こんにちは、ジモコロを運営している株式会社バーグハンバーグバーグの取締役社長・シモダです。
会社という生き物がもっとも重視しなければいけないのは、外交よりもむしろ内部のコミュニケーションではないか……?
―という信念のもと、社員を集め、こんな話し合いの場を設けてみました。
今回のテーマは「天才との出会い」。生きてたらたまに出会ってしまう天才たち……今まで「この人、天才だな」と思ったエピソードを教えてもらいます。
集まってもらったのは、豊富な出会いを経験してきたこちらのメンバー。
メンバー紹介
バカのくせに知り合いだけはやたらと多く、それが連鎖して変わった人たちによく出会う
仕事が長続きしない性格ゆえ、バイトや会社を転々とし、色んな職業の人間に出会ってきた
様々な会社を渡り歩き、人脈を築いてきた。今回はある有名会社在籍時のエピソードらしいが……
学生時代からネットにどっぷり。特にオモコロというお笑い系WEBメディアでの出会いが衝撃的だったという
シモダ:「遅刻してくる家入一真さん」
「今回は、今までの人生で『この人、天才だな』と思ったエピソードを教えてください。例として、僕の場合をお話しすると……僕、前職の社長に家入一真さんって方がいたんですけど、この人は『天才だな』って思いました」
「家入さんというと、上場もしてるIT企業『GMOペパボ株式会社(当時は株式会社paperboy&co)』の創業者ですよね」
家入一真
投資家・連続起業家。1978年生まれ。2003年、GMOペパボ株式会社(当時は株式会社paperboy&co)創業者。2009年に代表取締役を退任後、株式会社CAMPFIREを創業。
株式会社CAMPFIRE
Twitter
「僕が起業する前、家入さんのもとで働いてたときの話なんですが、プライベートでも仲良くてよく遊んでもらってたんですね」
「家入さんといえば、新しいサービスを次々と起ち上げたり、話題になる発言をしたりで常にネットの中心にいる人ですね。確かに『天才』と呼べる方かもしれませんね」
「ということは今日は、アイデアの考え方や、会社運営のやり方についてのエピソードを話してくれるんでしょうか」
「いえ、家入さん、あの人すごいんですけど『怒られ回避の天才』……なんですよね」
「?」
「ある時、日曜日に遊ぶ約束をしてまして。僕は待ち合わせの時間通りに着いて、しばらく待ってました。なのに、いつまで経っても来ないんですよね」
「まあ、数分の遅刻なんていうのは誰にでもあることですから」
「数分ならいいんですけど、10分待っても20分待っても一向に現れない。30分を過ぎてさすがに僕もイライラして『今どこっすか!?いい加減にしてください!いつになったら来るんですか!』ってメールしたんです」
「30分は確かにキツイ」
「家入さんも『ごめんごめん! すぐ行くよ!』って返信くれたんですけども、40分経ち、50分経ち……僕はもう、家入さんが来たら殴ってやろうと思ってました」
「確か、社長と部下の関係でしたよね?」
「それはそうなんですけど、もう怒りが頂点に達してしまって、後のことはどうでもいい、と。そこに家入さんが『お~い!シモダく~ん!』って言いながら現れたんです。でも、よく見ると……」
「二人で会おうって話だったのに、子供をつれてきたんです!」
「なんで急に子供を?」
「シモダさんは、家入さんのこと殴らなかったんですか?」
「いくら極悪人であれ何の罪もない子供の前で父親を殴るなんてできるわけないじゃないですか! それどころか、子供の前で怒ることすらできませんよ!」
「まさかそこまで計算して……」
「そう! そのために、急遽子供をつれてきたんですよ! その姿を見て、あぁ……この人は怒られ回避の天才だって思いました」
「そういう天才っているの?」
「と、まあこんな感じで、みなさんが出会った天才たちの話から、勉強になる要素を学んでいきましょう!」
「家入さんなら、もっとちゃんとした天才エピソードがあったのでは……?」
ギャラクシー:「ベテランの工場職人」
「では、僕が出会った『天才』をご紹介しましょう。ある工場で働いてた時のこと。僕は機械にドリルで穴を開けて、もうひとつの機械と合体させる、という業務を行っていました」
「えーっと、片方の機械は凸になってて、もう片方は凹になってるっていう感じなんですかね?」
「そうです。その、凹になってる穴を僕がドリルで開けたわけですね。大きさは1m、重さは数百kgの機械です」
「でかっ。何の機械なんですか?」
「わかりません」
「え」
「工場で働いてると、自分が何を作ってるのか全然わからないものです。とにかく僕は2つの機械を合体させようとしてたんですが、どんなに押し込んでも入らない。ドリルの穴が小さかったんですね」
「もう一回、大きめのドリルで穴を開け直せば良いのでは?」
「ところが、中途半端にハマってしまって、今度は抜けないんです。この状態じゃ納品できない。数百万する機械なんで、『あ、完全に人生終わった』と思って真っ青になりました。……そこに、ベテランのYさんが通りがかったんです」
「Yさんは60歳手前の冴えないオッサンです。顔つきがダサいんで侮ってた人なんですが、藁にもすがる思いで、助けを求めました」
「顔つきで侮るな」
「半泣きで『なんとかしてください』と訴えたところ、『ほな、クレーンで上げてみてや』って言うんで、言われるがままにロープで吊り上げました」
「なんとか……なるのか?」
「ところが『次はどうしたらいいですか?』と聞こうとすると、Yさんは背を向けてスタスタと歩いていくんです」
「無理だったから諦めた?」
「何か特殊な道具を取りに行った?」
「どちらも違います。Yさんは3mほど歩いて、振り返り、突然ダッシュで走ってきたんです。そして……」
「機械にドロップキックしたんですよ……!」
「!?」
「60歳手前の男性がドロップキックする絵が浮かんでこない」
「その瞬間、『ゴウンッ!』と音がして、2つの機械はピッタリと合体しました。Yさんは、『蹴ったのがバレたら怒られるから、内緒やで?』って言って去っていきました」
「かっこいい!」
「去り方も良いなぁ」
「今まで侮ってた人だったのに、それ以降は尊敬するようになったわけですね?」
「いや、顔つきがダサいんでやっぱり心のなかで笑ってました」
「カスか」
「僕らはクリエイターと言われる職種ですけど、おそらくクリエイティブなやり方や考え方というのは、あらゆる場所で行われてるんでしょうね。勉強になりました」
長島:「ゲームが好きすぎる会長」
「以前働いていた会社に、TVにも出るような、有名な会長がいたんです。その人は発想とかアイデアがムチャクチャ飛び抜けていて」
「あぁ、誰のことかわかった。確かにすごい方ですね」
「誰も思いつかないアイデアをバリバリ実現させて、新しい企画を形にして……なのに、どこか幼稚な部分がある人だったんです」
「幼稚というと、例えばどういう部分が?」
「例えば、ゲームが異常に好きで、大作RPGなんかが発売されると、しばらく完全に仕事がストップするんです」
「たまにそういう人いますけど、まあ、大作RPGなんて数年に一度のことじゃないですか」
「いや、普段からアプリゲームなんかにも熱中してて、しかも、自分だけじゃなくて周りの社員にも勧めるんですよ。社員の課金分を負担してまで!」
「羨ましい……」
「おかげで、仕事中もみんなゲームしまくってて、事業部のキーマンが廃人になったりしてました」
「自分の会社だからダメージ喰らうのは自分なのに……」
「そんなある日、会長がドハマリしてるゲームを作ってる会社から、仕事の依頼があったんです」
「おぉ、やっと仕事に役立ちそう!」
「僕は打ち合わせの席で、その場に居ない会長をダシに機嫌を取ろうと思って、『“○○戦記(仮名)”という御社のゲーム……あれ、うちの会長が大ファンでして』と伝えたんですね。先方も喜んでくれまして」
「まあ、テレビに出るような人が、自社のゲームにハマってるとなると、気分良いですよね」
「で、会長のことを知らない人もいるかもしれないと思って、全員の前でツイッターアカウントを表示して紹介したんですね。『これが弊社の会長です!』と。そしたら……」
「『○○戦記」死ねよ!!!』ってツイートてたんですよ。課金ガチャをやったのにクズカードしか出なかったらしくて……」
「タイミング悪っ!」
「奇跡」
「場が凍りついてメチャメチャぎこちなくなったんですが、『……とまあ、こんなに入れ込んじゃうほど夢中になっておりまして』とフォローし、事なきを得ました。ワキ汗ビッチャビチャになりましたね」
「確かに、なんだろう……ただの偶然なのに『天才』のニオイがする」
「こんなにもゲームにのめり込める幼稚性……こういう人だから、誰も思いつかなかった仕事ができるんだろうなって思いました」
「ひょっとしたら、マーケティングのためにゲームをやってただけかも……?」
「当時は、その会長が作ったチームが全国で1位になるほどやり込んでたんで、絶対研究のためじゃないです」
「度を超えすぎ」
「僕もゲームは相当好きなんですが、のめり込みすぎないように気をつけます。勉強になった」
シモダ:「とんでもない方法で営業を行った天才」
「長島さんの話で思い出したんですが、僕も、ある天才的な社長に出会ったことがあるので発表してもいいでしょうか。ものすごく営業が得意な人のエピソードです」
「営業って、うまい人がやると紙コップひとつにも価値をつけて売っちゃうらしいですからね。どんな話か楽しみです」
「その人物がまだ20代だった頃、あるセキュリティ関係の営業をやっていたらしいんです。一般家庭を訪問して『セキリュティをつけませんか?』と回るんですが、そのまんまやっててもなかなか話を聞いてくれないじゃないですか?」
「普通はそうですよね。門前払い」
「そこで、その人がやったのが、不審者を演じてその近辺で目撃されるようにしたんです」
「!?!?」
「全身を黒タイツでほっかむり」
「はい!?」
「さらに、唐草模様の風呂敷を装備して……」
「めちゃめちゃオールドスクールな泥棒だ」
「そう! その格好で……訪問するのではなく、しばらく郵便受けにセキュリティの広告をポスティングし続けたんです」
「?……あっ、ああああぁぁ!!!!」
「なるほど! わかってきた!」
「行為自体は犯罪でもなんでもないんです。だって黒い服でポスティングしてるだけですから。でも、周辺ではやっぱり噂になるわけですよ」
「そりゃそうだ」
「『最近この周辺で不審な(?)……泥棒っぽい服装の人を見かける』といった噂が広まったタイミングで、今度はちゃんとしたスーツで、再び訪問を開始したんです。『最近、物騒なので家にセキュリティをつけませんか?』と」
「うますぎる」
「掴みとしては最強ですよね」
「全身黒い服で風呂敷……そんなマンガみたいな泥棒ファッションだと、不審だな~とは思っても、恐怖を感じて通報するほどでもない。バランス感覚がすごいですね」
「営業活動にストーリーを作ってることに感心するし、しかもそれがおもしろい! まさに天才だなと思いました」
「これは勉強になったって人が多いのでは」
まきの:「寝言の天才」
「最後は僕から。オモコロというWEBメディアで様々なライターと出会ってきたんですが、中でも一番驚愕した天才が、タニという男性です」
「タニさんは僕もよく知ってますが、確かに天才」
「彼の天才的な才能は、ただ寝るだけで発動されます。ものすごく高度な寝言を喋ってくれるんです!」
「僕も存じております。あまりにも寝言がすごいということで、何度かテレビにも出演されてますよね」
「どんな説明をするよりも、彼の『制作』したコンテンツを見てもらうのが一番手っ取り早いと思うので、こちらをご覧ください」
「すごい寝言! 何回聞いても笑っちゃう」
「実際にそばで聞くと『え、なに!? なんなの!?』と思って心臓に悪いんですが、動画として見たら最高でしょ」
「タニさんを家に泊めたことがあるんですけど、起きてるものだと勘違いして、寝言相手に喋りかけちゃいましたからね。しばらく話してると、全然会話が成立してないことに気付いて、あれ?って」
「会話できるくらいハッキリ喋ってるんだ……」
「ハッキリと『そういえばアレってどうすんの?』って聞いてくるから、『アレってどれのこと?』と返したら、『そこのカドを右に曲がった店をね……』って意味不明なことを言われたりして」
「ワケのわからない寝言もイヤだけど、突然『うぁあ゛あ゛あ゛ぁぁ~~らい!』とかって絶叫するのが怖かった。心配になって『大丈夫!?』って聞いたら『ろこモン~♪』なんて謎の寝言が返ってくる」
「隣で寝たくないな~」
「知り合いがタニさんの家に一ヶ月居候したことがあったんですが、『毎晩ノイローゼになる寸前だった』って言ってましたね」
「迷惑ではあるんですけど、『寝るだけで永久にコンテンツを生み出せる』って、天才じゃないですか?」
「天才」
「ね、最高でしょ?」
「おもしろかったけど、勉強になるところはひとっつも無かったですね」
「あっ……」
まとめ
様々な天才たちのエピソード、いかがだったでしょうか。
彼らに何を学び、その叡智を自分の人生にどう活かすのか? 「あの人は天才だから仕方ない」と、自分の才能に見切りをつけず、貪欲に吸収したいものですね!
読者のみなさんも、身近な天才のエピソードがあれば、
#天才エピソード
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(おわり)
書いた人:シモダテツヤ
1981年京都生まれ。Webクリエイター。バーグハンバーグバーグ代表取締役社長。 代表作は「インド人完全無視カレー」「分かりすぎて困る! 頭の悪い人向けの保険入門」など。著書に『日本一「ふざけた」会社の - ギリギリセーフな仕事術』がある。Twitterアカウント→@shimoda4md