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【忘れ物が多い】ADHDの特徴や症状を専門家に聞く【集中できない】

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【忘れ物が多い】ADHDの特徴や症状を専門家に聞く【集中できない】

こんにちは、ライターの社領エミです。みなさんは社会生活をする上で―

 

・忘れ物が異常に多い

・ちょっとした遅刻を毎回してしまう

・作業を順序立てて行うのが難しい

・物音などが気になって集中できない

 

などの問題を感じたことはありませんか? 私はすごくあります。

これってひょっとしたらADHD(注意欠如・多動・衝動性を主な特徴とする発達障害の概念のひとつ)かも!?と悩んでいるのです。

 

(写真のせいでそうは見えないかもしれませんが、悩んでいるのです)

 

私の場合は特に―

・作業を始めるまでに異常に時間がかかる

 └何時間とかじゃなくて何週間・何ヶ月とかそういうレベル

・やり始めてもまったく集中できない

・結果、締切を守れない

といった問題を抱えています。そこで今回は……

 

大人のADHDに詳しい岩波 明(いわなみ あきら)先生にお話を伺ってみましょう!

ついでに締切を守れなくていつも迷惑をかけているジモコロ編集長・ギャラクシーも取材に加わってもらいました。なぜなら彼もまた「僕ってADHDかも」と悩んでいるからです。

 

さあ、教えてもらいましょう! ADHDってどういうものなの!?

 

▼登場人物

  昭和大学医学部精神医学講座主任教授。大人のADHDに詳しく、著作も多数

締切が守れなくて困っているWEBライター。ADHDじゃないかと悩んでいる

ライターが締切を守ってくれないので困っている編集長。自身も忘れ物や遅刻が多く、ADHDじゃないかと悩んでいる

 

大人のADHD ――もっとも身近な発達障害 (ちくま新書) 大人のADHD ――もっとも身近な発達障害 (ちくま新書)

 

ADHDってこういう症状

「先生、わたしってADHDなんでしょうか!!??」

「落ち着いてください。まずどういう症状があるのか具体的に教えてもらってもいいでしょうか?」

「症状はいろいろあるんですが、ライターとしては『締め切りに遅れてしまう』ことが一番悩ましいです。編集担当のギャラクシーさんにも毎回ご迷惑をおかけして……」

「いやそこまで気にしなくてもいいんだけど」

「あ、な~んだ。大丈夫だったのか(笑)」

「言葉通りに受け取るな。まあ同じような悩みを持ってる人は多いと思う……というか僕自身も忘れ物や遅刻が多くて『ひょっとして』と心配してるので、今日は専門家・岩波先生に話を伺いたいなと」

「なるほど。お二人ともADHDじゃないかと悩んでおられると。社領さんは、締切を守れない理由ってありますか? 集中できないとか、締め切り自体を忘れちゃうとか

「集中もできないし、締切自体を忘れちゃうときもあります。でも一番大きな理由は、そもそも始めるのが極端に遅いんです……ギリギリになるまでなかなか行動を起こせない」

「それだけだとちょっと判断できないかな。私も本を何冊か書いてますが、ライターってギリギリになるまで書き始めない人のほうが多いのでは?」

 

【しめきり逆算】ライターだけがわかる『あるある』50選|作:ギャラクシー

 

「うっ……確かに。では他にADHDの症状というと、どういうのが一般的なんですか?」

「代表的なものは―

・忘れ物が多い

・無くしものが多い

・片付けができない

・集中できない

などですね」

「完全に当てはまる」

「完全に当てはまる」

「あと問題になりがちなのは衝動性ですよね。喋り過ぎてしまうみたいな。たとえば一方的に喋って相手がなにか言いかけてもかぶせてしまうとか。思いついたことをすぐに言ってしまうとか」

「相手の話も聞かずベラベラ喋っちゃうの、よくある。思いついたことをすぐ言ってしまって相手を困らせるのもよくある」

「大体は悪意がなく率直なだけなんですけどね。相手の痛いところをついちゃうと関係が悪くなりますから、対人関係における衝動性は問題になりがちですね」

 

※この特徴を持っていたら即ADHD決定という類のものではありません(普通の人でも忘れ物はする)

 

「小学校の頃だと先生の話を集中して聞けなくて、いつもぼーっと空想してたとか。授業を聞かずに本を読んでた、絵を書いてた、もしくは隣の子とお喋りしてたとか」

「完全に当てはまる」

「完全に当てはまる」

 

「先生達はADHDかどうか、どうやって判断しているんですか? チェック表みたいなのがあって診断されるとか?」

「この検査をやればわかるみたいなものはないんですよ。基本的には子供時代から現在に至るまでの情報をできるだけ多くお聞きして判断します」

「子供時代から? そんな昔の話が必要なんですか?」

「子供の頃 落ち着きがなかったとか、じっと座っていられなかったとか……『ADHDかも』っていう兆候は、実は小学生から中学生くらいまでに出てることが多い。その時期の行動パターンがわりと決め手になったりします」

「へ〜〜〜! そういえば私も『落ち着きがない』って散々言われてた気がします。ただかなり昔のことなのであまり憶えてない部分も……」

「そこで重要になってくるのが通知表です。先生のコメントにヒントが隠されています。『遅刻をしないように!』とか『忘れ物が多い』とか、8〜9割くらいのADHDの方は、それらしい描写があります」

「実家の押入れから引っ張り出してチェックしてみようっと……」

 

 

ADHDは環境で悪化する?

「ADHDって生まれつきのものなんですか? それとも普通に生活していていきなり発症する?」

基本的には先天的なものですね。生まれつきの脳機能の偏りみたいなものです」

「えー!そうなんだ!!」

「SNSとかで『わたし最近ADHDぽいんだよね』という人を見かけるけど、急になることってないんだ」

「ごく稀に交通事故や頭の外傷で後天的にADHDになる方もいるんですが、それは珍しいケースです」

「でも、子供の頃はそんな症状なかったのに、大人になって『ADHDかも』と病院を訪れる人って多い……のでは?

「そうですね。職場で不適応を起こした、などの理由で受診される方も多い。ミスを頻発してしょっちゅう怒られている、とか」

「生まれつきのものなのに、大人になってから初めて『ADHDかも』って気づくのはなぜなんでしょう?」

「環境の変化に依るものが大きいと思います。つまり症状は子供の頃からあったけど環境によってそれが『悪化した』、もしくは『目立つようになった』んじゃないかと」

「悪化した、はわかるんですけど、目立つようになったっていうのは……?」

 

「わかりやすく言うと、子供の頃だと授業中に落書きしてても怒られないじゃないですか。でも会社の会議中に同じことをやっちゃったらすごく怒られますよね?」

「あ~なるほど!」

「他にも、多忙な部署に回されて許容範囲を超えちゃったとか、上司がキツイ人でちょっとのミスでも指摘されるようになったとか。環境や状況によってADHDの面が目立つようになったり、症状が悪化するケースもあります

「つらい」

 

「あとADHDは基本的にマルチタスクが苦手なんですが、仕事だとどうしても突発的にマルチタスクをこなさなきゃいけないこともある。3つ4つ重なると一気に処理能力が追いつかなくなってパニックになったり止まってしまったり……」

「マルチタスク、この世で一番無理!」

「僕も。マルチタスクが苦手な人にアドバイスはありますか?」

「マルチタスクにしないことですね。まずは今、目の前でやっている仕事をキリのいいところまで終わらせてから、次にいく。曖昧なまま同時並行で別のタスクに取り掛かっても、結局どっちもダメになっちゃうので」

「でも忙しいとそんなこと言ってられない時もあるんだよな~……難しい」

「いっそのことそういうポジションから外してもらうことも考慮に入れてください。のんびりしてて業務が少なければ問題は起こりづらい。実際に、東京の忙しい部署ではダメだったけど地方の暇な部署に行ったら良くなったとか、普通にあるので」

「無理して悪化しちゃったらさらに大きな迷惑をかけちゃう可能性もあるし、真剣に考えるべきかもなぁ……」

 

仕事できないやつだけがわかる『あるある』50選|作:ギャラクシー

 

「社領さんは病院を受診なさったことはあるんですか?」

「いえ、ないんです。いざ受診したら『あなたはADHDではなくて、ただのだらしない人間です』と診断されるのが怖いんですよね……」

「めっちゃわかる! ADHDと診断されるのも怖いし、ADHDじゃないですって言われるのも怖い」

「実はそういう人ってすごく多いです。ただ周囲からすると、受診されてない以上は、だらしない人だと判断しちゃうのは仕方ないので、ちゃんとした専門医に見てもらったほうが良いですね」

「ADHDとそうでない人の明確な境界線ってありますか?」

「数値で表せるものとかではないのではっきりとした境界線はありませんね。でも受診されて経過を診てちょっと話を聞けば、8割くらいは判断がつきますね」

「それはどういう部分で?」

「こちらが聞く間もなく一方的に話し続けたりとか。あと話が逸れる人が多いですね。話の最中に違う話題が次々出てきてなかなか元の話に戻らないとか」

「今の話、完全に自分かと思いました。でもこのあちこちに話が逸れるのってライターの仕事をしてると役立っていたので異常なことだと気付かなかった」

「そういう症状を自覚したら、病院で診てもらった方がいいと。それも、ちゃんとした専門医にってことですよね」

「はい。医療の世界でも成人のADHDは元々あまり認識されていなくて、認識されだしてきたのはここ10年〜15年くらいの話なんですよ」

「え、つい最近じゃん! じゃあそれ以前はADHDだったとしても、ただのだらしない人と思われていたってこと? こわ~」

「他の診断名がつけられていたケースもありますね。例えばうつ病だと思ったらADHDだったという例。何年間も引きこもりをしていた人が受診してみたら、実はADHDだったなんてことも……」

「何にせよ心配な人は一度専門医に診てもらいましょう!」

 

ADHDってどうやって対処したらいい?

「ADHDのことがだんだんわかってきました!治療法や対処法はあるんですか?」

「その人の置かれている状況で問題点はかなり違うので、一般論では難しいですね。ただみなさんにひとつ言えるのはちゃんと夜寝なさいということですかね」

「え、意外!」

「ADHDと睡眠にはなんの関係もなさそうに思えるんですが」

「ADHDに限らず、睡眠が不規則だと注意力や集中力がすごく悪くなる。私は、病院に相談に来られた方には『多少睡眠時間が短くてもいいから、できるだけ12時前には寝てください』と言っています。遅い時間に眠ると眠りは浅くなっちゃうので」

「めっちゃ不規則だわ……」

「同じく。明け方5時とかに寝てる……」

「睡眠が浅いと注意力や集中力が悪くなってミスも増える。ADHD的な症状を加速させちゃうんですね」

「な、なるほど」

「あとはアルコールかな。アルコールも眠りを浅くして次の日身体に残るので症状を悪化させる。その生活習慣2つを変えるだけでもだいぶ変わると思いますよ」

 

「お酒を飲まず早く眠るようにします。他にはなにかありますか?」

「あとは症状を自覚することで問題を起こさないように防ぐことはできるかもしれません。忘れ物をしなくなるというのは無理でも、忘れ物防止アプリを使うことで、普通の人と同じように社会生活が送れるようになるとか」

「なるほど!」

「物覚えが悪いならこまめにメモを取るとか、遅刻しないようにタスク管理アプリを使うとかね。問題点がハッキリしてるなら自分なりの対策でずいぶん良くなることもあります」

目が悪い人はメガネをかけるみたいな感じで、補助してくれるものを使えばいいのか……」

 

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「ちなみに薬を使って治す場合もあるんですよね?」

「薬も有効な手段のひとつです。集中力を高めたり、衝動性を抑えるなんて効果もありますが、薬って繊細で、合う合わないがありますから、必ず専門医に相談してください」

「自分で勝手に判断してネットとかで買っちゃダメってことですね」

 

「海外のデータだとADHDの人って実は非常に多くて。アメリカの10代の青少年だと、ADHDの治療薬を飲んでいる人が10%以上というデータもあるくらいです」

「え!10人に一人も!?」

「いろんな精神疾患のカテゴリーがあるけどADHDって実は一番多くて、かなりの方が症状をお持ちになっているんですよね。ただ、大人になるとその数値が途端に減るんです。4〜5%くらいに。大人になると自分なりに工夫して改善できるってことです」

「じゃあもう軽い症状ならそこまで深刻に考えなくてもいい?」

「というか、私は患者さんに『あなたは決して特殊でも異常でもない』とお話ししています。ただ、自分の特性を自覚しないと損をすることがあるだけです、と」

「なんだかすこし心が軽くなりました」

「いや、これは気休めとかではなく、実際にADHDが役立つこともあるんですよ。先ほど“ADHDの人は話が逸れやすい”という話題の時、社領さんは『話が逸れるのってライターの仕事をしてると役立っていた』とおっしゃっていましたよね?」

「はい。話が逸れた結果、インタビューの時に色んな面を引き出せたりしますね」

「考えがいろんなところにいってしまうことをマインドワンダリングといいまして、これは創造性と大きく関係があって、クリエイティブな仕事にはむしろ向いていると言えます」

 

「おぉ……!」

「自分の思いついたことをポンポン言っちゃうというのも、発想が豊かと言えますね。芸術家や企業家、イラストレーター、ゲームクリエイター、ライトノベルの小説家など、ADHD的な特性を持っている方は多いです」

「つまり適材適所で、特性を活かせる場所ならADHDがマイナスにならない場合もあると」

「ただ、自分に適した場所を探すのって難しい……みんながみんなクリエイターとか芸術家じゃないから、苦しいんだろうな~」

「そんな時はぜひ専門医にご相談ください」

「最後に、私のADHD度って何%くらいなのかお聞きしてもいいでしょうか。あくまで“このインタビューから受けた印象”で結構です」

「もっと詳しく質問させて頂かないとちゃんとした判断はできませんが……印象では60〜70%くらいかな」

「えっ! 私のADHD度、高くないですか!?」

「ちなみに一般の人のADHD度って0%なんですか?」

「いえ、0%の人なんていませんよ。一般の人でも20〜30%くらいですかね」

「そっか……まあ誰だって忘れ物したり遅刻したり、体調によっては集中できなかったりしますもんね。今日はたくさんお話を聞かせていただいてありがとうございました! この原稿はすぐに完成させるのでよろしくお願いします!」

「ほんとかよ……」

「楽しみにしています。でも無理はしないでくださいね」

 

まとめ

 

 

 

 

 

「あれから1年が経過したわけだが……」

「ねぇ、本当に……ハハハ。最近になって病院に行ったら見事(?)ADHDと診断されまして、記事はまだちょっとしか書けてません! すいません!」

「じゃあ原稿の残りは編集部の方で補完しときますね! 実際に病院でADHDと診断されて、なんか変化ありました?」

「薬が処方されて、今は多少働きやすく、生きやすくなりました! この取材の時に思ったんですけど―」

「一年前のな」

「まあまあ聞いてください。『やらなきゃいけないことを後回しにしてしまう』みたいな特性って、フリーライターという立場に超ミスマッチだったんですね」

「あぁ~、なるほど! 際限なく後回しにしちゃうんだ」

「意を決して病院に行って、就職活動して、今の会社で働き始めたら……環境が自分に合っていたようで、いろんなことが好転して自信モリモリになりましたね」

「みなさんも『ひょっとして』と思ったら絶対に病院に行きましょう!」

 

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TEXT:桃沢もち子


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