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【上田啓太】なぜネットがあると集中できない? 数分で消費できるコンテンツへの慣れ

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ネットがあると集中できない。

 

これはよく言われることです。私は高校の頃から15年以上ネットのある生活をしてますので、ずっとこの問題に悩んできました。ネットを完全にやめようとしたこともありましたが、もちろん失敗しました。今さら完全にやめるのはさすがに無理がある。

 

なのでこの数年は「ネットをしている自分」を観察することを頑張ってました。

 

効果的だったのは「太極拳をしているオッサンのようにネットをしてみる」という方法です。ちょっとワケが分からないかもしれませんが、要するに「ものすごくゆっくりとネットをしてみる」ということです。

 

リンクのクリック、ページのスクロール、タブの切り替えや検索ワードの入力など、普段は無意識にしている色々な操作をひとつひとつ意識してみるんです。

 

「ネットがあると集中できない」という人は、当然、ネットをすることに完全に慣れています。もういちいち操作に悩まない。色々なページをストレスなく閲覧できる。身体が勝手に動くレベルになっている。ものすごい速度でネットができる。だからこそ「ついネットを見てしまう」という失敗も起こるんです。

 

だから、いったん初心者のような遅さでやってみる。そして自分がどのようにネットをしているのか、あらためて観察してみる。それが「太極拳のオッサンのようにネットをしてみる」という言葉の意味です。

 

その過程で発見したことを書いていきます。

 

ネットがなくても集中は切れている

 

昔よくあった失敗パターン。

パソコンで仕事をしている。しばらく集中している。しかしネットを見てしまう。あちこちのページをだらだら見る。ふと我にかえる。こんなことしてる場合じゃない! あわてて仕事を再開する。しかしまたしばらくするとネットを見てしまう。

 

「どうして集中が続かないんだ……」

 

私はよくこんなふうに嘆いてたんですが、これは勘違いでした。

というのは、ネット環境のない状態でも集中は切れてるんですよ。集中なんてのは一定の時間が経てば絶対に切れる。べつにネットがあるから集中が続かないわけじゃない。普通にしていても人間の意識は「集中」と「発散」を繰り返してるんです。

 

「よし! 二時間も集中できた!」

 

そんなふうに言うときも、二時間ぶっ続けで集中してたわけではない。集中は何度も切れてます。しかし集中が切れたときの空白を「ぼんやり」で埋めてるんですよ。

この「ぼんやり」が発見でした。

 

たとえば私はカフェで文章を書くことがあります。観察して気づいたんですが、文章をパーッと書き進めて、ふっと集中が切れたら、他の客をボーッと眺めてるんですね。だいたい30秒くらい。そしてまた文章を書きはじめている。集中は切れているんですが、他の客をぼんやり眺めることをしている。

 

これはネットとちがい、「脱線」になりにくいんです。だから30秒程度でまた書くことに戻れる。集中が続かないこと自体はあまり問題じゃないんです。むしろ、集中が切れたときに生まれる意識の空白を、ネットで埋めてしまうことが問題なんです。

 

集中が切れた瞬間に、他のことに吹っ飛ばずにただ「ぼんやり」する。これでまた集中が再開できます。変な言い方ですが、集中が切れたときに「ぼんやり」に踏みとどまれないことが本当の問題だったんです。

 

指先と目玉の化け物

 

ツイッターのタイムラインを見る。この行為もゆっくりとやってみました。

 

普段は異常な速度になっていたことに気づきました。ツイッターにかぎらず、まとめサイトやニュースサイトでも同じです。要するに「2、3分で読める記事へのリンク」がズラッと並んでいて、興味を持ったものを次々とクリックしていく行為です。これをするときの自分のスピードは異常でした。

 

まず、タイムラインを見るときの「眼球の動き」がかなり速いです。むかし何かで読んだんですが、こういうとき、人は文字を読むんじゃなく「スキャン」してるらしいんですね。そうしないと膨大な情報を処理できないから。

 

ページに並んだ文を上からパーッと「スキャン」して、ほとんどのものは無視して、興味を引いたタイトルをクリックする。記事を読み終えたら閉じる。最後まで読まずに閉じることもある。そしてまたタイムラインのスキャンが始める。この運動を凄いスピードで繰り返してるんですよ。

 

指の動きも異常に速くなってます。私がパソコンのショートカットを多用してるというのもあります。身体はジッとしてるのに、眼球と指先だけがものすごい速度で動いている。これは「指先と目玉の化け物」とでも言いたくなる状態です。

 

タイムラインを見ると、2〜3分ごとにパッと集中を切って、また別の記事に行ってます。だから1時間ほどネットをするだけで、20以上の断片的なコンテンツを消費することになります。日常的にネットをしてるとこれが普通になるんですね。

 

この状態で本棚にあった分厚い本を読もうとすると、やはり数分で集中が切れます。これを自覚したときは笑いました。そりゃネットに慣れると本読めなくなるわ、と。

本というメディアはネットに比べるとものすごくゆったりしたリズムで書かれてるんで、ネットのリズムのままで読もうとするとうまくいかないんです。いったん「ぼんやり」して速度を落とさなければいけません。

 

「このデバイスをさわっていたい」という中毒

 

パソコンをさわること自体が目的になっている。

そんな発見もありました。

 

コンテンツよりも、デバイスそのものの中毒になってるということです。私の場合、パソコンでネットすることに慣れ過ぎてるんで、スマホだと全然楽しくないんですよ。画面の小ささや、操作法のちがいや、文字入力の面倒くささによって、ストレスばかりたまる。だからスマホでは最低限のメールチェックくらいしかしません。

 

もしかして、ネットにハマッてるというより、「パソコンというデバイスをさわること」にハマッてるんじゃないかとすら思いました。

 

逆に、スマホならずっといじっていられるという人は、スマホというデバイスの中毒になってるということですね。同じように、テレビを付けてないと落ち着かないとか、イヤホンで音楽を流していないと落ち着かないとか、人によって色々ありそうです。

 

特定のデバイスに長くふれてると、コンテンツ自体じゃなく、そのデバイスにふれていること自体が目的になってくるんだと思います。これは、ほとんど赤ん坊のおしゃぶりみたいなもんです。われわれは大人なのに。

 

まとめ

 

ネットに慣れるほど、いろいろな操作のスピードは上がります。ひとつひとつの判断も反射的になっていきます。数分で消費できるコンテンツを、ものすごいスピードで開いては閉じ、開いては閉じる……という状態に入りこみます。これは疲れることでもあります。そんなときは、意識的に自分の指の動きを遅くして、ゆっくりとネットをしてみるといいかもしれません。

 

それではまた次回。

 

<過去のコラムはこちらから!>
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ライター:上田啓太

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京都在住のライター。1984年生まれ。
居候生活をつづったブログ『真顔日記』も人気。
Twitterアカウント→@ueda_keita

 


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