請求書に関する作業、面倒くさすぎ問題
「請求書」
それは生きていくために必要な「これだけ仕事したからお金ちょうだいな」という証明になる大事な書類です。
です、が。あ、この人、ハンコがない、もらい直さなきゃ…あの人からはもらった、あの人からも届いている、こちらが送る分はハンコを押し忘れたやつがあったから再送してくれという連絡が…。
は〜〜〜〜〜〜〜〜
も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
めんどくせええええええええ!!!!!
請求書の作業めんどくせ〜〜〜〜わ!!大事は大事なんだけど何でいちいち「印刷」して「押印」して「郵送」しなきゃいけねえんだよ!!受ける側も送る側も面倒くさすぎるだろ!
会社だったらまだ幾分かマシだけど、フリーランスで色々な媒体に制作物を納品しているライターさん、イラストレーターさんの人々って、面倒くさすぎて死亡の一歩手前まで行ってるじゃないの!? インターネットやクラウド技術が進歩しまくってるのに、このまま原始的な手法で続けていっていいのかい!おいおいおい!!!
と思って、「請求書 めんどくさい」でツイート検索してみると…
請求書書くのがほんと苦手。一度も間違えず作り終わった記憶がない。誰よこんなめんどくさい習慣作った馬鹿者は… 最後に封筒に「請求書在中」てハンコ押すのだけは大好き。
— zima (@zima4T) 2016年10月25日
請求書つくんのクソめんどくさいから月初め大嫌い あーあめんどくさい
— 今日中にチケット入金しろ!!!!! (@tamakin_1016) 2016年11月4日
健保の請求書かくのくっそめんどくさいな
— エンマ大王 (@_nyamiko_) 2016年10月24日
よくこんなややっこしい書式にしたもんだな
出るわ出るわ、請求書に対する怨嗟の声。やっぱり皆めんどくさいと思ってたみたいです。もうちょっと突っ込んで、月末には請求書作業で気が狂っていそうなフリーランスの声を聞いてみましょう。
フリーライター 熊山准さんの魂の叫び
まず一人目は、「R25」、「サイゾー」、「スゴレン」など、多くの媒体で記事を執筆しつつ、自身のぬいぐるみを世界中に連れ回すアート活動もされている熊山准さん(@kumaya)に「いかに請求書の作業が面倒か」をうかがってみました。
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請求書作成はフリーランスにとって月末の苦行。まずその月に納品した全原稿をチェックしてまとめなくてはいけません。ライターの場合だと、記事タイトルや納品日なども必要なため、スケジュールやタスクリストを見返すなどの作業で限りある集中力がかなり削られてしまいます。個人的には、作成後いちど横たわりたいくらいぐったり。
さらに、印刷→校正→捺印→封書→郵送といった作業も面倒。クライアントが多岐に渡ると手間暇だけでなく郵送料もかかりますしね。場合によっては急ぎで送れと速達代を負担する場合も。そして、どれだけ校正したつもりでも誤りや行き違いがあり、修正した請求書を再度送り直すという手間もかかります。
そこで現在は、すべての請求作業を「捺印した請求書PDFをメールで送付する」ことで済ましています。請求書をおこす作業自体はなくならないものの、これなら印刷以降の手間が省けて、なおかつ緊急や再送といった事態でも自宅や事務所以外からもメールで対応可能。しかし多くのクライアントの経理からは、PDFで済ませようとすると、必ず「原本送れ」と言われます。そのたびに直接穏便に話し合って説得しているんですが、その支払いを最後にお仕事が来ないクライアントも少なくありません。
経理のよくあるいいわけは、「社員による架空請求を防ぐため紙の原本が欲しい(過去にもあったので再発防止にかねて)」というもの。でもそれっておかしくないですか? 請求書なんて本気で偽装しようと思えばいくらでも偽装できますし、だいいちコンプライアンスを下請けに期待している時点で企業として終わってると思うのです。
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ゲレンデとメールボックスが溶けるほど魂のこもった熱い声をいただきました。これが全てのフリーランスの人々が思っている心の声を全て代弁しているといっても過言ではないかもしれません。
フリーのPRプランナー/Web編集者 塩谷舞さんの心の声
二人目はフリーランスのPRプランナー/Web編集者として活躍中の塩谷舞(しおたん)さん(@ciotan)。最近「ジモコロ」にも寄稿してくれていますが、請求書問題に関して「一言物申したい!」とノリノリでコメントをくれました。
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私は「オンラインハンコ作成ツール」みたいなところで「塩谷」ってハンコをつくって、それを会計ソフトの『freee』で作った請求書にくっつけています。便利なのでオススメです。ですが、PDFだけをメール送付して「よろしくお願い致します!」というと、「原本の送付もお願いします」と、よく言われます。
ただ、デジタルのハンコなので、私のプリンタで印刷したものも、先方のプリンタで印刷したものも「同じもの」なんですよね。そうすると「原本ってなんなんだ????」という解けない謎に包まれます。
あと、デジタルのハンコなので「印鑑証明と同じ印鑑でお願いします」と言われると「ファッ!?」となります。あとあと、大きな会社とお仕事をしたときに「現住所の証明書をください」「(相手のフォーマットにあわせて)職務履歴書もご記入ください」「マイナンバーもください(New!!)」なんて言われると、もはや「ギャラいらないので……」と後ずさりしたくなっちゃう……。
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しおたんさんも同様に「原本送付の謎」「ハンコの謎」に深く切り込んでおります。「原本、そっちで印刷しといてください」ってクライアントに言ったらどうなるんでしょうね。
漫画家、カメントツさんの忌憚なきご意見
続いては、弊社メディア「ジモコロ」や「オモコロ」、「月刊サンデー」などに連載を抱える仮面漫画家カメントツさん(@Computerozi)に聞きました。
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請求書はいつも面倒に思いますが、特にハンコ文化に関してはそもそも意味が分からないですね…。こんなに発展したインターネット文化の中で「請求書をプリントアウトする→ハンコを押す→スキャンして送付」って、一回物質に戻す意味って何なんですか!?
印刷するのも、押し忘れで再送を依頼されたりするのも面倒なので、もうハンコを透過したpngデータを作っておいて、プリントアウトせずにPC内で請求書のデータにかぶせて送っています。そしたら向こうは満足するんですけど、そんなの何の証明にもならないでしょ!完全に昔の風習が形骸化しちゃってる悪習ですよね。
と言いつつ、僕は大手出版社からお仕事をいただいているんですが、そこでは請求書を書いたことないんですよ。ページ数は毎回上下するんですが、それも考慮して振り込まれて、僕のところには毎月「支払明細」が来るだけ。向こうで管理してもらっているんですよね。大きな会社でも請求書が必要ないってことは、どの企業でもいらないんじゃないでしょうか!? 漫画だけ描かせてくれーー!!って感じです。
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…なるほど。やはり各方面から怒りの声は高まっているようですね。何とかならんのか〜〜〜〜!!!!
スペシャリストに聞いてみよう
ここまで人々を狂わせる請求書&ハンコ問題。もしやらなくていいのであれば出来るだけ楽に行いたい…ということで、数々の会社の経営コンサル、経理業務に携わってきた永岡さんに質問をぶつけてみました。弊社もお世話になっております。
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「請求書にハンコを押して郵送するという風習、本当は無くてもいいと思うんですが、実際はどうなんでしょうか?」
「はい。結論を先に言ってしまうと、もともと『押印された請求書の原本を郵送する』なんて義務は実はありません」
え!?
「それと、ハンコは『あればそれっぽい』というだけの話で、ハンコ屋さんで簡単に作れますから、必要ありません」
「なんやて〜〜!!??」
「究極、ハンコどころか請求書すら発行する必要も本来はないのです」
「えええ!?!?」
「口頭でもOKです。電話で、『50万円よろしく!』『はーい!』でオッケーなんです」
「え〜!でも◯◯万円以上とか、企業同士のやりとりでは必要なんじゃないんですか?」
「そんな決まりもありません。私も実際、契約書はおろか請求書もほとんど発行してないですから」
「え〜!?!?途中で法律が変わったとかではないんですか?」
「いえいえ、最初から『請求書にハンコが無いと効力がない』という法律もありません」
「じゃあ何でこんなに面倒なことをやってるんでしょうか?」
「請求書は面倒で無駄なんですが、何故こんなことをするかというと、2点あると思います。まず『決裁の問題』」
「けっさいのもんだい」
「例えばまきのさんがAさんに50万円でお仕事を頼みました。その後問題なく納品してもらった後、社長に『Aさんに仕事を頼んだので50万振り込んでください』と言いましたが、社長からは『仕事を頼んだ証明ある?』と言われてしまいました。どうしましょう?」
「請求書をもらってなかったら、三国志の関羽みたいに『そんなものは無い』って言わざるを得ませんね」
「そうなんですよね。なので請求書は『仕事を頼んだ+納品した証明』となるので、必要になります。それでもハンコはいりませんが…」
「確かにそういう時には請求書がいりますね。しかしハンコが必要ないっていう事実がもっと広まったら、フリーランスの人はもっと楽になるのにな…教えてあげたい…」
「あともう一つは、『税務署の問題』です」
「ぜいむしょのもんだい」
「企業で税務調査の対象になった場合、『この支払いは何ですか?』『この売上はなんですか?』と質問される場合があります。数年前のものだと記憶があいまいになるので、請求書を取り交わしてしっかり記録しておく必要があります」
「記録は大事ですね」
「そうです。消費税法にも『仕入税額控除を受ける場合、税務調査のときに請求書をすぐに提示できる状態にしておくこと』とありますので、請求書はあったほうがよいのです。ですが、ハンコまでは、求められていません」
「マジでハンコいらんのか〜〜い!」
ということで、目からウロコの結果となりました。この事実、みんな知ってくれ〜〜〜〜〜!!!
お〜い!請求書のハンコって意味ないんだって〜!!!
この思いが、どこまでも届きますように…全ての企業が請求書に対して柔軟な姿勢を示し、全てのフリーランスの人々が月末に少しでも気が楽になりますように…
※ちなみに、弊社(バーグハンバーグバーグ)でも2016年から請求書のハンコを撤廃し、エクセル・PDFデータだけでやりとりしていますが、全く問題ありません。それどころか、ライターからは「手間が省けてハッピー!」と好印象です。皆様も是非!
※追記(2016/11/17 20:00)
本記事は、押印の法的意味そのものを否定する意図ではありません。あくまでも、請求書に押印が法的に要求されている訳ではないことを説明する意図になります。
書いた人:まきのゆうき
株式会社バーグハンバーグバーグで働く人。姉妹メディア「オモコロ」で開設当初から「うさねこ」という4コマ漫画を連載中。今までもらった請求書は全部甘く煮ている。 Twitterアカウント→@yuuki