ライターの神田(こうだ)です。以前ジモコロでは、就職活動の疑問を取材しました。
しかし新型コロナウイルスの影響で、これまで対面で行われていたことはオンラインを活用した非対面型に移行し、その波は就職における面接にも押し寄せています。
そこで前回に引き続き、ジモコロの運営会社であるアイデムが運営する新卒向け求人サービスJOBRASS新卒の責任者・佐川好司さんにオンラインでお話を伺いました。
・オンライン面接ならではの注意点は?
・機材は何を使えばいい?
など、オンライン面接で気をつけたいことをたっぷり聞いてきましたよ!
大切なのは「いかに自分を演出するか」
「お久しぶりです。就活の疑問の記事以来ですね」
「あれからコロナのせいでかなり状況が変わりました。今や面接なんかはオンラインの比率がぐんぐん上がってますね」
「今日はそのあたりをお聞きしたいなと思ってます。個人的にはオンラインのほうがやりやすいんじゃないかと考えてまして。ドアをノックする回数とか、イスの座り方とか、独特のマナーが必要ないし、緊張もしにくいじゃないですか」
「最近は大学の講義などもリモートで行われているので、学生さんはそういう方も多いようです。若い人はネットのリテラシーも高いですからね。むしろ企業側がオンライン面接への移行で苦労しているようです」
「オンラインだと自分がどこに住んでいても、距離に関係なく気軽に面接を受けられるのも良いポイントですよね」
「場所に依存しなくてよくなったのはオンラインの大きな利点ですね。志望者側の選択の幅が広がって、同時に企業側も優秀な人材と出会いやすくなったと言えますね」
「じゃあ、何で今までオンライン面接をやらなかったんですか?」
「……え?」
「今まで対面にこだわっていたのは何だったんですか? 私が就活していた当時は『面接を受けに行く交通費』を稼ぐためにバイトをしている人もいたんですが、お金を返してあげてください」
「い、いやでも対面のほうが情報量は多いのは確かなので、対面のメリットというのもあるんですよ」
「情報量? 対面のメリット??」
「対面のほうが人となりや雰囲気が掴みやすいんですよね。座り方やシャツの襟が汚れていないかなど、ちょっとしたことでその人の内面が出たりするので」
「むう、確かに実際会ってわかることもありますね。その人の殺気や迫力というか」
「武芸者? 実際会ってわかる情報というのは志望者側も同じで、より面接担当者や社内の雰囲気をつかみやすいはずです」
「とはいえ今はコロナのこともあって、オンラインでできることをやろうって感じなのかな」
「ただ対面と非対面では面接のやり方が異なってくるので注意が必要です。オンラインでは面接官が得られる情報が少ない分、志望者側からの積極的なアピールが必要かもしれませんね」
「なるほど。オンライン面接だと画面に映っていることしかわからないので『いかに自分を演出するか』が求められるということですね」
ベストな環境で臨もう
「オンライン面接の環境についてお聞きしたいんですが、よくやりがちなミスってありますか?」
「オンライン面接でよく使われるのはZoomというサービスですが、面接専用ではないので、プライベートで使うこともありますよね?」
「そうですね。最近はオンライン飲みに使うことが多いかもしれません」
「ですよね? そのせいで、友達とリモート飲みをした時のまま……名前やアイコンがプライベートなものになっているミスはよく目にしますね。『しょうちゃん』とか、『みゆみゆ』とか……」
※写真はフリー素材です
「わ〜、それは見落としがちなポイントですね。『ブラキオザウルス』とか、ふざけた名前にしてたら印象悪いだろうな」
「プライベートでどんな名前を使うのも自由ですが、ちょっと引いてしまうかもしれませんね。Zoomの仕様をきっちり理解したうえで臨むことを心がけましょう。そこで減点されたらもったいないですしね」
「ちなみに面接ってスマホで受けても大丈夫なんですか? なんかPCのほうがキッチリしてる人に見られそうというか。『ウチの企業ならそのちっこいスマホで十分だと思った? ふ~~~ん』って思われそうだなと」
「考えすぎです。私の経験では6割がPCで4割がスマホという割合ですね。資料を展開するときにスマホで見えやすく調整している企業もあるので、どちらを使っても影響はないと思います」
「よかった。あとオンライン面接のネックとなるのが、回線状況だと思うのですが……」
「そうですね。できれば安定した有線接続が望ましいです。接続機器が多いと動きが鈍くなることもあるので、事前にしっかり確認しておきましょう」
▲友人とオンラインゲームをしていたときのやりとり
「私はポケットWi-Fiを使っているのですが回線が安定しないことが多く……。そういうときって、例えばマンガ喫茶みたいな回線が安定したところで参加してもいいんでしょうか?」
「『自宅じゃないとダメ!』と指定があれば別ですが、私はマンガ喫茶でも公園でもまったく構わないですね。よりよい環境で臨んでもらうほうがお互いにとってプラスなので」
「じゃあ志望する会社の玄関口でオンライン面接受けてもいいんですか?」
「う~~ん、回線が安定していれば……」
「会社の前で志望理由を大声で叫んだら『アイツ根性あんじゃん、採用!』って思います?」
「それは、“怖い”って思います」
カメラとの距離は75cmがベスト
「オンライン面接は画面映りも重要ですよね。何か気をつけたほうがいいことはありますか?」
「カメラの位置が悪くて下から見上げるように映っていたり、上からにらみつけるような形で面接を受ける学生は多いですね。カメラの位置で印象はかなり変わりますから、工夫したほうがいいと思います」
「いったいどうしたら!?」
「カメラの位置は目線と同じ高さがベストです。カメラとの距離はだいたい75cmを目安にするといいでしょう。近すぎず遠すぎずでちょうどいい距離だと思います」
「やっぱりカメラ位置は正面がいいんですか? 机の大きさによっては、斜め下からのアングルになってしまうこともありがちですが」
「正面がベストですね。そして大前提としてカメラやスマホを固定することを忘れないでくださいね。手持ちでやると思ってるより揺れて見えますから」
「安いミニ三脚みたいなものを買おうかな……」
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こういうタイプの三脚があれば、机がなくてもカメラが固定できる
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こういうタイプで、机の上の台や、モニターに固定しちゃうのもあり
「私は人の目を見て話すのが苦手なのですが、オンライン面接もやはりカメラ=相手の目を見てしゃべったほうがいいのでしょうか?」
「いえ、画面の中の相手を見ておけば自然な感じになります」
「よかったです。『オンラインでもカメラをしっかり見て話すのが大事』みたいなトンデモマナーが生まれていたらどうしようかと思って……」
「実際にカメラを見て話すと威圧感があって怖くなっちゃうんで、むしろまじまじと見ないほうがいいかも……」
カメラを見た場合はこんな感じに映る。自分の意見をゴリ押しして人の話を聞かなそうなやつに見えますね
「そして良い映像を撮るために必要なのが照明。でも一般家庭だと照明はだいたい天井にありますよね。必然的に顔が暗くなってしまうことって、あるあるじゃないでしょうか」
「そんなに極端に暗くなるかなぁ……?」
「なりますよ! 私の家は照明を調節しないとこんな感じなんですけど」
「サイコサスペンスの犯人? あまりにも暗い場合、最近では顔をきれいに見せるリングライトなども販売されているので、場合に応じて活用してみるのもいいですね」
「あ、YouTuberなんかが使っているやつですね」
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「次は音声の環境について聞きたいんですが、面接官の声を聞く時、イヤホンとスピーカーはどちらがいいですか?」
「家の周囲がうるさい場合、イヤホンのほうが音声を聞きやすいのでおすすめします。何度も『聞こえなかったのでもう一度』ってなると効率的じゃないですし」
「そりゃそうですね」
「ちなみに面接が始まる前に『イヤホンを付けてもよろしいですか』と一言聞くだけで面接官からの印象はぐっとよくなるはずです。印象って、そういうちょっとしたことで良くなったり悪くなったりするんですよね……」
「なるほど。では逆にこちらの音声を伝える時、ミュージシャンがレコーディングに使うようなマイクを使ったほうがいいんでしょうか」
「いえいえ、最近のイヤホンはマイクがついているものがほとんどなので、それで十分です。ただ、有線のイヤホンマイクを使っている方は注意すべきことがひとつあります」
「有線というのは、ブルートゥースのような無線タイプではなく、ケーブルでPCやスマホと繋がっているイヤホンですね」
「はい。有線のイヤホンを付けて身振り手振りすると、マイク部分が服に擦れてノイズになるんです。ですので、面接のときはピンでイヤホンマイクを固定しておくと、ノイズが入りにくいです」
「へ~! イヤホンの衣擦れノイズはかなりストレスになるので、この工夫をしていると他の志望者にアドバンテージをとれるかもしれませんね」
「回線もそうですが、どうすればお互いが気持ちよくやり取りができるかを考えるとよりいい面接になると思います」
オンラインと対面でマナーは異なる?
「対面の面接だと、多くのマナーがありましたよね。部屋に入る時のノックは3回とか、入室後は体ごとドアの方に振り返って扉を閉めるとか……。オンライン面接にも“ならでは”のマナーはありますか?」
「念の為、入室は5分前と考えてください。Zoomは会社側がトークルームを作成して、参加者からのリクエストを承諾しなければ会話できません。ギリギリに入ってあたふたするとお互い余裕がなくなります」
「結構早めですね。私は会社のZoom会議とかだと1~2分前くらいに入室してるんですが……」
「面接の場合は会議と違って『お互い知らない者同士』です。そして『採用者側か志望者側、どちらかがZoomに不慣れかもしれない』ですよね?」
「あ、なるほど。私の会社ではZoomを活用していますが、企業によっては普段あまりZoomを使ってない可能性もあるのか。その場合ギリギリに入ってあたふたした時のテンパり度は、会社の会議より大きくなりそうですね」
「その通りです。たった数分でお互いが心に余裕を持てるなら、効率的だと思いますよ」
「マナーと言えば、Zoomでも上座や下座などはあるのでしょうか? 最近『オンラインでもこういうマナーに気をつけよう!』みたいな意見を目にして、ホントかよ!? と思ったんですが」
「頭を下げたまま退室ボタンを押すとか、画像の位置が上だから失礼とか? そういうのは気にしないで大丈夫だと思いますよ」
「そうですよね。ないマナーを捏造して揚げ足を取る詐欺師どもめ……」
「何があったんだ」
「マナーの範疇に入るのかわからないんですが、オンライン面接だと上半身しか映らないですよね? 下はズボンを履かなくてもバレないのでは?」
「バレないですね。実際そういう人もいます」
「よし、これで完全に就活をナメてかかれる」
「ただ、何の得もない上に、何かのきっかけでバレた場合はマイナスにしかならないので、上下スーツが無難だと思います」
「何かのきっかけなんて、あります?」
「メモを取ろうとしてたペンを落として背後に転がってしまったとか……あと単純に面接官から『距離が近すぎるのでもう少し下がっていただけますか?』って言われたらアウトですよ」
「わかりました、ちゃんとズボンを履くことにします。他に服装で気をつけることはありますか?」
「自宅とはいえ、だらしない格好はNGです。髪やヒゲなどをさっぱりさせ、清潔な印象を与えましょう。オンライン面接だとずっと画面を見ているぶん、細かい点には気づきやすくなりますし」
オンラインならではの利点
「対面ではできないオンラインならではの利点もあると思うんです。例えば自己PRをカンペ見ながら話したり」
「一応できますね。でも目線で『あ〜カンペ見てるんだな〜』ってわかりますよ」
「えっ! バレるんですか?」
「かなりわかりやすいですね。他にもキーボードの打鍵音はけっこうこちらに聞こえているので、今言われたこと……例えば『アラ…イアン……ス』って調べてるんだろうな~って思いながら見守っています」
「じゃあカンペを画面の中央に置いておいて、消音キーボードにすれば解決ですね」
「そこまで用意する気概があれば素直に覚えたほうがいいでしょ」
「気になっていたんですがZoomって背景を好きに変えられるじゃないですか。面接でバーチャル背景を使用してもいいのでしょうか?」
「怖~! どうしても部屋を見せたくないなら仕方ありませんが、面接では『何かを取り繕おうとしてるんじゃないか?』と勘ぐられるようなことは、しないほうがいいと思います」
「この背景はやりすぎたかもしれませんが、実家住まいで自分の部屋がなくて、どうしても家族が映ってしまう、みたいな正当な理由があるなら、背景合成もやむ無しですね」
「やり過ぎてる自覚あるんだ」
「では自宅の壁に、志望する企業の社是や社訓を貼ったりしてさりげなく熱意をアピールするのはどうですか?」
「私だったら内容はともかく、そこまで弊社のことを考えてくれるんだなとまず熱意を評価します。あくまで私だったらね!」
「さらに一歩進んで、こういうのが背後の壁にかかってたらどうですか?」
「お父さんとお母さんの写真と、『落ちたら一家離散』というメッセージが書かれていたら……?」
「情へ訴えかける創意工夫がすごいので、私だったら素直に評価します。ただ、一般的には『こうまでしないと受からない実力なのかな?』と思われる可能性もあります」
「落ちたら一家がバラバラになっちゃうのに?」
「申し訳ありません」
「ちなみにこの人たちって、本当に神田さんのご両親ですか?」
「いえ、まったく知らないフリー素材の人たちです」
「……そうですか」
「オンライン面接は画面で見えるものが全てなので、刃牙の環境利用闘法のように使えるものは何でも使ってアピールしたほうがいいのかもと思いました」
「それは一理あります。面接がオンライン化したことでより行動力が可視化されるようになりました。攻めの姿勢であればきっと面接官も汲み取ってくれるはずです。神田さんのは明らかに間違った方向に攻めているとは思いますが」
「どの方向に攻めるか、今一度考えてみます。今日はありがとうございました!」
「はい。これを読んでいる読者のみなさんも、面接官を自分のフィールドに引きずり込むつもりで、どんどん攻めのアピールをしてみてくださいね」
まとめ
というわけで今回は佐川さんにオンライン面接についての疑問を伺いました。オンライン面接は自分の安心できる場所から参加でき、自分のフィールドで戦うことができるので、より積極的になってもいいのではないかと感じます。
最後に、
「もし私が就活生だとして、今日のオンライン面接で判断するなら、雇ってくれますか?」
と質問したところ、
「申し訳ありません。今後の健闘をお祈りいたします」
とのことでした。
架空のお父さん、お母さん、不甲斐なくてゴメンね……。
以上!
・本日のまとめ
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