可欠なのに見てる側が意識しない人」がおります。
それが…
そう、エキストラ。映画やドラマの端々に登場するメインキャスト以外の人間たち、それがエキストラです。街なかのシーンなのに人が一人もいなかったら不自然ですから、リアルさを醸し出すためには無くてはならない存在です。
でもこのエキストラ…、結局誰でも出来るんじゃないか?
エキストラって、ワテでも出来るんでっしゃろか?
そう思ったので、ちょっと試しにやってみました。
ジモコロ編集長のギャラクシーに協力してもらって、「ギャラクシーが“水”をオススメするという架空の記事に写り込んだエキストラ」
という設定で記事の背景に見事に溶け込んでみようかと思います。
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こんにちは!ギャラクシーです。皆さんは喉が乾いた時、どうしてますか?普通でしたらそのまま体が干からびて死んでしまいがちなんですが、それを回避する方法があるってご存知でしたか?
それがこの「水」という代物です!これを飲むとたちまち喉の乾きが潤され、パワーも出てくるらしいです。早速試してみましょう!
ゴク…ゴク…ゴク…!おおお!あんなにカラカラだった喉が、一気に潤されていく!
元気100倍になりました!いかがでしたか?皆さんも喉が乾いた時には是非「水」をお試しください!
…すみません、生来の「俺が俺が精神」が前に出てしまい、ちっともエキストラとしての役割をこなすことが出来ませんでした。
このように、エキストラは「主張せず、無になり、映像作品に華を添える重要な役割である」ということを痛感しました。
実際にエキストラを専門としている人は、どのように役をこなしているの? 気になったので取材に行ってみましょう!
行くぞ!!!!!!!
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何故…何故だ…時間が夏に戻った…。焼け付くような日差しに、せっかく染めた髪も黒く戻っている…。夏、終わってなかった…!!
(すみません、本当は7月に取材していたにも関わらずまばたきをしている間に時が流れてしまったため、時間を逆行させることで帳尻を合わせました)
というわけで、創業70年以上、日本一の実績を誇るエキストラ専門事務所「クロキプロ」さんにお邪魔しました。
今回お話をうかがったのは、エキストラ歴30年のベテラン・中野 久さん(左)と、有限会社クロキプロ取締役・石川慎也さん(右)のお二人。
中野さんは本当にあらゆるドラマにエキストラとして出演しているので、一度は見たことがあるかもしれませんし、エキストラだからこそほとんど記憶に残ってないかもしれません。
「本日はよろしくお願いいたします!エキストラの世界について色々おうかがいできればと思います」
「よろしくお願いします」
「クロキプロさんはエキストラ派遣の老舗ということで、実は僕が働いてる会社でも何度か依頼したことがあるんですよね。『観賞用5万円プレゼント企画』という特設サイトを制作した時に…」
「そうそう、3年ぐらい前でしたね」
※使うためではなく、鑑賞するための5万円をプレゼントした特設ページ。その時に起用した、吉岡総一朗(仮名)さんが、クロキプロ在籍でした
「あのサイト、一体何だったんですか?」
「作った私にもよくわかりません。それはさておき、クロキプロさんのところには普段どれくらい依頼が舞い込んで来るんですか?」
「日によってかなりバラつきはありますが、一日で平均50人ぐらいがどこかしらの現場に派遣されてますね。月だと1,500人分ぐらいかな」
「世の中そんなにドラマとか映画を制作してるの!?」
「ドラマの一話だけでも注意して見てみてください。街やレストラン、会社や学校、駅など、エキストラが必要なシーンは無限にありますから」
「あと、エキストラというと皆さん映画みたいなものばかり想像しがちなんですが、他にもバラエティ番組の再現ドラマとかCMとか、色々な仕事があります」
「素朴な疑問なんですけど、本当の通行人(たまたまその場所を歩いてた人)をそのまま使ったらだめなんですか?」
「法律的にダメというわけではないんですが、業界の風潮として『無関係の一般人』が映っているのは、あまり良くないということになってきてますね」
「え、じゃあ野球場のシーンがあったとしたら、数万人のエキストラが必要になる!?」
「数が多い場合はボランティアを集めるパターンもありますが、さすがに1000人以上集まることって、そうそう無いです」
「野球場やコンサート会場など、あまりにも数が多い場合は、まず『バックネット裏』を撮って、次に『外野席』を撮って……といった感じで何回かに分けて撮り、あとで合成することが多いですね」
「注意深く見たら、同じ人が映ってるかもしれない! 今度見てみよう」
「衣装を変えたりするので、見つけることはほぼ不可能だと思いますが、頑張ってください」
「中野さんは今までどんな役をやってこられたんですか?」
「私が担当するのはその道のプロの役が多いかな。鑑識や警官、お医者さん。他にも学校の先生や会社の重役とか、冷静にカッチリしたことを言うタイプの演技が多いです」
「それってやっぱり年齢を重ねた落ち着いた見た目だからってことで、役が振られるんでしょうか」
「ですね。依頼が来た時点で『あ、これは中野さんっぽい役かな』ってことで現場を振ったりします」
「じゃあ中野さんが急にボディビルを始めてムキムキのドウェイン・ジョンソンみたいになったらどうします?」
「振る仕事は減ると思いますね。やはりいちばん大事なのは『目立たない』ことなので。身長170~175cm、中肉中背で髪も黒髪が望ましいです。というか中野さん、ボディビルやりたいんですか?」
「やりませんよ!」
「エキストラの人ってセリフはあるんですか?」
「慣れるとそういう役も回ってきますね。ヤジ馬役で『あっ、あれは何だ!』とか、鑑識役の時は刑事役に『ごくろうさまです』とかね」
「カメラが回ってる中での演技って、緊張してしまうな…絶対に…」
「助監督さんがちゃんと指導してくれるんで、そんなに緊張する必要はない……んですが、やっぱりイザその時になったら緊張しますよね」
「私も最初はガチガチに緊張しました。急にカジノのディーラーを務めることになった時なんて……カジノ自体行ったこともないのに、プロのディーラーとしての風格を出さなければならないという…」
「ヒエ〜〜〜〜〜〜〜。今までNG出したことはないんですか?」
「ありますよ! あるドラマで刑事の一人として出演した際、俳優の藤村俊二さんに『この度はおめでとうございます』というセリフを言うことになって。たった一言のセリフなのに、何故か何十回もNGを出してしまったんです」
「ドツボにハマるという状態ですね」
「NGを出す度に藤村さんが元の位置まで歩いて戻って、またNGを出して歩いて戻って……。『大御所俳優やスタッフに迷惑をかけてる!』と、思えば思うほどパニックで言葉に詰まっちゃって。でも、藤村さんはひとつも怒ることはなかったですね」
「藤村さんって生前は飄々としたキャラクターで人気だったので、その人柄が分かるエピソードですね」
「中野さんは、そもそもどういう経緯でエキストラになろうと思ったんですか?」
「若い頃から映画に携わる仕事がしたかったんですが、何だかんだで歳をとってしまって。それがずっと心残りだったんですが、『エキストラなら出来るかも』と思ったのがキッカケですね」
「なるほど〜。演技の経験はあったんですか?」
「ちゃんと勉強したことはないですね。部活で8ミリ映画研究部にはいましたが。ウチに在籍してるかたでも、最初から演技経験がある人のほうが少ないですよ」
「女性のエキストラというのも……?」
「もちろん弊社にも女性キャストは在籍しています。僕の経験上、男性よりも女性の方が緊張せずにサッとこなしちゃう人が多いですね」
「なるほど。素人の僕には『どこからどこまでがエキストラなのか』がわかってません。有名な俳優だけどワンカットしか出演してない、みたいなパターンもあるじゃないですか」
「ありますね」
「例えば、刑事ドラマの捜査本部のシーンで、端っこに黙って座ってる刑事は……」
「エキストラですね」
「じゃあ、刑事に腕を引かれながら『離せよ!オレはやってねェって言ってんだろ!』って言うチンピラは?」
「う~~~ん、エキストラだと思います。それより長いセリフとか、複雑な動きが増えたら、もうエキストラとは言えないかもしれない。そのあたりが境界線かな」
「難しいですね。台本に名前がなかったらエキストラ……ていうか、そこまで厳密に定義を決める必要あります?」
エキストラだけが知るテクニック
「役によっては、余計な声や音も出しちゃいけなかったりもしますよね」
「喫茶店のシーンなんかではずっと口パクと身振りで話してるフリをしたり、水も飲んでるようで全く飲んでなかったりしますね」
※これ、一言も発さずに演技してます
「うわ、ムズそう。撮影現場って音に関してはかなり敏感なんですね」
「だからコップを置く時は音が鳴らないように小指を挟んだりしますね。あと女性だと役柄上どうしてもハイヒールを履かなきゃいけない時があって、そういう時は足音がしないように、ガムテープを靴底に貼ったりします」
「でも、あまりにもシーンとしてるのも不自然じゃないですか? 実際、ドラマで喫茶店のシーンを見ると、『ざわざわ……』という雑音が入ってたりしますよね?」
「あれは後から雑音だけを録音してたりします。与えられた役の人が言いそうなこと……たとえば家族連れの父親役なら『学校の方はどうなんだ?』みたいな会話をアドリブでやるんです」
「全然知らなかった……! 他にもテクニックってありません?」
「そうですね。通行人役だったら、普段どおりの速度で歩くとすぐに画角から消えて画面が寂しくなってしまうので、遠くに行くほどゆっくり歩いたりしますね」
「日常生活にも影響出そう」
「歩くのが遅くなるとかはないですけど、実際、服を買いに行っても『これだと目立っちゃうな』なんて考えてしまいます。あと、現場の指定で『白のスニーカーを履いてきてください』ってことが多いんで、白系の色を選んでしまったり」
「人知れない努力があるんですね。先程はベテランの中野さんが知るテクニックを教えてもらいましたが……逆に、新人で演技が下手な人ってどんな感じなんですかね?」
「初心者がやってしまいがちなこととしては、『カメラを見てしまう』というのが多いですね。同じようなケースで、役柄的には無関係の客のはずなのに、メインの俳優さんのほうをチラチラ見てしまうとかね」
「僕なら絶対に見ません。それだけに注意して演技します」
「逆に、『その方向だけを絶対に見ない』というのも、人として不自然だったりするんですよね~。意外と難しいですよ」
「『自然であること』ってエキストラとしてすごく大事です。例えば殺人事件の現場に野次馬として参加する場面があったとしますよね? その場合、自然な演技だとこういう感じ―」
「『なんだなんだ?』って覗き込むような感じになるかと思うんですが、下手な人だと…」
「『あああぁぁぁ!!!!!』っていう大げさな顔をしちゃうんですよね。“第一発見者”ならこういう演技でもいいんですけど、“野次馬”ならこんなに驚かない。自分の役にとっての自然さを考えなきゃダメですね」
「僕だったら『何かしなきゃ!』と思って、そっちやっちゃいそうです。話を聞いてると色んなテクニックがあって、奥が深い職業ですね。仕事をしてて楽しいと感じることも多いのでは?」
「そうですね。日々色んな役を演じて、まだ見ぬ自分に出会えるのは楽しいです。普通に人生を過ごしてたら、教師とかヤブ医者とか、江戸時代の町人、ゾンビ、そんなの絶対なれないじゃないですか」
「少なくとも江戸時代の町人とゾンビに関しては絶対に無理ですね。色んな経験ができて楽しそう」
「エキストラの魅力というと、間近で有名な俳優を見る機会がある、というのを挙げる人も多いですね。例えばクロキプロでは『踊る大捜査線3』にかなりエキストラを使って頂きまして」
「え、まさか織田裕二さんに……?」
「間近で見た織田裕二さんはやっぱりオーラがありましたね。他にも最近だと『なつぞら』なんかにも出演させて頂きました。有名な作品に参加できるのは、それだけで楽しいですね」
「おぉ、すごい! 他にもお仕事の魅力ってありますか?」
「そうですね。『人がただ普通に生きている』という何気ないことに価値があるということを教えてもらいましたね。ただの通行人役でも、わざわざそこにカメラを配置して世界を作り上げる……名もない通行人であっても、“その世界に必要”なんですよ」
「なるほど! その通りですね」
「自分がうまく演じれば、その通行人にもちゃんと生活があって生きている……と、見ている人に感じてもらえる。そういうのが積み重なって映画の世界が構築されるわけです。決して目立たないけど、やりがいがある仕事だと思いますよ」
「エキストラの仕事に俄然興味が湧いてきました! では最後にお聞きしたいんですが……僕みたいな見た目でもエキストラやれます?」
【僕みたいな見た目】
茶髪のもじゃもじゃ頭+ユニコーンが虹色のゲボと下痢を撒き散らしているパーカー
「申し訳ないですが、ちょっと難しいですね。エキストラは目立っちゃダメなので……」
「くっ…」
「あ、でも音楽プロデューサーとかの役なら、チャンスがあるかもしれませんよ」
「そんな役、10年に一回もないでしょ! やっぱりエキストラは諦めるか……。今日はありがとうございました!」
まとめ
ドラマを見てると一度は必ず視界に入っているはずなのに、一切存在感を出さずに場の雰囲気をリアルなものにしてくれるエキストラ。彼らはロボットでもCGでもなく生身の人間なのです。
中野さんをはじめエキストラの皆さんの演技にもうちょっと注目してみると、ドラマや映画がまた少し違ったものが見えてくるかもしれませんね!
それでは今日はこの辺で。