こんにちは〜!ライターの吉野です。
最近、1990年代に流行した「ギャル」に再び注目が集まっているのをご存知でしょうか?
若い女性の間でルーズソックスやロングブーツが流行ったり、2019年にはギャル雑誌『egg』が復刊するなど、近年人気がじわじわと再熱しているのです!
「ギャルってとにかく派手で、見ているだけで元気が出てくる存在だよね」と思っているそこのあなた……!
実はギャルという言葉は当時からどんどん変化していて、最近ではギャルというのは「内面のマインド」を指す概念になっているのです!
そこで今回、20年経っても粘り強く生き残っているギャル精神について、「ギャルと言えば……!」な、この方に聞いてみることにしました。
漫画『GALS!』の作者・藤井みほな先生です。
『GALS!』とは、1999年〜2002年まで「りぼん(集英社)」で連載されていた、“渋谷最強のギャル”といわれた主人公・寿蘭と友人達を中心に家庭問題の解決や成長を描いた伝説のギャル漫画。2019年から「マンガMee」にて連載が復活し、続編の『GALS!!』が現在まで連載中です。
ギャルの生き様が詰まった今作は、当時ギャルに憧れる少女たちのバイブル的存在でした。
90年代当時のギャルって一体どんな存在だったの?
今、どうしてギャルが求められているの?
「ギャルになりたいけど、わたしはギャルになれるのか?」と悩んでいる人のためにも、藤井先生にイチからギャルについて聞いてきました!
そして、『GALS!』の可愛いヒョウ柄のコラボマスクをして、今の渋谷の街も散策してきました。
マスクは「りぼんのおみせ」で買えるよ〜!
話を聞いた人:漫画家・藤井みほな
東京都出身。1990年に「無邪気なままで」でデビュー。主な作品に「パッション・ガールズ」、「龍王魔法陣」など。マンガMeeで『GALS!!』連載中。Twitterアカウント@mihona_fuji、Instagramアカウント@mihona_fuji
ポスカを顔に塗っていた、当時のギャルトレンドメイク
「小学生の時から『GALS!』を愛読してたんですけど、私が高校生になったらギャル文化は落ち着いちゃって、ギャルになりたくてもなれなかったんです。なので今日は憧れのギャルについて、詳しく教えてください!」
「そうなんだ〜!ギャルは超最高だよ〜!吉野さんが高校生の時、靴下は紺色だった?白色だった?」
めちゃくちゃ優しくてお綺麗で素敵な藤井先生を目の当たりにして、照れてしまう『GALS!』ファンの吉野
「たしか、PLAYBOYのロゴが入った紺色の靴下が流行っていました。マフラーはバーバリーのチェック柄で」
「なるほどね〜!バーバリーは1990年代のコギャル世代の後半にも入って来てたよ」
「えっ。ウソ?当時のギャルの鉄板ファッションアイテムってなんだったんですか?」
「コギャルのカリスマ・安室奈美恵さんを真似する『アムラーファッション』が大流行してて、みんなが厚底を履いていた。ハイビスカス柄が特徴的なブランド・アルバローザを着るギャルは、『アルバカ』って呼ばれたりして(笑)」
「これはリゾート地に行きたくなる服ですね」
「その他にも、CECIL McBEE、EGOIST、me Jane、COCOLULUなどのブランドが全盛期で、渋谷109のほぼ全館がギャル系ブランドだった。今みたいにネット通販もなかったから、109のカリスマ店員は最高のマネキンドールで」
「109のカリスマ店員が着る服はよく売れたんですか?」
「109のカリスマ店員が着た服は、次の日行ったら『もうないです』とか普通でした。『店員さんが着たらすぐに買う』これ、109での合言葉ね」
「やっぱり、ギャルの話をするには109は避けて通れない存在…?」
「もちろん!当時は109でしか買えない洋服もあったから、わざわざ地方から電車に乗ってやって来る女の子がたくさんいたんです。昔から今も、109はファッションの枠にとどまらないカルチャーの発信地でもあって、昔から今までずっとギャルの聖地です」
渋谷109は平成が終わる2019年に開業40周年を迎え、新しいロゴを発表
「今も芸能界などで『ギャルタレント』と呼ばれている人がいるけど、昔と今のギャルで変化したことってなんですか?」
「圧倒的に、小綺麗さじゃないかなあ。昔のギャルは平気で渋谷センター街の地べたに座ってメイクをしたりとワイルドだったけど、今のギャルは服装から仕草まで清潔だよね!」
「当時のギャルメイクも今流行りのメイクよりすごく濃かったですよね!」
「昔のギャルは目立つことに対してとにかくハングリーで、今みたいに美容事情がそんなに出回っていなかったから、お金をかけずに自分たちで創意工夫していたの。中にはマッキーでアイラインを引いたり、ヤマンバ系メイクの子は白ポスカで目鼻を描いている子もいて(笑)」
「そこまでして!」
「今はカラコンもマツエクも精度が上がって自然に盛れるけど、当時は今ほど盛れなかったのでとにかくつけまつ毛とマスカラで目をパッチリ見せることに命をかけてました」
今でも109の店内には過去のギャル雑誌が飾られている
コギャルを主人公にした漫画を描こうと思ったきっかけ
「藤井先生が『GALS!』を描こうと思った理由はなんだったんですか?」
「1990年代の渋谷って援助交際やカラーギャングの抗争があったり、今よりすごく危険な街だったんです。そんな中、渋谷でコギャルを初めて見た時は『すごく元気な子たちが出てきたな〜!』と思って注目していたんですよね」
「好奇心が刺激されたんですね」
「『うちらはうちらで楽しんでるんだから問題ある?』って感じで全く人目を気にしない姿に感動して」
「まさにコギャルパワー!」
「誰にも媚びないで、自分たちが一番最高っていうスタンスがマジでカッコよかった! それに加えて、渋谷の危険な街と彼女達の底抜けの明るさのコントラストが面白くて、コギャルの物語を描き始めました」
「やっぱり、その時は先生も『ギャルになりたい!』と思いましたか?」
「そりゃ思ったよ〜! 1990年代の高校生はとにかく自由で楽しそうだったもん。でも、『GALS!』の連載当時はまだ20代前半だったから、金髪のウィッグをつけて、渋谷センター街や109でひたすら取材してたね」
「先生自らギャルになって!? ギャルについてそこまで追求した理由ってなんでしょう?」
「当時のメディアはギャルの面白いところだけを取り上げるだけで、彼女達の本音や素顔までは迫っていなかったんです。だって、実際にギャルと話してみると、礼儀正しくてめちゃくちゃ優しい子たちばかりなんですよ」
「渋谷を闊歩していたギャル達も、ふつうの10代の女の子が抱える悩みを持っていたんですよね」
「派手な外見だけど、中身は恋愛や人間関係の悩みがあったりと、普通の10代の子となんら変わりのないような子たちでした」
「恋愛といえば、当時はどうやって恋人や友達と連絡をとっていたんでしょうか?」
「当時はピッチ(PHS)だった。ピッチにぬいぐるみやハイビスカスのストラップをこれでもかっていうほどジャラジャラ付けて、本当に楽しかった!」
「PHS」の見た目はこんな感じ。若い世代の人は見たことないかも!?!?
「ジャラジャラのストラップ! スマホになってから消えた文化だ。「ハイビスカス」と言えば、ギャルの必須アイテムの一つ!」
「ハイビスカスって飾るだけですごく気分が上がるよね! 今やったらちょっと違うけど、当時はヒョウ柄は『かわいい』ってファッション感覚で若い子がみんな身につけてたなあ」
「ヒョウ柄は大阪のおばちゃんだけのものじゃないんですね!」
「今の若い女の子のファッションは量産系や地雷系が主流で、当時109でギャル服を売っていたお店も、もう今は売ってなかったりもします」
「やっぱり、ギャルってあの時代に生まれるべくして生まれた存在だったと思いますか?」
「そう思います。ギャルってバブル崩壊後という時代背景があって、若者が大人へ反発していた時代だからこそ生まれた文化だと思います。もし今のギャルがコギャルのメイクやファッションを真似してもそれは当時のコギャルではなく、『可愛くて綺麗なコギャル風』になってしまうかもね」
「ギャルって時代の賜物だったんだなあ」
おじさんでも「ギャル」になれる!
「今でも『GALS!』を読み返すたびに、登場人物の熱いセリフにめっちゃ励まされるんですよ! セリフに込めた思いはありますか?」
「どのセリフも私が1990年代に感銘を受けたコギャルの生き方を100%反映しているんです。彼女達はとにかく一番に自分や友達を愛することを考えています」
「たしかに、ギャル=仲間思いのイメージがあります」
「彼女達は絶対に人を恨んだりしない。『誰に何を言われようと、私は好きな格好をするし、生きたいように生きること』をポリシーにしています」
109の入り口には安室奈美恵の手形が。さすがギャルのカリスマ!
「ありのままの自分を肯定する感覚を大事にしているですね」
「だって、『自分を大好きな自分が大好き』って二重肯定の精神がギャルマインドの鉄則だから。それにギャルは正義感も強くて、友達をすごく大切にするんです。以前、山手線に乗ってたギャル達から『あの子今イジメられているから、うちらで助けてあげない?』って聞いたこともあって」
「自分も他人も大切にするギャルの存在が尊い!」
「最近では『ギャルマインド理論』っていうものが確立されてきて、ギャルは表面的な装いではなくて、内面のマインドことを指すようになりました」
「それって、ギャルになるためには見た目以上に心の持ち方が重要ってことですか?」
「そう。ギャルは生き様」
「え!?それじゃあ私でも今日からギャルになれるってこと……?」
「ギャルのマインドを持っている人はみんなギャルだから、吉野さんも今日からギャルだよ!」
「そうしたら、おじさんでもギャルになれちゃう……!?」
「もちろん。見た目が全然ギャルっぽくなくても、老いも若きも男も女も、ギャルマインドを持ちたいって思っている人なら全員ギャル!」
「今日から私もギャルの仲間入りさせてください」
「よしっ! みんなで今日からギャルになりましょう!」
コロナ禍もギャルマインドで乗り越えていこう
「先生がギャルマインドを持っていて、良かったことってありますか?」
「人と自分を比べなくなったことかなあ。連載当時、他の作家さんとの競争率が高くて焦ったりもしていたんだけど、ギャルマインドに感銘を受けてからは、『私は私のいいところがあるから大丈夫』って思えるようになって」
「それでも人間だもの、嫉妬とかしちゃいませんでした?」
「やっぱり、足を引っ張ったり、嫉妬したりするのってかっこ悪くない? お互いに頑張ろうねって、称え合う気持ちでいたよ」
「コロナ禍の今、以前より他人の生活が浮き彫りになったことで、SNSの投稿を見たりして友人と自分を比べて勝手に落ち込んだりする人も多いと思うんですけど、ギャルマインドを持っていたらそんな悩みも切り抜けられそう……」
「ギャルの中では『私なんかダメ。あの人はすごいのに』って言う考えが全くない。ある意味マイペースで、自分らしくいられれば最高って思っているから。もし周りの人が落ち込んでいたら、『あなたはあなたで輝けばいいの』って言ってあげてね」
「ううう。ギャルマインドって今こそ絶対に必要だなあ。これからギャル文化の再ブームがもっと熱くなると思いますか?」
「そうなってほしいです!今ギャル界で活躍しているのが、2000年前後に生まれた子たちで、彼女達は言わばギャル全盛期を生きたお母さん達からの遺伝子でギャル魂を受け継いでいる『コギャルの申し子』なんですよ」
「DNAにギャル魂が刻まれているなんて最強じゃないですか」
「今のギャルブームの盛り上がりって、お母さんが自分のイケイケのギャルマインドを子供に引き継がせたことや、若者達の当時のギャルへのあこがれもあって、若い世代を中心に『ギャルブームを作り出そう!』って動きがあるんだと言えるね」
「ギャルマインドは聖火リレーみたいに世代を超えて引き継がれているからこそ、これからも盛り上がること間違いなしですね!」
「そうそう、ギャルマインドは後世に引き継ぐべき哲学だと思っているので、ぜひ次の世代にもどんどん伝えていってね!」
「マインドだけは一生ギャルでいたいと思います!本当にありがとうございました〜!」
おわりに
取材を終えて、ただ真っ直ぐなギャル哲学を知り、「私も今日からギャルだ!」と思うと、重くのしかかっていた不安感は消え、あたたかな安心感に包まれました。これが噂のギャルパワー?
『GALS!』の中で、主人公の蘭ちゃんが高校の卒業式で後輩に向けてこう言っています。
「うちらにヘコんでいるヒマなんかねえ!! 今を楽しむ 言いたいことを言う 腹から笑う これ鉄則!! 前も後ろもどーでもいーから 「今」を大事に生きようぜ!!」
ギャルマインドはこれに尽きます。皆さんも、90年代から脈々を受け継いでいるギャルマインドを参考にして、このコロナ禍を楽しくと、顔を太陽の方に向けて生きていきましょう!
藤井先生、これからも漫画を通してギャルマインドを世界中に広めていってください。
ギャルマインドをもっと詳しく学びたい人は、是非『GALS!』『GALS!!』読んでみてくださいね〜。『GALS!!』の新刊も要チェックです!
☆『GALS!!』新刊発売のお知らせ
『GALS!!』4巻が、2月25日(金)に発売されます。最新情報は、藤井先生のツイッターやインスタから!