こんにちは〜!株式会社人間の木の精、もとい生粋の関西人・社領エミです!
突然ですが、そこの関西人の皆さん。
この声を聞いたことはありませんか?
うわ〜〜〜〜〜〜!!!! 聞いたことあるで! 聞いたことあるで!
って思った方、多いのでは!?
そう! この声、関西人ならほぼ100%知っているはず!
テレビ番組を中心に活躍されているナレーター、
畑中ふうさんのお声です!
漫才コンテストM-1グランプリではVTRのナレーションも担当されているので、関西以外でも声を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。
実はこのお方、関西圏では定番ローカル番組を余さず並べて全部ナレーションをしたと言っても過言ではない程の、えげつない経歴の持ち主!
まさにこの方のお声は、関西圏のテレビスピーカーに染み付いているのであります〜!!
実はかなりの声フェチの私。
かねてから、
「この良い声はいったい誰なんだ…!?」
「もしかしたら佐々木蔵之介のような、くせ毛を斜め分けにした髪型が似合う爽やかイケメンなのでは…!?」
と思っていたのですが…
ついに! 縁あって取材をすることが叶いました! やったー!
ということで、やって来ましたは大阪府内の某ビル!
とある控え室で、待望の…
畑中ふうさんとご対面です!!
「ギャ〜〜〜!!!! ええ声〜〜〜〜!!!!」
「思ってたのと全然違う髪型につい注目してしまいまして…ともかく、今日はよろしくお願いいたします〜〜〜!」
「失礼やなホンマ! よろしくお願いします。」
ということで今回は、関西人にとって『顔も名前も知らんけど知ってる中で一番ええ声No.1』に輝く畑中さんに突撃インタビュー!
20余年ものあいだ、関西ナレーター界のトップランナーであり続ける理由とは? そのヒントは畑中さんの『挑戦し続ける姿勢』にありました。
ナレーションの極意から、撮影の裏話まで! コテコテ関西弁で根掘り葉掘りお聞きしたいと思います!
関西のローカルTV番組の帝王・畑中ふう
「畑中さん、関西人として今更聞くのもなんですが、簡単な自己紹介をお願いします!」
「はい! 畑中ふうと申します。主に、関西のローカル番組を中心にフリーでナレーター業をしています」
「ありがとうございます! あのですね……MUSIC EDGE!! めっちゃ好きでしたー!!」
MUSIC EDGE -osaka style-
大阪のローカル局毎日放送にて2001年から14年間放映した深夜の長寿音楽番組。関西にゆかりのあるアーティストの他にも、新人から大御所まで数々のゲストが登場した。
パーソナリティであるU.K.とジョンさんの大阪ならではの和やかな雰囲気に惹かれ、多くのアーティストが何度も出演していたのが特徴! 関西人の音楽観はこの番組に培われたと言っても過言ではないぞ!
「あれはいい番組やったねー。素の槇原敬之なんてあの番組でしか見れんかったと思うよ」
「U.K.さんとジョンさん今でも好きだし、あの番組でaiko大好きになりました! アーティストの人柄の良さがモロに伝わる番組でしたもんね。番組終了が決まった時の、U.K.さんのあの涙……あれ、大丈夫? 関西以外の人ついてこれてますか?」
「ついてこれてないんちゃうかなぁ」
「とにかく! 畑中さんは、関西人のユーモアを育てたお茶の間番組のナレーションに数多携わるスゴい人なんです!!」
職を転々とし、結果オーライでナレーターへ
「そんな畑中さんですが、どうしてナレーターになろうと思ったんですか?」
「うーん、結果オーライって感じやな」
「え!? 最初はなりたくなかったってことですか?」
「おおもとのきっかけは、大学で入った放送部かなぁ。最初はテレビの制作側に興味があったんやけど、たまたまアナウンスをやり始めて興味を持って…。卒業後は競輪競艇の代理店での実況の仕事に就いたんやけど、このままではアカンと思い上京して、タモリさんの弟子になろうと思って…」
「タモさんの弟子に……?」
「でも結局根性なくて…というか、ビビってしもて止めたんやけどね」
「めっちゃ気になるぅ〜〜!!」
「そのあと、演劇とか色んな芸事をしながら29歳まで東京をブラブラしてたんやけど、年齢的にも『飯を食べれるようにならなあかん』と思って大阪に戻って。紹介してもらった事務所で2年だけ声のお仕事をして、そのあとフリーになった。そのまま26年仕事して、今に至る…って感じかなぁ」
「経歴がかなりバリエーションに富んでらっしゃいますが、どうして“ナレーター”というお仕事を選んだんですか?」
「わからへんのかい!」
「事務所時代は結婚式の司会の仕事とかもやったりしたけどなぁ。したけど……結婚式の司会って、当時の俺には全然おもろなかったんや……」
「えー! 人のめでたい結婚でしょ?そんなにおもろないもんですか?」
「うん。しかも、ホテル側には当然やったんやろうけど、司会って式場の表玄関から入ったらアカンとかいうルールがあったりして、いろいろと裏方扱いされるんよね。でも俺はそれがなんか嫌でずっと無視して表玄関から入ってて…そしたら…」
「戦士やな…」
「そんなこともあって、『自分って何なんだ?』って悩んだ末に、『名前のない裏方でなく、自分の名前で食べていけるようになりたい』って強く思ってん。そこで俺にピタッとハマったのが“ナレーター”って仕事やったんやと思う」
最高のナレーションとは「忘れられるもの」
「畑中さんがフリーになった理由がめっちゃわかる気がします。今、フリーのナレーターをやっていて、どうですか?」
「絶対オススメせぇへんよ!」
「えー! それはなんで!?」
「まずナレーターでフリーなんてそうそうおらんし、業界的にも大変やで。今は声優になりたいとか云々の子が多くて、若い子が沢山この業界に進んで来るけど、みんながみんな食えへんもん!目立つのは一握りなんて言わん、ひとつまみくらい。『おいで』なんてよー言わんわ!」
「厳しい業界なんだ。別の仕事をしたいと思ったことはないんですか?」
「それはずっと無いな。26年間ずっと。『語りの表現をどこまでできるか』っていうのが俺のテーマやし、何かを残していきたいとは思い続けてるよ」
「畑中さんほどのベテランでもまだまだ表現を追求し続けてるんだ…!」
「危機感も常にあるよ。終わるのが当たり前のテレビ業界やから、次の準備っていうのはいつも進めてるし、いつも自分の価値をみんなに解ってもらえるように行動してるつもり」
「価値…」
「タイミング良くアンパン買ってきたりとか…?」
「現場のパシリちゃうわ! そうやなぁ、ナレーション自体の価値って何やと思う?」
「うーん……映像に声を吹き込んで、映像の表現力を増やすこと?」
「近いなぁ。俺は『命を吹き込むこと』やと思ってる。音の無い無機的な映像が、俺らの声や語りが入ることで有機的になるということ。あとは、ナレーターの良し悪しで価値の重みが変わるなぁ」
「ふむふむ」
「一番良いナレーションっていうのは、気持ちや意味が語りで伝わるのに、決して前面に出て来ないものやねん。観てる途中は語りに引き込まれて内容を理解するけど、観終わったあとは作品の内容だけを覚えてて、実は声や語りを忘れてる、それが一番腕のあるナレーターの仕事。だから、そこを極め続けることが俺の価値かなぁ」
「め…………め、め、めっちゃ難しそ〜〜〜!!!」
「めっちゃ難しいよ!(笑) だから、このインタビューで『俺の声は知ってたけど顔も名前もはじめて知った』って思った人、ある意味それは俺の本望やね。
腕の上げ方にもいろいろあるよ。ただ読むだけじゃなく、『人生の経験値』が豊富な方が伝わる度合いは増えるんちゃうかとも思ったりもするし…。ナレーターってほんまに、奥が深い仕事やと思うなぁ」
ナレーションに話術を取り込む
「さっきからお話してて思ったんですけど、畑中さんってなんでそんな声が良いんですか…?」
「なんでって(笑) 声変わりした時からこの声や!」
「さぞおモテになったでしょう!」
「そんなん知らんわ!」
「ええ声で口説いたりするんでしょ〜!?」
「いやそれが、やっぱり俺って関西人やん。」
「はぁ」
「俺が東京人で性格も落ち着いてたら、『次……何飲む?』とかそういう言い方でも良いけど…、大阪のバーでそんなん無理やろ〜!『次何するぅ〜!?』とかそういう言い方になるやん!」
「うわー!関西人の性!」
「ただ、関西人で良かったと思うこともあるよ。関西人って話芸が豊かやん。俺自身、ナレーションに話芸を入れようと思ってやってるところがあるから」
「話芸? でも、ナレーションって”決められた原稿を読む”お仕事ですよね?」
「例えばな…『記事出演のご依頼について』、これを読むとするやろ。」
「こうやって、どっか一部にアテンションを与えて、一回聞いてる人に違和感を感じさせて引き込むことで、その直後の単語を目立たせる。一回視聴者を聞く体勢にさせるわけや。
『なぁ、聞いてくれる?』から話に入るのと、『うわ〜〜参ったわ〜〜〜!聞いて!』から話に入るのとでは全然違うやん。後者の方が『何が参ったんや?』って気になるし、そのあとの聞き手の興味の持ち方が全く変わるよな。そういう話芸もナレーションに生かすことができるねん」
「なるほど…! 確かに全然違うー!!」
「そういえば、テレビでよくCM前に『このあと、とんでもないことが…!?』って入りますよね、あれも引き込まれるなぁ」
「あぁ、あれな〜! 『CM終わったら全然とんでもなくないやん!』っていう、テレビの裏切りな!」
「裏切りwwww」
「俺、現場では一時期『この後ホンマにとんでもないことが起こるんか!?』って確認してたわ!とんでもなくなさそうやったら絶対言いたくなかったもん!」
「さっきからこの人、意志の強さが激しすぎる!」
目指すのは「音楽のようなナレーション」
「大学の時に入った放送部がきっかけに、声のお仕事が今まで続いてるわけですよね。そう考えると長いなぁ。私もライターという道に踏み出したけど、畑中さんくらいの歳になった時はどうしてるんだろうと思います…」
「まぁ、続けていけるかどうかは結果論やね。俺の場合は完全な結果オーライやし。いまだに俺は俺の価値がどこにあるかはっきりと解ってないけど、いろんなご縁があって仕事の依頼が来るということは、どっかに何かがあるんだろうと思うから……。続けていきたいと思うからには、様々なスキルを身につけて腕を上げていくしかないと思って常にやってるよ」
「ナレーターの帝王に君臨してもまだスキルを! ……仕事って……行き着くところはどこなんでしょうか……」
「ションボリ…」
「なんか君の人生相談みたいになってきたな…。そうやなぁ、最近思ったんやけど、俺は『音楽のようですね』と言われるナレーションがしたい!」
「音楽! えー! どんなのだろう? 心地いいっていうのはわかる!」
「俺もあんまりイメージ湧いてない(笑)。落ち着いた部分、心地いい部分、ざわつく部分…そしてポンと言った言葉で人の心をワッと動かせるような、そんなナレーションがしたいなぁ。俺にとって、声は研究対象なのかも。構成も含め、声だけでどこまでできるんだろう?と思うし、どんどん挑戦したいね」
「すごい熱意! ナレーターって単なる『声を吹き込む人』という認識だったんですが、畑中さんには『クリエイター』という言葉が一番しっくりくる気がします。ナレーターも作品の制作に加担する人のうちの一人なんだから、よく考えたら当たり前なんですけど…」
「うん、せっかくこの仕事をやってきて価値を高めていきたいと思っているからには、ナレーターという仕事が芸の域まで行ければいいとも思ってるね。まだまだ挑戦することあるし、そういうことを考えてるのは楽しいし。仕事の上でやっていても面白くない!もっとええものを!と思いながらやりたい!」
「うわ〜〜すげえ〜〜〜! 私もずっとそう思いながら仕事したい〜!!」
「で、ちゃんと届いて『すごいな〜』とか言われて、評価されたりしたいやん!? 俺はまだテレビの範囲から出られていないけど、いずれは新しい表現を確立して、『畑中ふうの語りを聞きたい!』と思った人が集まるようなナレーターになりたい。これからもずっと、ある意味わがままにやって行けたらと思ってる」
帝王はすごかった
ナレーター・畑中ふうさんのインタビュー、皆さんいかがでしたでしょうか。
関西の方以外はご存知ない方だったかもしれませんが、仕事に対する考え方については、全国のものづくりに携わる皆さんに共通してヒントになることが沢山潜んでいたインタビューかと思います。
実際お話をしてみて、やはり長年最前線でお仕事を続けていらっしゃる方はエネルギーと熱意が半端じゃない!とヒシヒシと感じました。今から30年後の自分なんて想像もつきませんが、畑中さんのように貪欲に挑戦し続ける大人になりたいと強く思います!
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ライター:社領エミ(株式会社 人間)
"面白くて 変なことを 考えている"会社、株式会社人間の元気なデザイナー。ええ声が好き。
Twitterアカウント→@emicha4649