こんにちは。株式会社人間の社領です。
突然ですが私、自分の個性のなさに悩んでいます。
特別ハマッているものもなし、特徴的なファッションでもなし。かわいすぎずブスすぎない顔に、太りすぎず痩せすぎもしない身体。最近の趣味は「スマホにズームレンズをつけて毛穴を見ること」といったドクソしょうもないものしかありません……
あ〜〜! 個性が欲しい〜〜〜!!
そう嘆いていたところ、ジモコロ編集部より「そんな社領にピッタリな人が大阪にいるから、是非取材してきてほしい!」とある方をご紹介いただきました!
というわけで今回の取材相手は……この人!
「どうも〜!"今"世界でイチバン盛れている進化型てんこ盛りの大爆発!! 美意識炸裂・極上HAPPYスマイルの『心斎橋のシンデレラ姫』です〜!社領さん、姫と会ったからには魔法にかかってハッピーになること間違いなしね!!」
「いや〜〜! 個性スゴいな〜〜〜!!」
あふれんばかりのドレス!
この女性は、ブライダルサロン・ルアージュの松本明子さん! 年齢不詳、その名も『心斎橋のシンデレラ姫』です。
この風貌から大阪ではかなりの有名人でして、テレビ・メディアでも活躍されている方なのでご存知の読者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
松本さんはホームページもお持ちなのですが、それがまた死ぬほど個性的でして……
ビデオクリップ、CDの販売……?
松本明子写真集……?
『松本明子写真集』のページです!
自己顕示欲がヤバい!!!なんなの!? どうやったらこんなに個性を爆発させられるの〜!?
というわけで今回は、知られざるキャラクター「心斎橋のシンデレラ姫」の個性の秘密を暴いちゃおうと思います!
「どうぞよろしくお願いします!」
「はい、よろしくね。」
「……。」
なんだこの眉毛…………?
シンデレラにツッコミ5連発! 姫ってどんな人?
もうとにかく突っ込みどころが多すぎるので、片っ端から聞いていくことに。
Q1:その眉毛、何ですか!?
「これはハッピーまゆまゆです」
「ハッピーまゆまゆ」
眉が2つあるので「まゆまゆ」らしい。吸い込まれそうな目である
「この目と眉の間の空間で、姫はハッピーオーラを取り込んでいるの」
「ハッピーオーラ?」
「このハッピーまゆまゆのおかげで、ハッピーを取り込んだ姫は常にハッピー。すなわちこのサロンもハッピー。
そしてハッピーでキラキラなオーラは下から上へと上がっていくから、実はこのビル全体は極上ハッピーで最高なのよ!」
「?」
Q2:何のお仕事してるの?
「ブライダルサロン・ルアージュのお姫様オーナーをしております!」
「えっ!! 社長なんですか!?」
「そうよ! 会社を立ち上げてもう30年になります。ここ、姫のお店よ」
このすごいスペースの奥に事務所があるらしい!
「へえ〜〜! 姫、書類仕事とかするんですか?(なんか、ついつい姫と呼んでしまう!なんだこれ!)」
「見積書も請求書もバンバン書いちゃうわよ!」
「社員もいるんですか!?」
「いるわよ!」
「マ、マジで社長なんだ……!」
Q3:CD&ビデオクリップって何なの?
「姫のファンの皆さんが熱望するから『心斎橋のシンデレラ姫』『超熟美魔女』っていうお歌を作っちゃったのよ! 姫、お歌大好きだし」
「姫、ファンいるんですね!」
「めっちゃいるわよ〜! そこの郵便局の局長さんなんかも姫のファンで、局で姫のチラシを配ってくれてるのよ!」
「これ郵便局で配っていいやつ!?」
「好評らしいわよ〜」
Q4:毎日何食べてるの?
「スイカとサラダが大好き! サラダ最高よ! 簡単だし、何を入れても美味しいじゃない。フルーツとか綺麗なものや、プリンを入れるのも好きよ」
「へぇ〜。プリン?ていうか自炊するんですね!」
「するわよ! 基本的に台所が汚れない物しか作らないけど。でも煮物も大好き!」
「日本食も食べるんですね! コンビニ弁当とかは……?」
「コンビニよりも手作りがいいわ。愛があるから」
「ハッピーだな……」
Q5:毎日そのメイクとドレスなの?
「そう! この30年間、欠かさずこのメイクとドレスを続けてきました!寝巻きもドレスよ!」
「欠かさず〜〜!? す、すごい! その化粧とヘアメイクって、どのくらいの時間がかかるんですか?」
「だいたい4時間……」
「4時間」
4時間の結晶
「スッピンで外になんて絶対出ないわ。美しくないもの」
「じゃあ、もし寝てる間に隕石降ってくるとか、緊急事態になったらどうします!? やっぱりスッピン?」
「そんなハッピーじゃないこと考えたことないわ」
「Tシャツとか着たくなっちゃわないんですか?」
「姫の魂がドレス着ろって叫んでるのよね……」
いかん、面白すぎる。お腹いっぱいだ!
姫はどうして『姫』になったの?
心斎橋のシンデレラ姫の正体は、やりすぎなくらいハッピーな女社長だったのでした。
しかし、一体どうしてこんな強烈なキャラクターが産まれたのでしょうか? いつからこんな格好なの? 気になることは山ほどあるので、姫の生い立ちから紐解いてみることに!
聞いてみると、なんと姫は熊本生まれ! 4人兄弟の末っ子で、一番上の兄とは12も年が離れてるとか。
「く、熊本っぽくないなー!」
「なかなか立派な庭付き日本家屋に住んでたわよ。小さい頃はよく、朝目覚めたら枕元にドレスが置いてあって嬉しかったわね」
「姫らしいエピソードだなぁ…。失礼ですが、もちろん義務教育受けてたんですよね? すみません、全然想像がつかなくて」
「もちろんよ! 大学までしっかり卒業しました! でも姫、高校まで学校が大嫌いだったの。同じ服を着て同じ授業を受けて、面白くないんだもの。制服を改造しては姫の母親が呼び出されてたわ」
「問題児じゃないですか!」
「でもあんまりキツく言われなかったわよ、素行だけは良かったから。ダンス部にもきっちり通ってたし。母もずっと『好きにやりなさい』って言ってくれてたわ」
「『普通であること』が嫌いで、それをお母さんは受け入れてくれてたんだ。今の姫の個性にめちゃめちゃ通じるなぁ」
その後、山口の短期大学でファッションを学んだ姫は、就職のために大阪へ。
世はバブル時代。ファッション関係の会社に入った姫は、一人だけほぼ独立状態で働いてたそう。
あらゆる服飾関係の企業とライセンス契約を組み、今年のトレンドを教えたり、ブランドのコンサルティングをしながら回っていたそうな。バリバリの働きマンじゃん!
こちらが当時の姫の写真。
かわいすぎるのでたくさん載せます!
「えええええ!?!? これが姫!? めちゃめちゃお洒落でかわいい!!……ていうか姫、お子さんいらっしゃるんですか〜!?」
「子供が3人と、孫もいるわよ!みんな結婚して家を出ちゃったわ。ちなみに、家族からも姫、姫って呼ばれてます」
「マジか〜…! あの、ちなみにお子さんたちって……どんなメイクやファッションをされるんですか?」
「……ジーパンとか?」
「普通」
そんなこんなで今から30年前! "誰もがお姫様になれる"ブライダルの良さに目覚めた姫は独立。
ルアージュを立ち上げ、当時40万円ほどでレンタルされていたドレスを5万や10万の破格で提供するサービスをはじめました。
「ドレスの神様が姫の魂に火をつけたのよ〜!」
そして、独立と同時に"誰もがお姫様になれる"ということを自ら体現すると決心した姫は、奇抜なドレス・メイクで毎日生活することに。
ついに歩く広告塔、心斎橋のシンデレラ姫の誕生です!
「うわ〜! あどけない、かわいい〜! まだまだこの頃、眉毛の角度も普通ですね!」
「そしてこれがその後の写真」
そのさらに10年後
「年々HAPPYオーラが増し増しに……」
「でも、破格のレンタルドレスかぁ。安い価格で取引するって大変じゃなかったですか?」
「そりゃもう大変よ〜! ものは売れるけど、とにかく大変なの! 安くドレスを仕入れるために挨拶に回ったり、展示会の準備をしたり、自分でデザインしたりで大忙し。姫の極上ハッピーマインドで乗り切ったけど」
「へえ! 姫、デザインされるんですね」
「独学だけどね。雰囲気でパッパッとチャッチャッと、なんでもやれば出来るものね。その頃は既に旦那と離婚してて自分だけが頼りだったから、子供のためにお金をかき集めたわ〜」
「姫、離婚してたの!?」
「そうよ〜! 一人で子供を育て上げたのよ! その上キャリアウーマンよ!」
「めちゃめちゃ苦労人だった!」
「もう今は再婚してるけどね。ほんと大変だったけど、大変なことしないと伸びないし。姫は根性だけはあるから、バブル崩壊とか色々あったけど、まぁなんとかやってきたわね」
「今、お孫さんもいてお子さんとの関係も良好なんですよね。お母さんが奇抜なうえ超忙しいって、よくグレませんでしたね」
「苦労してたの見てくれたのかな……。姫が子供たちに大人気だったのも良かったのかも。姫って人気者だから、授業参観に行ったら大変なのよ〜! 子供達がワッと寄ってきて質問攻め・サイン攻めにあったわ〜」
「小学生、姫にめっちゃ興味もちそ〜! その時、子供たちの親御さんたちはどんな感じだったんですか?」
「『姫〜! 私もサインちょうだ〜い!』って感じ」
「大阪らしすぎるエピソードだなぁ……」
これまでもこれからも、いつまでも『極上HAPPYスマイル』な姫
現在のRouageは、姫も合わせて全員で5名。男性スタッフもいるんだとか。
店内にあった姫の祭壇。姫はお掃除が苦手なので、大抵の汚れは吐息で飛ばすだけらしい。
「最近のブライダル事情はどうですか?」
「ここ10年前ですっかり価値観が変わったわよねぇ。結婚にお金を使わなくなってきてるし、そもそも結婚しないし……。でも結婚って立場も変わるし、考えることも増えるから人として沢山成長することだと姫は思うのよ。家族ができるって素晴らしいことだしね」
「まだまだ地道な活動が必要っぽいですね」
「でもたまに、『姫にプロデュースしてほしい』ってお客様が急に増えることがあったりするのよ。ビックリよね。景気ってわかんないわね」
色んなことを経験してきた姫。派手なメイクの下でどんなことを思うのだろう
「しかし毎日楽しいわ〜。必死でいることって楽しいわよね」
「でも、年月って確実に過ぎるし、みんな絶対老いていくじゃないですか。それでも姫をやる理由って何なんですか? 率直に聞くけど、姫は老いって怖くないの?」
「ぜーんぜん! 全部、やりたいからやってるの。姫は今が理想の自分。年々きれいに、年々極上HAPPYになるんだもの!」
「す、清々しいくらいのハッピー論!」
「だから大丈夫! 社領さんも、とっても素敵にしてあげるわよ!」
「あぁ、それはどうも……え?」
〜2時間後〜
改めましてこんにちは!! 株式会社人間の社領エミです!!
「とっても素敵にしてあげる!」と言われた私、姫に素敵にメイクを仕上げてもらっちゃいました。
どうでしょうか。素敵になりましたでしょうか。
頭とまぶたが重い。重すぎる
なんとこのメイク、ファンデーション4種類に仕上げのルースパウダーを5種類。アイライナーはボタボタのリキッドで濃くガッツリ! 付けまつ毛は上2枚・下1枚の極厚盛!
姫自ら、3時間かけてじっくり仕上げていただきました! やった〜!
ちなみに私は鏡を見た時ぶったまげました!
というわけで、「絶対楽しいわよ!見られるのって最高よ!」との姫の意見のもと、この格好で姫と一緒に街へ出てみることに!
お店からすぐ近くの心斎橋筋商店街にやって参りました。
付近で一番明るかったブックオフの前で記念撮影
果たしてみんなはどんな反応を…? と思うやいなや、
うわー!! めちゃ人気者だー!!!
姫、思っていたより有名人みたいです! ひっきりなしにファンの方に写真を求められております。すれ違う人たちから「あ! 女社長だ!」「姫だ!」「あの人テレビで見た」「綺麗……」なんて声も聞こえたり……。
「あの、姫にメイクしてもらったんですか?」
「あ、そうなんです! 可愛いでしょ〜!?」
あ〜、注目されてる、恥ずかしい〜! でも不思議と明るく受け答えをしてしまう!
そう、このメイクをしてると暗い態度を取る方が逆に恥ずかしいんですよね……。外見に引き摺られてしまう!
「もしかしたら姫自身も、こうしてどんどんハッピーになったのかもしれないな」と思いました。
「誰もがお姫様になれる」という強い思いを身体で表現すること。最高のハッピーを追い求めた結果、たどり着いた場所がここなのか……。
通りすがりの人々に囲まれながら、輝く笑顔を見せる姫。
姫の人生を聞き、こうして周りの人々も笑顔にしている状況を目にすると、姫のことを最初とは全く違った目線で見ている自分がいました。
「姫は将来何になりたいんですか?」
「姫はずーっと姫のままよ。将来はねぇ……フランスの山のあるところに、極上HAPPYなお城を建てたいわ」
「フランスに城!? すっごいお金かかりますよ!? あります!?」
「ん〜、ない! めっちゃ大変だと思うけど、でも極上キラキラHAPPYで頑張っちゃうし大丈夫よ!」
姫はきっと、本当に死ぬまでお姫様であり続けるのでしょう。
いつまでも理想と共に走る姫。未来がつい不安になってしまう昨今ですが、姫のように自由に生きられる人が少しでも増えたなら、世の中はもっと面白くなるのかもしれません。
はたまた、自分がそうなったら……?
「いつでもキラキラメイクしてあげるわよ?」
「いえ、全力で遠慮しときます!!」
(おわり)
<お店の情報>
ブライダルサロン ルアージュ
〒542-0081
大阪市中央区南船場3-1-10 日宝南船場ビル1F
ライター:社領エミ(株式会社 人間)
"面白くて 変なことを 考えている"会社、株式会社人間の書けるムードメーカー。一番好きなコスプレは駅員さんのコスプレ。
Twitterアカウント→@emicha4649