こんにちは。ライターのしんたくです。
今回の取材の舞台は東京の中でも飲み屋文化で名高い中央線。その中でも…
です。
東京に住んでいる人でも「西荻窪ってどこ? 」と小首をかしげる人も少なくないかも。それもそのはず。
・通ってる路線はJR中央線のみ
・荻窪と吉祥寺という有名ベッドタウンの間の駅
・しかも土日は中央線快速が止まらない
という数ある中央線の駅の中でも、地味〜な街なのです。
しかし、だからと言って通り過ぎるには、もったいない!!!なぜなら!!
味のある飲み屋(しかもこの柳小路にはギリシャ、タイなどのたくさんの多国籍料理が!)はもちろん、
レトロとハイソが入り混じる南口の駅前通りや、
少し離れた西荻窪南通りには、BR●TUSに取り上げられるようなオッシャレーなお店も充実。
この西荻窪駅周辺は、飲食店や雑貨店などの個人店が1000店以上あるとの噂も。しかも国やジャンルをまたいだお店が集うという“住みたい街ランキング1位”の吉祥寺に引けを取らないほどのカルチャーの街なのです。
初心者にはハードルが高い…とお思いのあなた、ご安心ください。
なんと西荻窪の研究プロジェクトを行い、「西荻町学」なるサイトを運営している人がいるのです。彼に聞けば、西荻窪とはなんたるやがわかるはず。
というわけで今回お話を聞くのは、この人です。
どーん!
…え、外国人?
実はこのジェームズ教授、世界の都市の研究者。アメリカの大学を卒業後、世界を放浪し、上海、ニューヨーク、ベルリンなど各地の都市を研究している方。各地を回ったあと、西荻窪の研究を始めたそうなのですが…
そんなすごい人がなぜ「西荻窪」に興味津々なの…?
ジェームズ教授いわく、世界の都市の中でも有数の面白さがこの西荻窪にはあるというのです。えー?ほんと…?
ということで今回は、ジェームズ教授オススメのお店を伺いつつ、西荻窪そして東京の文化についてお話いただきました。
西荻窪って「何がいい」街なの?
「こんにちは。当たり前ですが、日本語めちゃくちゃ上手いですね」
「日本に来てから10年以上になりますからね。ずっと中央線の沿線に住んでいるんですよ」
「おお! めちゃくちゃ中央線上級者…! そんな教授が感じる西荻窪の魅力とは何なのでしょう?」
「まず個人店が非常に多いことですね。西荻窪駅前だけでも1000店舗以上あるのではないでしょうか」
駅前アーケードや大通りだけでなく、裏路地にも数えきれないほどの店がある
「そんなにたくさん! 絶対に入りきれない…。ちなみに教授オススメのお店ってあるんですか?」
「もちろん。私もまだ全ては回れていないんですが、その中でもオススメをいくつかご紹介しましょう」
[onsin soup]
「おしゃれな雰囲気なので、女子学生などとの面談の際には使いやすいですね」
「確かに女子会ランチに良さそう」
[こけし屋]
「こけしは西荻窪でもっとも古い洋食屋ですね。現在はフランス料理とケーキが有名です。かつては文化人のサロンとして名を馳せていたんですよ。また毎月第2日曜日の8~11時に朝市をやっています」
「文化人のサロンだったフランス料理店が朝市!? どういうこと…?」
[コーヒーハウス それいゆ]
住所:東京都杉並区西荻南3-15-7 googlemap
「ここはコーヒーだけでなく、カレーやケーキなどの軽食も美味しいんですよ」
「いい喫茶店感がプンプンと…」
「そうですか。それなら今日はここに入りましょう」
【ちなみに他にもレトロな喫茶店が…】
[コーヒーロッジ ダンテ]
住所:東京都杉並区西荻南3-10-2 googlemap
レトロ以外の魅力がある“柳小路”
「それにしても西荻窪っていろいろあるんですね〜全然知らなかった」
「そうですね。特に私が面白いと思うのはこの“柳小路”のあたり。ここは平日、休日問わず大勢の人で賑わっていますね」
「すごくレトロな雰囲気ですね! 赤羽とか新宿のゴールデン街みたい! やっぱりこういう情緒ある町並みが好きな人が多いんだろうなあ」
「ポイントはそこだけではありませんよ。実はこうした旧歓楽街の雰囲気を持つ町並みは多くの街にも存在します」
「言われてみると…では、なぜ柳小路に多くの人が?」
「この柳小路が他の旧歓楽街と大きく異なるポイントは女性も楽しめるお店が多いことです」
「え、そこなんですか?」
「はい。かつては娯楽も少なく、かつ会社員も男性が多い状況でした。そのため『男性同士の娯楽といえば、女性がいるお店に行くこと』となりがちで、スナックやキャバレーなどのお店が盛り上がっていたのです」
「ところが、社会の状況はここ数年で大きく変わりました。女性の社会進出により同僚の性別比も大きく変わりましたし、何より男性の娯楽の在り方が変わってきたのです。端的に言うと、いわゆるお店での女遊びをしなくなった」
「たしかに男同士で遊んでても、そういうお店に行こうとはならないかも…」
「そのため、次第にスナックやキャバレーなどの文化は徐々に衰退しました。しかし一方で、そのレトロな建物や街並み自体には魅力を感じる人は多かったのです」
「入りづらいけど、興味はある人が多かったということか」
「はい。こうした風潮にうまくマッチしたのが柳小路でした。旧歓楽街のレトロな街並みはそのままに、若い店主が次々と店を構えることで、旧来の客層である男性以外の人が入りやすくなったのです」
「いろんなシチュエーションで使えるお店が増えたわけか〜」
「はい。スナックの雰囲気に憧れている女性も入りやすくなったわけですね。結果として、柳小路は旧歓楽街からアジアンマーケットのようなエスニックな雰囲気へと変貌を遂げ、他の街にはない魅力を得たのです。」
【ここで一息! 教授オススメの柳小路のお店PICKUP!】
[西荻タイ料理 ハンサム食堂]
「そして西荻窪の面白さはここにあります。柳小路だけではなく、町全体のレイヤーが非常に深い」
「レイヤー?」
「はい。要するに老舗の高級店から、新規の安い店まで、個人店のジャンルが非常に幅広い。そして、住んでいる人も幅広い階層の人たちが入り混じっているのです」
「なるほど! とはいえ、なんで西荻窪はこんな幅広い文化の町になったんですかね? 古くから多様な文化を受け入れる下地があったのかな?」
「いえ、西荻窪駅周辺はもともと『西荻村』という10数件の農家が住む小さな農村だったのです」
「もともとは小さな農村だった…? それがなぜこんな街に?」