こんにちは、ライターのギャラクシーです。
僕は今までに何度も転職しているので、つまりそれと同じ数だけ退職してきました。そしてその度に毎回 思っていたことがあります。
それは―
ということです。
上司や同僚からの「テメーが辞めたらしんどくなるだろうが」という視線……
想像すると躊躇してしまい、「辞めます」の一言が切り出せない。
退職理由は嘘が多い。親の介護、実家を継ぐなど、誰からも反対されない為に架空の設定を作り上げるので、会社側は本当の理由がわからない。その点、退職代行をやっていると「上司の◯◯さんが高圧的で、、」など本当の退職理由を聞き出せる。これを会社側に伝えると人事から感謝されることがよくある。
— 退職代行の中の人|新野俊幸 (@getdrunkeasily) August 1, 2019
というわけで、“退職代行”の会社を検索していると、気になるツイートがありました。
「退職理由は嘘を付く人が多い」
確かに、僕が辞める時も「上司の○○が嫌いだから」「給料安いから」なんて言えるわけがないので、嘘八百の理由をでっち上げていました。
人って、本当はどんな理由で辞めるの?
さっそく、退職代行会社EXITの岡崎さん(左)、新野さん(右)に、話を伺ってみましょう。
ついでに、『ジモコロ』のスポンサーであるイーアイデムから、ジモコロ担当・藁品にも同席してもらい、人が辞める理由や、退職者が多い会社の傾向などを一緒に聞いていきます。
EXIT(イグジット)
ストレスフリーな退職を実現する退職代行サービス。電話やメール、LINEでも依頼でき、休日や深夜でも、可能な限り対応。「やめる」をポジティブに考えるメディア REBOOTを運営。
パワハラ、セクハラ、社員が辞める本当の理由
「さっそくですが、新野さんが先日ツイートしていた、『ひとが辞める本当の理由を、一番知っているのは僕たちだ』っていうのが気になってまして」
「退職する時に、素直に本当の理由を言う人なんてほとんど居ないですよね。例えば給料が低いんで辞めます!なんてなかなか言えない。ただ、無関係な第三者である僕らには、本音を言いやすい」
「辞める理由は、やっぱり給料に関する理由が多いんでしょうか」
「いえ、圧倒的に多い退職理由は“人間関係”ですね。上司の○○さんと合わなくて、とか」
「依頼者から聞いた“本当の退職理由”を、企業側に伝えることはあるんですか?」
「『伝えてくれ』って言われたら伝えます。僕らはただの伝達係なので。『○○さんという上司の方からこういう仕打ちをされたので退職したいそうです』って」
「その結果、人事から感謝されることもありますよ。『○○が部下に対してパワハラしていることを初めて知った』って。本当の退職理由がわからないと、企業側は改善できないから」
「企業としては、ノドから手が出るほど欲しい情報だと思います。○○さんのようなヤバい人を雇い続けてるほうが、会社としてはダメージが大きいから」
「人事の人って、そういうの気づかないものなんですか?」
「経験上、ヤバい人のほうが売り上げなどの数字は良かったりするんですよね……だから○○さんの言を信じてしまうってことはあるかも」
「以前、同じ現場から10人も依頼があったんですね。それってもう、明らかに職場のほうに問題があるじゃないですか。でも僕らが9回連絡をして、それでも改善されてないってことだから」
「社会ってどうなってんの?」
「EXITさんの繁忙期……というと変ですが、人が退職したくなる時期ってあります?」
「長期の休み明けですね。ゴールデンウィークやお正月、盆休みの最後の夜に、『明日から会社に行くなんて無理だ……』ってなっちゃう人が多い」
「気持ちはめちゃめちゃわかる」
「なんだったら、ただの『月曜日』も依頼が多いですよ」
「その気持ちもわかる」
「ちなみに、男女比で言うとどちらが多いんでしょうか」
「男性ですね。依頼者の7割近くが男性です」
「上司がすぐ怒鳴るとか、ワンマンで部下の言うことを聞いてくれないとか。簡単に言うとパワハラ的な理由で辞めるのは男性が多いです」
「『男なんだから少々強く叱ってもいいだろう』、的なマッチョイズムが残ってるのかな。大変ですね……」
「その代わり、女性の退職理由にはセクハラという項目がひとつ増えます」
「うわ~」
「『社長からセクハラを受けてるんですって部長に相談したら、今度はその部長に会議室で抱きつかれた』とかね」
「世の中 闇かよ」
「退職代行の会社をやってると、男性へのパワハラや女性へのセクハラを、山ほど聞くんです。でもそれは氷山の一角で、世の中には誰にも言えず、辞めることもできないで泣き寝入りし続けてる人が、もっといるんでしょうね」
社員がすぐ辞める会社とは
本日の新野さんのファッション。でかでかと「早期退職」と書かれたシャツ。
これ、作ったんじゃなくて、『ヨウジヤマモト』というブランドで普通に売られてる服なんだそう。新野さん以外に買った人いるのかな……
「僕、上司がイヤな奴だったり怒鳴るような人なら、『もう辞めてやんよ!』って感じで辞めやすいんですよ。むしろその逆……周りが良い人ばっかりっていう状況のほうが辞めにくい。この人たちに迷惑かけたくないって思っちゃう」
「僕もそのパターンで、以前の会社をなかなか辞められなかった。同僚たちを裏切りたくないと考えてしまう。辞めるのって、裏切りでもなんでもないんですけどね」
「依頼者の中にもそういう人が多いですよ。だらしない人とか悪い人より、真面目で優しい人のほうが、『辞めます』って言い出せない」
「わかります。自分がここで辞めたら、今やってる仕事とか、担当してるお客さんとかどうするのって思うと……」
「自分が抜けたら会社が回らないって考え自体、残念ながら勘違いであることが多いと思います。よっぽど特殊な能力を持ってるとかでもない限り、良くも悪くも代わりの人間はいる」
「うぅ、確かに、考えてみれば自分がオンリーワンなワケはないんですよね……」
「ブラック企業の場合だと、強気な性格の人はバンバン辞めるんです。すると『辞めます』と言い出せない人……つまり真面目で優しい人ばかり残ってしまう。会社はブラックなのに、周囲にいるのが優しい人ばかりだから、さらに辞めにくい」
「何でなんだよ……そんなに優しい人ばかりが集まってる会社なら、儲かって楽になって、うまくいけばいいのに! うまくいってよ!」
「残念なことですが、社会は優しい人に厳しいようです」
「ブラック企業って、もう単純にビジネスモデルが破綻してるんですよね。社員がブラックな働き方することが前提で会社が成り立ってしまっている。そんな状況で人が残るわけないからすぐ辞めて、また雇って……永久にブラックです」
「社員がすぐ辞めてしまう会社の特徴ってありますか?」
「う~ん、上司が高圧的で昭和型ってことかなぁ。社内の縦方向のフラットさって、かなり大事だと思いますよ」
「仕事や人間関係の悩みなんて、本当は上司に相談すべきなんですよね。僕ら(退職代行)に相談するってことは、縦の関係がちゃんと機能してない」
退職代行に依頼するメリットとデメリット
※EXIT公式HPより
「EXITさんへの依頼手段は、電話、メールの他に、LINEでもOKなんですよね? それにちょっと驚きました。人生でもかなり一大事であるイベント『退職』を、LINEで依頼できるんだ……って」
「8~9割はLINEからの依頼ですね」
「え、そんなに!? ほとんどがLINEじゃないですか」
「気楽に依頼できるのがいいんでしょうね。あと僕もなんですが、『辞めます』って言えないような性格の人は、電話が苦手かもしれない」
「毎月どれくらい依頼があるんですか?」
「毎月300件以上ありますね。他の代行会社も合わせると、退職を誰かに代行して欲しいというニーズは、おそらく毎月1000件くらいはあるんじゃないかなと」
「代行じゃなくても、退職者は年間700万人いるしね」
「人類めっちゃ会社辞めたがるじゃないですか
「退職代行に依頼する際、ユーザーにとってのメリットとデメリットはどんなものがあるんでしょうか?」
「まずメリットとしては、無駄な時間と精神的コストを支払わなくていいってことですね。なんで辞めるんだ!とか、責任感は無いのか!みたいに詰められることもない」
「あと『辞めます』って伝えても、何だかんだと引き伸ばされるじゃないですか。『あと一ヶ月だけ働いてくれない?』って」
「あるある」
「平均すると、退職の意思を伝えた後、3ヶ月位は働き続けるって人が多い。断れないんですよね」
「なるほど。では逆にデメリットは?」
「退職代行に依頼するとお金がかかるってことですね。料金は5万円なので、自分で辞められる人からしたらバカバカしいと思うかもしれない」
※社員の場合は5万円、アルバイト・パートなら3万円
「僕は自分でガンガン言える性格なので、5万も出して退職したい人なんているのかなって思ってました」
「僕は安いと感じてしまいました」
「ですよね? 僕も『辞めます』が言えない人なんで。そういう人って、それくらい困ってる」
「退職代行が失敗することってあるんですか?」
「失敗することはあり得ないですね。本人に退職届を送ってもらうので、法律上、企業側がなんと言おうと引き止めることはできない」
「民法で『退職の意思を示せば2週間後には辞められる』っていうのがあるんです。多くの人は、課長なり部長なりが承認してくれないと辞められないと勘違いしてるんですが、上司や人事の意向は関係ないです。辞められます」
「ん? 2週間後には必ず辞められる……ということは、逆に言うと『今日、たった今辞めたい』と思っても、2週間経たないと辞められないってことですよね?」
「はい。なので僕らは“即日辞められる”とは保証できません。2週間は有給を使うとか、有給がなければ欠勤扱いとか……。大体の場合は、どうせ欠勤するなら、もう今日辞めていいよってなりますけど」
「僕の知り合いには、『辞めるなんて許さない』って感じで辞表を目の前でやぶられた人もいるんですが、退職を邪魔することはできないってことは憶えていてください」
「辞表を破る上司って、ドラマの刑事長(でかちょう)くらいだと思ってた」
「先程、『本人に退職届を送ってもらう』とおっしゃっていましたが、ではEXITさんは何をする役割なんでしょうか」
「僕らは退職の意思を代行して伝えるわけじゃない。それは法律的にできないんです。退職の意思は本人に書面で伝えてもらって、僕らは事務連絡を代行してます」
「例えば、企業側から話を聞いて、社員証や制服をどこそこに返却してくださいって伝えたり。あと引き継ぎなんかがあれば、最低限のことはやったりします。その人のパソコンのパスワードを企業に伝えたり」
「あぁ、なるほど! 退職しますって伝えてからも、そういった細々したことがたくさんありますよね。それを手伝ってくれると」
「そういう細かいやりとりって、本人が一回一回書面で送ったり電話するよりは、間に誰かに立ってもらって伝えるほうが効率良さそうですね」
「退職代行に依頼する人は、そういう細々したことすら、一切連絡を取りたくないんですよ。一回連絡を取ると、『なんで辞めるんだ』とか『君のせいで周囲が迷惑じゃないか』とか詰められる可能性があるんで」
「退職する際にやっておいたほうが良いようなことってありますか? 例えば必要な書類とか」
「必要な書類は、実は特にないんです。働きすぎて鬱になってしまった……みたいな場合なら、心療内科の診断書とかがあれば、上司も納得してくれやすいですけど、それくらいですね」
「辞めると決めたら、まず会社に置いてる私物は持ち帰ったほうがいい。例え要らないものだとしても、企業側としては捨てていいのかわからないんで、本人に連絡を取らざるを得ないから」
「僕の会社の同僚は、机の周りにガンプラを山ほど飾ってるんですが……そういう人が急に全部持って帰ったら『あいつ辞めるつもりか?』ってすぐバレそう」
「徐々に持ち帰りましょう、徐々に!」
「あと最低限の引き継ぎはやっといたほうがいいですね。メモに書いとくとかでもいいから。それらは義務ではないんですが、やっといたほうがスムーズに事が運ぶし、あと本人のメンタル的にも良いです」
「本人のメンタルに良い?」
「退職代行に依頼するような人は、周りに迷惑をかけたくないっていうタイプが多いから。『自分は最低限の責任は果たした』って思えたほうが、気が楽なんですよ」
「『辞めます』が言えない人、生き辛すぎません?」
体や心を病む前に、辞めたほうがいい
「毎月300件の依頼があるということは、かなり忙しいんじゃないですか?」
「依頼とまではいかないけど、人生相談みたいな感じのもよくあるので、実際はもっと忙しいですけどね」
「相談?」
「『会社の上司がこんな感じなのでつらいんですけど、どうしたらいいと思います?』といった相談ですね。しばらく話してたら、『人に話したら勇気が出てきたんで、自分で辞めてみます』ってなったり」
「自分で辞めるってことになると、EXITさんには1円もお金が入ってこないから損なのでは?」
「そうですけど、そこで『ぜひぜひEXITで!』みたいなことはしたくない」
「EXITって、労働者のセーフティネットみたいになってるんです。深夜に一時間くらい相談を受けたこともありますよ。『どうしても無理になったらEXITがある、と思ったら頑張れます』っておっしゃる方もいました」
「乗り物酔いの薬を持ってるだけで安心して、酔わなかった、みたいなことですかね」
「『辞める』のひとことが言い出せない人は、絶対に代行に依頼したほうがいいですよ。辞められなくて心を病んでしまったり、自殺したりするよりは、代行で辞めたほうが絶対に良い」
「それは本当にそう」
「普通なら、辞められないストレスで死を選ぶなんて考えられないじゃないですか。そんな状況ならまず自分の体や心を心配するものでしょ? でもそういう人は、自分のことより、周囲の人への迷惑を考えちゃう」
「そういう人をギリギリまで追い込んで働かせてる会社、マジで許せんな……」
「僕らは日本で一番、自殺率の減少に貢献してる会社じゃないかなっていう自負があります。実際、自殺未遂をして怖くなったから電話しましたっていう依頼者もいました。体を壊したり、心を病んだりする前に、どんな手段だろうと辞めたほうがいい」
「今までは、追い詰められてる人は倒れるか、飛ぶ(連絡せずに突然来なくなる)かの二択だった。退職代行っていう選択肢が加わったのは意義があると思ってます」
「飛ぶより、代行を使ったほうがいい?」
「飛ばれると、企業側は『明日は来るのかな? 来るかもしれない』みたいな可能性を永遠に考慮し続けなきゃいけない。それよりは、EXITから一報あるほうが、状況を把握できる分、かなりマシです」
「なるほど。ためになる話ばかりだった……。今日はインタビューに時間をとって頂いてありがとうございました!」
「自分自身、なかなか『辞めます』と言い出せない性格なので、救われるようなお話もありました。では最後に、ひとつお聞きしてもいいでしょうか」
「何でもどうぞ」
「ウソップから『麦わら海賊団を辞めたい』って依頼があったら、辞めさせる自信あります?」
「最後の質問がそれ?」
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「ルフィって、そういうの止めないんじゃないですか?」
「いや、ビッグマム編でサンジが抜けるって言った時、認めてくれませんでしたよね」
「う~ん、まず契約書を見ないとだめですね。どういう形態の雇われ方なのか。労働契約が結ばれている労働者であるならば、ルフィが『認めねェ!!!!』って言っても、辞めさせることは可能です」
「労働契約の条件によっては、辞めさせられないってこと?」
「雇用形態が“個人事業主(フリーのライターなど)”の場合、僕らはタッチできないですね」
「ウソップって個人事業主なんですか?」
「知りません」
「あと、ウソップはかなり初期からのメンバーだし、体外的な実務能力を持ってる数少ないメンバーですよね? とすると、一味の中でもすでに取締役とかになっている可能性があります。取締役の退職に関しては、僕らは動けないです」
「ウソップって取締役なんですか?」
「知りません」
「よくわかりました。ありがとうございました」
EXIT(イグジット)
ストレスフリーな退職を実現する退職代行サービス。電話やメール、LINEでも依頼でき、休日や深夜でも、可能な限り対応。「やめる」をポジティブに考えるメディア REBOOTを運営。
まとめ
自分が辞めることで周囲に迷惑がかかってしまうのでは?と考えてなかなか言い出せない……気持ちはわかるんですが、無理するのは絶対ダメ!
それで体を壊したり、心を病んでしまうくらいなら、どんな手段でも辞めたほうがいい、という言葉は、かなり気が楽になりました。
そして、もし会社を退職できたなら……晴れ晴れとした気分で転職しましょう!! その際は、ぜひイーアイデムをご利用くださいませ。