こんにちは! ライターのみくのしんと申します。
以前、未知の職業を一日体験するという記事で「解体作業」の事を書きました。
めっっっっっちゃめちゃに疲弊したんですが、一生味わうことはなかったであろう業務や、一生話すことはなかったであろう人々との出会いがあって、すごく良い経験でした。
というわけで今回は、職業体験第二弾として、静岡県・浜松市の『株式会社コーゲツ』さんにお邪魔しています。
株式会社コーゲツ
浜松支店|〒431-1102 静岡県浜松市西区大山町4155-1
今回こちらで体験する仕事内容は………
冷凍食品など、常温では保存できない商品を巨大な冷凍庫で保管し管理する仕事です。
冷凍倉庫といえば、なぜかマンガや映画の登場人物がよく働いてるイメージ。
昔ジャンプで連載してた『BØY』とか、登山マンガ『孤高の人』とか。あと『SAW』という映画では、裸の女性を冷凍庫で吊し、水をかけてじわじわ凍らせる拷問がありました。あ、それは仕事じゃないか。
こちらの冷凍倉庫では美女を吊るしてるのかな!? 株式会社コーゲツ浜松支店の販売管理課長、鈴木さんに聞いてみましょう!!
「そんなワケないでしょ」
「ほっ…安堵しました。では早速、仕事のお手伝いをさせて頂きます!」
「あ、早速はダメです。ちゃんと凍っちゃいます」
「え? ちゃんと凍っちゃうの…?」
「これから-20℃の世界に行くので、そんなペラペラの服だとマジで凍ります。防寒着を貸しますから着替えて下さい。ニット帽と手袋も必須です」
「軍手がなぜか2セット??? あのー、僕スター・ウォーズのグリーヴァス将軍みたいに腕4本じゃないんで(笑)1セットで十分です!」
「グリーヴァス将軍…? よくわからないけど、軍手一枚だと寒すぎるので、二重にした方がいいんですよ」
「そんなに寒いの……?」
着替えました。防寒着といえばこのオレンジ色ですよね。
胸には「極寒用」のマークが!
この時点で「1)下着」「2)あったかインナー」「3)私服」「4)防寒着」とかなりモコモコなんですけど。ここまでする必要ある?
「準備できました! では今日一日よろしくお願いします!!!」
「はい、がんばってくださいね」
始業開始~午前休憩まで
午前8時、いよいよ冷凍倉庫でのお仕事が始まります!
説明された業務内容を大まかに言うと……
1:様々な会社から商品の注文が入る
2:注文に合わせて倉庫の商品を仕分けする
3:注文してくれた各会社や施設へ配達する
と言った感じ。「1」は事務とかの仕事だし、「3」はドライバーの仕事なので、僕が手伝うのは実質「2:注文に合わせて倉庫の商品を仕分けする」だけです。
……正直、余裕じゃないですか?
スマホでゲームしながらできるのでは…?
「注意事項として、スマホとかの電子機器を持ち込むのは、やめたほうが良いです」
「えー? どうしてですか?」
「充電が秒でなくなるから」
「どぅえ!? 何故!? 精密機器が熱に弱いってのは聞いたことあるけど、寒さにはむしろ強いんじゃ?」
「寒すぎると、機械が『使える状態を維持するため』にバッテリーをムチャクチャ消費するんです。5分で使えなくなったりしますよ。内部で結露することもあるから、カメラも危ないかも…」
「いやいやいや、いくらなんでも、そこまでじゃないでしょう(笑)とりあえず早く冷凍倉庫に入れてくださいよ!」
「大丈夫かなぁ……」
必要な商品を仕分けするための台車(真っ直ぐ操作するのが難しい!)を持って、さっそく冷凍庫へ向かいましょう。
楽しみだなぁ。北極みたいに、一面真っ白の銀世界なんだろうな~~!
「お邪魔しまーす!」
あれ?
あんれれれれ~~~~!?!?
「見た目は普通の地味な倉庫なんですね……霜がおりてツララが発生してるような世界じゃないの?」
「そんなのは漫画や映画の中だけです! というか、寒くないんですか……?」
「え……? あ、」
「さぶぶぶぶぶ~~~~~~~…!!!!」
「ですよね」
「なんだこれなんだこれ! ムチャクチャ寒い! 防寒着で覆われた部分はまだしも、末端の手足とか顔が凍りそう! だめだこれさむさむさむさむ……」
ちなみにカメラも凍りついて一瞬でバッテリー残量がゼロになったため、急遽カメラマンがカイロを買ってきて、貼り付けたまま撮影することになりました。
「あの~、そろそろ仕事の説明してもいいですか?」
「完全に甘く見てました。すいません」
「とりあえず作業の流れを一回説明しますね! 指示書に、必要な商品と個数が書いてあるから、倉庫内で探して台車に入れてください」
「この広い冷凍倉庫で、ピンポイントに必要な商品を探せるものですか?」
「壁や棚に『A-12』とか番号ふってあるから、簡単だと思いますよ。終わったらまた違う指示書を取って、商品を入れて……の繰り返しです」
「なるほど。メモしとかなくちゃ……」
「……あれ? 字が書けない」
「あ、寒さでインクが出てこなくなるから、ボールペンは使えないよ」
「えー! なんて世界だマイナス20度! じゃあマジックで書くか……」
「マジックも、ガラスに水性ペンで書いたみたいにすぐ消えちゃうから、実質ムリ」
「そんなんばっかじゃん」
ゴォォオオーーー…
とりあえず、やるべきことはわかったから、やってみるか。
えーっと、この商品を20個ね。どこだ? こっちか?
ゴォォオオーーー…
これか! あ、違うわ。 普通の唐揚げじゃなくて、南蛮味のやつか。あれ? どこに戻すんだっけ? えーっと……
ゴォォオオーーー…
うん、一回外に出て……っと
ウウゥゥゥ~~(泣)…………
「寒すぎるだろ……!」
「大丈夫ですか!? この寒さに簡単に順応できる人は、人類の歴史上いないんで、自分のペースでやってくださいね。ちょうど休憩の時間なんで、一回休みましょうか」
「ガチガチガチ……(無言で頷く)」
コーゲツさんではお昼休憩の他に、10時と15時に小休憩が入ります。
外の日差しがあったけぇ……(注:取材したのは真冬の2月ですが、寒さの感覚が麻痺しています)
「どう? 慣れた?」
「正直、 めっちゃ寒いです…… 夏に来たら涼しくて最高なんだろうな~」
「実は夏が一番キツイんですよ」
「はいダウト! 嘘ついた!」
「本当です。 冷凍庫の中が-20℃で外が40℃とかだったりすると、中と外で温度差が60℃近くある計算だから、体調管理が難しいんだよね」
「60℃の寒暖差!! そうか、夏は汗もかくし……」
「そうそう! 一時期 会社でサッカーが流行ったんだけど、休憩時間にサッカーすると、冷凍庫では汗だくの体が急速に冷却されて、結構な人が大風邪引いてたな(笑)」
「笑ってる場合か」
午前の作業再開~昼休みまで
小休憩で心をリフレッシュしたので、お昼まで頑張るぞー!!!
「台車って、白いのとオレンジのがあるじゃないですか。僕、みかん好きなんでオレンジ使っていいですか?」
「何だよその理由。 答えはNOです」
「え? 服と合わせてお洒落かなーと思ったんですけど」
「白色の台車は寒冷仕様なんですよ。普通のパーツだと寒さでダメになっちゃうものもあるんでね。それに耐えられる台車が寒冷仕様なんです。普通のに比べて、それなりに高価です」
「へー!!」
「他にも、冷凍庫内の時計も寒さに強いやつです。それでも壊れやすいですけどね」
「いちいちお金がかかって大変だ……」
よっしゃ!指示書にある商品全部集めたぞ!
ていうかマジで即戦力クラスの敏腕っぷり。仕事出来すぎて逆に嫌われちゃうかもな~!
「お! だいぶ作業が早くなりましたね! 僕も指示書一枚終わりました!」
「全然量が違うじゃん。自惚れてたの恥ずかしっ」
「寒さには慣れてきました? 寒くなったら休んでくださいよ?」
「大丈夫です! 最初はつらかったけど、今は何とか……。じゃあ仕事に戻りますね!」
うん、どこに何があるのか、なんとなく憶えてきたぞ
うん……うんうん………
だああぁぁぁあぁぁぁんんんん!!!!
ホッ……
「何? どうしたの!?」
「うぅぅ……」
「急に足の指が凍りそうになりました。ターミネーターのT-1000みたいに、足の先が砕けてるかもしれません。液体窒素流しました?」
「流してません。あんなに『休みながらやってね』って言ったのに。今、時間は……12時か。そろそろ昼休憩なんで、ご飯にしましょう」
「やったー!! 朝にコンビニで弁当買ってきたんで、みんなで一緒に食べましょう」
「弁当? そんなの持ってたっけ?」
「冷凍倉庫に置かせてもらってます。ちょっと取りに行ってきますね」
お昼お昼~~♪
……ん?
ああああ!?!?
凍っちゃってんじゃんかあああ!?!?
いやいや、落ち着け。まだ中を見てみないことにはわからん。希望はある。希望は……
カッッチィーーーン
くぅうぅぅうう~~ん……(泣)
お昼休み
お弁当が原因不明の凍結にあったため、コーゲツさんのご厚意で、仕出しのお弁当を頂きました。わお! 美味しそう! いただきま~す!!
「これで業務が半分終わったわけだけど、感想はどう?」
「仕事自体は楽な軽作業って感じなんですけど、寒さに疲れてます」
「ああ、あるある。 雪山じゃないけど作業してると眠くなるし。機械のバッテリーが無くなりやすいように、人間も生命維持に体力使ってるんだろうね」
「寒いからといって暖房入れちゃうと、倉庫内の食品が溶けちゃうし……耐えるしかないですね」
「あと冷凍倉庫は極端に寒いから、体が混乱して、家に帰ってお風呂に入っても、なんか違和感があるんだよね」
「違和感?」
「暖かいか寒いか、自分でわからなくなったりするんですよ! 今だって、2月だから寒いはずなのに、寒くないでしょ?」
「言われてみれば確かに! 今までの人生で培ってきた『これくらいの気温の時、“寒い”と感じる』っていう概念が、突然メーター振り切って数値を見失った感じ」
「気になってたんですけど、冷凍倉庫のドアが壊れて閉じ込められたら……“終わり”じゃないですか? マンガでは主人公とヒロインが抱き合って温め合う展開になるのが定番ですけど」
「マンガはわからないけど、閉じ込められたら“終わり”ですね。でも何重にもセキュリティが入ってるし、非常ドアもあるから大丈夫!」
「あの展開はマンガだけだったのか……」
午前の小休憩でも感じましたが、この会社、社員の仲が本当に良い!!
新しく社員が増えた時も、できるだけ声をかけるなど、コミュニケーションをすごく大事にしているんだって。僕にもめっちゃ話しかけてくれて、すごく居心地が良かった。
社内の掲示板にも、こんなものが……
「ついつい買っちゃう甘いものは?」というお題で、みんなが自分の意見を書くようになってるみたい
お題を変えて毎月やってるそう。知ってるようで知らない従業員の一面が見れるということで、好評なんだとか。
それにしても「きんつば」とか「みたらしだんご」とか、和菓子が人気だな……
午後の作業開始~午後休憩まで
午後からは冷凍倉庫以外の仕事もやらせてもらいました。
今からやるのはリパックという作業。お惣菜なんかを小分けに梱包する作業ですね。寒さがないだけで、超快適な仕事に思えてしまう……。
リパック作業は、こういったトレーに食品(今回は餃子を6個ずつ)を詰めていきます。
完成したトレーをコンベアに乗せると、機械が自動的にパック詰めしてくれる仕組み。
サッ、サッ、サッ
ザザーッ
作業自体は単純な繰り返しなので、地道な作業が好きだったり、一人で黙々と作業するのが好きな人は向いていると思います。
うん、この作業は簡単だ! いける! こんな僕が初めて役に立つ時が来…………
あっ
「oh…」
「すいません! 完全に油断しました!」
「まあ、そういうこともあるわ! こういう作業は、いかに集中力を長く保てるかが勝負なんよ。がんばってね!」
「はい!」
その後は失敗することなく、完全に無の境地で餃子を詰め続けました。それにしても僕、パートの方と見分けがつかないくらい馴染んでません?
やっと慣れてきた……と思ったあたりで、別の作業に呼び出されました。
今度は常温倉庫での仕分け作業を手伝います。基本的に冷凍倉庫での作業と同じだけど、寒くないだけでスイスイ進む!!
えーっと次はL-8の棚から調味料を3個……っと。
うんうん、慣れてきた! 要領もつかめて余裕が出てくると、なんだか楽しいぞー!
最初は寒すぎてどうなる事かと思いましたが、様々な作業をしている内に作業時間も残す所、あと二時間となりました。
おっしゃ~! ラストスパートだ!!
午後の作業再開~終了まで
「それじゃあ、最後にもう一回冷凍庫に行こうか!」
「嘘? 一時間前倒しして、もうお疲れ様しませんか?」
「何しに来たんだよ」
という訳で再び冷凍庫へ…… やっぱ寒すぎでしょ……
「まあ、もうひと踏ん張りだから!! 頑張って!!」
「鈴木さん、実はこんな事もあろうかと秘密兵器を持ってきてるんですよ!」
「秘密兵器!? 何?」
スチャ…
「マスクです。マスクがあれば口の周りだけは自分の呼吸でメチャ暖かいはず! これで勝つる!」
「あ~……マスクしてもいいけど、暖かいのは最初だけだよ? 口の周りについた水滴が冷やされて、超寒くなるから。だからといって外すとまた寒いし」
「はいはい!! ね! 素人の僕が良いアイデアを思いついたもんだから、ちょっと嫉妬してるんじゃないですかぁ~?」
「やめたほうがいいと思うけどなぁ…」
「ほら、やっぱり快適ですよ鈴木さん! 口の中があったけぇ~!! 作業効率も上がるってもんですよ」
「そんなことよりチャックが100%開いてますよ」
「キャッ! 鈴木さんのエッチ!」
「この仕事、防寒着の下にズボン穿いてるから、用を足した後にチャックを閉め忘れがちなんです。冷凍倉庫あるあるですね」
「へぇ~、他にもあるあるがあれば教えてくださいよ」
「そうですね、トイレから出て手を洗ったあと、ちゃんと拭かないまま、冷凍庫内でうっかり壁に手をついてしまうとね……」
「いや、いいです! その話聞きたくないです! まったく、もう終わるのにそんな話聞きたく……聞き…………う、うぅ」
パスッ…
「突然倒れた!?」
「マスクさっむ~~~!」
「だから言ったでしょ! 早く外したほうがいいですよ」
「ひえええーーー!!! 外したら外したで寒ぶぶぶーーー!!」
「何もかも全部、言いましたよね?」
と、ここで遂に…………
作業終了! 終わったー!!
作業を終えて
「おつかれさん! ずいぶん頑張ってくれてたねー!」
「“寒さ”というのを完全に侮ってました。ムチャクチャ寒かった」
「では、今日の給料をお支払いしますね! こちらです」
「待ってました! これこれーー! ちなみにおいくらでしょうか!?」
「1万1千円です!!!」
「ありがてぇ。あまり役に立てなかったのに。ちなみに僕の働きっぷりって、100点満点でいうと、何点でした?」
「90点かな」
「高得点! マジですか!? 僕でも就職できちゃうって事!?」
「もちろん! コーゲツは経験よりも学歴よりも、人間関係を重視してるから。みくのしんさんは楽しげに働いてたし、色んな人と気軽に喋ってて、かなり高評価でした」
「みなさん気さくすぎて、仕事だというのを忘れてました。ただ、僕のTwitterを見られて『みくのしんさん、鍋作りすぎたんですか~?』って言われた時はマジで恥ずかしかったです。ブロックしようかな」
直さなくっちゃ
— みくのしん (@no_inngurissyu) 2018年2月21日
一人なのに鍋を作り過ぎる
悪い癖 pic.twitter.com/mbTf3xCzYR
「そこは仲良くしてあげてよ!」
ということで、寒すぎましたが人に恵まれた職業体験が終わりました。
最後に一日体験して気づいたことを書いておきます!!
・笑うくらいハチャメチャに寒い
休憩を挟みながらだと、何とか乗り越えられました。初心者の人に無理させるような職場じゃないので、ヤバくなったら外に出よう
・ただし作業自体はめちゃ簡単
“寒い”を考慮に入れなければ、結構すぐに憶えられるし、簡単な作業です。“寒さ”を考慮に入れなければ、ね……
・体調管理をしっかりと
寒さの体力消費もヤバイけど、外気温との寒暖差には本当に気をつけましょう。暑くなったら脱ぐ、寒くなったら着る!
・未経験でも本当に大丈夫
人柄さえ良ければ資格なしでも大丈夫! 入社後、必要な資格取得についてはサポートしてくれるそう
・電子機器に気をつけよう
寒すぎるとスマホのバッテリーが減りまくったり、そもそも機械に悪いので更衣室に置いておこう。サボってゲームは出来ません!
・弁当は凍る
-20℃なのでそりゃ凍る。気をつけろ!
コーゲツさんでは、冷凍倉庫の作業の他、事務系の仕事もありますので、気になった方は連絡をしてみてくださいね!
帰る前に、せっかくだから『月一アンケート/ついつい買っちゃう甘いものは?』を、僕も書かせてもらいました。
ウルトラ大喜利最強男の実力、見せたるで!
「普通かよ」
現場からは以上になります! ありがとうございました!
退社後ー
凍った弁当を解凍して食べました。ウマママ!!!!
(おしまい)
※今回のレポートは、あくまでライターが体験させてもらった現場に限定したものです
ライター:みくのしん
本名、高杉 未来之進(たかすぎ みくのしん)と申します。それ以外の特徴は1mmもありません。1990年生まれ東京育ち、将来は牛タンをお腹いっぱい食べるのが夢です。ご検討の程お願いします。Twitter:@no_inngurissyu