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毎月やりたい気持ちはあるのに気がついたら2021年は2回しか出来なかった、「そういえばこんなシリーズもあったわね」という温度感の連載の第5回目です。
ベスト・キッド (字幕版)ベスト・キッド(1984 / 主演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ)
少年が空手の達人にワックスがけやペンキ塗りばかりやらされて「これが何の意味があるんだ!」と怒ったらそれが空手の基本となる受けの型だったことを知る映画
【勤務時間中に堂々と見る人の紹介】
私。赤ちゃん育児とゲームでめっきり映画を見てない男
かつてワックスがけとペンキ塗りで日銭を稼いで生きていた男
「んちゃ」
「気がついたら2021年も終わりになりましたね」
「毎回聞いてますけど、最近映画見てますか?」
「異常なかわいさの赤ちゃんの育児でやっぱり映画館には行けてなかったですね。数えたところ、2021年は74本ぐらいしか見てなかったです」
「いうてけっこう見てる。2021年のオススメは何でした?」
「ネトフリの『ミッチェル家とマシンの反乱』と、ジェームズ・ワン監督の『マリグナント 凶暴な悪夢』ですね〜」
「ふ〜ん」
「気のない返事。『マリグナント』はちょっと前にオススメしましたよね。見ましたか?」
「いやまだ見てないですね…いずれ見るリストには入ってますよ!」
「ふ〜ん」
「気のない返事 2(ツヴァイ)。そんな戯言はさておいて、今日は『ベスト・キッド』です。見たことないんですか?」
「太古の昔にウッチャンナンチャンのコント番組でパロディしてたのを見たくらいで、またしても『見る』という選択肢が完全に頭から除外されてました」
「『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』ですね。懐かしい…。あ、でもこういう80年代の話ばっかりしてると本当に厄介な老人扱いされるのでここの深堀りはまたいつかにしておきましょう。つまり見てないのと一緒ですね」
「『ミヤギ』『ワックスかける』『ペンキ塗る』ぐらい。ストーリーは全く知らないですがだいたい予想できてます」
「じゃあ早速見ましょう!今回もベスト・キッドに関するネタバレがしっかりと書かれています」
■「ベスト・キッド」あらすじ・起
母親の都合でカリフォルニアに引っ越してきたダニエルは圧倒的コミュニケーション力を駆使して1〜2日足らずに友達を作り、アリという美少女ともいきなりいい感じになるのだが、偶然通りかかった不良空手道場「コブラ会」の面々に因縁をつけられて砂にされてしまう。ダニエルはそれ以来いじめられてしまうのだが、アリとアパートの管理人である変なおじさんミヤギだけは優しく接してくれたのだった
「80年代の雰囲気って、やっぱ良いですよね〜」
「町並みとかファッションセンスとか最高ですね」
「そんな中、主人公・ダニエルが親の仕事の都合で引っ越してきました」
「めちゃくちゃひょろひょろ」
「歩く棒」
「この少年がのちに空手ファイターになっていくんですね」
「そうなんです。そんなダニエルが引っ越してきたアパートの管理人が……この人!」
「ミヤギという日本人なんですね」
「めちゃくちゃ良い登場の仕方だな〜。ハエを箸でつかもうしてる異様な雰囲気で只者でなさを醸し出している…」
「ただしここでは『無口で謎の老人だな』くらいの扱いです。ダニエルはさっそく引っ越してきた町で遊びにでかけていますね」
「この主人公、異常にコミュ力高くないですか?さっき会った同世代の男の子ともう友達みたいになってパーティーに誘われた上に、そこにいた最高に可愛い女の子といきなり仲良くなってる…」
「今改めて見たんですけど、見習いたいぐらいスイスイ人の懐に入っていきますね。すごすぎる」
「あ〜でも不良に目をつけられちゃった」
ボカ!バキ!
「みじめ!みんなが見てる前で…」
「ここで彼を殴ったのが、コブラ会という道場で空手を習ってるワルなんですね。ダニエルが『空手やってる』って言っちゃったのが裏目に出ちゃったわけですね。通信空手なのに…」
「仲良くしてくれた男の子にも愛想つかされちゃった。それにしても引っ越し1〜2日で激動すぎる」
「この話運びの速さがこの時代のエンタメ観を表現してるような気もします」
「そうなんですか?」
「すみません、かなり適当にしゃべってしまいました」
「そして体育の授業でも因縁つけられちゃってますね。リーダーのジョニーに足ひっかけられて転んじゃった」
「でも主人公もめちゃくちゃ気性が荒い!ブチ切れて馬乗りになっちゃった。ジョニーは根っからのワルですけど、ダニエルもダニエルで悪いとこありますよ」
「そして『クソ学校だ!』と吐き捨てて帰る。転入生の挙動じゃないですね」
「ただその背中を心配そうに見守るアリちゃん…。可愛すぎますね」
「演じたエリザベス・シューさん、これがデビュー作でこのあと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のジェニファー役に抜擢されてます」
「え! マーティの恋人の!? そりゃどっかで見たことあったわ」
「この映画、アリちゃんのかわいさを楽しむ作品でもあります。例えばこのシーン」
ダニエルを発見したアリちゃん、遠くから近づいてきて……
肩で軽くチョンっ
「うわ〜〜〜〜!!」
「かわいいいい〜〜〜〜〜!!!!」
「マジでめちゃくちゃかわいい……ダニエルの『誰かと一緒?』という質問に対しての『あなたよ』というドキッとさせる答え…100点満点中100兆点!!!!」
「今んとこダニエルに良さがほとんど無いので、何でこんなに惹かれてるか腑に落ちてはないですけど、それでも良い…」
「『ロッキー』のエイドリアンの時にも感じましたけど、なんかこう記憶に残るヒロイン像って最近のよりちょっと昔の映画の方がインパクトありますね。何なんだろ」
「アリちゃんに関してはシンプルにめちゃめちゃ可愛いっていうだけだと思います」
「だとしたらもうアッパレよ」
「ただ、恋模様と同時進行で、コブラ会との因縁は深刻になっていきますね」
「コブラ会、本当に分かりやすい悪役って感じで倒し甲斐がありますね」
「ジョニーにやられたのが悔しかったダニエル、自分もちゃんとした道場で空手を習おうとするんですが、その道場ってのが……」
「知らずにコブラ会に見学にきちゃったのか! ダニエルを見つけた時のリーダージョニーのこの顔…」
「この顔だけで全て物語ってますね」
「わ〜そしてその夜コブラ会にまたいじめられちゃった。いい加減可哀想になってきた。でもこれで強くなって見返してやりたいという動機づけが強まってきてますね」
「この辺でダニエルがお母さんに不満を爆発させちゃいます。そりゃそうですよね。母の都合で引っ越してきた途端、いじめにあってるんだから。そんな親子のやり取りを聞いていたのが……」
「ミヤギ〜〜〜!!聞いてた〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「空手をやりたい少年と、かつて空手をやっていた男、こんな偶然ありますか!!!」
「でもまだまだミヤギが空手をやってることは明かされないですね。何度か会って話してはいますが…」
「それはもう少し…ですね」
■「ベスト・キッド」あらすじ・承
ハロウィンパーティーの夜、ダニエルは無謀にもリーダー格のジョニーに仕返しをし、案の定コブラ会総動員でマジで半殺しにされる。薄れゆく意識の中でダニエルが見たのは、空手で次々となぎ倒すミヤギの姿だった。実は空手の達人だったミヤギはダニエルとともにコブラ会に顔を出し、先生に提案したことは…。
「そしてハロウィンパーティー!アメリカ映画ではもうおなじみ」
「いつもジョニーからコソコソ逃げてカッコ悪いし、それでもアリちゃんにはカッコつけようとするし、ダニエルのダサさはかなり極まってきてますよ」
「アリちゃんにカッコつける時の服装、迷彩のズボンにチェックのシャツをインしてて視覚的にも相当ダサかったですね」
「それにしてもミヤギに作ってもらったシャワーカーテンの仮装、最高に良いアイデアですね…」
「うろついてるコブラ会からは発見されにくい上に…」
「シャワーカーテンの中にアリちゃんを誘い込んで、二人の世界になれますしね!!」
「良い〜〜〜〜〜〜〜〜ねぇ〜〜〜〜〜〜」
「もうこのまま、アリちゃんと二人でひっそり暮せばいいやんと思うんですが……ジョニーがトイレに入るのを発見したダニエルは―」
「え?おいおい」
「復讐として、個室にいるジョニーに上からホースで水をぶっかけます」
「何回もボコボコにされてるのに、怖い者なしなのかこいつ…」
「結局さらにボコられてしまいました」
「でもここはミヤギが空手を初披露して助けてくれるという、かなり重要なターンですね。ただ、ボコられてる原因が完全にダニエルにあるから応援しづらいですね。お前が絶対悪いだろ!」
「ミヤギも真相を知ったら『何やそれ』ってなりそうですね。それはさておき、ミヤギが空手の達人であることを知ったダニエルは、交流を深めていきます」
「復讐で空手を覚えようとするダニエルに対して、『暴力では何も解決しない』と完全に論破してますね」
「ダニエルには父親がいないので、少しずつミヤギを自分の父親のように慕っていくんですよね…この過程がまた良い!」
「ダニエルとミヤギ、バック・トゥ・ザ・フューチャーのマーティとドク…少年と変なおじさんの交流は画になるなあ〜」
「ついにミヤギは、コブラ会の先生に話をつけていじめをやめさせるように説得しにいくことになりました」
「完全な無免許で車を運転する描写ありましたけど、こんなことあっていいんですね」
「寛容な時代」
「あんな悪い先生がしょうもない説得に応じるわけないと思うんですけどね」
「と思うじゃないですか?」
ミヤギ「2ヶ月後の空手大会で決着をつけるまで、ダニエルに手を出すな」
「あ!!!!!」
「うおおおおおおおおお!!!!」
「これは熱い!!!!!盛り上がってきた!!!!」
「この流れがめちゃめちゃ最高!!!!」
「ここから修行パートに入るか〜!くぅ〜〜〜!!!!」
■「ベスト・キッド」あらすじ・転
ダニエルはミヤギの弟子となり、空手の特訓を受けようと決意するが、来る日も来る日も車のワックスがけやペンキ塗りなど、雑用ばかりやらされるのだった…。そして、ミヤギにつきっきりで指導を受けつつ、アリともいい感じになりながら、いよいよ大会が迫ってくる
「さあ、有名な修行のシーンですよ」
「出た〜〜〜〜。ワックスがけ!!」
「ワックスかける、ワックス取る。当時めちゃめちゃ流行ったな〜。学校の掃除の時間、男子は全員やってた」
「そしてペンキも塗る。上下の運動だ」
「ひたすらワックスがけやペンキ塗りをさせて、自分はフラフラ遊びに行っちゃうんですよね〜」
「ダニエル、いいって言われるまで一生やり続けるこの忍耐力は凄まじすぎますね」
「日が暮れようが永遠にやっててタフだな」
「ただ、こき使ってるだけでいったいいつ空手を教えてくれるんだ?というフラストレーションはどんどんたまっていく…」
「しかし、一度教えを乞うたのなら質問は禁止…」
「そして並行してアリちゃんとの恋模様も順調なんですね。ダサいところしか見せてなくて何も巻き返せてないと思うですが、何故惹かれているんだ…」
「このデートのシーンすごい好きなんですよね…当時ってスマホの写真とかプリクラとか無いわけですから…」
「あ〜〜〜〜〜〜!」
「証明写真ボックスで撮るんですよ!!!」
「輝きすぎ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「昔のデートではあるあるの光景なんですけど、もう見てらんない」
「でも、時々ダニエル家とアリ家で貧富の差がかなり描写されて、そこでダニエルは劣等感を抱いてそうですね」
「アリちゃん本人はそんなの関係なくダニエルの人柄に惚れてるのが愛らしい!」
「アリちゃんはマジでかわいい。これは映画史に残る。いや、残ってる」
「そしてダニエルがいよいよキレちゃいました。『毎日ワックスかけてるだけで、こんなの空手じゃないやろ』と」
「ということは、そろそろ出る…」
「あれが…」
「意味の無いワックスがけ、こき使われただけのペンキ塗りが…」
「いったい何の役に立ってるというんだ…早く空手を教えてくれ…」
「この動きが実は…」
バシッ!!バシッ!!
「お見事っっっっっ!!(拍手喝采)」
「きもちいいっ!!!最高!!!!」
「ワックスを拭き取る動作やペンキを塗る動作が、実は空手の防御の動きだったんですね~」
「そしてミヤギの『また、明日』からのダニエルのポカーンという表情…パーフェクト!!」
「このために全てがあると言っても過言ではない名場面ですね…色あせなさすぎ」
「ここから一切愚痴をこぼさず練習に明け暮れるようになりました。ひょろひょろではあるけれど…」
「修行中にミヤギがやってた、この片足を上げる構え! これ重要です。特に言及されないけど、ダニエルはミヤギの背中をしっかり見てますね」
「ここからさらに絆が深まって疑似親子みたいになってるのもかなり微笑ましい…ダニエルの誕生日を祝ったり、ボートに乗ったり…お父さんみたい」
「ダニエルを息子のように可愛がるのって、ミヤギの過去が影響してるんです」
「うわ〜ほんとだ。従軍中に妻とお腹の子を同時に亡くしていたとは…。それ以来孤独なんですねえ」
「父親のいないダニエル、そして子を授かるはずだったミヤギ。空手がつないだ絆…」
「最高のバディ!!!」
■「ベスト・キッド」あらすじ・結
ついに大会当日。ダニエルは奇跡的に勝ち進めるが、準決勝でコブラ会の雑魚に反則技を片足に食らって立つのもやっとのダメージを受けてしまう。リーダーのジョニーを前にしてこの怪我は深刻だ。果たしてダニエルは勝利を掴み、なんやかんやで全てを丸く収めて大団円を迎えることができるのだろうか?(映画なので、できます)
「さ〜いよいよ大会…なんですが、上映時間あと10分ぐらいしか無いですよ」
「『ロッキー』の時もそうでしたけど、試合シーンに割く時間が極端に少ないですね」
「初めての試合なんですが…、試合に迫力がない!!」
「ダニエルも歴2ヶ月のほぼ初心者みたいなもんですからね!」
「空手の試合ってこんな感じなんですか?」
「だいぶ違うと思いますが、そこはあんまり本筋とは関係ないんですよ!ダニエルの心の成長としての『装置』なので…」
「あとでYouTubeで空手の全国大会の試合見てみよ(※この後見てみたら、全然違ってました)」
「順調に勝ち進むダニエルですが、コブラ会の悪い先生が、生徒に『ダニエルの足を壊せ』と指示を…」
「ああ!ひどい!分かりやすい悪だ!!そしてダメージも深刻!」
「片足じゃないと立てないぐらいですね」
「初心者だし、片足でしか立てない…これは『負けたけどいい思いにはなったよね』というパターンの終わり方…?いやでもそんな結末80年代の映画にはほぼありえない…」
「ダニエルはミヤギの背中を見ていたんですよね?」
「そうですね。…ん?あ!!!」
「あれだ!!!!!!!!!!!!」
「いけ〜!!!!!!」
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「終わった…。いかがでしたか?」
「ブチ上がるポイントがめちゃくちゃあって、ちょっと前に流行った『応援上映』でやっても全然通用するくらいの痛快さがありました!ダニエルとミヤギの父子のような関係性、アリちゃんの圧倒的なチャーミングさと恋模様、そして倒すべき敵…!少年漫画のように分かりやすく色んな要素が組み合わさって全年齢対象で楽しく見れたな〜。空手の試合の迫力は薄いけど、それもまたご愛嬌」
「良かったです!やっぱり映画って1人で黙々と見るのもいいですけど、こうやってチャチャ入れたり歓声上げたりしながらワイワイ見るのも楽しいですね」
「そういえばネトフリに今作の続編の『コブラ会』ってのがあったような。…え!?今作で負けたジョニーが主役で、コブラ会を復活させていく話らしいですよ!!見たすぎる…」
「34年経ってるのに、キャストもダニエルとジョニーが変わらず継続してるのが最高ですね。みんなも見よう!」
THE END
次回は番外編としてもう1人メンバーを加え、押井守監督による大ヒットアニメを見てみます