みなさんこんにちは。ライターのモンゴルナイフです。
突然現れて何をしているんだと思われるかもしれませんが、 熊本県の多良木町という町へ向かうため、山中で車を押しています。
地元の人に聞いた「雪が積もってないはずの道」が、完全に真っ白になっているのを発見し、慌てて別ルートに向かっているのです。
※前日に「異常気象」と騒ぎになるほど雪が降ったそう
さて、なぜそうまでして多良木町に向かっているかと言えば……
なんでも、多良木町には凄腕の猟師がいるらしく、その方が獲ってくる猪肉は、他と比べられないほど美味しいんだそう!
というわけで「おいしいジビエにかぶりつきたあ~い♡」という気持ちだけで、飛行機に乗ってやってきました。
なお、この記事は『熊本県・多良木町』の提供でお送りします。
こちらが多良木町の役場。このあたりはおしゃれなカフェレストランなんかもあって、わりと普通の「郊外」って感じですが……
ちょっと車を走らせれば、たちまち山あいの美しい風景が広がります。空気がおいしい!
郵便局はこんな感じ。ご挨拶に伺うと、なぜか飴ちゃんをくれました。
これは中学校……なんですが、現在は通う生徒がいなくて休校中。……なんだか胸の奥に眠っているニッポンの原風景って感じの町ですね。
凄腕猟師、落合さん登場
本日会いに伺ったのはこちらの方! 年間120頭も鹿とイノシシを獲るという、落合さんです。
にこやかな顔からは想像もつきませんが、数多の修羅場をくぐり抜けてきた凄腕なのです!
例えば……
イノシシって見た目はかわいらしいですけど、メチャ危険な動物なんだそう。
今日はそんな落合さんの猟に同行させてもらって、猟や罠について教えてもらいます!
「今日はよろしくお願いします! めちゃくちゃ美味しい野生のお肉、食べに来ました!」
「ははは!よろしくね!」
「役場で聞いたんですけど、落合さんってめちゃ凄腕の猟師さんなんですよね……? 素手で鹿を獲れるって本当なんですか??」
「小さめの鹿とかならね。後ろ足を掴んで……野球のバットを振る要領で、木にコーンと当てて獲ったりするよ。まあ、そんなにやるわけじゃないけどね」
「卵を割る話みたいにライトな語り口調ですね。小さいとはいえ、野生動物は危険なので、これを読んでるみなさんは絶対に真似しないでくださいね」
「さっそくですが、猟ってどんな風にするんですか?」
「僕は銃もやるけど、基本的に罠にかかった動物を獲る『罠猟』っちゅう手法だね」
「罠? 落とし穴とかトラバサミとか?」
「いやいや、土に蓋をした筒を埋めておいて、動物が蓋を踏み抜いたときにワイヤーが締まって足を捕まえる……ちゅう仕組みの罠やね。ちなみにトラバサミは禁止されとるよ」
「筒からワイヤー……? いまいち想像がつかない」
「実際にやってみようか。この木の棒を動物の足として……踏み抜くと、ほら! バネの力でワイヤーが締まるようになっとるんよ」
「ひえええ~!こんな一瞬でワイヤーが締まるんですね!逃げられない! これはどこかで売ってるんでしょうか?」
「完全に自作やね。罠猟をやる人は、みんな創意工夫をこらしながら自分で作っとる人が多いかな」
「東急ハンズに行っても罠は買えないってことか……。落合さんは罠のここにこだわっている!というところはありますか?」
「Simple is best!」
「ひゅ~!横文字! しかしこの広い山の中、ピンポイントで罠に足を入れてくれるものなんですか!?」
「そこを工夫するんが腕の見せどころたい」
「こういう、獣が通る道にまず罠をしかける」
「待って待って! めちゃくちゃ急斜面~~~~~~~っ」
「で、こういう感じに罠をしかけるんよ」
「罠はどこです…? これでどうやって動物がピンポイントで罠を踏み抜いてくれるんですか??」
「罠の周りに木の枝を置いて、歩きにくくして、罠がある場所しか踏めないようにするんよ。あからさまに配置すると警戒されるから、自然に置いてそれとなく誘導するのが肝だね」
「自然すぎて分からなかった……東京のちょっとした段差にもつまづいてしまう私なんかは、この罠に一瞬でかかっちゃうだろうな……」
「うまく罠にかかってくれたらこんな感じになるよ」
「ヒエエ~~! 迫力あるぅ~!」
「この山には既にいくつか罠を仕掛けてあるんよ。今日は掛かってくれてるかな? ちょっと見に行ってみようか」
「ぜひ!」
罠猟と銃を使った猟
「う~ん雪が降って罠が凍ってしまって、動かなくなっとるね」
「昨日、このへんには珍しいくらい大雪が降ったらしいですね。我々も車が通れなくなって大変でした」
「じゃあ、ここからは、見つけた動物を銃で獲って行くか!」
「狩りの始まりだ……!」
「あ……落合さん、動物よけのフェンスをうまく潜れなくて感電しました!! ビリビリします助けて下さい!!!!!!!」
「そのワイヤーは夜しか通電しとらんよ」
「たはは……」
「(小声)ここから先は、イノシシとか鹿が結構いて、人間の気配がしたら逃げてしまうから静かにね」
「はい!」
「ちょっと僕が先に行って見てくるね」
ザッザッザッ…………
何かを見つけたのか、斜面を登り始める落合さん
「緊張してきた」
シーン…………
パーーーーーン
「うわぁ!! 銃声どデカい……!!!! どうなったんだろう!?」
「いやあ、焦ってしまってだめだったね~。50kgくらいのイノシシがおったけど、完全に逃げられてしまったわ」
「はぁ、はぁ、緊張に耐えきれなかったので、ちょうど良かったです!」
「まあ、こういう日もあるわ!」
「いや、すごく貴重な経験になりました。撃つ方はもっと緊張したんだろうなぁ」
猟をやる理由と、鹿の害
「落合さんの場合、メインは罠を使った猟なんですよね??」
「そうだね。罠猟は30年前からずっとやってる。免許を取って銃を使い始めたのは、ここ5年くらいかな」
「銃の免許って、取得するのはやっぱり大変なんですか!?」
「免許は頑張ればなんとかなるけど、それよりもお金がかかるほうが大変だね。罠の免許が2~3万円で取得できるのに対して、銃の免許は所得にもよるけど毎年5~6万円くらいお金がかかってしまうから」
「毎年お金がかかるんですね!」
「それと3年毎に免許更新があって、そのときに警察が家に来て身辺調査をされるね。まあ、酔ったらすぐブチ切れるような人とかが銃を持ってたら怖いからね。鉄砲の取扱は責任のあることだから」
「罠にかかった動物へのとどめって、どうしてるんでしょう?」
「銃の免許を取る前は、棒で頭をボンと叩とったね。その感触が手に残ってしまうのが辛かったばってんね」
「それはいい気持ちはしないですね」
「だから最近は、鉄砲を使って一発で撃つわけよ。生き物を殺すというのは、本当に心にズシーンとくるものがあるよ」
「そんな優しい落合さんが、なぜ猟師になろうと思ったんですか?」
「う~ん、僕は正確には猟師じゃないんよ。本業はしいたけ農家ったい」
「へ? なぜ しいたけ農家が狩猟を??」
「僕が狩猟をしているのは、美味しいお肉を食べたいというのもあるけど、一番は駆除が目的だね」
「駆除……?」
「山に鹿が増えすぎて、農地を荒らしてしまったり、山に生えている草や木の皮を食べてしまう“獣害”っちゅうのがあるんよ」
鹿が皮を食べてしまった木。こうなると、もう再生することはないそう
「畑を荒らされるのはわかりますけど、山の動物が山にあるものを食べて、人間にどう影響があるんですか……?」
「例えばだけど、この斜面を見てみてよ」
「普通に土の斜面ですよ?」
「それが問題なんよ。ここも昔は草が生い茂ってたんだけどね。増えすぎた鹿が、斜面の草を食べつくしてしまって、もう何にも生えなくなってしまった。これは人間にとっても自然にとっても良くないことなんよ」
「草がなくなると何が起こるんですか……?」
「大雨が降った後に地すべりが起きてしまうね……。しかもこの斜面の真下には、小学校があるんよ」
「ぎょえ! でもそれは、人間が彼らの暮らす平和な自然を奪ったから仕方なく……とかではないんですか?」
自然を守るために人間が植林をしても、すぐに鹿にやられてしまい、イタチごっこなんだとか
「昔、鹿を保護していた時期があったんやけど、その時に爆発的に鹿が増えてしまったんよね。結果、鹿が溢れてエサが足りなくなって、自然を破壊したり人里に下りてきて田畑を荒らすようになってしまった」
「都会に暮らしているとわからない情報ですね」
「あと駆除ができる人が全然いないし、いても高齢化してるっていうのも動物がどんどん増えてしまう一因だね。僕が一人で100頭以上も駆除しているってのはそういう理由。このへんで猟ができる人の中では、僕が一番若い」
「ええ!(あと10年くらいしたら鹿の王国になっちゃうんじゃ……)」
「さて暗くなってきたからそろそろ山を下りようかね」
「お肉はおあずけですが、運がなかったと諦めます!」
「うちの冷蔵庫に、最近捕れたイノシシの肉がいくらかあるけど、食べにこんね?」
「ぜひに!!!」
※後日、冒頭で仕掛けた罠に15キロくらいのイノシシが掛かっていたそうです!
多良木のジビエを食べよう!
落合さんの自宅に招いてもらいました。雰囲気あって良い家だなぁ。手前の柱がかっこいい。
「さあさあ、イノシシ肉を食べる前に、この焼酎で乾杯するばい」
「やはり九州は焼酎なんですね!いただきます!」
「んあ”ぁ”~~~~お湯割り、温まります! この焼酎なんだか味が濃い…? 多良木町の焼酎ですか?」
「これは多良木町の蔵元が作っとる球磨(くま)焼酎の『蔵八』っちゅう焼酎ったい」
球磨焼酎
熊本県球磨郡または人吉市の地下水で造られた、米一〇〇%原料の本格焼酎。
「完全に米だけを原料にしてる焼酎初めて飲みました。飲みやすくてどんどんイケちゃいますね……香りが良すぎ!(ぐびぐび)」
「じゃあ、そろそろ多良木のうまいイノシシを食うてもらおうかね」
イノシシのバラ肉。皮をあえて残して、食感を楽しめるようにしてある
おいしそ~! いただきま~す!
「うんめ~~~~!!!! コリコリした皮の食感と、脂の甘さがたまんない! 通販してくれ~~~~!!!!」
「次はこれいってみようか」
「うああああああ! なんですかこのすごい丼は!? 上に乗ってるプルプルしたのは……角煮!? イノシシの角煮なの!?」
「落合SPECIAL(スペシャル)丼ったい」
「横文字……! ではさっそくいただきます!」
「どうったい?」
「めちゃめちゃ美味しいです! 角煮がトロットロ! でも、以前 都会で食べたジビエ料理と違って、全然ケモノの香りがしないのはなぜ……?」
「多良木のイノシシは臭くなかよ」
「え! 地域によってイノシシの肉のお味って変わるものなんですか?」
「食べてるもので肉の味に違いがでるんじゃないかな。この辺のイノシシは、渋い木の実とか、アクの強い山芋とか……美味しくなさそうなものを食べとるんよ。逆に、みかんとか美味しいものを食べていると、何故か肉が臭いって聞くね」
「イベリコ豚もどんぐり食べさせられてますもんね」
「多良木のイノシシを食べたら、豚肉は味が薄いように感じるわ」
「確かに味が濃い! 食感も強いし、噛むと旨味が口の中いっぱいに広がりますね! しかも、脂がくどくない」
「そうやね。豚肉でこんな量を食べたら胸焼けするかもしれんが、イノシシの肉は脂が良いから、なんぼでも食べれるでしょ」
「やばい、インタビューしようと思ってたのに、美味しすぎるし、楽しすぎる! なんかこのまま『おいしかったです』で終わっちゃいそう」
「今日は、慣れん山の中歩いて、疲れたやろ? 狩りの最中に話も聞いてもろたし、それで十分たい。ほらほら、もっと食べて飲んで」
「おいしーい! 何もかもおいし~~~!!!」
「だーっはっはっは! 気持ち良い飲みっぷりたいね~!」
「え~~~~っと、今日はぁ……ありがとうございましたーーーっ! では最後に、今回の取材をまとめさせてもらっていいですか?」
「おっ! 待ってました~!」
「多良木のイノシシは、おいしかったです!!おわり~~!」
「わはは、おつかれさん!」
翌日
落合さんのお陰で多良木町の美味しいジビエ料理にありつけました。
一夜明けた本日は、役場で聞いた多良木町の観光スポットを、ドライブがてら巡ってみますね!
まずは、丘の上から眼下一面に広がる雲海を見られる場所があるらしいので、それを見に行きます! 楽しみだなー!
ブロロロ………
ブロロ……ブロ……?
雲海が見れる場所への道……
今回は何もかもを雪に阻まれたロケになってしまいましたが……多良木町は景色も良いし、ジビエはおいしいし、最高の町でしたよ~!
では、私は二日酔いがひどいので東京に帰ります。さようなら。
(おわり)
多良木町おすすめスポット
▼雲海(妙見野自然の森展望公園)
今回の記事では行けませんでしたが、天気が良ければ、このように美しい雲海を一望することが出来ます。※正確には雲ではなく霧ですね
雲海が観られる時間帯:朝6時~11時(日によって異なります)
〒868-0504 熊本県球磨郡多良木町奥野妙見野
▼栖山観音
堂内の中央には像高283cmの巨大な千手観音立像が安置されています。なぜか中央部分だけ肌色に塗られた、美肌の観音様です。
〒868-0502 熊本県球磨郡 多良木町黒肥地
▼悠久石
「千年の目覚め」と称される巨岩、悠久石。
平成18年の豪雨により、山腹の斜面が崩壊し、土砂の中から突如出現した岩。直径140cm、重さ約4トン。GANTZみたいに丸い形をしているけど、人工物ではなく、自然のもの。
このように、石を抱きしめると運が上がると言われている……らしいです。
岩石自体は数千万年前に形成されたもの……なのに、「千年の目覚め」という意味がわかりませんが、とりあえずあやかっておきましょう!
〒868-0505 熊本県球磨郡多良木町槻木580
多くの史跡が残っていながら、面積の約80%が山林という文化と自然の調和する町・多良木町。見どころいっぱいのこの町に、ぜひみなさんも行ってみてくださいね!
今回伺った多良木町の酒屋さんで、球磨焼酎「蔵八」を買ってきました!
焼酎初心者でも楽しめる焼酎です。
1名様にプレゼントするので、成人してる人はドシドシご応募ください!
★応募方法はこちら!
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書いた人:モンゴルナイフ
北海道は道東出身の元気で明るいOLです。仕事のストレスをインターネット(オモコロ)で日々発散しながら暮らしています。好きな食べ物はカレー。
twitter : @amanattif