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平成の腐女子座談会「共感してもらえると小躍りして喜びます!」

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平成の腐女子座談会「共感してもらえると小躍りして喜びます!」

みなさんこんにちは。突然ですが問題です。

 

 

 

すんなり「受け」と答えると「腐女子」認定される、あまりにも有名な「魔女狩りクエスチョン」です……って、私も初めて知ったのですが。(ちなみに普通に「守り」と答えました)

※ちなみにこの記事では腐女子=「BLを好む女子」くらいのユルい意味です

 

ヴィジュアル系オバンギャ座談会「若い頃と何が変わった?」

先日、ヴィジュアル系オバンギャ座談会という記事を書いた際、

・定額小為替を使ったチケット先行予約、超大変だった

・文通相手の募集欄、個人情報ガバガバ

みたいな思い出エピソードがたくさん出たんです。

 

そしたら、知人の腐女子から「昔のバンギャと腐女子、あまりにも文化が似てるんだけど!!」と興奮したLINEが届きました。

 

「自分の好みのBL作品をたくさん楽しむ」

平成の腐女子たちはそんな当たり前のことすら、ものすごく大変だったのだそう。

 

今回は、そんなBL沼にドップリ浸かった腐女子のみなさんに集まっていただき、「あの頃の腐女子事情」「現在と昔の違い」など語って頂きました。

 

 

▼登場人物紹介

※メンバー紹介の時点で腐女子以外にはわからない単語が続出しますが、そんなもんかなと思っていただければ幸いです。

 

ひにしあい(36)

筆者。腐女子の皆さんのお話を聞く人。BLという分野に全く興味を持たずに生きてきた。BL的な萌えポイントをよく理解していないがドラマ化などもされている「よしながふみ」作品は大好き

盲腸バレさん(31)

小5にして早くも腐落ち。幼少期から「ハンターハンター」の「クラピカ総受け」推し。学生時代は「クラスの男子同士の絡み」に萌え、こっそり小説を執筆。盲腸で緊急入院時に、どうしても読みたくて届いたばかりの新刊を持ってきてくれと頼み親バレした過去を持つ

BLテロリストさん(31)

フォークやナイフの無機物も旦那も全てカップリングの対象にでき、どんな作品にもBL要素を見出せるテロリストのような人。中1で同級生に見せられたNARUTOのアンソロ本から腐落ち。最近は「おそ松さん」沼にどっぷり。(推しは十四松で薄い本は200冊購入)松本テマリ先生が好き

金髪系推しさん(30)

中2で友達に即売会に連れて行かれ腐落ち。「封神演義」の「普賢」以来、「金髪系」「髪の毛跳ねた系」にめっぽう弱い。高河ゆん先生に後からハマり当時の同人誌を手に入れるのに半端ない金と時間をかける。完璧な攻めだと思うのは志水ゆき先生作「花鳥風月」の「陽明」

 

昔は同人誌を手に入れること自体がめちゃめちゃ大変!

「今日はよろしくお願いします! みなさん全員が30歳くらいですが、若い頃から腐女子沼に浸かってたんですよね? BL本はコミケとか電子書籍で手に入れてたんですか?」

「電子書籍でBLなんて当時は一般的ではなかったですね。そしてコミケは年に2回しか開催されないし、そもそも地方に住んでる学生だと行くことすら難しい『憧れの地』でした」

 

「だから昔は、自分の性癖に合う本を手に入れるのってすごく大変でした」

「そんな時代だったから、地方で行われるオンリーや即売会に行くのがものすごく楽しみで」

注:「オンリー/オンリーイベント」=特定のアニメやキャラ、カップリングに特化した、同人誌即売会やイベントのこと

「私は初めて行ったオンリーが『シャーマンキング』で、修学旅行の日程とかぶりそうでビクビクしてましたね。絶対に行きたかったんで、最悪 修学旅行を休もうと思ってました」

「そこは修学旅行を優先してよ」

「その時に買ったカタログがこれ。カタログ自体に価値はないんだけど、嬉しすぎて今も保管してる」

 

「わー私も持ってた! 懐かしい!!」

「15歳からホロリザーとして生き、もう17年経ったよ…来年の新作アニメ化が楽しみすぎるよ……」

※「ホロリザー」=『シャーマンキング』に登場するキャラクターであるホロホロとリゼルグのカップリングを好む人のこと

 

 

「『好きなものを買う』っていう、今だと当たり前のことが昔は難しかったんですね」

「だって同人誌を入手する手段が今より圧倒的に少ない……いや、今と比較すると無いと言っていい状況だったんです。だから、ペーパーを取り寄せて、『小為替通販』でグッズや同人誌を買うんです」

 

「気になる単語がいくつか出てきましたが、まずペーパーというのは?」

「『同人ペーパー』のことですね。同人誌を作ってるサークルが、活動に関する情報を載せたチラシです。購入してくれた人に配ったり、イベントのブースに置いて自由に持ち帰ってもらったりするんですよ」

「ペーパーには『次回はどこでやりますよ』とか『こういう本を通販で売ってますよ』みたいなことが書いてて、だから本を買うためにまずペーパーを手に入れたいわけです」

 

「『ファンロード』(二次元創作情報誌)に載ってる通販受け付けとかを調べて、作家さんから在庫のペーパーを取り寄せてた」

「欲しい同人誌の価格分、定額小為替を郵便局で買って、80円切手付き返信用封筒と宛名シールを封筒に入れて送るんですよ」

「定額小為替! 私もバンドのチケットの先行予約に使ってた! でも、80円切手付き返信用封筒はなんのために送るの?」

「目当ての同人誌が売り切れていた場合に、送った定額小為替を入れて返信用封筒で送り返してくれる仕組みなんです。アナログならではだよね」

 

こちらは同じく二次元創作情報誌のひとつ、『ファインド・アウト』なんですが……

 

小為替通販に関する初心者向けレクチャーページが親切すぎてすごい

 

お手紙のテンプレートまで完備。例文のフォントがかわいいですね

 

「色々なハードルを乗り越えて本を注文できたとして、実家に住んでる時はどうしてたんですか? 家族と共有のポストに、エッチな内容の本が送られてくるってこと……?」

「そう!!! だから朝も晩もポスト前に張り付いて、届いた瞬間に回収してた。親バレは本当にしたくなかったから、必死だった」

「そして手に入れた本はバレないように巧妙に隠してた。大変だったな」

 

エロ本隠してる中学生男子と同じだな……。私はビジュアル系が好きだったんですが、苦労したのはチケット代とかCD代といった金銭面でした。みなさんも当時は苦労したのでは?」

「同人誌は1冊500円くらいのものだし、たくさんは買えないけど、それなりにお小遣いの範囲でも楽しめたんですよ」

「たしかに、単価は安いのか……」

「それよりもすごく大変だったのは有害指定図書扱いの商業BLや、18禁BLゲームが買えないこと。年齢制限に引っかかるから」

「わかるなあ……」

「心底わかる。お金があろうと、どんなに努力しようと、絶対に手に入らないものをただ眺めるというのはつらかった」

「18歳の誕生日に、どうしても欲しかったBLゲームを秋葉原の『メッセサンオー』に走って買いに行ったことは忘れません」

※メッセサンオー=かつて秋葉原に存在した、テレビゲームや同人ゲーム、アニメソフトの販売店

「JR東海のシンデレラ・エクスプレスっていうCMがあって、牧瀬里穂が走って恋人に会いに行くシーンが有名でしたが……そんな感じ?」

「走った先で買ったものはBLゲームでしたが、そんな感じです」

クリスマス・イブ クリスマス・イブ

 

好みのカップリング作品にたどり着くのも一苦労

幽☆遊☆白書 02 蔵馬&飛影 キャラパス 幽☆遊☆白書 02 蔵馬&飛影 キャラパス

「当時、推しカプの作品を見つけたりすることはネットでできたの?」

「いやいやいや……(笑)」

「そもそも、そういうサイトが全然なかった」

『pixiv(ピクシヴ)』なんてもう発明! 最初に知った時は震えたもん。あれはエジソンが作りました」

pixiv=イラストや漫画を中心にしたソーシャル・ネットワーキング・サービス

「腐女子にとっては電球レベルの発明ってことか………」

「今は、『pixiv』や『とらのあな』、そして電子書籍なんかを検索すれば、好みのカップリングの作品を見つけることがすごく簡単になった。昔はそれが一番大変だったんですよね」

「そっか…じゃあ、昔はどうやって好みのカップリングの作品を見つけていたの? 謎すぎる」

「ネット上の『●●同盟』をひたすら辿るんですよ。そこでお気に入りを見つけたりしてました」

「同盟?」

「個人ホームページの管理人たちが、同一のカップリングや、キャラ、属性を愛する人たちとリンクを張ってたんです。例えば『幽遊白書』の蔵馬×飛影が好きな管理人は、蔵馬が好きな人のHPや、飛影受け属性のHPとリンクし合うわけです」

「“蔵馬大好き同盟”みたいなチカチカするバナーを貼ったりしてね。同盟参加者の一覧ページとかから、自分の好みに合いそうなリンクを辿って辿って……

 

 

「??? 単純に『蔵馬攻め_飛影受け_BL』とかでググればいいのでは? だめなの?」

「当時の腐女子は、誤ってノーマルな人がBLのイラストを見なくて済むように、検索配慮がすごいんですよ。『ダミーエンター』とか『検索よけ』とかみんなやってたから、ググッても検索結果に表示されなかった

 

「サイトのタイトルを『シ/ャ/ー/マ/ン/キ/ン/グ』みたいにしてたり、暗号を解読しないとサイトに入れなかったりね」

「検索エンジンに登録されないようにHTMLソースに『nofollow,noindex』とかみんな入れてたよね」

「『nofollow,noindex』を腐女子の多くが知ってるとか初めて聞いたわ。同志(腐女子)にはできるだけ見て欲しいけど、そうじゃない人にはできるだけ見せないようにしてたのね。そりゃあ同盟リンクを辿りまくるしか方法ないね」

 

ちなみに個人ホームページにはこんな流入元もありました。雑誌に自分のホームページを紹介するコーナー

 

「ネットの個人ホームページだとさ、よくアクセスカウンターでキリ番をとるとリクエストで絵を描いてもらえるって文化があったじゃん?」

「あったあった」

「好きな作家さんのサイトのキリ番付近はめちゃめちゃ張り付いてリロードしまくってたなあ……」

「気持ちは痛いほどわかる」

「好みのカップリングといえば、最近、Twitterなどで腐女子の方が、地雷(自分の好みではないカップリングや表現)を見たくない! という気持ちが強すぎて『ミュートワードが追いつかない』とぼやいてました。これは昔から?」

「昔はそうじゃなかったんですよ。今はあらかじめ好みのカップリングがカテゴライズされてたり、検索の仕方で好きな属性だけとか、自分で選べるけど」

「昔はそもそも同人誌を手に入れるのが大変だったし、アンソロ本が多かったから。『地雷』なんて言ってたら自分の性癖の作品にたどり着くこともできない感じでしたね」

 

盲腸バレさん所有の当時のアンソロ本

 

「例えば、私は『ハンターハンター』で一番好きなカップリングは“キルクラ(キルア×クラピカ)”だったの。でも当時は全然需要がなくて、『レオクラ(レオリオ×クラピカ)』ばっかりだった」

「ほうほう」

「とはいえ、手に入る本が少ないから買っちゃうわけよ。そもそも昔のアンソロ本ってカップリングがごった煮状態で……だから、自分の性癖以外の作品に対しても耐性はすごくついたんだよね」

「ほんとそう。そのおかげ?なのか、わたしゃ見事に雑食で大食漢になったよね(笑)」

「わかるーーーーー!」

「全くわからんけど、昔の腐女子は胃腸が強いってことはわかった」

 

 

文通相手募集は個人情報ガバガバだけじゃない

「自分と趣味が合う人はどうやって探してたの? 文通やネット掲示板の文化は存在した?」

「『ファンロード』とか『ぱふ』、『アニメディア』に文通相手募集欄があって、そこで共通の性癖の人を見つけて文通したりしてたなあ……懐かしい…」

「私、バンギャなんですけどそれ同じようなことやってたなあ。でも我々は『好きなバンド』とか『メンバー』とか書いて同志を探してたけど、腐女子の場合はどんな内容で募集するんですか?」

 

「自己紹介とカップリング傾向…つまり、自らの性癖を書いて、あとは住所って感じですね」

「冷静に考えたら住所と性癖って……この世で一番一緒に並べてはいけない情報だよね」

 

 

この世で一番並んではならない性癖と住所の宝庫である文通募集

 

「確かに。恐ろしすぎるものを全国に大公開してたんですね…」

「文通では好きなシチュエーションの妄想をひたすらやりとりしてました。文面は、『●●が▲▲して●●がもう◇◇みたいになっちゃう……ってこんな妄想ばっかりしてます。お目汚し失礼しました!』的なのが多かったです」

『お目汚し失礼しました!』 めちゃ使ってた〜〜〜!!!」

 

「あー、そういうよく使ってた用語とかすごいありそう」

『~~してもらえると小躍りして喜びます!』とかね」

「めちゃ使ってた〜〜〜!!!」

「全然わからない……」

 

年々感じる「深刻な攻め不足」

「最近は検索も便利になったし、本も買いやすくなった。大人になったから昔よりお金も持ってますよね? 今、みなさんを悩ませている問題ってありますか?」

「私はもう年を追うごとに、『深刻な攻め不足』に悩まされていまして……」

「超ーーーーーーーー絶わかります!」

「ありすぎる」

 

「ちなみに、これまでの歴史で代表的な『攻めキャラ』っているんですか?」

「うーん……みんな受け……だよねえ」

「そんなことある!? ハンターハンターで言うと、一時期『レオクラ(レオリオ攻め、クラピカ受け)』ばっかりだったって、さっき言ってましたよね? じゃあレオリオは攻めキャラじゃないの?」

「は?」

「この人わかってない……」

「レオリオもヒソカと組ませたら受けでしょうが!」

「知らんがな」

「実際、『総攻め』という概念は難しいんですよ。腐女子的には、いかにも攻めなキャラが受けに回っちゃうってのも萌え上がるポイントだったりするから」

「じゃあ、『総攻め』じゃないにしても、『攻め力』が高いキャラとかはいるの?」

「うーん……あ! アニメだと声優の森川智之さんが声を当ててるキャラは『攻め』ですかねえ」

「森川智之さんといえば、『トムクルーズの吹き替え』、『ジョジョ4部の吉良吉影』、『NARUTOの波風ミナト(四代目火影でナルトの父)』……あーなんとなくわかったかも」

 

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「森川さんは『BL界の帝王』だから。攻めの声ばっかり担当してるんですよ」

「そう思ってるのは腐女子だけでしょ!」

「いえ、ご本人もそれを自負しておられるフシがあります。声質が基本的に『攻め』なんですよねえ」

「そんなこと言われたら、次からCV森川さんのキャラを見る時に、変に意識しちゃうじゃないか……」

 

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「最近の悩みというと、BLにもコンプライアンスの波が来ていて……」

「え、どういうこと?」

「例えば、『借金のカタに受けが売られていく話』とか『石油王が出てきて受けを蹂躙する話』とか、昔は金でなんでも解決するような作品が多かったんですが、今は減りましたね」

 

「その代わり、最近だと『スパダリ』ものが本当に増えましたね」

「たしかに!!!!」

「『スパダリ』って何?」

「『スーパーダーリン』って意味で、マメで気遣いができて、顔がいいキャラのこと。『●●くんがスパダリすぎる!』みたいに使うこともあります」

「石油王が減り、スーパーダーリンが増えた……なんかすごい話だな

 

 

いやなことがあっても「推しカプ」がいる!

さて、みなさん腐女子に目覚めて20年近くたつと思うのですが、最後に『推しが居て良かった……!』『生きていくのにBLが糧になった』みたいなことがあれば教えてください」

「普段からBLは買ってますが、私は特に失恋から立ち直るためにBLを爆買いします。『推しの方がつらい恋愛をしている』『私の代わりに推しが幸せになったなら幸せ』という気持ちになれて、元カレの顔を忘れます」

「そんな効能が……! では続いてBLテロリストさんの意見を教えてください」

「頭の中は、常に数パーセントが『推しカプ』のことで占められています。どんなに嫌なことがあっても、悲しいことがあっても、『推しカプ』のことを考えれば幸せな気持ちになるので、生きていく上でもはや無くてはならないものですね」

 

「自分もヴィジュアル系を愛し続けて、心の拠り所があるのは生きていく上で強いな…と思ってたけど、やっぱり変わらず愛せる趣味がある人はどんな分野でもなんか生命力が違うな」

「もう約20年も腐女子やっているので、生活に密着してて、自然に思考やお金の使い道がそっちに向いてしまう感じ。腐女子でない自分は考えられないです」

「なるほど。では続いて金髪推しさんの意見は?」

「中学生から腐女子だけど、社会人になってからBLが一層心の支えになってる気がします。仕事が忙しすぎて死にそうな時に、『週末には新刊買える』とか、『頑張って仕事して財力つけて即売会にのぞむぞ!』とか」

「その気持ちは恐ろしいほどわかる」

自分を鼓舞するのに必要不可欠になってますね。BLは私の中でファンタジーなので、トリップしやすくて、脳を休めるイメージです。今も日々、会社の行き帰りにpixivを読むことで安らぎを得ています」

「三人とも、今日は貴重な意見をありがとうございました。お互い身を持ち崩さない程度に趣味を楽しみましょう!」

終わりに

今回は平成を駆け抜けた腐女子にお話を伺いました。

もっと前の時代から腐の道を生きた方も、最近沼にハマった人も、困りごとがあったり、時にそれぞれの文化間で戦争が起きたり……世代は違えど直面する事柄は時代を超えるなあ、としみじみ感じた座談会でした。

 

ちょっと隠してたような趣味の話を、吹っ切れた年齢になってなった今、わかりあえる同志たちと盛り上がるのはくっそ楽しい!

それでは、読んでくれたみなさま、共感してくれたら小躍りして喜びます!


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