あ~っ!!あれは!
ハッピードリンクショップだ〜!!
冒頭からハイテンションで失礼いたしました。
こんにちは、ライターのナカノです。
みなさんはハッピードリンクショップをご存知でしょうか。
ハッピードリンクショップとは山梨・長野で展開されている自動販売機がずらっと並んだスポットのこと。
田舎道を走っていると突如現れる、青地に黄色の文字で書かれたごきげんな看板。その先にはずらーっと自販機が並んでいます。
甲信地方の雄、ハッピードリンクショップ。見かけるたびに何かテンション上がる。 pic.twitter.com/14oipqs65l
— 昭和な男(相互) (@shikarare084) 2017年8月13日
甲信地方には「ハッピードリンクショップ」なるものが至るところにありまする。ドライブの休憩によく使うゾ。 pic.twitter.com/8QcztXJW3v
— えんどうまめ (@NEKI_END) 2017年8月8日
車を走らせると高確率で目にする、あの謎の自販機群「ハッピードリンクショップ」って一体なんなの⁈
そこで訪れたのが自動販売機「ハッピードリンクショップ」の運営を行う山梨県笛吹市の株式会社フローレンです。
今回、お話を伺った常務取締役の菅野照彦さん。ハッピードリンクショップの歴史を知る重要な人物で、好きな飲み物は「ポッカサッポロ / カフェ・ド・クリエアイスティー微糖(500ml)」だそうです。
「わー!ここが本社前のハッピードリンクショップ。実は私の自宅から徒歩圏内に3店舗あって、かなり重宝しています!」
「ありがとうございます。現在、長野県と山梨県でおよそ600店舗ずつ展開していますよ」
「合計1200店舗!?」
「はい。頑張って増やしました!」
「想像以上に多い。率直な質問なのですが、そもそもハッピードリンクショップってなんなんですか?」
「ある条件を満たして自動販売機が4台以上並んでいたら、それはもうハッピードリンクショップですね」
「(概念なの?)ええっ、どういうことですか!」
ハッピードリンクショップ出店の条件とは?
「ハッピードリンクショップの出店条件はなんでしょうか?」
「ハッピードリンクショップは、運転中のお客さんがメインターゲット。ドライバーは40〜50キロのスピードで走っていますよね? 自動販売機の存在に気づいも、間口が狭いとなかなか止まりづらい。そこで、なるべく間口を広くして車が入りやすいスペースが不可欠になります」
「なるほど!」
「特に長野や山梨のような地方では、町から町へ行くのに田舎道を走ることが多い。町まで距離があり、なおかつコンビニが出店していない場所に、点々と自販機があることも特徴かもしれませんね」
「たしかにそうですよね。真っ暗な夜道を走っている時にハッピードリンクショップを見つけると安心感があります」
あっ、そうだ、ハッピードリンクショップにはまじで助けられた。いや、ドリンクを買ったとかじゃなくて、そこにいてくれることにすごく心救われた。夜の山道おっかねーって思ってて、なかなか山終わんねーよ…何って思ってるときに、行きに見たハッピードリンクショップが見えたときには本当に安心した
— 不知火祐希@カツゲキィ… (@mya121x) 2017年8月13日
「出店に関してですが、実はハッピードリンクショップに適した土地を見つけてからが大変なんですよ」
「場所を借りて自販機を置くってことですよね。簡単じゃないですか。ドーンと置いちゃえば。そんなに大変なんですか?」
「それがですね…。まず地主さんを探す必要があります。土地をお貸しいただけることになったら、地面の舗装工事や電気工事、そして自販機の発注や看板の発注を行って…いろんな作業工程を経て完成です。電線が国道や県道をまたぐ場合は、許可をとるのに時間がかかることもあるんですよ」
「想像の118倍大変だし、関わる人も多いですね。想像以上に大変だ。完成までどれぐらい時間がかかるんでしょうか?」
「土地を見つけてから、平均3~4週間でしょうか。中には新しく道路ができたことで旧道沿いの店舗の客足が減り、止む無く撤退することもありますね」
「アンハッピードリンクショップですね……」
「え、あ、はい」
「ハッピードリンクショップ」の名称は社内公募で決定。
老若男女問わず覚えやすいようシンプルなネーミングを意識したそうです。
走行中でも認識してもらえるよう看板は青地に黄色。菅野さんいわく「飲料を連想させる色で青を採用した」とのこと。
流通は個人商店からコンビニ・大型スーパーへ
「そもそもハッピードリンクショップってどういった経緯でできたんですか?」
「ハッピードリンクショップが誕生したのは今から14年前の平成15年。それ以前の弊社の事業は一般商店、地元企業との取引が中心でした」
「一般商店?」
「今は減少傾向にありますが、『◯◯商店』とか『◯◯たばこ』といった名称の店舗を見たことがありませんか?」
「ああっ!なんとなくイメージ湧きます。おじいちゃんやおばあちゃんが細々とやっていて、生活用品とかお菓子とかが売っているお店ですよね」
「そうです。最初はそういった一般商店の前に自販機を置かせてもらっていました。当時は管理も店舗側にお任せで。店舗経営者の高齢化によって、だんだん自販機の設置件数が減ってしまいまして…」
「高齢化の波が……!」
「さらに機械の構造もデジタル化したことで、高齢者では管理が難しくなってきました。そこで場所と電源をお借りし、弊社が商品の補充など自販機の管理を行う『フルサービス』の形態が主流になってきました」
「たしかに最近、お店のおばあちゃんがガラガラと缶ジュースを補充する姿って見ないですね!」
併設されている倉庫には、ダンボールに入った大量の飲料が! 小売店への卸用、自販機への補充用に分けられて、毎日トラックで運ばれていきます。
「これは重いわー」と同行したジモコロ編集長・柿次郎さん。
確かにおじいちゃんおばあちゃんが管理するのは一苦労かも。
「そうでしょう。さらに時代が進むとともに大型スーパーやコンビニの参入が増え、一般商店はどんどん減少していく……。次なる一手として考えたのがハッピードリンクショップでした」
「ついに!」
「ナカノさんは『オートスナック』をご存知ですか?」
※オートスナックとは…
高速道路が今より開通していなかった1970年代頃から、国道沿いを中心に設置された自販機の並ぶ24時間開かれた施設のことです。長距離トラックのドライバーなどの憩いの場。飲料の自販機だけでなく、ハンバーガーやうどんなどバラエティに富んでいた。
「オートスナック! 最近テレビで見ましたよ。レトロな自販機が並んでいるやつ…!」
「そうですそうです。一時期から、商店と代わって競合であるコンビニの出店が増えてきました。そこで一昔前に流行ったオートスナックにヒントを得て、誰でも気軽に立ち寄れる自販機コーナーを復活させたいと、先代の社長が考案したのがハッピードリンクショップなんです。現在弊社は、一般得意先とのお取引きとハッピードリンクショップの二本柱で運営しています」
「ハッピードリンクショップはいわばコンビニへの対抗馬ってことですね。時代の流れだなぁ…。ちなみに競合であるコンビニとの差別化はしているんですか?」
実は山梨県・長野県だけでなく静岡県にも5店舗ほど存在するとのこと。運営会社が違い、先代の社長が友人に名前を貸す「のれん分け」。見つけたら相当レア!
「なんと言ってもコンビニに負けない品揃えですね。先に上げたように品揃えを考慮して、原則ハッピードリンクショップは4台以上の自販機の設置を条件としています」
「たしかにドリンクの種類が多い!」
「中には売上は見込めそうだけど、場所の関係で3台しか置けない場合もあります。そのような場合、例外として『WITH』や『ハッピードリンクショップミニ』といった名前で展開しています」
「うわ~たまに見かけます『WITH』! これってレアケースだったんですね」
ハッピードリンクショップグループの『WITH』。通常のハッピードリンクショップよりも自販機の数が少ないぞ!レアだしキャラゆるすぎ。 pic.twitter.com/6D8Rf6apkW
— ナカノヒトミ@秋田8/28-9/1 (@jimonakano) 2017年8月22日
「品揃えという点では、例えば10年ほど前に流行ったおでん缶を2年前に復刻版として販売してみたり、しじみの味噌汁やシュークリームドリンクなど変わった飲料を入れてみたり。時には柿の種などのおつまみを入れたりと、消費者の方が飽きないような珍しい商品の販売も行っています」
「自販機で変わり種の商品を見つけると、つい買ってみようかなという気になりますね! 自販機専用販売ってPOPも最近は見かけますし」
「それも差別化の一環ですね。コンビニ毎に独自販売しているPB(プライベートブランド)商品に対抗する意味でも、自販機独自の商品を各飲料メーカーさんが出してくださっています」
「言われてみればコンビニの品揃えって固定化していて、人気商品とプライベートブランドの商品で埋まってるような印象があります」
購買意欲をかきたてる自販機の変化
「フローレンさんでは、飲料の開発はやっていないんですか? ハッピードリンクショップ限定のドリンクがあったらすごく売れそうだな~って思ったんですけど」
「実は、以前お仲間の企業さんからお声がけをいただいたんです」
「そうなんですか! まさかハッピードリンクショップのハッピードリンクが⁈」
「残念ながら叶わず…。大量生産すれば商品自体は安くつくれるんです。ただ、ダミーをつくるのにかなりのコストがかかるんですよ……」
「昔は耐食性・耐光性のインクで印刷された缶を差し込んでいましたが、今は色鮮やかで透過性のあるプラスティック素材に変わりました。半切りという半分の状態で自販機にパカっとハマっています」
「あ、意識したことなかったけど、いつの間にかこの形状に変わってたかも!」
「遠くから見ても色が映えますし、夜間は照明の光が透けてとても明るく見えるので、購買意欲をかきたてられるんです。しかし、弊社でオリジナルドリンクを作るとなると、ダミーの版代・印刷代を自社で負担しなければなりません。自社の自販機での専売となると、印刷のロット数も限られるので高くついてしまうんですよ…」
「なるほど……技術が進んだからこそ、かかってしまうコストですね……」
「ちなみに、売れ筋の商品ってあったりするんですか? ターゲットがドライバーさんだからコーヒーは売れそうな気がしますけど…」
「コーヒーやお茶は定番商品として安定した売上がありますね。飲料にも流行りがあるのですが、最近だと『いちごみるく』がよく売れていますね」
「いちごみるくが売れる⁈ どうして⁈」
「どうしてでしょうね(笑)。理由は定かではないですが、推測するに100円で500mlのお得感があることと、デザインの可愛さや鮮やかさではないでしょうか? 学生さんや女性の方にウケそうですよね」
「うーん。言われてみると一番上にあって目立つし100円なのも魅力的かも。知らないところでマーケティング展開が進んでいたんですね」
「一時期はコンビニにも入っていたようですが、商品の供給が追いつかず自販機とドラッグストアに販路を狭めたそうです。今はメーカーが製造ラインを増やして安定供給ができるようになったみたいですが」
「すごい……。コンビニの売上が伸びていると言われつつも、こうやって自販機発のブームが生まれていることに嬉しさを感じます」
「まだまだコンビニと比べると売上的に厳しい傾向にありますけどね。時代のニーズに合わせてマーケティング面でもコツコツと工夫を重ねていきたいと思います」
当たり前ですが、スーパーやコンビニに行けば何でも揃ってしまう時代。
普段なにげなく利用していたハッピードリンクショップですが、よくよく振り返ってみると、確かに設置場所は近くにスーパーやコンビニのない土地が多いかも?!
新規開拓を続けるフローレンさんの営業部隊に感謝しかない…!
商品の品揃えもさることながら、ひと目みると安心感を与えてくれるハッピードリンクショップに敬意を込め、発見した時には声を揃えて言いましょう!
あ!あれは、ハッピードリンクショップだ〜!
【山梨県民・長野県民に告ぐ】明日10時に山梨県民、長野県民が歓喜する自動販売機界のオアシス「ハッピードリンクショップ」の取材記事をジモコロで公開します。#ハッピードリンクショップ
— 徳谷 柿次郎(Huuuu inc.) (@kakijiro) 2017年9月4日
このハッシュタグでハッピードリンクショップへの愛を投稿してもらえると嬉しいです!盛り上げよう! pic.twitter.com/1gAlVYmVYH
(おわり)
書いた人:ナカノ ヒトミ
1990年長野県佐久市生まれ。
長野↔東京で二拠点生活の実験中。
twitter: @jimonakano/個人ブログ: ナガノのナカノ
写真:藤原 慶
21歳からカメラとバックパックを持って日本放浪の旅に出る。
全国各地を周りながら撮った写真を路上で販売し生き延びる生活を続け、沢山の出逢いと経験を積む。
現在は東京に落ち着きカメラマンとして活動中。
Instagram : @fujiwara_kei