こんにちは! 金原みわと申します。
突然ですが、皆さん時間を有効活用できていますか? 私普段はフルタイムで働いていて、その合間にいろいろと活動しているのですが全然上手く時間を使えていません。
この記事も、忙しさに締め切りを伸ばしてもらっている状態でありまして…。時間を上手く利用し、好きなことを成し遂げてる"趣味人"ってすごいなあと思ったりします。
働きながら、とんでもないものを作った人
さて、そう甘いことも言っていられませんので、ちょっとプロの趣味人に会いに行って話を聞いてくることにしました。
大阪からはるばる来ました福井県・敦賀。実はここに、とんでもないものを作りあげた人がいるんだそうです。
さて、そのとんでもないものが、こちら。
畑の中に突如現れる、何やら怪しげな住宅。
んん? よく見るとなんかある…。
近付いてみると、その違和感にゾクゾクとしてしまいます。
なにこれ…。
なにこれ!!
おおきい仏様や!!!!!!!!
大きい仏と書いて、大仏様や~~~~!
目算で10数mは確認できる、見事な立像の大仏様や~~~~~!!!
下から見上げると、その大きさに圧巻されます。とんでもない…とは聞いていたけど、ここまでとんでもないとは思っていませんでした。
ぜひともこれを作った人に話を聞きたい!
しかしながら、もちろんここは観光地ではなく全~然知らない人の家であります。どうしようかなぁ…とぼんやり大仏を見上げていたら、スタスタとこの家に入っていく女学生に遭遇。慌てて声を掛けてみます。
「こんにちは。あの~、これを作った方をご存じですか…?」
「こんにちは。これ、私のおじいちゃんが作ったんです。ちょっと待っててくださいね。おじ~~ちゃ~ん!!」
女学生が元気におじいちゃんを呼ぶ声がします。偶然の出会いにガッツポーズ!
そして出てきたのが、この方。
「突然スミマセン。この大仏を作った方にお話を伺ってみたくて、大阪から来ました」
「ええ、大阪から! はるばるよう来たなあ。まあ作った言っても、チャチャ~って作っただけのもんやで」
「いやいや、チャチャ~で大仏は作れないでしょ」
大仏も絵もすべて我流
「こんなの作れるなんて、建築関係のお仕事なんですか?」
「全然。仕事はいわゆる何でも屋さんやったよ。水道管とかの工事をしたりとかそんなの。建築の勉強もしてないし、ましてや大仏さんなんて作ったことないから、全部我流やわ」
「まあ大仏を作ったことある人なんてなかなかいないですよね」
「これって、素材は何ですか?」
「大仏さんは、発泡スチロールでできてるよ」
「えー! 発泡スチロール!!」
「発泡スチロールを集めて、それをセメントで固めたんやわ。上から色を塗ってな」
「そんな大変な作業を…何人かでやったんですか?」
「もちろん、ひとりで作ったわ」
「ひとりで!!」
「平日は仕事をしているからなぁ。仕事は絶対休めへんよ。ワシは、こういう作業するのは絶対日曜だけって決めてるんや」
「すごい! それじゃ、本当に本当の、日曜大工だけで大仏を作ったってことですか(笑)」
「ははは、そういうことになるわな~」
「ひとりで大仏となると、何年もかかりそうですねぇ」
「だいたい3カ月くらいかかったかなあ」
「え、意外と早っ! 日曜しか作業してないんですよね?」
「チャッチャや~って言うたやん」
「ほんまにチャッチャや…」
日曜大工で、しかも3カ月という短い期間で大仏を作り上げる人がほかにいるでしょうか!? おもしろいおじいさんだな~と思ってたら、本当にすごい人な気がしてきました。
さて、大仏があるのは家の裏側。家の表側に回ると、こんなダイナミックな絵が描かれています。
「龍の絵、すごい迫力ですね! 絵の勉強をされていたんですか?」
「もちろん我流やで。いうてもこれ描くのカンタンなんや」
「いやいや…流石にこれはカンタンに描けないでしょう」
「なんでやん。ローラーで、ス~~って描いたらおしまいやん 」
「ス~~~っ…?」
「こっちの壁の絵は、確か1日で描いたで」
「1日で!?」
「ローラーと刷毛でス~~って」
「ス~~~~~っ!?」
吉澤さんは、写真や絵を元に作品を作るそうです。先ほどの絵の弘法太師も風景も、モデルとする像や滝の写真をもとに描いたのだとか。
近づいてみると、明暗や細部がしっかりと描きこまれています。
どう見てもス~~~~ッと描いちゃえるようなクオリティではありません。
「平日もその時作っているものが気になるけど、作業は日曜だけって決めてるねん。でも、その分一気に作れるし、それが楽しみで働けるんや」
なるほど、好きなことをしているけども、メリハリを持ってしっかりと日々をこなす。なかなかできそうでできないことです。
私、初めて会ったおじいさんなのに、すでに尊敬してしまっています…。
小谷城・天守閣へ登城!
「吉澤さん、あの城っぽいものがすっごく気になるんですが…」
「ああ、あれ? この間天守閣作ったんよなぁ」
まるで「庭に木を植えた」くらいの感じで言う吉澤さん。おかしいな…私のイメージでは天守閣ってそんなカンタンには作れないものなんだけど…。
「あれ、見せてもらうことってできませんかね?」
「ああ、いいよ! こっち、ついておいで」
なんと、特別にその天守閣を見せてもらうことになりました。ドキドキしながら秘密の抜け穴のような道を通り、ガレージの上へと昇ります。
そして、辿り着いたそこには、見事な天守閣がそびえたっていたのでした。
ちょ~っぴり屋根が弛んでるのが、愛おしかったりします。
「天守閣は何日かかったかな~。これのモデルは小谷城っていう城なんやけど、今はもう残っていない城やねん。この世にないなら、いっちょ作ってみようと思ってな」
「わー、城がないならワシが作る…!めちゃくちゃ格好いいですね」
「最初は城の絵を見てな、それを元に40cmの小さい模型を作って。で、それがうまく行ったから、その10倍で作ってみてん。城なんて作ったことないから、自分で工夫してな」
「まあ城を作ったことある人なんてなかなかいないですよね…」
「これ、全部廃材を使ってるからな。大工さんから『余っていらん』ゆうたやつをもらって作ったんや」
お金はほぼかかっておらず、手間と熱量だけで作られた城。
本来テラスであるそこは、吉澤さんの夢が沢山詰まった一大テーマパークとなっていました。
吉澤さんの作品を見ていて感心したことは、吉澤さんのその挑戦する姿勢です。
作ってみたいと構想したものは、物怖じせず大胆に取り掛かる…。しかも、限られた時間を決めているので、その集中力がとてつもない!
普通はついつい考えすぎてしまって、何か思いついても最初の一歩を踏み出せないのに…。時間が限られているという認識も甘いので、結局成し遂げずに終わってしまうばかりです。
「家族は"また爺さんなんか作りだしたで、好きにしたら"っていう感じやなあ。まあしっかり働いてるしな」
作りはじめたきっかけは"孫のため"
「こんなすごい作品の数々を作り出すきっかけって、いったいなんだったんですか?」
「きっかけは、孫やなあ。孫のために、いろいろとおもちゃを作りはじめたんが最初やわ」
「孫…あー!! ここへ来たときに会った女子高生!?」
「そうそう。あの子らが小さいときに、こんなんを作ってん」
「すごい! こんな本格的な電車の遊具、子どもは大よろこびでしょうね」
「今は大きくなったから、もう乗らないけどな。小さいときはよう遊んでたで」
いや~、素晴らしい。しかも何が素晴らしいって…。
めっちゃトーマ〇。
もし私が子どもだったら、きっとずっと遊んでしまうし、こんなおじいさんがいたら楽しくてしょうがないだろうと思います。
それにしても、ちょっと気になる点があります。
「吉澤さん、これって動いた先…大丈夫なんですかね」
「ああ、奥まで行ったら、バーンとぶつかって戻ってくるようになってるねん」
「ほんとに? ほんとに大丈夫ですかね!? そのまま直滑降しそうな気もしますね!?!?!?!?!?」
今までと、これからと
「自宅に作品を作りだして、どれくらいになりますか?」
「そやなあ。17年になるわな」
「それだけやっていたら、もう趣味というよりプロですね」
「おもしろいからやってるだけやけどな」
そう言って、吉澤さんは本当に楽しそうに笑います。
「今、実は神輿を作ってるんよ。きりっぱしの木や家を建てた半端ものの木をもらってくるから、しっかりした材料やで。実際に使う日が楽しみでなぁ。 コツコツ、日曜日に作ってるねん。神輿なんて作ったことないからもちろん我流やけど」
「うん、神輿を作ったことある人なんてあんまりいないですよね」
さらに発展を続ける吉澤さんの夢の国。
今後、この吉澤ランドがどんな風に拡張していくのか楽しみですね。
きっと、わたしたちが想像もしないことをやってしまうのでしょう。
「また遊びに来てもいいですか?」
「もちろん、また観に来てや」
「その際は完成した神輿観れるのを楽しみにしてますね!」
「いやあ、75歳の今も毎日仕事してるんやで! 次作れてるかはわからんなぁ」
「とりあえずまた日曜日に、チャッチャがんばるわな」
「なにこの日曜大工さん。かっこよすぎ」
働きながら好きなことをやるには、時間がなかったり、初めてのことだったりでいろいろと大変です。だけど、それを作り上げたときの楽しさは、何ものにも勝るもの…。
吉澤さん、 ありがとうございました! 私もサラリーマン趣味人としてがんばろ~!
ライター:金原みわ
珍スポトラベラー。全国の面白い場所を旅して、ウェブメディアやイベントでレポートしています。
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