こんにちは。ライターの斎藤充博です。今日来ているのは秋葉原のレトロゲームショップ「スーパーポテト」。
ここ、ただの中古ゲームショップではありません。ビルの3階から5階までがスーパーポテトになっていて……。
3階から4階までレトロゲームが売られまくっています。ずらっと並んだソフトは壮観!
ファミコンの実機も大量にあります。持ってみたら「これ中に何も入ってないんじゃないの」ってくらいスッカスカに軽い。たしかにファミコンって軽かったよなあ……。
スーパーファミコンもたっぷりある。これを買ってもらうのに当時どれだけ苦労したか……!
ロックマンのトートバッグなんてのもある。ほしい。
「ロックマン3」発売時のポスターが展示されています。貴重な資料ですよね……。
5階は駄菓子屋とゲームセンターになっていて、
ストⅡ(ストリートファイターⅡ)ができたり、
(余談ですが僕はダルシムを使います。だってあんなにリーチの長いキャラ現実にいたら最強に決まってるじゃないですか)
ブタメンを食べたりできる。ノスタルジーの大博覧会のような場所なのです。やばい。これ何時間でもいられるな……。
世代によって興奮ポイントが違う
「もうすべてが懐かしいな……。泣けるわ……」
「はあ……。ファミコンとかスーパーファミコンは僕にはぜんぜんわかんないすね……」
アシスタントに来てくれた編集の友光だんご君。いまいちテンションが上がりきっていない様子です。
「これなんですか?」
「ディスクシステム知らないの? ゲームをフロッピーに書き込むことができる。スーパーにゲームの書き込み機が置いてあって……」
「ああ……。知識として知ってはいますね」
「ディスクシステムの『スーパーマリオ2』がものすごいむずかしくてさ。ステージの難易度もキツいんだけれども、マリオとルイージで性能が違ってて、ルイージの動きが異常。ダッシュした後にぜんぜん止まれないの。初心者のスノーボードみたいな。あれのせいでルイージがいまだに好きになれないんだよな……」
「はあ」
ものすごい早口になってしまいました。だんご君理解してないだろうな、ルイージへの不信感。
RFスイッチなんて使うやついないだろ
「ヤベ~~~!!! RFスイッチだ!!!」
「なんですか?」
「ファミコンとテレビのアナログアンテナをつなぐ機械。誰が使うんだよ!!! こんなの!!!」
「喜んでいるのか怒っているのかどっちかにしてほしいです……」
懐かしのゲームが激安
「『ドラゴンボールZ強襲!サイヤ人』これものすごくやった」
「キャラゲーですね」
「昔のドラゴンボールのゲームって、独特なカード式RPG。移動にも戦闘にもカードを使う方式で、かなりストレスがたまったな……。なんであんなシステムだったんだろう。それでもドラゴンボールのストーリーを原作に忠実になぞっているものだから、やらざるを得ないのね。ずっと後にスーファミで格闘ゲームの『ドラゴンボールスーパー武道伝』っていうのが出たんだけれども、あのときはものすごく感動したな……。悟空を自由に動かせるんだって……」
「悪口の上に説明が長い」
「あっPS one(※2000年に発売されたPlayStationの小型機)だ! ファミコンは全然わからないんですが、僕はこのあたりからが世代ですね」
「僕は逆にプレステ(PlayStation)くらいまでが世代かな。最近ニンテンドースイッチを買ったのを機に、またゲームをやりだしてるけれども……」
「プレステの名作『ポポロクロイス物語Ⅱ』! 知りませんか? ドット絵のグラフィックとホンワカした世界観が最高なんですよ!!!」
「やったことないな……」
「プレステで一番やったのは『テーマパーク』だな~。遊園地を経営するゲーム。園内のフライドポテト屋さんの塩味を強くすると、来場者の喉が渇いてジュースがたくさん売れるっていう……。でもジュースが売れすぎると、トイレが混み合って、クレームが来る……。フライドポテトの塩味をどうするかが、キモのゲーム」
「それが遊園地経営なんですか……?」
「そういわれると違うかもしれない」
なんでだろう。当時長い時間を掛けてやっていたやっていたゲームなのに、うまく説明できません。本当に面白かったんだけどなあ……。
中古ゲームの価値ってなんだろう?
レトロゲームには値段も高い物から、安い物までかなりの差があります。なんでこんなに差があるのか。店長の北林さんに話を聞いてみました。
「中古ゲームの値段ってどういう風に決まるんでしょうか?」
「基本的には需要と供給のバランスですね。例えば『高橋名人の冒険島Ⅳ』はファミコン最後のソフトなので、製造された数が少ない。それは値段が上がるんです」
「逆にドラクエとかファイナルファンタジーなどは数が多いですからね。どうしても安くなります」
「一般的な物の値段の決まり方と同じですね。ただ、ゲームって本質は『データ』じゃないですか。ドラクエやファイナルファンタジーの値段は、現行ハードで遊べる復刻版が出ているのも関係がありますか?」
「それはそんなに関係ないですね。スーパーファミコンミニが最近出ましたが、その中の収録タイトルが値下がりするようなことはないです」
「ゲームの『データ』ではなくて単純に『モノ』としての価値ってことなのか……」
「そうだと思います」
高額なゲームには値段が付けられない
「ちなみに、スーパーポテトさんで一番高いゲームってどれですか?」
「一番って言われるとむずかしいですが、『キン肉マン』や『オバケのQ太郎ワンワンパニック』のゴールデンカートリッジですかね」
「ずばりおいくら?」
「これは展示してあるだけの非売品なんです。価値がありすぎて値段を付けられません。でも値段を付けるとしたら×××万円くらいかなあ……」
「×××万円!」
「あ、でも数字は記事には書かないでください。書かれてしまうと『その値段で売ってくれ』という問い合わせがたくさん来てしまうんで……」
「なるほど……」
「ほかに珍しい物だと藤田まことさんの直筆サインが入った『必殺仕事人』があります。これも売れません」
「これは貴重だ……!」
昔のゲームでもいまだに相場が変動する
「『キャット忍伝てやんでえ』が4,480円。けっこう高いですよね。小学生の頃に2,000円くらいで買った記憶あります」
「これはここ10年で爆上がりしていますね。たしか10年前は1,600円くらいで売っていたと思います」
「爆上がりとかあるんですね!」
「ありますね。これに関しては明確な要因はないんですが、この値段で買う人がいますからね」
「好きなゲームが値上りしてるの、なんかうれしいな……」
海外勢の情熱がすごい
「『魂斗羅(コントラ)』なんかもここ10年で値段が上がりましたね。海外のお客さんに人気があるんですよ」
「47,000円!」
「北米版のファミコンは日本のファミコンと互換性がないんです。だから、買ってもプレイできないはず。それでも売れますね」
「他にも海外で人気のゲームってありますか?」
「『ファイナルファンタジー』や『クロノトリガー』ですかね。ここらへんはバンバン売れていきます。買っていく人みんなが日本語を読めるとは思えないので、完全にファングッズとして買っているんだと思います。ちなみに同じようなRPGで言うと『ドラクエ』は全く人気がありません。『桃太郎伝説』も売れませんね」
「『桃太郎伝説』を買っていく外国人がいたらマニアックすぎますよ……」
「そういえば店内に外国人のお客さん多くないですか? 観光客向けのガイドブックに載っているんでしょうか?」
「ガイドブックに載っているという話は聞いたことがないです。ただ、うちは日本よりも海外で有名ですね。みんな調べて来るんです。それだけ日本のゲームが人気があるってことだと思いますよ」
「好き」と「おもしろい」のは別!
「ちなみに、北林さんが個人的に好きなゲームってありますか?」
「『アイギーナの予言』ってゲームが好きなんですよ。意味不明なゲームなんですが」
「意味不明? クソゲーってことですか?」
「クソゲーなのかどうかすらさえ、よくわからないです。とにかくプレイヤーが主体的に動かないといけなくて。ノーヒントの場所で『3回ジャンプすると次のステージに進める』みたいなのがあるんです」
「(それはクソゲーじゃないのか……?)」
「小学生のときに持っていて、むずかしくてクリアできなくて。それでつい何年か前にクリアしたんです。攻略サイトを見ながらやりました。普通にやっていたら1000年かかってもムリですよね。はっきりいってつまんないゲームですよ。でも好きです」
「(つまんないって言い切った)」
「『アイギーナの予言』うちで安く買えるんで、ぜひ買ってやってみてください。ホントひどいゲームですから!」
「好きなゲーム」を語ってもらおうとしたのに、悪口しか出てきません。でもそれってよくわかる。僕も好きなレトロゲームを語るときにはやっぱり悪口みたいになっちゃいます。
レトロゲームって古い友達みたいなものかもしれません。お互い悪口を言い合いながら絆を深めてゆく関係性のような。
「ちなみに北林さんって最近のゲームはやりますか?」
「ぜんぜんやらないですね。なぜかやる気にならなくて。スマホのゲームもほとんどしません」
「生粋のレトロゲーム好きですね……」
「あ、でもこの間初めて『ダークソウル』をやったんです。あれは本当にメチャクチャおもしろいですね。ビックリしますよね!」
レトロゲームは『好き』で、最新ゲームは『おもしろい』。僕もそうです。最近スーパーファミコンミニを買ったんですが、結局ニンテンドースイッチでばっかり遊んでいるんだよな~。
スーパーポテトでは「何でも」買う
「スーパーポテトさんで売ってほしいゲームってありますか? せっかくだから記事で呼びかけてみたらいかがでしょう?」
「何が欲しいっていうのはないです。むしろ全部欲しいです。たとえば、汚れてしまってゴミ同然に扱われているスーパーファミコンでも、ウチは2時間かけてきれいにします」
「2時間! だから店頭に並んでいるスーパーファミコンあんなにピカピカだったのか……」
「ソフトだって一つ一つ、きちんとタイトルを見て値付けをします。単純に古いから買い取れないってことはありません。そこはレトロゲーム専門店としてキチンとやっていきます」
「さすがだ……」
「東京の秋葉原という場所ですからね。世界中からお客さんが来てくれます。どんなゲームだって商品になりますし、売る自信がありますよ!」
「頼もしい!」
まとめ
昔やったことのあるゲームを見つけるたびに、思い出がいちいちよみがえってくる。ゲームって時間を費やしますよね。あのころの時間がそのままカートリッジに封印されているような。
「モノ」としてのゲームが残っているって、すごくステキなことなんだなって思います。
さて、取材は終わりましたが、僕はもうちょっとここで遊んでから帰ります! 憎いルイージをひさしぶりに体験してみるか……。
取材協力:スーパーポテト