こんにちは、ライターのコエヌマカズユキです。新宿のゴールデン街でバーをやっています。横丁の雰囲気が大好きで、趣味は全国の飲み屋街を巡ること。
以前は大阪のこんな飲み屋ビルをご紹介しました。
今回は仙台駅の近くに、グルメや酒場やお店がひしめくレトロな飲み屋横丁があるということで、探検してみましょう! その名も壱弐参(いろは)横丁!
駅からぶらぶらと商店街を歩いて、ふと横を見ると、深~い迷路への入り口がひっそりと開いていました。これが『いろは横丁』……!
ちなみに右手の立ち食いそば、めっちゃおいしかったです。
ゴチャゴチャとお店が立ち並ぶ、まさに求めていた横丁の雰囲気。歩くだけでワクワクしますね。
ず~~~~~~っと奥までこんな感じです。
手押しポンプ式の洗い場。白菜が、洗われるのを待っていました。
完全に昭和。素敵ですねー!
昭和どころか、創業明治元年(1868年)という老舗うなぎ屋も。「明ぼ乃(あけぼの)」というめちゃめちゃ有名な店です。
飲食店以外にも多彩なお店があります。例えばこの、「急須の数と種類がたくさんある店」とか。
そんな『いろは横丁』……正式名「中央市場商業協同組合」は、飲食店を中心に約100もの店舗が立ち並んでいる横丁。
昭和20年(1945年)の仙台空襲で、焼け野原に戸板やゴザを並べて物を売っていた闇市が発祥。その後、昭和21年には前身となる「中央公設市場」ができました。以来70年余、仙台市民に愛され続けているのです。
では早速おすすめ店をご紹介していきましょう!
▼グルメ・飲み
・ピッツェリア『ろっこ』
・居酒屋『冗談酒場 一歩』
・宮城の地酒と酒のあて『居酒屋 二代目』
・ワインと食事『葡萄酒小屋』
・小料理『王将』
▼飲食以外の店
・ファッション『Shirube Sendai』
・鶏肉・総菜『稲毛屋』
・アウトドアグッズ『あしの豆』
ピッツェリア ろっこ
まずやって来たのは、リーズナブルな価格で絶品ピザを食べられるというお店『ろっこ』。大人気のため、すぐ満席になってしまうそう。
ネットでいろは横丁を調べると、大体このお店の名前が出てきます。
お店の外にもピザの焼ける香りが漂ってます。ちなみにテイクアウトもできますよ!
ピザは何と600円から! それ以外の料理も300円からと驚くほどお手頃価格です。
この値段ならそれほど大きなサイズではないだろうと、「マリアーナ」「マルゲリータ」の2種類のピザを注文。注文を受けてから店内のかまどで焼き始めます。
このお店、ワインの種類がとても豊富です。ピザにワイン、まさに悪魔のような組み合わせです。実際、サラリーマン風の男性数人が、ピザをつまみに飲み会してました。
焼き上がった!! うわぁ、おいしそう!!!
ですが―
想定してたより大きくて、厚い。
ピザ生地はモチモチとした触感で、豊かな小麦の風味が堪りません。トマトソースやチーズとの相性もバッチリ。あの価格でこのサイズと味。そりゃあ行列できるわ。
ただし、かなりボリューミーだったので、一軒目でまあまあオナカいっぱいになってしまいました。
冗談酒場 一歩
続いて、寒い日にはどうしても食べたくなる「おでん」の赤ちょうちんがあるお店『冗談酒場 一歩』。外から店内の様子も見えて、一見さんでもウェルカムの雰囲気が感じられます。
横丁ならではのこじんまりとした店内。店長さんとの距離が近くて「ならでは」感が良いですね。
「うちは東北の地酒を中心に、日本酒の品ぞろえが自慢です。横丁で一番種類が多いかも」とのこと。
ド寒い日に食べるおでん、そしてウメェ日本酒! 最高にほどまるっちゃ~(あたたまりますね)。大根がダシを無限に吸っててメチャおいしい。
こちらのお店は横丁では比較的新しいそうで、お客さんも、単身赴任の方や一人飲み女子が多いのだとか。初めての人でも安心して楽しめるお店でした。
居酒屋 二代目
続いて入ってみたのは「居酒屋 二代目」
こちらがマスターです。背後のポスターにもデカデカとマスターの写真が使われているので、『NARUTO』の影分身の術みたいになってました。
こちらは東北の食材を中心に扱った料理と、地酒が売り。
人気ナンバーワンはクジラの刺し身だそう。
東北は金華サバやメバチ、牡蠣といった魚介類や、仙台白菜・仙台せりといった野菜など、食材の宝庫なのです。
マスターおすすめの地酒『綿屋 特別純米 百年酵母』。
「仙台の酒飲みたちに聞くと必ずベスト3に入るほど美味しい、でも手に入りづらいお酒」だそうです。きりっとした辛口で、程よい酸味が何とも言えない余韻を醸し出します。沁みるわ~……。
葡萄酒小屋
続いては、オシャレなお店構えの『葡萄酒小屋』へ。店名の通り、ワインが売りのお店です。豚のベンチ?が目印です。
これまで回ったお店に共通することですが、値段安すぎませんか?
こちらのお店も、グラスワインが450円からそろっています。儲ける気、ある?
ピクルスや生ハムなどの軽い前菜から、豊富な種類のチーズ、魚介や肉料理、パスタ類など、フードメニューも豊富です。オムライスは580円でした。
この店、飲み物も食べ物も店の雰囲気も、まったりと落ち着けて最高。 お客さんも今どきの若い人が多かったです。
王将
いろは横丁のなかでも、特に長い歴史を持っている店『王将』。開店は1946年です。
とてつもなく気さくなママさんは2代目で、先代から約35年前にお店を受け継いだそう。色々思い出話を聞かせてもらいました。
かつては10人以上の女性がこちらで働き、お店の2階で寝泊まりしていたのだとか。米軍キャンプから米兵たちが客としてやって来て、当時は貴重だったチョコレートや砂糖を大量に置いていったというエピソードも。
「女の子たちは、ここで稼いだお金を実家に仕送りしてたの。みんないい子ばっかりだったわねぇ……」とママは目を細めていました。
開店当初から来ていたお客さんが出世し、部下を連れて飲みに来る。そして今度はその部下たちが通うようになる……そんな風にして、常連さんも受け継がれているのだそう。
「体の調子が悪くなったことがあって、もう辞めようとも思った。でも転勤で仙台を離れた常連さんが久しぶりにこっちに帰省して、『まだやってるか?』なんて来てくださることもあるし、辞められないわね(笑)」とママ。
こういう話が聞けるの、めっちゃ良いですよね。
飲食店以外
飲食店以外のお店もたくさんあるいろは横丁。レトロなお店からオシャレなお店、実用的なお店まで、ごく一部ですが紹介しましょう。
【ファッション】Shirube Sendai
もともと理容店だった物件で営業しているこのお店、実は新品と古着を取り扱うセレクトショップ。若者を中心に仙台のおしゃれなお客さんが多く訪れるそうです。
店名は『ビューティサロン中央』ではなく、『Shirube Sendai』です。
想像を遥かに超えるオシャレさだった。
仙台の若い人、おしゃれな人が多いです。
【鶏肉・総菜】稲毛屋
「稲毛屋」さんは、鶏肉や総菜、卵などを販売しているお店。店構えや商品から、地域住民の生活に寄り添っていることが伺えます。
砂肝炒め、間違いなく美味しいやつでしょ……。たまご焼きは1コ100円!
【アウトドアグッズ】あしの豆
山小屋のような佇まいの「あしの豆」さん。有名なブランドだけではなく、レアなアウトドアグッズも豊富です。
東北には山がたくさんあり、降雪量も多いので、アウトドアショップのレベルが高いんでしょうね。
組合事務所
どういう歴史を持っているのか気になったので、組合事務所でいろは横丁について詳しく教えてもらいました。お話を聞いたのは組合長の佐藤守彦さん。
(左)組合長の佐藤さん、(右)コエヌマ
「いろは横丁はかなりレトロな雰囲気ですが、昔からずっとあったんでしょうか?」
「いろは横丁は戦後にいわゆる闇市として始まりました。飲食店のほか、肉屋や魚屋や八百屋、洋服や雑貨など生活用品の店も多くありました」
「確かに、今も飲食店だけでなく、いろいろなお店がありますね」
「洋服屋やアウトドアショップ、染物屋、時計屋など。変わったところだと、靴の中敷き専門のお店もあるんですよ」
「戦後から現在まで、こういった横丁が連綿と続いてるのってすごくないですか?」
「すんなりと継続してきたわけじゃないですけどね。幾度も再開発の波に直面したし震災の被害もあったけど、なんとか存続してきまして。最近になって『レトロな雰囲気が良い』ということで、テレビや雑誌で取り上げられることが多くなったんです」
「それで若い人もたくさん来るようになったんですね?」
「前は年配の方が中心でしたが、今は若いお客さんも多いですね。ただ、若い人が来るようになった理由はトイレだと思いますよ」
「と、トイレ??」
「震災で傷んだガス管や下水管を直した時に、トイレも新しく、キレイにしたんです。そしたら一気に若い人が増えましたね」
「トイレ大事だな……」
若い人が多く訪れる理由になったというトイレ。これは共用ですが、男女別になってるトイレもちゃんとあります。
確かにトイレが汚いと……特に女性は来るのをためらってしまいますよね~。
「どのようなところが、いろは横丁の魅力だと思いますか?」
「この懐かしい雰囲気ですね。もう手押しポンプの井戸はご覧になりました? 昔はあそこで、鰻屋さんが鰻に泥を吐かせたり、お店の2階に住む人が洗濯していたんです。『ブラタモリ』のロケで、タモリさんがこの井戸を見に来たこともあります」
「それはすごい!」
「あと、ミュージシャンの斉藤和義さんが、プロモーションビデオの撮影で来たこともありましたね。ファンのかたが同じ場所でよく写真を撮っています」
「ちなみに、シンディ・ローパーさんも来たことがあるんですよ。こういった雰囲気が、海外の方には珍しいのかもしれませんね」
「すでに今の日本の若者ですら、こういう雰囲気は珍しいかもしれません」
「わはは。でもこういう雰囲気も良いもんでしょ?」
「そうなんですよねぇ。ブラブラとこの横丁を歩いて、食べて飲んで……なんだかすごくノスタルジックな気持ちを楽しめました」
「一度で回りきれる店の数じゃないから、また何度でも来てください」
「確かに、まだまだ気になるお店が山ほどあったんで、いつか必ず来ます!」
取材を終えて
酒場の魅力は何かと聞かれたら、僕は迷わず「人の温かさに触れられること」と答えます。さっきまで見ず知らずの他人同士が、気づけば昔からの友人のように笑顔で話している。そんな光景が酒場では当たり前のようにあります。
今回もたくさんの方との交流を通じ、改めて「酒場っていいな」と感じました。東北に行った際は、「ただいま」と言いながらまたぜひ立ち寄りたいと思います。
(おわり)
今回、取材に協力いただいたお店一覧
ピッツェリア ろっこ
仙台市青葉区一番町2-3-30
営業時間:9:30~11:30(平日のみ)、11:30~15:00、17:00~24:00(不定休)
冗談酒場 一歩
宮城県仙台市青葉区一番町2-3-30
営業時間17:00~24:00
居酒屋 二代目
宮城県仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間17:30~24:00(不定休)
葡萄酒小屋
宮城県仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間17:00~24:00(定休日:日曜)
王将
宮城県仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間17:00~24:00(定休日:土日祝)
Shirube Sendai
仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間14:00~20:00 ※土日祝12:00~20:00(不定休)
稲毛屋
仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間10:00~18:00(定休日:日祝)
あしの豆
仙台市青葉区一番町2-3-28
営業時間11:00~19:00 ※日祝~19時(定休日:火曜)