畑の間からこんにちは! ライターのキョウノオウタです!
ふだんは動画編集者として活動している15歳です。編集長の柿次郎さんに声をかけてもらって、ジモコロで記事を書くことになりました。
↑以前、ジモコロで取材してもらった記事です
15歳の僕の視点から、身の回りや世の中に関する「これ何で?」「どうなってるの?」という素朴な疑問を、現場で質問していきたいと思います。今回のテーマは「大豆」。
「大豆のこと、よく考えたことないなあ。食べる機会もないし」
「知らないの? 味噌も醤油も元々は大豆なんだよ」
「えぇ? 日本の食卓に欠かせないものばかりだし、毎日食べてた! なのに知らなかった…」
ということで、ちょっと下調べ!
大豆ってそもそも何?
・大豆は穀物。醤油、味噌、納豆、豆腐、豆乳も元は大豆から出来ている!
・そして注目すべきは栄養素の高さ!「畑のお肉」とまで言われてるほどタンパク質が豊富!
・で、一番驚いたのが「もやし」や「○○」も大豆なんだって?!
※○○は取材中に分かったので読んでからのお楽しみ!
「ヤバい、面白すぎる…」
「興味がわいてきた? それじゃあさっそくインタビューしてみようか」
「えーいきなりですか! が、がんばります!」
ということで、慣れない取材に緊張しながら農家さんに話を聞いてみます!
話を聞いた人:萩原農園・萩原拓重さん
山形県南部の東置賜郡高畠町で米、大豆、タマネギやにんにく等、各種野菜の栽培をおこなう。安全で美味しい食材づくりや、農業の価値を高める発信・企画にも取り組む。
そもそも大豆の定義って何?
「わぁ~辺り一面が畑と田んぼ!!」
「ここは納豆用の大豆畑なんですけど、畑一枚が広さ30アール。計十枚がウチの畑で、『すずかおり』って品種を育ててます」
「納豆用の大豆があるんですね。ところで、そもそも大豆の定義って何ですか? 他の豆と何が違うんでしょう」
「うーん、大豆と他の豆の違いかあ。米と麦の違いみたいな?」
「米と麦の違い…?」
「大豆と小豆が違うみたいな? まぁ、そのくらいのくくりです」
「……結構ゆるい感じなんですね」
「そうですね。『大豆』のなかにも品種が沢山あるんです。黒豆や赤豆、青大豆に白大豆とか。全部で10種類くらいかなあ」
「だから品種によって畑が分けられてるんですね」
「はい。うちは納豆屋さんとの取引が結構多くて、なので極小粒の品種とか、あとは『秘伝豆』っていう大粒の品種を育てて、納豆屋さんに納めてます」
収穫した秘伝豆
「『秘伝』って響きがめちゃめちゃ気になるんですが」
「元は岩手で生まれた品種なんだけど、山形で好んで栽培されている青大豆なんです。まだ流通量が少ないんだけど美味しいですよ」
「(食べたら強くなれそうだな)」
ビールに合うアレも大豆だった?
「ところで、大豆に旬とかあるんですか?」
「品種も多いので、通年出回ってますね。保存が効く穀物ですから。そもそも、ほとんどの大豆ってそのまま食べないんですよ。味噌や醤油などに加工されて食卓に届くものなので」
「新米みたいに『新豆』を食べたりしないんですか? 実は美味いんだぞ的な」
「あー、それを言うなら『枝豆』ですね。枝豆は『未成熟な大豆』を食べてるんです」
「え、アレって未成熟な豆なんですか?! 初めて知りました……」
「そうです。枝豆をさらに育てると、さやと中身が乾燥して、大豆の状態になるんですよ」
「品種としては、大豆用のものと枝豆用のものは変わらないんですか?」
「さっき話した『秘伝豆』なんかは香りも強いし粒が大きいので、枝豆で食べても大豆で食べても美味しいんですよ」
「収穫時期の見極めがメチャクチャ重要そうですね」
「ええ、枝豆も身が入りすぎてると美味しくなくなっちゃうので」
「それって見てわかるものなんですか? 慣れとか…」
「わかりますね!『この辺取ったらうまそうだな』みたいな」
「プロってすごいんだな……」
大豆は昔、あぜ道に植えられていた⁈
「昔に比べて、大豆の生産量って変化してるんですか」
「昔も今もそんなに変わんないみたいですね。なんならあぜ道に植えられてたらしいですし」
「え、あぜ道に大豆を?」
「そうです。昔は今ほど綺麗に田んぼができてなくて、形がバラバラだったんですよ。そのぶん、あぜ道も沢山あったらしくて」
「そこを有効活用していたと」
「そうみたいですね」
「あぜ道で育てるってできるもんなんですか?」
「できますよ! ただ、世話が面倒くさいですね。整地された畑じゃないと、機械で作業できないですし。あんまり今やるメリットはないんじゃないかなあ」
「時代によって大豆の需要って変わっていってるんですかね?」
「どうなのかな〜」
「最近だと、ベジタリアンの方々が食べてるいわゆる『ベジフード』とかは大豆が多く使われてるイメージで」
「ベジフードを知ってるんですね! スタバに行くとソイラテとかもありますし、昔に比べて豆乳もスーパーに並ぶようになりました。新しい大豆の需要は増えてるかもしれない」
「そう考えてみると、大豆の活用性ってムチャクチャありますよね。『納豆』をはじめ『醤油』『味噌』『豆腐』、日本の食卓に欠かせないものばかりですもんね」
「そうですね。あの……私、さっきから大豆の話してるんですけど、実は米農家なんですよ」
「え? (ここに来て意外な事実が…)」
米離れが大豆離れを引き起こす?
「なんで米農家さんが大豆をつくってるんですか?」
「米って全国どこでも作ってるんです。でも田んぼを持ってるからって、その100パーセントで米を作れないんですよ。政策的な問題で」
「政策的な問題…?」
「国単位で米が余っちゃうので、県や市町村が管理して、一部の田んぼを休ませなきゃいけない制度があるんです。今だと4割は休ませなくちゃいけなかったのかな」
「その4割で大豆を育ててるんですね。でも、それって休ませてることになるんですか? もしや違法の闇大豆…?」
「ちゃんと合法です。田んぼは休ませて、でも耕作は放棄しないでねって決まりなので」
「なるほど、だから別の作物を」
青々と茂った黒豆の畑
「ただ、米の需要って毎年減ってるんです」
「そうなんですか⁈ 日本人の主食は米なのに?」
「日本人の米離れって実は進んでて。それと一緒に、大豆の需要も減る可能性があります。大豆の加工品は米に合うものばかりですからね」
「そんな……」
「なので『頑張らないとな!』って」
「じゃあ、萩原さんの大豆菓子もその一環になってるんですか?」
萩原農園では、オリジナルの大豆菓子を数年前から発売中
「そうですね、手軽に大豆を食べて欲しいって想いからです。味噌や醤油って、大豆を食べてる認識はあんまりないじゃないですか。そんななかで、大豆を食べるっていう行為が意識できたらいいなと」
大豆菓子は全部で7種類。ネットショップでも購入可能
農業全体の状況とこれから
写真右は萩原さんの妹さん。ご家族で萩原農園を支えている
「僕もなかなか大豆を意識して食べたことなかったです。大豆にこれだけ種類があるんだっていうのもびっくりしましたし」
「そうなんですよね。うちで任されてる畑も、私と妹夫婦、両親の五人で管理してるんですけど」
「東京ドームより余裕で広そうなこの土地を5人で?!」
「そうなんです。うちみたいに、少人数で広い面積の畑を運営するケースが増えてます。そうした課題をクリアするために、”スマート農業”と呼ばれるものが導入されつつあって」
「スマート農業! かっこいい響き。機械化みたいな感じですか?」
「機械化のもっと先ですね。機械に変えられるものはどんどん変えて、少人数でどれだけ効率よくできるか、みたいな感じです。うちはまだまだですけど、僕の趣味でドローンを使ったりしてます」
「空撮だ! かっこいい」
「普通に地上で田んぼを見ても、生育の差がひと目では分かりにくいんですよ。でもドローンで上から見るとすごく分かりやすくて。ドローンで写真も撮影できるので、記録に残せるのも便利なんです」
「そういうのをうまく発信していければ、農業に興味ある若者が来てくれそうですね!!」
まとめ
最後に「農作業って結構孤独なんですよ。でも、おいしいって言ってもらえる声とかが励みになりますね」と話していた萩原さん。
興味本位でジモコロ編集長についてきたけど、考えることがたくさんある取材でした。
僕にはまだまだ知らないことがあって、もしかしたら知らないままのほうが良いこともあるかもしれない。でも、目を逸らすのが正解かって言われると、そうでもない。
僕が今回、醤油や味噌が大豆から作られているのを初めて知ったように、食卓に並ぶ加工食品の原材料まで、普段はなかなか考えが及びません。でも、今まで当たり前のように頂いてた食べ物は、誰かの手によって作られているのです。
当たり前を当たり前にし続け、保ち続ける。それって相当すごいことなんだなと、取材を通して肌で感じました。僕たちが大人になっても日本の食文化を守り、継承していくために僕たちができることは何だろう? これからちゃんと考えていこうと思います。
それではまたお会いしましょう〜!