いつもお世話になっております。赤祖父と申します。2時間推理ドラマみたいな記事タイトルで恐縮ですが、早朝4:40の長野県・松本駅に来ております。
なぜこの時間に松本にいるのかというと、【青春18きっぷ】を使って新宿から夜行列車に乗ってきたからです。
こちらが臨時夜行快速【ムーンライト信州】です。この列車は青春18きっぷに520円の指定席券の組み合わせだけで長野県の松本駅や白馬駅まで寝てる間に移動できるのです。
今回は格安旅行で大活躍の青春18きっぷ活用例として、都内から日帰りで長野県、山梨県の……
ツウだけが知っている鄙びた共同浴場の温泉あり!
ちょっと珍しいご当地グルメあり!!
無限に眺めていられるような良い車窓あり!!!
そんな旅をご紹介します。さあ、この夏は18きっぷで出かけよう!
完!
「……これでこの記事終わりですか?」
「いやいや冗談ですよ……具体的に順を追って説明します。まずは18きっぷの基礎から!」
まずは改めて青春18きっぷの概要をまとめます。そんなに難しいことはないです!
JRの普通列車が1日あたり2370円相当で乗り放題!
「何と言ってもコレですね。でも鈍行ばかりだと新幹線に乗りたくなりませんか?」
「当然別料金がかかりますが、時間の都合や接続の悪い区間で乗ることもありますよ。18きっぷ旅でちょっとだけ新幹線を使うと信じられないほどのスピードで移動できる感覚になるので皆“ワープ”と表現します」
「あー、なんかわかるなワープ」
1枚で5回分セット。1人で5日分でも、5人で1日でも使い方は自由!
「5回分セットで11850円てことですね。5回って絶妙に難しいですね…」
「18きっぷの期限が間近だと金券ショップも買ってくれなくなるので、よくシーズン終了間近には消化試合みたいな乗り鉄をしている人を見かけたりしますね」
「消化試合って何だよ」
オッサンでも小学生でも、何歳でも利用可能!
「学生が使うイメージがあるので最近まで18歳までしか使えないとか勘違いしてました…!」
「私のようなオッサンもガンガン使えます! 例えて言うなら永遠に17歳の声優さんも実際には」
「おいやめろ」
鈍行のみってしんどい? そうでもない!
「鈍行でめちゃめちゃ遠くに行く人とかが、静岡の横の長さの悪口を書いてるのをよく見かけます」
「いえいえ、近場でも十分活用できます! 目安としては片道1185円かかる距離なら得になりますし、途中で何度か乗り降りするなら都度きっぷを買うより安くなるはずです。まあ一日乗り通しも楽しいですけど」
「楽しいの?」
夜行列車と組合せて格安で遠くに行ける!
「えっ、北斗星とかはこの間廃止になりましたよね?」
「 夜行快速【ムーンライトながら(東京⇔大垣間)】【ムーンライト信州(新宿⇒白馬間)】というのが今も臨時列車として18きっぷシーズンに合わせて運行しています。520円の指定席券と18きっぷを組み合わせれば激安で夜中のうちに遠くに行けます!」
注:北斗星は【寝台特急】だったのでどのみち18きっぷは使えませんでした
「どうやって乗るかとか指定席券買うか全然わからないですね…」
「運行日はJRのプレスリリースや時刻表をチェックする必要があって、予約は1ヶ月と7日前からJRのえきねっとで可能です。後はサイバーステーションというサイトでほぼリアルタイムな指定席の空き状況はチェックできます」
実録:青春18きっぷ 松本〜新宿 日帰りモデルコース
ここからは、18きっぷを実際に使った日帰り旅行の一例をご紹介します。
今回は新宿から松本まで夜行で行き、新宿まで途中下車しつつ戻るというコースです。
■前日の23:54 新宿駅発
18きっぷ、夜行快速ムーンライト信州の指定席券、そして新宿→立川までの片道きっぷ。この3点セットがあれば格安旅の準備は完了!
「なんで立川までのきっぷを?」
「18きっぷは0時から1日乗り放題になるんですよ。新宿から乗ったら次の立川で0時を越えた扱いになるので、そこまでは普通のきっぷを買うんです。検札の車掌さんにこの組合せで出すと無言で18きっぷに翌日日付のハンコを押してくれるくらい乗り鉄的には常識になってます」
出発が0時前なので「0時を過ぎてから」18きっぷを発動させる! というワケです。
「要は2370円+520円+470円で松本まで行けちゃうわけか。更に丸一日分の交通費も18きっぷで済むとしたらめちゃめちゃオトクですね」
「でもムーンライトは指定席が取りにくいので、これにこだわらず片道は新幹線や夜行バスとかも柔軟に使っていいと思いますよ。それを差し引いても18きっぷは相当オトクなので」
「確かに。でもこういうきっぷのルールの難しさが鉄道よりバス、ってなるところじゃないかな…」
「それはまったく仰る通りですね…なんかごめんなさい」
ムーンライト信州の車内はこんな感じ。特急型の車両なのでゆったり。照明は消えないので明るいと寝られない人はアイマスクを持っていきましょう。
■4:35 松本駅着
あまりにも早く着きました。真夏だけど車内と早朝は寒いので上着を持ってきて正解。
早朝すぎてどこも閉まってるので、松本駅から出ているローカル線、松本電鉄上高地線の乗り鉄をします。
(興味の無い方は駅前のマックなどで時間を潰すのも良いかと思います)
「これに乗って、どこに行って、何するんですか?」
「新島々駅というところまで往復します。本当は登山や温泉地への玄関口なのですが、今回は特にソッチには用事が無いので…」
「ポケモンGOでジムリーダーになってきました」
「わざわざここまで来て何してんの」
ジムリーダーになった後は松本駅まで戻り、今度は市街地からバスで30分ほどの浅間温泉という温泉街まで行きました。
この「仙気の湯」という共同浴場が朝6時からやっていてオススメです。勿論お湯はザブザブのかけ流し!
帰りは買ってあった牛乳パンを食べながら。これ、なにげに信州名物です。
個人商店のパン屋などによって牛乳パンのクリームの量などは様々。色々探して食べ歩くのも楽しいかも。
その他、今回は買えませんでしたが「ポンちゃんラーメン」といった信州名物を買って帰るのも良いかもしれません!
■8:38 松本駅発 ⇒ 8:55 塩尻駅着
塩尻駅では一部のマニアに有名な「信州そば」でそばを食べます!
「入り口せまっ!!」
「狭さで有名なんですよ。もちろん味も美味しいですけど。敢えて持ち帰りにしてホームで食べるのが風情があって最高なんです」
「都会の喧噪とは無縁なホームに座り、ときどき停まる列車を眺めながらそばを食べる……とても贅沢な時間です」
「これは風情があって良いな…!」
腹ごなしに塩尻駅周辺を小一時間ほど散歩。味のある街並みが続く。
これ、なんと現役の映画館!シネコンに慣れた今となってはかえって新鮮!
■11:05 塩尻駅発 ⇒ 11:26 上諏訪駅着
塩尻から上諏訪に移動。諏訪湖の周辺は温泉があちこちで湧いており温泉旅館や共同浴場が多く存在します。特にオススメなのは上諏訪駅から徒歩10分ほどのところにある共同浴場【大和温泉】です。上諏訪の共同浴場は地元の方専用が多いのですが、こちらは一般客も歓迎してくれます。
めちゃめちゃ入り口がわかりにくいのですが……大和温泉の入り口はどこでしょう?
正解はここ! 完全に「ひとん家」って感じですが遠慮無く入っていきましょう。
暗いトンネルを抜けるとそこは……!!
涼み場所?な中庭でした。大和温泉、この「知ってる人しかたどり着けない秘湯」感は凄いですね。
大和温泉のご主人にお話を伺いました。元々は自宅用のお風呂のつもりだったのでこのような構造なのだそうですが、紆余曲折あってこの場を共同浴場として提供しはじめたのだとか。「この辺でも珍しいお湯なんですよ」と、その源泉の場所やお湯の配管ルートなども説明してもらってすっかり上諏訪の温泉ツウ気取りです!(ありがとうございました)
そしてこれが大和温泉です。ちょっと硫黄の香りがしつつヌルヌルしてマロッとしたエメラルドグリーンのお湯が特徴的。急にステンレスを使った浴槽は「最初タイルだったけど、内装屋さんにデカいタイルを勝手に貼られて、すぐ剥がれちゃったんだ……」ということでした。これはこれで良い!
ああああああああああああ最高最高最高!!! 永久に入っていられる!!!!
「オッサンの入浴シーンは別に要らん」
「(セルフで撮るの結構大変なのに…)」
大和温泉の近くにある地元の方専用の共同浴場「平湯」はなんと大正時代の建物! 映画『テルマエ・ロマエII』のロケで使用されたとのこと。
■11:26 上諏訪駅発 ⇒ 14:00 小淵沢駅着
上諏訪の温泉を堪能した後は、引き続き新宿を目指して東に進みます。
小淵沢止まりの列車だったのでなんとなく1本見送ってみました。そういう気まぐれも許容されるのが18きっぷの良さ。なお左側の列車は小淵沢駅から別れて走る小海線という高地を走るローカル線です。
この辺の車窓は本当に最高!!!! 「ザ・旅」って感がたまりません。
「あ、これは旅に出たくなる」
「ですよね」
■14:30 小淵沢駅発 ⇒ 15:21 甲府駅着
山梨県の県庁所在地、甲府ではこの土地ならではのご当地グルメを堪能したいと思います。
甲府駅から徒歩15分ほどにある【魚そう本店】さんです。こちらで頂くのが……
こちらのお寿司!
なぜかマグロやエビにもデフォルトで甘だれが塗られているのが甲府の寿司の特徴。1カンがやたら大きいので親切?に真ん中で半分に切られています。
「海無し県の山梨なのに寿司……これ失礼ですけど美味しいんですか?」
「私も正直食べるまで侮ってたのですが、実際かなり美味しいです! あとこれで1000円ってかなり安いと思います」
「普通の寿司の倍くらいの大きさですね…甘ダレのマグロ食べてみたい」
こちらは甲府名物の甘いタレに絡んだ「鳥もつ煮」とそばを一緒に食べられるお得なセット。甲府駅前「奥藤本店」にてムリヤリ食べました。
「これまた珍しい…しかし連続で食事するんですか」
「乗り鉄旅って食事するタイミングを逸して1日何も食わないとか普通にあるので、代わりに連続で飯を食べるとかも普通にあったりするんです」
「冬眠するの?」
甲府の繁華街も散歩していて飽きない街並みでした。
■18:08甲府駅発 ⇒ 20:30 新宿駅着
最後に甲府から高尾、高尾から東京行きへと乗り継ぎ、新宿に戻ってきました。
これで日帰り達成! 翌日仕事でも余裕の時間です。
「目が死んでるように見えますが…」
「生まれつきです」
「まとめると結構盛り沢山で良い旅ですね」
「かかった費用は以下のとおりです。一日めいっぱい使い倒してこれで済むならなかなかお得な気がしませんか」
「うーん、1日こんなに動いてここまで交通費抑えられるとは、18きっぷ恐るべし…目が死んでるけど…」
「だから生まれつきですってば」
……それでは良い鉄道の旅を!!
※記事の内容は2016年7月時点の情報です。
ライター:赤祖父
三流情報サイト「ハイエナズクラブ」の執筆や編集をしたり「全国ノスタルジー探訪」というブログを書いたりもしているインターネット大好きおじさんです。鉄道や写真も好きです。スマホの電波が入らない場所に行くと急に弱気になります。
Twitterアカウント→@akasofa