はじめに
こんにちは、バーグハンバーグバーグのまきのです。めちゃめちゃな髪型で失礼いたします。
先日に引き続き、今回もタリーズコーヒーで店長として働き商品開発なども携わりながらコーヒーの腕を磨いていき、新たに任された店舗が「完璧な店」に仕上がったタイミングで、お笑い芸人に転身したという異色な経歴の持つコーヒー芸人「コーヒールンバ」の平岡佐智男さんにインタビューをお届けします。
前回はむっちゃおいしいコーヒーを淹れてもらいつつ深いコーヒーの話もお伺いしましたが、今回は平岡さん自身のこれまでの経歴に焦点をあてたいと思います。
こちらがその人、松竹芸能所属のお笑いコンビ「コーヒールンバ」の平岡佐智男さん。色々話を聞いていきましょう!
平岡さんの経緯を聞く!
おいしいコーヒーに舌鼓をうったあとは、色々お話を聞いていきます
「まずは平岡さんのこれまでの経緯をおうかがいしてもよいでしょうか?」
「はい!映像関係の専門学校を卒業してすぐ養成所に入ってお笑いをやり始めました」
「おお、まずは芸人スタートだったんですね」
「そうなんです。小さい頃からお笑い番組が好きで、学校の昼休みにもネタなんかやったりしてたので将来は芸人になるぞ、と思っていました。幼なじみとコンビを組んで活動しつつ、当時並行してバイトしてたのがタリーズだったんです」
「もともとコーヒーが好きだったから選んだんですか?」
「いえ、コーヒー全然飲めなかったんですよ」
「え!?」
「カフェモカだけが唯一飲めたんです」
「チョコ入ってますからね」
「カフェなんかも当時は入ったこと無くて。でもたまたまオープニングスタッフだったんで先輩もいなくて自由にできるな〜。カフェモカも飲めるし、可愛い子もいっぱいいるだろ…というモチベーションでしたね」
「まあバイトのモチベーションはだいたいそんなものですからね!」
「で、松竹芸能所属でお笑いをやってたんですが、2年ほどで一度コンビ解散と同時に引退したんです。その時に『芸人やめたんだったら社員にならないか』とお誘いを受けて、そのままタリーズの社員になったんです。その時はバイトリーダー的なポジションまでいってましたね」
「あら。芸人に未練は無かったんですか?」
「いえ、当時は幼なじみと組んでたので、相方が辞める決断をして自分だけ続けるっていう感覚が無かったですね。一緒に始めたから一緒にやめるのが普通だと思っていて。お笑いは好きでしたけどね」
「けっこう珍しいパターンかもしれませんね、その引退のパターン」
「自分だけ続けるっていう選択肢が全く頭に無かったですね…何も知らずに生きてました。で、流されるまま行き着いたのがタリーズだったということです」
「タリーズ歴はどれくらいだったんですか?」
「4年ほどですね。入って3ヶ月目には店舗を任されるようになってしまいました。普通は3年ほど副店長を経る必要があるんですが、当時は本当に人が足りなかったので。プレッシャーもありましたけど、何も分かってなくてバイトリーダーの延長線上みたいな感じでやってました。『できるっしょ(笑)』みたいな。そのおかげで痛い目にあいましたね…」
「痛い目…!?」
「バイトのノリで社員をやってたんで、『人の心をつかむ』とか、『店長として頑張る』、『やる気にさせる』という社員としてのマネジメント能力が1ミリも無かったんですよ」
「1ミリも!」
「結果、バイトが全員辞めました」
「めちゃめちゃ痛い目!」
「最低限の接客だけやっていて、仕事以外のコミュニケーションが一切無かったんですよ。カフェなのに…。それってバイトにとっては全然楽しくないですよね。カフェで働く子ってだいたい楽しそうなイメージで来る人が多いので、イメージと違う…と」
「そこからどうやって立て直したんですか?」
「これはアカン!と思って、異常に明るくなりましたね」
「異常に明るく!意識してできるもんなんですね…」
「誰も店から去らないでくれ…の一心で、従業員のみんなに昨日あった面白いお客さんの話をしたり、目力を無理やり強めてやる気にみなぎってるアピールをしたりしてましたね」
「めちゃめちゃ必死だ」
「自己啓発本も何冊も読んで実践してましたね。『寝る前に自分を褒める』とか『太陽にありがとうと言う』とか、それ効果ある?って今になったら思うんですけど、がむしゃらにやってましたね」
「その中でも一番効果があったなって実感したのって何ですか?」
「効果というか、気をつけていたことは『人から逃げない』ということでしたね。良かったところは絶対褒める、悪かったところは絶対注意する、自分のミスはうやむやにせず絶対謝る、という感じで、一度でもその人から逃げると終わりだと言い聞かせてました」
「バイトリーダーのノリから本当に生まれ変わったんですね!人と向き合うというのはどの職場でも言えることだから参考にしないとな〜〜」
「で、その後業績ものびて、3店舗を兼任したあと、さらに新店舗の店長をやることになりました。採用からオープニングのトレーニングも最初から自分でみっちり教え込んだ結果、『完璧な店』が出来上がったんです」
「おおお。最高の従業員が最高の商品が提供する完璧な店が…!」
「出来上がってしまったんです…。教育が行き届きすぎてるので、もう自分は後ろで座っているだけで全てが完璧に回って一日が終わるんです」
「店長としてはこれ以上素晴らしいことですね」
「そうなんです。すごくいいことなんですよね。売上も良かったですし。でもそんな完璧な店が出来てしまったので、タリーズでの役目は終わった…ありがとう…と思うようになったんです。で、そういう思いに至ったときに、『もう一度芸人やりたいな』という気持ちがわいてきました」
「上り詰めたあとの電撃退職ですね…! 引き止められたりしなかったんですか? そのまま続けたらいずれ幹部クラスになってるはずですしね」
「引き止められましたが、行く決意は強かったですね」
「もしかしたら薄々みんな感づいてたのかもしれないですね」
「すぐに受け入れてくれるほど僕がいい感じだったのかもしれないですね…!」
芸人として再スタート〜コーヒー芸人へ
「そこから芸人として再スタートしたんですね」
「そうですね。当時出会った今の相方も別のコンビを解散したところで、タイミングよく『組もう』と声をかけてもらって。そしてタリーズを退職して松竹芸能に戻りました」
「芸人に戻った時にコーヒーのキャラクターは最初から打ち出していこうと相談していたんですか?」
「これは完全に単独行動ですね。でも『コーヒールンバ』として名前を売るわけなのでコンビとしても還元できるかなと思っています。でも最初は『ふたりマン』っていうコンビ名だったんですよ」
「ふ、ふたりマン?」
「そうです。で、先輩に挨拶しにいった時に『お前ら"ふたりマン"ちゃうやろ。コーヒーやってるんやったら"コーヒールンバ"や!』と急に言われまして。それで改名しました」
「先輩につけられたんですね!その時どう思ったんですか?」
「めちゃめちゃ嫌でした。『うわ〜コーヒールンバやって…ダッサ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!』みたいな」
「ははは! そんなに嫌だったんですね!ちなみに名付け親ってどなたですか?」
「アメリカザリガニの平井さんです」
「おお、アメザリ!」
「最初は本当にこの名前が嫌で、変なノリに巻き込まれたわ〜と思ってました。で、アメザリさんが『コーヒー淹れられるなら楽屋にコーヒー淹れに来て』と言われたんです。何回か淹れに行った後、次に松竹のライブの楽屋に行って色んな芸人さんに淹れにいって。そうして繰り返して『なんか変な奴いる』って顔が少し知れ渡った時に「これを足がかりにすればいけるんじゃないか…?」と思って、『特技:コーヒー』を打ち出していこうと思ったんです」
「確かにコーヒー芸人って空席でしたね」
「そうなんですよね。コーヒーやカフェは世の中に溢れているのに、コーヒーをおいしく淹れることを特技とする人はいなかったんです。じゃあこれ俺だ!やろう!って。でも色々苦難はあるんですが、当時は知る良しもなく…」
「苦難…?」
「まず『画がめちゃくちゃ地味』ってことですね」
「たしかに…!」
「『味が視聴者に伝わらない』とか」
「実際飲んだら最高においしいんですけど、見るだけじゃ分からないですね…!」
「気づいた時には青ざめて…とはいえ活動はこうして続けてますね」
「芸人として再スタートして5年ですが、何か変わりましたか?」
「一回『アメトーーク』の企画『パクりたい1グランプリ』に出していただいたので少し名前は知ってもらえてるという状況ですが、コーヒー業界では色々お仕事いただけるようになりましたね」
「聞くところによるとコーヒーのワークショップや月イチ限定のカフェなんかもやられてるんですよね」
「ありがたいことにやらせてもらってます。最近ではコーヒーの日本一を決める大会の司会に抜擢されました」
「コーヒー界のM1グランプリ! 市場はこれからも大きくなっていってるみたいなので、いい流れきてますね。しゃべれて、コーヒー語れて淹れられて…コーヒー業界から引っ張りだこ!」
「コーヒー業界ってけっこう大人しい人が多いんですよね。興味のない人にも好きになってもらうキッカケになれるような活動もこれからしていきたいですね」
「完全に親善大使みたいな感じですね。TVでコーヒー大好き芸人とかやってくれたらいいのに!でもやはり本業であるお笑いでも評価されて二軸でやっていけたら最高ですよね」
「そうなんですよね。今のところコーヒー多めになってますが、それだと前に進めないですからね。でも得意分野が一つでもあれば知ってもらえるはずなので、信じて続けていこうと思います! コーヒールンバを知ってもらうことがコーヒーを知ってもらうことにもつながるので、僕がやっていかないと!って勝手に背負ってやりがいを感じてます」
「いいですね…応援します! 平岡さんの『仕事観』ってどんなものですか?様々経験している中で大事にすべきものがあれば教えてほしいです」
「やっぱり『自分の好きなものを見つけて続けていく』っていうのは大事かなと。芸人やり始めてからコーヒーの仕事は最初全く無かったので、youtube動画を勝手にやったんですよ。でもただ淹れ方を教える動画だけだと面白くないなと思ったんで、コーヒーの有名な方がいるところにアポ無しで突撃してコーヒーを淹れてもらう動画を作りました。コーヒーと人を結ぶコンテンツが無かったのでやってみたらコーヒー業界で知り合いが増えていって…。最終的にイベントの司会までつながったので、動き続けることで見つけてくれる人が増えていくのかな…と思っています」
「続けることで必ず見てくれる人は増えますからね!自分も頑張ろう」
おわりに
コーヒールンバ平岡さんの仕事論はいかがでしたか?
平岡さんのこれまでの経緯を振り返って、人には様々な可能性があるな…!と痛感しました。コーヒーのスペシャリストとしてはもちろん、芸人としてもこれからもっと飛躍できるといいなと願わずにはいられません。コーヒールンバ、応援してます!!
【月1回更新するカフェ「SACHIOPIA COFFEE」で平岡さんのコーヒーが飲める!開店情報はこちらのtwitterアカウントから】
【平岡さんのコーヒーの淹れ方動画】
書いた人:まきのゆうき
株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。姉妹メディア「オモコロ」で開設当初から「うさねこ」という4コマ漫画を連載中。髪の毛がもじゃもじゃで異形の存在なのか、電車内で赤ちゃんと目が合う確率が異常に高い。 Twitterアカウント→@yuuki