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「最後にゲームクリアしたのいつだっけ?」状態の積みゲー常習犯は、5時間で終わるインディーゲームをやろう

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「最後にゲームクリアしたのいつだっけ?」状態の積みゲー常習犯は、5時間で終わるインディーゲームをやろう

学生時代はヒマさえあればゲーム三昧だったのに、仕事を始めてからは、おもしろいゲームを買っても、クリアせずにただただ積み上がっていくばかり。

 

スマホのソシャゲにもちょこちょこ手を出すけど、ここまでプレイすると終わりというポイントがないので、だらだらと続けてしまう。

あれ、最後にゲームをクリアしたのって、いつだっけ……?

 

ライターの森ユースケです。インターネットを通じて個人でもゲーム販売ができるようになったいま、面白いゲームが無限に存在するといっても過言ではありません。さらにここ10年ほどで、いわゆる「インディーゲーム」と呼ばれる個人制作のタイトルがメガヒットとなる事例も増加しているらしいんです。

 

在宅勤務が増えて少し時間の余裕ができたので、久々にゲームでもやろうか……なんて思っても、素人にとっては、もはやどれからプレイすればいいのかすらわからない。

 

誰か、オススメ作品を教えてくださーい!

ということで、世界のゲーム事情に詳しい人物に話を聞くことに。

 

こちらは「ゲーム編集者」として、クリエイターと二人三脚でゲームづくりに携わる斉藤大地さん。

『ロードス島戦記』『新世紀エヴァンゲリオン』『東方Project』といった、超人気作品を原作にしたゲームをつくったり、手掛けたオリジナルゲーム『殺戮の天使』は漫画化、アニメ化もされる大人気IPに成長させた実績を持っています。

※IP……ゲーム業界では他メディア展開されるタイトルを指して「IP」と呼ばれる。

 

エヴァンゲリオン公式アプリ『EVA-EXTRA』内でプレイできる無料のミニゲーム『ペンペン南極大冒険』

 

彼の経歴も、また異色。新卒で「ニコニコ動画」などを運営する株式会社ドワンゴに就職。2018年には31歳の若さで、『エヴァ』監督・庵野秀明さん率いるスタジオカラーとドワンゴの共同出資で設立された株式会社バカーの代表に就任。

 

2019年からゲーム編集者として活動している斉藤さんですが、ゲームメーカーに勤務した経験もなく、ゲームづくりを始めたのはここ6年ほど。なのになぜ、これほどビッグタイトルに絡んだ仕事を手がけることが可能なのか。

 

というか、そもそも「ゲーム編集者」って聞いたことないけど、どんな仕事なの?

あと、庵野秀明さんが当時31歳の若者に出資ってすごくない? どういうこと?

 

高クオリティな作品が増えているというインディーゲーム市場をとりまく動向や、オススメの作品、ゲーム編集者の仕事の役割などについて、話を聞いてみました。

 

※取材はオンラインで行いました。斉藤さんの写真は本人提供(奥さま撮影)です

いま、インディーゲーム業界がアツい

「ゲームメディアで少しだけ仕事をしているのですが、周囲の人たちが『おもしろいインディーゲームがめちゃめちゃ増えてる』と、よく言っているんです。正直、ぼくはこれまで超メジャーなメーカーのゲームしかやったことがなくて。そもそもインディーゲームってどんなものを指すんでしょうか?」

「言葉の定義については常に議論が起こっているのですが、基本的には同人サークルのような、個人または少人数でつくられたゲームのことだと思っておけば間違いないと思います」

「そのインディーゲーム業界が、すごく盛り上がっているとか」

「そうですね。2010年代に入ってから徐々にユーザーが増え始めて、2015年あたりから特に盛り上がっているように感じます。現在ではミリオンヒットする作品もそう少なくはありませんし、インディーゲームも多く集まるPCゲームのプラットフォーム『Steam』では、2019年だけで8396本の新作がリリース(※)されたほどです」

※参照:https://automaton-media.com/articles/newsjp/20200106-110251/

 

「今年3月には、同時接続オンラインユーザー数が集計開始後に初めて2000万人を超える(※)など、世界中にとてつもない数のユーザーが存在しているのが現状です」

※参照:https://www.4gamer.net/games/038/G003821/20200324092/

「同時接続で2000万人って、サーバーの負担がやばそう……。業界全体がここまで盛り上がった理由はどこにあるんですか?」

「Steamについては、違法コピーと戦い続けたことによると思います。インディーゲームが増えたのは、制作ツールが進化して、個人や少人数でもゲームをつくることがより簡単になっていったことがあるでしょうね。

あと、個人的には2000年代後半からゲーム実況という文化が生まれたことも大きいと思います」

 

人気ゲーム実況者のひとり・キヨさんの動画。Youtubeのチャンネル登録者数は260万人を超える

 

「当時はいわゆる家庭用ゲームの大作とインディーゲームの動画が、ネット上でのPV数だけ見ればそこまで変わらない状態でした。日本以外のゲーム実況の盛り上がった時期は詳しくはわかりませんが、PR機会の少ないインディーゲームにとっては、かなり大きな知ってもらう手段だったはずです」

「ゲーム実況が盛り上がり始めた当時、大学生だったので、人気動画のランキングをよくチェックしてました。たしかにフリーゲーム含め、インディーゲームをやる実況者が多かったですよね」

「ゲーム実況をするためには、もちろんゲームが必要です。まず人とネタが被らないように、面白いゲームをどれだけ発掘できるか、という競争が働きます。さらに、おもしろい動画をつくるためには、尖った企画のゲームの需要が高まっていく」

「ふむふむ」

「インディーゲームは、個人ないしは少人数でこだわりを持って制作されることが多いので、基本的に尖った企画が出てきやすい。そして、ネットでは完成度よりも尖った企画が受けやすい。

業界の盛り上がりは、こういった理由が重なった結果だと思いますが、ゲーム業界そのものが、じつはインディー的に始まったカルチャーなんですよ

「え、どういうことですか?」

「たとえば『ポケットモンスター』をつくったゲームフリークは、もともと同人サークルに近い小規模な組織でゲームをつくっていました。

『ドラゴンクエスト』にしても、当時はまだ大学生だった中村光一さん、フリーライターだった堀井雄二さんに、『ドラゴンボール』連載中だった鳥山明さんが合わさって制作していますから」

「大学生やフリーライターが関わったゲームが世界的コンテンツに。たしかにインディー的ですね。知らなかった……」

「ファミリーコンピュータやゲームボーイまでの時期は、いろんな種類の会社がソフト開発に参入していたんです。でもハードのスペックが上がっていくことで、新規参入が難しくなっていった。そして現在のように、大手メーカーのソフトが多くを占めるようになっていったという経緯があります」

「一方でコミケなんかでは、めちゃくちゃ売れる同人ゲームがあると聞きます」

 

アニメ化もされた人気スマホゲーム『Fate/Grand Order』

 

「スマホゲームのなかで最も当たったもののひとつ、『Fate/Grand Order』の『Fate』シリーズも、もとを辿れば同人サークルだった『TYPE-MOON』の成人向けPCゲームから始まっています。『東方Project』なども含め、インディーゲームが世界的なヒットを生んでいる伝統があるのが日本という市場です

その意味では、小規模なチームが強いこだわりを持ってゲームをつくるケースが増えている現在は、ある意味でゲーム業界の“原点回帰”が起こっているといってもいいかもしれません」

 

少人数だからこそ、尖った作品が生まれる

「インディーゲームの大ヒット作って、どんなものがありますか?」

「トビー・フォックスさんがつくった2DのRPGゲーム『UNDERTALE』は、いま一番有名なインディーゲームのひとつといえるでしょう。2015年にリリースされ、即ミリオンヒット。『MOTHER』や『東方Project』など日本のゲームの影響を公言しているクリエイターさんです」

 

「誰も倒さなくていいRPG」を謳う『UNDERTALE』(画像はSteamのページより)

 

「ひとりでつくったゲームがミリオンヒットとは、夢がありますね」

「最近では、インディーゲームの作り手のなかでも、もはや普通にゲームメーカーでは?と思える規模に成長した会社もちょこちょこ出てきています。そのなかでも尖りを失っていないと評判なのが『11 Bit Studios』。

彼らの出世作は『This War of Mine(ディスウォーオブマイン)』というボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が舞台のシミュレーションゲームでした」

 

(画像はSteamのページより)

 

「1992年のサラエヴォ包囲で、戦火に見舞われた無力な一般市民として、なんとか生き残るのが目的。食料や医薬品が不足して、狙撃兵や略奪者からの襲撃に怯える……といった、戦争の疑似体験ができるゲームです。アンネの日記のゲーム版といったらわかりやすいでしょうか

「めちゃめちゃヘビーな内容だな……。海外のゲームって、たまに戦争をテーマにした作品がヒットしますよね」

「そうですね。最近すごいと思ったのは、『My Child Lebensborn(マイ・チャイルド・レーベンスボルン)』です」

 

「レーベンスボルン」とは、第二次世界大戦中、ナチス党員男性とナチスが認めた女性との出産を支援するため、実際に欧州各地へ設置された福祉施設。ゲームでは、戦後まもないノルウェーが舞台となる(画像はSteamのページより)

 

「こちらも史実をネタにしたゲームで、ナチスドイツ兵の子どもを養子にとった両親として、迫害を受ける子どもを育てていくシミュレーションゲームです」

「これもまたヘビーすぎる設定! 日本では、ゲームはエンタメど真ん中としての位置づけなので、とても新鮮な気持ちになりますね。こういうのもアリなのかと」

「欧米ではドキュメンタリーや評論の伝統が強いし、ドキュメンタリー映画が大ヒットすることもある市場です。僕もそこまで詳しくありませんが、欧米では『ゲームもメディアのひとつである』という意識があって、硬派な企画でも需要があるのかもしれません

「インディーゲームで特に人気なのは、どんなジャンルですか?」

「一時の流行から人気ジャンルに定着しつつあるのは、『Minecraft』から始まったクラフト系や、『PUBG』などサバイバル系。そのほかでは、探索型アクションゲームの『メトロイドヴァニア』というジャンルや、ノベルゲームは根強い人気がありますね」

「ここ最近、流行り始めたジャンルってありますか?」

最近は、ボードゲーム的な要素のある作品が増えているかもしれないですね。その筆頭が、ローグライト(※)とカードゲームを合わせた『Slay the Spire(スレイザスパイア)』です」

 

※ローグライク……RPGの一種で、自動生成されるダンジョンを探索するゲーム。日本では『風来のシレン』『トルネコの大冒険 不思議なダンジョン』シリーズなどが有名。厳密にいえば言葉の元になったゲーム『ローグ』のようなマップ探索的なものを指し、自動生成の要素を含むゲームについては「ローグライト」と呼称されることが多い。

 

『Slay the Spire』(画像はSteamのページより)

 

「2019年1月にフルリリースされて、この年のインディーゲーム業界の話題をかっさらっていった作品です。ゲーム好きはみんなこの話ばかりしていたし、この作品の影響を受けて制作されたゲームも非常に多いです」

「戦闘シーンやカードのデザイン含め、すごくよく作り込まれてますね」

「そうなんですが、よく見ると工数を減らす工夫はそこかしこにあると思っています。そもそもローグライトなので、フィールドのビジュアルを作り込まなくて済む。物理的な空間をつくると工数が跳ね上がるので、マップとテキストで処理するアナログゲームに近いデザインが非常に流行っているんだと思います」

「インディーゲーム業界では、表現がそこまでリッチじゃない作品がメガヒットすることもあるんですね。最新ハードの大作とは違って、画質、映像の綺麗さが本質ではないというか」

「もちろん見た目はいいほうが当然売れるんですけど、3Dの世界の作り込みを追求し始めるときりがないので。

ゲームデザインに関して、2Dと3Dでゲーム性自体は変わらないジャンルも多いと思います。それこそ、漫画を読んでいるときは紙に印刷された絵とセリフで感動できるじゃないですか。極端な話、棒人間をつかって泣ける話を書くことは可能ですし」

 

「あと、映像にこだわり抜くと、ハリウッドの大作映画をつくるのと予算が変わらなくなってくる。そうなると関わる人の数も増えて、当然、絶対に当たる企画じゃないと実現しないので、企画が丸くなっていく。

大勢でつくるには、大勢で完成形を共有する必要があるし、よっぽど独裁的な天才監督がいないと、尖った作品はできないと思います」

「その意味ではインディーゲームは少ない人数でつくるからこそ、尖った作品が生まれやすい点がプラスに働いているわけですね。大勢のスタッフでつくるテレビ番組と、数人でつくるラジオ番組の関係に似ているかもしれません」

「そのとおりだと思います。インディーゲームを好む人は、リッチな表現よりも、尖った発想やこだわり、普通のゲームではできない体験を求めている。そして、それがひとつの国の市場ではニッチな需要だとしても、全世界を見ればユーザーが多く存在しているんです」

 

エヴァのゲームを生んだ、庵野監督との出会い


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