こんにちは、ライターの少年Bです。
わたしはいま、横浜にある野球場・横浜スタジアムに来ているのですが……
見てください、この盛り上がり!!! 平日の夕方なのに、見渡す限りの満員です!!
これが特別な光景ではないほど、実はプロ野球人気がにわかに高まっているのをご存知ですか?
2018年のプロ野球全体での観客動員数は史上最多の2555万719人。なんと前年から41万人近くも増えているのです。しかもわたしのようなプロ野球ファンだけでなく、女子人気がグングンと伸びているという話も…。
かつてプロ野球といえば、父親たちのもの。ゴールデンタイムにチャンネルを握られたがために、好きなテレビ番組を見られなくて涙を飲んだ人も少なくないはず。
そんなプロ野球がなぜ、いま再び人気に…?
というわけで今回訪れたのが、この「横浜DeNAベイスターズ」です。
野球に詳しい方ならピンと来るかもしれませんが、DeNAベイスターズは近年着々と力をつけているものの、1998年の日本一以降は優勝から遠ざかっているチーム。
しかし、「モバゲー」などを手がける株式会社ディー・エヌ・エーが2011年12月にオーナー企業となって以降、観客動員数はグングン伸びており、この8年間で約2倍に!
昨年の観客数は球団史上初の200万人を突破し、本拠地である横浜スタジアムの動員数は97%を越すほどの人気になっているんです。
最近のプロ野球人気を紐解くカギは、きっとDeNAベイスターズにあるに違いない……! ということで、球団広報の方に話を聞きに行きました!
長期的な視点で、チーム自体のファンを増やす
お話を伺った、横浜DeNAベイスターズ広報の河村康博さん
少年B「今日はよろしくお願いします! この間、スタジアムへ観戦に行ったらすごい熱気で。DeNAベイスターズ人気を実感しました」
河村さん「おかげさまで、今シーズンが始まってからもたくさんの方に来ていただいています。実際、2011年から2018年で、観客動員数は約110万人から約200万人に、ファンクラブ会員数は約6千人から約9万2千人に増加しました」
資料提供:横浜DeNAベイスターズ
少年B「観客数は約2倍、ファンクラブ会員数は約14倍じゃないですか…!!! でも正直、DeNAベイスターズは圧倒的な常勝チームというわけではないと思うんです。なのに、どうしてそんな右肩上がりを実現できたのかなと」
河村さん「それは、わたしたちが勝ち負けだけではなく、チーム自体のファンを増やすことに取り組んだからだと思います」
少年B「チーム自体のファンを…?」
河村さん「横浜ベイスターズの経営がDeNAに代わった2012年当時は4年連続最下位の成績で、とても強いとは言えないもの。それまでの観客動員数もなかなか厳しい時期もありました。もしライターさんがそのような球団の経営を引き継いだら、どんな方針を考えますか?」
少年B「球団を強くすることですかね。高いお金を出してでも有名選手をチームに加入させて、戦力を補強する。強くなればチーム人気も出るはずなので」
地元横浜高校出身で、生え抜きの主砲・筒香嘉智選手は球界有数の人気選手 ⒸYDB
河村さん「一般的にはそうだと思います。しかし短期的な補強だと、数年で戦力は元に戻ってしまう。それに金銭による戦力補強を繰り返すのは、球団の金銭コスト的にはかなり厳しい話です」
少年B「たしかに有名選手は数億なんていう年俸にもなりますもんね。毎年『怪盗ロワイヤル』並みのヒット作を出さないと会社が破産しちゃう……」
河村さん「そこで必要なのは、長期的な視点で若手の選手を育てること。しかし、それには時間がかかります。だから同時に、球団のファンを増やすことに取り組んだんです」
少年B「なるほど。ただ、言うのは楽ですけど大変なことでは?」
河村さん「はい。そこで大きな役割を担っていただいたのが、2012年からチームの監督を務めた中畑清さんだと思っています」
中畑清監督:2012年から2016年までの4年間、横浜DeNAベイスターズを率いた監督。現役時代のあだ名「絶好調男」という名の通り、朗らかなキャラクターで野球ファンを魅了した
親しみやすい監督のキャラクターが生んだ相乗効果
河村さん「実は、中畑さんには『負けた試合でも、必ず試合後に監督インタビューを受けてください』と約束をしていたんです」
少年B「ええ、負けた後のインタビューってプラスの材料になりますか…?」
河村さん「中畑さんはいつでも素直で、負けたときは悔しい、勝ったときには嬉しいと、全力で表現してくれる方です。そして選手を責めるのではなく、前を向き続けるものでした。その言葉は、ファンの気持ちを代弁するものだったんです」
少年B「たしかに、球界随一の親しみやすい監督でしたね。だから好きになるファンも多かったように思います」
河村さん「ええ、そうして徐々に監督のファンが増えました。さらに、チームのトップである監督がどんなときでも発信し続ける姿勢を持っていたことが、チームとファンのコミュニケーションを生み、架け橋になってくれたと思います」
少年B「なるほど!」
河村さん「DeNAベイスターズはファンの皆さんと近い存在になりたいと思っているので、監督にもコミュニケーションを積極的に取ってもらいたい、と。それは今のアレックス・ラミレス監督にも受け継がれている姿勢です」
中畑清前監督のあとを継いだA.ラミレス監督も明るくユーモアもたっぷり ⒸYDB
少年B「でも、親しみやすい監督の存在ですべてが解決はしないような…?」
河村さん「監督は一つのきっかけで、そこからどんどん相乗効果が生まれていったんです。徐々にお客様が増え、球場が満員になる試合も出てきました。すると、そんな客席を見て、チームのある主力選手がこう言ってくれたそうです。『球団は頑張ってくれた。次は僕たちの番だ』と」
少年B「お客さんが増えたから、選手が発奮して強くなるきっかけになった…?」
河村さん「もちろん様々な要因がありますが、満員のスタンドでの試合は選手たちにとって本当にうれしいものだったはずなんです。だからこそ、ファンのために頑張ろうという力になり、近年の成績に繋がっているのではと考えます」
野球の楽しみは勝ち負けだけじゃない
少年B「ここまでの話は十分すごかったのですが、それだけで観客が2倍にならない気はしていて」
河村さん「ええ、もう一つわたしたちが取り組んだ方針がありました。それは『試合の勝ち負けに関わらず、野球観戦自体を楽しんでもらうこと』です」
少年B「え、応援してるチームが負けたら楽しくはないような」
河村さん「もちろん、負けていいはずはありません。ただ、野球というスポーツは、優勝するチームでも勝つのは6割ほど。つまり、どんなに強くても3~4試合に1回は負けてしまうんです」
少年B「言われてみれば…勝ち続けるのは無理ですもんね」
河村さん「球団として、もちろん勝つのが一番です。しかし、たとえ試合に負けてしまっても球場での野球観戦を楽しんでほしい。だから、球場の観戦以外の要素を充実させることに取り組みました」
球場と関連施設で飲むことができる、球団オリジナルのクラフトビールは、180年余りの歴史を持つ『木内酒造』と地元・関内のクラフトビールブランド『横浜ベイブルーイング』による製造 ⒸYDB
河村さん「例えば食事です。野球は意外と『間』があるんですよね。投手がボールを投げる間や、攻守交代のイニングの間。そうした時間に美味しいビールを楽しんでもらおうと、球団オリジナルのクラフトビールを提供しています」
少年B「おおお、たしかに『球場とビール』って風物詩感があるなあ」
河村さん「もちろん美味しいオリジナルグルメもありますよ。毎年、新商品を出して、お客様に楽しんでいただいています」
ライトスタンド側のフードエリア『BAYSIDE ALLEY』では、様々な食事を楽しむことができる。左上から、『ベイチキンレッグ』『青星寮カレーパン』『ベイマグロ丼』『タピオカドリンク』
少年B「選手寮(青星寮)で食べられているカレーをカレーパンとして味わえるのも、マグロ丼で港町っぽさを感じられるのもいいですね」
河村さん「スポーツ観戦って初めての方には少しハードルが高いと思うんです。野球の場合、一試合3時間近くあるので、よく知らないまま行くと、途中で退屈になってしまう。そうならない別の魅力として、飲食を充実させようと考えました」
少年B「そうなんですね」
河村さん「ただ、飲食の充実は他の球団もやっています。わたしたちの取り組みはほかにもありますよ」
少年B「(河村さんが熱くなってきた…!)」